日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 最近、どうも中国政治の内圧がひそやかに高まりつつあるような気がします。ぐっと押し付けられて、圧縮熱が生まれつつあるような気配といったところでしょうか。

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 国内的には表立った争いはみられません。経済政策をはじめとした各方面の政策に異論が出てメディアを使った代理戦争(互いに自説の正当性をアピールする署名論文を掲げるなどした論争)、これは中国における権力闘争の典型的な型なのですが、胡錦涛政権のやり方に公然と異を唱える向きは、メディアにおいては見当たりません。

 「中央vs地方」という暗闘は依然続いています。ただこれは権力闘争とか政争というほどのものではなく、中央にとっては政策貫徹という面でやりにくい部分はあっても、また中国経済全体への悪影響を懸念しつつも、結局はただやりにくいというだけです。また「中央vs地方」と同時に「地方vs地方」というライバル意識もあるため、全国各地の「諸侯」がまとまって中央に抵抗するには至っていません。

 以前は「諸侯」の利益代弁者として上海閥が存在していましたが、ご存知のように次世代を担う筈だった陳良宇・前上海市党委員会書記が胡錦涛らによって失脚させられたため、事実上無力化してしまいました。放っておいても現役の年寄りどもが引退していけば上海閥は自然に立ち枯れてしまう訳です。まあ陳良宇が斬られるまで攻め込まれた時点で上海閥は終わったも同然、ともいえます。

 それでは誰が内圧を高めているのかといえば、軍部ということになるでしょう。どうも最近ピリピリしているようにみえます。だいたい五輪開催を翌年に控えた国が、他国に実害を及ぼしかねない弾道ミサイルによる衛星破壊実験なんてことをやりますかね普通?しかもこれは軍事バランスを不安定にしたり新たな軍拡競争を呼びかねない挙でもあります。

 その衛星破壊実験がどうやら独断専行らしい気配は以前お伝えした通り、中国外交部など胡錦涛政権の対応ぶりからみてとれます。

 ●衛星破壊ミサイル実験:当局もメディアもちょっと変。・上(2007/01/21)
 ●衛星破壊ミサイル実験:当局もメディアもちょっと変。・下(2007/01/21)
 ●寄り切りでアンチ組の勝ち。――でも胡錦涛優位は変わらず。・上(2007/01/25)
 ●寄り切りでアンチ組の勝ち。――でも胡錦涛優位は変わらず。・下(2007/01/25)

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 軍部が一致団結して勝手な振る舞いに出た訳ではないでしょうが、弾道ミサイルで衛星破壊ですから、軍上層部にそれを支持する勢力があることは確かでしょう。今年度予算の大幅増を求める動きにしては派手過ぎますし(笑)。

 ただ衛星破壊実験は別としても、軍全体がピリピリしてもおかしくない要素が、少なくとも軍部にとっては盛り沢山ではあります。北朝鮮の核問題でも多少はストレスがたまったでしょうけど、それよりも「仮想敵の蠢動」と制服組の目に映るであろう事象がまとまって群がり起こっているからです。

 まず日本の防衛省誕生や安倍晋三首相の訪欧時におけるEUの対中武器禁輸措置に対する明白な解除反対姿勢。ムカついたでしょうねえ(笑)。その後EUは禁輸解除に動いてはいますが、人権問題など中共政権にとってはかなり高いハードルを前提条件として提示してきました。

 日米同盟であれば尖閣諸島を念頭に置いたと思われる離島奪回合同軍事演習の実施、そして日米安保の共同戦略目標に「台湾有事」を含めることが再確認されたことが何より大きいでしょう。米軍による最新鋭戦闘機・F-22ラプターの沖縄配備もそれを裏付けているように制服組には感じられたことでしょう。

 その台湾も衛星破壊実験に反応するかのようにミサイル基地増設を決めています。……それ以上に軍部を刺激したであろう出来事は、台湾の教科書問題ですね。簡単にいえば大陸すなわち中国本土を外国扱いするようなスタンスに改まったことです。台湾は台湾でひとつの国、という方向性が誰の目にも明らかで、こうなると胡錦涛も同盟関係ひいては掌握しつつあるのかも知れない軍部を抑えるのが一苦労でしょう。

 2004年には日米同盟及び軍部にとって最重要課題である台湾問題についての鬱屈が「反国家分裂法」制定の動きを生み、同法は翌2005年の全人代(全国人民代表大会=立法機関)で制定されています。今回の台湾のアクションに対して、独断専行めいた新たな反応が飛び出してもおかしくない状況です。

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 ところがその一方で、「仮想敵の蠢動」が別の方角で発生して軍部の神経を刺激しています。それが今回の標題であるインドの動きです。これまた軍部ひいては中共政権からみて挙動不審といえるであろう動静を示しているのです。

 ●インド軍、近代化加速へ100億ドル投入(新華網 2007/01/28/09:03)
 http://news.xinhuanet.com/mil/2007-01/28/content_5663057.htm

 大枚をはたいて主に陸軍と空軍の面目を一新させようというもので、国境画定作業が順調に進まず、チベットのラサにおける総領事館開設というインドの要求も一蹴している中共政権としては気になるところでしょう。

 もっともこのニュースは『青年参考』という『中国青年報』(胡錦涛の御用新聞)の弟分が報じたもので、もともと青臭いというか稚拙な傾きのある新聞なので気にするほどの信憑性があるかどうかは疑わしいのですが、国営通信社の電子版「新華網」がこれを転載しています。それだけインドに対し、党中央も軍部も神経質になっているということでしょう。

 それからこの2本。

 ●インドが空軍の再編・強化とともに宇宙司令部設立へ(新華網 2007/01/29/07:55)
 http://news.xinhuanet.com/mil/2007-01/29/content_5666738.htm

 ●インド、航空宇宙防御司令部を設立し空軍力の強化狙う(新華網 2007/01/29/08:20)
 http://news.xinhuanet.com/mil/2007-01/29/content_5666945.htm

 上が「国際在線」、下が「中国新聞網」からの転載で、いずれも報道媒体としてはしっかりしたところです。……で、この2本の記事をみる限りではインドが軍拡路線へと舵を切ったような印象を受けますが、「宇宙」という言葉と記事の日付でわかるように、これは例の弾道ミサイルによる衛星破壊実験を受けてインドが示した反応なのです。いわば中共の自業自得。もちろんそんなことは記事のどこにも出てきませんけど。

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 ところが、インドが軍部を神経過敏にさせる動きはこれにとどまらなかったのです。中共にとっては盟友にも似た関係を築きつつある筈のロシアが最近になってインドに急接近。いや、どちらから接近したかはともかく、軍事面での両国の関係が非常に緊密になりつつあることをうかがわせる報道が中国国内で流れました。

 ●プーチン訪印に華やかな礼砲、印露両国が第五世代戦闘機の共同開発へ(新華網 2007/01/28/08:33)
 http://news.xinhuanet.com/world/2007-01/28/content_5662928.htm

 インドもロシア製の武器を色々買い込んだようですけど、ロシアも戦闘機の共同開発にとどまらず、資源開発プロジェクト「サハリン3」へのインドの参加を認めるなどお土産はなかなかのものです。ともあれ武器購入だけでなく「共同開発」まで踏み込めば軍部は焦燥感にかられることでしょう。

 ……ただこれは『人民日報』傘下の電波系基地外国際紙『環球時報』の報道ですから眉唾な部分があるかも知れません。ただこれを国営通信社が転載したことに意義があるといえるでしょう。中共が気にしているということです。

 それからこれ。今度は新華社系の基地外国際紙『国際先駆導報』(『環球時報』よりは電波弱め)の報道です。

 ●印露、売買関係より踏み込んだ軍事協力(新華網 2007/01/29/09:26)
 http://news.xinhuanet.com/herald/2007-01/29/content_5667561.htm

「これまでロシアは領土内で他国の軍隊と共同演習を実施することに消極的だったが、今回インド軍に対してかくもオープンなのは、両国の軍事関係が尋常ならぬ緊密さを帯びていることを物語っている」

 とかなんとか。共同軍事演習などをやって「自分がいちばんの仲良し」と中共が思い込んでいたロシアが、インドともっと仲良くなりつつあることに焦りを隠せないようです。

 最後はオリジナルの新華社電。ただし『産經新聞』などの報道を下敷きにしているようです。

 ●ロシアとインド、二国間関係強化に向け新たな原則確立(新華網 2007/01/29/10:27)
 http://news.xinhuanet.com/world/2007-01/29/content_5668191.htm

 中共政権にすれば何やら「中国封じ込め」が進みつつあるように思えるのかも知れません。どの記事だったか(以前のものかも知れません)、

「こうして国際社会において(米国一極ではなく)多極化が進むのは喜ばしいことだ」

 などと書いているものがありましたが、負け惜しみというか何というか。……そんなに虚勢を張ることもないでしょうに。

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 可哀想ですね。インドが急接近した相手が日本であれば中共系メディアも色々悪態をつけるでしょうに、ことロシアとあってはその機嫌を損じる訳にもいきませんから、引きつった微笑を続けなければなりません。

 ともあれ、こうした諸事情により軍部が中国政治の内圧を高めているような観があることは気になります。独断専行、どうせやるなら北京五輪が吹っ飛ぶくらいのインパクトのあるものを中国本土&朝鮮半島限定でやってほしいものです。

 「コロニー落とし」とか(笑)。




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 のっけから御託を並べさせて頂きます。最近「話の枕」などと称して中国関連のニュースを紹介していて、その分量が結構あるのでエントリー自体がド長文になってしまい、上下編に分けることも増えてしまい誠に申し訳ありません。

 でもちょっとした話題ながら「いかにも中国」と思わせる記事や、後々意味を持ってきそうなニュースもあるので、スルーするにはどうにも惜しいのです。しかしながら単体のエントリーにするには帯に短し襷に長し。なるべく短信になるよう心がけますから、この点につき諒として頂ければ幸いです。

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 まずは先日の弾道ミサイルによる衛星破壊実験について、人民解放軍の現役幹部が思い切ったことを言ってしまいましたね。

 ●中国軍幹部「宇宙の超大国一つではない」(Sankeiweb 2007/01/28/00:10)
 http://www.sankei.co.jp/kokusai/china/070128/chn070128000.htm

 スイス・ダボスでの世界経済フォーラムに出席している中国軍事科学院世界軍事研究部第2研究室の姚雲竹主任(上級大佐)は25日、中国が衛星攻撃兵器(ASAT)の実射実験に成功したことを踏まえ、「われわれの時代に宇宙空間は軍事化されると予測している」とコメントした。
(後略)

 ――

 人民解放軍の現役幹部としては初の言及、しかも米国を牽制する意図がミエミエで剣呑この上ない内容です。最近ちょっと軍部がピリピリしていますね。台湾問題と日本の動きに神経質になっているのでしょうが、党中央による意思統一が徹底していないということで留意しておくべきかと思います。香港紙も報道しています。

 ●『明報』(2007/01/28)
 http://paper.wenweipo.com/2007/01/28/CH0701280031.htm 

 ――――

 2ちゃんねる風にいえば「ちょwwwおまwww」みたいなネタも入ってきています。先日ナイジェリアで中国人5人が誘拐され、指導部がハッパをかけたためか中国大使館が異例によく働いて無事解放にこぎつけました。

 5人は大使館で1日休養した上で帰国、空港では「よかったですね」と花束まで渡されました。
「中国政府は人民を決して見捨てない」みたいな姿勢を誇示したかったのでしょう。昨年パキスタンで発生した中国人エンジニア誘拐・殺害事件でも胡錦涛政権は立派な棺桶に国旗を乗せて厳粛かつ丁重な扱いをしてみせまました。

 ところがですよ。5名が解放されてホッとした気分が中国側に流れたナイジェリアで、わずか1週間後にまた中国人が誘拐されてしまいました。しかも今度は9名(笑)。

 ……笑っちゃいけないんですけど、「おいまた誘拐かよ弱ったな全く」「面倒みきれないぜホント」という空気が役人の間に流れていそうでおかしいです。中国側の対応に注目ですね。

 ●「新華網」(2007/01/18/12:24)
 http://news.xinhuanet.com/world/2007-01/18/content_5621645.htm

 ●「新華網」(2007/01/26/22:07)
 http://news.xinhuanet.com/world/2007-01/26/content_5659351.htm

 ――――

 それから三峡ダムに絡んだ住民移転での汚職問題が浮上しました。農民を代々耕してきた土地から引き剥がして農業を続けられないような土地に強制的に移転させ、一応補償金は出るものの、農民の手に渡るまでにあちこちの党幹部につまみ食いされて実際に手にするのは転業資金にもならないような雀の涙、という「失地農民」の問題は以前から書いていることです。

 ●悪魔の錬金術(2004/12/19)

 で、この三峡ダム建設に伴う住民移転のため計上した予算の流用が発覚してしまいました。総額2.89億元。これはまた壮大なる「つまり食い」です。公金として流用するだけでなく、どうも個人の住宅建設などに使われた形跡もあるようなので、関連部門が調査を開始しているようです。また移転者への補償金支給の目的で受けた補助金1694.32億元は架空申告によるもの。親中紙が新華社電を転載しているので確かな話なのでしょう。

 ●『香港文匯報』(2007/01/27)
 http://paper.wenweipo.com/2007/01/27/CH0701270010.htm

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 ●中国:新幹線が営業運転開始「日本の技術」は隠す(毎日新聞 2007/01/28/20:41)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/afro-ocea/news/20070129k0000m030050000c.html

 【杭州(中国浙江省)大谷麻由美】日本の新幹線技術を導入した新型車両「CRH2型子弾頭」が28日、中国で初めて営業運転を開始した。白い車体、ドアや車内の間取りなど新幹線とうり二つだが、中国メディアは「日本の技術導入」には触れず「中国独自ブランド」を強調している。中国の鉄道事業への日本企業参入には批判が強く、中国政府は新型車両の運行開始で反日感情が再燃することを懸念しているようだ。
(後略)

 ――

 確かに中国国内では全く言及なしという訳ではありませんが、私が目にした関連記事3本はいずれもタイトルで「国産」をうたっており、これは反日感情なのか「中国もここまできた」という「大国化」意識の反映かは察しかねますが、国産強調という点ではほぼ『毎日新聞』の通りといっていいでしょう。以下に新華社電から拾った記事3本。しかしパクリ列車はちゃんと走っても運行システムがどうなっているのかは甚だ疑問です。

 http://hk.news.yahoo.com/070128/12/20rmr.html
 http://news.xinhuanet.com/local/2007-01/28/content_5664678.htm
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2007-01/28/content_5664915.htm

 ――――

 まあこのくらいにして本題にいきましょう。

 ●日本紙がトウ小平の六四武力弾圧の内幕を連載へ
 http://appledaily.atnext.com/

 香港の最大手紙『蘋果日報』(2007/01/28)が唐突に報じたものですけど、孫引きなんですよねこの記事(仕事しろよ糞リンゴ)。『蘋果日報』が米国系ラジオ局RFA(自由亜洲電台)が報じたのを引用しているのですが、元の元は『産經新聞』の「社告」として予告した連載特集記事です。

 ――

 ●「トウ小平秘録」 改革開放の実相 来月14日連載スタート(Sankeiweb 2007/01/26 07:27)
 http://www.sankei.co.jp/kokusai/china/070126/chn070126000.htm

 (前略)1兆663億ドル(昨年12月末現在)という世界一の外貨準備高を記録した中国。この経済発展の突破口を開いたのが、トウ小平氏(1904~97年)でした。今年は没後10年にあたります。
(中略)

 トウ氏は政治面で社会主義と中国共産党の指導性を強調する一方で、経済面では生産力増大を第一とする独特の理論を唱えました。文化大革命時代の失脚を経て権力を握り、改革・開放路線へと大きくかじを切った決断が中国の驚異的な成長をもたらしました。

 半面、膨張経済は都市(富裕層)と地方農村(貧困層)の格差拡大や環境汚染、さらには官僚の腐敗という矛盾の拡大を招いています。世界規模のエネルギー獲得戦略や急速な軍備拡張路線も気がかりです。こうした現代中国の実相を理解するには、トウ氏の足跡をたどる必要があります。

 連載は伊藤正・中国総局長を中心に複数のスタッフが取材、執筆にあたります。第1部の「天安門事件」で、トウ氏がなぜ大衆を弾圧したのか、背景を掘り下げるのを皮切りに6部構成になる予定。ご期待ください。

 ――

 キモは最後の段落、つまり1989年の天安門事件(六四事件)で何が語られるか、です。『蘋果日報』が期待?しているのもそこでして、具体的には4月に訪日を控えた温家宝首相への圧力ではないか、という観測です。……むろんこれも『蘋果日報』のオリジナルではないのですが。

 ともあれ、なぜ温家宝かということになります。

 天安門事件から半月前、北京市に戒厳令が敷かれるころ、失脚確定となった趙紫陽総書記(当時)が天安門広場でハンストを続けている学生たちのもとを見舞うのです。党のトップである総書記であることを考えれば異例中の異例という行為。それだけに印象的なシーンで御記憶の方も多いかと思いますが、ハンドマイクを手にした趙紫陽が、

