日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 中国公安部が毒餃子問題について28日午前(昨日)に記者会見を開く予定。……という報道が日本で流れたので、昨日はその時間に仕事を片付けつつ国営通信社・新華社のウェブサイト「新華網」に飛んでみました。

 『人民日報』電子版の「人民網」も開いて両者の文字実況に張り付いたのですが、公安部の会見と聞いていたのに、開始早々、会見席にはこれまで素っとぼけた発表を行ってきた国家品質監督検査検疫総局(質検総局)の魏伝忠・総副局長も並んでいると知って、あーあと思いました。

 いままで必ずしも足並みを揃えていなかった公安部と質検総局が一緒に記者会見。しかも質検総局を代表して出てきているのが例の魏伝忠となれば、これはもう公安部がスタンスを修正し、中国側が質検総局ペースで統一されたも同然ではないですか。

 で、会見の内容は皆さん御存知の通りです。




 当然のことながら、日本側からは強い反発の声があがっています。最前線で事件を捜査してきた警察筋や、外交ルートで接触を重ねてきた北京の日本大使館筋などです。




 ところが遺憾きわまることに、われらが日本の司令長官の反応は以下の通り。



 福田康夫首相は28日夜、中国製ギョーザの中毒事件で、中国公安省が中国国内での毒物混入に否定的な見方を示したことについて「(中国の)捜査当局の発表は日本と共同して、しっかり調査したいということを言っていたんじゃないですかね。
非常に前向きですね。中国も原因を調査し、その責任をはっきりさせたいという気持ちは十分に持っていると思う」と指摘した。(後略)

 ●ギョーザ事件 日本は中国に真相究明求める(MSN産経ニュース 2008/02/28/21:06)

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 ●原因究明、中国も前向き=ギョーザ中毒問題で福田首相(時事ドットコム 2008/02/28/20:50)



 ともあれ事件はひとつのヤマを越えました。この時点で振り返ってみるに、先日当ブログが指摘したように、日本は初動から中国側のゲームプランに乗っかってしまい、そのまま相手ペースで事を運ばれてしまったようです。警察が奮闘して巻き返したものの、結局は一歩及ばずに中国側のシナリオを崩すことができませんでした。このまま進めば本来最も避けるべき
「安易な政治的決着」に落ち着きかねません。

 フフン♪こと福田首相のコメントが全てです。相手の策にはまって好き放題にやられているのに、その中国側について「非常に前向きですね」などと言っています。初動で中国のゲームプランに乗ってしまった迂闊さもさることながら、そのまま乗っかり続けていたことこそ深刻です。

「相手の嫌がることをする必要はない」

 と、首相就任早々に外交カードを自分から捨ててしまう離れ業に出たフフン♪は、その後もその「強烈な個性」のまま、
「無定見かつ無為無策」路線を貫いて現在に至っています。今回もその「個性」がそのまま出てしまった形です。

 中国側はたぶん福田首相のそういう「無定見かつ無為無策」なスタンスに基づいて素早くゲームプランを練り上げ、計算通り、その掌でフフン♪を踊らせることに成功した、といっていいでしょう。

 日本のトップが腰砕けであることに乗じて、

「奴ならまず意表に出ることはない。事なかれ主義から外れまい」

 と中国側に多寡をくくらせてしまったということです。実際、この事件に対する福田首相の姿勢は終始一貫、見事なまでに
「無定見かつ無為無策」でした。政府がその方針である以上、現場がいくら頑張っても自ずと限界があります。

 ――――

 初動で中国側のゲームプランに乗せられてしまったのは仕方ないとしても(初動期には日本のマスコミの大半も同様に乗せられてしまったことをお忘れなく)、すぐに相手の意表を衝く挙に出てシナリオを崩せなかったことが現在のこの体たらくを招いたといっていいでしょう。

「日本は本気で怒っているのだ」

 という意思表示をせず、それを相手に思い知らせる措置にも出なかったのです。

 ●【中国食品】まずは輸入停止。話はそれからだ。(2008/02/04)

 ……というエントリーを、今回の事件の初動期に私は書きました。中国側のシナリオを崩すには、そのくらいのことをやる必要があった、といまでも考えています。むろん、乱暴で無茶な措置だということはわかっていますが、

「それじゃあ仕方がない。輸入停止だな」

 という姿勢を示し、ハッタリをかますだけでも良かったのです。

 最低でも、天洋食品の製品に対する輸入禁止だけはやるべきでした。事実上流通がストップしていたので形式的な措置ではありますが、日本政府がそういうアクションを起こした、ということが国際社会に知られれば、輸出依存型の経済構造であるうえ8月に北京五輪を控えている中国側は動揺せざるを得ません。

 さらに踏み込んで中国で製造・加工・調理した食品に対する輸入禁止の手続き(食品衛生法第8条)に入っていれば、それを実施するかどうかは別としても、中国側は慌てることになったでしょう。このため対応が変わって事態の推移も異なる展開をみせ、現在とは別の結果に行き着いていた可能性は十分にあったと思います。

 しかしながら、フフン♪は虚喝すら行うことのできない器でした。この時期にこの人物を総理大臣に戴いていたことは、日本にとってきわめて不幸だったというべきでしょう。

 ――――

 これ以上、語るべきことはそう多くはありません。福田首相を頂点とする政府が頼りにならないことはすでに明らかです。マスコミも今回は消費者の怒りに煽られて報道に走ったようなもので、上述した通り初動期には中国のゲームブランに乗せられてしまっています。今後、「毒餃子事件」ひいては「中国食品問題」が売れ筋でないと判断すれば、各社が足並みを揃えてこの話題から手を引くことになるでしょう。

 政府もマスコミも当てにはできない以上、私たちひとりひとりが最前線に立つことになります。非常に不愉快なことですが、国民の安全を保障すべき政府が腰砕けになっています。マスコミも日和見という行動原理から逃れられませんから、私たちからみればヘタレです。要するに、自分の身は自分で守らなければならない、ということになります。

 ライフスタイルを自ら規定し、情報収集、購買行動などによってそれを実行していく必要があります。もちろん、利便性や廉価といった安逸に流れるのも自由です。それでしっぺ返しを喰らっても自業自得ですから。

 ただし、私たちの手元に届けられる中国食品は、過度な農薬や発ガン性物質に漬け込まれた「有毒素材」がごく一般的に流通し、「食中毒なんて日常茶飯事」という環境のもと、そういう感覚をごく自然に持っている工場労働者や農家によって生産されていることは覚えておくべきだと思います。

 中国における生産者のそうした環境や感覚は構造的なものであるだけに、仮に今回の毒餃子事件が解決したとしても劇的な変化が生まれることはないでしょう。以前にも書いたように、結局のところ、私たちひとりひとりの意識と行動が問われている、ということになるのです。

 それは一見したところ、個人個人というちっぽけな存在が無力にあがいているように映じるかも知れません。やせ我慢なのかも知れません。

 とはいえ、現状はやせ我慢をせざるを得ない段階を迎えています。やせ我慢でいいではないですか。かつての士道がそうであったように、やせ我慢を続けることで凛とした矜持が生まれるのです。

 現在の日本の政体において、私たち日本国民には国家指導者を直接選挙で指名する権利はありません。しかし幸いなことに、中国製品を忌避する自由は持たされています(笑)。いまより少し手間をかけるだけで、それを消費者ひとりひとりが行うことで、食品メーカーはもちろん、政府にすら統御できない、そしてマスコミも無視できない大きな作用が生まれることになります。

 少なくとも自分たちだけは「無定見かつ無為無策」でないように、励もうではありませんか。




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 久しぶりに少々キナ臭い話を。

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 うれしいことに、コソーリ活動をやっているうちに相手方とだんだん親しくなってきました。詳しくは書けませんが、複数の編集部のデスクとか編集長クラスです。

 むろん、消息筋というほどのものではありませんけれど、いまでは電話やメールで質問すると大抵のことは気安く答えてくれます。……もっとも私の場合、

「この辺一帯を田畑にしたいんだけど、水はどこからどうやって引けばいいかな?」

 というような茫漠めいたことしか尋ねませんので、生臭い話が出ることはありません。やや具体的にいうと、人事情報などよりも新華社電の読み方や当局発表のしきたり、などといったことを教えてもらう方が私のためになりますので。

 実際、新聞や月刊誌などによるいわゆる「香港情報」や消息筋情報に比べれば、何の面白味もない新華社や『人民日報』の報道の方が何十倍も役に立ちますし、頼りになるものです。現地で取材活動のできるプロの方々なら別でしょうけど、私のように素人が東京にあぐらをかいて中国観察の真似事をしている分には、そういうことになります。

 そうした香港・台湾サイドとやり取りをするようになった一方で、音信不通になっていた中国にいる昔の仲間や知人との連絡が復活しつつあります。

 私の周囲にいた連中は生真面目で求道者の如く勉励するタイプばかりだったので、いまでは年相応に、あるいは不相応な出来過ぎたポジションで輝いている奴らばかり。すっかり崩れてしまったのは私くらいのものです(笑)。

 先月末にはいまはカリスマ学者となった兄貴分の中国人と再会を果たしました。求道者ですからひとときの語らいといっても非常に濃密な時間となります。私などは久しぶりで免疫を失っていたので知恵熱が出てしまいました。orz

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 それから一昨日、やはり仕事で来日した留学時代に仲の良かった中国人学生のひとりと18年ぶりに会うことができました。こいつは悪友で、たまたま生起した民主化運動(1989年)の時期に私のガイド役となって有志系スポットなどに案内してくれたうちのひとり。他大学での情報網構築に際しても色々と手伝ってくれました。

 ええ、政治的な「悪友」という訳です(笑)。沿海部の某省出身なのですが要領がよく、大学卒業後も上海に残ることに成功。いまでは某部門で年齢相応のポストに就いています。

 ……ちなみにいうと、私が留学していた当時はまだ計画経済時代の名残があり、エリートである大学生は国家の示す選択肢の中から職場を選ぶのが一般的で、自由な就職活動は困難でした。「選択肢」は往々にして出身地の職場になりますから、上海であの部門に就職できたのは学業優秀なだけでなくよほど上手く立ち回ったのでしょう。

 仮にA君とします。悪友ですから、こいつとは生臭い話題に落ちざるを得ません(笑)。再会早々、

「江沢民の親戚が、やられたみたいだ」

 などという香港の月刊政論誌に出てきそうな物騒きわまる情報が飛び出しました。

 元々のきっかけはあの「政変」です。上海閥の地元大番頭格で独立王国を守っていた陳良宇・上海市党委書記(当時)が一昨年に胡錦涛によってぶった斬られました。陳良宇は上海閥のお世継ぎとも目されていたので、その失脚によって上海閥自体も次世代の有力者を失うこととなり、御家断絶も同然となりました。

 陳良宇を取っ捕まえた胡錦涛は北京から「進駐軍」を送り込んで上海を大掃除。陳良宇系の幹部を次々に討伐していきました。この間、上海のナンバー2で習近平が市党委書記として赴任してくるまでその代理を務めていたのが韓正・市長です。習近平の後を継いだ兪正声・党委書記の現体制においても市長。

 この韓正は胡錦涛直系の「団派」(共青団人脈)とされています。陳良宇の治世下に胡錦涛が打ち込んだくさび役ともいえるでしょう。もっともそのポストプレーはあまり機能しなかったようですし、トップの代理を務めていた時期の仕事ぶりも中央が期待したほどではなく、そのため昨秋の「十七大」(第17回党大会)を節目に行われた大幅な世代交代でも昇格できず、上海市長のまま据え置かれた、という見方があります。

 ――――

 A君によると、「江沢民の親戚」の追い落としを仕掛けたのがこの韓正なのだそうです。昇格のチャンスは逸したものの、元々地元一筋でキャリアを積んできたこともあり、状況が一変した現在の上海において勢力を広げつつあるそうです。……あくまでもA君の解説ですけど。

「韓正って、『団派』だろ?」

 と聞くと、

「うーん。まあそうなんだけどさ」

 とA君は口を濁しました。韓正は共青団人脈に属するものの、浙江省出身で一貫して上海で働いてきたため、いまをときめく李克強、李源潮、汪洋など共青団中央で活躍した面々と比べれば、胡錦涛との縁はさほど深いものではないそうです。いわば上海系の「団派」という傍流で、もちろん外様ではなく歴とした譜代ではあるものの、親藩や直参旗本ほどの近さではないとのこと。

「つまり韓正は『上海青年報』という訳か」

「そうだ」

 というのは例え話。仮に胡錦涛が『中国青年報』(共青団中央の機関紙)の社長をしていたとすれば、李克強や李源潮はその時期に同紙編集部の責任者だった、といったようなものです。当然ながら仕事で直に接触する機会が多々あります。

 ところが上海市共青団の機関紙『上海青年報』なら編集長でもそうはいきません。また同じ北京であっても、北京市共青団機関紙の『北京青年報』であれば、『中国青年報』にはやはり距離感がありますし、格の違いもあります。

 ――――

「で、親戚って誰だよ」

「呉思明。上海市の公安局長だよ。知ってるだろ?」

「知らない」

「お前、道楽で中国観察をやっているんならそのくらい覚えておけよ」

 と笑われてしまいました。A君によると、親戚といっても江沢民の妻の血筋で、外戚(義理の甥)ということになるそうです。

「そいつが韓正に潰されるのか」

「潰されるほどではないけど、公安局長からは下ろされるらしい。その後釜が韓正の子分なんだ」

「へー」

 ああ、おれはいまゾクゾクするような話をしている。こいつ(A君)が消息筋ってことになるんだな。……とわくわくしながら、他に上海政界の余談めいた話もいくつか仕入れさせてもらったり、共通の友人の近況を教えてもらったり、またお約束の昔話などと、実に楽しい一夕となりました。

 生臭い話ですから、知恵熱は出ません(笑)。

 ――――

 そして遅くに帰宅して、午前1時から日課の記事漁りにかかったのですが、偶然なのかどうなのか、上海市の人事異動が一斉に行われたとの報道が「新華網」に出ていました。いつもならロクに読むこともなくとりあえず保存するのですが、A君と話した直後ですからどれどれと目を通してみました。

 驚きました。異動の行われた13名の中に、本当に市公安局長が含まれているではないですか。ただしこの記事では就任者名しか出ていないので、呉思明の名前は登場しません。新任の公安局長は張学兵でした。A君の話が正しいなら、これが「韓正の子分」ということになるのでしょう。

 ●上海市政府、新任期の要職23名を任命(新聞晨報-新華網 2008/02/26/08:56)
 http://news.xinhuanet.com/local/2008-02/26/content_7670313.htm

 ところが、「新華網」にはこの記事に続いてもう1本、上海の人事異動関連記事が並んでいました。

 ●上海市政府は半数が新顔、公安局長には浦東区長が就任(新民網-新華網 2008/02/26/13:20)
 http://news.xinhuanet.com/local/2008-02/26/content_7672280.htm

 おおおお。タイトルから公安局長にピンポイントです。この記事で新任公安局長の張学兵の前職が浦東区長であり、呉思明は公安局長の座は譲ったものの、市党委常務委員、市党委政法委員会書記という肩書はなお維持していることがわかりました。党務はそのままなれど、政務からは退かされたということになるのでしょう。

 それにしてもこの2本目の記事にはうならされました。異動ポストが13もありながら、記事のタイトルでは「公安局長」と狙い撃ち。「呉思明は江沢民の義理の甥っ子」という常識が地元にはあるでしょうから、これだけで意味ありげな人事が行われた、ということがわかるようになっています。もしA君の言うように「浦東区長だった張学兵は韓正の子分」ということも上海では常識なのであれば、様相がより明確になる訳です。

 そう考えると、「新華網」が上海の人事異動を伝える記事(1本目)の隣に「江沢民の外戚が下ろされた」ことを示唆する記事(2本目)を並べてみせたのも、たぶん意図的なものなのでしょう。
上海で「プチ政変」が行われた、という話題が全国ニュースに昇格したことになります。もちろん、事情通だけがニヤリとする内容ではありますが。

 ――――

 この新公安局長の張学兵が本当に韓正の子分なのかどうかは私にはわかりませんが(事情を御存知の方は是非ご一報下さい)、
国営通信社による「当局発表」の妙を見せつけられた気分で、久しぶりに興奮させてもらいました。……ええ、ヲタはこうしたことに喜びを見出すものなのです(笑)。

 翌日(27日)、早速A君の携帯に電話すると、

「へー、やっぱりそうなったのか」

 という反応でした。

「お前、知っていたんじゃないのか?」

「そこまでは知らないよ。でも噂になっていたから」

 とのこと。もっとも、こういうやり取りはA君が東京に来ているからできることであって、上海にいる相手との電話やメールではとても言及できる内容ではありません。……いや、私は一向に構わないのですが、A君の前途が失われかねませんので(笑)。

 A君は明後日に帰国するので、明日は私が秋葉原を案内する約束になっています。といってもアキバ系ではないのでメイド喫茶とは無縁ですから気が楽です。ついでに上の記事をプリントアウトして持っていって、他にも注目する人事があったかどうか解説してもらうつもりです。




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 今年も香港に鳥インフルエンザ(H5N1型)の季節がやって参りました。

