日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 中国社会は相変わらず剣呑な空気に包まれているようです。まずはストライキから。

 安徽省・蕪湖市のタクシー運転手が12月17日、一斉ストライキに突入しました。同市のタクシーは1台残らず姿を消した模様。

 運転手たちはストだけでなく、蕪湖市政府庁舎前の道路に屯集し、交通を遮断。これに対し当局は防暴警察(機動隊)を出動させ、政府庁舎の向かいにあるホテル前に待機させているとのこと。







 ●「博訊網」(2008/12/19)
 http://news.boxun.com/news/gb/china/2008/12/200812191156.shtml

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 続いてはカネ返せデモです。原野商法の被害者ら約500名が12月18日、北京市政府庁舎前に集まりデモを行いました。被害者らは北京市長との対話を望んだものの北京市はこれを拒否。警察車両約20台など多数の警官を現場に配置したものの、官民衝突は発生せず、デモは2時間行われた後、無事散会しました。

 なお、デモ参加者には原野商法の被害者のほか、強制立ち退きで住む場所を追われた市民、また労働保障の待遇改善を求める労働者なども参加しています。

 ちなみに原野商法に関する北京でのデモはこれが2回目。前回は大規模な官民衝突となり日本メディアにも報じられています。





 ●「大紀元・中国語簡体字版」(2008/12/19)
 http://www.epochtimes.com/gb/8/12/18/n2366851.htm

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 最後は上海市・閔行区で発生したデモについて。まずは再開発事業のため土地を強制収用された同区・馬橋鎮の農民ら約1000名が12月15日、補償問題に抗議して鎮政府庁舎前でデモを敢行。デモは少なくとも18日まで4日連続で行われており、当局は警官隊数百名を現場に出動させているもののの、目下のところ官民衝突には至っていないようです。

 閔行区では華漕鎮でも15日、道路が不備のため、工事現場へ往来するトラックなど作業車両が巻き上げる塵や砂埃、また騒音などによる被害が著しいとして、住民たちがデモを行いました。

 この件は海外を含む各メディアにも報じられたため、華漕鎮政府は道路に散水するなどの措置を実施。……しかしこれは一日限定のポーズで翌日からは散水を行わず旧態に復したため、住民たちは怒りを募らせています。







 ●「大紀元・中国語簡体字版」(2008/12/19)
 http://www.epochtimes.com/gb/8/12/18/n2367060.htm

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 さて。

 「08憲章」についての特集及び続報を紹介している当ブログのエントリーを追いつつ今回の「スト&デモ三連発」というニュースに接すると、あたかも「08憲章」の出現で中国社会がにわかに慌ただしくなってきたように感じられるかも知れませんが、それは全くの誤りです。

 タクシー運転手のストや原野商法問題のように、「08憲章」以前から中国各地で大小のストやデモ、官民衝突などが相次いでいます。単に当ブログで報じなかっただけでして(笑)。

 もともと剣呑なのです。放っておいても「官」に対する抗議活動が毎日どこかで発生しています。中国社会はすでにそういう段階に突入している、ということです。

 そして、そういう状況下に投下された「08憲章」という極上燃料が各地の抗議活動にどういう影響をもたらしていくか、ということに個人的には興味があります。

 恐らく「08憲章」が中国社会に対して何らかの作用を及ぼすとすれば、それは劉暁波氏ら発起人や金鐘氏ら第一次署名者たちの思惑とは異なるものになると思います。

 もはや、自由とか民主といったお題目でどうにかなる状況ではないのです。憲法改正とか三権分立とか普通選挙制といった悠長な提案も、知識人レベルではそれが正道ではありますが、現実的には浮世離れしているといえます。それ故に当ブログで再三指摘している「08憲章」の「ポップな部分」、

 ●社会から公正さを失わせた中国共産党による一党独裁体制への批判。
 ●一党独裁制によって必然的にもたらされる党幹部の汚職、特権ビジネス、様々な横暴に対する断罪。
 ●一党独裁制の終結要求。

 ……といった庶民にもわかりやすい部分が広く浸透していけば、「08憲章」に背中を押されて蹶起、という事例も出てくることでしょう。

 ちなみに「08憲章」署名者名簿に登場してくる「維権人士」というのは、その多くが「不公正」の被害者たちです。

 都市暴動や農村暴動の形式として、地元政府庁舎を焼き打ちにする、という行動が象徴しているのは「『官』への憎悪」というべきものでしょう。これを平易に表現してみせたのが「08憲章」の「ポップな部分」です。

 このわかりやすい部分だけが独り歩きしていくのではないか、という可能性を私は考えています。むろん、その先にあるのが「08憲章」がいうような「民主国家への平和的な変革」などでないことは確かです。





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 先月下旬に、中国各地でタクシー運転手によるストライキが同時多発的に発生したことを御記憶の方も多いかと思います。

 日本のマスコミも詳報しています。

 ●低賃金…タクシー運転手の反乱 中国各地に飛び火(MSN産経ニュース 2008/11/26/20:24)
 http://sankei.jp.msn.com/world/china/081126/chn0811262025007-n1.htm

 ●中国でタクシーのスト続発、「二重三重の搾取」に不満爆発(YOMIURI ONLINE 2008/12/02/03:12)
 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20081202-OYT1T00102.htm

 「同時多発的」と書きましたが、正確には1本目の記事のタイトルの通り、重慶市でのストライキが当局の譲歩を引き出して成功した後、それを知った各地の運転手たちがそれぞれ団結してストに踏み切ったようです。

 注目すべきなのは、携帯電話かメールかは知りませんが、どうもタクシー運転手の間に地域を超えた連携めいたものが存在しているらしいことです。組織までは確認できませんが、それに近い動き,例えばストの実施や当局との交渉のノウハウなどが重慶発で伝授されているような気配があります。

 あるいは、重慶でのストの勝因として、ネット世論が運転手たちを強く支持したことで当局が柔軟な対応に変わった、という点も伝わっていて、ストの当事者たちによる「仕込み」が行われた可能性もあるでしょう。

 で、今度は教師です。

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 湖南省�底市の小学校・中学校・高校教師約6000名が待遇改善を求めて市政府庁舎前の広場に座り込み、3日連続のストライキを敢行しました。座り込んだ人数は時間によってバラつきがあるものの、1500~6000名強に達したというものです。

 中国の「市」というのは、日本でいう県ひとつ分くらいの規模があります。この�底市も5つの県・市(二級市)を抱えており、授業は自習扱いとして全ての地域から教師が結集したとのこと。人数からみてわかるように、少なくとも�底市内の各地域の間に、横の連携があったことは明白です。

 本来教師に対して支払われるべき手当てが出ていない、というのが主な不満の模様。�底市に対して上級部門からそれに相当する8000万元が支給されたものの、その行方がわからない、という話も出ています。使途不明金になってしまった訳ですね。

 それから河南省は洛陽市でも12月8日、教師の抗議活動が発生。こちらは校長など管理職を除く教師全員が病気を理由に欠勤するという形をとって行われました。最初にその行動に移ったのは洛陽市吉利区の吉利一中。

 ところがそのニュースが瞬く間に広まって、同区内の吉利二中、吉利三中、さらに区立小学校や洛陽電子中専といった他の学校もこれに呼応して午後から教師が一斉早退です。

 要求はやはり待遇改善。ここでも連携とはいえないものの、飛び火状態で区内の学校が午後から全面的な「欠勤スト」となりました。その足並みの揃いっぷりからして、問題の根深さを物語っているものと思います。

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 そして真打ち・重慶市の登場です。中国第四の直轄市ですが、恐らく中国国内では最も「民」による示威行動が盛んな街といっていいかと思います。

 理由は主に二つ。まずは三峡ダムなどの建設で立ち退きを余儀なくされ、不安定な生活を送る農民たちの移転先が同市だということです。

 もうひとつは、国有企業を数多く抱えていたため近年は労働争議が断続的に発生しているというもの。これは「三線建設」といって、毛沢東の時代に対外戦争に備え、沿海部の重要な国営企業(主に工業)を四川省などの内陸部に疎開させたことによります。

 その国営企業が国有企業へと名を変えた後,今度は経営が立ち行かなくなった国有企業を民間に売却するということになりました。問題はその売却益の行方と、それまで住宅から学校から病院まで国有企業が丸抱えしていたために、国有企業解散→民間への売却によって工員が生活する場を失い、また大量リストラなども行われて失業者がドカンと増えたことです。

 企業売却にどうも不透明な部分があること、そして今までの積立金や約束されていた福利が全て消えてしまったこと、さらに職を失って生活する術を失ったことに対する工員やその家族の怒りは察するに余りあります。……そんな訳で、重慶市といえばデモ・労働争議・暴動の多発地区というイメージが強いのです。

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 さて重慶市の教師によるストライキの件。

「教師の待遇が公務員より低くてはならない」(中国の教師は公務員ではありません)

 という規定に反し、実際には公務員に比べ待遇が著しく低い水準で抑えられていることに反発して、江津、黔江、合川、�江、�江、酉陽などの区や県の教師数万人が15日から一斉ストライキに入りました。数万人ですよ。

 政府庁舎前に屯集する者、校庭の門前に座り込んで校舎に入ることを拒む者など抗議のカタチは地区ごとにバラバラですが、「一斉スト」ということから、足並みが揃っている=連携、というニオイがするように思います。

 興味深いのは退職した元教師たちが支持表明しただけでなく、学生たちも教師の待遇改善を訴える行動に出たことです。

 以下に反体制系タレ込みサイト「博訊網」と法輪功系ニュースサイト「大紀元」で公開された画像を並べておきます。……あ、よく見ると檄文が回っていますね。大紀元の報道の末尾にこの檄文が全文掲載されています。見事な横の連携の成立といえるでしょう。


  

  

  

  


 ●「博訊網」(2008/12/16)
 http://news.boxun.com/news/gb/china/2008/12/200812161051.shtml

 ●「大紀元・中国語簡体字版」(2008/12/16/01:26)
 http://www.epochtimes.com/gb/8/12/16/n2364617.htm

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 こういう動きの中で「08憲章」が、その中でもポップな中国共産党と党幹部の汚職蔓延に対する批判と一党独裁終結を求める部分が広がっていくと、新たな事態を生むことになりそうです。

 ともあれ、当ブログではこれまでにも数え切れないほど官民衝突や「民」の蹶起を紹介してきましたが、広西チワン族自治区で昨年6月発生した、計画出産制度をめぐる農民たちの同時多発的暴動以外に今回のストのような類似例はありません。この暴動にしても、同時多発的ではありましたが、横の連携はその萌芽をみせたあたりで沈静化しています。

 ところが今回は広い重慶市内の教師に檄文を回しての蹶起です。のっけから「重慶の歴史は今日という日を永遠に記憶することであろう」と、行動を起こすことの意義を自覚しているあたりがさすがに教師。

 タクシー運転手の例なども含めて、「民」による意思表示のカタチが、次第に成熟しつつあるのを感じます。





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 いやーこういうこと、いつか起こるんじゃないかと思っていたんですけど、その兆しめいたものがとうとう起きてしまいました。モデルケースになるかな。なるといいんですけど(笑)。



 ●将棋でケンカ、相手を銃殺 中国の武装警察(MSN産経ニュース 2007/12/06/02:00)
 http://sankei.jp.msn.com/world/china/071205/chn0712052307008-n1.htm

 5日付の新華社電によると、中国河南省平頂山市で2日、武装警察の武器保管庫の管理人同士が将棋中にけんかとなり、1人が軽機関銃で相手を射殺した上、80発の銃弾を持って逃走した。警察が逮捕状を取り行方を追っていたところ、4日になって約1キロ離れた村の民家で発見。100人以上の武装警察が民家を取り囲み、銃撃戦の末に容疑者の男を射殺した。(共同)




 国営通信社・新華社及び香港紙『明報』の報道によると、事件は12月2日夜8時半ごろ、河南省平頂山市宝豊県で発生しました。加害者も被害者も「人武部」の武器庫管理人で、当直中のヒマつぶしに将棋を指していたら口論になって、……たぶん、

「あ、その手は待った!」

「だめだよー」

 とかやっているうちにエスカレートしてしまったのでしょう。2人の間には以前からいさかいがあったそうですが、激してしまうと場所が場所だけにダイナミックな展開です。アルコールの入っていた一方が席を外したかと思うと、ほどなく武器庫から
56式突撃銃を持ち出してきてズダダダダンと相手を射殺。弾倉4個(約80発)を持ってその場を離れました。

 この武器庫、新華社電では「人武部」のものとなっていますから、武装警察ではなく民兵の武器庫ではないかと思います。「人武部」って民兵とか予備役の軍人を仕切る部門ですから。『明報』でも民兵説です。犯人・張紅賓が上司と将棋を指していて口論となり……となっています。

 銃声を聞いて飛び出してきた同僚たちがあれこれ説得したのですが、犯人・張紅賓(38)は酒と発砲と殺人ですっかり逆上してしまっていて、そのあたりを一連射するなりすぐ逃走。

 さあ大変なことになりました。張紅賓は退役軍人だそうで、いわばその道の元プロが突撃銃に弾丸80発(40発前後との説も)を持って姿をくらましたのです。しかもテンションはかなりハイ。舞台となった河北省はもちろん非常呼集をかけて各所に捜査線を張り巡らし、さらに隣接する湖北省公安庁は容易ならぬ事態とみて一種の緊急事態宣言のようなものを省内に発令し、懸賞金2万元をかけて捜索を開始しました。

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 ところが、どこへ逃げたかと思われていた犯人・張紅賓,実は事件発生現場から約1kmしか離れていない自分の住む石灰窰村に夜9時45分ごろ姿を現し、知人である郭さん宅に押し入りました。郭さんは張紅賓の父親の友人とのことですからお爺さんでしょう。見知らぬ間柄ではなかったようです。先回りしていえば、郭さんにとってはそのことが幸いしたともいえます。

 さて郭さんを人質にとった張紅賓、突撃銃を片手に籠城の構え。ところが翌3日午前10時、学校から郭さんに電話があり、孫娘が病気だから迎えにきてほしいとのこと。

「行かなきゃ怪しまれる。ついでに食事の材料も買ってくるから」

 と張紅賓を説得して外出することに成功。孫娘を引き取り、本当に食事の材料を買い揃えて(笑)帰宅する途中、外出していた妻のお婆さんが付近に警官や警察車両がいることにビビっているのに出くわし、「家に入るな」と目配せして自分が中に入りました。

 ところがほどなく、郭さん宅の前に警察犬数匹が集まって吠え立てる気配に張紅賓はにわかに緊張。

「警察がこんなに早く来る訳がない。まあ飯にしよう」

 と郭さんは落ち着かせるように言ったのですが、張紅賓は目を血走らせて突撃銃を握りしめ、

「おれはこいつを放したりはしないぞ」

 と大声で叫ぶ始末。その数分後に郭さんの家は警官隊に包囲されました。様子を察して再び緊張する張紅賓に、

「警察はお前がここにいると突き止めた訳じゃなかろう。代わりに様子を見てきてやる」

 などと言いくるめて孫娘ともども脱出に成功(孫娘も連れていたんかいっ)。言いくるめられる張紅賓もどこか抜けている気がしますが(笑)、ともあれ3日の午後3時ごろから警官隊による本格的な対峙状況となり、引き続いて相次ぐ銃声。約2時間後に射殺された張紅賓が突撃銃や弾薬とともに引っ張り出されてきました。

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 この銃撃戦で郭さんの家は一方の壁が崩れ落ち、ひと部屋の天井が屋根ごと抜けてしまったそうです。……て、銃撃戦で壁が崩れたりするものでしょうか?という疑問に『明報』が答えてくれています。

 突撃銃という火力に退役軍人ということで
当局は済南軍区の野戦部隊に支援を要請し、装甲車2両、ロケット弾、歩兵部隊、狙撃兵などが出動。ところがこうして包囲網を固め、催涙弾を発射したりしながら行った説得工作にも張紅賓が応じませんでした。

 さればやむなし、ということで現場指揮官はとうとう実力行使を下命。装甲車が郭さんの家に体当たりして外壁を崩し、歩兵部隊が飛び込んで乱射、乱射、乱射。これでようやくケリをつけたとのことです。『明報』によると攻撃は軍サイドが担当し、警官隊は現場を包囲するのみで突入はしなかった模様。

 そりゃ装甲車でも体当たりしない限り民家の壁が崩れたり屋根が落ちたりはしないでしょう(笑)。ちなみに地元の警察当局はメディアの取材には一切応じていないそうです。

 ●「新華網」(2007/12/05/01:37)
 http://news.sina.com.cn/c/l/2007-12-05/013714450133.shtml

