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【シリーズ:反日騒動2005(29)】
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またまた週末が巡ってきました。まあ今回は私も眺める側に回らせてもらいます。
何をいまさら、という感じですけど、外務省も渡航に関する注意報をようやく発令したようですね。
中国に対する渡航情報(危険情報)の発出
http://www.pubanzen.mofa.go.jp/info/info.asp?num=2005T091
こういうものは本来、4月16日の上海デモ直後に出すべきですよね。そのときタイムリーに出していれば、邦人の安全確保と同時に、政治的な意味でも中国側に対するプレッシャーになったと思うのです。
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それよりも標題の件です。「怪文書」とは前回紹介した『解放日報』の論評記事(2005/04/25)のことです。同紙は上海の大手紙のひとつで、市党委員会の機関紙。つまり上海における中共の代弁者ともいえる存在です。
●解放日報評論員:本質を見極め、違法行為には厳罰を(新浪網2005/04/25)
http://news.sina.com.cn/c/2005-04-25/09095742012s.shtml
「大量の事実が証明している。最近発生した非合法デモは、愛国的行動でも何でもなく、違法行為なのだ。民衆の自発的な動きでも何でもなく、背後に黒幕を控えての陰謀なのだ。」
――――
と、冒頭から「反日デモ」や「愛国無罪」を非合法認定して斬りまくった上、デモを「陰謀」(反体制的な動き)と断定する凄まじさは、今回の一連の「反日」に対する党・政府サイドからの反応としては際立った強硬姿勢です。他にも当局サイドから山ほど出ている「自重せよ」云々といった類の文章は、いずれも反日活動参加者の「愛国の情」は認めつつ、「なだめすかす」「諭す」「説教する」といった姿勢で書かれています。
ところがこの「怪文書」はといえば、「デモに参加した奴らはみんな有罪。こうした動きを上海は断固許さない!」と、明確に「対決姿勢」を打ち出しているのです。デモに加わった者は人民の敵、という認識なのです。しかも江沢民のお膝元であり牙城である上海からこんな強腰の記事が飛び出してきたのですから、驚かずにはおれません。むろん、様々な憶測も呼びます。これだけでも「怪」とするに足る記事です。
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そういう内容の厳しさや上海発といった点も「怪文書」たる所以なのですが、何よりも「怪」なのは、これが「新華網」(国営通信社・新華社のウェブサイト)をはじめ大手ポータルにすぐ転載され……つまり主要メディアにどんどん転載されたかと思ったら、ほどなくそれが次々に削除されてしまったことにあります。
私が確認した限りでは、「新華網」をはじめ大手ポータルの「新浪網」「捜狐」「tom」、そして広東省系の「南方網」、さらには上海市政府のウェブサイトにも転載されました。そのうち現時点でもまだ読むことができるのは、上に掲げた「新浪網」と下記の「捜狐」だけです。
「捜狐」に転載された記事
http://news.sohu.com/20050425/n225324468.shtml
「新浪網」や「捜狐」にしても、いつ削除されるかわかりません。何せ出身地である『解放日報』のサイトからも消されているのです(pdf版ならダウンロードすることができます。4月25日付の第一面です)。
こうなると政治的な動きが起きていることを想像せざるを得ません。中央の主要メディアでは転載したものの、その「対決姿勢」を中央の方針として打ち出すことに指導部が怯み、急遽削除を命じたのではないかと思われます。
その根拠といえるかどうかはわかりませんが、この「怪文書」に対する網民(ネットユーザー)の反発が激しいことは確かです。
●「人民網」の「強国論壇」に立ったスレッド
http://bbs.people.com.cn/bbs/ReadFile?whichfile=940458&typeid=17
●大手反日サイト「中国民間保釣聯合会」に立ったスレッド
http://www.cfdd.org.cn/bbs/dispbbs.asp?boardID=65&ID=18701&page=1
当局がこういう反応に驚き、「劇薬にすぎる」ということで慌てて引っ込めたという可能性はあります。
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それにしても、どうして「反日気運」も下火になりつつあった時期(4月25日)にもなって、従来の政府見解からは何歩も踏み込んだ、かくも激烈な文章が書かれたのでしょう。
……そんなこと私にわかる訳がないので(笑)、香港や台湾、それに反体制系ニュースサイトを回って関連記事を拾ってみました。
●多維新聞網
http://www1.chinesenewsnet.com/MainNews/Opinion/2005_4_27_20_20_23_633.html
●亜洲時報
http://www.atchinese.com/2005/04/0425rep3.htm
●中視電子報(元ネタは『New York Times』)
http://tw.news.yahoo.com/050428/19/1r4o8.html
●大紀元
http://www.epochtimes.com/gb/5/4/28/n903410.htm
「激語は単なる脅し」
「上海のデモで日本からより強い反発を買ったために、上海市当局が敢えて厳しい内容の記事にするよう指示した」
「これは1989年の民主化運動が当局によって『動乱』認定されてからいよいよ盛り上がったように、厳しい文面を出すことで実は反日デモを煽っている」
「対日政策の内容について党上層部における意見の乱れを示すもの」
……などなど、観測筋のみなさんも明確な結論を出せず、首をひねっているという感じです。ただ上海市党委(それに上海市政府)と中央の間はうまくいっていないのではないか、というニュアンスはほぼ共通しているように思います。
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もちろん私にも結論を出せる力などありません。謎は謎のまま、この「怪文書」が今後波紋を広げることになるのかどうかに留意しつつ、気になる週末に臨みたいと思います。
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【追記】この「怪文書」、問題はやっぱりデモが「愛国の情の発露」であることを全く認めず、さらにデモ自体を反政府的色彩の濃い「陰謀」と位置付けたところでしょうね。北京市と広東省がメーデーに備えて呼びかけを行っていますが、いずれも「非合法デモに参加することは犯罪」としつつも、「愛国の熱情は理解できるが」みたいな一句を挿入しています。もちろんデモ(例えば北京で行われたデモ)を「反政府的陰謀」扱いにはしていません。(2005/05/01/07:58)
→反日騒動2005(30)へ
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【シリーズ:反日騒動2005(28)】
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何だか4月は「反日」「反日」で明け暮れてしまった観がありますね。総括という訳ではありませんが、不肖・愚鈍な御家人が一連の出来事を通じて勉強させてもらったことも色々あります。その中から厳選すると以下の6項目、といったところでしょうか(※1)。
あ、その前に言っておきますが、今回も邪推満開ですから内容はアテになりません(笑)。
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●背景に党上層部の主導権争い
具体的には対外強硬派を主力とする「抵抗勢力」と胡錦涛派の綱引き。権力闘争というほど血腥い(負ければ失脚するような)ものではないが、政策論争をめぐる主導権争いが今回の「反日」の背景に存在した。反日デモをやらせたのも「当局」(抵抗勢力)なら、反日気運をある程度で抑えようとしたのも「当局」(胡錦涛派)。「反日」はいわば政争の具。昨秋以来の外交的失点の連続(特に台湾関連)で胡錦涛の指導力が低下し、対外強硬派が台頭したことが遠因。
●胡錦涛は主要メディア掌握に成功して主導権争いには勝ったものの、全国に広がる反日デモには無力だった
4月19日の「形勢報告会」(李肇星報告)で胡錦涛派と抵抗勢力との手打ちが行われる前ではあったとはいえ、メディアを動員した「理性的に愛国」「まずは安定・団結」といった呼びかけは全く作用せず、16日の上海や杭州に続き、17日にも瀋陽、深センなど国内十数都市で抗議活動が行われた。抵抗勢力がなお抵抗していたためでもあろうが、胡錦涛派が新聞・雑誌・テレビ・ラジオといった従来型メディアに頼ったのに対し、デモ隊がネットの掲示板や携帯メールなど新手のメディアを利用した点にも要注目。
●デモはいずれも百姓一揆型
つまりは無統制な秩序のないデモ。沿道からの飛び入り参加を歓迎するため、進むほどにデモ隊の規模は膨らむものの、それに反比例して主催者の統制力は失われていく。無統制ゆえに暴徒化しやすいし、何を目標にどのぐらい荒れるのかも予測できない。軍紀の乱れた軍隊のようなもの。たとえデモの主催者が組織的なデモをやるつもりだったにせよ、結果からみればその点については全くの素人だったことがわかる。
●組織者たる「民間団体」は動員力に乏しかった
糞青(自称愛国者の反日教徒)の集まる「民間団体」(抵抗勢力の尖兵)は、中国におけるネット普及度の低さを反映するがごとく動員力に乏しかった。いわゆる「ネット世論」の限界を示したともいえる。組織自体も、例えば1989年の民主化運動における各大学の学生組織に比すれば脆弱で無統制だった。これも普段から顔をつきあわせている訳ではない「ネット」による同志的結合のモロさが出た観がある。
●反日デモはやはり「起爆剤」たり得る
もし組織者に一定の動員力があれば、反日デモが社会への不満を反映した広範な市民による都市暴動、ひいては反政府運動への「起爆剤」たり得ることを示した。ただ今回は「民間団体」が動員力に乏しかったため「プチ暴動」止まり。次こそ励めよ起爆剤(笑)。
●中共当局もかなりビビった
中共当局も16日及び17日に行われた全国的な反日活動に、「反日デモ→都市暴動→反政府運動」という流れになりかねないことを実感し戦慄した。デモを煽る側だったとみられる「抵抗勢力」もびっくり仰天(たぶん)。それでまずは中共政権の維持が最優先ということで、すでに胡錦涛が優位に立っていた主導権争いには急遽「手打ち」が行われ、一応一枚岩となった当局は「形勢報告会」を手始めに「反日気運」の火消しや「反日デモ」における暴徒の摘発(対外的イメージの修復)に躍起となった。
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で、現在はといえばメディアを総動員しての「反日気運」の火消しや暴徒摘発に全力、という段階です。
個人的には一連のデモが当局によってどう位置付けられるかに興味があります。例えば1989年の民主化運動では4月末には早くも「動乱」認定されていますし、6月4日の天安門事件は「反革命暴乱」とより極端なレッテルを貼られました。今回はどうでしょう。実は上海の大手紙『解放日報』(上海市党委員会の機関紙)の論評を「新浪網」が転載しています。
●解放日報評論員:本質を見極め、違法行為には厳罰を(新浪網2005/04/25)
http://news.sina.com.cn/c/2005-04-25/09095742012s.shtml
※「新華網」にも転載されていたのですがなぜかリンク先が削除されていました。
「大量の事実が証明している。最近発生した非合法デモは、愛国的行動でも何でもなく、違法行為なのだ。民衆の自発的な動きでも何でもなく、背後に黒幕を控えての陰謀なのだ。」
……のっけからこの調子で、上海の「四・一六デモ」を非合法行為と認定するだけでなく、背後に糸を引く者のいる陰謀だとしています。
「最近発生した非合法デモは、愛国的行動でも何でもなく、違法行為なのだ」
この一言が全てです。破壊行為だけでなくデモ自体を違法認定ですから、参加者は全員有罪ということになります。……そりゃ全員を逮捕したりはしないでしょうが、そういう位置付けがなされたということです。「愛国無罪」を叫んで練り歩いた連中は、それを愛国的行動ではなく非合法デモと決めつけられ、全員が「有罪」扱いなのです。
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こういう状況ですから、前回書いたように、反日「民間団体」大手の「中国民間保釣聯合会」の会長で珍獣(プロ化した糞青)の代表格である童増も「5月4日・北京」で提出したデモ申請を取り下げていますし、いまや同会自体が反日デモの首謀者(『解放日報』の論評にいう「黒幕」でしょうか)とみられて警察に家捜しされ、事務所からパソコンなどが押収される始末。
反日「民間団体」の一方の雄である「愛国者同盟網」もきょう(4月28日)改めて「自分達はいい子にしています」声明を出しています。この調子だと5月1日あるいは4日に行われるとみられているデモ活動も、流れるかショボいまま制圧されて終わるかのいずれかでしょう。そもそもデモ申請が通るとは考えられませんし、だからといって無許可でやったら反政府運動なんですから。
では事態はこれからどう動くかといえば、とりあえず「反日」自体は一段落して、たぶん意外な方向への飛び火でしょう。プチ暴動を別とすれば今回の反日デモが何かを誘発した形跡はほぼ認められないのですが、どうやら全く別な次元に火の粉が降りかかった様子に思えます。それは何かといえば、ズバリ、権力闘争です。……邪推ですよ邪推。
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何の確証もないのですが(だって邪推ですから)、どうやら党上層部における主導権争いが胡錦涛派の勝利に終わったのに加え、上海の「四・一六デモ」に対する「非合法・非愛国」認定、さらに「中国民間保釣聯合会」が治安当局による家捜しに遭った……ということで私はその気配を感じました。家捜しは一見すると組織を潰すための予備行動のようでもありますが、中共当局はやるなら問答無用ですぐに潰して、関係者一同を即逮捕・即判決となる筈です。
ところが今回は手数をかけています。これは「嫌がらせ」「脅し」の類で、内外に対しては「反日デモをやるとこうなる」という見せしめの意味もありますが、実はそれよりも政治的デモンストレーションの色彩が濃いように思います。
「民間団体」、と常にカギカッコ付きなのは純粋な民間組織ではないからです。政治的保護者が背後に必ずいます。そういう後ろ盾がなければ、一党独裁の専制政権下で政治活動などできる訳がありません。「民間団体」を潰すには、まず政治的保護者を潰すなり抵抗力を削ぐなりする必要があるのです。
今回の「中国民間保釣聯合会」に対する当局の手入れは、同会の政治的保護者が白旗を掲げたか沈黙したか、とにかく後ろ盾になってやれなくなったことを示すものでしょう。「愛国者同盟網」が改めて声明を発したのも似たような理由によるものかと思います。
似たようなケースが、ない訳ではありません。胡錦涛一派が昨年夏、当時なお軍権を手放さないでいた江沢民に引退を決意させるまで追い詰めます。江沢民は確か9月1日付で党中央軍事意員会主席の辞職願を党に出しています。そしてあたかもそれと一蓮托生とでもいうかのように、「愛国者同盟網」が当局によって閉鎖され、「中国民間保釣聯合会」など今回の反日デモでも活躍した「民間団体」4サイトが掲示板閉鎖という「謹慎処分」を受けています。
――――
たぶん今回も「中国民間保釣聯合会」などは潰されずに残ると思います。潰してしまえば、さすがにネット上での反応は芳しいものではないでしょう。でも胡錦涛政権は目下のところ「ネット世論」を敵に回したくはない様子です。全人代で温家宝がネットの掲示板(新華論壇)への書き込みを見たりしている、と媚びを売るコメントを出していますし(※2)、今回台湾の国民党主席・連戦が南京を訪れた際、江蘇省のトップで胡錦涛派でもある李源潮・省党委書記も会見の席上、
「出る前にネットユーザーの反応をみてきたところです。みんなあなたの訪中を喜んでいる。私は個人としてだけでなく、中国のネットユーザーをも代表して歓迎の意を表します」
とわざわざ言っています(※3)。「民間」の先走りは面倒なので、とりあえず牙を抜いて言論統制の檻の中に放り込んでおく、といったところではないでしょうか。飼い馴らすことができれば便利に使える道具ですから、必要なときに檻から出して掌の上で吠えさせる。まあ抵抗勢力なら煽るだけでいいのですから簡単でしょうが、統治者としては掌の上で踊らせたいが先走られても困る、ということで、そういう「珍獣使い」の域に達することは容易ではありません。以前よく引き合いに出した、
「外角低め、ストライクゾーンギリギリのところでボール1個分の出し入れ」
という芸当が必要になる訳ですが。……まあそこまで飼い馴らす気があるのかどうかはともかく、ひとまず檻に入れておけというところかと思います。
――――
「民間団体」に対する当局の動きから権力闘争説を引っ張り出してくるというのは無理があるのは自分でもわかっています。まあ邪推ですから(笑)。
ただ、流れは胡錦涛にとって追い風であることは確かです。それも半年ぶりくらいの好機でしょう。対外強硬派を押さえ込み、反日デモが反政府運動へと発展する芽を摘み取った。反日デモに関して日本には謝罪していないし、日中首脳会談でもメンツを保った。本当の火種である台湾問題も、いま連戦が訪中してきており統一を期待するムードが中国の側では醸成されつつある。少なくとも「台湾独立」に向かう流れでないことは確かでしょう。となれば対外強硬派も胡錦涛に文句を言う必要がなくなる。
どこまでこの流れに乗れるかは未知数ですが、胡錦涛にとって邪魔な連中から完全に発言権を奪ったり、あるいは更迭したりするには絶好のチャンスではあります。要するに統制力を高める千載一遇の機会なのです。
そして上記『解放日報』の論評にある、
「最近発生した非合法デモは、愛国的行動でも何でもなく、違法行為なのだ」
……と、反日デモ自体を愛国的行動ではないとし、違法行為としたこの部分です。
もう少しはっきり言いましょうか。場所も他ならぬ上海ですから、胡錦涛が江沢民に喧嘩を売っているようにみえるのです。あるいは「御老人、火遊びもいい加減になされませ」と脅しているようにもみえます。