 香港にとって、これは一種の
宿命であります。何といっても後背地が「野味」(ゲテモノ料理)の伝統を誇る広東省。中国肺炎(SARS)をはじめ奇病連発の土地柄です。しかも同省当局の隠蔽体質に加えて、香港は中国本土の「植民地」といった政治的に弱い立場。

 そもそも水や食料の主要な供給源であるため縁を切る訳にはいきませんし、香港人の大半は広東省系です。ビジネスやショッピング、レジャー以外にも帰省や墓参などで人員往来が頻繁。あれやこれやで、香港は同省から伝播してくる様々な厄災から逃れることができません。

 今回の鳥フル騒動(に、これからなるかも)の発端は、これです。



 ●鳥インフル:中国広東省で疑い例の女性死亡(毎日jp 2008/02/25/20:26)
 http://mainichi.jp/select/world/asia/news/20080226k0000m030075000c.html

 【上海・大谷麻由美】中国広東省衛生庁は25日、鳥インフルエンザ(H5N1型)に感染した疑いのある同省汕尾市海豊県の女性(44)が同日午前に死亡したと発表した。女性は四川省からの出稼ぎ労働者。今月16日に発病する前、病気のニワトリと接触があった。

 中国でH5N1型の感染による死亡は20人目。今年に入って湖南省、広西チワン族自治区など中国南部で同型による感染死が続いている。




 記事にある通り、香港からみて広東省のその向こうにある湖南省(1月24日)や広西チワン族自治区(2月20日)で鳥フル感染死の報告が相次いでいました。香港内でも鳥フルに感染した野鳥などが発見されるなどして当局が警戒を強めていた矢先に、今度は隣の広東省、しかも香港から遠くない汕尾市でドカンです。ちなみにこの汕尾市といえば知る人ぞ知る、中国最強の武装農民戦闘集団(東洲地区)の名産地。

 香港にとってはもはや至近弾といえる目と鼻の先です。という訳で香港市民はこのニュースに衝撃を受けている……かといえば、さにあらず。もう毎年のことで慣れているのです(笑)。目下のところ中国肺炎当時のような切迫した事態でもありません。私の仕事仲間も、やはり香港人である配偶者の姉も「なんか嫌だなー」という気分を持ちつつも、特に動揺してはいませんでした。

 ただし香港市民の感想とは裏腹に、全般を俯瞰してみると準ガクブル状態ともいえる危うさ,脆さのようなものをみてとることができます。今回死亡した女性を取り巻く人々や地元に対する検査や隔離態勢などが、

「さあどうぞ蔓延して下さい拡散して下さい」

 と言わんばかりのザル同然であるうえ、香港当局も「宗主国」への遠慮なのか初動から立ち後れたばかりか講じた対策が大甘。それでいて香港市民にも要検査対象の病人がすでに出ているのです。

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 今回鳥フルで死亡した女性は養鶏場を営んでいた訳ではなく、夫が汕尾市海豊県でレンガ工場を経営しており、その裏の土地で自家用の鶏を飼っていました。工場の職員はいずれも女性(四川省出身)と血縁・地縁関係にある者ばかり約20名。ごく家族的な雰囲気の工場だったものと想像されます。

 そしてある日、家で飼っていた鶏のうち1羽が病死。いかに農村とはいえ鳥フルのことは知っていたようですが、いずれも農民出身であることから「もったいない」という気持ちが先に立ち、その病死鶏を料理してみんなで平らげてしまったそうです。

 女性にはほどなく肺炎のような症状が現れました(2月16日)。近くの診療所で医者に診てもらったものの病状が回復せず街の病院へ移ったところ、「ひょっとしてこれ鳥フル?」と医師が疑惑を抱いてより大きな病院に転院。入院し検査を受けて鳥フルに感染していると判明したのが24日で、その翌日に女性は死亡しました。

 広東省当局は中央の衛生部や「植民地」である香港・マカオなどに事態を通知する一方で、女性の家族や工場職員を隔離して感染しているかどうかの検査にかかり、現在結果待ちの段階。一方で自宅と工場を中心とする半径3km以内の家禽類を全て処分し、消毒などの措置が行われました。

 広東省からの通報に接した香港当局はそのニュースを公開するとともに、
感染地を中心とする半径13km以内からの家禽類及び関連食品などの輸入を21日間停止する措置をとりました。

 ところが。感染地で講じられた措置も香港側の対応も,実は穴だらけだったのです。

 ――――

 まずは感染地である汕尾市海豊県ですが、感染地の近所の農民によるとまず地元の役場から「消毒しろ」との指示があったためとりあえず手持ちの石灰をあちこちに散布。その後ようやく届いた鳥フル用消毒薬を渡されて、衛生部門の担当者ではなく自分たちの手で消毒作業を行ったそうです。省当局から担当者が現地入りしているそうですが、地元当局はグダグダのようです。

 その証拠に、隔離措置が徹底していません。……というより機能していません。
「病死した鶏をみんなで食べたら家内が肺炎になって……」という女性が発病する経緯は、香港紙『明報』の記者が現地入りして、当の女性の夫からとったコメントなのです。

 この記者の報道によると、封鎖されている筈の地域に何のチェックもないまますんなりと入ることができ、
「消毒は自分たちでやった」という封鎖地域内の農民から話を聞くことに成功。さらに何と隔離されている筈の夫ほか家族や工場職員たちへのインタビューもしっかりと行っているのです。「隔離」とは名ばかりで実態は「村から出るな」程度の縛りしかなく、「被隔離者」たちは退屈しのぎに村外に通じる唯一の道路まで散歩に出てきたりしていたとのこと。

 また、半径3km以内の家禽類は一切処分されたとはいえ、地元の市場では鶏などが普段通りに販売されて普通に買われており、売り上げも1割前後減少した程度で鳥フルの打撃は大きくないそうです。近所で死者が出たことはみんな知っているそうですが、現地は意外にものんびりとした雰囲気。

 とりあえず、隔離されている筈の人たちが村内を自由に行動できるうえ、香港紙の記者が封鎖地区へ自在に出入りできるというのは如何なものでしょうか。『明報』に一歩遅れて、『東方日報』や『太陽報』の記者も現地入りしています。

 ――――

 そして香港。マスコミは当局の初動の鈍さをまず叩いています。入院している女性が鳥フルに感染している疑いが強いという通知を広東省衛生庁から受け、それを発表するまでに5時間を要し、同じタイミングで通報に接したマカオより発表が3時間も遅れました。

 香港社会は変質しつつあるとはいえ「やったもん勝ち」的価値観がいまなお健在ですから何事もスピードにこだわります。メディアもスクープ記事を出すときには
「全球最快」(世界最速)などという大袈裟な見出しを躍らせたりしますから、「発表までに5時間」「マカオより3時間遅れ」というのはマスコミにとっては重大な問題なのです。もちろん、危機管理という点に照らしても香港当局の仕事ぶりはほめられたものではありません。

 そして、香港当局が続いて発表した対策がこれまた問題となりました。上述した通り
「感染地を中心とする半径13km以内からの家禽類及び関連食品などの輸入を21日間停止」というものです。香港に対する中国本土からの食品輸出は自由ではなく、品質管理の観点から指定業者のみに取引が許されているのですが、その指定業者が「半径13km以内」にはひとつもないのです。要するに対策を講じたといっても、何もしていないのと一緒。

 
「半径13km」というのも批判の対象となりました。国連の関連組織が定めたガイドラインでは感染地を中心に半径15km以内を管理下に置くべき規制地区と定めているのですが、「半径13km」では指定業者がいないうえ、このガイドラインの条件をも満たさない対応ということになります(ガイドラインに強制力はありませんけど)。これについて担当部門である食品衛生局の周一嶽・局長は、

 ●死亡した女性は潜伏期間中、感染地から離れていなかった。
 ●目下のところヒトからヒトへの伝染が確認されていない。
 ●養鶏業者ではなく、自家用として少数の鶏を飼っていたため、感染拡大の可能性が低い。

 と説明していますが、なぜ「半径13km」なのかという問いへの回答にはなっていませんし、「ヒトからヒト感染」については死亡した女性の近親者たちが感染しているかどうかすら検査結果が出ていない段階です。このフニャフニャした姿勢にマスコミや専門家たちから非難が集中しています。

 ――――

 しかし、最も叩かれているのはやはり
「何の規制にもなっていない輸入規制」です。

「万一を考えて広東省全域からの輸入を一時停止すべきだ」

 というのが専門家の主張であり、実際に一昨年までは、広東省で鳥フル感染者が出ると香港当局もその通りの措置をとってきました。

 ところが昨年はそれが
「感染地を中心とする半径24.5kmの範囲からの家禽類及び卵の21日間輸入停止」へと規制が緩み、今回は「13km」へと規制範囲も縮小。マスコミからは、

「政治的色彩の濃い措置ではないか」

 と疑問の声があがっています。そこは悲しいかな中華人民共和国の「植民地」。「広東省全域からの輸入停止」だと広東省当局から反発が出て、政治的に弱い立場である香港が窮することを恐れているのではないか、というものです。

 ……いや、政治的な力関係だけならともかく、水や電気をはじめ食料から経済(観光客及び対中投資)まで一切を握られている香港は、広東省の機嫌を損ねるとどういう報復をされるかわかりません。

 実際に、輸入した養殖魚から発ガン性物質マラカイトグリーンが検出されて広東省全域からの淡水魚輸入停止を香港当局が実施したのに対し、広東省当局が「香港への輸出禁止」という逆ギレに出たという前例があります。

 ●既視感?香港の「有毒淡水魚」規制に広東省が逆ギレ。・上(2006/11/29)
 ●既視感?香港の「有毒淡水魚」規制に広東省が逆ギレ。・下(2006/11/29)

 その一方で、香港市民から感染者が出る可能性が現在進行形です。……というのも、現時点で
原因不明の肺炎患者6名(男5名女1名・2歳~95歳)が当局によって確認されています。その全員が発病前の1週間以内に今回の感染地に立ち寄っているのです。この6名に対しては現在検査が行われており、診断結果待ちの状況です。

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 ……という訳で、感染地を抱える広東省も,広東省に身を委ねるしかない香港も、有効な鳥フル対策を実施していないというのが現状。

 今回の死亡例が散発安打で終わる可能性もありますが、実務において緊張感があまりに欠如しているため、広東省内の他の地域からも複数の火の手が上がれば香港は一気にレッドゾーン突入となってしまいます。中国に雪害をもたらした例年にない寒波も鳥フルの流行には追い風となりかねません。

 観光業界ではすでに「実害」が出始めているそうです。香港から広東省の汕頭・潮州方面への人気ツアーで、観光客が食事に出された家禽類の料理に手を出さず、

「怖くて食べられたもんじゃない。他のメニューに換えてくれ」

 とツアコンに要求。

「そんなこと無理です」

「じゃあカネ返せ」

「もっと無理」

 といった悶着が起きているとか。まあ現時点では大きな影響は出ていないようですけど。

 ともあれ香港には万単位の在留邦人がいますし、広東省に駐在したり省内を飛び回ったりしている日本人ビジネスマンも相当な数になるでしょう。その意味では日本も高見の見物という訳にはいきません。

 私の周囲の香港人たちはのんびり構えているようですが、現実にはガクガクブルブルの一歩手前かも知れない状況なのではないか、と愚考する次第です。何事も用心が肝腎ですから。……続報待ちです。


 ――――


 ●『明報』(2008/02/26)
 http://hk.news.yahoo.com/080225/12/2pfrj.html
 http://hk.news.yahoo.com/080225/12/2pfrk.html
 http://hk.news.yahoo.com/080225/12/2pfrl.html
 http://hk.news.yahoo.com/080225/12/2pfrm.html

 ●「中時電子報」(2008/02/26)
 http://news.chinatimes.com/2007Cti/2007Cti-News/2007Cti-News-Content/0,4521,130505+132008022601655,00.html

 ●「明報即時新聞」(2008/02/26/20:54)
 http://www.mpinews.com/htm/INews/20080226/gb22054c.htm

 ●『明報』(2008/02/27)
 http://hk.news.yahoo.com/080226/12/2pih6.html
 http://hk.news.yahoo.com/080226/12/2pih7.html

 ●『蘋果日報』(2008/02/27)
 http://www1.appledaily.atnext.com

 ●『星島日報』(2008/02/27)
 http://www.singtao.com/yesterday/loc/0227ao08.html

 ●『東方日報』(2008/02/27)
 http://orientaldaily.on.cc/new/new_a19cnt.html?pubdate=20080227

 ●『太陽報』(2008/02/27)
 http://the-sun.on.cc/channels/news/20080227/20080227025825_0000.html
 http://the-sun.on.cc/channels/news/20080227/20080227025524_0000.html

 ●『香港文匯報』(2008/02/27)
 http://paper.wenweipo.com/2008/02/27/CH0802270031.htm
 http://paper.wenweipo.com/2008/02/27/CH0802270032.htm




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「上」の続き)


 前述したように、日系企業もうっかり「有毒素材」を使ってしまうほどですから(その日系企業の安全管理にも疑問が残りますけど)、本当に珍しくも何ともないのです。一応、主に中国国内の記事を発信している通信社「Record China」のサイトから記事を拾ってみると、故意に毒を盛った事件を含め、「食中毒」がわんさか出てきました。



 ●中毒死の家畜肉から漂白剤使用まで…!食品加工の違法行為、半年で2万3千件摘発―中国
 ●猛毒インスタントラーメンか?小学生4人、食べた直後に死亡―雲南省昭通市
 ●<中国食品><早分かり>度重なる即席ラーメンの中毒事件、廃油の再利用など悪質行為が横行
 ●<早分かり>取り締まり強化も止まらぬ殺そ剤中毒―小学生即席めん中毒死事件
 ●中学生が泡を吹いて突然死、またも食物による中毒か?―雲南省曲靖市
 ●雲南省で生徒248人が食中毒で入院、大部分は「集団パニック」―雲南省
 ●なぞの作業現場?!建設作業員、食中毒で17人が入院―北京市
 ●幼稚園で集団食中毒が発生、園児59人が入院―甘粛省武威市
 ●衛生検査無認可の社員食堂で集団食中毒が発生―海南省海口市
 ●予算をケチったから?自動車関連会社の44人が集団食中毒―広州市
 ●最悪の社員食堂、食中毒患者多発も会社は医療費支給を拒否―北京市
 ●市内の外資系企業で集団食中毒、11人が病院に!社員食堂の弁当か?―江蘇省蘇州市
 ●喧嘩で逆ギレ、病院食堂で毒物投与!無関係の患者ら42人が激しい中毒症状―江省嘉興市
 ●「仲間外れで同級生を毒殺未遂!」タリウム中毒の学生3人、北京に搬送―江蘇省徐州市
 ●硫酸流出による地下水汚染、中毒で数千人が入院か=地元では死亡説を否定―湖南省懐化市
 ●ヒ素中毒患者が続出、未処理の産業排水を河に流した悪質企業―貴州省
 ●<水>汚水が飲み水に混入!千人以上が中毒症状で病院に―遼寧省阜新市
 ●国道付近の用水路で塩素缶洗浄、住民62名が塩素中毒に―湖南省臨湘市



 ……と、過去1年足らずの期間で、しかも「Record China」が取り上げた記事だけでも御覧の通りです(続報とかは省いています)。実際には中国国内メディアによるさらに多くの食中毒報道があり、また報道されない食中毒事件が中国で発生しています。

 要するに
「中国で食中毒はデフォ」なのです。私たちは、中国食品がそういう環境で生産され、当局による安全管理がザル同然の状態で日本をはじめ諸外国に輸出されていることを覚えておく必要があると思います。

 ただし、このために「毒餃子事件」が日本で注目されたことについて、

「死者すら出ていないチンケな食中毒事件なのに、日本人は騒ぎすぎ」

 という反応はあまりみられません。「日本のメディアは騒ぎ過ぎる」という声は、主に中国当局から出ているものです。

 ●日本に国内世論制御を要求 中国高官、ギョーザ報道に懸念(MSN産経ニュース 2008/02/08/18:31)

 というニュースがありました。これも記事文中で書かれている通り、マイナスイメージが先行することで中国食品に対する評判がますます悪くなることを懸念したものです。そして、あくまでも当局によるリアクション。

 私が「毒餃子事件」に関する中国国内メディアの報道にネット上で接した限りでは、その付属掲示板にあふれ返っている声は主に、

 ●日本人の陰謀。自分で毒を入れて中国が悪いと騒いでいる。
 ●中国のイメージ悪化を日本が目論んでいるのだ。
 ●日本の右翼が北京五輪ボイコットを狙っているのに違いない。

 といったもので、日本のマスコミはそのために騒いでいる、という文脈で語られていました。「反日」先行型の反応です。
「たかが食中毒でなぜそんなに騒ぐ?」という、ひょっとすると「反日」先行型よりある意味ずっと冷静かも知れない意見は見当たりません。……冷静という意味では、

 ●中国国内でもこれだけ食中毒が起きているから、輸出食品に問題があっても不思議ではない。
 ●中国当局の安全管理が甘いのではないか。
 ●工場の待遇が悪いんだろ。工員が毒を入れるくらいのことはする。

 といった声が少数派ながら存在し、それが「反日」先行型の「網民」たちからフルボッコにされているといった状況でした。簡単にいえば、
「日本人の陰謀」(多数派)と「犯人は中国側」(少数派)の争いというのが基本。その中にごくわずかながら、

