日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 いやー困りました。あるんですこういう日が。大ネタ小ネタが同じ日にわらわらと湧いて出て、こちらは対応し切れません。散漫になるのを承知の上で片っ端から手をつけていくことにします。

 まずは続報から、というより続報がパタリと途絶えてしまった件。広東省・梅州市の炭鉱事故(大興煤鉱・死者123名)の事後処理についてです。

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 前々回お伝えしたように、地元当局が法規に違反していない合法的炭鉱もヤミ炭鉱と一緒に、しかも機械・設備類ともどもドカーンと爆破してしまったことで、炭鉱経営者は借金王に、炭鉱夫(地元住民+出稼ぎ農民)は失業者に、また炭鉱相手の商売で生計を立てていた地元住民も揃って失業者になってしまいました。

 同じ広東省の清遠市や韶関市でも同様の措置が採られました。民衆の反応はどこでも同じです。経営者も炭鉱夫も地元住民も揃って抗議活動を展開。1万人規模の集団陳情や数千人が政府庁舎を取り巻いて座り込み、その過程で警官隊との激しい衝突があったり逮捕者が出たりしていました。そういえば北京の中央政府から派遣された特別調査チームが宿泊しているホテルに直訴に押し掛けて、警官隊に阻まれる事件もありましたね。

 で、こういう情報を甲斐甲斐しく報じていたのが『香港文匯報』です。親中紙つまり香港における中共の御用新聞なのに「民」の抗議行動などを積極的に取材し、梅州など各地元当局の横暴な措置の背後には広東省当局の強い支持があることを暴露。当局を悪人扱いしかねない書きっぷりが何とも意外で、これは中央政府と広東省の間に方針のズレや善後策についての見解不一致といった齟齬が生じているのではないか、と勘繰ったものです。

 ところが、この『香港文匯報』による抗議関連の報道が8月29日付を最後に全く途絶えてしまったのです。今までの流れからすると、この唐突な断ち切り方は「書くな」との勅命が天から降ってきたのでしょう。そうでなくても党上層部がグラグラして政情不安な上に、放っておいても官民衝突が起きている社会状況です。一揆を煽りかねない記事はけしからん、という声が出ても不思議ではないかと思います。

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 ただ、かといって抗議行動が一瞬にして鎮静化する訳でもなかろうに……と考えていたら、ようやく出ましたよ続報。それも香港紙ではなく国営通信社のサイト「新華網」です。要するに中国国内向けの記事ということになります。

 ●広東省安監局を査問・処分へ――大興煤鉱事故で(「新華網」2005/08/31)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-08/31/content_3427553.htm

 この報道によると、広東省安全生産監督管理局の胡建昌・副局長を筆頭に、その部下である譚均偉・処長、王鎮成・副処長が職務停止処分となり、取り調べ中とのこと。

「これによって規律違反及び違法行為の事実を徹底的に暴き出す」

 となかなか勇ましいのですが、多分これはトカゲの尻尾切り、つまり広東省当局が中央の追及を避けるために精一杯妥協して、累が上層部に及ぶのを回避した結果なんでしょうねえ。すでに事故現場である梅州市と興寧市の市長はそれぞれ停職のうえ取り調べを受けています。玉石ともに砕く無理無体な措置の後押しをしておきながら、省当局はかばい切れなかったのではないでしょうか。

 葉剣英、そしてその息子である葉選平と2代続いた強力なボスのもと、中央による介入を容易に許さず、一時は独立王国とまで言われていた広東省が北京に攻め込まれ、内堀まで埋められている状況には隔世の観があります。一同は収賄容疑などでお縄になりそうな気配です。

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 ところで抗議活動は?というところですが、上記新華社電ではもちろん言及されておらず、『香港文匯報』も沈黙したままです。前述した政情不安や社会状況の悪化だけでなく、炭鉱整理及び官民癒着の根絶が温家宝・首相の陣頭指揮のもと呼号され、全国一斉に行われているという理由もあるでしょう。

 それでも、職を失い、路頭に迷いかねない、もう失うもののない一群が梅州、清遠、韶関などの地に確実に存在しているのです。恐らく万単位になるであろうその人々のケアをどうするか。というより果たして手当てできるのか。炭鉱整理だの官民癒着云々だのと掛け声だけ華々しくても、それによって生み出される大量の失業者をケアできなければ社会状況はいよいよ不穏になります。そうでなくても失業問題は政府の頭痛のタネなのですから。

