日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 チベット問題に関するニュースが毎日飛び込んで来ています。とはいえ、いずれも中国のゲームプラン(私見)に沿った内容のもの。進行しつつある事態の質的転換を示す情報は目下のところ何ひとつありません。

 という訳でここ数日は年度末の忙しさのなか、別種の娯楽に惑溺してしまった次第。

 申し遅れましたが楊枝削りであります。タグは「おっさんホイホイ」「空戦動画」ということで。……間口が狭い?いやいやそんなことはありません。少なくとも当ブログにおいては(笑)。


 ――――


 
加藤隼戦闘隊

東宝

このアイテムの詳細を見る


 先日購入したのですがこれはすごいです。戦争中に戦意昂揚のため制作された映画のようですが、何よりも映像史料として一級品。だって戦争中に撮ったものですから、陸軍の一式戦闘機「隼」をはじめ実機が飛ぶ飛ぶ編隊飛行に空戦機動。凄い凄いとしかいいようがない。

 模擬空戦で登場する敵機もこれまた捕獲した実機。P-40とかバッファローとかが出てきます。他にも貴重な映像満載な上に物語としても一応まとまっています。加藤戦隊長、激似で演技もよくこれはもう見事の一言(笑)。

 詳細はリンク先(AMAZON)のカスタマーレビューを御一読頂ければ。いま現在、いくらおカネをかけても絶対に再現しようのないものがここにあります。レシプロ戦闘機がぎゅわんぎゅわんヒラヒラリと飛ぶのを観るのが好きな人は買って間違いありません。

 ようつべで拾った参考映像。





 ――――


 空戦動画といえばこちらも忘れてはいけません。

 
零戦 (双葉社スーパームック―超精密「3D CG」シリーズ)
原田 敬至,栃林 秀
双葉社

このアイテムの詳細を見る


 零戦(ゼロ戦)のムック本です。あの不朽の名作『大空のサムライ』は読んだことないけどちょっと興味ある、という人に最適。

 しかしながら一番の売りは付録のDVD、これに尽きます。何とCGを駆使した零戦による空中戦の動画が収録されています。私はその付録のためにこの本を買いました。

 この本、以前紹介したこともあるので重複となるのですが、「いいもの」なんてそうザラにある訳がありません。1年に1回は紹介しませんと(笑)。

  私はこの空戦動画を制作したトッチーさんこと栃林秀さんの隠れファンです。かれこれ6年ほど前に某巨大掲示板の軍板あたりでHPの存在を知りまして、のぞいてみたら動画の質の高さに驚倒。当時は漫画が本職で空戦動画は余暇活動だったと思うのですが、「1942」「1945」という作品は必見です。

 アマチュアでもここまで出来るのか、とCG技術の進歩もさることながら、ひとりでこれだけのものを制作してしまうことに驚きました。日本はやっぱり凄い、アマチュア層の広さと深さ、そして実力の高さは並大抵のものではないと勝手に感じ入っていました。

 栃林秀さんのHPはこちら。「1942」「1945」ほか短編はここで観ることができます。

  ●すっぽん

 付録DVDに話を戻しますと、目玉は零戦の空戦動画2本。それも零戦撃墜王・岩本徹三氏が空母「瑞鶴」零戦隊に所属していた当時に生起した珊瑚海海戦における味方機動部隊上空での迎撃戦と、大空のサムライ・坂井三郎氏のガダルカナル島上空におけるグラマンF4Fとの空中戦が収録されています。どちらも7分強の動画です。

 岩本一飛曹・坂井一飛曹とも顔が本人によく似ていて、つい笑ってしまいました。栃林さん、続編希望であります。m(__)m


 ――――


 この栃林さん、いまではその道のプロとなって日本では第一人者的存在。映画「俺は,君のためにこそ死ににいく」にも特撮場面の制作に参加しています。迫真の空戦場面や特攻機の突入シーンは、なるほどこの人ならではの見事な出来映えです。

 
俺は、君のためにこそ死ににいく

TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)

このアイテムの詳細を見る


 映画そのものは戦闘シーンは少なく、特攻隊員たちの青春群像(実話ばかり)がメイン。



 この映画を紹介した当ブログのエントリー。

 ●ネタバレ注意:俺は,君のためにこそ死ににいく(2007/05/22)

 「究極の反戦映画だと思います」という「みけ」さんのコメントに激しく同意であります。

 同じ意味でもう1本。戦闘シーンはいよいよ少ないのですが胸を打つ物語です(実話ベース)。

 
月光の夏

ポニーキャニオン

このアイテムの詳細を見る



 ――――


 ついでに『大空のサムライ』も。単なる撃墜王の空戦録でないところが素晴らしいのです。戦記物というより、人生の指針になる作品。発売以来40年以上も売れ続けている理由もそこにあると思います。

 
大空のサムライ―かえらざる零戦隊 (光人社NF文庫)
坂井 三郎
光人社

このアイテムの詳細を見る


 
続・大空のサムライ―回想のエースたち (光人社NF文庫)
坂井 三郎
光人社

このアイテムの詳細を見る


 
大空のサムライ・完結篇―撃墜王との対話 (光人社NF文庫)
坂井 三郎,高城 肇
光人社

このアイテムの詳細を見る



 ――――


 あと空戦動画とは関係ないのですが「おっさんホイホイ」でこれ。昨年,横浜で行われたYMO世代感泣モノの伝説のライブが収録されています。

 
HAS/YMO

エイベックス・エンタテインメント

このアイテムの詳細を見る


 メンバーの3人が3人ともいい感じに年を重ねていい感じに枯れていて、あくまでも心地よいコンサ。これを紹介したNHKの番組(高橋幸宏+坂本龍一+細野晴臣 音楽の旅)やライブのメイキングなどオマケも盛り沢山でいうことは何もありません。品切れ・絶版とかになる前にぜひ入手しておくべきものです。

 予約して発売日に買った私は初回ロットの割を食った気がしないでもないのですが(笑)、次回があるかどうか、わかりませんし。








コメント ( 12 ) | Trackback ( 0 )





 やむにやまれず書いてしまう、というエントリーがあります。

 私にとって当ブログは素人の中国観察備忘録のようなものなので、多少鮮度が落ちたニュースでも記すべきものは記しておきたいのです、自分のために。

 今回はその類のものです。われらがフフン♪こと福田首相が、ある意味歴史的な国会答弁を行いました。



 ●チベット論議「必要なら」 日中首脳会談で首相(MSN産経ニュース 2008/03/24/18:20)
 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080324/plc0803241820006-n1.htm

 福田康夫首相は24日の参院予算委員会で、5月に訪日する予定の中国・胡錦濤国家主席との首脳会談で、チベット騒乱を議題にするかどうかを問われたが、「率直な意見交換が必要ならば(日中両国が)率直に言い合えるような関係にするべく努力をしたい」と述べるにとどまり、議題にするかどうか明言を避けた。

 自民党の山本一太氏は「胡主席に対し(中国とチベットの)当事者間の対話を促す考えはあるか」と質問した。だが首相は
「お互いに良い面を見つけて延ばしていく観点でお付き合いすることができるかどうかが非常に大事だ」と外交の原則論を展開。「国が違えば意見が食い違うのは、あって当然だ」とまで述べて、不干渉の姿勢を強くにじませた。

 その上首相は
「中国が『日本、ちょっと間違っているよ』と言ってくれ、逆に日本が『中国はこうしたらいいんじゃないの』と言えるぐらいの関係ができれば最高だ」と答弁し、中国首脳に対する首相の毅然(きぜん)とした態度を求めた山本氏の質問をはぐらかした。

 高村正彦外相は同じ質問に対し、4月17~21日に来日予定の中国・楊潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に)外相と会談する際、「私が全然この話題に触れないことはあまり考えられない」と述べ、チベット問題を議題に取り上げる考えを示した。




 これはあまりにひどいのではないでしょうか。記者の筆致が福田発言を際立たせようとしている部分もありますが、

「相手の嫌がることをする必要はない」

 をモットーとする福田首相は、対中外交で確かに筋を通しているのだということが、今回の答弁で改めてよくわかりました。

 なるほどこれなら毒餃子事件も進展をみませんしチベット問題での邦人保護についてもいい加減になります。そのチベット問題を引き起こした中国に対する態度も大甘で、虐殺事件の最高責任者たる胡錦涛・国家主席をこの時期に平然と迎え入れようともする訳です。国民よりも中国が大事?

 ダライ・ラマ十四世と会見した米下院議長、会見する予定の英首相、またダライ・ラマ十四世が訪仏すれば歓迎するとの意向を表明したフランス政府、そして対中支援計画の進行を中断させたドイツ政府などとは実に対照的な姿勢、といわざるを得ません。

 中国にしてみれば、この時期に日本が福田政権だったことは正に神佑天助。

 ――――

 繰り返しになる野暮を承知で申し上げますが(というより何度でもくどくどしく持ち出しますよ私は)、中国本土で使われる中国語の中には、
「中共語」とでもいうべき字面とは別の解釈を必要とする単語があります。当局発表などで多用されるものです。

 ●「対話」→「中共の言い分の押しつけ」「中共からの命令伝達」
 ●「協議」→「中共の言い分の押しつけ」「中共からの命令伝達」
 ●「協力」→「中共への奉仕」
 ●「平和」→「中共による制圧下での非戦時状態」
 ●「友好」→「中共に従順」
 ●「交流」→「中共の価値観の押しつけ&軽度の洗脳」

 「軽度の洗脳」とは、

「中国はいい国だ」
「日本は昔なんてひどいことを中国と中国人にしてしまったのだろう。反省しないと」

 という気持ちにさせること。

 ――――

 相手側がこういう姿勢で臨んできているのに対し、

「国が違えば意見が食い違うのは、あって当然だ」

 というのは余りにお粗末。チベット問題について出された質問に対する福田首相のこの回答は同時に、

「人権問題なんか二の次三の次」

 との姿勢を明確にしたものでもあります。対中外交における信念が改めて明示されたこととともに、「人権」という価値観に対する認識の低さをはからずも露呈してしまったという点で、この福田発言はある意味歴史的なものだと思います。

 人権問題をないがしろにするという姿勢は、つまるところ国民の安全を守る努力を放棄しかねない、という点に行き着きます。事実、毒餃子事件にせよチベット問題での在留邦人保護にせよ、福田首相をはじめ内閣とそれに仕える官僚は「放棄したも同然」といっていい言行を繰り返していますね。

 無防備すぎる、としかいいようがありません。トップがこれですから、現場はストレスがたまりますし、国民は割を食うことになります。

 ――――

 なお、今回の答弁については『産経新聞』阿比留瑠比記者の「記者ブログ」にて詳報に接することができます。これは必読モノです。

 ●チベット問題・異様なほど中国に気を遣う福田首相の答弁(国を憂い、われとわが身を甘やかすの記 2008/03/24/17:46)

 首相が「日本代表」らしからぬ振る舞いを続けている以上、これは毒餃子事件と同様に、私たち国民ひとりひとりがそれぞれに、何らかの形で意思表示を行っていくしかないのでしょう。




コメント ( 30 ) | Trackback ( 0 )





 すでに旧聞かも知れませんが、台湾総統選のこと。これはスルーする訳にはいきません。

 結果は御存知の通り、
中国国民党の馬英九が総統選における過去最高の得票率を獲得するという歴史的大勝を収めました。民進党の謝長廷に対し221万票の大差。得票率でいうと馬英九陣営が58.45%、謝長廷陣営が41.55%。李登輝さんの支持表明やチベット問題の戦慄も形勢逆転を呼び込むことはできませんでした。

 基本的には1月の立法院選挙で圧勝した勢いをそのまま持ち込んだ結果、といえるのかも知れません。馬英九は選挙期間中、本来民進党の地盤である南部での票固めに努めるなど色々頑張っていたことは無視できませんが、基本的にはやはり「敵失」に助けられた面が大きいように思います。

 ちなみに立法院選挙のときのエントリーはこちら。書くべきことの多くはここで書いてしまっていますので、それらについて今回は端折っています(笑)。

 ●台湾立法院選挙:勝者も敗者も,変わらなきゃ。(2008/01/14)

 このタイトル、今回の選挙結果にも当てはまるのではないでしょうか。……というか当てはめてしまいました(笑)。

 ――――

 さて、まずは「敵失」について。与党・民進党が立法院選挙に続いて歴史的大敗を喫したということですが、端的には2期8年続いた陳水扁政権に嫌気がさしたということではないかと思います。

 陳水扁は諸政策において立法院との「ねじれ現象」で割を食った面が大きいのですが、これは過去の立法院選挙における戦略的錯誤から多数派を形成できなかった民進党の自業自得という要因もあります。

 経済面での失政がまず挙げられますが、民進党そのものが結局は活動家あがりで、寄せ集めの書生集団であるという弱味がそのまま出てしまった格好です。汚職疑惑はともかく行政手腕に欠ける一方、半ば与党としての仕事そっちのけで党内において内訌を繰り返していたことに台湾の有権者の多くが愛想を尽かしたというところではないかと思います。

 台湾というと「統一か独立か」といういわゆる
「統独問題」の話になりますが、世論調査をみる限り、台湾人の多くは「現状維持」を選択し、これが多数派となっています。私見ですが、この層は中国が武力侵攻というオプションを放棄していないために現状維持を選択しているのであって、その大半は事実上、「中国が容喙しないのなら独立するべき」という、いわば潜在的独立派といっていいでしょう。この一大票田にソッポを向かれたのが謝長廷陣営の大きな敗因ではないかと。

 民進党は今回の総統選においてもこの政治的な選択肢、要するに「台湾本位の路線でいくか中国にすり寄るか」というイデオロギーめいたものを掲げていましたが、それが有権者の共感を集めなかったことも無視できません。

 この「現状維持派」の失望の具体的表現として、馬英九に票が流れた一方で有権者の「政治離れ」が起きていることも指摘しておきましょう。今回の総統選の投票率は76.33%で、前回(2004年)の80.28%を下回ってしまいました。台湾の有権者総数1732万人を基礎に計算してみればわかることですが、この減少分が全員謝長廷に投票しても、馬英九の得票数にはまだ及びません。

 こうした「政治離れ」とともに、浮動票が馬英九に流れない限り、221万票という大差がつくことはないでしょう。

 ――――

 ただし、立法院選に続いて今回の総統選でも国民からダメ出しをされてしまった民進党政権ではありますが、8年にわたる陳水扁時代が台湾にマイナスをもたらしたかといえば、あながちそうでないようにも思うのです。

 この8年間を経て、国民の間に「台湾人意識」がしっかりと根付いたことは高く評価すべきではないでしょうか。教育面でも例えば歴史教育が中国史メインから台湾史本位へと大きく舵を切った意味は非常に大きいと思います。やや乱暴ながら公共機関などの名称を「中華××」から「台湾××」へと変更する作業も行われました。「中華民国」を実質的に「台湾国」という現実にすり寄せる施策が推進されたことは、功績とされていいでしょう。

 もっとも、8年の陳水扁時代を経て「台湾人意識」がしっかりと根付いたことを十分に認識できず、今回の総統選においても、ほぼ定着しているためもはや余り意味をなさない「台湾人意識」を争点に掲げたあたり、空気が読めていなかった、情勢の変化についていけなかった、というのは民進党の失策です。

 この「台湾人意識」の浸透は、今回馬英九すら自らが「台湾人」であることを様々なパフォーマンスを以て再三強調しなければならなかったことからもうかがえます。すでに争点でない問題を改めて持ち出して呼号したことで、すでに自らが台湾人であることを十分に認識している有権者から、

「またそれかよ。もういい加減いいだろその話は」
「他にやるべきことがあるだろーが」

 と忌避された一面があるでしょう。

 ――――

 経済政策については、これは台湾人からブーイングが出るかも知れませんが、長い目で見ると
陳水扁の無策がかえって良かった面もあるかも知れません。景気浮揚策というのは台湾の場合、往々にして中国頼み、つまり対中依存度を高める方向に傾くということになります。

 不景気に対する無為無策はもちろん指弾されるべきものではあるものの、早々に「中国頼み」を実現していたらどうなっていたか、ということも考えてみる必要があります。

 最近になってインフレ懸念が公然と語られるようになり、ようやく雲行きが怪しくなってきた中国経済です。過去8年のイケイケドンドン時代に各面で対中依存度を高める方向に動いていれば、その粗放な拡大路線に飲み込まれて台湾経済がどうなっていたかはわかりません。

 不景気にあえぐ台湾人からは怒られるかも知れませんが、「中国頼み」を8年間遅らせたことで、実に歪んだ形の中国経済の発展モデルの弊害が噴出し始めた一方、ベトナム、インドネシア、インドなどの「代替地」が整備されつつあることは、台湾にとって僥倖といえるかも知れないのです。

 台湾経済の調子がおかしくなり始めたあたりで政権を奪取した陳水扁がババを引き、8年遅れて登場した馬英九はラッキーだったのではないかと。

 ただし、馬英九が「8年遅れ」で得た強味を生かした経済政策を行えるかどうかは未知数です。

 ――――

 5月に発足する中国国民党による馬英九政権については、まずは221万票という大差に驕ることなく、国民の間にすでに定着した「台湾人意識」に逆行するような施策に走らないことが肝要です。これまた1732万人という有権者総数に照らせば、馬英九陣営の得票数765万票というのは過半数にも達していない数字。

 立法院選挙で得た圧倒的多数の議席数も考えると「一党独裁」状態といっていいのでやりたい放題が可能となりますが、「政治離れ」の進行と浮動票の助けを得たことを考えれば、民進党の行ってきた政策、例えば台湾人意識を高める歴史教育などを元に戻すなどということをすれば次の立法院選挙で痛い目に遭うかも知れません。

 馬英九もそのあたりは計算しているでしょうから、大きく舵を切る政策へと迂闊に踏み出すことには躊躇が伴うことと思われます。勝ち過ぎてしまったために、逆にフリーハンドではなく、様々な縛りが入ることになる、ということです。

 もっとも国民党は大所帯です。馬英九はそれを理解していたとしても、いまなお隠然たる実力を擁する「外省人」意識から脱却できない党内の長老格もそれに同調してくれるかどうかは未知数。一方で大所帯ゆえに、そうした「外省人派」と「台湾本土派」の間に不協和音が生じる可能性もあります。また、「一党独裁」状態の復活によって、従来の汚職体質が再び頭をもたげるかも知れません。

 そうしたアキレス腱を切られることなく、党内をまとめ上げられるかどうかは馬英九の器量次第。……なのですが、この点について馬英九をテストする機会が十分になかったため、これまた未知数、ぶっつけ本番、ということになります。

 ――――

 予想以上の得票=現状維持派からの支持を得て「勝ち過ぎた」ために政権運営に縛りが入る、というのは対中政策でもいえることです。勝ち過ぎたことにある種の困惑を覚えているのは中共政権もまた同じことなのではないかと思います。胡錦涛・国家主席は3月上旬に台湾に関する重要講話を発表しており、

「台湾独立運動に携わった者でも、『一つの中国』を受け入れるのなら歓迎する」

 という趣旨の一節がその中に登場します。

「こちらの条件を呑むなら『台独派』でも構わない」

 というスタンスは従来に比べて大きく踏み込んだ画期的なものです。この重要講話を読んで、
「胡錦涛は馬英九ではなく、謝長廷の辛勝を望んでいるのか?」と私などはつい勘繰ってしまいました。