「これを機会に中国国内の食品安全管理体制を見直すべきだ」

 という提言や、

「中国側からは情報がまるで出て来ないじゃないか。いつものことながらうんざりだ」

 といった報道統制に対する批判が混じっていたりします。

 ともあれくどくなるのを承知でいえば、私たちの手元に届けられる中国食品は、「有毒素材」がごく一般的に流通し、「食中毒はデフォ」という環境のもと、そういう感覚をごく自然に持っている工場労働者や農家によって生産されていることを肝に銘じるべきでしょう。

 むろん、中国食品の全てが危険だといっている訳ではありません。ただ一般論としていえば、現地で品質管理を担当する日本人にスキがあれば「有毒素材」が紛れ込んでも全く不思議でない環境にあることは確かです。日本人が張り付いていない工場などはもってのほか。

 中国サイドがそういう状況にある以上、日本側としては政府がチェック機能を強化し、あとは消費者ひとりひとりが自衛策を講じるほかないでしょう。こればかりは構造的な問題ですから、「毒餃子事件」の真相が解明されても私たちが警戒を緩める訳にはいきません。

 ――――

 最後に「毒餃子事件」関連の最新情報を並べておきます。



 ●中国製ギョーザ中毒:JT、冷凍食品の中国企業委託を原則廃止 自社グループに集約(毎日新聞東京夕刊 2008/02/23)
 ●ジクロルボス、中国製冷凍天ぷらから ユーコープ(asahi.com 2008/02/24/07:00)
 ●中国製ギョーザ中毒:パラチオンも再検査で検出--福島のギョーザ(毎日新聞東京朝刊 2008/02/24)
 ●微量のメタミドホス検出 日本生協連(共同通信 2008/02/25/18:32)

 ●冷凍食品の原産地表示を義務化へ 都条例(MSN産経ニュース 2008/02/26/02:30)

 ●警察庁次長が北京入り 中国製ギョーザ事件(MSN産経ニュース 2008/02/25/18:50)
 ●中国公安省次官と警察庁次長、ギョーザ捜査加速化で合意(YOMIURI ONLINE 2008/02/26/01:18)
 ●中国側、条約の発効エサに幕引き画策…毒ギョーザ事件 25日に急展開も(ZAKZAK 2008/02/23)

 ●中国警察当局、週末も捜査継続 ギョーザ事件(asahi.com 2008/02/24/20:02)
 ●犯罪歴ある6人を集中捜査 中国製ギョーザ事件(共同通信 2008/02/25/18:27)
 ●中国警察、天洋に最多の捜査員 集中的に従業員聴取(asahi.com 2008/02/26/07:43)
 ●中国当局、「工場内で混入」なお視野に捜査・ギョーザ中毒事件(NIKKEI NET 2008/02/26/01:41)



 まずは事件の真相解明を第一に、安易な政治的決着という形だけは避けて欲しいところです。

 中国側は役人同士の縄張り争いとある種の思惑があるのか、部門間の足並みが揃っておらず、好き勝手にバラバラに動いているという印象を受けます。

 天洋食品に対するスタンスが質検総局と公安部(警察)では明らかに異なりますし、事件そのものから一刻も早く解放されたいという気配を示す質検総局に対し、オリンピックへの影響を懸念する北京市がそれぞれ同じ時期に違う方向を向いた記者会見を開いているのも興味深いところです。

 「解放されたい」質検総局が無闇やたらと報道管制を行ったことに中国国内メディアが反発して共同電を流し、質検総局が慌てて報道否定会見を開く、といった混乱もありました。

 目下のところ、こうした動きを統一させようという空気も、例えば党中央あたりからは漂ってきません。露払いに唐家セン・国務委員を訪日させたくらいですから、こと対日問題といえば、頭の中は胡錦涛訪日でいっぱいなのかも知れません。

 ただ目下のところ日中間における最大の懸案のひとつといえる東シナ海ガス田問題について、次官級協議も物別れに終わっており、胡錦涛訪日で事態が劇的な展開を迎える可能性は低くなっています。

 国家主席の訪日は1998年の江沢民以来で、共同文書のようなものを発表したいという思惑が中国側にはあるようですが、その内容も台湾総統選挙という変動要因を横にらみにしつつ詰めていかなければなりません。

 そうしたことに比べれば、党中央にとって毒餃子事件などは些末な問題と考えているのかも知れません。だとすればこの問題は長期化する可能性もあるのですが、ここに来て中国側・公安部門の動きがにわかに慌ただしくなっているのが気になります。……ともあれ、



 ●中国当局は早くも捏造を開始。
 ●日本のマスコミの多くがそれに足並みを揃えた。
 ●中国側はこれを日中間だけの問題に限定したい。
 ●限定した上で、毒餃子があくまでも「シロ」だといい続ける構え(可能ならば迷宮入りで鎮静化させたい)。
 ●さらに「これを政治問題化するのはおかしい」と問題点をすり替える。
 ●一方では対外的に「中国食品は安全」キャンペーンを展開するかも。

 ※犯人が中国側から出る場合は「例外的な事件」と強調しつつ即逮捕即裁判即判決即執行。




 という当初のゲームプラン(私見ですが)を中国側は依然として改めてはいないようです。不覚にも初動からそれに乗っかってしまった日本側は、警察(現場)の奮闘である程度挽回してきてはいます。少なくとも「迷宮入り」は回避して、現時点では中国側から犯人が出るところまで持ち込めるかどうか、といった段階まで巻き返しているように思います。

 ただし、繰り返しになりますが悪くすれば政治的解決が図られるかも知れない警察庁次長の訪中が行われており、しかしながらそれにタイミングを合わせるかのごとく、逆に中国公安部門の天洋食品に対する捜査が厳しさを増しています。事件がひとつのヤマ場を迎えつつあることは確かなようですが、膠着状態から一転……という可能性をはらみつつ、依然として予断を許さない状況が続いている、としか今はいうことができません。

 これまたくどくなりますが、たとえこの事件が解決したとしても、中国食品の危険性という構造的問題には大きな変化は生まれないでしょう。結局のところ、私たちひとりひとりの意識と行動が問われている、ということになるのです。




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 いまなお日本を席巻中である「中国有毒食品」の外堀を埋めたいと思います。日本に輸出される中国食品について、中国側の管理は事実上ザルである、ということは先日のエントリーで紹介した通りです。

 ●有毒食品で中国「日系企業に落ち度」、前夜祭突入ワショーイ。(2008/02/23)



 ●山東省の日系企業が製造したニラ肉まんと冷凍とんかつから有機リン系殺虫剤が検出された問題で、中国の国家品質監督検査検疫総局(質検総局)は2月22日、「原料野菜を仕入れる過程の検査が厳格でなかった」と発表、日系企業の生産管理に落ち度があったとの見解を示した。




 ということでしたね。この一節からわかることは、第一に中国では残留農薬や発ガン性物質漬けの野菜や肉、魚などの
「有毒素材」がごく一般的に流通・販売されていること。故意かどうかは別として、日系企業はそれを使ってしまったのです。それほど普通に「有毒素材」が売られていることが垣間見えます。

 もう一点は、質検総局がこの問題に「おれたちには責任ないよ」と平然としていることです。
輸出される中国食品に対する安全管理を事実上,放棄していることになります。

 中国製品に対する中毒事件や有毒疑惑を懸念する声が世界的に高まっているなか、少なくとも食品については品質保証を行う立場の質検総局が仕事をしていないというのは、事実上
輸出で生計を立てている中国経済の発展モデルを根本から揺るがす問題ではないかと思うのですが、大袈裟にいえば質検総局のこうした無関心・無責任といった鈍感さは亡国の兆なのかも知れません。

 ――――

 ところで、サッカー東アジア選手権のおかげで、私は最近、いつもの記事漁りの巡回ルートとは異なる中国本土のネット空間に出入るする機会が増えました。それで昔の血が騒いだのか(笑)、コソーリ活動(香港・台湾メディアでの文章発表)とは別に、記事収集の合間にちまちまとした活動を再開しています。

 ……といっても「論壇」(掲示板)に顔を出すほどヒマではありません。海外での報道を「論壇」にコピペして中国本土の「網民」(ネットユーザー)の知る権利を補完してやるならともかく、対話や討論といった作業は不毛かつ非効率的で徒労無益だと私自身は考えています。ですから、せいぜいニュースを拾うついでに記事に付随する掲示板にちょこちょこと書き込む程度です。

 いわゆるネット世論というのは日本が絡む問題になると乱痴気騒ぎになってしまいますが、純粋な中国国内の事件・事故の場合は社会の現状に対する問題意識をにじませる書き込みが多々あり、眺めているとなかなか面白いものです。

 「食の安全」に関しても同様です。毒餃子事件のニュースだと付随掲示板にも「反日」の気運が高まるのですが、中国国内での食中毒事件といった話題になると
「当局の隠蔽体質」「安全管理の不備」それに「モラルの低さ」などを嘆き批判する書き込みが殺到します。まあ「モラルの低さ」については「お前が言うか!」とツッコミを入れたいところですけど(笑)。

 ただし、そういう場でも日本人として書き込むと「毒餃子事件」のような空気に変わってしまいますから、私は黙って眺めているか、どうしても乱入したければ「なんちゃって香港人」として登場するようにしています。……でも気分によっては日本人として乗り込んで、ちょっと絡んでみたりすることもあります(笑)。

 一昨日でしたか、恰好の事件が深センで発生しました。


 ●工場で63人が中毒、2人死亡=毒性ある「ニセモノ塩」が原因か―広東省深セン市(Record China 2008/02/25/11:06)
 http://www.recordchina.co.jp/group/g16036.html

 2008年2月23日、新華社通信(電子版)によると、広東省深セン市の自動車メーカー比亜迪汽車(BYDオート)の従業員63人が、食中毒を起こす事件が発生した。すでに2人が死亡、3人が重体、19人が入院中。原因は化学工業原料で毒性を持つ「亜硝酸塩」と特定された。警察は「事件性が強い」として捜査を開始している。中国新聞社(電子版)が伝えた。

 事件が発生したのは23日午前。BYDオートの従業員が、工場入り口で無許可営業している食堂で朝食を食べた後、食中毒と思われる症状を訴えた。その数は63人にも膨れ上がり、うち2人が死亡、19人が入院という騒ぎに。警察は付近一帯の食堂を全て封鎖し、捜査を開始した。

 BYDオートの入り口付近には無許可営業の食堂が20数軒もあり、事件が起きたのはそのうちの1軒。警察は春節(旧正月)前に全てを営業停止処分としていたが、春節明けには再び店が開かれていたという。

 広東省では数年前から、「ニセモノ塩」として工業塩の「亜硝酸塩」が大量に出回っており、毎年死者が出ている。省政府は昨年1月1日から、店頭で販売される食塩には「省承認ステッカー」貼付を義務付けるなど対策を講じていた。(翻訳・編集/NN)


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 ●中国・広東省で集団食中毒、2人死亡…無許可営業の軽食店(YOMIURI ONLINE 2008/02/24/18:29)
 ●中国:集団食中毒で2人死亡 亜硝酸塩、故意に混入か(毎日jp 2008/02/25/20:08)
 ●中国で63人が集団食中毒、2人死亡(asahi.com 2008/02/25/23:37)



 原文はこちら。

 ●深�發生一疑似食物中毒事件 63員工中毒2人死亡(新華網 2008/02/23/22:04)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2008-02/23/content_7655393.htm

 ●工業鹽汚食物致中毒比亞迪63中毒員工42人出院(新華網 2008/02/25/09:04)
 http://www.gd.xinhuanet.com/newscenter/2008-02/25/content_12529934.htm

 ●龍崗食物中毒 食品或水受亞硝酸鹽汚染(新華網 2008/02/25/10:51)
 http://www.gd.xinhuanet.com/dishi/2008-02/25/content_12537977.htm

 諸報道を総合すると、亜硝酸塩が故意に混入されたという説と、店舗の水か食品が亜硝酸塩に汚染されていた、と現時点では見方が分かれている模様。安かろう悪かろうとは知りつつも、低コスト追求で「有毒素材」を敢えて使っている店もあります。工場の社員食堂がそれをやって食中毒で工員多数が病院送りになるケースも珍しくありません。

 要するに、中国ではごくフツーの、よくある出来事。報道されただけマシ、とさえいえるかも知れません。このニュース、大手ポータルでは病院で治療を受ける被害者、といったお約束の写真のほか、取材を遮ろうとする男の姿などの画像も出ていて、付属掲示板では例によって「当局の隠蔽体質」「安全管理の不備」「モラルの低さ」などを叩く声が圧倒的でした。

「心配するな。食中毒でBYDの工員が死んだのはこれが初めてじゃない。前は報道されなかっただけだ」

 という地元在住者からの「タレ込み」もあれば、

「どうせ隠しているに違いない。死者は絶対4人以上はいる」

 と最初から当局報道を信じていない声があがる一方で、

「現在のところ死者の容態は安定している。現在のところ死者の容態は安定している」

 と、不謹慎ながら紋切型の記事を揶揄るものもありました。……さらには、



 1.情報封鎖。外部に噂が流れるのを防ぐ。
 2.関係筋には上から下までカネをばらまいて被害状況を極力小規模な内容にするよう努める。
 3.メディア対策。CCTV(中央テレビ局)から地方局、また新聞からネットの有力掲示板までしっかりと籠絡する。
 4.社内で思想動員会を開き、社員の口裏合わせを強制する。
 5.事件について発表する。




 という書き込みも出現。これなら約20年前、私が上海に留学していたころのマニュアルと変わっていませんね。メディアが増えた分だけ現在は手間とカネが余計にかかる、といったところでしょう(笑)。

 ――――

 で、私はそのとき生憎「なでしこJAPAN」の優勝を喜んでハイになっていたのか、あるいは「中国足球」への怒りや日本サッカー協会への憤懣、また「毒餃子事件」をはじめとする中国食品問題とそれに対する中国側の不誠実な対応、そして日本政府のヤル気のなさと腰の弱さ、といったことにムカついていたのか。……ともかくこの事件の記事に付属した掲示板に「日本人」として軽やかに乱入してしまいました(笑)。

「請各位盡情享受安全無比的中國食品好了,劣弟不敢奉陪!呵呵。」

 みんな安全無比な中国食品を心ゆくまで味わってくれ。おれは勘弁させもらうけどな。呵々。……という意味で、「呵呵」をつけると燃料としてのオクタン価が高まります。案の定、すぐに一匹釣れました。

「中国は永遠にお前を歓迎しない。クズが!」

 そこで私もやり返します。

「中国が歓迎しないのなら、おれは中国に行かない。だから中国の安全な食品を食べることもない。これこそ長寿の秘訣というものだ。お前が来世は中国人に生まれないことを祈ってやるよ。呵々」

 とセオリー通りの反撃(笑)。すると串を刺しているのかどうかはわかりませんが、英国からのレスがつきました。ところが意外にも、

「日本の食品は確かに世界最高だ。食べてみればすぐわかる。道理で日本は世界一の長寿国な訳だ」

 ……と助太刀してきたので、バトルモードだった私は闘志をくじかれてしまいました(笑)。そう書かれてしまうと、
いや最近はそうでもないんだ。メーカーのモラルが下がって偽装表示とか色々問題になっててさ。……と逆に書きたくなってその想を練っていたところ、今度はシンガポールからの書き込みで、

「全くその通りだ。日本の食品は確かに衛生的。シンガポールも悪くないよ。中国大陸のはホント勘弁してほしい。ハエが飛び回っているし売っているものもひどいし」

 と、味方が増えてしまいましたorz。このシンガポール君は中国から仕事か留学で現地に滞在しているらしく、

「畜生、帰国なんかしたくないのに。しかもよりによって、おれは4月から深セン(今回の事件の地元)で仕事するんだぜ……」

 などと別に書き込んで、深センを含む広東省の「網民」から叩かれていました(笑)。私はせっかく意気込んで「日本人」として登場したのに、何やら不完全燃焼。でも掲示板に寄せられた書き込みは面白いものばかりでした。ただし某巨大掲示板風にいえば、

「 ま た 食 中 毒 か ! 」

 といったところでしょう。あれこれ好き勝手に言い合いながらも、基本的には「当たっちまった奴らは運が悪かったんだろ」というノリで貫かれていた、という印象です。あくまでも私の個人的な感想ですけど。


「下」に続く)




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 まさに、胸のすくような試合でした。

 ラフプレーにトンデモプレー、国歌斉唱でのブーイング、そして露骨な偏向ジャッジ。

 ……といった、開催国・中国の代表チーム(男子・女子)と観客による民度の低さを反映したサッカーモドキ「中国足球」で蓄積されたフラストレーション、それから試合会場を覆う光化学スモッグによるモヤモヤにうんざりしていた気持ちを一気に吹き飛ばす鮮やかで圧倒的な勝利です。



 ●なでしこジャパンが初優勝! サッカー東アジア選手権(SANSPO.COM 2008/02/24)
 http://www.sanspo.com/sokuho/080224/sokuho079.html

 サッカーの東アジア選手権は大会最終日の24日、中国・重慶の永川スポーツセンターで女子2試合を行い、日本は中国を3-0で下し、3戦全勝の勝ち点9で初優勝を飾り、A代表としては初のタイトルを獲得した。