 本来ならこういうときこそ「狗仔隊」(パパラッチ)と諷される香港プレスの潜入取材に期待したいのですが、それもなし。……というより香港は香港の事情で目下大騒ぎの真最中、記者は深セン市周辺を駆けずり回っているところでしょう。

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 それを後回しにして広東省ネタをもうひとつ。広州市番禺区の魚窩鎮・太石村で昨日(8月31日)、選挙による村民委員会主任(村長)選出を求める村民たち約80名が番禺区政府の正面玄関前に座り込み、抗議のハンストに突入しています。他に村民数十名も近くに座り込んでおり、事態に驚いた地元当局は警官多数を出動させてリーダー格の村民3名を逮捕。

 抗議行動に参加した村民によると、村民委員会委員は選挙で選ばれることが法的に保障されているのに、太石村では何度抗議しても村委員会によってそれが容れられず、訴訟を起こしても時間ばかりかかるため、やや過激ながらもハンスト、座り込みといった方法を選んだそうです。

 ●香港紙『明報』(2005/09/01)
 http://hk.news.yahoo.com/050831/12/1g5kk.html

 太石村は番禺区ですから広州の郊外型農村といったところでしょう。で、都市部の拡大に伴い、この村も御多分にもれず土地収用にまつわるトラブルが頻発しており、村民と開発業者が衝突するといった事件も以前から発生しているようです。

 こうなるとよくある話に落ちる訳ですが、要するに村委員会が真ん中に立って甘い汁を吸っているのではないかという疑惑が持ち上がります。ところが会計帳簿を見せろと迫った村民に対し、村委員会のトップである主任はこれを拒否。このため村民は主任罷免を決議し、主任改選要求を区の担当部門に求めたもののキッパリと断られたため、訴訟は時間がかかるとしてハンストに及んだとのこと。

 村民は急いているようでもありますが、これはどんどん迫ってくる都市化の波に煽られたというところでしょうか。ちなみに村委員会主任を選挙によって選出することは「中華人民共和国村民委員会組織法」が根拠となっています。

 村民が
「民主をよこせ法治をよこせ」などと叫ぶために番禺区政府は過敏になってしまったのかも知れません。上述した通り警官隊を繰り出してリーダー格3名を逮捕。あとは座り込んだ村民と人の壁を作る警官隊の睨み合いとなっており、昨日午後時点では事態は終息していなかったとのことです。

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 香港の騒ぎも気になるのですが先に大ネタの方を。上海を舞台にした日本人を巡る謎の事件です。上海市公安局長寧分局の報道官がきのう(8月31日)、それに関する声明を発表しました。

「8月30日に新浪網(SINA)など商業系サイトに転載された『民主と法制時報』王敏記者による記事『上海の街頭で日本人ビジネスマンがホステスを殴打』は事実から著しく逸脱した内容である。」

 ●『上海の街頭で日本人ビジネスマンがホステスを殴打』は事実に反したもの(「解放網」2005/08/31)
 http://www.jfdaily.com.cn/gb/node2/node142/node200/userobject1ai1048311.html

 全く同じ内容の記事が昨日夜までに、「新華網」や「人民網」(人民日報電子版)、それに「新浪網」など大手ポータルのニュースサイトに転載されました。「解放網」ではタイトルにボールド(太字)をかけて重要ニュース扱いでした。異様です。

 そんな事件あったの?と思ってダメ元で探したら幸い残っていました。

 ●「上海の街頭で日本人ビジネスマンがホステスを殴打」
 http://news.sina.com.cn/s/2005-08-31/10116828922s.shtml

 かなり長い記事です。ニュースというより雑誌の記事といった印象です。

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 日本人ビジネスマンと中国人ホステスのストーリーなのですが、実名や会社名はここでは伏せます。仮に日本人男性を「J氏」、中国人女性を「C嬢」としておきます。

 痴情のもつれめいた話なのですが、元記事と上海公安局の声明は内容がかなり異なります。

 まずは元記事から。

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 ●元記事(長いので超濃縮版)