 ●「新浪網」(2007/12/06/06:29)
 http://news.sina.com.cn/o/2007-12-06/062913029675s.shtml

 ●『明報』(2007/12/05)
 http://hk.news.yahoo.com/071204/12/2kpp3.html

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 えー正直なところ事件の展開なんかはどうでもいいんですけど、どこか剽げた味があるのでつい一部始終を紹介してしまいました。

 私が「へー」と思ったのは、民兵の武器庫が県レベルで設けられていること。それから扱い方を知る者であれば、いざというときすぐ武器を持ち出して使用できる状態にあることです。民兵って確か突撃銃だけじゃくなくて、手榴弾や機関銃はもちろん、迫撃砲や携帯式対空ミサイルまで装備に含まれている筈です。

 例えば県全域なり県政府所在地で暴動が起きたときにですよ、民兵を味方につけるなり脅し上げて武器庫の扉を開かせてしまえば、暴動側が物凄く強力な火力を装備することになるのではないかと。

 もし農村暴動に民兵が合流したら……なんてことを常々考えていたんですけど、今回の事件のようにいとも簡単に武器が持ち出され、その犯人ひとりを始末するのに正規軍が装甲車まで出す騒ぎになるんですから、数千数万単位の暴動でそういう展開になったらそれこそ正規軍1個師団くらいを投入しないと鎮圧できないでしょう。

 全てが謎に包まれている四川省・漢源農民暴動(2004年)では、県全域で発生した暴動に十万人だかが参加し、この鎮圧のために警官隊が県外に出る道を完全封鎖しつつ正規軍2個師団を投入してようやく収拾したと噂されています。農民たちが人数だけでなく、侮れない火力を手にしていたからなのかも知れません。

 で、野次馬としては、モデルケースになるかなー、なったらすごいなー、そうであれかし、と期待してしまうのです。

 県単位で民兵の武器庫があるとすると、一党独裁政権とはいいながら意外に抜けているというか盲点ありまくりじゃないか、とか。暴動だけではなく、あるいは暴動に同調した県当局が率先して謀反を起こすのもアリじゃないですか。

 まあ社会状況が「和諧社会」(調和のとれた社会)構築を呼号しなければならないほど「不調和」の極みに至っている昨今だからこそ、そんなことを考えてしまう訳で。20年前にはそんなこと、夢想だにしませんでしたから。




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 何だか暴動ネタばかりですが勢いに乗って続けてしまいます。今回は続報ではなく速報です。

 広東省、汕尾市、東洲地区、官民衝突。

 これでピンときた人は暴動ヲチ歴最低2年以上の猛者。これに「突撃銃乱射」「3死8傷」「役人を人質に」といった言葉がスラスラ出るようなら免許皆伝です。……いや、目録ぐらいにしておきましょうか。

 余太話はともかく。現在進行形の中国における官民争議の中で最もよく知られているのがこの広東省汕尾市東洲地区の火力発電所建設をめぐる強制土地収用&官民衝突です。

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 前回紹介したケースではやはり地元当局が「官匪」としかいいようのないやりたい放題でしたが、同じ広東省でも汕尾市東洲地区の場合は地元当局が土地を奪っておいて補償金は出さないという暴虐無比。

 そこまで舐められたら農民も立ち上がります。というより耕地を奪われたため座視していれば餓死が待つのみですから立ち上がらざるを得ないでしょう。正に、

「官逼民反」
(「官」の横暴に追い詰められ窮しきった「民」が成否を問わずに蹶起する)

 を地でいくケースです。2004年にはもう揉めていましたから年季が入っています。真打ち登場といっていいでしょう。……まあ長期抗争ということなら同じ広東省内にも南海市や仏山市、順徳市などでやはり最低3年は争っている案件がありますけど、この汕尾市の東洲暴動を一躍有名にしたのはいわゆる「12.6事件」。

 御記憶の方も多いでしょうが、2005年12月6日、村民たちのデモに対し地元当局が武警(武装警察=内乱鎮圧用の準軍事組織)の一隊を繰り出してそれが官民衝突に発展。肉弾戦・白兵戦ならともかく、武警が村民たちに向けて何と突撃銃を乱射したのです。

 当時現場にいた農民の証言によれば乱射というより薙射。引き金を引きっぱなしで、要するに連射しつつ右から左へ左から右へと農民たちを横薙ぎにしたのです。……はい、空に向けてではなく人に向けての水平射撃です。当局発表でも農民側に「死者3名、負傷者8名」が出たとされており、香港メディアなどは「死者数十人」などとみています。

 ともあれ一県を挙げての農民蹶起に武警2個師団が投入され容赦のない武力弾圧が行われた……といわれているものの一切が闇に包まれている2004年秋の四川省・漢源暴動を別とすれば、1989年の天安門事件、そしてやはり土地強制収用に絡んだ定州事件(6死48傷)に次ぐ流血の弾圧劇となりました。もっとも定州事件での襲撃者は雇われ暴徒でしたから、「官」直々の武力弾圧としては正に六四以来なのです。

 ●官民衝突で武警が実弾射撃、農民に多数の死傷者。(2005/12/08)
 ●速報:惨劇再発の危機、「12.6事件」の村を武警が包囲!(2006/11/18)
 ●村落の変質?「官匪」化に対する自衛組織へ。(2007/04/26)

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 東洲地区の農民がこの惨事に挫けることなくいよいよ闘志を盛んにしたのは、もはや生活を賭けた戦いだからです。抵抗をやめたら生きていけないという一念が村民たちを団結させ、官への敵愾心を高めることになりました。

 当局が耕地を潰し山を崩して、その土で湖まで埋めて仕立て上げた造成地では火力発電所の建設工事が開始されているものの、農民たちのデモや作業妨害、さらに官民衝突などで工事がどれほど進捗しているのかは疑問です。

 ……いま私は「官民衝突」という言葉を使いましたが、厳密には「官が雇い上げたチンピラ」と村民たちの戦いです。戦えば場数を踏んでいる農民たちが必ず勝ちます。そこで最後に当局が警官隊を出動させて事態を収拾するといった小競り合いが断続的に発生しています。

 ただし「チンピラ」といっても実情は都市に出稼ぎに来たものの職にあぶれてしまった農民たちが駆り出されている可能性があるので小競り合いの一戦一戦がある種の悲劇といえるかも知れません。別の案件では実際に当局が出稼ぎ農民を雇い上げて地元農民と戦わせるといったケースも起きています。

 さてこの東洲地区の農民たち。抵抗運動の主要メンバーが地元当局に拘束されたと聞いて近くの役場に殴り込んで居合わせた役人複数名を取っ捕まえ、これを人質に当局との交渉を試みるといった事件も起きているほどで、すでに百戦錬磨の戦闘集団といっていいかと思います。普段は持ち出さないものの手製爆弾なども多数密造している模様で、少数民族地域を別とすれば中国最強の武装農民。

 ……で、その東洲地区で昨日(11月5日)、再び衝突事件が発生したと「亜洲自由電台」(RFA)が報じました。

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 東洲地区の農民がRFAの電話取材に対して証言したところによると、事件の発端は地元当局を後ろ盾とする建設業者が火力発電所の送電施設の工事に着手しようとしたこと。これを近くを通りかかった農民たちが発見したのです。通りかかったのではなく定期巡察隊かも知れませんが、ともあれ農民たちの目に映じたのは工事に取りかかろうとする土木作業員と、それをガードするようにわらわらと湧いて出た「屈強な野郎ども」百余名。

 この現場が「12.6事件」の発生地点に近い因縁の場所ということもあり、即座に農民の伝令が異変を伝えるべく集落に駆け込み急報すると、心得たもので直ちに村内放送が「敵襲!」を報じました。

 以前は火の見やぐらで半鐘を打ち鳴らしていたのですがこの点でも農民たちは進化したようです。各集落内に響き渡る
「敵襲!敵襲!」の村内放送に「そら来たっ」と応じて飛び出してきた農民は約2000名(早っ)。得物を持っていたかどうかは不明ですが、一群にまとまると直ちに現場へと急行しました。見事なまでの即応力&動員力です。

 そして現場に駆けつけた農民の一群と「屈強な野郎ども」の衝突と相成ります。ここからは私の妄想ですが、人数に優る農民軍は直ちに鶴翼の陣を展開して包囲殲滅を企図。「野郎ども」はただ暴れることしか知らない連中ですし、

「どうせ百姓♪」

 と多寡をくくっていたら相手が自分たちの20倍もの大軍を繰り出してきたのを見てたちまち戦意を砕かれたことでしょう。

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 すでに及び腰となった「野郎ども」に対し、戦慣れしている農民軍はワイドに展開して左翼から一撃、右翼から一撃と相手を揺さぶっておいて、魚鱗の陣よろしく正面で対峙していた主力部隊が頃合いはよしとみて一斉に衝き入り中央突破(妄想終了)。「野郎ども」は瞬時に突き崩されて潰乱、蜘蛛の子を散らすように敗走していきました。

 パーフェクト・ゲームを達成した農民たちは「野郎ども」が残していった車両を焼き打ちにして勝鬨を上げました。ちなみにこの車両からは鉈や棍棒などの武器が発見され、農民軍の戦利品となった模様。衝突・敗北の報に接した地元当局は村内の電話を盗聴するなどして事件の情報が村外へと漏洩することを防ごうとしましたがすでに時遅し(笑)。

 怒りが収まらぬ農民たちは今日(11月6日)ゼネストを実施する計画とのこと。今回の事件、襲撃したのは農民側とはいえ、元々の原因は地元当局が前相談なしに農民たちの耕地や山や湖を勝手に潰して取り上げたうえ、まともな補償協議などに一切応じないまま発電所建設工事を強行した当局の姿勢にあります。さらには当局への不信感を決定的なものにした「12.6事件」の記憶。

 士気旺盛で「徹底抗戦」が合言葉になっている農民たちの今後の健闘にも期待したいところであります。

 ●RFA粤語(2007/11/05)
 http://www.rfa.org/cantonese/xinwen/2007/11/05/china_land_clash/

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 それにしても、と皆さんお考えでしょう。私もそうなのです。死者まで出た武力弾圧や断続的に繰り返される衝突事件がこうして報じられていながら、省当局が本気で動いていない様子であることについてです。

 「12.6事件」の際には省トップの張徳江・省党委書記などが現場に乗り込んで査察の手が入ったようなのですが、事態に進展が全くみられないというのは、地元当局の背後に控える黒幕を省当局が斬って捨てていないからでしょう。

 張徳江は何かと評判の良くない男のようですが、「雇われトップ」である張徳江が省当局内に巣食った地元生え抜きの党幹部に体よく祭り上げられ懐柔されているのか、張徳江でも手を出せない相手が黒幕なのか、あるいは実は張徳江自身が黒幕なのか、よくわかりません。

 ちなみにナンバー2の黄華華・広東省長は地元出身ながら胡錦涛直系の「団派」(共青団人脈)に属しているものの、北京に強く訴えたりしていないのか、中央が介入したという噂も流れてきません。

 広東省といえばお隣は香港。パパラッチ的取材が得意な香港人記者がうろうろしていますし、地元で起きた事件を香港在住の親戚に電話で知らせた情報が香港メディアにタレ込まれるといったハンディがありますけど、数年以上を経ながら未だに解決していない土地収用に関する問題案件がちょっと多過ぎるように思います。

 ともあれ続報待ちですね。




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 先日紹介した官民衝突5個詰め合わせセットのうちひとつに続報が出ました。

 まずは既報分のおさらい。


(5)広東省で村落を武装封鎖した上で土地強制収用を実施。

 これまた官匪ですねえ。広東省恵東当局が10月25日、土地強制収用を目的に順寮鎮の石壁下村に警官多数を派遣して村の出入り口を封鎖。内外の往来をシャットアウトした上で、鉄条網を張って村内の耕地100ムーを囲い込むという挙に出ました。

 これまた土地収用に伴う補償額で折り合いがつかないため、業を煮やした地元当局が実力行使に及んだ、というものです。ただ当局側は警官隊を派遣したのは認めたものの、村民による外部との往来は自由で、警官隊は建設作業員が村民による不測の事態に遭うことを防ぐため派遣したのだと説明しています。

 もっとも、派遣されているのは警官隊だけでなくヤクザなども相当数混じっているという証言もあります。

 RFAの報道によると、石壁下村は人口約400名。耕地は400ムー余りあり、野菜やピーナツなどを生産して年間平均収入は1万元余りだったそうです。

 ところが、当局が示した補償額というのは1ムー当たり9000元。平方メートルに直すと1平米当たりたったの13元。これはひどい安値で、村民たちが起こるのも無理はありません。補償額が安い上に、耕地を取り上げられたら生活する術を失ってしまうのです。いわゆる「失地農民」ですね。

 現時点では収用対象地区のうち約10世帯が移転を拒んでいるとのこと。当局が武断的な行動に出る日も近いとみられています。

 ●RFA粤語(2007/11/01)
 http://www.rfa.org/cantonese/xinwen/2007/11/01/china_land_guangdong/




 「自由亜洲電台」(RFA)の続報によると、警官隊など百名以上が石壁下村の出入り口を封鎖して2日目には村内は半ば戒厳令状態。仕事や通学以外の外出は制限され、当局は農民たちが内情を外に漏らすことのないよう厳しい監視態勢を敷いています。……とはいえこうして日本のすみっこの糞ブログにまで紹介されているのですけど(笑)。

 農民たちは前相談とか農民たちの同意をとらずに耕地の強制収用という強硬措置に出た当局のやり方に怒り心頭の様子。とはいえ村の出入り口を塞がれているために手も足も出ない状態です。そんななか、当局による収用行動が11月1日に開始されました。

 当局は農民たちを村内に封鎖しておいて、工事車両など数十台と作業員多数を投入。シャットアウトされている村の出入り口付近の海に面した耕地にどんどん土をおっかぶせて造成地に仕立て始めました。村民によるとこの作業が少なくとも2~3日は続く見通しとのこと。

 村民の同意を得ずにこういう動きに出た鎮当局は相当なものです。しかも農民たちの実力行使を見越して村内に閉じ込める封鎖措置をまず敷いたという念の入れ方。こういう悪行三昧がまかり通ってしまうあたりに中央なり省当局の手が及ばぬ割拠の香りを感じます。ともあれ官匪としかいいようがありません。

 さらに村民たちを激怒させる出来事が。

 鎮当局が土地買収代金として500万元を整えたので村民たちに受け取りに来いとのビラがまかれたのです。ところがこのビラ、通達を出した部門名も印鑑も押していない怪しげな代物。

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 農民たちが激怒したのはビラそのものの胡散臭さではなく、収用する土地の補償額を「500万元」と当局が勝手に定めて話をどんどん進めている姿勢です。むろん当局と村民の間に買収協議書のようなものは存在していません。

 今回買収対象となっている耕地は400ムー余り(1ムー=6.7アール)で、1ムー当たり9000元というのが当局が農民たちの同意を得ずに勝手に決めた値段。ところがこれは常識外の廉価で、本来なら1ムー当たり10万元あたりが相場とのこと。10万元が相場の土地をわずか9000元で買い取ろうとし、実際そのための実力行使をサクサクと進めている当局に対して、目下のところ村民たちは手も足も出ない状態です。

 先祖代々耕してきた農地を市価の十分の一以下の屑値で奪われたらたまったものではありません。耕地を奪われてしまえば農民たちは生活の術を失うことになります。人口約400名の村ですからざっと計算して1人当たりの補償金は1万元前後。それがどのくらいの価値なのかは国家統計局がこのほど発表した数字を引っ張ってきましょう。

 それによると、今年1~9月の都市部住民の1人当たり可処分所得が1万346元で、村民たちに対する補償額と大体同じです。その程度のカネを握らされたところでまず生活費に多くが消えていきますから転業資金にもならないでしょう。

 ●「新華網」(2007/10/26/10:08)
 http://www.stats.gov.cn/tjfx/jdfx/t20071026_402440133.htm

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 むろん転業してうまくいくかどうかもわかりません。それまで農業で安定した生活を送ってきた村民たちにとっては到底受け入れ難い条件なのです。

 農民たちは当然反発します。当局はそれを見越して先手を打って警官隊で村ごと封鎖し、農民たちの耕地を次々に造成地へと変え始めた、というのが現段階です。

 この事件が胡錦涛や温家宝の耳に届いて、見せしめ的に地元当局を処罰して農民に手厚く報いる、という超法規的措置でも行われない限り、村民たちの泣き寝入り&失地農民化は避けられない情勢です。

 ちなみに胡錦涛や温家宝が乗り出して大岡裁きを行うとすれば、それはそれで胡錦涛政権が掲げる「法治の実現」を自ら踏みにじることになるんですけどね。

 どこまでいっても救いのない話です。同じようなことは全国各地の都市近郊型農村でも行われていることでしょう。……って、行われていることを先日、詰め合わせセットで紹介した訳ですけど。

