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日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 前回の続編です。

 一連の事件は取りあえず「広東炭坑騒動」としておきます。さすがに「梅州起義」という段階ではありませんし、清遠、韶関、連州など梅州以外でも抗議活動が行われています。本当は「暴動」に昇格させたくてウズウズしているのですが(笑)、大規模な衝突はまだ生じていません。じゃあ「炭坑争議」にするかと考えても、これだと労使間の争いになってしまうのでやっぱりダメ。今回は経営者も炭鉱夫も、そして付近の住民も一緒になって地元当局に抗議しているのですから。

 ●炭坑経営者
 ●炭鉱夫(地元民と出稼ぎ農民)
 ●炭鉱相手の商売で生計を立ててきた付近住民

 という、いわば「三位一体による抗議」なのです。この点、昨年以来の各種暴動、例えば農地収用とか都市再開発絡みとか公害反対とか民族衝突、それに物価上昇で音をあげた年金生活者によるデモや、ふとしたきっかけで発生した市民暴動……などとは毛色が異なります。

 地元当局側に明らかに非があること、そして抗議者の側が大量の危険物(爆薬とか)を有していることも特徴のひとつです。事態が一向に打開されないことに業を煮やした民衆側が、ついに禁断のアイテムに手を伸ばす……ああ、胸が高鳴ります(笑)。

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 とりあえず続報いきますか。8月26日夜までの動きは次のようなものでした。

 ●炭坑経営者や炭鉱夫、それに付近住民など数百名から1000名以上が8月26日に梅州市政府庁舎を取り囲み、同日夜時点で雨の中なおも座り込みを続行。その途中で防暴警察(機動隊)との衝突があったと伝えられるが詳細は不明。

 ●清遠市で封鎖措置が執行される際、担当者を護衛する武装警察や警官衝突と地元民が衝突し、地元民5名と警官多数が負傷、13名が逮捕される。

 ●韶関市で市政府庁舎に対する陳情活動(上訪)が実施され、その人数は当初数百名だったのがいつしか数千名に膨脹、万一に備え武装警察が出動する騒ぎに。

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 その後の報道で伝えられているのは以下の通り。

 ●抗議のため韶関市政府庁舎を取り巻いた民衆は1万名に達していた模様。

 ●興寧市の村民400名が8月27日午前9時ごろ、中央から派遣されている特別調査チームの宿泊するホテル(金葉酒店)前に屯集、直訴を試みるも警官隊約200名に阻止される。小競り合いなどがあり警官隊は村民5名(男3名・女2名)を逮捕。

 ●村民が共同で開発した細沖煤鉱(場所は不明)を担当者や警察が爆破しようとしたことで地元住民(炭鉱夫)との間に流血の衝突。警察側は催涙弾を放つなどして鎮圧。これまでに投じた600万元が水の泡に。

 以上はいずれも香港紙『明報』(2005/08/28)と『香港文匯報』(2005/08/28-29)の報道に拠っています。

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 不思議なのは、これほどの事件なのに他の香港紙が報じていない、ということです。単なる出遅れにしては反応が遅すぎます。ただ親中紙筆頭格の『香港文匯報』が報道している以上、実際に起きている事件であることは確かです。

 親中紙である『香港文匯報』の記事がほぼ中立で、抗議活動をする民衆を悪者扱いしていないことも興味深い点です。むしろ強硬措置を徹底しようとする地元当局側が悪人であるような印象を読者に与えかねない書き方のように思います。

 『香港文匯報』の記事はまた、合法的炭鉱とヤミ炭鉱を玉石ともに砕き、機械・設備類までまとめて爆破した地元当局の強硬措置を広東省当局が高く評価していることにも言及しています。これによって地元当局の無理無体な強腰は省当局をバックにしていることがわかります。

 ……というより、こういう形で読者にわからせているのでしょう。抗議する民衆に積極的に肩入れしてはいないものの、同紙が地元当局・省当局のやり方を突き放して眺めていることは重要です。

 現時点において、『香港文匯報』が広東省当局と同じスタンスではない。……ということは覚えておくべきだと思います。これは今回の事件の収拾策について、広東省当局と北京の中央政府との間に何か微妙なズレないしは齟齬があることを示唆しているように思えます。

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 色々なことが起きていますが、改めて確認しておきたいのは、地元当局の無理無体な強腰に民衆(炭鉱経営者・炭鉱夫・炭鉱相手の商売で生計を立ててきた地元民)はなぜ反発・抗議し、何を求めているかということです。

 まず、求めているのは補償です。潰された炭鉱、爆破された機械・設備類、それまでの主に銀行からの融資に頼った投資、そしてこれによって失業する炭鉱夫と地元住民に対する生活補償です。

 ここで重要なのは、「爆破された機械・設備類」はもちろん、「潰された炭鉱」への補償についても合法的炭鉱とヤミ炭鉱を区別する必要がないことです。つまり地元当局の今回の措置については、ヤミ炭鉱にも補償を求める資格があるということです。

 それから反発・抗議の根拠について。そもそも今回のヤミ炭鉱潰しは、中央政府の国務院弁公庁が全国に向けて発した通達「安全生産条件と非合法炭鉱の整理・封鎖に関する通達」が発端であり、錦の御旗となっています。

 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-08/23/content_3393421.htm

 「だからヤミ炭鉱は潰されたんだろ」というのは、実は間違いなんです。

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 この「通達」によると、ヤミ炭鉱は直ちに操業を停止せよということになっていますが、「すぐ閉鎖させろ」とはなっていないんです。

「基準を満たしていない炭鉱には1度だけ操業停止・環境改善の機会を与え、期限までに安全生産許可証を手にできなかった炭鉱については法によって一律閉鎖とする。操業停止による環境改善の期限は今年末を超えてはならない」

 となっています。つまりヤミ炭鉱にも1度だけチャンスを与え、今年中に所定の基準を満たさなければその時点で閉鎖、ということなのです(失業問題など社会に混乱が生ずるのを避けるためかと思われます)。とにかく、一緒くたにされて潰されてしまった合法的炭鉱はもちろん、更正のチャンスを与えられぬまま潰されたヤミ炭鉱にも言い分があるということです。

 要するに広東省当局の支持をバックに梅州や清遠で採られた無理無体な強硬措置は「通達」に反していることになります。それゆえ「三位一体の民衆」は激しく反発し抗議行動を展開しているのです。『香港文匯報』の報道ぶりでも指摘したように、どうもこのあたり、中央の方針と広東省当局のスタンスがかなりズレているのは気になります。

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 炭鉱も潰した、機械・設備類も爆破した。……とここまでやってしまえば、やられた方にとっては生活の糧を奪われ、炭鉱経営者は返済できる当てのない借金の山を背負うことになります。極めて可燃度の高い状況です。

 しかも過去の突発したようなケースと違い、今回は抗議活動を繰り返す中で、数十から50社はあるとみられる炭鉱会社が被害者同士として連携する可能性があり、それを軸に、地元民衆が組織的なまとまりを示すかも知れません。ただ同じ広東省といっても梅州、清遠、韶関はそれぞれかなり距離がありますから、地域間でまとまることは難しいでしょう。動くとなれば、興寧や梅県を抱える梅州市が動員規模の点で他の地域に勝っているかと思います。

 被害者である「三位一体の民衆」、その被害は生活の糧を奪われたに等しく、もはやこれ以上失うものがないというレベルであること、これに対する地元当局が民衆の抗議・反発に対し強硬姿勢を全く崩していないことから、このまま進めば大規模な官民衝突は不可避ではないかと思います。中央が割って入って調停を行うなら別ですけど。

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 それにしても、今回の「民」に対する「官」のやり方は余りに苛烈です。それによって派生する様々な問題についての対策はあるのでしょうか。

 それとも、これほど苛烈にやる必要のある理由が「官」の側にはあるのでしょうか。

 そういえば、いかにも中共のやりそうなことですが、広東省にテロや暴動に対処する特別警察隊が組織されたとのニュースが8月27日、中国国内で流れました。

 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-08/27/content_3409698.htm

 脅しているつもりなんでしょうか。それとも「武力鎮圧いくぞ」との意思表示?