「済まない。私が来るのが遅すぎた」

 と半ば目に涙をためて切々と学生たちに訴えます。それを正面から撮影した写真・映像で趙紫陽の隣にいるのが当時趙紫陽の下にいた温家宝なんですね。温家宝自身も当時は民主化運動に対し比較的穏健なスタンスをとっていた(まだ小粒な時代ですけど)ことで、この連載第一部でトウ小平の独裁っぷりと温家宝の「変節漢」ぶりが描かれるのではないか、しかもタイミング的に訪日直前だから天安門事件に対する日本側の意思表示として、同事件に対する中国側の位置づけとは正反対であることを強調、温家宝に一種のプレッシャーをかける狙いがあるのではないか、というのです。

 そういえば安倍政権も「民主・自由・人権」を外交における重要な価値観として位置づけています。そう考えると色々深読みができそうな連載で期待が持てますね。どこまで突っ込むのかには疑問が残りますけど。……温家宝もあるいは『産經新聞』に日本政府の影を感じて、来日後に意外と強硬姿勢をとることになるかも知れません。

 ――――

 そういうキナ臭いことは別としても、この時期に天安門事件を振り返ることは日本人の対中認識をより正確にする上でまたとないケーススタディですから私は双手を上げて賛成します。

 江沢民による反日風味満点の「愛国主義教育」を身体全体に浴びて育った世代が天安門事件当時は年少だったためそれを肌で感じることなく、私のいう「亡国の世代」として30代前半から下はすっかり「洗脳」されています。

 ところが、あの愚劣きわまる「愛国主義教育」(まあ愚民教育が基本ですから当然ですけど)こそ受けていないものの、この「天安門事件をリアルタイムで記憶していない」という点は日本の同世代も「亡国の世代」同様なのです。それだけにここで改めて天安門事件を持ち出し、検証することは中共の本質を理解する上で有益といえるでしょう。

 この事件について一言でいうとすれば、私は

中共人がその私兵(人民解放軍)を以て中国人を弾圧した事件」

 と捉えています。社会に問題意識を持ち、国家の現状と行く末に危機感を抱いた大学生や知識人たち「中国人」を、国家より党を優先する「中共人」たちが組織防衛(利権防衛でもありますね)のため、容赦なく完全武装の歩兵に無差別の実弾射撃を行わせ、戦車まで投入したのです。さすがに戦車砲は使わなかったでしょうが、車載機銃は連射に次ぐ連射、そればかりか縦横に走って学生や市民をひき殺して回ったのです。

 それに最後まで断固反対して失脚した趙紫陽は「中国人」だといっていいでしょう。弾圧側のトウ小平や李鵬や楊尚昆は「中共人」。温家宝は風見鶏でただのヘタレでしかありません。ただ反日度は胡錦涛よりかなり高そうな形跡がありますから、この連載の報に青筋を立ててくれれば安倍首相もやりやすくなります(笑)。

 そしてファンタジスタの麻生外相が中共政権の人権問題を叩いたり、改めてEUの対中武器禁輸措置の継続を訴えたりするかも知れません。面白いことになります。

 さらに、温家宝が訪日を終えた直後に李登輝・前台湾総統が来日してくれたらもうたまりません(笑)。軍部のボルテージはいよいよ高まるでしょうし、胡錦涛政権も無視できないでしょう。

 まずは『産經新聞』が温家宝を釣り上げることに期待したいですね。

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 肝心の連載は2月14日スタートですか。こりゃまた粋な日を選んだもんですね。日中友好の建前でいえば、これは日本から中共政権へのちょっと思わせぶりな義理チョコ。しかも毒入りであることはもちろんお約束です(笑)。

 楊枝削りではありませんが、天安門事件について和訳されている書籍では下の本が手際よくまとまっている上に内部資料が織り込まれているという点で白眉かと思います。まだお若い方には一読をお勧めします。その際には「中国人vs中共人」という構図が最も象徴的に現出した事件であることを念頭に読んで頂ければ、と思います。……いや、これは余計なお節介でした。

 ただ、当時の「中国人」たちが憤怒であれ諦念であれ、あの事件を現在に至るまで忘れていないことは覚えておいて損はないでしょう。


天安門文書

文藝春秋

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 例によってまずは短信から。

■黄菊出現。

 陳良宇失脚で累が及んだのかどうか、中国共産党の最高意思決定機関である党中央政治局常務委員会のメンバーである黄菊・副首相の影が薄くなって随分になります。具体的には党中央政治局常務委員が顔を揃える場所に年初から唯一姿を見せていません。それじゃ病気か失脚かというとそうでもなく、割と地味な会議に従来の肩書きで出席し、演説したりしています。

 で、1月25日から26日に北京で開かれた「国家電力監管委員会工作会議」に従来の肩書きのまま黄菊が出席していることが新華社電にて確認されました。一応健在のようですが、地味な場所にしか登場を許されていないかのようです。

 ●「新華網」(2007/01/26/20:41)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2007-01/26/content_5658869.htm

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■2006年のGDP速報値、10.7%成長

 黄菊の動静なんぞよりこちらの方がはるかに大きなニュースです。国家統計局による速報値ではありますが通年で10.7%成長というのは、上半期の全力疾走を結局最後まで続けてしまったということです。しかもGDPを押し上げた要因の多くが中央の措置にかかわらず一向に冷める気配のない固定資産投資熱。

 ●どうする胡錦涛?地方同士の経済的対立が激化傾向。・上(2007/01/23)
 ●どうする胡錦涛?地方同士の経済的対立が激化傾向。・下(2007/01/23)

 ちなみに都市部住民の一人当たり平均可処分所得は前年比10.4%増、農村部の一人当たり純収入は同7.4%増、いずれも実績ベースです。都市と農村の格差という点に着目してもいいのですが、一方でどちらもGDP成長率並みかそれ以下の伸び率でしかないというのは、かなり深刻なことではないかと思います。中国は総人口の僅々20%に富の8割が集中しているという、大雑把にいえばマルクスが生きていた時代の資本主義国家のようなものです。庶民の実感としては生活が苦しくなってきているのではないでしょうか。

 ●「新華網」(2007/01/26/07:27)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2007-01/26/content_5654821.htm

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■温家宝も経済過熱を懸念

 2桁成長とはいえそれが手放しで喜んでいい健康的な経済発展ではなく、畸形化の傾向がますます強まっていることは言わずもがなです。その言わずもがななことに温家宝・首相がわざわざ言及し、固定資産投資を全力を挙げて抑制するようハッパをかけています。

 ●『明報』電子版(2007/01/26/21:40)
 http://hk.news.yahoo.com/070126/12/20qia.html

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■中国茶にも残留農薬。

 広州市で販売されている中国茶につき調査したところ、15%の茶葉から安全基準を超える残留農薬や鉛が検出されたそうです。なるほど重金属茶葉ですか。一方『中国青年報』が報じたところによると、北京、天津、上海、山東、広東など11の省・直轄市の食品メーカー77社が生産・販売している砂糖漬け食品79品目のうち、実に3割近くの23品目にクロ判定。添加剤、防腐剤、漂白剤などが安全基準値を超えていたとのことで、基準値の19倍という恐るべき極悪例もあったそうです。……いやはや。

 ●『明報』(2007/01/25)
 http://hk.news.yahoo.com/070125/12/20nty.html

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■衛星破壊実験続報

 例の中共政権による弾道ミサイルによる衛星破壊実験、バカな時期におバカなことをやったもので、破壊された衛星の破片、いわゆるデブリの問題で世界に迷惑をかけてどうするつもりでしょう。前回のコメント欄で「ひろぽん」さんが、

 ――

■デブリ続報(ひろぽん) 2007-01-26 23:09:56

 ●宇宙に巨大な「破片の雲」 国際ステーションに衝突も
 http://www.47news.jp/CN/200701/CN2007012301000625.html

 (前略)
専門家はデブリが高度約400キロから約3000キロの広い宇宙空間にわたり観測され、この軌道上にある120個以上の衛星が危険にさらされていると強調。軍事衛星のほか、民間衛星へ衝突すれば日常生活に影響が出かねず、国際的にも懸念が広がっている。

 ロイター通信によると、米国防総省関係者は「今回の実験が国際宇宙ステーションも含めて(衛星とデブリによる)衝突の危険性を高めたことは間違いない」と批判した。同ステーションは日本などが参加し高度約400キロの軌道上に建設中。

 普通に洒落にならない状況になってきました。

 ――

 ……と報告して下さっていますが、これ、もし派手な実害が出たら北京五輪が吹っ飛ぶかも知れません。少なくともボイコット国が出て中共政権のメンツ丸潰れということはあるでしょう。

 ――――

■いまさらですが。

 「祭り」になったそうですから皆さん先刻ご承知のことと思いますが、防災、つまり各種災害や震災に備える、というのはこういう制度面もきちんと整備しなければなりません。当時首相を出していた社会党(現在の社民党)が、極端にいえば党利党略のために自衛隊への出動命令を出し渋った。そのために助かる筈の生命が数多く失われた。これは忘れてはならないことです。

 ●阿部知子議員「自衛隊」発言 ネットで「祭り」そして釈明(iza News 2007/01/26)
 http://www.j-cast.com/2007/01/26005163.html

 社民党の阿部知子議員が「自衛隊が阪神大震災の救援に向かったのは数日を経て後のことだった」「自衛隊は防災のためにも働くことも任務であるのに」とメールマガジンなどで発言したことで、ネット上で「祭り」が勃発。阿部議員への批判のカキコミが急増した。

 阿部議員は2007年1月19日、メルマガと自身の公式ホームページで、

 「安倍晋三政権になってから『国を愛する』・国防の強化などの言葉が氾濫し、あたかも外敵から国民を守るために国家の力=軍隊が必要であるかのように宣伝されるが、実は『軍隊は国民を守らない』という事実は戦争を通して如実に示されてきた」

 「阪神大震災は12年目を迎えたが、国民を災害から守ることを任務とされているはずの自衛隊が、国による命令を受けて救援に向ったのは、数日を経て後のことであった。日本の場合、自衛隊は軍隊ではないし、国土保安隊として出発し、防災のたねにも働くことを任務としてきた特別な生い立ちがあるのに、である」

 などと発言した。この発言を受け、2ちゃんねるを中心としたネット上では「お前らの党が政府を牛耳ってた頃だろうが!もっと早く動いてりゃ、助かった人は多いんだ!」など、当時は社会党の連立政権だったにも関わらずどうしてそんなことがいえるのか、といった批判の声が噴出した。
(後略)

 「祭り」が報道用語として定着していることにもビクーリしましょう。

 ――――

 さて、今回は枕をいくつも並べておいて主題は告知です。ただ日本人にとっては重要なことです。

 今年2007年は南京虫事件70周年ということで中共の後押しもあり関連映画がいくつか公開される予定ですが、これに対し、日本からは「歴史の改ざんは許さん」という趣旨から南京虫事件説に反駁する映画を制作する、という動きが立ち上げられました。

 「cruncher」さんからのコメントに拠ります。……以下引用。

 ――

■南京の真実(仮題) (cruncher) 2007-01-25 12:45:25

 はじめまして。いつも楽しく、興味深く拝読しています。

 エントリ内容とは直接関係ないのですが、日本側の資料を基にした南京攻略戦の映画作成が始まったようです。

 http://www.nankinnoshinjitsu.com/

 なぜか嫌韓系ブログで話題に上っていたのですがこちらにも関心のある方がいらっしゃると思いましたので。

 ――

 ……引用終了。リンク先で詳細がわかります。実に心強くも頼もしい話ではありませんか。一面、情けなくもあります。本来、こういうことは日本政府が予算を計上して映画制作及び宣伝活動を大々的にやるべきなのに、こういう言い方はよくないのですが「泡沫」ともいえる勢力がやむにやまれず立ち上がった、というところに日本の病根のひとつがみてとれるかと思います。

 皮肉なことに、日本政府が腰を上げようとしないうちから、このニュースは叩かれる形ながら、中共系メディアはもちろん、香港各紙及び台湾メディアによって報じられ、報じられたために認知度が高まって瞬く間にずしりとした存在感を持つようになっています(笑)。

 ……そしてここでリンクを並べたいところなのですが、あいにく愛機パワブクを思い切って最新機種に切り替えたところです。それでまだちょっと混乱していて資料が出てきません。とりあえず今日拾ったものを。

 ●「新華網」(2007/01/26/07:38)
 http://news.xinhuanet.com/world/2007-01/26/content_5654899.htm

 あとは「日本 右翼 南京」で検索すればいくらでも出てきます(笑)。日本より中国での知名度が高くなっていることは確かでしょう。

 ――――

 変に扇情的なものではなく、主題は淡々と「歴史」を描くということでいいと思います。それから中共が「歴史観」をこねくり上げて政治宣伝はおろか外交カードまで使っていることにも最後にふれてほしいです。

 ちょっと話題からズレますがこういうニュースがありました。必読です。

 ●日印台シンポジウム開催(Sankeiweb 2007/01/26/20:36)
 http://www.sankei.co.jp/seiji/seikyoku/070126/skk070126003.htm

 アジア地域の民主的海洋国家を代表する日本とインド、海洋安全保障上の要・台湾の国防相経験者らが参加した「日印台海洋安全保障シンポジウム」(NPO法人岡崎研究所主催、産経新聞社後援)が26日、都内で開かれた。シンポジウムは3つのセッションとパネルディスカッション、昼食会で構成され、国会議員や元政府高官、元将官らが活発に議論した。
(後略)

 ――

 最後に速報を。

 ●河野談話見直し始動 歴史教育議連、訪米も計画(産經新聞 / Yahoo! 2007/01/27/08:01)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070127-00000013-san-pol

 慰安婦募集の強制性を認めた平成5年の河野洋平官房長官談話の見直しを検討している自民党の「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」小委員会は26日、本格的に活動を開始した。米下院で慰安婦問題に対する誤解に基づいた対日本非難決議案が提出される動きがあるため、中山泰秀小委員長らが早期に訪米し、採択阻止を目指すことを決めた。
(中略)

 安倍晋三首相は昨年の臨時国会で、政府として「河野談話」を踏襲する考えを示したが、旧日本軍による直接募集という「狭義の強制性」は否定した。「首相の本心は河野談話を踏襲することではない」(同会メンバー)とされ、政府が河野談話の見直しに踏み切れるよう側面支援していく考えだ。

 また、同会は「南京事件」から70周年の今年、同事件を題材にした映画が公開されることを懸念し、新たに小委員会を設けて誤解を解く運動を行う方針。中山成彬会長は「中国で外国人観光客が誇張、偽造された日本兵の残虐な行為の展示物をみれば、日本人へのイメージダウンになる。言うべきことを言わないと、真の日中友好ははかられない」と述べた。

 ――

 頑張れ。みんな頑張れ。そして私たちも日本人としていまできることは何か、改めて自問自答しようではありませんか。




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 中共政権の最高指導者・胡錦涛(国家主席+党総書記+党中央軍事委員会)にとって最大の抵抗勢力であったと思われる上海閥が事実上潰されたのは記憶に新しいところです。上海のトップで上海閥の次世代を担うと目されていた陳良宇・上海市党委員会書記(当時)が昨年秋に汚職で失脚させられたからですね。

 上海閥に属する現役の政治家は党の最高意思決定機関・党中央政治局常務委員会に名前を連ねていますが、この連中が現役から退いたあとの「お世継ぎ」になる筈だった陳良宇が潰されたため、事実上、次の時代には「御家断絶」となることが確実になったからです。

 で、潮目を見るに敏な奴というのはどこにでもいるもので、上海閥の現役最有力者だった筈の曽慶紅・国家副主席(党中央政治局常務委員)がどうやら裏切って胡錦涛サイドを支援して大いに働き、陳良宇失脚に道を開いたといわれていますが、実際のところはわかりません。

 ただ、関ヶ原の合戦における小早川秀秋のような存在がいなければ、胡錦涛もあれほどの荒療治はできなかったでしょう。上海市は現在、胡錦涛サイドの「進駐軍」によって管理され、「独立王国」の解体が進んでいます。

 同時に上海閥にとって求心力の最大の基礎であった利権をめぐる摘発も続行中。「お世継ぎ」が絶えたことと、城攻めでいう水の手を奪われたことが上海閥の死命を制したといえるでしょう。……どうも御家人風味だと時代劇めいてしまっていけません(笑)。

 ――――

 で、「お世継ぎ」抹殺=陳良宇失脚で活躍したとされる曽慶紅がその武功に見合うポストをくれ、ということで国家主席の地位を譲るよう胡錦涛に求めている、という消息筋報道が『争鳴』2006年1月号に掲載されたそうですね。そう勘ぐることのできる動きが中共政権内にない訳ではありませんが、当たるも八卦の香港情報ですからねえ。

 もし私が香港在住であれば、素人であることを構わずに1月号の発売早々『争鳴』編集部へ乗り込んでいたと思います。素人とはいえ一応現地での副業はコラム屋ですし、コラム屋であっても畑違いで連中の縄張りを荒らす訳でもありませんから、意外と親切に色々教えてくれるものなのです。

 前回、トウ小平の人生最後の権力闘争だった1992年の南方視察にちょっと触れましたが、あのとき香港在住だった私はトウ小平出現をスクープした『明報』記者にも突撃したところ、深セン市政府関係筋の信頼できる情報だったのだ、とか飲茶をしながら色々話してくれました。

 香港情報というのは「この雑誌なら信頼できる」というものはありません。「この人の報道なら確度は高いかも」という見方はできますけど、どこからの情報かということでその確度にもバラつきが出ます。そこら辺をそれとなく確認して自分なりに判断していく必要があります。最後の決め手は、やはり中共系メディア(しかも中国本土)が消息筋情報を裏付けるような報道をすることです。