 日本企業の駐在員であるJ氏が自宅近くの日本人相手の和風クラブに通ううち、C嬢を見初めて指輪などのプレゼントなどを贈った。ある晩来店した際に、酔ったJ氏はC嬢の手をぐっと握るなり「結婚してくれ」とプロポーズ。

 酔った勢いだろうと気にも留めなかったC嬢だが、その後J氏が本気とわかり、その気のなかったC嬢は「自分はもう結婚していて子供も二人いる」と話してJ氏に諦めさせようとする。

 ところがJ氏のアプローチがどんどん執拗なものとなり、とうとう7月11日午前1時ごろ、帰宅しようと店から出てきたC娘に待ち伏せていたJ氏が言い寄り、口論に発展したうえJ氏がC嬢に対し殴る蹴るの暴行を加え、止めに入った警備員にも怪我を負わせた。

 クラブ内にいた同僚たちは息をひそめ、誰も警察に電話してくれない。C娘は重傷を負い、J氏は勢いに任せてC嬢のバックを取り上げてタクシーに乗り込み、その場を去った。

 C嬢は事件を警察にも届けたが調書にはJ氏との関係を「恋人」と書かれてしまう。その後C嬢は元のクラブに戻ったものの同僚たちからよそよそしく扱われ、冷たい眼で見られる。

 意を決したC嬢は弁護士を伴って再び警察署を訪れ起訴手続きを行うも、「証拠不十分」などの理由で却下。しかし記者が取材を進めるうちに、現場近くの監視カメラ映像を入手。ただしカメラの角度の関係で事件の全貌は捉え切れていなかった。

 警察はJ氏に「警告」の行政処分を課して事件を片付けた。文末の記者のコメントは「日本人J氏による暴行は複雑な事件でもないのに、J氏は中国の法律を無視して平然としているのは空恐ろしいことだ。この事件の進展には今後も注目していく」。

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 ●上海公安局の声明(一部省略)

 7月11日午前11時ごろ居酒屋勤務のC娘が新虹橋治安派出所を訪れ、同日午前1時ごろ日本人J氏に殴打されるなどして怪我を負わされたので捜査してほしいと届け出た。

 当公安局が調査し確認したところ、C娘は居酒屋でJ氏と知り合い、ほどなく恋人の関係になった。事件が発生するまでに、J氏はノートパソコン、時計、ダイヤの指輪などをプレゼントしており、C嬢が日本語を習う学費もJ氏が負担した。

 7月10日夜、居酒屋に来店したJ氏に対し、C嬢は交際を終わらせるため、実は自分には夫がいて双児の子供もいると嘘を言った。J氏はそれを聞いて立腹し、自分が感情を弄ばれ騙されていたと考えた。

 そして7月11日午前1時ごろ、J氏は自分の部屋に来てちゃんと説明してくれと頼んだものの断られ、怒りに任せてC嬢を殴打し、勢いでC嬢のバックを自宅に持ち帰った。このバックは当日のうちにC嬢に返却された。また病院の診断によればC嬢の顔の傷はごく軽いものだった。

 事件が痴情のもつれに端を発しており、C嬢の怪我もごく軽いものであることから、当公安局は「治安管理処罰条例」の関連規定に基づいて調停を試みたが、肺賞金額が折り合わず和解は不成立。このため「治安管理処罰条例」の関連規定に拠って、J氏に「警告」の処罰を下した。

 当公安局は「上海の街頭で日本人ビジネスマンがホステスを殴打」の記事文中において二人が恋人関係ではないとした点、J氏がC嬢に強盗行為(バック持ち去り)を働いたという点、またC嬢に重傷を負わせたとした点、警察側の下した処分が不当に軽いものだとしている点などが事実から甚だしく逸脱しており、法律についても事実に反している。

 このため当公安局はここに事実を証明し、明らかにした次第である。広範なるネットユーザーは虚報に踊らされないようにしてもらいたい。また、当公安局は該当記事を執筆した記者に対し、法的責任を追及することになるだろう。

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 新聞記事になるくらいですから、上海の日本人社会では周知のことなのかも知れませんね。とりあえず注目すべきは、「元記事」の文末には
「日本人が中国の法律を平然と無視し」云々とあるのに対し、上海公安局の声明では「広範なるネットユーザーは虚報に踊らされないようにしてもらいたい」とわざわざクギを刺していることでしょう。