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 党大会で「科学的発展観」が党規約に明記されたとかなんとかやっていても、末端レベルでは御覧の通り。別に中央からのお達しがまだ届いていないからやりたい放題、という訳ではないでしょう。

 抵抗勢力すなわち改革開放政策の既得権益層、なかなか元気なようです。胡錦涛ピーンチ!でも奴はたぶん例の無表情のままでしょう。額にちょっとアブラ汗が浮かんでいるかも知れませんけど(笑)。

 ●RFA(2007/11/02)
 http://www.rfa.org/cantonese/xinwen/2007/11/02/china_land_guangdong/




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 久しぶりに官民衝突いきます。うまい具合に反中共路線の米国系ラジオ局「自由亜洲電台」(RFA)の広東語版に5つ記事が並んでいましたので。

 それから農村暴動といえばお決まりの広東省、だけではないのもミソ。きっと私たちの可視範囲内にないだけで、全国各地で同じようなことが連日頻発しているんでしょうね。そしてそれが常態となっている中国の社会状況に改めて考え込まずにはいられません。

 ま、所詮は他人事ではありますけどね。……目下のところは。

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 (1)雲南省で土地強制収用をめぐり村民が警官隊と衝突、村民に負傷者数十名。

 雲南省は文山県の開化鎮で10月27日、公安(警官)や武装警察(武警=内乱鎮圧用の準軍事組織)など合計700名が同鎮攀枝花郷村・下寨村を急襲。住宅などを破壊したほか、耕地約20ムー(1ムー=6.7アール)を更地に。当然のことながら地元農民は約1000名を駆り集めてでこれに抵抗したものの、武装した公安や武警、しかも700名という人数にはかないません。農民約80名が負傷し、うち重傷者十数名は病院に搬送されたほか、農民20数名が連行されたとのこと。

 RFAが複数の農民に電話取材したところ、開化鎮当局は上記治安部隊700名のほか、裁判所関係者とデベロッパーを帯同するという手回しの良さ。しかも開化鎮の鎮長が自ら陣頭指揮をとり、政府が農民を怪我させようがぶち殺そうが犯罪にはならないのだと豪語。当局側はさらに消防車も出動させて高圧放水バババハバ。負傷者には80歳を超える老人や小学生もいたということです。

 事件の発端はお決まりの補償金問題。開化県当局は昨年、下寨村の農民に対し土地収用&開発計画を示し、公聴会でも開かれるのかと思ったら有無をいわさず、計画を実行に移しました。これによって耕地500ムーが更地にされて、そこには鎮政府庁舎(たぶんこのくらい立派なもの)と幹線道路を建設。

 さらに当局は今年、同村の一地区をぶっ潰して販売用住宅建設を企図したようです。農民たちは土地収用に対する政府の補償額が低過ぎると反発。しかし圧力に負けて多くの住民が退去するなか、移転を断固拒否していた6世帯について今回の強硬措置がとられた模様。農民は「日本鬼子もここまでやらなかった」とコメント(笑)。皇軍も官匪にはかなわないといったところでしょうか。

 ちなみに再開発を担当するデベロッパーは3年前にも雲南省の農地を廉価で収用し、村民を実力行使で追い払った前科が。といっても当局を後ろ盾にしているのですから罪にはならないのでしょう。

 今回の事件について農民は国営通信社・新華社に事件のあらましを知らせて報道してくれと求めたのですが、新華社の担当者は農民の境遇に同情を示しつつも「報道NGが出ている」と回答したそうです。

 それにしても鎮政府、見事な悪代官ぶりです。治安部隊にデベロッパーばかりか司法関係者を帯同したところがポイント。物権法が施行されようと「民生重視」「人民本位」が党大会で高々とうたい上げられようと、末端レベルでは司法は行政の言いなり。裁判所の人間が強制収用側に立っているのですから、訴訟を起こしても勝つ見込みはないでしょうね。

 それから公安・武警約700名を出動させたというのは、果たして鎮政府の権限でできることでしょうか。鎮政府が実行部隊となりつつも、背後に県当局が後ろ盾として控えているように思います。「県当局幹部=本当の『諸侯』」という図式がここでも垣間みられるように思います。それでたぶん省当局の副書記あたりに収まっている地元出身の叩き上げ幹部が「諸侯」の親玉ではないかと。

 ●RFA粤語(2007/11/01)
  http://www.rfa.org/cantonese/xinwen/2007/11/01/china_land_clash/

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 (2)武漢でデベロッパーお抱えの暴徒が農民と衝突。

 今度は湖北省・武漢市の出来事です。同市洪山区で土地強制収用に抵抗して移転を拒否していた農民約100名が10月25日、正体不明の屈強な野郎ども40~50名の襲撃を受けて殴打されるなどし、村民3名が負傷、うち1名は重傷で現在も入院中だそうです。「野郎ども」は開発業者に雇われたのではないかという憶測が農民たちの間で広がっています。

 襲撃事件の翌日にRFAの電話取材に応じた農民・徐さんによると、徐さんを含む農民3名が25日朝に強制収用の対象となっている耕地を巡回警備していたところ、デベロッパーの責任者が「野郎ども」40~50名を引き連れて村内に入り、「道路修理」の名目で対象耕地を占拠していたのを発見。カンカンカンと半鐘が連打されたかどうかは知りませんが、徐さんたちは直ちに村民数十名をかき集めて即刻出動し、「野郎ども」の行動を阻止すべく敵愾心むき出しで抵抗。しかしながら衆寡敵せず農民側に負傷者が出て、徐さんも頭部と腕に打撲傷を追ったとのことです。

 農民が抵抗しているのは補償額が少な過ぎるという点です。1ムー当たり5000元という開発業者の提示価格をは確かに低すぎ。村民たちは地元当局に何度も陳情したものの、反応はなしのつぶて。恐らく地元当局もこの強制収用に一枚かんでいるからかと思われます。農民たちには土地評価額を押さえるだけ押さえておいて、地元当局にたっぷり袖の下を贈っているであろうことは想像に難くありません。「一企業のやっていることだから俺たちゃ知らねーよ」というお約束通りの態度です。

 そして当局の黙認にお墨付きがでたところでデベロッパーは「野郎ども」を雇い上げて実力行使。この「野郎ども」は地元黒社会系のチンピラとされていますが、その中に職にあぶれた出稼ぎ農民が多数加わっている泣くに泣けない皮肉な可能性もあります。

 この開発業者・北湖経済開発公司は事件について否認していますが、同社は3年前、やはり洪山区の一村落の耕地1300ムーを1ムー当たり5000元で買い上げた前科がやはりあります。とはいえここまでやれるのですから行政と司法を籠絡していることは確実といえるでしょう。党中央が見せしめとして吊るし上げることがない限り、同社は安泰だろうと思います。

 ●RFA粤語(2007/11/01)
 http://www.rfa.org/cantonese/xinwen/2007/11/01/china_land_rural/

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 (3)深センの住民、ゴミ処理場建設反対を唱え警官隊と衝突。

 経緯の詳細にもよるでしょうけど、これは官民衝突で扱うにはちょっと微妙な事件ですね。

 深セン市福田区に位置する分譲マンション街・芸豊花園の住民数百名が10月24日、すぐ近くにゴミ処理場が建設されることに猛反発し、建設工事の開始に伴い現場に突入、警官隊多数との大規模な衝突が発生し、住民約100名が逮捕されました。建設工事は一時中断されたものの、連行された住民の消息は現在に至るまで不明です。

 事件は3年前までさかのぼります。深セン市当局が「民生プロジェクト」の一環として、芸豊花園付近の空き地に目をつけ、ここにゴミ処理場と公衆トイレを建設すると発表。これに対し、芸豊花園の住民たちが「マンションに近過ぎる」「幼稚園のすぐそばじゃないか」と猛反発。一貫して建設反対を唱えてきました。住民や幼稚園児の保護者による建設反対署名が当局に提出されてもいます。

 ところが当局は所定の方針を変えず、24日朝、福田区副区長の陣頭指揮のもと建設業者を現場入りさせ、工事にとりかかりました。ここで衝突が発生した訳ですが、当局は警察車両数十両を差し回して警官多数を投入、住民たちとの官民衝突と相成りました。

 幸い、というべきか、衝突が大規模なものだったため地元メディアも注目して騒ぎが大きくなり、建設工事は25日から中断状態。地元紙『深セン商報』によるとゴミ処理場は芸豊花園からわずか18mのところに建設される計画とのこと。ただし深セン市の条例によれば、「住宅から最低5mは離れていること」となっているため違法行為ではないそうです。

 官民衝突とはいえ、これはちょっと……と感じました。誰だって自宅の側にゴミ処理場が建設させるのはいい気持ちがしないでしょうけど、これは日本でも「よくある話」ではないでしょうか。私見ですが、いまごろ芸豊花園で選出された代表者が住民の意見をとりまとめて、補償額について当局と交渉しているような気がします。マトモなゴミ処理場なのかどうかはわかりませんが、このケースにおいてはカネを払えば住民は大人しくなるように思います。

 それにしても連行された住民約100名はどうなってしまったのでしょうか。

 ●RFA粤語(2007/11/01)
 http://www.rfa.org/cantonese/xinwen/2007/11/01/china_rights_residents/

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 (4)官民衝突はや3年、要地収用の補償金を役人が着服か。――広東省中山市。

 さあ官民衝突のメッカともいうべき広東省の登場です。しかも2003年から断続的に発生している官民衝突なので、農民たちも筋金入りです。争う理由は補償額が低過ぎることと、低すぎる理由がタイトルにある通り、補償金の一部を地元当局の役人が着服しているのではないかという疑惑によるものです。

 現場は広東省中山市の石岐村。発端は不動産ブームに乗った開発計画で耕地を収用するというものですから、恐らく都市郊外型農村と思われます。

 4年近くも引きずっている問題なので「また衝突か」といったところですが、10月24日、農民の一人が開発業者のもとを訪れて村民側の言い分を改めて説明したところ、警備員にポカリと殴打され負傷。このニュースはたちまち村内に広がって農民たちが出撃、衝突が発生したものです。

 当局はどうせデベロッパーと同腹なのでしょう。通報を受けた警官隊100名余りが現場に突入して衝突を終息させましたが、この過程で負傷者が多数出ている模様です。

 ただし農民側としては生活がかかっているのでこれで引き下がる訳にはいきません。開発業者の会社前に農民120~130名が善処を求めて座り込みに移行。

 「着服疑惑」も2003年にさかのぼるのですが、不動産開発のため村内の土地7000ムーが次々と売りに出されました。農民によると、相場に照らせば数十億元の売却益が村民たちに還付されるべきところ、村長によれば村民に回る分は合計しても1億元足らず。村民が毎年受け取る補償額は年間1000元余りですから、「着服疑惑」が生じるのも自然なことでしょう。

 村民たちは座り込みのほか、村当局である村委員会にドラを鳴らしたりしながら連日デモも行っているそうです。この件に関して当局は全く非を認めていませんから、抗争はまだまだ続きそうな気配です。

 ●RFA粤語(2007/11/01)
 http://www.rfa.org/cantonese/xinwen/2007/11/01/china_rights_land/

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 (5)広東省で村落を武装封鎖した上で土地強制収用を実施。

 これまた官匪ですねえ。広東省恵東当局が10月25日、土地強制収用を目的に順寮鎮の石壁下村に警官多数を派遣して村の出入り口を封鎖。内外の往来をシャットアウトした上で、鉄条網を張って村内の耕地100ムーを囲い込むという挙に出ました。

 これまた土地収用に伴う補償額で折り合いがつかないため、業を煮やした地元当局が実力行使に及んだ、というものです。ただ当局側は警官隊を派遣したのは認めたものの、村民による外部との往来は自由で、警官隊は建設作業員が村民による不測の事態に遭うことを防ぐため派遣したのだと説明しています。

 もっとも、派遣されているのは警官隊だけでなくヤクザなども相当数混じっているという証言もあります。

 RFAの報道によると、石壁下村は人口約400名。耕地は400ムー余りあり、野菜やピーナツなどを生産して年間平均収入は1万元余りだったそうです。

 ところが、当局が示した補償額というのは1ムー当たり9000元。平方メートルに直すと1平米当たりたったの13元。これはひどい安値で、村民たちが起こるのも無理はありません。補償額が安い上に、耕地を取り上げられたら生活する術を失ってしまうのです。いわゆる「失地農民」ですね。

 現時点では収用対象地区のうち約10世帯が移転を拒んでいるとのこと。当局が武断的な行動に出る日も近いとみられています。

 ●RFA粤語(2007/11/01)
 http://www.rfa.org/cantonese/xinwen/2007/11/01/china_land_guangdong/

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 ……以上、中には民衆側がゴネ得で粘っているケースがあるかも知れませんが、当局の実力行使はもってのほか、というべきでしょう。

 ともかく、胡錦涛政権の掲げる「民生重視」「人民本位」などが末端レベルにくると一顧だにされていないことがわかります。「諸侯」とデベロッパーの官民癒着もいまなお健在。

 せっかく制定にこぎつけた物権法も司法が行政に籠絡され隷属させられている現状においては、どこまで実効があるか甚だ疑わしいといわざるを得ません。

 「和諧社会」(調和のとれた社会)というスローガンがあまりに空疎ですね。もっとも、あまりに不調和だから「和諧社会構築」が叫ばれている訳ですけど。




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「STOP THE NEW-WAVE」であります。古くてすみません。

 日本代表がその世界では知る人ぞ知るサウジに負けてしまったので私は士気最低。orz

 記事漁りにも当ブログにも打ち込める心境になれない訳だ……いや訳です。まあ能書きはいいか。さあ!一発ビシッと決めようか。こんなネタたぶん「柴犬」さんしか知らないし俺たちゃあもうワカモノじゃねーんだ。

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 という訳で今宵は元気がないので小ネタでお茶を濁します。といってもたぶん中国では前代未聞の出来事ですから歴史的事件といえるかも知れません。

 「STOP THE J-POP」かどうかは知りませんが、7月21日に内モンゴル自治区・オルドス市でロックイベントが開催され、その場で観客と警官との間に衝突が発生、観客多数が警官に殴られて負傷した模様です。

 衝突の原因には諸説あり、入場券にまつわるトラブルとも観客が持参した横断幕を警官が没収したのが発端ともいわれていますが、ここでは後者を採ります。

 まずはこの催しについて。「オルドス草原ロックンロールミュージックフェスティバル」(2007緑色旗幟)と銘打たれた初開催のロックイベントで、中国国内のほか台湾や香港からもミュージシャンが参加したとのこと。

 事件はそのイベント当日、北京からやってきた観客が、

「俺様がロックだ」

 と大書した自製の横断幕(笑)を持って入場しようとしたところ警官隊に止められ、横断幕は警官に没収されてビリビリ。

「あっこの野郎何すんだよ糞オヤジ」

 てな感じで北京人が怒ってタマーダ衝突勃発。他の観客を巻き込む騒動になったというものですが、オーディエンスに過激な挑発を試みた警官の方が何やらこのイベントにふさわしい気が(笑)。詳細は不明です。

 ……ただそれだけのニュースではありますが、ともあれロックイベントでの官民衝突はたぶん前例がないと思うので、中国史上初の快挙としてここに書き留めておきます。

 ●『明報』(2007/07/23)
 http://www.mingpaonews.com/20070723/ccd1.htm

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 それにしても中国のロックとはどんなものなんでしょう?遺憾ながら私には全く想像できません。

 大学生のとき「中国初のパンクバンド」との鳴り物入りで確か「中国龍」とかいうバンドのLP(レコード!)が出ました。中国つながりですし今は亡き月刊『宝島』の愛読者でもあったので私はそれを買いました。

 内容は稚拙の一言。セックス・ピストルズの名曲「God Save the Queen」をカバーしていました。他にオリジナル曲も確か収録してあった筈です。その心意気は買いましたが「これがパンクか?」と落胆してお蔵入り。たぶんまだ実家に置いてある筈です。

 数年後、留学先の上海にはロックもパンクもありませんでした。その代わり民主化運動がありました。

 教師も学生も授業をボイコットしてデモ隊を編成して繁華街を練り歩き、あるときは当時上海のトップだった江沢民の家まで押しかけて「江沢民出てこい!」と叫んだり、その帰路に人気の絶えた街路で単身になったところを私服に尾行されたりして、そういう毎日や、デモをかけるたびに皆で歌った「国際歌」(インターナショナル)そのものがロックでありパンクであったようでもあります。

 現在は上海や北京ならアマチュア向けのライブハウスとかインディーズCDとか路上ライブとかがあるのでしょうか?