 実例を挙げておくと、この点で素晴らしい確度を示したのが2005年春、中国本土における反日騒動に際して党内部の動静を着々と的確に報じた『明報』の消息筋情報でした。何せ報道してから数日後にそれを裏付ける報道が中国国内で流される、といったことが続きまして、あれほどの見事な働きはまれに見るものだと思います。

 ――――

 そして曽慶紅の「国家主席にしてくれ」報道に関してはどうかといえば、報道者や消息筋に関する確認はおろか、『争鳴』の原文すら目にしていない私には何ともいえません。しかも月刊誌ですから出てくる情報は最悪2カ月遅れ。

 ただ中共系メディアはまだ十分なシグナルを示してはいないように思います。まあ全ての決まる党大会(国家主席や首相などのポストは党と無関係ながらここで内定が出ます)までまだ半年以上。時間はたっぷりありますから、これからも色々な情報が乱れ飛ぶことでしょう。

 というより早くも別口の消息筋情報が出てきています(笑)。

 ●曽慶紅、賈慶林の跡継ぎ来年政協主席に就任か(星島日報電子版 2007/01/25/17:28)
 http://hk.news.yahoo.com/070125/60/20nmc.html

 これは『亜洲週刊』による消息筋報道です。「政協」とは全国政治協商会議のことで、中国共産党員でない人の代表の集まり。立法提案権などもありますが中共に対するチェック機能としては全く機能しておらず、その主席職は指導部レベルまで登り詰めた政治家が最後にあてがわれる名誉職のようなものです。

 この消息筋情報によると、「国家主席にしてくれ」というのは荒唐無稽で、現在全方位外交を展開している中国の国家元首の座を胡錦涛が譲る訳がない、としています。この点には一応説得力があります。なお、現在曽慶紅が主管している香港・マカオ関連事務も、重要案件に関する決定は依然として胡錦涛・温家宝(首相+党中央政治局常務委員)らから出ているとのことです。

 『争鳴』とは正反対の内容ですが、これはこれで自分なりの判断が下せないため紹介するにとどめます。ちなみに『亜洲週刊』は以前、死者3桁の炭鉱事故連発や相次ぐ農民暴動や官民衝突といった不祥事続きの広東省トップ・張徳江・省党委員会書記(党中央政治局委員を兼任)を中央が更迭するという消息筋情報を流して見事に外しています。

 ただ「当たるも八卦の香港情報」ですし、前述したように「この雑誌が掲載したのだから確かだ」とはいえませんから、こちらは日課である中共系メディアの動きを注視する作業を重ねていくのみです。……結局、ここに行き着きます。

 ――――

 ときおり書いていますが、私は大学時代、大学図書館で毎日のように香港の『争鳴』『九十年代』、反体制系の『中国之春』、また台湾・国民党系の『中共研究』を読みふけっていました。……その後、卒論を書く段になって第二の恩師ともいうべき経済学部のA先生に学部違いながら主査をお願いし、副査には恩師になってもらいました。

 A先生にはそれ以前から色々と教えてもらっていたのですが、印象的だったのは最初のころ、

「あんた、普段どんなのを読んでるんだ?」

 と尋ねられたことです。当時、上記政論誌に目を通すのは学生では私くらいでしたから、私は半ば勢い込んでそれらの雑誌の名前を挙げました。……するとそのA先生は、

「そうかあ。がんばっているなあ。でもそういうものを読んでいてもなあ」

 と独りごちるように口にしたのです。その瞬間に私はハッとして、私なりに「ああそうか」と察しました。そして、その後は政論誌にも目を通すものの、やや眉唾気分で読むようにして、より多くの時間を『人民日報』など中共系メディアを読むことに割くようになりました。

 このA先生の一言、当人は何気なく口にしただけで、仮にいまお会いしてそのことを話しても記憶の片隅にもとどめていてはくれないでしょうが、私にとっては正に千金の価値がある一言で、これにはいまでも本当に感謝しています。

 突き詰めれば、結局いちばん頼りになるのは「当局発表」であり、必要なのは経験と知識の蓄積、そしてセンスに裏打ちされたその行間を読む眼光なのだ、というのが私が察したことの第一です。

 第二点は香港情報は「当たるも八卦」だから必要以上に身を入れる必要がないし逆に毒になる、ということです。これは例えるなら数学の問題集を解答をみながら埋めていくようなもので、自分なりの思考力が育たなくなる弊害があります。この弊害こそ何よりも怖いと思いました。

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 でも「当たるも八卦」な分だけ面白い読み物になっていますから、あくまでも話半分の読み物として、斜に構えながらも楽しく読んでしまいます。とりあえず時事評論の読解力・作文力の良き教材であることは確かです。

 こういう話題を書いているとつい思い出すのは、ちょうど15年前のいまごろ、トウ小平が深センに出現したときの衝撃です。当時私のチナヲチ(素人の中国観察)には相方がいて、1989年の民主化運動で某省省都の学生リーダーとして活躍し、6月4日の天安門事件後は民主化団体のルートで香港に脱出してきたL君でした。

 ふとしたことで知り合い、すぐに「同好の士」かつ「民主化運動の戦友」として仲良くなりました。いや、L君は住む場所がなかったので某政論誌の編集部に寄宿しており、寄宿しているだけでなくそこの編集者として働いていましたから、向こうは素人ではありません。

 常々情報交換を怠らなかったのですが、ある日残業を終えて0時近くに帰宅したとき、電話でトウ小平出現を急報してくれたのがこのL君でした。

「趙紫陽が復活するという噂も出ている」

 と言うのでテレビをつけてみたらちょうど夜のニュースが終わるところで、復活説によって香港の株価は軒並み上昇し、ハンセン指数がはね上がった……という意味らしいことを伝えていました。香港に来て間もない当時だったので広東語は不得手だったのです。

「御家人、会って話そう。いま出られるか?」

「もちろん出られる。近くに24時間営業のレストランがあるからそこで会おう。お前んとこからも歩いて15分で来られるだろう?」

「わかった。すぐ出る」

 というやり取りのあと、コーヒーお代わり自由のファミレスめいた湾仔(ワンチャイ)のレストランでL君と合流し、ポテトフライを何度か頼みつつ、コーヒーを飲みながらスタンドに新聞が並ぶ朝まで二人して夢中で色々と話したのを昨日のことのように覚えています。

 翌日は徹夜明けの出社となりましたが、もう内心は「流れが変わる。政変だ」と事態に興奮してしまっていて、仕事もロクに手がつきませんでした。チナヲチも深間にはまれば世間から堕ちることは必定。皆さんは決して真似しないようにして下さい(笑)。




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「上」の続き)


 ……しかしですよ。
「いかなる国への脅威ともならないことを強調しておきたい」なんて白々しい嘘吐くんじゃねえこの糞デブが。

 ――

 ●中国の衛星破壊実験で破片が多数発生、危険性を憂慮(読売新聞 2007/01/20/22:29)
 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20070120i416.htm

 【ワシントン=増満浩志】中国による衛星破壊実験を巡り、米団体「憂慮する科学者連盟」は19日、「衛星に当たると破壊力のある1ミリ以上の破片が200万個発生した」との試算を発表、実験でばらまかれたとみられる破片に対する懸念を示した。

 実験で衛星が破壊された約850キロ付近の高度には、衛星の数が限られる静止軌道(高度約36000キロ)と違い、世界各国の人工衛星が多数回っている。
(後略)

 ――

 ……脅威は軍事的なものばかりではないのです。中国によるこのゴミまき散らしはその国民同様、ゴミのポイ捨て、禁煙ゾーンでの喫煙と吸い殻の投げ捨て、行列無視、花壇で子供に大小便させる……といった行為で、これまたその国民同様、それが悪いこととか他人に迷惑をかけているという観念が欠落しているようですね。

 それから今回の記者会見では「人民網日本語版」が故意かどうかは知りませんが、取り上げていない部分があります。

 ――

 記者
「台湾当局は今日、大陸が行った宇宙実験について懸念を表明し、大陸が宇宙での覇権を狙っていると指摘したが、これについての見解をうかがいたい。また中国は最近殲-10戦闘機を公開した。台湾当局はきょう、中国の軍備状況について論評しているが、これについてどう思うか?」

 デブ
「私は宇宙実験に関する質問と台湾問題を結び付けたくはない。それから中国が戦闘機開発を強化しているとの質問。一つの中国という原則を持った人、台湾独立に反対する人、中国分裂に反対する人は、この問題について心配する必要はないものと私は考えている」

 ●「新華網」(2007/01/23/20:26)
 http://news.xinhuanet.com/world/2007-01/23/content_5643769_3.htm

 ――

 中共政権を「大陸」と呼んでいることから、質問者は香港か台湾の記者かと思われます。その言葉に反応してしまったのかどうかは知りませんが、「そういう質問は台湾事務弁公室へ聞いてくれ」と鷹揚に流すことなく、ちょっと感情的なリアクションになってしまいました。

 いずれにせよ、対応の遅さと歯切れの悪さは「胡錦涛に知らされていない独断専行の実験だったのでは?」という印象を国際社会に与えてしまいました。しかもやらかしたことは中国の軍事的台頭を懸念する声が強まる性質のものであり、実際に日米はじめ多くの国が懸念表明を行っています。

 いままで散々アピールしてきた「平和崛起」(平和的台頭=平和的な大国化)が一気に霞んでしまうようなインパクトを伴う事件でした。その意味では原潜の日本領海侵犯以上の減点であり、中共政権を束ねている胡錦涛には、その掌握力に疑問が呈されたことも含め、実に痛い出来事となりました。

 ――――

 それからこれ。

 記者
「日本メディアは23日、胡錦濤国家主席の年内訪日の可能性は低いと報道したが、事実か。温家宝総理が日本の国会で演説するとの報道もあるが、事実か。温総理の訪日日程は」

 デブ
「われわれは、両国のハイレベル交流に関する外部のさまざまな憶測に注意しているが、中には根拠に乏しいものもある。中国は日本とのハイレベル訪問の再開を喜ばしく思っているし、双方共にこれに前向きだ。交流と相互訪問の具体的な内容については、両国関係の発展の必要、日程調整、共通の願いに基づき、外交ルートを通じて決定されるのを待たねばならない。温総理は今年春に日本を公式訪問する。中日善隣友好関係の継続的な改善と発展、現在の中日関係の改善と発展の流れの維持、各分野の互恵協力の深化が重点となるだろう。日本各界の人々と幅広く接触するはずだ。具体的な計画については、外交ルートを通じた調整がなお必要だ」

 ●中国、日本とのハイレベル交流の再開を歓迎(人民網日本語版 2007/01/24/09:54)
 http://j.peopledaily.com.cn/2007/01/24/jp20070124_67193.html

 原文はこちら。

 ●「新華網」(2007/01/23/20:26)
 http://news.xinhuanet.com/world/2007-01/23/content_5643769.htm

 「年内訪日の可能性は低い」と訪中した日本の小坂憲次・文部科学相に語ったのが、江沢民の息がかかっているとみられる曽慶紅・国家副主席と唐家セン・国務委員だけに憶測を呼んでいます。

 なにせその前に訪中した公明党の太田昭宏・代表が1月8日に胡錦涛と会見した際「6月訪日」を提案し、胡錦涛がそれを快諾しているのです(『蘋果日報』2007/01/24)。曽慶紅と唐家センはそれにおっかぶせるようにして正反対のコメントを出し、胡錦涛の一諾を「食言」化してしまったので「やっぱり政争?」という見方が当然出てきます。

 香港の中国情報紙『争鳴』1月号が「曽慶紅が陳良宇失脚で働いた見返りに国家主席の座を明け渡すよう胡錦涛に求めている」という消息筋情報を紹介したようですが、あいにく私はその原文にまだ接していないので何ともいいようがありません。

 最近ご質問を頂いている「胡錦涛暗殺未遂?」事件についても同様です。香港紙が報じたとされていますが、「紙」すなわち雑誌でなく新聞であるなら、私が見落としていない限り、そういう記事を目にしたことはありません。

 胡錦涛訪日については政争に結び付ける見方があってもいいでしょうが、温家宝が4月に来日すること、それから安倍首相の対中姿勢が中共政権からみれば最近、とみに挙動不審だという要素も考える必要があるのではないかと私は思います。

 EUの対中武器禁輸措置の解除反対を訪欧時に遊説し、自民党の党大会で靖国参拝継続が運動方針に明記され、安倍首相自身は参拝について「明言しない」と語ったことなどから、中共側は「安倍路線」に対するある種の見きわめ、あるいは胡錦涛訪日を外交カードとして使うために流動的な姿勢に転じたと考えることもできるのです。

 ――――

 なるほど衛星破壊実験で胡錦涛はアンチグループとの取組で土をつけてしまいました。ただそれ自体は胡錦涛にとって致命的な打撃にはならないこと、そして全体を見渡せば、胡錦涛の提唱する「科学的発展観」に基づいた経済政策や汚職摘発、風紀粛正、政治教育がいまなお行われていることから、今回のタイトルに織り込んだ「されど胡錦涛優位は変わらず」といったところではないかと私は考えています。

 胡錦涛はトウ小平が存命中に江沢民の後継者として直々に指名した時点から、江沢民に対しアドバンテージを持っていたといえます。江沢民がトウ小平の遺言に反して自ら後継者を指名することは困難でしたし、実際にそれが果たせぬまま江沢民は2004年9月までに軍権も含めて最高指導者としての職を全て胡錦涛に渋々譲る形になりました。

 ただ党すなわち中共政権の最高意思決定機関である党中央政治局常務委員が江沢民の引き立てた上海閥によって過半数を占められていたこと、また軍権を譲って引退したといってもそれで軍部への影響力を全て失った訳ではありませんから、院政を敷く甲斐性こそないものの江沢民やその子分たちは色々な形で胡錦涛をイジメることはできますし、実際に2005年春の反日騒動を含め、イジメめいたことが色々と行われました。

 しかし、胡錦涛はそれをしのぎ、ポストから追われるような大失敗をやらかすこともなくこの2年余りを乗り切ることに成功しました。その過程では軍主流派と同盟ともいえる共闘関係を構築し、上海閥の次世代トップである陳良宇・前上海市党委員会書記を失脚させることで、次世代における上海閥の御家断絶を実現するに至りました。

 幾度にもわたる取組でときどき土をつけられながらも、胡錦涛は星取表において辛うじて優勢を保ってきたといえます。3勝2敗ペースが4勝2敗ペースとなり、さらに3勝1敗ペースへと勝率を高めてきたのがこの2年余です。

 繰り返しになりますが、経済政策をはじめとした諸政策が胡錦涛路線で維持されている限り、胡錦涛は優位を確保しているとみていいかと思います。「暗殺」説というのは、もしそれが事実なのであれば、これほど胡錦涛の政権基盤が固まりつつあることを示す出来事はありません。

 暗殺というのは政治的手段としては愚策です。もはや並の方法では大局を転換できず、胡錦涛の生命そのものを潰すことで打開を図ろうというものですから。……つまり暗殺者側にとって、暗殺の対象である胡錦涛がそれほど手強いということなのです。ヒトラーにして然り、私の御先祖様が参加した桜田門外の変もまた然り、です。

 ――――

 ちなみに、毛沢東が死去し、1978年の第11期3中全会(中国共産党第11期中央委員会第3次全体会議)で改革・開放路線が定まって以来、中国政治は権力闘争や主導権争いの連続であり、1980年代の改革派vs保守派、1990年代の江沢民派vsアンチ江沢民勢力、そして現在の胡錦涛サイドvs反胡錦涛諸派連合といった綱引きが常に行われています。ただ、いずれの争いにおいても一方が完勝するという結果にはなっていません。潰し残しが必ず出てしまいます。

 その結果として、どちらの側が優勢になろうとも、5年に1度開かれ、大型人事や世代交代が行われる中共の一大イベントである党大会(今秋開催予定)では、必ず一種のバランス人事が行われ、劣勢の側でもそれなりの人数が相応のポストを割り当てられます。この約30年、人事が優勢側一色で染め上げられたことは一度もありません。

 トウ小平がカリスマ視されるようになったのも、口うるさい政敵が次々に物故して束縛から解かれ、また天安門事件で自ら血しぶきを浴びた凄みも加わった江沢民時代以降の話で、1980年代のトウ小平は「毛沢東のような皇帝ではない。最も有力なバランサーにすぎない」という見方がなされていました。実際に1980年代のトウ小平は保守派の攻撃によって子飼いの若手に詰め腹を切らせたことが何度かあります。

 やや劇的な事例を過去に求めるなら、1987年の第13回党大会でしょう。「胡耀邦総書記・趙紫陽首相」という改革派コンビで新年を迎えてほどなく、学生デモなどの責任を問われて胡耀邦が失脚、その跡を趙紫陽が継いで総書記になるという異常事態に見舞われたものの、改革・開放政策を基本路線とすることは維持され、党大会では趙紫陽が政治改革をも含めたさらなる改革推進を打ち出すという「改革派勝利」の結果となりました。ただし、そこで行われた人事では保守派にも一定の配慮がなされました。その代表格が李鵬であり、翌年の首相就任内定が出ています。

