標題が不謹慎?またそんな堅苦しいことを。ホントはみんな待っていたんでしょ?このニュース。
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●人へ初感染の可能性=鳥インフルエンザ地域で肺炎-中国衛生省(時事通信 2005/11/06/21:01)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051106-00000062-jij-int
【北京6日時事】新華社電によると、中国衛生省スポークスマンは6日、鳥インフルエンザ(H5N1型)が発生した湖南省湘潭県で肺炎になった男女3人(うち1人死亡)について「鳥インフルエンザに感染した可能性を排除しない」とする見解を明らかにした。
中国国内ではこれまで、鳥インフルエンザの人への感染事例は報告されていない。
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●中国で初めて人へ感染か 鳥インフルエンザ(共同通信 2005/11/06/21:22)
http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=MYZ&PG=STORY&NGID=main&NWID=2005110601002444
【北京6日共同】新華社電によると、中国衛生省の報道官は6日、湖南省で3人が原因不明の肺炎にかかり、1人が死亡したと発表した。政府が同省に派遣した専門家は高病原性鳥インフルエンザ(H5N1型)感染の可能性を排除できないとしている。人への感染が確認されれば中国で初のケース。
報道官によると、中国疾病予防コントロールセンターがさらに検査を続けている。衛生省は、世界保健機関(WHO)に3人の症例を詳しく報告。病因の早期特定は困難として、WHOの専門家を中国に招き、中国の専門家とともに原因究明に当たると発表した。
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報道の通りです。「新華社電によると」というだけでは中国国内にも配信されているニュースなのかどうかはわからないでしょうが、今回は中国国内にも流されています。
●「新華網」(2005/11/06/16:11)
http://news.xinhuanet.com/politics/2005-11/06/content_3739678.htm
そうです。湖南省の3例について専門家は、
「いまのところ原因不明の肺炎としか診断しようがないが、鳥インフルエンザH5N1型に感染した可能性を排除できない」
とはっきり言っています。「党・政府の代弁者」と定義される中国国内メディアです。「可能性を排除できない」と曖昧ながら鳥インフルエンザの人間への感染に言及していることは、限りなくクロに近いとみていいでしょう。ところで、
「中国国内ではこれまで、鳥インフルエンザの人への感染事例は報告されていない」
という時事通信の書き方は日本人に安心感を与えようとしているのか、中国に媚びているのか知りませんけど、「報告されていない」ではなく「発表されていない」または「公式には発表されていない」と書く方がより正確だと私は思います。
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だいたい今秋の一連の中国国内における「禽流感」(鳥インフルエンザ)について、政府の担当部門である衛生部及び農業部の態度は「問題は起きていない」「心配はない」「事態は終息しつつある」などと、これまでは例によって傲然たるものでした。
しかも中国肺炎(SARS)のときもそうでしたが、WHO(世界保健機構)が関連情報の開示を再三にわたって求めていたのに、それに応じない。それが一変して靴をも舐めんかというばかりの低姿勢。
「WHOの専門家を中国に招き、中国の専門家とともに原因究明に当たる」
とサラリと書いていますが、これまでの情報開示要求への冷たさを考えれば、要するに中国が泣きついてきた訳ですね。
「手に負えません。だからWHOさん、お願いですから専門家を寄越して下さい」
ということです。この湖南省のケースの他にいま注目を集めているのは遼寧省です。鳥インフルエンザが流行してニワトリやアヒルがバタバタと死亡し、症例の出た村は封鎖して家畜を処分。でも症例が出た地域が15カ村に拡大しており、地元で千名近い武装警察まで動員して家畜の処理に躍起となっています。
●香港文匯報(2005/11/06)
http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0511060008&cat=002CH
躍起というか必死でしょう。中央からも高官が派遣されて督戦しているようですが、もしヒトへの感染例が出たらどうするのかは興味があります。隠すのかはっきり公開するのか。
というのも、遼寧省のトップである省党委員会書記を務めているのが李克強。共青団(共産主義青年団)人脈の若手筆頭格であり、胡錦涛の後継者と目される人物です。胡錦涛・温家宝は中国肺炎の隠蔽などの罪状で江沢民系列の衛生部長のクビを切っていますからねえ。
今回の問題への対処が不適切だとアンチ胡錦涛諸派の反発は必至だ(笑)。まあ中央までテコ入れしている遼寧省の必死の防疫活動にはそういう側面もあることを覚えておいてもいいでしょう。
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で、この件に関して私たちは部外者ですから目下のところは高見の見物ができるのですが、中国在住の日本人の方はお気を付け下さい。香港政府は11月4日、遼寧省のケースが発覚した時点で同省からの輸入を即停止しています。ちなみに10月25日時点での今年の遼寧省からの関連産品輸入量は1.3万トンとのことです。
●「明報即時新聞」(2005/11/04/15:25)
http://hk.news.yahoo.com/051104/12/1idw2.html
目を引くニュースもあります。遼寧省における鳥インフルエンザ流行の起点となった同省黒山県ですが、香港紙『星島日報』(2005/11/06)は村民の話として、本当は先月初めにはニワトリが大量に死亡するケースが出ていたとしています。
●『星島日報』(2005/11/06)
http://www.singtao.com/yesterday/chi/1106eo02.html
中国当局が遼寧省でも鳥インフルエンザが流行している、と発表したのは11月4日です。村民の話を信じるとすれば、約1カ月、感染したアヒルやニワトリなどを含めた関連産品が流通してしまっていることになります。これはシャレにならない事態です。むろんこの件、中国国内では報道されていません。
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最後に香港紙の記者たちの頑張りにふれておきます。「狗仔隊」(パパラッチ)と呼ばれ、内容もせいぜいタブロイド紙レベルの香港紙ではありますが、パパラッチにもパパラッチ魂がある訳で、香港人記者か地元で雇った人間にやらせているのかはわかりませんが、潜入取材を行っている模様です。
例えば先月末に湖南省の湘潭射埠鎮・灣塘村で鳥インフルエンザに感染した可能性がある鶏を食べた女児が死亡する事件が起きました。WHOはその情報開示を再三求めているのですが中国側は現在に至るまでそれに応じていません。死亡した女児もすぐ火葬してしまい、村に通じる道路も封鎖するなどして「秘密主義」に徹しています。
ところが、その女児の父親への電話インタビューが『明報』(2005/10/30)に掲載されたのです。
●『明報』(2005/10/30)
http://hk.news.yahoo.com/051029/12/1i6c1.html
この記事の文末を見て私は首をひねりました。文末に、
「明報記者湖南湘潭報道」
とあるのです。普通なら「明報記者×××北京報道」のように記者名まで出すのが普通です。ところが最近の鳥インフルエンザ報道に関しては地名だけ書いてあって記者名が出てきません。
それを隠すというのは、たぶん明らかにしてしまうと潜入中の記者の身元がバレてしまうからでしょう。遼寧省に関する報道でも潜入取材については同じことが行われていると思います。パパラッチ魂を意気に感じたものです。
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ちなみに中国からの専門家派遣要請に関してWHOは、
「H5N1に感染したものだとわかっても何ら不思議ではない」
という落ち着いたコメントを発表しています。
●「明報即時新聞」(2005/11/06/23:00)
http://hk.news.yahoo.com/051106/12/1ifmd.html
「ほーら言わんこっちゃない。だから言っただろ、この野蛮国めが」
というニュアンスが感じられてナイスです。あとは外務省またはWHOの渡航延期勧告を待つばかりですね。
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