日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 一週間の御無沙汰であります。更新できなくてすみませんでした。仕事が急に忙しくなって。……予定が詰まっている、という忙しさならまだ何とかなるのですが、急に仕事が入ってきたり晴天の霹靂級トラブルに見舞われますとさすがに娯楽(チナヲチです)は横に置かなければならなくなります。

 そんな訳でこの一週間は記事を集めるのが精一杯で、中国観察の真似事なんてとてもやっていられる状態ではありませんでした。振り回されるうちに日中外相会談が行われ、気がついたら終わってしまいましたね。前回書いた通り、この外相会談という場を設定できるかできないか、というのは多分に中国側のお家事情によるものと私は考えていました。

 そして、開催できたのですから中共の政情、その流れは前回から基本的に変わっていないのでしょう。要するに「擁胡同盟」(胡錦涛擁護同盟)が「科学的発展観」「社会主義栄辱観」といった旗を振り回しているのに「反胡連合」(反胡錦涛諸派連合)が対抗できず、とりあえず沈黙を余儀なくされているということです。

 ともあれ口喧嘩(指導理論)で「反胡連合」を負かした「擁胡同盟」が、外相会談を実現させた、というところかと思います。ただし、「地方の暴走」と表現していい今年第一四半期の状況からみると、口喧嘩では勝つことができた「擁胡同盟」も腕ずくになるとどうなるかは甚だ心許ない限りです。

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 もう一点、これも前回書きましたが、日中関係は特に何にも変わっていないんですよね。中共政権が小泉首相の靖国神社参拝に騒ぐという内政干渉を行って以来、両国の関係に質的な転換があった訳でもなく、中共側が常々口にしていた「良好な雰囲気が必要」というその雰囲気も相変わらず好転しないままでした。

 胡錦涛・総書記が3月31日に発した対日メッセージ(指導者が靖国参拝をやめれば首脳会談に応じる用意がある)も小泉首相以下に軽く受け流されてしまいましたし、対中ODAの今年度分も凍結されたままです。それでも外相会談に応じてしまったというのは、何やらズルズルと日本側の用意した土俵に中共が上ってしまったようにみえてしまいます。「問題があるからこそ話し合いが必要なんだ」という小泉首相の道理に服した形です。格好悪いですね(笑)。

 その格好悪いアクション自体が「反胡連合」特に対外強硬派の不満を呼びかねません。「擁胡同盟」の主力ともいえる軍主流派も制服組である以上、根っこは御多分にもれず対外強硬派の流れに連なる面々(ただ劉亜洲中将らのように電波系ではない)でしょうから、「擁胡同盟」の内部で異論が出ても不思議ではない。実際に軍の機関紙である『解放軍報』は以前から日中関係には神経質なほどピリピリしていました。

 それでも外相会談が実現できた、というのは何らかの譲歩を日本が行ったからだ。……というほど日本側が困っている状況ではなかったように思うのですが、如何でしょう?外相会談も靖国問題を含め原則論の応酬に終始したのみ。まあ会わないよりは会った方が一歩前進、ということなんでしょうけど、靖国靖国と連呼すればするほど参拝されて面子を手ひどく潰されることになるのがわからないのでしょうか。

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 私が「留守」にしていたこの一週間で起きた注目すべき動きというのはいくつかあるのですが、「ポスト小泉」を狙って中共は露骨にフックだを持ち上げ始めましたね。あの基地外反日紙として他者の追随を許さない『環球時報』までがフックだをヨイショし始めました。

 基地外電波におだて上げられてフックだはどんな気持ちなのでしょうか。調子に乗って小泉首相による靖国参拝まで批判し始めたようですが、見事に息が合っていますね基地外反日紙と。官房長官時代、あの拉致被害者の家族たちに見せた畜生にも劣る冷酷かつ傲慢な態度を私はどうしても忘れることができません。

 ともあれ、フックだが中共と足並みを揃え始めたことには留意しておきましょう。在日本の中国人学者たちの集まりもあったようですが、これは今後の対日宣伝攻勢の作戦確認といったところでしょう。確か座長が朱建栄でしたか。その背後に王毅・大使がいるのでしょうから例によってきっと空気の読めない活動になるのでしょう(笑)。香港に対してもそうですが、中共は自分たちより民度の高い社会への働きかけが当然ながら下手ですね。

 フックだヨイショが始まったとなれば、そのうち並行して安倍官房長官叩きが始まるでしょうね。安倍叩きとなればこれまた『環球時報』の出番でしょうか。……そういえば最近、「『菊と刀』だけで日本を理解しようという考え方は如何なものか」といった日本研究者批判ともとれる妙な記事が同紙に出ていましたが、じゃあ電波系反日記事を飛ばしまくっているお前らは何なんだ、『菊と刀』以前に誤った対日先入観の刷り込みに大活躍してるのは他でもないお前らだろうがボケ、とツッコミを入れておきます。

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 今回もひとつひとつ典拠を示していませんし内容もないので雑談扱いです。基本的な流れは変わっていないとはいえ上述したようなフックだ万歳もあれば細かいところでの動きもあるようです。そのあたりは少し情報を整理してから取り組んでいきたいと考えています。

 ただひとつ、この一週間でいちばん楽しませてくれたのが「新華網」(国営通信社の電子版)に出たこの記事でした。……あ、この雑談に主題めいたものがあるとすればここからです。下記の「中新網」というのはやはり中共系通信社「中国新聞社」の電子版という意味。ごく短い記事なのですが、その第一段落に注目です。

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 小泉首相は6月29日に訪米、プレスリーの旧宅参観も……米政府(中新網 2006/05/25)
 http://news.xinhuanet.com/world/2006-05/25/content_4597422.htm

 【中新網5月25日電】共同通信の報道によれば、ホワイトハウスは24日、日本の小泉純一郎首相が6月29日に米国を「公式」訪問し、ブッシュ米大統領と会談すると発表した。
(後略)

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「日本の小泉純一郎首相が6月29日に米国を『公式』訪問し……」

 とカギカッコをつけて「公式」という点をわざわざ引き立てています。原文では、

「日本首相小泉純一郎6月29日將對美國進行“官方”訪問……」

 ということになるのですが、
「官方訪問」だと公式訪問でしかなく、国賓待遇を意味する「国事訪問」より格が下がる扱いということになります。

 胡錦涛の訪米に関して中国側は「国事訪問」とするよう強く求め、米国側がそれをはねつけて収拾がつかなくなった挙げ句、「礼砲だけは撃つ」(晩餐会などはなし)という「なんちゃって国事訪問」に落ち着いたことは記憶に新しいところです。さらにその訪米がトラブル続きで胡錦涛が散々恥をかかされたのを覚えていらっしゃる方も多いでしょう(笑)。

 要するにその腹立ちの持っていきどころがなくて、その憤懣がこの記事にはからずも滲み出てしまった、というところです。小泉首相が実際にどういう扱いを受けるかは知りませんが、公式訪問であればスラリとそう書けばいいのに、わざわざ「官方」だけを括り上げた。括り上げたところが可愛いじゃありませんか(笑)。

 中共系メディアは胡錦涛訪米を「国事訪問」と勝手に報じていましたから、憎き小泉首相も「国事訪問」だと同格だから沽券に関わる、というのがひとつ。また、胡錦涛の訪米は実際には「なんちゃって国事訪問」でしたから、小日本の首相が名実共にした「国事訪問」をされては自分たちの面子が立たない、というのもあるでしょう。

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 以前書いたようにこれは医学が扱うべき問題で、端的にいえば「中華」という高いプライドと強烈なコンプレックス、その両方が病気の範疇にまで達しているということです。……やれやれ。

 
「官方訪問」ではなく「“官方”訪問」と全国ニュースでつい書いてしまう大人気なさ、あるいは余裕のなさ、これは一体どうしたことでしょう。

 私の手触りとしての中共政権や中国人は天安門事件(1989年)をはさんだ1980年代後半から1990年代前半、といったところですが、隔世の観というか別人種とでもいうべきか、このトチ狂いぶりには戸惑うばかりです。「“官方”訪問」などといった子供じみた真似を許さない矜持のようなものが、当時はまだ残っていたように思うのです。

 これも江沢民による反日風味満載の愛国主義教育、それに「国民の8割を犠牲にして残る2割が繁栄を享受する」という歪んだ経済成長の、歪んだ部分を見ないようにしてきたことによるものなのでしょうか。

 私などはとてもついていけないので、いわゆる「江沢民チルドレン」、つまり愛国主義教育を身体一杯に浴びて育った年代はひと括りにまとめて「亡国の世代」と呼ぶことにしているのですが。この記事を書いた記者もOKを出したデスクも御同類だと思います。

 そういえば、

 ●「日本憎し」がにじみ出たサッカー記事。(2004/08/02)

 ……こういうことも、ありましたねえ。思えばこのころはまだ牧歌的で、反日掲示板などでもかなり自由に何でも書くことができました(削除されたりはしますけどw)。

 それすらも出来なくなった現在は、鬱屈をどうやって散じるのでしょうか。天安門事件のころに比べ統治システムが整備されてきているとはいえ、社会の可燃度が高まりつつあることは確かだと思います。



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 最近、本業・副業そしてこの娯楽とは全く無関係な雑務に煩わされています。今後も煩わされそうな気配なので私の士気は低下気味です。それについては後日お伝えすることがあるかも知れませんが……鬱です。

 まあ中国の話をしましょう。今回は大まかな流れを追うに留めますので、雑談として読んで頂ければ幸いです。で、中共内部の動きです。ここ1カ月ばかりの間で争点というか流れというか、政情を左右しかねない要素がいくつかあったように思います。