――――
だから、いま現在展開されているのは主導権争いではなく、権力闘争。少なくとも機関紙に出ているのですから上海市党委員会はその線でまとまったのでしょう。それを「新華網」が転載しましたが、これが中央の見解になるとすれば、事態はいよいよ剣呑です(笑)。外交部報道官の言っていた「市民による自発的な行為」云々まで否定されてしまいます。
あるいは、江沢民が総書記時代に打ち立てた価値観の一部に、相当な修正が加えられる事態も出てくるかも知れません。修正というより否定というべきでしょうか。『解放日報』の論評からしてそれに近いものなのですが。
今回の「反日」騒ぎを奇貨として、胡錦涛が戦機をうまく捉えて政争を制し、その余勢を駆って政権を自分の色で染め上げるべく本格的に動き出した。……まあ例によって出鱈目な邪推ですから、皆さんお気になさらずに。
江沢民も回顧録を出せるうちに出しておいてよかったですね。そのうち発禁になったりして(笑)。
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【※1】他にも色々あります。例えば当初は「ネット署名」だった反日活動が、「抵抗勢力」(私見)が「新華網」を通じて「右翼教科書支援企業一覧」など強力な燃料の投下を行って反日気運をヒートアップさせ、活動も「ネット署名」からより過激な「街頭署名」「デモ」が主流になっていった。……私でもわかる「政略」を見せてもらったのは嬉しい限りでした。
【※2】http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-03/14/content_2694812.htm
【※3】http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-04/27/content_2882340_1.htm
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【シリーズ:反日騒動2005(27)】
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局面が、ガラリと一変しましたねえ。
最近の中国では珍しい出来事ではないでしょうか。私は江沢民時代をほとんどヲチしていないんですけど、1992年初めのトウ小平による南方視察を発端に保守派が事実上壊滅した、多分あれ以来の出来事でしょう。
もちろん、局面の転換が与える影響や意義の大きさは当時とは比較にならぬほどショボいものですけど、チナヲチのオタとしては、こういう状況をリアルタイムで眺めることができる、ということに血の騒ぎを覚えるのです(笑)。
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申し遅れました、というか言うまでもないことでしょうけど、「反日デモ」のことです。
デモだけ駄目なのか、署名活動のようなものもNGなのか、それはまだはっきりしませんけど、つい先日まで当局が自ら煽って「官製デモ」(+プチ暴動)を繰り返していた一連の「反日活動」が、とりあえず事実上御法度になった、ということでしょう。
この新しい流れ、先日の「形勢報告会」(4月19日)での李肇星報告でほぼ確定したものですけど、今回の小泉・胡錦涛会談(4月23日)で決定的になりましたね。日中首脳会談で両国関係を改善することで一致、ということで、トップ(胡錦涛)自らが「反日」のクールダウンに乗り出したことを示すものですから(※1)。
そういう意味を持つだけに、国営通信社・新華社の反応も速かったですねえ(※2)。前回は随分待たされたのに、今回は「新華網」に掲載されたのが会談終了後ほどもない24日の1時1分。この「速報」ぶりに、当局の緊張を感じてもいいと思います。できるだけ急いでニュースで流して、新しい流れが決定的であることを国民に知らしめたかったのでしょう。
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知らしめるべく芝居を打ったりもしていますね。24日の珠海における反日デモ、200mで散らされたとか報じられていましたけど、これはデモ開始から制圧まで筋書きのあるものではないかと思います。広州の日本総領事館の情報に基づいたデモ情報を前回お伝えしましたが、珠海だけやけにスケジュールが具体的で詳細(笑)。中共当局がマスコミ向けに、
「ここでやりますからスタンバイよろしく」
……という情報を流したんじゃないかと思うのですが(日系企業の従業員に動員要求もあったという噂もありましたね)、どうでしょうか。
あと、南京でのデモ呼びかけやら車に火をつけろだとネット上で騒いでいた馬鹿が逮捕されていますね。本当の基地外か便乗犯(最近こういう事件は多いです。「爆弾しかけた」とか)かは知りませんが、中国国内マスコミでは「あったこと」にされています。
――――
まあとにかく何といいますか、常任理事国入り云々から歴史教科書の問題になって一気にヒートアップした今回の「反日」ですが、「形勢報告会」の李肇星報告以来は逆の方向へと一気呵成です。しかも洪水のような、のしかかってくるような宣伝攻勢。圧倒的すぎます(笑)。
「形勢報告会」の出張サービス部隊が主要都市を回るは、公安部報道官が違法デモへの参加を戒めるは、上海のデモで破壊活動に携わった者多数を逮捕するは、商務部長に日貨排斥の非を論じさせるは……それだけでも落ち着かないのか『人民日報』や「新華網」で署名論評を濫発した上に、学者など多数の談話を紹介して、
「愛国はいいんだけどさ、非合法なことやっちゃダメだよ」
「愛国の情熱をね、学業とか仕事とか、自分の本分に転化してこそ本当の愛国活動だよ」
「発展するためには社会の安定と国民の団結が必要なんだから。それを崩してどうするんだい」
……みたいな記事をどんどん出しています。一応全部手元に残してありますからURLを並べてもいいんですけど、ここ数日で20本を下りません。動員された学者の中には互いの転居などで音信の途絶えていた私の友人がいまして(教授かよ!)、久しぶりに連絡を取り合った……という美談もあるのですが(笑)、とにかくすごい分量です。
――――
新華社の速報ぶりにせよ、この種の記事の膨大な量にせよ、全て国内向けに行われている。つまり「反日活動」は国内問題であり、早急にその芽を摘まないと辛うじて安定めいた状況を保っている中国社会を突き崩しかねない危険な動き、と当局が判断したことになります。「日本の反発?それどころじゃないよこっちは」という感じでしょうか。
対外活動の筈だった「反日」が国内問題へと転じたことで、当然ながらもうひとつ変化したことがあります。ええ、「抵抗勢力」の手足となって「反日活動」のお先棒をかついできた糞青(自称愛国者の反日教徒)や珍獣(プロ化した糞青)の扱いです。2週間前のような調子で「反日デモ」をやろうものなら違法デモ容疑で即逮捕。
時代の寵児が一夜にして反政府分子です。でも昔の中国は1957年の「百家争鳴」に始まって1989年の民主化運動までこれの繰り返しでしたから、新聞を読むにしても行間から政策変化の気配を察したり、政治運動にはなるべく積極的には関わらない(政策の一変に備えて)、でも消極的ともみられないようにする(批判されないように)……などといったバランス感覚が中国人にありました。糞青が愕然としているとすれば、それは政治運動めいたもののない幸福な環境に育った世代である証拠です。政策の一変に衝撃を受け「愕然」とした糞青どもの感情が今後どう変化していくかは、興味深いところです。
――――
香港紙『明報』(2005/04/26)の取材によると、珍獣の代表格である中国民間保釣聯合会の童増・会長は5月4日の北京におけるデモ申請を取り下げたようです(※3)。22日には「デモをやる。やるんだ」と同紙のインタビューに大気焔だった童増ですが、25日には「大局を顧慮して」云々と、一転です。「中止じゃない。延期だ」と当人は言っていますが、さてどうだか。それにしてもコイツはその知名度や肩書きの割には、切所に立たされると本当に脆く崩れてしまう男です(笑)。
「愛国者同盟網」と並んで反日「民間団体」の総本山である中国民間保釣聯合会にしてこの体たらくですから、
「愛国精神はよしとする」
「違法デモは許さない」
と言いながら、事実上「反日デモ」は認められないものとなったのでしょう。そればかりか、当局はそういう申請を出した組織を潰しかねない剣幕、といえるかも知れません。
という訳で、童増のような珍獣レベルになると自己保身や組織防衛のためオトナの選択をすることに躊躇しないのですが、糞青はどうでしょう。「地下」に潜ってQQで連絡を取り合うような連中がいます。状況がこうなってくると「反政府運動」同然の扱いになりますから腰砕けになりそうな気がするのですが……。
――――
【※1】今回の日中首脳会談で胡錦涛・総書記が示した「日中関係の発展に関する5項目」は今年3月の全人代で温家宝・首相が示した「対日3提案」よりもやや後退した内容になっているように思います(特に台湾問題など)。これは胡錦涛の意に反して「反日」を煽っていた「抵抗勢力」の主力・対外強硬派に胡錦涛が妥協したことを示しているのかも知れません。……確証はありませんけど。まあのんびりヲチしていくことにしましょう。
【※2】http://news.xinhuanet.com/world/2005-04/24/content_2869854.htm
【※3】http://hk.news.yahoo.com/050425/12/1bvvn.html
→反日騒動2005(28)へ
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【シリーズ:反日騒動2005(26)】
←(25)へ
またまた週末が巡って参りましたので恒例のデモ情報です。
中共当局が反日デモ封じ込めに力を入れている様子から、所詮は「小皇帝」(甘やかされて育った一人っ子)世代で、正念場に差しかかると途端に腰砕けになる糞青(自称愛国者の反日教信徒)が、一定規模のデモを行うとは考えにくいです。
昨年秋に「愛国者同盟網」を胡錦涛に潰されたら一気に落胆して意気消沈の態だった連中ですかから。それにデモだけでなく、集会も許可がないと実施できませんし。
ただ、どこの国にも基地外はいます。中国のネット世論では小泉首相の「お詫び」発言に対しても、
「うわべだけ。嘘つくのもい加減にしろバーカ」
という受け取られ方をしています。また政治運動(挫折・弾圧)を経験していないということが糞青の強みとなる場合があります。いわゆる盲蛇に怖じずというやつですね。
という訳で、一応念を入れておきます。
――――
ただ以下の情報の出処は全て広州の日本総領事館から4度に分けて出されているものを総合したもので、情報の確度については総領事館も確認がとれていない状態です。……現地在住の方はもう御存知の話かも知れませんが、念のためということで。
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■4月23日(土)
●深セン市
時間不詳、日系スーパー周辺におけるデモ行進。
●広州市
時間不詳、天河地区の日系スーパー周辺におけるデモ行進。
●東莞市長安鎮
時間不詳、長安広場付近における集会・デモ行進
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■4月24日(日)
●珠海市
10:30南屏街口集合→11:00デモ隊出発→前山大橋(明珠南路方面からのデモ隊と合流)→九洲大道→景山路→海濱北路→鳳凰南路→日系スーパー→烈士陵園(なお、この情報では、併せて公共物の破壊等を行わない理性的な抗議活動が呼びかけられています。)
●東莞市長安鎮
時間不詳、長安広場付近における集会・デモ行進
――――
【※】これ以外にも東莞市、中山市において一部で抗議活動の噂が流れているほか、その他の都市でも、何らかのきっかけで抗議活動が発生する可能性もある模様。
――――
広州総領事館では、
「中国関係当局は最近、情勢の沈静化に向け大衆に対する宣伝・教育を強化しており、特に破壊活動等の違法行為には強い警告を発出していますが、皆様におかれては、不要不急の外出は控えられるなど、ご自身の安全確保に引き続き十分ご注意下さい。」
と呼びかけています。
なお総領事館の連絡先も付記しておきます。
ホームページ(http://www.guangzhou.cn.emb-japan.go.jp)
本件に関する緊急連絡先(注:本件のみに対応)
携帯電話:13802998387
当館メール・アドレス ryojikan@cgjp-gz.com
現地在住の皆様、どうかくれぐれもお気を付け下さい。
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一方、今朝の香港紙『明報』(2005/04/23)によると、大手反日「民間団体」であり糞青への影響力も大きい「中国民間保釣聯合会」の会長で珍獣(プロ化した糞青)の代表的存在である童増が同紙の取材に対し、5月4日にデモを行う申請を公安当局に提出したことを明らかにしています。童増も運動資金集めと組織防衛でで大忙しですね(笑)。
以下は余談ですが、「人民網」や「新華網」は基地外の集まりと思っていますから多少の反日記事が出ても腹が立たないのですが、ごく一部のコラムニストを除き、香港各紙が「反日」で足並みを揃えているのは非常にムカつきます。しかも巧みな捏造も織り込まれていたりするのです。
「小中華意識」もあるとは思いますが、いかに言論の自由があろうとこの調子ですから。普通選挙が実施できるであろう民度であっても、安直な方向に傾けばかくなってしまう、という見本のようなものです。
香港各紙の記者、そのパパラッチ(狗仔隊)精神ともいえる取材対象への執念(江沢民をマジギれさせたことも)には一応敬意を表しますが、肝心の報道者としての実力とその分野に関する専門知識のレベルが低すぎです。あと平気で他紙や海外の新聞・雑誌をパクるモラルの低さも嘆かわしいことです。最近は政治意識が高まりつつあるとはいえ、基本は「No money, no talk」(カネこそ全て)の香港人ですから、コスト削減を追求するとそういう袋小路に入ってしまいます。
まあ英国から中国へと植民地の主人が交代したことで、あとは「死路一条」(衰退する一方)であることは間違いないのですが、中国の一部でありながら反共雑誌も出せる現在の環境を何とか死守してもらいたいものです。
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【シリーズ:反日騒動2005(25)】
←(24上)へ
それにしても、中共は度胸ありますよねえ。
いや、前回紹介した労使紛争や汚職をめぐるストライキや集会といった抗議活動は、毎日のように中国各地で起きています。広東省・東莞市の日系企業におけるストライキや同省潮州市の台湾企業での略奪事件もあります。外資ゆえに海外メディアが注目してニュースになりますが、実際は四川省達州の鉄鋼労働者による集会のように、顧みられないケースがほとんどです。
そういう状況下で反日デモをやらせたんだから、これはもう大胆と言うほかはありません。万一、労働争議などが合流してしまったら大変なことになっていたでしょう。
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実際に紙一重だったとも思うのです。デモ+プチ暴動は北京、上海、広州、深センで起きています。これはある意味象徴的なのかも知れません。
とは、いずれも出稼ぎを目的とした農民など外来人口が多い。しかし新卒の就職率さえ7割前後といった状況ですから、本来の上海市民にせよ、外来人口にせよ、失業する人が多く出てくる(参考◆◆◆)。一方で成り上がった私営企業者や高給を手にする「白領」(ホワイトカラー)が存在する。失業者だけでなく、内陸部の都市に加えて貧富の格差も大きいのです。わずかな物価上昇でも動揺します。
そこで当ブログのいう百姓一揆型デモ(沿道の市民などによる飛び入りを拒まず、むしろ歓迎する=デモ隊の組織性や理性が低下するため暴徒化しやすい)をやるのですから、荒れない方がおかしいといえるかも知れません。被害に遭われた日本人の方には申し訳有りませんが、あの程度の騒ぎで収まったのは本当に僥倖だと思います。
総領事館前で待機していた警官や武装警察がデモ隊による突破を簡単に許し、投石その他を黙認した……治安担当としてこれは許されるべきものではありません。ただ、ガス抜きの観点からすると、ある意味これは成功した措置だったかも知れません(もちろん、投石行為などを私が是認している訳ではありませんよ。念のため)。
もし総領事館前を本気で固めていたら、デモ隊もあきらめてターゲットを変更する可能性が出てきます。市民が多数混じっているのですからそこは成り行き任せです。組織者の本意でない流れになっても不思議ではありせん。前にも書きましたが、例えば日本人居留区に転進するとか。……沿道の日本料理店の被害からみて、通州事件の再現になってもおかしくなかった、と思うのです。
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そこで「中共は度胸ありますねえ」ということになるのです。私は一連の反日騒動の背景には胡錦涛政権ないし党上層部の政策論争に起因する主導権争いがあった、という説をとる者です。主導権をとるために国内が多少乱れてもいいという発想、あるいは乱れることすら想定外だったのかも知れませんが、いずれにしても今回、それがまかり通ったのは亡国の兆です。
まあ有り体にいえば、本当はこれは「度胸」ではないですね。主導権をめぐってデモ鎮静化を図った方も、逆に煽った方も、上海のデモを見て、また翌日の全国各地で発生した反日活動にびっくり仰天しまいました。そこで慌てて鎮静化に向けた手を矢継ぎ早に打ち出した訳ですが、このドタバタぶりを市民はどうみることでしょう。少なくともこれで中共と胡錦涛政権の威信が大幅にダウンしたことを、統治者たちは気付いているのか、どうか。
4月19日に開かれた「形勢報告会」については以前書いた通りです。あとは署名論評を濫発して安定・団結を訴え、公安部報道官まで引っ張り出して、未認可デモへの参加は犯罪だと言わせる。主要大学では禁足令めいたものが敷かれ、ネットでの規制も強化されています。
――――
香港紙『蘋果日報』(2005/04/22)によると、「広東愛国志願者」や「中国民間保釣聯合会」は論壇(掲示板)をメンテナンスを名目に一部を閉鎖するか全面閉鎖。「愛国者同盟網」は「緊急公告」と銘打って、戸外での関連活動に参加しないよう呼びかけています。さらに「中国918愛国論壇」では投稿された内容はすぐ掲示板に乗らず、審査を経て許可されたものだけ掲載されるという一種の自主検閲制度を実施しています。本当の愛国者ならこういうときこそ真価を見せるべきなのに、「自称愛国者」はやはり「愛国」より組織防衛が大事なんでしょうね(笑)。
