日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 驚愕です。衝撃です。とりあえず緊急速報。

 江蘇省・蘇州市に科学的発展観の発露ともいえる象徴的なオブジェが出現しました。

 http://pic.anhuinews.com/0/01/19/03/1190378_963978.jpg

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 江蘇省といえば、そのトップである省党委員会書記・李源潮は胡錦涛直系の共青団人脈、いわゆる「団派」のホープ。李克強・遼寧省党委員会書記に次ぐポスト胡錦涛の有力候補と目されています。

 そのお膝元である蘇州市に突如現れたこのオブジェは、胡錦涛が目指す「和諧社会」(調和社会)をビジュアルという手法にて具体的に表現したものとして注目されます。

 正に「以人為本」……全ては人民のために、です。拡大する一方の様々な格差や不均衡を改善し、中共政権下の人民がみな等しく科学的発展観に基づいた社会主義文化を享受できるようにしよう、という象徴的な意味合いがここにはこめられています。

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 胡錦涛色を前面に出した全く新しい政治宣伝活動ともいえるでしょう。様々な意味において、中国政治に画期をなすものです。

 ここに敢えて「健康都市」という名目を持ち出したのは、改革・開放政策が本来の社会主義から逸脱しすぎることを警戒する左派の理論面における反発を封殺する狙いがあるものと思われます。

 また設置された場所が胡錦涛派の一拠点であるだけでなく、「東洋の×ニス」とうたわれる水の都・蘇州市ということも重大な政治的示唆に富んだものといっていいでしょう。

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 問題は「擁胡同盟」(胡錦涛擁護同盟同盟)の新たな政治的攻勢ともいえるこの動きに対し、頽勢にある「反胡連合」(反胡錦涛諸派連合)がどう出るか、です。

 次世代の有力者とされていた陳良宇・前上海市党委員会書記を潰され独立王国・上海が解体されつつある現在、上海閥には反撃の余力はもはや残っていないでしょう。

 軍部の非主流派に属する電波系対外強硬派(劉亜州中将など)が知的財産侵害という大義名分を掲げ、軍事クーデターをも視野に入れた突発的かつ硬質的な行動に出るのではないかという見方が香港の観測筋では広がっています。

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 私は未だ興奮醒めやりません。取り急ぎ速報まで。




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 この数日、尖閣問題が一段落したらどうも気が抜けたようで……ではなく、その尖閣問題などの件について香港の複数の掲示板に出入りしたり最近向こうに設置した中文ブログを書くなど愚にもつかぬ活動をしていました。仕事とは無関係な、自分の好きなジャンルで中国語を書くこと(下手糞ですけど)も私にとっては娯楽のひとつです。

 掲示板では馬鹿な香港型糞青のために今回の保釣運動の総括をしてやったり、帰属問題で斬り結んだり……別に大したことはしていないんですけど、やり取りをしている中で、日本のネットにおけるソフトの蓄積を改めて実感しました。チャンバラの最中に、

「あっここであの資料を投入しないと」
「あの条約の詳細、どうなっていたたかな」

 となったとき、検索するとすぐ出てきてくれるのです。一種の問題意識を持ったホームページとか「まとめサイト」のようなものが日本にはたくさんありますからね。情報管制の敷かれている中国本土はもちろん、香港もこの点では大きく遅れをとっています。

 以前中国のACG(アニメ・コミック・ゲーム)絡みで、

「表現の自由も大事だけど、広範なアマチュア層という人材供給源たるプロ予備軍がないと強力な業界が形成されないから、むしろ結社の自由の方が大事」

 という趣旨のことを書きましたが、ネットでも日本のアマチュアは頑張っているなあと痛感しました。

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 あとどうでもいいことですけど、ちょっと前に当ブログに斬り込んできた香港人の「張学良」君と香港のアキバ系掲示板でばったり再会。掲示板についている簡易メッセンジャー機能でやりとりして旧交を温めました。こういうこともあるんですねえ。

「今度は中国語で交流しよう。お前は俺のブログのエントリーもちゃんと理解できていなかったみたいだし」

 と書いたら彼は自信家らしく、

「それより日本語の方がいい。すぐに上達するから話せるようになる」

 と言うので、

「お前の日本語の作文力が俺の中国語の水準に達するのはすごく難しいぞ。これは自慢じゃなくて外国語を勉強した経験から言っているんだ。中国語に比べると日本語は文法が複雑だしな」

 などと言い聞かせていたら、急に姿勢を改めるような気配で、

「あなたは一体何歳?もう40歳になった?」

 と「張学良」君から切り返されて(素朴な疑問なんでしょうけど)ちょっと慌ててしまいました。彼はまだ高校生。私は40歳にはまだなっていませんが、彼の年齢の倍くらいは確実にあります。もちろん彼が早熟なのではなく、私が年甲斐もないということなのでしょう。

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 それはともかく、今回は台湾の話です。先日「h333」さんからご質問を頂いたのですが、ちょうど恰好のエントリーがあったのでそちらに回ってもらいました(「h333」さん、横着で申し訳ありませんでした)。それを読んで頂いたらしくコメントをつけてくれたのですが、

「とどのつまり教育がネックなんですよね」

 というくだりが非常に印象的でした。それで思い出した話がありまして。

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 面相というか「記者顔」というものがあるのでしょうか。私が1年ばかり台湾で暮らしていたころ、タクシーに乗ると「お前は日本の記者か」と運転手によく尋ねられました。

 タクシーは頻繁に利用していたので打率にすると低くなるでしょうが、十数回はありました。香港でも似たような経験があるので、私は「記者めいた面つき」ということになるのかも知れません。まあ台湾では編集部長兼編集長といった仕事をしていたので全く外れている訳ではありませんけど、新聞などで報道に携わっている訳ではないので、

「いや違う。記者じゃない」

 とこちらは一応否定します。でも相手はそれに構わず、

「いやいや、わかってる。記者だろ?」

 と勝手に決めつけてくるのです。決めつけるや運転手の独演会が始まります。

 台湾の運転手は政治の話題が好きで、独立派の政談を多く聞かされましたが、中には統一派の人もいて、車を下りるとき釣り銭を受け取った私の手をぐっと握って、

「台湾には李登輝みたいな奴ばかりじゃない。統一を望んでいる人間も多くいるということを是非書いてくれ」

 と真顔で言われたりしたこともありました。こちらはその気迫にひるみつつ、

「わ、わかった」

 と言うしかありません(笑)。いや笑い事ではなく、あれは私の台湾生活における強烈な体験のひとつでした。

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 そういう「お前記者だろ?いやいやわかってるって」と決めつけられて聞かされた話の中でもうひとつ印象に残っているものがあります。独立派かどうかはともかく台湾人意識の強い運転手でした。

「おれは休日には子供と一緒に、日帰りのバスツアーに参加するんだ」

「バスツアー?」

「お前記者なのに知らないのか?台北のターミナルから出ているんだ。もっと民情を勉強しろ」

 などと説教されつつ話を聞いていくと、要するに東京の「はとバス」のようなもので、台北周辺の観光名所や史跡をまる1日かけて案内してくれるそうです。

「あんた地元じゃないか。何でわざわざそんなのに参加するんだ?」

 と当然の疑問をぶつけると、

「いや地元なんだけど、おれたちの世代は台湾のことをよく知らないんだよ」

 という奇妙な回答から教育の話となります。

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 要するに一党独裁・戒厳令施行下で国民党型の教育を受けて育った世代は中国本土のことばかり教えられて、自分たちが住んでいる台湾の地理や歴史はほぼスルーされており、いきおい「台湾のことを知らない台湾人」になってしまったとのこと。運転手はその穴を埋めるべく、休みになると子供と一緒に台北の「はとバス」に乗っているのだそうです。

「俺みたいな奴は結構多いよ。あんたも一度乗ってみるといいよ」

 と言っていました。それがどれほど一般的なケースなのかはちょっとわかりませんが、ある意味象徴的なエピソードだと思い、印象的な記憶として残っています。現在では歴史・地理とも台湾メインのカリキュラムに改められているので、

「だから俺より子供の方が台湾の地理に詳しいんだよ」

 などと頭をかいていましたが、台湾も「台湾人の国」になるためには独立とか正名だけでなく、まだ他にも超えなければならないハードルが色々あるんだなあと思ったものです。

 ……ただそれだけの話でオチも何もないのですが、かたや対岸の中共政権下では江沢民時代に反日風味満載の「愛国主義教育」なるものを受けた「亡国の世代」が量産されて、コチコチの中共史観で煮込まれたせいなのかどこか硬直的な印象の連中が増えています。

 香港もその亜種である「国情教育」が必須科目になっていて先行きが不安です。ちなみに上記「張学良」君は高校生ですから当然ながら天安門事件(1989年)の記憶はないのですが、毎年6月4日に開かれるキャンドル集会には必ず参加している、というので褒めてやりました。

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 ところで独立派である与党・民進党の頽勢が伝えられる台湾ですが、もし馬英九・党主席が次の総統選挙で勝利して国民党政権が復活したら、教育も旧態に復することになるのでしょうか。

 国民党内部にも本土派がたくさんいますからそこまで大きく舵を切る必要はないでしょうし、国民の圧倒的多数が「台湾人」であり、基本的に現状維持派=潜在的独立派が大勢を占めている状況に変わりはありませんから舵を切ろうにも切れないでしょう。

 他の政策についても同じ理由から現状を大きく変えるようなことはできないでしょうし、あえてそれをやれば民意にそむく形となって、国民党は議会選挙(立法委員選挙)で大きく議席を失って非国民党勢力が台頭し、「馬英九総統」のフリーハンドはいよいよ狭まる。……と私は楽観的にみているのですが、さてどうでしょう。

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 とりあえず台湾といえば、新幹線開業セレモニーに小泉前首相が招待されています。

 そういう公式な招請には応じるのは難しいとしても、その時期に私的に台湾観光を行って、李登輝氏はじめ台湾本土派の要人と会見したり民主主義の根付いている台湾をほめあげるなどして、日本との関係をアピールすることで「台湾」を側面援護をしてほしいところです。

 森・元首相が前首相時代にそれをやった前例がありますし、李登輝氏は当分台湾を留守にできないでしょうから、安倍首相・麻生外相という連携のとれた前がかりな攻撃的布陣のもと、ベンチに退いた小泉氏のパフォーマンスに期待したいところです。

 ……あ、日本の教育もしっかりお願いします。こちらも超えなければならないハードル、特に愚劣なくせにしぶといものが色々ありますからね。




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 なにまた尖閣問題?……と言われそうなので首相夫人の話から入りますか。

 保釣運動(尖閣防衛運動)活動家たちを乗せて10月22日に香港を出港した「保釣二号」(100トン)がドタバタの末に尖閣諸島近海に到達し、海上保安庁の巡視船・巡視艇に包囲されお約束の公開処刑に遭っていたのが昨日(10月27日)の朝。

 香港における親中紙の筆頭格『香港文匯報』のこの日の紙面が面白いのです。かたや「保釣二号」が海保と組み打ちしているときに、同紙は1面トップ(たぶん)で何と「安倍首相夫人特集」(笑)。

 安倍首相夫人がいかに人柄がよくて、中国が好きで、実は5月にプライベートで訪中していて、キムタクや台湾のF4のファンでもあって、先の訪中でも和解に一役買って……なんて記事をズラりと並べてみせました。ええ、「保釣二号」が孤軍奮闘しているその日に、です。

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 ●「夫人外交」が5年にわたる冷えきった中日関係を一変させた
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0610270001&cat=002CH

 ●「日本のヒラリー」は活発で颯爽、お好みのアイドルも
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0610270002&cat=002CH

 ●中国人の友人とはチャイナドレスで再会
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0610270003&cat=002CH

 ●安倍夫妻「和諧社会」(調和社会)の理念を絶賛
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0610270004&cat=002CH

 ●「魅力トリオ」にはそれぞれ「必殺技」が
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0610270005&cat=002CH

 ●3日間の訪中で和解の基礎を構築
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0610270006&cat=002CH

 自民党総裁選までは安倍晋三氏を散々こき下ろしていた中共系メディア、その安倍氏が首相になってどう豹変するかと思えば、意外にも夫人をヨイショ。なるほどそういう手がありましたか。でもよりによって「保釣二号」が苦闘している日の朝刊にこんな特集を組まなくても、ねえ。

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 要するに、現在の中共当局にとっては尖閣問題より日中関係の友好ムード維持が大事ということです。むしろ友好ムードに水を差しかねない保釣運動などもってのほか、という気分が紙面に垣間見えるといってもいいでしょう。

 ●駐日中国大使「日中関係、難局は去った」(Sankei Web 2006/10/27/19:50)
 http://www.sankei.co.jp/news/061027/kok008.htm

 中国の王毅駐日大使は27日、横浜市で講演し「安倍晋三首相の歴史的な訪中で、日中間の政治的障害を克服するための意見の一致を見た。政治的難局はすでに去った」と述べた。その上で両国の今後について「日本は最も重要な隣国のひとつであり、友好的な関係を築こうという姿勢は変わらない」と説明。「これは既定の政策であり、国策だ」と強調した。
(後略)

 ……と、王毅の姿勢も保釣運動などどこ吹く風、という雰囲気です。中国海軍が尖閣諸島から300km離れた海域で実弾射撃演習を行うという通告も出されましたが、日本で騒がれないうえ、中国・香港メディアもその内容について報じていないところをみると、本当にやったのか演習?という気もします。

 まあ実際にやったにせよ、前回書いたように、日中友好ムードを大事にしたいけれど「保釣二号」が公開処刑された際の中国国内の反応にも対処しなければならない中共政権としては、演習は「保釣二号」の出港を阻止できなかったために国内向けに行われた苦渋の選択、といったところでしょう。

 たぶんその決定が出された時点で日本側に言い訳を交えた通告が行われたのだと思います。演習のニュースどころか「保釣二号」の件も日本のマスコミでは大きく扱われていません。

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「中国海軍にできることといえば、せいぜい尖閣の近くでドラムソロ32小節です。ドンタカうるさいことはうるさいのですが、結局は例によって海保が網を張っているところへ予定調和的に「保釣二号」などが入ってきてお約束の公開処刑。」