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 その後渡った香港にも洋楽を別とすれば、つまり香港人によるロックもパンクもありませんでした。テレビに出てくるのは香港歌謡ばっか。「BEYOND」をロックバンド扱いするのは悪い冗談です。

 仕事仲間は大半がACG系(アニメ・コミック・ゲーム)のヲタばかりでしたから香港歌謡&J-POP&声優歌謡&特撮歌謡&ACG歌謡で私にとっては人外魔境。連中は昼休みにシーケンサーをいじっている私をいつも不思議そうに眺めていました。もちろんYMOも坂本龍一も知りません。

 義弟(配偶者の弟)がヘビメタ好きでボンジョビをよく聴いていて、一応ギターをいじっていたので要らなくなったリズムマシンをあげたら喜んでくれましたけど、楽器店の楽器や楽譜の品揃えの貧弱さからしてああいうのは少数派だった筈です。いまは違うのでしょうか?

 台湾では仕事に撤してというか徹さざるを得ず、平均睡眠時間2~3時間であとは職場にいるといった別世界で呼吸していたため俗世間のことは全くわかりませんでした。

 ただ一度だけオンガクとの接触がありました。何が何だかわからぬままに私を主役にしたイベントが行われてテレビで観たことのある芸能人のオバサンが司会を務めて、台湾では有名らしいゲストの女の子4人のグループが途中で1曲歌って奇怪な催しに華を添えてくれました。当時でいえばMAXとかSPEEDといった感じです。台湾歌謡なのでしょう。

 部下の多くはJ-POPを聴いていました。アキバ系の同人誌屋はありましたけどインディーズ専門店があるかどうかといったことは確認する余裕がありませんでした。仕事仕事……というより雑務仕事雑務でオンガクどころじゃなかったので。

 ――――

 オルドス草原ロックフェスがどのようなものだったのかは知りませんが、いまの中国社会には現実をえぐり出すヘビメタと都市暴動の先頭に立つパンクスが必要かと思います。

 現状では糞青(自称愛国者の反日信者)より政府庁舎を炎上せしめる農民たちの方がパンクバンドのライブを地で行っているような。どうせなら外見もパンクスにしてしまえばどうかと。メタルもメタルの格好をするのです。武警との戦いがあるので行動が制約されるロンドンブーツは履かなくていいですけど。

 ともあれ、それによって中国社会がいよいよ、

「YOUはSHOCK」

 の世界に近づくことになるでしょう。……って元気のない余太ですみません。m(__)m

 前にもどこかで書きましたが、10年経っても私にまだ余力が残っていたらバンドを再結成して香港で路上ライブをやるつもりです。戸川純の「パンク蛹虫の女」にならって私は劉徳華(アンディ・ラウ)の「忘情水」「纏綿」あたりをパンクバージョンにアレンジしたいです。あとは仲間に任せて、私は中共の痛点を刺激するオリジナルの大毒草歌謡を数曲。10年後の香港ですからそんなことやったら捕まって強制送還かも知れません。いやマジで。

 うー。やはり今夜は悔しかったり残念だったりで眠れそうにありません。




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 広西チワン族自治区で今年5月、「計画出産利権」に絡むとみられる当局の無茶苦茶な罰金取り立てとこれに怒った民衆による農村暴動(地元地方政府庁舎への破壊・放火など)が発生したことを御記憶の方も多いかと思います。

 同時多発的に発生したこの暴動は伝播するように他の地区にも広がるといった前代未聞の展開をみせました。

 ●農民蹶起!広西博白県下の各鎮で同時多発暴動、庁舎炎上。(2007/05/21)
 ●続・広西同時多発暴動:不妊手術より上納金。(2007/05/23)
 ●広西農民蹶起2:またも同時多発暴動、県外へも飛び火!(2007/05/25)
 ●広西農民暴動がまたまた飛び火、ついに火炎瓶も出現。(2007/05/31)

 その続報がようやく出ました。……といっても首謀者?とされる農民2名に対する裁判所の判決言い渡しです。

 ただ、その判決の内容が味があるというか何というか。「邪推」にはもってこいの内容なのです。

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 ●広西博白の容疑者2名に政府文書偽造・民衆煽動の判決(新華網 2007/07/23/16:25)
 http://news.sina.com.cn/c/l/2007-07-23/162513509575.shtml

 国営通信社・新華社による配信記事ですが、「広西博白」とは「広西チワン族自治区博白県鳳山鎮」のこと。博白県は最初に暴動が発生した地区ですが、その中に「鳳山鎮」が含まれていたというのは初耳です。犯人2名に対しては「彭某」「李某」と名前は伏せ字。氏名を明らかにするほどの重罪ではない、ということでしょうか?

 新華社電によると、この2名のうち「彭某」は、計画出産に違反した世帯に対する追徴型罰金の「社会扶養費」を5月18日に徴収され、地元政府の計画出産活動に不満を抱いたとのこと。この「社会扶養費」は上記エントリーにもしばしば登場しますが計画出産に違反し罰金を支払った家庭からも改めて多額の罰金を徴収するという滅茶苦茶なものです。

「お前の家で余計に生まれた子供についての罰金は徴収済みだが、その子供を社会が養ってきたという点に照らして年齢に応じた罰金を徴収する」

 という理屈で、農民が支払いを拒むと当局に急きょ雇われた棍棒・ツルハシ装備の若い衆がトラックでその村に乗り付け、家屋破壊や子供連れ去りなどが行われました。

 他に計画出産に違反したかどうかを問わず、女性を取っ捕まえて片っ端から不妊手術を実施。その被害者には16歳の女子高生も含まれていたという報道もあります。要するに鬼畜を極めた暴政が敷かれていた訳で、ここまで追いつめられれば農民も立ち上がらざるを得なかったでしょう。

 ――――

 新華社電に戻りますと、地元政府の計画出産活動に不満を抱いた「彭某」はその後、博白県党委員会の文書のコピーを入手。偽造文書を大量にコピーしてバラまき、「事情を知らない民衆」がこれを見て政府庁舎に集まり暴動を引き起こし、これによって「彭某」は政府への報復を果たした、とのことです。

 具体的には5月20日夜、「彭某」は相棒の「李某」とともに広東省・廉江市へ出向いて、

「罰金を徴収された民衆は政府庁舎やその出張所で栄養補助費という手当を受け取ること。また『社会扶養費』は返還する」

 といった内容の偽造文書を400枚コピー。これを博白県下の鳳山鎮、寧潭鎮、文池鎮、東平鎮、龍潭鎮、亜山鎮などでバラまき、

「政府の計画出産活動に不良なる影響をもたらした」

 となっています。広西チワン族自治区博白県法院の判決は、「彭某」が国家機関公文書偽造罪で懲役2年、「李某」も同罪で懲役1年というものでした。

 ――――

 「国家機関公文書偽造罪」とは何とも不可思議な判決ではありませんか。ここには民衆を煽動したという罪は盛られていませんし、暴動で政府庁舎などを破壊した罪状も含まれていません。ですから懲役も「彭某」が2年、「李某」が1年と、暴動の首謀者扱いにしては恐ろしく軽い量刑です。しかも名前は伏せ字。

 同時多発暴動に関する民衆側への処分がこれで終わるのかまだ続くのかはわかりませんが、裁判所は県所属といいながら、より上級レベルの指示を受けてこのような判決を出したのではないかと思われます。例えば広西チワン族自治区当局とか、ひいては党中央とか。

 要するに、鬼畜な罰金徴収を断行して同時多発型暴動を生むに至らしめた地元当局の計画出産活動に対して、上級機関からその行為を咎め、責任を追及する動きがあったのではないでしょうか。

 「懲役2年・懲役1年」という事件に照らせば軽すぎる判決は一種の「喧嘩両成敗」ではないか、ということです。

 民衆側から罪人を出すとともに県当局などの関連部門にも何らかの処罰が下されたか、あるいは、

「今回は大目に見てやるが、二度とやるな」

 と厳命が下り、当局側の責任が不問に付されたのと同時に、民衆側の「首謀者」にも大甘判決を出して農民たちを慰撫した、という形です。

 ――――

 他県にも飛び火するなどした前代未聞の同時多発型暴動です。当局のさじ加減ひとつで「国家政権転覆煽動罪で懲役9年」のような重罪が下っても不思議ではないのですが、「国家機関公文書偽造罪」という、「煽動」「暴動」を含まない罪状になったことで、これは地元当局側に対しても何事かが行われたな、と「邪推」する次第。

 もしこの「邪推」が正しいのなら、「喧嘩両成敗で農民側には大甘判決」という決着で幕を引かない限り、農民たちの当局に対する不満は再び爆発しかねないかのような険悪な空気が現地に満ちていたのかも知れません。

 ふだんなら「官」として居丈高に振る舞う地元当局側も今回は折れざるを得なかった、ということです。もちろん、上級機関からの圧力があったから折れたのでしょうが。

 ……まあ、あくまでも「邪推」ですけど、そういう「邪推」をしたくなるほど興味深い判決だった、ということは確かです。




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 いやー本当に崖っぷちなのです。

 ダム建設で崖っぷちに追いやられたのに補償金は雀の涙。というのはどうも党幹部が途中で着服した可能性が濃厚で、しかも地元当局は救済措置を講じてくれるどころか、別の名目で農民から多額のカネを剥ぎ取らんとする鬼畜ぶり。

 住宅も校舎も崖っぷちで余りの危険さに教師たちは逃げてしまい、子供たちは教育を受けられない状況。ダム完成で対象外の耕地まで水没する有様に、とうとう農民が鎮政府に出向いて請願活動。

 すると動員された特警(機動隊)と武警さん(武装警察=内乱鎮圧用の準軍事組織)多数がお出ましになって、はいはいお決まりの官民衝突。……よくある話といってしまえばそれまでなのですが、教師も逃げ出す崖っぷちぶりに興趣をそそられ取り組んでみることにします。

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 『明報』など香港紙複数の報道によれば、舞台は「計画出産利権」で同時多発型暴動が発生した広西チワン族自治区。今回は大化ヤオ族自治県・岩灘鎮という少数民族がまとまって居住しているらしい地域です。同時多発型暴動についてはこちらを。

 ●農民蹶起!広西博白県下の各鎮で同時多発暴動、庁舎炎上。(2007/05/21)
 ●続・広西同時多発暴動:不妊手術より上納金。(2007/05/23)
 ●広西農民蹶起2:またも同時多発暴動、県外へも飛び火!(2007/05/25)
 ●広西農民暴動がまたまた飛び火、ついに火炎瓶も出現。(2007/05/31)

 今回は少数民族地域ではありますが、そのことが事件の要因になっているかどうかは報道からは読み取れません。そもそものきっかけは、四川省などで多発した
「ダム作るからお前ら移転ね」型の強制収用です。

 農民を追い出してダムが建設されて、大化・岩灘という2カ所の水力発電所が稼働しました。ダムにするくらいですから山に囲まれた盆地のような地形なのでしょう。その盆地に住んでいた農民たちの移転については非常に安直な措置がとられ、

「山の方へ引っ越せ」

 ということになりました。山の方といっても村が水没するほどですから山麓とか中腹に家を建てる訳にもいかず、水に追われるようにして農民たちは山頂や稜線付近に移転。崖っぷちなのです。

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 ところで移転させられる以上、当局から補償金が下りることになります。国務院(北京の中央政府)から昨年、このために280万元が支給されたとの情報があります。

 しかしこれまたよくある話ながら、支給記録と受給実績には天と地の差が。農民たちによると、補償金は所有耕地の大小に関わらず、1人当たりで毎月一律たったの30元ちょっと。どうやら国務院から農民の手に補償金が渡る過程で、各レベルの党幹部によって少しずつ着服された気配が濃厚とのことです。

 それだけならまだしも、ダム建設後に地元を流れる紅水河の水位がみるみる上昇。予定では水没せずに残る筈だった両岸の耕地まで水中に消えてしまいました。

 このため農民たちは地元当局に何度も請願活動を行ったものの効果はみられず、今年4月、岩灘・北景の2カ鎮に住む農民たちが詳細は不明ながら一週間にわたる抗議活動を展開したとのことです。

 5月には岩灘鎮の農民数千名が鎮政府庁舎を取り囲む形で座り込みを行ってもいます。

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 山上に追い上げられた農民は3万名にものぼるとされています。耕地を失い補償金は雀の涙でまさに崖っぷちの生活を強いられることとなりました。そもそも住宅そのものが崖っぷちに建っています。

 児童4000名が通っていた小学校もやはり崖っぷちに移転することを余儀なくされました。この建物が余りに崖っぷちで基準に照らしても危険建築物。

 具体的にどういう状況なのかはわかりませんが、その崖っぷちぶりに、十数名の教師たちは命あっての物種とばかりに6月末に全員離職。子供たちは教育を受けることができなくなってしまいました。

 このため農民たちもさすがに……となるところですが、実はその前に追い打ちをかけるような事態がありました。山上に移転した農民たちに対し、1人当たり毎月30元ばかりの補償金しか渡していない地元当局は、水道を引くためだと称して各世帯から500元を徴収し始めていたのです。

 そして7月1日、岩灘鎮の農民たちは鎮政府庁舎に出向いて補償金増額を請願し、また岩灘水力発電所の職員居住区を包囲。ダムにも屯集して抗議行動を行った模様です。農民側は数千名とも約1万名ともいわれていて参加人数は諸説紛々。

 ともあれこの抗議活動が4日間連続して展開され、当局は4日夜、広西チワン族自治区の首府・南寧市から機動隊と武警多数を投入。警察車両・軍用車両数十両に加えて装甲車10両まで動員され民衆を追い散らしにかかりました。当然のことながら官民衝突が発生。少なくとも農民側に負傷者5名の被害が出た模様です。

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 注目すべき点がひとつ。『明報』によると、この抗議活動において農民たちは、

「鎮政府をぶっ潰せ」

 といったような、要するに反体制的なプラカードを掲げ、またスローガンを叫んでいたとのこと。何やら出るべきものがとうとう出現してしまったという印象です。

 負傷者5名ですから小競り合い?といった観もありますが、山間部にわざわざ装甲車までを繰り出すほどですから、政府庁舎や発電所職員居住区を農民が取り巻いたときにはかなり殺気立ったものがあったのかも知れません。

 しかも反政府スローガン。まあその対象は地元当局限定ですけど、それを叫びプラカードを掲げて押しかけてくるのですから、実際には「請願」の空気ではなかったように思います。

 大化ヤオ族自治県筋によると、7月5日になって一部農民が教育施設の危険性を訴えるべく陳情したことを受け、広西チワン族自治区の教育庁から問題解決のために人員が派遣されたそうですが、本来なら民衆が騒いで武警などを投入する前に役所がそれをやるべきでしょう。順序が逆です。

 しかも現時点では自治区の教育庁だけが動いている様子で、補償金の問題などには手が付けられていません。その善処を請願に出向いた民衆を武警さんたちが装甲車まで繰り出して追い払ったのですから。もちろん「水道を引くため」の各世帯500元出せ措置も未解決のまま。

 当局側はどうみても人民を舐め切っていて、騒いだら武力鎮圧で黙らせるというお決まりのパターン。毎度のことながら、「官」と「民」の間の距離が致命的なまでに開いてしまっているのを感じざるを得ません。

「何やら出るべきものがとうとう実際に出現してしまった」

 今回はこの一言に尽きます。

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 ●『蘋果日報』(2007/07/11)

 ●『明報』(2007/07/11)
 http://www.mingpaonews.com/20070711/cca1h.htm

 ●『東方日報』(2007/07/11)
 http://orientaldaily.on.cc/new/new_c40cnt.html




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 中国で官民衝突のメッカといえば重慶市。労働争議から暴動まで何でもござれです。先月にも小競り合いがありましたし、その前にはオバサンたちの労働争議。他にも暴動や労使紛争が絶えない街なのですが、さらにさかのぼると同市・万州区で2004年10月に発生した都市暴動が有名です()。当時はネット上で事件に関する情報が飛び交い、全国的に有名になってしまったために当局がオフィシャル・バージョンを流す破目になりました。

 ……で、また起きた訳です。今回は都市暴動。日本でも速報されています。



 ●中学生刺殺事件きっかけ、中国・重慶で住民1万人が暴徒化(読売新聞 2007/07/02/20:16)
 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20070702id22.htm

 【香港=吉田健一】香港の人権団体「中国人権民主化運動ニュースセンター」は2日、中国・重慶市で6月29日、中学生が学校で刺されて死亡した事件をきっかけに、住民1万人以上が地元政府庁舎に押しかけるなど暴徒化、鎮圧に乗り出した武装警察部隊と衝突し、複数の負傷者が出たと伝えた。