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 扇情的なタイトルは無視して下さい(笑)。

 例の死者123名を出した広東省・梅州市のヤミ炭坑の件で続報が出ました。炭坑経営者や炭鉱夫など数百名から1000名以上が昨日(8月26日)市政府庁舎を取り囲み、同日夜時点で雨の中なおも座り込みを続行している模様です。

 事故調査のため北京から特別調査チームまで派遣され、さらに中央政府がヤミ炭坑に対する最後通牒を出したことですっかりビビってしまった梅州市が、官僚の自己保存もあるのでしょう、玉石混交で市内の全炭坑(合法的炭坑を含む)をまとめて爆破(封鎖)してしまったのです。これが事の発端。

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 一応、当ブログで既報したものを出しておきます。

 それでも人口は増える一方(2005/08/09)
 「やっぱり人命軽視は仕様、ていうか国是」(2005/08/25)
 お得意の魔法もそろそろ限界?(2005/08/26)

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 広東省・清遠市でも炭坑封鎖をめぐって警官隊と住民の衝突があったことは 前々回お伝えしておりますが、梅州市は全部爆破してしまいました。それが玉石混交(合法的炭坑も封鎖)である上に、
作業機械など設備一切までドカーンとやってしまったために、炭坑経営者が怒髪天。ヤミ炭坑経営者も機械まで爆破されると逆ギレするのは無理からぬところでしょう。総額20億元ぐらいが吹っ飛んだ、と香港の親中紙『香港文匯報』(2005/08/27)が報じています。

 これに加えて、炭坑経営者は多くが銀行から融資を受けて事業を立ち上げています。香港紙『明報』(2005/08/27)によるとその額は様々ながら、概ね数百万元から1000万元。ヤミ炭坑だったかどうかはともかく、その事業が一夜にして水泡に帰してしまったのです。

 ヤミ炭坑かどうかは融資前の調査段階でわかってもよさそうですが、そこは「官民癒着」、炭坑経営者の背後に市当局なりがいるということで審査を通ったのでしょうか。不明です。

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 いずれにせよ、市庁舎を取り巻いて座り込んだこれら炭坑経営者たちにはもう失うものがありません。でも爆薬ならあります(笑)。

 そして、一緒に座り込んでいる炭鉱夫たち。一夜にして失業者へと身を墜としたこの人たちにも、もう失うものがありません。でもツルハシならあります(笑)。

 『明報』によると出動してきた防暴警察(機動隊)との間に激しい衝突があったようですが、その詳細は不明。座り込んでいるのは梅州市梅江区と梅県の炭坑経営者(47社?)及び炭鉱夫、とは『香港文匯報』の報道です。

 それにしても梅州市当局、いくらビビッているからといって、合法的な炭坑まで潰すことはなかったのに。機械・設備類一切合切を爆破したことも含め、これは大きな落ち度ですねえ。

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 ともあれ、この事態がどう発展するのかは続報待ちです。以下は今回引用した今朝(8月27日)時点での報道。

 ●『明報』(2005/08/27)
 http://hk.news.yahoo.com/050826/12/1fzru.html

 ●『香港文匯報』(2005/08/27)
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0508270038&cat=002CH

 しかし何と言いますか、底辺の労働者を共産党が苛めているんですからねえ。世の中も変わったものです。



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 前回の続きのようなものですが、話の範囲をもっと広げてみたいと思います。

「『低コスト・高リスク』で突っ走り、低コストの拠り所は人命(低賃金)であり、高リスクについては人命と地元当局との癒着でカバーしていく。そういう事例はいくらでもあります。……というより、それこそが「中国の特色ある」経済成長なのではないかと思えるほどです」

 と前回の文末でふれました。

「低コスト+高リスク=高収益」

 という公式はふつう成立しにくいものですが、中国ではごく当たり前のようにそれが実現してしまいます。ここ十数年の経済成長そのものがこの公式に拠っているといってもいいかも知れません。「低コスト+高リスク=高収益」こそが、すなわち中国経済の成長モデルだと。……いや、正確には無理無体なる「魔法」を使って、

「低コスト+低リスク=高収益」

 という図式に無理矢理変えてしまっているのですが。

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 前回述べたように、この公式を成立させているのは第一に人命軽視であり、第二に官民癒着です。例えば「低コスト」なら、それを支えているのは搾取し放題かつ無尽蔵、また福利厚生も薄くて済む廉価労働力であり、土地の安さなどもその範疇に入れていいでしょう。土地が安いのは、本来の価値に見合わぬ少額の補償金で農民から耕地を取り上げているからです。

 「高リスク」は、前回の炭坑でいえば安全面・衛生面などでケアしなければならない部分、それに販路(闇ルート)などです。本来顧慮しなければならないこうした方面の手当てを、官民癒着と人命軽視によって無視できるようにして、「低リスク」に変えてしまう。これが「無理無体なる魔法」というものです。「低コスト+低リスク」なら、イコール「高収益」が成立します。

 人死にがあったりしても、そこは官民癒着で揉み消しがききます。100人もまとめて死ねばさすがに隠し切れませんが、それは調子に乗り過ぎたか運が悪かったかのどちらか。そういう体たらくに立ち至っていない、つまり私たちの視界に入ってこない無数の事例が全国各地でいま現在も行われているのです。

 石炭や天然ガスの採掘だけではありません。都市の再開発における強制収用も同じ性質のものです。「低コスト+高リスク=高収益」。土地を安く買い叩く。言うことを聞かない住民には警官隊を出すか、あるいはチンピラを集めた「私兵」に暴れさせて叩き出すか。

 むろん官民癒着ですから、滅多なことがない限りニュースにはなりません。河北省・定州市の6死48傷事件をはじめ、この種の事件は当ブログでも随分取り上げていますが、これらもみな氷山の一角。調子に乗り過ぎたか運が悪かったかのどちらかなのでしょう。

 ……炭坑以外の実例を出して見せろと?ごもっともです。

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 ●上流の工業廃水で下流に「ガンの村」出現(「新華網」2005/08/20)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-08/20/content_3380474.htm

 無惨な話です。河南省を発する白河という河川、これが同省・南陽市の製紙工場から出る工業廃水で汚染され、白河という名前とは裏腹に河水は真っ黒に。その白河が湖北省に入ったところにある農村が昔からこの川を唯一の水源として生活してきたのですが、人口3000名のこの村でここ数年の間に100名以上がガンで死亡。その多くは30~50代の働き盛りだというのです。

 湖北省疾病控制中心(疾病抑制センター)がこの水を調査したところ、発ガン性物質であるフェノールの含有量が基準値の5倍以上に達していたとのこと。過マンガン酸カリウムに至っては1?平均420mgで基準値の28倍。道理でガンでバタバタと人が死ぬ訳です。

 記者が汚染の元凶である河南省・南陽市当局に取材したところ、「製紙企業はもう100社ばかりが工場を閉じて、いまは5社を残すだけだ」との回答。ところが現場に行ってみると工場を閉じたどころか、生産規模を拡大しつつガンガン稼動しているではないですか。ここにも官民癒着があり、廃水処理や下流住民へのケアを無視するという「魔法」で「低コスト+低リスク=高収益」という公式が成立しているのです。