 日本は前半19分、DF近賀(日テレ)の縦パスから抜け出したFW永里(日テレ)のクロスにFW大野(日テレ)が合わせ先制した。同43分にはMF沢(日テレ)のシュートをGKがはじき、ポストに当たって跳ね返ったところを再び大野が押し込み加点した。後半10分には大野のクロスにゴール前でフリーになった永里が頭で合わせて突き放した。

 第1試合は北朝鮮が韓国を4-0で下した。この結果、最終順位は1位日本、2位北朝鮮、3位中国、4位韓国となった。

 ★完勝で初タイトル

 試合も終盤にさしかかると、満員の中国人ファンは席を立ち始めた。池田主将がカップを掲げたころには、半数以上がいなくなっていた。「10年以上代表やってるけど、初めて優勝できたあ」。沢が佐々木監督に抱きつく。シュート数は28対4。なでしこが、鮮やかな完勝で日本女子史上初のタイトルを獲得した。

 出足で上回り、高い位置でプレスをかけ、素早く展開してゴールへ迫る。「ボールも動いて、自分たちも動いて。中国の足を止めることができた」と大野。佐々木監督が目指すのは「攻守で複数の選手が連動するサッカー」だが、同じ日に発足した岡田ジャパンの掲げる「接近・展開・継続」を先に実現した印象だ。
(後略)



 「なでしこJAPAN」ことサッカー女子日本代表には凛々たる気魄が終始みなぎっていましたね。悲壮感のない、清々しいほどの勝利への執念。

 例によって国歌斉唱時のブーイング、そして試合中も日本がボールを持つとブーイング、という超アウェー状態にひるむことなく、試合開始直後からどんどんシュートを狙っていく積極的な姿勢は観ていて実に気持ちのいいものでした。一方で相手に決定機めいたものをほぼ与えることのなかった堅守もお見事の一言。

 結局、日本代表は60分までに3点を叩き込み、一方で相手の反撃を全て封殺して、勝たなければ優勝できない中国代表に引導を渡したのです。

 完勝といっていいでしょう。後半途中からはあれほど激しかった中国人観客によるブーイングも鳴りをひそめてしまう有様。プレーで観客を黙らせてしまうほどの圧倒的な内容だったのです。中継録画を観ていたら、

 実況「お客さんが帰り始めています」
 解説「最高の展開ですね」

 という「神」会話まで登場(笑)。試合のハイライト動画はこちらで。

 それから画質はやや落ちますが、「なでしこJAPAN」が終始積極果敢な姿勢を崩さなかったことを示す動画はこちら↓。中国の攻撃も織り込まれているのでスコア以上に試合内容で圧倒していることがよくわかります。


★日本 vs 中国★



 これほど一方的な展開になるとは中国メディアも予想していなかったでしょう。

「シュート数は4対25、女子サッカー日本に0-3で惨敗、何も言えない負けっぷり」

 といった潔い見出し(笑)が躍ったりしています。悔しさを通り越して情けなくなったのでしょう。

 ●射門比4對25 女足0-3慘敗日本輸得無話可說(網易 2008/02/24/18:21)
 http://sports.163.com/08/0224/18/45G3OLIS00051C8O.html

 私が巡回した限りでは、ネット世論も日本に鉾先を向ける論調は全くありませんでした。何よりも面子を重んじるお国柄、しかも開催国だというのに、中国代表チームはタイトルどころかラフプレーで罰金を課される始末。ちなみに金額は男子代表が1万ドル、女子代表が2万ドルとなっています(韓国戦での終了間際、中国女子代表のあの行為は汚かったですねえ)。

 ●男女足收到三萬美元罰單 國字號嚴打動作粗野
 http://news.xinhuanet.com/sports/2008-02/23/content_7652520.htm

 日本チームの敗戦を願って一生懸命ブーイングを浴びせた重慶の観客どもも可哀想でしたね。日本は男女合計6試合で4勝2分。2004年夏のサッカーアジアカップのときと同様に、とうとう最後まで日本が負ける場面を目にすることはできませんでした。逆に直接対決の「日本 vs 中国」では男女ともに返り討ちを喰らって面子丸潰れの公開処刑。

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 何とも気分の良い朝ではありませんか。ついでに「なでしこJAPAN」の他の試合のハイライト動画も置いておきます。

 初戦である北朝鮮戦において、同点で迎えた後半ロスタイムに飛び出した澤選手のスーパーループシュートには驚きました。かくも劇的なシュートは「サカつく」の光プレイにも出てきません。全てはあの一発から始まった、ということになるのでしょう。


★日本 vs 北朝鮮★


★日本 vs 韓国★




 ……とはいえ、日本代表への十分な支援を行わなかった日本サッカー協会の怠業に対して、私はいまでも非常に怒っております。

 特に糞淵、お前は斬首。


★しっかり覚えておきましょう★





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(シリーズ:中国にメイド喫茶出現【1】へ)



 つい先日、四川省成都市にメイド喫茶がオープンしたという驚くべきニュースを紹介しました。

「素人による中国観察」

 と銘打っている当ブログとしては、対象がメイド喫茶であろうと私なりに真面目に取り組んでみたつもりです。

 しかし、何かが足りない、という思いが残りました。……いや、わかります。野暮なことを仰らなくても、

「足りないだろ!」

 という皆さんの「念」のようなものが不肖御家人にビンビンと伝わって参りました。合点承知。……という訳で、今回はその穴埋めをさせて頂きます。

 前回は気が利かず申し訳ありませんでした。職場で当ブログを御覧になる皆さんに不都合なことが起こらぬよう配慮したのです。

 しかし幸い今日は日曜日。皆さん御所望のビジュアルを取り揃えましたので、メイド・イン・チャイナをどうか心ゆくまでご堪能下さい。m(__)m

 ……という訳で、ハァハァするお時間です。

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 背景から察するに件のメイド喫茶で撮影されたもののようです。合計4名だった筈のメイドさんが増殖しておりますが、「動漫」(アニメ&コミック)が大好きな地元コスプレイヤーによる「メイド祭」みたいなものが行われたのか、宣伝用なのかは一切不明。

 しかし、私が頓悟したことがひとつあります。

「御主人様 大好き!」
「ご主人さまの お好きにして いいんですよ」

 という頭がクラクラする立看板に加え、集合写真に
「縄」という小道具が配されているのです!これは恐らく疑似首輪……。

 それでようやくわかりました。このメイド喫茶の店長である白一宏君が地元メディアの取材に対し「ACG」という言葉を示した上で、

 ●A=アニメ。
 ●C=コミック。
 ●G=
ギャルゲー。

 と、本来の
「G=ゲーム」から逸脱した解釈を行ったことに私は首をひねっていたのですが、なるほど「メイドさん&首輪」であればギャルゲーしかありません。より厳密にいえば十八禁のPCエロゲー。まあ秋葉原におけるメイド喫茶の成立も似たような由来なのでしょうけど。

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 それにしても店内に入るなり日本語で、

「お帰りなさいませ,御主人様♪」

 とメイド仕様のロリ系女子にお出迎えされたうえ、

「ご主人さまの お好きにして いいんですよ」

 という立看板。ACGとは無縁だけど日本語を解する物堅いオサーンがこの一節を目にすれば、そりゃ新種の風俗と思い込んでしまっても不思議ではありませんとも。

 これらの写真を目にした中国の「網民」(ネットユーザー)が、

「中国はもうおしまいだ……orz」

 と嘆いていましたが、その気持ち、何となくわかるような気がします。もし「喫茶ルノアール」の如く、首都圏において主な駅の駅前ごとにメイドカフェが営業していたら、そりゃ私だって気味悪くなりますから。

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 それにしてもこのメイド喫茶、大学生が立ち上げたにしてはかなり凝っていますね。親が裕福で開店資金を出してくれたのだとしても、かなりの出費になる筈です。

 あるいは成都市が黒幕なのかも知れません。……というのも、いま中国はACG産業を育成しようと躍起になっている最中。それに応じるようにして、全国の複数の都市から「動漫基地」となるべく名乗りが上がっています。制作会社から関連グッズメーカー、出版社などを集中させたACG開発区を立ち上げることで地元経済発展の牽引役にしようという目論見です。

 
「動漫基地」として名乗りを上げる=開発計画をぶち上げる=中央政府に対し立候補宣言、ということです。

 そんなこと勝手に事を進めればいいじゃないか、と言いたいところですが、ACG産業のような未知数の分野を盛り上げるに際して、中央は常に全国のうち数カ所を選んでテストケースとし、そこにテコ入れしてしばらく様子を眺める、という形を以前からとってきました。

 経済特区や株式市場などが典型例ですが、「テスト地区」認定が出てしまえば他の地区は手を出すことが許されなくなります。ですから「ACG路線」を狙う都市は立候補するとともに既成事実を積み上げて「勅許」を得るべく励むことになります。

 ゲームショウやコスプレイベント、「動漫」フェスなどが一部の都市で開催されるのには、中央に対するアピールという側面もあるのです。

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 で、このメイド喫茶も成都市による「既成事実」のひとつなのかも。……と考えてはみたのですが、メイド喫茶で首輪までつけかねないノリというのは余りにピンポイントで間口が狭い上に、政治的にも際どすぎます。いかに「思想解放」が党中央によって盛んに叫ばれているとはいえ、
メイド首輪「お好きにしていいんですよ」では、頭を柔軟にして解き放つ方向が明らかに間違っていると思われるのです(笑)。

 それならやっぱり地元のACGヲタによるインディーズ的な試み?……でも、それにしてはコストがかかっているようにみえますし、地元紙の報道が新華社や中国新聞社といった大手通信社に転載されて全国ニュースに仕立て上げられるスピードが速すぎる気がします。

 少なくとも「珍奇な話題」として取り上げられる場合とは明らかに初動が異なります。このため眺めている側としては、段取りが出来上がっているかの如き気配を感じることになるのです。

 目下のところ詳報がないため開店に至る経緯そのものが謎で、勘繰るスキがありません。ただ私の可視範囲に限っていうなら、現時点では全国メディアのレベルにおいてこのメイド喫茶を取り上げて云々する論評記事は出ていないので、一応容認されていることになります。……などとチナヲチめいた作業するのは,今回ばかりはやはり止めてしておきましょう。

 でも四川省をはじめとする中国全土のACGヲタの皆さん、
「水貨」(並行輸入品)でもいいですから必ず正規品で楽しむようにして下さい。……と、業界人の端くれとして呼びかけておきますか。まあ無理でしょうけど。本物はメイド喫茶のメイドさんだけですね、きっと。

 ――――

 それにしても恐るべきは日本発のACGパワア。旧帝国陸軍でさえ踏み込めなかった成都なんて奥地にまで浸透しているのですから。

 そのうち、私の勤務先が出す制作物でも簡体字版が中国本土で同時発売されることになるかも知れません。

 普通は当局の許可が容易に下りないので繁体字版のままヤミルートで流入させちゃうんですけど、何たってメイド喫茶が登場するくらいですからねえ。

 ……ところで、本当に好きにしちゃっていいのでしょうか?(笑)



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 ……むう。

 と今日も唸ることしか私にはできません。いや、前回のメイド喫茶、あれはあれで一本筋が通っていたので単に驚嘆したということなのですが、今回は先日の「中国足球」同様に「越えられない壁」というものを改めて痛感させられ、中共政権について再認識した次第です。

 何の話かといえば、もちろんこちら。



 ●ニラ肉まんの殺虫剤、中国検査当局「日系企業に落ち度」(YOMIURI ONLINE 2008/02/22/19:42)
 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20080222-OYT1T00561.htm

 【北京=牧野田亨】中国の国家品質監督検査検疫総局は22日、山東省の日系企業が製造したニラ肉まんと冷凍とんかつから有機リン系殺虫剤が検出された問題で、「原料野菜を仕入れる過程の検査が厳格でなかった」と発表、日系企業の生産管理に落ち度があったとの見解を示した。

 メタミドホスが検出されたニラ肉まんは「山東仁木食品」が、ホレートが検出された冷凍とんかつは「清清仁木食品」がそれぞれ製造した。2社とも「ニッキーフーズ」(大阪市)のグループ企業。

 同総局は「2社は日本側が単独出資した企業。日本側の基準に従って管理・生産が行われ、日本側の職員が駐在し、監督と管理を行っている」として、「日本側」の責任を強調した。

 また、同総局は日本政府がこれまで、肉まんやギョーザなどの残留農薬検査を要求しなかったと指摘。今後、日本と意見交換し、検査に取り組む考えを明らかにした。

 一方、新華社電によると、山東省の中国企業「宇王水産食品」が日本に輸出した冷凍サバから有機リン系殺虫剤「ジクロルボス」が検出された問題で、中国の検査当局は「サンプルを調査したが、ジクロルボスは検出されなかった」との検査結果を発表した。


 ――――

 ●日系企業の管理不十分 中国検疫総局が声明(共同通信 2008/02/22/17:05)
 ●「日系企業の管理不十分」中国検疫総局(MSN産経ニュース 2008/02/23/00:25)



 原文はこれです。

 ●質檢總局:輸日包子事件系日本獨資企業把關不嚴(新華網 2008/02/22/14:46)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2008-02/22/content_7648285.htm

 ――――

 ところで、国家品質監督検査検疫総局(質検総局)は「ニラ肉まん」と「冷凍とんかつ」を「日本側の責任」と決めつけた一方で、

 ●山東省の中国企業「宇王水産食品」が日本に輸出した冷凍サバから有機リン系殺虫剤「ジクロルボス」が検出された問題で、中国の検査当局は「サンプルを調査したが、ジクロルボスは検出されなかった」との検査結果を発表した。

 としています。その「冷凍サバ」について質検総局は、

「ジクロルボスが検出された日本に輸出された冷凍サバについては、消費者に責任を持つという姿勢に基づき、中国側は現在すでに当該企業の全ての製品に対し輸出を停止している」

 と胸を張っています。馬鹿だなーこいつら。

 ●中方已暫停輸日�魚企業所有產品出口(新華網 2008/02/22/14:47)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2008-02/22/content_7648288.htm

 ――――

 質検総局は、

 ●2社は日本側が単独出資した企業。日本側の基準に従って管理・生産が行われ、日本側の職員が駐在し、監督と管理を行っている。
 ●(日系企業は)原料野菜を仕入れる過程の検査が厳格でなかった。

 と記者会見で発表し、「日系企業の生産管理に落ち度があった」と日本側の責任を強調したとのことですが、
「だから何?」というのが私の率直な感想です。日本の全額出資企業だってポカはあるでしょうし、隠れて悪いことをしている可能性も皆無ではないでしょう。ええ、国有企業とか中国と外資による合弁企業と同じように、です。……問題は、

「日本側の職員が駐在し、監督と管理を行っている」

 というその企業を監督する責任部門はどこか、ということです。記者会見を開いている当の質検総局ではありませんか。質検総局でなくても中国当局のいずれかの部門であることは間違いありません。

 という訳で、質検総局の自称「消費者に責任を持つという姿勢」が問われることになります。要するに「日本企業がポカをやった。だから日本側の責任」と言っているけど、そういう日系企業の愚鈍さをしっかり監督せず見過ごしていたのはお前ら質検総局じゃないか、その責任はどうとるんだボケ、ということです。

 ――――

 質検総局は、日系企業を叩くことで自分も叩かれる立場になることをわかっていないのでしょうか。今回は記者会見のプレスリリースである新華社電が、

「日本に輸出された肉まんから残留農薬が検出されたのは日本の全額出資企業による管理の問題」

 と断定してしまっています。

「じゃあ質検総局なんてないのと同じじゃないか。日系企業だけに責任を負わせるというのは、要するに輸出される食品への品質検査はザルってことだな」

 という話になるのです。……実際、

「日本はこれまで、残留農薬量の基準を示したり検査を求めてきたことはなかった」

 と質検総局は新華社電で弁解していますから、輸出製品への品質検査は本当にザルなのでしょう。道理でパナマで中国製風邪薬で多数の死者が出たり、米国などで中国製ペットフードで犬猫がどんどん死んだり、鉛漬けの玩具が輸出されたり、EUへの輸出米に遺伝子組み換えコメが混入されて問題になったりしている訳です。わが日本でも新ネタが続々。




 つまり質検総局は、自分たちが仕事をしていないことをわざわざ記者会見まで開いて明らかにしていることになります。なるほどこれはある意味「消費者に責任を持つという姿勢」かも知れません。……非常に大胆かつ野心的な手法ではありますが。

 おかげさまで少なくとも日本の消費者の間では、中国食品のブランドイメージがしっかり定着することとなりました。餃子でも肉まんでもとんかつでもシメサバでも、とにかく中国が関わっている製品には名前の前に
「毒」の一字を付け加えればいいのですから、これほどわかりやすいものはありません(笑)。

 ともあれこの
「質検総局の監督責任」というものを、日本のメディアにはどんどん衝いてほしいものです。また今回の記者会見では、中国においては残留農薬たっぷりな素材がごく当たり前に流通し販売されている、ということも改めて浮き彫りにされました。この点もしっかり強調してもらいたいところです。