「日本側は例によって「保釣二号」を粛々と公開処刑をする、中国外交部がそれに対し抗議声明を出す、という形で幕引きとなるのてしょうか。」

 と前回書きましたが、どうやらそのようです。新華社電によると、中国政府による抗議は行われたものの、中国側は李肇星外相でも外務次官でもなく、「アジア局責任者」としか書いていないうえ、呼びつけられたのが日本大使館の誰なのか、これも実名が出ていません。

 抗議内容はいつも通りの能書きです。

 http://hk.news.yahoo.com/061027/153/1ve3g.html

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 こうした流れからみると件の実弾射撃演習、海軍当局なり実戦部隊にしてみれば、

「これで日本を威圧するのだ」
「海上保安庁はきっとガクガクブルブルだろうな」

 という意気込みがあったのかも知れませんが、政府レベルでは上述したように国内からの反発を抑えるための措置。むろん「これで日本を威圧するのだ」という実戦部隊の気分が、フラストレーションが限界まで鬱積された際に、

「もうどうせなら実力行使で奪っちまおうぜあの島」

 となって独断専行に走る危険がない訳ではありませんが、そうなれば安保発動で米軍や自衛隊が動いて、経済制裁と北京五輪中止によって対外依存度の高い中国経済は(以下略)。軍部にとっては台湾が最大の関心事で、台湾を占領してしまえば尖閣諸島にはいつでも手が出せる、という認識なのではないかと思います。

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 さて段取りの悪さと大自然を舐めてかかった報いを散々に受けた「保釣二号」、日本の領海に侵入できたものの巡視艇の体当たりや高圧放水でまたまた公開処刑。上陸をあきらめて退散してしまいました。荒波の外洋で連中にとっての上陸用秘密兵器「水上バイク」を走らせるとどうなるか、見てみたかった気もしますが(笑)。

 それにしても今回の保釣活動家は根性が足りませんね。何のために悪天候下の台湾海峡を突っ切るなんて無茶をしたのか。あれで乗員が頭を打って脳震盪になったり機関が故障して、その手当のため台湾沖で余計に時間を喰ったりしたのです。

 ところがいざ本番、海保との組み打ちでは負傷者がゼロなうえ機関故障もないというのに、体当たりと高圧放水にビビってあっさり白旗(笑)。ここぞというときに踏んばれなかった連中がヘタレていたというべきなのか、公開処刑も洗練されてきたというべきなのか。

 まあそもそも領土問題に名を借りつつも、連中の本当の目的は選挙運動ですから、当然のように「命あっての物種」を優先した、というところでしょうか(笑)。それならそれで、台湾海峡で沈没して全員海の藻屑、なんてオチがほしかったところですね。

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 ともあれ海上保安庁のみなさん、どうもありがとうございました。現場では領海侵犯をした「保釣二号」に対し、拿捕でなく公開処刑で済ませるという方針に忸怩たる思いがあったかも知れませんが、よくぞこらえて与えられた任務に徹してくれたものだと思います。

 特に今回は「保釣二号」がもたついたおかげで警戒態勢が長時間にわたり、大変だったことでしょう。日本の海を守ってくれて、本当にありがとうございました。




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 なにまた尖閣問題?……と言われそうなのでサッカーの話から入りますか。

 10月25日に東京で行われた日本代表と中国代表の親善マッチ。どちらもU21(21歳以下)代表チームです。ところが2004年に北京で開催されたサッカーアジアカップ同様、今回の試合を「抗日の絶好の機会」と意気込んでしまう中国の糞青(自称愛国者の反日信者)はじめネットユーザーのイタさをどうしたらいいのでしょう。

 たかがサッカーの国際親善試合まで「政治」しかも反日活動に昇華させてしまうのは、江沢民による反日風味満点のヒステリックな「愛国主義教育」をたっぷり浴びて育った「亡国の世代」だからでしょう。ざっくりとした言い方なら30歳以下は汚染されています。

 先日紹介したように胡錦涛はこの「愛国主義教育」から反日色を薄めつつある気配がするのですが、「亡国の世代」が社会の中軸を担うこれから約20年間は当然ながら「亡国の時代」ということになるでしょう。

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 現実を現実と割り切る事の得意な中国人であっても、刷り込まれてしまった生理的嫌悪感、そして中国人特有の病的に高すぎるプライド&病的に強すぎるコンプレックスが作用してしまうこともあるでしょう。

 経済的にダメダメだった20年前はそれが危機感として表に現れ民主化運動などに発展しました。歪んだ構造ながら経済発展を実現している現在は危機感の裏返しで増長・慢心モードといったところです。

 いま現在ですでに「中華の復興だ」という言い方をニュース記事や評論で散見することができます。過去に世界四大古代文明(でしたっけ?)の一角を担ったという栄光に浴したばかりに、それが逆に重荷になってしまって何だか可哀想でもあります。

 何事も常に極端から極端へふれてしまう「何をやっても大躍進」病もこの過去の栄光という重荷、それに重荷を背負っているがゆえの病的なプライド&コンプレックス、そして数千年の伝統を持つ愚民教育あたりが根っこなのかも知れません。

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 ああサッカーの話でした。敵地に堂々と乗り込んで小日本に快勝してホームチームたる日本側の面子を潰し、それによって「抗日」の達成感に酔う。……というこれまた病的な発想です。でもそれが糞青クオリティ。試合当日まで大手ポータル掲示板のサッカー板などは期待感にあふれて反日板のようになっていました。

 そしてワクテカの試合結果は……。

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 ●サッカーU21:日本が2-0で中国破る 8月に続き連勝(毎日新聞 2006/10/26/00:06)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/sports/soccer/news/20061026k0000m050091000c.html

 08年北京五輪を目指すサッカーの21歳以下(U21)日本代表とU21中国代表の国際親善試合が25日、東京・国立競技場で行われ、日本が2-0で勝った。前半17分に梶山のゴールで先制。後半37分に平山が追加点を挙げた。

 自国開催の五輪に向けて強化を進める中国は、来日メンバー20人の半数以上がフル代表経験者(日本は3人)だが、8月に中国で行われた試合に続いて日本が連勝した。
(中略)

 ○日本2-0中国●

 日本がほぼ一貫してペースを握った。前半17分、中盤でルーズボールを得た苔口が、左サイドのオープンスペースへパス。走りこんだ増田がクロスを上げ、梶山が頭でゴール左すみにたたきこんで先制した。その後はチャンスで決めきれなかったが、後半37分、右からの中村のクロスを相手GKがはじいたところを平山が押し込んだ。中国は中盤でのパスミスが目立った。シュートこそ10本を放ったが、終盤にはゴール前での決定機を逃し、無得点に終わった。
(後略)

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 ということで、糞青のたまり場もサッカー板もどんよりしてしまいました。

 記事にもありますが、何せ8月にも中国のホームで2-0で日本に負けている上に、意趣返しとばかりにA代表組を大量に送り込んだのにまた2-0で完封負け。サッカー板には、

「もうサッカーに抗日を託すという妄想はやめよう」

 なんてスレッドが立っていましたが、これは、

「日本と試合をしてもどうせ負けるから期待するのはやめよう」

 という趣旨で、そもそも「サッカーで抗日」という発想に問題があることには誰も気付いていない様子でした(笑)。愛国主義教育の発露ですね。

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 そうやってヘコんでいた糞青どもがにわかに活気づいたのが尖閣問題、例の「保釣運動」です。

 香港の活動家などを乗せた小型漁船「保釣二号」が10月22日に香港を出港。ところが外洋を甘くみて悪天候下の台湾海峡を強行突破しようとしたために高波に散々がぶられて機関が故障したり船体が揺れた弾みで頭を打って脳震盪を起こす奴が出たり。もちろん船酔い続出で甲板は麻婆豆腐。

 香港紙『明報』電子版によると、台湾沿岸に達した「保釣二号」は台湾当局の妨害もあって入港することができず、きのう(10月26日)夜の時点では何とか船をチャーターした台湾の活動家たちと台湾沖にてようやく合流、故障及び損傷部の修理を終えて、出撃態勢が整った模様です。これが日本時間の午後9時ごろ。

 http://hk.news.yahoo.com/061026/12/1vbfp.html

 もっとも、中国本土の糞青どもは外交部から出た関連声明で保釣漁船の突撃計画があることは知っていたものの、報道管制?のためここまでのドタバタぶりを詳しく知りませんでした。

 それが一転、歓声に変わったのが前回お伝えした
「中国海軍が東シナ海で実弾射撃演習、尖閣諸島からわずか300km」というニュース。この演習通告が出るとともに、中国本土からもアクセスできるシンガポールの親中紙電子版に演習の詳細を報じた『明報』からの転載記事が載ったりして糞青どもが湧き立っています。

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 湧き立たせちゃっていいのかなー、と思うのですけど。まあ苦渋の選択ではあるでしょう。これまでは護衛をつける訳にもいかないから尖閣漁船はいつも日本の海上保安庁に包囲されたうえ公開処刑。そのたびに政府は弱腰だとか海軍は何をやっているかなんて怒りのコメントがネット上に寄せられるのです。

 これ以上同じケースを繰り返していたらネット世論も海軍もキレかねない。だからこの2年ばかりは保釣漁船出動の気配があれば事前に芽を摘んできたのですが、今回はとうとう香港から「保釣二号」が出撃してしまいました。

 そこで苦渋の選択、近海での実弾射撃演習ということになったのでしょう。演習実施について胡錦涛のOKが出ているなら日本側にも耳打ちしてある筈です。そうして日本側にアドバンテージを与えてしまうのと、演習実施という威嚇行為が日本のマスコミに報じられて日本の対中世論がまた硬化するかも知れない、というリスクを踏んでいるところが「苦渋」なのです。

 なお、この演習の実施期間について前回は抜け落ちていた部分があったので訂正します。正しくは10月24日12時~10月26日18時、さらに27日と28日がいずれも8時から18時、ということで「保釣二号」のドタバタを予測していたかのように幅を持たせたスケジュールになっています(笑)。

 ともあれ、いままで何もしなかった中国政府が今回は海軍に花火大会をやらせる、ということで糞青どもが拍手喝采していますし、海軍も隠忍自重を強いられてきた以前に比べれば、花火大会でも一種のフラストレーションを発散させることができるでしょう。

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 でも結局は今までと同じ結果なんですけどね。いかに300km先で実弾射撃演習が行われていても、尖閣諸島付近に展開している海上保安庁の巡視船に中国海軍が手を出す訳にはいきません。

 万一現場が小競り合いから本格的な戦闘に発展すれば安保発動、経済制裁も行われて対外依存度の高い中国経済は失血死。もちろんオリンピックも吹っ飛んで五輪景気が不況へと暗転。皆さんお待ちかねのあらえっさっさーです。

 ですから中国海軍にできることといえば、せいぜい尖閣の近くでドラムソロ32小節です。ドンタカうるさいことはうるさいのですが、結局は例によって海保が網を張っているところへ予定調和的に「保釣二号」などが入ってきてお約束の公開処刑。

 それでも一応艦隊が動いたのですから政府や海軍への苦情も減るのでしょうか。自分たちの突撃に合わせて演習が行われることで、

「海軍が支持してくれている」
「演習という形で護衛してくれている。日本への圧力にもなるし」

 と保釣分子が誤解することが懸念材料ですけど、中国政府は形だけ動いてみせましたし、日本側は例によって「保釣二号」を粛々と公開処刑をする、中国外交部がそれに対し抗議声明を出す、という形で幕引きとなるのてしょうか。まさか演習は実は艦隊司令部の独断専行で……なんてことはないと思いますし。

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 最新情報として今朝の香港紙(2006/10/27)の報道ですが、『明報』によると台湾沖にいた「保釣二号」は日本時間の昨夜21時半に尖閣諸島に向けて進発。尖閣諸島付近への到着は明日(10月28日)の早朝になる見通しとのことです。

 ただし記者を乗船させている『蘋果日報』によれば、「保釣二号」は昨夜(26日)22時ごろ発進して現場到着は今日に早朝、となっています。とすればいまごろ海保の面目躍如たる情景が展開されているのでしょうか。

 気になったので香港保釣行動委員会のサイトに飛んでみると、やはり現場到着は今日のようです。以下の時間は日本時間。

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 ●02:30
 「保釣二号」の乗員全員が不測の事態に備えライフジャケット着用。
 ●05:10
 左右両舷に日本の艦艇を発見、ぐんぐん間合いを詰めつつ、サーチライトで海面のあちこちを照射している。
 ●05:20
 魚釣島から53カイリ地点。速度9.4ノットで航行。左右両舷に日本の艦艇が並行して進んでいる。
 ●05:45
 魚釣島から50カイリ地点。両舷の日本の軍艦(とされている)がサーチライトで「保釣二号」の各部を照射。うち1隻に「PL52」と書かれているのが見える。
 ●07:00
 魚釣島から40カイリ地点。夜が明け始めた。日本の軍艦が新たな行動に移る気配はない。
 ●07:10
 「保釣二号」付近の日本の軍艦が4隻に増える。乗員は朝食をとる。
 ●07:25
 「保釣二号」付近の日本の軍艦が7隻に増える。現在魚釣島から33.5カイリ地点。

 http://www.diaoyuislands.org/1022.html

 ……と、すでに海保の警戒網にかかった模様です。NHKの7時のニュースでは「9時ごろに現場到着の見込み」となっていました。

 何だか『坂の上の雲』に描かれている日本海海戦の初動期のようでワクワクしてきましたが、私は寝ないといけないので実況はここまで。





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 先日紹介した香港人らによる尖閣諸島防衛運動「保釣運動」ですが、大方の予想(期待?)を裏切ることなくドタバタめいてきました(笑)。ただ中国の方では気になる動きも出ています。香港紙の報道から事態を眺めてみましょう。

 香港を出港した小型漁船改造の「保釣二号」(100トン)。まずは台湾の基隆港へ向かい、そこで台湾側の保釣分子と合流する手筈になっていたようです。台湾側は台湾側で漁船をチャーターして船出するプランでした。

 また、香港の「騒ぎ屋」代表格である梁国雄こと「長毛」は、船に極度に弱い(笑)ということで飛行機で台湾入りして「保釣二号」に乗り込む予定でした。「長毛」は計画通り、昨日(10月24日)台湾入りしています。