 民進党政権なら武力併呑というオプションを保持し続けることができるのですが、馬英九となれば対中融和路線ですから武力侵攻は無用のカードになってしまいます。話し合いは時間がかかりますし、馬英九も記者会見で「在任中は『統独問題』にはふれない」と言っています。

 中国にしてみると今後4年間は「統一」はおあずけ。しかも「圧勝」である以上、中国が遠隔操作で連戦あたりを通じて馬英九にかけられる圧力も限定的なものとなるでしょう。

 軍部の統率や軍事力のバランスなども考えると、実は民進党の謝長廷政権の方が手っ取り早く問題を片付けられる可能性があったともいえるのです。このあたりは胡錦涛の指導力によりますが、武力による併呑という目が当分なくなったことが党上層部に何らかの変化をもたらすのかどうかは、注目していきたいところです。

 ――――

 私たちとしては懸案といえる日台関係への影響ですが、「政府間」の往来については陳水扁時代のような蜜月状態は期待できないでしょう。民進党は仮に中国との対話を望んでも、中国側がそれを一貫して拒否していました。その分だけ日本にすがったという面があり、それゆえの蜜月でもありました。

 ところが馬英九となれば中国の対応も変わることになるでしょう。日本にすがる必要が少なくなる分だけ、台湾政府における日本の存在感が弱まることは避けられないだろうと思います。日本政府においても戦略の練り直しが必要になる、ということです。

 「馬英九=反日」というイメージが一般に指摘されています。過去には尖閣諸島をめぐる紛争での闘士として名をあげ、最近では靖国神社前で騒ぐなどした反日基地外の高金素梅にとっての有力な支援者のひとりでした。

 もっとも、台湾総統に就任しても「反日」姿勢を貫くということは考えにくいのですが、国家として領土紛争で陳水扁政権のように日本に配慮することは少なくなるでしょう。特に尖閣諸島をめぐっては中台協調という作戦に出る可能性もあります。こうなると日本としても台湾への見方を改めざるを得ません。……もちろん「政府間」の関係において、ではありますけど。

 もうひとつ懸念されるのは、……いやこれは馬英九政権の属性をみる上でのひとつの目安といえるかも知れませんが、中共政権が常に騒ぎ立てているいわゆる
「歴史問題」をどう扱うか、ということです。日本の敗戦まで「日本の一部」であった台湾人にとっては無縁のこの問題、中国国民党にとっては南京虫事件をはじめ無視できないところでしょう。それを政権としてどう扱うのか。外交政策や教育政策に反映させるようであれば、日本もそれ相応の態度をとらなければならなくなります。

 ただ馬英九がこれをやってしまうと、

「結局あいつは中国人。台湾人のフリをしているだけだったということだ」

 という声が台湾内部で広がりかねませんから、馬英九としても踏み込みにくいところだとは思います。

 迂遠なようであっても、日本としては台湾の若い世代に一人でも多くの親日派を増やすよう努めることが最善の策ではないかと思います。さらにいえば、余計なお節介であろうとも、台湾は日本にとって生命線ともいえる地政学上の要衝であることから、「台湾人意識」が希薄にならないよう、陰に陽に働きかけを行う必要があるでしょう。

 私としては政権交代によって胸襟を開いて大いに語り合える友人を失ったような気分は拭えませんけど、嘆いても始まりません。米台関係、中台関係の動向をにらみつつ、日本も相応の構えで蚊帳の外に置かれぬよう励まなければならないのです。

 ――――

 最後に、立法院選挙に関する前掲エントリーからの引き写しになりますが、以下のことを改めて強調しておきます。

 まずは立法院選・総統選でともに歴史的大敗を喫した民進党について。台湾ではすでに「本土派」が主流であることを再認識すべきでしょう。

 常に多数派を形成する現状維持層の多くが中国との統一を望まず、台湾本位のカタチを守るべきだという意識が顕著になっているとすれば、民進党は「正名・制憲」を最終的目標に掲げつつも、より現実的なアプローチをとり得る成熟した政党へと脱皮しなければなりません。内訌を収拾できないのなら分裂・再編も必要かも知れません。

 一方で、「一党独裁」状態を手にした中国国民党も、台湾本位意識の定着を無視せずに「虚構」へのこだわりを排し、自らを投票結果だけではみることのできない真の民意にすり合わせるべく努力していく必要があります。

 私自身は、これだけの議席を獲得し、圧倒的大差で政権をも奪取した中国国民党は国民政党としての意識を強め、それを行動で示す必要があるのではないかと考えています。積極的であれ消極的であれ自党を支持してくれた有権者に配慮して、現実に則して身軽になるべきではないかと思うのです。

 台湾人意識がこれだけ浸透している以上、党名から
「中国」の二字を削るべきではないでしょうか。「台湾国民党」へと改名するのは次世代以降に託された課題でしょうけど。

 そして、今回の結論もまた同じ。勝者も敗者も、進んで自らを変えていくようにしなければならない、ということです。




コメント ( 7 ) | Trackback ( 0 )





シリーズ:チベット弾圧2008【4】へ)


 きょうは台湾総統選挙の投票日ですね。先行逃げ切りを狙う国民党・馬英九に対し終盤で猛チャージをかけ巻き返した民進党・謝長廷。香港紙の多くは「馬英九で安泰」といった報道を行っていますが、香港人は世論調査を行えば最低でも7割が「台湾独立に反対」と回答する土地柄ゆえ、純粋な予測記事なのか願望が多分に混じったものなのかよくわかりません。

 私の場合、願望でいうなら「台湾は台湾らしくあるべき」という色彩がより濃い謝長廷さんに勝ってほしいところです。日本にとっても台湾が中国に取り込まれる方向に進むことは望ましくないと思います。

 ……ただこれは願望であって、予測はとなればもうお手上げで結果を待つしかありません。そもそも「選挙は水もの」という言葉がありますし、さきの立法委員選挙に比べれば投票率が高まるであろうこと、つまり浮動票の影響力もフタを開けてみないことにはわかりません。今回は終盤ギリギリの段階で李登輝さんや李遠哲さんが謝長廷支持を表明したこと、それからチベット問題、これらが台湾人の意思決定にどれほど響いたかという変動要因もあります。

 このチベット問題に対し、台湾からは「台湾が第二のチベットになる」という声が挙がりました。これは重要なことで、例えば香港メディアでは中国当局の武力弾圧や報道統制、それにこれまでの同化政策・殖民政策を批判する声は相次いだものの、「香港が第二のチベットになる」という見方は現在に至るまでついに出ていません。

 台湾独立反対が圧倒的多数を構成する香港においては、チベットに対する中共政権の政策に異論はあっても、また「自分の都合で無理難題を強要してくる」という点でチベット人にある程度共感する部分はあるとしても、基本的に「チベットは中国の一部、これ常識」であって、「チベット人やウイグル人が納得できる形を認めてやってもいいのではないか」といった見方はほぼ出ませんでした。

 チベット問題に対し、「自分たちのところが第二のチベットになるかも知れない」と台湾人が考えたのに対し、香港人は露程もそれを思い浮かべなかった、というところに致命的な差異があるように思います。

 やや誇張していうなら、香港人はチベット人を中国に隷従すべき「異民族」と捉えたのに対し、台湾人はこの「異民族」に未来の自分の姿を重ねてみたのです。台湾人の「台湾=本土意識」と中国大陸に対する「距離感」「異質感」が垣間見えるようです。

 ――――

 さてそのチベット問題に対し、当ブログは一貫して「ヲチ」の姿勢を崩さず、個人的願望や「かわいそう」といった、観察眼を曇らせかねない類のものは極力排除して、観察・分析・予測に徹してきたつもりです。

 3月10日にチベット自治区・ラサ市で抗議行動が開始されてから2週間近くになりますが、現時点までの感想をいえば、事態の進行、そして中国当局の出方に対する分析や予測は非常に楽だったという印象です。

 結果が明らかになるまで予測など「全くお手上げ」な台湾総統選とは正反対に先の読みやすい展開でしたし、2005年春の反日騒動のように二転三転する事態の中で状況把握に努めるという乱戦模様になることもありませんでした。生意気をいえば、事件を持て余すことなく、自分の掌の上で転がしつつ存分に眺めることができた、という充足感のようなものがあります。

 ●【チベット】相変わらずな中共政権。処方箋ある?(2008/03/16)
 ●【チベット】人民戦争だ!当局は「六四モード」突入。・下(2008/03/17)
 ●【チベット】人民戦争だ!当局は「六四モード」突入。・下(2008/03/17)

 この3本のエントリーが全てです。最初の「相変わらずな中共政権」において一党独裁体制である中国当局の今回のような事態に対する「行動原理」を示した上で、国際社会は天安門事件当時と異なり、中国に対し強く出られないであろうことを指摘しました。

 続いてダラダラと長くなってしまったものの、「六四モード」(上下)で天安門事件当時の例を引きつつ、当局発表や中国国内メディアの報道から中国当局の動きが今回も従来のパターン通りであること、……つまり「相変わらずな中共政権」で予測した通りであることを確認することができました。国際社会の中国に対する踏み込みの鈍さと甘さについてもまた然り、といえるのではないかと。

 ――――

 「六四モード」とはもちろん便宜上造語したものに過ぎませんが、簡単にいえば「民」によって行われる抗議活動や異議申し立てを「独裁体制として看過できない事態」と認識した際の、「官」である中共政権の行動原理のことです。

 文化大革命の時期までや近年の農村暴動・都市暴動においても基本的には常に同じことが繰り返されていると私はみているのですが、国際社会を戦慄させたという点では直近例といえることで、「六四事件」(1989年の天安門事件)の名前を引っ張ってきたにすぎません。



 ●1.「民」が抗議活動や異議申し立てを行ったのに対し、当局が「中共一党独裁体制」を維持する上で看過できない事態と認識する。

 ●2.当局が「民」の行動に対して「善か悪かといえば悪」「白か黒かといえば黒」と、明確な悪者(=鎮圧すべき対象)認定を行う。

 ●3.状況に応じて当局が武装警察(内乱鎮圧用の準軍事組織)ひいては人民解放軍を出動させ、容赦ない武力弾圧を実施する。必要とあれば実弾射撃を辞さない。その場合、当然ながら「民」の側は死傷者多数となる。

 ●4.当局は官民衝突の発生現場に対し戒厳令状態で「結界」を張り、落ち武者狩りを行う一方で外部者の立ち入りや現地情報の漏洩を防ぐ。現地に不満な空気が残っていても武力を以て力づくで押さえ込み、政治教育の強化などによる思想統制を進める。要するに鎮圧を徹底させつつ、「現地情報は当局発表のみ」という状態をつくりあげ、事件による「民」(抗議行動を行った側)の死傷者数を極小化すべく努める。

 ●5.当局は同時に中国全土を対象にした別種の「結界」を張る。自らに都合よく編集された映像や官製ルポ、また断固たる姿勢の当局発表などによって武力弾圧の正統性をくどくどしくアピールする一方、国民に対する印象操作・情報操作を行うことでこれまた一種の「洗脳」を実施する。もちろん異論は封殺。必要なら思想統制など政治的引き締めも発動させる。

 ※注.ちなみに「自らに都合よく編集された映像や官製ルポ」とは、「民」がいかに冷酷非常で暴虐無比だったか、治安部隊が自らの損害を顧みずいかに抑制された対応に終始すべく努力したか、一般市民がいかに迷惑したかを強調した内容。

 ●6.国際世論の反応に顧慮することなく、鎮圧対象への断固たる姿勢を強調し、自らが講じた措置の正しさをあくまでも主張し続ける。つまり実効如何は二の次で(5)と同じ「結界」を国際社会に対しても張ろうとする。中共一党独裁体制の維持を最優先にするためのパワープレー。

 ●7.国際社会によって経済制裁などが行われることに顧慮しない。これは基本的に「1億人が餓死しても総人口の1割にもならない」という感覚によるもの。対内的に独裁体制を維持し得る武力を擁していると判断すればこの一手あるのみ。

 ●8.時機を選びつつ国際社会の協調分断を試み、孤立状態からの脱却を図る。



 ……というのが「六四モード」の具体的な手順。

 現時点まででいえば、中国当局にとって今回の「六四モード」は1989年の天安門事件当時よりもずっと楽な環境のもと実施することができたといえるでしょう。

 まずは「現場」が僻地だったということです。首都の真ん中に屯集した「反革命分子」を人民解放軍が武力弾圧するのと違って、海外メディアや在留外国人の数が限定的なためインパクトのある映像(警棒による殴打から実弾射撃まで)が海外に流出することを防ぐことができました。

 事件が突発したも同然のものであることも中国当局に幸いしています。天安門事件はその前段である民主化運動が1カ月半あり国際社会の注目を集めていたほか、ゴルバチョフ・ソ連書記長(当時)の歴史的な訪中もあって海外メディアが平時以上に「現場」に張り付いていました。今回はその逆。

 しかも当局はチベット人による抗議行動を事前に容易に予想し得たことで、対応策を練る時間がたっぷりとありました。銃撃も行われたと思われるラサでの「流血映像」全くが出てこないのは、鎮圧対象を人目のつきにくい場所に誘致する、夜間に武力行使を行う、などといったマニュアルが奏功しているという一面もあると思われます。

 ――――

 「民」がマイノリティーである異民族・チベット人であることは、全国に張った「結界」を有効に機能させることになりました。中国のネット世論が「民」を非難する論調一色なのは削除職人が「異論封殺」のため奮闘しているからばかりではありません。

 中国は総人口における漢族の割合が90%以上を占めます。その圧倒的多数派には「自分たちこそ世界の中心」という「中華思想」があり、異民族が分離独立を企てるという構図には全く共感できなかった、むしろ怒りを覚えたという要因の方が大きいと思います。

 また、教育によって「政府はこれまで僻地で異民族の住むチベットの経済発展に非常に力を入れてきた」という認識を持っていることも無視できません。当局発表に接して「恩を仇で返すか」という反応を呼びやすくしたといえるかと思います。異民族が相手とあれば、治安部隊が武力行使に躊躇する可能性も低くなるでしょう。

 一方で、国際社会における中国の存在感が高まっているため、主要国が中国に対し強硬な措置に出られないと見切ることができたことは、中国当局による「六四モード」貫徹を楽にしました。「世界の工場」という現実や「13億市場」という幻想を想起させることで欧米諸国の踏み込みを甘く鈍いものにしています。

 特に、北朝鮮をめぐる六者協議においての影響力、経済的な抜き差しならない相互依頼関係などにより、本来主導者たるべき米国の中国に対する反発を限定することができたのは大きかったというべきでしょう。

 ちなみに、チベット人の抗議活動に対し、当局が「中共一党独裁体制を維持する上で看過できない事態」と認識した理由は、

 ●少数民族の分離独立運動という領土分割を招来する事態に発展しかねない。
 ●台湾併呑という至上課題に悪影響を及ぼす可能性がある。
 ●チベットが中国に対する資源・水源地帯である。
 ●ライバルであり領土紛争を抱えているインドによる浸透を許しかねない。

 ……などによります。

 ――――

 では中国当局が発動している「六四モード」を崩すことはできるか、という話になります。私のみるところ、不可能ではありません。ただし遺憾ながら、現時点では実現する可能性が高くないと言わざるを得ないと思います。

 チベット人をめぐる問題が国際社会の注目を集めたことで、ウイグル人の組織からも中共政権による様々な圧力や迫害、また殖民政策を非難する声明が出ています。

 ●「状況はチベット同様に深刻」亡命ウイグル人組織が会見(YOMIURI ONLINE 2008/03/22/03:09)

 こうした声にモンゴル人や回族など有力な少数民族も呼応すれば。……という見方があるかも知れませんが、非現実的な発想に過ぎないと思います。仮にそうなったとしても異民族間の有機的な連携が生じるとは考えにくく、中共政権が各個撃破して終了、ということになるでしょう。

 まずは圧倒的多数派である漢族の共感を得られませんし、現状がそうであるように国際社会の後押しもあまり期待できません。さらにいえば、チベット人の行動に対処した中国当局は、すでに各少数民族の不穏な動きを抑えるべく手を打っていることでしょう。

 可能性は低いものの、「六四モード」を崩すものあるとすれば、それは第一に「流出」、第二に「変質」だと私は考えています。

 実に簡単な話です。「流出」というのは武力弾圧シーン満載のインパクト十分な映像が海外メディアに報じられることです。武装警察や人民解放軍による実弾射撃や無差別掃射、搭載機銃を乱射しつつ群衆に突入する装甲車や歩兵戦闘車、戦車の列、そして「官」の容赦なき武力行使によって被弾して倒れ、あるいは血みどろになりながら介添えを受けたり急造担架で後送される「民」の姿。

 ――――

 要するに天安門事件並みの衝撃的な動画が1本あれば国際社会の空気もさすがに変わるでしょう。北京五輪ボイコットが現実味を帯びることにもなるかも知れません。今回この「流出」発生を防止できたというのは中共政権にとって天佑といっていいと思います。

 ただ仮に「流出」があって北京五輪がお流れ同然となっても、中国当局は「ああそうですか」と平然と受け流すと思います。当局を構成する「中共人」にとっては、特権を享受し得る中共一党独裁体制の維持が何よりも大切ですから。

 むろん実際に本格的な経済制裁となれば中国も大きな傷を負います。対外依存度は天安門事件当時より格段に高まっていますから、経済的な失血死状態に立ち至ることでしょう。もっとも命の値段だけは安い国です。「1億人が餓死したって……」という観念が「中共人」にはありますから、対内的な政治的引き締めを強化し、これを「国難」と位置づけることで逆に求心力向上を図ろうとすることでしょう。

 とはいえ、これによってそれまでの成長路線は一頓挫。もし党中央が求心力を維持できず、独裁体制を保障すべき武力がむしろ分散化する方向へと進めば、「六四モード」どころではなくなります。当ブログのいう「八國聯軍」フラグが立つことになるかも知れません。……まあ、現実には五輪ボイコットはあっても本格的な経済制裁は望み薄でしょうし、中国もそれを読み切っているからこそ居直っているのでしょうけど。

 毎度強調していることですが、国際社会にとって、いまや中国は実に始末に負えない、扱いに困る存在になっています。対中制裁を行うに際しては諸々のリスクやデメリットが伴うことは不可避ですから、主要国も相応の覚悟と決意が必要なのです。

 ――――

 一方の「変質」、これは「六四モード」ばかりか中共政権そのものを根底から揺さぶる事態に発展するかも知れません。ただしそれだけに実現する可能性は低いです。「変質」とは、「チベット人が中共政権に異議申し立てを始めた」という今回の事件、当局視点では「チベット人の一部が分離独立を狙い動き出した」ということになりますが、この「チベット人」が「漢族」に転化してしまうことです。

 これについては前回のエントリーでも言及した通りです。

 ●【チベット】漢族参加なら本当の「祭」になるかも。(2008/03/20)

 チベット鎮圧軍の司令部が置かれているとされる四川省・成都市だけでなく、チベット人がある程度まとまって暮らしている中国国内の大都市において、今回の事件で反発を感じた漢族が、些細な出来事を端緒にチベット人を襲撃する事態が発生することです。

 襲撃事件が発生すれば、圧倒的多数派の漢族が喧嘩に勝つに決まっています。ただし当局にしてみればこれは民族衝突に端を発した都市暴動ですから、騒ぎを収拾するために治安部隊を繰り出さなければなりません。いきおい、漢族同士の官民衝突が発生することとなります。