 同センターによると、被害にあった中学生は同月28日、別の生徒に刺されたが、学校側が被害者を30分にわたって放置し、病院への搬送が遅れたために、死亡した。死亡した生徒の家族が学校側に抗議したが、警官に逆に殴られ、重傷を負った。

 住民はこうした警官や学校の対応に不満を爆発させ、警察車両を破壊するなどして暴れたという。

 重慶市では同月3日にも、住民数千人が、市当局の委託を受けた警備員が花売りの農民夫婦を殴ったことに怒り、警官隊と衝突する事件が起きている。




 今朝(7月3日)の香港各紙も親中紙を含めて一斉にこの暴動を報じています。中国の国営通信社・新華社も記事を配信。オフィシャル・バージョンということでしょう。

 ●重慶酉陽「6.28」集団事件の処置終了、全県の秩序が正常に(新華網 2007/07/03/11:16)
 http://www.cq.xinhuanet.com/news/2007-07/03/content_10466950.htm

 「集団事件」と位置づけて当局発表を行わなければならなかったほどの騒ぎで、報道管制を敷こうにもすでに情報がネット上のブログや掲示板を通じて全国に広がってしまったものと思われます。故意かどうかはともかく、「官」への不信感を煽るような流説も飛び交っているのでしょう。

 ともあれ、『読売新聞』の速報が拾っていない、あるいは省略した枝葉末節を香港紙の報道でフォローしていきましょう。

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 まずは事件の現場ですが、重慶市の酉陽県というのが正しく、群衆が襲撃したのも酉陽県政府庁舎です。

「被害にあった中学生は同月28日、別の生徒に刺されたが、学校側が被害者を30分にわたって放置し、病院への搬送が遅れたために、死亡した。」

 というのはその通りです。そして翌29日。オフィシャル・バージョンたる新華社電では午前5時となっていますが、

「死亡した生徒の家族が学校側に抗議したが、警官に逆に殴られ、重傷を負った。」

 というその負傷者は香港紙によると「母親・9歳の妹・祖父」の3名の模様。このうち母親が息子を失ったうえ学校側の冷たい対応にショックを受けて精神に異状をきたし、翌日に出稼ぎ先から急ぎ戻ってきた父親ともども警察に拘留されたとの情報もあります。新華社電では「午前9時に遺族6人を連行して取り調べた」とあるので、校門前で拘束したものでしょう。

 この学校の校門前で繰り広げられた騒ぎには当然ながら野次馬がわんさか取り囲んでいましたが、警察が殴打に及んだのをみて義憤、警察車両を包囲しようとしたようです。ただしこのときは警官が機敏で脱出に成功しています。

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 とはいえ、ここまで燃え上がってしまうともう収拾がつきません。その日のうちに、というよりわずか1時間後の午前10時(新華社電)、遺族や地元住民ら多数が横断幕やプラカードを掲げてデモ行進を始めました。

 人数は約1万人(香港紙)ともピーク時に3000人(新華社電)ともいわれますが、ともあれデモ隊は大通りを埋め尽くす勢いで進み、酉陽県政府を包囲。このデモ行進のため沿道とその周囲で大渋滞が発生したそうです。当局発表たる新華社電でも、

「交通が一時マヒし、政府機関への出勤が不可能になった」

 としていますから、相当な混乱が生じたものとみえます。

 デモ隊の目的は非道を正してくれという「請願」にあったようですが、県政府を包囲したまま夜に入り、当局は警官隊を繰り出してにらみ合い状態に突入。そして午後8時半(新華社電)、たまたま外地から戻ってきた警察車両が事態を知らずに現場に乗り入れてしまったことで事件が発生しました。現場の警官が止めようとしたものの間に合わなかったそうです。

 運転者は恐らく「ずいぶん人が多いなあ何事だろう」などと呑気に考えつつ政府庁舎に入ろうとしたのでしょうが、デモ隊にすれば警官隊の実力行使と映りますから、飛んで火にいる夏の虫。

 群衆に包囲された警察車両は瞬く間に破壊され、民衆はその余勢を駆って政府庁舎に突入。警官隊が直ちに介入して官民衝突と相成りましたが、政府庁舎内の事務室などが一部破壊されました。

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 で、新華社電と香港の親中紙『香港文匯報』『大公報』は口をつぐんで報じていませんが、このとき政府庁舎で目についた胡錦涛・国家主席が提唱している「社会主義栄辱観」(八栄八辱)の看板と、当の胡錦涛の写真(「掛けてあった写真」とされているので額縁入りかも)が民衆によってひっぺがされてボコボコ&ビリビリに(笑)。

 激した面々が手当り次第に破壊したものの中にたまたま胡錦涛の写真があっただけなのかも知れませんけど、報道でわざわざ言及されているところが意味ありげにも思えます。

 意味ありげといえば、政府庁舎を襲撃された酉陽県は厳密には「酉陽トゥチャ族ミャオ族自治県」というのが正式名称で、要するに少数民族が多数暮らしている地域。この「非漢族」ないしは「漢族への反感」という要因が事態の可燃度を高めることになったのかどうかは不明です。

 ただ、少数民族云々は別としても、以前から蓄積された「官」への鬱憤が民衆の間にはあって、それが今回の警官による遺族殴打という横暴でキレた、という流れがなければここまでの事態には発展しないだろうと思います。

 ここからは現場感覚の世界ですから私には推測しかねますが、党幹部の特権ビジネスとか、役人風を吹かせる連中とか、横柄で何かと名目を言い立てては罰金と称して小銭をせびり取る警官……といった光景を日常的に目にしているからこそ爆発のエネルギーも大きいのではないかと愚考する次第です。

 3000人であれ1万人であれ、短時間でそれほどの人数が集まって、横断幕やプラカードまで揃えたデモ隊が組織されるというのは尋常ではありません。

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 暴動は警官隊が制圧して終息させたようですが、この官民衝突の過程で10名が負傷し、4人が連行されたとのこと。「全県の秩序が正常に」と新華社電がタイトルに掲げているくらいですから、無政府状態から警官隊による暴動鎮圧を経て戒厳令状態に入るなど、よほどの混乱があったとみていいでしょう。

 ところで毎度のことながら、今回もまた都市暴動のセオリーを踏んでいます。……とは、

 (1)社会的弱者が衆人環視のもと党幹部や金持ちの横暴で虐げられる。
 (2)被害者及びその家族などが抗議し、民衆も義憤して屯集、加勢する。
 (3)暴動に備え警官隊出動。
 (4)加勢する民衆に失業者やチンピラが大量に混じって現場は危険な空気に。
 (5)小競り合いから暴動へ。警察車両が焼かれたり、建物や施設が破壊されたりする。

 ●都市暴動の王道。・上(2006/11/14)

 というもので、今回は虐げた側が党幹部や金持ちではなく警官であり、また刺された中学生を30分そのまま放置した学校側の非道にありますが、その後の展開はいつも通りといったところです。ちなみに新華社電では学校側の「30分放置」には言及されておらず、逆に、

「病院に搬送され緊急救命措置を施されたが」

 となっています。要するに学校側に落ち度はなかったという姿勢です。そういえばこの新華社電、遺族を含む民衆は
「校門を塞いだため学校の正常な教育秩序に深刻な影響を及ぼした」だの「交通をマヒさせた」だの「政府機関への出勤が不可能になった」など、終始民衆側を悪者扱いにしています。

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 今回の暴動を「よくある話」と片付けてしまってもいいのですが、胡錦涛の写真がビリビリに破られたというのが新鮮かつ痛快です。ネット経由でこの情報に接し、ひそかに快哉を叫んだ中国人民もさぞや多いことでしょう。これをきっかけに「胡錦涛や温家宝の写真を破る」というのが暴動の型のひとつになれば気分は一気に反政府。

 危なそうな地域の役場は正門前に胡錦涛の写真をベタベタ貼りまくると魔除けのお札代わりになっていいかも知れません。それが呆気なく破り捨てられて群衆が庁舎内になだれ込んでくるようなら、もはや南無三、といったところでしょう(笑)。


 ●『蘋果日報』(2007/07/03)

 ●『明報』(2007/07/03)
 http://www.mingpaonews.com/20070703/cca1.htm

 ●『星島日報』(2007/07/03)
 http://www.singtao.com/yesterday/chi/0703eo01.html

 ●『東方日報』(2007/07/03)
 http://www.mingpaonews.com/20070703/cca1.htm

 ●『香港文匯報』(2007/07/03)
 http://paper.wenweipo.com/2007/07/03/CH0707030018.htm

 ●『大公報』(2007/07/03)
 http://www.takungpao.com/news/07/07/03/ZM-759824.htm


 【※】写真&動画は法輪功系ニュースサイト「大紀元」でどうぞ。恐らく暴動制圧後の動画かと思いますが、映っている分だけで武警2コ中隊くらいは投入されているようです。

 ●「大紀元」(2007/07/03/01:14)
 http://www.epochtimes.com/gb/7/7/3/n1762144.htm




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 冗談じゃないですよ。何ですかこのニュースは。相当深刻じゃないですか。



 ●中国で4000人が役所襲撃、一人っ子政策不満また爆発(読売新聞 2007/05/30/23:15)
 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20070530id22.htm

 【香港=吉田健一】30日付の香港紙・蘋果日報などが報じたところによると、一人っ子政策をめぐり、不妊手術の強要や暴力的な手段での罰金徴収が明るみに出た中国南部の広西チワン族自治区玉林市で29日、市内の三つの鎮(町に相当)で、同政策に反発する計約4000人の住民が鎮政府庁舎を襲撃するなど暴徒化し、警官隊と衝突、双方合わせて100人以上が負傷した。警官に殴打され、住民側に死者が出たとの情報もある。

 3か所のうち最も激しい暴動となった楊梅鎮では、3階建て鎮政府庁舎や公用車に放火するなどして暴れる約3000人の住民に対し、警官隊が警察犬をけしかけるなどして制圧したという。

 玉林市では、5月17日以降、10か所前後で同様の暴動が相次いで発生し、当局の横暴に対する住民の不満が極度に高まっている。




 とりあえず過去のエントリーをば。

 ●農民蹶起!広西博白県下の各鎮で同時多発暴動、庁舎炎上。(2007/05/21)
 ●続・広西同時多発暴動:不妊手術より上納金。(2007/05/23)
 ●広西農民蹶起2:またも同時多発暴動、県外へも飛び火!(2007/05/25)

 この事件はまず「計画出産利権」という今まで注目されなかった汚職のカタチ(罰金を規定以上に余計にせしめて自分の懐に入れる)と、同時多発型暴動という点が新しいものでした。特に同時多発型暴動というのは前代未聞です。

 ところが、事態は終息することなく、他県に飛び火したこと、また一部の鎮レベルで農民の間に連携めいた動きが生じつつあることがわかりました。これで事件は第二段階に入ったといえます。

 そして今回はその第二段階の続編です。上の記事ではふれられていませんが、米国系ラジオ局「自由亜洲電台」(RFA)によると、今回事件が起きたのは玉林市でも最初の同時多発型暴動が発生した博白県ではなく、飛び火した先の容県なのです。

 計画出産政策の執行に関するノルマ(不妊手術の実施&罰金徴収)を達成できず、イエローカードを突き付けられた博白県とは違い、罰金集めでは優等生的存在だった容県。それだけに苛酷な取り立てが行われていたと想像されますが、博白県の事件に触発されたかのように暴動が発生しました。しかも3件の同時多発型暴動です。

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 RFAの報道によると、まず容県の楊梅鎮で5月29日、粗暴な計画出産政策執行に不満が爆発した農民2万名が蹶起して政府庁舎を包囲し放火するなどしたあと、翌5月30日には近隣の石頭鎮で3000名以上がやはり政府庁舎を襲撃。ここでは激しい官民衝突が生じて少なくとも十数人が逮捕され、武警(武装警察=内乱鎮圧用の準軍事組織)多数が進駐して戒厳令状態に。

 楊梅鎮の衝突では少なくとも3人が死亡したという村民発の情報が流れていますが確度は不明。ただ政府庁舎を包囲し車両十数台を焼き打ちにしたほか、建物にも放火していますが、ここでは火炎瓶が使われたようです。事前に武器を準備していたということは、とうとう武装農民が出現ということでしょうか。事実ならば注目すべき事態です。

 当局はこの楊梅鎮に対しても武警数百人と警察犬多数を投入し、警官は棍棒で片っ端から民衆を殴りつけて回り、騒ぎを制圧したとのこと。この際に農民1名、警官2名が死亡したという噂が村民の間で広まっているようですが、これも未確認情報です。

 ちなみに29日に発生した暴動は上記楊梅鎮の他に霊山鎮、黎村鎮でも発生したとされています。やはり同時多発型なのです。このうち黎村鎮の暴動は4~5日連続で発生しており、30日時点でも民衆と警官隊のにらみ合いが続いているとのこと。

 言うまでもありませんが、これらの暴動の原因は全て同じで、役人による粗暴な計画出産政策執行ということになります。

 粗暴とは規定数以上の子供を持つ世帯から徴収する罰金の額が以前に比べ大幅に引き上げられたこと、「社会扶養費」という新種の追徴型罰金を新設し、過去に罰金を払った世帯からも取り立てていること(いずれも罰金が払えなければ家財没収)、また有無を言わせず見境なく女性を拉致しては不妊手術を行っていたこと、などです。

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 不思議なのは、暴動情報が漏洩していることと、広西チワン族自治区政府に動く気配がいまのところないということです。

 四川省・漢源暴動や広東省・汕尾市の暴動などでは、まず武警などが外部との交通や通信を遮断して現場を封鎖状態にしてから、戒厳令を敷いて村民を血祭りに上げるなりしてきました。過去の農村暴動は概ねそういう形で終息しています。田舎だからできるパワープレイです。

 過去最大規模である県単位の農村暴動となった漢源暴動では、外地から武警2コ師団が投入されたといわれ、四川省当局はもちろん、党中央から要人が四川省入りして総指揮にあたっています。

 ところが、今回は同時多発型暴動が発生し、さらに他県へと飛び火していく状態だというのに、いまだに博白県、容県の属する玉林市当局が対応しています。事件の異質さや規模からすれば、自治区当局が事態収拾に乗り出して然るべきところです。ところが現在に至るまで、それが行われた様子はありません。

 事態を重くみた中央から派遣された国家計画出産部門の特別調査チームが現地入りしている筈ですが、その活動に関する情報も皆無です。そもそも現地入りできたかどうかも不明なままです。

 一部の襲撃で火炎瓶が登場したこと、ドミノ倒し的に暴動が連続していること、農民同士の連携めいた動きがあることなどを考えると、そろそろ自治区当局が腰を上げないと取り返しのつかない事態に発展する可能性があります。

 「計画出産利権」が自治区政府の関連部門を頂点とする上納金システムであったとすれば、博白県や容県以外の県、また玉林市以外の地域でも、噂を聞いて「おれたちも」と後に続く動きが出現しかねません。

 そうなったときには武警2コ師団程度では制圧できなくなっていると思うのですが。……また続報が飛び出すことになるのでしょうか。事態は暗転しつつあります。

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 ●「RFA広東語」(2007/05/30)
 http://www.rfa.org/cantonese/xinwen/2007/05/30/china_riot_guangxi/

 ●「RFA北京語」(2007/05/30)
 http://www.rfa.org/mandarin/shenrubaodao/2007/05/30/jisheng/

 ●『自由時報』(2007/05/31)
 http://www.libertytimes.com.tw/2007/new/may/31/today-fo4.htm




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 これは大変なことになりました。続報ではなく新展開です。例の広西チワン族自治区・玉林市博白県下の各鎮で発生した前代未聞の同時多発型農村暴動、その第二波が発生し現在進行中です。

 しかも今回は博白県だけではなく、同じ玉林市に属する容県にも飛び火。先日の国営通信社・新華社による独占配信記事で騒乱が終息したことが報じられ、ヤマは越えたかと思われたものが一転、再び燃え上がった火の手に先の読めない状況になってきました。

 「第一波」の経緯と背景については、とりあえず当ブログの既報記事をどうぞ。

 ●農民蹶起!広西博白県下の各鎮で同時多発暴動、庁舎炎上。(2007/05/21)
 ●続・広西同時多発暴動:不妊手術より上納金。(2007/05/23)

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 簡単に言ってしまうと、博白県下8カ鎮で先週末(5月17~19日)、相前後して発生した農村暴動は、博白県当局の無茶苦茶かつ鬼畜きわまりない計画出産措置の執行に農民たちの堪忍袋の緒が切れたものでした。