この『蘋果日報』では「5月1日に上海と南京で、5月4日には上海や温州、寧波で反日デモが行われるという情報が」としていますが、これは上海の日本総領事館から出ている注意報がソースです。香港マスコミもお手上げといった感じですね。北京デモ計画など具体的な情報が出ているケースもありますが、この時期にもう流れ出るというのは何やら陽動作戦くさいですね。
ネット規制に話を戻すと、文中に含まれると送信できなくなる「NGワード」も大幅に増えている模様です。「反日」「抗日」や「遊行」(デモ)などがそれで、大手ポータル系の論壇に行くと「反.日」「抗-日」などと苦心しているスレッドを目にすることができます。デモはともかく、本来錦の御旗である筈の「反日」「抗日」がNGワードになるというのは冗談としか思えません。まあそれだけ社会状況がが一触即発の危険水域にあることを当局が認識していて、それゆえ起爆剤を過剰なほど警戒しているということなんでしょうけど。
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上で書いた「形勢報告会」絡みでは、何とその出前も行われているんですね。要するに「形勢報告会」で示された「政策転換」を各地に浸透させるべく宣伝部隊(宣講団)を出しているのです。
●中日関係形勢宣講団、天津・上海・杭州などで報告会を開催
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-04/20/content_2855408.htm
各地とも地元の党・政府関係者や大学生を招いて日中の連携がいかに重要か、また歴史問題などで日本に反発する際には理性的かつ合法的なな方式を以てしなければならない、などと諭しているようです。諭すために呉建民氏など外交畑のベテランまで引っ張り出されて談話を発表したりしています。
……これって何か文化大革命っぽくないですか?私の感想はそうでした。当時、中央の方針を宣伝して回る紅衛兵のグループがあったかと思います。文革期の中国を描いた映画『芙蓉鎮』にもその学習会に参加してきた党幹部が、そこで学んだという「革命舞」をみんなの前で披露するシーンがあったと記憶しています。今回も「日中友好舞」とか「不容改竄歴史舞」などがあればいよいよシャレめいて楽しいのですが。
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話がいきなり飛びますが、どうも胡錦涛・総書記というのはそういう古臭いやり方がお好みのようですね。今回の「形勢報告会」「中日関係形勢宣講団」もそうですけど、かなり前から「保持党員先進性活動」なる党員向けの政治学習会をやらせています。共産党員たるもの人民の模範にならなければならない、というのが趣旨でしょうが、例えば「雷鋒に学べ」のようなものですね。
実際、昨年秋に胡錦涛政権がスタートしてから「雷鋒」に匹敵する新キャラが準備されていました。「牛玉儒」という田舎の幹部が党務に没頭して自らを顧みず、ついに病に倒れた……という実話なのですが、昨秋の一時期、その事蹟が大々的に宣伝され、「新華網」では特集ページまで設けられました。それだけでなく牛玉儒の事蹟を讃える演劇までが作られ、先ごろ北京で上演されています。
●演劇「牛玉儒」、北京で初公演
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-04/17/content_2842452.htm
21世紀に毛沢東の伝統的手法をやらせる感覚というのは、好みもあるでしょうが、ネット全盛時代であることを思うとき、この古臭いやり方は人民を舐めているという見方もできます。……とはいえ、都市部在住でネットを楽しめる1億人ばかりならともかく、農村部でやると結構受け入れられてしまうところが中国の民度でもあります。
胡錦涛政権の目指すもの、そしてそのために採られる政治手法などについては当ブログにおいて散々書いているので重複を避けますが、胡錦涛がおよそ「開明的」という言葉からは最も遠い場所にいることは記憶しておいていいかと思います。
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何だかとりとめのない話になってしまいました。すみません。
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もう某巨大掲示板にスレが立っていますので速報ではありませんが。
●深センの日系工場でスト 18日から1万7000人が争議(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050421-00000130-kyodo-int
深セン市に工場を構える通信機器メーカー・ユニデンで18日から従業員約1万7000人が一斉ストライキに入っているとのことです。今朝の香港各紙が一斉に報じています。共同の元ネタは記事にあるように香港の英字紙『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』。
「同工場の日本人責任者は『ストは何の予告もなく始まり、具体的な要求も分からない。地元政府に調停を依頼しており、22日から操業を再開する予定だ』としている。」
……というのも同紙からの引用なのか独自の電話取材なのかは不明ですが、中国語は読めないのでしょうか。華字紙も読めばいいのに。
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という訳で『蘋果日報』『東方日報』『大陽報』『香港文淮報』の報道を総合しますと、地元在住の方は御存知なんでしょうがこの日系企業、「友利(深セン)電子有限公司」(Uniden)は深セン(福永鎮増尾村)に工場が進出して十数年になるそうで、敷地内に工場大小2棟があり、2万名近い従業員が電話機や携帯電話の部品製造などに従事しているそうです。
華字紙においてはスト突入は、
「16日」(『太陽報』2005/04/21)
「20日」(『蘋果日報』2005/04/21)
と二説ありますが、工員側の要求は、
●工会(労働組合)の設立
●待遇改善
の2点。スト突入後、工員たちは宿舎に残ったり市内をブラブラしたりしているそうです。まあ遠足などにある「自由時間」状態ですね。
複数の香港紙が女性従業員らから聞いたところによると、この工場では昨年2月と12月にもやはり労組設立と待遇改善を求めたストライキ騒ぎが起きており、会社側が今年7月までに労組設立を約束したことで事態は収拾されたとのこと。しかしその後、会社側が従業員代表の多くをストとは無関係な理由を口実に相次いで解雇したほか、各種料金や罰金などの新設による「実質的な減給」を実施。一方で昨年12月時点で日勤11時間といった労働条件に不満が募り、工員らの怒りが再び爆発、ストに至った模様です。
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この件に関する私の意見は極めて明瞭です。
「こら工員ども、分際をわきまえろ」
……の一言に尽きます。さらに言うなら、
「文句を言わず黙って働け。せめてサル並みに働け。それが国家がお前らに与えた役割なんだよ」(◆)
といったところです。中共がそういう成長モデルを構築して、それで「搾取?どうぞどうぞ」と外資を呼び込んで発展を図っているのですから、待遇改善とはおこがましい。ストライキなどはもっての他です。労組設立?寝言は寝て言え、てなもんです(参考)。
――――
実際のところ労使紛争やストなんて珍しくもないのですが、時期が時期な上に日系企業ということで、香港各紙も足並みを揃えて報じたのでしょう。要するに「反日デモ+プチ暴動」が飛び火したのか?ということです。本当にそうならきわめて興味深い動きだと思います。飛び火が飛び火を呼ぶかも知れませんから。
少なくとも深セン市当局はそうみているらしく、公安(警官)100名以上と警備員を連日工場に配置し、近くの道路や要所に検問などを設けて警戒に当たらせているとのこと(『蘋果日報』2005/04/21)。『東方日報』(2005/04/21)だと公安の数は200名と倍増しており、外への出入り口を封鎖して工員がデモに繰り出さないよう警戒している、となっています。
当の工員たちは意気盛んで、「要求が容れられるまではストをやめない」としています。以下は邪推なんですが、労組結成は背後に中共の影がチラついているような気がします。中国における「工会」(労組)とは労働者の利益を代表して云々、というよりは、労働者を中共の意のままに扱うための御用機関、大学でいえば学生会のようなもので、党の息がかかっているのです。
工員側がその設立をあくまで要求しているというのは、何やらこの日系企業が「外資への『工会』導入」のモデルケースとして狙い撃ちされてしまったような気がしないでもありません。
ともあれ、手元の情報は全部並べてしまいましたので、あとは現地在住の方から詳報が入るのを待ちます。
――――
ここでいきなり四川省へと話が飛びます。全く別の話題です。
――――
これは香港紙『蘋果日報』(2005/04/21)がすっぱ抜いたニュースなのですが、四川省達州市で4月18日、地元鉄工所に勤務する従業員1000名以上が市政府庁舎前に参集し、請願活動を行っています。
よくある話といえばそれまでなのですが、原因は国有企業の制度改革の過程における汚職。工員たちの医療保険や養老保険に充てるべき積立金が流用された模様です。
RFA(米国の反共ラジオ局)の報道によれば、この工場は達州市にある渠江鋼鉄廠(達鋼)で、18日には従業員2000名余りによるデモを実施。工場側がここ何年も医療保険及び養老金を対象となる従業員に支給しておらず、それなのに従業員の給与からはそのための積立金という名目での天引きが続けられている……ということに抗議しています。
地元のウェブサイトと思われる「達州信息港」によると、工員たちは、
「眠れる達鋼の人民よ団結するのだ、汚職と貪官汚吏に反対せよ」
との横断幕を掲げているそうです。
当然のことながら現場には多数の武装警察が出動し、万一に備えて庁舎前を警備しているとのこと。工員たちを力づくで解散させる可能性もある、といわれています。
これは「飛び火」ではないかも知れませんが、中国国内では各地でこうした騒ぎが多発し、燻って煙を上げているような状態であることは確かです。
――――
「反日」気運が政府の手に負えないほど高まる気配に、慌てて火消しを始めた中共当局。一方でこういう事態が連日のように中国のどこかで起きているのですから、そりゃビビるでしょうねえ。何かのはずみで「反日デモ」のような起爆剤と接触してしまったら、手がつけられなくなりますからね。
現場写真(参集する工員、出動した武警など)。
http://post.baidu.com/f?kz=13861773
掲示板に貼られたものなのでスレごと削除される可能性大です。興味のある方はお早めに。
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【シリーズ:反日騒動2005(24下)】
←(24中)へ
町村外相が訪中した4月17日、前日の上海における大規模デモを受け、北京は硬軟取り混ぜた厳戒態勢で無事に何事もなく乗り切ることができた……というのは、「中」の文末に記した通りです。
しかし、それは北京だけのことでした。
香港紙『大陽報』の報道(※1)によれば、17日に反日活動が発生した都市とその人数は、瀋陽(1万名)、石家荘(人数不明)、青島(数十名)、上海(2000名)、寧波(人数不明)、長沙(数百名)、西安(数十名)、成都(300名)、アモイ(1万名以上)、広州(数十名)、東莞(数十名)、珠海(2000名)、深セン(10万名)、南寧(数百名)、香港(1万2000名)……と、確認しているだけで合計15都市。言うなれば北京を除く全国各地で反日活動が展開された訳です。
優勢である筈の「胡錦涛派」は、こうした活動に対し全く無力だったことになります。
――――
「中」の最後の部分で、町村外相の訪中に合わせたデモを計画しそうな「民間団体」の主要メンバーを「当局」が北京市から郊外の施設に「隔離」したことを紹介しました。水面下で行われたこの動きについて、「隔離」された当のメンバーのひとりは「まあ無料のバカンスのようなものさ」と語っています。「隔離」ではあるものの「接待」ともいえる厚遇を受けたことが垣間見える言葉です。
実はこの報道をみて、私は「胡錦涛派」と「抵抗勢力」の間である種の「取引」が成立したのではないか、と考えるようになりました。その時期は恐らく16日、上海のデモに関する詳報が北京の党上層部に伝えられた直後かと思います。
両者には共通している点があります。「胡錦涛派」が「官」なら、「抵抗勢力」もまた「官」です。「官」は「中共人」と言い換えてもいいでしょう。現在の政策面その他に意見対立はあれど、どちらも中共政権が打倒されることは望んでいません。
余談になりますが、改革・開放以来現在に至るまで、「中共人」よりも「中国人」であることを優先した政治家(国家指導者レベル)はどれほどいるでしょうか。趙紫陽は明らかに「中国人」であることを優先し、それがために失脚しました。その他のケースとしては胡燿邦と朱鎔基にそのニオイを感じますが、いずれも幸運なことに「中国か中共か」という究極の選択を迫られる場面に遭遇せずに済みました。トウ小平は筋金入りの「中共人」です。江沢民や李鵬も「中共人」(しかも醜悪な)でした。前にも書きましたが、胡錦涛はトウ小平の衣鉢を継いだがごとく、徹頭徹尾「中共人」であるようです。温家宝はウソ泣きしてみせたりして庶民派との好評を得ていますが、究極の選択を前にしたら腰砕けになりそうです。元上司である趙紫陽のような鮮やかな進退をみせることはないでしょう。
――――
ともあれ、「中共人」という共通点を軸にして、両者の間に「合意」と「妥協」が成立したのではないでしょうか。「合意」とは中共政権を脅かしかねない動きは断固阻止する、ということで、具体的には反日デモの沈静化ひいては活動停止です。これは「胡錦涛派」だけでなく、「抵抗勢力」も群衆が暴走に移った際の怖さというのを一連のデモで学習した筈ですから、一応納得できたと思います。とりあえず北京は静かにさせておく、ということで、「民間団体」の主要メンバーである糞青などの「隔離」策が採られます。ただし隔離とはいえ軟禁ではなく「接待」です。その任に当たった「当局」は、対外強硬派を主とする「抵抗勢力」の側ではないかと思います。
「君たちの愛国精神は素晴らしい」
「君たちの気持ちはよくわかる」
などと頭を撫で、肩を叩いてやりつつ巧みに丸め込んだのかも知れませんし、あるいは「このままだと組織が潰されるぞ」と心配顔で脅したのかも知れません。「民間団体」を構成する珍獣や糞青も、組織のリーダークラスになるとこれまた平然と「愛国」より「組織防衛」を優先しますから、難しい仕事ではなかった筈です(笑)。
――――
ただ、これだけでは「抵抗勢力」が収まりません。胡錦涛は「反日デモ禁止」の見返りとして、「抵抗勢力」の主力である対外強硬派が不満に感じ、政策論争の焦点となっていた点、つまり対日政策について、対外強硬派に配慮してこれまでより強腰で臨むことを受け入れた可能性があります。やはり「抵抗勢力」の一部かと思われる地方のボスに対しては、経済政策上での何らかの譲歩や、引き締めの過程で中央が回収した権限の一部を地方に戻す、といった条件が提示されたのかも知れません。それらがいわゆる「妥協」に当たります。
反日デモでの破壊行為への謝罪と被害に対する補償について、日本側の再三の要求に対し中国側が全く応じず拒否する態度を貫いています。元来が謝罪したことのない国ですし、反日気運が高まっている折りでもありますから、「それが合意と妥協の証」かどうかは、私にはわかりません。
とりあえず、主要メディアを通じた「安定団結の強化」(=反日活動のクールダウン)を呼びかける作業が繰り返されます。
●第一の要務は発展だ(人民日報2005/04/18)
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-04/18/content_2842984.htm
例によって署名論評です。『人民日報』の1面に出た記事で、時を置かずに「新華網」が転載しています。
言わんとしていることはいつもの通りです。発展とはつきつめれば経済・社会の発展で、国力を富ましめることだ。そのためには社会環境が不安定であってはいけない。安定・団結がいま求められているのだ……といったところでしょう。
●国防と軍隊建設において科学的発展観を貫徹し根付かせよう(解放軍報2005/04/18)
http://news.xinhuanet.com/mil/2005-04/18/content_2843352.htm
これは人民解放軍の機関紙『解放軍報』に出た論評を「新華網」が転載しました。胡錦涛が提唱する「科学的発展観」を前面に押し出した内容は以前より一歩踏み込んだものといえます。
――――
そして、極め付けが昨日(4月19日)開催された「形勢報告会」です。これは6部門共催(中央宣伝部、中央直属機関工作委員会、中央国家機関工作委員会、教育部、解放軍総政治部、北京市党委員会)による、特筆すべき政治的イベントです。
●李肇星外相、6部門共催の形勢報告会で対日関係の現状を報告
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-04/19/content_2851482.htm
なぜ極め付けで特筆すべきものなのかといえば、この「形勢報告会」は上の記事の冒頭に書かれているように、「国際情勢と中日関係の歴史と現状、そしてわが国の対日政策について広範な幹部・民衆の理解を促進するために、また中央の政策決定や処置を正確に理解し、擁護するために」開催されたものなのです。
その趣旨もさることながら、李肇星による対日関係の現状報告がこの催しの主役である点、つまり対日関係という個別のテーマについての指導部の意思表示を改めて行うために開かれたイベント、ということが際立って異例です。極め付けというのは、中央宣伝部や教育部、そして人民解放軍の総政治部といった部門までが主催者に名を連ねていることで、要するに、
「対日関係はこういう方針でいくから。最近色々あったけど、これからは勝手に動くことは厳禁」
と宣言したことになります。このイベントには各部門から合計3500名が参加し、テレビでも大きく取り上げられました。「胡錦涛派」vs「抵抗勢力」という観点からすれば、これで一応の手打ち、といったところでしょう。
――――
同時に、国民に対しては「反日」でエスカレートする一方だった状況を非とし、過激な行為を強く戒めるものです。政策が変わったことを告知している訳ですね。いままで各地で散々行われてきた反日デモ、これはその大半が未申請・未認可のものでしたが、これについて李肇星報告は、