 ――――

 この流れが2005年春の反日騒動のように、ネットなどを媒介に各都市へ波及すれば「変質」が始まります。「チベット人の一部が分離独立を狙い動き出した」が「チベット人排斥運動」に転じてしまい、下手をすると全国各地で都市暴動。

 超格差社会や「官」の横暴に対する憤懣がありますから、一端火がつけば炎上する素地は漢族の間にも十分に整っていますし、現に過去の都市暴動の実例がそれを証明しています。

 反日騒動の際のデモ行進のように「チベット人排斥運動」が全国各主要都市で発生、となれば当然ながら治安力が不足しますから、当局は実弾射撃を含めた無理を対応をしなければならなくなります。そのことが事態をさらにエスカレートさせることになるでしょう。「流出」発生の可能性も大です。

 中国当局にとっての「反体制分子」はたぶんすでにネット上でそういう工作活動を展開しているかと思います。もちろん中国当局はそういう危険も念頭にあるでしょうから、チベット人に対して漢族が不必要な敵意を抱かないよう努めていることでしょう。水面下での攻防戦はすでに開始されている、といったところです。

 ただし中国当局にとってこれは匙加減がなかなか難しい作業でしょう。現今の「鎮圧の対象」である「チベット独立を狙って破壊活動を展開するダライ・ラマ集団」の悪辣さを際立たせるため、当局は自らに都合良く編集された「事件真相」(「事件の真相」……天安門事件バージョンと同じ名前なのにワロタ)のような映像や記事をしばらく垂れ流し続けなければなりません。しかし、国民がそれによって必要以上に煽られ、チベット人への敵意を強めてしまっても困るのです。

 もっともこの「変質」、展開としては面白いのですが、チベット人と漢族との間の都市部における「些細な発端」という偶発的な要因によります。要するに運頼み。これが実際に発生するようなら詩的感覚で「中共政権の天命も尽きた」とみていいかも知れません(笑)。

 ――――

 結論、というほどのものはありません。今回の事件で「六四モード」が現時点まではかなり効果的に機能しているようにみえます。今後もしばらくはこの態勢を続けつつ、国際社会の反応と時機を選んで対内的には北京五輪ムードを盛り上げていくのだろうと思います。

 むろん上述したように、仮に国際社会が対中制裁に踏み切ったとしても、中国は平然と居直って逆ギレさえしてみせることでしょう。その可能性も織り込んでいるからこそ「六四モード」なのです。

 現状のままだと劇的な展開はちょっと期待できそうにありません。ただ北京五輪が開幕した際、フランス外相が提唱したような「開会式ボイコット」が主要国によって実施されれば、物価高・株安といった経済状況や台湾をめぐる要因を絡めつつ、中国国内で何らかの化学変化を誘発することになるかも知れません。これも何やら雲をつかむような話ですけど。

 以下は余談になるかも知れませんが、国際社会においては日本の姿勢がひとつの目安として扱われる可能性があります。4月の中国外相来日に続き5月に胡錦涛・国家主席の来日を控えています。「チベット人大虐殺」の最高責任者である胡錦涛を予定通り国賓待遇で普通に受け入れてしまえば、中共政権をいよいよ勢いづかせることになるでしょう。

 欧米がどうこうではなく、むしろ欧米が日本の対応に注目するといったところです。政府の一挙一動が問われているといってもいいかと思いますが、この大切な時期に価値判断が定まらないうえ事なかれ主義にして指導力に欠けた人物を首相に戴いていることは、まことに不幸だといわざるを得ません。

 同じ議長でもダライ・ラマ十四世と会見したベロシの姐御と「傭兵」では正に天と地の差がありますし……。orz


(シリーズ:チベット弾圧2008【完】)



コメント ( 19 ) | Trackback ( 0 )





シリーズ:チベット弾圧2008【3】へ)


 きょうは世間的には休日のようですね。ふだんは香港の暦メインで仕事をしているのと、このところ外出できないでいたので先刻ようやく気付きました。

 療養中は皆さんから温かいコメントやメールを寄せて頂き本当にありがとうございました。m(__)m

 まだ完全復活という訳ではありませんが、おかげさまで体調は回復基調にあります。病は気からというように、チベットの騒乱に「これは天安門事件以来の大事」と血が騒いでブログに復帰したのがかえって良かったのかも知れません(笑)。

 これからも事態の進行に置いていかれないように、ゆるゆると更新を続けていくつもりです。……とはいえ、放置しているうちに全人代は終わってしまいましたし、他にも気になる話題がある上に、物価高などの問題も手つかずのまま。

 そして土曜日には台湾の総統選挙です。米国はすでに2コ空母戦闘群と原潜4隻を台湾近海に展開させて万一に備えていると香港では報道されています。対する中共政権、実は民進党の謝長廷に辛勝してほしいと考えているのではないかと私は勘繰っているのですが、どういう結果になることやら。

 とにかく今年は年初からイベント続きで気を抜くヒマもない有様です。道楽者としては有り難いことではありますけど(笑)。

 ――――

 今日は休日ということに安んじて私ものんびりとやらせて頂きます。何はともあれチベット問題。チベット自治区のラサ市は「進駐軍」のもと落ち武者狩りが続いているようですが、同自治区の他の地域の情勢は不明。

 そして、四川省や甘粛省のチベット人居住地域における抗議行動はいまなお終息していない模様です。

 ●チベット人の抗議やまず=甘粛・四川で新たなデモ-中国(時事ドットコム 2008/03/19/21:35)

 甘粛省の抗議行動の最新映像はこちら。騎馬隊も登場する勇壮ぶりです。香港紙の報道によると、山間部に住むチベット人たちが馬に乗って一気に山を駈け下り、平野部に集結していた住民と合流して目標に突入したとのこと。






 こうした事態を受けて、日本政府の対応も早くなりました。

 ●青海、甘粛、四川省入りも注意喚起=チベット暴動拡大で日本大使館(時事ドットコム 2008/03/19/20:30)

 まあ注意を促すだけですけれど、何もしないよりはいいですよね。先日のラサのときは私がうっかりしていたところ「dongze」さんがコメント欄にてフォローして下さった(助かりました)のですが、今回は抜かりなくここで外務省からの通知を出しておきます。



 ●中国:チベット自治区周辺地域の治安悪化に伴う注意喚起 (海外安全ホームページ 2008/03/18)


 1.チベット自治区ラサ市では、3月14日に僧侶と警察との間で衝突が発生し、死傷者が出る等情勢が悪化しましたが、チベット自治区周辺の青海省、甘粛省及び四川省の一部地域においても、騒ぎが拡大しているとの情報があります。また、青海省当局関係者は、観光客の受け入れを停止すると述べています。

 2.青海省、甘粛省及び四川省に渡航を予定されている方及び現地に滞在されている方は、デモや騒動が起きている危険地域には立ち入らず、最新情報を入手する等、安全確保に努めてください。また、危険な状況に遭遇した場合は、在中国日本国大使館又は在重慶日本国総領事館に御連絡ください。

 3.現時点で、デモ等の発生が報じられている地域は、甘粛省蘭州にある西北民族大学、甘粛省のチベット自治州、青海省同仁県及び四川省アバチベット族・チャン族自治州等です。

(問い合わせ先)
 ○外務省領事局海外邦人安全課(テロ・誘拐に関する問い合わせを除く)
  住所:東京都千代田区霞が関2-2-1
  電話:(代表)03-3580-3311(内線)5139

 ○外務省領事局邦人テロ対策室(テロ・誘拐に関する問い合わせ)
  住所:東京都千代田区霞が関2-2-1
  電話:(代表)03-3580-3311(内線)3678

 ○外務省海外安全相談センター(国別安全情報等)
  住所:東京都千代田区霞が関2-2-1
  電話:(代表)03-3580-3311(内線)2902

 ○外務省 海外安全ホームページ: http://www.anzen.mofa.go.jp/

 ○在中華人民共和国日本国大使館
  住所:北京市建国門外日壇路7号(本館)
  電話: (86-10) 6532-2361
  FAX : (86-10) 6532-4625
  ホームページ: http://www.cn.emb-japan.go.jp/index_j.htm
  住所:北京市東三環北路2号南銀大厦2階(領事部)
  電話: (86-10) 6410-6970
  FAX : (86-10) 6910-6975

 ○在重慶日本国総領事館
  住所:重慶市渝中区鄒容路68号 大都会商厦37F
  電話: (86-23) 6373-3585
  FAX : (86-23) 6373-3589
  ホームページ: http://www.chongqing.cn.emb-japan.go.jp/index_j.htm




 チベットはともかく、四川省となると在留邦人の数も多いことでしょうから心配です。特に省都である成都には弾圧軍の総司令部が置かれたとのことで、また市内にチベット人居住区もあるため武装警察や軍隊が要所要所に配備されていつもよりは緊張した雰囲気になっているようです。

 余計なお世話かも知れませんが、現地で得られる情報量が私にはわかりませんので関連報道を並べておきます。まあ自分の経験に照らしても、現地は往々にして日本で案じているほどピリピリしていないものだとは思いますが、念のため。



 ●チベット自治区管轄の成都軍区、「最高レベル」警戒態勢に(YOMIURI ONLINE 2008/03/18/20:10)

 【香港=吉田健一】中国チベット自治区ラサで起きた大規模暴動で、18日付の香港紙・明報は、同自治区を管轄する人民解放軍の成都軍区が、17日から最高レベルの警戒態勢に入ったと報じた。チベット自治区駐留部隊の応援のため、すでに成都軍区内の別部隊を同自治区に投入したという。

 同紙などによると、中国政府は暴動制圧に解放軍は関与していないと主張しているが、報道の映像などには解放軍の新型装甲兵員輸送車などが映っており、実際には解放軍が出動していたとの見方が強い。

 中国の軍事問題に詳しい軍事評論家の平可夫氏は、「装備などから、いずれも成都軍区最精鋭部隊の第149緊急展開師団と第52山岳歩兵旅団が出動したと見られる」と指摘している。

 ――――

 ●チベットへの玄関口で厳戒 成都、小銃持ち警官巡回(共同通信 2008/03/19/19:07)

 【成都(中国四川省)19日共同】中国チベット自治区への玄関口となっている四川省成都市では、ラサでの暴動後、チベット民族が多く集まる地区に武装した警官が集中、19日も自動小銃の引き金に指をかけた警官が数人ずつで町を巡回し、厳しい警戒態勢が敷かれた。

 市中心部に近く、チベット料理店や土産物店が並び、チベット民族も多く住む一角。警察がこの地区に通じる道をすべて封鎖し、車両の通行は一切禁止されている。道路には10数メートルおきにパトカーや武装警官を満載したバスがとまり、歩道にも多数の警官が立つ。

 道を歩く人々の合間をぬうように、小銃を握り締めた警官やバイクに乗り周辺を監視する警官がひっきりなしに行き来する。チベット仏教の僧侶と立ち話をする人がいると、私服の公安当局者とみられる男性が近づき、会話に聞き耳を立てる。

 あるチベット民族の男性は「ここでは何も起きていないのに、やり過ぎだ。本当に怖い」とおびえた様子だった。

 ――――

 ●四川省・成都、チベット人への恐怖あおるデマが流布(YOMIURI ONLINE 2008/03/19/21:11)

 【成都(中国四川省)=加藤隆則】チベット人の反政府デモが波及した四川省の省都・成都で、チベット人への恐怖心をあおる流言が流布、社会不安が広がっている。政府は19日付地元各紙を通じ、意図的な扇動を信じないよう呼びかけているが、多くの庶民は政府の言葉に耳を傾けていない。

 地元紙によると、同市南部で18日、チベット人が路上で刀を振り回す事件が発生した。ネットでは事件直後、民族衣装のチベット人が刀を手にした無関係の写真とともに、「2人死亡」の情報が流れ、現場付近では「ラサの暴動と関連がある」とうわさが広まった。

 一方、市内全域に「銀行がチベット人に襲われた」「バスで爆発があった」などのデマも飛び交い、「外出禁止」を命じる外資系企業も。地方出張中の成都駐在日本人会社員(44)は、「現地スタッフから『危ないから戻らない方がいい』と言われた」と電話取材に答えた。同市内中心部は厳戒態勢で、一層庶民の不安をあおる形となった。

 政府は18日深夜、「被害は軽症1人」「バスの乗降をめぐるトラブル」と公表。民族対立をあおる流言を警戒しているが、現場近くの女性店員(34)は「政府は信用できない。少なくとも3人は死んだ」と取り合っていない。

 ――――

 ●「うわさ流せば厳罰」 中国公安が市民に警告(共同通信-MSN産経ニュース 2008/03/19/17:34)

 中国四川省成都市の公安当局者は19日までに、市民に対し、チベット問題をめぐる治安当局とデモ隊の衝突などについて「うわさ、デマを流した場合は容赦なく厳罰に処する」と地元メディアなどを通じ警告した。

 地元紙、四川日報(電子版)によると、公安当局は「一部の人物が悪だくみを図り、(チベット問題について)騒ぎ立てたり、事実をでっち上げてデマを広めている」と指摘。「どこで爆発があったとか、銃撃戦があったとか、何の根拠もないデマだ」と断じた。(共同)



 これは平時でも日本でも同じことですが、危ないとされているところに行かない限りはまあ大丈夫、といったところではないでしょうか。強盗に目をつけられたのなら身の不運を呪うしかありませんけど。

 ただ成都の場合は大都市ですから、過去のケースがいずれもそうであるように、ふとした出来事を端緒に都市暴動に発展する可能性があるのは怖いところです。当局が治安部隊を駐留させてまで警戒しているその対象はチベット人なのかどうか。むしろチベット人が騒ぐというより、チベット人絡みで事件が起きることに備えているのかも知れません。

 例えばちょっとしたことで漢族とチベット人の間でいさかいが生じて、多数派である漢族のグループがチベット人居住区を襲撃する、という偶発的事件の方が現実味があるように思います。漢族がどっと繰り出す、治安部隊が鎮静化に乗り出す、はい官民衝突都市暴動。……という筋書きです。

 漢族は漢族で様々な憤懣をため込んでいて、可燃度が決して低くないことは過去の都市暴動のケースが示す通りです。必要以上に兵力を展開させているときですから、「官」が対応を誤ると騒動が予想以上に大きくなる可能性があります。

 中共当局はすでに「六四モード」に入っていますから、チベット人の決起に対しては殲滅するのみ、と覚悟ができている筈。では都市部で何を恐れるかといえば、住民の圧倒的多数派である漢族を巻き込んだ事態に発展することなのかも知れない、と考えたりしているところです。

 2005年春に「反日騒動」が意外な広がりをみせたとき、反政府運動に転化するのを恐れた当局が慌てて事態の収拾に走ったのと同じで、チベット人に限定されている現在の騒ぎが何かのきっかけで漢族に飛び火することこそが中共政権の懸念材料なのではないかと。何たって超格差社会ですし、繁華街の中に恰好の広場があったりする街ですし。

 ――――

 チベット問題に話を戻しますと、四川省での騒乱で射殺されたチベット人の写真を「Tibetan Centre for Human Rights and Democracy」(THCRD)がウェブサイトで公開しています。中国当局が銃器を使用した証拠です。URLは以下の通りですが、画像が画像ですからアクセスする方は御注意下さい。

 http://www.tchrd.org/press/2008/pr20080318c.html

 こういう「証拠」が出回り始めたということも関係しているのかどうか、中国に対する国際社会の批判が少しだけ強まった様子です。あまり期待できませんけど。

 ●中国はダライ・ラマと対話を=五輪ボイコットは求めず-米高官(時事ドットコム 2008/03/18/23:50)
 ●チベット騒乱 米国務、国防の高官が対中非難(MSN産経ニュース 2008/03/19/18:35)
 ●EU代表団受け入れ前向き チベット暴動で中国大使(共同通信 2008/03/19/08:53)
 ●豪首相、人権問題を訪中時に提起・チベット騒乱(NIKKEI NET 2008/03/20/02:20)
 ●中国首相「ダライ・ラマと対話の用意も」・英首相と電話(NIKKEI NET 2008/03/20/03:34)

 日本も首脳会談や外相会談でチベット問題を提起するそうです。それより胡錦涛の来日を延期する方が先だと私は思うんですけどねえ。

 ●外相会談でチベット議題(NIKKEI NET 2008/03/19/22:02)
 ●チベット問題、日中首脳会談で提起 高村外相表明(asahi.com 2008/03/20/00:52)

 「議題にする」といっても、どうせこんな感じでしょうし。



 ●首相「冷静に適切な対応を」 チベット騒乱(MSN産経ニュース 2008/03/18/22:18)

 福田康夫首相は18日夜、中国西部のチベット自治区で起きた大規模騒乱が周辺にも拡大していることに対し、「憂慮している。(中国当局とデモ参加者の)双方が冷静に適切な対応を取ってほしい」と述べ、自制を求めた。首相官邸で記者団の質問に答えた。



 いやこれは日本だけでなく、現時点では欧米もポーズだけというかアリバイづくりというか、「とりあえず批判はしたから」というスタンスのように思います。

 ダライ・ラマ十四世はチベット人に非暴力を訴えるとともに中国側との対話を求めていますし、対話するよう中国側に求める声も国際社会において確かに出てはいます。しかし当の中国側は「あとは殲滅するのみ」の「六四モード」ですし、対話の余地なしというのが本音でしょう。

 ●「血みどろの戦い」とチベット自治区書記(共同通信-MSN産経ニュース 2008/03/19/20:16)
 ●「ダライ・ラマの主張はウソ」 温家宝首相が会見で激しく批判(MSN産経ニュース 2008/03/18/15:56)
 ●「ダライ・ラマは分裂活動やめていない」中国が反論(asahi.com 2008/03/20/00:51)

 ……と早くも公言しているので実現は困難でしょうし、そもそも中国にしてみれば、

「チベット亡命政府と対話する」

 という対等に向き合う形の場に臨むことなど言語道断。万にひとつ対話の機会が実現したとしても、何の成果もなく終わることと思います。

 ――――

 最後に、前回の話に中国側から早くも反応が飛び出しています。

 ●仏外相の「開会式ボイコット」提案、中国国連大使が不快感(YOMIURI ONLINE 2008/03/19/11:15)

 ……このリアクションの速さから察するに、中国側は「開催式ボイコット」の実現にある程度の現実味を感じているとともに、「それだけは困る」という気持ちが強いのでしょう。

 いやーそんなに嫌がられてしまうと、いよいよやりたくなってしまうではありませんか(笑)。もちろん理想的には、あくまでも「中国以外の国で五輪開催」と「胡錦涛の来日中止」なんですけどね。


シリーズ:チベット弾圧2008【5】へ)




コメント ( 17 ) | Trackback ( 0 )





 今回は話題がやや散漫に流れるかも知れません。

 まずは前回の続報のようなものを。……といっても遺憾ながら「親中紙」の件ではなく、

「相手の嫌がることをする必要はない」

 をモットーに無定見かつ無為無策にして事なかれ主義という奇特な路線まっしぐらなフフン♪率いる「媚中派内閣」の方です。


 ●チベット暴動:5月の胡主席来日に影響ない…外務次官(毎日jp 2008/03/17/19:41)

 外務省の藪中三十二事務次官は17日の記者会見で、中国チベット自治区での暴動が5月の胡錦濤国家主席来日へ及ぼす影響について「来日と関係ない。影響はないと思う」と否定した。




 ……と、例によって相手を見極めずに甘いことを言ってしまったところ、果たせるかな翌日には早くもリアクションです。



 ●チベット騒乱「胡主席訪日に全く関係ない」・中国大使館参事官(NIKKEI NET 2008/03/18/23:02)

