日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 一週間ばかり、中国と直接関係のないことに首を突っ込んでおりました。本業は相変わらずダラダラやっていますが、単発の副業仕事が入ってそれに没頭。

 納期守って約束通りの仕事をしたら、作業の割には過分な報酬を頂きました。折しも配偶者は香港へ帰省中。おおお、これぞ正に天与の機。……てな訳で大散財。デジカメだのストロボだのプリンターだの外付けハードディスク2台……などを購入して仕事環境の向上を実現しました。

 それからカレン族・Lさんとの「朝食会」が盛り上がっています。互いにやることがあり頻繁に開けるものでない分、毎回とも密度の濃い内容です。

 Lさんのお陰で、私はミャンマー(ビルマ)の軍事政権に弾圧されている少数民族という視点から中国を眺めるという稀有なポジションを持つことができました。LさんはLさんでカレン族としての思いが強く、また日本在住ゆえ日本人にもっと事態を知って欲しいという気持ちがあったようで、互いに渡りに船といったところでしょうか。

 Lさんによると、軍事政権は中国からの資金・武器援助によって装備の強化を進めており、最近は難攻不落と信じられていたカレン族の一拠点が、中国からもたらされた火器および化学兵器による軍事政権側の攻勢で陥落してしまったそうです。お決まりの人権弾圧も厳しくなるばかりとのこと。

 日本人としては、中国がミャンマーを事実上属国化し、インド洋に出やすい港湾を租借することに神経質にならざるを得ません。その港に潜水艦や空母戦闘群を配備することで、中国は周辺海域における存在感を高められることになります。インド洋で通商破壊戦も行うことができるようになりますし、シーレーンという観点に立てばミャンマーは台湾と同等の価値を持つといっても過言ではないでしょう。

 ……そんなことを語り合っているうちに、

「御家人さんをカレン族の正月を祝う集まりに招待します。12月にやります。一緒に行きましょう」

 とLさんが言い出し、いやでも私は外国人だし……などと言っているうちにLさんはミャンマーの家で留守を守っている奥さんに連絡し、Lさんの分も含む民族衣装2着が日本に届けられてしまった次第。うーん嬉しいのですがいいのでしょうか。

 ともあれ、それなら私はカレン族の士気を高めるためのお土産を準備しないと、と考え、イラストレーターというソフトと組み打ちをしている間に一週間が過ぎていました。

 取っ組み合ったついでにかようなロゴめいたものも作ってしまいました。「大毒草」とは御家人ブランドとでも申しましょうか、とにかくジャンルを問わず私の制作物全てに本来掲げるべき商標のようなものです。

 

 ロゴ下の一節が気になるところでしょうが……ええ、そのまんまの意味です。あとは解釈次第(笑)。最近は外で活動することが増えてきたので、そのための名刺を制作する破目となりました。

 デモとかOFF会に出たときにも便利ですし、コソーリ活動用の日本人名もつい最近、風水師のY老師に新たにつけてもらったので、衣替えのタイミングもちょうどよかったです。

 ――――

 この一週間、自宅で仕事をしている間は私が贔屓とする「いきものがかり」の新しいシングルを聴いたりしていたのですが、それよりもニコニコ動画にハマってしまっています。

 例によって「初音ミク」、ということになりますけど、この話題はずいぶん前に1回やって(あのときは盛り上がりましたね)、ちょっと前にニコニコ動画関連でもう1回、さらに最近も「初音ミク」メインで1回やっております。私自身は1回目のときに「オサーンホイホイ」を教えてもらい「HMO」さんの作品にのめり込んでしまいました。オケが安定していますし「高橋ミクヒロ」な調教上手にも魅かれたのです。

 そのうちにCD発売=メジャーデビューを果たした「doriko」さんの楽曲が表現する「透明感&まっすぐ感&切なさ満点」に傾倒してしまいました。

歌に形はないけれど

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夕日坂

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 いずれも歌い手は「初音ミク」なのですが、ニコニコ動画には「~を歌ってみた」というものもあり、これは「初音ミク」の部分を肉声で歌う、要するにカラオケ披露のようなものです。

 これは歌う人によって声質や表現力が曲のイメージと見事にマッチしていると素晴らしい作品となります。「いきものがかり」は路上ライブからメジャー昇格となったのですが、歌うのが「初音ミク」であろうと生声であろうと、これはこれで路上ではなく「ネット上ライブ」といっていいでしょう。「doriko」さんその他のような実例もあります。

 で、ここからが本題。その「~を歌ってみた」で「HMO」さんと「doriko」さんの作品を見事に歌い上げた人がいます。御存知の方も多いかと思いますが、女性ボーカルの「Φ串Φ」さんです。

 私の場合は「HMO」さんの作品「電空少女」でその存在を知って色々聴いてみたのですが、表現力がこの半年で長足の進歩を遂げていて驚かされます。いまは単に上手に歌うだけではなく、楽曲の色に合わせて声に演技させるような技巧さえ身につけてしまっています。恐れ入谷の鬼子母神。

 せっかくなので下に置いておきます。とりあえず私の好きな「電空少女」「モノクロアウト」「サンドリヨン」「夢一夜」をば。コメントがうざったい場合は画面右下に出るヒヨコ&吹き出しマークの「COMMENT」をクリックすれば消えます(推奨)。個人的には男性ボーカルとのコラボである「サンドリヨン」がたまりません。

















 いずれも原曲は「初音ミク」などボーカロイドが歌っているのですが、全てオリジナル曲であることも凄いと思います。


 こういうレベルの高いものを作る実力派のアマチュア(同人)がプロに吸収されていきます。

 ●アマチュアでも高いレベルの人がいる。
 ●ニコニコ動画のような、アマチュアでも作品を不特定多数の「観客」の前で発表する場所がある。
 ●新人発掘を狙うプロ(業界)もアマチュアの動向にいつも注目している。

 日本のACG業界が強い理由のひとつはここにあると思います。




 ……という趣旨のメッセージを私は香港に向けて折をみては発し続けているのですが、如何せん仕事仲間も読者もアキバ系止まりで次の段階に進めていません。一般には単に作品を云々するばかりで、業界を成長させる構造や社会的な要因まで考えが及びません。

 悪い言い方になりますが、香港でサブカルチャーのメディアなんて賎業に携わっている面々は往々にして一般教養を含めて偏差値低いですし発想も貧弱で他の業界では到底戦力にならない連中。……といったことと無関係ではないでしょう。

 わずかに現地メーカーのPCゲームのクリエイターやコミックの同人をやっている読者などが敏感に反応してくれる程度です。

「初音ミクのコスチュームってさ、あのDX7がモデルだって知ってた?」

 と本業副業合計20数名の香港人に尋ねたところ、例外なく「それは何ですか?」「DX7って何ですか?」という回答が返ってきたときの無力感といったら……orz。そもそもこいつらの中で何か楽器を使えるのは私だけ。

 まあ、いまはどうだか知りませんが、香港は英国植民地時代に教育を受けた連中は五線譜も読めませんし、アマチュアは発表の場すら満足に与えられていません。となれば当然ながら業界にもアマチュア層から新人発掘、という発想には行き着きませんので、さもありなん、といったところです。

 アニメ・コミック・ゲームの略称である「ACG」に限っていうなら、東アジアにおいては「とてつもない日本」といっていいと思います。

 たまたまレベルの低い香港や台湾で頼まれて文章を書いたら予想外の高い評価を得たことでつい安逸に流れ、何の分野であれその「とてつもない日本」に挑む好機をみすみす放棄した私は自業自得。賎業がお似合いです。……「初音ミク」に限らずニコニコ動画の秀作の数々を観るとどうしても、そのレベルに舌を巻く一方で、後悔に似た苦い思いをせずにはおれなかったりします。

 だからといって酒色に溺れるなんてことはありませんが、もしかすると、このブログを書くことが一種の憂さ晴らしになっているのかも知れません。





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 毎年恒例の東京ゲームショウが昨日、9日に開幕しました。もっとも初日と二日目は「ビジネスデイ」ということでプレスと業界関係者しか入れません。11日(土)・12日(日)が一般に開放されます。

 私は例年同様にプレスパスを事前申請して取材に入りました。……といっても実質的には引率者でして、ゲームメディア向け取材には香港から特約記者が来ていますから奴に全てお任せ。

 私は知人を見つけては世間話をしたり引きずり込まれて茶をしばいたり。この業界はジョブ・ホッピングが常態なので会うたびに名刺が変わっている人も少なくありません(笑)。あえていえば私は渉外担当という仕事をしている、てなところでしょうか。

 ゲームショウ自体はここ数年で最も活気に満ちている感があります。ただ中小ソフトメーカーの廃業や大手によるM&Aが進んでいるのでメジャーの祭典になりつつあります。10年ほど前、それこそ1コマだけの小型ブースが大手ソフトメーカーに負けじとたくさん並んでいたような活況はもはや望めません。

 これは音楽や映画と同様に、ゲームも大衆娯楽としての地位を固めつつあることの証左ともいえるのですが、なにやら寂しくもあります。

 ニンテンドーDS(NDS)が中高年やOLなど新たな顧客開拓に成功した、なんて馬鹿なことを書いている新聞雑誌もありますが、ありゃ10年前を知らない若僧が書いた記事か、あるいは業界の『人民日報』である『F痛』の社長のような幇間が必死に煽っているだけです。

 実態はプレステバブルで大挙参入したライトユーザーという購買者が一時期、別の娯楽に転じていたのが、再び戻ってきたというところでしょう。市場の圧倒的多数派ながら気まぐれなライトユーザーを捉えて逃がさない、というのはなかなか難しい作業です。

 ただ子供のオモチャでしかなかった携帯ゲーム機をオトナも楽しめるものにしたという点で、NDSやプレイステーションポータブル(PSP)が果たした役割は特筆すべきだと思います。

 そうだ週刊『F痛』いえば日本と同時発売で台湾と香港で中国語版を出しているのですが、販売実績は惨憺たるもののようです。それはなぜか、といえば香港や台湾のゲーマーの目線で眺めれば一目瞭然で、日本サイドもそれをわかっていると思うのですが立場上踏み切れない理由があります。

 惜しいですねえ。現地の編集部が頭を働かせて日本側の暗黙の了解を得れば販売部数は飛躍的にアップするのに。要するに双方が示し合わせて「悪いこと」をすればいいのですけど。