 乱暴なことを言わせてもらいますが、風評被害なんて自業自得。中国にとっても日本企業にとっても日本の消費者にとっても、です。真面目に取り組んできたところは生き残ることができるでしょうし、それでも生き残れなければ中国にすがった己を呪うこと。

 何たって他でもない中国なんですから。目先の利益を最大限に追求するモラル不在の「やったもん勝ち」がまかり通り、農民は自分で食べる分の野菜には農薬を使わない、という苛烈な社会状況です。もっとも大気も水もひどく汚染されていて、その汚染された水が農業用水として入り込んで土壌を重金属まみれにしていますから、農薬を使わない作物も無事では済みません。そんな中国に深入りしたのが運の尽きということです。

 聞くところによると、最近は国産のニラが需要急増に追いつかず高値になっているそうで。一連の中国毒事件を受けて、餃子を手作りする消費者が増えたからなのだそうです。結構なことではありませんか。

 ――――

 面白いことに、日本が毒食品シリーズで大揺れに揺れて、米国は有効成分が中国産である抗凝固薬ヘパリンによる中毒被害の問題が現在進行形で、EUはEUで遺伝子組み換えコメその他の問題で剣呑になってきたこの最高のタイミングで、燃え上がった炎にさらに油を注ぐようなことをしてしまうのが中国なのです。



 ●北京市が食品安全を強調、「国際基準より厳しい」(MSN産経ニュース 2008/02/21/18:44)
 http://sankei.jp.msn.com/world/china/080221/chn0802211844006-n1.htm

 北京市食品安全弁公室の唐雲華報道官は21日、記者会見し「北京五輪ばかりでなく市全体の食の安全を確保するため、国際的なものより厳しい基準を適用して取り組んでいる」と安全性を強調した。

 関係者によると、この日の記者会見は中国の温家宝首相の指示で開かれた。唐報道官らは、生産地からの食材の管理体制や39の検査機関が品質検査に当たることを紹介、中国製ギョーザ中毒事件などで高まる不安を打ち消した。

 北京五輪で一部の国の代表チームが食材を持ち込む意向を示しているが、同席した五輪組織委員会担当者は「正式な申し入れはないが、これだけ準備しているのに残念」と話した。唐報道官は「われわれが提供するものを安心して食べてほしい」と述べた。(共同)




 質検総局も北京市も、ひょっとしてMプレイがお好み?まあ当局は大真面目に対応しているつもりなんでしょうけど、都合の悪い話題は力づくで封殺にかかるという中共政権お得意の厚顔無恥なパワープレーは独裁統治が及ぶ中国国内でのみ通用する、ということが理解できないでいるようです。

 しかも説得力が全然なくて、言えば言うほど怪しく思えてきてしまう会見内容。なぜこんな愚昧なことを?というのは私たちの感覚で、中国にとってはこれがセオリーなのです。そこら辺が「越えられない壁」というやつで。……何やら国際的に香ばしい展開となりつつあります。

 むろん、日本の主役である天洋食品特製毒餃子にも進展がみられています。



 ●メタミドホス、中国国内で混入…警察庁長官が公式見解(YOMIURI ONLINE 2008/02/21/19:04)
 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20080221-OYT1T00487.htm

 警察庁の吉村博人長官は21日の定例記者会見で、中国産冷凍ギョーザの中毒事件について「日本国内で混入した可能性は低いと考えている」と述べ、有機リン系殺虫剤「メタミドホス」は中国国内で混入されたとする見方を示した。

 警察庁が公式の場でこうした見解を示すのは初めて。
(後略)

 ――――

 ●ギョーザ中毒事件、中国外務省が警察庁見解に「不快感」(YOMIURI ONLINE 2008/02/21/20:05)
 http://www.yomiuri.co.jp/feature/20080131-1068087/news/20080221-OYT1T00526.htm

 【北京=佐伯聡士】中国製冷凍ギョーザによる中毒事件で、警察庁が中国国内での混入の可能性が高いとの見方を示したことに関連して、中国外務省の劉建超・報道局長は21日の定例記者会見で、「現段階で、一方的で不完全な『証拠』に基づいて判断するのは、正しく責任ある態度ではない」と述べ、不快感を表明した。

 劉局長は「科学的で全面的な調査を経て判断しなければならない」と強調した。




 デブ報道官は質検総局が2月13日に開いた記者会見で魏伝忠・副総局長が、

「中国側の調査状況は、質検総局と公安部門が発表するものを正式なものとする」

 と語ったことを忘れているようですね。日本側の調査状況を警察庁が発表するのに文句をつけるとは筋違いも甚だしいところです。

 ●質檢總局:水餃事件是個案 與奧運食品安全無關聯(新華網 2008/02/13/20:27)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2008-02/13/content_7598408.htm

 それから、これもちょっと気になるところです。

 ●中国製ギョーザ中毒:唐・中国国務委員「申し訳ない」(毎日新聞東京夕刊 2008/02/21)
 ●社民党:唐家セン・中国国務委員の発言説明を訂正(毎日jp 2008/02/21/22:32)

 ――――

 それにしても質検総局、前回の記者会見では、
「袋を開封してまた密封することは、ハイテクなど使わなくても普通の人でもできる」という名言を残しましたが、今回も自らの責任を棚に上げた「お前が言うか」的な大ボケ発言をかましてくれましたし、親切にも残留農薬の注意喚起までしてくれましたし。……毎回魅せてくれるあたり、なかなかのエンターテイナーです。

 まあ現在のように「また中国製が」といった毒入りの新ネタが続いたり質検総局が踊ってくれている分にはマスコミも放ってはおけませんから、消費者の中国食品に対する危機感が弱まることは当分ないでしょう。

 胡錦涛が来日しても東シナ海ガス田問題が劇的な進展をみることはない、という観測が流れていますから、ひょっとすると毒餃子事件も長引く可能性があります。新ネタが続くのであれば、むしろ長期化する方が日本の消費者にチャイナフリーや食の安全に関する意識が根付くので良いかも知れません。中国とフフン♪は困るでしょうけど。

 個人的には、質検総局による前回の記者会見のプレスリリースである新華社電が、日本側のかなり断定的な報道とは対照的に「中国側に責任」という含みをかなり持たせた内容だったことに興味を持っています。

 ●【毒餃子】静かなる「祭」の始まり。(2008/02/14)

 あの新華社電が生きることになるのかどうかはともかく、「中国=有毒」キャンペーンがかなり盛り上がってきたことは事実。好ましい状況が形成されつつあります。




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(シリーズ:成都にメイド喫茶出現【1】)



  



 ……むう。

 と唸ることしか私にはできません。御覧の通り、四川省の省都・成都市に
メイド喫茶がオープンしてしまいました。

 噂を聞きつけた地元メディアが早速取材しているのですが、写真から察するになかなか本格的な、いわばアキバ系の本流をしっかりと踏襲した王道路線のメイドカフェのようです。

 ●『天府早報』(四川在線 2008/02/20/05:51)
 http://sichuan.scol.com.cn/sczh/20080220/200822055132.htm

 報道によると、店内は広さ約80平米とこじんまりとしたものですが、暖色系でまとめられたフローリング仕立てでテーブルが7つばかり置かれているほか、ソファなどがあって実にくつろげる雰囲気。

 壁際の書架にはマンガや雑誌が並んでいて自由に読むこともできます。やや高い一角に備え付けられたモニターからは「メイド文化を紹介するドキュメンタリー」が流されているとのこと。

 ……そうでしたメイドさんの話をしなければなりません。店内に一歩足を踏み入れるなり、

「お帰りなさいませ、御主人様♪」

 と、
メイド姿な妙齢のロリ系女子が楚々とした風情にて優しく微笑みつつ日本語(!)で出迎えてくれるそうです。何も知らずに入ってきた客はその異次元ワールドぶりに度肝を抜かれることでしょう。

 ――――

 メイドさんは合計4名。いずれも
『動漫』(アニメとマンガ)が大好きなアルバイトの学生です。ウエイトレスとしての仕事をこなすだけではなく、客の雑談に付き合ってくれたり一緒にトランプをやってくれたりする模様。この点からも、この店が「ブロパ」「神戸屋」「馬車道」「アンミラ」といった萌え制服系ファミレスからの派生型ではなく、アキバ流の正統派メイド喫茶であることがうかがえます。

 しかもピアノとバイオリンの写真からわかるように、
フェチ志向の萌芽も垣間見えるのは驚嘆すべきところです。

 実際に演奏してくれるのかどうかは不明ですが、ピアノは手つきからして素人のようです。バイオリンはそれっぽく見えなくもありませんが、弓を持つ右手が隠れているので断定しかねるものの、左手の握り方にやや疑問が残ります(御家人は少しだけバイオリンを使えます)。たぶん、どちらも記者のリクエストに応じてポーズをとってみただけではないかと。

 それでもこうした大道具小道具を配している心憎さはどうでしょう。アキバ文化の代表的存在のひとつである
「メイドさん」に対し中国流解釈が行われていることに感嘆せずにはおれません。いやこれは四川風味による「萌え」の発露というべきでしょうか?人類は麺類。

 ちなみにメイドさんたちと記念写真を撮ることができるかどうかについては、遺憾ながら記事は言及しておりません。

 ――――

 店長によると「店はまだ内々限定の試運転状態」だそうで看板なども出ていませんが、記者が取材したときには大学生風の若者が数人ずつ座る形でテーブルは全て埋まっていたそうです。記者はこの店を形容するに、

「これこそ日本のACGファンが好むメイド喫茶だ」

 として「ACG」を、

「アニメ、コミック、ギャルゲー」

 の頭文字だと紹介しています。いや「ギャルゲー」は違うだろ、ただの「ゲーム」だろ!……とACG系出版社の東京駐在員である私は内心大いに憤慨したのですが、どうせ店長が記者にそう説明したのでしょうからこれも四川風味ということで許してやりましょう。

 ただし正確には「ACG」は
「アニメ、コミック、ゲーム」の略称であって、「G」は断じて「ギャルゲー」ではないことを強調しておきます。

 そうでなきゃ「空母戦記」「鈍色の攻防」「戦闘国家3」「パンツァーフロント」「サカつく」しか遊ばない私の立つ瀬がありません。ギャルゲー絡みの制作物を手がけたことだって一度たりともありません。……PCエロゲー専門のソフトハウスを取材したことはありますけど。

 ――――

 閑話休題。記者は4名のメイドさんの中のひとりであるイサミちゃん(isami・22歳)にインタビューを敢行しています。景観デザインを専攻する大学生で、中学生のころから日本のマンガやアニメに親しむようになり、数年前から「メイドさん」にハマってしまったという
腐女子。コスプレの経験者なのかも知れません。

 両親はイサミちゃんのこうした趣味に表立って反対してはいないそうですが、大学から処分を受けて卒業できなくなるのを案じていると語っています。それでもメイドさんをやめられないでいるところに
業の深さを感じずにはおれません。

 ところで店の現状を「内々限定の試運転状態」と店長が紹介したように、このメイド喫茶に来るお客さんは目下のところ顔見知りのオタク仲間?に限られており、どういう空間なのかを承知の上で来店しているようです。メニューもまだミルクティー、レモンティー、ポップコーン、フライドポテトの4つしかありません。

 いちばん値段の高いものとしてコーヒーを一杯35~40元で出す予定だそうですが、目下のところはまるで
文化祭か学園祭の出店のようなもの。……とふと思えばこのメイド喫茶、何やら同人サークルの出し物のようでもあります。そもそも店長の白一宏君からして大学3年生。

「学生が立ち上げたベンチャービジネス」

 と表現してもいいのでしょうが、それよりも「仲間っぽさ」が前面に出ている観があります。

 同人の拠点として機能させようというのが狙いなのかも知れません。
一種の部室です。店長の白君も、

「御主人様とかメイドといったキャラ設定と独特な呼び方が社会に受け入れられるかどうかについては心配していないけど、噂を聞きつけてメイド見たさにACGファンが殺到して、お客さんをさばき切れなくなるのが不安」

 と語っています。社会的に認知されることには自信があるようです。

 ――――

 しかしオトナはそう見てはくれません。地元メディアによるこの記事もメイド喫茶について、

「日本の『動漫』におけるメイド文化をテーマにした喫茶店が、このほど一群の『動漫』ファンたちの喝采を浴びつつ密やかにオーブンした。この店の重点はメイドではなく『動漫』だと店長は強調しているが、こうした舶来品が一体どういうものなのか、国外ではどう扱われているのか、店のコンセプトを現実とすり合わせることができるのか。全てに疑問符がつくところだ」

 として、ある種のいかがわしさを漂わせる筆致となっています。またこのメイド喫茶について集めたコメントも、



 ●中華民族には優れた文化と伝統がある。たくさんたくさんの文化伝統を我々は伝承しなければならない。だから日本文化を過度に模倣する必要はない。特に上っ面だけを真似するなんてもってのほかだ。現代社会において人々はみな平等で、実際にはお手伝いさんがいたりもするが、それも平等の基礎の上に存在しているもの。メイドという呼び名はよくない。多様化した社会において模倣の出現は避けられないが、この喫茶店には規律を遵守し法を守り、また人の道から外れないようにしてもらいたいものだ。
(四川省社会科学院社会学所・胡光偉副所長)

 ●メイドや召使いというのは昔の社会での呼び方だ。それを現代社会で用いるのは穏当ではないね。結局は店の質とサービスで勝負は決まる。成都では過去にも奇怪なレストランが色々登場しては、社会に受け入れられずに消えていった。
(成都飲食店協会・彭小平副会長)

 ●メイド?召使い?そりゃ昔の言葉だろ。いま使うのはおかしいよ。時代が逆戻りした訳でもあるまいに」
(街のお爺さん)



 ……など、半ば新手の風俗扱いのニュアンスも含めて否定的なものに傾斜しています。何やら風当たりは強そうですね。

 ――――

 私は、ただ驚くのみです。「中国の特色ある社会主義」とは「中国は特殊な国情だから社会主義の歩み方も独特なものになる」ということで、要するに
何でもアリというスタンスなのですが、メイド喫茶まで許容する懐の深さがあったとは思いませんでした(笑)。

 まあ30年前にこれをやったら
反革命罪で銃殺刑は堅いところですし、20年前でも「ブルジョア自由化主義者」のレッテルを貼られて投獄されるか労働教養所送りは間違いないでしょう。政治的なハードルが低くなったことと引き換えに拝金主義が台頭している現状を反映しているもの、といえるかも知れません。

「いまの中国は最悪の資本主義をやっている」

 と喝破したのは今は亡き趙紫陽・元総書記ですが、逆に銭ゲバ全盛時代の到来によって非生産的な政治運動が過去のものとなり、おかげで極めて歪んだ形ながらも経済発展を実現したことで、中国にも「動漫」ひいてはメイド喫茶のような、
腹の足しにもならないサブカルチャーが呼吸する空間が生まれた、とみることもできます。

 そもそも……と私は思うのですが、開店資金をどうやって工面したのでしょう?もし親が出してくれたのなら、いかにも一人っ子世代だなあ、という感想が浮かびます。

 ――――

 私の世代ですと中国の大学=エリート養成機関で、大学生といえば全国から選り抜かれた俊秀、というイメージがあったものです。白君やイサミちゃんたちがこれほど趣味の世界に没入できるのも、大学がホワイトカラー量産工場へと質的転換を遂げたおかげでしょう。仕事柄「頑張れ」と応援してやりたい気持ちもありますが、

「だから卒業即失業になるんだな。粗悪炭揃いって訳だ」

 というちょっと意地悪な見方がどうしても先に立ってしまうのは、たぶん、こうして
余暇を楽しめるだけのゆとりが中国社会全体で共有されている訳ではないからでしょう。

 ともあれ、香港の仕事仲間や台湾の知人友人による強制連行、それから日本サイドでの仕事上の絡みによってメイド喫茶と男装喫茶その他にデビューを果たしている私としては、白君の店をのぞいてみたいところです。……といっても現実には無理ですから、成都近在にご在住の方の突撃「萌え」レポートをお待ちしております。m(__)m

 それにしても
「メイド文化」という言葉には間口が狭すぎて違和感を感じます。「秋葉」とか「御宅」で括る方が自然ではないかと思うのですが、まあいいか。中国の「動漫」族はメイド喫茶で萌えて癒されて、アキバを疑似体験する気分に浸るのでしょう。糞青ども(自称愛国者の反日信者)が騒ぐかも知れませんね。地元メディアによる今回のこの報道、すでに大手ポータルはもとより新華社や中国新聞社でも扱われて全国ニュースになっていますから、各界の反応が楽しみです。



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「上」の続き)


 そして今回の東アジア選手権。中国チームは初戦で韓国に敗れていますが、これで「フル代表は過去30年間、韓国に勝てないまま」という不名誉な新記録を樹立してしまい、「球迷」(ファン)もメディアも意気消沈していました。

 続いて迎えた日本戦。飛車角落ちに加えて金銀も落としたかのようなハンディ十分な日本代表に対し、審判が露骨に味方してさえくれたのに、中国はまるで歯が立ちませんでした。それをまざまざと実見してしまったのですから、ファンもメディアもそりゃ情けなくなることでしょう。

 ついでにいえばこの敗戦で、
「フル代表は過去10年間、日本に勝てないまま」という記録も達成されてしまいました。フルボッコであります。今回の日中戦を報じた中国国内メディアの大多数がこのことに言及しています。ネット世論も憤っています。