「党と政府が徹頭徹尾、根本的な国益を考慮した立場に立って、対日関係にまつわる様々な問題を適宜に処理することを我々はよく信頼しなければならない。我々は目下の世界情勢を正確に認識し、自国の国情を正しく把握して、中央の打ち出す一連の重大政策や処置を断固として貫徹し、安定かつ団結した政治局面を擁護することを自覚し、法制観念を強化するとともに、冷静かつ理知的に、また合法かつ秩序立ったやり方で自らの感情を表現するようにし、未許可デモなどへの活動には参加しないことで、社会の安定に影響を及ぼさないようにしなければならない」
……と、報告の最後の部分で明確に言及しています。
興味深いのは、主役が李肇星でありながら、外交部は主催者に加わっていないことです。対日情勢といいつつも、これは国内問題扱いなのです。
もう2週間以上前になりますが、四川省・成都市で署名活動を発端に民衆が集まり、イトーヨーカ堂が襲撃された事件について当ブログでふれました(上下)。以下はそこからの引用です。
――――
上の呉建民氏の発言、内容的には『南方都市報』の記事と似ている部分があります。が、政府関係者の口からその言葉が出たということは、大きな意味を持つものといえます。
ただ、この記事がなぜかあまり大手メディアには出てきません。「新波網」などには転載され、その「日本の常任理事国入り反対特集」ページにも登場しているのですが、「新華網」と「人民網」では見当たらないのです(少なくとも私の目に届く場所にはありませんでした)。そのことから、胡錦涛政権内部ないしは党上層部において、対日強硬論が台頭している可能性を指摘することもできなくはありません。
一方で、外交部報道官の会見に加え、呉建民氏も外交関係者であることを考えるとき、胡錦涛政権は目下のところこの問題を「対日外交」の枠内と位置付け、その線で処理していこうとしていることがわかります。一昨年末、秋口に起きた日本人による珠海集団買春事件や西安の一件でネット世論がヒートアップしていた際に、
「行き過ぎた民族主義はいけない」
と、それをたしなめる談話を発表したのが楊振亜・元駐日大使、これまた外交関係者です。何を当たり前のことを、と言われるかも知れませんが、これはひとつの目安だと思うのです。仮に今回のヨーカ堂襲撃事件のようなプチ都市暴動もしくは本格的な都市暴動が各地で続発するようになっても、やはり止め男は外交関係者でしょうか。
私は温家宝あたりが出てきて、テレビ演説で切々と訴える(またウソ泣きするかどうかは別として)のではないかと思うのです。温家宝が出てくれば、胡錦涛政権による事件の位置付けが対日外交から国内問題へと変化したことを示すことになります。そうなったときには、もはや中国は容易ならぬ情勢になっていることでしょう。
――――
……引用終了。何が言いたいかといえば、今回の「形勢報告会」は、引用文中の「温家宝によるテレビ演説」に等しいものだということです。実際に出てきたのは温家宝でなく外相の李肇星ですけど、主催者に外交部の名はありません。一連の反日活動に対する胡錦涛政権の位置付けが「国内問題」へと変化したことを意味するものなのです。
全国各地で生起した反日活動は指導部にそういう危機感を持たせるに至るほどのプレッシャーを伴うものであり、統治者たる中共にとって、現在の社会状況(物価上昇+失業+貧富の格差+党幹部の汚職蔓延)では到底許容し難い、生死が「紙一重」ともいえる危ない運動、ということなのでしょう。各地で行われるデモなどのうち、どこか1カ所でドカンと暴発すればもう大事件です。それがさらに他の地域へと広がれば、もはや手のつけようがなくなります。容易ならぬ情勢ではないでしょうか。
――――
最後に、愛すべき糞青たちにふれることにしましょう。連中が実質的に「地下活動」に入ることなど、誰が予想したでしょうか。現実には、連中はいつも通り、インターネットカフェや自室や、大学や職場にいるのです。ただし掲示板で連絡を取り合ったり、反日活動計画の相談をすることを避け、もっぱらQQ(ICQみたいなもの)での連携を深めています。反日「民間団体」の掲示板から姿を消して独自に同志的結合を強めていくのですから、これは「地下活動」と称すべきものと私は思うのです。今回の一連の件における当局の最大の失敗は、連中に本当のデモ(なんちゃってデモではなく)の楽しさ、面白さ、気分のよさを教えてしまったことかも知れません。
糞青絡みでいえば、「民間団体」をはじめとする反日傾向の強い各種掲示板、ここで再び反日に関する言論統制が行われるかどうかは注目に値します。言論統制は確かに反日熱を下げることになるかも知れません。ただその「副作用」として、「愛国主義教育」「反日キャンペーン」に育てられ、いまも反日に没頭することで糞青の視野の外に置かれていた問題意識、自らの属する社会(中国社会)への問題意識が生じる可能性があります。これはこれで中共政権を揺さぶりかねない因子へと成長するポテンシャルを秘めています。
問題はまだ終わっていないのです。上海のデモを報じたとき私は「幕があがった」と表現しましたが(◆)、いまもその考えは変わっていません。上述した通り、ひとつのデモをきっかけにドカンと暴発すればどうなるかわからないのです。「当局」は李肇星報告を以て意思表示を行いましたが、それで国民が納得して全てが丸く収まるかといえば疑問が残ります。
現に「地下」に潜った糞青たちによる、同時多発デモ計画(五四運動記念ということで5月4日実施か)が進行しているといわれています。が、掲示板にはその切れ端すらなかなか出て来ないために、こういうことには耳聡い香港メディアすら動向を把握できていません。5月末には香港の尖閣奪回運動組織の連中が現地に船を出す予定です。また日本の常任理事国入りに対して新しい動きがあれば、糞青どもはその都度敏感に反応することでしょう。対外強硬派も騒ぐかも知れません。5月には台湾の陳水扁総統夫人の来日予定もあります。6月4日の天安門事件16周年はともかく、7月7日は盧溝橋事件の記念日です。さらに東シナ海資源紛争。「燃料」はまだいくらでもあるのです。
しかも、糞青が起こす反日活動は起爆剤でしかありません。問題は社会状況がいまなお一触即発ともいえる危険水域にあるということです。社会状況にまつわる諸問題は李肇星報告によっても何も解決されてやしませんから、危機は去っていないのです。
また週末が巡ってきます。そこで再び何事かが起きるのかどうか、とりあえずはそれを眺めてみることにしましょう。
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【※1】http://the-sun.com.hk/channels/news/20050418/s_news.html
→反日騒動2005(25)へ
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【シリーズ:反日騒動2005(24中)】
←(24上)へ
一連の「反日」は「胡錦涛派」と「抵抗勢力」による政策論争に伴う主導権争いを反映したもの……というのが私見ですが、「邪推満開で振り返る『反日』」(上下)及び今回の「上」までに書いた通り、「胡錦涛派」は「抵抗勢力」ペースで進んでいた状況を第三次攻勢で一気に挽回し、さらなる戦果拡大を狙った追撃戦、つまり掌中に収めた主要メディアを動員した攻勢をかけています。
この「追撃戦」は現在進行形で、あたかも「反日」を煽らんとする動きを根絶やしにすべく、いまなお行われています。
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●大局を胸に、安定を守っていこう(人民網2005/04/14)
http://politics.people.com.cn/GB/30178/3322106.html
●安定は最も貴重なものだ(人民網2005/04/15)
http://politics.people.com.cn/GB/30178/3325320.html
いずれも「人民網」に出た署名論評です。当然のことながら、「安定を守ろう」「安定最優先」ということで、「反日デモは安定を破るもの」という認識と立場に拠って書かれています。もちろん「反日デモ」などの直接的な言葉は一切出てきませんが、「安定は最も貴重なものだ」は、
「安定がいちばん大切だ。愛国主義の情熱を体現する最良の方法は、祖国に対するそうした深い想いを、努めて勉強に打ち込んだり職業という本分でベストを尽くすといった実際的な行動へと転化することだ」
という一文で締めています。「愛国主義」が間接的に「反日運動」を示していることは言うまでもありません。
――――
さらに党中央の機関紙である『人民日報』の1面を飾った署名論評。これは第三次攻勢で牙を抜かれた観のある「新華網」にももちろん転載されました。
●調和のある社会の構築:安定と秩序のある素晴らしい局面を(人民日報2005/04/17)
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-04/17/content_2840340.htm
このURLは「新華網」に転載された記事のものですが、原題は「調和のある社会の構築という観点から安定を論じる」と、より直接的なタイトルです。「新華網」になお残る「抵抗勢力」の残党によるささやかな抵抗、ということはないでしょうが、ともあれこの署名論評は中央電視台(全国ネットである中国最大のテレビ局)のニュースでも読み上げられるなど、大きな扱いを受けています。
ついでに言えば、この4月17日の『人民日報』の1面トップは、上で紹介した政治局会議(胡錦涛の独演会)を報じる記事なのです。この報道と署名論評はいわばコンボのようなものだと思います。
トドメを刺したかどうかはともかく、「胡錦涛派」による一応の勝利宣言とみることができるでしょう。
――――
ただ、「胡錦涛派」の勝利について「とりあえず」「トドメを刺したかどうかはともかく」「一応の」などの但書きを私が加えているのは、「本当に勝利?」という疑念が常に頭を去らないからです。いや、「胡錦涛派」が優勢で勝利へと着実な足固めを進めていることは否定しようのない事実です。ただ、そうした局面は一夜にして、あるいはひとつの事件を契機に、ちゃぶ台をひっくり返すがごとく一気に逆転されかねない危うさがあります。
その好例は4月16日に行われた上海市での「反日デモ+プチ暴動」です。ここまで書いてきたように、メディアをみる限りでは「胡錦涛派」が大勢を制しつつあるというのに、今回の「反日」において最大規模の被害を出す事件が起きてしまった。上海といえば江沢民の牙城ですから、ちょっと胡錦涛を苛めて、同時に健在たることを誇示してみた、ということなのかも知れません。あるいは「胡錦涛派」はメディアを掌握したようでも、地方に割拠する「抵抗勢力」の一部はまだ恭順しておらず、その姿勢をこういう行動で示した、というものでしょうか。いずれにせよ、治安に当たるべき警官(民警)や機動隊(防暴警察)のヤル気のなさは相変わらずでした(◆)。
司令部と最前線の間には認識の違いがあったり予想外の事態が突発したりして、両者の間に齟齬が生じることは珍しくありません。もし仮に、「抵抗勢力」にとっては示威活動のつもりだった上海のこのデモが、本格的な暴動に発展していたらどうでしょう。また領事館を目的地としていた筈が、途中から何らかの理由でターゲットが日本人居留区へと変更されていたら、どうでしょう。いずれにしても、事態は全く違ったものになっていた筈です。
この仮定は決して突拍子のないものではないと思います。現に日本車を運転しているということでドライバーの中国人女性にデモ隊から何度も唾が吐きかけられ、車体もボコボコされて落書きまでされた出来事をテレビカメラが捉えています。理性も秩序もなく、単に「日本つながり」だからやっちまえ、というノリです。
プチ暴動で済んだのは、僥倖にすぎないということです。それからこれまでの例にもあることで当ブログも再三指摘していますが、今回のデモも、デモ隊が沿道の市民が参加してくるのを拒まずにむしろ歓迎し、それゆえ行進するほどにデモ隊が膨張して組織性・秩序それに理性を失っていく(暴徒化する可能性が高い)百姓一揆型でした。そうである以上、一回の「反日デモ」からどういう事態に発展するか、どの方向に鉾先を向けてどれほど荒れ狂うかは誰にも予想できない、ということです。
――――
これまでの反日デモにはないケースですが、仮に10万人規模のデモが暴走し始めた場合、恐らく警官や機動隊ではどうにもならないでしょう。昨年秋に四川省で発生した漢源農民暴動がちょうどその規模でしたが、当局はそれを鎮圧するためにまず大量の警官を動員して部外者(特にプレス)が暴動の起きている地域へ入れぬよう封鎖し、同時に完全武装の武装警察(あるいは人民解放軍)2コ師団を投入して力づくで暴動を鎮圧。その後現在に至るまで封鎖を解かずに戒厳令状態にあることをみても、その困難さがわかるというものです。
もちろん、中共政権には10万人規模のデモの暴走を楽々と鎮圧する力があります。漢源農民暴動のように軍隊を投入すればいいのです。ただ漢源のように山間部の農村であれば封鎖も情報統制も効きますが、舞台が都市部であればそうはいきません。
海外プレスなど衆人環視のもとでそれをやれば、中国の国際的イメージは致命的なダメージを受け、EUの対中武器輸出解禁はもちろん、北京五輪も吹っ飛ぶかも知れません。それだけならまだしも、経済制裁の可能性すらあります。1989年の天安門事件(六四事件)当時に比べ、外資への依存度が飛躍的に高まっている現在の中国経済にとって、それは失血死を意味することに他なりません。
――――
上に掲げた『人民日報』の1面に配された署名論評、
●調和のある社会の構築:安定と秩序のある素晴らしい局面を
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-04/17/content_2840340.htm
これはやはり勝利宣言ではなく、上海での反日デモが示した現在の優勢の危うさに認識を改めた(びっくり仰天した)「胡錦涛派」が、改めて国民に軽挙妄動を戒めたものなのでしょう。上海ばかりではなく、規模の差こそあれ北京、天津、南京、杭州、東莞、広州、深センで反日活動が実施されています。
重要なのは、このうち東莞市では日系企業の中国人従業員数千人によるストライキという新手の形式による反日活動が登場したことです(※1)。反日の側面があることは、スト参加者が日本国旗を焼いたことでもわかります。その前日である15日には、広東省・潮州市にある台湾企業「美美電池」の工場が村民数千人に突如襲撃され、略奪や破壊の限りを尽くされています。略奪行為は16日にも行われ、被害総額は合計数千万人民元にのぼるとのこと。当然ながら、工場の操業はストップしたままです(※2)。
日系企業には労使紛争、台湾企業には工業廃水をめぐる対立があったとされていますが、だからといって突如かような行動にエスカレートする理由もありません。もしそれが広州や深センでの「反日デモ+プチ暴動」に煽られて飛び火したものなら、容易ならぬ問題ということになります。
こうした状況に鼓舞されたのは他ならぬ「抵抗勢力」でしょう。メディア争奪戦でこそ完敗した観がありますが、16日の上海をはじめとしたデモは「胡錦涛派」によるメディアを通じた呼びかけが奏功していないことを示していますから、恐らくこれによってある程度勢いを盛り返したかと思います。そして、後でふれますが両派の間である種の「取引」が成立したのではないかと思うのです。
――――
メディアを通じた呼びかけが効いていない、もちろん軍隊も使えない……となると、大勢を制した筈の「胡錦涛派」も選択肢が少なくなります。上海におけるデモが16日。翌17日には日本の町村外相が訪中するということで、沈静化を呼びかける「胡錦涛派」の動きが活発になりました。とりあえずメディアを通じた呼びかけが続けられた訳です。
●脇目も振らず建設に没頭し、一意専心で発展をめざそう(新華社2005/04/17)
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-04/17/content_2841086.htm
まずは新華社の署名論評です。文末には『人民日報』の1面に出た署名論評「調和のある社会の構築という観点から安定を論じる」(原題に変わっています)へのリンクが貼られています。リンク先の標題も原題に戻っていますが、ここであれこれ詮索することは措くことにします。
●北京の日常の治安兵力は44万名、5000の電子の眼が首都の治安を守る(人民網2005/04/17)
http://politics.people.com.cn/GB/3326328.html
北京の地元紙『新京報』の記事を「人民網」がすかさず転載しています。これは「反日デモ」を狙う連中に対する脅しのつもりなのかも知れません(笑)。
――――
一方で、水面下では興味深い動きがあったようです。香港紙『明報』(2005/04/16)によると、北京で町村外相の訪日に合わせた反日デモを企画しているであろう「民間団体」の主要メンバーを、郊外に隔離して「休息させた」と報じています(※3)。
台湾・中央通信の報道によれば、これら「民間団体」の主要メンバーは16日から何度かに分けて北京市内から郊外の会議センターに続々と身柄を移され、外出は禁止されたものの、プールやゴルフを楽しむといった「接待」を受けたとされています(※4)。
「まあ無料のバカンスのようなものさ」
と「接待」を受けたひとりがコメントしていますが、一方で北京市内では不測の事態に備え、天安門事件(六四事件)の被害者や反体制系知識人などを軟禁し、また多数の警官や機動隊を要所に配するなどして、厳戒態勢で臨んだようです。
その甲斐あって北京市は何事もなく、無事に町村外相を迎えることができました。が、他の地域では全く別の展開となっていたのです。
――――
【※1】香港紙『蘋果日報』(2005/04/18)。
【※2】http://tw.news.yahoo.com/050417/46/1pm9r.html
【※3】http://hk.news.yahoo.com/050415/12/1bmym.html
【※4】http://tw.news.yahoo.com/050417/43/1pmpz.html
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【シリーズ:反日騒動2005(24上)】
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えーと、そろそろ旗色を明らかにした方がいいと思いますので書きます。今回は「邪推満開で振り返る『反日』」(上下)の続編と考えて頂いても結構です。
コメント欄ではときおり書いているように、私は今回の反日デモ、これは胡錦涛政権ひいては党上層部における内部対立を反映したものだと考えています。