 ――――

 ところで某ゲーム機メーカーのブース前で中国本土担当の総責任者と話した際、

「ありゃー。胡錦涛と同じだ。ババを引いちゃいましたね」

 と思わず言ってしまったのですが、向こうはヤル気満々で内陸部まで開拓していくつもりのようです。

「かの帝国陸軍も成都や重慶には手が届かなかったことを忘れないで下さいね」

 と、どうせ他人事なのでそんな言葉でお茶を濁しました。相手は私がこういうブログをやっていることを知らないのですが、

「御家人君、2012年の上海万博まで経済は大丈夫かなあ」

 と言うので、

「中国は泥沼ですよ。一寸先は闇ですから、逃げ支度だけはしっかり準備しておいた方がいいでしょう」

 と、真面目になるべきところを冗談めかして話を締めました。だってハードランディングがもう始まっているではありませんか。

 死ぬ奴は死ぬ。泣きを見る奴は泣きを見る。……ということです。まあ堅固に頑張って下さいな。実はありがたいことにこの会社からは過去3回もスカウトの話を頂いたのですが、香港での状況を目の当たりにしていたので「テラワロスw」と思いつつ全て蹴りました。

 香港。……そのうち10年前の香港で目にしてきた「闇の時代」をここで暴露することになるかも知れません。日本のゲーム機メーカーも手探り状態でひどいものでしたし、モラルも乱れていました。自分のところのゲームソフトに関しては「海賊版撲滅」を連呼していたのに、日本のドラマの海賊版VCDを平気で観ていましたからね。他にも色々あって実にひどいものでしたが、日本側と香港側の関係、その基本的構造はいまも変わっていないようです。

 一方で当時の香港ゲームメディアもお粗末で、日本側からはマトモな扱いをされていませんでした。それでも日本の雑誌と同じタイミングで同じ素材を掲載するために、私はそこは山師ですから口先三寸でずいぶん多くのソフトメーカーを騙してはβ版など普通のゲーム機では走らない開発中のCD-ROMをゲットしたりしていました(笑)。

 ――――

 ところで海坊主こと御家人は中国のPCゲームメーカーをまとめて「北京コーナー」のようなものがあることを事前に知っていたので、もちろんフリーチベットの「勝負戦闘服」での出撃と相成りました。

 私はこの展示会で働いている人たちとは仕事上の接点があまりないですし、プレスパスを装着すれば別人になりますから、やりたい放題に楽しんできました。

 写真の下手さはいつものことですので御容赦の程を。m(__)m


 ●入場前にお約束の一枚

 ●記者証もらうのに大行列(怒)

 ●プレスパスつければやりたい放題w(1)
 ●プレスパスつければやりたい放題w(2)
 ●プレスパスつければやりたい放題w(3)

 ●いつも慇懃無礼なソニ×ンさんの前途は暗い模様

 ●戦闘開始。以下傍若無人モードw(1)
 ●戦闘開始。以下傍若無人モードw(2)
 ●戦闘開始。以下傍若無人モードw(3)
 ●戦闘開始。以下傍若無人モードw(4)

 ●最後にもお約束の一枚。

 ●疲れた。


 さすがに雪山獅子旗を持ち込むのはマズかろうと思って、地味ながらできるだけのことをしてきたつもりです(笑)。


 ――――

 北京ブースは拍子抜けするほど閑古鳥が鳴いていました。イベントコンパニオンのお姉さんもいませんし、近くを通る人も一瞥を与えるだけで誰も立ち寄りません。だいたい日本語のできるスタッフのいないブースもありました。最近の東京ゲームショウであそこまでヤル気のなさそうな、モチベーション低げなブースは見たことがありません。

 もしかすると主催者が「中国からも参加させよう」とか何とかで無理矢理引っ張ってきたのかも知れません。北朝鮮が「ゲームを売ってくれ」とでも言ってくればホクホクと飛びつきそうな業界ですからね。まあ商人ですから節操がないともいえますが、最低限の商道徳や矜持は保っていてもらいたいものです。

 で、フリチベ写真を散々撮影した挙げ句、日本語のできない中国人スタッフが所在なげに独りで座っていたブースに取材しました。

 ●経済面:産業としてのゲームはどんな具合か。中国各地で都市振興策として「動漫基地」(動漫=アニメとコミック)や「遊戯基地」を目指すという名乗りが挙がっているが、これは各「諸侯」の割拠意識ではないか。過当競争→クオリティの低下という中国経済でよくある状況(アルミとかセメントの重複生産)が生まれつつあるように思うが(5年どころか3年後にはものすごい淘汰が完了しているだろうと言っていました)。

 ●社会面:サブカルチャーの目下の位置づけとアマチュア層の動向に留意すべきものはあるか(現在のところ新人は関連学校の卒業生で、政治的要因もあり民間組織である同人活動はさほど活発でなく,メーカーも学卒を雇って3年くらい育成して一人前にする傾向だそうで、特に不便は感じていないとのこと。アマチュアからの新人調達という発想がまずないようです)。

 ●政治面:毛沢東の延安文藝講話を源流とする枠に縛られているであろうことは理解できるが、同じ制約下で日本は「名探偵コナン」や「クレヨンしんちゃん」を制作しているのに、中国にはそれに太刀打ちできる作品がない。この差はどこから来るものと思うか(オフレコ)。

 最後の質問に関するやりとりは相手もかなり熱っぽく語ってくれたので蔭ながら応援してやりたくなりました(またも政治ネタで盛り上がってしまいましたw)。たぶん相手にとって、初日にこのブースの留守番をしていて、いちばん仕事の話をしてくれたのは私だと思います(笑)。主催者ももう少しバックアップしてやってほしいと思いました。

 ――――

 えーと、目立たないよう極力努力したのですが、とりあえず御家人がデブでお見苦しい点、申し訳ありません(笑)。五臓六腑のあちこちに疾患を抱えているので(特に腎臓はどの医者も首をひねる症状で病名なしの奇病)毎日、まるでアメリカ人のビタミン剤信者のように、たくさんの薬を飲まされています。

 薬にも食い合わせのようものがあるのか、薬害というか副作用で体重がどんどん増えていきます。それを連日の墨堤行軍9kmと食事量を減らして死守せんと頑張っているのですが、どうもジリ貧で、かくなりました(180cm・88kg)。メタボとかそんな可愛いものではありません。

 当人はせっかくデブになったので人生、遊びの時期も必要だろうと外見を様々に改めるなどして海坊主となり楽しんでいます。今回も香港から来た奴に待ち合わせ場所でいきなり記念写真を撮られてしまいました。

 ともあれ薬を色々飲まされつつ定期検診などで医者どもの話を聞いていると、気分はすっかり晩年になるのです。……という訳で、「また御家人が年甲斐もなく馬鹿なことを」と思われる方も多いことでしょうが、

「中共の嫌がることを真心を込めて念入りにやってあげること」

 が中国観察と並ぶ娯楽なので些細なことでも見過ごしてやったりしません。「あのときやっておけばよかった」と後悔してからでは遅いですし、前にも書いたように中国人の大量移入で日本社会の民度がズルズルと引き下げられていくことだけは許せません。

 これを具体的にいえば、もう相当年配である台湾の日本語世代が日本に旅行して帰ってきたとき、

「やっぱり日本は良かったよ。いやぁ行ってみて本当によかった」

 と家族に嬉しそうに自慢できるような国家・社会であってほしい。……といったところでしょうか。





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(シリーズ:成都にメイド喫茶出現【2】へ)



   


 終末はメイドさん、これ定番!……ではなくて、「週末はメイドさん」。そういう既定方針がある訳ではないのですが、今回も例の四川省成都市にオープンした謎のメイド喫茶の話です。

 何と何と、現地ご在住の「mk」さんから突撃レポートを頂いてしまいました!(感激)

 「成都近在にご在住の方の突撃『萌え』レポートをお待ちしております。m(__)m」

 と以前、当ブログで書きはしたものの、まさかこんなに早く、濃密なる内容のルポを頂けるとは思わなかったので驚くやら嬉しいやらで……いやはや。

 「mk」さん、本当にありがとうございます。m(__)m

 店内は撮影禁止とのことで残念ながら添付画像はありませんが、そこはそれ、使い古しの画像を織り込んで例によってハアハアしつつ華やかにいきたいと思います(笑)。

 ともあれ、「mk」さんのレポートを御紹介致しましょう。僭越ながら、予備知識として当ブログの関連エントリーにまず目を通して頂いてから「mk」さんの突撃ルポを御覧になれば、一層楽しめるかと思います。

 ●「御主人様……」成都にメイド喫茶、出現。(2008/02/22)
 ●続・メイド喫茶「ご主人さまのお好きにしていいんですよ♪」(2008/02/24)



御家人さん:

 昨日、成都市内のメイドカフェに行ってきました。御家人さんが先日ブログ内で紹介されていたものです。私は、こういうアニメ系の世界は疎く、日本で「メイドカフェ」なるものに行った事もありません。ですので、些か変なレポートかもしれませんが、その辺軽く流していただいて、読んでいただけると幸いです。以下、箇条書きで書きます。


★★イメージ画像★★
   
写真は記事の内容と多少関係があります


◆場所

 ●近隣には、四川大学や四川音楽大学、カラオケ屋、散髪屋などがあり、若者が沢山来そうなエリア。

 ●雑居ビルのテナントの一つ。しかし、表通りとは反対側に店がありました。

 ●営業時間は、平日は15~21時まで。休日は朝10時から営業とか。

 ●私と友人が帰る頃、ちょうど21時で、「本日はお開きとさせていただきます」という旨のアナウンスが流れていました。

 ●2月13日に開業したばかり。

 ――――

◆雰囲気

 ●以前、タイのバンコクで、「メイドカフェ」をちらっと見たことがあるのですが、そことなんとなく似ていました。

 ●バンコクでは、漫画が沢山置いてあり、帰宅途中らしき中高生が制服のまま座り込んで、漫画に読みふけるという様子でした。

 ●私と友人は20時前後に行きましたが、カフェには中高生と思わしき子どもたちが。おそらく、「溜まり場」になってるのでしょう。

 ●マンガ本などは少なく、10冊程度のアニメの本(画集?)など。他に、楽器(ギター、バイオリン、ピアノ)などが。中高生は、手に取るでもなく、ただだべってる感じでした。

 ●家具、食器は意外にもセンスが良かったです。同行した知人によれば、北欧系家具メーカー(IKEA)のものだろう、と。成都市内南部に「IKEA」のショッピングセンターがあるのだそうです。

 ●日本の「メイド」に行った事が無いので分りませんが、所謂マニアックな感じの方はあまり居ませんでした。

 ●メニューは、簡単な飲み物+ポップコーンなど。何れも10~20元程度。

 ――――

◆御挨拶

 ●お客さんが入店したときは、「お帰りなさいませ、ご主人様/お嬢様」。

 ●お客さんが退店するときは、「いってらっしゃいませ、ご主人様/お嬢様」と全員でコール。


★★イメージ画像★★
   
写真は記事の内容と多少関係があります




 ……と、まずはディテールの部分。「雑居ビル」というのは秋葉原同様ですね。その奥まったところに秘められた場所がひそかに息づいている、という訳です(笑)。バイオリンやピアノが置かれているということは、やはり「メイドさん」に対する中国的解釈が独自に行われていると考えていいでしょう。それにフェチの萌芽。

 とはいえ「mk」さんの印象によれば、ヲタに毒された魔空間、という世界ではないようです。……いや、それを当然とすべきでしょう。メイド喫茶の存在自体が異質な中国にあって、そのメイド喫茶がアキバ系中国人によって盛況をきわめているとすれば正に亡国の兆(笑)。それにしても、

「お帰りなさいませ、ご主人様」。
「いってらっしゃいませ、ご主人様」(全員でコール)

 というメイドさんの御挨拶、しかも日本語です!