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 【1】「反胡連合」(反胡錦涛諸派連合)の主力・上海閥による「擁胡同盟」(胡錦涛擁護同盟)に向けられた一連の攻勢(政治的示威活動)。
 【2】過熱気味の国内経済(地方が中央を無視して突っ走っている)。
 【3】指導理論をめぐる主導権争い。
 【4】日中外相会談をめぐる動き。
 【5】宗教戦争(バチカンvs中共政権、あるいは信教の自由に関する中共への外圧)。

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 この5つの要素が互いに絡み合ったりそうでなかったりするのでしょうが、決着したものとそうでないものがあります。決着したものからいうとまずは【1】ですね。例の「漢芯」ペテン事件で今までの勢いが一頓挫。しかも事件の舞台である上海交通大は江沢民・前総書記の母校。恥の上塗りです。

 それから目立たないようですが【3】は重要です。結果からいうと、江沢民の「三つの代表」論やある程度の格差を容認するトウ小平の「先富論」などの上に、「社会主義科学観」「調和社会」「社会主義新農村建設」「社会主義栄辱観」といった胡錦涛オリジナルともいえるキーワードをおっかぶせることに「擁胡同盟」は成功したようです。

 一口でいえば、GDP成長率信仰という従来型改革へのダメ出しですね。「擁胡同盟」がこの点で勝利した様子であることは、指導部のメンバーで中央宣伝部を握る李長春らの言動が胡錦涛・総書記寄りに傾いたことからうかがえます。

 だから何?という訳ですが、今年から来年にかけて省・市・県・鎮といった地方政府の党幹部が任期満了を迎えて一斉異動となります。定年で引退する者もいれば、働きが悪いとして飛ばされる者もいる。あるいは世代交代による若手の躍進もあるでしょうし、実績をあげてきた者を大抜擢する動きもあるでしょう。そうした幹部評価の基準の柱に「擁胡同盟」がおっかぶせた「社会主義科学観」や「社会主義栄辱観」などが第一に据えられる、という訳です。

 まずは胡錦涛型改革への積極性と忠誠度が問われる、といってもいいでしょう。それが有能無能を分ける第一の評価基準になる。その意味で、「擁胡同盟」は来年開催される党大会(中央の世代交代や大型人事が行われる)に向けて一応人事権を掌握したといえます。いや、まだ「掌握」というより「優勢」というべきかも知れません。中央の威令が全国各地の末端組織まで及ぶかどうかは、目下のところ甚だ疑わしいからです。

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 ともあれ、「優勢」な状態にあること、それにたぶん「漢芯」ペテン事件で「抵抗勢力」の気勢が削がれたこともあって、「擁胡同盟」ペースとなり【4】の「日中外相会談」が現実味を帯びてきました。これは昨年10月に小泉首相が靖国神社を参拝し、それに内政干渉を行った中共政権が「外相会談を延期する」と日本側に通告してきたのが事の発端ですね。その後も、

「日本政界の指導者が靖国神社を参拝している間はだめだ」
「会談の実現には良好な雰囲気が必要だ」

 という趣旨の発言を外交部報道官発言などが繰り返してきましたが、現在の状況は昨年10月と比べても大きな変化はありません。大がかりな予告の後に出された胡錦涛の重要談話(3月31日)も、

「日本の指導者が靖国神社参拝をやめれば首脳会談を行う用意がある」

 という相変わらずな内容で小泉首相にすぐ切り返され、その小泉首相は靖国参拝をするかしないかは「適切に判断する」といつものコメントを繰り返し続けています。さらに考えてみれば「経済制裁」ともいえる対中ODA今年度分の凍結措置がまだ解除されていません。

「この現状を何とか打開しないと」

 という両国外交担当者の危機感が背景にあったかも知れませんが、こうした状況下で外相会談が実現するのであれば、中共政権側がズルズルとなし崩し的に日本の敷いたレールに歩み寄ることになります。

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 その意味では、外相会談が行われた、という事実を巧みに捉えて指導部批判&「反日」イベントに仕立て上げ、「反胡連合」が息を吹き返す可能性がなくはありません。「擁胡同盟」は理論面での優勢と「反胡連合」自身のエラー(「漢芯」ペテン事件)で主導権を握っているにすぎないからです。

 それが決して磐石な「優勢」ではないこと、また上述したように中央の威令が全国各地の末端当局まで及ぶかどうかが甚だ疑わしいことは、【2】(過熱気味の国内経済=地方が中央を無視して突っ走っている)という現実が証明しています。

 不動産の問題が典型例です。決して供給不足ではないのに、いや販売物件の全国空室総面積が1.2億平米にも及ぶのに、不動産価格が高止まりしている。なるほど、庶民向けの廉価物件が少なく別荘型のような高級物件ばかりが多い、というミスマッチがある程度影響しているかも知れませんが、地元当局がデベロッパーと結託することで手にした利権を手放そうとしないという要因も無視できません。

 第一四半期(1~3月)の統計をみる限り、経済は「擁胡同盟」ペースで動いていないことは明らかです。いまそれに対し様々な措置が続々と講じられているのですが、それが有効かどうかは第二四半期(4~6月)で明らかになるでしょう。ただ少なくとも4月末時点における月間融資総額(人民元建て)は過去最高の増加額を示しました。1年の3分の1を終えた時点で、早くも今年の予定融資総額の6割以上を消化してしまったそうです。

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 この地方の暴走ともいえる経済過熱は、恐らく前述の地方当局幹部一斉異動と無関係ではないでしょう。胡錦涛型改革といっても、具体的な査定基準が浸透していないか、まだ実施されていないのでしょう。「緑色GDPがこれからは重視される」などと一時強調され、それが環境保護を重視する胡錦涛型改革の新機軸のひとつでもあったのですが、国家統計局は最近、「具体的な算出方法が確立できない」として別の指標に置き換える意向を示しています。

 つまり中央は胡錦涛型改革を謳い上げているものの、査定方法は転換が間に合わず、未だに従来型なのです。とすればやはり無駄なプロジェクトであろうと効率が悪かろうと、GDP成長率の多寡がカナメになります。少なくとも地方当局の党幹部たちはそう考えているでしょう。

 ……これが第一四半期ではないかと思うのです。それに愕然とした中央の対応策が奏効するかどうかは第二四半期である程度みえるでしょうから、この【2】の問題は現在進行形で決着していません。

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 最後に大袈裟ながら【5】の「宗教戦争」にふれておかねばなりません。これは目下の話題である「バチカンvs中共政権」が柱ですが、一方で先日、ブッシュ米大統領が中国の地下教会の代表と会見したように、信教の自由、まあ人権問題の一環として中共への外圧となる可能性があります。

 ……ところがこの件ばかりはバチカン側が明確な意思表示を示していないため、現時点では全く先が読めません。ただ、バチカン未認可の司教任命を断行し続けている中共=愛国教会の方針には動揺する信者も少なくないでしょう。

 地下教会の信者を含めると中国には恐らく2000万人あるいはそれ以上の信者がいるかと思いますが、バチカンに対する中共の横暴が続けば、程度の差こそあれ「失地農民」や出稼ぎ農民、低所得者、ニート、失業者同様、暴動予備軍ともいえる「不満分子」となっていくことでしょう。

 この点において、「バチカンvs中共」は一見外患のようでありながら、中共にとってはより切実な「内憂」となるかも知れない、と私は考えています。……中共版「島原の乱」とは飛躍し過ぎですが、別の火種で燃え上がった事態に信者は信者なりの不満を爆発させて加勢していかないとも限りません。

 気象概況を申し上げれば、今年は夏から秋にかけて空前の就業難に見舞われることが確実なうえ、そのころには胡錦涛の提唱する「社会主義新農村建設」も末端レベルでは「農村部への単なる投資増=地元当局幹部の懐がいよいよ潤おう」……という弊害がみえてくるでしょう。となれば、「新農村建設」に名を借りた土地収用トラブルの頻発も想像に難くありません。

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 何やら随分すっ飛んだことを書いてしまったような(笑)。……まあ雑談・寝言ということで聞き流して頂ければ幸いです。



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 ごく小さなニュースなんですけど、例えば中共の電波系対外強硬派にとっては我慢がならない話でしょう。

 ……いや、軍主流派も制服組ですから電波系ほどでなくても地は対外強硬派です。いまごろ悔しい思いをしているかも知れません。

 ●中国漁船が東シナ海で沈没、行方不明1名(明報即時新聞 2006/05/16/14:25)
 http://hk.news.yahoo.com/060516/12/1nvem.html

 東シナ海で操業していた中国漁船1隻が昨日の朝(5月16日)、尖閣諸島の西北75kmの海域で沈没した。……他愛のないニュースなのですが、海上保安庁が出動して漁船に乗っていた5名を救助、ただし1名は行方不明、というものです。救助と捜索のため海保は巡視船1隻と航空機1機を出動させたとのこと。

 沈没地点は操業が認められている海域のため領有権などに関する問題は特にない、と海保の報道官が語ったようです。

 ……あ、日本でも報道されていました。

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 ●尖閣諸島沖で中国漁船沈没=5人救助、1人不明-第11管区本部(時事通信 2006/05/16/11:00)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060516-00000038-jij-soci

 16日午前1時50分ごろ、尖閣諸島・魚釣島の北北西約74キロの公海上で中国漁船が沈没し、乗組員6人が小型ボートで漂流していると、台湾の海難救助調整センターから第11管区海上保安本部(那覇)に通報があった。

 同本部が巡視船などを現場海域に派遣して捜索したところ、捜索に協力していたバハマ船籍のタンカーが魚釣島の北北西69キロで5人が乗った小型ボートを発見。午前7時すぎ、ほかの中国漁船が救助した。同本部は残る1人を捜索している。 

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 上の『明報』電子版の内容とはちょっと異なっているのですが、どちらにも海保が登場するところは同じです。そして、どちらにも中国側の巡視船は出てきません(笑)。

 尖閣諸島の北西にせよ北北西にせよ、いずれも公海上です。ただどちらかといえば、これは中国により近い海域ではないでしょうか。

 ところが、海保の方が手が速かった。中国側のアクションは全く登場しない。……制服組であればその一事に忸怩たる思いを感じているのではないかと思います。もちろん、こうした救助活動は海軍ではなく海洋局あたりの範疇になるのでしょうけど、中国の巡視船は油不足で抜錨することすらできなかったのでしょうか。

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「巡視船などを現場海域に派遣して捜索したところ」

 と時事通信電にはありますが、これも巡視船は母港から出ていったのか、尖閣諸島に近い海域を遊弋(というか警戒)していた巡視船が現場に急行したのかはよくわかりません。

 後者であれかし、と私は思います。頼もしいじゃないですか。

 逆に中共側にしてみれば、こういう些細な出来事が対外強硬派ひいては軍主流派を含む制服組の憤懣を呼ぶ素となり、それが火種となって何らかの政治的アクションの遠因になるかも知れません。……てなことを妄想してしまうので、こういう小さなニュースでもあれこれ考えたり気になったりしてしまいます。

 ともあれ、北チョソ工作船追跡劇といい、さきの竹島問題といい、私は海上保安庁に対して常々頼もしさを感じています。そして中共の自称民間団体による尖閣上陸を阻むため巡視船や巡視艇で基地外どもの乗るボロ漁船を挟み込んでしまうあの神業ともいうべき操艦技術!

