(シリーズ:チベット弾圧2008【3】 へ)
きょうは世間的には休日のようですね。ふだんは香港の暦メインで仕事をしているのと、このところ外出できないでいたので先刻ようやく気付きました。
療養中は皆さんから温かいコメントやメールを寄せて頂き本当にありがとうございました。m(__)m
まだ完全復活という訳ではありませんが、おかげさまで体調は回復基調にあります。病は気からというように、チベットの騒乱に「これは天安門事件以来の大事」と血が騒いでブログに復帰したのがかえって良かったのかも知れません(笑)。
これからも事態の進行に置いていかれないように、ゆるゆると更新を続けていくつもりです。……とはいえ、放置しているうちに全人代は終わってしまいましたし、他にも気になる話題がある上に、物価高などの問題も手つかずのまま。
そして土曜日には台湾の総統選挙です。米国はすでに2コ空母戦闘群と原潜4隻を台湾近海に展開させて万一に備えていると香港では報道されています。対する中共政権、実は民進党の謝長廷に辛勝してほしいと考えているのではないかと私は勘繰っているのですが、どういう結果になることやら。
とにかく今年は年初からイベント続きで気を抜くヒマもない有様です。道楽者としては有り難いことではありますけど(笑)。
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今日は休日ということに安んじて私ものんびりとやらせて頂きます。何はともあれチベット問題。チベット自治区のラサ市は「進駐軍」のもと落ち武者狩りが続いているようですが、同自治区の他の地域の情勢は不明。
そして、四川省や甘粛省のチベット人居住地域における抗議行動はいまなお終息していない模様です。
●チベット人の抗議やまず=甘粛・四川で新たなデモ-中国(時事ドットコム 2008/03/19/21:35)
甘粛省の抗議行動の最新映像はこちら。騎馬隊も登場する勇壮ぶりです。香港紙の報道によると、山間部に住むチベット人たちが馬に乗って一気に山を駈け下り、平野部に集結していた住民と合流して目標に突入したとのこと。
こうした事態を受けて、日本政府の対応も早くなりました。
●青海、甘粛、四川省入りも注意喚起=チベット暴動拡大で日本大使館(時事ドットコム 2008/03/19/20:30)
まあ注意を促すだけですけれど、何もしないよりはいいですよね。先日のラサのとき は私がうっかりしていたところ「dongze」さんがコメント欄にてフォローして下さった(助かりました)のですが、今回は抜かりなくここで外務省からの通知を出しておきます。
●中国:チベット自治区周辺地域の治安悪化に伴う注意喚起 (海外安全ホームページ 2008/03/18)
1.チベット自治区ラサ市では、3月14日に僧侶と警察との間で衝突が発生し、死傷者が出る等情勢が悪化しましたが、チベット自治区周辺の青海省、甘粛省及び四川省の一部地域においても、騒ぎが拡大しているとの情報があります。また、青海省当局関係者は、観光客の受け入れを停止すると述べています。
2.青海省、甘粛省及び四川省に渡航を予定されている方及び現地に滞在されている方は、デモや騒動が起きている危険地域には立ち入らず、最新情報を入手する等、安全確保に努めてください。また、危険な状況に遭遇した場合は、在中国日本国大使館又は在重慶日本国総領事館に御連絡ください。
3.現時点で、デモ等の発生が報じられている地域は、甘粛省蘭州にある西北民族大学、甘粛省のチベット自治州、青海省同仁県及び四川省アバチベット族・チャン族自治州等です。
(問い合わせ先)
○外務省領事局海外邦人安全課(テロ・誘拐に関する問い合わせを除く)
住所:東京都千代田区霞が関2-2-1
電話:(代表)03-3580-3311(内線)5139
○外務省領事局邦人テロ対策室(テロ・誘拐に関する問い合わせ)
住所:東京都千代田区霞が関2-2-1
電話:(代表)03-3580-3311(内線)3678
○外務省海外安全相談センター(国別安全情報等)
住所:東京都千代田区霞が関2-2-1
電話:(代表)03-3580-3311(内線)2902
○外務省 海外安全ホームページ: http://www.anzen.mofa.go.jp/
○在中華人民共和国日本国大使館
住所:北京市建国門外日壇路7号(本館)
電話: (86-10) 6532-2361
FAX : (86-10) 6532-4625
ホームページ: http://www.cn.emb-japan.go.jp/index_j.htm
住所:北京市東三環北路2号南銀大厦2階(領事部)
電話: (86-10) 6410-6970
FAX : (86-10) 6910-6975
○在重慶日本国総領事館
住所:重慶市渝中区鄒容路68号 大都会商厦37F
電話: (86-23) 6373-3585
FAX : (86-23) 6373-3589
ホームページ: http://www.chongqing.cn.emb-japan.go.jp/index_j.htm