 在日中国大使館のトウ偉参事官は18日、中国チベット自治区での騒乱が、5月に予定する胡錦濤国家主席の訪日に与える影響について「全く関係はない。チベットは中国の内政問題だ」と述べた。東京・元麻布の同大使館内で日本記者団に語った。




 正に阿吽の呼吸ですね。しかも言葉尻をとられたばかりか増長させてしまっています。発言者は大使でも公使でもなく、そのまた下の参事官なんですから。

 増長どころじゃありません。フフン♪以下がずっと甘やかし続けてきたからニッポンは舐められてさえいます。中国毒餃子事件なんてその好例じゃないですか。

 ●【毒餃子】トップの腰砕けを見透かされ、中国に多寡をくくらせた。それが全て。(2008/02/29)

 ――――

  余談のようになりますが、私は病弱なもので複数のお医者さんにかかりつけ状態。定期検診を義務づけられたりしているのですが、たまたまこの中国側による毒餃子会見の数日後に病院へ行きました。

 診断してくれるのは物静かで温厚そのものとしか表現しようのない、包容力に満ちあふれた年配のお医者さんです。その世界では有名な人らしいのですが権威風なんて少しも吹かせません。お人柄なのです。

 私などは接していると何やら癒されてしまい、つい魅き込まれるようにしていつも余計に雑談しているうちに、私が「御家人」であることを知る数少ない一人にしてしまいました。

 ……で、この日も恒例の世間話となり、予定調和のごとく話題が毒餃子会見に落ちました。と思ったらその先生が温顔を保ったまま、

「あれにはムカつきましたねえ」

 と言ったので私は絶句。内心ぶったまげつつ、

「えっ……先生も『ムカつく』なんて言葉をお使いになるんですか?」

「使うときは使いますよ。あれはもうムカつくとしか言いようがないじゃありませんか」

 と、しきりに頭を振っていました。私はあの会見に怒りとやるせなさを覚えたのですが、このお医者さんも同様だったらしく、「ムカつく」という柄にもない言葉でそれを表現したのです。

 その毒餃子問題の続報も届いています。



 ●中国から追加資料 ギョーザ中毒事件(MSN産経ニュース 2008/03/18/10:23)

 岸田文雄国民生活担当相は18日午前の記者会見で、中国政府が、日本政府の要求に応じ、中国製ギョーザ中毒事件に関する資料を追加提供したことを明らかにした。追加資料は今月13日に届いたが、日本側の要求通りの項目はそろっていないという。岸田氏は「資料の内容を精査し、不十分ならば引き続き提供をお願いしたい」と述べた。




 これ、「舐められている」のでなかったら何なのでしょうか。このまま事件をウヤムヤにしてしまおうという中国側の意図がミエミエではないですか。それにも増して「ムカつく」のは日本側の閣僚発言。
「お願いしたい」って何ですかその丁重な姿勢は。orz

 現在進行中のチベット問題にしても以下の通りです。



 ●中国政府、日本大使館員のラサ入りを許可せず(YOMIURI ONLINE 2008/03/18/19:48)

 中国チベット自治区ラサでの暴動をめぐり、中国政府が、邦人保護を目的とした日本大使館員のラサ入りを許可しなかったことが分かった。高村外相が18日の参院予算委員会の答弁で明らかにした。外相は「オープンにした方が中国のためにもなる」と述べ、中国の対応を批判した。

 外務省によると、暴動発生直後の15日、在北京の日本大使館が「現地邦人保護や安否確認のため、大使館員をラサに派遣したい」と中国側に許可を求めたが、中国側は「チベット問題は中国の内政問題だ。外交官の現地入りを許可することは困難で、外国人の被害もない」と回答した。

 外相は18日の記者会見で「中国はなるべく透明にして、『中国の言うとおり、中国政府は乱暴なことはしていない』と国際社会がわかるようにした方がいい」と指摘した。
(後略)



 中国側の対応もさることながら、この情報を3日も明かさなかった日本政府の姿勢はどうでしょう。国民の安全を保障すべき政府としては一種のサボタージュというべきではないかと思います。この点は毒餃子事件と全く同じ。一方で、マスコミのツッコミの甘さも怠業として責められるべきでしょう。……頼りにならない連中ばかりですね。

 むろん、やるべきことをしっかりとやっている人もいます。ただ惜しいかな、目下のところ「在野」同然の身なんですよねえ。



 ●チベット騒乱めぐりペマ氏と会談 安倍前首相(MSN産経ニュース 2008/03/18/12:14)

 中国西部のチベット自治区で起きた騒乱で多数の死者が出ていることを受け、安倍晋三前首相は18日午前、チベット出身でダライ・ラマ法王アジア・太平洋地区担当初代代表のペマ・ギャルポ桐蔭横浜大教授と国会内で会談し、「チベットの人々の人権が確保されるよう努力したい」と述べ、騒乱を人権問題として重視していく考えを示した。

 会談で、ペマ氏は騒乱の状況を説明した上で「中国政府による本当の弾圧はこれからだ。わざとチベット人を挑発して、戒厳令を敷き、なるべく外部の人をチベットに入れさせない魂胆だ」と指摘。「国際社会が関心を示してもらえることは大きな力になる」と強調した。

 安倍氏は「世界の目がチベットに行き届くようにすることが大切だ。世界の報道機関をチベットに受け入れるよう中国側に働きかけていきたい。中国にはオリンピック開催国にふさわしい対応をしてもらいたい」と述べた。

 会談後、ペマ氏は記者団に「民族自決権、人権は世界の普遍的な価値観だ。北朝鮮に対し言えることを中国に対して言えないようなダブルスタンダードがあってはいけない」と政府への要望を語った。(後略)




 もちろん、これは「在野」だからこそできたことかも知れず、首相在任中に今回の事件に出くわしても同じことをやれたかどうかは微妙なところです。しかし、安倍前首相はインド訪問時に強く要望してパール判事の遺族との対面を果たした人ですから、李登輝さんが来日したときのように真偽はともかく「密会説」をマスコミに流させるか、「名代」にペマ教授を訪ねさせるくらいのことはしてくれた可能性があると思います。

 言うまでもなく、フフン♪こと福田首相には真似できない芸当です。……というより、その信条に照らしてまず行おうとすること自体ありえない、というべきですか。

 ところで「舐められている」という話では、こういう出来事も起きています。


 ●異例の日本メディア外し 中国首相、日中関係触れず(共同通信 2008/03/18/17:30)

 【北京18日共同】温家宝中国首相の18日の記者会見で、日本メディアの記者が指名されず、首相も日中関係について言及しなかった。会見は例年、中国と日米欧など海外の主要メディアの質問を受け付けており、日本メディアが質問できなかったのは極めて異例。

 日中間ではギョーザ中毒事件や東シナ海ガス田問題が懸案となっている一方、胡錦濤国家主席の5月訪日を調整中。温首相の発言が注目されていたが、指名されなかった理由は不明。

 中国中央テレビは18日朝、首相会見の予告の中で日中関係などについて発言すると伝えていた。




 温家宝ですか。なるほどあの陰険な温家宝ならやりそうなことです。大体こいつは日本関連では前科持ち。というよりもう前科だらけですから。ほらこの通り。

 ●【温家宝来日】言いたい放題やりたい放題!それでも日本は拍手喝采。orz(2007/04/13)
 ●【温家宝離日】まず塩をまく。それからちょっとだけ考える。(2007/04/14)

 ●温家宝の卑劣な行為は断固非難!フフン♪は面目躍如。orz・上下(2007/12/29)
 ●何も話すな何も決めるな。観光に撤しろ。>>フフン♪・上下(2007/12/30)

 ――――

 われらがニッポンがかくも重ね重ね愚弄されています。チベット問題そのものに対する意思表示も必要です。……という訳で、これはもう
「北京五輪でのボイコット」しかないな、と考えた次第。

 ただし、実際はそう甘い状況ではありません。

 ●【チベット】相変わらずな中共政権。処方箋ある?(2008/03/16)
 ●【チベット】人民戦争だ!当局は「六四モード」突入。・上下(2008/03/17)

 ……など最近のエントリーで紹介したように、

 ●欧米諸国が「北京五輪不参加」という挙に打って出る可能性は目下のところ極めて低い。
 ●中国もそう見切って多寡をくくり、居直って平然と流血の弾圧を続けている。

 というのが私の見方です。
「ちょっとオシャレな北朝鮮」という一党独裁体制の中共政権が、「世界の工場」という現実と「13億市場」という幻想を巧みにチラつかせて国際社会が断固たる措置に出ることを阻むでしょう。事実、現時点まではそれに成功しています。欧米諸国も日本も北京五輪には参加すると揃って表明していますね。

 そもそも遊泳術の巧みさにしても図体の大きさにしても、中国の存在感は北朝鮮どころではありません。国際社会にとってもそれだけ厄介な存在ということです。

 ――――

 いやいや、だからこそ「北京五輪でのボイコット」ということになります。ええ、「北京五輪ボイコット」ではなく「北京五輪
でのボイコット」。大手メディアが揃って報じていますから御存知の方も多いでしょうが、フランスから妙案が持ち出されました。


 ●五輪開会式の不参加検討を 仏外相、EUに提起へ(共同通信 2008/03/19/00:19)

 【パリ18日共同】フランスのクシュネル外相は18日、パリで記者団に対し、中国チベット自治区の暴動が続けば、欧州連合(EU)は北京五輪開会式への不参加を検討すべきだと述べた。五輪競技のボイコットには否定的な見解を示した。

 外相はフランス政界の一部などから出ている「開会式への不参加」の意見について、「競技自体をボイコットするよりは(外交などへの)悪影響が少ないだろう」と話し、今月28、29両日にスロベニアで開くEU外相理事会に議題として提起することを明らかにした。

 ノーベル平和賞を受賞した国際緊急医療援助団体「国境なき医師団」の共同創設者でもあり、国際的な人道支援活動に長年携わってきたクシュネル外相は、14日のブリュッセルでの記者会見で中国側に自制を求め、「北京五輪が近いことにも配慮し、慎重に対応するべきだ」と警告していた。




 私自身は、いまになっても北京五輪が開催されるということに相変わらずリアリティを感じられないままです。ただ、日本をはじめ世界のアスリートの多くがオリンピックを目標に精進を重ねてきたことを思うと、不参加という形でその機会を奪ってしまうのは選手たちにとって余りに酷ではないかと考えています。

 ですからIOCの規約がどうなっているかは知りませんが、私にとって2008年夏のオリンピックは、理想的には中国が何らかの事情で開催不可能となり、代替国で行われること。

 もしそうならずに本当に北京でやるということであれば、不本意ではありますが「競技環境が一応条件を満たしている&食材自前」という前提で(選手村滞在期間を極力短縮するなどリスク回避にも努めて)選手たちに頑張ってもらうしかない、といったところです。

 現時点ではその不本意な方向に事が進みそうなのですが、それならそれでこの「開催式ボイコット」案は恰好のアイデアではないかと。

 出し物の内容を国家機密並みの扱いにして当局が力を入れて準備している開会式を日本や欧米など主要国にボイコットされるとなれば、これはもう中国人がいちばん嫌がる「ホストの面子丸潰れ」状態そのもの。オリンピックの歴史にも刻まれる出来事となりますし(笑)、国威発揚のイベントなのにかえって逆効果となり、中共政権の求心力低下につながるかも知れないのです。

 放っておいても観客の民度が民度ですから、競技会場をサクラで埋め尽くさない限り国際社会で赤っ恥をかくことは必定。これに「開会式ボイコット」が加われば正に中共政権にとって忘れることのできない晴れ舞台となることでしょう。「中華民族の復興」を象徴するイベントとしてこれ以上のものはまず望めません(笑)。

 どうしても北京でやるというなら、私はこの「開会式ボイコット」に一票。五輪後のワクテカ感が増すことにもなりますから、ぜひ実現してほしいものです。

 ……と考えてみたのですが、いかがでしょうか?




コメント ( 17 ) | Trackback ( 0 )





シリーズ:チベット弾圧2008【2】へ)


 えー「メタボエントリー」とでも申しましょうか、無駄に長いばかりで中身は貧弱にしてお粗末、という羞恥プレイを前回してしまいました。orz

 そんな前回にもかかわらずコメントを寄せて下さった「名無しで失礼」さんによる情報をちょっと拝借。

 今回は始末書のつもりで短く切り上げます。



 ●Unknown(名無しで失礼) 2008-03-18 08:25:31


 御家人さん、香港人が声を上げましたね。

 http://www.47news.jp/CN/200803/CN2008031701000776.html

 それから、くれぐれも請�多保重。




 「名無しで失礼」さん、良ネタを御提供下さった上に優しい言葉までかけて頂きまして本当にありがとうございます。m(__)m

 お察しの通り不毛な長文で消耗してしまいました。これからは気を付けます。

 ……さて、「名無しで失礼」さんから頂戴した良ネタは以下の通りです。



 ●中国政府が取材妨害と批判 外国人記者クラブが声明(共同通信 2008/03/17/23:19)
 http://www.47news.jp/CN/200803/CN2008031701000776.html

 【北京17日共同】北京の「中国外国人記者クラブ」(メリンダ・リュウ会長)は17日声明を出し、中国政府がチベット自治区をはじめとするチベット民族居住区で外国人記者らの取材を妨害していると批判、現場での取材を直ちに認めるよう求めた。

 声明は、同自治区や甘粛省などで外国人記者らが強制的に退去させられたケースが20数件に上ると指摘。「取材活動の妨害は中国の国益に反し、五輪開催国への国際社会の期待に背く」と述べた。インターネットや国際放送への検閲も取材活動を妨げていると指摘した。

 また、同自治区の暴動を取材するためラサに滞在していた香港メディアの記者10数人が17日、退去処分を受け、香港記者協会が抗議声明を出した。

 香港のTVBなどによると、17日未明、記者の滞在先のホテルに当局者が訪れ「ラサでの取材は違法だ」として、同日午前の飛行機で退去するよう命令。映像や写真は消去され、当局が用意した航空券を渡され、飛行機に乗せられたという。




 香港各紙が早速キレまくっています(笑)。

 最大手紙『蘋果日報』はチベット報道のトップがこの「メディア締め出し」事件。中共お追従路線の論調を張った『東方日報』がその翌日にガラリと旗色を改めて当局批判に回ったのも、ひょっとするとこの件が最大の原因なのかも知れません。その弟分たる『太陽報』も以下同文。

 『明報』に至っては記事1本では気が済まなかったのか、社説で改めてこの事件について論評するという怒髪衝天ぶり。直接この事件にふれなかったヘタレは『星島日報』くらいのものです。……いや、その『星島日報』も当局発表を紹介する記事でこっそり八つ当たりしている気配が。

 ……で、「香港各紙」と銘打った以上、
中共政権の広報紙たる親中紙も例外ではなかったのです。『大公報』はAFP電ということで「中国外国人記者クラブ」の声明を掲載していますし、『香港文匯報』は声明の引き写しではあるものの「香港記者協会」の言い分をそのまま記事にしています。

 ●傳媒促批准入藏採訪(大公報 2008/03/18)
 http://www.takungpao.com/news/08/03/18/ZM-879021.htm

 ●六港傳媒記者被要求離藏(香港文匯報 2008/03/18)
 http://paper.wenweipo.com/2008/03/18/CH0803180015.htm

 ――――

 どちらも短い記事ではありますけど、北京を針先でチクリとやったことは紛れもない事実。

「親中紙といえどもプレスはプレス、記者魂くらい持ってらいっ!舐めたマネしやがってこん畜生が」(小声)

 と、ちょっとだけ啖呵を切った感じです。おやまあお前さん方も漢だねぇ。……と褒めてあげましょう。

「てやんでいっ、これでも昔ぁチッタァ輝いてた時期が……」

 などと『香港文匯報』あたりからは睨まれてしまうかも知れません。……ええ、確かに20年近く前に香港人から「ネ申」扱いされたことがありましたね。1カ月あるかないかの短い期間でしたけど、党中央に叛旗を翻して満堂の喝采を浴びた伝説が。

 ――――

 ……そう考えつつ今回のチベット問題に関する親中紙の報道ぶりを改めて眺めてみると、『大公報』『香港文匯報』の両紙とも外電をうまく使ったり、中国国内では掲載NGの新華社電などをどんどん記事にするなどしています。いずれも電子版(ウェブサイト)は中国国内からアクセス可能ですから、「抜け道」としてかなり機能しているのかも知れません。

 ひょっとすると天安門事件の規模に匹敵するかも知れない、とされる虐殺事件です。中国当局による信じ難い非道極まる蛮行を目の当たりにして報道者の血が騒いだのか、あるいは親中紙とはいえ、香港人から「媚中」呼ばわりされるまで身を堕としたくはないという矜持があったのか。……両紙とも縛りのある身ながら「広報紙」の枠をはみ出す際どい情報発信を続けているようでもあります。

 買いかぶり過ぎかも、知れませんけど。

 そういえば全人代(全国人民代表大会=なんちゃって国会)において「胡温体制」第二期がスタートしたばかりですが、その政府主要ポストを選出する投票作業(もちろん信任投票)に際し、『香港文匯報』は国家主席の胡錦涛からヒラ閣僚に至るまで、全員の得票結果(支持、不支持、棄権)を掲載しました。

 この数字、中国国内メディアだとテレビ中継を別とすれば、紙媒体でもネットでも出ていません。私の見落としでなければ……なので怪しいものですけど、あるいは国内ではNG扱いだったのかも知れません。

 ――――

 そんな折も折にこんな記事が。

 ●チベット暴動:5月の胡主席来日に影響ない…外務次官(毎日jp 2008/03/17/19:41)
 http://mainichi.jp/select/world/asia/news/20080318k0000m010061000c.html

 中国外交部の次官って、今度国務委員になった戴秉国か?……と思いつつ記事に目をやると、



 外務省の藪中三十二事務次官は17日の記者会見で、中国チベット自治区での暴動が5月の胡錦濤国家主席来日へ及ぼす影響について「来日と関係ない。影響はないと思う」と否定した。




 おいおい……。orz

 いや、別にブッシュ32号をどうこう言うつもりはありません。官僚なぞ所詮は政治に追い使われる存在である筈、ですから(そうであれかし……)。

 「政治」とは、主としてときの内閣ということになるでしょう。内閣といえば、フフン♪フフン♪フフン♪……。

「相手の嫌がることをする必要はない」

 がモットーのようですから、これはこれで終始一貫、見事に筋を通しているということはできます。問題は筋を通すことが誰の為になるか、という点でして。

 来日してしまえば共同文書の作成云々という難航しそうな作業が予定されています。しかも相手は国際社会を戦慄させた虐殺事件を引き起こしたばかりの張本人ではありませんか。

 いきなり
「来日とは関係ない」なんて言い切らずに多少含みを持たせてもいいのではないかと思うのですが。……なるほど、「それでは筋が通らない」ということになるんでしょうね。フフン♪

 ――――

 まあ、ようやく支持率を32号レベルまで持ってきたところです。伸びしろはまだまだ十分に残されていますから、ここは是非とも更に励んで頂きたい。……と言いたいところですが、それはそれでニッポンのためになりませんから困るのです。むう。


シリーズ:チベット弾圧2008【4】へ)




コメント ( 9 ) | Trackback ( 0 )





「上」の続き)