内部対立といっても権力闘争のようなキナ臭いものではなく、意見の違いや政策論争があって、そのために主導権争いが起きているという考え方です。反日デモは政権内部の一派にとっての鬱憤晴らしを含めて、それに利用されているという印象です。まあ政争の具、といったところです。
反日をテーマに生起した集会やデモは、そのほぼ全てが「官製」と呼んでいいものだと思います。ただ問題は、本来一枚岩であるべき「官」なり「当局」なりが、二手に分かれて綱引きをしていることです。しかも主導権があっちの「官」へ行ったりこっちの「官」へ行ったりする。……それで方針が二転三転して、政府の足並みの乱れを私たち部外者に感じさせることになっているのでしょう。
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具体的には、胡錦涛派は日本の常任理事国入り反対、歴史問題での主導権奪回、それに対外強硬派への配慮などを目的とした「ほどよい反日」を狙っていたように思います。
当初行われた「ネット署名」は、騒ぎが現実世界に広がる恐れがない、つまり掌の上で行われる「ほどよい反日」であり、しかもネット世論を手元に引き寄せることができるという、いかにも統制好きで民間の先走りを嫌う胡錦涛サイドの考えそうな企画に思います。いや、企画は「中国保釣聯合会」「愛国者同盟網」のような、糞青(自称愛国者の反日教信者)や珍獣(プロ化した糞青)が集結している「民間団体」から出され、胡錦涛がそれに乗ったのかも知れません。
これに対する「抵抗勢力」(※1)は、たぶん対外強硬派を中心に、経済政策などで中央のやり方(引き締め・減速基調)を面白く思わない、開発欲求の強い一部地方のボスなどが加わっているかと邪推しています。対外強硬派とは「反国家分裂法」制定を胡錦涛に強く迫ったり、昨年以来押されっぱなしの対日外交に、強い不満を持っている向きです。前にも書きましたが、
●靖国神社参拝
●新防衛大綱
●ODA打ち切り論の具体化
●李登輝氏訪日
●尖閣諸島の灯台国有化
●台湾問題に対する日米の介入姿勢
……などが、連中(対外強硬派)のフラストレーションを高めたのだと思います。同時に、そういう事態を招いた胡錦涛の対日路線、一口に言えば「歴史問題をことさら騒ぎ立てることなく、前向きに現実的に」という江沢民時代と一線を画した、また反日度をレベルダウンしたやり方に不満と批判が沸き上がったのでしょう。
そこでこの「抵抗勢力」は胡錦涛派とは逆に、「反日を煽る」方向に動いたように思います。「ネット署名」を奇貨として、それをエスカレートさせようとしたのです。例えば4月9日の北京。最初に中関村で開かれた集会は「胡錦涛派」による「官製集会」。その後日本大使館を襲撃するに至った反日デモは「抵抗勢力」が仕掛けた「官製デモ」、と私はみています。
ややこしいのですが、胡錦涛派が「官」である一方、「抵抗勢力」も「官」なのですから、日本で出ているような「官民一体」という言い方は、一応間違った表現とはいえません(笑)。ただ表面的すぎる上に実情を反映できていないため、「官民一体」という言葉では説明出来ない部分が色々出てきてしまうというだけです。
――――
なお、「抵抗勢力」が事態をエスカレートさせるため仕掛けたと思われるポイントを2つ上げておきます。ひとつは国営通信社のウェブサイト「新華網」による燃料投下記事、
●アサヒビールやいすゞ自動車など10社、日本の歪曲された歴史教科書を賛助(新華網2005/03/28)
http://news.xinhuanet.com/fortune/2005-03/28/content_2752743.htm
これによってネット署名が街頭署名に発展し、それを発端にしたトラブル(成都と深センでの日系スーパー襲撃事件)が発生します。また日貨排斥の動きも広がっていきます。当然「胡錦涛派」はそれを沈静化させるべく甲斐甲斐しく働いたのですが、これに対し「抵抗勢力」は歴史教科書問題を提起し強調して、その動きを封じます。これが第二のポイントです。これによって「反日」の主役が常任理事国入り反対から歴史問題へと交代し、それゆえに「反日」の表現方法も、署名活動からデモへといよいよ強硬化していきます。
――――
以上の経緯、及び「抵抗勢力」に押されていた胡錦涛の本格的反攻(巻き返し)と「抵抗勢力」との丁々発止については、「邪推満開で振り返る『反日』」(上下)にて詳報した通りです。その最後の部分でも書きましたが、胡錦涛はその第三次攻勢で自らの広報紙である『中国青年報』に加え、旗幟やや不鮮明だった『人民日報』(とそのウェブサイト「人民網」)を掌握し、さらに「抵抗勢力」の影響力が強かったと思われる「新華網」にも「参りました」と言わせています。
中国の権力闘争は常にメディアの争奪戦、そして双方が麾下メディアを使っての代理戦争により進行していくことが一般的です。今回は権力闘争というほどキナ臭いものではないように思いますが、やはり似たようなことが行われ、現時点では胡錦涛派が一応主導権を握っているように思えます。
――――
それ以降の動きを今回は追いたいのですが、まず中国国内の記事でみると、基本的に胡錦涛派ペースで事態が動いているらしいことがうかがえます。
●胡錦涛が済南軍区某集団軍を視察
http://news.xinhuanet.com/mil/2005-04/15/content_2832283.htm
視察したのが4月8日で、記事になったのが15日。ふつう国家指導者の視察ネタは視察が終了した時点で記事になるのですが、まさか1週間も済南にいた訳ではないでしょう。メディアでの宣伝攻勢を強めるべく、片っ端から記事にしているという印象があります。
●党中央政治局が集団学習会、胡錦涛「科学的発展観を終始一貫させるべし」
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-04/16/content_2838888.htm
この学習会は15日に開かれたことになっています。中央政治局というのは党の中枢機関ともいえる部門です。集団学習会といいながら、記事では胡錦涛が持論である「科学的発展観」を語りまくる、独演会状態となっています(笑)。
――――
ただこの政治局会議、香港紙『明報』の消息筋情報によると「集団学習会」などではなく、実質的には全国的に広がりつつある反日デモへの対策会議だったようです。胡錦涛の「独演会」も、これ以上反日デモのような過熱した動きをさせるな、というお説教だったことになります。
●中央が反日気運の沈静化を下達(明報2005/04/18)
http://hk.news.yahoo.com/050417/12/1bo7n.html
そういえば上の「新華網」における胡錦涛の「独演会」で、「トウ小平氏以来、一意専心で経済建設に打ち込んできたからいまの中国があるのだ」という趣旨の発言があります。これは『明報』の記事も指摘していますが、間接的にデモへの不満表明を行ったものなのかも知れません。
この『明報』の記事では、民衆の愛国主義的精神には肯定を与えるものの、予想外の事態に発展して鉾先が中共政権に向かわぬよう警戒・監視を厳しくせよとのお達しがあったことも伝えています。また、北京で9日に大規模なデモが発生したことについて、北京市公安局が動員をかけた組織の特定に力を入れていることにも言及されています。たぶんその嫌疑が「民間団体」にかけられ、町村外相の訪中期間中は隔離していい気分にさせておけ、という措置につながるものと思われます。
「抵抗勢力」による反日デモにしても、沿道からの市民の参加を拒まない無統制な百姓一揆型のデモ(暴徒化のリスク大)ですから、企画・立案された内容と現場での状況には齟齬も発生するでしょう。実際に、成都、深セン、北京、広州、上海などでプチ暴動が発生し、瀋陽でも領事館に攻撃がかけられている。この政治局会議には「抵抗勢力」に属する顔ぶれも出席していたかと思いますが、実例を並べられてこの点を突かれ、社会不安を煽ってどうすると問い詰められれば、これはもう沈黙せざるを得なかったでしょう。
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もう1本、同じ日の『明報』からこれまた消息筋情報。より直接的なアクションです。短文なので訳してしまいますか。
●胡錦涛が軍部の動きに喝、民衆を煽る動きにクギ刺す
http://hk.news.yahoo.com/050417/12/1bo7o.html
消息筋が明らかにしたところによると、中共上層部は全国各地に対し、反日気運が民間に蔓延することを止める措置を講じるよう求めた一方、学術界の行う日中関係に関するシンポジウムなどへの規制を強化した。胡錦涛総書記も軍部が予定していた日本側を刺激しかねないシンポジウムを自ら一喝して中止させている。この催しは軍上層部の主催による対日関係のあり方を探るシンポジウム。軍内部の高級政治活動関係者や若手学者を招いて近年の対日関係における苦境やそこから抜け出すための新思考、そして対日関係の今後についての見通しなどをテーマに行われるものとされ、軍上層部はすでにこの催しの実施を許可。近日中に開かれる予定だった。
消息筋によれば、胡錦涛は4月10日に山東省の視察から北京に戻ったところでこのシンポジウムの存在を耳にして激怒。すぐにその中止を厳命したほか、9日に発生した大規模反日デモについて、軍部によるこういった策動は大局に反し、民情を煽って民衆の反日気運を過熱させるものだと激しく非難した。軍上層部ではこれを受けて、数名の高官が直ちに厳しい自己批判を行った。
実に興味深い記事です。消息筋情報ですから鵜呑みにする訳にはいきませんが、今回の一連の反日活動に対して『明報』から出された消息筋情報は概ね的を外していないことは確かです。
それはともかく、この記事は胡錦涛のスタンスがくっきりと描かれていること、また「抵抗勢力」の顔ぶれの一端が透けて見えることなど、消息筋情報ではあるものの、色々と想像を膨らませることのできる貴重な情報かと思います。
――――
【※1】胡錦涛が構造改革の断行による中共の延命を企図しているという私見を踏まえて、当ブログではこう呼んでおります。
→反日騒動2005(24中)へ
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【シリーズ:反日騒動2005(23)】
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例によって反日デモ警報です。ソースは複数の反日サイト及び香港各紙です。
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●北京市
詳細不明。
●瀋陽市(遼寧省)
三好街に集合し、日本総領事館までデモ。
●済南市(山東省)
泉城広場中心にて集会・デモ。
●武漢市(湖北省)
詳細不明。
●南昌市(江西省)
文化宮電脳城にて抗議集会。
――――
●長沙市(湖南省)
長沙国儲電脳城にて抗議集会。
●成都市(四川省)
成都数字広場にて抗議集会。
●重慶市
上清寺にて抗議集会。
●温州市(浙江省)
温州世紀広場にて抗議集会。
●南寧市(広西チワン族自治区)
朝陽広場にて抗議集会。
――――
●広州市(広東省)
天河体育中心に集合し、日本総領事館までデモ。
●石家荘市(河北省)
駅前広場にて抗議集会開催。
●西安市(陜西省)
集合地点不明。集会・デモを行う予定。
●東莞市(広東省)
詳細不明。
●香港
ビクトリア公園(維園)に15時集合、中環(セントラル)までデモを行い政府庁舎前にて解散。参加者は約2000名の見込み。
――――
香港については当初の参加見込みが500人前後とされていましたが、例外なく反日基調である香港各紙がここ数日煽りに煽っているため、参加者数が大幅に上方修正されています。現地在住の方ならおわかりでしょうが、デモの経路はトラムに沿った通りです。三越など日系百貨店のある銅鑼湾(コーズウェイ・ベイ)方面にお出かけの際は御注意下さい。
――――
なお、外務省のスポット情報はデモ関してはまだ更新されていません(08:05現在)ので、大使館及び各総領事館の住所等も含め、これについては前回の情報(050415)を御参照下さい。更新があれば追記します。
――――
ちなみに昨日(16日)に行われた活動とその参加者数は下記の通りです。
●北京市
天安門広場で数名が赤い横断幕らしきものを広げたところで警備中の警官に追い散らされる。
●天津市
約2000人がデモ。警察隊と軽い衝突はあったもののトラブルなどはなくそのまま解散。
●上海市
人民広場などから日本総領事館へのデモ。沿道の日本料理店やその広告などが破壊され、領事館もガラスを割られるなどの被害。またデモ隊に囲まれた日本人のうち2人が暴行を受け負傷するも脱出。参加者数は1万人(NHK)から約10万人(新華社)など諸説あり。被害規模は今回の一連の反日デモの中で最も深刻。
●南京市(江蘇省)
数十人による抗議活動。
●杭州市(浙江省)
約1万人によるデモ。日本料理店や日本車に被害。
●広州市(広東省)
デモを行おうとした少人数のグループが警備の警官に追い払われる。
●東莞市(広東省)
日系企業である電子部品工場の中国人従業員数千人がストライキ。日本国旗も焼かれる。
●深セン
数十人のグループが抗議活動。
●香港
20数名が日本総領事館前で抗議活動。
――――
反日デモ関連として、理性的な活動を呼びかける署名論評が昨日午前(04/16/08:28)、「人民網」に掲載されました。
●我々は愛国の情熱をどうやって表現したらいいのか
http://opinion.people.com.cn/GB/other4785/4786/3325820.html
しかし及び腰の内容で、反日デモに逸る連中に対して効果があるとは思えません。
また前回も紹介しましたがその前日である15日には北京市公安局からの通達が出ています。
●デモを行なうには法に従って申請し許可を得ねばならない
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-04/15/content_2835254.htm
これもそのときに書きました通り、違法デモ厳禁としていた上海であれほどの事件になってしまいましたので、どれほどの効力を持つかは甚だ疑問です。ただ北京大学、清華大学などでは部外者の立ち入りやキャンパス内での集会などについて神経を尖らせているようです。
――――
続報があれば追加致します。
現地在住の皆様、どうかお気を付け下さい。
→反日騒動2005(24上)へ
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【シリーズ:反日騒動2005(22)】
←(21)へ
反日デモの話です。
もうみなさん御存知でしょうが、きょう(16日)は上海、杭州、天津でまとまったデモが発生しました。
NHKの19時のニュースで映像を観ましたが、天津は警官隊と多少揉み合ったものの、何事もなく解散しました。杭州については日本料理店が壊されたという話もあるのですが、映像が入っていないのでわかりません。
問題は上海です。結果からいうと、9日に実施された北京での反日デモ以上の被害となりました。これもNHKが報じていたことですが、総領事館の窓ガラスは投石などによって20枚ほど割られ、日本料理店の看板が破壊されたほか、日本料理店4軒に被害が出たとのこと。このうち1軒は休業中だったのに物が燃えた跡があり、放火説も流れています。町村外相のコメントによると、「まだ未確認だが邦人に被害が出たという話もある」とのことでした。
例によって、沿道からの参加者を拒まない、むしろそれを喜んでしまう「秩序立った」「組織的な」からは程遠い百姓一揆型のデモでした。この種のデモの弊害といかに危険か、暴徒化しやすいかについて、当ブログはもう何度も指摘しています。そして今回もまた、同じ結果(しかも過去最大の被害)となりました。
――――
上海の話を続けます。
当初、集合場所(人民広場)に集まった人数は数百人だったそうですが、上述したような百姓一揆型デモです。進むにつれて数千人、さらに万単位と人数が膨れ上がりました。NHKは「約1万人」としています。
余計な話かも知れませんが、北京、上海、広州の順に、南下していくほど政治的問題への反応が鈍くなり、「商売第一」の姿勢が強まると一般的に言われています。1989年の民主化運動のときも確かにそうでした。しかし今回は違ったようで、上海が最後に動くこととなりました。ただ、1回目のデモ、それが当初は数百人でも百姓一揆型であるため1万人に膨脹した、とにかく1万人を集めたというのは、特筆に値します。
16年前、つまり1989年当時の記録を調べてみると、上海は北京に比べるとやはり反応が鈍く、1回目のデモ(参考◆◆)がせいぜい100名内外、五四運動70周年記念の5月4日も数千から数万。その後盛り上がっていき、最終的には市民や職場単位のデモ隊も含め15~20万人まで増えています。
沿道からの市民の参加を拒まない百姓一揆型デモとはいえ、初回のデモが途中参加の有志や便乗組を含めて1万名に達したというのは驚くべきことです。単純な「反日」とみるべきではありません。「反日意識の強さ」だけでなく、「社会の現状への不満」(中共に楯突く訳ではないという安全な立場での鬱憤晴らし)がこれほどの動員力となったのでしょう。「お祭り気分」を味わいたくて参加した向きも少なくないと思います。確かにデモ、特に一定以上の規模を有するデモには、そういう高揚感があります。
ともあれ、上海がついに動いてしまいました。被害規模がどうとか、参加人数がどのくらいだったかということとは別に、反日デモをやりたくてウズウズしている全国各地の糞青(自称愛国者の反日教徒)を大きく刺激することになるでしょう。そこにまた「社会の現状への不満」派や「お祭り気分」派(さらには反政府分子?)が加わっていくのです。
後になって「あのデモさえ封じ込めていれば……」と中共が臍を噛むことになるかも知れません。それほど意味のある、大きな意義を有するデモだと私は感じました。
――――
中共政権にとっては、対外的にも対内的にも、その威信が意外に磐石ではないことを示すデモになってしまいました。きょうの映像も全世界に流されるでしょう。どう同情的にみても、中共政権をかばう理屈は出でこないと思います。例えばあの温家宝・首相。自らの無能を隠すべく庶民派をことさらにアピールし、炭坑災害では遺族の肩を抱いて報道陣の前でウソ泣きしてみせた温家宝が先日、
「このデモで日本人は反省することだろう」
と言っていました。そういう、基地外とも盗人猛々しいともいえる理屈をこねる国があるなら別です。ああ南北朝鮮がありました。あそこは上から下まで基地外だらけの挙国一致体制ですから、中国に熱烈なる拍手を送っても不思議ではありません。支援する意味でまた「指きりげんまん」や「ひとり焼肉パーティー」を見せてくれるかも知れません(笑)。
外交部の秦剛・副報道局長は昨日(14日)の定例記者会見で日貨排斥などの動きについて、