「おれはおれの親父を中国代表監督に就任させるよう強く求める。どうせ誰が監督でも負けるんだから、外国人に高いカネを払う必要はないじゃないか」

 という書き込みが大手ポータル「新浪網」で人気を集めていました。確かに監督だけ補強しても余り意味がありません。

「強い業界(プロ)がその強さを維持するためには、ポテンシャルに富んだ新人の補給源となる層の厚いアマチュアの存在が不可欠」

 というのは私の持論なのですが、中国の場合はプロリーグの腐りっぷりが著しいと聞いています。アマチュアの方はどうなのでしょう。今回の試合結果を受けてネット上では監督批判の声もたくさんありましたけど、より重要なのはサッカー強国になるためのシステム、要するにアマチュアを含めた業界の構造、体制の問題ではないかと私には思えます。

 腕利きの外国人監督を招聘しても勝てずにまた別の外国人監督を探しに回る、ということを繰り返している中国サッカー界からは、それこそ清朝末期における洋務運動の失敗や、日清戦争における北洋艦隊の生き写し、といった印象を受けます。あれから100年以上を経ているのに、本質は何も変わってはいないのではないかと。

 ――――

 日本の話もしておきましょう。TBSは「君が代」斉唱時に小細工をしたほか、観客のブーイングや審判の露骨過ぎる中国贔屓について
「これがアウェーというものです」といった言葉を繰り返し、まるでそれに言及する回数にノルマが設定されているかのようでした。……途中からは、

「前回とは打って変わって、ブーイングはありません」
「非常に清々しい観戦態度です」

 などと言ったりもして、これには醜悪の一言に尽きるとしかいいようがありませんでした。

 しかし、余りに度を過ぎていたからなのか、ピッチレポーターは半ばキレていましたし、解説者も呆れたのか途中からアナウンサーに同調しなくなりました。このため、特に後半の中継はまことに香ばしいハーモニーを構成していました(笑)。

 私自身は国歌斉唱時のブーイングと露骨過ぎる判定だけは問題だと思っています。日本と第三国の対戦ならともかく、地元中国代表の試合なのですから試合中のブーイングは珍しくもありません。アナウンサーがそこまで強調することが逆に余りにも不自然に感じられました。

 ただし行われているのはスポーツなのですから、試合中のブーイングも内容によります。ここで某巨大掲示板で拾った書き込みを紹介しておきましょう。



 1-0で日本がもうすぐ逃げ切れるかというときラフプレーで中国観客の興奮と荒れようが最高潮に達したとき、後半42分くらいだろうか、一段とボルテージが上がった観衆の興奮した声援が音声で流れたとき、それが中国応援の定番「加油」(ジャーヨー=がんばれ)ではないことが聞き取れた。

 はっきりと大声援はいつもの「加油」のリズムで、「殺狗」(シャーゴー)と叫んでいる。こりゃひどいと思った。「殺狗」の意味するところは「犬(日本人)を殺せ!」だ。スポーツの試合で万を超える大群衆がそう叫んでいる。

 すると途端に土井アナウンサーがおかしな説明を始めた。「いまの観客の声援の意味は中国監督の批判だそうです……云々」

 ははぁーこれはアナウンサー席には日本語の堪能な中国人が同席してるんだな、とすぐに判った。どんな名目・肩書きで日本向け放送の実況現場にその中国人が居るのか知る由も無いが、どんな目的で居るのかは明らかだ。監視と検閲だ。

 そいつが興奮した声援の意味を知られまいと間髪入れずに中国語の意味をすり替えて日本人の実況アナウンサーに伝え解説させたのだ。土井アナウンサーが定期的に言い始めるおかしなマナー賛美解説や、中国への遠慮したもの言い、などすぐ脇に監視官が張り付いている、とすれば腑に落ちる。

 中国発の放送はたとえ日本のTV局の生放送だろうがこういう破廉恥なことが平然と行われているのだ。そしてそういう実態は日本のマスコミ自身も隠蔽し、結果、加担しているのだ、ということがはっきりと実感できた実に嫌な一瞬だった。




 これ、私も観ていたのですが「殺狗」だとは気付きませんでした。この場面で「加油」とは珍しく健康的だなあとぼんやり思いつつ、アナウンサーの監督批判云々という言葉に「それは違うだろ」と違和感を覚えていたのです。

 本当に「殺狗」であれば「豚は腐っても豚」という言葉を改めて持ち出すほかありません。極端に硬直的な教育プログラムも含めて、中国社会の民度の低さが成せる業、と表現する他ないと思います。まあ「豚は腐っても豚」ですし、サッカーではなく「足球」ですし。……要するに「越えられない壁」なのです。



 【追記】
この「殺狗」はどうやら誤りのようです。正しくは「謝亞龍,下課!」。中国代表の余りの不甲斐なさに憤慨した重慶のサポーターによる、地元出身で中国代表の実質的責任者である中国サッカー協会の謝亞龍・副主席に対する「帰れ」コールだった模様。まあ「君が代」へのブーイング時点で「民度の低さが成せる業」であり、観客はすでに「豚は腐っても豚」状態なのですが、問題のコールが「殺狗」ではないことを強調しておきます。(2008/02/22/04:07)

 ●『成都商報』(新華網 2008/02/21/08:12)
 http://news.xinhuanet.com/sports/2008-02/21/content_7638641.htm




 ところで先日のエントリーにて、



 ところが今回の東アジア選手権において、日本代表チームは日本サッカー協会の意向によって食品は全て現地調達。飲料水だけは持ち込むことを許されたそうです。

 自国の代表チームにコンディション維持のため極力良好な環境を準備するのが協会の仕事だと考えていたのですが、どうやら違うようです。

 大会が豚社会で開かれることを承知の上で、しかもその豚社会が4年前のアジア大会でブーイング&プチ騒乱までやらかした反日傾向の強い前科持ちであることも承知の上で、それでも敢えて無策で通したというのは、牟田口廉也とか辻政信の生まれ変わりみたいな人間が協会を仕切っているのでしょうか。

 食の安全が保証されていない場所へ送り出して「アウェーに慣れろ」では、ガダルカナルやインパールと同じではありませんか。無茶な部分は大和魂で何とかしろとでも?嗚呼ここにも豚がいたとは……。orz




 と私は書きました。ここでいう「豚」とは「人間以下の畜生」という意味です。……で、この畜生が盛んに「日中友好」と唱えていたのを思い出して改めて嫌な気分になったので、日本サッカー協会に電凸してみました(笑)。「御」は私であり「サ」は財団法人日本サッカー協会のなかのひとです。



 御「昨日の試合について、川淵キャプテンからコメントは発表されているのでしょうか?」

 サ「まだ発表されていません。今後コメントを出すかどうかについても未定です」

 御「毒餃子問題などが起きていることもあって、川淵キャプテンは大会前に『日中友好』ということを盛んに強調されていましたが、昨日の試合では中国選手のラフプレー、審判の偏向裁定、君が代斉唱時のブーイングなど『日中友好』とはかけ離れた行為が相次ぎました。これについて協会の見解をお伺いしたいのですが」

 サ「いまのところ協会としての見解というものは出しておりません。これについては、こういう電話があったということを報告させては頂きます。その上で考えるということになるので、いまのところは何も申し上げられません」

 御「中国といえば食品の安全について日本など海外はもとより中国国内でも問題になっているのですが、そういう環境に水だけを持ち込ませて食事は現地のものを食べろ、というのは日本代表チームをバックアップする姿勢には思えません。食の安全が保証されていない場所へ選手を送り込んで食糧は現地調達、アウェーに慣れろ、という方針は如何なものでしょうか?」

 サ「これについても、先ほどと同じように上に報告させては頂きますが、いまのところお答えすることはできません」

 御「ところで、こういう電話は結構かかって来ているのでしょうか?」

 サ「はい、選手の身体を気遣うといった内容のものが」




 いまは「なでしこジャパン」の勝利を祈りつつ、畜生たる糞淵三郎氏のコメントを心待ちにしています。逃げるんじゃねーぞ糞淵。マスコミもしっかり追及するように。甘やかしちゃいけません。

 危ないかも知れないモノを食べさせられた上に、光化学スモッグで紫色に霞がかった試合会場で「足球」を見舞われた選手たちが可哀想じゃないですか。




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 いま現在の旬な話題であるサッカーの話をしましょう。……と書くともう主題から外れてしまいます(笑)。昨日の試合を「サッカー」呼ばわりしたらサッカーの神様の逆鱗にふれて、突如天が曇るなり雷鳴が轟いたときには落雷死していそうですから。くわばらくわばら。

 思うにあれは中国人にとってのサッカーなのでしょうから、ここは中国語で
「足球」と呼ぶことにします。プレーそのものだけでなく、観客のマナーなども含めて「足球」にはサッカーと違う約束事が色々あるようなので。

 私はこの試合を心待ちにしていた、というほどではありませんが、幸い在宅していましたので横でテレビをつけけたまま前回のエントリーを書いたり仕事をしたりしていました。ながら観戦であります。

 それでも試合開始前の国歌斉唱は姿勢を正して画面に向かいました。「君が代」が流れる寸前から会場を埋める中国人どものブーイングが巻き起こるお約束の展開。……と思ったら観衆の声が急に小さくなって「君が代」が大音量になりました。TBSのなかのひとも大変ですね。まあ、「足球」ですから(笑)。

 で、試合はどうなったかといえば、



 ●日本、1―0で中国破る…「南北対決」は引き分け(YOMIURI ONLINE 2008/02/21/01:29)
 http://www.yomiuri.co.jp/sports/soccer/representative/news/20080220-OYT1T00430.htm

 【重慶(中国)=軍地哲雄】サッカー男子の東アジア選手権決勝大会で20日、日本は中国を1―0で破り、通算成績を1勝1引き分けとした。岡田監督の再就任以来の成績は3勝2分け。地元中国は2連敗で、優勝の可能性がなくなった。

 4―5―1の布陣で臨んだ日本は17分、左サイドの駒野のクロスからこぼれ球を山瀬功がボレーで突き刺して先制。中国もその後、サイドを使った攻めを見せるが、日本はGK楢崎を中心に守備陣が安定。後半に入ると、日本がボールを支配し、中国の激しい守りにあいながらも危なげなく勝利をつかんだ。
(後略)



 御覧の通りです、と言いたいところですが、
「中国の激しい守り」ってあなた(笑)……じゃなくて軍地哲雄記者さんよ。ボールでなく明確に日本選手の足を狙ったタックルやキーパーの飛び蹴りを「激しい守り」と表現するのなら、記事文中では「足球」を使いなさい。サッカー自重w。

 私は昔むかーしに球蹴りをしていましたし、いまでもサッカーを観るのは好きです。ついでに「サカつく」も大好き。……だからといって自分がサッカーに詳しいとは思っていません。

 でも素人眼にみても、日本が前半に先取点を入れたあと実況していたアナウンサーが「中国の時間帯」というシーンを眺めていたら案ずるほどのことでもないので安心して自分の作業を続けていました。

 それが一段落したので後半途中から最後までは一応観戦してみたら基本的に終始日本ペース。ただ上記「激しい守り」の連続に唖然とした次第です。

 たぶん中国選手は実力という「越えられない壁」にぶつかって火病に走ったのでしょう。審判の不可解な判定、具体的には露骨過ぎる中国贔屓なジャッジでなかったら日本が3-0くらいで勝利していたと思います。

 まあ、でもこれはサッカーじゃなくて「足球」だからなあ、と自分にいい聞かせつつ私は観戦していました。でも考えてみたら日本代表はサッカーの試合をするために来ているのですから、「足球」に付き合わされて怪我させられたらたまったもんじゃありません。

 しかし現実には「足球」なのですから、下のようなアフターケアもしっかり行われます(笑)。



 ●日の丸燃やし、敗戦悔しがる=騒乱防止へ3000人動員-中国当局(時事ドットコム 2008/02/20/22:41)
 http://www.jiji.com/jc/c?g=spo_30&k=2008022001092

 【重慶(中国)20日時事】当地で開催されているサッカー東アジア選手権の男子で20日夜、日本に0-1で敗れた中国のサポーターは試合終了直後、小型の日の丸を燃やすなどして悔しがった。蔑称(べっしょう)を用いた「小日本を打倒せよ」などの叫び声も上がり、ペットボトルなどがグラウンドに次々と投げ込まれた。

 国旗が燃やされたのは熱烈なサポーターが陣取る最前列。2階のスタンドでも何かを燃やしたらしい煙が上がり、警備要員が制止に走り回った。北京五輪を控えた中国は応援マナー向上に力を入れており、この日の試合中は比較的平穏だったが、敗戦後はブーイングがやまなかった。

 地元当局は反日騒乱に備え、通常の2倍の3000人を警備に動員。日本人サポーターらは警官の「壁」に守られ、専用出口からスタジアムを離れた。選手たちも中国人観客の罵声(ばせい)を浴びながらも無事バスに乗り込み、大きな騒ぎはなかった。 

 第2次大戦中に旧日本軍の
(ry



 2004年夏のアジアカップのような優勝を争うトーナメント制の決勝戦(北京)、という気合いの入るシチュではなく、今回は中国がすでに1敗していて優勝の目が薄くなった、とはいえこれが「足球」の様式美(笑)。

 でも天を舐めてかかっちゃあいけませんよ。重慶は2004年夏の試合で観客が反日的行為で醜態をさらしたところ、直後に鉄砲水で100人以上の死者を出していますから、今回も死者50人規模くらいで、何か起こるかも(笑)。

 むしろ観客のベクトルの向きを変える出来事が起きていれば良かったのです。

 例えばですよ。発煙筒をたいた男を警官隊が取り押さえる際の小競り合いで流血となり死者が出ちゃうとか。もしそうなれば、「鬱憤晴らし」の対象が日本から「官」へと一転して観客はたちまち暴徒へと早変わりし、それが会場の外へと伝播して重慶市内で都市暴動、となっていても不思議ではありません。

 そういう社会状況ですし、こと重慶は流民同然の移住者(ダム建設による強制転居)が多い街。しかも「三線建設」で大型国有企業が少なくないために、その売却や破産やリストラを起因とする労働争議が頻発してもいます。

 もちろん、やるなら試合終了後に是非。あれだけ削られて無効試合では日本代表もたまったものではないでしょう。

 ――――

 一応改めて強調しておきますが、今回の観客のマナーは反日感情もあるにせよ、むしろそれを口実にした鬱憤晴らしの色彩が濃いように思いました。とはいえ鬱憤晴らしの具体的表現は反日的行為であること、まぎれもありません。

 それから、観客がスポーツ観戦など二の次で試合会場を鬱憤晴らしの場にしてしまったことで、中国がオリンピックを開催する条件を具備していないことが改めて証明されたといっていいでしょう。「君が代」にブーイングする時点でマナーとしては水準以下です。これもまた「越えられない壁」といったところでしょうか。

 先日も書いたように
「豚は腐っても豚」なのです。……誤解のないよう念を押しておきますと、これは「のらくろ」に沿った表現であって、それによると日本は犬、ロシアは熊、支那は豚。本物の豚とは無関係であります。

 それはともかく、試合後にあちこち巡回してみたところ、ネット世論も中国国内メディアも、日本に鉾先を向ける論調はほとんどありませんでした。中国代表の情けなさへの批判、不満、愚痴、罵倒の満漢全席です。不可解判定にもしっかりと言及されていて、
「審判のおかげで1-0で済んだのだ」という記事も出ていました。

 たぶん中国が日本に勝てると期待する向きが少なかったのでしょう。いや、期待はあっても自信がなかったのではないかと。勝てそうなのであれば、

「サッカーで抗日だ」

 というお馬鹿な声が幅を利かせていたと思います。

 ――――

 ところがこのところ、中国代表は日本チームに勝利していません。

 例えばU-22中国代表は一昨年だか昨年だか、日本チームとホーム&アウェイで対戦しています。まず自分たちのホームで日本チームを迎え撃った試合で2-0と完封されて面子を丸潰れにされました。

 このため日本に乗り込んでの試合には雪辱を期して陣容を改め、A代表経験者も多数参加させたにもかかわらず、これまた2-0で日本の勝利。

 昨年8月に瀋陽で行われたU-22の日中戦に至ってはホームである上に審判4人を全て中国人で揃えたのにも関わらずスコアレスドローです。フル代表同士の対戦となると、1999年以来、中国は日本に勝利したことが1度もありません。引き分けが精一杯。

 そんな訳で最近は「サッカーで抗日だ」なんていう声がネット上でも下火になっているのです。ただしこれは、

「どうせ負けるのだからサッカーに期待するのはやめよう」

 という意味であって、
スポーツに「抗日」をおっかぶせるという発想が消えた訳ではないのです。これ重要。

 ●いまさらですが奉天でのサッカーU-22日中戦。(2007/08/08)


「下」に続く)




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 中国の国家統計局が昨日(2月19日)、今年1月の消費者物価指数(CPI)を発表しました。前年同期比で7.1%上昇と、11年ぶりの上昇幅です。



 ●消費者物価、約11年ぶり高水準=1月7.1%、食品が高騰-中国(時事ドットコム 2008/02/19/11:57)
 http://www.jiji.com/jc/c?g=int_date1&k=2008021900319