 具体的には、博白県当局の計画出産部門の職員ら「実行部隊」が見境なく女性を拘束しては不妊手術を施す一方、計画出産政策に違反し規定(二人)より多くの、つまり3人以上の子供を持った世帯から罰金を取り立てたことです。

 しかも罰金は以前より桁違いの金額にはね上がり、さらに新たに「社会扶養費」という名目の追徴型罰金も制定して、棍棒やハンマー、手錠などを持った「実行部隊」が村々を襲撃して取り立てに回り、女性を拘束して病院で不妊手術を強行したほか子供を拉致する事態も発生。

 罰金の払えない世帯は家財道具からアルミサッシまで強奪されて銀行口座も差し押さえられ、また違反世帯だけでなく村落の全世帯が身ぐるみ剥ぎ取られるケースも続発したため、夜襲で子供を拉致されないように日が暮れるとみんなで山中に避難する村も相次ぎました。

 「官匪」の暴虐ぶりは農民が「戦争中の日本軍の方がまだマシだった」とこぼすほどで、最後には追いつめられた農民が我慢の限界に達し、各鎮政府を民衆が包囲して政府庁舎を炎上させるなどの騒ぎに発展、一部では警官隊との衝突なども発生しました。この過程で死傷者多数が出たとの未確認情報も流れています。

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 博白県当局をこの暴挙に走らせたのは、自治区政府の計画出産部門による会議で博白県が計画出産政策遂行のノルマを果たしていないと非難され、9月までに目標値に達しなければ関係幹部は全員更迭、とイエローカードを突き付けられたからです。

 香港紙の報道によると、そのノルマとは、

「不妊手術約1万7200件を行うとともに、『社会扶養費』788万元を取り立てろ」

 というもの。要するに博白県当局にとっては、1万7200名の女性をひっ捕えて有無を言わせず不妊手術を施す一方、とにかく農民から788万元をむしり取らなければならない、ということです。

 
「お前らこのままじゃクビ」と最終警告を出された同県に対しては、上級部門である玉林市のトップ(文明・玉林市党書記)も前線視察に乗り出してノルマ達成を督励したといわれています。……というのも、博白県がダメダメだと同市当局の責任問題にも発展する可能性があるからです。同じ玉林市に属する県でも容県は模範的な成果を上げており、5月1日からの大型連休中の一週間で「社会扶養費」3400万元を集めたとされています。博白県の働きの悪さが際立ってしまう訳です。

 ――――

 ともあれ、前掲エントリーの「不妊手術より上納金。」で指摘したように、私はこの狂気の沙汰の背景には
「計画出産利権」があるのではないかと考えています。自治区政府計画出産部門を頂点とした上納金&見返り特権という汚職の構図です。

 物権法の制定で土地を強制収用して転売し売却益や住民に対する補償金の多くを着服する、というこれまでポピュラーだったやり方に形式上は規制が加えられることとなり、土建屋や公害企業などと癒着することでオイシイ思いができたイケイケドンドンのGDP成長率追求型の開発路線に対しては、「成長率より効率重視」という最高指導者・胡錦涛が掲げる「科学的発展観」が待ったをかけました。

 そこで登場した新手の汚職が「計画出産利権」ではないかと私は邪推しています。「上納金&見返り特権」ではなく、「上納金ノルマ+α」で罰金を取り立て、「+α」分を自分の懐に入れるという形である可能性もあります。

 あるいは新種の汚職ではなく、経済開発のままならない貧困地区で地元党幹部がうまい汁を吸うために以前から行われてきたものかも知れません。

 ただ「社会扶養費」のような罰金や「実行部隊」に村々を襲撃させるという手口が今年に入って出現したことから、やはり中央政府によって規制の網がにわかに張り巡らされたことに対応したもの、という見方ができるのではないかと考えています。今回発生した「第二波」の同時多発型暴動もそれを裏打ちしているように思えるのです。

 ――――

 ……そうでした。前置きが長くなってしまいましたが、「第二波」の同時多発型暴動についてです。

 暴動終息を宣言した新華社電が配信されたのは5月22日夜。ところが現地ではその前日である月曜日(21日)に博白県下の旺茂鎮で1000名を越える規模の官民衝突が発生していました。

 これを「第一波」とするか「第二波」とするかは難しいところですが、問題はその翌日の22日。中央の意向を色濃く反映したとみられる博白県当局にとって厳しい内容の新華社電が出るその日に、何と博白県当局の「実行部隊」が手分けして同鎮の村々を回り、改めて罰金(社会扶養費)の取り立てを行っていたのです。「優等生」である容県当局も県下の自良鎮に対し同日取り立て行動に出たとのこと。

 「実行部隊」は新華社電が全国ニュースとして浸透した翌23日も跋扈して取り立てを続行したため、すでに一度キレている農民もこれに即応。旺茂鎮ではこの23日に農民1000名以上が鎮政府庁舎を包囲してレンガや棍棒で建物の窓ガラスを叩き割るなどの騒ぎに発展しました。

 このとき現場に駆けつけた警官・武警(武装警察=内乱鎮圧用の準軍事組織)数百名との間に衝突が発生。民衆多数が鉄パイプなどで殴打され、数十名が連行された模様です。これは正真正銘の「第二波」。しかも香港紙『蘋果日報』(2007/05/25)の報道によると3カ鎮で農民が暴動に及んだとのことで、またまた同時多発型なのです。

 米国系ラジオ局RFA(自由亜洲電台)はやはり博白県の沙河鎮で強奪された家財などの返還を求めて3000名余りの民衆が政府庁舎を襲撃、さらに水鳴鎮でも鎮政府庁舎前で抗議デモが行われたと伝えています。

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 今回特筆すべきは暴動の火の手が「模範生」たる容県にも波及したことです。『蘋果日報』によると、23日に暴動が発生したのは博白県の旺茂鎮、水鳴鎮、そして上記容県の自良鎮。RFAは自良鎮の暴動について、民衆約3000名が政府庁舎を襲撃し、警官隊との衝突で少なくとも十数名の負傷者が出たと報じています。

 「第一波」で比較的激しい衝突の発生した沙陂鎮、英橋鎮、那卜鎮などには22日の時点でなお警官・機動隊・武警など多数が進駐して半ば戒厳令状態にあり、いまのところ「第二波」に呼応した動きは報じられていません。ただ『蘋果日報』によれば沙陂鎮では23日にデモを行った40名が警官隊に連行されたとの情報が流れているようです。

 またタレ込みサイト「博訊網」が『亜洲週刊』の報道を転載したところによると、やはり厳戒態勢下の龍譚鎮で22日に数千人規模のデモが政府庁舎前で行われ、同日には山間部の各鎮に通じる道路のあちこちに民衆によって破壊された警察車両など多数が発見されたとのこと。

 いずれにせよ、今回はとうとう容県にも暴動が飛び火したことで、ドミノ倒しのように事態が拡大していく可能性も出てきました。ワクテカ?いやそりゃワクテカですとも。こうして火の手が上がった一方で中共政権にとって最も由々しき事態である李登輝・前台湾総統の訪日があり、もしさらに株価暴落ともなれば都市部でも騒ぎになるでしょうからこれはもう(笑)。

 ワクテカといえば実に興味深い動きがあります。博白県下の一部の鎮の間では農民たちの連携が生じつつある気配がするのです。RFAによると、農民たちは複数の鎮から約20名を選抜し、22日、秘密裏に北京への「上訪」(陳情)に出発させたとのこと。旅費は農民たちがお金を出し合って調達。20万元をカンパした者もいたそうです。

 この情報をつかんだ玉林市当局は市内各県の駅やバスターミナルに厳戒態勢を敷いて説得工作や拘束を企図したものの、いずれも失敗。北京まで行き着けるかどうかはともかく、陳情組はすでに外地へと出た模様です。

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 前代未聞の同時多発型暴動が終息したかと思いきや「第二波」が発生し暴動は他県にも飛び火。その一方では陳情組を出したように博白県下の一部の鎮の間で連携めいた動きがみられるなど、事態は思わぬ方向に展開しつつあります。

 ただ、その原因は「第一波」の同時多発型暴動で懲りずに罰金取り立てをなおも強行した地元当局にあります。

 その活動は新華社の独占配信記事が出た後も続けられたことから、「中央vs地方」の対立軸でいえば、地方当局は中央の意向に構わず、また胡錦涛直系の「団派」(胡錦涛の出身母体である共産主義青年団人脈)に属する自治区トップ・劉奇葆・自治区党書記をも無視して、あくまでも地元の行動原理に基づいて進退していることがわかります。

 要するに
「官vs民」「中央vs地方」という対立軸が「計画出産利権vs同時多発型暴動」というひとつの事件の上で反目を深めている訳です。かなり香ばしい状況になってきたといっていいでしょう。場合によっては、意外に面白いドラマを鑑賞することができるかも知れません。

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 ●RFA(2007/05/23)
 http://www.rfa.org/mandarin/shenrubaodao/2007/05/23/guangxi/

 ●RFA(2007/05/24)
 http://www.rfa.org/mandarin/shenrubaodao/2007/05/24/bobai/

 ●『蘋果日報』(2007/05/25)
 http://www1.appledaily.atnext.com/

 ●「博訊網」(2007/05/25)
 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2007/05/200705250446.shtml



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 先日速報した広西チワン族自治区・博白県下の各鎮で発生した同時多発的な農民暴動の続報です。

 最大のトピックは中国の国営通信社・新華社が事件のニュースを国内メディアに配信したことでしょう。昨日(5月22日)夜遅くに記事が出たようで、大手ポータルなどでは日付が変わったばかりのタイミングでこれを掲載しています。あまり意味はありませんが並べておきます。

 ●「鳳凰網」(2007/05/22/21:02)
 http://news.phoenixtv.com/mainland/200705/0522_17_122514.shtml

 ●「網易」(2007/05/23/00:19)
 http://news.163.com/07/0523/00/3F4TFS0V0001124J.html

 ●「新浪網」(2007/05/23/00:49)
 http://news.sina.com.cn/c/2007-05-23/004913050407.shtml

 ●「華商報」(2007/05/23/00:54)
 http://news.huash.com/2007-05/23/content_6297851.htm

 ●捜狐新聞(2007/05/23/01:09)
 http://news.sohu.com/20070523/n250166755.shtml

 ●四川在線(2007/05/23/02:03)
 http://www.scol.com.cn/focus/zgsz/20070523/200752320344.htm

 内容はみんな同じで、新華社の配信記事をそのまま掲載しています。一字一句改めずに掲載するよう強要されているのでしょう。独自記事はNG。この「新華社の記事をそのまま使え」というのは日中首脳会談のような大ネタや政治的に敏感なニュースに際して採られる措置です。

 それだけ党中央が今回の事件にナーバスになっているともいえますし、この事態をどう裁いて落着させるか苦慮している最中、ともいえます。

 この記事がなかなか興味深い内容で、かなり気を使って書かれている様子がうかがえます。

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 まず今回の事件について、当局は箝口令を敷いたのですが、ネット上では事件発生後ほどなく掲示板やブログなどを通じて中国国内に情報が流れました。ネット世論は相当義憤したようです。……で、記事はその冒頭で暴動による混乱がすでに終息したことをまず報じているのですが、書き出しが「この事件みんなもう知っていると思うけどさあ」というノリを漂わせていてナイスです。

 続いて博白県当局の公報によれば、という形で事件の推移が語られます。まず5月17日午前に頓谷鎮の政府庁舎を群衆300余名が包囲し、官民衝突が発生。警官隊は先頭に立って煽っていた連中を法に基づいて召喚したとのこと。逮捕とか拘束ではなく「法に基づいて召喚」という珍しい表現に地元当局の腰が引けている様子がうかがえます。

 それから18日から19日にかけて、同県内の6カ鎮・郷で騒乱が発生し、状況が最も深刻だった段階では3000名近い群衆が政府庁舎を取り巻いて正門や壁、事務設備や書類など多数を破壊し、少数の不満分子というか騒ぎ屋によって自動車やオートバイへの放火や破壊行為が行われたとしています。……前代未聞の同時多発暴動なのですが、それについての描写はここまでです。

 ここで明確な線引きが行われていることに留意しておきましょう。「悪いのは一部のならず者」といった形で締めくくられ、一緒に暴動に加わっていた何百何千の怒れる農民たちを悪者にはしていません。お咎めなしです。

 これが博白県当局の公報なのです。棍棒やハンマーや手錠を携えてトラックに乗り込み県下各村を襲撃して回っていた土匪そのものの振る舞いから打って変わって大人しくなっていることがわかります。事件が党中央の耳に入ってしまったことで一転して下手に出てみた、というところでしょう。

 党中央以前に、自治区トップである劉奇葆・自治区党書記の知るところとなったのがまず痛いでしょう。香港の最大手紙『蘋果日報』(2007/05/22)によると、この劉奇葆は胡錦涛直系の「団派」(胡錦涛の出身母体である共産主義青年団人脈)です。いままで体よく祭り上げていたのでしょうが、地元のボスどもの悪事が露呈してしまうこととなりました。

 香港各紙の報道によると、今回の悪事は博白県やその上級部門である玉林市ばかりでなく、自治区政府の計画出産部門を頂点としたもののようです。

 劉奇葆自治区党書記は事態の深刻さに驚いたのか、あるいは隠忍自重しつつこの機を待っていたのか、ともかく「団派」ですから胡錦涛との間にホットラインがあるので素早く北京に動いてもらうことができます。それ「諸侯」退治だとばかりに中央政府、つまり国家計画出産部門の特別調査チームがすでに現地入りしたとのことです。

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 新華社の記事を続けます。

 博白県の公報に基づいてサラリと同時多発暴動にふれたあと、記者が現場で野次馬から聞いた話として、事件の原因は地元当局の人口抑制政策の進め方の悪辣さにあり、それで民衆が騒いでいるのだと報じています。おやおやです。

 さらにこの記事は最大規模の暴動に発展した沙陂鎮の民衆多数が、計画出産政策の職員が粗暴でしかもあれこれと名目をつけては罰金を農民からむしり取っていったと話したとも伝えています。

 さあこの辺で雲行きが怪しくなってきました。上で
「博白県が公表した資料では」と暴動にふれてから、今度は「野次馬の話」「民衆多数が語った」として地元当局の「官匪」ぶりが暴動を招いたと言わんばかりの内容に転じているのです。国営通信社の独占配信記事ですから党中央の意思が濃厚に反映されているといっていいでしょう。

 「少数のならず者」を罰する一方で地元当局のトップ、例えば博白県の蘇建中・党書記、さらに同県に出向いて前線視察を行い督戦までしたとされる玉林市の文明・市党書記あたりは腹を切らされることになるかも知れません。これがさらに上の自治区政府内に巣食っているボスにまで手をつけられるかどうかは胡錦涛政権の指導力と劉奇葆自治区党書記の腕次第ということになるでしょう。

 とはいえ人口抑制は国策ですから、ゴネ得の模倣犯が続出することになっては困ります。このため記事はこの国策たることについて言及し、その政策がいかに重要で必要なものかを説いた上で、博白県の農民はその重要性を理解することが少なく、このため局面を打開しようと計画出産政策を大々的に展開してきた、という地元当局筋の話を紹介しています。

 そして博白県の黄少明・県長によるコメント、

「一部の民衆が現在展開されている計画出産活動を理解せずに反発した。これは多くの民衆が計画出産に対する観念と遵法意識に乏しかったという側面がある一方で、当局による計画出産活動の執行状況にも些かの問題があり、このため民衆の恨みを買うことになった」

 ……というやや自己批判を含んだ談話が登場。何やら上からどれほどの雷が落ちてくるかを計っているかのようで、このあたりは官僚臭が漂います。

 最後に、別の企図を有した一部の者の策動により、民衆の反発を巧みにとらえて煽動し云々……というくだりはいつものお飾りですから無視して構いません。とりあえず現時点で拘束されている者は28名。総計すれば4~5万人が参加した暴動なのにたった28名というのも、農民への無用な刺激は暫く避けようという姿勢の表れかも知れません。ただ当局発表なので実際にはもっと多くの逮捕者が出ている可能性があります。

 で、いま現在、玉林市及び博白県当局による慰撫活動を目的とした28チーム・約200名が県内各地に入って応急処置を施しているとのこと。香港各紙の報道によると、1000名規模の治安部隊が派遣されて現地は戒厳令同然の状況にあるようです。

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 とりあえず、殉職した関連部門の職員に対し「優秀な共産党員」との称号を追認し顕彰することで、農民たちと真っ向からぶつかる構えを示していた博白県の腰は見事に砕けてしまったようです。

 一方で新華社電の内容は「地元当局の言い分」と「民衆の言い分」を併記した形に終始して事件に対する政治的評価は下しておらず、党中央が未だに断を下せない状況にあることを感じさせます。まあ目下のところ状況把握に全力を挙げている、といったところでしょうか。