 ところが肝心の「保釣二号」、中国沿岸を福建省沖まで北上してから面舵一杯で転舵し、一路台湾海峡を突っ切って基隆へ向かうつもりが、外洋に出るやいなや暴風と高波に襲われました。意気軒昴たる保釣分子たちもこれには参って右舷でも左舷でも麻婆豆腐。

「立ち上がるということがこんなに贅沢な行為だったとは!」

 とは乗船している『蘋果日報』記者によるレポート(2006/10/25)。波にもまれて船が大きく揺れた際に身体をぶつけて軽傷を負う者まで出る始末です。

 傷を負ったのは乗組員だけでなく、「保釣二号」もこの悪天候下の航海で船体の一部が損傷。修理の必要もあり、基隆ないしは台湾北部の港に入ろうとしました。……が、悪天候を理由に基隆をはじめ台湾北部の各港に10月24日から閉鎖措置がとられており、「保釣二号」は漂う木の葉となってしまいました。本来ならもう基隆港に入っているんですけどね。

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 ともあれ入れる港を探すか、このまま尖閣諸島へ向かうか、という選択を迫られることになった「保釣二号」。要修理なのと「長毛」も台湾入りしているので、予定より大幅に遅れながらもいったん基隆港に入ることになりそうです。

 ただ、台湾当局が入港許可を出しそうにないので台湾側とは洋上で合流する見込み、と『東方日報』(2006/10/25)は報じています。

 http://orientaldaily.orisun.com/new/new_c54cnt.html

 ところがその「保釣二号」を待っている台湾側にもトラブル発生。もともと漁船をチャーターして尖閣諸島へ赴く予定だったのが、台湾当局の圧力と悪天候に尻込みし、チャーターを断る船主が続々と出てきたのです。

 さあ大変。「船がない」のですから話になりません。仮に「保釣二号」が入港・修理できたとしても、小型船ゆえ定員不足で台湾側の保釣分子全員を乗船させるだけの余裕はありませんし、入港した「保釣二号」に対し、台湾当局が出港許可を出さない恐れもあります。困っています。進退に窮しています。

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 ところで、困っているのは保釣分子だけではありません。安倍首相訪中前後から躍起になって国内で日中友好ムードを盛り上げてきた中共政権にとっても、尖閣方面に船を出されることで努力が水の泡になるかも知れないのです。

 まず無用の挙を起こすことで日本側に借りをつくってしまうというのが一点。さらにまた従来通り保釣分子の船が海上保安庁の精鋭に公開処刑されることで、ネット世論から軟弱だ弱腰だといった政府批判が出てくるのは必至。お門違いながら、「何をしているんだ」と批判が海軍に及ぶことも避けられないでしょう。

 ですから中共政権は「保釣二号」の出港をあれこれと口実をつけて妨害してきました。中国本土の港で「保釣二号」の整備が進められていたことを奇貨として、難癖をつけて出港許可を引き延ばし本来予定していた「八・一五香港出港」を御破算にさせています。

 が、保釣分子らは延期してでも船出するという意志を曲げようとしません。そこでメンバーに対し、香港における中共政権の出先機関が説得工作を行ったりもしました。『明報』(2006/10/13)がそれを報じています。

 http://hk.news.yahoo.com/061022/12/1v1ru.html

 今回「長毛」が香港から船に乗らず台湾にまず飛んだり、主要メンバーのひとりが「ケガが全治していない」「母親が心配している」などと言って参加をとりやめたのは、ある意味中共政権の「顔を立てた」ということなのかも知れません。他にも中国本土から参加するべく入境手続きを踏んで香港に入ろうとしたメンバーの多くが出境を阻止されてもいます。

 ――――

 それでもとうとう船出してしまった「保釣二号」。さあ困った中共政権、というところですが、誰の献策なのか妙手を打ってきました。

「舟山群島南東にて海軍が実弾射撃演習を行うので、民間船舶による演習海域内の航行及び高度1万5000m以下での航空機の飛行を禁止する」

 というものです。その海域に入ってもいいけどケガしてもこちらは責任持たないよ、という通告。

 『星島日報』(2006/10/25)の報道によると演習を行うのは東海艦隊で、ロシアから購入した現代級駆逐艦も参加するとのこと。

 http://www.singtao.com/yesterday/chi/1025eo01.html

 この実弾射撃演習に指定された海域が尖閣諸島から300kmという微妙な、というよりむしろ近いといえる距離にあること、演習日程が10月24日正午から10月26日午後6時と「保釣二号」の尖閣接近時期と符号していることから、

「海軍による側面援護だ」
「日本に対する圧力だ」

 と糞青(自称愛国者の反日信者)どもはネット上で湧き立っています。

 日本側に対して手を出せない以上、ネット世論を喜ばせる一方で海軍の士気低下も防げるという一石二鳥。なかなかやりますね。あるいは台湾当局にも手を打つよう水面下で話し合いがもたれていたりして。

 ――――

 個人的にはこの演習、どういう手順で実施が許可されたのか興味があります。胡錦涛まで話が通っているのか、海軍が勝手にやることにしたのか。その海軍にしても、胡錦涛サイドの軍主流派なのか、それとも対外強硬色の強い一派なのか……。

 間合いが300kmということなので、あるいは不測の事態、ということも考えられます。これに対応して海上自衛隊も展開するのかどうか。

 興味は尽きないのですが、肝心の「保釣二号」が台湾沖でヨタヨタしていますからねえ。台湾側も船のチャーターが難航していることから中止という線も十分あります。

 せっかく派手なお膳立てが整っているのに、当の保釣分子のヘタレっぷりからして、肩すかしを食わされそうな気もします。

 ヘタレといえば、『東方日報』(2006/10/25)に気になるニュースが。保釣分子が資金集めの募金活動を政府に無届のまま人の集まる繁華街やフェリー乗り場でやっていたという疑惑が浮上したのです。

 http://hk.news.yahoo.com/061024/10/1v6xo.html

 こういう段取りの悪さや粗放なところも騒ぎ屋らしいというか。……ともあれ続報に期待しましょう。




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 尖閣諸島の領有権を主張する香港人を中心とした活動家の乗ったボロ漁船が現地に着くまでの間、待ち時間があります。

 そこで……という訳ではなく、雑談ですし他愛もないことかも知れませんが、私自身には何かやり遂げたような大袈裟な感慨が残ったので記しておきます。

 今回の話題はいわば後日談調のもので、前フリがあります。それを下敷きにしていますので、ご迷惑でしょうが下のエントリー2本をまず読んで頂けるとありがたいです。

 ●今年も、行きます。(2006/08/14)
 ●出口のない海。(2006/09/18)

 ……と、上記2本を読んで頂けたことを前提に本題に入ります。

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 ちょっと前、先々週でしたか、仕事の打ち合わせで飯田橋方面に出たので、例によって靖国神社参拝のあと、遊就館で零戦を眺めつつ海軍カレーを食べてきました。

 靖国神社は都心にありながら四季を感じられる場所のひとつで、しかも高層ビルが周囲に少ないため東京にしては珍しく仰ぎ見れば大きな空。その青空も秋の表情です。

 ついちょっと前まで蝉時雨だったのに、今ではイチョウが色付き始めて、並木の近くを歩くと銀杏独特の香りがしました。

 そのまま九段下から地下鉄で帰宅しようと思ったのですが、ふと思い出して、道を曲げてみることにしました。靖国通りからちょっと折れて、半蔵門方向へと少し歩いたところにある個人営業の地味な喫茶店。

 昨年の8月15日、靖国神社へ行った帰りにたまたま立ち寄ったら、息子夫婦と店をやっているお婆さんが「昔話ですけどねえ」と切り出して学徒出陣の壮行会に自分も見送る側として出た、などと話をしてくれた店です。

 若いころからそうなのですが、私はどうもお年寄りの昔話の聞き役にされてしまうことが多くて、オッサンになったいまでもそういうキャラのようです。

 ――――

 大ぶりなドアを開けてカウベルの音と一緒に店内に入ると、時間帯のせいもあるのですが、他にお客さんはいませんでした。

 例によってお婆さんが水を持って注文を取りにきてくれたのですが、私を見るなり、

「おや、あなたは去年の……」

 と、1年以上たっているのに私の顔を覚えていてくれたようです。当然ながら、そのとき話したことなども忘れないでいてくれているでしょう。私にとっては都合のいいことです。

 そのお婆さん、今回はいきなり昔話に入ることもなく注文を取ってアイスコーヒーを運んで来てくれたのですが、そこで例によって隣のボックスに腰を下ろしてしまい、

「あれからお変わりもなくお元気でしたか?私もあのあと、お参りに行ってきたんですよ」

 と雑談モードに入ってくれました。

 ――――

「今年も同じ時間に行ったんですけど、小泉首相の参拝とぶつかって、警官も人も多くて大変でした」

 と私。

「そう。ようやく8月15日に小泉さんが来てくれましたね。ありがたいことだなあ、と思いましたよ」

 とお婆さん。神社としては春と秋の例大祭に参拝することがフォーマルなのでしょうが、戦前・戦中・戦後と、いわば最も割に合わない時代を割に合わないタイミングで生き抜いてきた世代の人にとっては、8月15日の方が感慨深いのかな、と私は今年の終戦記念日にたまたま一緒になったお婆さんのことを思い出しつつ、そう考えたりしました。

「ところでね、お婆さん」

 と私は話したかったことを切り出しました。学徒出陣組を主軸に特攻兵器、人間魚雷・回天を描いた「出口のない海」という映画の話です。

「そういう映画をみてきました。神宮外苑の学徒出陣の壮行会の記録フィルムも流れました。すごい雨だったんですね。映画ではみんなズブ濡れになっていましたけど、お婆さんも大変だったでしょう?」

 と言うと、そうなんですよあの日は大雨でね、私は学生さんたちが勉強してる途中で兵隊にとられるのが可哀想で可哀想で、今でも不憫に思っているんですよ。……と身体を乗り出すようにしてお婆さんは「昔話」を始めました。勤労奉仕のこと、東京大空襲のこと、敗戦を知って皇居を望みつつ割腹自殺を遂げた人のこと……。

 ――――

 そのうちに、

「今でも8月15日にはね、靖国神社に昔の格好(軍服)をしてお参りに来てくれる若い人たちがいるんですよ」

 と言うのです。生き残ったお年寄りが軍服姿で整列する映像はニュースで流れたりします。その人たち全て、とは言いませんが、中には戦死していまなお若い姿のままの戦友に会いに来るために、当時と同じ軍服姿で向き合うのが自然であり、礼儀でもあると考えている人は少なくないでしょう。

 ただ若い人のそれはただのコスプレじゃないかと私は思っていたのですが、お婆さんのような捉え方もあるようです。

「あのときの学生さんたちね、大勢が戦争で死んでしまいましたけど、いまのこういうね、発展した日本を見せてあげたかったですよ」

 という沁みじみとした言葉でお婆さんは話を締めくくりました。……いやそれは反則技ですよお婆さん。そういうベタな台詞に私は滅法弱いので困るのです。

 ――――

 望むと望まざるとにかかわらず、戦争で散華された人たち。むろん、覚悟の据わっていた人も少なからずいたでしょう。

 でも、「心ならずも」と小泉前首相が表現していたように、赤紙1枚でいきなり日常生活から引きはがされて戦地に出され、思い悩みつつ、故郷や親しい人たちの面影を慕いつつ、亡くなっていった日本人の方が多かったのではないかと私は思います。

「発展した日本を見せてあげたかったですよ」

 という出征した人たちと同世代のお婆さんの言葉に、やっぱり現在とつながっているんだなあ、という思いを新たにした次第です。

 戦死した方たちでけでなく、銃後である日本本土で空襲などにより亡くなった人、それに沖縄やサイパン島や南樺太(サハリン)など、自分たちの生活の場がいきなり戦場に変わり、戦闘に巻き込まれて亡くなったり自決した人たちにとっては、「心ならずも」どころではないでしょう。

 そういう方々にも、経済大国と呼ばれるまでに復興したいまの日本を見てほしかったなあ、と私は思いました。そして、軍人・民間人を問わず、そういう方々のお蔭でいまの日本があり、私たちが毎日を送っていられることも。

「またお立ち寄り下さいね」

 とお婆さんに送り出されて喫茶店を後にした私は、ようやく何事かをやり遂げたという上手く表現し難い気持ちがある一方で、その孫の世代として、お婆さんの想いをどう受け継いで次世代につないでいけばいいのだろう、ということを考えさせられました。

 とりあえず、ここにそれを書き留めておきます。

 ――――

 やや関係のある話として、最後に「氷雪の門」という映画をお勧めしておきます。

 終戦直前、突如日本に戦線布告したソ連が、大部隊を以て日本の領土だった南樺太に攻め込んできます。8月15日を過ぎても攻撃をやめないソ連軍に対し、不意を打たれた上に上級司令部からの投降指令で思うように戦えない日本軍。混乱のなか戦火に焼かれる民間人。自らの純潔を守るために集団自決する看護婦たち。本土へ避難しようとした人たちが乗った北海道への船は国籍不明の潜水艦による魚雷攻撃で撃沈されてしまいます。

 そんななか、海に面した真岡という街で電話交換手を務めていたうら若き女性たちがこの映画の主人公です。戦争はこの街を見逃すことなく、8月20日(!)にソ連軍が上陸。市街戦が展開されるなか、電話交換手として残った9名の女性たちは、連絡が途絶えればいよいよ事態は混乱すると考え、個人的な事情を二の次にして、最後までその任務を果たそうとするのです。

 戦闘で次々と回線が切断されるなか、迫り来るソ連軍。もはやこれまでと覚悟した交換手は、最後に残った1本の電話回線に、

「皆さん、これが最後です。さようなら、さようなら」

 と呼びかけて回線を切り、9人の乙女は青酸カリで自決します。

 30年余り前の作品ですから、CG合成などの演出が浸透している現在の映画に比べれば派手さに欠けますが、淡々と描かれる悲劇が、淡々としているだけに迫ってくるものがあります。それからいまの日本人にはもうないような純朴さ、そして昔風の歯切れのいい日本語が良いです(ただ値段が8000円と高いのがちょっと……)。