 【北京19日時事】中国国家統計局は19日、今年1月の中国の消費者物価指数(CPI)が前年同月比7.1%上昇したと発表した。食品価格の高騰を主因に上昇幅は昨年12月の同6.5%から大幅に加速し、単月ベースでは1996年12月(7.0%)以来の7%台を記録した。今年も二ケタ成長が予想される中、インフレ懸念が一段と高まりそうだ。

 1月のCPIの内訳は、食品価格が18.2%の値上がりで、うち豚肉は58.8%と大幅に上昇した。食品を除くと1.5%アップにとどまったが、1%をわずかに超える水準だった昨年からは上昇基調が強まった。また、農村部のCPIが7.7%上昇と都市部の6.8%を上回り、低所得層への影響が強まっている。




「食品を除くと1.5%アップにとどまったが、1%をわずかに超える水準だった昨年からは上昇基調が強まった」
「農村部のCPIが7.7%上昇と都市部の6.8%を上回り、低所得層への影響が強まっている」

 の2点を指摘しているのはナイスだと思います。特に前者。各種原材料・エネルギー価格の上昇といった、今後の全面的なコスト増大につながる部分も「動き出した」ことを示唆しています。

 後者については、簡潔な記事の中で「農村部の物価上昇が都市部を上回った」というポイントを押さえたのが秀逸。低所得層への影響は農村・都市部に関わらず存在するというべきでしょう。何せ物価上昇の牽引役が食品価格の高騰なのですから。

 まあ例によって月ごとのCPI上昇率の推移を並べておきます。カッコ内の数字は牽引役たる「食品価格」の上昇率。これまたいつものことながら、中国当局が実情より悪い数字を発表することは考えにくいので、

「最低でもこのくらい物価が上がっている。現実はもっと厳しいかも」

 と考えておけばいいかと思います。



 2006年 12月:2.8% (6.3%)
 2007年  1月:2.2% (5.0%)
        2月:2.7% (6.0%)
        3月:3.3% (7.7%)
        4月:3.0% (7.1%)
        5月:3.4% (8.3%)
        6月:4.4%(11.3%)
        7月:5.6%(15.4%)
        8月:6.5%(18.2%)
        9月:6.2%(16.9%)
       10月:6.5%(17.6%)
       11月:6.9%(18.2%)
       12月:6.5%(16.7%)
 2008年  1月:7.1%(18.2%)




 国家統計局によると、今年1月のCPI7.1%上昇の原因は主に3点。

 ●昨年1月の基数が低かった。
 ●短期的に価格上昇が発生する春節(旧正月)前の消費シーズンが今年は1月にかかった。
 ●異例の雪害による影響。

 ……というものですが、一応は頷ける説明です。ただし、これだけで全てが説明できるとは思えません。

 例えば上に示したように昨年1月の基数が低かったのは事実です。春節前の消費シーズン、昨年は2月18日が旧暦の元日のため歳末商戦は2月に入ってからでした。ところが今年の元日は2月7日だったため、今年は1月下旬から消費シーズンに入ったことで物価に影響した、というのも確かでしょう。雪害の影響も当然ながらあるかと思われます。

 ただし、歳末商戦と雪害の影響は2月のCPIにより色濃く反映されることになると思います。それから季節変動などを吹き飛ばす「構造的要因」という最も重要な点には全く言及していません。

 まあいいか。先に数字を出しておきます。1月のCPIの内訳はこちら(▼は下落)。



 ■全体 7.1%
  食品類        18.2%
  衣類          1.9%▼
  たばこ・酒類      2.1%
  家庭設備用品・補修費  2.!%
  医療・保険関連     3.2%
  交通・通信関連     1.1%▼
  娯楽・教育・文化関連  0.3%▼
  住居関連        6.1%




 並べてみると食品価格の高騰がやはり目につきます。ただしより仔細に眺めると、

 ●「たばこ・酒類」のうち酒類は5.3%の上昇。
 ●「医療・保険関連」のうち薬剤(漢方薬含む)は11.4%増。
 ●「交通・通信関連」のうち自動車用燃料・部品は6.8%の上昇。
 ●「住居関連」のうち水・電気・燃料は5.5%の上昇。

 ……と、気になる品目が上昇傾向にあることがわかります。食品類以外でも庶民の生活に響きそうな分野が値上がり基調。今後が思いやられます。

 ――――

 そして「牽引役」である食品類の分類は下記の通り。



 ●食品類    18.2%
  穀物      5.7%
  食用油    37.1%
  肉類・加工品 41.2%
  豚肉     58.8%
  卵類      4.6%
  水産品     8.7%
  生鮮野菜   13.7%
  生鮮果実   10.3%




 昨年の主役だった「豚肉」は相変わらず飛ばしています。「肉類・加工品」も負けていません。政府が備蓄分を放出することで歯止め効果があるとしても、備蓄量にも限度があり、また飼料が世界的な高騰状態であるため、よくて価格の高止まりということになるのではないでしょうか。……これは「構造的要因」のひとつ。

 実際、新華社電によると専門筋は豚肉価格について、

「春節後に小幅な下落があるかも知れないが、価格は概ね高い水準で推移するだろう」

 とコメント。そりゃ春節は歳末シーズンに加えて雪害による需給逼迫で大変でしたから、「小幅な下落」は当然でしょう。ただこの雪害で家畜も凍死するなど、相当な被害が出ているのは今後の懸念要因。例えば広州向けの豚肉産地である湖南省が壊滅的被害を受けています。

 野菜なども同様。白菜のようなものはともかく、青菜類などは雪害の影響を受けています。供給元を別の産地に振り替えるなどの応急処置はとられたものの、雪害で作物がかなりやられているので需給逼迫は避けられないでしょう。2月にはさらなる上昇が予想されます。

 ――――

 とはいえ、真の「構造的要因」は穀物・穀物製品価格。雪害や毒餃子事件で随分昔のことのようにも思えますが、中国政府は今年から輸出関税引き上げや総量規制などによって国内向けの供給量増大を図っています。そのあおりを受けて、……具体的には穀物製品である小麦粉の品不足で香港が一時期「パン恐慌」に陥ったのは当ブログでも報じています。

 ●香港「パン恐慌」続報:高値のまま旧正月突入?(2008/01/11)

 特に懸念されるのは食用油。大豆がアキレス腱になりそうな気配です。もともと国際市場でも高値が続いているうえ、国内の大豆生産が大幅な減産となったため価格上昇には拍車がかかることでしょう。当ブログでは先月、豚肉よりも今年はこの食用油こそ物価高の主役になるのではないかという見方を示しましたが、早くも37.1%高とは恐るべきハイペースです。

 ●物価上昇は今年もハイペース。(2008/01/16)

 これまたかなり前の話のように感じられますが、穀物・穀物製品の輸出規制に加え、とうとう政府が価格統制令(価格違法行為行政処罰既定)を1月9日に打ち出し、広範な品目について「値上げ事前申請・許可制」を導入しました。こうした行政による有無を言わせぬ介入は、経済運営が手に負えなくなったときに中国でしばしば用いられる手段です。一種のハードランディング。

 この価格統制令は思わぬ雪害の来襲による混乱で一時解除となりましたが、撤廃された訳ではありません。

 ――――

 要するに、
輸出規制や価格統制令を敷かなければならないほど危険水域に入った状況が改善されぬまま、下旬に雪害と歳末商戦を迎えたのが1月の中国経済です。

 続く2月はすでに雪害からの復旧などで3分の2を消化してしまいました。「食品価格が落ち着きつつある」という報道が最近よく中国国内で流れていますが、

「前年同月比7.1%上昇・うち食品価格18.2%高」

 という尋常でない1月の状況に戻りつつあるということにすぎません。今後、「二中全会」「全人代」「全国政協」といった政治イベントが続くことになりますが、こと物価問題に関しては縁起の悪い数字が並ぶことになると思います。


 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2008-02/19/content_7629895.htm
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2008-02/19/content_7631452.htm
 http://paper.wenweipo.com/2008/02/20/CH0802200005.htm
 http://www1.appledaily.atnext.com
 http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2008&d=0219&f=business_0219_011.shtml




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【昔の観察日記10】へ)


 権力闘争、という政界にとっての「非常事態」期間は常にハイテンションという訳ではありません。山もあれば谷もあります。2005年春の反日騒動に名を借りた政争の場合は陣地争奪戦で旗色がめまぐるしく変化しました。

 この「昔の観察日記」に記されているトウ小平の「南方考察」(南方視察)を端緒とする政局の一大転換、これは現時点までにおける中華人民共和国にとっては最後の権力闘争といっていいかと思いますが、事態は改革派に追い風吹きまくりの一方的展開で推移しました。少なくとも私の眼にはそう映りました。

 ただし上述したように、この改革派の一方的な攻勢にも山も谷もありました。トウ小平が深センや珠海を視察して回りながら改革再加速の大号令を発している時期が山であり、そうした動きが一段落して中休みのような時期が谷ということになります。

 そうなると香港メディアの報道も落ち着きますし、トウ小平の行動を公表していない中国国内メディアも静かになります。でも実はそういうハーフタイムのような時間に政事における肝心カナメの約束事が交わされたり根回しが行われていたのかも知れません。そうだったとしても、水面下で行われていることですから如何に解説陣に恵まれているとはいえ一介の素人である私には何もわかりませんでした。

 しかし中国観察ヲタの血は騒ぐことをやめてはくれません(笑)。こういう谷間の時期にこそ何事かの気配を察する渋い観察眼がなくてはならないと、必死に、それこそ舐めるように『人民日報』などを読んでいたのを思い出します。

 今回はそういう「谷間」期におけるヲタの悪あがきのようなものです(笑)。



 ■政局の焦点は改革の「速度」へ ――過熱不安が経済運営を制約(1992年2月13日)


 先月下旬以来、トウ小平の経済特区視察など政治の慌ただしい動きがみられた。海外はもとより、国内各紙でも改革加速を唱える論文や指導者の発言が目立ったが、旧正月を過ぎてそれも一段落した観がある。

 87歳のトウ小平による長期視察は政治的に大きな成果を収めた。李鵬首相の発言も欧米歴訪以来、改革推進へより大きく歩み寄った内容となっている。一方で陳雲氏ら保守派長老は今回ほとんど動きをみせず、大枠はトウ小平の主張(改革加速=イデオロギー工作の相対的軽減)で落ち着いたとみられる。

 状況は改革派に有利だが、党大会人事での主導権獲得については未だ予断を許さない。トウ小平の珠海滞在中、多くの軍高官が同地を訪れたが、この際に軍部の支持取り付けに成功したかどうかが注目される。

 今月中旬に入って、国内各紙には企業人事、住宅、社会保障制度などといった、改革の実験的政策についての成果を報じる記事が増えてきている。

 保守色が強い『人民日報』(国内版)は農村改革を同時に強調することを忘れないが、これは農村政策へより大きな力を割くことで資本主義的要素の強い都市改革(企業改革など)を遅らせるという、保守派の消極的抵抗と読めなくもない。

 いずれにせよ、年間経済指標などが設定される4月の全人代を控え、改革の実務を論じる段階に入ったといえる。一方でこうした報道は、改革深化によって生じる「痛み」(企業改革だと減俸、失業など)の負担を国民に求めるものである。

 とはいえ、経済改革の急速な本格化はなお難しい。改革に対する議論の焦点をその範囲と速度だとすれば、トウ小平が強調するのは資本主義的政策の導入など「範囲」の色彩が濃いようにみえる。

 もちろん、広東省や特区では趙紫陽前総書記が志向したような急進的改革を実施できる条件が整いつつあり、トウ小平も今回、それにゴーサインを出した。中央の政策も趙路線を踏襲するものではあるが、速度については慎重な姿勢を崩していない。

 ソ連解体の衝撃から脱していない現在、民心の安定は至上課題。過熱した経済状況下で価格改革を実施し、大きな混乱を招いた88年のような事態は避けねばならず、各政策はやはり徐々に進められることになろう。

 12日には先月の工業生産が12.9%増大したと発表された。昨夏以来の減速措置は年末に奏効したかにみえたが、ここでまた上昇。一方でエネルギー生産が減少し、需給ひっ迫を深刻にしている。経済過熱化の懸念は依然消えていない。

 ――――

 ■トウ小平、人民解放軍の第2次兵員削減に着手か(1992年2月18日)


 『人民日報』(国内版)は14日付で、人民解放軍の兵士に実施している技術研修の成果を伝えた。この報道は、最高実力者・トウ小平が改革派による実権掌握とともに焦眉の急としている軍の近代化に向け、兵員削減に再び乗り出すことを示唆するものとして注目される。

 この記事には「(軍事・民間で通用する)『両用人材』育成を全軍が重視」の見出しがつけられ、この方針を引き続き堅持することをうたった「短評」が加えられている。

 記事はここ4年間で120万人の兵士が各種の技術研修に参加し、退役軍人100万人が各地域の開発に貢献していることを評価する内容。研修は財務・会計、経営管理から調理、建築、農産物加工まで多岐にわたるが、対象となる兵士の多くは退役を控えた老兵や兵役期間満了が近づき、農村に帰郷する兵士が多いとされる。

 「短評」ではこの「両用人材育成」を「77年12月、トウ小平同志によって打ち出された」、「軍にとって深遠な意義を持つ改革」と位置づけ、今後も継続することを強調。一方で各地方政府に対し、研修への協力と除隊した「両用人材」の雇用に力を入れるよう呼びかけている。

 「両用人材」育成は、専門技術の習得によって兵士の資質を向上させると同時に、経済建設に対する軍の貢献度を高めることが目的と説明される。しかし、トウ小平がこれを提起したのは、一方で軍の兵員削減(85年から行われた百万人削減)に備えた「転業訓練」を意図していたためといわれ、今回の「両用人材」再強調は、第2次削減断行の意志をトウ小平がみせたものと読むことができる。

 兵員削減は、限られた予算内で軍を近代化するための不可欠な要素とされる。しかし老将軍をはじめとした軍内部では、人海戦術などで知られる毛沢東の「人民戦争論」に根強い支持があり、政治的影響力の低下にもつながるという見地から削減反対論が主流(前回も難航し、これが胡耀邦総書記失脚の遠因になったという見方もある)。こうしたなか、トウ小平があえてこの改革に踏み切るとすれば、その背景には、

 ●湾岸戦争で米国はじめ西側のハイテク兵器の威力を見せつけられ、近代化の必要をより痛感した。
 ●老将軍の影響力を弱めることで、江沢民総書記ら現指導部による軍掌握を容易にする。
 ●軍全体に唯一影響力を及ぼし得るトウ小平自身、残された時間が少ない

 ……といったことがあるとみられる。

 問題は、政治局面がトウ小平にとって正念場であること。秋以降開かれる党大会以前に改革派で実権を掌握したいトウ小平には、現在、軍の支持取り付けがどうしても必要。

 この時期に兵員削減を打ち出して軍から予想以上の反発が出た場合、今後強まるとみられる保守派追い落としの勢いが弱まるばかりか、軍と結びついて反撃に転じる機会を保守派に与えかねない。トウ小平がこの折り合いをどうつけるか、全人代における国防予算の行方を含め、注目される。




「保守色が強い『人民日報』(国内版)は農村改革を同時に強調することを忘れないが、これは農村政策へより大きな力を割くことで資本主義的要素の強い都市改革(企業改革など)を遅らせるという、保守派の消極的抵抗と読めなくもない」

 などと、さすが「谷間」期だけに当時の私は何らかの手がかりを探そうと苦吟しているようです。2本目である2月18日付の「観察日記」で
人民解放軍の人員削減の気配を察したのはボンクラな私にしては上出来でした。

 一方的攻勢とはいえ、常にリスクを伴う権力闘争の渦中にあって兵員削減という人民解放軍に対する荒療治を行うことができるとすれば、それは取りも直さずトウ小平が軍部の支持取り付けに成功したことを示すものだからです。

 この人員削減は後に実施されることになります。恐らく『人民日報』に退役軍人に関する記事が出た時点でトウ小平はすでに軍部の支持取り付け・掌握に成功しており、事実上、権力闘争における勝利に当確マークが出ていたものと思われます。前回紹介した「珠海会議」がヤマ場だったのかも知れません。

 そして、政局はいよいよ決定的な段階を迎えることになるのです。




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「上」の続き)


 引き続いては当ブログにしばしば米国発の情報を提供して下さる「歩厘」さんによるレポートです。



 ■予想される米国での反応(歩厘) 2008-02-1601:37:06

 残念ながら、今、私はアメリカ在住ではないので、現地での反応を直接伺うことは出来ないのですが、現時点でググってみてもそれほど記事がヒットしないので、今のところ、反響はさして大きくないと思われます。今、アメリカでは、ノーザンイリノイ大学における発砲事件と、相変わらずのクリントンとオバマによる民主党大統領候補指名争いがヘッドラインを飾っているようです。ただ、この件に関しては、WSJ(ウォールストリートジャーナル)のみでなく、

 ●ニューヨークタイムズ
 http://www.nytimes.com/2008/02/15/washington/15fda.html?ref=us

 ●ロサンジェルスタイムズ
 http://www.latimes.com/business/la-fi-heparin15feb15,1,4709385.story

 ●シカゴトリビューン
 http://www.chicagotribune.com/features/lifestyle/health/chi-fri_bloodthinnerfeb15,1,7872870.story