 当ブログの関連エントリーや某巨大掲示板では、

「女のコの質が高い」

 という評価が一般的でしたから、これを言われたら日本のヲタも「萌えー」ってなところでしょう(笑)。しかも舌足らずの甘ったるい日本語となれば、これはもう本場を凌駕しかねないインパクト。

 そしてわれらがスネークこと「mk」さんは、ついにメイドさんとの接触に成功するのです。



◆メイドさん

 ●ひとりのメイドさんから少し話を聞くことが出来ました。私たちが行った時は、3~4人のメイドさんが働いていて、皆さん、20歳前後だそうです。

 ●話をした女の子は、貴州省出身の19歳(もうすぐ二十歳になるとか)。以前成都に遊びに来たときに、店長氏とたまたま知り合って、誘われる形で、仕事を始めたんだそうです。

 ●彼女は学生ではなく、本業としてやってるとか。最初、この仕事をするときに、ご両親は反対したそうですが、今は大目に見てくれているとか。

 ●「お帰りなさいませ、ご主人様/お嬢様」「いってらっしゃいませ、ご主人様/お嬢様」といった日本語は、日本語を勉強した知り合いの中国人に教えてもらったとのこと。

 ●メイドの服は、アニメか何かを参考に、自分たちでデザインしたそうで、店から支給されているものだそうです。

 ●たまに日本人が来るようで、ある日本人は、寝転がっては、メイドさんのスカートから見える世界を楽しんでいたらしい、とか。

 ●「その日本人は『いいねぇ、いいねぇ』と何度も言っていた」、とメイドさん。

 ――――

◆その他

 ●メイドさんによると、店長含め、皆さん、日本に関心はあるものの、日本に行った事がないとのこと。店長には日本に住んでる彼女(中国人)が居るようです。

 ●私自身の感想を言えば、助平な雰囲気ではなく、先にも書いたように、中高生の溜まり場で、来てる中高生も、日本云々という関心はありつつも、ただ騒いでいるという感じでした。

 ●店長の方針で、メイドさんの写真撮影は不可。ばれたら5元だそうです。

 ●余談ですが、同行した知人によれば、成都でもコスプレのイベントが開催されているようです。


★★イメージ画像★★
  
写真は記事の内容と多少関係があります




 何と、正社員のメイドさんもいたのですね!それなりのサラリーを支給されているのでしょう。それにしてもこのインテリアや調度品、それに制服をオーダーメイドしてしまうあたり、開業資金は相当なものであるように思えます。店長の実家が裕福なのか、あるいは外資系を含む中国のACG業界(アニメ・コミック・ゲーム)関連企業が後ろ盾になっているのか。

 後者だとすればそのうちロゴとかポスターが壁に貼られたりデモムービーが店内で流されるたりするようになるのでしょうけど、ブランドイメージ先行型という立ち位置でしょうから、試遊用のPCが置かれたり漫画喫茶色が強まることはないでしょう。……そもそも、そういう凝っていてカネもかかるけど短期的効果の見込めない手法は台湾などの大手外資系メーカーでもやらないでしょうし、地場産業にできる発想でもないように思います。

 あるいは店長が純粋なアキバ系でその彼女が日本在住ということから、日本から資金が流れているのかも知れません。

 それはともかく、パンチラフェチの馬鹿な来店者は日本人の面汚しですから斬首。こういう手合いが正統派のメイド喫茶に「風俗」のイメージを付与することになるのです。何よりもそれが日本人であることに腹が立ちます。

 私は別にメイド喫茶の擁護者ではありませんけど、その日本人はあまりに醜悪。勤務先と氏名がわかるならこの場で晒しageにしてやりたいところです。

 最後に「mk」さんの雑感をどうぞ。



 個人的にはこのような店に行くのは初めてなので、なんだか緊張し、些か物見遊山的なレポートになってしまったかもしれません。

 上記の情報は、メイドさんにずけずけ聞いたわけでもなく、ちょっと話しかけたところ、色々教えてくれた、という方が近いです。メイドさんの雰囲気を改めて書けば、メイドの格好をしているだけで、町の喫茶店の女の子とさほど違いを感じませんでした。

 まだオープンして2週間程度だそうですが、メイドさんの動きも良く、なかなか教育が行き届いているのだなぁ、と思ってみておりました。誰かがきちっと教育したのかもしれませんね。

 因みに私の知っている日本語科の女子大生と今日少し話をする機会があったのですが、その子はメイド喫茶のことは新聞で見て知ってるものの、「日本に強い関心があるとはいえ、折角日本語を覚えた私がそんなところで働くのは、ちょっと…」と顔をしかめていました。

 これは私の体感なのですが、以前に比べて成都市内はさらに裕福になっているのかなぁ、と感じます。約2年前にこの街に来たのですが、そのときあまり見かけなかった、有名メーカーのMTBを、最近では良く見ます(私は自転車好きなので値段もだいたいわかるのですが、かなり高いはずです)。

 先日久しぶりに行きつけのコーヒー屋に行ってみると、なんだか以前にもまして中国人客が増えたなぁ、という感を感じました。それと、来てる客層の質が落ちたなとも感じました。

 以前だったら、少々値が張る喫茶店なので、やはり来ている人も少々の公共感というものがあるようで、静かな店内というのが維持されていたのですが、昨日行ったところ、騒ぐ人、雰囲気に合わないカードゲームでうるさい人などが見受けられました。詳しい事はわかりません。たまたま給与日後で羽振りが良かったというだけのことかもしれません。

 以前、御家人さんの記事の中で、こういうアニメなどは、ある程度社会が裕福になり安定しないと成り立たない、というようなお話があったと記憶しています。そう考えると、メイドカフェが出来るのはまさに、ある程度の裕福層がいることの証ともいえる半面、行きつけの珈琲店などを見ていると、それが「衣食足りて礼節を知る」ことにつながるかどうかは、甚だ疑問かな、とまたしても懐疑的に見てしまってます。

 1~2ヵ月後、また気が向いたときに、ひょっこり足を運んでみようと思います。



 「mk」さん、わざわざレポートして頂いて本当にありがとうございました。このような打てば響くといった反応があるとは思ってもみなかったので御家人は感激しております。

 私は「五香粉」さんがコメントの文末に添えて下さる風刺とユーモアの中に現地の空気感があふれている簡潔ながらも濃厚なレポートが大好きなのですが、「mk」さんのようにまとまった形の突撃取材も大歓迎です(しかもたぶん日本のマスコミよりも速い情報ですよこれは)。

 また何か気になる出来事や考え込んでしまうような事態に出くわした際は御一報下さい。楽しみに待っています。

 余談になりますが、「衣食足りて礼節を知る」というのは、孔子か誰かの夢物語というか理想論というか、ともかく現実離れした妄想にすぎません。特に中国においては、現在の中共制権を含む歴代王朝が「護民官」というスタンスをとることなく、常に徹底的な収奪者であり続けたことで、庶民には「明日の保証がない」という観念が骨の髄から染み付いてしまっています。

 そういう中国人が豊かになったことで高級レストランに足繁く通ったり自宅や全身を光り物で飾り立てることはあっても、「礼節を知る」という化学変化が起きることはまずないだろうと思います。



(シリーズ:成都にメイド喫茶出現【完】)




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(シリーズ:中国にメイド喫茶出現【1】へ)



 つい先日、四川省成都市にメイド喫茶がオープンしたという驚くべきニュースを紹介しました。

「素人による中国観察」

 と銘打っている当ブログとしては、対象がメイド喫茶であろうと私なりに真面目に取り組んでみたつもりです。

 しかし、何かが足りない、という思いが残りました。……いや、わかります。野暮なことを仰らなくても、

「足りないだろ!」

 という皆さんの「念」のようなものが不肖御家人にビンビンと伝わって参りました。合点承知。……という訳で、今回はその穴埋めをさせて頂きます。

 前回は気が利かず申し訳ありませんでした。職場で当ブログを御覧になる皆さんに不都合なことが起こらぬよう配慮したのです。

 しかし幸い今日は日曜日。皆さん御所望のビジュアルを取り揃えましたので、メイド・イン・チャイナをどうか心ゆくまでご堪能下さい。m(__)m

 ……という訳で、ハァハァするお時間です。

 ――――


   


   


   


  


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 背景から察するに件のメイド喫茶で撮影されたもののようです。合計4名だった筈のメイドさんが増殖しておりますが、「動漫」(アニメ&コミック)が大好きな地元コスプレイヤーによる「メイド祭」みたいなものが行われたのか、宣伝用なのかは一切不明。

 しかし、私が頓悟したことがひとつあります。

「御主人様 大好き!」
「ご主人さまの お好きにして いいんですよ」

 という頭がクラクラする立看板に加え、集合写真に
「縄」という小道具が配されているのです!これは恐らく疑似首輪……。

 それでようやくわかりました。このメイド喫茶の店長である白一宏君が地元メディアの取材に対し「ACG」という言葉を示した上で、

 ●A=アニメ。
 ●C=コミック。
 ●G=
ギャルゲー。

 と、本来の
「G=ゲーム」から逸脱した解釈を行ったことに私は首をひねっていたのですが、なるほど「メイドさん&首輪」であればギャルゲーしかありません。より厳密にいえば十八禁のPCエロゲー。まあ秋葉原におけるメイド喫茶の成立も似たような由来なのでしょうけど。