 もっとも地元の環境保護部門では「法律が緩いからだ。企業の汚染行為を発見しても、すぐにやめさせることができない。こちらが手を出せるようになるまでに3カ月もかかる」としています。この言い分は聞いておきましょう。ただ如何に法制が整っていようとも、法治が確立しなくては意味がありません。この点において、いまの中国では「官民癒着」で法をねじ曲げられる余地が十分にあります。

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 ●工場の汚染で警官隊と衝突、農民100名以上が負傷(『太陽報』2005/08/22)
 http://the-sun.orisun.com/channels/news/20050822/20050822020416_0001.html

 これは以前、「21世紀型農民暴動」(2005/07/01)で紹介した事件の続報ですね。浙江省の田舎にある「蓄電池の里」との異名をとる企業城下町、ここの大手企業による大気汚染で鉛中毒者が村民に続出し、堪忍袋の緒が切れた農民たちが立ち上がり、騒乱に発展したケース。「反公害型」なのが新しいということで「21世紀型」としたのですが、まだ片付いていなかったんですね。

 地元当局が調停に入った、というところまでは伝えられていましたが、また官民衝突ということは談判決裂ですか。結局大手企業の税収を当て込んでいる地元当局が村民の肩を持つことはないのでしょう。

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 ●炭坑による水質汚染で衝突――重慶(『蘋果日報』2005/08/26)

 有料制なのでURLを出せませんが、香港最大手紙『蘋果日報』の報道です。重慶市で新たに開かれた炭坑が付近住民数千名の生活用水を汚染したため、8月22日、住民代表約100名が炭坑経営者との話し合いに臨もうとしたときに起きた事件です。住民が話し合いの場に向かう途中、自動車に道を塞がれたかと思うと、車内から突然刃物や棍棒を手にした男数名が飛び出し、村民に暴行。村民6名が負傷し、うち2名は重傷とのことです。

 ただこの記事のタイトルは原文だと「械闘」(双方が武器を手に戦うこと)となっているほか、「どうも双方とも組織的なまとまりがあったようだ」(特別調査チーム筋)とのことで、詳しい事情はまだ明らかになっていません。「械闘」なら住民も武器を持っていたことになります。問題の炭坑はとりあえず操業停止となっているようです。

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 ●地上げで放火、デベロッパー社員3名に判決――上海(『蘋果日報』2005/08/26)

 これは1月9日起きた事件の判決が出たというものです。舞台は上海市・徐匯区、立ち退きに応じない住民に業を煮やした開発業者が、あろうことか住民宅に放火、老夫婦が焼死したという事件です。放火を命じた上司と実行犯であるその部下に執行猶予付きの死刑判決、事件に関わったもう1名の社員は無期懲役となりました。

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 改めて強調しておきますが、新聞記事になったこれらのケースは、「越後屋+お代官」の官民癒着側が調子に乗り過ぎたか、運が悪かったかのどちらか。いずれにせよ氷山の一角にすぎません。

 ただ、昨年以来暴動事件が相次いで報じられるようになったのは件数自体の増加とメディアの努力もあるでしょうが、「低コスト+高リスク=高収益」の「高リスク」を「低リスク」に変えてしまう「無理無体な魔法」がそろそろ効かなくなっていることを示すものかも知れません。我慢にも限界というものがあります。

 でも各地で似たような事件が散発的に火花を散らしているだけでは、中共政権は危惧を抱きつつも恐怖することはないでしょう。各地の不満分子が有機的連携をとるようになると、話は変わってきます。

 その意味で、前回紹介した
広東省の炭坑閉鎖騒動への反発が何らかの火種になるかどうかにちょっと注目しています。

「お前ら無免許だな。安全基準も満たしていない。炭坑封鎖だ」

 と問題解決に積極的かつ強腰で取り組むのもいいのですが、ヤミ炭坑の経営者は以て瞑すべしとしても、その封鎖によって生じる失業者(炭鉱夫)をどうケアするのでしょう。封鎖措置に対する反発は経営者からも炭鉱夫からも、つまり労資双方から出ています。何たってツルハシに爆薬。市庁舎を吹っ飛ばしたら気持ちいいでしょうねえ(笑)。

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 それからこういうニュースもあります。

 ●退役軍人、自製爆薬で自殺(『太陽報』2005/08/26)
 http://the-sun.orisun.com/channels/news/20050826/20050826020432_0001.html

 香港紙の記事ですが、中国国内メディアも取り上げています。この手製爆薬、自殺以外の目的で使われたらどうなっていたでしょう。……ということは措くとして、この自殺した退役軍人は地元地区の
民兵の教官だったんです。民兵なら火器類も豊富です。自家製爆薬の材料もそこから調達したものかも知れませんよ。……あ、雷管と導火線は民兵の武器庫からくすねてきたものだったそうです。

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 何だか中国はいざというとき手に入りやすいところに恰好な危険物が転がっている感じですね。中共一党独裁制のもとで喘ぐ奴隷諸君、「反日」をやっても拭えない閉塞感は爆薬で吹き飛ばすというのは如何?


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 更新が滞ってしまい申し訳ありません。どうやら歳のようです。以下は月曜日(8月22日)のことですが、前夜から通常通り仕事をして、本来寝ている筈の昼間に打ち合わせがあって、近場なのでついでに靖国神社に参拝をして零戦を眺めつつ海軍コーヒー。そして夜に東京ドームで野球観戦、んで夜が来ればまた仕事。

 これですっかり消耗しまして、この数日は記事を漁るだけで精一杯でした。今週は政情に斬り込むつもりでしたが、リアルタイムに起こる事件にもふれておきたいので後回しになりそうです。

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 そのリアルタイムの事件もまた色々ありまして、旬な話題としては中国産ウナギや淡水魚の汚染問題(発癌性物質の含有量基準値オーバー)、これが表面化して香港では魚がパッタリと売れなくなる始末。ウナギは日本にも入ってくるでしょうから油断がなりません。

 それに連鎖球菌でしたか、例のブタを媒介とするとみられる「奇病」について。中国衛生部が一種の「安全宣言」を出したと思ったら、翌日に広東省が感染者&死者の出たことを公表、さらに深セン市が死者のいたことを隠蔽していたことも明らかになり、どうも北京の中央政府と地方政府の足並みがまるで揃っていないような印象です。

 ……というより「安全宣言」に当てつけるかのような広東省衛生庁の発表、なにやら含みがありそうで興味津々です。この2つの事件はいずれも現在進行形、とみていいでしょう。

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 しかし話はやはり無免許営業で安全二の次の「ヤミ炭坑」の上に落ちるべきでしょう。個別の案件としては広東省・梅州市で発生した出水事故で100名以上の死者を出した一件が記憶に新しいところです。当ブログも「それでも人口は増える一方。」(2005/08/09)で既報しております。

 3桁の死者を出すほどの規模ながら実はヤミ炭坑だった、というのが驚きですが、収益の一部が地元党幹部の懐に入る形で、つまり官民結託してやっていたので黙認されていたのでしょう。事故が起きなければバレなかったのでしょうし、現に今回の事故まではバレることがありませんでした。いや、「バレない」というよりやはり「黙認されていた」というべきでしょう。

 で、黙認されて無免許営業を続けていた期間に、実はヤミ炭坑のくせに梅州市から2003年に「先進民営企業」として表彰まで受けていたりするんです。翌2004年には年間納税額100万元以上ということで、これまた表彰を受けています。何だかベタすぎる時代劇のストーリーのようです。