チベットはともかく、四川省となると在留邦人の数も多いことでしょうから心配です。特に省都である成都には弾圧軍の総司令部が置かれたとのことで、また市内にチベット人居住区もあるため武装警察や軍隊が要所要所に配備されていつもよりは緊張した雰囲気になっているようです。
余計なお世話かも知れませんが、現地で得られる情報量が私にはわかりませんので関連報道を並べておきます。まあ自分の経験に照らしても、現地は往々にして日本で案じているほどピリピリしていないものだとは思いますが、念のため。
●チベット自治区管轄の成都軍区、「最高レベル」警戒態勢に(YOMIURI ONLINE 2008/03/18/20:10)
【香港=吉田健一】中国チベット自治区ラサで起きた大規模暴動で、18日付の香港紙・明報は、同自治区を管轄する人民解放軍の成都軍区が、17日から最高レベルの警戒態勢に入ったと報じた。チベット自治区駐留部隊の応援のため、すでに成都軍区内の別部隊を同自治区に投入したという。
同紙などによると、中国政府は暴動制圧に解放軍は関与していないと主張しているが、報道の映像などには解放軍の新型装甲兵員輸送車などが映っており、実際には解放軍が出動していたとの見方が強い。
中国の軍事問題に詳しい軍事評論家の平可夫氏は、「装備などから、いずれも成都軍区最精鋭部隊の第149緊急展開師団と第52山岳歩兵旅団が出動したと見られる」と指摘している。
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●チベットへの玄関口で厳戒 成都、小銃持ち警官巡回(共同通信 2008/03/19/19:07)
【成都(中国四川省)19日共同】中国チベット自治区への玄関口となっている四川省成都市では、ラサでの暴動後、チベット民族が多く集まる地区に武装した警官が集中、19日も自動小銃の引き金に指をかけた警官が数人ずつで町を巡回し、厳しい警戒態勢が敷かれた。
市中心部に近く、チベット料理店や土産物店が並び、チベット民族も多く住む一角。警察がこの地区に通じる道をすべて封鎖し、車両の通行は一切禁止されている。道路には10数メートルおきにパトカーや武装警官を満載したバスがとまり、歩道にも多数の警官が立つ。
道を歩く人々の合間をぬうように、小銃を握り締めた警官やバイクに乗り周辺を監視する警官がひっきりなしに行き来する。チベット仏教の僧侶と立ち話をする人がいると、私服の公安当局者とみられる男性が近づき、会話に聞き耳を立てる。
あるチベット民族の男性は「ここでは何も起きていないのに、やり過ぎだ。本当に怖い」とおびえた様子だった。
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●四川省・成都、チベット人への恐怖あおるデマが流布(YOMIURI ONLINE 2008/03/19/21:11)
【成都(中国四川省)=加藤隆則】チベット人の反政府デモが波及した四川省の省都・成都で、チベット人への恐怖心をあおる流言が流布、社会不安が広がっている。政府は19日付地元各紙を通じ、意図的な扇動を信じないよう呼びかけているが、多くの庶民は政府の言葉に耳を傾けていない。
地元紙によると、同市南部で18日、チベット人が路上で刀を振り回す事件が発生した。ネットでは事件直後、民族衣装のチベット人が刀を手にした無関係の写真とともに、「2人死亡」の情報が流れ、現場付近では「ラサの暴動と関連がある」とうわさが広まった。
一方、市内全域に「銀行がチベット人に襲われた」「バスで爆発があった」などのデマも飛び交い、「外出禁止」を命じる外資系企業も。地方出張中の成都駐在日本人会社員(44)は、「現地スタッフから『危ないから戻らない方がいい』と言われた」と電話取材に答えた。同市内中心部は厳戒態勢で、一層庶民の不安をあおる形となった。
政府は18日深夜、「被害は軽症1人」「バスの乗降をめぐるトラブル」と公表。民族対立をあおる流言を警戒しているが、現場近くの女性店員(34)は「政府は信用できない。少なくとも3人は死んだ」と取り合っていない。
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●「うわさ流せば厳罰」 中国公安が市民に警告(共同通信-MSN産経ニュース 2008/03/19/17:34)
中国四川省成都市の公安当局者は19日までに、市民に対し、チベット問題をめぐる治安当局とデモ隊の衝突などについて「うわさ、デマを流した場合は容赦なく厳罰に処する」と地元メディアなどを通じ警告した。
地元紙、四川日報(電子版)によると、公安当局は「一部の人物が悪だくみを図り、(チベット問題について)騒ぎ立てたり、事実をでっち上げてデマを広めている」と指摘。「どこで爆発があったとか、銃撃戦があったとか、何の根拠もないデマだ」と断じた。(共同)
これは平時でも日本でも同じことですが、危ないとされているところに行かない限りはまあ大丈夫、といったところではないでしょうか。強盗に目をつけられたのなら身の不運を呪うしかありませんけど。
ただ成都の場合は大都市ですから、過去のケースがいずれもそうであるように、ふとした出来事を端緒に都市暴動に発展する可能性があるのは怖いところです。当局が治安部隊を駐留させてまで警戒しているその対象はチベット人なのかどうか。むしろチベット人が騒ぐというより、チベット人絡みで事件が起きることに備えているのかも知れません。