 ――――

 それにしても店内に入るなり日本語で、

「お帰りなさいませ,御主人様♪」

 とメイド仕様のロリ系女子にお出迎えされたうえ、

「ご主人さまの お好きにして いいんですよ」

 という立看板。ACGとは無縁だけど日本語を解する物堅いオサーンがこの一節を目にすれば、そりゃ新種の風俗と思い込んでしまっても不思議ではありませんとも。

 これらの写真を目にした中国の「網民」(ネットユーザー)が、

「中国はもうおしまいだ……orz」

 と嘆いていましたが、その気持ち、何となくわかるような気がします。もし「喫茶ルノアール」の如く、首都圏において主な駅の駅前ごとにメイドカフェが営業していたら、そりゃ私だって気味悪くなりますから。

 ――――

 それにしてもこのメイド喫茶、大学生が立ち上げたにしてはかなり凝っていますね。親が裕福で開店資金を出してくれたのだとしても、かなりの出費になる筈です。

 あるいは成都市が黒幕なのかも知れません。……というのも、いま中国はACG産業を育成しようと躍起になっている最中。それに応じるようにして、全国の複数の都市から「動漫基地」となるべく名乗りが上がっています。制作会社から関連グッズメーカー、出版社などを集中させたACG開発区を立ち上げることで地元経済発展の牽引役にしようという目論見です。

 
「動漫基地」として名乗りを上げる=開発計画をぶち上げる=中央政府に対し立候補宣言、ということです。

 そんなこと勝手に事を進めればいいじゃないか、と言いたいところですが、ACG産業のような未知数の分野を盛り上げるに際して、中央は常に全国のうち数カ所を選んでテストケースとし、そこにテコ入れしてしばらく様子を眺める、という形を以前からとってきました。

 経済特区や株式市場などが典型例ですが、「テスト地区」認定が出てしまえば他の地区は手を出すことが許されなくなります。ですから「ACG路線」を狙う都市は立候補するとともに既成事実を積み上げて「勅許」を得るべく励むことになります。

 ゲームショウやコスプレイベント、「動漫」フェスなどが一部の都市で開催されるのには、中央に対するアピールという側面もあるのです。

 ――――

 で、このメイド喫茶も成都市による「既成事実」のひとつなのかも。……と考えてはみたのですが、メイド喫茶で首輪までつけかねないノリというのは余りにピンポイントで間口が狭い上に、政治的にも際どすぎます。いかに「思想解放」が党中央によって盛んに叫ばれているとはいえ、
メイド首輪「お好きにしていいんですよ」では、頭を柔軟にして解き放つ方向が明らかに間違っていると思われるのです(笑)。

 それならやっぱり地元のACGヲタによるインディーズ的な試み?……でも、それにしてはコストがかかっているようにみえますし、地元紙の報道が新華社や中国新聞社といった大手通信社に転載されて全国ニュースに仕立て上げられるスピードが速すぎる気がします。

 少なくとも「珍奇な話題」として取り上げられる場合とは明らかに初動が異なります。このため眺めている側としては、段取りが出来上がっているかの如き気配を感じることになるのです。

 目下のところ詳報がないため開店に至る経緯そのものが謎で、勘繰るスキがありません。ただ私の可視範囲に限っていうなら、現時点では全国メディアのレベルにおいてこのメイド喫茶を取り上げて云々する論評記事は出ていないので、一応容認されていることになります。……などとチナヲチめいた作業するのは,今回ばかりはやはり止めてしておきましょう。

 でも四川省をはじめとする中国全土のACGヲタの皆さん、
「水貨」(並行輸入品)でもいいですから必ず正規品で楽しむようにして下さい。……と、業界人の端くれとして呼びかけておきますか。まあ無理でしょうけど。本物はメイド喫茶のメイドさんだけですね、きっと。

 ――――

 それにしても恐るべきは日本発のACGパワア。旧帝国陸軍でさえ踏み込めなかった成都なんて奥地にまで浸透しているのですから。

 そのうち、私の勤務先が出す制作物でも簡体字版が中国本土で同時発売されることになるかも知れません。

 普通は当局の許可が容易に下りないので繁体字版のままヤミルートで流入させちゃうんですけど、何たってメイド喫茶が登場するくらいですからねえ。

 ……ところで、本当に好きにしちゃっていいのでしょうか?(笑)



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(シリーズ:成都にメイド喫茶出現【1】)



  



 ……むう。

 と唸ることしか私にはできません。御覧の通り、四川省の省都・成都市に
メイド喫茶がオープンしてしまいました。

 噂を聞きつけた地元メディアが早速取材しているのですが、写真から察するになかなか本格的な、いわばアキバ系の本流をしっかりと踏襲した王道路線のメイドカフェのようです。

 ●『天府早報』(四川在線 2008/02/20/05:51)
 http://sichuan.scol.com.cn/sczh/20080220/200822055132.htm

 報道によると、店内は広さ約80平米とこじんまりとしたものですが、暖色系でまとめられたフローリング仕立てでテーブルが7つばかり置かれているほか、ソファなどがあって実にくつろげる雰囲気。

 壁際の書架にはマンガや雑誌が並んでいて自由に読むこともできます。やや高い一角に備え付けられたモニターからは「メイド文化を紹介するドキュメンタリー」が流されているとのこと。

 ……そうでしたメイドさんの話をしなければなりません。店内に一歩足を踏み入れるなり、

「お帰りなさいませ、御主人様♪」

 と、
メイド姿な妙齢のロリ系女子が楚々とした風情にて優しく微笑みつつ日本語(!)で出迎えてくれるそうです。何も知らずに入ってきた客はその異次元ワールドぶりに度肝を抜かれることでしょう。

 ――――

 メイドさんは合計4名。いずれも
『動漫』(アニメとマンガ)が大好きなアルバイトの学生です。ウエイトレスとしての仕事をこなすだけではなく、客の雑談に付き合ってくれたり一緒にトランプをやってくれたりする模様。この点からも、この店が「ブロパ」「神戸屋」「馬車道」「アンミラ」といった萌え制服系ファミレスからの派生型ではなく、アキバ流の正統派メイド喫茶であることがうかがえます。

 しかもピアノとバイオリンの写真からわかるように、
フェチ志向の萌芽も垣間見えるのは驚嘆すべきところです。

 実際に演奏してくれるのかどうかは不明ですが、ピアノは手つきからして素人のようです。バイオリンはそれっぽく見えなくもありませんが、弓を持つ右手が隠れているので断定しかねるものの、左手の握り方にやや疑問が残ります(御家人は少しだけバイオリンを使えます)。たぶん、どちらも記者のリクエストに応じてポーズをとってみただけではないかと。

 それでもこうした大道具小道具を配している心憎さはどうでしょう。アキバ文化の代表的存在のひとつである
「メイドさん」に対し中国流解釈が行われていることに感嘆せずにはおれません。いやこれは四川風味による「萌え」の発露というべきでしょうか?人類は麺類。

 ちなみにメイドさんたちと記念写真を撮ることができるかどうかについては、遺憾ながら記事は言及しておりません。

 ――――

 店長によると「店はまだ内々限定の試運転状態」だそうで看板なども出ていませんが、記者が取材したときには大学生風の若者が数人ずつ座る形でテーブルは全て埋まっていたそうです。記者はこの店を形容するに、

「これこそ日本のACGファンが好むメイド喫茶だ」

 として「ACG」を、

「アニメ、コミック、ギャルゲー」

 の頭文字だと紹介しています。いや「ギャルゲー」は違うだろ、ただの「ゲーム」だろ!……とACG系出版社の東京駐在員である私は内心大いに憤慨したのですが、どうせ店長が記者にそう説明したのでしょうからこれも四川風味ということで許してやりましょう。

 ただし正確には「ACG」は
「アニメ、コミック、ゲーム」の略称であって、「G」は断じて「ギャルゲー」ではないことを強調しておきます。

 そうでなきゃ「空母戦記」「鈍色の攻防」「戦闘国家3」「パンツァーフロント」「サカつく」しか遊ばない私の立つ瀬がありません。ギャルゲー絡みの制作物を手がけたことだって一度たりともありません。……PCエロゲー専門のソフトハウスを取材したことはありますけど。

 ――――

 閑話休題。記者は4名のメイドさんの中のひとりであるイサミちゃん(isami・22歳)にインタビューを敢行しています。景観デザインを専攻する大学生で、中学生のころから日本のマンガやアニメに親しむようになり、数年前から「メイドさん」にハマってしまったという
腐女子。コスプレの経験者なのかも知れません。

 両親はイサミちゃんのこうした趣味に表立って反対してはいないそうですが、大学から処分を受けて卒業できなくなるのを案じていると語っています。それでもメイドさんをやめられないでいるところに
業の深さを感じずにはおれません。

 ところで店の現状を「内々限定の試運転状態」と店長が紹介したように、このメイド喫茶に来るお客さんは目下のところ顔見知りのオタク仲間?に限られており、どういう空間なのかを承知の上で来店しているようです。メニューもまだミルクティー、レモンティー、ポップコーン、フライドポテトの4つしかありません。

 いちばん値段の高いものとしてコーヒーを一杯35~40元で出す予定だそうですが、目下のところはまるで
文化祭か学園祭の出店のようなもの。……とふと思えばこのメイド喫茶、何やら同人サークルの出し物のようでもあります。そもそも店長の白一宏君からして大学3年生。

「学生が立ち上げたベンチャービジネス」

 と表現してもいいのでしょうが、それよりも「仲間っぽさ」が前面に出ている観があります。

 同人の拠点として機能させようというのが狙いなのかも知れません。
一種の部室です。店長の白君も、

「御主人様とかメイドといったキャラ設定と独特な呼び方が社会に受け入れられるかどうかについては心配していないけど、噂を聞きつけてメイド見たさにACGファンが殺到して、お客さんをさばき切れなくなるのが不安」