 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-08/14/content_3351454.htm

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 そのヤミ炭坑、本社というべきか、豪勢なオフィスビルも所有していました。1階は左側に貴賓室多数が並び、右側にはレストラン4軒、2階はオフィスと会議室。3階は宿泊施設となっていて、休憩室やマッサージ室まで完備。ここに悪代官を招いて越後屋との密議が行われていたのでしょう。

 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-08/14/content_3351212.htm

 安全二の次という低コスト・高リスクで石炭を掘り出しては、闇ルートに流して利鞘も稼いでいたという越後屋炭坑。縮緬問屋の御隠居一行ではなく、「安全二の次」ゆえにいつかは起きる筈だった大事故がとうとう発生して、その一切が明らかになった次第です。

 この炭坑の経営者はもちろん、結託していた党幹部やら梅州市のトップクラスも摘発されました。特筆すべきはこの炭坑経営者、事故発生直後に3億元で「なかったこと」にしようと試みているのですから、どこまでも越後屋キャラです。しかし小規模な事故ならともかく、死者100名以上となれば市当局に山吹色の詰まった菓子折を贈ったくらいで隠し通せるものではありません。省当局や中央の調査チームまでを呼び込むほどの騒ぎとなり、悪代官ともどもお縄となりました。恐らく後は獄門首でしょうねえ。

 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-08/15/content_3354293.htm

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 でもこういう「越後屋+悪代官」型炭坑、中国にはいくらでもあるんでしょうね。カネをバラまいて口封じを図ったケースが他にもあります。例えば河南省・汝州市のケース。地元紙『河南商報』の記事を香港紙『明報』(2005/08/20)が伝えています。

 それによると、同市・寄料鎮のある炭坑で7月31日に死傷者の出た出水事故が発生したそうですが、これをタイムラグを置いて多数のメディアにタレ込んだ者がいて、さらに携帯メールでも事故情報を流して、こちらは500人以上に伝播したようです。

 ともかくタレ込まれたメディアがねじり鉢巻でわらわらと雲集。8月14日午後時点でその数は100社以上・記者は480人という騒ぎになりました。で、地元当局はこれら記者にカネを渡してお引き取り願ったというものです。具体的には、

 ●中央クラスメディア(例えば『人民日報』):一人当たり500元から1000元
 ●河南省内のマスコミ:一人当たり200元から500元
 ●その他、市クラスメディア:一人当り200元
 ●業種・地区をまたぐメディア:一人当り100元

 ということで、報道関係者480人に合計20万元を支払ったそうです。でもそのことをこうして報道されてしまっているので、秘策も奏功しなかったということになるのでしょう。ちなみに地元ホテルは記者多数が宿泊してくれるので商売になる、とホクホク顔。また何か事件が起きないかと期待しているそうです(笑)。あるいはこのホテル筋あたりがタレ込み屋だったのかも知れません。

 http://hk.news.yahoo.com/050819/12/1frd3.html

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 上で「悪代官+越後屋」と書きましたが、これは根の深い問題です。というのも、越後屋のヤミ炭坑と結託しているのはどうやら地元のお代官だけではなさそうなのです。

 8月22日付で国務院弁公庁が全国に通達を発しています。ヤミ炭坑に対する最後通牒ともいえるこの通達は、無免許営業や安全基準を満たしていないヤミ炭坑は即刻閉鎖するよう命じています。

 それにもうひとつ。そうしたヤミ炭坑に出資している国家機関所属の公務員、また国有企業責任者などは、1カ月以内、つまり9月22日までにヤミ炭坑と関係を絶つよう命じています。要するに越後屋炭坑は地元の代官ばかりか、江戸のお役人とも結託しているケースがある、という訳です。

 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-08/23/content_3393421.htm

 この通達がどれほどの効果をあげるかは、中央の統制力をみる上でのひとつの目安となることでしょう。使い古された言葉ですが、

「上有政策,下有対策」(中央に政策あらば地方には対策あり)

 ということで、地方のお代官どもは多寡をくくっているような気がします。

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 梅州市の一件に話を戻しますと、事故を起こした炭坑を含め、広東省当局の命令により同市の炭坑は「一時操業停止・無許可なら封鎖」ということになりました。さあそれで困ったのが同市のセメント生産企業。実は梅州市、セメントの生産基地として有名であり、同市の大小多数の炭坑から掘り出される石炭の供給先でもありました。

 操業停止命令で激震が走ったのはむしろこれらセメント工場の方でした。「この状況が1カ月続いたら、梅州のセメント業界は崩壊する」と大慌て。石炭供給契約を結んでいた炭坑会社の中にはインドネシア産の石炭を急遽輸入し代替供給することで巨額の違約金を支払うことから免れたところもあるそうです。

 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0508210017&cat=002CH

 ちなみに「一時操業停止・無許可なら封鎖」の措置は全省を対象としており、梅州市ばかりではありません。他にも清遠市、連州市、韶関市といった炭坑の集中している地区があります。事故を起こした梅州市はともかく、他の地域は省当局によるこの強硬措置に一斉に反発した模様です。

「清遠、連州で炭坑を閉鎖された経営者が警官を銃撃」

 という噂が一時流れたほどです。これは誤報と判明したそうですが、実際に警官2名がレンガで頭を負傷したとのこと。他にも清遠市で封鎖措置が執行される際、担当者を護衛する武装警察や警官衝突と地元民が衝突し、地元民5名と警官多数が負傷、13人が逮捕されています。

 韶関市では市政府庁舎に対する陳情活動(上訪)が実施され、その人数は当初数百人だったのがいつしか数千人に膨脹、万一に備え武装警察が出動する騒ぎとなりました。

 この程度で済んでいるうちはいいのです。なにせ炭坑業者だけに物騒なものをたくさん持っています。ツルハシもあれば爆薬も。炭坑封鎖は経営者にとっても痛いでしょうが、炭鉱夫も失業同然となるのでシャレになりません。

 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0508210014&cat=002CH

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 全国の炭坑に安全基準を満たさせるには500億元が必要。……と関連機関が報告しています。要するにこの500億元をケチり、代わりに人命でカバーしているのが現在の中国です。昨年の統計によれば、採掘量百万トン当たりの平均死者数は3.1。つまり百万トン掘り出すごとに3人が死んでいる計算で、これは米国の100倍にも達する危険度だそうです。中国の石炭産出量は全世界の31%を占めますが、死者数は全世界の79%。

 http://society.people.com.cn/GB/1063/3635929.html

 これが石炭業界だけならともかく、そうでないから馬鹿になりません。「低コスト・高リスク」でとにかく突っ走る。低コストの拠り所も、高リスクをカバーするのも、人命軽視と地元当局との癒着。そういう事例は現実にいくらでもあるでしょう。……というより、それこそが「有中国特色的」(中国の特色ある)経済成長なのではないかと思えるほどです。

 この状況下で打ち出されたお題目が「調和社会の実現を」というのは、悪い冗談としか思えません。



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 週末なので気楽にいきます。

 中国とロシアがやっている軍事演習、火曜日(8月23日)から最後の第三段階に入るようですが、なかなか順調……とはいかない部分もあるようです。

 ウラジオストックで実施された第一段階は双方司令部による4~5時間をかけた図上演習だったかと思います。両軍の参謀長が「概ね満足」との感想を明らかにしていますが、擦り合わせの上手く行かなかった部分も少なくなかったようです。