 現場で任務に励んでいらっしゃる皆さん、この気持ちをうまく言葉に表せないのですが、毎日毎日、ご苦労様です。本当にありがとうございます。関連法規の不備などによる理想的とはいえない活動環境のなか、いたたまれぬ気持ちになることも多々あるかと思いますが、士気を落とされることなくどうか頑張って下さい。心から応援しています。

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 ちなみにこの小さなニュースは、恰好の燃料でもあります。半年前なら、『明報』電子版の記事を簡体字に直してから複数の反日サイトなどに貼りまくって、

「お前らの巡視船は寝てたのか?それとも荒れた海が怖くて出られなかったのか?まあ口ばっかりで行動に移らないってのはお前ら中国人の数千年来の良き伝統だからなー。ついでに言うと貪官汚吏の跋扈は数千年来の歴史が育んだ中国の誇るべき文化ってか。呵々」

 ……なんて毒電波を発していたところです。ところが現在はネット規制強化で掲示板への投稿も管理人の審査をパスしなければならないケースが増えてきているので、それをやる気にもなりません。ネット上で気勢を上げることしかできない糞青ども(自称愛国者の反日教徒)も、フラストレーションがたまっていることでしょう。

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 船の科学館での展示期間中はつい機会を逸してしまったので、近く横浜まで行ってくるつもりです。そのあと「三笠」まで足を伸ばして、海軍カレーに舌鼓を打つことになると思います。

 ちょっと寝かせて様子をみてみたいネタがあったので、雑談に逃げてしまいました。諒とされたし。



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 いやー疲れました。いまの今まで「漢芯」事件について検索をかけて、報道統制が敷かれないうちに、と関連記事を集めていたところです。気になったらそのときに拾っておかないと後悔することが中共メディアでは多いので大変です(笑)。

 「漢芯」事件に関しては前回の文末で少しふれましたね。重複を恐れずに書いておきますと、デジタル家電などに使う半導体「漢芯」を中国で初めて独自に開発した、という発表が大々的に行われ、「漢芯」一号から四号までが続々と誕生。一部の性能は外国製品をも凌ぐということで、開発した上海交通大学(江沢民の母校w)はそりゃもう鼻高々。上海市もまた然りで、開発チームの中心だった陳進・同大微電子学院院長には「長江学者」(意味不明)という称号が贈られました。

 ところがこれがが真っ赤なウソだったんですねえ。実は昨年末(2005年12月)に「あれはペテンだ」というタレ込みというか密告が上海交通大学に寄せられて、ネットに乗って噂は広まり、同大も調査に乗り出しました(清華大学関係者がネットでバラしたという説もあります。NHKでは内部告発といっていたような)。

 ともあれ調べたところ、何と正にペテンで「漢芯」の存在そのものが真っ赤なウソ、ということが判明してしまったのです。しかもカコワルイことに、陳進らはよその技術を盗用したり、外国企業の製品に自分たちの開発チームのシールを貼ったりしていました。パクリはともかくシールを貼るとは大胆不敵というか何というか(笑)。

 当然ながら上海交通大学と上海市の扱いは掌を返したようになり、陳進院長は解雇、「長江学者」という称号も剥奪され(ひょっとして「水質汚染」という含みだったのか?)、今後は研究費の返還を求めていく模様です。刑事訴訟に発展する可能性もあるそうです。

 報道では5月12日に「新華網」(国営通信社の電子版)が掲載した記事を元ネタに数日はニュースとして扱われていましたが、そろそろオリジナルの論評記事が出始めています。下記は元ネタとなった「新華網」の記事です。

 http://news3.xinhuanet.com/newscenter/2006-05/12/content_4538770.htm

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 それはともかく、この件について前回のコメント欄で「muruneko」さんから以下のような御質問を頂きました。ちょうど本日は日取りも良いことですし(笑)、エントリーにて使わせて頂くことにします。m(__)m。

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 ●「漢芯」とはまた乙なネーミング(muruneko) 2006-05-15 16:36:43

 余り茶化していてばかりでは脳が有りませんから、一つ違う観点から。

 海外のメディア一般に言える事ですが、「確かに中国には問題が多い。しかしながら、激しい振動を繰り返しながらも、次第に世界経済に組み入れられつつあり、そのようにしてこそ、中国の安定化を最終的に世界全体への利益に結びつける事が出来るであろう。」という論調(パンダハガーという奴ですかね)が有ります。

  いつも思うのですが、このパンダハガーという単語を聞くと、フェイスハガーを思い出します。うーん、H.R. Giger ったら先見の明!

 今回の「漢芯」の件は(まるで南鮮のイエロー教授のようですが)、中国に働く自浄作用の一つであり、上記の文脈で言うところの「安定化への端緒」と捉える事が出来るのですかね?

 個人的には丸でそうは考えてませんが、継続的にチナオチされている御家人さんの御意見伺いたく。

 論点は、確かに三峡ダム含め、中共のやる事なす事笑いの種では有ると思います。改革開放がまがりなりにも進み、それが故に情報が漏れるようになった、中共にとっては負の副作用故、このような「恥ずべき情報」が目に触れるようになったのか、それとも、支那人(+中共)にも文化的・歴史的にそれなりの自浄作用(大げさ?)が働いてきたものなのか、です。

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 「シールを貼っていた」というNHKの報道で思わず箸を落としてしまった私ですが(笑)、研究費返還を求められるなら陳進は早めにシールのロゴなどを商標登録して大々的に売り出すべきです。いまならきっと当たる筈ですから、多少は返済の役に立つでしょう。

 ……という余太はともかく、このニュースに接した第一印象は今回のエントリーの標題の通りです。私が中国に留学していたころ、要するに1989年の天安門事件の時期ですが、本質的に20年近く前になる当時と何も変わってないじゃないか、ということです。それどころか40年前の今日、あの「五・一六通知」で本格的に幕を開けた文化大革命のころとも本質的に変わっていません。「muruneko」さん御指摘の通り、自浄作用はまるで働いていないのです。

 というよりも一貫した問題として、中共による一党独裁体制には中共自体を外部からチェックする機能や自浄作用を働かせるメカニズムが制度に組み込まれていません。中共はこの制度に手直しをしていませんから見た目はちょっとオシャレになっても中身は昔のまんまです。果たせるかな、今回もまた密告とかタレ込みといった文革時代そのままの怪し気な行動が発火点となっているのです。

 改革開放政策で市場原理が導入されて新聞がスクープを競うようになったり、都市部でネットが普及している、というのは私が留学していたころには全くなかった新要素です。ただこれによって悪事についてのタレ込みと認知度が増すことはあっても、自浄作用を持たせることにはならないと思います。

 変な例えになりますが、ある家の中で火事が起きてメラメラ燃えている。外からも窓越しに火の手が見えるのですが、あいにく消火道具を持つことが御法度とされている上に、その家はお上によって立入禁止になっているから、燃えるに任せるしかない。ネットやスクープを狙う新聞、といった新要素はその家に窓をひとつふたつ増やしただけに過ぎません。

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 以前に比べてより多くの人に火事を見せてあげることはできるようにはなったけど、火事そのものには手が出せないのです。普通の国であれば室内に設置された関知装置が作動して自動消火システムが働くところですが、中共政権はそういうメカニズムを制度に組み込んでいませんから、こちらはその家の住人が出てきて何らかの始末をつけるのを黙って眺めているしかありません。

 その始末の付け方も一定の決め事がある訳ではありません。いや、法制はあるのですが法治が機能していないのです。政府の上に君臨する党が「政治的に善。だから無罪放免」と断を下せば殺人犯でもお咎めなしになってしまう。今回はタレ込みからペテン認定まで半年近くを要していますが、これも陳進ら開発チームの後ろ盾である政治勢力が相当強力だったからここまで粘れた、といえるのかも知れません。

 「漢芯」事件を党幹部による汚職に置き換えてみればいっそう明確になります。「国際社会」に組み込まれるとともにネットという新媒体が出現したことで中共政権でも自浄作用が機能するようになったかといえば、答は否です。むしろ汚職自体はより深刻になっているように思われます。そして、巨悪ほど暴かれることがありません。