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 えーと、「保釣運動」という極めて男性的な活動(笑)が中国にあります。香港にも台湾にもあります。それぞれの代表が一堂に集まって福建省・アモイ市で会議を開催したこともあります。

 むろん政治活動に属するもので、スポーツなどではありません。でもひょっとすると、参加者たちにとってはある種の被虐感を期待した「プレイ」なのかも知れません(笑)。

 「保釣」とは中国語でして、「保衛釣魚台」の略です。「釣魚台」とは尖閣諸島のことで、要するに尖閣防衛運動。当ブログでもときに取り上げていますね。有名なのは中国における反日サイトの総本山のひとつである「中国民間保釣連合会」。

 その会長は反日活動家の代表格・童増です。対日民間戦時賠償訴訟を十年以上支援している苦労人ながら「空気が読めない」「口が軽い」という致命的な欠点があり、それが一種の愛嬌になっています。糞青(自称愛国者の反日信者)が崇拝する珍獣(プロ化した糞青)ですから、さすがに頭のネジが数本飛んでいるのです。

 当ブログでもときに……と書いてふと気付きました。実は当ブログがスタートしてから保釣分子が船を出して日本の領海に入り、魚釣島に上陸を試みるといった活動は1度も行われていません。最近台湾の保釣分子が漁船を出したものの、台湾当局の妨害などもあり(GJ!)日本の領海前で大人しく引き返しています。

 いや、台湾は船を出せただけマシです。中国の保釣分子は出港準備にとりかかると、毎回なぜか屈強なる武装警察のお兄さん方がわらわらと湧いて出てメンバー全員をがっちりと拘束。抗う手合いは電気警棒でビリビリ。

 保釣分子はその都度「不当逮捕だ」なんてネットで騒いでいますけど、そうやってバーチャルな空間で吠えていた方が連中の身のためでしょう。

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 つまり中国本土からはこの2年以上、保釣分子による船出は行われていません。正確には当局が圧力をかけて有無をいわさずに押さえ込んでしまうのです。

 政治的な流れを反映しているから、といっていいでしょう。「中国民間保釣連合会」のような民間を名乗る組織が領土問題という政治的な活動を展開できるのも、強力な政治的保護者がいるからです。以前のように船を出せなくなったのは、その後盾が凋落傾向にあることを感じさせます。

 まあ船を出しても日本の海上保安庁が手ぐすねをひいて待ち構えていますからね。あのボロ漁船を左右からはさみ込む神業ともいえる操鑑技術は旧帝国海軍の第二水雷戦隊を彷佛とさせます。そうなるともう身動きがとれなくなって保釣分子はすごすごと退散(海保の皆さんいつも本当にありがとうございます)。

 思い知ったかザマーミロ、てなもんですが、中国側にしてみればいつもいつも公開処刑されている訳で、その映像などを「中国民間保釣連合会」が公開すると糞青が切歯扼腕します。ええ、それ以上のことは何もしませんし、できません。デモひとつマトモに打てないことは、昨春の反日騒動で実証されています。

 ――――

 当局が船を出させないもうひとつの理由として、軍部の士気にかかわるということがあるでしょう。公開処刑されるたびに、

「海軍は何をしているんだ!」

 という非難の書き込みが大手掲示板に相次ぎます。実際には日本が海上保安庁で対応しているように、中国も海軍が扱う仕事ではないのですが、やはり士気には響くでしょう。

 だから今度船を出すなら巡視船の護衛つきか、あるいは本当に軍を出動させて奪回作戦を行うか、ともかく魚釣島に上陸して中国側が実効支配する状況まで持っていかないと面子にかかわるでしょう。

 でもこの21世紀に、しかも五輪開催を控えている中共政権にそんなことできませんし、外貨依存率や海外市場への依存度が極めて高い経済構造ですから、経済制裁でもされたらたちまち失血死。米国も尖閣諸島を「日米安保の担当する区域内」としています。だから押さえ込むしかないのだと思います。

 ところが残る香港の保釣分子が動きました。本当は8月15日に出港予定だったのが中国当局の妨害(たぶん)で延期を余儀なくされたボロ漁船「保釣二号」が昨日(10月22日)、香港から尖閣諸島を目指して出港したのです。

 延期の経緯についてはこちら。

 ●どうしていま尖閣?(2006/06/13)
 ●速報:基地外香港人の尖閣上陸計画が中止に?(2006/08/08)
 ●続報・尖閣問題。(2006/08/10)

 同船には中国本土からの参加者も多数加わる予定だったのですが、中国当局が出境を阻んだことで大幅減。ともあれ現地まで3日間の行程だそうです。

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 さてこの香港の連中「香港保釣行動委員会」ですが、「基地外」を冠したように、純粋な保釣分子ではありません。

 靖国で騒ぎ、軍票で騒ぎ、慰安婦で騒ぎ、民間戦時賠償で騒ぎ、さらには天安門事件(1989年)の名誉回復を叫び、普通選挙制の導入など民主化でも暴れるといった騒ぎ屋集団です。最近はラジオの地下放送局を稼働させた咎で有力メンバーが警察に連行されたりしています。

 なぜ騒ぐのか。それもなぜマスコミのいる前でないと騒がないのか。……選挙運動だからです(笑)。実際にこうした騒ぎ屋の代表格である「長毛」こと梁国雄が前回の立法局議員選挙で上位当選を果たしています。その「長毛」が議員になった後も有権者の期待に応えて騒ぎに騒いでいることは以前紹介したことがありましたね。

 ●香港は燃えているか?・上(2005/10/25)

 そして、今年船を出すことにこだわるのは十周年だから。10年前の1996年に船を出した際は、日本の領海に入ったところで海保の巡視船に包囲されて進めなくなったため、よせばいいのに船長以下が止めるなか、総指揮官が「あとは泳ぐ」と言って命綱をつけて青い海へとジャボン。……と飛び込んだはいいものの、高波にビビッて引き上げてもらおうとしたら命綱が首に絡まってキューッと哀れ御昇天。さすがは命綱だ、なんて言ってみたりして(笑)。

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 この1996年当時というのは英国統治の末期も末期。あの天安門事件を平然とやってのけた中共政権への返還を翌年に控え、不安感や閉塞感が香港社会に充満していました。

 そんなときに起きた保釣運動(選挙運動)に対して、香港を挙げての支援が行われたのです。不安や閉塞感を香港政庁にも中共政権にも睨まれる心配のない「保釣」で紛らわせたかったのだと思いますが、反日デモなどもあって当時現地在住だった私は非常に嫌な思いをしました。

 華字紙は海保を「海軍」、巡視船や巡視艇を「軍艦」と虚報を飛ばしましたし、運動に批判的だったり冷静な視点からこの騒ぎを捉えようとしたコラムニストたちは叩かれ、非難され、編集部によってコラムを潰されるという言論封殺まで行われました。幸い私はACG系(ゲーム・アニメ・コミック)ですから無事でしたけど。

 ●香港で経験した「保釣運動」の馬鹿さ加減。(2004/08/04)

 上の方に張ったリンクでもわかる通り、2006年の香港市民は保釣運動には実に冷ややかで、資金カンパも目標額に届かないていたらく。船出する方も主要メンバーがケガで欠けたりしてノリはいまひとつ。頼みの「長毛」は船に弱いとのことで尖閣諸島により近い台湾から乗船するという情けなさです。

 上海閥あたりの反撃?と勘ぐれないこともありません。せっかく盛り上げた日中友好ムードがこの挙でブチ壊しになるかも知れないからです。少なくともプラスには働かないでしょうし、中共政権にしてみれば日本側に借りをつくることになります。

 ただ、もし上海閥~海外の華僑というラインで動いたのなら、資金が満足に集まらなかったという情けないことにはならないでしょう。これで胡錦涛の足を引っ張るなんて作戦にはちょっとみえません。

 ――――

 ともあれ流した汗にアリがたかるという噂?の劉建超・外交部報道官が尖閣諸島の領有権を主張しつつ、

「中国側の『保釣』人員の行為に日本側が冷静に対処し、中国側の船舶や人員に危害を及ぼさないよう強く要求する」

 なんていう及び腰の声明を発表しています。強く要求する前に自分で始末したらどうなんだデブ。

 ●「新華網」(2006/10/22/17:56)
 http://news.xinhuanet.com/world/2006-10/22/content_5235185.htm

 まあ水曜日(10月25日)がヤマ場になるそうですからひとまずワクテカということで。前にも書きましたけど、私はわざと上陸させて、陸に上がったところを逮捕、というのがいいのではないかと。前回みたいに強制送還なんてヤワなことをせず、逮捕・送検・起訴・裁判・有罪判決と日本の司法のプログラムをこなさせれば、中国側の敗北感はいよいよ強まるのではないかと(笑)。

 それにしても不思議です。そもそも日中間には領土問題など存在していないのに、なぜ騒ぐのか。不思議です。基地外香港人の空気の読めなさ加減は毎度のことなんですけどねえ。

「今回は水上バイクという秘密兵器が」

 とか報じられていますけど、明らかに外海を舐めてますね。でも、保釣分子や騒ぎ屋はやっぱりそのくらいでないといけません(笑)。

 http://hk.news.yahoo.com/061017/12/1utn4.html
 http://hk.news.yahoo.com/061022/60/1v1ma.html
 http://hk.news.yahoo.com/061022/12/1v1m9.html
 http://hk.news.yahoo.com/061022/12/1v1ru.html
 http://hk.news.yahoo.com/061022/60/1v24q.html
 『蘋果日報』(2006/10/18、2006/10/22)




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 きょう10月22日は中共にとっては「紅軍長征勝利70周年」だそうで、北京で記念展示会が開かれています。

 大がかりな記念式典も開催されて胡錦涛が重要講話なるものを発表。江沢民以下先代及び現在の国家指導者が勢ぞろいですから相当な格式ですね。もしここに自爆テロが立て続けに突っ込めば中共指導部は壊滅。さすれば中国は即割拠状態に移行、てなことになるのでしょうか。ああでも朱鎔基だけは助けてあげたいです。

 さて、「長征」って何?と聞かれても答に窮するのですが、要するに国共内戦で国民党に連戦連敗し、気息奄々たる毛沢東以下中共の面々が、敗走に敗走を重ねて延安にたどりついたのが70年前の10月22日、ということでしょう(たぶん)。

 要するに老耄たる中共は、敗走また敗走という苦い思い出を歳のせいで美しい記憶に仕立て直してしまっているのでしょう。「反右派闘争」(1957年)、「大躍進」(1957年)、「三年困難」(1959-1961年)、「文化大革命」(1966-1976年)……などはまだ生々しいイタすぎる思い出なのでしょうか。

 それとも都合の悪いことは忘れてしまうとか?だから今年は文革発動40周年、四人組(文革という権力闘争の主導グループ)逮捕30周年記念なのですが、一切スルー。来年は「反右派闘争」と「大躍進」の50周年記念ですが、やっぱり無視されるのでしょうか。

 もちろん「天安門事件」(1989年)などは思い出というより昨日起きたばかりのような消し去りたい記憶な訳で、その証拠に中国の歴史教科書のどこにも出てきません。ちなみに中共の植民地になった香港の教科書もスルーしています。

 さて、この「長征」という名の敗走に次ぐ敗走の挙げ句たどりついたのが陝西省・延安市。現在では革命聖地とされています。この延安に行き損ねたのがいまでも悔いとなって私の中にあります。

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 昔話なのですが、上に書いた天安門事件が6月4日。当時私は上海に留学しており、事件のあおりで日本の大学から「帰国せよ」との強制命令。私は残っていたかったのですが強制命令とあらば仕方がありません。ブーブー文句たれながら日本に戻りました。

 9月の新学期前に再び上海に戻ったのですが、ここから帰国する3月までは民主化運動の反動でものすごい政治的引き締め策が敷かれました。その両方を実見できたことはいまでも貴重な体験です。

 それはともかく、本科生ではなく語学研修課程にいた私は新学期とともに困った事態に陥りました。6月までの前半期、私は当然ながらレベルの一番高い「高級班」に所属していました。これは自慢でも何でもありません。

 私にとって留学は、上海が改革・開放で古いカサブタをどう剥ぎ取り新たな何事かをどう建設するのか、それを眺めるのが本来の目的だったのです。当然ながら、中国語は留学以前に基本を仕上げていました。

 その私が中国人と会話しているのを見て、私より先に1年間留学して帰ってきた同級生たちが「どうして?」と驚いていましたが、技術としての語学修行などは別に現地に行かなくても、現地に行く以上にいくらでも磨き上げることができます。

 ――――

 それはともかく、問題はそれまで高級班を構成していたメンバーが6月で留学期間を修了してしまい、残ったのが私だけとなってしまったことです。学校側も苦慮した挙げ句、母国では中国語を教えているという外国人留学生6人だか7人を無理やり高級班に組み入れたのですが、この連中がこれまたお粗末で、中級班に入れるかどうかという実力。

「冗談じゃありませんよ。こちらはお金を払ってここに来ているのに、このひどい扱いはなんですか」

 と学校側(留学生弁公室)にねじ込んだところ、

「わかった。じゃあお前は特例。本科生の授業に出ていい」

 と願ったりかなったりの状況になりました。

 ところが、運悪く今度は私の方が体調を崩して授業に出られなくなってしまいました。

 ほどなく元気になったのですが、学校側が「授業に出ろ」と言ってこないのを幸い、1カ月ほど内陸部を回る旅行に出ました。旅行といっても私は大真面目で、天安門事件の戦跡めぐりや内陸の経済的疲弊ぶりを実感できるかどうか試みたかったのです。

 さらに、引き締め政策に一転した状況下での庶民の「ここだけの話」を聞きたいという思いもありました。

 ――――

 振り出しは上海から西安への寝台列車です。私は寝台車なら一度は「軟臥」(1等寝台:4人1部屋のコンパートメント)に乗ってみたくて、それなら旅慣れない最初がいいだろうということで、この西安行きの寝台列車だけ「軟臥」に乗りました。