 各兵種による協同が天候のほか指揮系統、それに通信の乱れなどもあり、理想的な内容ではなかったと親中紙『香港文匯報』(2005/08/20)が報じています。ロシア側司令部筋によると、指揮系統における言葉の問題、それに双方の兵站ルート、つまり補給線がそれぞれ独立した体系であることも、協同作戦の障害となったとのこと。

 ●香港文匯報(2005/08/20)
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0508200003&cat=002CH

 香港における親中紙の筆頭格がそう報じているのですから、事実そうだったのでしょう。

 ――――

 加えて、同行しているロシア側プレスからも不協和音が出ているようです。中国側の情報公開の不十分と演習に関する報道ぶりが「伝統的習慣」(つまり都合のいいことばかり報じる)に徹しており、こうしたことも今回の共同軍事演習の方向性と目的を不透明なものにしている、と批判。

 ●香港文匯報(2005/08/20)
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0508200004&cat=002CH

 香港における親中紙の筆頭格がそう報じているのですから、事実そうだったのでしょう。

 ――――

 で、興味深いことがひとつ。この共同軍事演習の費用分担についてです。

 香港紙『明報』『太陽報』は、いずれも中国側が全額負担したというロシア紙(『Kommersant』、中国名は『商人報』)の報道を伝えています。

 ●『明報』(2005/08/20)
 http://hk.news.yahoo.com/050819/12/1frcr.html

 ●『太陽報』(2005/08/20)
 http://the-sun.orisun.com/channels/news/20050820/20050820024659_0001.html

 ――――

 このロシア紙によると、

「費用は中国側が負担すると申し出た」
(『明報』)

「中国がロシア側の費用をも負担するのは、今回の演習を利用してロシアが中国に兵器売り込みをかけているとの対外的な『広告宣伝費用』のようなもの」
(『太陽報』)

 とのことです。

 ――――

 となると、香港における親中紙の筆頭格『香港文匯報』がこの件についてどう報じているかが見物なのですが、同日にちゃんと報じています。ただし言葉を濁しているところがこれまた興味深いです(笑)。

 ●専門家は共同軍事演習の費用はAA制だろうと推測(『香港文匯報』2005/08/20)
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0508200011&cat=002CH

 「AA制」というのは要するに「割勘」のことです。この報道では中国軍事科学院の研究員が中国国内誌『兵器知識』に語った内容が引用されています。

「費用は両国の経済力に大差がなければふつうはAA制であり、もし両国間における貧富の差が大きい場合は、一般に経済力のある国の負担となる」

 ということで、それで今回はどっちなんだよ、という肝心な点については明確な回答が示されていません。

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 演習は現在第二段階、山東省青島市を中心とした地域での敵前上陸演習などが行われています。これが台湾侵攻を想定したものだと海外では取り沙汰されていますが、その台湾は8月20日、

「自国の戦闘機『ミラージュ2000』が中国の戦闘機及び対空ミサイルからロックオンされた」

 とのことを、その際のディスプレイの映像を公開しつつ明らかにしています。それがいつのことなのかは言及されてされていませんが、台湾海峡が中国側の「友好的でない振る舞い」で緊張しつつあるとアピール。翌日の香港各紙(8月21日付)も一斉にそれを報じました。このあたり、宣伝合戦のようで面白いです。

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 それにしてもやはり気になります。演習が中国の全額負担だとすれば政情を含め、色々な憶測ができますからね。


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 中国政治が動き出した気配を感じつつ、別の話題でお茶を濁してしまったかのような一週間でした(反省)。

 来週は書き漏らしていることにふれつつ、その「気配」について考えていきたいと思います。でも順序だてて取り組むことになるので、迂遠なようでもまずは尖閣問題あたりから話を始めることになるでしょう。

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 それはそうと、配偶者(香港人)が生意気にも「私もブログを書いてみたい」と言い出しましたので、やむなく助太刀することになりました。というか二週間ほど前から人知れずやっています。

 ブログで学ぶ広東語/香港のあれこれ

 私も香港に関する何事かを書く破目になっております。私にしてみると、当ブログは娯楽(チナヲチ)日記のようなものです。配偶者のブログではヲチをしません。香港や香港人なるものに対する愚痴……だけだと配偶者の友人(日本人)など香港贔屓の方々が寄り付かなくなってしまうので(笑)、それに加えて雑談を書き並べていくことになると思います。

 香港人の見解を知りたいという方は、配偶者のエントリーのコメント欄に質問を書いて頂ければ、配偶者が馬鹿なりに懸命に考えてレスをつけると思います。あくまでも一香港人(しかも私に輪をかけて無教養)の個人的見解にすぎませんけど。

 で、それだけではありきたりなので、「音」を使ってみました。毎回文末に広東語の基本会話を配偶者に喋らせております。これをひとつひとつ耳コピして暗記していけば、いつかは広東語での意思疎通が可能なレベルになるのではないか、という「一国家二制度」にも負けない壮大なる実験です(笑)。ただ北京語学習中の方にはお勧めできません。発音が崩れますので。

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 以上、とりあえずそういう破目になってしまったという業務連絡のようなものです。もちろん私は娯楽優先ですから、当ブログの更新が助太刀によって滞ることはありませんので御心配なく。


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 【追記】
日本の海上自衛隊の新造艦について「大和」ないしは「長門」と命名する腹案があったものの、第二次大戦のイメージが強いことを考慮して再考することにしたらしい……というニュースが日本でも流れましたが、今朝の香港最大手紙『蘋果日報』(2005/08/21)にもその記事が出ています。後段は共同通信電の引き写しですが、よせばいいのに、前半は同紙記者が自ら解説したもののようです。その部分を訳出します。

「『大和』といえば少なからずの人が日本の軍国主義を想起するだろう。なぜなら「大和」は第二次大戦における世界最大かつ最強の戦艦であり、
山本五十六が発動した「神風決死隊」(原文は「神風敢死隊」)作戦の母艦でもある。

 神風特別攻撃隊が初めて公式に編成されたのは昭和19年10月、フィリピンにおいてです。この時点で山本五十六はすでにこの世にいません。昭和18年4月18日に前線視察途上を米戦闘機に急襲されて戦死しています。むろん昭和20年4月に実施された「大和」の特攻作戦にも無縁です。こんなことはちょっと調べればわかることでしょう。

 でも、それができない。資料の蓄積が新聞社にないのと、記者の資質が著しく劣っているためです。せめて検索でもかけりゃいいのに、このあたりは横着+無責任の発露でしょう。ともあれ、この体たらくでは日本に対して歴史問題を提起する資格はなさそうですね。

 香港のプレスなんざ所詮はこの程度。保釣運動(尖閣防衛運動)で活動家の領海侵犯阻止に出動した海上保安庁の巡視艇を、「海上自衛隊の軍艦」と敢えて虚報を飛ばしたりもするんですから。それら一切を真に受ける民度も民度ですけど。(2005/08/21/13:10)



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 私は家で仕事をすることが多いので、普通の勤め人に比べれば、外出する機会は多くありません。自然な成り行きとして、街角で香港人に接触するケースもほとんどありません。

 稀に近くで広東語を耳にすると、雑談を試みたりします。私は北京語出身です。配偶者が香港人とはいえ、広東語は仕事で必要な最低限のことを、通じるかどうかも怪しい発音でしか口にできないのですが、そんなことはお構いなしです。

 ただし、愚昧な振る舞いをする香港人を目にするとバトルモードに入ります。それが報道関係者だったりすると、一応同業者のようなもの(副業)なので絶対に容赦しません。

 香港でのことならアウェーだからと思って我慢したりするのですが、幸いここはホームです。いまは体罰禁止が主流なので手荒い真似はしませんけど、まず怒鳴り付けて、水をぶっかけて大人しくさせてから説教を垂れます。意地悪じゃないですよ。あくまでも親切心と老婆心から出た教育的指導です(笑)。