 あるいはよりドラマチックなのかも知れないのは1992年です。1989年の天安門事件で趙紫陽らが失脚し、トウ小平は上海市のトップだった江沢民を総書記へと大抜擢します。経済的な混乱もあって3年間は政治・経済とも引き締め政策が続けられたのですが、ちょうど15年前のいまごろ、トウ小平が突如として経済特区であり改革・開放の象徴的都市だった深セン市に現れ、各地を視察しつつ改革再加速の大号令を発したのです。それによって政治路線も経済政策も一大転換を遂げ、政治勢力としての保守派は事実上潰滅してしまいました。

 しかしそれでも、同年秋に行われた第14回党大会での人事はトウ小平の思惑に照らせば100%意中の通りとはいえませんでした。その証拠に、この政策大転換によって無能の呼び声が高かった李鵬首相は任期の切れる翌年春に身を退き、朱鎔基が首相に就任する。……という観測が一般的だったのですが、その1993年春の全人代(全国人民代表大会=立法機関)では意外にも李鵬の続投となりました。首相候補として挙げられたのが李鵬だけなので信任投票の形になりますが、このときの反対・棄権票の多さはたぶん現在に至るまで破られていない記録でしょう。

 ――――

 ……こういう前例に照らせば、今秋の党大会における人事でも胡錦涛の全く思い通りとはならず、対抗勢力の有力者も引き立てるバランス人事になる可能性が大きいかと思います。胡錦涛が優位にあるかどうかは、中央の掲げている各方面の政策で胡錦涛カラーが打ち出されているかどうかをみればわかります。現時点に照らしていえばタイトルのように、

「寄り切り、寄り切ってアンチ組の勝ち。――されど胡錦涛優位は変わらず」

 という状況だと私はみています。金星ですから座布団が飛び交っているでしょうけど(笑)。




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 1日時勢から離れると話の枕がたまって始末に負えませんね。いずれもスルーするには惜しいものなのでサクサクと片付けてしまいましょう。

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 ●年内に農村人口3200万人が安全基準を満たさぬ水にサヨナラ(新華網 2007/01/21/07:28)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2007-01/21/content_5631194.htm

 全国水利規画計画工作会議で発表されたもので、2007年中に全国で3200万人の農村人口が安全基準に達しない水質の生活用水から解放されるとのこと。つまり少なくとも現時点で中国には最低3200万人が「水めいたもの」を生活用水として使用していることになります。

 ただこういう境遇にあるのは農村人口の3分の1とかいう記事を前にみた記憶があるので、年内に救済されるのはそういう人たちのうちわずか1割前後ということになります。「安全基準を満たさぬ生活用水=水めいたもの」ってどういったものなんでしょうか?ちなみに昨年(2006年)は2897万人が救済されたとのこと。

 政府が実績を誇っている記事なんですけど、どうせならまだ救われていない人が何億人くらいいるのかも言及してほしかったです。というより普通それも記事に織り込まれますよね、日本なら。地味ですけど「報喜不報憂」(都合の悪いニュースは報じない)という中共系マスコミの典型的な報道パターンです。

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 ●広西チワン族自治区、年産3万トン以下の炭坑は年内に全て閉鎖へ(新華網 2007/01/23/15:40)
 http://news.xinhuanet.com/local/2007-01/23/content_5642424.htm

 これも何やら積極的に働いています、という印象を与える記事ですけど、「年産3万トン以下の小型炭坑」といってもそれはたぶん政府から営業免許をとって操業している正規炭坑であって、闇炭坑はこれに含まれないでしょう。もちろん発見されれば直ちに閉鎖されるでしょうが、それは要路への袖の下が満足でない場合だったりして。

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 ●中国のネットユーザー総数が1.37億人に(新華網 2007/01/23/22:15)
 http://news.xinhuanet.com/tech/2007-01/23/content_5644141.htm

 中国互聯網信息中心(中国インターネット情報センター)が1月23日に発表した統計。ネット人口が昨年末時点で1億3700万人に達し、これは前年同期費2600万人増で23.4%成長。このうちブロードバンド利用者は1億人を突破
して1億400万人。どういうブロードバンドかは知りませんけどね。それから携帯からネットにアクセスする人も1700万人に達したとか。

 ともあれ中国のネットユーザー数は総人口の10.5%に到達。でもそれと同規模かあるいはそれ以上の数の文盲がいることはしっかり覚えておきましょう。なお首都・北京市でもネット普及率はようやく30%を超えたところだそうです。

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 ●2月からゴールデンは「主旋律ドラマ」に統一せよとの通達(新華網 2007/01/22/07:03)
 http://news.xinhuanet.com/newmedia/2007-01/22/content_5637208.htm

 これは結構重要なニュースのように思います。通達を出したのは広電総局。テレビ・ラジオ・CMなどの監督指導を行う部門です。2月1日から最低8カ月は、ゴールデンの時間帯にテレビは必ず「主旋律ドラマ」を放映しなければいけない、というもので、駄作の氾濫を防ぐという名目とともに、去年この時間帯から外国製アニメ(実質的には日本アニメ)が締め出されたのと同様、当局のおメガネにかなうドラマだけの放映を許可する、というものです。

 このために広電総局は4段階審査制度を新たに導入。例えば省レベルの地方局がゴールデンの時間帯に放映するドラマを決めると、それを放映1カ月前に省の広電局へ申請。この申請は省の広電局から省の宣伝部に回され、認可されたら今度は全国部門の広電総局の審査をパスし、最後には党中央宣伝部文芸局がOKを出してようやくゴーサイン、というものです。中央宣伝部のハードルを超えられるドラマですから、その内容はほぼ想像できるかと思います。

 いかにも胡錦涛のやりそうなことです。

 ――――

 さて本題。先日恩師に電話したらちょうど大相撲千秋楽の表彰式をテレビで観ていたようで、

「ああ君が代。いいですね。朝青龍もちゃんと歌っているのもいいですね。それから菊の御紋……」

 さすがは漢族大嫌いで国籍も中国から日本籍に転じただけのことはあります。君が代とか菊の御紋とかいうのは恩師が特殊な経歴の持ち主だからで、さる筋との縁も深く、例えば中国語の弟子ということでいえば、秋篠宮夫妻は私の弟弟子・妹弟子ということになるそうです。もちろん私は会ったことなどありませんけど。

 日本語で初等教育を受けているので台湾の老世代のような丁寧で歯切れのいい日本語(恩師に言わせるといちばんきれいな日本語を話すのは李登輝・前台湾総統だそうです)を使い、戦時中は千人針や慰問袋の経験もあって、前に電話で「海ゆかば」を合唱してしまいました(笑)。

 でも恩師は大真面目で、今度一緒に靖国神社に参拝しましょうとそのとき約束しました。電話を切るとき、

「こんなに心が洗われるような清々しい気分になった電話は何年ぶりかです」

 とお礼まで言われてしまいました。いまでも「一緒に参拝」を楽しみにしているようなので、花見も終わって気候もよくなる5月くらいに実行しようと考えています。

 恩師に言わせると、靖国神社の境内に入ると自然に背筋がピンとするような気持ちになるそうです。

 ああまた余談に流れてしまいました……。orz

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 胡錦涛をめぐるあれこれを考えていたらふと大相撲を思い出したので今回は「寄り切ってアンチ組の勝ち」という標題になりました。……とは、1月23日の外交部報道官記者会見で中国が弾道ミサイルによる衛星破壊実験を行ったことを初めて事実として認めたからです。

 ●衛星破壊ミサイル実験:当局もメディアもちょっと変。・上(2007/01/21)

 初動期における外交部の対応が、

「中国側は関連報道に留意しているが、詳細は知らない」

 と及び腰で、事実確認にも応じなかった=肯定も否定できなかったのでどうも独断専行のニオイがすると上記エントリーで指摘しました。ただ弾道ミサイルで衛星破壊というのはただ事ではないので軍部でも実戦部隊ではなく高級司令部のゴーサインが出ているであろうこと、あるいはアンチ胡錦涛ともいえる政治勢力がそれを後援している可能性があること、なども指摘した通りです。

 で、結局外交部がズルズルと実験を認める仕儀に至ったたということで、今回のこの取組はアンチ胡錦涛グループの「寄り切り」勝ちなのです。……ともあれその記者会見。報道官はキモヲタデイブの劉建超です。

 ――――

 記者
「宇宙実験の実施状況について、中国側が米国のヒル国務次官補に通報したとの報道があるが、事実か」

 デブ
「中国はこのほど宇宙で実施した実験について、米国を含む関係国にすでに通報した。われわれはここで、中国は一貫して宇宙の平和利用を主張し、宇宙の軍事化や軍拡競争に反対していることを強調しておきたい。中国はこれまでも、そして今後も、いかなる形の宇宙軍拡競争にも参加することはない」

 記者
「日本の塩崎恭久官房長官は23日午前の記者会見で、中国が実施した宇宙実験について、『中国がきちんとした説明をしたとは思っていない。説明を求めたい』と述べた。中国は今後も実験を継続するのか」

 デブ
「実際には、われわれはすでに日本側に通報している。日本がほかに何を必要としているのかわからない。日本側が意見交換したいのなら、歓迎する。2番目の質問だが、再実験の計画があるとは聞いていない」

 記者
「中国が実施した宇宙実験は、宇宙の軍事化に反対するという中国の原則に矛盾するのではないか。中国政府が、実験後かなり経ってから、ようやく外国政府や海外の報道機関に説明を行った理由は何か」

 デブ
「中国側はこの問題において、隠すようなことは何もない。事実、各国が懸念を表明した後、中国側は今回の宇宙実験に関する状況を、速やかに関係国に伝えた。宇宙の軍事化と軍拡競争に反対するという中国の原則的立場には、いかなる変更もない。中国は引き続き宇宙の非軍事化を推進し、宇宙における軍拡競争を防止していく。われわれは宇宙の平和利用を主張する。同時に、今回の実験はいかなる国を標的にしたものでもなく、いかなる国への脅威ともならないことを強調しておきたい」

 ●中国の宇宙実験、米国側にすでに通報 外交部(人民網日本語版 2007/01/24/09:59)
 http://j.peopledaily.com.cn/2007/01/24/jp20070124_67194.html

 ●中国の宇宙実験、日本側にもすでに通報(人民網日本語版 2007/01/24/10:43)
 http://j.peopledaily.com.cn/2007/01/24/jp20070124_67195.html

 ●中国の宇宙実験はいかなる国も標的にせず 外交部(人民網日本語版 2007/01/24/13:20)
 http://j.peopledaily.com.cn/2007/01/24/jp20070124_67207.html

 苦しい対応を迫られていますが、一応「高々と自らの正当性をうたい上げ、わが身は公正かつ清廉潔白だと強調する」いつもの高飛車スタイルに戻っています。ちなみに原文はこちら。

 ●「新華網」(2007/01/23/20:26)
 http://news.xinhuanet.com/world/2007-01/23/content_5643769_1.htm
 http://news.xinhuanet.com/world/2007-01/23/content_5643769_2.htm
 http://news.xinhuanet.com/world/2007-01/23/content_5643769_3.htm



「下」に続く)




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 仕事が突如忙しくなりまして、今日は予定していたテーマに取り組む余裕がちょっとありません。気が付けば1月も下旬。……ということは旧正月(今年の旧暦の元日は2月18日)を控えた昨年末の「日本側年末進行」に続く「香港・台湾側年末進行」が近づきつつあるということなのです。戦々兢々。

 旧正月向け制作物も追い込みにかかりますし、コラムを連載している香港の週刊誌も3週間で5号分を仕上げてしまうという無理だろそりゃ態勢。昨夜(1月23日)そのスケジュール表が送られて来て愕然としているところです(笑)。

 雑誌は競争が激しいので日本のように合併号なんてヤワなことはせず、年間52回ちゃんと発行します。そういう無理に加えて、印刷をやっている中国の工場も工員は出稼ぎ農民が多いため、旧正月の帰休休暇はかなり長くなるのです。

 年末の早い時期から旧正月明け後もしばらく休む長期休暇となるので、編集部は年末号、正月号、正月明け直後の3号を印刷工場が休みに入る前に仕上げなければなりません。

 そうした理由からちょっとあたふたしてしまっているところでして、それならブログを休めばいいのですが、今月はどうしたことか、1月3日以来連日更新しているので、何だか休むのも癪。そこで古臭くて怪しげな写真を掲げてお茶を濁すことにしました。



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 古臭いのは当然でして、撮影したのが1989年4月18日火曜日。1989年といえば天安門事件。その発端は急死した胡耀邦・前総書記(当時)の追悼活動で、それが大学生・知識人による民主化運動に発展することになります。

 怪しげなのも理由がありまして、これは上海における最高学府・復旦大学の某教室で開かれていた学生主催による胡耀邦再評価講座が3日目になったところで変質し、上海初の組織的学生デモの実施を決議した歴史的な「決起集会」の現場を撮影したものです(写真上)。

 黒板にはシュプレヒコールなどが躍るような筆跡で並んでいました(写真中)。このあと檄文がいくつかの大学に飛んで、翌日に組織的デモが実施されることになります。

 なぜそんな場所に私がいたのか(笑)については、こちらを。

 ●昔話その1(2004/10/29)
 ●昔話その2(2004/10/29)

 ――――

 集会は進行役が声を枯らした演説で煽りに煽っていてすごい熱気でした。参加者は、

「そうだ!そうだ!」

 と大声で演説に和したり、拍手を送ったり。最後に日時の相談に入って、

「金曜日は?」

「遅い!」

「木曜日では?」

「間に合わない!」

「よしそれでは明日だ!」

 ここで万雷の拍手とともに、おおおおっという地鳴りのような声があがりました。

「それでは明日は授業ボイコットだ!学生証を必ず携帯するように!できれば白い花も!1時30分校門に集合、2時出発だ!」

 ここでまた、うおおおおおっという物凄い咆哮。写真を撮っていたら後ろの学生にとがめられて、

「お前は何者だ?」

「ここの日本人留学生だ」(嘘)

「そうか。いま中国の政治状況は厳しい。ここでは写真を撮らないのが友好的態度というものだ」

「わかった。申し訳ない」

 などとやり取りしたりもしました。もちろん撮影は続けましたけど(笑)。だってこんなオイシイ場面、逃していい訳がないでしょう。当時の私にとっては待ちに待った機会なんですから(笑)。

 その翌日のデモにも付き合いましたが、出発前に行われたアジ演説を壇上に登って演説者の後ろから1枚(写真下)。私は仮に取材者であるならば常に現場運に恵まれている方ですが、燃えるシチュエーションに出くわすとつい我を忘れて最前線に飛び出して、気が付くとこんな写真を撮ったりしてしまいます(反省)。……留学先が北京でなかったのは僥倖でした。

 こうした昔話写真はいつかまとめてupする機会があるかも知れませんが、いまは時間的・心理的余裕がないので3枚だけにしておきます。

 ちなみに歴史的な「決起集会」で進行役を務めた学生は上海の学生運動を終始リードする存在となりましたが、天安門事件後に逮捕されました。




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「上」の続き)


 ※すみません。どうやらここからが本当の本題のようです。m(__)m。

 ……ところで、もうひとつ印象的でいまなお私の中にどっかりと腰を下ろして動かない記事があります。これも2005年のものなのですが、

 ●都市化の進展阻む盲目的成長志向、百余都市が「国際的大都市」目指す(新華網 2005/10/08/07:28)
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2005-10/08/content_3591687.htm

 という記事です。いわく、中国全土の661都市を対象に調査を行ったところ、実に100都市以上が「国際的大都市」を発展目標に掲げているというものです。要するに「みんな上海みたいになりたい」といったところでしょう。

 そうなると中央の全国に目配りした開発計画や各地に振り分けられたキャラ設定が無視されがちになり、地方同士で開発を競うようになります。当然ながらどの地区も似たようなことをやるため、限られた資源の争奪戦や重複投資による生産過剰や品質低下を招くといった現象が頻発。

 地元の銀行が北京の本行を頂点とするピラミッド型命令系統を無視し、地元当局と結託して効率無視・中央計画無視の融資をガンガン実施し、昨年は確か4月時点で年間融資計画額の多くを使い切ってしまった筈です。

 効率が悪かろうと投資が行われればGDP成長率は高まります。その結果、昨年3月の全人代で中央が示した年間成長率の目安「8%前後」を大きく上回り、昨年の通年統計でGDP成長率10%台に乗ることが確実視されています。いや、今年もそういう状況が続く見込みらしいのですが……。

 昨年「新華網」が「地方保護主義」というテーマで特集を組んだのもそういう「中央vs地方」「地方vs地方」という状況が深刻化していることを証明したものとして印象的でしたが、中央によるマクロコントロールが十分に機能せずにそうした状況は改善されぬまま、事態は一段と深刻化していることを示唆する記事がついに登場しました。

 ――――

 ●エネルギー争奪戦に地方保護主義、第3次地域間経済衝突が顕在化(新華網 2007/01/22/08:59)
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2007-01/22/content_5635076.htm

 目立たない記事ですが重視すべきものです。北京も頭を抱えるような「中央vs地方」及び「地方vs地方」の激化が中共政権史上3回目のピークを迎えつつあるというものです。

 第3次という以上、前例があります。第1ラウンドは1980年代、特に私が大学生だった1980代後期で、多くの地域が保護主義に走って経済的割拠ともいえる状況が現出し、「諸侯経済」という新語が登場したほどです。第2ラウンドは1990年代後半の経済過熱期。これは現在の胡錦涛にとって抵抗勢力ともいえる既得権益層、特定利益集団の形成につながるものでした。