 ……ところで上に並べた大手ポータルなどの報道ぶり、いずれも新華社電をそのまま掲載させられているのですが、その中にあって反骨精神?をチラリとのぞかせたのが「網易」です。

 確かに新華社の記事を一字一句動かすことなく掲載しているのですが、その上にリードが加えられており、「ポイント」として暴動の概略を手短にまとめた上で、事件の原因が当局の鬼畜なやり口にあったとする「民衆の言い分」を書き連ねているのが心憎いです。

 さらにこの記事に付帯した掲示板があり、私がのぞいた時点では300件近い書き込みが寄せられていました。少しだけ目を通しましたが、

「よっしゃー」
「新華社がこういうニュースを流すとは、まあ進歩といってよかろうw」
「公僕は反省汁」
「ガハハハ、ビクついている奴らがいるぜ」
「正義がどちらにあるかは言わずもがな」
「はいはい別の企みを持った少数の者たち別の企みを持った少数の者たち」
「おれたち庶民にとっては嬉しい日になったな」
「今日は天気がいい。人民も大喜びだ」

 ……といったコメントが削除されることなく残っていました(笑)。そういえば前回のリンク先の写真の中に鎮政府庁舎の正門から引っぱがした「××鎮中国共産党委員会」という看板を皆が足で踏みにじっている一枚がありました。私はあの写真に、反中共というより「官vs民」という対立軸、また特権にありつける「官」に対する「民」の怒りや絶望的・致命的な距離感を感じました。

 上で博白県のトップである蘇建中党書記や黄少明県長の名前が出てきましたが、暴動の起きた一部の鎮では、

「蘇建中を打倒せよ」
「黄少明は銃殺刑だ」

 といったスローガンが随所に貼り出されたそうです。

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 さて標題の「不妊手術より上納金」ですけど、今回のケースは「計画出産利権」ともいうべき構造が自治区政府内の担当部門を頂点に形成されていたように思えてなりません。

 もちろん違法出産に対する取り締まりが甘かった可能性もあります。地元では、

「一人生んだら避妊リング、二人生んだら結紮手術、三人目四人目は殺、殺、殺」

 という極端なスローガンが叫ばれていたそうですから。……ただ「実行部隊」の数々の暴虐も、子供を取っ捕まえたり女性に不妊手術を強制したりするよりは、村そのものを襲撃して金目のものを強奪していくことに重点が置かれていたように思います。

 それからいわれのない罰金。規定を越えた出産に対する罰金の金額が急に何倍にもはね上がったり、親がすでに罰金を払っている子供がすでに成人しているところで、今度は「社会扶養費」(規定より多く生まれた子供を社会が養ってきたのだ、という罰金)なるものを新たに設けて1980年までさかのぼって罰金を徴収したり。

 それを拒めば「実行部隊」が家に押し掛けて家財道具を一切合切持ち去ってしまいます。銀行口座の凍結という形での資産差し押さえもあったようです。違反していないのに村ぐるみでまとめて襲撃されたため生計が立たなくなってしまった人もいます。

 博白県当局がそこまで必死になったのも、

「ノルマをこなしていない。9月までに目標に達していなかったらお前らクビ」

 と上から圧力がかかったためで、そのノルマなるものは国策の徹底といったことよりも「上納金が少ない」というのが実際のところではないかと。ちなみに
「不妊手術約1万7200件を行うとともに、『社会扶養費』788万元を取り立てろ」というのがその「ノルマ」だったようですが、地方党幹部の行動原理からすれば、軸足は後者に置かれていたとみるべきでしょう。

 罰金を取れるだけ取り立てて上納すれば見返りに何らかの特権を与えられるというのは、末端に近いため上からの監視の目が行き届かない割に支配権は意外に大きいという県の党幹部レベルにはありそうな話です。……まあ、私の邪推にすぎませんけど。

 イエローカードをつきつけられた博白県とは裏腹に、同じ玉林市でも容県は成績優秀。5月頭の一週間に及ぶ大型連休中に人海戦術で取り立てを行い、その期間だけで「社会扶養費」3400万元を集めたそうです。

 そこで博白県当局も見境のない行動に出た訳ですが、裕福な農村ではなくむしろ貧困地区に属する場所での苛酷で不条理な年貢取り立て(というか本来の年貢だった「農業税」は昨年で廃止されたので新種の年貢)に、とうとう農民たちがムシロ旗を掲げて立ち上がったのでしょう。

 その意味で、今回の同時多発的暴動は近年発生している様々な農村暴動の中でも、典型的な百姓一揆に最も近いケースだったのではないかと考えているところです。

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 ここから先は、中央から派遣された「進駐軍」がどこまで巨悪を暴き立てることができるかに注目です。また、別の地区でもこの「計画出産利権」が明るみになるか、あるいは今回同様暴動という形で白日の下にさらされるか、といった点にも期待できそうです。

 利権というかカネの話だと都市部住民の株狂いからも目が離せません。マネーゲームの参加者がこれだけ広範かつ多人数になってしまうと、いったん暴落めいた動きがあれば噂が噂を呼んで雪崩現象に発展するでしょう。マクロコントロールなんて小手先技でどうにかなるものではありません。

 それによって中国経済がどうなるかということにも関心はありますけど、何より社会的な影響に興味津々です。いま現在、すでに放っておいても散発的に暴動が起きるような状況なんですから。




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 これはすごいです。久々の大規模な農村暴動。しかしそれだけではありません。特筆すべきことがいくつかあって、どこから手をつけていいのか迷うくらいです。

 まずは舞台となった場所ですが、広西チワン族自治区の博白県。隣接する広東省との境界に近い地域です。この博白県下の各鎮(県の下の行政単位)でタイトル通り、地元農民による前代未聞の同時多発的な暴動が発生、一部の鎮庁舎は農民たちの襲撃を受けて炎上、警察車両も破壊され焼き打ちに遭うなどしています。

 原因は地元当局による計画出産政策の押しつけです。その徹底ぶりが常軌を逸し、「官匪」といっていい暴力と収奪が横行したため、農民たちの堪忍袋の緒がついに切れて、自衛のため鎮ごとに「官」への逆襲に転じたというもの。どこまで組織的なものかは不明ですが、

「官逼民反」(「官」の横暴に追いつめられた「民」が成否を問わずに蹶起する)

 の典型例といっていいでしょう。とりあえず暴動系のタレ込みサイトとして重宝されている「博訊網」に掲載された現場写真をどうぞ。

 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2007/05/200705200252.shtml
 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2007/05/200705200250.shtml
 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2007/05/200705200248.shtml

 特筆すべきことがもうひとつ。今朝(2007/05/21)の香港各紙はこのニュースを揃って報じています。……いや、新聞が出た時点では、親中紙の『香港文匯報』と『大公報』だけはこの事件をスルー。

 この「なかったこと」扱いになっていることにも異常さを感じます。恐らくこの事件について、広西チワン族自治区当局ひいては党中央が「定性」(政治的な善悪評価)を未だ示していないからかと思います。

 そういう迷いが生じても不思議ではないほど今回は地元当局による「官匪」ぶりが際立っています。護民官たるべき当局が、民衆を農奴扱い。ここまでできるのか、と思えるほどの暴虐がここ3カ月余り、まかり通っていたようです。

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 そもそもの発端は博白県当局が上級部門から、計画出産政策のノルマが達成されていないとしてイエローカードをつきつけられ、

「今年はノルマを達成しないとお前らみんなクビ」

 と警告されたことによります。たぶんこのノルマにしても実際の人口に基づいた合理的なものではなく、県当局にしてみたら「そんな無茶な」というべき硬直した指標だったのでしょう。後述する実例からすると人口抑制より罰金集めがノルマの重点であるように思われます。

 ともあれノルマをクリアしないと我が身が危ない、と県当局は隷下の各鎮政府に厳命を下しました。そして実施されたのが香港紙『東方日報』が報じるところの
「三光政策」です。いわく、

 ●手当り次第に不妊措置(結紮)を実施する。
 ●計画出産政策に反した農民から罰金をとりまくる。
 ●家財道具でも家畜でもカネになるものを収奪する。

 というもの。県当局はこのために定職に就いていない若い衆800余名を駆り集め、さらに各部門からも職員を抽出して実行部隊を編成。県下各鎮各村を連日襲撃して上記「三光政策」を実施しました。

 いや正に「襲撃」としか表現しようがありません。「博訊網」が伝える実例によれば、実行部隊は棍棒や手錠を装備してトラックなどで各地を急襲。

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 ●実行部隊が城廂鎮の製衣工場を襲撃して女工たちを拘束、トラックに乗せて病院に連行し不妊手術を施した。逃げようとした女工は全身血まみれになるほど殴打された。

 ●通学途中の16歳の女子高生を通りがかった実行部隊が拘束し、不妊手術を実施。類似例として50歳の婦人も同様の目に遭っている。

 ●白平村の老人が8歳の孫と歩いていたところに実行部隊のトラックが通りかかり、有無を言わせず子供を奪い取って走り去った。子供の消息はいまなお不明。

 ●江寧鎮蓮花村の農民が一日の畑仕事を終えて帰宅してみると、村中の全ての家がドアをこじ開けられ、家財道具など金目のもの全てを持ち去られていた。

 ●草堂村の農民が畑仕事をしていたところに実行部隊数百名が来襲。一部の兵力で村の出口を封鎖しつつ、全ての家から金目のものを奪取。鍋や釜はもちろん、アルミサッシまで取り去られた。

 ●松旺鎮の林さんが親戚の営む小さな養豚場で働いていたところ、実行部隊のトラック数台が出現。百人余りの襲撃に村人たちは悲鳴を上げて自宅に逃げ帰りドアも窓も閉め切ったが、豚を守ろうとした林さんは袋叩きにされ、翌月には市場に出す予定だった豚32頭が強奪された。

 ●譚連鎮の日用雑貨商である劉さんが店を開けたところに折悪く実行部隊が来襲。数十人が店内に押し入って次々と商品を強奪し、アルミサッシまで取り去られた店にはビニール袋しか残っていなかった。

 ●計画出産規定に違反した者の罰金がそれまでの数百元から数万元へとはね上がり、また過去の違反者に対しては1980年時点までさかのぼって「社会扶養費」(計画出産規定に違反している子供を社会が養ったという罰金)を重ねて請求。3日以内に支払わなければ家財没収のうえ家屋を破壊。

 ……県下各鎮の村々で連日こうした土匪まがい(というか土匪そのもの)の行為が繰り返され、家財道具一切を奪われた農民たちはただ呆然とするばかり。

 夜襲も頻繁に行われるため、夜になると子供が連れ去られないよう一家で山中に避難する村民たちが相次ぎ、その際に毒蛇に咬まれて死亡した農民もいます。

 実行部隊800名に襲撃された東平鎮のある村では村民が必死に裏山へ避難。子供が泣き出したため、その声を聞かれるのを恐れた母親が懸命に子供の口を手で塞いでいたところ、気付いたら子供が窒息死していたというケースも。

 ●「博訊網」(2007/05/20)
 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2007/05/200705202227.shtml

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 これら悪行三昧が全て地元政府である県当局の指示で行われていること、その上級部門の玉林市当局は見て見ぬふりであること、というのは驚くべきことです。まさに「官匪」ではありませんか。

 そして、こうしたやりたい放題の暴虐は恐らく頂点である広西チワン族自治区政府の預かり知らぬところでしょう。その自治区党書記や自治区政府主席が胡錦涛直系の「団派」(共産主義青年団人脈)であろうと「太子党」(二世組)であろうと「上海閥」であろうと、そんなことは関係ありません。「諸侯」と呼ばれる本当の地方のボスは市や県レベルに根を張っているのです。

 このことは注目していいと思います。中共による統治機構がこのレベルから下では立ち腐れ始めていることを示しているからです。現に「法治の実現」だの「和諧社会の建設」だの「社会主義新農村建設」といった、中央レベルで打ち出される方針をあざ笑うかのような事態が進行しているではありませんか。

 もちろん、今回のケースは香港メディアなどに報道されたから明るみになったものの、似たような「官」の横暴が恐らく全国各地で発生しているであろうことは想像に難くありません。

 というのは、これは計画出産政策に名を借りた新たな搾取という見方もできるからです。農民に対する農業税が廃止されて「胡温体制」とくに温家宝・首相の善政が中央で強調されましたが、末端レベルの地方当局はその農業税に代わる収奪がなければオイシイ思いができません。

 あるいは以前、当フログで取り上げた謎の官民衝突事件もこの計画出産絡みのものかも知れません。少数民族という要素がどれほどあるのかはわかりませんけど。

 ●またまた広東省で官民衝突、謎の4死6傷事件。(2006/02/14)

 ……襲撃された農民たちはいずれも生活の術を失って流民同様の境遇に堕ちてしまったといっていいでしょう。幸い被害に遭っていない農民にしても、いつ実行部隊のトラックが出現して村の出口を封鎖し、収奪の限りを尽くされるかわかりません。

 家財道具はもちろん、計画出産ノルマを達成するために子供までもが無理矢理連れ去られるのです。連れ去られた子供がどうなるのかは、ちょっと想像したくありません。

 ともあれ、ここまで「官」に追いつめられれば、農民たちも自衛のために立ち上がらざるを得ないでしょう。博白県下の各鎮で同時多発的、あるいはドミノ倒し的な農民暴動が発生することとなります。

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 香港各紙の報道によると、暴動は農民たち数千名が鎮政府庁舎に押しかける形で先週木曜か金曜(5月17日~18日)に大�鎮、安永鄉、英橋鎮、頓谷鎮などで発生。いずれも政府庁舎は放火され、水鳴鎮では博白県公安局トップの警察車両も焼き打ちされた模様です。

 当ブログでこれまでに紹介してきた数々の暴動で明らかなのは、いったん暴動が起きてしまうと地元当局の警察力では対応し切れず、上級部門からの応援を要請するしか手がないことです。この17~18日の暴動でも博白県当局は玉林市の警察に増援を求めましたが、その大半は途中で農民たちに行く手を阻まれたそうです。

 各紙の電話取材によると県当局は「騒乱」が発生したことは認めていますが、計画出産政策の極端な遂行ぶりが原因かどうかについては口を濁しています。

 横茂鎮の警察署によると県下32カ鎮のうち7~8カ鎮で暴動となり、最大規模の騒乱は日曜日である19日、沙陂鎮で発生しました。

 同鎮の農民たちが「三光政策」への抗議のため政府庁舎前に屯集したところ、それを見た職員が正門に頑丈な鍵をかけて農民の侵入を阻むと、いよいよ大勢の農民が集まって庁舎建物への投石が始まり、警察がかけつけて一触即発の険悪なムードに発展。……したところで、よりによって計画出産部門の職員が政府庁舎の屋上から投げた拳ほどの大きさのレンガが農民1名の頭部を直撃。

 負傷した農民が血を噴いて昏倒したかどうかは定かではありませんが、群衆の怒りはこれで沸点到達。人海戦術のマンパワーで壁を引き倒すなり、敷地内になだれ込んで政府庁舎に放火。建物が炎上するなか駐車してあった車3台及びバイク20台も焼き打ちされ、一部は黒煙噴き上がる庁舎内に突入して事務室のPCやテレビ、ビデオなどを破壊。また門前に掲げてあった鎮政府の看板を引っぱがして皆で踏みにじるなど、これまでの憤懣を一気に爆発させました。

 なお、この日は土曜日だったため学生多数もこの抗議活動に参加しており、民衆の怒りをピークに到達せしめたレンガ投げは政府庁舎3階に隠れていた県党書記か副書記によるもので、学生に命中したとの説もあります。

 情報が錯綜しているため確度には難があるものの、防暴警察(機動隊)あるいは武警(武装警察。内乱鎮圧用の準軍事組織)が出動して民衆との大がかりな衝突に発展した鎮もあるようです。

 暴動は飛び火するかのように相前後して複数の鎮で相次いで発生し、那卜鎮では民衆5000名と警官・武警300名が白兵戦となり、当局側は野次馬も含め、老若男女の別なく手当り次第に棍棒で殴打して回り、多数の負傷者が出たうえ、50名前後の農民や学生が検束されたといわれています。

 事件が現在進行形でいまなお暴動が続いているのかどうか、なにぶん今回は同時多発的で「現場」がいくつもある訳ですから続報を待つしかありません。ただ香港紙の報道では死者5名との噂が流れているとのことです。

 ――――

 ちなみに、事件の情報はネットを通じて中国国内でも流れ、ネット世論の憤激を買った模様ですが、中国国内メディアはいまこのエントリーを書いている時点では事件については沈黙しているようです。ただし地元紙『玉林日報』の報道として、

 ●博白県、朱日祥を優秀な共産党員として追認(新浪網 2007/05/21/09:07)
 http://news.sina.com.cn/s/2007-05-21/090711861157s.shtml

 という記事がありました。今年の計画出産政策遂行の職務において殉職したそうです。殉職?計画出産部門職員が一体どこでどうなると殉職する訳?ということで暴動絡みで殺されたニオイを感じます。

 また、とりあえず博白県当局レベルでは遠因近因に知らんぷりして暴動を「悪」と認定したい姿勢であることが
「共産党員追認」でわかります。恐らく玉林市当局も同腹でしょう。これが自治区当局ひいては党中央となるとどうなるのか、結論が出ていないことは香港紙の中で親中紙がこの事件を全く報じていないことでわかります。

 ともあれ続報に期待しましょう。「自衛」を旗印に博白県の農民が鎮を超えて連携するようになると「官」にとっては恐るべき事態になりそうですけど、政府庁舎を炎上させて農民たちは満足してしまったかも知れません。

 それよりも暴動の遠因近因に照らして人民擁護を旗印にしている「胡温体制」がこの事件をどう裁くか、中央の権威度をはかる上でも注目したいところです。

 それにしても末端レベルは本当にやりたい放題なんですね。少なくとも「人民」を人間扱いしていないことは確かなようです。……ただ県当局も上級部門から無茶なノルマを課せられたためにかくなった、という部分もあります。計画出産部門の職員にしても板挟みの苦しみがあったかも知れません。所業からはそんな気配は微塵も感じられませんけど。

 ちなみに『太陽報』の記事に「実行部隊のものすごさは往年の日本軍のようだ」というものもありました。政治的背景のない同時多発的な暴動によって日本軍の現地司令部が焼き打ちされたなんて話、ありましたっけ?