例えばちょっとしたことで漢族とチベット人の間でいさかいが生じて、多数派である漢族のグループがチベット人居住区を襲撃する、という偶発的事件の方が現実味があるように思います。漢族がどっと繰り出す、治安部隊が鎮静化に乗り出す、はい官民衝突都市暴動。……という筋書きです。
漢族は漢族で様々な憤懣をため込んでいて、可燃度が決して低くないことは過去の都市暴動のケースが示す通りです。必要以上に兵力を展開させているときですから、「官」が対応を誤ると騒動が予想以上に大きくなる可能性があります。
中共当局はすでに「六四モード」に入っていますから、チベット人の決起に対しては殲滅するのみ、と覚悟ができている筈。では都市部で何を恐れるかといえば、住民の圧倒的多数派である漢族を巻き込んだ事態に発展することなのかも知れない、と考えたりしているところです。
2005年春に「反日騒動」が意外な広がりをみせたとき、反政府運動に転化するのを恐れた当局が慌てて事態の収拾に走ったのと同じで、チベット人に限定されている現在の騒ぎが何かのきっかけで漢族に飛び火することこそが中共政権の懸念材料なのではないかと。何たって超格差社会ですし、繁華街の中に恰好の広場があったりする街ですし。
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チベット問題に話を戻しますと、四川省での騒乱で射殺されたチベット人の写真を「Tibetan Centre for Human Rights and Democracy」(THCRD)がウェブサイトで公開しています。中国当局が銃器を使用した証拠です。URLは以下の通りですが、画像が画像ですからアクセスする方は御注意下さい。
http://www.tchrd.org/press/2008/pr20080318c.html
こういう「証拠」が出回り始めたということも関係しているのかどうか、中国に対する国際社会の批判が少しだけ強まった様子です。あまり期待できませんけど。
●中国はダライ・ラマと対話を=五輪ボイコットは求めず-米高官(時事ドットコム 2008/03/18/23:50)
●チベット騒乱 米国務、国防の高官が対中非難(MSN産経ニュース 2008/03/19/18:35)
●EU代表団受け入れ前向き チベット暴動で中国大使(共同通信 2008/03/19/08:53)
●豪首相、人権問題を訪中時に提起・チベット騒乱(NIKKEI NET 2008/03/20/02:20)
●中国首相「ダライ・ラマと対話の用意も」・英首相と電話(NIKKEI NET 2008/03/20/03:34)
日本も首脳会談や外相会談でチベット問題を提起するそうです。それより胡錦涛の来日を延期する方が先だと私は思うんですけどねえ。
●外相会談でチベット議題(NIKKEI NET 2008/03/19/22:02)
●チベット問題、日中首脳会談で提起 高村外相表明(asahi.com 2008/03/20/00:52)
「議題にする」といっても、どうせこんな感じでしょうし。
いやこれは日本だけでなく、現時点では欧米もポーズだけというかアリバイづくりというか、「とりあえず批判はしたから」というスタンスのように思います。
ダライ・ラマ十四世はチベット人に非暴力を訴えるとともに中国側との対話を求めていますし、対話するよう中国側に求める声も国際社会において確かに出てはいます。しかし当の中国側は「あとは殲滅するのみ」の「六四モード」ですし、対話の余地なしというのが本音でしょう。
●「血みどろの戦い」とチベット自治区書記(共同通信-MSN産経ニュース 2008/03/19/20:16)
●「ダライ・ラマの主張はウソ」 温家宝首相が会見で激しく批判(MSN産経ニュース 2008/03/18/15:56)
●「ダライ・ラマは分裂活動やめていない」中国が反論(asahi.com 2008/03/20/00:51)
……と早くも公言しているので実現は困難でしょうし、そもそも中国にしてみれば、
「チベット亡命政府と対話する」
という対等に向き合う形の場に臨むことなど言語道断。万にひとつ対話の機会が実現したとしても、何の成果もなく終わることと思います。
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最後に、前回の話 に中国側から早くも反応が飛び出しています。
●仏外相の「開会式ボイコット」提案、中国国連大使が不快感(YOMIURI ONLINE 2008/03/19/11:15)
……このリアクションの速さから察するに、中国側は「開催式ボイコット」の実現にある程度の現実味を感じているとともに、「それだけは困る」という気持ちが強いのでしょう。
いやーそんなに嫌がられてしまうと、いよいよやりたくなってしまうではありませんか(笑)。もちろん理想的には、あくまでも「中国以外の国で五輪開催」と「胡錦涛の来日中止」なんですけどね。
(シリーズ:チベット弾圧2008【5】 へ)