 こういう状況に対して、中共政権は政治制度にチェック機能がないものだから道徳教育キャンペーン(社会主義栄辱観)を張ったり、密告を奨励したりするしかない(本当)。その一方で最近はあろうことか窓に内側からブラインドを下ろして室内を見えなくするような動きが進んでいます。中でどんな狼藉が行われていてもこちらにはわからなくなりつつあります。「大丈夫だから、信じろ」と言われても、民意に拠って成立した政権ではありませんし、胡錦涛をはじめ指導部の誰もが普通選挙の洗礼を受けていませんから、素直に信用できる訳がありません。

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 結局、制度そのものを組み直す以外に方法はない、という陳腐な結論に落ち着いてしまうように思います。そして、その陳腐なことすらできないのが中共政権です。

 当然のことながら、求心力は低下せざるを得ません。中央の求心力が低下すれば皆がそれぞれやったもん勝ちと言わんばかりに勝手なことをやり始める、というのが中国数千年来の優良なる伝統です(笑)。そういう連中がひとつ意識でまとまり得るのが省とか市とか県、といった伝統的な「郷土」の枠組みです。そこで「地方の台頭」とか「諸侯経済」という言葉とそれを抑制しようという中央の様々な措置が新聞を賑わせるようになります。【←いまココ】。

 何だか例によって話があらぬ方向へ飛んでしまいましたが、自浄作用が働くようになったということは全くない、と私は思います。一党独裁制である限りこの状態が続くでしょう。いまの中国は中央の統制力が弱いため、むしろ先祖帰りしつつあるといえるかも知れません(そういえば「春秋五覇」と「戦国七覇」を最近観ていないことに気付きました。1話観てから就寝することにします)。

 そういえば以前反日サイトに自由に書き込めたころ、「お前らはいい時代に生まれたな。おれが留学してたころはVOAとBBCとかの短波放送を聞くしかなかったんだぞ」と書いたら「実はおれもVOAやBBCは毎日聞いているよ」というレスがついたことがありました。

 これまた余談ですが、「国際社会」に組み込まれることで中共政権側にきしみが生じる、というのは貿易摩擦や人民元のレートなどもそうですが、何よりバチカンとの「正面交鉾」がこの先どう展開していくのか楽しみでなりません。これは外患というより内憂に発展する動きだと思います。



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 日中外相会談、やるのかやらないのか、相変わらず微妙なままです。

 前回ふれた通り、「5月23日からカタールで開かれるアジア協力対話(ACD)でその場をセッティングする方向で動いている」と日本では報道がありましたけど、中国側はどうも煮え切らない。古いネタですけど臆面もなくまた引っ張り出してみます。

「双方は多国間協議の場で中日外相会談を実施する可能性を探った」
(5月9日、日中協議閉幕報道)

「双方は多国間協議の場で中日外相会談を実施する可能性を探った。中日双方はこの問題についてさらに協議を重ねることになるだろう」
(5月9日、外交部報道官定例記者会見)

「中日双方は多国間協議の場で中日外相会談を実施する可能性を探ったが、これについてはなお検討する必要がある。具体的にどういう結果に落ち着くかは協議次第だ」
(5月9日、外交部報道官定例記者会見)

 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2006-05/09/content_4525369.htm
 http://news.xinhuanet.com/world/2006-05/09/content_4527020_1.htm
 http://news.xinhuanet.com/world/2006-05/09/content_4527020_2.htm

 外相会談に向けて話を詰めているけど実現するかどうかはまだ未知数。……なんて頼りない姿勢でいたと思ったら、5月12日の外交部報道官定例記者会見では一歩後退を思わせる物言いになりました。

 ――――

 ●中国の誠意、日本は正しく理解すべき 外交部( 人民網日本語版2006/05/12/11:39)
 http://j.peopledaily.com.cn/2006/05/12/jp20060512_59647.html

 (前略)
中日関係や歴史問題に対する中国の態度は、明確かつはっきりしている。日本の一部指導者は靖国神社への参拝を頑なに堅持しているが、これが中日関係の障害をもたらす問題のありかだ。中国はこの障害を克服した上で、中日関係を改善かつ発展させることを終始主張しており、この立場に変化はない。現在、中日双方は両国外相会合について接触中だ。われわれは、中日関係の発展に対する中国の誠意を、日本が正しく理解するよう望む。

 ――――

 これも前回に書きましたが、
「やりたいけど今お家騒動やってるから、こっち(中共政権)は話がまとまらないんだよ」というサインです。「擁胡同盟」(胡錦涛擁護同盟)と「反胡連合」(反胡錦涛諸派連合)という分け方で言えば、「擁胡同盟」が泣きを入れていることになります。「反胡連合」が足を引っ張っているのだろうと思います。

 ――――

 その後に何か動きがあったかといえば、香港の親中紙『大公報』(2006/05/14)に愚痴のような記事が出ました。中国通信社(中共メディア)の配信記事で
「外国メディアは日中外相会談に注目している」という標題のものです。

 この記事に駐中国日本大使館の岡田さんなる人物が登場し、

「日中両国は外交ルートを通じて外相会談の具体的日程を協議してみようということでは同意している」
「中国側は日程を協議することについて同意しているだけで、やることになるかどうかはわからない」

 とこれまた頼りないコメントをしています。一方で日本側がACDの期間中にやろうと提案していることをこの記事は報じています。……ただそれだけで、結局は事態が動いていません。

 http://www.takungpao.com/news/06/05/14/ZM-565513.htm

 この記事は中国国内でも流れていて、あの基地外反日紙『環球時報』(2006/05/12)が掲載し、それを「新華網」(国営通信社の電子版)が転載しています。

 http://news.xinhuanet.com/world/2006-05/14/content_4543157.htm

 事態に進展はみられないものの、こういう記事が出てくるくらいですから、中国側もやりたくない訳ではなさそうです。ただ日本側から投げられたボールをどう扱うかで迷っている。……というより揉めているのでしょう(笑)。

 そんな具合ですから、前回紹介した自称僧侶の基地外日本人イワータの叩頭謝罪パフォーマンスもまだまだ続いています。今度は瀋陽に出現して「九・一八歴史博物館」という地元のテーマパークというか東映太秦映画村みたいなところで頭を地面に擦り付けています。単に頭皮が痒いだけなのかも知れませんけど。

 http://www.takungpao.com/news/06/05/14/ZM-565507.htm

 むろんこれは中共プロデュースによる中国国内向けの姑息なパフォで、反日気運が高まるような出来事が勃発して外相会談に関する協議に水が差されないよう「擁胡同盟」側が仕掛けているのでしょう。

 私は前回申し上げた通り、やってもやらなくても。……という意見です。こんなフニャフニャしたことをやっているより、今回の標題に据えた通り「細木数子vs呉儀」の組み打ちを観てみたいところです(笑)。呉儀・副首相は胡錦涛・総書記のようなヘタレと違ってキツいアドリブが飛ばせますから、

「あんたこのままだと再来年に失脚するわよ」

 という細木側からの一撃にどう逆襲するか見物ではありませんか(笑)。麻生・李肇星会談は「ファンタジスタvs電波系紅衛兵」でこれも面白そうですけど、いざ会談となったら結構お互いお行儀良くなりそうで肩透かしになるような気がします。

 ――――

 「擁胡同盟」が動こうとするところを「反胡連合」が足を引っ張っている、と上で書きました。外相会談について中国側が煮え切らない理由がその辺にあるのではないかという邪推ですが、考えてみると胡錦涛政権発足(2004年9月)以来の政争はほぼこのパターンです。

 動こうとする胡錦涛を「反胡連合」があれやこれやと邪魔をして、掣肘された胡錦涛は政策遂行上の選択肢を狭められてしまう。……邪魔する動きを一蹴できない胡錦涛も弱ければ、せいぜい邪魔するくらいのことしかできない「反胡連合」も甲斐性がないですね。

 「国家主席+総書記+中央軍事委員会主席」と三冠王の胡錦涛は形式上の最高指導者です。統制力は弱くても、形の上では主流派です。そしてその立場から「社会主義発展観」「調和社会」「社会主義栄辱観」といった指導思想めいたものを公に打ち出して党の柱に据えることができる。大々的なキャンペーンも張ることができる。……この点は非常に重要で、胡錦涛の強味といってもいいでしょう。対する「反胡連合」はさすがに表立って異議を唱えられません。目下のところは「先富論」云々とボソボソ呟いたり面従腹背めいた真似をするのが精一杯です。

 ……こんなことを書くのは、「擁胡同盟」が「反胡連合」に押されているようであっても、あくまでも「擁胡同盟」側が主流派で、統制力は弱くても形式上のポストと指導理論を握っているため、基本的には常に「擁胡同盟」が流れを作っている、ということを再確認しておきたいからです。「反胡連合」はいわば野党で、機を捉えての反発しかできません。

 要するにイベント狙いなのです。この一年半はそれが主に「反日」でした。靖国参拝だの李登輝氏訪日だの日米が台湾有事への介入姿勢表明だの尖閣諸島の灯台国有化だの国連安保理常任理事国入りだの歴史教科書だの……。ただ昨春の反日騒動で大衆動員型の政治攻勢を仕掛けられないほど社会状況が悪化していることを、仕掛けた「反胡連合」も仕掛けられた「擁胡同盟」も学習しました。そうなると「反胡連合」も有効な手が限られてしまって、今年はとうとう各地方政府という「諸侯」が中央たる「皇帝」の言うことを聞かずに経済で突っ走る、という実に正統的な、本音をぶつけ合うとでもいうべき形になっています。

 「反日」ネタも最近は民間人の対日戦時賠償請求訴訟を中国国内でやろうとか、日本企業が「西遊記」や「水滸伝」の商標登録をするのはけしからん、といった以前に比べれば小粒なものしかありません。大衆動員型が使えない、となればあとはネット世論に頼るということになるでしょう。

 ところがこの半年ばかりの間に胡錦涛政権はその方面、つまり掲示板やブログへの規制を大幅に強化している。これは実に興味深いところで、規制の狙いが反体制的言論を封じ込めるだけではないのかも知れない、という勘繰りをしたくなります。胡錦涛政権発足前後に大手反日サイトが潰されたり謹慎処分(掲示板機能停止)を喰らったりしたことを想起してもいいでしょう。