 まあ香港人の書く記事ですから所詮はこんな程度、とはいえます。そのおかげで私の副業も成立している訳でw。

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 ●『明報』(2007/05/21)
 http://www.mingpaonews.com/20070521/cca1h.htm
 http://www.mingpaonews.com/20070521/cca2.htm

 ●『星島日報』(2007/05/21)
 http://www.singtao.com/yesterday/chi/0521eo01.html

 ●『東方日報』(2007/05/21)
 http://orientaldaily.on.cc/new/new_a00cnt.html
 http://orientaldaily.on.cc/new/new_a52cnt.html

 ●『太陽報』(2007/05/21)
 http://the-sun.on.cc/channels/news/20070521/20070521014757_0000.html
 http://the-sun.on.cc/channels/news/20070521/20070521014757_0000_1.html
 http://the-sun.on.cc/channels/news/20070521/20070521014757_0000_2.html




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 東京に居座ってチナヲチ(素人の中国観察)をしていると、どうしても歯がゆくなる部分が出てきます。

 ひとつは、消息筋を持っていないことです。これは私の努力次第で東京でも情報網を構築できるでしょうし、それをやるだけの条件も整ってはいます。とはいえやはり仕事優先。チナヲチは道楽でやっていることですから、そこまで身を入れることはできません。

 もうひとつ、これはより重要なのですが、現場の感覚がつかめないということです。

 例えば都市部における党幹部の威張り具合。上級部門から掣肘を受けることなく独立王国然とした統治が行われているらしいことは、以前紹介した分不相応な豪華庁舎を見れば察することはできます。ただ日常生活の中で党幹部がどう威張り特権を振りかざし、それを目の当たりにしている住民の心情はどういう感じなのか、というのは現地で生活していないとどうしても実感できません。

 現場感覚がないというのはイタいところです。以前上海に留学中に民主化運動が生起したとき(1989年)、上海で行われた小規模なデモ、野次馬も含めて数百人程度のものなのですが、それを見届けてから宿舎に帰って短波ラジオでNHKの国際放送を聴いたら「上海では数千人規模のデモが行われ……」と報じていたので驚いたことがあります。

 ……これは現場感覚とはちょっと違いますが、現地の実情と報道される内容にはそのくらい誤差が出ることはままある、と肝に銘じたものです。NHKは当時上海支局が機能していましたし、特派員の手足として日本人留学生が手伝っていたりもしたのですが、それでもニュースになると数字が膨らんでしまいます。

 農村についても同じことがいえます。当ブログはこれまで数々の農村暴動だの官民衝突といった事件を紹介してきましたが、肝心の「農村」がどういった感じのものなのか。……私は農村といえば外国人や他地区の視察団に見せるために建設されたモデル農村とか、都市郊外型農村といったものしか知りません。

 そもそも「郷」とか「村」といった行政の末端レベルの管轄区域、簡単にいえばひとつの「村」の面積や人口はだいたいどのくらいなのか、ということも知識としても実感としても理解できません。こうした点については現地に駐在されている方々が詳しいと思いますので、いろいろ情報を寄せて頂ければ幸いです。

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 ところで、官民衝突といえば今年10月1日から「物権法」が施行されます。私有財産の保有を合法的なものとして保護する法律です。同法の施行によって、官民衝突で最も多いケースと思われる地元当局による土地の強制収用が減少するという見方があります。

 強制収用とは、要するにダムや発電所を建設するとか開発区を設立するとか道路を敷くとか都市再開発をやる、といった名目で「官」が「民」から有無を言わさず土地(耕地や住宅地)をはぎ取る行為です。

 その過程で十分合理的な移転先や補償金が手当てされれば問題はないのですが、そういう理想的なケースでなければ官民衝突が発生します。そりゃ生活がかかっていますから住民も必死です。土地転がしで懐が温まる絶好の機会ですから当局もまた必死。

 本来満足な補償が行われていたのを役人が着服する場合もあります。帳簿の上では満足な補償金が支給されているものの、それが住民の手に渡る時点、つまり受給実績では大きく目減りしているケースです。

 住民は当然ながら「これじゃ話にならない」と怒ります。そこで当局は警官や武警(武装警察=内乱鎮圧用の準軍事組織)を出動させて武力衝突。力づくで住民を鎮圧して土地をかっさらうことになります。

 で、こうした土地収用において、収用される「民」の側が十分合理的な補償を受けられるよう法的な保護を加えたものが物権法です。ただし、既得権益も同法によって保護されるという点と、司法が行政から独立していないという問題があります。

 例えば過去の強制収用や国有企業の売却で党幹部が不当に獲得した資産も保護されることになりますし、司法の上に行政があぐらをかき、そのまた上に中国共産党が乗っかっている構造ですから、物権法が実際にちゃんと機能するのかどうか甚だ疑問です。

 司法が「民」でなく「官」の味方をすれば以前通りの展開となります。「官」にしてみれば司法を籠絡するという手続きがひとつ増えるだけ、となります。「民」にしてみれば「ないよりはマシ」程度のものになってしまうかも知れません。

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 ただし、中共政権は「対外的に見てくれのよいテストケース」と「見せしめ」がお好みです。前者は1980年代に設立された「経済特区」が好例。改革・開放政策のテストケースとして数カ所の候補地を指定し、そこをうまく発展させてみせることで外資の呼び込みを図ったものです。

 その経済特区が上海ではなく深センだったのは外資の主力たる香港に隣接していることと、ただの農村なので「古いものを壊し抵抗勢力を潰す」という「改革」作業の必要がなく、更地にどんどんビルや工場を建設すればそれで済んだからです。

 物権法も施行に際して同法がちゃんと機能しているという「テストケース」を党中央がつくり出してその成功例を大々的に宣伝する可能性が高いかと思われます。外国人参観者向けのモデル農村のようなものです。

 逆に、同法を機能不全に陥れた悪例もいくつか暴き立て、それを叩きに叩くことで、それまで土地収用で不当な権益を得ていた地方当局に対する「見せしめ」を行うこともあるでしょう。これは同時に「中央政府はちゃんと仕事をしている」という庶民に対するアピールでもあります。

 少し前に重慶市の「史上最強の居座り住民」という派手なケースが大きく報じられましたが、あれは物権法施行前の悪行、つまり地方当局による「駆け込み土地収用」への「見せしめ」である一方、国民に対しては「物権法施行前でもちゃんと監督しているのだ」というモデルケースになりました。

 最初からそういう筋書きだったのか、途中から「テストケース&見せしめ」対象とされたのかどうかはわかりませんが、結果的にはそういう効果をもたらしました。

 ただマスコミの大がかりな報道に対して、ネット世論などは「やらせ」らしいことを看破していた様子があります。非道への怒りと同情というよりは、イベント見物のような気分で事態の推移を楽しんでいた、という印象です。居座り住民のキャラが立っていたこともあって、この住民のアイコラなどといったお笑い画像も随分出回っていましたね。

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 ともあれ、好例とされるか悪例とされるかで「官」と「民」のどちらが喜ぶかが分かれます。ただ、こういう「テストケース」や「見せしめ」は経済特区同様、ほんのわずかな例でしかないでしょう。要するに物権法施行直前の「駆け込み収用」行為が現実にはあちこちで行われている、ということです。例えば、これ。

 ●催涙弾で土地強制収用……浙江省(明報 2007/04/25)
 http://hk.news.yahoo.com/070424/12/266qz.html

 この報道によると、浙江省瑞安市陶山鎮の霞林村で住民の同意を経ることなく村の党幹部が耕地をデベロッパーに内緒で転売。それに気付いた村民が抗議行動に出て土地収用に抵抗していたところ、4月4日の午前1時という深夜を狙って開発業者がトラック数十台を動員して耕地を土砂で埋め尽くし、慌てて飛び出してきた村民には催涙弾を発射。村民たちは涙ポロポロ手足ピリピリで動けないところをサクサクと排除され、デベロッパー側は典型的な強制収用を完了させたというものです。

 ただし、催涙弾を発射したのはさすがに開発業者ではないでしょう。この件につき瑞安市の方暉・副市長は、

「業者側はごく穏便に作業を行った。私はそのとき現場にいたからね」

 と言っていますから、「官」も加わっていたことは確かです。武警さんあたりを出動させていたのでしょう。またこれが副市長のコメントであることから、この「土地転売=売却益の一部を着服」計画に関与していたのが村の党幹部だけでなく、より上の行政レベルである鎮や市の党幹部も関わっていた可能性が……というより関わっていたのがミエミエです。

 仮に物権法の施行下でも司法を味方につけておけば無問題。「法制あれど法治なし」を地で行くケースとなったことでしょう。香港メディアに報道されただけ、この村はそれでも恵まれていたといえるでしょう。

 ちなみにこの記事では事件の舞台となった霞林村は「315世帯・総人口1365名」となっています。

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 こういう「官匪」としか表現しようのない当局の無体な振る舞いに生活を脅かされれば、農民も覚悟を決めざるを得ないでしょう。特に抗争が長期化している地区の農民にとっては、本来「官」である役人などは、自分たちを滅ぼしにきた「敵」としか思えなくなっても不思議ではありません。いきおい農民の側も半ば戦闘組織化していきます。

 典型的なのは広東省汕尾市のケース。例の「12.6事件」の舞台です。農民にロクな補償も手当てしないまま「官」とその眷属たるデベロッパーが耕地を強制収用、火力発電所の建設作業を始めたのに対し農民が工事を妨害するなど抗議行動に出たところ、汕尾市当局が武警を出動させ、何と実弾を装填した突撃銃を農民に向け乱射。農民側に「3死8傷」(当局発表)の被害が出たという2005年12月6日に起きた惨劇を御記憶の方も多いでしょう。

 報道ではこのとき農民側も手製爆弾を準備していたなど「武装農民」化していた様子なのですが、昨年11月にも抗議活動を行った農民を当局が拘束したところ、農民側が役場を襲撃してその場にいた役人を人質にとって拘束された農民の解放を求めたという事件が起きています。

 ●速報:惨劇再発の危機、「12.6事件」の村を武警が包囲!(2006/11/18)
 ●続・東洲村事件:「官匪」は再び実力行使に。(2006/11/19)

 発電所建設工事の妨害といった農民たちの抵抗はいまなお続けられています。湖南省で4日連続の都市暴動という派手な官民衝突が今年3月に発生しましたが、実はそれと同じ時期にこの汕尾市・東洲地区でもタチの悪い武力衝突が起きていました。

 タチが悪いというのは、農民の抵抗を排除するために「官」の側が動員したのは警官や武警ではなく、「黒幇」(黒社会)のチンピラだったからです。

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 事件が起きたのは3月11日。東洲地区・石古村の農民たちが建設工事が進められないよう交代制で見張っていたところ、デベロッパー側が工事強行を企図。それに気付いて村民たちが妨害活動に出ようとするや否や、突如わらわらとチンピラ数百名が出現して農民側に攻めかかり、棍棒や投石で村民多数が負傷したというものです。

 チンピラは開発業者が雇った模様ですが、その背後に地元当局がいるのは歴然。その証拠に被害続出の農民側が警察に通報しても警官が出動してくれませんでした。

 ところが、さすがに歴戦の農民たちですから怪我を負わされ泣き寝入り、という形には収まりません。石古村の村民が事態を近隣各村に急報したところ、

「敵襲!敵襲!」

 とばかりに各村で一斉にドラが鳴り響き、それに応じて4カ村から1000名以上の農民が棍棒などを手に現場へ急行。負傷者を病院へ搬送する一方、主力部隊は脇目もふらずチンピラ集団との白兵戦に突入したのです。

 今度は農民側が素手でない上に人数でもチンピラ側を圧倒しています。しかもこれまでにも武警相手に肉弾戦を繰り返してきた百戦錬磨の強者揃い。まさに衆寡敵せずで、チンピラ集団はあっという間に突き崩され、這々の体で敗走。農民たちはこれでも収まらず、開発業者が用意してきた工事用車両やトラックなど3台に放火。ぶわーっと火柱が立つ勢いで炎上し農民たちが勝鬨を上げていたところ、今度は警官が姿を現しました。ただし、

「ここはこっちの顔を立てて、どうか喧嘩はやめてくれ。ゆっくり話し合おうじゃないか」

 と変に弱腰です(笑)。チンピラ集団が潰走したら警官がすぐ出てきた、というのも当局が今回の武力衝突に関与している証といえるでしょう。

 衝突はこれで終了となりましたが、怒りの収まらぬ農民たちは翌3月12日、5カ村から合計1000名以上の農民が一群となって工事現場付近をデモ行進。抗議の横断幕やドラを打ち鳴らすという賑やかな抗議活動に対し、当局は武警1コ中隊を出動させて横陣に展開、防盾をズラリと並べて万一に備えたのですが、幸いこの日は衝突に発展することなく両者撤収となりました。

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 ちなみに、米国系ラジオ局「自由亜洲電台」(RFA)の報道によると、この地区の土地収用に対する補償金は1人当たり毎年150元。お前らみな死ね路頭に迷えと言わんばかりの金額です。

 かように過酷な「官」の出方には農民たちも自衛のために戦うしかないでしょう。そして抗争が長期化すればするほど、この地区の農民のように当局も迂闊に手を出せない一種の戦闘組織として洗練されていくことになります。

 それは取りも直さず、中共政権が構築した統治システムが、その末端で崩壊していることを意味します。地方当局が司法を籠絡することによって物権法を骨抜きにしてしまえば、こうした事態がいよいよ深刻な方向へと向かうことになります。

 ……ところで今回の衝突で「官」の側は黒社会のチンピラを動員したと報じられていますが、実際のところはどうでしょう。下駄を預けられた黒社会の側が、職にあぶれた出稼ぎ農民を日雇いで駆り集めたという笑えないケースである可能性もあります。

 いや、実際に別の地区でそうした例があり、このときはやはり農民側の反撃で拘束された「チンピラ」が、自分たちはカネで雇われた出稼ぎ農民だと白状し「命乞い」をしています。

 この汕尾市・東洲地区のケースは事態が泥沼化している点で特別な事例のようでもありますが、同じ広東省だけでも南海市や仏山市の農村部でやはり土地をめぐるトラブルが長期化し、官民衝突が何度か発生しています。幸い報道されたために私たちはそれを可視範囲に置くことができた訳で、香港メディアもカバーできない地域で似たような事件が起きている可能性は十分にあるでしょう。

 それぞれが連携のない個々の動きながら、こうした「村落の変質」は中共政権にとって少しずつ重荷になっていくのではないかと思います。まだその気配はないものの、もし各地で「連携」に発展する動きが出現すれば亡国一直線でしょう。

 ●「大紀元大陸版」(2007/03/11/23:34)
 http://www.epochtimes.com/gb/7/3/11/n1642734.htm

 ●「大紀元大陸版」(2007/03/13/02:43)
 http://www.epochtimes.com/gb/7/3/13/n1643920.htm

 ※下の記事はRFAからの転載。




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