 そんな訳で、香港某局テレビクルーの皆さん。あの日あそこで、「ここはお前らの来る場所ではない」と喧嘩を吹っかけたのは私です(笑)。

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 「あの日あそこで」とは、一週間ばかり前の8月15日午前8時ごろ、場所は靖国神社です。

 私は市井の一隅に暮らす小市民に過ぎず、特別な主義主張や信条はなく、むろん勤王の志士などではありません。ただ、いまこうして毎日呑気に暮らしていられるのも散華された先人のお蔭であり、それを参拝という形で感謝することを自然なことと考えている一人です。

 要するに朝起きたら顔を洗うのと同ようなもので、仕事の打ち合わせなどで近くに行く用事があれば必ず足を運ぶようにしています。実は境内にある「遊就館」という博物館のような場所に、私が幼稚園のころから大好きだった零式戦闘機が展示されており、それを眺めつつ海軍コーヒーを飲むという悦楽があるのも理由のひとつです。

 で、8月15日は近くに用事もなかったのですが、節目ですので足を運びました。拙宅からだと地下鉄ですぐという気軽さもあり、混まないうちに参拝を済ませようと早めに出かけた訳です。

 ……すると、二の鳥居の手前当たりで背後から広東語が聞こえてきました。振り返るとどうやら香港のテレビクルー(3人組)のようですが、私はすぐあることに気付き、バトルモードもとい「教育的指導モード」に入りました。

 ――――

「 o畏 o畏 o畏 」(おいおいおい)

 と呼び止めてから、

「 イ尓 o地 係 香 港 人 o黎 o架 ? 」(君たちは香港人か)

 と聞かでものことですが一応念を押しますと、

「 係 呀 」(そうです)

 と愛想よく答えます。たぶん怪し気な広東語を操る変な日本人だと思ったのでしょう。私が取材者ならこれを奇貨として、インタビューに持ち込むところです。

「 電 視 台 ? …… 邊 間 ? 」(テレビ局?……どこの局?)

 と尋ねたらこれも笑顔で答えてくれたのですが、私には聞き取れませんでした。カメラについているロゴも見たことのないもので、TVBやATVでもなければ、有線電視でもないことは確かです。

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 で、和んでおいて水をぶっかけるのが香港人に対する私の流儀です。

「 我 話 俾 イ尓 o地 知 , o尼 o個 地 方 係 唔 o岩 イ尓 o地 o架 」(言っておくが、ここは君たちの来る場所ではない)

 と、いきなり相手の横っ面を張るようなことを言いました。向こうも唐突な言葉に驚いたようでしたが、テレビ局が取材するのに問題ない筈だ、という意味のことを言ってきました。私の思う壷です。

「 有 無 攪 ~ 錯(これが言いたかったw)。 イ尓 o地 又 無 資 格 , 點 可 以 採 訪 o者 」(ヴァカですか?資格もないのに取材できる訳がないだろう)

「 o羊 資 格 ? イ尓 話 香 港 人 無 資 格 採 訪 靖 国 神 社 o架 ? 」(何の資格です?香港人は靖国神社を取材する資格がないと言うのですか?)

 と切り返してきます。ようやく険悪な雰囲気が出てきました。いい感じです(笑)。

 ――――

 でも、あとは話を落とすだけです。

「 o甘 イ尓 o地 有 無 press pass 先 ? 登 記 o左 未 ? 」(じゃあ君たち、プレスパスは持ってるか?登録したのか?)

 と指摘してやりました。連中がプレスパスをつけていないから私は絡んだのです。

「 要 登 記 o羊 ? 」(登録が必要なんですか?)

 と、バトルモードに入ろうとしていた相手も虚を突かれたような顔をしています。

「 嘩 , 後 生 仔 , 原 来 o係 香 港 唔 知 o尼 o的 o野 都 可 以 做 記 者 o架 ? 」(うわー、おい若いの、香港ではそんなことを知らなくても記者が勤まるのか)

 ケッ、バーカとばかりにダメ出ししておいて、

「 我 帯 イ尓 o地 去 登 記 處 o個 度 」(登録するところに連れていってやるよ)

 と、「報道受付」のテントまで案内して、プレス登録の手伝いをしてやりました。
「多謝晒多謝晒」と感謝されたのは言うまでもありません。

 ――――

 私が言うのも何ですが、
香港のプレスは糞レベルです。

「狗仔隊」

 という異名があるほどです。試しにこの単語をエキサイト翻訳にかけてみたら、

「パパラッチ」

 と見事に翻訳されたので笑ってしまいました。そうなのです。香港のプレスは潜入取材や突撃ルポではなかなかやりますが、つまりはパパラッチの水準で、いつまで経ってもそこから進化しません。先輩がそのレベルで止まるので次の世代もそこまでで止まります。その繰り返しです。だいたい腰を据えて育ててやろうとしてもすぐ別の業界へ転じてしまうので徒労に終わることが多いです。

 華字紙の場合、真面目なニュースの報道をみれば、その大半が『東スポ』レベルか、よくてもスポーツ新聞の政治・社会欄の水準であることがわかります。これは記者の実力の反映でもあり、読者(香港人)のニーズの反映でもあります。

 「一番売れている新聞を読めばその国の民度がわかる」とはよく言ったもので、正にその通りだと私は思います。報道レベルの低さにせよ、知的所有権を全く無視した姿勢、パクリなどはまだマシで日本の雑誌や新聞の写真をスキャンして使ったり記事を無断転載したり、甚だしくは記事を翻訳して作者を自分の名前に書き換えたりすることも厭いません。

 所詮はパパラッチですから、フォーマルな取材に慣れていません。ですから手続きを踏む必要のある場、例えば日本の展示会やイベントなどではしばしば恥をかいたりトラブルを起こしたりします。

 今回も、「カメラさえ担いでいけば大丈夫だろう」という相変わらずな姿勢の無知&無恥っぷりに、ちょっと水をぶっかけてやっただけです。最後には感謝されたので私は徳を積んだことになるのでしょう(笑)。「でもアウェーのときだってそのくらいやってるじゃん」というツッコミは入れないお約束。

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 ちなみに、前述したように私は北京語出身ですから、広東語でなく北京語であれば色々話すこともできます。でも北京語を耳にしても話しかける気にはなりません。

 いまや冗談でなく「中国人を見たら110番」の御時世です。大陸の中国人(台湾・香港・マカオを含まず)は外国人犯罪の国別件数で16年連続トップ。まさに中国語でいう「男盗女娼」(男は泥棒、女は娼婦)ですから、好んで接近する気にはなれません。

 配偶者にも「大陸系の連中とは友達付き合いをするな」と言ってあります。仮にその友達が悪い人間でなくても、そこから友達つながりでどういう筋に行き着くかわかりません。私は御家人、下級幕臣ですからお扶持の少ない貧乏所帯なのですが、一応幕臣ですからお城から遠くないところに住んでおります(風水激悪ゆえの超格安物件)。住所だけをみれば金持ちと誤解されかねないので、殊更そう言って聞かせています。

 あ、上で台湾・香港・マカオと並記してしまいましたが、これは便宜上そうしたまでです。台湾は中共政権とは全く無関係であり、台湾で一国をなしています。ですから本来並記すべきものではないことを最後に強調しておきます。

 それから前掲した私の広東語は無手勝流ですので参考にしてはいけません。香港人の言葉も私の記憶モードですから当てになりません。まあ、あとで配偶者が添削してくれるでしょう。