 と語っています。社会的に認知されることには自信があるようです。

 ――――

 しかしオトナはそう見てはくれません。地元メディアによるこの記事もメイド喫茶について、

「日本の『動漫』におけるメイド文化をテーマにした喫茶店が、このほど一群の『動漫』ファンたちの喝采を浴びつつ密やかにオーブンした。この店の重点はメイドではなく『動漫』だと店長は強調しているが、こうした舶来品が一体どういうものなのか、国外ではどう扱われているのか、店のコンセプトを現実とすり合わせることができるのか。全てに疑問符がつくところだ」

 として、ある種のいかがわしさを漂わせる筆致となっています。またこのメイド喫茶について集めたコメントも、



 ●中華民族には優れた文化と伝統がある。たくさんたくさんの文化伝統を我々は伝承しなければならない。だから日本文化を過度に模倣する必要はない。特に上っ面だけを真似するなんてもってのほかだ。現代社会において人々はみな平等で、実際にはお手伝いさんがいたりもするが、それも平等の基礎の上に存在しているもの。メイドという呼び名はよくない。多様化した社会において模倣の出現は避けられないが、この喫茶店には規律を遵守し法を守り、また人の道から外れないようにしてもらいたいものだ。
(四川省社会科学院社会学所・胡光偉副所長)

 ●メイドや召使いというのは昔の社会での呼び方だ。それを現代社会で用いるのは穏当ではないね。結局は店の質とサービスで勝負は決まる。成都では過去にも奇怪なレストランが色々登場しては、社会に受け入れられずに消えていった。
(成都飲食店協会・彭小平副会長)

 ●メイド?召使い?そりゃ昔の言葉だろ。いま使うのはおかしいよ。時代が逆戻りした訳でもあるまいに」
(街のお爺さん)



 ……など、半ば新手の風俗扱いのニュアンスも含めて否定的なものに傾斜しています。何やら風当たりは強そうですね。

 ――――

 私は、ただ驚くのみです。「中国の特色ある社会主義」とは「中国は特殊な国情だから社会主義の歩み方も独特なものになる」ということで、要するに
何でもアリというスタンスなのですが、メイド喫茶まで許容する懐の深さがあったとは思いませんでした(笑)。

 まあ30年前にこれをやったら
反革命罪で銃殺刑は堅いところですし、20年前でも「ブルジョア自由化主義者」のレッテルを貼られて投獄されるか労働教養所送りは間違いないでしょう。政治的なハードルが低くなったことと引き換えに拝金主義が台頭している現状を反映しているもの、といえるかも知れません。

「いまの中国は最悪の資本主義をやっている」

 と喝破したのは今は亡き趙紫陽・元総書記ですが、逆に銭ゲバ全盛時代の到来によって非生産的な政治運動が過去のものとなり、おかげで極めて歪んだ形ながらも経済発展を実現したことで、中国にも「動漫」ひいてはメイド喫茶のような、
腹の足しにもならないサブカルチャーが呼吸する空間が生まれた、とみることもできます。

 そもそも……と私は思うのですが、開店資金をどうやって工面したのでしょう?もし親が出してくれたのなら、いかにも一人っ子世代だなあ、という感想が浮かびます。

 ――――

 私の世代ですと中国の大学=エリート養成機関で、大学生といえば全国から選り抜かれた俊秀、というイメージがあったものです。白君やイサミちゃんたちがこれほど趣味の世界に没入できるのも、大学がホワイトカラー量産工場へと質的転換を遂げたおかげでしょう。仕事柄「頑張れ」と応援してやりたい気持ちもありますが、

「だから卒業即失業になるんだな。粗悪炭揃いって訳だ」

 というちょっと意地悪な見方がどうしても先に立ってしまうのは、たぶん、こうして
余暇を楽しめるだけのゆとりが中国社会全体で共有されている訳ではないからでしょう。

 ともあれ、香港の仕事仲間や台湾の知人友人による強制連行、それから日本サイドでの仕事上の絡みによってメイド喫茶と男装喫茶その他にデビューを果たしている私としては、白君の店をのぞいてみたいところです。……といっても現実には無理ですから、成都近在にご在住の方の突撃「萌え」レポートをお待ちしております。m(__)m

 それにしても
「メイド文化」という言葉には間口が狭すぎて違和感を感じます。「秋葉」とか「御宅」で括る方が自然ではないかと思うのですが、まあいいか。中国の「動漫」族はメイド喫茶で萌えて癒されて、アキバを疑似体験する気分に浸るのでしょう。糞青ども(自称愛国者の反日信者)が騒ぐかも知れませんね。地元メディアによる今回のこの報道、すでに大手ポータルはもとより新華社や中国新聞社でも扱われて全国ニュースになっていますから、各界の反応が楽しみです。



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 今日12月24日は振替休日だそうで。知りませんでした。orz

 私が日本を離れている間に祝祭日の日取りが随分変わったようです。例えば「成人の日」を1月15日ではなく月曜日に固定することで連休をひねり出す、といったような。

 もう何年も日本にいるじゃねーか、と言われそうですけど、こちらは曜日(及び昼夜)の感覚が薄い仕事な上に、香港や台湾を相手に商売していますから、基本的に本社のある香港のカレンダーを見ながら仕事をしています。打ち合わせのアポを取ろうとしたりする際に、

「御家人さんその日は休みだよ」

 と笑われたり。ちなみに香港には英国統治時代のクリスマス休暇が残っています。クリスマスイブの今日は平日ですが、私が香港にいたころは半日勤務で午後からは休み。そして25日、26日が連休となります。

 ――――

 でも私の仕事関係でいうと香港サイドは暦には関係なく忙しそうです。というのもこの季節にはクリスマス商戦をあてこんだ「亜洲遊戯展」(12月22~25日)、まあ
「香港ゲームショウ」のようなものが開催されるからです。

 当初はショボいイベントだったのですが、いまでは入場者総数述べ数十万人といったような、「東京ゲームショウ」(TGS)よりも賑わう盛典となっています。

 何でそんなに人が集まるかといえば、ゲーマーしか集められないTGSと違って、「亜洲遊戯展」は家族連れなどがディズニーランドに行くような気分でやってくるのです。香港紙『明報』電子版によると初日の22日朝にはすでに約1000名の行列が会場の外に出現していたとか。

 ●『明報』電子版(2007/12/22/10:52)
 http://www.mpinews.com/htm/INews/20071222/gb61052t.htm

 いうなれば、TGSの宿願でありながらついに未だ実現していない
「ライトユーザーを引き寄せる」というハードルを簡単に越えてしまっている訳です。業界人としての住民票は東京にあっても本籍は香港にある私としては、ちょっと痛快。

 でもやっぱり、何でそんなに人が集まるのかと不思議です。香港は狭くて会場まで行くのに苦労しない、というのはあるでしょう。ゲーマーにとっては新作の試遊、無料配布物、ゲーム大会、日本から呼ばれたクリエイターの講演、そしてコンパニオンのお姉さんやコスプレの女のコあたりが目当てなのでしょうけど。

 ――――

 ともあれ私の本業も副業先もブースを出しているようなので、連中のクリスマス休日は吹っ飛びます。先日Aさんと会うのを断念して仕上げた制作物が本業のブースを飾るようです。数日前にヤマを越したものも昨日の午後からブースに並んだようです。

 副業の方は雑誌のバックナンバーを一掃するまたとない機会。もっともそれだけではタマ不足なので会場限定号を制作したりします。そのために私も何か書かされたりします。……限定版のために書かされるだけならいいのですが、この「亜洲遊戯展」と夏に開かれる香港最大のイベント「書展」(ブックフェア)が終わるたびに連載しているコラムをアレンジ&加筆して書籍化、という話が出ます。

「だいたい採算に乗らないだろうが」(御家人)

「いや、香港と台湾で出して、大陸にも流すからペイするんだ」(副業先の編集長)

 という会話が半年に一度繰り返されます。本になったらどちらかのイベントで販促して、そのときは私を香港に呼んでサイン会を開いてくれるそうです。航空券&ホテル代は向こう持ちだとか。そんな甲斐性ないくせに(笑)。

 まあ時間的にも体力的にも余裕がないので惜しいなとちょっとだけ思いつつ毎回断っています。肝心の私が動こうとしないだけなので、その気になればいつでもOKだそうです。でも実質的に書き下ろしになるのでやはり無理。今後10年のうちにやるべき仕事のリストからは外してあります。

 ――――

 実はもう一点、私のコラムには当初から、

「香港人的角度,日本人的深度」

 という余計な看板を編集部が掲げているのですが、当の私がもう随分香港に行っていないので「香港人的角度」については正直、自信がありません。コラム自体は日本の状況を紹介し分析・解説を加えるだけの内容なのですが、これが香港人の口に合わせた調理法かどうかについて、最近は少しひるみがあります。

 過去に私のコラムに対抗すべく、ライバル誌が元『F痛』編集者のような日本の業界人に似たような内容のものを書いてもらって、それを翻訳して連載するという試みが行われたりしたのですが、いずれも散々に失敗しています。

 私のコラムに対する研究不足は措くとして、どうしても日本人視点になってしまうのと、翻訳ということで自分の言葉で語っていないからです。また、それら日本人の制作レベルの低さや問題意識の希薄さも致命的でした(仕事の話ですから遠慮なく正しく書かせてもらいます)。

 まあ最近は観察者として業界を眺めていても以前ほど楽しくなくなってきたので、編集長には内緒ですがそろそろ卒業させてもらおうかとも考えたりしているところです。

 私はコラムを書いていて、地元はもとより、カナダと米国在住の香港人、それから安徽省の山奥の水力発電所に務める中国人からファンレターめいたものをもらったことがあります。それから香港にいたころビザ更新のためイミグレーションに行ったとき、担当のお兄さんが私の読者ということで握手を求められたことがありました。私にはそういう思い出だけでもうお腹一杯です。

 ――――

 ところで、「亜洲遊戯展」は私が香港を離れてから始まったイベントですが、「書展」の方は歴史があります。香港在住時代はゲームショウがないために、私のいた会社はこの「書展」にブースを出していました。家庭用ゲーム機の試遊台やアーケードの筐体を置いて試遊させたり大型モニターで当時日本で話題だったゲームのCMを流しっ放しにしたり(こうした渉外事務は私の仕事)、この展示会に合わせて目玉の制作物を発売したりと、それはもう大盛況でした。

 当時いた会社はいわゆる「カリスマ編集者」の梁山泊のようなところでしたから、そいつらが司会を務めてのイベントなどもあって、周囲のブースから苦情が寄せられるほど人が集まりました。展示会なんてプレスパスをつけて取材するだけで、出展者スタッフとして臨んだのは当時くらいのものですが、あの高揚感は忘れられません。