 前述したように、みんなが「上海みたいになりたい」と考えている以上、各地で似たような開発プロジェクトが行われることになります。身の丈に合わない摩天楼を建設するだけでなく、セメント、鉄鋼、電解アルミといった業種は特に育成しやすいために重複投資=生産過剰・品質低下といった無駄が起こりやすいものです。商品がダブつけば赤字が出てしまう訳ですが、そこはそれ、地方当局は言いなりにした銀行に融資させたり産業保護条例などでかばってしまうのです。

 何で各地がみんな似たようなことをするのか、という理由のひとつは上述した通り「みんな上海みたいになりたい」からです。そしてより深刻な要素として、中国語でいう「小而全,大而全」という伝統的ともいえる考え方がモロに出てしまうのです。

 具体的には、川上産業から川下産業に至るまで自分の地区で自己完結するワンセットの産業体系を自前で持ちたいという欲求で、そうすることで一種の自給自足を実現し、他の地域からの製品流入を排除しようというものです。まさに「諸侯」というべき経済的割拠ひいては経済的独立志向といえるでしょう。

 各地がそれをやりますから、記事の通り資源争奪戦や地方保護主義が激化することになります。自分の地区に入ってくる他の地区の商品を関所を設けて通せんぼしたり、自分の地区を通過してよそに資源を運んでいくトラックや貨物列車を停止させて、石炭などを強奪するケースも出てきます。

 ――――

 ただ地方政府にもそれなりの言い分があります。

 ●上海のような国際的大都市になりたい。
 ●高度成長でないと利権の旨味が十分でない。
 ●よその地区に負ける訳にはいかない。

 ……といった理由はともかく、

 ●地元住民の雇用を送出してやらないといけない。
 ●産業振興によって税収を確保しなければならない。

 という現実的な問題もあります。だから、

「内陸部はエネルギー供給役に徹してくれ。中部6省は物流と農業をよろしく」

 などと中央から指示されても往々にして面従腹背することになります。面従腹背せざるを得ないという面もあります。まあ、中国がひとつの国家としては広大過ぎるということがまずあるでしょう。

 それから民度が低いため、というより一党独裁制を維持するため愚民教育を行っているので、米国のような体制もとれないといった馬鹿らしい事情があります。例えば中国国民の民度が香港並みになって、普通選挙制や多党制を要求するようになっては中共政権の存続にかかわる問題となってしまいます。

 かような状況に中央はどう対処しているかというと、目下のところは胡錦涛の子分を各省・直轄市・自治区などに送り込んで中央への服従を狙っているところです。ただそうした雇われトップが地元当局を掌握できるとは限らず、神棚に祭り上げられて手も足も口も出せないという状況になるケースも少なくありません。

 ……でも胡錦涛に言わせれば、これは子分の力量を見極めるテストでもあるでしょう。地元当局すら掌握できない程度の実力しかない子分に国事を託す訳にはいきません。ここでふるいにかけて、次世代を任せるに足る後進はある程度地方で修行させてから党中央に呼び戻して栄転させ、不合格な子分は閑職に回せばいい、といったところかと思います。

 ――――

 ともあれ、中央にしても各地方当局にしても、自分たちにしてみればそれぞれに切実な事情がある訳で、俯瞰してみると一種袋小路的な状況に立ち至ってしまっている観があります。それも「第3次地域間経済衝突」と表現されるほど事態は深刻化しつつあります。

 それがどこまで激化するのか、というのが見どころです。激化する過程で資源争奪の実力行使などに武警(武装警察=内乱鎮圧用の準軍事組織)が事実上地元当局の私兵となって駆り出されたり、ひいてはそれが地元に駐屯する人民解放軍にも波及するかも知れず、またその一方で利権を握った地元幹部の汚職がいよいよ進行することもあるでしょう。

 だからといって「中国は分裂する」などと簡単に断言したりはできませんし、まず大軍区ないしは省・自治区レベルごとのピースになってしまうとは私は考えていません(その逆に、私は末端からの立ち腐れによりリアリティを感じています)。

 ただ、政治的・経済的に強烈な地元意識があるというのは伝統的性向で、「国家」より優先されがちな上(愛国主義教育にはそれを矯正するという目的もあるのです)、改革・開放政策で分権化が随分進んだ現在、中央の求心力が低下してしまっています。胡錦涛の掲げる「和諧社会」の前提である「持続的・安定的経済発展」は実現しにくいでしょう。

 経済過熱も緊縮政策も常に極端に行くところまで行ってしまう、という「何をやっても大躍進」の一例を、私たちはこれから目の当たりにすることができるかと思います。




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 剣呑剣呑。最近当ブログでよく使っている言葉ですが、実際にそう感じさせるニュースが次々に出てくるのですから仕方ありません。

 例えば香港紙『明報』電子版(2007/01/22)の記事。

「新疆の青少年が分裂・破壊活動に関与している」

 という見出しを掲げられたら読まずにはいられないでしょう。華僑向けの中共系通信社・中国新聞社が配信した記事です。……のっけから、

「敵対勢力が新疆の青少年を分裂・破壊活動に参与するようそそのかしている形跡が明らかだ。専門家はこの傾向を抑制するよう呼びかけている」

 といきなり本題に入っています。ただ記事自体は新疆ウイグル自治区で青少年犯罪が増加傾向にあるという内容です。『新疆日報』の報道によると、同自治区における青少年犯罪者数が全体に占める割合はは2000年の14.2%から昨年(2005年)には19.5%へと増加。特に新疆籍の「流浪児童」による犯罪件数は増加の一途をたどり、2005年は2000年の2倍に達したそうです。

 「流浪児童」がいて、その犯罪が増加しつつあるということ自体が新疆ウイグル自治区の社会状況の悪化を物語っているといえますが、この記事はそれとは別に、

「一方で注目に値するのは、ここ数年来、敵対勢力が目標を青少年へと移し、一部の青少年を分裂・破壊活動に参加するようそそのかしていることだ」

 とはっきりと指摘しています。だから対策を急ぎ講じなければならない、という専門家の声でこの記事は締めくくられているのですが、同自治区におけるウイグル人の若年層が、「注目に値する」ほど政治的に尖鋭化・過激化しているという事実は、わざわざ言及しているだけに、実際には記事が伝える以上の深刻な状況が広がりつつあるのだと思います。

 だいたい若年層が「分裂・破壊活動」に関与しているということは、それだけ中共政権にとって見過ごせない事件が新疆で頻発している、ということでしょう。それらはいちいち報道されないものの、こういう年間統計レポートで垣間見えてしまうといったところです。重要なシグナルと考えていいと思います。

 ●『明報』電子版(2007/01/22/15:35)
 http://hk.news.yahoo.com/070122/12/20ejy.html

 ――――

 それから1980年代に保守派の重鎮として慣らした薄一波が先日死去し、22日に荼毘に付されました。胡錦涛や江沢民をはじめ、党中央の最高意思決定機関である政治局常務委員やそれに準じる政治局委員がこぞって参列したようですが、お約束の通り、政治局常務委員・黄菊とすでに政治局委員の職務停止処分を受けている陳良宇・前上海党委員会書記の名前はありませんでした。

 個人的には懐かしい名前が並んでいました。薄一波もそうなのですが、やはり保守派バリバリのトウ力群、そして李鵬、喬石、劉華清、李鉄映、楊白氷、田紀雲、胡啓立……といったあたりは、学生時代に大学図書館で毎日のように読みふけっていた香港の政論誌『九十年代』『争鳴』や反体制組織・中国民聯の『中国之春』、そして台湾の『中共研究』などにしばしば登場した政治家です。

 そして葉選平、これは四人組逮捕で活躍した葉剣英将軍の息子で、1990年代初期の広東省のボスでしたね。……そう、当時は広東省が独立王国然としていて、中央に逆らったり、経済特区として中央に奪われてしまった深セン市をイジメていたりしたものです。

 ●「新華網」(2007/01/21/18:14)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2007-01/21/content_5633181.htm

 ――――

 さて本題。先日中国の2006年流行語大賞みたいなものが発表されて、「和諧社会」「社会主義栄辱観」なんて言葉が選ばれていたようですが、私にとっては2005年に出た言葉ながら、未だに印象的なものがあります。ひとつは時折紹介していますが、胡錦涛・国家主席が2005年9月の「反ファシスト闘争何たら60周年記念式典」における重要演説をはじめ、しばしば口にしていた、

「落後就要挨打」
(立ち後れれば喰いものにされる)

 という胡錦涛慣用句です。「立ち後れれば喰いものにされる」とは19世紀から20世紀半ばに至る、列強各国から散々痛い目に遭わされたことに対する教訓でしょう。ただそれをこういう表現で、21世紀の現在に口にするというのは、明らかにある種の野心を伴うものです。

 簡単にいえば、

「今度はこっちがやる番だ」

 ということです。こういうスタンスで一党独裁政権でしかも軍拡路線まっしぐらなんですから、中国脅威論が台頭するのも当然といえるかと思います。

 ――――

 ただ「今度はこっちがやる番だ」といっても19世紀のようなあからさまなことができる時代ではありませんから、中共なりに洗練された形でそれをやろうといったところでしょう。中国語の定着と中共政権のイメージアップを同時に狙った「孔子学院」を世界各国で100カ所以上設立しているのはその一端で、なるほどソフィスティケートされたやり口です。

 入植という言葉がありますが、親中派養成機関である「孔子学院」をベースに各国で親中派を育成する一方、そうした国々に中国人をどんどん入植させてしまうのです。これは日本でいえば社民党や共産党のような中共が共闘すべき親中勢力が政界ですっかり退潮したことに対する新たな一手。日本でも重視すべき問題ですが、特にアフリカやロシアへの働きかけが余りに露骨なので、欧州から「新植民地主義だ」という声があがるのも無理からぬところです。

 でも所詮は「銃口から政権が生まれる」という言葉を生んだ野蛮で民度の低い政権ですから、台湾総統選挙に合わせた軍事演習やミサイル試射を行ったり、「反国家分裂法」の制定、そして先日のミサイルによる衛星破壊実験のようなことをやって地金が出てしまいます。

 「今度はこっちがやる番だ」を前世紀的思考と方法論で押し通そうという勢力がいるのでしょう。衛星破壊実験における中共系メディアの奇妙な足並みの乱れ=中共上層部内の意見不統一はそれを反映したものであり、乱暴な真似を辞さない向きも一定の勢力を保持しているという点で注視すべきです。

 さらに勘繰れば、中共上層部でそういう強硬派を後援することで胡錦涛の足を引っ張ろうとする連中がいるのかも知れません。上海閥を裏切り、その撲滅に大いに働いた曽慶紅・国家副主席が武功の証として胡錦涛に国家主席の座を譲るよう求めているという報道が香港の観測筋から出ていましたが、単純な強硬派の暴走ではなく、あるいはそういう権力闘争めいた背景があるかも知れない、ということです。

 ちなみに、靖国問題への容喙や中共史観の押しつけ、東シナ海ガス田紛争や2005年春の反日騒動も「今度はこっちがやる番だ」に含まれていいでしょう。それ以前に舐められているようでもあります。そういう所業を放置して、中共の言いなりになってペコペコしてきたに等しい従来型(小泉政権以前)の日本政府にも責任があります。

 ……あれ?本題と言いつつ話の枕でここまで書いてしまったような気がしないでもありません(笑)。

「下」に続く)




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 前回の「衛星破壊ミサイル実験:当局もメディアもちょっと変。」は日曜日にもかかわらず比較的重い話題を上下2回に分け、それも仕込みにかなり手をかけた割には内容に乏しいものを書いてしまいました。ただ、数多くの実例を以て示したように、

「中国が弾道ミサイルによる衛星破壊実験に成功」

 あるいは、

「中国の実験成功に多くの国が非難または懸念表明」

 という海外で行われている報道、たぶん後者の
「多くの国が非難または懸念表明」という事実を国民に知らせたくなかったのか、中国内外の報道に対する規制(ネット上の記事削除)が当局によって一部で行われ、ところがその一方で規制を受けなかったメディアが大っぴらに中国国内でも関連ニュースをありのまま伝える、という奇怪な現象が発生しました。

 ……この、メディアの足並みが奇妙に乱れたことには留意しておいて下さい。メディアの乱れはそれを監督する中共当局、特に上層部における意見の不一致を反映していることが多々あるからです。そこはかとなく漂う政争の香り、とでもいっておきましょう。

 ――――

 さて今日は月曜日。士気軒高で張り切る人よりも、休み明けだからどうも気鬱だ軽めに流そう、という勤労者が多いことと思いますから、こちらも軽い話題で臨みます。

 ある日、河北省で一家団欒の時間である夜にテレビをつけたところ、いきなり嬌声がほとばしり、画面には交歓する男女の姿が延々と映し出されたという事件です。

 いや、一種の放送事故ですね。画面いっぱいに登場したあられもない光景に親は思わず箸を落とし、子供たちは見たこともない情景に接して口をあんぐり、という話です。しかもその放映時間は実に2時間余り。

 放映したテレビ局には視聴者から抗議の電話が殺到。にもかかわらず翌日の午前にも「再放送」されたというのですから、本当に事故なのかどうか、表現の自由を訴えるテレビマンによる一種の電波ジャックのようにも思えてしまいます。

 以前、北京の地方局が海賊版の香港映画「カンフーハッスル」(功夫)、しかも映画館で実写したライブ版を放映したという出来事がありました。知的財産権の侵害という意味では今回の事件はそれに比肩すべきものですが、内容が内容だけにインパクトは比べようもなく大きいものといえるでしょう。

 ●全然あり得なく無い。(2005/02/03)

 ――――

 舞台となったのは河北省・平山県。不確かな記憶に頼って書いてしまうと、中国の行政単位は、

 中央政府
 直轄市・省・自治区
 区・市(一級)
 県・市(二級)
 鎮
 郷

 というランク付けになっています。してみると県というのはかなり下のレベルのように思えますが、そこは国土ばかりは広大な中国。県といってもその担当範囲はかなりの規模があり、それゆえに県のトップ(県党委員会書記)に意外と権力が集中している割には、省当局などからのチェックは一種の距離感があるためつい甘くなりがち。……ということで、汚職で摘発される党幹部に県党委書記が多いのもそのためです。

 かなりの規模があるため、県単位でテレビ局を擁している地区が多くもあります。今回の放送事故?も平山県の地方局がやらかしたものです。

 ――――

 事件が発生したのは1月16日の夜。一家団欒の時間ということですから、夕食時をはさんだ18時~22時ごろかと思われます。平山県の多くの家庭が、いつものようにテレビをつけたところ、そこに大きく映し出されたのは男女が愛撫し合う場面。むろん悩ましげな音声つきです。

 それも単なる放送事故とは色彩を異にしており、この県民を驚愕させた映像は「しばらくお待ち下さい」の画面に切り替わることもなく、延々2時間も放映。しかも途中からは様々なシチュエーションで一糸まとわぬ男女が「打真軍」(実戦)シーンに移ったといいますから、これは紛れもない18禁の(ピー)作品ということになります。

 絶え間なくほとばしる嬌声。いつ果てるとも知れないピストン運動。千変万化する体位。反り返る背筋に妖しくくねる細腰。……というのは私の脳内補完。地元紙『燕趙都市報』の報道を香港でスクープした最大手紙『蘋果日報』(2007/19/20)には具体的な描写が欠けているのが惜しいところです。

 それが中文字幕つきの日本製AVだったのか、小道具は用いられたのか、「口交」シーン(中国語です。意味は字面で御想像されたし)はあったのか、またフィニッシュは顔(ピー)か中田(ピー)かといった説明は一切ありませんが、視聴者が受けた衝撃は想像するに余りあります。

 ――――

 親は顔を真っ赤にして動転しつつチャンネルを変えるかテレビを切るかしたでしょう。さらに、

「パパ、ママ、これなーに?」

 という幼童の無邪気な質問に狼狽したことが想像されます。しかしそれよりも、思春期の少年に与えた影響には深刻なものがあったかと思われます。

 いや、実例がありました。衝撃の映像を観てしまった男子中学生がムラムラとして勉強する気になれず、友人宅から急ぎAV作品を借りて来て家でじっくり鑑賞しようと帰宅したところ、恐らくその挙動不審に気付いた父親にバッグを開かされて持ち物検査。AVを収録した1枚のCDを発見されてしまいました。問い詰められた中学生は前夜の映像に心乱れたことを白状したそうです。

「呆然としましたよ。子供が何であんなものを持っているのかとね」

 という、前夜は堪能したであろう父親の模範的な建前コメントが添えられていますから、これはたぶん『燕趙都市報』の報道に拠っているのでしょう。浮き世離れした表現を使うなら、テレビをつけた途端に「ワーオ!」であります。

 その信じられない映像を観て驚き、喜々として、

「おいテレビつけてみろよ。すごいぞ」

 と急いで友人に電話した者もいたそうです。電話されたのが県当局の職員で、半信半疑ながらテレビのスイッチを入れて仰天したと記者に語っています。実際には仰天しただけなのかどうかは不明ですけど。

 ――――

 当然のことながら、放映した地方局には視聴者からの、

「けしからん」
「どういうことだ」

 といった苦情の電話が殺到しました。

 局側は広告主から提供された映像を、職員のミスで問題のシーンを編集でカットしないまま放映してしまったと弁解しています。……これまたいい加減な言い訳ですね。延々2時間も18禁シーンの続く映像作品なんてAV以外にあるのでしょうか(笑)。