 しかも公安局の反応の速いこと速いこと。「新浪網」に元記事が掲載されたのが
「2005/08/31/10:11」、これより早い時間に掲載したニュースサイトもあるのかも知れませんが(公安局も問題の記事は30日からネットに流れたとしていますし)、これに対して記事の内容を虚報とした上海公安局の声明は「2005/08/31/12:42」には地元の「解放網」に出ているのです。

 事実はどうあれ、本質は「火付け役」と「火消し役」による丁々発止の情報戦のようですね。私は4月末に上海での反日デモ+プチ暴動を真っ向から斬って捨てた『解放日報』の署名論評が、一度は「新華網」や大手ポータルに掲載されながら短時間で削除されていったことを思い出しました。

 小泉首相による「八・一五靖国参拝」がなかったので元々そこに狙いを定めていた「火付け役」も肩透かしを喰ったのかも知れません。そこで今度は9月3日の抗日何たら記念日をターゲットに仕掛けてみた、というところでしょうか。もちろん「反日」は前回同様、党上層部における主導権争いのためのお題目、つまり政争の具にすぎないでしょう。もちろん4月のときのように、騒ぎの当事者たちはそんなことを考えたりもしないのでしょうけど。

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 これはちょっと面白くなってきましたね。第二弾も是非お願いします(笑)。

 ……あ、香港の騒動を忘れていました。如何せんもう一杯一杯(体力も字数も)なので宿題ということにさせて下さい。






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コメント
 
 
 
私も読みました (まかぼろ)
2005-09-01 16:17:16
この記事私も読みました。公安の反応早かったです。



ちなみに私は「網易」で見たのですが、初報の記事には6000以上のコメントがついていたのにもかかわらず公安局の声明文にはコメントが一つもついていなかったので変だな、と思ってよく見てみたら、公安局の声明文にはコメントすることができないようになっていました。



何か意図的なものでもあるのでしょうか?



参考までに



初報分

http://news.163.com/05/0830/15/1SDP1TNI0001122B.html

公安局声明

http://news.163.com/05/0831/12/1SG2JCI90001122E.html



追伸:

トラックバックさせていただきました。
 
 
 
Unknown (上海土管)
2005-09-01 18:43:39
この「栄」が曲者なんですよ?!

上海市政府(共産党)との結びつき?

公安と軍(武警)の島あらそい?

関西某組の係わり合い?

帰化日本人?



ま、ネタはツきません・・・・



http://freett.com/yekou/aso-sh/xw/demo/170.jpg

例のデモがあった日の新虹橋広場です



http://freett.com/yekou/aso-sh/xw/demo/199.jpg
 
 
 
知恵 (1読者)
2005-09-01 23:01:54
今晩は。



 コキントウさんがアメリカに行くとき、何事も無いかとは思いますが、何かを期待している今日この頃です。



 広州市番禺区の魚窩鎮・太石村の件を知り、法をたてにがんばる農民がでて、ハンストに訴えるという事実が新鮮でした。



 あの国でそれが強大な権力の前で以下に非力なものかはつくづく分かるのですが、それでも法をもって訴えるという意識が農民や市井の人の中に増えてきたことは党にとって困ったことだといえるかもしれません。



 やはりここで法を無視した弾圧が続けば、世論がある日ふっと動いてしまう危険が充満していると思うのです。

 弾圧の仕方、あるいは党組織の末端で発生したちょっとした殺人事件が燎原の火の如く広域に波及する危険がありそうな気がします。



 広がってしまったら最後、これは最後までお互いやりあうしかないとなれば、長い長い鎖国のような状況にならざるを得ないと夢想したりしています。



 五中全会、一つの大きな山がくるのではと思っています。
 
 
 
ハッカー側でも動き (vipper)
2005-09-02 02:27:18
ここしばらくおとなしかった反日ハッカーグループに、最近妙な動きが出ています。紅客連盟のリーダーだったLionが復活するという噂と、9・18攻撃の話が出ています。



詳しくは第一氏のblogにて。

http://blogs.yahoo.co.jp/firstmind321/folder/718540.html?m=l&p=1





胡錦濤氏の訪米が9・5~9・17で、長期不在となるため、様々な動きが出ているのではないかと邪推。

 
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