もう一週間前のことですが、3月13日、六本木で行われたデモ「2010 チベット・ピース・マーチ・イン・ジャパン」に参加してきました。
毎年この時期には、必ずフリーチベットのデモが開催されます。チベット人及びフリーチベット支援者にとって、一年のなかで最も重要な時期だからです。
まずは1959年3月10日のチベット蜂起があります。
意識している方にとっては記憶に新しいことですが、2年前である2008年の3月10日にはチベット蜂起50周年ということでラサなどを中心にチベット人による抗議活動が展開されています。
それに対し中国当局の治安部隊、つまり武装警察と人民解放軍が容赦ない武力弾圧を実施し、数多くのチベット人の血が流れ、また命が奪われました。
●シリーズ:チベット弾圧2008
51周年であり、2周年でもある。フリーチベットのデモを行う節目の時期としては、またとない最良のタイミングなのです。
という訳で今回も実施されたのですが、実は今回のデモについては、告知のあった当初から不満の声が多数あがり、評判があまり芳しくありませんでした。以下のような注意事項があったためです。
●当日掲揚する旗は、チベット国旗で統一させていただきます。
●先頭者が持つ旗・大断幕も、チベット国旗だけとさせていただきます。
●プラカードは、主催者の用意した物に限らせていただきます。
●デモ行進時には、主催者の用意した配布物以外は禁止です。
●過激な服やコスチューム、過激な批判の言葉が書かれているTシャツ等着用でのご参加は、ご遠慮いただきたいと思います。皆さんのご理解・ご協力を何とぞよろししくお願い申し上げます。
http://tibet-cj.org/peace_march2010/notice.html
純粋にチベット一色で、ということなのでしょうか。日の丸をはじめ東トルキスタンや南モンゴルの旗はダメ、というのはまあ理解できますが、チベット青年会議の旗も不可です。
また、プラカードの持参も禁止されたこと、何が「過激」なのかよくわかりませんが「過激な服装」での参加もダメ、コスプレもダメ、ということで、二重三重の縛りが入った実に窮屈なデモということになりました。これを嫌って参加を見送ったフリチベサポーターも少なくないようです。
私は、別の点で憤慨しました。主催者が「在日チベット人コミュニティ(TCJ)」である、ということについてです。
在日チベット人主体のデモであれば、上に書いた厳重な縛りは理解できます。詳しくは知りませんが、恐らく在日チベット人の少なからずは中華人民共和国のパスポートを所持していることでしょう。ということであれば、表立って真っ向からの中共批判は差し控えたいという気持ちがあっても不思議ではありません。
実際、デモの趣旨については、
「今回のチベット・ピース・マーチは、何かを批判するというよりも、チベット本土(自治区)に住んでいるチベット人が元気になるようなマーチにしたいと考えてます。」
と告知されていました。在日チベット人としては、現状でデモをやるならこれが精一杯のところではないかと思います。
ただし、今回のデモの開会式において代読された「チベット民族平和蜂起51周年記念日におけるダライ・ラマ法王の声明」には明確に中共批判が織り込まれていました。この内容からすると、今回のデモはダライ・ラマ法王の「3・10声明」に忠実なものではなかった、ということもできます。
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で、私が憤慨した点というのは「日本の支援団体は何をやっているんだ」ということです。
TCJを矢面に立たせ、デモの主催者とすることからしておかしいのではないか、と思いました。
日本には、スタンスこそ様々なれどチベット支援団体が多数存在します。それをまとめ上げているいわば事務局的なものが、TSNJという組織です。
その内情については、中の人でない私には全くわかりません。しかしTSNJがマトモに機能していれば、もっと間口が広く、より強い政治的アピールを前面に押し立てたデモが実現していたのではないでしょうか。
昨年の「ピースマーチ」には、雨模様にもかかわらず約300名が参加しました。
私自身は当時、
「ダライ・ラマ法王の甥御(側近でもある)がゲスト参加までしているのに、たった300名とは何事か。せめて500名は集めるべきだろ。事前告知が甘過ぎだ!」
と、怒髪衝天だったのですけど。
而して今回のデモは、暖かく晴天にも恵まれたというのに、参加者は約170名。たったの170名。何をか言わんやであります。
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厳しい縛りがあったおかげで、デモ自体は非常に慎ましやかでオシトヤカで大人しいものとなりました。シュプレヒコールも、
「チベットに自由を」
「チベットに人権を」
「チベットに平和を」
といった内容に終始し、「チベットに自由がないのはなぜなのか」ということで、本来叫ばれるべき中共批判は皆無。何やら修道女たちが行う清浄な儀式のようで、政治的示威活動と呼ぶにはまことに似つかわしくないものとなった、というのが個人的な感想です。
ちょっと悪い言い方をすると、これ、「くれくれデモ」なんです。
「自由をくれ」「人権を寄越せ」「平和をもたらせ」と叫んでばかりで、なぜそういう現状なのかという問題の所在である中共政権による侵略・同化政策には全く言及していません。これでは沿道の人には実情が伝わらないではありませんか。「察してくれ」というところなのでしょうが、政治的アピールとしては失格です。
20年前、中国で生起した大学生・知識人による民主化運動、これには当時上海留学中だった私も積極的に参与した(笑)のですが、このデモにおいて学生たちは、
「民主万歳」
「自由万歳」
「報道の自由を」
と叫ぶ一方で、
「李鵬下台」(李鵬首相は辞職しろ)
「小平下台」(トウ小平は蟄居しろ)
とコールすることを忘れませんでした。忘れなかった、というより、それが街頭での政治的示威活動というデモの本来的な姿だからです。これが当たり前といっていいでしょう。
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その意味で、今回は中共批判をスッポリ欠落させた、見事なまでに片肺飛行でした。ただし私はこの点については、主催者であるTCJは精一杯のことをやったと思っています。TSNJの下にあるチベット支援団体の不作為にこそ問題があるのではないでしょうか。
ちなみにTSNJの代表職というのは任期1年で、傘下団体の長の持ち回りとなっています。要するに昨年のピースマーチと今年とではTSNJ代表が異なりますから、スタンスが一変し、やむなくチベット人が矢面に立ったということなのかも知れません。そのあたりの事情について私は全く知らないので、こうして邪推するしかないのですけど。
もしTSNJが動いた結果がこのデモだというのなら、これはもう言語道断というほかありません。
事情はどうあれ、フリーチベットの節目のデモとしては全くお粗末な内容でした。こういう手淫めいたデモには今後、参加することはやめよう、と思ったほどです。
「こんなデモじゃ、良いことなんか何もないですよ。日本のフリチベ運動に寄与するところなんか絶対にありません。まあ、何もしないよりはマシかも知れませんけどね」
と、タシィさんに愚痴ったりもしたりして(笑)。とりあえず今回の主催者であるTCJではなく、日本のフリチベ支援諸団体の不作為(あるいはお粗末)に私は怒っております。
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さて、以下は御家人こと倉田典膳、じゃなくてカワイモリタローが台湾・香港での拡散用に制作したものですが(実は硬軟とり混ぜて色々発信していたりするのです)、まあ手淫のようなものです。
覚悟してはいたのですが、久しぶりに自分の北京語を聴いてみたら発音も抑揚も余りに日本人&香港人テイストに堕落していて、香港渡航以前の時期に比べると非常に退化しているので大層凹みました。アドリブなんで話している内容もgdgdですし。
これから何とか精進しますので今回は(いや今しばらくは)どうか御勘弁下さい。m(__)m