 問題はそれだけにとどまりません。視聴者からの苦情が殺到したこの驚愕の番組は、あろうことか
翌日午前にも再放送されたのです。むろん前夜と同じ、未編集のノーカット映像。

 とうとう公安(警察)が捜査に乗り出す始末となりました。中国の法令によると、「淫猥、迷信及び暴力を喧伝する番組」の制作・放送は禁止されていますから、当然のことでしょう。

 国営通信社・新華社電によると、このテレビ局「平山県電視台」は、

「放映した広告番組の中に2カ所の淫猥なシーンがあり、社会に良からぬ影響を与えた」

 として、地元の広電局(テレビ・ラジオ・CMなどの監督・指導部門)局長ら5人に厳粛な処分を下したとのこと。

 ●「新華網」(2007/01/21/18:56)
 http://news.xinhuanet.com/society/2007-01/21/content_5633283.htm

 エロシーンは2カ所ではなく2時間ぶっ通しだった筈ですが、まあいいでしょう。この報道では、問題の映像は1月16日22時40分から日付の変わった0時40分まで、2時間放送されたとなっています。

 事件を受けて平山県はただちに専門調査チームを設立し、詳しい調査に乗り出したとのこと。胡錦涛・国家主席の掲げる「社会主義栄辱観」に甚だしく違反する行為ですから、ケーススタディにされたり見せしめでクビを飛ばされてはかなわんと、地元当局も必死でしょう。ただ事件は放送事故という扱いにされているようです。

 ――――

 ちなみにこの事件は基地外と好事家揃いである中国のネットユーザーの恰好な話題となり、僻地の地方局ではしばしば御禁制の18禁作品がこっそり放映されているとの報告が掲示板などに相次いで寄せられた模様。

 某省某市の地方局では、職員がこっそりAV作品を堪能していたところ、誤ってスイッチを切り替えてしまい、当人が気付かぬまま約1時間、映像が放映されてしまったこともあるそうです。

 また湖北省・咸豐県では以前、詳細は不明ですが自宅でAVを鑑賞していた男性がどこをどういじったのか誤ってそのビル専用のケーブルTVに映像を流してしまい、さらに地方局のテレビにも映し出され、周辺住民400世帯余りにそれが放映されてしまったという事件があったそうです。

 ――――

 なお、エントリーの必要上とはいえ今回は平素の当ブログにそぐわぬ不適切な表現があったことをお詫び申し上げます(笑)。

 m(__)m

 個人的には「淫猥、迷信及び暴力を喧伝する番組の制作・放送は禁止」ということだけが問題とされ、知的財産侵害の嫌疑がかかっていないことに不満を覚えています。……という締め方で許して頂きましょう。




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「上」の続き)


 香港の次は台湾です。その反応ぶりはさすがに違っていて、当然ながら日米と同じ立場であり、危機感を前面に出したものとなっています。

 ●台湾:大陸の平和的台頭は偽装だ(明報電子版 2007/01/19/20:45)
 http://hk.news.yahoo.com/070119/12/20atc.html

 ●台湾:地域内の安定を著しく損ねるものだ(明報 2007/01/20)
 http://hk.news.yahoo.com/070119/12/20awt.html

 ●中国がミサイルで衛星を破壊、国際社会に緊張走る(自由時報 2007/01/20)
 http://www.libertytimes.com.tw/2007/new/jan/20/today-int1.htm

 ●宇宙での軍拡競争がいよいよスタート?(自由時報 2007/01/20)
 http://www.libertytimes.com.tw/2007/new/jan/20/today-int1.htm

 ――――

 もうひと仕事しなければなりません。「上」で「香港各紙」と書きましたが、実は親中紙の筆頭格である『香港文匯報』はこれについて一切報じていません。じゃあその弟分の『大公報』は?というと、……いやいやそこなんです問題は。

「ついでに一応書いておきますが、私の調べた限り(1月20日まで)では、上述した外交部報道官談話は外交部HPはもちろん、中国国内メディアでは一切報じられていません。当然といえば当然ですけど」

 と「上」の文末に私は書きました。事実その通りなんですけど、香港の『大公報』、シンガポールの『聯合早報』といった中国本土の外に位置する親中紙は、中国国内からアクセスできる電子版にて今回の事件をリアルタイムでじゃんじゃん報じているのです。

 その反応たるや日本のメディアなどより速報している観があります。ただし中共政権の意を受けたと思われる削除職人も活躍しており、特に一応中国国内である香港特別行政区の『大公報』はかなりやられています。

 さらにさらに。外交部報道官談話が報じられなかった中国国内では報道統制で事件については完全NGかと思いきや、やや遅れながらも地方のニュースサイトや大手ポータルサイトでこの事件が報じられています。大人しくしていたのは「新華網」や『中国青年報』(胡錦涛の御用新聞)のような、上意下達メディアのみです。

 以下参照。「
」は削除職人に消された報道です。

 ――――

 ▼
中国の反衛星ミサイル試射を米国が非難(大公網 2007/01/19/01:42)
 http://www.takungpao.com:96/gate/gb/www.takungpao.com/news/07/01/19/ZM-680483.htm

 ●米加豪が中国の衛星キラー兵器試験に懸念表明(聯合早報網 2007/01/19/08:03)
 http://www.zaobao.com/gj/gj070119_513.html

 ●中米の宇宙戦再び、米国が中国の反衛星ミサイル試射を批判(星島環球網 2007/01/19/08:18)
 http://www.singtaonet.com/glb_military/t20070119_448841.html

 ●米情報部門:中国が今月ミサイルで気象衛星「風雲1C」を破壊(中国金融網 2007/01/19/08:23)
 http://war.zgjrw.com/News/2007119/War/889486777600.html

 ●中国の衛星破壊宇宙実験を米国が非難(聯合早報網 2007/01/19/08:50)
 http://realtime.zaobao.com/2007/01/070119_01.html

 ▼
米国:中国が衛星破壊宇宙試験を実施(大公網 2007/01/19/09:28)
 http://www.takungpao.com:96/gate/gb/www.takungpao.com/news/07/01/19/ZM-680765.htm

 ▼
米学者、宇宙での軍拡競争を煽るものだと中国を非難(大公網 2007/01/19/09:33)
 http://www.takungpao.com:96/gate/gb/www.takungpao.com/news/07/01/19/ZM-680767.htm

 ↑『大公報』電子版が集中的にやられているようです。

 ●中国がミサイルにて老朽気象衛星を破壊(tech.qq.com 2007/01/19/10:05)
 http://tech.qq.com/a/20070119/000136.htm

 ――――

 ●中国の衛星破壊宇宙実験を米国が非難(網易 2007/01/19/10:34)
 http://news.163.com/07/0119/10/356NL6J40001121M.html

 ↑大手ポータルのひとつです。この記事には掲示板が付属していて、私が拾った時点では292件もの書き込みがありました。ご想像の通り
「ザマーミロ米国めが」「思い知ったか」「いいぞ中国」といった単純明快な内容が主流です(笑)。

 ▼
標題不詳(央視国際 2007/01/19/10:55)
 http://news.cctv.com/world/20070119/102499.shtml

 ↑「申し訳ありませんがページを表示できません……」とあるだけでした。

 ●米国:中国がミサイル1発で退役気象衛星を破壊(台海網 2007/01/19/11:23)
 http://www.taihainet.com/news/cnnews/gnsz/2007-01-19/84818.shtml

 ↑フェニックスTVのニュースサイトからの転載です。フェニックスの方はすでに削除されていました。

 ●快挙!中国がミサイルで「風雲1C」衛星を破壊、米が確認(東北新聞網 2007/01/19/09:11)
 http://mil.nen.com.cn/72351176527446016/20070119/2132778.shtml

 ●日本、衛星破壊実験の目的について中国に説明求める(聯合早報網 2007/01/19/12:25)
 http://realtime.zaobao.com/2007/01/070119_16.html

 ▼
標題不詳(東方網 2007/01/19/13:49)
 http://mil.eastday.com/m/20070119/u1a2577366.html

 ↑上海のニュースサイトですが大公網(『大公報』電子版)同様「HTTP 404 - File not found」でした。

 ▼
豪日が米国に続き中国に「宇宙兵器」の説明求める(大公網 2007/01/19/14:27)
 http://www.takungpao.com:96/gate/gb/www.takungpao.com/news/07/01/19/ZM-680843.htm

 ↑はいはい大公網・大公網。はいはい404・404。

 ――――

 ●中国の反衛星実験は「衛星攻撃兵器」のテスト、米が非難(南方網)
 http://www.southcn.com/news/international/china/200701190483.htm

 ▼
衛星破壊ミサイル発射?中国は事実確認を拒否(大公網 2007/01/19/16:45)
 http://www.takungpao.com:96/gate/gb/www.takungpao.com/news/07/01/19/ZM-680892.htm

 ▼
軍事専門家:中国、宇宙兵器の発展に力点(大公報 2007/01/19/20:43)
 http://www.takungpao.com:96/gate/gb/www.takungpao.com/news/07/01/19/ZM-680911.htm

 ↑ ま た 大 公 報 か!

 ●中国が宇宙兵器実験との情報、台湾軍部が懸念(大公網 2007/01/19/21:31)
 http://www.takungpao.com:96/gate/gb/www.takungpao.com/news/07/01/19/ZM-680953.htm

 ↑ようやくお許しが出た模様。

 ●中国が衛星抹殺?国防部:道聴塗説だ(台海網 2007/01/20/08:22)
 http://www.taihainet.com/news/cnnews/gnsz/2007-01-20/85028.shtml

 ●軍事専門家:ミサイルでの衛星破壊は中国から日米への警告(台海網 2007/01/20/08:23)
 http://www.taihainet.com/news/cnnews/gnsz/2007-01-20/85029.shtml

 ●外交部:中国は宇宙の平和利用を主張する(大公網 2007/01/20/08:44)
 http://www.takungpao.com:96/gate/gb/www.takungpao.com/news/07/01/20/ZM-681246.htm

 ●米英豪日韓が衛星キラー実験に懸念、中国:宇宙計画に脅威的要素なし(聯合早報網 2007/01/20/08:48)
 http://www.zaobao.com/gj/gj070120_501.html
 http://www.zaobao.com/gj/gj070120_501_1.html

 ――――

 ●米日英ら多数の国が衛星キラーに懸念、北京:宇宙は平和利用(星島環球網 2007/01/20/11:36)
 http://www.singtaonet.com/glb_military/t20070120_450003.html

 ●特報:中国が衛星抹殺に成功、日米の台湾問題介入に警告(星島環球網 2007/01/20/11:42)
 http://www.singtaonet.com/glb_military/t20070120_450063.html

 ●中国の衛星抹殺に専門家:台湾向けミサイル演習以来の挑発行為(聯合早報網 2007/01/20/12:45)
 http://realtime.zaobao.com/2007/01/070120_17.html

 ●中国が衛星破壊、米議会からも懸念表明(聯合早報網 2007/01/20/13:00)
 http://realtime.zaobao.com/2007/01/070120_18.html

 ●フェニックスTV:衛星破壊ミサイルは米国の情報戦(新浪網 2007/01/20/19:56)
 http://bn.sina.com.cn/phoenixtv/2007-01-20/19563151.html

 ↑これまた大手ポータル。動画で紹介。

 ●香港・マカオ大手各紙の1月20日付トップニュース(台海網 2007/01/20/22:10)
 http://www.taihainet.com/news/cnnews/gabzttzy/2007-01-20/85229.shtml

 ↑衛星破壊ミサイル実験成功は日米の台湾問題介入への警告に、という『明報』の記事紹介。

 ●主要国大手紙の1月20日付トップニュース(台海網 2007/01/20/22:11)
 http://www.taihainet.com/news/gjnews/gjbzttbt/2007-01-20/85230.shtml

 ↑5紙が衛星破壊ミサイル関連。

 ――――

 いくら娯楽とはいえ、週末にちまちまとこんなことをしている自分がちと情けないです。orz

 ……それはともかく、中国国内メディアも含めて報道統制が十分に機能していないことがわかります。というより、関連報道を削除しようと動く側と、逆にどんどん報道させろという側が綱引きをしている観があります。

 例えば『大公報』電子版(大公網)への集中的な削除攻撃は別に目の敵にされた訳ではなく、同サイトには報道統制(記事削除)を行うことができた、ということかも知れません。これとは逆に、「台海網」の自由自在ぶりが目を引きます。しかもわかりやすことに台湾つながり。「ミサイル実験は日米の台湾問題介入への警告」という記事が出ていたこともあり、なおさら気になります。

「EUの対中武器禁輸が続こうと中国脅威論が出ようと構わん。やっちまえ」

 という制服組らしいパワープレイOKの過激な勢力と、それに反対する理性的な勢力がひそやかに争っているという気配がするのですが、どんなもんでしょう?

 ちょっと剣呑です。火曜日(1月23日)の外交部報道官定例記者会見までに体裁を整えてくれればいいのですが。



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 日曜日だからマターリしますか……と思っていたのですが、そういう話をしている場合ではないようです。

 あれです。例の中国による弾道ミサイルての衛星破壊実験。日本でも詳しく報道されていますね。

 私個人の印象でいえば、国営通信社の電子版である「新華網」や人民解放軍機関紙の『解放軍報』などに毎日目を通していて、どうも最近第二砲兵(弾道ミサイル部隊)を讃えるような記事が多いなあ、でもまあ気のせいかな、と考えていた矢先でした。たぶん本当に気のせいでしょうけど。

 とりあえず日本側の報道で事件をおさらいしておきましょう。

 ――――

 ●中国、衛星破壊実験に成功 弾道ミサイル使用(Sankei Web 2007/01/19/11:28)
 ht tp://www.sankei.co.jp/kokusai/china/070119/chn070119000.htm

 中国が高度約850キロの宇宙空間で、弾道ミサイルに搭載した弾頭で老朽化した自国の人工衛星を破壊する実験に成功し、米情報当局が詳細を確認中だと米航空専門誌が18日伝えた。スノー大統領報道官は同日の記者会見で、中国に既に懸念を伝えたと述べ、実験情報を事実上確認した。

 中国による衛星破壊実験が表面化したのは初めて。実験の成功が事実なら、有人宇宙飛行に成功するなど「宇宙大国」化を目指す中国が、米国などの軍事衛星に対する直接攻撃能力を獲得したことを意味し、宇宙空間をめぐる米中間の緊張が新局面に入ることは避けられない。

 米政府当局者によると、米国のほかオーストラリア、カナダも中国に懸念を伝え、日本、英国、韓国も懸念伝達を準備している。国際社会の警戒感が一気に高まるのは必至だ。

 同専門誌エビエーション・ウィーク・アンド・スペース・テクノロジー(電子版)によると、実験は米東部時間の今月11日午後5時28分(日本時間同12日午前7時28分)に行われた。中国の衛星発射センターがある四川省西昌の上空付近の宇宙空間で、弾道ミサイルを直撃し破壊する「キネティック弾頭」により、1999年に打ち上げた気象衛星「風雲1号C」を破壊した。
(後略)

 ――

 ●中国が弾道ミサイルでの衛星破壊実験に成功(読売新聞 2007/01/19/13:43)
 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20070119it03.htm

 【ワシントン=増満浩志】米国家安全保障会議(NSC)のゴードン・ジョンドロー報道官は18日、中国が弾道ミサイルに搭載した弾頭で人工衛星を破壊する実験に成功したとの判断を示した。

 同報道官は、これについて中国側と協議していることを認め、「宇宙分野での国際協力を目指す精神に反する」と懸念を表明。米国の懸念に対して、日本政府も共有していることを明らかにした。

 実験は米国の航空宇宙専門誌「エビエーション・ウィーク・アンド・スペース・テクノロジー」(電子版)が複数の米情報当局者の話として伝えたことで明らかになった。同誌によると、ミサイルは米東部時間の今月11日夕方、四川省西昌市にある宇宙センター付近から発射された。搭載された弾頭は、標的に体当たりして衝撃を与える「運動エネルギー撃破飛しょう体」で、高度約850キロにあった自国の古い気象衛星に命中、破壊したとみられる。発生した多数の破片は今後、長年にわたって軌道上を漂い、他の衛星を傷つける恐れがある。

 実験の成功が事実ならば、中国が米国の偵察衛星などを攻撃する技術力を示したことになる。中国は、米国の偵察衛星に対して地上からレーザーを照射する実験も、過去に複数回行っていたことが昨秋、軍事専門紙で報じられていた。ロイター通信によると、衛星破壊実験は、1985年に米国が実施して以来。
(後略)

 ――

 ●塩崎官房長官、中国の対衛星兵器実験に懸念(Sankei Web 2007/01/19/12:23)
 http://www.sankei.co.jp/seiji/seikyoku/070119/skk070119002.htm

 塩崎恭久官房長官は19日の記者会見で「宇宙の平和利用、安全保障上の観点から懸念を持っている」と語った。麻生太郎外相も同日の会見で「事前通報もなく、いかがなものか」と不快感を表明した。政府は外交ルートを通じ、中国側に実験の内容や目的などの説明を求め、懸念を伝えた。中国側は「日本の言うことには留意している。平和利用は一貫している」と応じたが、実験内容などは明らかにしていない。