「前回申し上げた通りだ」
と答えています。その「前回」である12日の定例記者会見で秦剛は、
「改めて申し上げるが、デモの過程で発生した様々な過激な行為については、我々は不賛成だ」(※1)
と言明し、同時に、
「中国政府は引き続き法律に基づいて日本を含む在中外国企業と外籍公民の合法的な権益を保護する」(※1)
と、「どんとこーい」とばかりに胸を張っています。合法的な権益を保護する?つまり壊された日本料理店やその看板、また日本大使館の窓ガラスなどは「合法的な権益」には入らない、ということでしょうか。
――――
「お前らこれで何回目だと思ってるんだこの糞トンチキが」
という語気の抗議がまた日本側から出されるでしょう。中国は謝罪・賠償にまだ応じていませんが、治安当局が北京の日本大使館などの要地に対し厳戒態勢をとる。もはやジサクジエーンだか何だかの子供騙しの三文芝居で応酬できるような、そんな状態ではなくなっています。
中国国民はそれをみて、自国の政府をカコワルイとか弱腰だとか日本に頭が上がらないのか、などと思うでしょう。デモをかければ公安(警官)や防暴警察(機動隊)、それに武警(武装警察)などが行く手を阻む。今回の上海におけるデモでは、
「お前らは中国人ではないのか?愛国的行動をなぜ邪魔する?」
と興奮したデモ参加者に防暴警察が詰め寄られる場面もありました。警官も可哀想ですね。年齢からいえば糞青どもと同じように「愛国主義教育」や「反日キャンペーン」を身体いっぱいに浴びて育った江沢民チルドレン(亡国の世代)なんですから。本来なら装備や制服をかなぐり捨ててデモ隊の側に加わりたいことでしょう。
「それじゃあ士気が低下してしまう」
などと、上海市政府の事前会議で公安局長が反発していたかも知れません。似たような理由で、1989年の天安門事件(六四)で鎮圧に投入された軍隊は地元軍区を避け(拒否されたともいわれています)、別の地方から引き抜いてきた兵力でした。
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●上海で初の反日デモ 禁止通達無視、杭州も(共同通信)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050416-00000061-kyodo-int
その通りです。公安局が「参加するなメール」を手当たり次第に送ったりもしていたようですが、無駄だったようですね。
●<中国反日デモ>威信かけ封じ込めに乗り出す 中国当局(毎日新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050416-00000071-mai-int
だから全然封じ込めてないってば。……ただこの記事にある、
「過激なデモを黙認することで歴史問題などの「対日カード」にする効果より、中国の国際的信用を損なうマイナス面が大きいとの判断が働いたようだ。」
というのはどうでしょう。少なくとも今回の上海デモについては、
「警察当局だけではデモ隊を押さえ込む力なんてない」
「押さえ込むのに相応の兵力を投入すれとすれば、武装警察あるいは軍隊まで大量に動員する必要がある。それではデモを許容する以上に国際的イメージに傷がつく恐れがある」
という治安当局側の理屈が通ったように思います(だいたい歴史問題を「対日カード」とするのはちょっと旧思考というか紋切り型かと)。警察は全然ヤル気なさそうでしたよ。沿道の市民がデモ隊に加わるのを黙認していましたし、途中で日本料理店の看板がたたき壊されたりしていても全く手を出しませんでしたし。だいたい日本総領事館からかなり距離をとって非常線を張っていましたけど、「一応働きましたよ」という意味しかなかったのでは。だってあっという間に突破されていましたから。それに、総領事館への投石などにもお咎めなしでしたしね。
――――
上海とか上海人というのは、中国では嫌われているのでしょうか。よく反日サイトの掲示板に行って禁止事項一覧などを読むと、「特定の個人や地方を攻撃してはいけない」と書かれていたりしますが、「特定の地方」は往々にして上海なんですよね。元々日本のものが好きという点でも糞青の間では悪いお手本扱いされていたのですが、最近は反日デモに全く呼応しないことが責められてもいました。
その上海がついに起ち、しかも糞青流にいえば、過去最高の「嚇々たる戦果」を収めたことになります。これは全国各地の糞青を刺激せずにはおれないでしょう。「上海に負けるな」という意味もありますし、一方で「違法デモ禁止通達は形だけ」ということを全国に知らしめてしまいました。明日のデモ予定地区一覧は前回紹介した通りです。明日は明日の風が吹くともいいますが、北京をはじめ多くの地域で反日デモが起こるのではないかと思います。
例えば北京。
●デモを行なうには法に従って申請し許可を得ねばならない
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-04/15/content_2835254.htm
と北京市公安局が14日付で警告を兼ねた通達を発表していますが、少なくとも糞青どもの頭の中では、今回の上海デモでそれがチャラになった、あんなの所詮は建前だ、ということになるでしょう。つまり、多寡をくくるかと思います。
現今の社会状況下においては、「反日デモ」が「反政府運動」の起爆剤たり得る。
……というのは私が兼ねてから強調していることですが、今回の上海デモは起爆剤の起爆剤になったというか、起爆剤たる爆薬に信管を取り付けたようなものです。烽火のようでもあります。あるいは意気消沈していた組織が元気を取り戻したり、大学内で有志による組織が結成され、それが他大学との有機的な結合へと発展する端緒となるかも知れません。
今回の上海における反日デモは、そういう様々な「化学変化」を呼ぶことになるだろうと私は思います。
――――
これですぐ反政府運動、ということはないでしょう。ただ、当局が反日デモを力づくで押さえ込まない限り、いずれは鉾先が中共政権に向くことになるでしょう。
万一糞青と警官隊が衝突して、デモ隊に死者が出ようものなら、それだけで爆発してしまう可能性が高いのです。糞青は怯えて逃げてしまうかも知れませんが(笑)、野次馬として加わっていた市民は「官」の代表者である警官隊を許しはしないでしょう。
前にも書きましたけど、「物価高+失業+貧富の差拡大+党幹部の汚職蔓延」という社会状況下において、各地で「反日」という可燃度の極めて高いテーマのもと群衆の集まるイベントが開かれるのです。その中のどこかで、何かが起きても決して不思議ではありません。
中共は本来、人民広場に数百人が集まった時点で今回のデモを封じ込めるべきでした。それをしなかったツケが、回り回ってどういう結果を呼ぶかは、これからのお楽しみということです。
歴史劇が、いま正に進行しています。私たちはリアルタイムでそれを眺めているのです。
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【※1】http://world.people.com.cn/GB/1029/42354/3315530.html
→反日騒動2005(23)へ
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【シリーズ:反日騒動2005(21)】
←(20上)へ
またまた週末ですね。週末といえば反日デモ、これ最強(笑)。いや笑っている場合ではありません。今回は町村外相が日曜日(17日)に訪中することもあり、全国各地で大がかりな活動が予定されています。
で、その動きについて取りあえず私の手元に入っている情報を報告したいと思います。チナヲチ(web上で集めた中国情報を素人が勝手に解釈する作業)とは直接関係するものではありませんが、当ブログを読んで下さる方には中国在住の方も結構いらっしゃるようですので、少しでもお役に立てればと思います。
ソースは例によって香港各紙と中国国内の反日サイトです。それだけに確度については保証しかねます。悪しからず。
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■4月16日
●北京(中止の模様)
午前9時に天安門広場に集合し、人民英雄記念碑のところで烈士を祭る、という企画がネット上で出されたものの、「場所が場所だから」ということで企画を自粛せよとする声が多く、どうやら流れた模様。
●上海(取消の噂も)
9時に外灘の人民英雄記念碑か人民広場に集合、「外灘人民英雄記念碑-南京路-人民広場-日本大使館」の経路でデモを実施する予定。「万一に備えて日本製のカメラ、DV、携帯、MDなどの電子製品は持参しないこと」との注意書きあり。
●天津(取消の噂も)
午前9時半に天津銀河広場に集合し署名活動を行うとのこと。正し直後に「準備不十分によりキャンセル」との情報が流れており、真相は不明。
●瀋陽
詳細は不明。
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■4月17日(1)
●北京
デモが行われる予定なれど詳細は不明。
●青島
午前中に集合し、集会を開く模様。
●瀋陽
午前中に集合し、日本総領事館までデモを行う模様。
●西安
午前中に集合しデモを実施する模様。
●東莞
午前中に集合し集会・デモを行う予定。
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■4月17日(2)
●広州(取消の噂も)
詳細不明。ただ広州交易会が開かれているため外国人が多く来訪し、また全国テストの日にも当たるため活動をキャンセルするという情報も。
●成都
詳細は不明。
●杭州
詳細は不明。
●香港
ビクトリア公園(維園)に集合しセントラル(中環)の畢打公園までのデモを行う予定。当初警察当局は参加者を約500人とみていたが、反日基調の香港マスコミによる連日の煽りもあり、参加者が予想を大幅に上回る可能性もあるとされている。
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何だか外務省の情報の方が詳細な気がします(汗)ので転載しておきます。
中国:反日デモに関する注意喚起(続報)(2005/04/15)
1.中国国内では、4月2日から3日にかけて四川省成都市及び広東省深セン市で、また9日から10日にかけて北京市、広州市、深セン市等で「反日デモ」が行われました。これら地域で生じた破壊行為を伴った「反日デモ」による被害が、日系スーパー及び飲食店の他、日本の在外公館にも及んだため、日本政府は、引き続き中国側に対して日本人の安全、日系企業の正常な活動等を確保するよう求めていますが、今後も中国各地において同様の「反日デモ」が行われる可能性があります。
2.また、ウェブサイト上の情報及び報道等によれば、「反日デモ」は、下記地域で実施されるとの情報がありますが、これら地域以外においてもデモ、抗議集会や署名活動等の反日活動がなされる可能性もありますので、このような反日活動を目撃あるいは事前に情報を入手した場合には、現場に近付かず慎重に行動し、無用のトラブルに巻き込まれないよう、引き続き自らの安全対策を心掛けてください。
3.なお、暴力行為などの被害を受けた際は、以下の日本大使館あるいは総領事館に速やかにご連絡下さい。また、これら在外公館から発出される「お知らせ」及び外務省海外安全ホームページの渡航情報《安全対策基礎データ》でも参考情報を掲載しておりますので、是非活用して下さい。
記
○16日
北京市:天安門英雄記念碑(9時~)
上海市:淮海路→虹橋地区→日本総領事館(9時~)
上海市:外灘人民英雄記念碑→南京路→人民広場→日本総領事館(10時~)
天津市:天津銀河広場
珠海市:珠海ジャスコ前の「揚名広場」
中山市:中山ジャスコ前
○17日
瀋陽市:三好街→日本総領事館(9時~)
成都市:数字広場(9時~)
成都市:人民公園記念碑(午前)
香港特別行政区:ビクトリア公園→行政長官弁公室(15時~)
○16日または17日
広西壮族自治区桂林市:ニコニコ堂(中国名:微笑堂)前
○5月1日
南京市:南京華海門(9時~)
○5月4日
上海市:外灘人民英雄記念碑(8時~)
温州:温州世紀広場(10時~)
重慶:上清寺人民礼堂(8時50分~)
http://www.anzen.mofa.go.jp/info/spot_top5.asp?id=009&num=2
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中国:悪質なデマに関する注意喚起 (2005/04/15)
1.4月13日から14日にかけ、大阪で発行されている華字新聞の記事と称して、「反日騒動のあおりを受け、中国人留学生2人が日本人に殴打され、うち1人が殺害された」という虚偽情報が中国国内のウェブサイトに次々と転載されました。
この様な事件が発生した事実はなく、これは悪質ないたずらと思われます。因みに、14日、中国外交部報道官は、記者会見において、「事実確認を行ったところ、こうした事実はない」旨コメントしています。
2.日本政府は、中国側に対し、在留邦人及び日系企業の安全確保を求めていますが、今後、このような虚偽情報によって反日感情が高まり、些細な事柄が深刻なトラブルに発展する可能性を懸念しています。
3.つきましては、デモ、抗議集会、署名活動等の反日活動に便乗した悪質なデマに惑わされないよう呉々もご注意下さい。
(問い合わせ先)
○外務省領事局海外邦人安全課(テロ・誘拐に関する問い合わせを除く)
住所:東京都千代田区霞が関2-2-1
電話:(代表)03-3580-3311(内線)5139
○外務省海外安全相談センター(国別安全情報等)
住所:東京都千代田区霞が関2-2-1
電話:(代表)03-3580-3311(内線)2902
○外務省 海外安全ホームページ: http://www.mofa.go.jp/anzen/
○在中華人民共和国日本国大使館
住所:7 Ri Tan Road, Jian Guo Men Wai, Beijing, People''''s Republic of China
(北京市建国門外日壇路7号)
電話: (86-10) 6532-2361
FAX : (86-10) 6532-4625
ホームページ: http://www.cn.emb-japan.go.jp/jp/01top.htm
○在広州日本国総領事館
住所:Garden Tower, 368 Huanshi Dong Lu, Guangzhou, People''''s Republic of China
(広州市環市東路368号花園大厦)
電話: (86-20) 8334-3009
FAX : (86-20) 8333-8972
ホームページ: http://www.guangzhou.cn.emb-japan.go.jp/
○在上海日本国総領事館
住所:8 Wan Shan Road, Shanghai, People''''s Republic of China
(上海市万山路8号)
電話: (86-21) 6278-0788
FAX : (86-21) 6278-8988
ホームページ: http://www.shanghai.cn.emb-japan.go.jp/
○在瀋陽日本国総領事館
住所:50 Shisi Wei Lu, He ping Qu Shenyang, Liaoning, People''''s Republic of China
(遼寧省瀋陽市和平区十四緯路50号)
電話: (86-24) 23227490
FAX : (86-24) 23222394
ホームページ: http://www.shengyang.cn.emb-japan.go.jp/jp/index.htm
○在重慶日本国総領事館
住所:14F, Chongqing Guesthouse Business Mansion, 283 Minsheng Road,
Chongqing, People''''s Republic of China
(重慶市渝中区民生路283号 重慶賓館商務大厦14F)
電話: (86-23) 6373-3585
FAX : (86-23) 6373-3589
ホームページ: http://www.chongqing.cn.emb-japan.go.jp/jp/index.htm
○在香港日本国総領事館
住所:46th & 47th Floors, One Exchange Square, 8 Connaught Place, Central, Hong Kong
(香港中環康楽廣場8號交易廣場第一座46樓及47樓)
電話: (852) 25221184
FAX : (852) 28680156
ホームページ: http://www.hk.emb-japan.go.jp/index_j.html
○在大連出張駐在官事務所
住所:3rd Floor, Senmao Building, 147 Zhongshan Road, Xigang District,
Dalian Liaoning People''''s Repblic of China 116011
(遼寧省大連市西崗区中山路147号森茂大厦3階)
電話: (86-411) 8370-4077、4081、4082
FAX : (86-411) 8370-4066
http://www.anzen.mofa.go.jp/info/info4.asp?id=009#header
――――
うーん困ります。はっきり言って情報が集めにくくなっているのです。というのも先週までデモなどを引っ張ってきた「愛国者同盟網」「中国民間保釣聯合会」などに政府の調査の手が入り、いきおいこれらのサイトでは情報を出しにくくなっているようです。
それで糞青(自称愛国者の反日教徒)は地下に潜り(笑)、いや掲示板を使わずに、携帯メールやQQ(ICQのようなもの)で地区ごとに連絡を取り合っているようです。掲示板にはHN(ハンドルネーム)、地区、QQ番号だけを書いたレスが増えています。
なお香港紙『明報』(2005/04/15)が伝えた消息筋情報(※1)によると、当局は9日に行なわれた北京のデモは「中国民間保釣聯合会」が黒幕、とみて調査に入ったようです。この「民間団体」の会長を務める珍獣(プロ化した糞青)の代表的存在・童増は、「あれは自発的なもの」と同紙の取材に答えていますが、さあどうなんでしょう。記事の流れからいうと、たぶん消息筋=童増だろうと思います。
いずれにせよこの話が正しければ、当局はあの北京での活動は最初の集会だけにとどめ、デモを行う予定はなかったことになります。つまり、「あれは官製デモではない」とする御家人説が補強されることになります。……いや、ただそれだけです。やっぱりちょっと嬉しいので(笑)。
――――