 ……と他の主要紙も報じていますので、決して扱いが小さいわけではないと思います。

 ロサンジェルスタイムズは「この件は、昨年発生した中国産のペットフードやおもちゃに関するパニックに続いて、中国製品に関する国民の不安感を増すもの思われる」、シカゴトリビューンは「中国の工場に潜在する問題は、中国がアメリカに製品を供給する役割に、また別の観点を投げかけるだろう」と、いずれも中国製品に対する不信感が増すことを予想しています。

 ちなみに、ビジネスウィークに載ったAPの記事によると、14日のバクスターの株価は、2.2%ほど下がったようです。

 http://www.businessweek.com/ap/financialnews/D8UQ7M381.htm




 何とも至れり尽くせりの情報であります。このニュースがじわじわと広がっていくのが実感できます。「歩厘」さん、毎度のことながら本当にありがとうございます。

 また、某巨大掲示板の某スレで情報提供を御願いしたところ、打てば響くように詳報を届けてくれる方がいらっしゃいました。要点を適確にまとめた実に秀逸なレポートです。



 ■680 名前:名無的発言者 投稿日:2008/02/16(土) 13:41:52

 ◆「食品・薬品局が中国の工場を検査しないのは内規違反」(ニューヨークタイムズ 2008/02/15)
 http://www.nytimes.com/2008/02/15/washington/15fda.html?_r=1&adxnnl=1&ref=us&adxnnlx=
 1203134305-8EVdWZKzCNmZ5G/ve1NfLg&oref=slogin

 ●食品・薬品局の広報官「バクスターの薬が工場の検査なしで認可・販売されたのは間違いだった」
 ●食品・薬品局には薬品の販売を許可する前に工場の検査をする決まりがあった
 ●民主党議員で調査委員会(?)委員長「問題発覚以降、食品・薬品局が中国の工場の情報開示をできてないのは非常に問題」
 ●この委員長曰く「工場を検査したのかどうか、他にどんな問題があったのか、ここから供給を受けた会社が他にあるのかどうか公表していない」
 ●バクスターがヘパリンを作るのに使った成分は、サイエンティフィック・プロテインという会社から購入。その成分はウィスコンシン州ウォナキーと
 ●サイエンティフィック・プロテイン社は「中国の工場で国内のヘパリン工場同様の検査と品質管理の手続きを踏んだ」と発表。でもそれいつ?
 ●バクスター「サ・プ社の中国工場はこの半年内に検査をバクスターが行った。ウィスコンシンの工場は去年検査を行った」自前の検査はやってた模様だが…
 ●バクスター「最近の検査で、サ・プ社からバクスターに送られたロットに微妙な化学的差異があった。これがどう影響したのかは分からない」
 ●食品・薬品局は国内の製薬工場を2年に1度検査しなければならない。でも外国の製薬工場は13年に1度検査したかどうか。1年に30箇所の検査をするのがせいぜいで、中国には認可を受けた工場が700ある。
 ●食品・薬品局の元弁護士「ヘパリンの件で、食品・薬品局は汚染された製品の輸入を防ぐ人員がいないことが分かる」

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 ■681名前:名無的発言者 投稿日:2008/02/16(土) 14:13:02

 ◆「中国 製薬業者を検査せず」(ニューヨークタイムズ 2008/02/16)
 http://www.nytimes.com/2008/02/16/us/16baxter.html?ref=world

 ChangzhouSPLという工場は製薬の免許を持っていないため、中国の薬品局(?)は検査をしていなかった、とのこと。

「上海の西、常州市にある工場は、アメリカと中国の保健当局が塞ごうとしている法の抜け道にある類に当てはまるようだ。化学会社が中国当局の許可無しに医薬品を輸出する抜け道である」

「工場の所有者である米サイエンティフィック・プロテイン社は、この工場が中国当局の認可を受けていないことを確認する声明を発表。ただし、成分の原料は認可を受けた工場から供給されたものとのこと」

 中国の国家食品・薬品なんとか局のShenChen「分かっている限りでは、これは製薬業者ではなく化学成分のメーカーだ」


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 ■689 名前:名無的発言者 投稿日:2008/02/17(日) 00:22:54

 アメリカのインターネット上の報道を見てると選挙戦一色で、この殺人薬品のニュースはあまり目立ってない印象…

 アメリカの食品医薬品局が中国の工場に検査に訪れるというニュースを、工場の親会社があるウィスコンシン州の新聞が伝えてる模様。

 ●食品医薬品局、中国の工場を検査へ
 http://www.jsonline.com/story/index.aspx?id=718808

 中国(外国)の工場を検査するのは異例とのこと。日本に輸出された毒餃子のことは何も書かれてないけど、中国産の毒入りの食い物、おもちゃ、歯磨き粉が注目されてる中、バレンタイン用の中国製キャンディに金属片が見つかって、メリーランド州で回収されたというニュースが触れられている。

 バクスターの広報「中国→サイエンティフィック・プロテイン→バクスターのどの段階に問題があったのかまだ分からない」

 食品医薬品局の検査がいつなのか書いてないけど、「検査に合わせ停止していた工場を来週また稼働させる」と書いてあるので来週以降現地入りするのかな。




 無名戦士の皆さんの助太刀、実に心強い限りです。常州といえば、「鬼子孫」さん御提供のウェブサイトにヘパリン輸出企業ランキングが出ていました。常州市の企業が2社ランクインしていた筈です。そのうち1社はランキング第2位。これは工場を特定できるぞ……とワクテカでリンク先に飛んでみました。

 ●中国医薬保険品進出口協会
 http://www.cccmhpie.org.cn/mid/news_SH_detail.aspx?ID=20079414362414

 ところが、メンテ中なのか別の理由によるものなのか、該当記事にアクセスできませんでした。

 じゃあダメ元で中国国内のサーチエンジンでも使ってみるか、と「肝素 常州」でサーチ。……したところ、何と中国国内でもこの事件が報じられているではありませんか。正に灯台下暗し。

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 ●「華爾街日報中文網絡版」(2008/02/15/14:25)
 http://www.chinese.wsj.com/gb/20080215/chw144152.asp

 ●「新聞晨報」(2007/02/17/10:09)
 http://finance.ifeng.com/news/industry/corporate/200802/0217_2237_402069.shtml

 ●「広東新聞網」(新民網 2008/02/18/18:39)
 http://www.gd.chinanews.com.cn/2008/2008-02-18/8/61814.shtml

 何とまあ、タイムリーに詳報しているではありませんか。死者4名・アレルギー反応350名という被害についても明記。御家人チェック甘過ぎ(笑)。

 これらの記事によると、米国の製薬会社が口をつぐんでいた問題の工場は
「常州凱普生物化学有限公司」とはっきり特定されてしまっています(笑)。FDA(米食品医薬品局)が査察を行う対象も、この工場。ただしFDAの査察に対し、中国当局(中国国家食品薬品監督管理局)は消極的ひいては冷淡な姿勢のようです。とはいえFDAは強腰の模様ゆえ今後の展開に要注目です。

 ちなみに「問題の工場」としてロックオンされた「常州凱普生物化学有限公司」も相当神経質になっているようで、地元紙の取材などについては「責任者が全員不在」などの理由で頑なに拒否しているとのこと。電話取材も担当者に取り次がないという徹底ぶりで、これはもう「怪しさ満点」としかいいようがないでしょう(笑)。

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 それにしても、と思わざるを得ません。日本の毒餃子事件に関しては中国当局の情報開示が不十分で、とうとうキレた国内メディアが共同電の消息筋情報を転載するという挙に出て、質検総局が慌てて記者会見でを開いて弁明に努めるというドタバタぶりでした。

 ところが米国の抗凝固薬問題については米国側の報道から間髪入れずに即ニュースにして中国全土に流しています。一体この差は何?米国では死者が出ているうえ、アレルギー発症者が350名、そしてその40%が重篤状態。……という理由によるものと思いたいところです。

 それともやっぱり、……考えたくないことではありますが、中国当局に多寡をくくられ、思う存分に舐められているのでしょうか。日本のマスコミも、日本政府も。




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 中国毒餃子に関する報道が次第に勢いを失いつつことが懸念される日本のマスコミですが、まだまだ頑張っているところもあります。『毎日新聞』は特に奮闘しています。頑張れ。もっと頑張れ。

 ちょっと長くなりますが同紙の記事を転載します。



 ●中国生産食品企業:緊急アンケ、強い危機意識を浮き彫り(毎日新聞東京朝刊 2008/02/17/21:48)
 http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080218k0000m020086000c.html

 毎日新聞社の主要食品メーカーへの緊急アンケートから、中国製冷凍ギョーザ中毒事件をきっかけにした消費者の不安の高まりに対する企業の強い危機意識が浮かび上がった。人件費が安く、原料調達でも有利な中国への生産依存を各社が強める中で、生産拠点の移転は容易ではなく、ほとんどの社が安全管理体制の強化などで信頼回復を図り、現状の生産体制を維持する構えだ。

 アンケートに回答した26社は、いずれも自社工場や委託生産、中国市場向け工場など、何らかの形で中国に生産拠点を持つ。多い会社では20拠点に上った。半数以上の企業が個別の回答で社名を掲載しないよう希望し、「この状況では、答えることだけでリスクになる」と回答そのものを拒否する企業もあるなど、各社が消費者の反応に敏感になっていることをうかがわせた。

 実際に、事件を機に6社の売り上げが低下しており、味の素冷凍食品は「深刻な影響がある」と回答した。

 このため、安全管理体制の強化が各企業にとって急務になっている。事件を機に「対策をとった」「とる方向で検討中」と回答した11社以外にも、「状況に応じて見直す」(江崎グリコ)、「体制の再チェック段階」(調味料メーカー)などの回答があり、これらを含めると半数以上が何らかの対策を取る必要性を感じている。

 一方で、中国からの生産拠点の移転について、「検討している」と答えたのは、カゴメなど2社のみ。「中国で製造しているから危険というわけではない。(4割を切る日本の)食料自給率を考えると不安を早く解消し、安定供給体制を確保することが最も重要」との意見もあった。

 ただ、「まだ原因が解明されていないので情報収集に努めている」(調味料メーカー)などと明言を避けた企業も5社あり、今後、移転を検討する企業が増える可能性もありそうだ。【秋本裕子、工藤昭久】

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 ●中国製ギョーザ中毒:食品企業アンケート 消費者不安に危機感 中国生産依存強く(毎日新聞東京朝刊 2008/02/18)
 http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080218ddm002040101000c.html

 毎日新聞の主要食品メーカーへの緊急アンケートから、中国製冷凍ギョーザ中毒事件をきっかけにした消費者の不安の高まりに対する企業の強い危機意識が浮かび上がった。人件費が安く、原料調達でも有利な中国への生産依存を各社が強める中で、生産拠点の移転は容易ではなく、ほとんどの社が安全管理体制の強化などで信頼回復を図り、現状の生産体制を維持する構えだ。

 アンケートに回答した26社は、いずれも自社工場や委託生産、中国市場向け工場など、何らかの形で中国に生産拠点を持つ。多い会社では20拠点に上った。半数以上の企業が個別の回答で社名を掲載しないよう希望し、「この状況では、答えることだけでリスクになる」と回答そのものを拒否する企業もあるなど、各社が消費者の反応に敏感になっていることをうかがわせた。実際に、事件を機に6社の売り上げが低下しており、味の素冷凍食品は「深刻な影響がある」と回答した。

 このため、安全管理体制の強化が各企業にとって急務になっている。事件を機に「対策をとった」「とる方向で検討中」と回答した11社以外にも、「状況に応じて見直す」(江崎グリコ)、「体制の再チェック段階」(調味料メーカー)などの回答があり、これらを含めると半数以上が何らかの対策を取る必要性を感じている。

 一方で、中国からの生産拠点の移転について、「検討している」と答えたのは、カゴメなど2社のみ。「中国で製造しているから危険というわけではない。(4割を切る日本の)食料自給率を考えると不安を早く解消し、安定供給体制を確保することが最も重要」との意見もあった。ただ、「まだ原因が解明されていないので情報収集に努めている」(調味料メーカー)などと明言を避けた企業も5社ある。【秋本裕子、工藤昭久】

◇アンケート回答企業(50音順。1社は社名掲載拒否)

 アサヒビール▽味の素冷凍食品▽江崎グリコ▽エスビー食品▽カゴメ▽加ト吉▽亀田製菓▽キッコーマン▽キユーピー▽協和発酵フーズ▽キリンビバレッジ▽キリンホールディングス▽サントリー▽東洋水産▽日清オイリオグループ▽日清食品▽日清製粉グループ本社▽日本食研▽日本水産▽日本ハム▽ハウス食品▽不二家▽ミツカングループ本社▽明治製菓▽明治乳業




 長文ではありますが、ポイントは最後の企業名一覧だったりして(笑)。記事の趣旨とは異なるかも知れませんが、消費者にとってこれほど有り難い情報はありませんから。

 しかも、毒餃子に続く新たな問題も浮上して参りました。

 ●中国で加工の冷凍サバから「ジクロルボス」…52品目を回収(YOMIURI ONLINE 2008/02/18/20:42)
 ●冷凍サバからジクロルボス デンマーク産、中国加工(asahi.com 2008/02/18/21:56)
 ●中国加工のサバから殺虫剤 香川の会社が自主回収(共同通信 2008/02/18/22:15)

 叩けばまだまだ色々と埃が出てくることでしょう(笑)。もちろん、叩く度胸が日本側にあれば、ですけど。

 ――――

 さて標題の件。いうまでもなく、

 ●速報:中国製の抗凝固薬、米国で死者4名・アレルギー反応350名!(2008/02/15)

 の続報です。米国での出来事とはいえ、「死者4名・アレルギー反応350名」です。まだ中国の工場に問題があった、という結論には達していないのですが、毒餃子の折も折だけにインパクト十分。喰いついてもよさそうなのに、なぜか日本のマスコミは至って静かです。

 しかしながら某巨大掲示板には関連スレッドが立ちました。ネットの力を過大評価してはなりませんが、マスコミが足並み揃えてスルー、というニュースもどんどんネットで拾い上げられていく。世論誘導が機能しにくくなりました。まことにいい時代になったものです。むろん、それを逆手にとる動きには注意する必要はありますけど。

 という訳で今回はネット上に流れている情報を含め、皆さんから寄せられたコメントで続報エントリーとさせて頂きます。横着者というお叱りはごもっとも。ただし当方も仕事をしながらですから中国情報を集めるだけで手一杯なのです。どうか御容赦のほどを。

 繰り返しになりますが、某巨大掲示板に関連スレッドが立ち上げられました。



 ●【米中】ヘパリン投与で4人死亡・・・中国製の薬品成分が原因?FDAが調査を開始[02/15]
 http://news24.2ch.net/test/read.cgi/news4plus/1203041013/l50

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 ■1 名前:壱軸冠蝶φ★ 投稿日:2008/02/15(金) 11:03:33

 ●ソース:ロサンゼルスタイムス(依頼スレ91さんの依頼で記者が英文記事を翻訳)
 http://www.latimes.com/business/la-fi-baxter14feb14,1,6817997.story?ctrack=1&cset=true

 アメリカ食品医薬品局(FDA)は中国から輸入された血液の抗凝結薬が、激しいアレルギー反応を示し幾つかの死亡例と何百もの症例報告と直結している可能性があるとし調査を開始した。

 バクスターヘルスケア社のヘパリンは、いくつかの有効成分を中国で生産している。ただしFDAやメーカ側もそれが原因として発生したと判断するにはまだ早計だと話している。

 FDAによるとヘパリンを投与された何人かの患者は生命に危険が及ぶほどのショック症状を示し、呼吸困難や吐き気、嘔吐、多汗、急激な血圧の低下などといった症状が見られたとのこと。FDA職員は薬との直接な関係は不明としながらも、ヘパリン投与後に四人が死亡したと話した。

 中国国家食品医薬品局へ問い合わせても回答は得られなかった。

 近年中国は輸出で食品材料と同様、調剤成分の分野も活発化し主要な輸出業者となった。中国の貿易統計を引用したドラッグビジネスニュースによれば、ヘパリンとその成分に関する中国の輸出は2007年の前半だけで、前年同期間より13.7%増加し計5780万ドルに達したと
報じている。

 公表では広州だけでも49の会社がヘパリンとその成分を輸出しているとのこと。バクスター社は月曜日にヘパリンの複数回投与用瓶の製造を停止したと発表した。

 ヘパリンは注射薬で、ブタの腸から作られる。心臓のバイパス手術やその他の外科手術において危険な血液の凝固を防ぐために用いられる。バクスター社によると、全米で使われるヘパリンの半分は同社が製造しているとの事。

 バクスター社のスポークスウーマン、エリン・ガーディナーによると製造元は30年以上ヘパリンを製造しており、バクスターに対しても20年以上供給を続けてきたと話している。また中国でのプラントはこの数年稼動を続けてきていたとの事。

 バクスター社は去年米国内の製造元施設と、中国のプラントを検査し双方で良好な成績を出したと言っている。政府職員の話によれば、FDAは中国国内のプラントについては検査をしていないと話した。




 さあお待ちかねの中国「毒」フラグが米国でも立ちました。


「下」に続く)




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