 日本政府は、人工衛星にミサイルを命中させる技術はそれほど高度な技術だとはみていないが、中国が軍事的な能力の誇示を狙ったものだとして憂慮している。
(後略)

 ――――

 あらかじめ申し上げておきますが、私は皆さんも御存知の通り、こういう問題に対してあれこれ詳細に解説できるような能力を持ち合わせていません。そりゃあね、

 ●おいおい軍事バランスが崩れるんじゃねーのか。
 ●「落後就要挨打」(立ち後れれば喰いものにされる=胡錦涛の慣用句で「今度はこっちがやる番だ」という含意かと)の言葉通り、中共がいよいよ本性を見せ始めたな。
 ●でもこんなことやってるからEUが対中武器禁輸措置を解除しないのも当然だわな。
 ●しかし共同は中国以外でも「必至だ」を使うのかあ(一番上のSankei Webの記事:国際社会の警戒感が一気に高まるのは必至だ)。

 ぐらいのことは思いましたけど、ただそれだけです(笑)。……いや一点だけ気になったのが塩崎恭久・官房長官の記者会見記事。

「政府は外交ルートを通じ、中国側に実験の内容や目的などの説明を求め、懸念を伝えた。中国側は『日本の言うことには留意している。平和利用は一貫している』と応じたが、実験内容などは明らかにしていない」

 ……と、事態の割には素っ気ないというか及び腰な中国外交部の回答。おいおい否定しないのかよっ……てなところです。いつもの中共政権なら、こういう場合は高らかに自らの正当性を謳い挙げつつ、あるいは事実無根と一喝する一方、返す刀で「日本の軍事面での一連の動きこそ隣国を懸念させるものだ」などと逆襲してくるものです。

 ――――

 それで思い出したのが、2004年の中国原潜による日本領海侵犯に対する中国政府のあたふたした対応ぶりです。

 ●原潜出現は崩壊の予兆?(2004/11/11)
 ●貴重なる周章狼狽(2004/11/13)

 ひょっとしてまた軍部あるいは実戦部隊が勝手にやっちゃったのかなあ、ということです。まあ弾道ミサイルで人工衛星を破壊するくらいですから、独断専行にせよ現地部隊よりもずっと上級の司令部がゴーサインを出していると思います。

 ちなみに、実戦部隊の先走り?と思わせる出来事は原潜事件以外にもいくつか事例を挙げることができます。ここ数年に限るなら、

 ●東シナ海ガス田紛争で日本の中間線ギリギリを中国艦隊が航行。
 ●尖閣諸島付近を中国艦隊が航行するのを台湾漁船が目撃。
 ●陳水扁・台湾総統の乗った特別機に中国戦闘機が接近しロックオン。
 ●尖閣諸島付近で中国の海洋調査船が活動。
 ●米空母キティホーク戦闘群を中国潜水艦が追跡。
 ●香港活動家の上陸計画に合わせるかのように、尖閣諸島近海で東海艦隊が実弾射撃演習。

 ……と、私が思い出せる限りでも結構あります。それから、

 ●軍内部に異変?『解放軍報』が突如「党への服従」を連呼。(2007/01/06)

 という異様な出来事も起きたばかりですし、「科学的発展観で云々」といった胡錦涛の指導理論を徹底させるような軍部への通達が相次いだり、風紀粛正・会計検査の強化なども今年に入ってからのことです。

 ――――

 香港紙『明報』電子版によると、今回の事件についての中国側の対応も凛然たるものではありません。まずは外交部の劉建超・報道官。

「中国側は関連報道に留意しているが、詳細は知らない。中国は宇宙技術を平和利用・発展させるという道を歩むことを堅持して以来、過去、現在、未来のいずれにおいてもいかなる宇宙軍備計画にも参与しない」

 ほほー未来のことまでわかるんですか。まあ先のことはいくら言ってもタダですからね。……てなことより、

「関連報道に留意している」
「詳細は知らない」

 という他人事めいた物言いが不穏。やっぱり否定できねーのかよっ!てことになります。中国の駐米大使館報道官も、
「関係資料は何もない」と実に素っ気ない態度。

 ●『明報』(2007/01/20)
 http://hk.news.yahoo.com/070119/12/20awq.html

 ただ国防部は事実関係の確認をはっきりと拒否。同部報道官はAFP通信の問い合わせに対し、

「そんな実験など知らない。マスコミは往々にして噂に基づいて報道する。われわれにはそうした報道の真偽をいちいち確認している時間はない」

 と言ってのけています。

 ●『明報』電子版(2007/01/19/12:25)
 http://hk.news.yahoo.com/070119/12/209po.html

 でも国防部って米国の国防省や日本の防衛省と違って、実は単なる中央官庁の軍関係に関する対外窓口機関にすぎなかったりするんですよね。実際に人民解放軍の指揮系統の頂点にあるのは党中央軍事委員会ですし。その党中央軍事委の胡錦涛・主席がいまごろ、

「何それ?知らないよ。ボク聞いていないもん。どういうことよそれ?」

 なんて泡食っていたりして(笑)。まあまずパジャマから着替えたまえ胡錦涛君。……いや、強調しておきますが「軍部の独断専行」説は私の邪推にすぎませんから真面目に取り合ってはいけません。

 ――――

 ところで、今回の事件は香港各紙でも大きく報じられました。最大手紙の『蘋果日報』(2007/01/20)などは国際面のトップで「米中スターウォーズ」という見出しを掲げたほどです。

 ただ、原文を読んでいけばわかるのですが、微妙に違うのです。例えば日米の報道とはかすかに一線を画しています。懸念色の強い日米の報道と比べると、確かにそういう解説もなされているのです。ただ一方で、

 ●中国の宇宙軍事技術の高さを証明した。米国には衝撃。
 ●これは台湾問題に介入しようとする日米への警告。

 と書きつつも、香港人が滞在中の外国で「中国の選手がオリンピックで金メダルを取った」というニュースに接したかのような、ひそやかなガッツポーズが行間にそこはかとなく漂っているように思えます。全ての記事がそうだという訳ではありませんが、言葉にすれば、

「どうだ!ザマーミロ」
「米国や日本が慌ててやがる(笑)」
「中国もやるじゃないか」

 といったところでしょうか。かつて江沢民に「反動基地」と罵られていた香港が「中共の植民地」として変質しつつあるのを感じない訳にはいきません。

 ――――

 一応香港紙の関連記事を備忘録として並べておきます。

 http://hk.news.yahoo.com/070119/12/208l3.html
 http://hk.news.yahoo.com/070119/12/209l0.html
 http://hk.news.yahoo.com/070119/3/20abb.html
 http://hk.news.yahoo.com/070119/12/20at4.html
 http://hk.news.yahoo.com/070119/12/20awq.html
 http://hk.news.yahoo.com/070119/12/20aws.html
 http://hk.news.yahoo.com/070119/12/20b2h.html
 http://hk.news.yahoo.com/070119/12/20b2j.html
 http://hk.news.yahoo.com/070119/12/20b2k.html
 http://hk.news.yahoo.com/070119/12/20b2i.html
 http://hk.news.yahoo.com/070119/12/20b2l.html
 http://hk.news.yahoo.com/070119/60/20b99.html
 http://orientaldaily.orisun.com/new/new_c01cnt.html
 http://orientaldaily.orisun.com/new/new_c02cnt.html
 http://orientaldaily.orisun.com/new/new_c03cnt.html
 http://hk.news.yahoo.com/070120/12/20bck.html
 http://hk.news.yahoo.com/070120/12/20bf5.html
 http://hk.news.yahoo.com/070120/3/20bfb.html
 http://hk.news.yahoo.com/070120/12/20bf8.html

 付言するなら、香港で世論調査を行うと最低でも70%以上が「台湾独立に反対」と回答します。「一国家二制度」から自由である台湾に対して、多少のやっかみが混じっているのかも知れません。

 ついでに一応書いておきますが、私の調べた限り(1月20日まで)では、上述した外交部報道官談話は外交部HPはもちろん、中国国内メディアでは一切報じられていません。当然といえば当然ですけど。


「下」に続く)




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 四川省で都市暴動が発生しました。語るも無惨な事件なのですが、今回もまた都市暴動のセオリーを踏んでいます。……とは、

 (1)社会的弱者が衆人環視のもと党幹部や金持ちの横暴で虐げられる。
 (2)被害者及びその家族などが抗議し、民衆も義憤して屯集、加勢する。
 (3)暴動に備え警官隊出動。
 (4)加勢する民衆に失業者やチンピラが大量に混じって現場は危険な空気に。
 (5)小競り合いから暴動へ。警察車両が焼かれたり、建物や施設が破壊されたりする。

 ……といったもので、2004年秋の重慶市万州区暴動や、トウ小平の故郷であるやはり四川省の広安市で昨年11月に発生した都市暴動もこの「型」にならっています。

 ●都市暴動の王道。・上(2006/11/14)

 ――――

 今回の舞台は四川省・大竹県のホテル「莱仕徳酒店」。セオリーとちょっとだけ違うのは(1)の部分。衆人環視の下で行われた悪行ではないことです。

 しかし今回は余りに非道。被害者は莱仕徳酒店に勤めていた16歳の美しい少女で、客である党幹部3人の接待を命じられ個室に入ったあと、時間が経過した後にその部屋で死体で発見されたのです。下半身から大量の出血があり……いわゆる婦女暴行なのですが、このケースはレイプというだけでなく、文字通りの暴行も受けた模様です。

 いや、こういう事件は勘弁して下さい。ちょっと詳細を語るのにしのびません。法輪功系ニュースサイト「大紀元」日本語版で事件の経緯をどうぞ(音量注意)。

 ●中国四川省:ホテル女性従業員惨殺事件、群衆1万人が警察と衝突
 http://jp.epochtimes.com/jp/2007/01/html/d15952.html

 ●四川省少女惨殺事件、当局は地元のブログを削除、サイトを封鎖
 http://jp.epochtimes.com/jp/2007/01/html/d31985.html

 被害者は15歳という説もありますし、実は高校生だったという噂も流れています。しかも、このホテルでは過去に同様の事件が2回起きていて、いずれも若い女性が死体で発見されたという情報まであり、未だ事件の全容がつかめないままです。

 ――――

 惨殺事件が起きたのは昨年(2006年)の12月30日(31日説も)。被害者の遺族が憤慨して騒ぎ、ホテル側が50万元の賠償金による手打ちを図ったのに応じず、なおも加害者の引き渡しを求めて騒ぐうちに噂が広まって、1月12日からは1000名から数千名が集まる事態となり、16日にはついに1万を超える群衆がホテル前に集まったそうです。

 民衆が怒りに燃えて集まるのも無理はありません。前述したように被害者がまだ10代の女性で、その遺体があまりに無惨だったこと、加害者が党幹部らしいこと、このホテルで以前にも2回同じような事件が起きていること。……と、市民を憤慨させるには十分すぎる条件が整っていたからです。

 さらに、現場となったホテルのオーナーは地元警察署長の息子らしいとのこと。それならホテル経営は父親の地位を利用した特権ビジネスの可能性があり、親が警察署長だから事件を起こしても揉み消せるのでやりたい放題が可能、ということで流れる情報ひとつひとつが民衆の怒りの火に油を注ぐ形になりました。

 実際、少女の遺体はホテルの職員によって病院に運ばれると、病院側は死因など一切について黙秘。ホテル側も遺族にはっきりした説明を行わず、「急性アルコール中毒で死亡した」と称していた模様。

 ――――

 どうも凄惨な事件だけに書き進むにつれてモチベーションがどんどん低下してきます。まずは16日、集まった群衆を機動隊が高圧放水で追い散らしました。

 事件がヒートアップしたのは翌17日で、学生数百名が現場に赴いたところ、その場にいた警官隊に殴打されるなどして負傷者多数を出す騒ぎとなりました。これに怒った学生側が数を恃んで警戒線を突破し、ホテル内へと突入。物を壊したり放火したりしたようです。

 建物や施設を破壊する行為は都市暴動につきものですが、建物に放火というのは異例です。学生が暴動の主役だったことは、青年らしい正義感にかられた義憤ともみてとれますが、あるいは殺された被害者は本当に高校生だったのかも知れません。仇討ちという訳です。

 暴動に加わったのが約1000名、野次馬が2万人から5~6万人に達し、大竹県の警官隊や武警(武装警察=内乱鎮圧用の準軍事組織)をこぞって出動させたものの、群衆に反撃され追い返される始末。

 その後、一応事態が沈静化してからは現場付近に厳戒態勢が敷かれ、地元当局は暴動を「集団的事件」と認定(悪者扱いですね)。また、婦女暴行事件の犯人として同ホテルの男性職員(バーテンダー)1名を逮捕したと発表しました。

 ……が、犯人については「身代わりにされたんだ」と市民はそのニュースの白々しさにいよいよ憤慨。ネット上の掲示板やブログで現場写真を含めたレポートや怒りの声といった情報が次々と発信され、地元当局は削除職人を動員するも及ばず、一斉封鎖の挙に出たとのこと。

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 以上、事件の経過は官民衝突の現地レポートなどが重宝されているタレ込みサイトの「博訊網」に拠りました。

 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2007/01/200701182156.shtml

 現場写真はこちら。これまた「博訊網」です。大した火事ではなさそうですが、ホテルが燃えてますねえ。

 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2007/01/200701191233.shtml

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 ついでにやはり「博訊網」にタレ込まれた動画もどうぞ。これは湖北省武漢市の強制立ち退きに住民が抗議している模様だそうです。

 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2007/01/200701191606.shtml

 本来なら血沸き肉躍るべき都市暴動なのですが、発端があまりに陰惨なので今回はさすがにノリが悪いです。すみません。

m(__)m




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 いやいや我が眼の節穴たることを恥じ入るのみです。m(__)m

 自民党は1月17日、定期党大会において決議した「運動方針」に「靖国神社参拝を引き続き行う」との趣旨を明記しました。何たって他ならぬ「靖国」です。中共政権にとって対外的な態度表明の場である外交部報道官定例記者会見(18日)、ここで何らかのオフィシャルな対応がある筈だ、とみていたのですが、靖国問題への直接の言及は皆無でした。

 ただし、外交部報道官は別方面から日本を非難しました。

 ――――

「日本は最近軍事力整備を強化しており、防衛庁が防衛省に格上げされた。一方で日本はEUに対し対中武器禁輸措置を解除しないよう求めている。これについて中国側の見解はどうか?」

 という記者の質問に対し、劉建超・報道官は、

「日本が最近の軍事面において行ったいくつかの措置や動向について、中国側は注意している。関連措置と動向が中国を含む隣国の注目をひいたことは否定しようがない。周知のごとく、歴史的原因により、中国側とアジアの隣国は常に日本の軍事面における行動に注意を払ってきた。中国側は日本が平和的発展の道を歩むことを堅持するよう希望する。それは日本の根本的利益に合致し、またこの地域の平和と安定そして発展をも利する」

 と御託(はいはい特亜特亜)を並べてみせたあと、EUの対中武器禁輸措置の問題について、

「この問題は事実上中国とEUの間のもので、日本とは全く無関係であり、(禁輸解除が)日本にいかなる脅威を及ぼすものでもないと中国側は考えている。中国側は日本がEUの対中武器禁輸措置の解除を妨害することに強い不満を表明する。またすでに外交ルートを通じて日本側に強い懸念を表明している」

 とコメント。さらに、

「現在の状況下において、日本側が中日両国関係により多くの面倒をもたらすのではなく、中日両国関係の改善と発展に利することを多く行って、いま正に改善と発展の過程にある中日関係に悪影響を及ぼすことを避けるよう中国側は希望する。これは中立両国の共同利益にも合致するものだ」

 と質問と関係ありそうななさそうな結語で回答をまとめています。

 ●「新華網」(2007/01/18/16:49)
 http://news.xinhuanet.com/world/2007-01/18/content_5622748.htm

 ――――

 この記事の標題は「わが国は日本が両国関係の改善と発展に利することをより多くするよう希望する」ですから、重点は結語に置かれていることがわかります。「中日両国関係により多くの面倒をもたらす」ことに「靖国」が含まれているのかどうかは、わかりません。

 でも何でまたEU?ということになります。中国外交部は先日の安倍晋三・首相による訪欧時にすでにしっかりと反発しているのです。

 ●安倍首相訪欧で痛点刺激、中共がピリピリピリリ。(2007/01/13)

 まあ「質問の内容に対し忠実に答えた」ともいえるのですが、多くの場合、こういうケースでは「その質問に対しては以前の会見ですでに回答している」などと言って流してしまうものです。

 「靖国」への八つ当たりのようでもあり、EUに遊説した安倍首相への八つ当たりかも知れません。実はEUのヴァルトナー対外関係担当委員が訪中しており、李肇星・外相と会談したりしています。

 ●中国とEU、パートナーシップ協定締結交渉を開始(人民日報日本語版 2007/01/18/13:34)
 http://j.peopledaily.com.cn/2007/01/18/jp20070118_67023.html

 この報道では会談が非常に円満かつ前向きな雰囲気に終始したように書いてありますが、香港紙『明報』電子版は別の消息を伝えています。

 ――

 ●EUは対中武器禁輸措置を堅持(明報電子版 2007/01/18/13:50)
 http://hk.news.yahoo.com/070118/12/2071w.html