 10年くらい前の話ですから、プレステとかセガサターンといった時代です。某有名編集者がゲームに関するクイズ大会(当たったら粗品進呈)で、

「このモニターで流している『せがた三四郎』は以前、特撮ヒーローを演じたことがあります。さてそのヒーローとは何でしょう?」

 と問題を出したら、それまでは物凄い熱気で我先に手を挙げていた鈴なり状態の少年・青年ゲーマーたちが一斉に沈黙。シーンとして互いに顔を見合わせています。それを陰から見ていた私たちは思わず爆笑しました。

 正解はもちろん「仮面ライダー」なのですが、編集者たちや私と違って、クイズに詰めかけた連中は香港で「仮面ライダー」が放映された時期にはまだ生まれていません。

「わかる訳ねーだろw」
「世代を考えろよ世代を」

 などと言い交わしていたら、少し間を置いてから観衆に混じっていた中年ゲーマーが恥ずかしそうに手を挙げて、御名答。これには野次馬の私たちもおおーと唸ったものです。

 ――――

 その仲間たちも分離独立したり転業したりして散り散りになってしまいました。当時の会社もそのあおりで倒産して現存していません。

 「亜洲遊戯展」はより大がかりなイベントの連発で今日も賑わっていることでしょう。「東京から離れるな」という制約さえなければ、交通費・宿泊代自分持ちで見物に行きたいところです。TGSに顔を出さなくなった昔の仲間たちにも会いたいですし。







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I某 様


 海坊主の御家人です。昨日はお忙しいなか御時間を割いて頂き誠に有り難うございました。

 『F痛』 の台湾版、素晴らしいです。台湾市場で2万部、というのは出版社にとっては苦しい数字かも知れませんが、日本との同時発売は非常に価値ある試みというべきものです。お話を伺いながら以前の状況を回想しつつ、ただただ瞠目するばかりでした。
【※1】

 取材について無理な御願いをしてしまいましたが、同業他社ということでNG、というのは至極当然のことですので諒解致しました。
【※2】

 ただ一点、お話をお伺いしていて気になったことがあります。私がコラムを連載している『××』をはじめ香港のACG系週刊誌について、I様が御社・香港版月刊誌にとっては「ライバル誌」だとの表現で語られていたのは如何なものかと。
【※3】

 昨日申し上げたように、私は日中関係や台湾問題を含め現代中国の抱える諸問題がいつも頭の中を占めております。テレビゲームについては一種の総合芸術として高く評価してはいるものの、片手間ほどの興味すら持ち合わせていません。ただし副業とはいえ仕事には魂を込めているつもりですし、現地でも相応の評価を頂いております。

 ですから私自身はどうでもいいのですが、香港のACG系週刊誌の編集者たちの気持ちを慮ると、鳴かず飛ばずで隔週刊から月刊誌に堕ちた翻訳雑誌にライバル扱いされるのは片腹痛く、連中は一種の侮辱とも感じることでしょう。「競合誌?おいおい冗談だろ(笑)」という言葉が返ってくるに違いありません。

 いわゆる風馬牛、勝負している次元が全く異なるからです。香港市場に対しI様が如何なる認識をお持ちなのか理解に苦しみますが、競争関係すら存在しない以上、「同業他社の週刊誌」とでも表現するのが現状に対する正しい態度かと思います。
【※4】

 私とは旧知にあたるM様が御存知かと思いますが、香港・台湾在住時代の一時期、私はゲーム雑誌を擁する出版社の正社員で(『××』では昔も今も外注コラムニストにすぎません)、東京に出張してはソフトハウス各社を回って素材を提供してもらい、それによって編集部に誌面を作らせるというスタイルを頑に通しておりました。
【※5】

 ですから私個人は、『××』を含め香港のACG系週刊誌の編集スタイルには全く賛同できませんし、許せません。御存知のように、連中は知財を平気で無視しているからです。
【※6】

 それでも私がコラム連載の求めに応じているのは、私が非力だからに他なりません。オリジナルの記事を書くことで業界内の後進にある種のノウハウを伝えるとともに、多少でも範を垂れることで「編集者としての矜持を持て」というメッセージを示すことくらいしか私にはできない、といったところです。

 一方で、日本側に諸事情があるであろうことは承知しておりますが、知財を踏みにじる香港のやり方に対する不作為にも私は歯がゆさを感じています。
【※7】

 極めて遺憾なことですが、日本側がアクションを起こさない以上、現地では「やったもん勝ち」という香港人独特の行動原理がまかり通ります。自浄作用などはまず期待できません。

 まあ、日本にも過去に情報公開規制を無視した「◯ラゴンクエスト」のフライング攻略記事掲載という掟破りを敢えて犯して読者を集め、それが飛躍のきっかけとなったゲーム雑誌があり、かつ現存していることはI様も御存知かと思いますが(笑)。
【※8】

 ともあれ日本側から掣肘が加えられないため、頭に乗った連中による「やったもん勝ち」が横行し、「No money, no talk」というこれまた香港独特の価値観で全てが語られることになります。

 雑誌の場合、その具体的表現は当然ながら販売部数です。この点において、御社の香港版月刊誌からライバル扱いされ、同列に論じられることに対して、香港各誌は侮辱を感じることと思いますし、地元ゲーマーは嘲笑を以てそれに報いることでしょう。
【※9】

 同じ理由から、私が香港のACG系週刊誌にコラムを書いていることは、香港ゲームメディア業界に僅かであれ好影響をもたらしているでしょうが、御社の香港版月刊誌にとって脅威になることは全くないであろうと確信しております。
【※10】

 I様のお仕事上、台湾及び香港のゲームメディアに関する現状把握は必要なものかと愚考致します。この点につき、香港市場の健康的な発展を促進する上でも地元読者のニーズをも含めたより広く深い情報収集に精励して頂ければ幸いです。
【※11】

 最後になりましたが、『F痛』 におけるH社長のコラムには啓発されることが多く、これからも毎号楽しみに拝読させて頂くことになると思います。ゲーム万歳に偏することなく、常識ある成熟した社会人としての分別がコラムの内容に反映されるよう、心より期待しております。
【※12】

 『F痛』台湾版の武運長久を心よりお祈り申し上げます。
【※13】

頓首再拝


御家人
2007年7月6日





 【※1】瞠目してる訳ねーだろ。公称2万なら実売は話半分の1万前後か、よくて1万5000部。コスト考えたら本当に2万部売っててもビジネスとしては赤字だろーが。でも努力は認めてやる。ひと昔前なら考えられなかったことだからな。快挙だと思うぜ。まあ結局は翻訳雑誌の限界を痛感することになるかも知れんが、台湾ならひょっとしたら大化けする可能性もある。ま、そのときまで現地の出版社が我慢できればの話だけどな。

 【※2】ていうかそういう口実を設けて毒を吐きに行ったんだ。ごめんなー。だけどそうでもしないとお前らと仕事上の接点なんかないからな。実際6年ぶりだったし。だいたいお前らも考えればわかるよな、社長のHを筆頭にお前らの会社取材しても読者はちっとも喜ばねーことぐらいは。空疎だからなー。別の意味でならネタ満載なんだけどさ。(・∀・)ニヤニヤ

 【※3】お前の頭のネジ数本飛んでんじゃねーか?ってことだよ。自己肥大もいい加減にしとけ。

 【※4】ひからびた翻訳糞雑誌(しかも月刊)と同等に論じられるのは迷惑だし侮辱だってことだよ。だいたい数字を考えろよ。販売部数がひとケタ違うだろーが。

 【※5】思い出したくもねー過去だな。あのころは日本側の香港に対する「海賊版天国」ってイメージを少しでも改善しようと随分無理したもんだぜ。わざわざ着たくもないスーツを着て(日本の業界じゃふだん着る必要ねーだろ?)、髪型整えてきっちり決めてな、要するにビジネスマンのコスプレだ(笑)。そうして素材をもらいにメーカー各社を訪ねては「いい人」「真面目な人」を演じてペコペコしていたもんだよ。いまはそのくびきから解放されているからスーツも着てないし海坊主だし、お前らの面前で遠慮なく毒を吐かせてもらってるって訳だ(笑)。

 【※6】俺が台湾の出版社に引き抜かれて香港業界の渉外担当を辞めてから、香港の奴らはモラルがガタ落ちして日本の雑誌の記事をスキャンして丸パクリしたり切り貼りして編集するようになったからな。あとネット上のゲームメディアからも勝手に素材をコピペして使ってるし。ちょうど不景気に入ったばかりの時期で、コストがかからないから経営者がまたそれを後押ししてな。それを知って俺はもう外注コラムニストという形でしか香港の業界と関わらないことを決めたんだよ。

 【※7】グタグタ御託並べていないで少しは取り締まれってことだよ。それができないなら既存の香港各誌を潰せるくらいの良い雑誌を週刊で出すことだな。まあお前らには逆立ちしても出来ないだろーが。そもそも香港で翻訳雑誌は糞扱いってこと知ってるか?タイムラグが大き過ぎるしニュースも新作紹介も攻略も内容が中途半端だからだよ。あと本当にコアな連中は和書専門店とかに行って原文版(日本語)を買うからな。試しに台湾版『F痛』を投入してみりゃわかることだ。

 【※8】お前らの雑誌のことだよ。部長って言っても経験値の低いオサーンには初耳かも知れねーけどな。

 【※9】嘘だと思うなら香港のアキバ系が集う掲示板のぞいてみな。ていうか中国語要員もいないのか、お前らの部署?じゃあ俺がせっかく準備して渡してやったコラムのサンプルとかも豚に真珠って訳か。まあニーハオから地道に勉強してくれや。

 【※10】お前らの翻訳糞雑誌は元々売れてねーからな。香港に少しも貢献していないんだよ。真面目な話、赤字垂れ流して輪転機を回しても俺が週刊誌で書いている8頁(2頁×4)ほどのインパクトも与えられないっていうのは出版社としてどーよ?