 本格的な治安部隊との衝突~流血の弾圧が発生し、事実上、国際社会に事件が衝撃的な形で認知されたのは3月14日の夕方以降(日本時間)ですが、当局はその日のうちに(たぶん当夜)声明を発表しています。

「ダライ・ラマ集団がラサで破壊活動を展開している。組織的・計画的な犯行である十分な証拠がある。当方は目下これに対応中、制圧の目算あり。かかる不埒な振る舞いに対しチベット住民から強い憤慨と非難の声が挙がっている」

 という趣旨の簡潔な内容です。ところが発表者が「チベット自治区責任者」となっており、具体的に誰なのか明確ではありません。「自治区の責任者」であれば行政機構の長である「自治区政府主席」(シャンパ・プンツォク)か、その上に君臨する独裁機構である自治区党委員会の筆頭職、つまり実質的なチベット自治区トップである「チベット自治区党委員会書記」(張慶黎)でなければなりません。

 で、この新華社電は「ラサ14日発」とされているのですが、上記2名はいずれも全人代のため北京に滞在中で現地にはいないのです。

 ●「新華網」(新華網 2008/03/15/01:22)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2008-03/15/content_7792268.htm

 では誰が?といえば、たぶん政務部門や党務部門ではなく、治安当局あたりなのだろうと思われます。……というのは、翌日朝に出た『西蔵日報』に自治区高級人民法院、人民検察院、公安庁の連名で「第一号通告」なるものが出されていることからの邪推です。15日の朝刊紙に掲載したのですから、14日夜には用意されていた公告ということになるでしょう。この公告、

 一、3月18日24時までに自首せよ。
 二、犯罪者をかばったり、かくまったりした者に対しては厳罰で臨む。
 三、市民による犯罪者の密告を奨励する。

 ……という内容ですが、その前段に、

「今回の殴打、破壊、略奪、放火、殺人行為を組織、計画,実行した者は一切の犯罪活動を止めて自首せよ」

 との一節がついています。
「殺人」とありますね。今回の事件において死者が出たことを認めた当局発表としてはこれが第一報ではないかと思います。

 ●『西蔵日報』(新華網西蔵頻道 2008/03/15)
 http://www.xz.xinhuanet.com/xizangyaowen/2008-03/15/content_12707105.htm

 ――――

 この15日の昼ごろから「死者が出ている」という地元当局筋のコメントを織り込んだ新華社電が配信されていきます。2名、7名と続報が入り、最終的には合計10名と報じられました。

 ●『大公報』電子版(大公網 2008/03/15/18:22)
 http://www.takungpao.com/news/08/03/15/ZM-878204.htm

 同日午後、全人代における記者会見では「すでに十数名の死者が」というAP通信記者のチベット情勢に関する質問が出ました。これに答えたのは最高人民檢察院の孫謙・副檢察長。やはり治安維持に連なる部門ですね。

「皆さんも報道で御存知かも知れませんが、ここ数日ラサ市では一部の僧侶が断続的に騒ぎを起こし、ラサに社会的動乱をもたらしています。これはダライ・ラマ集団が周到に計画し、チベットを(中国から)分裂させようと企み、チベット人民の正常かつ和やかで落ち着いた生活を破壊せんとする陰謀です。事件は目下鎮圧と処理の段階にあります」

 と孫謙は頼もしげに回答していますが、この中に「善か悪か?」「黒か白か?」「敵は誰か?」に対する中共政権の位置づけが全て出ています。もし
「動乱」という表現も当局見解とみなすのであれば、これは「暴乱」に次ぐレベルの深刻な社会的混乱、という認定。天安門事件の際は民主化運動が発生して早々の4月末に「動乱」認定が出され、天安門事件そのものについては最高レベルの「暴乱」と位置づけられています。

 ちなみにこの会見は「すでに十数名の死者が」というAP通信記者の質問もひっくるめて新華社が記事を配信しています。孫謙は死者数について否定も訂正も加えていないので当局としては「十数名」ということでもいいのでしょうか?情報が錯綜していたというのが実情なのでしょうが、新華社は質問の一部を削って「すでに死者が」と書くべきだったと思います。記者減俸?

 ●「新華網」(台海網 2008/03/15/23:21)
 http://taihainet.com/news/cnnews/gnsz/2008-03-15/228671.shtml

 ――――

 ところで、それまで全人代に出席していたチベット自治区のトップである張慶黎・自治区党委書記がこの15日から会場である北京の人民大会堂に姿を見せなくなります。ラサで大規模な衝突との報に接し、14日夜に現地へと飛んで帰ったのです。とすれば前掲の「チベット自治区責任者」は張慶黎である可能性も出てくるのですが、敢えてトップの現地入りを秘したのか、やはり別人だったのかは不明です。

 このトンボ返りを報じたのは『香港文匯報』(3月16日付)。ごく短い記事ですが、張慶黎がラサに戻るや夜を徹して各方面からの報告を受け、15日午前にはラサで自治区党委常務委員会を開催した、と伝えています。……実際はもう少し緊迫していたようですが。

 ●『香港文匯報』(香港文匯報 2008/03/16)
 http://paper.wenweipo.com/2008/03/16/CH0803160020.htm

 「緊迫していた」というのは、張慶黎が主宰したこの会議の正式名が
「チベット自治区党委緊急常務委員会(拡大)会議」だったからです。「緊急」と銘打たれているところに切羽詰まった感じが出ています。

 さらに「拡大」の二文字に要注目。「拡大会議」というのは、本来その会議に参加する資格のない者も臨時の有資格者として列席しているケースを指して使われます。具体的には、チベット自治区党委常務委員でない者も参加した会議ということになります。恐らく常務委員ではないものの「戦況」に通じた治安当局者ひいては軍関係者、また善後処置のための民生担当者あたりが例外的に出席したのでしょう。

 チベット自治区当局はこの会議で3月10日以来の一連の事件について、

「国内外の反動分裂勢力が周到に計画・策動した社会秩序を破壊する深刻な暴力・破壊・略奪・放火事件であり、その目的はチベット独立に他ならない。チベットを中国から分裂させようとする企みだ」

 と断定しています(なぜか「殺人」は含まれていません)。そして今後の方針として、

「ダライ・ラマ集団の醜悪な面体を白日の下にさらけ出させるのだ」
「断固として反撃し、徹底的に敵対勢力の増長した気勢を打ち砕き、この闘争の全面的勝利を勝ち取ってチベット社会の安定を確保するのだ」

 ……など、まるで全身に返り血を浴びた戦闘服を着替えずに駆けつけた連中が居並んでいるかのごとく、まことに現場感あふれる激語を列ねています。私などはつい、天安門事件の半月前に開かれた北京市への戒厳令施行を決定する党中央政治局常務委拡大会議か、それを対外的に布告した集会での李鵬の姿を思い浮かべてしまいます()。

 ――――

 この会議のあと、張慶黎は列席者の多くを引き連れて市内の110指揮センターへと足を運び、最前線にいた警官や軍人を慰労しています。これまたトウ小平や楊尚昆が天安門事件で武力弾圧にあたった部隊を視察したことを彷彿とさせますね。

 ……で、これが15日の午前なのです。日本では、

「ラサ暴動」
「市内は戒厳令状態」

 と大々的に報じられる一方、

「日本政府が自制呼びかけ」
「米、中国にダライ・ラマと直接対話を要求」
「EUが中国批判 五輪への影響も示唆」

 などと国際社会からの懸念の声をマスコミが伝えていたころですが(「死者10名」の新華社電はまだ出ていません)、中国当局の最前線はこの頃すでにバトルモードならぬ「六四モード」に突入していたことがわかります。

 北京から急きょ戻ってきた張慶黎は、当然のことながら党中央による意思決定の結果をも持ち帰ったことでしょう。それを反映したのが「拡大会議」で示された現状認識と今後の方針です。あの天安門事件のときと同様に、中共政権はこの時点で、もはや国際世論への配慮などはまるで念頭になかった(多寡をくくって居直る肚を固めた)ということです。

 ●「中国西蔵新聞網」(中国西蔵新聞網 2008/03/16/04:48)
 http://www.chinatibetnews.com/GB/channel2/22/200803/16/78734.html

 ●「中国西蔵新聞網」(中国西蔵新聞網 2008/03/16/04:50)
 http://www.chinatibetnews.com/GB/channel2/22/200803/16/78735.html

 ――――

 そして今日3月17日には、上記「拡大会議」の空気をそのまま持ち込んだような檄文じみた論評記事がチベット自治区党委の機関紙『西蔵日報』(17日付)に社説として掲載されました。

 社説は「拡大会議」の激語を引き写しつつ、

 ●今回の事件はわれわれとダライ・ラマ集団の長期にわたる尖鋭なる闘争を集中的に体現したものだ。
 ●連中の数々の暴行がわれわれに教え、われわれに気付かせてくれた。これが、やるかやられるかの闘争だということを。
 ●分裂に反対し,安定を守らんとする人民戦争を展開するのだ。
 ●旗幟を鮮明にし、立場をはっきりさせて、血と炎の試練に耐えてみせるのだ。

 ……といった、これなんてブラッディな措辞で全体が埋め尽くされ、近年まれにみる敵愾心と闘志に満ちあふれた政治文書となっています(一読の価値あり)。

 ●『西蔵日報』(中国西蔵新聞網 2008/03/17/06:43)
 http://www.chinatibetnews.com/GB/channel13/203/200803/17/78829.html

 この社説は「台海網」や「騰訊網」に転載されたのですが、なぜか相次いで削除されてしまいました。行間からほとばしる血潮に「これは余りに過激」認定が出たのでしょうか。

 ただし今朝の『西蔵日報』には社説と並んでその灰汁抜きバージョンともいうべき記事が掲載されており、これは「騰訊網」などに転載されています。

 ●『西蔵日報』(中国西蔵新聞網 2008/03/17/06:43)
 http://www.chinatibetnews.com/GB/channel2/22/200803/17/78822.html

 どうやら「拡大会議」が開かれた15日のその夜に「チベット自治区指導幹部大会」なるものが開かれたようで、その大会の精神を自治区政治協商会議も学習しようではないか、という集まりが催されたというニュースです。

 その文章から察するに、この「自治区指導幹部大会」には激語激語の「拡大会議」の雰囲気がそのまま持ち込まれた模様。この記事によると「おれたちもそのノリで是非」と政協もそれに同調した(=強要された)ということになります。社説に比べると随分薄味にはなっていますが、

「この厳しい政治闘争の中で試練に耐え」
「分裂に反対し祖国統一を守る人民戦争を展開するのだ」

 といった旨味は残されています(笑)。

 ――――

 最後にこれは新華社電なので中共政権公認バージョンということになるのでしょうが、

「ダライ・ラマ集団によるチベット社会の安定を破壊せんとする企みは必ずや失敗に終わる」

 という論評記事が今日未明に配信されています。

 ●「新華網」(新華網 2008/03/17/02:21)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2008-03/17/content_7802999.htm

 これは今回の一連の衝突事件の経過を中共視点でまとめた上で、その元凶として例によって「ダライ・ラマ集団」が持ち出され、周到に計画された破壊活動云々、チベットを中国から分裂させる企み云々、と指摘してそれに非難を浴びせるだけでなく、長年にわたる「敵対活動」をあれこれ引っ張ってきては指弾するという念の入った内容になっています。

 もはや最前線のキーワードとなった観すらある「人民戦争」は残念ながら登場しませんが、

「チベットは中国が割くことのできない一部分であることは早くから国際社会における共通認識となっている。いわゆる『チベット亡命政府』なるものを承認している国家なぞは世界中にひとつもなく……」

 ……と大見得を切った上で、

「ダライ・ラマ集団によるチベット社会の安定と調和を破壊せんとする企みは悪評を得るばかりで、必ずや失敗に終わるのだ」

 とタイトルそのままに締めくくっています。中国当局も「六四モード」突入を宣言したものといっていいでしょう。もはや妥協の余地なし、という断固たる姿勢です。……それでも、

「(ダライ・ラマ集団は)関係国に対し、中国との外交において『チベット問題』を北京五輪とリンクさせるよう呼びかけた」

 といった一節があったりもするのですが、これは「五輪にも少し未練?」というよりは「邪魔しても無駄!」という語気。目下のところ中共政権は今回もその行動原理に沿った見事なまでの様式美に徹していることから、チベット問題>>>>北京五輪といったところかと思います。

 ……あ、チベット問題で現在の姿勢を貫いても北京五輪は開催できる、と多寡をくくっているというべきかも知れませんね。実際に流血の武力弾圧をやってのけても平然と居直っているのですから始末に負えません。

 一党独裁体制である中国の本質は、やっぱり「ちょっとオシャレな北朝鮮」なのです。逮捕され死刑判決を受けた「チベット独立分子」に執行猶予をつける程度の取引には応じるかも知れませんけど、それ以上を求めるのであれば、まずは最低でも外資総引き揚げで中国経済を失血死させるくらいの覚悟がこちらにも必要ではないかと。

 毒餃子事件や東シナ海ガス田問題においても相応の心構えと決意が日本には必要だということです。


シリーズ:チベット弾圧2008【3】へ)




コメント ( 15 ) | Trackback ( 0 )





シリーズ:チベット弾圧2008【1】へ)


 前回はタイトルに「チベット」を掲げておきながら、中国共産党による一党独裁政権の行動原理に関する話題で終始してしまいました。

 むろん、意識してのことであります。最初に根っこを押さえておけば、国内及び国際社会に対する中国当局の出方などについて、ある程度見通しが立つ(私見ですが)のではないか、ということが第一の理由。

 もっとも、素人の考えていることですからアテにはなりません。とはいえ仮に見通しが外れたとしても、それはそれで中国の現状を反映した変化として得るものがある筈です。

 もう一点は、いまなお現在進行形である今回の事件が恰好のケース・スタディになると考えたからに他なりません。

 ざっくりとした言い方をすれば、三十代前半までの世代は、1989年の天安門事件(六四事件)について、どういう事態が進行しているのかを認識しつつリアルタイムで体験していない人が大半といっていいかと思います。要するに中共政権が牙を剥いたシーン、返り血を浴びながら「悪者」認定した相手に対し徹底した武力弾圧を断行する場面に出くわしてはいないのです。

 なるほどここ数年だけをみても、農村暴動や都市暴動といった小規模な官民衝突が頻発してはいます(当ブログでもたくさん紹介してきましたね)。しかし国際社会を揺るがすような、外国から「待った」がかかるような規模と内容を持ち合わせた深刻な事態というのは天安門事件以降であれば今回が初めてといっていいでしょう。

 私たちにとっては、こうした事態に出くわしたとき中共政権がどういう行動をとるかということを、血しぶきの凄惨さとともにしっかりと胸に刻み込む、またとない機会ということです。自らの対中認識をより正しいものにするための、そしてその改められた認識を足場に今後中国とどう付き合っていくべきかを考えるための教材ということになります。

 ……などと、素人が偉そうに生意気言って申し訳ありません。m(__)m

 ――――

 さて肝腎の事態についてですが、これは日本のマスコミもたくさん報道していますから皆さん御存知の通り。事件の焦点が「チベット自治区」という地名から「チベット人」へと転化しつつあるといった印象です。

 これまた日本でも大きく報じられていますが、抗議活動はチベット自治区にとどまらず、チベット人がまとまって居住している地区を持つ青海省、四川省、甘粛省へと飛び火しています(地図)。状況がさらに拡大するのかどうかは未知数ですが、チベット仏教に中共政権が容喙することへの反発、さらに一種の同化政策を強要してくる当局=漢族への反感といった積年の怒りと恨みがチベット人たちを行動へと衝き動かしているといっていいでしょう。

 東京やニューヨークほか海外各地でもチベット人による本来の抗議行動、そして中共政権による武力弾圧を指弾する活動が行われており、日米はじめ各国政府から事態を憂慮する声が挙がっています。そうした国際社会からの呼びかけに対し中国当局がどう反応するかについては前回書いた通りです。

 具体的には
「一連の事件はチベットの分離・独立を狙い中国の安定を揺るがすためにダライ・ラマ集団が計画的に準備し実行に移したもの」と中共政権は位置づけており、一貫して非暴力を唱え続けてきたダライ・ラマ十四世を頂点とするチベット亡命政府と真っ向から対立する構図となっています。

 善か悪かといえば悪。白か黒かといえば黒。となれば中共は全力を挙げてその「敵対勢力」を根絶やしにかかることになる訳で、実際に容赦のない武力弾圧が行われています。さらに報道管制と外部者の立ち入り規制を実施して現場に「結界」を張り巡らし、残党掃討と印象操作・情報操作を展開中。

 一方で党組織を軸にした思想統制、政治教育といったものが開始されているようです。それによって地元のチベット人を「洗脳」できるとは当局も考えていないでしょうが、いうなれば武力をチラつかせつつ当局側への帰順を強要する儀式のようなもの。天安門事件後にも同じことが行われました。

 ――――

 これとは別に、当局は中国全土を対象にした「結界」も張っている模様です。とりあえず国内メディアが報じていいのは当局発表のみ。一方でYouTubeにアクセスできなくなったり、中国国内の動画サイトへの規制が強化されたり、事件に言及しているブログが削除されたりしています。「当局発表」の内容は、

「死者10名。暴徒はすでに鎮圧。現在掃討作戦中」

 といった当初の簡潔なものから、いまは現場となったチベット自治区・ラサ市の住民が「ダライ・ラマ集団」によって如何に悲惨な目に遭わされたかを切々かつ延々と垂れ流すものに重点が移りつつあるようです。

「暴徒化したグループにフルボッコにされた」
「店を焼かれた」
「商品を略奪された」
「怖くて外出できない」

 ……といった内容のものが、現地の「市民の声」や「現場ルポ」などという形式(全て官製)で中国国内メディアからどんどん発信されています。

 これも形を変えた思想統制とか政治教育といえるかと思いますが、いかに愚民教育を施してきたとはいえ、それが通用するほど都市部住民は馬鹿ではありません。当局もそれは先刻承知でしょうから、その実効よりもお上による「勝利宣言」というメッセージ性に重きが置かれているように思います。

 いやしかし……と続けたいところですが、その前にちょっと昔話をさせて頂きます。

 ――――

 1989年のことです。天安門事件(6月4日)にまつわる騒ぎが一段落して、夏休みをはさんで大学が新学期を迎えた9月あたりから、やはり中国全土に「結界」が張られました。

 私のいた上海の大学の場合、留学生には何事もなかったものの、中国人学生と教師に対しては政治教育が徹底して行われる一方、「革命歌合唱コンクール」のような不毛なイベントが学内でしばしば開かれたものです。当然ながら士気が振るわないために、参加者にはシャツが支給されるといったニンジンがぶら下げられたりしました。

 事件直後のまだ殺気立っている時期(~6月中旬)、今回の事件におけるちょうど今ごろから一週間後あたりには、当局に都合良く編集された映像番組、

「事件真相」(天安門事件の真相)

 が繰り返しテレビで流されました。「反革命分子」(民主化を求める学生・知識人やそれを支援する市民)が如何に悪辣で国内の治安を乱し、秩序を回復しようとした「正義の軍隊」に激しく抵抗したか、また兵士たちが自らの損害を顧みず勇敢に立派に任務を完遂したかをくどくどしく強調した内容のものです。今回の「当局発表」はこの形式を踏襲している訳です。