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 ただ「擁胡同盟」も御存知の通り「反胡連合」を殲滅するほどの力がない。だから外相会談をやりたくてもハキハキと即応することができない。とはいえ小泉首相の「商売と政治は別」発言や「八・一五靖国参拝」の憶測が飛び交うなか、前掲したように内外で「海外メディアは外相会談に注目」といった記事を出すことができるのですから、現状は六分四分で「擁胡同盟」が優勢、とみていいかと思います。

 ただあくまでも六分の優勢ですから、イベントひとつでひっくり返される可能性もあるのです。……というところで上海交通大学の不祥事が飛び出してしまうのですから面白いものです。イベントで仕掛けるべき「反胡連合」が逆に相手に材料を与えてしまいました。

 いや、私などはNHKのニュースを観ていて思わず箸を落としてしまいました(笑)。デジタル家電などに使う半導体を中国で初めて独自に開発した、というのが真っ赤なウソで、よその技術を盗用したり外国企業の製品に自分たちの開発チームのシールを貼ったり(笑)……「漢芯」とかいう民族主義風味なネーミングでもてはやされていたのが、あにはからんや。

 「反胡連合」の主力であろう上海閥が胡錦涛訪米直前から連続技ともいうべき政治攻勢を発動していたことは当ブログで常々言及してきましたが、それもこの件で一頓挫でしょうねえ。胡錦涛はワシントンで面子を潰されましたが、それを愉快に眺めていたであろう江沢民もこれで顔に泥を塗られた格好です。上海交通大学はよりによって江沢民の母校なんですから。

 ともあれ、象徴的な事件だと思います。廉価労働力と土地だけは無尽蔵に提供できるけれど、それ以外は何も自分でできない。資本も外国頼みなら工作機械や部品も外国から輸入する始末。それを組み立てて製品に仕上げると、それを売りさばく場所も海外市場。それではいかんと国産技術での開発に挑んでみても、基礎がなっていないから結局はパクリとシール貼りしかできなかった。

 所詮はその程度、ということなのでしょう。「反胡連合」も痛いでしょうけど政権を担当している「擁胡同盟」だって海外からいよいよ厳しい視線にさらされることでしょう。これで「擁胡同盟」の優勢が六分から七分になって外相会談に道が開けたかどうかはまだわかりません。大体やってもやらなくても。……深刻なのは外患より内憂でしょう。今回の事件、小粒な喧嘩なんかせずに一致団結して国難に立ち向かえ、という天意ではないかと思いますよ。

 両派とも相手をKOする力がありませんから、政争に明け暮れていまの中国に必要な施策をビシビシと打ち出すことができない。そうして時間を浪費している間に自分の首が締まっていくのです。ちなみに最近、農民暴動のニュースをあまり耳にしないのは農繁期だからでしょう。そろそろ農作業も一段落する時期ですから6月あたりには再燃することでしょう。そして今年は夏から秋にかけて空前の就業難が訪れるそうです。実りの秋、てなところでしょうか(笑)。

 最後に私事で恐縮ですが、私は副業として香港誌でコラムをずっと書いています。かれこれ7年か8年くらい前の話ですが、安徽省の山奥の水力発電所に勤める読者からファンレターみたいなものをもらって仰天したことがあります。そんな僻地にまで香港の雑誌が流通していることに驚いたのです。……が、その後事実が判明して改めて仰天。中国国内に出回っていたのはコピー業者によって大量印刷された「白黒版」だったのです。ええ、そういうお国柄ですから、シールぐらい平気で貼ることができるのだと思います(笑)。



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「上」の続き)


 話を先回りしてしまうと、その反対勢力の巻き返しが奏功したのか、2日後の5月11日の外交部定例記者会見では報道官の腰が引けてしまっているのか強腰になっているのか。……ともかく外相会談への気運がややしぼんだ観があります。

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 ●中国の誠意、日本は正しく理解すべき 外交部(人民網日本語版 2006/05/12/11:39)
 http://j.peopledaily.com.cn/2006/05/12/jp20060512_59647.html

 (前略)
中日関係や歴史問題に対する中国の態度は、明確かつはっきりしている。日本の一部指導者は靖国神社への参拝を頑なに堅持しているが、これが中日関係の障害をもたらす問題のありかだ。中国はこの障害を克服した上で、中日関係を改善かつ発展させることを終始主張しており、この立場に変化はない。現在、中日双方は両国外相会合について接触中だ。われわれは、中日関係の発展に対する中国の誠意を、日本が正しく理解するよう望む。

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 「中国の誠意、日本は正しく理解すべき」とは相変わらず高飛車のようですが、これは泣きが入っているとみるべきでしょう(笑)。「こっちの苦しいお家事情を察してくれ。これだけ譲っているんだから靖国問題を荒立てないでくれ」という哀願というか泣き落としです。それをこうタカビーな表現で言ってのける技量はさすがに報道官だけのことはあります(笑)。……こういう応答をみてしまうと、やはり「外相会談確定」とは言い切れなくなってしまいます。

 日本側もこの時期、公式・非公式に色々な意地悪を仕掛けています(笑)。

 ●日本紙:小泉首相は「八・一五靖国参拝」を真剣に検討か(人民網 2006/05/08/14:22)
 http://world.people.com.cn/GB/1029/42354/4351987.html

 ●経済同友会が小泉首相に靖国参拝停止を勧告(新華網 2006/05/10/15:31)
 http://news.xinhuanet.com/world/2006-05/10/content_4530285.htm

 「人民網」の記事は『産経新聞』を元にした非公式なニュースですが、下の「新華網」の記事は小泉首相が「商売と政治は別」「靖国はカードにはならない」と斬って捨てたものですね。「商売と政治は別」と小泉首相が切り返した、というのはこの記事の中でも報じられています。私は前回のコメント欄に書いた通り、「ああやっぱり個人的信条である以前に政治なんだ」とニヤリとしたのですが、そこまで突っ込んでいる中共メディアの報道はなかったようです。

 この小泉発言が中国側を硬化させた、より正確にいうと外相会談に反対ないしは懐疑的な「反胡連合」への追い風となった、と言えそうでもありますが、この言い分は通りません。靖国神社参拝は純然たる日本国内の問題であり、その賛否を決める権利は日本人にしかないからです。

 靖国を云々した上の外交部報道官発言について、日本側は内政干渉だと責め立てることができますが、小泉発言がその代わりとなった格好です。瀟洒にやるならそれで十分でしょう。経済同友会も中共の靴を舐めたいならもっとタイミングと空気を読まないといけませんね(笑)。

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 たぶんこの外相会談への賛否と関係あるのでしょうが、ここ数日間は「擁胡同盟」と「反胡連合」がメディアを動員して報道攻勢の応酬となった観がありました。大雑把に分類して以下にお店を開きます。

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 ●胡錦涛礼讃(科学的発展観・社会主義栄辱観バンザイ系)

 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-05/08/content_468269.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-05/08/content_468271.htm
 http://theory.people.com.cn/GB/49157/49165/4351355.html
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2006-05/08/content_4522498.htm
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2006-05/09/content_4526710.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-05/09/content_469579.htm
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2006-05/09/content_4523844.htm
 http://theory.people.com.cn/GB/49150/49151/4354893.html
 http://theory.people.com.cn/GB/49157/49164/4355806.html
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-05/10/content_470647.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-05/10/content_470535.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-05/10/content_470603.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-05/10/content_470525.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-05/10/content_470553.htm
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2006-05/10/content_4527950.htm
 http://news.sina.com.cn/c/pl/2006-05-10/09519819082.shtml
 http://theory.people.com.cn/GB/41038/4360632.html
 http://theory.people.com.cn/GB/49157/49164/4360634.html
 http://politics.people.com.cn/GB/1027/4215715.html
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-05/11/content_471201.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-05/11/content_471200.htm
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2006-05/11/content_4532179.htm
 http://theory.people.com.cn/GB/49157/49165/4362728.html
 http://theory.people.com.cn/GB/49157/49166/4362783.html

 ●中央vs地方(経済過熱など地方勢力に対する中央の不満表明系)

 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2006-05/08/content_4523513.htm
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2006-05/08/content_4520827.htm
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2006-05/08/content_4520802.htm
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2006-05/08/content_4519891.htm
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-05/08/content_4519620.htm
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2006-05/11/content_4533418.htm

 ●日本は中国経済に頼ることから抜け出せない(やや自己肥大系)

 http://news.xinhuanet.com/fortune/2006-05/10/content_4529139.htm
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2006-05/10/content_4529184.htm

 ●日本が外相会談を望んでいる(日本から歩み寄ってきた系)

 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2006-05/08/content_4521839.htm

 ●日中友好だ(交流活動系)

 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2006-05/11/content_4534181.htm

 ――――

 以上は「擁胡同盟」側が発信したものと思われます。むろん外相会談への賛否だけでなく経済問題などを含めた広い範囲で斬り結んでいるのですが、ここにきて量的にも質的にもヒートアップしてきたのはやはり外相会談絡みではないかと思います。

 以下は「反胡連合」側と思われる記事です。

 ――――

 ●反日系(日本の軍国主義復活を警戒せよ!系)

 http://world.people.com.cn/GB/1030/4350376.html
 http://news.xinhuanet.com/world/2006-05/08/content_4520840.htm
 http://news.xinhuanet.com/mil/2006-05/08/content_4521691.htm
 http://news.xinhuanet.com/mil/2006-05/08/content_4521944.htm
 http://news.xinhuanet.com/mrdx/2006-05/09/content_4525701.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-05/09/content_469931.htm
 http://qnck.cyol.com/content/2006-05/09/content_1377033.htm
 http://theory.people.com.cn/GB/49150/49152/4360355.html
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2006-05/11/content_4533920.htm