 当時の中国人にとって「軟臥」はある程度の地位にある上に職場などに手配してもらえない限り切符が手に入らないものでした。私のコンパートメントも60歳くらいの大学教授と、母娘とおぼしき知識人という組み合わせでした。列車は午前中に上海を発って安徽省に入ったあたりで日が暮れ、熟睡しているころに黄河を越えてしまいました。

 驚いたのは翌朝です。通路の椅子に腰掛けて一服しようとコンパートメントから出てみたところ、風景が一変していました。乾燥した空気に乾いた赤土。灌木などありはしません。やせ細った牛を引く年老いた農民。この環境でどうやって生活していくのか、私には想像できませんでした。

「いや、ここはまだいいんだ。こうして線路が通っているのだから」

 と、面食らっている私に、やはり通路に出てきた大学教授が言いました。

「君は西安に行くそうだね」

「はい」

「もし時間があったら、延安まで足を伸ばしてみるといい。西安から長距離バスが出ているから。……延安を知っているね?」

「はい。あの……確か革命聖地だったのでは」

「そう。革命聖地だ。その聖地がどういう有様なのか、観に行くことは君にとって無駄にならない筈だ。あそこはひどい。長征のころから何も変わっていない」

 と、大学教授が教えてくれました。語気が憤慨の気配を帯びています。私にとってこの旅行で初めての「ここだけの話」でした。

 私は西安をひと回りしたあと、その延安へ行ってみようとしました。ところが、長距離バス乗り場まで行ってみたのですが都合のいい便がなく、結局あきらめて切符をとってあった成都行きの寝台列車に乗り込む破目となりました。

 その後、宿泊先では必ず民主化運動の落ち武者狩りで「査房」(お部屋改め……て古いか。警官による抜き打ちの室内チェック)に出くわしましたが、今度は「硬臥」(2等寝台)の列車を乗り継いでいくなかで、「ここだけの話」をたっぷりと仕入れることができました。最後は重慶から上海へと三峡下りの船旅です。この旅行記はいつか文章にまとめようと思いつつ、つい忙しさにまぎれて未だに手付かずになっています。

 ――――

 ああ「紅軍長征勝利70周年」の話から随分流れてしまいました。この展示イベントは中央の指導者や先代の国家指導者が見学に訪れ、何日か前に胡錦涛が訪問したことを新華社が報じていました。

 胡錦涛の写真が添えられていましたが、いつもの無表情からワンランクダウンのヤル気のなさそうな疲れたような顔つきが印象的でした。

 そのあとは江沢民以下の先代の指導者も久しぶりに揃って姿を現しました。上海閥の次世代有力者・陳良宇をバッサリと斬られ、上海そのものも胡錦涛サイドの手に落ちつつあることで注目された江沢民は、春に母校・上海交通大学を見学したときに比べると痩せて頬がこけた印象です。

 で、胡錦涛のときも江沢民一行のときも中央電視台(全国ネットのテレビ局)のニュースが報じました。ところが胡錦涛のときカメラは胡錦涛のみを追い続けたのに対し、江沢民一行は老人たちの群れを映すのみで、江沢民単独のカットはなかったそうです。

 ……とは、きょう(10月22日)の香港最大手紙『蘋果日報』の報道。この観察ぶりにはGJ!と言ってあげたいところです。

 ――――

 さて、標題の件です。胡錦涛率いる党中央は「七・七」「九・一八」といった抗日記念日をいつもよりサラリと流し、小泉首相による「八・一五」靖国参拝への反発も抑制されたトーン。

 そして3月には「日本の指導者が靖国参拝をしなければ」という前提条件がついていたのに、今回はその前言を翻し、すんなりと安倍首相との首脳会談を実施しています。この間、民間反日組織の活動は力づくで押さえ込まれました。

 陳良宇を血祭りに上られるだけの主導権を握ったこととも関係があるでしょうが、ともあれ胡錦涛が対日強硬派など敵対政治勢力からのくびきからようやく脱したことを示すものだと思います。

 こうなると、2004年9月に発足した胡錦涛政権がダメ出しをされて路線転換を余儀なくされるまでの3カ月間、つまり胡錦涛カラーが出ていた最初の3カ月を振り返っておく必要があると思います。

「おれは昔の歴史を言い立てたりはしない。未来志向で現実的に、実務的に、合理的にやろう。でも首相が大っぴらに靖国神社へ参拝するのには反対だし尖閣諸島はウチのものだし、あと沖ノ鳥島は島じゃないから、そこんとこよろしく」

 てなところでしょうか。今後「対日新思考」で話題を呼んだ馬立誠論文の線までハードルを低くするのかどうかはわかりませんが、江沢民のように「日本には絶えず歴史問題を言い立てろ」といったヒステリックさがないのは事実。

 政権発足と同時に反日サイトに鉄槌が下ったことも忘れてはなりません。最近では保釣運動(尖閣防衛運動)の記念イベントのため香港に入ろうとした活動家が入境拒否に遭っています。

 ……で、こういう胡錦涛スタイルが「愛国主義教育」にも出てくるのではないか、というのが私の見方です。

 ――――

 先代の江沢民がやった悪名高い「愛国主義教育」は反日風味が満点でしたが、あれは江沢民自身のヒステリックな(例えば彼女を日本人に寝取られた過去でもあるかのような)反日傾向に加え、天安門事件で中共の求心力が地に墜ち、またソ連や東欧の社会主義政権が次々に崩壊していった時期でもありました。

 このため社会主義の代わりに民族主義を持ち出して団結を訴え、同時に仇役(日本)を設定することで国民の中共に対する憎悪の視線を外に向けようとした、それが江沢民型「愛国主義教育」の背景です。

 ところが胡錦涛政権にはそういう切羽詰まった事情はなくて、でもその代わりにトウ小平と江沢民がやってきた20年余の「改革・開放」政策の負の遺産、様々な格差や汚職の蔓延といったより困難な課題に直面しています。

 これは胡錦涛政権発足当初から当ブログでは再三再四強調していますが、準戦時態勢ともいえる強権政治を敷いた上で構造改革を断行し、負の遺産を取っ払う荒療治を一気にやってしまおう、というのが胡錦涛政権のテーマなのではないかと思います。

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 だから胡錦涛型「愛国主義教育」では日本を殊更に仇役にする必要はないのです。むろん日本を悪者にすることが全くなくなる、ということはないでしょうが、軸足はむしろ国内に移されるでしょう。いわば
「鬼畜米英」ではなく「ぜいたくは敵だ」の方に重きを置くものです。

 その証拠、といえるかどうか、胡錦涛が愛国主義教育を語るときはまるで道徳の先生か生活委員長のようなもので、例えば大学生に対しては「風紀粛正」、党員に対しては「雷鋒に学べ」型の最近のケースをモデルに、わが身を犠牲にしても党と人民を守る精神が強調されています。

 それから子供にもわかりやすい「こういうことをやったらいけない」という「八栄八辱」つまり「社会主義栄辱観」などは道徳教育そのものです。春先には「紅色旅遊」といって、党の史跡をめぐる視察や旅行が奨励されたりもしましたね。

 そして今回の「紅軍長征勝利70周年」。これも「鬼畜米英」ではなく「ぜいたくは敵だ」の系譜に連なるものと捉えていいかと思います。「偉大なる先輩たちの克己心に学べ」といったところでしょうか。

 今後の「愛国主義教育」はそういう胡錦涛路線にシフトしていくだろうというのが私の見方です。「愛国主義教育」が報じられたとき、その内容が「鬼畜米英」なのか「ぜいたくは敵だ」なのか、注意してみると面白いかと思います。




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 標題通りの【補遺】であります。前回の内容で私が言及を避けた部分に「Teru」さんから早速ツッコミを頂きました。

 軍部については「下からの立ち腐れ」に対し、その状況によってリアクションが流動的になる可能性が強いので話題の外に放置しておいたのですが、正面から斬り込まれてしまえば受けるしかありません。

 ……いやそれほど大袈裟な話ではないのですが、まずは以下に「Teru」さんから頂いたご質問を掲げておきます。

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人民解放軍については (Teru) 2006-10-19 16:29:56

 下からの立ち腐れ、との見解基本的には賛成です。しかし、その際、人民解放軍が果たす機能についてはどう思われますか?現在の中国に立ち腐れを決定的に後押しする層や集団がそれぞれに力不足の中、その(潜在)力を持つ解放軍が何らかの決定的な役割を果たす可能性について考えています。ご意見伺いたくお願いします。

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 以下は私の回答……になっているかどうかわかりませんけど。

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>>Teruさん

 厳しいご指摘、本当にありがとうございます。軍の役割というのは確かに重要なのですが、流動的とでもいいますか、状況によって動き方がかなり変わってくるので「下からの立ち腐れ」という大きな流れの中でのポジショニングを定めることは敢えて避けました。

 とは、「下からの立ち腐れ」が同時多発的なものなのか、あるいはどこかの地区が突出するかで人民解放軍の選択肢は変わってきます。

 地元の弾圧に手を貸したくないという現場の意向、また後にしこりが残ることを懸念した高級司令部の判断から、人民解放軍は天安門事件(1989年)でも四川省・漢源農民暴動(2004年)でも他の地区の部隊を投入した、とされていますね。

 ですから仮に軍の出動が必要とされた場合、一か所の蹶起に対しては外地の部隊に鎮圧させれば済みますが、「下からの立ち腐れ」が一種のトレンドとなって同時多発的あるいは頻発するような状況になると、現場への部隊輸送ひとつとっても容易ではないため、対応が難しくなります。これがひとつです。

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 もう一点、人民解放軍は「大軍区」の下に各省ごとの「省軍区」というものがあります。その下がどうなっているのか私は勉強不足でわからないのを恥じ入るばかりです。

 ただ常識的にいって、この省軍区にしても傘下の部隊が全てひとつの駐屯地にまとめられているということはない筈です。

 ですから、状況次第では「省軍区」をすっ飛ばして、あるいは「省軍区」の指揮系統に混乱が生じて部隊指揮官ごとに帰趨を決めなければならないケースが出てくる可能性があります。これも「下からの立ち腐れ」の展開次第によるところが大です。

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 ところで、公安部と中央軍事委員会に両属する武装警察(武警)は準軍事組織であり、その任務は主に国内の暴動鎮圧とはいえ、突撃銃なども装備しており、「警官の制服を着た歩兵」と言っても過言ではありまんせん(軍同様に少将、中将といった階級もあります)。

 官民衝突報道などから察するに、武警は県当局あたりに前線本部があって、鎮ごとの出張所に少人数の部隊を置いてあるようですが、人民解放軍はどうなのでしょう。

 暴動事件の報道にあたると、武警はすでに地元当局の私兵化している雰囲気を漂わせています。特に地元当局にとっては最も容易な金儲けの方法である「土地強制収用→ダムや開発区を建設」といった動きの中で、移転を強いられる住民が抵抗すればその鎮圧役を務めるような役回りになっています。

 ひとつには「金儲け」の点で癒着しているところが大きいのでしょう。こうした「武警の私兵化」が決して絵空事でないことは、暴動記事だけでなく、年初に紹介したエントリー、武警トップによる所信表明論文から察することができます。

 ●武警はバラけて乱れつつある模様。・上(2006/01/06)
 ●武警はバラけて乱れつつある模様。・下(2006/01/07)

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 私は「下からの立ち腐れ」が起きた場合……というかすでに起きているのですが、第一段階としては農村の武装化から小競り合いや離合集散を重ねて、結局は県レベルでまとまるのではないかと考えています。

 これは北京や上海に出れば「広東人」「四川人」などと分類され、当人もそういう意識になるので別ですが、地元住民の郷土意識なり地縁なりといったものは、せいぜい県レベル、あるいはそのワンランク上の行政組織である市レベル(一級市)あたりまでではないかと思うからです。

 それから武警だけでなく、民兵というものもあります。地元の予備役で編成された部隊のようなものですが、武器庫を開けてみると装備はなかなか豊富で、高射機関銃やら携帯用地対空ミサイルなどもあります。迫撃砲などがあっても不思議ではありません。

 ●人民よ、いざ銃を執れ!(2005/02/01)

 こういう民兵やすでに地元当局の私兵化している色彩の濃い武警が合流してくれば、暴動どころではない戦力を有することになる訳で、これに人民解放軍がどう対応するかは前述した通り、どこかの地区が突出した形での「下からの立ち腐れ」であれば、胡錦涛を主席とする中央軍事委員会からの命令、つまり通常の指揮系統によってその鎮圧に臨むことになるでしょう。

 ただ「下からの立ち腐れ」がひとつのムーブメントになってあちこちで起きるようになったとすれば、恐らく省軍区でも傘下の部隊をしっかりと掌握することは容易ではないと思われます。各地に置かれた駐屯地と、その地元当局の関係が優先されて、部隊指揮官が独断専行に走る可能性もある、ということです。

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 以上は陸戦を想定しての話です。暴動というより「乱」という方がしっくりした表現かも知れませんが、その鎮圧に空軍が乗り出したり戦闘ヘリが投入されるようだと、もはや国際社会も黙っていないのではないかと愚考する次第です。

 ちなみに副作用として、こうなってしまうと外資は逃げるしかないでしょう。

 外資と中国の双方に痛みがあるでしょうが、それを放置しておけば、外資依存度の高く、市場も内需より輸出に頼っている中国経済が痛みどころか失血死することになると思います。

 あぼーんです。それでは混乱を招くということで、国際社会の介入はそうなる前の段階で行われると思います。

 まあお伽話ではありますが、現時点の私ならそういうストーリーを紡ぐことになります。




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「上」の続き)


 前回も紹介しましたが、今年当ブログで取り上げた暴動ネタは下記の6件です。

 (1)調和社会に祝砲一発、激闘武装農民。(2006/02/05)
 (2)またまた広東省で官民衝突、謎の4死6傷事件。(2006/02/14)
 (3)河南省で五千人規模の学生暴動、キャンパス内外を廃虚に。 (2006/06/19)
 (4)お元気ですかあ?>>中共政権。(2006/08/01)
 (5)湖南省で住民同士の衝突が暴動に、武警発砲で死者100名?(2006/08/07)
 (6)瀋陽事件に急展開、その可燃度や如何に?(2006/08/24)