 とはいえ当時の都市部住民も、それまで民主化運動の盛り上がりを目の当たりにしてきたのですから、もちろんこの「事件真相」を額面通り受け取るほど愚鈍ではありません。

 私と付き合いのあった庶民の家庭、天安門事件を報じた香港の新聞を持っていったら「繁体字が読めない」と言われて音読させられたりしたのですが、それでもこの「事件真相」には一家揃って怒り心頭の呈。ただ当時のことですから文革のような苛烈な政治運動の再来を心配していました(あのころの庶民の方が民度が高かったかも知れません)。

 軍隊の入った北京と違って、天安門事件に激怒して街が無政府状態と化していた上海の市民に対して、この「事件真相」は「当局の勝利宣言」というニュアンスは十分伝わったものの、それによって思想統制どころか逆に怒りの火に油を注ぐような形となりました。

 ――――

 ……以前にも書いたことがあるかと思いますが、どうにも収拾がつかないのですでに郊外に展開していた軍隊を上海市内へ入れて戒厳令を敷こうと考えていた党中央に対し、独り抵抗したのが当時市長だった朱鎔基です。

 朱鎔基は市民を鎮静化させるべく、テレビ演説を行いました。あの朴訥たる風貌そのままに、カメラに向かって訥々と語りかけたのです。いまでも語り草となっているのは、その演説も佳境を迎えたところで、

「事件の真相は、歴史が明らかにしてくれる」

 という、政治的に実に際どい一節を口にしたことです。「事件真相」の垂れ流しに飽き飽きしていた上海市民には、朱鎔基のその言葉の真意が、

「天安門事件の被害者たちが名誉回復される日がいつか必ず来る」

 であることはすぐ伝わりました。

 後日,朱鎔基はこの発言を保守派に攻撃されて実際に失脚しかかったそうですが、政治生命を賭けた至誠といっていいこの一言が効いて上海は秩序を回復し、最悪の事態を回避することになります。朱鎔基が「中国のゴルバチョフ」と呼ばれるようになったのもこのときからです。

 ――――

 ……余談終了。今回の事件に際して中国当局の講じた一連の「善後措置」が実は昔のまんま、要するに中共政権の伝統を踏んだ形だということを言いたかっただけです。当時の上海市民に比べれば、現地のチベット人は「少数民族」であるだけに、「結界」に閉じ込められて政治的引き締めが強化されるなか、無念さとやるせなさが募っていることと思います。

 もっとも、一方で中国全土に対して張られた「結界」については、意外と今回は一定の効果をあげることになるかも知れません。「悪者」がマイノリティーだからです。漢民族にとっては共感できる部分に乏しい異民族であるチベット人の中の「ダライ・ラマ集団」に「敵」が限定されているため、

「五輪を控えたこの時期を狙って分離独立などという不埒な騒ぎを起こす許し難い連中」

 ということで、素直に受け入れられてしまう可能性があります。話が分離独立となれば、持ち前の中華思想を刺激されもするでしょう。何たって相手は異民族であり、その中の反政府分子ですから。

 実は、香港紙である『東方日報』(2月16日付)があろうことか「この時期を狙って分離独立などという不埒な騒ぎを……」という論調をつい張ってしまったのです(笑)。

 香港人は世論調査をすれば最低でも7割が「台湾独立に反対」と回答しますから、チベット独立などとんでもない、という気分はあるでしょう。それにしても、香港が中国に返還されてから露骨な親中路線へと転じているとはいえ、『東方日報』は親中紙(『香港文匯報』『大公報』など中共政権の広報紙)ではないのです。

 香港人の民度、そして社会の中堅以上の世代には天安門事件の記憶が残っていることから、『東方日報』のこの論調は忌避されたのかも知れません。同紙は翌17日付(今日)の紙面では鮮やかに旗色を変えて「良識路線」へと転じています(笑)。

「流血の弾圧を肯定するようなスタンスはいかがなものか」

 との苦情が編集部に殺到したのでしょうか。まあ同紙に限らず、何事にもえげつなく節操がないのが香港紙の特徴ではあります。……などと言っていないで本題に入りましょう。

 ――――

 今回の事件、仮にチベット人が事前に計画を練った上で仕掛けたものであれば、時機としては一応、的を得ています。

 ●ラサにおいて抗議運動が開始された3月10日は、中共政権に対するチベット人蹶起(1959年)の記念日であり、チベット人の共感を呼びやすい。
 ●北京五輪を控えた時期だけに、中共政権も国際社会におけるイメージを意識しなければならないから迂闊なことはできない。
 ●全人代(全国人民代表大会=なんちゃって国会)が開催中であり、ラサ市のトップはもちろん、チベット自治区のお偉方も北京に出かけていて留守。

 ……つまり民族の記念日、北京五輪の年、さらに全人代による地元当局における権力の空白期という3点を衝いた、ということになります。ただし、当局側も同じことを考えて警戒を強化していたことも想像に難くありません。チベット人が行動に移るのを手ぐすねを引いて待っていたかも知れない、ということです。

「適度に暴れさせておいてから徹底的に武力弾圧」

 という生贄込みの待ち伏せシナリオが用意されていたとは考えにくいのですが、当局は今回の事件に際し、初動から立ち後れたということはないように思います。

 3月10日から開始されたチベット人による抗議活動に対し、当局は翌11日、外交部報道官定例記者会見においてラサで騒ぎが起きていることに言及し、その活動が
「ダライ・ラマ集団によるもの」と早くも決めつけています。

 決めつけている以上、国際社会に対する中共政権の肚はこの時点で据わっていたといえるでしょう。国際世論に先手を打つ意図があったのかどうかはともかく、発表は対外的な窓口である外交部によって行われています。外交部という中央政府部門からの発表であることから、この時点で事件を一地方ではなく国家的なものとして扱っている、と判断していいのかは迷うところです。

 いずれにせよ肚を据えてかかっているのですから、現地の治安部隊もこの時点で準備していたものと思われます。それなのに大規模な官民衝突となってしまったというのは、「敵情」が治安当局の予想を遥かに上回る強力なものだった、ということなのでしょうか。

 ●「新華網」(新華網 2008/03/11/19:28)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2008-03/11/content_7767459.htm


「下」に続く)




コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )





(シリーズ:チベット弾圧2008【1】)


 まだ療養中なのですが、虫が騒いでじっとしていられずに床から這いずり出てきたとでも思って下さい。ただしHPが著しく低いので長文自重。

 チベット問題、第一印象はタイトルの通りです。さすがに腐っても中共、その行動原理だけは微塵とも揺るぎないものであることが再確認されました。

 いつものことなのです。臭いものにはフタ。その目的を達成するために如何なるパワープレーもこなしてみせます。それが中共政権。

 抗議行動に出た僧侶や市民を「ごく少数の」という枕詞をつけた上で「反政府分子」だの「不法分子」だの「暴徒」とくくり上げて悪者認定。

 認定した上で、武装警察(内乱鎮圧用の準軍事組織)ひいては人民解放軍を出動させてそれら「悪者」を容赦なく鎮圧。

 場合によっては部外者立ち入り禁止にして(今回もこれをやるつもりのようです)、鎮圧後にサクサクとさらなる大掃除をして、とりあえず根絶やしにしたところで「街にはすでに平穏が」などと新華社電を飛ばします。

 僧侶が抗議行動→官民衝突に発展、というニュースを耳にして、日本人記者が射殺されたあのミャンマーのようなシーンがちらりと脳裏をよぎった私は、まだまだ甘いと言わざるを得ません。

 ――――

 拙宅はCCTV(中国中央テレビ局)を視聴できる環境にないのですが、地上波のニュース番組で使い回されたCCTVの映像にはそんな衝突場面など少しも出てきませんでした。いかにも「暴徒」な連中が「暴徒」らしく略奪だの放火だの破壊行為をするシーンばかり。正に無法地帯。警察は一体何をしているのか(笑)。

 改革開放政策を実に歪んだ形のまま30年も続けてしまったおかげで、中国には「官vs民」という抜き差しならぬ対立軸が形成されてしまっています。実際に「官」への反感が沸点に達した「民」が蜂起して警官隊や武装警察と衝突する事件が年間8万件だか9万件だかも発生しています。

 別に決起しなくても、中国国民は毎日の生活の中でごく日常的に、特権を享受する「官」の独善や横暴に接しているのです。これは身に沁みています。

 愛国主義教育で「反日」という虚構を刷り込ませ、その虚構で脊髄反射できる世代を陸続と育て上げつつあるものの、……要するに人民の怒りの鉾先をよそへ向けさせる試みをこの15年ばかり中共政権は続けているのですが、日々体感する「官」への憤懣を前にすれば、「反日」なんざ比較にもなりません。むろん、だからといって虚構である「反日」を大目にみてやろうなどとは露程も思いませんけど。

 ともあれ、中国国民の間には「官」への不満、行き場のない怒りのようなものが常に不完全燃焼状態でくすぶっています。ですからニュース映像で鎮圧場面をうっかり流してしまうと、視聴者である国民の中にはこの「官vs民」フラグが立って、「悪者」に「民」たる自分を重ねてつい同情を寄せたり、「官」に対する反感を強める者が出て来ないとは限りません。

 さすがは半世紀を越える一党独裁政権だけに、中国共産党は筋金入り。自国民にそういう気分を持たせてしまうような致命的なミスは犯しませんでした。官民衝突の出て来ないニュース映像に加え、

「悪者は一応始末した。これから掃討戦に移る。以上」

 という、まことに素っ気ない情報を開示して、それでおしまい。

 ――――

 ……考えてみればものすごいパワープレーなのですが、異論の存在を許さない独裁装置に加えそれを保障する圧倒的な武力(政府より党中央に忠誠を誓う人民解放軍)があれば、それを簡単に実行することができます。そして、独裁政権にあってはその選択肢こそ「正解」なのです。

 頻発する官民衝突事件を処理するときもそうですし、1989年の天安門事件に際しても中共は同じスタンスで事に臨み、始末してのけました。臭いものにはフタをした上で、腕ずくで「なかったこと」にしてしまう。「なかったこと」にできなくても、それについて語ることをタブーにしてしまえばモーマンタイ。

 それが中共の行動原理であり、一党独裁政権のしきたりです。デフォというか仕様というか、まあそういうものです。白でなければ黒。善でなければ悪。黒だ悪だと認定した相手に対してはその全力を挙げて徹底的に叩き潰し、中共統治下の社会において呼吸できなくさせてしまうのみ。

 私などは今回のラサの映像を目にして一種の懐かしさを覚えつつ、ある意味感心してしまいました。天安門事件に対する当時の中共政権の断固たる姿勢と、事件後の半年間に行われた政治的引き締めを上海で体験しているからです。マニュアルは、本当にあのころのまんま。お前、相変わらずだなあ。……てなところです。古くは大躍進だのそのしっぺ返しの大飢饉だの、それに紅衛兵や林彪死亡などの故事があります。全く、変わっていません。

 まあ中国社会の民度が民度ですし独裁装置が作動していますから、国内向けにはそういう無茶も通るのでしょう。しかし海外に対してはどうか?という話になります。……ところが中共の本領たる真のパワープレーとは、国際社会に対してもぬけぬけと国内向け同様のサービスを提供してみせることにあります。今回もまた然り、といっていいでしょう。

 国際社会が対話を呼びかけたところで、中共政権がそれに応じる筈がありません。そもそも互いに歩み寄って妥結点を見つける。……つまり対話という作業を行う、という概念が中共政権にはないのです。

 チベット人に対しては従来通り、帰順するか討伐されるかの二者択一を迫るだけでしょう。これも独裁政権のデフォであり仕様。白でなければ黒。善でなければ悪、なのです。

 ――――

 仮に国際社会が足並みを揃えて中国に北京五輪ボイコットをチラつかせつつ圧力をかけたとしても、中国にとっては「対話」する余地のないテーマです。その行動原理に従って平然と圧力をはね返し、オリンピックが吹っ飛ぶことを選択することでしょう。

 経済制裁を喰らっても揺るぐことはないでしょう。内心では困ったことになったと思いつつも、どうせ一億人が餓死したって総人口の一割にもならないし、と同時に考えているに違いありません。兵糧攻めで参るような、ヤワな相手ではありません。

 そして表向きは平然としてみせつつ、「世界の工場」という現実と「13億市場」という幻想を逆手にとって国際社会における居直り強盗となり、各国間の連携を分断しにかかったりすることでしょう。これについては天安門事件当時の経験値がありますし、実に使い勝手のよい日本という隣国がいることですし。

 中国共産党による一党独裁体制である限り、中華人民共和国という国家は、それほど厄介で始末に負えない存在ということです。しかも核まで持っていて、軍拡路線まっしぐら。対外伸張の野心も隠さなくなりました。

 話をちょっと極端にしましょう。当ブログではときに「八國聯軍」という言葉を使うことがあります。義和団の乱における八カ国連合軍のことですが、現代風にいえば多国籍軍の駐留下における分割統治とでもいうところでしょうか。……いやこれは余太話ではありません。

 現状をチベット人やウイグル人が納得できるカタチに改め、中国という厄介な国家を少しでもマトモに近づけるには、結局のところは「八國聯軍」という荒療治に行き着くのではないかと。それほどの国際的合意と手間と面倒が必要となるように思います。それが嫌なら居直り強盗の横暴を黙認するしかありません。少なくとも中共政権が枝葉から立ち腐れてバラけるまでは。

 まあ、バラける過程についての説明など一切をすっ飛ばしていきなり「八國聯軍」ですから話が極端になってしまうのですが、少なくとも一党独裁体制が民主化して多党制と普通選挙制が実現して……などという寝言に比べれば現実的ではないかと私は考えています。今回の「相変わらずな中共政権」に接して、改めてその意を強くした次第です。


シリーズ:チベット弾圧2008【2】へ)




コメント ( 19 ) | Trackback ( 0 )





 更新が滞ってしまい申し訳ありません。恥ずかしながら病気でぶっ倒れて自宅療養中であります。

 以前に書いたことがあるかも知れませんが、私は海坊主を自称しているくせに蒲柳の質といいますか要するに病弱。五臓六腑のうちの複数にあまり容易ではない疾患を抱えています。そのうちのひとつが機嫌を悪くするともう身動きがとれなくなるのです。

 半年に一度くらいこれに見舞われます。年を追って少しずつ発生頻度が高まっていくのだろうと思います。医者もそういうことを言っていました。向こう10年くらいは大丈夫のようですから(通常の生活ができる)、私にしてみると過去10年で随分色々なことをやってきたので、まだたっぷりと時間がある、大抵のことはできるだろう、という感覚です。

 別に高熱を発してウンウンうなっているような状態ではないので、読書くらいはできます。あとノートパソコンなので枕元に引き寄せて軽い書きものをするくらいのこともやれます。ただし中国観察は娯楽とはいえ記事集めで体力を著しく消費してしまうので、療養中は控えるよう医者から止められてしまいました。

 この娯楽は体力がなくなるともうできなくなりますから、最近はなるべく更新するよう心がけてきました。毎日書くことが目標ではなく、書けるうちに書きたいことを書いておきたいと考えるようになった結果、毎日のように更新するようになった、といったところです。

 そんな訳で更新ができない状態です。全人代もヤマ場を迎えていますし他にも書くべきことが色々あるので忸怩たる思いです。ただこうして書けるくらいにまでは回復してきましから、快方も間近だと思います。明日あたり、ひょっこり通常に復しているかも知れません。

 ――――

 なお、以下は「楊枝削り」ではありません。仰臥中は退屈なので本を読んでいたのですが、一気に読んでしまったあと、ためになるので何度か読み返しています。今日も読んでいます。

 李登輝さんが、平易な文体で非常に大切なことを語っています。……ええ、書いてあるというより語っているという印象です。李登輝さんの肉声に接しているような気になる本です。

 この本を読むことができたという点では、今回の療養には感謝しなければいけないのかも知れません。立ち読みして良さげな気がしたら機を逸することなく購入することをお勧めします。


最高指導者の条件
李 登輝
PHP研究所

このアイテムの詳細を見る






コメント ( 29 ) | Trackback ( 0 )





 週末なので新選組、いきます。私の場合、幕末モノといえば『峠』がイチ押しなんですけど好みが分かれるでしょうからスルー。それから『相楽総三とその同志たち』も大好きなのですがこれは小説ではありませんし多分現在では手に入らないかも知れません。ともあれいずれも新選組ではありませんし。

 新選組といえば、やはりこれです。近藤勇には大佛次郎の『鞍馬天狗』がありましたが、土方歳三はこれでキャラが立ち、イメージが定着したのではないでしょうか。沖田総司も、そうかも知れません。……それにしてもこれはまた何とも毒々し気なカバーですね。

燃えよ剣 (上巻)
司馬 遼太郎
新潮社

このアイテムの詳細を見る


燃えよ剣 (下巻)
司馬 遼太郎
新潮社

このアイテムの詳細を見る



 あとこちらはやはり司馬遼太郎の短編集。「沖田総司の恋」とか「菊一文字」とか、いいですね。近藤、土方,沖田といった面々のキャラ設定が『燃えよ剣』と一貫しているのも『燃えよ剣』の「外伝」みたいで楽しめます。

新選組血風録 (角川文庫)
司馬 遼太郎
角川書店

このアイテムの詳細を見る



 ――――


 『燃えよ剣』『新選組血風録』をベース(設定資料?)にして書かれたこの本も楽しくてなかなかいいです。在庫あるかな?

新選組の哲学 (中公文庫)
福田 定良
中央公論社

このアイテムの詳細を見る



 実録という意味ではこちらがオススメ。

新選組二千二百四十五日 (新潮文庫 い 87-1)
伊東 成郎
新潮社

このアイテムの詳細を見る



 定番も出しておきますか。

新選組始末記 (中公文庫)
子母沢 寛
中央公論社

このアイテムの詳細を見る



 ――――


 ただし司馬遼太郎の新選組はもう昔から読み古しているので、最近は滅多に頁をひもとくことはありません。いまはこちらをときどき読み返しています。

黒龍の柩 (上)
北方 謙三
幻冬舎

このアイテムの詳細を見る


黒龍の柩 (下)
北方 謙三
幻冬舎

このアイテムの詳細を見る


 これは面白いです。新聞小説だったので連載中に読んだ人もいるかも知れませんけど、新選組を軸に幕末のストーリーを仕立て直すというその着想が素晴らしい。主役の土方がやっぱりカコイイです。近藤も沖田も期待を裏切りません。それから勝海舟とか小栗上野介とか坂本龍馬もいい感じで出てきます。

 でも新選組という点で特筆すべきは、いつも中途半端に哀し気に物語から退場していく山南敬助に土方の盟友という位置づけでしっかりとした存在感があることです。これはうれしいことでした。フィクションですから新解釈とはいえませんが、従来の新選組の殻を破った描き方という点で実に読み応えのある作品です。これが今回のイチ押し。


 ――――


 えーいもう面倒ですから私にとっての幕末四部作を好きな順番に並べてしまいましょう。本当は三部作にするつもりが『峠』『花神』のあとを『胡蝶の夢』にするか『竜馬がゆく』にするかで迷ってしまいました。

 河井継之助は私にとっては神。『塵壺』ほか関連書籍は大抵揃えてあります。『峠』は学生時代に霞山会の雑誌『東亜』に連載されていたコラムとともに、私の「ヲチ」の原点となりました。

 ちなみにコラムの執筆者だった小島朋之氏が逝去との報に接して驚きました。あの連載がなければ当ブログはまず存在していないと思いますし、私もまた違った人生を歩んでいたことでしょう。心より御冥福をお祈り申し上げます。

峠 (上巻) (新潮文庫)
司馬 遼太郎
新潮社

このアイテムの詳細を見る


花神〈上〉 (新潮文庫)
司馬 遼太郎
新潮社

このアイテムの詳細を見る


胡蝶の夢 (第2巻) (新潮文庫)
司馬 遼太郎
新潮社

このアイテムの詳細を見る


竜馬がゆく〈1〉 (文春文庫)
司馬 遼太郎
文藝春秋

このアイテムの詳細を見る


 短編でも好きな作品がたくさんあります。ひとつだけ「おお、大砲」を挙げておきます。

 それにしても司馬遼太郎の幕末作品は若くて青臭いうちに読んでおく方がいいですね。社会人の中堅あたりになった頃にうっかり読んでしまうと自分が情けなく思えてくるかも知れませんから(笑)。

 ……むう、そういう意味では恐らく勤労者によるアクセスが主体と思われる当ブログの「楊枝削り」に出すべきものではないかも知れませんけど。




コメント ( 8 ) | Trackback ( 0 )





 中国食品不買活動、拙宅ではいまなお継続中です。皆さんのところは如何でしょうか?