 ●靖国問題(参拝をめぐる発言・報道・評論系)

 http://world.people.com.cn/GB/1029/42354/4351987.html
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2006-05/08/content_4523079.htm
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2006-05/09/content_4523809.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-05/09/content_469902.htm
 http://news.xinhuanet.com/world/2006-05/10/content_4530285.htm
 http://news.xinhuanet.com/world/2006-05/11/content_4532007.htm
 http://news.xinhuanet.com/world/2006-05/11/content_4532014.htm
 http://news.xinhuanet.com/world/2006-05/11/content_4532120.htm
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2006-05/11/content_4532127.htm
 http://news.xinhuanet.com/world/2006-05/11/content_4533548.htm
 http://news.xinhuanet.com/world/2006-05/11/content_4533574.htm

 ●だが、心配のしすぎではないか?(経済過熱論への反駁系)

 http://news.xinhuanet.com/fortune/2006-05/08/content_4519663.htm

 ――――

 こちらもなかなかの分量です。特に「商売と政治は別」という小泉発言が飛び出してからはそれが攻撃の軸となった観があります。攻撃の対象はむろん小泉首相ではなく「擁胡同盟」です。ともあれ中共は靖国神社やA級戦犯について云々する法的根拠がないことを改めて認識し、自らのしていることが内政干渉であることを学ぶべきでしょう。

 ――――

 外相会談を実現したい側、つまり「擁胡同盟」はもう小泉首相との首脳会談はないものと見切って、ただ現状を続けていくのはよくないとの認識があり、ポスト小泉に望みをつないでいるようにみえます。そのための前座として外相会談をセッティングしようという訳ですが、「反胡連合」がそれすら許さない、といったところでしょうか。

 日中外相会談、電波系紅衛兵出身の李肇星と我らがファンタジスタ・麻生外相の組み打ちを見てみたい気もしますが、個人的にはやってもやらなくてもいいと思います。どうせ靖国参拝と李登輝・前台湾総統の来日で胡錦涛の面子はまた潰される訳ですし(笑)。

 それによって「反胡連合」が勢いづくことになるかも知れませんけど、だからといって「擁胡同盟」を殲滅するだけの力はない。「擁胡同盟」もまた然りで、過去1年半同様、決着のつかない泥沼の主導権争いが今後も続くことになるでしょう。

 トウ小平在世時とは異なり、カリスマ不在の小粒同士の喧嘩というのはそういうもののようです。それでも来年に大型人事や世代交代の行われる党大会を控えていますから、人事権掌握を目指して小粒なりの政争をみることができるかと思います。それがうっかり大衆動員型の攻勢になると色々面白いものが観られることになるでしょうね。



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 日中外相会談が近く実現するとの報道が日本で流れていますね。5月23日から23日からカタールで開かれるアジア協力対話(ACD)でその場をセッティングする方向で動いているそうです。

 ●日中総合対話で外相会談実現で合意 ガス田開発協議も開催へ(Sankei Web 2006/05/09/12:12)
 http://www.sankei.co.jp/news/060509/kok063.htm

 ●日中、5月下旬の外相会談開催で調整へ(読売新聞 2006/05/09/12:48)
 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20060509i305.htm

 ●中国、苦肉の対日軟化 外相会談再開合意 日米関係強固さ背景(産経新聞 2006/05/11)
 http://www.sankei.co.jp/news/060511/morning/11pol003.htm

 ただ安心するのはまだ早いぞ、というのが今回の主題です。中国政治においてドンデン返しはつきものですから。呉儀・副首相のようにドタキャンまでするかどうかはともかく、直前に中国側の空気が一変してお流れという可能性は決して低くないと思います。

 ――――

 ともあれ外相会談実現で同意、という報道に、へーえ、と私はちょっと驚きました。ただ事前にその気配が全くなかった訳ではありません。例によって姉妹サイト「楽しい中国ニュース」に掲載したものですが、5月7日の私が次のように書いています。

 ――――

 ◆基地外坊主登場「日本の侵略について中国人民に謝罪する」と蘆溝橋などで叩頭50回。
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2006-05/05/content_4510342.htm

 アパームこの坊主はちょっと違うぞ、ガイキチ日本人イワータだ。70歳のネジが何本か飛んだ僧侶が蘆溝橋など「ゆかりの地」を回って50回叩頭のパフォーマンス。もちろん大きな叩頭写真が中共メディアを飾ったとさ。北京の地元紙『新京報』のインタビューで「この行動について家族の支持は得られなかった」と正直に打ち明けるイワータ。周囲まで基地外ではないらしい。でも中共がこのタイミングでこいつ使って叩頭パフォさせるってのはどんな意味があるんだうね。もしかしてやるつもりなのかな外相会談。
(「楽しい中国ニュース」2006/05/07)

 ――――

 
「もしかしてやるつもりなのかな」と私は書きはしました。この時期に中共政権がこういうイベントを仕込む理由が他に見当たらなかったからです。でも「もしかして」が頭に付いたのは、言うまでもなく中共上層部が一枚岩ではないからです。

 当ブログの慣用句でいえば「擁胡同盟」(胡錦涛擁護同盟)と「反胡連合」(反胡錦涛諸派連合)の主導権争いが続いているから、ということになります。この時点で両勢力は経済面で角を突き合わせていましたが、「反胡連合」というのはアンチ胡錦涛の寄せ集めだけに攻め口が色々あるのです。

 トウ小平の「先富論」を掲げて胡錦涛が決別しようとしている従来型改革を継続させよう、という「諸侯」(各地方勢力)がいれば、現在の外交政策、特に対日路線について「手ぬるい」と手厳しく批判する対外強硬派もいます。後者であれば「反日」という錦の御旗を掲げて、いや「反日」を踏み絵として胡錦涛の対日政策を束縛しようというものです。

 で、経済面で火花を散らす一方で、「反胡連合」は「反日」を掲げた攻勢にも出るだろうと私はみていました。靖国問題だけでなく、民間による対日戦時賠償請求訴訟を中国国内でやるとか、「西遊記」「水滸伝」などを日本企業が商標登録する動きに組織的に反発する、……とかなり可燃度の高い新ネタが準備されていることは以前既報した通りです。

 それゆえに、すんなりと外相会談が実現するものかねえ。……という印象があって「もしかして」という弱気な物言いになった訳です(笑)。いや、私はいまだに半信半疑なのです。

 ともあれ折角ですからイワータのその後の動きを「楽しい中国ニュース」から引き写します。

 ――――

 ◆まだまだ続く自称坊主イワータの基地外パフォ。
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2006-05/07/content_4516236.htm

 3日に1日は断食して謝罪の意を示すんだとさ。上海を振り出しに武漢、重慶、西安、洛陽と続いたイワータの電波系行脚、北京から今度は列車で北上して長春に到着。『新京報』が世話焼いてやったり長春駅では『長春晩報』など地元メディアが出迎える人気ぶり。いつもマスコミの前で叩頭謝罪してみせるのが特徴だな(笑)。今後はハルピン、天津、青島なども回る予定だけど今後も毎年訪中して謝罪するんだと。誰が出してるのかなー交通費?「中国で死ぬことになったら遺骸は中国に埋めてほしい」とコメントしたイワータには是非広州へ行って人糞プカプカの珠江でたっぷり泳いで謝罪してほしい(笑)。
(「楽しい中国ニュース」2006/05/08)

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 ◆自称僧侶の基地外日本人イワータが今度は白骨を前に叩頭。もちろん報道陣の前限定で(笑)。
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-05/08/content_4523350.htm

 だってこいつマスコミがいないと叩頭しないじゃん。で、今回訪れたのは吉林省にある「万人坑」っていう場所。まあ日本でいえば京都の東映太秦映画村とか日光江戸村みたいなところなんだけど、そこに「反革命」や「右派」認定で銃殺された中国人の白骨標本が展示されている訳。そういや南京にも似たようなテーマパークがあったな。まあ要するに戦後40年を政治運動の馬鹿踊りに費やした中共の「過去」についてイワータが例によって叩頭謝罪しているってこと。そろそろ日本のテレビが色物扱いで動いてほしいな。ワイドショーによる家族インタビュー希望。
(「楽しい中国ニュース」2006/05/09)

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 イワータはいまなお活動を継続していまして、11日にはハルビンの日光江戸村たる七三一部隊罪証記念館で例によって叩頭謝罪パフォをやった。……という新華社電を香港の親中紙『大公報』(2006/05/12)が報じています。

 ●日本人僧侶がハルビンで謝罪(大公報 2006/05/12)
 http://www.takungpao.com/news/06/05/12/ZM-564359.htm

 予定の行程でもまだ天津、青島などを回るようですが、政治状況もイワータの派手な活躍をなお必要としている、といえるかも知れません。事態が動き出した気配があるからです。

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 ◆日中外相会談開催に同意?詰めの協議?
 http://hk.news.yahoo.com/060509/12/1nniv.html
 http://hk.news.yahoo.com/060509/3/1nnoi.html
 http://hk.news.yahoo.com/060509/12/1nnu5.html
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2006-05/09/content_4525369.htm
 http://news.xinhuanet.com/world/2006-05/09/content_4527020_1.htm

 日本側は外相会談に双方が合意、としているが、中国外交部報道官は「いま詰めの協議を行っているところだ」と慎重姿勢。この温度差には留意しないといけませんぜ。いずれにせよ昨年10月の小泉首相による靖国神社参拝以来、中国側が最も歩み寄ってきた状況にあることは確かだな。
(「楽しい中国ニュース」2006/05/11)

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 ええ、外相会談について日中間に温度差があるのです。冒頭に掲げたように日本の報道では、