ともかく「民間団体」の代表格である「愛国者同盟網」と「中国民間保釣聯合会」は現在、言うなれば当局の監視下におかれ、組織として身動きがとれない状態のようです。「中国民間保釣聯合会」は6日には早くも
●理性的で秩序立った『反日』活動を堅持しよう
http://www.cfdd.org.cn/web/Article/200504/20050407103233.html
という声明を出していますが、その後同会の広東支部?が広州・深センのデモ+プチ暴動(10日)の直後、活動自粛声明を出しています。「愛国者同盟網」も12日付で、
●愛国者同盟網の最近の活動に関する声明と呼びかけ
http://bbs.54man.org/dispbbs.asp?boardID=411&ID=173898&page=1
という公告を発表。この中で破壊活動は国家のイメージを汚す一方、他のデモ参加者の権利や正義をも損なうものだ、こういう行為は責められて然るべきだ……と強調しています。
――――
でも本当にわかってんのかなコイツら……という感想が湧かずにはおれません。「在中国」さんが前回のコメント欄に寄せて頂いた情報によると、いま現地ではいくつかの反日メールのようなものが飛び交っているようです。その中に、
「10日の広州のデモ、午前中は我々学生も警察も秩序だっていてよかったのに、午後になって、学生じゃないやつがまぎれてきて暴れた。今度、外出するときは、周りをよくみて無関係の人間がそばに紛れ込んでいないかどうか注意しよう」(※2)
との内容のものもあったようです。無関係な人間が紛れ込むと暴徒化する可能性が高い、そんなことも気付かないあたりが糞青の糞たる所以だ、と当ブログでは何度か指摘してきました(参考◆◆)。が、どうやらまだそれが身に沁みていないようです。ネット上での打ち合わせだけで、じかに会って事前に問題を詰めないからでしょうね。六四世代とは歳が離れていますからデモに関するノウハウも蓄積されていない。本来ならちゃんと専門の係「糾察隊」を随所に配するべきなのに、「みんな気を付けよう」レベルで止まっています。この意識でデモをやればまた暴徒化は避けられないでしょう。
――――
当局がずいぶん神経質になっている様子からして、本来純粋な「反日」デモだったのが、「不純物」がかなり紛れ込み始めた、という認識があるのでしょう。前にも書きましたが、実際、そういう社会状況でもあります。現に香港・台湾や反体制系メディアでは毎週必ず暴動関連のニュースが報じられます(例えば先週は広東省番禺、今週は浙江省東陽など)。
それに多くの方々から報告を寄せて頂いたこのニュース。
●農民は抗争・軍人は陳情――激化する社会矛盾
http://www.epochtimes.com/gb/5/4/14/n888337.htm
11日に40~60歳の退役軍人など灼2000名が陳情(上訪)のため北京に入ったところ、防暴警察(機動隊)を含む警官隊約3000名に阻止され拘束された、というものです。2000名は眉唾モノという気がしますが、年金生活者は物価上昇で台所を直撃され、人員削減に伴う転業軍人は事実上の失業者状態なのでしょう。「××の某部隊が転業軍人の就職先を100%確保」なんてニュースが「新華網」などにも出ます。そんな報道が出てくる以上は、100%確保など夢のまた夢、というのが実情なのでしょう。
また、今年北京入りした出稼ぎ農民は前年比50%増とのこと(※3)。昨年も全員に就職先をあてがえなかったのですから、今年はいよいよ深刻な状況となるでしょう。他の地区の就職状況も新卒者を含めて去年より厳しい模様で、これもまた中国社会の抱える時限爆弾のひとつといっていいでしょう。
加えてプロの活動家、これは糞青や珍獣ではなく民主化運動家や法輪功などの反政府分子ですが、御家人でさえこれだけ危ない危ないと書いているくらいですから、とっくに暗躍し始めていることでしょう。
とりあえず、訪中するだけで嵐を呼びかねない町村外相に拍手、です。
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【※1】http://hk.news.yahoo.com/050414/12/1bl69.html
【※2】在中国さん、不都合があれば削除しますので御一報下さい。
【※3】http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-04/13/content_2825192.htm
――――
【お知らせ】最近皆さんからコメント欄に寄せられる情報や御意見には非常に良質なものが多く、そのまま埋もれさせてしまうに忍びないものが多々あります。そこで勝手ながら、コメント欄に出たものは事前承諾なしでエントリー内に引用させて頂く可能性があることを御承諾頂きますよう御願い申し上げます。……という訳で、投稿に際してはこの点を予め御了承下さい。
→反日騒動2005(22)へ
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【シリーズ:反日騒動2005(20下)】
←(20上)へ
4月2日に四川省・成都市で「民間団体」による街頭署名を端緒に日系スーパーを襲撃する事件が起きましたが、どうやら胡錦涛派の掌握が及んでいない「新華網」は、このときも署名運動や日貨排斥を煽り、また反日感情を高めんとするかのような記事を出してきています。翌3日は深セン市で、同じ経緯によってやはり日系スーパーが襲撃されていますが、これらの事件は報道統制により国内では一切伝えられませんでした。胡錦涛は似たような事件が続発することを恐れたのでしょうが、報じられなかったために、「反日」ムードに変化を与えることもなかったといえます。むしろネット上、特に「民間団体」のサイトからその情報が流れることで、「反日」気運をより高めた観があります。
これに危機感を抱いたのでしょう。胡錦涛の『中国青年報』が急遽、強腰の署名論評を掲載します。
●米国というファクターが中日関係を左右する(参考)
(中国青年報2005/04/04)
http://zqb.cyol.com/gb/zqb/2005-04/04/content_1062138.htm
以前にも書きましたが、これは日本の常任理事国入りに反対する動きに水をぶっかけ、同時に反対論に対しひとつひとつ反駁している内容です。翌4月5日の香港紙『明報』は、マスコミを統括する中央宣伝部が各メディアに対し、署名活動の報道を抑制し、日貨排斥の動きは一切報じるなとの通達を出した、という消息筋情報を伝えています。
実際、この直後に中国国内メディアは大人しくなり、署名活動などで「反日」のお先棒をかついでいた「中国民間保釣聯合会」「愛国者同盟網」といった「民間団体」も、理性的な行動を呼び掛けるメッセージを出しています。反日気運を高めようとする「抵抗勢力」に対する、「胡錦涛派」の巻き返し第二弾です。第二次攻勢と呼んでもいいでしょう。
――――
ところが、この攻勢は長続きせず、わずか一夜で頓挫してしまいます。歴史問題です。具体的には扶桑社の歴史教科書が新たに槍玉に挙げられました。いや、そもそも日貨排斥事件の発端はこの教科書に対する反発(というより「新華網」の燃料投下)でしたから「新たに」という訳ではないですね。それまで脇役だった歴史教科書問題が「反日」の中心に据えられた、というべきでしょう。
●中国各紙、一斉に日本批判 抗議行動拡大の可能性も
(共同通信2005/04/06)
http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=RANDOM&PG=STORY&NGID=intl&NWID=2005040601002439
中国人にとってみれば、それまでの「日本の常任理事国入り反対」に比べて実にわかりやすく、より可燃度の高いテーマです。「胡錦涛派」がせっかく会心の一撃ともいえる第二次攻勢をかけたのに、「中国各紙、一斉に日本批判」です。これで改めて「反日」に火がつき、それまで以上の勢いで燃えさかることになってしまいます。
あるいはこの動きは「抵抗勢力」の反撃であり、逆攻勢なのかも知れません。少なくともこの問題をことさら派手に報道させたところに政略の香りを感じます。歴史問題は錦の御旗です。中国側にとって絶対に一歩も譲れないテーマですから、「中国各紙、一斉に日本批判」となっても、胡錦涛とて表立って反対することはできません。
――――
そこからはもう一気呵成です。主役が歴史問題になったことで、署名活動よりデモが前面に出てきます。そして北京(9日)と広州、深セン(10日)でのデモを端緒とするプチ暴動。特に北京の動きが興味深いです。最初に集会があって、新華社がそれを海外に速報したと思ったら、そのあとに暴動まがいのデモに発展してしまいました。
当ブログで何度か指摘していますが、私は最初に開かれた集会は当局(胡錦涛派)による「官製」で、集まった連中にシュプレヒコールを叫ばせ国歌を歌わせる。そして新華社にそれを海外へと速報させて「中国の民意」をソツなくアピールしてフィニッシュ、という台本だったと考えています。筋書きを書いたのはむろん「胡錦涛派」です。
ところが、集会が終了すると集まった連中はデモ行進を始めてしまいます。目標は日本大使館。これは「抵抗勢力」が裏で糸を引いていたものと私は考えます。だから公安(警官)も投石をとがめないし、デモ隊が日本製品の広告を壊しても騒がない。車をひっくり返しても日の丸を燃やしてもOK。ただし、大使館内への突入は断固阻止。……そういう「約束事」が、「抵抗勢力」から現場の責任者に伝えられていたのだと思います。「抵抗勢力」の顔ぶれについて具体的に想像することはできませんが、少なくとも治安当局を言のままに扱える筋、ということになるでしょう。
――――
気になる動きがない訳ではありません。党指導部のひとりに数えていい羅幹・党中央政治局常務委員(党政法委員会委員を兼任)、これは公安・武装警察など治安部門を束ねる実力者で、昨年秋に四川省・雅安市・漢源県で農民10万人による暴動(漢源農民暴動)が起きた際、四川省の省都・成都まで出てきて現地に投入された武装警察(または人民解放軍)2コ師団の総指揮を執ったりしています。この羅幹が4月8日と9日、広東省や国家司法部門のトップを引き連れて広東省を視察しているのです(※1)。
視察して回った場所は珠海、仏山、中山、深センの4市。仏山では3日に「民間団体」による街頭署名活動が行われており、さらに同日、深センでは街頭署名活動から日系スーパー襲撃事件が起きています。羅幹がまだ広東省にいた9日は北京でのデモ、翌10日は深センと広州でデモやプチ暴動が発生しています。
羅幹は治安担当として当然深センの出来事は詳しく知っていたでしょう。恐らく10日に広州や深センで大規模なデモが発生しそうだ、との情報も耳に入ってたと思います。ところが、こうして中央の高官が視察を終えた直後、10日に広州と深センでプチ暴動ともいえるデモが起きている。本来ならガラス1枚とて割らせないという厳戒頽勢で臨むべきところですが、広州では日本料理店や日本製品の広告、それにビルのガラスが壊されたりしています。深センもまた然りです。当然叱責されて然るべきところですが、許宗衡・深セン副市長は事件の翌日(11日)開かれた記者会見で、
「デモは理性的で秩序立ったものだった。合法的なデモに対して、政府がこれを阻止したりすることはない」
と、とコメントしているのです(※2)。神妙になって当たり前なのによくもまあぬけぬけと、というところですが、予定されるデモへの対応について羅幹から何らかの指示があり、その「警備マニュアル」を忠実に守ったからこその態度なのかも知れません。……まあ、邪推ですから。
――――
ともあれ、北京、広州、深センで発生した事件は、「ほどよい反日」どころではありません。北京でお膳立てした「官製集会」は全く無駄となり、投石など破壊活動は海外マスコミを通じて全世界に流れてしまいました。欧米の主要紙にも中国国民のやり方を非とする論調が出現し、どうせ政府が裏で操っているのだろうという観測まで出てきました。日本でも「官民一体」説が出ています。
今回の邪推モードによれば「胡錦涛派」も「官」なら「抵抗勢力」も「官」なのですから、上の観測は間違ってはいません(笑)。ただ「抵抗勢力」主導の「官民一体」が、胡錦涛の思惑を大きく超えて暴走したのです。その結果、圧力をかけてやる筈だった日本からあれこれと言われてしまう。それは素っ飛ぼけたりシラを切ったり、あるいは逆ギレしてみせたりして時間を稼ぐことができます。ただ、これ以上の暴走は止めなければなりません。
そこで「胡錦涛派」による第三次攻勢、ということになります。前にも紹介しましたが、これまた『中国青年報』の記事です。
●外交部報道官「在中国日系組織と日本人の安全確保に全力を尽くす」(参考)
(中国青年報2005/04/11)
http://zqb.cyol.com/gb/zqb/2005-04/11/content_1066526.htm
この記事の中でで胡錦涛は、
「示威活動の過程で発生した様々な過激な行為は中国側にとって目にしたくないものだ」
と、秦剛・外交部副報道局長に言わせています。これも前に書きましたが、外交部報道官の発言ですから、政府の公式見解ということになります。要するに「抵抗勢力」に対し強い態度で出た、ということです。
――――
それだけではありません。この記事が出た4月11日には、党中央の機関紙である『人民日報』が、
●社説:執政能力の向上に着眼せよ
(人民日報2005/04/11)
http://www.people.com.cn/GB/paper464/14499/1289662.html
という記事を1面に持ってきています。「執政能力の向上」は胡錦涛が言い出し、一種の流行語になった言葉です。当然ながら胡錦涛を持ち上げるものといえます。しかも社説です。署名論評とは格が違います。それまで「胡錦涛派」の掌握度に疑問のあった「新華網」も、この社説を転載します(※3)。さらに翌12日には、「新華網」トップページのトップ記事、新聞でいえば1面トップですが、そこに胡錦涛が山東省を視察したというニュースが写真付きで大きく掲載されました(※4)。
「重要講話」との枕詞もつかない、ただの視察です。胡錦涛が山東省へ行った、そこでこれこれという内容の話をした……という何の変哲もない記事ですが、これが写真付きで大きく扱われ「新華網」の「1面トップ」を飾ったというのは、大きな政治的意味を持つものです。簡単にいえば、それまで抵抗していた「新華網」が、ついに「胡錦涛派」の軍門に下ったということです。
あたかもこれに足並みを揃えるように、一部の「民間団体」が活動を自粛するだの激情に任せず理性的にやるだのといった「反省文」を自らのホームページで公開しています。これは連中の政治的保護者(飼い主)の「抵抗勢力」が頽勢に回ったことを示すものでしょう。
――――
外交部の報道官たる秦剛は12日午後の定例記者会見においいても、
「改めて申し上げるが、デモの過程で発生した様々な過激な行為については、我々は不賛成だ」
と言っています(※5)。「目にしたくないものだ」よりは強い表現ではあります。……また、前々回(参考)の末尾でふれた点についても指摘しておかなければなりません。その部分を引用しますと、
◆◆◆◆
外交部報道官による会見、例えば『中国青年報』に掲載された4月10日の記者会見(上に掲げた『中国青年報』の記事「外交部報道官『在中国日系組織と日本人の安全確保に全力を尽くす』」)では、
「中国側は中国駐在の日系企業や日本人の安全確保に全力を尽くし、様々な手を打っている」
と言っています。ただつい最近、具体的には4月5日の記者会見までは、日本の常任理事国入り反対署名活動や、それがプチ暴動に発展したことなどに関連して、
「中国政府は終始一貫責任を持って、法律に基づいて日本を含む全ての在中外国人の生命・財産・安全と、企業の正常な経営活動を保護する」(※6)
……と胸を張っていたのです。比較すれば一目瞭然、現在の日系企業及び邦人の安全確保に関する言い回しは、ずいぶん後退したものになっているのです。特に「法律に基づいて」が消えていることが気になります。
◆◆◆◆
この点については、いったん後退した表現がまた「法律に基づいて」に戻っています。
「中国政府は引き続き法律に基づいて日本を含む在中外国企業と外籍公民の合法的な権益を保護する」(※5)
まあ、法律そのものに問題があったり合法的権益がいつ非合法に変わるかも知れない、というスリルはあるのですが(笑)。
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以上、遊んでみたら意外に長くなってしまい申し訳ありませんでした。「抵抗勢力」の反撃と「民間団体」の動向(また飼い主が変わるかも)に期待しましょう。
……あくまでも邪推モードですから、本気にしないで下さいね。
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【※1】http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-04/10/content_2811423.htm
【※2】http://hk.news.yahoo.com/050411/12/1bgu1.html
【※3】http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-04/11/content_2812013.htm
【※4】http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-04/12/content_2816396.htm
【※5】http://world.people.com.cn/GB/1029/42354/3315530.html
【※6】http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-04/05/content_2790627.htm
――――
【関連】9日に起きた北京市でのデモについて、日本大使館近くに多数のバスが準備されており、デモ隊にそのバスで現場を離れるようアナウンスが流されていた……ということを以て「だから官製デモ」とする向きがあるようですが、これは正しくありません。以前コメント欄にも書きましたが、官製であろうとなかろうと、デモが行われてそれが夜に及んだ場合には、関連部門がバスを手配するものなのです。これは「中国におけるデモの常識」というべきもので、1986年の学生デモ、それに1989年の民主化運動(いずれも非官製デモ)においても北京をはじめ各地で見ることのできた光景です。私もそのお世話になったことがあります。昨年のサッカーアジアカップ決勝の試合後も、中国当局の手配により日本人サポーターはこの形式でスタジアムを後にしています。
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【シリーズ:反日騒動2005(20上)】