 加工食品とかお惣菜みたいなものは一切スルー。野菜や肉は原産地を確認して選んでいます。行動あるのみです。

 配偶者とスーパーへ行きますと、中国産の野菜が売っていたりします。それを手にとって、

「あ、ダメダメこれ買っちゃダメだよーだってメイド・イン・チャイナじゃん」

「本当だー中国製だー。危ないから買うのやめよーやめよー」

 と二人で掛け合い漫才。……ではなく、大声でつぶやきます(笑)。営業妨害じゃありませんよ、つぶやいているだけなんですから。それにもっと高値の国産野菜をちゃんと購入しますから売り上げにも貢献しています。

 私たちが大声でつぶやいているのを耳にして、他のお客さんも中国産をやめて国産に切り替えていれば売る方としてもOKでしょ?利ざやとかどうなっているのか、よくわかりませんけど。

 とりあえずやってみてわかったのは、冷凍食品なんか買わなくても特に苦労しないということ。

 それから、中国産の素材が店頭から消えても拙宅は全く困らないということです。もっと勉強すれば調味料とか細かな部分に中国産の材料が混じっている可能性はあるでしょうけど、まずは出来ることから、やっています。



 ●中国野菜の輸入量4割減 検査強化や流通業者が敬遠(共同通信 2008/03/06/16:53)
 http://www.47news.jp/CN/200803/CN2008030601000555.html

 中国産野菜の輸入量が、中国製ギョーザ中毒事件が発覚した1月末以降、急減したことが6日、農林水産省の植物検疫統計(速報)で分かった。2月の第1週から第3週までで、輸入量は前年同期比39.7%減の2万704トンと大幅な落ち込みを示した。中国が輸出時の検査を強化したのに加え、流通業者も中国産を敬遠したのが影響したとみられる。

 主要品目のうち、キャベツが66.7%、サトイモが65.7%と減少幅が大きかった。輸入量が最も多いタマネギは30.4%減、2位のショウガは15.3%減、3位のネギは34.4%減と、軒並み2けたのマイナス。

 輸入量の週ごとの推移でも減少傾向は顕著。今年1月の第4週は1万668トンだったが、ギョーザ中毒事件の発覚後、2月第2週は6461トン、第3週は4331トンと減り続けている。

 ――――

 ●中国産野菜:ギョーザ事件直後の輸入、前年比4割減(毎日新聞東京朝刊 2008/03/07)
 http://mainichi.jp/select/jiken/archive/news/2008/03/07/20080307ddm001040009000c.html

 中国製冷凍ギョーザによる中毒事件の発覚後、中国産野菜の輸入が急減し、2月の第2~4週(3~23日)は前年同期より4割も落ち込んだことが、農林水産省のまとめで分かった。第4週(17~23日)は同6割減と落ち込みが拡大している。事件を受け日本の流通・加工業者が中国産の扱いを減らしたのに加え、中国の検疫当局が輸出検査を強化したことが原因とみられる。

 農水省が6日発表した植物検疫統計(速報)によると、同期間の中国からの野菜輸入量は生鮮・冷凍の合計で前年同期比39.7%減の2万705トン。中でも第4週は60.8%減だった。品目別の減少幅は、タマネギ30%、ネギ34%、ゴボウ39%、ニンニク22%など。【位川一郎】




 おおおお。日本国民の怒りと不信感が早くも数字に表れた格好です。

 ●中国が輸出時の検査を強化したのに加え、流通業者も中国産を敬遠したのが影響したとみられる。(共同)
 ●日本の流通・加工業者が中国産の扱いを減らしたのに加え、中国の検疫当局が輸出検査を強化したことが原因とみられる。(毎日)

 ……と、どちらを前に置くかでニュアンスが多少異なるように思えるのですが、まあいいでしょう。こうやってマスコミが燃料を投下してくれると励みになるというものです。

 毒餃子事件をきっかけに生協とも距離を置いたので、いつもは元気な営業のお兄ちゃんが肩を落としています(笑)。

 そういえばJTが会見を開いていましたね。毒餃子事件発覚後の約1カ月間で冷凍食品の売り上げが前年同期6割減。スーパーなどで売られている市販用の冷凍食品は9割減だそうです。……それでも、

「中国からの輸入量は多く、冷凍食品は中国抜きにはできない」

 なんてことをまだ言っているようですから、このことはよく覚えておきましょう。まあ他社も似たりよったりなんでしょうけどね。……もっとも冷凍食品と縁を切った拙宅にとっては、もはやどうでもいいことですけど。




 餃子なんて中身だけ手作りにしたら、ちょっと手間はかかりますけど美味いのなんの。生協の冷凍食品を買っていた自分をぶん殴りたくなりました(営業のお兄ちゃんごめんなー)。なるほど需要急増で国産ニラが値上がりする訳です。配偶者とわいわいやりながら作るのも、また楽しからずや。

 しかも拙宅の場合、手作り餃子といえば本場の中の本場仕込みである恩師がおりますので、ニラの浸し方に始まって何から何まで電話で伝授してもらうことができます。ちなみに恩師によると旗人言葉では「煮��」と呼ぶのが正しいのだそうです。小さいころ「餃子」とか「水餃」なんてうっかり口にすると、親から「お行儀が悪い!」と叱られてゴツンとやられたとか。

 ともあれ、やせ我慢であろうと幻覚であろうと、中国食品不買を始めたら生活が少しだけ楽しくなったのは事実です。

 それから消費者として能動的に選別して買い物をしている、という感覚もある意味新鮮でした。もちろん、スーパーのチラシを見比べて、こっちよりあっちの店の方が安いから、あっちへ行こう。……とかいうことじゃなくて。意識が低かったんだなあといままでの自分を反省しております。

 ――――

 毒餃子事件そのものにも多少進展がみられています。



 ●「袋の内側に浸透」中国の実験結果届く ギョーザ事件(asahi.com 2008/03/06/20:36)
 http://www.asahi.com/national/update/0306/TKY200803060336.html

 中国製冷凍ギョーザに混入した有機リン系農薬成分メタミドホスによる中毒事件で、警察庁に6日までに、「メタミドホスがギョーザの包装袋の外側から内側に染みこむ」とする中国側の実験データが届いた。同庁は、中国側の実験を科学的に検証するため、さらに詳しいデータの提供を求めている。

 同庁の実験では「袋の外から内には浸透しない」との結果が出ており、中国側にデータ提供を求めていた。一方、日本側では引き続き、被害を引き起こしたギョーザと同一製造日の商品の鑑定を続けているが、吉村博人長官はこの日、「日本国内で可能な捜査はかなりの部分終了している」との見解を示した。


 ――――

 ●中国側が警察庁にデータ提供 メタミドホス浸透実験(共同通信 2008/03/06/17:19)
 ●中国側が資料提供=メタミドホス浸透実験-ギョーザ中毒事件・警察庁(時事ドットコム 2008/03/06/19:57)



 あの……どういう意図によるものかわかりませんけど、「中国側の実験を
科学的に検証するため」というくだりでコーヒーを吹きました。「科学的に」っておまい(笑)

 ただし、笑ってばかりはいられない状況のようです。中国側が提供したデータでは、実は「科学的な検証」が行えないそうで。相変わらず日本は舐められているみたいですね。というより、消費者の怒りは上述したように冷凍食品や中国野菜への需要激減という形で出ていますから、やっぱり「無定見かつ無為無策」なフフン♪こと福田首相が舐められているのでしょうか。



 ●ギョーザ資料 中国「ゼロ回答」(MSN産経ニュース 2008/03/07/01:18)
 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/080307/plc0803070119000-n1.htm

 中国製ギョーザ中毒事件を受け、日本政府が中国政府に資料提出を求めた約20項目のうち、中国側回答が製造元「天洋食品」の消毒剤購入状況など3項目にとどまり、ほぼ「ゼロ回答」となっていることが6日、明らかになった。中国は速やかな資料提供を約束し、温家宝首相も全国人民代表者会議(全人代)で「食の安全強化」を打ち出しているが、中国側の不誠実な対応が改めて浮上した形だ。福田康夫首相の中国への融和的な対応も背景にあるようだ。

 日本側は、調査団が2月4~7日に訪中した際、河北省にある天洋食品の工場で製造されたギョーザのサンプルや、ギョーザから検出された有機リン系殺虫剤「メタミドホス」の同省内での回収・廃棄状況などの資料提供を求めていた。

 この際、食品安全を主管する国家品質監督検査検疫総局や河北省幹部らとの協議で要求、13日に公文書で正式に申し入れた。中国からは21日に3項目の資料が届いた。

 しかし、これらはいずれも天洋食品が保有する「いつでも出せるような資料」(外務省筋)ばかりで、中国政府や河北省にかかわる資料は含まれていなかった。その後も外交ルートを通じて複数回にわたり提出を促したが、今月5日現在、新たな資料は届いていない。

 一方、警察庁の吉村博人長官は6日の会見で、中国公安省が2月28日に自国での混入を否定する根拠となったメタミドホスの袋の浸透実験に関する資料提供を受けたことを明らかにした。

 だが、提供資料は溶媒の種類や機材など実験環境のデータが含まれておらず、再現実験するには不十分な内容。警察庁は引き続き情報や資料提供を求めていく考えだ。

 中国当局が自国での毒物混入を否定した2月28日、福田首相は「中国は非常に前向きだ。原因をしっかりと調査し、責任をはっきりさせたいという気持ちは十分に持っていると思う」と語り、中国側の不誠実な対応を批判するどころか逆に、評価する発言をしていた。




 それから、この毒餃子事件の影響で4月に予定されていた胡錦涛の来日が延期される見通しが強まっているそうですが、胡錦涛って誰?そんな奴のこと誰も呼んじゃいないんだけど。……え?フフン♪が昨年末に訪中したときに招待しちゃったの?やっぱり馬鹿だなーあいつは。



 ●胡主席訪日、日程は未確定=ギョーザ事件で日本をけん制-中国(時事ドットコム 2008/03/06/20:17)
 http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2008030600943

 【北京6日時事】中国外務省の秦剛副報道局長は6日の定例記者会見で、胡錦濤国家主席の訪日について、「具体的な日程は中日双方が協議を続けており、まだ決まっていない。双方は戦略的互恵関係の構築に力を注いでおり、大局的な観点から両国間で起きた問題の処理に当たるべきだ」と述べ、中国製ギョーザ中毒事件が訪日に影響を与えないよう暗に求めた。

 胡主席の訪日は4月に予定されているが、日本政府高官は5月にずれ込むとの見通しを示している。

 秦副報道局長は同事件に関し、「中国側の調査はまだ続いており、双方の主管部門、特に警察が引き続き密接な協力をするよう希望する。真相が明らかになる前に、片方が結論を発表すべきではない」と日本側をけん制した。




 
「日本側をけん制した」って言ってますけど牽制されたの誰?(笑)私は牽制されていませんけど、あなたは何か身に覚えでも?……ない?ないなら身体に聞いてやろーヒヒヒってそういう話じゃありませんね。「桜の季節に」とかいう口約束があるようですが、ふ・ざ・け・る・な。中共人の糞どもに桜を拝ませてやる必要なんかないでしょう。

 中国外交部は毒餃子事件とは無関係に予定通り事を運びたいようで、外務次官の武大偉なんかは、

「春の訪日は日中双方で既に決まったことだ。5月も春だ」

 などと頑張っていますが、日本側は毒餃子事件でこれだけ揺れたのですから、

「胡錦涛が年内に来日する必要を感じるか?」

 って世論調査でもまずやったらどうですか?個人的にはいま来て欲しくはありませんね。胡錦涛が五星紅旗で簀巻きにされてメタミドホス漬けにされるのは見るに忍びないので。

 それにほら、招待したのがフフン♪でも、来日したときに首相が別の人……例えばマンガ好きで自由と繁栄の弧な2ちゃんねらーに変わっていても特に問題ないでしょう?(笑)

 国家主席の来日となればどうせまた共同文書みたいなものを発表するんでしょうから、腰の据わった人が日本代表でないとロクなことがありません。少なくとも前科ありすぎの福田首相には任せられませんからね。在任中の胡錦涛来日は断固阻止であるべきです。

 ●外交:胡・中国国家主席の訪日、ギョーザ事件影響ない(毎日新聞東京朝刊2008/03/07)

 最後に、中国側から投下された新しい燃料をひとつ。



 ●中国での殺虫剤混入を否定 河北省の副省長(共同通信 2008/03/06/20:55)
 http://www.47news.jp/CN/200803/CN2008030601000913.html

 【北京6日共同】中国製ギョーザ中毒事件で、製造元の天洋食品がある中国河北省の付志方・副省長は6日、北京市内のホテルで記者会見し、原因となった有機リン系殺虫剤メタミドホスの混入について「中国国内で発生した可能性は既に排除した」と述べた。

 中国公安省幹部が先月28日に北京で記者会見し、中国での混入の可能性は「極めて低い」としていたが、河北省の幹部がさらに踏み込んだ表現で混入を否定した形。ただ、副省長は混入を否定する具体的な根拠などは示さなかった。

 副省長は「事件を重視しており、省としても包み隠さず念入りに調査した」と強調。その上で「天洋食品の(製品の)品質や、残留農薬の問題でなく個別案件だ」と述べた。また「日本側も中国と協力を強め、客観的にこの問題を調査してほしい」と注文を付けた。




 とうとう「中国国内で発生した可能性は既に排除した」と断言してしまいました。原文はこちら。

 ●河北副省長:“餃子事件排除在中國發生可能”(中国新聞網 2008/03/07/04:52)
 http://www.chinanews.com.cn/gn/news/2008/03-07/1184655.shtml

「現在把握している状況からみて、餃子事件の残留農薬が中国国内で発生した可能性はすでに排除した」

 と原文はやや微妙な表現となっているのですが、事件を「人為的な毒物混入」とする言葉は出てきませんから、

「中国での殺虫剤混入をきっぱりと否定」

 でいいのでしょう。この付志方とかいうトンチキ、こう言えば効果的な印象操作となって中国にプラス、とか考えて発言しているとしたらやっぱりお里は争えないというか、なるほど民度が低い社会相応の感覚ですねえ。

 それにしても、こうも言いたい放題である上に、こちらが求めた実験データは寄越さない。日本も随分とコケにされたものです。まあ、首相がフフン♪ですからね。初動からずっと相手ペースで、舐めた真似をされても「非常に前向きだ」とか言っていましたし(怒)。お呼びでない者同士ってことで胡錦涛ともども漬けものにしちゃえば、ニッポンも少しはマトモになることでしょうに。




コメント ( 26 ) | Trackback ( 0 )





 中国の「なんちゃって国会」である全人代(全国人民代表大会=立法機関)が昨日5日に開幕しました。どうして「なんちゃって国会」なのかといえば、構成員である全国人民代表たちは事実上「お上」に選ばれた連中であり、国民による民主的な選挙によって選出されてはいないからです。まあ中共一党独裁体制なんですから当然ではありますが。

 で、全人代といえばまずは首相(温家宝)による「政府活動報告」の読み上げとなります。ド長文なのですが、私は仁義を切る意味で一応,毎回目を通しています。基本的に党中央の定めた方針を追認するものなのですが、その内容を再確認する意味で、また政権運営者という立場からの所信表明ゆえ具体的な内容が盛り込まれているという点において、一読の価値があります。

 ただし遺憾ながら、この「政府活動報告」を要約する能力と体力と気力は私にはありません。電子版を漁ってみるとこの点では「産経」が非常にいい仕事をしており、「毎日」がこれに続いているといった印象です。という訳でプロの方々にお任せします。m(__)m



 ●成長率8%、食の安全提起 温首相が全人代で政府活動報告(MSN産経ニュース 2008/03/05/10:22)
 ●中国:全人代で「食の安全」強調 五輪控え二重基準は限界(MSN産経ニュース 2008/03/06/02:30)
 ●「民衆重視」に限界 政治改革も先送り 中国全人代(MSN産経ニュース 2008/03/05/19:02)
 ●温首相、食品の安全強化強調も効果は?(MSN産経ニュース 2008/03/05/19:57)
 ●中国、インフレ対策に主眼 温家宝首相が強調(MSN産経ニュース 2008/03/05/20:08)

 ●中国全人代:政府報告…成長のひずみに危機感(毎日jp 2008/03/05/15:00)
 ●中国全人代:「食の安全」対策強化…温首相報告(毎日jp 2008/03/05/16:52)
 ●中国:物価指数目標を引き上げ 抑制手段が手詰まり(毎日jp 2008/03/05/22:25)
 ●中国:「対日重視」もギョーザ事件の対応苦慮…全人代報告(毎日jp 2008/03/06/02:30)



 私にとって印象的だった部分は、まず
「中日関係が改善をみた」とわざわざ言及したことです。今年で任期満了となるため過去5年間に対する回顧という文脈の中でこの一節が登場します。

 特に日本について「ご指名」があったということで、ああ
小泉路線は中国にとって本当に嫌だったのだろうなあ、と思いました(笑)。それに比べると、「相手の嫌がることをする必要はない」という現在の福田政権は中国にしてみれば本当に扱いやすいことでしょう。

 特に小泉首相・麻生外相・安倍官房長官という黄金の超攻撃的3トップ時代であれば、「毒餃子事件」への対応も随分違ったものになっていたことでしょう。たぶん国民は同じように
「中国食品は危ない」「加工食品はやめておこう」という意識を持つに至ったでしょうが、少なくとも日本政府が中国側の書いたシナリオに踊らされることはなかったのではないか、と私は思います。

 「中共語」で翻訳すれば「中日関係が改善をみた」というのは
「中国に対する日本の従属度が再び高まった」ということになります。日本にとって、これで何かいいことがあるのでしょうか。甚だ疑問です。

 印象に残ったもう一点は、今年の消費者物価指数(CPI)上昇率を昨年実績と同じ
「4.8%以内に抑える」としたことで、中国指導部の危機感の強さがみてとれます。……とは、昨年と今年では同じ「4.8%」でも実質は全く異なるからです。

 昨年は物価上昇が問題視されなかった2006年を基数にしての上昇率が「4.8%」だったのに対し、今年はその「4.8%」を土台にして、さらに「4.8%」積み上がることになりますから、実質的な上昇幅がまるで異なります。