「外相会談実現で合意」
「5月下旬の外相会談開催で調整へ」
「外相会談再開合意」

 といったポジティブな標題が踊っているのですが、中国側の報道では
「双方は多国間協議の場で中日外相会談を実施する可能性を探った」とあるのみです。

 ●第5次中日戦略対話閉幕(新華網 2006/05/09/12:34)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2006-05/09/content_4525369.htm

 同日の外交部定例記者会見における報道官コメントも判を押したように同じ言い回しを繰り返しています。

「双方は多国間協議の場で中日外相会談を実施する可能性を探った。中日双方はこの問題についてさらに協議を重ねることになるだろう」

「中日双方は多国間協議の場で中日外相会談を実施する可能性を探ったが、これについてはなお検討する必要がある。具体的にどういう結果に落ち着くかは協議次第だ」

 http://news.xinhuanet.com/world/2006-05/09/content_4527020_1.htm
 http://news.xinhuanet.com/world/2006-05/09/content_4527020_2.htm

 ……とまあ、かなり温度差があります。慎重姿勢なのです。で、なぜ慎重かといえば、日本の出方を云々する以前にこれは中共政権内部のお家事情なのだと思います。外相会談実施について党上層部の意見が完全にまとまってはおらず、なお根強い反対論が存在するからでしょう。


「下」に続く)



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 とうとう連休が終わってしまいました。私はモチベーションがかなり低いです。中共方面の記事量が今日からどっと増える(平時に戻る)だろうと思うと戦々兢々というか鬱というか。……そんな訳で久しぶりに楊子削りへと逃げるのを諒として頂ければ幸いです。

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 その前に業務連絡。もうお気付きの方も多いでしょうが右サイドに「中国語で読む司馬作品」を加えました。私は台湾で『竜馬がゆく』だけ手に入れましたが、原文に非常に忠実な翻訳で、それだけに中文小説として読むにはリズム感が悪いのですが、原文と対照することで中国語の文章表現力向上に多少は貢献するかと思います。

 中国語の作文力というのは自分でどのくらいのレベルなのかわからないので、……要するにネイティブの文章と比べてどのくらい遜色があるのか実感できないので本当に困ります。

 私は副業で中国語を書いてお金を頂いているのですが、香港でも台湾でも編集者はほぼ手を入れないでそのまま掲載してしまいます。中国語に問題がないのか、それとも雑技団でパンダが芸をするような晒しもの扱いになっているのかわからないので悩みます。

 仮に中国語に問題がないとしても、日本語で例えるとどういう印象の文体に相当するのかもわかりません。個人的にはテレビドキュメンタリー「河殤」のナレーション原稿を担当したり、「河殤」と同じく中国国内では発禁処分になった『烏托幇祭』を書いた蘇曉康の文体とリズム感、それに改行で読者に余韻を与える手法などが理想なのですが、たぶん死ぬまで理想のままで終わると思います。

 翻訳(和文中訳)は苦手です。題材選びで悩むこともなく機械に徹して逐次訳していけばいいのですから楽な筈なのですが、やっぱり好きに書かせてもらう方がいいです。例えばインタビュー記事なら自分で考えて書く部分が少なくて済むので歓迎すべきなのですが、インタビューの部分を訳していても自分の文体の癖から逃げられないので嫌になります。

 それで結局は日本語を読める編集者に「翻訳料は俺が出すから」とつい任せて逃げてしまったりします。インタビュー部分を別人が訳した方が私の書く部分とのメリハリがついていいのです。もちろん自分でメリハリをつける技量があれば一番なのですが。……まだまだ修業が足りないということでしょう。

 ちなみに、私の好きな漫画である『ジパング』なども中国語版が20巻以上出ているのですが、これはこれで司馬作品とは別な部分の筋肉がつくのでいいです。『ジパング』以外の漫画でもいいのですが、御要望があれば一回でまとめてリンクを貼りますのでコメント欄に一筆して下さい。

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 さて楊子削りですが、またまた戦記で申し訳ありません。

ルンガ沖夜戦

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 ……でもこの『ルンガ沖夜戦』は以前紹介した『ガダルカナル戦記』などと並んで私の中では名作にランクされているのです。日本海軍の水雷戦隊が本領を発揮して優勢な米艦隊に完勝したルンガ沖夜戦(1942/11/30)を扱ったもので、日本側の指揮官・田中頼三少将をはじめ生存者(当時)への綿密な取材を下敷きにしています。

 ただ記録的な勝ち戦であるのに、この『ルンガ沖夜戦』は読んでいると爽快さよりも抗いようのない悲しみや切なさ、無力感というものが押し寄せてきます。猛訓練で鍛え抜かれた日本海軍の駆逐艦が、上層部の無定見によって戦前の構想とは全く違う割の合わない任務に従事させられて、どんどん消耗していく。……そういう駆逐艦乗りの無念さが念の入った取材ゆえによく伝わってくるのです。

 戦後、生き残ったある駆逐艦乗りがかつての乗艦が沈み戦友たちの眠るソロモンの海に赴いた際、この本を海中に投じて冥福を祈ったそうです。いまは亡き零戦のエース・坂井三郎氏が大空に散った戦友たちの言い分を代弁すべくその著作で日本海軍、あるいは日本海軍航空隊に存在した不条理を指弾したのに似て、駆逐艦乗りたちの想いをここまで表現し得た作品は他にないであろうと愚考する次第です。



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 ゴールデンウィークも終盤ですね。私にとっては一年の中で最も有り難い時期です。というのはこの一週間、中国も大型連休なので何事も動きが少ない。記事を拾う身にとってはこんなに楽なことはないのです。旧正月期間も同様に記事が減るのですが、その手前に仕事面であの恐るべき「年末進行」をクリアする必要があるので、消耗した分を回復している間に旧正月が過ぎていってしまいます。

 何はともあれ、大型連休です。何事も政争に結び付けてはいけませんけど、「擁胡同盟」(胡錦涛擁護同盟)と「反胡連合」(反胡錦涛諸派連合)による主導権争いもゴールデンウィークを受けてひと休み、といった観があります。水面下では色々な駆け引きが行われているかも知れませんが、新聞記事になるような表立った動きにはなっていない、という印象です。

 少なくとも「反胡連合」の主軸とみられる上海閥が先月末にみせたあの凄まじいコンボ、ああいう一連の攻勢というか政治的示威活動は目下のところみられません。来週以降に期待、というところでしょうか。

 ただ、気になる動きが全くない訳ではありません。上海閥が大人しくなったお蔭で、また連休でニュースが減った分、見逃すことなく目に留まった、というようなものはあります。ええ、それだけ目立たない実に地味な動きなんですけど。姉妹サイト「楽しい中国ニュース」で拾い上げた記事を以下に並べてみます。

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 ◆竹島問題関連記事。(2006/04/28)
 http://zqb.cyol.com/content/2006-04/28/content_1372406.htm

 胡錦涛の御用新聞である『中国青年報』が専門家へのインタビュー記事を掲載。韓国の対日強硬姿勢を評価している(少なくとも批判的ではない)。新聞が新聞だけに意味ありげですよこれは。

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 と思っていたら翌日にこれです。

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 ◆国家海洋局長、領土や境界線確定などの問題で「韓国の態度に学ぶべき」と発言。(2006/04/29)
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0604290029&cat=002CH

 「一切の代価と犠牲を惜しむことなく竹島を守る」とした韓国の態度に中国も見習うべきだ、だってさ。まずは親中紙『香港文匯報』が掲載したことに注目。対外的な観測気球なのか一種の予告なのかはまだ不明だが、海洋局長の分際でこの発言はやっぱ後ろ盾があってのことでしょ。もしそうなら「反胡連合」に属する電波系対外強硬派が顔をのぞかせた最初のケースといえるかも知れない。竹島に関する胡錦涛の御用新聞『中国青年報』の記事と重ね合わせて考えると、この面で「擁胡同盟」が頽勢にある可能性が考えられる。

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 このニュースで重要なのは、中共当局の現職者が初めて公に「韓国の態度に中国も見習うべきだ」と竹島問題に対する意思表示をしたことです。竹島問題については外交部報道官定例記者会見でも2度質問が出ていますが、報道官はいずれも、

「韓国と日本の隣国として、我々は両国が協商と対話によって両国間に存在する問題を適切に解決できるよう望んでいる」

 ……と我関せずの姿勢を維持してきました。ところが海洋局長という公の肩書を持つ人間が明確に韓国を支持するコメントを発表。しかも小役人。こうなると後ろ盾を考えない訳にはいかないじゃないですか。そこで当時の私は電波系対外強硬派の蠢動を疑ってみたのです。

 http://www.gov.cn/xwfb/2006-04/20/content_259230.htm
 http://www.gov.cn/xwfb/2006-04/25/content_265502.htm

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 そのあとは「擁胡同盟」側とみられる軍主流派が軍の内部統一に乗り出したことを思わせる記事が出てきます。

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 ◆軍内部で何かが起きている?(2006/04/30)
 http://hk.news.yahoo.com/060430/12/1nf6d.html
 http://tw.news.yahoo.com/060430/43/333il.html

 左派バリバリの雑誌『求是』に人民解放軍の一致団結を呼び掛ける論文が登場。西側の敵対勢力の陰謀に乗せられて『軍隊の非党化、非政治化」「軍隊の国家化」に動き、党の指導に従うという人民解放軍の性質を改めんとする試みには断固反対しなければならない」……これって『解放軍報』の「八一社説」(8月1日は建軍節)で毎年出てくる物言いで、昨年秋以降もこの手の論文をしばしば目にしたんだけど、わざわざ釘を刺すくらいだから実際にそういう動きが、しかも無視できないパワーで軍内部に浸透しつつあるんだろうな。