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 このうち(2)はあるいは少数民族問題が絡んでいるかも知れない官民衝突。(3)は当ブログのいう「21世紀型学生運動」ですが、学生が騒ぐ理由は社会(市民)の強い共感を得るには力不足。

 (4)は宗教に対する「官」の横暴という珍しいものですが、これは一応全国的に横のつながりを有している信者の組織がよほど思い切らないと抵抗力にはなりませんし、また宗教問題だけに広範な社会の共感を得るのはちょっと難しいように思います。

 そして(6)は昨春の反日騒動の亜種ともいうべきものですが、亜種ながら(2)(3)(4)(6)の中では最も可燃度が高いといえます。ただそれだけに当局の対応も素早く、すぐに鎮火してしまいました。

 ……で、残ったのは、

 (1)激闘武装農民
 (5)湖南省で住民同士の衝突が暴動に

 の2件です。この2つのケースに関しては、書いているときは合戦を活写するノリで筆の滑りもよかったのですが、書き終えてしばらく眺めていると、「立ち腐れ」としてはかなり深刻な状況の具体例ではないかと思えてきました。

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 私が年初に「今年のトレンド」と予測したら早速起きてしまった「激闘武装農民」ですが、これは官民衝突ではなく村同士の争い、つまり境界線や水争いをめぐって村と村が衝突する中国の伝統的な「械闘」といえます。「官民衝突」ではなく、「民vs民」であることにまず注目しなければなりません。

 さらにリンク先に飛んで頂ければわかりますが、ここには手製爆弾はともかく、ライフル、防盾、戦闘服、鉄兜といった火力を伴う強力な官製装備が登場します。これらを一体どこから調達したのか、あるいは戦闘員に現職の武装警察などが含まれていて自前の装備を利用したのか、その武装警察などにしても村の出身者を中心に参加したのか、あるいはカネを使って傭兵をかき集めたのか。

 ……謎は尽きませんが、村落同士の争いに火力が用いられたという点は見逃せません。まさに「武装農民」であり、それも自らの村落の権益を守るために「民vs民」の争いが行われたというのが重要です。これは広東省のケースですからたまたま香港メディアの可視範囲だった訳ですが、似たような事例は各地で発生しているのではないでしょうか。

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 銃器のブラックマーケットが摘発されることもあれば、広州市の警官が試験的に拳銃を携行するようにもなりました。加えて闇炭坑開発のために火薬は有り余るほどあり、私蔵していた火薬が変質して大爆発、という事件もしばしば起きています。

 治安の悪化、と一言で片付けていいものなのか、どうか。「官vs民」であれ「民vs民」であれ、中共が確立したピラミッド型の統治システムが末端で破綻し、村落レベルでは村ごとに武力を有することによる「自衛化」が始まっているように思います。

 「官vs民」でも「民vs民」でもいい、自分たちの村落が脅威にさらされたら持てる武器を頼みに一戦交える、ということです。

 その進化系かも知れないのが、

 (5)湖南省で住民同士の衝突が暴動に

 です。元からの住民とダム建設で移転して来た住民との反目が衝突に発展し、移転住民側は棍棒や刀といった伝統的な得物のほかに手製銃器を天に向けて打ち鳴らしては士気を煽っていたようです。

 「進化系」かも知れないというのは、ここでは移転住民側が武装し、火力を有しているだけでなく、一種の「土匪化」ともいえる気配を漂わせていることです。

 興味深いのは、元からの住民が「土匪」となった移転住民の殴り込みを受けたあと、「お前らはどうして黙ってみていたんだ」とばかりに公安局(警察署)に押し掛け、たまたまそこにいた県のトップを半ば袋叩きにしている点です。

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 この事件は情報が錯綜しており確報といえるほどのものがないのですが、引き上げた移転住民に対し、県当局のひとつ上の市当局から武装警察が出動し、人民解放軍が周囲に展開した、ということです。

 軍はともかく、市当局からの武装警察派遣は行われたようですが、これによって「県レベルの暴動は県の警察力では押さえ込めない」という事実がはからずも明らかにされてしまっています。暴徒化して公安局に押し掛けた地元住民たちも、県当局の意外な弱さに逆に驚いてしまったかも知れません。

 自らを保護すべき「官」が頼りにならないとわかれば、こちらも自衛のため自前で武装するしかない、ということになるでしょう。

 猟銃ならともかく、ライフルや鉄兜や防盾そして手製の手榴弾。……農民が武装すること自体違法なのではないかと思うのですが、現実にはそれが半ば公然と行われています。それに対し、行政当局はおいそれと手を出せず、刀狩りを行う度胸もなく、結局は黙認してしまっている。

 ただ騒ぎが大規模なものになれば上級部門の警察力にすがりはしますが、このあたりの機微に中共の統治システムが末端で破綻しつつあり、小作制の廃止・土地改革などで本来中共にとって最大の支持基盤であった農民が、中共政権に愛想をつかし、……まあそこまで深く考えていないとしても「もう自衛するしかない」という気分が広がりつつあることは重要だと思います。

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 こうした村落レベルでの争いや官民衝突が鎮レベル、県レベルと次第に統合されて大規模な武力集団となっていく(県が重要な柱になるのではないかと思います)。……その過程で地元意識の強い武装警察や民兵が合流する可能性もあります。

 つまり上層部の反目からの分裂ではなく、末端組織から発した混乱を国家指導部がうまく処理することができずに結局はそれが政権にとって致命的なダメージになる、ということです。

 天安門事件(1989年)当時に比べれば中共当局による統治システムもかなり巧みなものになっています。とはいえ、中国の過去の例でいえば流民団の蹶起を発端に全国各地で内乱が発生し、易姓革命に至るというケースは少なくありません。

 現在の中国でいえば失地農民や失業者がその日暮らしの境遇に墜ちているという意味で流民団に相当するかも知れません。そうでないとしても、村落単位での武装化、自衛の動きが始まっているということは重視すべきではないか、と私は考えます。

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 以下はお伽話の世界です。

 仮にこのような末端からの動きで荒れるとする場合、指導部が真っ二つに割れたり軍区ごとの衝突が発生したりする「分裂」に比べれば時間はかかります。胡錦涛の次の代あたりまでは中共が政権を維持していられるかと思います。

 ただいずれにせよ、核兵器の管理という問題がありますから混乱した事態になれば国連ないし多国籍軍の介入が行われることになるでしょう。

 清朝末期の「義和団」に対する「八国聯軍」(義和団事件に対する列強の八カ国連合軍)ほど深刻な事態になるかどうかはともかく、毎日中共国内メディアの記事に接していると、私は「上からの分裂」よりも「下からの立ち腐れでバラける」にリアリティを感じます。

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 そして結語。

 私は十数年ぶりにチナヲチ(中国観察の真似事)を再開した際、官民衝突の続発という事態が非常に衝撃的でした。天安門事件に象徴され、私も現地で体験した1989年の民主化運動は結局のところ学生・知識人による政府への異議申し立てであり、市民は応援団になることはあっても積極的に運動に参加するケースは稀でした。

 ところがチナヲチを再開してみたら、その市民や農民が立ち上がって「官」に抗っているではないですか。そのことがひどくショッキングで、中共はもう長くないのではないかという感想が湧きました。

 ……ただそれから現在に至るまでの2年余りで、格差の拡大した社会情勢、浮き世離れした大学生、民主化運動での挫折で牙を抜かれてしまった観がある若手知識人(私と同世代)、といった風景を眺めるにつれ、現時点では上述したような見方になっています。

 とはいえ、党の重要会議「×中全会」といえば、現実を基礎にしてバラ色の未来を描いてみせるのがお約束だったのに、2004年の「四中全会」(党第16期中央委員会第4次全体会議)では「執政能力の向上」(下手な統治をすれば国民によって中共が追い落とされる)、そして「五中全会」(2005年)と今年の「六中全会」では格差の是正を主眼とする「和諧社会」(調和社会)の実現を呼号せざるを得なくなったほど、中共政権が追いつめられてしまっていることは確かです。

 ともあれ、「擁胡同盟」(胡錦涛擁護同盟同盟)vs「反胡連合」(反胡錦涛諸派連合)、胡錦涛サイドによる上海閥有力者の掃討戦、あるいは「中央vs地方」といった対立軸が注目を浴びる中で、

「武装化による村落単位の自衛力強化」

 かつまたそうした末端レベルでは官民衝突とともに、火力まで使用する「民vs民」という新世紀型「械闘」、あるいは土匪化の萌芽ともいえる現象が出て来ていることには注意を払う必要があると思います。




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 前回は失業の話をしているうちに暴動に話題がすり変わってしまいました。私が確信犯的にすり変えたといってもいいのですが(笑)。

 いや、今回の話を一度書いておきたかったのです。

 前回は大学新卒者のケースを引き合いに出しましたが、労働人口が雇用機会を上回るというのは恐らく大学新卒者だけではないでしょう。大卒者ばかりに光が当てられますが新卒者は毎年500万人にも達せず、以前に比べれば人数が大幅に増えたことで「劣化」しているものの、少数派であることに変わりはありません。

 そうした大卒新卒者が「卒業即失業」となったとき、ニートになったり就職活動を続行したりします。そういう境涯に落ちないように、卒業前に党が強力に勧誘している志願制の「田舎で村幹部に就任」という前途真っ暗の人身御供を泣く泣く選択して地方に下る学生もいます。

 「前途真っ暗」とは、田舎の村の幹部を振り出しにどこまで這い上がれるかなぞ、多寡が知れているからです。例えば「白領」(ホワイトカラー)と比較すれば、社会人としてのスタート地点から埋め難い格差がついてしまうことは言うまでもありません。ても「白領」になれる可能性は低く、親のスネをかじられるだけの余裕が家庭になければ、この道を選択するなり、自分の目標からは遥かにレベルの落ちた職場に身を委ねるしかありません。

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 ニート組と就職活動続行組は要するに親のスネをかじっている訳ですが、平均的市民の家庭であればスネについている肉なんて大したものではないでしょう。ただ一人っ子政策で幼少の頃から子供大事で蝶よ花よと育ててきている親、またそういう育てられ方をした子供による一種のもたれ合いが、中国レベルもでニートを出現させる土壌になっていると思います。

 それから、就職難は何も大卒に限られた問題ではないでしょう。高卒以下とか出稼ぎ農民、リストラされた中高年、それに失地農民(当局による土地収用で耕地から引きはがされた農民。金銭などによる補償はあるものの、往々にして生活レベルが悪化する)でも多少の差こそあれ、似たような状況にあるのではないかと思います。

 で、これら失業者が都市部における暴動予備軍となります。都市暴動といっても、なにも「就業難」が発端である必要はなく、「反日」とか「汚職」とか「土地強制収用」「党幹部の目に余る振る舞い」ひいては漢族vs回族といった「民族衝突」など、「祭」の原因は何でもいいのです。

 そういう騒ぎが起きたときに、チンピラや失業者が鬱憤晴らしや「官」への恨みつらみを散じるために、いつの間にかこの連中が騒ぎの前面に出て来て暴力的行動のの主役になっていたりします。いわば暴動予備軍といってもよく、中国の各都市はそういう不安要因がここ数年で急速に高まりつつあるように思います。

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 ただ過去のケースが示しているように、都市暴動というのは散発安打に終わることが多く、他の都市にも飛び火して騒ぎが大きくなって……という可能性は低いでしょう。暴動の発端となった事件に対する怒りが他の都市では共有されにくいからです。

 逆に「敵」の姿が誰の目にも明確で、その相手を敵とする共通認識が中国国民に広く形成されていれば、暴動が他の都市へも飛び火し、それがプロの活動家たちによってベクトルの向きか知らず知らず変えられて、倒すべき「敵」がいつの間にか中共当局になっていた、というプロセスをたどる可能性が出てきます。

 昨春の反日騒動がその典型例です。「反日」という中国国民にとってわかりやすく怒りをぶつけやすい対象、これは江沢民による反日風味満点の愛国主義教育が十数年にわたって行われたこととも関係があるでしょうが、日本・日本人を敵とする共通認識が形成されていたために、全国各地で週末になると反日デモが展開されるという異常な状況が現出しました。

 この反日騒動はそもそも政争を発端とするものだったと私は考えていますが、当初の思惑を超えたこの緊急事態には反日を煽った政治勢力も、その政敵である反日を抑え込もうとしたサイドも「中共人」として戦慄してしまい、慌てて手打ちを行って事態の沈静化に努めることになりました。政争をやっていられるのも某かの利権を手にできるのも、自分が「中国人」よりも「中共人」であることを肌でわかっているからです。

 その後、中国国内で民間組織主導の反日活動が徹底的に抑え込まれているのも、昨春の経験で中共指導部が「反日」という共通認識がもたらす怖さ、そしてその尻馬に乗って民衆が騒ぎ、下手をすればどうなるかわからない一種の恐怖感をがあるからでしょう。この一連の反日騒動で「暴動予備軍」か果たした役割は決して小さなものではありませんでした。

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 こういう明確に「敵意」向ける対象が共通認識となったケースを反日騒動以外に例を求めるとすれば、文化大革命でしょうか。これは権力闘争として発動された運動が理屈をつけて明確に政敵潰しを行ったため、また紅衛兵という未熟なティーンズを第一線で走り回らせたために、やはり全国的な混乱となりました。現在のように海外プレスや国際社会でのイメージということを顧慮する必要があれば、10年に及ぶ人為的惨禍とはならなかったでしょう。

 ……という訳で、暴動予備軍が年々拡充されて不安要因が高まっている都市部の暴動について、実のところ私はあまり期待していません。事件が起きれば祭だ祭だとばかりに当ブログでも取り上げることになるでしょうが、「反日」に代わる何事かがない限り、他の都市に飛び火することなく、散発安打に終わる可能性が高いからです。

 ところでなぜこういう話をしているかというと、もし今後中共政権が崩れていくとすれば、どういう展開になるかということを考えてみたいからです。

 一人当たりではなく全体の規模としてみれば世界有数のGDP大国となった中共政権が崩れ、混乱が生じることは国際社会にとっても困ることなので、そういう動きが出れば最悪の事態にならぬよう国連なり多国籍集団なりが対策を講じてくれるでしょう。