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やっぱり平日はデモがありませんねえ。こういう日は珍重しないといけません。ちょっと戻って、一連の流れを再確認してみるに限ります。その上で新しい変化などを眺めてみようかと。
さて、まずはどの辺から振り返れはいいかというと……まあ3月末に「新華網」が「右翼教科書支援企業一覧」を公開したあたりからでしょうか。言うまでもなく、他国の教科書の内容に容喙するというのは明白な内政干渉ですが、「新華網」は「支援企業一覧」で実際の企業名を出すことにより、さらなる「燃料投下」を行ったことになります。
●アサヒビールやいすゞ自動車など10社、日本の歪曲された歴史教科書を賛助(参考)
(新華網2005/03/28)
http://news.xinhuanet.com/fortune/2005-03/28/content_2752743.htm
この記事ですね。それまでも日本の国連安保理常任理事国入り反対のネット署名などが行われていましたが、「新華網」のこの記事で事態が一気にヒートアップして、
●街頭署名活動
●日貨排斥事件
●日系スーパー襲撃事件
●北京はじめ各地での反日デモ+プチ暴動
……というふうにエスカレートしていきました。
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自発的に始まった(自称)という当初行われていたネット署名、これを中国政府が裏で後押ししていたのは疑う余地がありません。「新華網」は国営通信社のウェブサイトですが、そこにも反対署名ページへのリンクが張られていました。それもわざわざ赤い字で(笑)。
で、上記「新華網」の記事によってまずは「日貨排斥事件」が起こる訳ですが、それから「反日デモ+プチ暴動」(北京・広州・深セン)まで、ざっと2週間ぐらいですか。この一連の反日の動きを日本では「官民一体」と表現されることが多いようですが、厳密にいえば「官」は一枚岩ではなく、表面上は「官民一体」にみえても、一方で別の「官」が逆の動きをしていたという印象です。
やや具体的にいえば、反日気運をより過熱させようとする「官」と、逆にブレーキをかけようとする「官」があった、と私は思います。一党独裁の中国ですから「官」といえば党上層部ということになりますが、その中で「反日度」の強弱をめぐって、水面下で複数の政治勢力による綱引きがあったように思えます。……いや、逆でしょうね。複数の政治勢力による主導権争いが、「反日度」の強弱という形で見え隠れしていた、というべきかも知れません。
という訳で今回は邪推満開。「背景に党上層部の勢力争いがある」という強引な仮説から今回の一連の「反日」をあとづけてみたいと思います。胡錦涛・総書記のサイドとその敵対勢力、まあ敵対という程ではなくても、胡錦涛の政策に異を唱える(「既得権を奪われかねない」「対外的な弱腰姿勢が我慢ならん」など)とか、奴がトップに入るのが気に入らないから足を引っ張って高転びに転がしてやろう、といった点で連携している政治勢力が、実は「反日」の上で「胡錦涛派」と綱引きを行っていた……という仮定で眺めてみようということです。胡錦涛派が「官」なら、その敵対勢力もまた「官」なのです。
――――
敵対勢力を仮に「抵抗勢力」と呼ぶことにしましょうか。今回の「反日」における基本的なスタンスをいえば、「胡錦涛派」は「ほどよい反日」を企図したといえるかと思います。それをやることで日本への圧力、国際社会へのアピール、そして民意の支持獲得を実現しようとした訳です。
対する「抵抗勢力」は、胡錦涛が必要とする以上の「反日」を行うことでその意図を挫き、困らせ、政治的な窮地へ追い込もうとするものです。昨年から対中外交で「弱腰」の二文字が消えつつある日本に対し、中国側がその変化に即応できず後手後手に回ったことで、フラストレーションを募らせている対外強硬派が「抵抗勢力」の主力ではないかと私は邪推しています。
ネット署名は恐らく「胡錦涛派」が計画・実行したものでしょう。「ほどよい反日」には打ってつけの企画ですし、ネット上での活動に限定されるので人畜無害という点も、統制好きで民間の先走りを嫌う胡錦涛の好みに合っています。
これに対し、「新華網」による「燃料投下」(右翼教科書支援企業一覧)は「抵抗勢力」の仕業でしょう。この煽りは非常に効果がありました。上述したように、この「燃料」で「日貨排斥事件」が誘発され、署名活動も「ネット署名」に代わって「街頭署名」が主流となります。ネット署名に積極的だった糞青(自称愛国者の反日教徒)や珍獣(プロ化した糞青)たちも、「中国民間保釣聯合会」「愛国者同盟網」などといった「民間団体」の旗のもとに結集し、街頭での活動を開始します。
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糞青や珍獣など所詮は四つ足同然だと前に書きましたが、簡単に言えば犬と同じなのです。「民間団体」はそれぞれ党上層部に飼い主(政治的保護者)を持っており、その手足となって働いたり、飼い主の保護の下で反日活動に従事したりします。飼い主が失脚したり退潮すれば容赦なく組織を潰されたり、新しい飼い主の保護下に入ったりします。とにかく飼い主が必要なのです。政治的保護者がいなければ、一党独裁の専制政権下で愛国とか反日といった政治活動めいたことができる訳がありません。
で、これら「民間団体」はもともと江沢民系列を飼い主にしていたと思われますが、昨年秋に胡錦涛政権がスタートした段階で潰されたり弾圧されたりして、言論統制の檻の中に放り込まれました。が、後に対日外交における頽勢を挽回する道具として胡錦涛に必要とされ、李登輝氏訪日に抗議する「なんちゃってデモ」(参加者約50名)を行ったりしています(あまり役に立たない道具のようです)。それが何を契機にかはわかりませんが、街頭での署名活動に出た時点の「民間団体」には、飼い主がすでに「胡錦涛派」から「抵抗勢力」の側に移っていた気配があります。
やや話が先走りますが、「胡錦涛派」が飼い主なら、街頭署名活動が日系スーパー襲撃に発展するといったような暴走は起きない筈ですし、その後の行動にも厳しい規制がかかったでしょう。が、連中はその後も活発に街頭署名活動や反日デモを行っています。それでプチ暴動を引き起こしたりもしている。その「ほどよい反日」から大きく逸脱した活動ぶりは、飼い主が代わったことに起因しているとしか思えません。
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「新華網」が「右翼教科書支援企業一覧」を公開して事態をエスカレートさせた時点に話を戻します。「ほどよい反日」を望む胡錦涛は、当然ながらこの変化を嫌ったことでしょう。事態をクールダウンさせるべく、第一次攻勢ともいうべき動きに出ます。
●民族主義の興奮に民主の理性を覆い隠させてはならない(参考)
(中国青年報2005/03/30)
http://zqb.cyol.com/gb/zqb/2005-03/29/content_1058075.htm
●日貨排斥事件に外交部「経済貿易問題を政治化することは望まない」(参考)
(外交部報道官2005/03/31)
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-03/31/content_2769866.htm
●中国外交部報道官「中日間の経済貿易問題の政治化は望まない」(参考)
(外交部報道官2005/04/01)
http://news.sohu.com/20050401/n224964208.shtml
●呉建民氏「網民による日本の『常任入り反対』運動は理解できるが理性的な対応も必要」(参考)
(中国新聞社2005/04/01)
http://www.chinanews.com.cn/news/2005/2005-04-01/26/558074.shtml
……これらの記事はいずれも、署名活動がネット上から街頭へと発展し、その一方で日貨排斥の動きが出てきた中で「官」(胡錦涛派)がそうした動きにブレーキをかけるべく動いた例です。『中国青年報』は御存知の通り胡錦涛の代弁者。そして政府の代弁者たる外交部報道官も記者会見でそれに合わせた動きを示しています。
外交畑のベテランである呉建民氏の談話も「中国は国益の観点から日本の常任理事国入りに反対しないかも知れない、国民の気持ちはわかるがここは理性的になってほしい」というもので、やはりクールダウンを求める内容でした。この時点で胡錦涛は明らかに事態がエスカレートすることを望んでいなかったことがわかります。
――――
これら「胡錦涛派」の動きとは別に(たぶん)、汚職の追求や社会問題に関するルポで定評のある『南方都市報』が「反日」で盛り上がる動きに苦言を呈する論評を掲載したりもしました。
●「日本の常任理事国入り」反対という激情には理性的な状況把握が必要だ(参考)
(南方都市報2005/03/30)
http://www.southcn.com/news/international/zhuanti/permanant/topnews/200503300310.htm
●何のための日貨排斥?
(南方都市報2005/04/01)
http://www.southcn.com/news/international/gjsp/200504010330.htm
間接的ながら、これもまた「胡錦涛派」への援護射撃になったといえるでしょう。
――――
ともあれ、胡錦涛は党のトップである総書記であり、中国における権力闘争のカギとなる軍権も握っています(党中央軍事委員会主席)。形の上では最高実力者ですね。ですから、上に掲げた4本の記事(中国青年報、外交部報道官×2、中国新聞社)は本来なら「ツルの一声」であり、メディアや各部門がすぐその意を受けて、クールダウンへと向かって然るべきところでした。
が、そうはならなかったのです。街頭署名活動や日貨排斥事件に関する報道がなおも続けられ、そういう報道がさらに「反日」をヒートアップさせていきました。胡錦涛がブレーキをかけるべくクギを刺したつもりが、例えば「新華網」などは国営通信社でありながら、基本的には「反日」の流れを煽る動きをやめようとはしませんでした(ネット署名ページへの赤文字リンクはこのとき消えましたが)。要するに、刺した筈のクギが刺さっていない訳です(参考)。
最高指導者の威令が及んでいない。少なくとも及んでいないメディアがある(素直に従って報道をクールダウンさせたメディアもあります)。いずれにせよ、どうやら「官」は胡錦涛以下一枚岩でまとまっている訳ではないらしい。……このあたりから私は、胡錦涛は最高実力者として全党をしっかり掌握できているのか、ひょっとして胡錦涛に従わない政治勢力が党上層部に存在するのではないか、と疑い始めました。政争の気配を感じた、というところでしょうか。
→反日騒動2005(20下)へ
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【シリーズ:反日騒動2005(19)】
←(18上)へ
私は仕事上の必要から昼夜逆転生活を強いられております。当然ながら一日に起きたニュースを目にするのは夜になってしまいます。そんな訳で、当ブログのコメント欄に色々な中国関連のニュースを投稿して頂くのは非常に有り難いです。
他にも注目すべき動きが中国側にあったのですが、今回は「ぷー」さんから頂いた情報(前回コメント欄)でひとつ。
――――
●器物損壊:反「反日デモ」? 「中国銀」入居のビル扉に金属弾--横浜(毎日新聞)
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20050412ddm041040172000c.html
10日午前10時45分ごろ、横浜市中区山下町の雑居ビルで玄関ガラス扉がひび割れているのを巡回中の警備員が発見した。ビル1階には中国の国有銀行「中国銀行」の横浜支店が入居しており、届け出を受けた神奈川県警加賀町(かがちょう)署は、中国各地で起きた反日デモに反発した人物による悪質ないたずらの可能性もあるとみて、器物損壊容疑で捜査を始めた。
調べでは、共用玄関のガラス扉4枚の計9カ所が玩具の銃で撃たれたようにひび割れ、そばに直径約5ミリの球形の金属弾が12個落ちていた。警備員が最後に巡回した9日午後10時45分以降、何者かが撃ったとみられる。(後略)
――
●中国銀のビル銃撃 エアガン 男が脅迫電話 横浜支店(産経新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050412-00000038-san-soci
(前略)同署(加賀町署)は「中国銀行を狙ったものとは断定できないが、時勢もあるので警戒を続けている」としている。
一方、中国大使館によると、同支店に事件後の十一日午後二時ごろ、同じ男の声で「中国人は出て行け」といった脅迫電話が二度にわたりあったという。
へぇーへぇーへぇー(AA略)。そんなことがあったんですか。しかしどこがタイミングを調節したのか、10日昼に明らかになったイタズラが12日になってようやく記事になるんですね。
で、こういうことになると中国大使館も甲斐甲斐しく働きますね。脊髄反射。
――――
●中国駐日大使館の黄星原報道官、駐日機関ビル銃撃事件で談話(中国大使館)
http://www.china-embassy.or.jp/jpn/sgfyr/t191059.htm
「10日未明、中国のある駐日機関が入居しているビルが何者かによって銃撃され、ビル内で働いている中国側要員は身の危険を感じた」
「これは一種のテロ行為である」
「この機関に脅しの電話が何度もかかってきた」
「(中国側は日本側に対し)早急に事件の真相を調査し、厳しい処分をするよう要求した。同時に、日本政府が確実に必要な措置を講じて、中国の駐日機関と在日公民の安全を確保するよう要望した。」
……だ、そうです(笑)。こちらも4月12日付、狙いすましたようなタイミングですね。脊髄反射でもあり連携プレーでもあるでしょう。実に香ばしいです。
ジサクジエーン?(・∀・)ニヤニヤ
――――
「ぷー」さんのコメントがふるっています(※1)。
中国お得意の 「偶然のタイミング」で出現する事件によるオマエモナー反撃 来ましたね。
おもちゃなのに「銃撃」。「投石<銃撃」 って言いたいんでしょうね。
たまには絵文字とかも使ってみますか。皆さん自在に駆使されていていつも羨ましく思っていたのです。
あ、可愛気があるからこの絵を使っただけで、別に「支那豬」とか言っている訳ではありませんよ。念のため(笑)。
――――
それにしても支那下がる、いやいや品下がる話ではありませんか。全く中共らしくもない。
愚昧な脊髄反射はいまに始まったことではありませんが、中共の場合は歴史問題で反撃してくるのが常道だと思っていました。いや今回もそれをやっているんですよ。これまた前回のコメント欄で「Unknown」(匿名)さんから頂い怡た情報ですが、
●遺棄化学兵器、相次ぎ発見=日本に対応要求の声も-中国(時事通信)
http://www.jiji.com/cgi-bin/content.cgi?content=050412010829X410&genre=int
……とのこと。これは「新華網」に記事2本が出ていまして、そこら辺が上の記事の元ネタだと思います。まあ標題訳すのも馬鹿らしいのでURLだけ書いておきましょう。
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-04/11/content_2814324.htm
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-04/11/content_2814412.htm
日本軍が遺棄した化学兵器が発見されただの砲弾が見つかっただの……化学兵器?遺棄?何のことでしょうか。連合国に無条件降服した際に兵器類その他は一切相手側に引き渡してた筈ではなかったのですか?
ともあれ、こういう脊髄反射が本来の中共流な訳です。それが今回のような玩具による「銃撃」ですか(笑)。やることが北朝鮮とか韓国とか、チョソレベルにまで落ちてきたのが悲しくもイタいじゃありませんか。品下がるとはそういうことです。余裕がなくなってきたのかも知れませんね。どうせチョソを真似るなら、次は「指切りげんまん」や「ひとり焼肉パーティー」で是非お願いします。
「早急に事件の真相を調査し、厳しい処分をするよう要求した。同時に、日本政府が確実に必要な措置を講じて、中国の駐日機関と在日公民の安全を確保するよう要望した。」
……なんて、いくら海賊版天国だからって、当局の出先機関が先頭切ってパクリに走る必要もないでしょうに。
――――
だいたい脅迫ならこういう報道もあるんですけど。
●香港紙『明報』(2005/04/12)
http://hk.news.yahoo.com/050411/12/1bgu1.html
この記事はデモ翌日の広州・深センの様子を伝えたあと、後半部に広州の日本総領事館及び総領事館職員への脅迫が最近続いていたと報じています。
領事館の警備員が明らかにした話とのことですが、広州の日本総領事館には最近、ほとんど毎日のように脅迫電話がかかっていたというのです。それだけでなく、総領事館で働く中国人職員も脅迫を受けるなどしたため、広州市の治安当局は領事館の入口前に詰め所を設けることを決め、従来の警備員ではなく、警官が常時警戒に当たるようにしたとのことです。
このニュース、報じたのが日本のマスコミならともかく中国の特別行政区たる香港の新聞、しかも最近中共寄りに軸足を移しつつある『明報』によるスクープです。ただ私は東京にいるので詰め所が設けられたのかどうかも自分の目で確認する術がありません。また当然のことながら中国国内メディアはもちろん報じていません。脅迫の件に関しては総領事館から地元警察への連絡もあったでしょうから、関係者からの詳しい情報提供があれば……と思います。
――――
ところで基地外というのはどこにでもいるものです。香港ついでに一応記しておきますと、香港でも今度の日曜日(4月17日)、大陸(中共)に呼応した反日デモを行おうという企画が進められているようです。これは今朝の香港各紙(2005/04/12)が伝えています。1996年のような騒ぎ(なんちゃって尖閣奪回運動)にはならないと思いますし、地元在住の方ならもう情報が入っているでしょうが、一応念のため。
いよいよ日本人来なくなるよ、と観光局筋には私から言っておきます(笑)。
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【※1】「ぷー」さん、不都合があればコメントの部分は削除しますので御一報下さい。
→反日騒動2005(20上)へ
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