 ざっくりとした例え話になりますが、
2006年に100g当たり100円だった豚肉が2007年には150円に高騰し、これが2008年になると100g当たり225円になるということになります。生活者にとってはシャレになりません(※注:これは物価上昇の牽引役である豚肉価格の話でCPI全体のことではありません。もっとも今年も基本的に豚肉のこの勢いは変わらず、さらに食品油がこれに似た状況になると思われます)。

 この今回の「4.8%」という水準は登記失業率のようにある程度余裕を持たせた設定なのか、それともこれ以上は譲れないというデッドライン、背水の陣状態で示された指標なのか,気になるところです。

 ――――

 「温家宝報告」全般から匂い立つ気配は日本のマスコミが指摘しているように
「民生の重視」といっていいでしょう。

 これは本来、基本的には農村部限定の問題でした。例えば低収入の改善、余剰労働力に対する雇用創出、また道路・電話・水道などインフラやライフラインの整備や医療・教育・生活保護など行政サービスの充実、といった諸方面がいずれも都市部に比べて甚だしく見劣りし、その格差が深刻化していることをどうにかしよう、というものです。

 ところが現在の中国は前回指摘したように超格差社会。都市部同士でも地域間格差があり、またひとつの都市の中においても住民の間には収入をはじめ様々な格差が存在するようになり、それまで農村部限定だった問題が都市部でも無視できないものへと深刻化してしまいました。

 ●農村部限定だった「最大の懸案」が中国全土に拡大。(2008/01/02)

 要するに坐視できない問題が農村部から都市部へと、つまり中国全土へと拡大してしまった訳です。そこで「民生」という言葉で問題を一括りにし、政府が全力を挙げてその改善に取り組む、ということになりました。この姿勢を色濃く打ち出しているのが今年の「温家宝報告」です。

 ――――

 このため「温家宝報告」では「民生の重視」が繰り返し叫ばれているのですが、個人的な感想でいえば、どこか空々しく、虚しい響きに聞こえます。

 マクロ経済運営における問題点として
「固定資産投資のリバウンド」「過剰流動性」「国際収支のアンバランス」が再三指摘されてもいますが、これまた「民生の重視」と同じようにどこか空虚なかけ声であるように私には思えます。

 言っていること自体は間違っていないのでしょうが、実行段階で中央の意思を全国各地の末端レベルまで浸透させることができるか、といえばその点は実に怪しいというニュアンスです。そこから受ける印象は、

 ●現実の厳しさに手をつかねている。
 ●気合いが足りない。

 ……の2点です。「気合いが足りない」で笑ってはいけません。「何としてもやり遂げるんだ」といった闘志のようなものが感じ取れない、というのが「温家宝報告」を読み終えた私の第一印象でした。

 民生改善にせよマクロ経済の問題にせよ、全国各レベルの地方当局が依然として面従腹背を続けているようだと、どんな手を打っても実効は覚束なくなります。では面従腹背組を力づくでねじ伏せて従わせる力が中央にあるかといえば、これは非常に疑問。

 そして、状況を打開するために素っとぼけている地方当局や独占状態にある特定業界を何としても討伐するぞ、といわんばかりの気魄が「温家宝報告」にはありません。むしろ、どこか途方に暮れているような空気さえ漂わせています。ですから掲げられる政策ひとつひとつが空虚な響きを伴うことになるのです。

 ――――

 「民生重視」というのは、言い換えれば「弱者救済」ということになります。超格差社会となってしまった現在の中国において、それは確かに焦眉の急といえるでしょう。

 弱者は保護する。結構なことです。ところがその対極に存在する「富める2割」たる強者、いうなれば30年に及ぶ改革開放政策の過程で特権を利用してうまい汁を吸ってきた
既得権益層に対して中央はどういう策を施すのか、という点が「温家宝報告」では明確でありません。

「お前ら服従しろ」
「厳命する。背けば斬首」

 といった強い姿勢はまるでなく、相手の肩を叩きつつ、

「まあ、頼むからここはひとつ協力してくれよ」

 ……という程度の語気です。弱者の底上げを図る一方で強者の過剰に富んでいる部分を削り落とさない限り格差改善はままならないと思うのですが、「削り落とす」ことにやや躊躇している、というのが私の印象。まあ前回紹介したように、

「格差は残るものの許容範囲内の程度に抑制する」

 という青写真を持ち、「削り落とす」ことを前提に実現する
「和諧社会」という単語が党中央の公報からも今回の「温家宝報告」からも消えてしまっている体たらくですから、仕方がないのかも知れません。弱者救済にちまちまと励みつつ、強者に対してはほぼ野放し状態。……という構図が、これからも続くのでしょうか。

 ――――

 こういう中途半端な姿勢がいたずらに状況を悪化させるであろうことは想像に難くありません。まずマクロ経済の問題が改善せず、このため構造的な物価高にも歯止めがかかりにくくなります。

 「民生重視」ということで、例えば物価高に則して低所得者への生活保護を手厚くしたり、年金生活者への支給額上積みを行っても、所詮はイタチごっこ状態。そればかりか、下手をすると「民生利権」なんて新種の汚職が横行するかも知れません。

 すると経済政策ではもうどうにもならない、ということで今度は行政による強制介入になるでしょう。1月に実施された価格統制令はその一例です。

 この措置はその直後に中国を雪害が見舞ったことで一時解除となりましたが、先月下旬には復活。値上げを行うには地元当局の許可が必要、という縛りが入っているものの、実情は値段が上がると噂されていたものが続々と当局の認可を得て値上げを果たしているので、どれほど効果があるのかはもう少し様子をみる必要があります。ちなみに、

 ●物価問題による集団的事件は中国で未だ発生していない(新華網 2008/08/05/19:23)
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2008-03/05/content_7724571.htm

 という気になる記事も出ています。
「集団的事件」というのは簡単にいえば「暴動」です。国家発展改革委員会の発表によるものですが、わざわざこんなことを言わなければならない必要がある、というのはどうしたことでしょう。

 こうした行政による経済面への介入がより全般的に、強圧的に行われた時点で、中国経済は見事ハードランディング、ということと相成ります。まあ、中央にそんな負荷をかけるだけの力があれば、の話ですけど。

 ――――

 ともあれ中央政府の姿勢がこうも頼りない様子では、今後、香ばしい展開が陸続と出現することになる可能性は高いでしょう。そういえば食品安全のための管理強化だとか関連法規の整備だとか、それから民主化を進める(非常に限定された内容)などといった寝言が「温家宝報告」には盛られていましたが、こうしたことは、まず「法治社会」を実現してから口にしてほしいものです。

 こういう末期的な状況を「政府活動報告」という形で目の当たりにすると、1987年の「十三大」(第13回党大会)で当時総書記だった趙紫陽が現在では望むべくもない
「党政分離」を提起したことが夢のようです。

 経済統計を並べてみれば、当時が現在に比べれば圧倒的に貧乏であったことはいうまでもありません。ただし基本的に「みんな貧乏」であり深刻な格差社会は出現しておらず、当否はともかく「党政分離」のような大がかりな政治制度改革を打ち出せるだけの余裕が中国社会にはまだ残されていたということになります。

 ……愚痴でしたね。「和諧社会」というキーワードすら消滅し、来るところまで来てしまっている以上、昔話をしても始まりませんか。




コメント ( 13 ) | Trackback ( 0 )





 中国は毎年恒例である政治の季節に突入しました。まず3月3日に全国政協(全国政治協商会議、形骸化した党外チェック機関)が開幕。続いて今日5日から「なんちゃって国会」である全人代(全国人民代表大会=立法機関)がスタートです。

 2003年にはこの2つの政治イベントの会期中、北京で中国肺炎(SARS)が流行していることを当局が隠蔽したほど重要な……といっても一党独裁体制である中国において全国政協はもちろん、政府系の催し物なんて実質的にはさほど重要ではありません。

 まあ一応縁起物ですし、国際社会に対し中共政権がこの場を引き立てることで「一党独裁色」が薄まりつつあるとアピールしたいという中国当局の思惑もあります。例えば5年に1度開かれる党大会などと比べれば全人代なんて屁のようなもの。ですからこういう縁起物に過ぎないイベントを海外メディアにどんどん開放して取材させて「政治的透明度」の向上を印象づけようというものです。

 また、国営通信社・新華社に「全国政協がこんなに仕事をしています」という記事をどんどん配信させて「中共独裁」ではないという拙い印象操作を試みたりもします。これは国内向けの宣伝活動でもあり、日本や欧米からみれば幼稚に思えるプロパガンダでも愚民教育を施している中国国内相手には結構通用したりするものです。「多党制」とはさすがに言わないものの「多党政治」なんて言ってみたりもします。テラワロスw

 さて、基本的にはどうでもいい全人代ではありますけど、とはいえ、政府の所信表明や年間指標、経済運営方針、対台湾政策など観るべき価値が全くない訳ではありません。もちろん党中央の意思を追認しているだけなんですけど。

 それから5年に1度、政府主要閣僚の任期満了に伴う世代交代がこの場で正式に発表されるので、これは注目点となります。そして今年2008年の全人代がその「5年に1度」の番。国家主席、国家副主席、首相、副首相などの交代・続投に興味が集まるところです。

 とはいえ全人代でその人事の可否が審議される訳ではなく、前もって準備された名簿に対し信任投票を行うという手続きが行われるだけ。全人代が古くから
「ゴム印」(党の決定事項にハンコを押すだけの機関)と揶揄される所以です。

 もちろんひとつのポストに複数の候補者を立てて、全人代で当選者・落選者を決めるなんてことは行われません。ただ信任投票ですから、
反対票・棄権票の多寡で「候補者」に対する実質的な評判をみてとることができるのは面白いところです。

 ――――

 それではこの新人事、全人代で討議されないのなら一体どこで決まるのかといえば、そこは一党独裁ですから中国共産党の重要会議に他なりません。今回の場合はまず昨年秋に開催された「十七大」(第17回党大会)で基本路線が定まり、全人代開催直前である2月下旬に開かれた「二中全会」(党第17期中央委員会第二次全体会議)で名簿に対し最終決定がなされます。……いや、なされました。

 その「二中全会」は2月25日~27日に北京で開かれました。この「二中全会」開催日程は事前に公表されていましたが、私が香港で「昔の観察日記」を記していたころは事前予告がなく、閉会後に会議のコミュニケ(公報)が突然中国国内紙に出ることで「おお、やっていたのか」と思ったものです。そういう細々とした点においては確かに中共政権もオープンになってきています。

 それはともかく。毒餃子事件など色々あったため、また会議での決定事項が比較的地味だったため当ブログではついつい後回しになっていたこの「二中全会」について、全人代に突入する前に一応言及しておこうというのが今回の主題です。

 「二中全会」公報によると、会議では全人代で選出される新人事名簿提案(形式的には全人代で選出されるため「提案」となっているのです)、それに今後5年間の政局にある程度影響を与えるであろう政府機構改革案(省庁の統廃合など)などがまとめられたようです。

 以前、香港紙『明報』が一面トップという自信満々の勢いで「習近平が二中全会で中央軍事委員会副主席に選出される」という消息筋情報をスクープしましたが、現時点までは何の発表も行われていないので、この人事は実現しなかったようです。

 一般的に、中央軍事委のように党と政府に同じ名前の組織がある場合、そのメンバーは原則的に同じ顔ぶれであり、なおかつ慣例に照らせば党部門より政府部門の顔ぶれが先に改まる(例えばまだ党中央軍事委副主席でない習近平が今回の全人代で国務院中央軍事委副主席に先に選出される)ことはないので、習近平の就任は見送られたということでしょう。

 就任するとすれば次の「三中全会」以降かと思われます。なぜ今回は就任に至らなかったのか、といった点が気になりますが、詳報している香港紙は目下のところありません。

 ……という訳で人事が行われず地味になってしまった観のある二中全会ですが、見所が全くなかった訳ではありません。

 ――――

 ここからは私の邪推モード。大味でない公報の方が読みがいがあるというものです。……で、タイトルの通り「サヨナラ和諧社会」ということを、「二中全会」の公報を通じて私は再確認することができました。

 
「和諧社会」=調和のとれた社会、というのは2005年秋の第16期五中全会あたりで華々しく打ち上げられた大花火。改革開放政策を30年近くやってみたら一人当たり平均収入は劇的な向上をみたものの「みんなが豊かになった」のではなく、実情は貧富の差が著しい超格差社会になってしまっていた。……ということで、この格差を改善しようというものです。

 
格差は残っても許容範囲内に抑え込まれた社会=「和諧社会」とし、胡錦涛の指導理論である「科学的発展観」を全面的に貫徹させることで実現できる、とされていました。「和諧社会の構築を」というスローガンが事あるごとに叫ばれたものです。

 ところがこの「和諧社会」という名詞の影が少しずつ薄くなり、存在感を失っていきます。2007年3月、つまり前回の全人代での温家宝・首相による「政府活動報告」では「和諧社会の構築」が前面に押し出されていましたが、10月の「十七大」における胡錦涛の総書記報告では、

「和諧社会の構築を」
「社会の和諧を促進する」

 という2通りの表現となり、むしろ「和諧追求」の度合いが弱い「社会の和解を促進する」の方に力点が置かれている印象でした。これが旧正月直前の現指導部による引退した国家指導者など「老同志」への御機嫌伺いの会では何とこの2通りの表現とも消えてしまいました。

 ●胡錦涛報告は「控えめな宣戦布告」@十七大02(2007/10/15)
 ●「和諧社会」が消滅!……歳末恒例の指導部イベント。 (2008/02/06)

 「和諧」というキーワードが消滅?という訳ではないでしょう。御機嫌伺いの会では党の基本方針が簡潔に示されます。記事でいえば短文でまとめあげなければならず、そこに「和諧」が入らなかったということかと思います。格差改善は中共政権を根本から揺るがしかねないテーマですから、胡錦涛政権がこれをキャンセルすることはまずありません。

 ただし、「御機嫌伺いの会で登場しなかった=簡潔に示された党の基本方針のひとつとして挙げられなかった」ということになるので、優先順位が下がったということはいえるかと思います。

 ――――

 で、この御機嫌伺いの会に続く政治イベントである「二中全会」の公報において、「和諧」はどう扱われているか、というのが私の関心事でした。……その公報には「和諧」が5回登場します。果たせるかな、キーワードとして消滅した訳ではなかったのです。……ただし、

「安定和諧的政治局面」(安定し調和のとれた政治局面」)×1回
「促進社會和諧」(社會の調和を促進する)×4回

 ……と、「和諧社会の構築」はとうとう姿を消してしまいました。「和諧」というキーワードは健在ではあるものの、その言葉からは従来の重みが失われているということです。「和諧社会」という名詞は、もはや使われなくなっています。

 それはなぜか、ということを考えなければなりません。まず「和諧社会」というのは現在の超格差社会に異を唱え、基本的に格差改善を主題としたものです。ところが改革開放政策の恩恵を受けて「富める2割」を形成する既得権益層にとって、超格差社会からの脱却は自らの利権を脅かされることになりまから、唯々諾々と大人しく従ったりすることはありません。

 例えば貧富の格差改善策として累進課税制を打ち出して、金持ちにはたくさん税金を払わせるようにするとします。金持ちは当然ながら面白くないでしょう。……要するに構造改革に対する抵抗勢力の反発が強く、胡錦涛政権は「和諧社会の構築」を引っ込めざるを得なかった、という可能性があります。これが第一点。

 もうひとつ考えられるのは、「和諧社会」の実現自体が画餅に終わりそうだ、ということを胡錦涛政権が自ら認識し、「無理な目標掲げて達成できなかったら叩かれるかも」と自分から「和諧社会の構築」を引っ込めてしまった、という可能性です。

 もともと「和諧社会」の格差の部分に関する具体的な定義は行われていないのですが、新華社系の金融紙「上海証券報」によると、



 ◆数字による「十一五」展望(新華網 2005/10/12/07:12)
 http://news.xinhuanet.com/stock/2005-10/12/content_3606994.htm

 ●ジニ係数は現在のレベルを維持

 ジニ係数でわが国の収入格差をみてみると、1990年には「0.34」前後だったが、現在はすでに「0.45」に迫っており、総人口のうち最も貧しい 20%が収入あるいは消費において全体に占める割合はわずか4.7%。逆に最も豊かな20%が収入または消費に占める比率は50%にも達する。収入格差が過大になるのを抑制するのが「和諧社会」を建設する上での重要な条件である。
努力することによって、わが国は2010年のジニ係数を「0.45」という現在の水準で維持することが望めるだろう。



 とされています。つまり第11次五カ年計画期(2006~2010年)においては、
「頑張りに頑張って超格差社会の現状をこれ以上悪化させないようにする」のが「和諧社会」の実現に向けた取り組みなのです。格差改善は無理。努力しても現状維持が精一杯、というのが2010年までの「和諧社会構築」に関する目標値です。

 2010年の後はどうなるのか、ということはわかりませんが、ジニ係数でいうと目標達成は困難になりつつあります。「0.40」を越えると警戒水域だと国際的にみられているジニ係数が2005年時点ですでに「0.45」。これが翌2006年には早くも「0.47」に到達してしまっており、
上海市の一人当たり平均収入は実に貴州省の13倍にも達しています。

 ●「新浪網」(2008/02/28/17:39)
 http://finance.sina.com.cn/g/20080228/17394560377.shtml

 ちなみにこのジニ係数でいうと、中国は1984年に
「0.24」だったものが1995年には「0.39」となり、2005年が「0.45」、そして2006年が「0.47」へと格差は拡大する一方なのです。最新統計である2007年についてはまだ数字が出ていませんが、格差が改善されているという形跡は特にありません。良くて「0.47」の維持、「0.45」への改善は無理な相談、といったところではないでしょうか。

 指導部において「和諧社会」に対する数字による定義づけが行われていたかどうかはわかりませんが、格差拡大の流れを押しとどめることが困難な上に既得権益層によるあの手この手の反発があります。そうしたなか、胡錦涛政権が「無理な約束はしない方が無難」という方向に傾いたとしても不思議ではありません。「和諧社会」を引っ込める代わりに、

「民生の重視」
「社会福祉の充実」

 といった聞こえの良い旗印を掲げ(農村部の問題が都市部にまで拡大という状況悪化への対応策、というのが実情でしょうが)、一方では、

「民主の推進」

 というこれまた甘美なスローガンなれど、具体的には時間をかけて取り組まねばならないため実質的には「ポーズだけ政策」を空虚ながらも鳴り物入りで打ち出している、というのが現状であるように思います。

 ――――

 さて今回の全人代における温家宝の「政府活動報告」(原案)が先ほど明らかになりましたが、ざっと目を通したところ、「和諧」という単語が登場するのは4~5カ所、それも、

「社会の和諧を促進する」

 というのが主でした。
「和諧世界」という言葉が出てきておやっと思ったら、

「平和と共同繁栄が持続する和諧世界の建設を推進する」

 と、これは外交政策のくだりで出てくる言葉で、ここでいう「和諧世界」とは国際社会のことです。

 ……まあ物価高だ雪害だインフレ懸念だ台湾問題だ五輪の準備だ政府の機構改革だ……と焦眉の急がいくつも出てきているので理想論(画餅)は引っ込まざるを得ないのでしょうが、「和諧社会」というキーワードを放棄したことで、胡錦涛政権のある部分が変質した、ということになるのかも知れません。

 そもそも「和諧」という言葉自体、優先順位が下がって存在感を失っています。
いまや腰を据えて格差改善に取り組む余裕すらなくなりつつある、と形容すべきなのでしょうか。




コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )



« 前ページ