 ただ、金属疲労というものがあります。特に中共政権の場合、一党独裁という政体を維持するために余計なコストを随分かけていますから(例えば各職場・機関への党委員会設置など)、そういう高圧釜状態を続けていく力にも自ずと限界があるでしょう。

 胡錦涛が志向しているように、準戦時態勢ともいえる強権政治で構造改革を断行できれば、中共政権の延命を図ることはできるでしょうが、これはあくまでも一時的な延命措置であって、病根を除去して健康体に戻すという性格のものではありません。

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 トウ小平、江沢民と野方図な改革・開放政策を続けてきてしまったために、具体的には、

 ●中央政府と地方当局の利害衝突を調整するシステムを組み入れられていない。
 ●改革・開放の軸足が都市部に移ってからは農村振興策が疎かになった。
 ●故趙紫陽・元総書記が行おうとした「経済体制改革と政治体制改革を並行して進める」という本来のロードマップに反し、この20年ばかり経済改革一辺倒という片肺飛行を続けてしまった。
 ●その帰結として様々な格差の拡大と党幹部による汚職の蔓延。

 ……といった理由により、中共政権ががっちりと全国を束ねる力はどんどん弱体化しているのです。改革・開放政策は計画経済に対するアンチテーゼとして分権化と競争原理を導入するもので、それが深化すれば当然ながら中央政府の統率力は弱体化せざるを得ません。

 ただそれを防ぐための調整メカニズムをシステムに組み入れることが現実に比べ大幅に遅れていることで、現在のような袋小路の状況が現出しているように私は思います。

「そこで中国分裂論ですよ」

 という合いの手が入るかも知れません(笑)。結果的にはそういう形に落ち着くのかも知れませんが、党指導部が二つに割れて大喧嘩するとか、軍区が地元当局と癒着することで内戦なり武装割拠状態が出現する。……といったプロセスに私はリアリティを感じられません。

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 愚考するに、混乱はそういった上層部ではなく、枝葉の部分、あるいは中共にとって最大の支持母体である筈の根っこの部分というべきかも知れませんが、村落レベルの末端組織から立ち腐れていくのではないか、と思えてならないのです。

 中共に取って代わるべき有力な対抗勢力、つまりは野党が存在しないため、ルーマニアなどかつての東欧の社会主義国のように一夜にして政権崩壊、といったことが起きる可能性は低いと思います。

 しかも当時の東欧諸国に比べれば、現在の中国の民度ははるかに低い。民度が低いということは自分の社会に対する視野が狭く、問題意識が生まれにくい。……つまりは自分の利害に直接影響してくる事態を何よりも優先するということになるでしょう。

 そこで中共にとっての末端組織、村落レベルからの立ち腐れから全ては始まるのではないか、というのが私の見方です。

 中共政権は村落に至るまでの精密な統治システムを確立することに成功しましたが、いまその末端あたりから腐り始めているように思います。ええ、すでに終わりの始まりという段階に入っているということです。

 注目すべきだと思うのは、この「立ち腐れ」が決して官民衝突の形に限られていないということです。


「下」に続く)




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 何だか大学生が大変なことになっているそうで。……ああ新卒者の就職問題のことです。中国の大学は9月から新学期で6月で卒業ですから、9月から10月あたりに失業ネタが中国国内紙の紙面を飾ることが多いです。

 しかも今年は
「空前の就業難」だと労働部門も教育部門も頭を抱えています。

 新卒者の数が年々増えているのに雇用機会がそれに追い付かない。という訳で、「卒業即失業」というケースが年を追って深刻になっているようです。

 具体的な数字は忘れてしまいましたので過去のエントリーに頼りますと、2004年の大学新卒者は280万人で、同年9月末時点で就職できたのは204万人。就業率73%というか卒業即失業率27%ということになります。

 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2004-12/11/content_2320263.htm

 これが昨年、つまり2005年になると新卒者数は前年同期比58万人増の338万人。教育部長さんは、

「今年の就業圧力は例年にない強さだ」

 と厳しい表情だったのですが、今年はいよいよ「空前」の事態。

 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2004-12/11/content_2320263.htm

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 すでに昨年の時点で前年実績の「就業率73%」を達成するのが難しい、とされていたのに、今年もまた新卒者の数が増えて、就職口とのギャップが拡大しているようです。

 ところが各大学は教育部から就業率についての目標を与えられている。……ということで、当然ながら就職者数の水増しが行われています。そもそも一昨年の「就業率73%」も水増しの結果だといわれています。

 典拠を引っ張り出せないのですが、安徽省のある大学では新卒予定者に対し、

「就職口のない者はニセの就業証明書を各自準備するように。さもなくば卒業させない」

 みたいな極端な事例もありました。その記事を読んで「大学が用意してやればいいじゃないか」と思ったものですが、あるいは大学側も水増し用のニセの就業証明作成に手一杯で、それでも足りないから学生に下駄を預けてしまったのかも知れません。

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 ●今年は失業問題が熱い!?・上(2005/01/13)
 ●今年は失業問題が熱い!?・下(2005/01/14)
 ●卒業即失業、それが嫌ならド田舎へ行くかニートになるか。(2005/07/12)
 ●当世大学生事情――現実社会に一線画して物欲まみれ?(2006/01/26)

 ……と、当ブログではこの類の話題には割とまめに取り組んできました。もちろん社会の不安要因、まあ暴動予備軍になるかも知れないからです。何せ若いのに身を持て余して鬱屈していますから、切っかけさえあれば騒ぎます。昨春の反日騒動がその顕著な例ですが、他に各所で発生した都市暴動も名目は何であれ、

「畜生やってらんねーや」

 といった連中がいつの間にか暴動の主力となっていたりします。鬱屈もあれば「官」に対する恨みつらみもありますからね。

 ちなみに失業問題は「4050」と呼ばれるリストラされた40~50歳代においても深刻ですし、出稼ぎに来てみたものの職はなし、といった農民も少なくないものと思われます。

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 で、不完全ながらも最新情報。江蘇省の関係部門によると、同省の大学新卒者で就職先が見つからなかった者が9月末時点で3万8000名余りいたということです。

 ●「新華網」(2006/10/16/20:07)
 http://local.xinhuanet.com/dfyw/2006-10/16/content_11305.htm

 江蘇省といえばバリバリの沿海地区でしかも上海に隣接しているという好立地。県レベルの競争力全国ランキングでも上位を占める県の多くが同省に属しています。それでも「卒業即失業」が約4万人。人数でいえば2コ師団ぐらいはあるでしょうか。……なんて不穏なことを言ってみたりして。

 しかも、そのうち5000名は低所得層の出身だそうです。ただでさえ苦しい生活を切り詰めたり親戚に借金したりして子供を大学にやったのに、「卒業即失業」ではあまりにやり切れないでしょう。

 ただしこのデータは最新ながら不完全な統計です。問題が2点。その第一は、江蘇省の新卒者総数が明らかにされていないので「卒業即失業」率が割り出せません。

 もう1点は、この数字は厳密にいうと「失業者」ではなく、「失業登録証」を交付された新卒者の総数ということです。これは「4050」でもそうですが、失業して、役場に行って、失業登記申請を行って、審査にパスすると「失業登録証」をもらうことができます。要するに、この「失業登録証」を手にしていない「卒業即失業」組もいるということです。

 中国政府が発表する失業率というのはこの「失業登録証」を手にした人が基数になりますから、実情はもっと深刻であることは確かです。この数字、昨年は4.2%とのことですが、実質失業率はこれを遥かに上回る数字になるでしょう。中国政府はこの指標を「失業登記率」としているので数字をごまかしている訳ではありませんが、実際はもっとたくさんいるだろう、ということです。ええ、暴動予備軍が。

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 それでちょっと気になったので今年取り上げた暴動事件を並べてみました。

 昨年、一昨年は非常に意欲的にこの種の話題を取り上げて暴動ブログみたいになっていましたが(笑)、あまりあちこちで起きるので新鮮味もなくなり、私も食傷気味で最近は題材にすることが減っています。

 ●調和社会に祝砲一発、激闘武装農民。(2006/02/05)
 ●またまた広東省で官民衝突、謎の4死6傷事件。(2006/02/14)
 ●河南省で五千人規模の学生暴動、キャンパス内外を廃虚に。 (2006/06/19)
 ●お元気ですかあ?>>中共政権。(2006/08/01)
 ●湖南省で住民同士の衝突が暴動に、武警発砲で死者100名?(2006/08/07)
 ●瀋陽事件に急展開、その可燃度や如何に?(2006/08/24)

 それでも6件も取り上げていたんですね。偶然ですがそれぞれ性質が異なっていてどれもこれも象徴的な事件でした。

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 まあそれはそれで楽しそうな話題なのでまた今度ということにして。……新卒者をはじめとした就業問題が過熱したところに農閑期が重なればまた何事かあるのではないかとつい期待してしまいます(笑)。

 加えるならハイペースな経済成長も不安要因。中国経済は成長率が高まるほど地域間格差や業種間所得格差、都市と農村の格差、そして貧富の差といった様々な「格差」が拡大する構造になっているので、高度成長が逆に社会状況を悪化させてしまうという手の込んだ仕組みになっています。

 だからといって減速すれば失業問題がいよいよ深刻になる訳で。結局はやっぱり「人大杉」ということなんでしょうけどねえ。




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 最近気付いたのですが、日本国内の大学に「孔子学院」なるものが相次いで設立されています。

 表向きや建前はともかく、本質は中共による対日宣伝活動の有力なる策謀のように思います。新華社電子版の「新華網」などでもときどきプッシュしていますし、要するに中国語を学ばせて中共型「日中友好」論者に染め上げよう、媚中派に育て上げよう、というものかと思います。

 組織としては中国国務院(政府)の「中国国家漢語国際推廣領導小組弁公室」が推進役になっていますが、ありていは党統一戦線工作部が絡んでいるものと私は考えています。

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 ざっくりと言ってしまえば、日本でも糞青を量産しようという肚でしょう。中国の糞青について私は、

「自称愛国者の反日信者」

 と常に定義していますが、孔子学院によって量産されるであろう日本型糞青は、

「媚中派で中共史観バリバリの反日同調者」

 てなところですか。もちろん対中外交の構造改革などもってのほか、という従来型の朝貢・謝罪外交支持者です。次世代を担う中国語学習者に刷り込みを行うという実に戦略的なプロジェクトですね。

 少子化で学生減少に悩む大学にとってみれば、中国の有名大学との提携関係というオマケがついてきたりしますから「これで付加価値がつく」と飛びつくでしょうし。

 中国人学者がテレビの政論番組に出演して失笑コメントを連発し、王毅・駐日大使が脱力系啖呵を切っている一方で、中共のイニシアチブによってこういう動きが日本国内で進んでいることは留意しておくべきだと思います。

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  ところが困ったことに、以前親しくしていた中国人(知識分子)A氏がこのプロジェクトに参加していることが最近判明。私は中国・香港・台湾を10年ばかり流浪していましたから連絡が途絶えてしまっていたのですが、最近ふとしたことで連絡がついて、メールをやり取りをするようになりました。

 それでわかったのですが、私に卒業証明書を発行する大学にも「孔子学院」が設立されていて、A氏はよりによってそこで教鞭をとっているようなのです。

 前にも書きましたが、私は学生時代は若年客気のカタマリのようなもので、実に不遜な学徒でした。自分の大学のカリキュラムを舐めてかかっていましたし、授業は9割がた「糞じゃねえか」と断じていましたし、その授業を真面目にこなす上級生の大半が実際に糞レベルの中国語しか使えないのを嘲笑し冷笑していました。

 むろん母校意識などありません。恩師をはじめ諸先生方との個人的な接触で得られる貴重な知識こそが私にとっては「母校」でした。だから同じ学科の連中と群れることも避けていました。時間の無駄だからです。

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 そういう糞のような大学が侵蝕されて中共の走狗に成り果てていくのを眺めているのは、私の直観の正しさが次々に証明されていくようで実に愉快です。

 ともあれ以前は中共の悪口や中共政権下の社会がいかに理不尽であるかを色々私に話して聞かせてくれたA氏がどう変わったのかが楽しみです。私も外地を流れ流れていく中で大きく変わった部分がありますし。

 まあとりあえず探索射撃でもしておくか、ということでA氏に軽くジャブを見舞っておきました。……以下にお粗末な中国語が続きます。中国語を解さない方は飛ばしても構いません。今回は「孔子学院ってなんだか怪しい」というのが主題ですから。

 あ、それからお粗末とはいっても私が大学時代に嘲笑した上級生どもの中国語と比較されては迷惑です。猿や豚と一緒くたにされたらいくら何でも、ねえ(笑)。

 まあ連中も大学が組んだヌルいカリキュラムの犠牲者ではあります。ただヌルいと感じなかった分だけ人間になりそこねた訳で。

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××大哥:

昨天我上網進入了××大學的網站後,才知道該大學設立了「××大學孔子學院」這麼怪怪的東西,是屬於中共統一戰線工作部的組織? 還是××大學黨委? 若是者,大哥的職位大概算是副書記了 !! ……説笑而已。

不過,如果「××大學孔子學院」這個組織要推廣中共所謂的「日中友好」的話,相信我的副業(香港雜誌的專欄:用中文談日本社會)以及我的娯楽活動(網誌:用日文談中共)就可算是統戦工作的障礙。

尤其是網誌,其日均Page View超過一萬人次,曾經也有部分雜誌將其介紹過。……總之我的專欄和網誌都有不少讀者,所推的又是我所謂的「日中友好」以及我二十年來的優良傳統「玩弄中共」(幸好廣受香港人的支持)。……説笑而已。

看來××大學這十多年來的變化很大,愈来愈像中共的走狗(笑)。幸好我個人對××大學毫無感情,當然也沒有甚麼「我的母校」云云之情。

老實説在我心目中,××大學不過是為我發「畢業證明書」的機關罷了,而絶不是我的母校,更何況××科(笑)。

實際上,説到我當年的「母校」,當然要首推「××老師」和「××老師」這兩位;××科的「××老師」和經濟學部的「××老師」和「××老師」次之。

我之所以很想跟大哥慢慢聊一聊,是因為想了解一下經過十多年,大哥和我的思想分別「變」得如何「不變」得如何。例如説老戰友××先輩和我御家人,其外地生活均各使我們對日中關係和日本政府的看法發生了變化,而且「變」得頗大。不知大哥在這十多年裡發生了些何種變化?