 【※11】お前の前任者も無知だったけどな。ところでお前らの月刊糞雑誌、歴代編集長はみんな香港にいたころ俺と苦楽を共にしていた若い衆なんだよ。だからお前がいくら取り繕ってもコストから実売部数まで情報筒抜けになってるぜ。あいつら今でも日本に来ると挨拶に来てくれるし、俺も一席設けて昔話に興じてるからな。そのときにみんな教えてくれる訳だ。色々な数字からお前らの無能ぶりに対する愚痴までな。

 【※12】これについては面と向かって色々言わせてもらったから省略してやるよ。ま、現象の上っ面ばかりなぞっていないでもう少し洞察力持てとでも言っといてくれ。Hにとってはスキル的に無理な注文だろうし、業界の『人民日報』としては真実を書くなんざ出来ない相談だろうけどな。

 【※13】これはマジでそう思ってる。一時期は台湾市場を相手にしてたから思い入れがあるんだよ。間違いなくお前ら以上にな。


 ――――

 【※注】今回のエントリーの内容は全てフィクションであり、実在する組織や個人とは一切無関係です。呵々。




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「上」の続き)


 「表現の自由」という問題、政治や社会問題を扱った作品やルポルタージュもこの「枠」に苦しんでいるものの、むしろアニメやコミックの方が娯楽性(面白いかどうか)という点で海外の作品との違いがより際立ってしまう。だからこの分野で海外の作品が流入することを防がなければ、中国ではたぶん日本のアニメやコミックが氾濫することとなり、視聴者や読者もまたそれを支持する筈。

 そして、いきおい中共によってようやく公認された中国国内の「アニメ・コミック産業」は日本の下請けになるか、あるいは国内市場でもそれなりの規模があることから海外では見向きもされない駄作を量産し続けることになるのではないか。ただ海外作品の大挙流入となれば駄作の量産もままならず、結局は下請けに転じることになるかも知れない。

 ――――

 という趣旨のことを「上」の文末に書きましたが、あるいは台湾がその好例といえるかどうか。……日本のコミックを入れることで地元クリエイターの水準も上がる、と当初は期待されていたものの、実際には日本のコミックが地元作品を駆逐してしまい、いまや市場の9割を占めるに至っていて、レベルアップどころか廃業に追い込まれた地元漫画家が結構いる。……とは、私が台湾の出版社にいたころ同僚(コミック編集部長)から聞いた話です。

 テレビゲームになると実力差はいよいよ歴然としてきます。ゲームシステムや世界観の考案者に始まってプログラマーはもちろん、キャラクター設定を担当するイラストレーター、ストーリーを任されるシナリオライター、それに作曲家や声優などが加わる一種の「総合芸術」のようなものですから、恐らくアニメやコミック以上に違いが際立つことでしょう。

 つまり、各面で一定レベルの人材が揃っていて、さらにそれを上手にまとめて作品に仕上げるプロデューサーがいなければならないからです。

 これまた台湾の話ですが、かれこれ十年ばかり前、PCゲームメーカー10社近くが日本のテレビゲーム業界への進出を狙ったことがありました。

 セガという会社の支援を受けつつセガサターンという家庭用ゲーム機のゲームソフト開発に取り組んだものの、結果は散々。作品完成にこぎつけたのが2社(いずれも悲惨な営業成績)、残りはPCゲームよりずっと手間のかかる作業に途中で挫折し、中には本業(PCゲーム開発)が疎かになって倒産してしまったところもありました。

 このときも私は取材者として近くで眺める機会を得たのですが、最終的に作品として完成したうちのひとつのゲームのβ版を「どうです?」とみせてもらって凍りついてしまった経験があります。言葉にすれば、

「あんたそれ本当に日本で売るつもりかい?正気か?」

 ……といったところです。テレビゲームは各方面の人材が集まって制作される一種の「総合芸術」と前述しましたが、その「総合力」の差がモロに出てしまっていたのです。

 ――――

 ところで「表現の自由がない」中国本土といっても一定の枠内での創作は許されており、例えば「ガンダム」や「名探偵コナン」はその枠内にある作品だからこそ中国国内でもアニメやコミックとして存在を認められているのでしょう。このことは重要です。

 以前、国家広播電影電視総局の担当者が報道陣を前にしたスピーチで男泣きに泣いていましたね。「名探偵コナン」をテレビで観ていた11歳の娘に、

「いつになったら中国のアニメもこれくらい面白くなるの?」

 と無邪気に問いかけられて答えることができなかった。それで自国の子供たちに申し訳ない気持ちになって……などと語ったところで涙となって、5分ほど嗚咽が止まなかったとか。

 ●国産アニメは秀作が不足 担当司長が涙の演説(人民網日本語版 2004/08/27)
 http://j.people.com.cn/2004/08/27/jp20040827_42840.html

 真面目な役人さんなのでしょうけど、この涙に報道陣からは期せずして拍手が湧き起こったそうです。もっとも拍手した方は取材者・報道者として常に中共の規制に縛られている身ですから、複雑な心境だったかも知れません。

 クリエイターの育つ社会状況、センスが磨かれる環境、そしてアニメやコミックに対する社会の肯定度に日本とは大きな開きがありますから、いくら力んでみても無駄。泣くしかありません。

 ――――

 そこで私はむしろ「表現の自由」より重要なのが「結社の自由」なのではないか、と考えるのです。

 一定レベルと規模を有するアマチュアがいて、社会がその存在に否定的でなく、さらにプロ(業界)との間にパイプがあって、アマチュアが新人として業界を補強する存在になっている。……日本の音楽業界ならストリートシンガーやインディーズが「アマチュア」に当たりますし、サブカルチャー分野での同人活動も同じ役割を果たしています。

 テレビゲームでいえばシナリオライターの卵だとか声優志望者、そして音楽やコミックのアマチュアが土台となり、新人の供給源になっている訳です。これはスポーツも同じことで、レベルの高いプロリーグを持つ国というのは往々にして有力なアマチュア層が存在していることでそのレベルを維持していられるのです。

 ところが「結社の自由」がないとなれば、特に音楽やサブカルチャーの分野において強力な業界の存在を保証する人材補給源(アマチュア)が機能せず、いきおい国際レベルで通用する作品をコンスタントに送り出せる業界を確立させることはできません。

 中国は今回発した通達によってアニメ・コミック業界(プロ)へのテコ入れを表明したものの、アマチュア育成に関してはすっぽり欠落しています。「結社の自由」が保証されていない(いま同人組織を設立できても、いつ当局によって潰されるかわからない)ことは全くケアされていません。

 反日活動で有名な「中国民間保釣連合会」「愛国者同盟網」などは相当強力な政治的保護者がバックにいると思われますが、それでも折にふれサイトの一時閉鎖のような処置を喰らっているのです。そういう不安定な環境で有力なアマチュア層を形成させるというのは無理な相談ではないかと思います。

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 唐突ながら、私が新卒で入社した商社がバブル崩壊の嚆矢となってわずか3カ月で倒産(笑)、そのあとなぜか香港の日系企業に入ってしまい、なぜか働きが良かったらしく試用期間終了後に給料がドーンとアップし、さらには旧正月休みに社長が御褒美として台湾旅行をプレゼントしてくれたことがあります。

 ●台湾と台湾人。(2005/12/19)

 1990年代前半の話です。私にとっては初めての台湾で、初めてだけに何もかも珍しく、また何もかもが香港では広東語でがんじがらめにされていた私を癒してくれました。

 旧正月期間だったのでみられるものには限りがありましたが、それでも自分なりに色々とみて回り、それらが全て私の台湾観・台湾人観の基礎となりました。その多くが当時の香港ではまず存在しないものばかり。そして、その中のひとつに「アマチュア」がありました。

 ライブ喫茶というか、大きめの喫茶店あるいはレストラン?の正面に舞台があって、そこでアマチュアのミュージシャンが代わりばんこに歌うという体裁のもので、アコースティック・ギターの弾き語りといった、ノリよりも叙情優先という雰囲気の空間です。

 台湾では行く先々でやっていた通り、そのときも私はウエイトレスをとっつかまえて「バイト?時給いくら?大学生?」などと質問責めにしていたのですが、当然ながら舞台で歌うアマチュアのミュージシャンにも話題が及びました。で、ここでのパフオーマンスを買われてプロになる例もあると聞き、ほーっと思ったものです。

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 当時の香港では人気歌手4人を「四大天王」(劉徳華、黎明、郭富成、張学友)ともてはやし始めていたころでした。それはそれでいいのですが、香港においてはアマチュアに与えられた日常的な活動場所は私の知る限りでは皆無といってよく、街角で歌う奴もいなければ楽器屋も話にならないほど貧弱。

 それだけにアマチュアに舞台が用意され、音楽業界(プロ)との間に一応のパイプがある、つまり人材供給源として機能するアマチュア層が存在している台湾の音楽業界はこれから伸びるに違いない、と考えたりしました。

 それから十数年経ちましたが、状況は歴然です。以前は「四大天王」をはじめ香港芸能界の狩り場でしかなかった台湾から少しずつ力のある若手が出始め、いまでは逆に台湾の芸能人が攻め込んで香港を席巻する始末。

 香港は「四大天王」にあぐらをかきすぎて新世代の台頭が遅れ、「F4」やジェイ・チョウ、王力宏など続々と輩出される「台流」の担い手たちに受け手一方という観があります。前途は未だ不透明ながら、「台流」が日本に静かに浸透しつつあることも確かです。

 そうした潮流を生んだ原因に上述したようなアマチュア層の存在がどれほど寄与しているかはわかりません。単なる私の思い込みかも知れませんし。ただ「台湾の音楽業界はいずれ香港を凌駕する」と言い続けてきた私を笑っていた香港の仕事仲間たちは私の前で最敬礼してくれます(笑)。

 むろん普通選挙制が敷かれている台湾とそれが未だ実現していない香港との差がクリエイティブな活動に反映され、音楽業界にその具体的表現が現れたもの、と強弁するつもりもありません(本当は強弁したいのですけど)。

 ただ、これまで「No money, no talk」の香港では職人技に敬意が払われることが少なく、金持ちになったかどうかが人生の成功・失敗を論じる上での唯一の基準であり価値観でした。

 こういう土壌ではアキバ系香港人のいう「ACG」(アニメ、コミック、ゲーム)はもちろん、音楽活動ひいては文化芸術一般について、またその道を志す者に対して社会は決して寛容ではありません。この点は台湾とはかなり違っているように思います。

 財閥二世が財界を動かし、社会階層が固定化しつつある最近になって、「香港ドリーム」と呼ばれた香港人の成り上がり願望は学歴追求へとようやく変化しつつあります。こうした地殻変動の中から価値観が多様化していけばいいなあと思っているところです。

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 例によって話があらぬ方向へと流れてしまいました。要するに現在、中国政府はアニメとコミックを「産業」として公認し、関連予算計上とか投資増という形でテコ入れしようとしているようですが、実力の伴う業界へと発展するにはそれだけでは条件不足。しかも大切な部分ががすっぽり欠落していることに中共は気付いていない、あるいは気付かぬふりをしている、という印象です。

 足りないものは「表現の自由」であり「結社の自由」。それによってアマチュア層に活動の場が与えられ、社会もまたそれを肯定するような空気を醸成させて、強力な業界たるべくアマチュア層がプロへの人材供給源として機能することです。あとはないものねだりですが価値観の多様化、といったところでしょうか。

 党の定める「表現」の枠内で日本人は「名探偵コナン」を創っているのに、中国人にはそれが創れず未だに国産アニメやコミックは十分に太刀打ちできないでいる。……やっぱり「一党独裁制」とか「普通選挙制」とか、そういう言葉でまとめる方がいいのでしょうか?