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 【追記】
日本の海上自衛隊の新造艦について「大和」ないしは「長門」と命名する腹案があったものの、第二次大戦のイメージが強いことを考慮して再検討することにしたらしい……というニュースが日本でも流れましたが、今朝の香港最大手紙『蘋果日報』(2005/08/21)にもその記事が出ています。後段は共同通信電の引き写しですが、よせばいいのに、前半は同紙記者が自ら解説したもののようです。その部分を訳出します。

「『大和』といえば少なからずの人が日本の軍国主義を想起するだろう。なぜなら『大和』は第二次大戦における世界最大かつ最強の戦艦であり、
山本五十六が発動した「神風決死隊」(原文は「神風敢死隊」)作戦の母艦でもある。

 神風特別攻撃隊が初めて公式に編成されたのは昭和19年10月、フィリピンにおいてです。この時点で山本五十六はすでにこの世にいません。昭和18年4月18日に前線視察途上を米戦闘機に急襲されて戦死しています。むろん昭和20年4月に実施された「大和」の特攻作戦にも無縁です。こんなことはちょっと調べればわかることでしょう。

 でも、それができない。資料の蓄積が新聞社にないのと、記者の資質が著しく劣っているためです。せめて検索でもかけりゃいいのに、このあたりは横着+無責任の発露でしょう。ともあれ、日本に対して歴史問題を提起する資格はなさそうです。

 ……ね?香港のプレスなんざ糞レベル、と上述した通り、所詮はこの程度なんです。それを真に受ける読者(香港人)の民度も民度ですけどねえ。保釣運動(尖閣防衛運動)で活動家の領海侵犯阻止に出動した海上保安庁の巡視艇を、「海上自衛隊の軍艦」と敢えて虚報を飛ばしたりもするんですから。

 こういう水準の手合いを引っ張っていくのは気骨が折れますし白髪も増えます。実力に反比例してプライドばかりは変に高い連中ですから(この点はもう水ぶっかけて飼い馴らしていますけど)。旅行で訪れるのと違って、実際に現地に住んでそういうレベルの環境(しかも自分だけ日本人とか)に身を置いてみると、なかなか香港に好感を抱くのが難しいものです。

 でもまあ、馬鹿ほど可愛いと言いますか、文句を垂れたり愚痴をこぼしたりしつつも、相変わらず足抜けができないまま現在に至っております。連中も私によくついてきてくれますし(笑)。前途には一筋の光明すら見出せないのですが、これは香港そのものの問題ですから仕方がありません。(2005/08/21/12:19)



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 中国政治が動き出した気配を示しているこの時期に香港人論とは呑気なようでもありますが、前回のコメント欄においてその話題で盛り上がってしまいました。改めてレスをつけていくと長くなってしまいます。という訳で当ブログで時折やっているケースですが、こちらに持ってきました。「通りすがり」さん、「@」さん、御了承下さい。

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◆反日香港人?(通りすがり)2005-08-17 17:21:24

 はじめまして。香港在住です。

 香港に移り住んで既に15年以上になります。

 その間、反日感情を持った香港人に出会った事は(幸いなことに)今まで一度もありません。ラジオやテレビでも「かわいい」「サイコー」「バンザーイ」などの日本語が日常的に使われていて、かなり親日的な国だと思っています。

 若い世代でも天安門事件のことはよく知ってます。例え教科書に記述が少なくても、ネットや事件を知っている世代からちゃんと聞いてますし。

 今でも6月4日には大規模な抗議集会がコーズウエイベイのビクトリアパークで毎年開かれてます。

 香港人は「反日感情」より「反中央政府感情」の方が強いと思ってます。

 事実、この間の反日デモは非常に規模の小さなものでしたが(しかもあの団体は中央政府寄りの「魚釣島グループ」です)、2年前の7月1日返還記念日には中央政府と前香港総督に対する50万規模のデモが起きています。(これは中央政府が「報道規制を出来る新しい法律23法」を無理矢理議会に通そうとしたからです)

 「何を今更60年前のことを」と思っている人も多いですよ。香港人にとっては過去の出来事より現在のビジネスの方が重要ですから。

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◆追記(通りすがり)2005-08-17 17:33:40

 今の香港人は内地人(中国人をこう呼んでます)を嫌悪してます。内地のツアー客が香港に来て金を落としまくるので香港の景気はかなり回復しましたが、彼らの態度の悪さにはさすがの香港人も辟易しています。

 香港人に「どちらの国の方ですか?」と聞けば必ず「香港人です」と答えるはずです。絶対に「私は中国人です」とは言いません。

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◆Re:反日香港人(@)2005-08-17 23:18:06

>>通りすがり様

 初めまして。

 小生も現在二回目の駐在をしております。一回目は返還前でした。ご存知のように変化は歴然です。返還直後から人口は大陸からの流入で数十万人増加、公私共に大陸人との接触なしには済まされなくなっています。着目すべきは返還後の流入人口が官のみならず民間でもかなりの力を既に手中にしているという点です。テレビでは支那国家の起来!を聞かない日はなく、若い世代から真っ赤に染まるのに時間はかからないでしょう。

 小生4月のヴィクトリアパークの反日デモを見物に行ったのですが、天安門糾弾の横断幕を掲げた学生たちが田舎臭い親父たちに取り囲まれボコボコにされておりました。(勿論報道されず。)既に香港は終わっていると思います。

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◆Unknown(通りすがり)2005-08-18 01:03:07

>>@さま

 早速のレス、どうも有り難うございます。

 天安門糾弾の横断幕を掲げた学生たちがボコボコにされていたのは香港のローカルテレビ局でも放送されておりました。

 ちなみにあの「田舎臭い親父たち」は極めて中国寄りの「魚釣島グループ」の人たちです。(プロ市民とお呼びすれば良いのでしょうか)

 今でこそ他国への移民は減少しておりますが、機会があれば香港人は簡単に国籍を移します。(移すというより「国籍を増やす」ですね。2、3カ国の国籍を保持する香港人も少なくありません)

 それは、中国政府に恐怖感や不安感を感じる人はいても親近感や愛情を感じる人は少ないからだと思います。

 去年、中央政府が「香港人は愛国心が足りない」と香港人に文句をつけてきたのに対して相当数の香港人が反発していました。「愛国」は強制されるものじゃない、と。

 この事件の後、中央政府は「全てのニュースの前に『中国国歌』を流すように指示してきました。「愛国」を芽生えさせようとしているようですが、この試みは香港人にかなり不評です。

 また、香港ローカルテレビ局「ATV」「TVB」はかなり中央政府寄りで政府の広報のようなものです。ケーブルテレビは割と中立なのでニュースの前に『国歌』は流しておりません。

 「思想」より「日本のアニメ、ゲーム、コミック、ドラマ」の方が大切だと思っている香港人は相当数存在すると思います。(香港人の私のだんなさんも含めて)

 大学の日本語コースは未だに大人気で、日本向けツアーはいつでも満席です。

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>>「通りすがり」さん

 はじめまして。私は返還前から返還後にかけて香港に住んでいましたが、反日香港人には私も出会ったことがありません。御指摘のように、香港では日本文花の受容度も非常に高いですね。

 ただその一方で、日本人をどこか見下す、あるいは多寡をくくる感情が香港人にはあるように思います。

「o架仔」
「死o架仔」
「蘿蔔頭」

 などはいずれも日本人を指す一種の差別用語で、日本人がいないところではよく使われる言葉です。差別用語とまでいかなくとも悪意や軽蔑の意が込められており、少なくとも親しみを現わす単語ではありません。