有兩點實在太可惜:××先輩過來東京的機會幾乎零;我普通話的發音受到粤語的影響而退歩了許多。……唔,這也算是我的「變化」之一(笑)。

如題,廢話一大堆。不便之處敬請原諒。
如果有時間o既話俾回音我好唔好? 俾o下面都得呱~?


安好

劣弟 御家人

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 さてその中国人A氏、

「あの御家人か!驚きだ!感動だ!興奮だ!会おう!」

 と熱っぽいメールを寄越してきたので近況、というかここ十数年の流転ぶりをレスしておいたのですが、それに続いてこのジャブにはどう反応するか実に楽しみです。

 それより早く会って、久しぶりだなあ、お互い歳を喰ったなあ、と肩を叩き合いたいものです。ついでに孔子学院なるものへの理解も深めたいですし(笑)。

 そういえばいまの大学生は天安門事件(1989年)をロクに知らない世代でしたね。香港で行われている「国情教育」同様、中共にとっては日本人相手でもさぞや刷り込みをやりやすいことでしょう。




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 依然として動きはありません。

 ……とは、前回紹介した「六中全会」(党第16期中央委員会第6次全体会議)で発表されたと報じられながら、未だにその内容が公表されていない胡錦涛の「謎の重要講話」です。

 親中紙『香港文匯報』の消息筋情報によると先ごろ汚職容疑でひっぱられた上海閥における次世代の有力者・陳良宇の件についても言及している、とのこと。親中紙の消息筋情報は確度が高めと考えていいと思いますが、その重要講話なるものを実見するまでは何ともいえません。

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 その代わり昨日(2006/10/12)には人事異動の発表が行われました。国家統計局の局長が邱暁華から国務院発展研究中心の謝伏瞻・副主任へと交代することが明らかになりました。

 ●「新華網」(2006/10/12/20:13)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-10/12/content_5196014.htm

 人事異動の記事はいつ役に立つかわからないのでこういう中央政府レベルはもちろん、地方の人民代表異動などまで全てとってあります。

 で、今回の国家統計局長の異動については「おやっ」と思いました。

「謝伏瞻を国家統計局局長に任命し、国務院発展研究中心副主任職を免ずる。邱暁華の国家統計局局長職を免ずる」

 というだけの素っ気ない文言はいつもの通り。ただこの簡潔な文章にもチェックポイントがありまして、定年とか更迭でない限りは、必ずポストから退く側、今回は邱暁華ですが、それについて
「●有任用=他のポストへ異動」(●=上が「口」で下が「力」)という決まり文句が使われるものです。そのお約束の4文字がついていなければこちらはピクリと反応する仕掛けになっています(笑)。

 で、今回はその決まり文句がないのです。しかも記事に付された経歴をみると、邱暁華は1958年生まれでまだ40代ですから定年である訳がなく、上海閥とも関係がなさそうですし、さらにいえば国家統計局長に就任してわずか半年余りなのです。

 更迭、解任、……要するにクビを飛ばされたのではないかと思います。

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 今朝の香港紙は私同様に「●有任用」がないところに着目して色々取材していたようです。

 が、親中紙『香港文匯報』から反中色の濃い『蘋果日報』に至るまで、現地で取材に東奔西走したものの釈然とした内容を引き出すことはできなかった模様。

 ただ『香港文匯報』の記事からは、異動が突如行われたものであること、箝口令めいたものが敷かれているのか関係者の口が一様に重いことなどから、政治的な動きであることが匂い立つようでもあります。

 ●『香港文匯報』(2006/10/13)
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0610130008&cat=002CH

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 私の第一印象は、

「あっこいつ使えないから胡錦涛にクビを飛ばされたな」

 というものでした。ですから「その代わり」(陳良宇関連では動きがないけれど)なのです。

 前回の文末でふれましたが、胡錦涛は成長率より効率重視の「科学的発展観」を唱え、それを軸にした地方党幹部の新査定法を浸透させようとしていました。

 それで環境保護を念頭に置いた「緑色GDP」だの市民の生活満足度を示す「幸福指数」だのといった指標が名前だけは出てきたのですが、実際に運用するとなるとあちこちに無理があって容易にはじき出せる数字ではなく、国家統計局までが匙を投げる始末。……といった状態が春から夏にかけてありました。

 ●流れが変わってきましたね。(2006/05/21)

 それに伴う論争、つまり胡錦涛サイドの「効率重視組」と開発欲求の強い地方勢力側の「成長率重視組」がそれぞれ論客を立てて激論が交わされたのですが、結局は規模の拡大一辺倒でそのためには資源や資金の無駄遣いや環境汚染にも目をつぶるといった江沢民型の「成長率重視」よりも、胡錦涛の「効率重視」の科学的発展観が現状に即していることで論争に一応ピリオドが打たれました。

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 ところが前回の文末でふれた通り、現実には効率重視の「科学的発展観」に合わせた新たな党幹部査定基準が確立していません。ところが今年は地方党幹部の改選が行われる年ですから査定結果がきわめて重要になります。

 それなのに新しい査定基準が浸透していないとすれば、これはもう従来型の「成長率重視」で走るに限る、ということで全国各地で年初から規模の拡大を追求する猛チャージが行われ、上半期のGDP成長率は前年同期比で10.9%。

 各地の銀行、これは本来なら北京の本行を頂点とする指揮系統になっている筈なのですが、地元当局に取り込められて言われるままにガンガン融資。

 融資してもらって何をするかといえば貧民救済ならともかく、主として土建屋事業、それも無駄に立派な道路や公園やスタジアム、そして豪華な政府庁舎といった大がかりなプロジェクトに傾いています。

 中国語で「形象工程」と呼ばれるもので、要するに現職者の業績を目に見える形で示し、上級政府に対し「色々働いています」とアピールするためのものです。

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 で、国家統計局の邱暁華・前局長はそういう動きを抑制するための新指標確立を胡錦涛や温家宝に求められながら、それに応える働きができなかった上に弱音を吐いたりしたために、

「ダメだこいつ。使えない」

 となってクビ、ということになったのではないかと私は勝手に考えている次第です(国家統計局の発表する全国統計と各地から上がってくる数字の総和に大きな差があるという弊風を改められずにいたことも一因かも)。

 まあ「科学的発展観」という旗を掲げている以上、幹部の査定基準にも新たな内容が求められるのは当然ではありますが、新指標については国家統計局全体が頭を抱えていましたからね。人を代えたからといってすぐにどうなるという問題ではないでしょう。

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 結局、胡錦涛の指導力が確固たるものとなれば、最後にはその腕力を以て各地方勢力をねじ伏せることになるのではないかと思います。

 でも、ねじ伏せたからどうなるというものでもありません。前々回ふれた通り、経済政策が極端から極端へとふれて混乱が起きることにになるでしょう。過去にいくらでも実例のある、

「何をやっても『大躍進』」

 の再演になるのではないかと考えているところです。




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 世代交代・大型人事の行われる第17回党大会(来年秋開催予定)を控えた最後の前哨戦になるかも知れない党の重要会議、「六中全会」(党第16期中央委員会第6次全体会議)が閉幕しました。

 閉幕とともに「公報」(コミュニケ)が発表されます。例によって仁義を切る意味で全文に目を通してみました。

 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-10/11/content_5190605.htm

 意外です。「調和社会の実現」とか「格差の是正」とか「新概念の農村建設」とか「大局を優先せよ」(=中央のマクロコントロールに従え)みたいな文言は出てきたのですが、事前に予想されていた人事異動についてこのコミュニケは全く言及していないのです。

 これをみる限りでは汚職容疑で先日上海における全職務を解任された陳良宇が処罰された形跡も、逆に胡錦涛サイドの若手有力者が党中央政治局委員に昇格したという気配も全くありません。

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 それゆえ今朝の新聞は日本も香港も「胡錦涛苦戦?上海閥なお抵抗?」みたいな見方が出ているのですが、「六中全会」の初日に日中首脳会談を開いてみせた胡錦涛の余裕、たとえそれが擬態であろうと、余裕のあるフリができるのですからどうも納得いきません。

 それでひとつ気になることがあります。国営通信社・新華社の電子版「新華網」は昨日(10月11日)から、

「第16期六中全会閉幕。胡錦涛が重要講話を発表」

 を大きな赤文字でトップニュースに掲げています。いまこれを書いている10月12日午前の段階でもそのままなんですけど、実はこの「胡錦涛の重要講話」というのがまだ公開されていないのです。該当記事に飛んでみても、

「速報:会期4日間で開かれた第16期六中全会は今日午後北京で閉幕した。全体会議は中央政治局によって運営された。胡錦涛・中央委員会総書記が重要講話を発表した」

 としか書いてありません。

 ●「新華網」(2006/10/11/17:28)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-10/11/content_5190482.htm

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 何かすぐに公開できない理由があるのだろうか、と考えずにはおれません。……すると、今朝の親中紙『香港文匯報』が耳よりな記事を掲載していました。

 ●胡錦涛総書記の六中全会講話、陳良宇事件に言及(香港文匯報 2006/10/12)
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0610120006&cat=002CH

 いやー最近この新聞は飛ばしています。北朝鮮の核実験に対しても、中国外交部のデブ……じゃなかった劉建超・報道官が強硬姿勢の声明を発表した、なんて野暮なことを1面トップにすることなく、

「吉林省の中朝国境警備部隊に非常呼集、防疫訓練(対化学兵器戦訓練?)を実施」

 てな感じでドカーンとインパクト十分の報道。それも消息筋情報でなく記者が現地で取材していました。

 ●非常呼集通信兵すぐに電文を打て~と言ってみるテスト。(香港文匯報 2006/10/10)
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0610100001&cat=002CH

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 その『香港文匯報』が今日付で報じているのです。消息筋情報として、未だに公開されていない「胡錦涛の重要講話」では陳良宇問題にはっきりと言及されていた、というものです。

 この消息筋によると、「六中全会」のコミュニケに陳良宇事件が言及されなかったのは、

 ●「六中全会」のテーマは「和諧社会」(調和社会)であり、陳良宇事件に言及することで主題が散漫になることを避けた。
 ●陳良宇の汚職についてはまだ取り調べ段階で最終的な結論が出ていない。この問題については担当部門である党中央紀律検査委員会から後日発表があると思われる。
 ●そもそも陳良宇事件のような大事件には捜査や証拠固めに時間を要する。ふつう3カ月以内に処理せよと規約には定められているが、必要なら1カ月の延長も許される。

 つまり、胡錦涛サイドの優勢は動かし難いものの、陳良宇事件についてはまだ取り調べ中のため表向き(コミュニケ)には断罪できなかった。ただ胡錦涛は未だ公開されていない「重要講話」で陳良宇を叩いた。……ということになるようです。

 だけど一方で胡錦涛サイドの若手が中央入りすることがなかったじゃないか、ということになりますが、もし陳良宇事件が消息筋情報通りだったとすれば、汚職事件の結論が出たところで動きがあるかも知れません。

 党中央政治局全体会議などが開かれて陳良宇が党中央政治局委員を解任され、そこで穴埋めとして胡錦涛サイド主導による人事が行われる可能性があります。もっとも、党中央政治局にそこまでの権限があるかどうか、調べがつかないので断定できませんけど。

 ただ、「党中央政治局拡大会議」などと「拡大」の2文字をつけるだけで中央政治局のメンバー以外の者が参加できる人治の国ですから、どんなバワープレイが飛び出してくるかわかりません。

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 ところで、今回の「六中全会」、というよりその前後を含めての感想ですが、後継ぎを失った上海閥よりも、地方勢力が中央に抵抗しているという観が強いです。

 ……というのは「新華網」を眺めていての印象。不動産事業にせよ経済成長モデルにせよ闇炭坑閉鎖にせよ環境汚染にせよ、中央メディアが「地方政府があれこれ邪魔することで中央の政策が浸透していない」とする類の断罪記事が最近は多いのです。ええ、「地方政府」と名指し批判です。

 実際のところ、江沢民時代のイケイケドンドン路線ではGDP信仰で、成長率の高低が地方政府の党幹部査定を左右していました。

 それを「成長率より効率重視」に改めようというのが胡錦涛の提唱する「科学的発展観」なのですが、如何せん「緑色GDP」とか「幸福指数」とかいったものは算出基準が未確定で、査定の基準となる明確な指標が未だに浸透していません。

 浸透していなければ、地方の党幹部は従来の査定基準である成長率の向上に努めることになります。

 しかも今年は地方党幹部の任期満了に伴う改選の年。となれば査定を考えて突っ走るしかないでしょう。だいたい経済を減速させたら失業問題をどう手当てするんだ、という声も地方側にはあるかと思います。

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 社会科学院は今年のGDP成長率が通年で10.5%になるとの予測を発表しました。来年はマクロコントロールが奏功するそうですが、それでも通年予測は10.1%。元凶は固定資産投資のオーバーペースとのことですが、これはつまり各地方勢力が中央の方針を黙殺するか面従腹背するかして、実は効率無視でイケイケドンドンを続けているということです。

 http://news.xinhuanet.com/fortune/2006-10/11/content_5187612.htm

 地方レベルでは「科学的発展観」がないがしろにされている、といってもいいでしょう。これはコミュニケを通読しての感想でもあるのですが、「新農村建設」はそれを名目にした汚職や土地収用、カネの無駄遣い(効率無視)に拍車をかけそうですし、対立軸は「中央vs地方」が主となり、そのうち「地方vs地方」という構図も出現しそうな気配です。

 だいたい「調和社会」なんて聞こえはいいですけど、要するにそれを呼号して真面目に取り組まなければ統治者としての中共が潰れかねないという危機感が基礎になっているものでしょう。あーあとうとうここまで来ちゃった、という印象です。

 んなこたー胡錦涛政権の発足当時(2004年9月)から分かってるじゃないか、と言われればそれまでですが、やはり改めて実感せざるを得ません。

 同時に、胡錦涛政権は発足後2年間を政争政争で時間を浪費し、この根本に関わる問題が事実上放置されて来たのが惜しまれます。致命傷になるかも知れませんね。




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