 EUのヴァルトナー対外関係担当委員は、EUが中国の人権状況が改善されるまで、対中武器禁輸措置を堅持すると表明した。

 同対外関係担当委員は3日間の訪中を終えるにあたって、EUは禁輸措置の解除に向けた動きを進めているものの、それは例えば六四事件(1989年の天安門事件)で投獄された人の釈放や、労働改造制度の撤廃などといった適切な環境改善を目にしてからだとコメント。
(後略)

 ――

 短切ながら中共側の痛点を示し、EUが中国の人権問題を重視していることを示す記事です。このことと直接言及できない「靖国」へのいら立ちが上の外交部報道官会見における回答の結語に反映されているように思います。

 言及できないのは、波乱含みながらも対日関係が表面的には改善されたような展開にようやく持ち込んだこの時期に、例えば温家宝・首相の4月来日をキャンセルするといった荒療治は避けたい、といった思惑でしょう。2004年秋、胡錦涛政権が発足した当初に似たようなケースがありました。

 ●日中首脳会談――章啓月女史の奮闘(2004/11/20)

 ――――

 要するに、自民党が持ち出してきた「靖国」について、対外的(オフィシャル)には例によって抑制されたソフトな反応を示したということです。「靖国」自体に言及しないのですから、中国にしてみれば隠忍自重といったところでしょうか。

 あるいは、この直前に自民・公明両党の幹事長が訪中していますから、このときに「靖国」について予告されていたのかも知れません。ただこうした中国側にとっての隠忍自重が党内部あるいは軍部での綱引きや胡錦涛・国家主席の指導力に影響しないとはいえません。突如逆ギレが始まる可能性も排除できないということです。

 もっとも、外交部報道官定例会見では言及すらしなかった「靖国」ですが、実は内部的には、つまり中共系メディアの国内向けニュースでは、17日夜は報道統制が敷かれていた様子だったのに、それが解禁されたのか、18日午前から「靖国」にも言及した関連評論記事がどんどん出てきています。

 ●自民党大会が2007年の「運動方針」を発表(文匯報 2007/01/18/08:56)
 http://wenhui.news365.com.cn/gj/200701/t20070118_1257761.htm

 ●日本:安倍首相は改憲カードで参院選に備える(東方早報 2007/01/18/10:58)
 http://www.dfdaily.com/dfchannels/guoji/anbeidaxiuxianpaibeizhancanyuanxuanju/view

 ●日本の自民党が参拝堅持の鼓吹を宣言(ロイター 2007/01/18/11:07)
 http://news.21our.com/readnews/1315/1315094.html

 憎悪の念がこもっているような記事もありました。タイトルを原文で出してみます。

 ●「拝鬼」写入日執政党政綱(新浪網 2007/01/18/09:38)
 http://news.sina.com.cn/w/2007-01-18/093811030341s.shtml

 「参拝が日本の与党の運動方針に明記された」という意味ですが、「参拝」を「拝鬼」、つまり「日本鬼子を拝する」という単語をわざわざ使っているところが扇情的です。いや、「鬼」は「軍国主義の亡霊」というニュアンスかも知れません。

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 ……まあ、この「靖国」については公式には抑制された(というよりスルー)対応なれど、内部的には「拝鬼」記事でガス抜きをさせているというのが初動の印象です。

 ただ前回紹介したように、第一報には報道統制が敷かれた様子があるものの、一晩経ってから「靖国NG」が解除されているのがちょっと気になります。例えば防衛庁の省昇格にあたっては外交部報道官が抑制されたコメントを発表する一方、国内メディアは当初からこれを批判的にガンガン報じていました。

 ●テロと粛清と防衛省と空母。いやあ剣呑剣呑。・下(2007/01/10)
 ●「防衛省」が中国で大人気、もう入れ喰い状態。・上(2007/01/11)


 ところが今回はちょっと違います。外交部報道官が騒がなかったのは似ているものの、中共系メディアは党大会当夜(17日)の第一報が、

 ●靖国NG
 ●新華社電で統一

 という報道統制。ところが翌朝からはその両方とも取っ払われて靖国メインの記事もOK、「拝鬼」という煽るようなタイトルもモーマンタイ(無問題)なのです。ちょっとキナ臭い気がしないでもありません。

 あるいはこの不徹底さと「一晩」の時差は、党上層部で何らかの政治的駆け引きが行われた証(靖国NGをやめろ!弱腰に過ぎる!という反発が強かったとか)なのかも知れません。……と勘繰っておきたいところです。ガス抜きになる筈の記事が内部での反発をいよいよ強める結果となれば、事態がどう転ぶかわかりませんので。

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 最後にひとつ、主題とは無縁ながら「いかにも」な記事を紹介しておきます。

 ●市民の秩序感育成へ、北京市が毎月11日を「自分から行列する日」に(新華網 2007/01/18/17:30)
 http://news.xinhuanet.com/society/2007-01/18/content_5622939.htm

 標題そのまんまです。「自分から行列する日」の原文は「自覚排隊日」、つまり命じられたり係員に誘導されることなく、割り込むこともせず、自分からちゃんと行列しよう、という意味で、毎月11日というのは「11」のようにきれいに整列できるようになろう、という由来とのこと。

 コメントのしようがありません(笑)。首都の民度も所詮はこの程度、ということで、これでは「大国」の仲間入りはおろか、課題である産業構造のグレードアップすらおぼつかないでしょう。ただ図体がデカくて人口が多いという意味の「大国」なら別ですけど。……この調子なら北京五輪は「祭」間違いなし。別の意味でオリンピック史上にその名を刻まれることになりそうです。

 それにしても、この民度で13億やら15億やらの人間が呼吸している国家というのは面倒この上ありません。これこそ正に「隣国への迷惑」たる存在に他ならないでしょう。いや、「地球への迷惑」かも。

 「ちゃんと行列ができる」をEUの対中武器禁輸措置の解除条件に加えるべきだ、と提案しておきます。いやだって社会の構成者が畜生同然で、「人」がましくなるよう躾けられていないのも一種の人権問題だし(笑)。




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 おやおやおやおや。……と香港紙の記事漁りをしていて思いました。久しぶりに、実に久しぶりに靖国神社メインのニュースが流れたからです。

 ●日本の自民党、靖国参拝を誓う(明報電子版 2007/01/17/15:15)
 http://hk.news.yahoo.com/070117/12/204cm.html

 ●日本の与党・自民党が党綱領を決議、靖国神社参拝を誓う(ロイター 2007/01/17/16:22)
 http://hk.news.yahoo.com/070117/3/204uu.html

 どうやら1月17日に開催された自民党第74回定期党大会の速報のようです。

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 ●安倍首相、憲法改正に意欲 自民党大会(Sankei Web 2007/01/17/12:07)
 http://www.sankei.co.jp/seiji/shusho/070117/shs070117002.htm

 (前略)
運動方針では、「改革を加速し、炎を燃やし続ける」と宣言し、経済成長戦略や「再チャレンジ政策」による経済活性化を強調。一方、憲法改正や教育改革による公教育の再生、日本の文化や伝統を尊重することに重点を置いた内容が目立ち、改革一辺倒だった小泉純一郎前首相時代とは一線を画した。さらに北朝鮮による拉致事件や核開発に毅然(きぜん)とした態度で臨む「主張する外交への転換」を訴えたほか、「靖国神社の参拝を受け継ぐ」とも明記し、首相の靖国神社参拝への強い意欲をにじませている。(後略)

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 ●安倍首相:靖国参拝、明言しない考え改めて示す(毎日新聞 2007/01/17/22:17)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/feature/news/20070118k0000m010129000c.html

 安倍晋三首相は17日、自民党の07年運動方針に昨年に引き続き「靖国神社の参拝を受け継ぐ」ことが盛り込まれたことについて「恒久平和を祈り、国のために戦った方々のために手を合わせる。私もその気持ちは大切にしていく」と述べたうえで、自身の参拝については「外交問題、政治問題になる以上、私から申し上げることはしない」と明言しない考えを改めて示した。
(後略)

 ――――

 中共は温家宝・首相の4月来日が予定され、安倍首相とは先日の国際会議でフィリピンにて会談したばかり。そのときに事前説明を受けていなければ、中共上層部は突如の「靖国」にさぞや驚いたことでしょう。

 確か日本国内の報道だったと思いますが、温家宝の4月来日は靖国神社の春の例大祭とぶつかるよう訪日日程を調整していて、安倍首相はもとより日本の閣僚や国会議員の靖国参拝を牽制しようという肚だとか何とか。

 胡錦涛・国家主席の訪日は秋で、これも秋の例大祭の時期を狙うという見方もあったかと思いますが、それはまずないだろうと私は思います。

 常識的に考えて、秋来日であれば5年に1度開かれる第17回党大会を優先し、それに合わせてスケジュールが組まれるでしょう。大型人事や世代交代が行われる党大会を片手間で処理できるほど胡錦涛の指導力が磐石だとは思えません。

 ともあれ、上述したように香港メディアは「靖国」を速報しました。

 ――――

 安倍首相はさきの訪欧でEUに対し対中武器禁輸措置の解除反対を表明するなど中共の痛点をチクチクとつつく「遠交近攻」策を行い、外交部報道官を釣り上げたほか、国営通信社・新華社がこれに不快感を示す記事を出すなど、日中関係がちょっと雲行き怪しげな空模様になってきたところです。はいこれが新華社の記事。

 ●日本の地震への備えをみて、日本の長所に学べ(新浪網 2007/01/16/09:35)
 http://news.sina.com.cn/w/pl/2007-01-16/093512050648.shtml

 ああ間違えましたこっちが本物。

 ●中日関係は「曇り時々晴れ」、日本の対中戦略は未だ封じ込めが主流(新華網 2007/01/16/13:50)
 http://news.xinhuanet.com/world/2007-01/16/content_5612495.htm

 『日本経済新聞』からの翻訳?かも知れませんが、訪欧だけでなく日中関係全体に言及した論評記事です。これによると靖国問題が未だ微妙な雪解けムードにある日中関係のアキレス腱なんだとか。

 その記事が出た翌日にドカーンとばかりに「靖国」です。可燃度の高さは説明不要、極上燃料が投下されたといっていいでしょう。防衛庁の省昇格に対外的(外交部報道官談話)には抑制されたソフトな対応を示したものの、安倍訪欧では自国が突つかれているために反応してしまった外交部。

 その直後に「靖国」という大ネタ登場とは、偶然なのでしょうけど安倍首相もなかなか揺さぶりが上手です。しかもきょう(1月18日)は木曜日、といえば外交部報道官定例記者会見の日(毎週火曜・木曜)ではないですか(笑)。

 中国側がそっとしておいてほしくても、朝日とか毎日とか共同とかいった自称働き者どもが「御注進こそ中国様への忠義」と信じて、空気を読まずに質問してくることは必至だ(笑)。これは楽しみなことになりました。

 ――――

 そういえば新華社は昨日(17日)も小島朋之・慶応大学教授による日本誌への寄稿文を転載しています。中共が余計な編集を行っていないのか、中共系メディアとしては珍しく傾斜することのない文章です。……で、この記事にも、

「日本の首相が靖国神社を参拝するかどうかが今後の日中関係の焦点のひとつ」

 となっています。

 ●日本の専門家:中日「戦略的互恵関係」を左右する9つの要因(新華網 2007/01/17/16:02)
 http://news.xinhuanet.com/world/2007-01/17/content_5617841.htm

 それから人民解放軍機関紙の『解放軍報』も同じ日に署名論文を掲載。日本の軍事面における動きにかなり神経質になっている様子がうかがえます。やっぱり直接的には日米の離島奪回演習と防衛省、それにF22ラプター戦闘機の沖縄配備あたりがイライラの原因でしょうか?

 ●日本は最近ちょっと忙しげだ(解放軍報 2007/01/17)
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2007-01/17/content_708418.htm

 そして、よりによってこれらの記事が掲載された日に「靖国」なのです。

 アキレス腱ブチブチ?

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 さて、香港メディアが速報した「靖国」、ネタがネタだけに中共系メディアも次々とこれに続いたかと思いきや、さにあらずなのです。

 いや、自民党党大会のニュース自体は香港メディアより約6時間遅れて17日夜に各メディアが報道しました。この「時差」が微妙なのですが、まあ速報といっていいでしょう。

 ところが、その記事の中身がみんな同じなのです。それでたぐっていったところ、行き着いたのが新華社電。

 ●日本の自民党、今年の重点目標は「改憲」(新華報業網 2007/01/17/21:03)
 http://www.xhby.net/xhby/content/2007-01/17/content_1518833.htm

 私が調べた限りではありますが、どのメディアのニュースも、自民党党大会についてはこの記事を使っていました。一部を端折ったり、リードだけ使った短信タイプもありましたけど、使っている部分は新華社電の一字一句そのままです。

 問題はこの記事に「靖国神社」という言葉が全く出てこないことです。

 ●安倍首相、靖国神社参拝に関しては相変わらずの「曖昧戦術」(共同通信 2007/01/17/22:03)
 http://china.kyodo.co.jp/modules/fsStory/index.php?sel_lang=schinese&storyid=37893

 ……と忠犬がキャンキャン吠えています。自民党の活動方針で靖国神社参拝の継続が明記されたこと、安倍首相が自身の参拝については明言しないと表明したことが短い記事に巧みに織り込まれています。

 でも、中共系メディアはこれをスルー。

 こうなると中共当局による報道統制の可能性が高まってきます。「靖国はNG」ということです。新華社の記者は党大会を取材していたでしょうから、党大会終了後から新華社電(新華報業網)が配信されるまでの半日近く、この間に対策が協議され、

 ●とりあえず第一報に「靖国」は織り込まない。
 ●そのお手本である新華社電のみを自民党党大会についてのニュースでは統一使用すること。

 ……との判断が下り、各メディアに内部通達が出されたのだろうと思います。

 ――――

 ところが、前述したように香港メディアは速報しています。その6時間ばかり後の17日夜に新華社が「お手本原稿」を配信していますが、18日未明になって一応香港メディアである親中紙『大公報』電子版が「外電総合」という形で自民党党大会を報じ、しかも「靖国」をメインに据えるという記事を掲載しました。

 ●党大会で綱領決議、自民党が靖国参拝を誓う(大公報電子版 2007/01/18/01:37)
 http://www.takungpao.com:96/gate/gb/www.takungpao.com/news/07/01/18/YM-680024.htm

 これは簡体字版ですから中国国内からもアクセスできるのではないかと思います。もちろん香港紙ですから『大公報』も繁体字がデフォであり、繁体字版でも同じニュースを読むことができます。記事の種類からいえば電子版だけでなく、今日18日付の『大公報』にも掲載されている筈です。

 他にも『明報』と親中紙筆頭格の『香港文匯報』が紙媒体で掲載しているようです。

 ●『大公報』(2007/01/18)
 http://www.takungpao.com/news/07/01/18/YM-680024.htm 

 ●『明報』(2007/01/18)
 http://hk.news.yahoo.com/070117/12/20541.html

 ●『香港文匯報』(2007/01/18)
 http://www.wwpnews.net/news.phtml?news_id=GJ0701180021&cat=004GJ

 ――――

 『香港文匯報』『大公報』という親中紙が足並みを揃えて怒号しています。

「中国と韓国は靖国神社を軍国主義の象徴だとみなし、日本の公人による参拝にずっと反対してきた。温家宝首相が4月に訪日することになっているが、両国関係の修復作業は歴史問題に関する紛糾によって水泡に帰する可能性が未だ残っている、と中国側は警告していた」
(香港文匯報)

 というノリなので、中国国内でも一拍おいてから騒ぎ始める可能性が高いです。前夜の新華社電で国内的に時間稼ぎをしつつ反撃策を練り(日本側との非公式な折衝もあったかと思われます)、恐らく外交部報道官の定例記者会見におけるコメントが中共政権による外向けの正式な態度表明となって、一番槍をつけることになるでしょう。

 EUの対中武器禁輸措置解除反対で反応した外交部ですから、まさか「靖国」に言及することなく「なかったこと」扱いにするとは考えにくいです。スルーしたらしたでサプライズですけど、それでは胡錦涛の統率に傷がつきかねませんし、軍部が収まらないのではないかと。

 ――――

 最後におさらいしておきますが、中共政権による靖国神社参拝への容喙は明確な内政干渉であり、「日中間で取り交わされた3つの政治文書」である「日中共同声明」「日中平和友好条約」「日中共同宣言」のいずれもが禁じている行為です。

 靖国神社に関する一切は日本の国内問題であり、中共政権がこれに口出しすることは前記3つの政治文書の全てに違反していることになります。またA級戦犯がどうのこうのということは、サンフランシスコ講和条約に調印していない中共政権には言及する権利も資格も全くないことを付記しておきます。

 ……と、日本政府はそろそろ腰を据えるべきではないでしょうか。日本と中国では「友好」の定義が違うのです。また当ブログが再三強調しているように、中共政権は一党独裁という本質において北朝鮮と全く同じであり、さらに民度の低さや全く異なる価値観を奉じていることも関係して、日本とは全く次元の違う世界に呼吸する国だといっていいでしょう。

 北朝鮮がそうであるように、中国もマトモな対話が成立する相手ではありません。ですから「なんちゃって対話」と圧力を使い分けてあしらいつつ、日本は日本がやるべきことを進めればいいと私は思います。真の友好を願うなら目先の利害にとらわれることなく、30年くらい喧嘩することになってもいいじゃありませんか。



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