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 北朝鮮に関する国連安保理決議の件、中国国内メディアも報道しましたけどサラリと流した印象でした。2日経ったらもうサミットに軸足を移していて、安保理決議?何それ?というノリでしたね(笑)。

 お約束の自画自賛報道すら目につかなかったというのは、中共にとってよほど思惑通りに事が運ばなかった証拠。特に北朝鮮説得失敗で不機嫌なのでしょう。八つ当たりに「敵基地攻撃能力」を「先制攻撃」に故意にすり替えて日本を叩いていましたね。まあ不機嫌でなくてもセオリーな展開ですし、香港の新聞も概ねそんな感じでしたけど。

 「格」の話をすれば、説得に当たるとされて注目された武大偉・外務次官は一連の説得工作における露払いの役割でしかなかったのだろうと思います。外務次官というポストですから会える相手も話す内容も限られます。次官級協議で話題もたぶん六者協議復帰に限定、というのが実情だったのではないかと。

 その後に北朝鮮入りした回玉良・副首相が本来ミサイル発射や安保理決議を含めた北朝鮮の回答を持ち帰る役目を急遽担わされたのでしょうけど、この人も最高意思決定機関である党中央政治局常務委員ですらありません。胡錦涛・総書記がブタキムに電話ぐらいしたかも知れませんけど、結局は袖にされてしまいました。

 ……という流れだったのかなあと考えているのですが、実際どうだったのかは謎のまま。ただ中共系メディアが不機嫌ぽいので上のような展開を想像するのみです。

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 しかしやっぱり外患よりは内憂なのです。中国の今年上半期のGDP成長率が前年同期比10.9%に達していることが昨日(7月18日)正式に発表されました。第二四半期だけをみると何とまあ11.3%!「走り過ぎだろ。引き締めろよ手綱」といわれた第一四半期(10.3%)より大幅に加速しています(笑)。

 他の指標も安定成長に乗せる筈だった経済がオーバーペース気味に疾走していることを示していて、各地方勢力たる「諸侯」どもが胡錦涛率いる中央の指示を無視して突っ走っている構図が改めて浮き彫りにされた格好です。経済過熱懸念で報道もヒートアップ。

 「いやいやまだ大丈夫」と豪語するエコノミストもいますけど、増速していることで事態が香ばしい方向に向かいつつあることは確かです。以前ふれましたが、中国の場合は経済成長率が高ければ高いほど地域間格差や貧富の格差が拡大しますので、現時点での高度成長は逆に社会不安を高めることになりかねません。

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 今回はそういった旬の話題には背を向けます。アキバ系香港人のいう
「ACG」(アニメ、コミック、ゲーム)の中国国内における動きについて、鮮度が落ちないうちに取り組んでおきたいのです。……あ、ゲームには触れられていないのでアニメとコミックですね。

 ●国務院、アニメ・マンガ産業発展への「意見」発表(人民網日本語版 2006/07/15)
 http://j.peopledaily.com.cn/2006/07/15/jp20060715_61436.html

 原文はこちら。

 http://news.xinhuanet.com/newmedia/2006-07/15/content_4835442.htm

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 この記事によると、政府がこのほど「中国アニメーション・マンガ産業発展に関する若干の意見」なる通達を発しました。財政部、教育部、科技部、情報産業部、商務部、文化部、税務総局、工商総局、国家広播電影電視総局(放送事業を統括)など10部門が作成したものとのこと。

 主な内容は、

 (1)定義=アニメ・コミック産業とはいかなるものか。
 (2)中央政府・地方政府はアニメ・コミック産業振興予算を計上するように。
 (3)銀行や国内企業による投資促進とアニメ・コミック関連企業の企業制度確立を急げ。
 (4)アニメ・コミック産業の発展を支援するため海賊版など知的財産権保護を強化しろ。

 ……といったところです。「定義」から入っているところからみると、あるいは「アニメ・コミック」を初めて産業として公認した記念碑的な通達といえるかも知れません。

 ともあれ食べるのに精一杯な時代なら一顧だにされず、それゆえ商売として成立しない「どうでもいい」種類のものが「産業」として認められたことは、中国が歪んだ形ながらも経済発展を実現しつつあることの証拠といっていいでしょう。

 ただ、喜ぶべきことなのかどうかは疑問です。

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 「定義」を以て公認されたというのは、コミックとアニメ、またその関連グッズなどが「文芸」(文化芸術一般)のひとつとして中共に認知されたことになります。そして、それによって同時に枠をはめられたともいえます。

 ここで必ず持ち出さなければならないのは延安における毛沢東の「文芸講話」(1942年)です。ざっくりと言ってしまえば、

「『文芸』は人民に奉仕する存在でなければならない。クリエイターたる者は人民に奉仕する作品を創造することに一意専心、励まなければならない」

 というもの。当時は「人民」=「工・農・兵」と単純な色分けで済みました。現在はそれが複雑になり、資本家でも中国共産党員になれる時代ですから北京の紀念堂で充電中の毛沢東もビックリするでしょうが、「人民に奉仕する」という線はそのままでしょう。これがクリエイターを縛ることになります。

 「人民に奉仕する」ものしか創れないということ、それからその判断をするのが中国共産党だということ。……さらにもう一点、実は最も重要なのが現在の政治状況下ではアマチュア層が育たないということです。

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 私は副業でサブカルチャー関連業界に接する機会が多いのでこういう問題には非常に興味があります。一度反日サイトの掲示板でこの話題が出たとき例によって「なんちゃって香港人」として議論に加わった私がその「文芸講話」を引き合いにしてつらつらと上のようなことを書き連ね、

「政治的自由のない国では自由な発想が許されず、一定の枠内での創作を強いられる。だから結局いい作品は生まれない。天才が生まれることはあってもそれは例外的なケースで、海外と伍する実力を有した業界を形成することはできない」

「それに天才であれば恐らく国内の状況に嫌気がさして海外に活動拠点を移すだろう。米国のハリウッドで才能を発揮しているのが必ずしもアメリカ人とは限らないのと同じだ。より身近には、海外に出た中国人留学生の多くが戻ってこないことを思えばいい」

 という趣旨の書き込みをしたところ、稀有なことに糞青(自称愛国者の反日教徒)どもの喝采を浴びたことがあります。まあ連中にしても「ガンダム」ファンだったり「名探偵コナン」にハマっていたりしますし、劣化した糞青になると「おれは海賊版のガンダムを買ったことで反日を実行した!」という馬鹿もいます(笑)。

 糞青でなくても、「動漫節」(アニメ・コミックフェア)が開かれればコスプレの大半は日本モノだったりしますし。かつての台湾や香港がそうだったように、海賊版も相当数入っていることでしょう。

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 毛沢東の「延安講話」はいまなお聖なる掟のままですから、現在の中国にあっては表現の自由は認められていません。それで発禁本が出たり新聞が潰されたり記者が逮捕されたりするニュースが後を絶ちません。中共の枠内で創られた作品は面白くなくて海外では勝負にならない。才能のあるクリエイターは無念なことでしょう。

 ただ、そういうクリエイターがどれほどいることか。私たちが中国(ひいては香港や台湾)のテレビドラマやCMをみれば「ダサい」とか「ショボい」と思うことが多いかと思いますが、現地の視聴者の多くはそういう感想を抱かないでしょう。そもそもそういう環境で育ってきたクリエイターが海外でも通用する娯楽作品を生み出すことこそ容易ではないように思います。

 「ACG」に限定していうなら、「技術はあるけど娯楽性に欠ける」という状況が生じるでしょうし、現に副業で取材者として私が接してきた日本の著名クリエイターたちが韓国・香港・台湾の作品(中国は論外)について必ず指摘するのもその点でした。

「アイデアは悪くないし技術もある。でも作品に仕上がってみると面白くないんだよなあ」

 とのことです。

 何年か前、日本の某サブカルチャー業界でのキャリアが長い中国人を中心にチームが組まれ、香港と中国本土に一部の仕事を請け負わせてひとつの作品を世に送り出したことがあります。制作に参加したのは中国人、香港人、それに日本人です。取材者として立ち上げから完成までを眺めていた私が、

「感覚の違いなんかがあって大変だったでしょう?」

 と聞いたところ、中国人リーダーは、

「いや、本当に大変でした。日本人とは問題ないんです。それよりも香港や中国本土の連中とのギャップが大きくて苦労しましたよ」

 と答え、やはり、

「技術はあるけど娯楽性に欠ける」
「エンターテインメントに関するセンスがかけ離れていて話にならない」

 といったことを話してくれました。これは「表現の自由」に関わる問題であり、表現の自由が制限されているために生じる問題といっていいでしょう。

 政治や社会問題を扱った作品やルポルタージュもこの「枠」に苦しんでいますが、むしろアニメやコミックは娯楽性(面白いかどうか)という点で海外の作品との違いがより際立ってしまいます。

 この分野で中国が保護主義をとる、つまり海外の作品が流入することを防がなければ、中国ではたぶん日本のアニメやコミックが氾濫することとなり、鑑賞する方もまたそれを支持することでしょう。コスプレはもちろん、糞青だって「ガンダム」や「名探偵コナン」にハマっているくらいですから。

 そして、いきおい中共によってようやく公認された中国国内の「アニメ・コミック産業」は日本の下請けになるか、あるいは国内市場でもそれなりの規模があることから海外では見向きもされない駄作を量産し続けることになるでしょう。ただ海外作品の大挙流入となれば駄作の量産もままならず、結局は下請けに転じることになるかも知れません。


「下」に続く)



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