 現在展開中の「擁胡同盟」と「反胡連合」の政争を反映した「軍主流派 vs 非主流派」なのかはまだわからない。ちなみに言わでものことながら言及しておくと、中国の人民解放軍は中国共産党の軍隊であって中華人民共和国の軍隊ではない。党と政府から別々の命令が出たら軍は躊躇することなく党の指導に従うことになっている。だから「軍隊の国家化」に反対、なんて不思議な文言が登場する訳で。

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 「軍隊の非党化、非政治化」や「軍隊の国家化」を目指しているのが劉亜洲中将に代表される非主流派=電波系対外強硬派かどうかわかりませんが、しばしばこのフレーズが出てくることから考えると、批判の対象は非主流派ながら相当な後ろ盾のある連中かと思われます。どうして『求是』?という疑問も残ります。

 最後はその流れで重要通達や署名論文が出てきます。

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 ◆人民解放軍総政治部、胡錦涛の提唱する「社会主義栄辱観」の学習と徹底を発令。(2006/05/01)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2006-05/01/content_4499278.htm

 ◆『解放軍報』に政治思想の引き締め求める署名論文。(2006/05/02)
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-05/02/content_466381.htm

 ◆『解放軍報』に「科学的発展観」で理論武装するよう党員に求める署名論文(2006/05/04)
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-05/04/content_466949.htm

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 ……と、ここまでが現時点での動きです。グラグラしているのか勝ち名乗りなのかはわかりませんが、いずれも軍主流派の意向に沿った内容と思える記事です。

 で、上海閥が第二波攻勢を発動するのかどうかはわかりませんが、今回の政争のテーマである「中央vs地方」という利害対立が連休明けから再び活発化することになるでしょう。具体的には中央が引き締め措置に本腰を入れて、「諸侯」たち(各地方政府)の暴走に歯止めをかけようとする姿勢をより明確にすると思われます。地方の面従腹背ぶりがニュースの中に垣間見られれば面白いでしょう。

 もう一点注目すべきは、上述した軍内部の一連の動きの発端となった竹島問題に関する発言です。コメントした海洋局長は減俸処分か「反胡連合」に保護されて無事なのかはわかりませんが、今後、竹島問題に対する報道のスタンスをどうとるかが焦点になってくるように思います。「擁胡同盟」と「反胡連合」がこの方面で主導権争いをする、ということです。

 現在までのところ「日本がまた悪巧みをしている」的な印象を読者に与える報道が主流であり、同時に韓国政府関係者の対日強硬発言をどんどん報じていることから、竹島関連報道のテイストは従来の建前(外交部報道官談話)から乖離しつつあるようにみえます。要するに「韓国頑張れ」色が濃くなりつつあるということです。

 ただこれも痛し痒しで、あまりこのネタで反日気運を煽ると「じゃあ政府はなぜ尖閣諸島問題で行動しないのか」という声が当然ながら出てきてしまいます。もちろん中共当局がすぐさま尖閣奪回などの強硬策に出られる訳がありません。このあたりの匙加減が難しく、それだけにこの方面での主導権争いが深刻化するのではないかと私は思うのです。

 たぶん「出てきたら困る」のは「擁胡同盟」で、「反胡連合」は「反日」を掲げた攻勢がかけられるので「韓国頑張れ」を歓迎しているのではないかと。全人代(全国人民代表大会=立法機関)前後の仕込み具合からして、

「民間人を原告とする対日戦時賠償訴訟を中国国内で実現させる」
「『水滸伝』や『西遊記』といった中国の歴史的名作を日本企業に商標登録させる訳にはいかない」

 といった形での「反日」ネタもありますが、これも竹島関連報道の内容で勢いが左右されるのではないかと思います。

 上海閥など「大諸侯」による政治的デモンストレーション、経済政策での地方当局の面従腹背、そしてお決まりの「反日」という3点セットが今ラウンドの政争の主戦場となりそうです。このうち「反日」が期せずして再び大衆動員型のイベントになってしまうかどうかも要注目でしょう。



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 まあ即逮捕かどうかはともかく、近いうちに非合法な行為になるそうです。

 ……いやなに故人供養の話です。死んだ人への供養として中国人は紙で造られた専用のお金を燃やします。そうすることであの世でもお金に困らないようにしてやる、という理由からだそうですが、いかにも即物的で現実的思考に長けた中国人らしい習俗です。

 即物的・現実的といえば香港にいたころよく目にした光景を思い出します。映画などにも登場するシーンですが、燃やすのはお金だけじゃないんです。やはり紙で造られたベンツとか豪邸とか家具とか家電品とか、そんなものまで市場(街市)で売られていて、それを買ってきて一緒に燃やすのです。

 ところが最近はそれが昂じて、別荘や愛人まで登場して燃やすというから驚きました。それも香港ではなく、中共政権下の話です。

  http://news.xinhuanet.com/legal/2006-04/25/xin_3120403250836359198024.jpg

 風水鑑定すら表向きは御法度の国ですから、こういう習俗は「封建的迷信」で片付けられるに違いない、と思っていたら本当にそうなりそうで、政府は新法を制定して行き過ぎを戒めるとのこと。

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 紙製コンドームまで出現しているそうですが、あの世でも一人っ子政策ということなんでしょうか。

 http://zqb.cyol.com/content/2006-04/27/content_1370751.htm
 http://news.xinhuanet.com/legal/2006-04/25/content_4469980.htm
 http://hk.news.yahoo.com/060424/12/1n8oq.html

 コンドームまであるとなると、「愛人」は後継ぎを生むための保険ではなく、純粋な二号さんということなのでしょう。まあ、社会主義を標榜しつつもベンツに豪邸に別荘で妾まで抱えるとは、みんなブルジョア志向なんですね。資本家でも共産党員になれる時代ですから仕方ありませんか。

 中学生や高校生、また大学生の間では占いが流行しているそうです。星占いもあれば中国伝統の「八字」(四柱推命のようなもの)も行われていて、異性と付き合うときに自分との相性を占ったりするそうです。それとは逆に呪いの人形が売れていて、文字通り誰かを呪う目的で使われているというニュースもありました。コックリさんのようなものもあるようです。

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 で、こうしたこと一切合切を持ち込んだのが誰かといえば、それはトウ小平でしょう。改革開放政策で社会主義制度に市場原理が導入された。市場調節に委ねる部分が増えるほど、競争原理が働くことになる。要するに改革が深化するにつれて「勝ち組」と「負け組」が明確になってくる訳です。

 どっちがいいかと言われれば、そりゃ「勝ち組」になりたいでしょう。そのためには何でも味方につけようとする。占いはその象徴的な例といっていいかと思います。

 ベンツに別荘に愛人。……というのは、たぶんあの世でも改革政策がかなり浸透してきていると考えられているのでしょう(笑)。言い忘れましたけど、燃やす方は結構大真面目にやっているのです。私たちがお墓参りで線香を焚くのと同じようなもので、不謹慎な行いではないのです。

 何だか社会に資本主義的要素(もちろんマルクス存命当時の資本主義)が色濃くなるにつれて、中国人は先祖返りしつつあるかのようです。政治的なお題目よりも、地金とも言うべき古くから中国人の理想とされていた「福碌寿」がここにきて頭をもたげつつあるように思えます。何はともあれ「勝ち組」で、という印象です。

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 一方で、これは末期的症状を暗示するものかも知れないな、とも考えます。

 かつて「三信危機」という言葉が叫ばれたのは20年以上昔のことです。その言葉が示すように、民衆の社会主義に対する信心などとっくになくなっています。しかも1989年の天安門事件で中国共産党の求心力は地に堕ちましたし。……それを嘘で塗り固めた「愛国主義教育」で何とかしようとしたりしましたが、幸い経済が成長軌道に乗ったことが多少の目くらましになったようです。

 しかし、その経済成長モデルというのが実に歪んだもので、極めて高い外資依存度と輸出入依存度に加え、農民や農村を「廉価労働力」「タダ同然の土地」という一種の消耗品として投入することで、ようやく実現した繁栄です。むろんこれは空中楼閣で、要するに8割の人間が2割の繁栄を演出するために犠牲になっている。

 自転車をこいでいるのと同じで、犠牲になり続ける8割がその行為を放棄するなり、2割の繁栄に組み込まれていくような政策になれば、2割の繁栄も成り立たなくなり、空中楼閣はすぐさま崩壊してしまいます。……あるいは、中国は広いですし一党独裁制が徹底していますから、バタバタと倒れることなく、ゆっくりと立ち腐れていくのかも知れません。

 ――――

 いま、経済政策をめぐって「擁胡同盟」(胡錦涛擁護同盟)と「反胡連合」(反胡錦涛諸派連合)が正面からぶつかっています。今回はその経過を示す様々な出来事をもう少し寝かせておきたいがためにベンツや愛人を燃やす話を選んだのですが、結局はこの話題に行き着いてしまいました(笑)。

 「反胡連合」は、いってみれば2割の繁栄を享受している従来型改革での既得権益層。格差があってこそ自分達が利権にありつけるという考え方で、エゴともいえますが、地元優先という観点に立っているともいえます。ただこのやり方を続ける限り、最後には8割が蜂起して2割の繁栄者たちをなぶり殺すことになるでしょう。

 対する「擁胡同盟」は2割と8割の格差を是正しようとしています。全国を見渡す視点に拠ったその考え方は間違っていないといっていいでしょう。ただし、中国独特の歪んだ発展モデルゆえに、8割の待遇をよくしてやる分だけ、ようやく実現した2割の繁栄が失われていくことになります。

 どちらもジレンマを抱えています。……そこまで考えている訳ではないでしょうが、お金に加えてベンツや別荘や愛人まで燃やして故人を供養する人々の気持ちというのは、すでに幾分か現世への望みを絶っているかのように思えてしまいます。

 あるいはあっけらかんと、「現世同様、あの世でも勝ち組狙いで」と単純に割り切っているのかも知れませんけど。



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