 
「かわいい・サイコー・バンザーイなどの日本語が日常的に使われている=親日的」という見方は表面的に過ぎるように愚考します。イコールで結ぶなら「日本文化の受容度が高い」、ではないでしょうか。

 日本モノが大好きな香港人は確かにたくさんいますけど、それは日本製品・文化を好む(いいものだから愛用する)というだけで、台湾の「哈日族」のような「日本に対する憧れ」のような感情はないように思います。これは物事を現実的に捉え処理することに長けた香港人の特徴が出ているのかも知れません。

 ――――

 それから香港人の底流には反日感情があり、社会に閉塞感が強まるとそれが表面化するように思います。この「反日感情」とは中共史観の賜物でもあり、香港がかつて日本に占領されたことに起因してもいます。

 さらにいえば、香港人にみられる「小中華思想」「大香港主義」(香港がいちばん!という井の中の蛙的感覚)が作用していることもあるでしょう。この辺は大陸の中国人が「小日本」という感覚で日本を捉えるのに似ていると思います。「反日感情」が適切でないなら「侮日感情」でもいいでしょう。

 この「反日感情」と「反中央感情」はどちらが強いかなどと並べて論じる性質のものではないと思います。大雑把になりますが、前者は香港社会で生まれ育つなかで自然に身につく属性(体質)、後者は現実の生活の中で直面する問題によって起こる反発だと私はみています。後者の実例として、今春にその無能ぶりが大不評だった初代行政長官(香港のトップ)董建華氏が辞任(事実上の更迭)した途端、世論調査における中央政府への好感度がいきなり高まったことを指摘しておきます(ただ一般的に、程度の低い中共のやり口と高飛車ぶりにムカついている香港人が多数派であることは確かだと思います)。

 ――――

 社会に閉塞感が強まるというのは、政治・経済の先行きが不透明だったり、不況で失業率が高まったり、中共政権からの理不尽な政治的圧力がかかったりして「不満・不安」ムードが社会に充満することです。普通選挙制が未だに実施されていないことも「不満・不安」ムードの昂揚を助長するでしょう。でも表立って中共に「No」と言うことができないので「反日」に走ることになります。

 中国肺炎(SARS)や国安条例(23条)のような香港政府に直接ぶつけられる問題があれば、2003年の50万人デモのような形で意思表示とガス抜きを行うことができます。そういうインパクトのあるテーマがなければ「反日」の出番となります。要するに「北京に楯突くことはできないし香港政府を叩く恰好のネタもないから反日に走る」というものです。そこには、「反日」なら「反北京」を唱えるのと違って政治的・社会的リスクを負う必要がないし……という現実的な計算も働いています。

 もちろんこれは「反日」の土壌が香港社会の底流にあるからこそ生じる現象で、例えば台湾などで同様の現象が起こることは考えにくいです。15年間も滞在されているのであれば1996年の保釣運動(尖閣防衛運動)を御存知でしょう。あれはその典型例です。普通なら「長毛」や「阿牛」のようなごく少数の騒ぎ屋がマスコミへの露出と選挙の票集めを狙って騒ぐだけですが、「反日」モードに入ると市民もそれを支援するため、一種のムーブメントとなります。

 ――――

「若い世代でも天安門事件のことはよく知ってます。例え教科書に記述が少なくても、ネットや事件を知っている世代からちゃんと聞いてますし。今でも6月4日には大規模な抗議集会がコーズウエイベイのビクトリアパークで毎年開かれてます。」

 とのことですが、

「若い世代の中にも天安門事件のことをよく知っている者がいる」

 というべきではないでしょうか。そもそも教科書に記述がないこと自体が問題のように思うのです。

 ビクトリアパーク(維園)で今年も開かれた六四集会に関する地元華字紙(親中紙を除く)の報道を読み返してみると、天安門事件(六四)に象徴される1989年の民主化運動に対し、若い世代の香港人(中学生~大学生)は知識・認識が乏しいこと、また主催者側もそれを懸念し、一方で事件の風化を憂慮していることなどが報じられています。実際、15周年という節目だった昨年を別とすれば、集会の動員力は基本的には右肩下がりの低落傾向ですから。

 ――――

 以上はあくまでも私の個人的体験に基づいた見解です。滞在時の立場によって付き合う香港人の顔ぶれも変わってきます。英語か北京語でローカルスタッフと会話する駐在員か、広東語を使わなければならない「自分だけ日本人」状態か、によっても香港人に対するイメージも変わってくるように思います。私も「通りすがり」さん同様、香港人を配偶者に持つ者ですが、その配偶者の香港における社会的地位によっても香港への認識は異なってくるでしょう。

 あとはもしお時間があれば私が香港人について書いた以下のエントリーを参考にして頂けると幸いです。

 ●香港人からみた「中国の一例」上(2005/02/18)
 ●香港人からみた「中国の一例」下(2005/02/19)
 ●香港はまだまだ野蛮。でも四つ足より50年はマトモ。(2005/06/02)
 ●エレキ爺が奏でるは六四哀歌か(2005/06/06)

  あ、ひとつ言い忘れました。香港人が大陸からの観光客(自由行)を嫌っているのは事実ですが、ツアー客の香港に対する印象も悪い(リピーターになる可能性が低い)という調査結果が最近出て、観光業界を悩ませているようです。あと中国国内の動乱期に密入境してきた世代、60代以上ですが、大陸生まれである種の望郷意識を大陸に対して持つこの世代がおしなべて「私は香港人です」と言うかどうかは甚だ疑問です。

 ――――

>>「@」さん

 まさか香港にお住まいとは思いませんでした!(『争鳴』や『開放』が安く買えるでしょう?羨ましい限りです)。レスが短くなってしまい申し訳ありませんが、

「既に香港は終わっていると思います。」

 との見方に私も賛成です。これは中共ばかりが悪いのではなく、ITバブルがはじけたこともありますし、中国の経済発展や珠海デルタ地区の成長鈍化傾向によって、

「金融センター」
「中国進出の窓口」
「中継貿易の拠点」

 といった従来の香港の役割が、奪われつつあることも一因です。

 政治的には「45秒のMTV」(テレビで流れる国歌)もそうですし、学校教育の現場で「国情教育」などの名目で行われる中共賛美、また本格的な中共史観の導入で、私たちやひとつ上の世代の香港人と価値観を共有できない「おぞましい新世代」が量産されつつあることが挙げられます。

 それからどこまでも救いのない選挙制度と立法会の議席構成。仮に普通選挙制が導入されたとしても、最後に全人代(全国人民代表大会。中国の立法機関)常務委員会からOKをもらわないと無効選挙にされてしまいます。自分たちの代表やトップを自分たちで決めることができない。永遠に「植民地」です。

 香港はもはや終わっていると私も思います。具体的には、ディズニーランド建設が決まった時点で引導を渡されたものと考えています。


 ――――


 【追記】
以前紹介しましたが、香港紙『明報』(2005/02/15)が、香港市民に対して公民教育委員会が実施したアンケートの結果を報じています。「祖国意識」「国民意識」の浸透ぶりを確認する調査だったようです。

 http://hk.news.yahoo.com/050214/12/19f95.html

「あなたは××人?」

 ●中国人(25%)
 ●香港の中国人(23.3%)
 ●香港人(21.2%)
 ●中国の香港人(19.2%)

 中国返還から今年で8年になりますが、香港人における「中国人意識」はまだ半数にも達していません。「中国国民」という意識は15-19歳が最も低かったそうです。

 とはいえ、これを以て「香港人の中で『自分は中国人』と揺るぎなく答える人が4分の1に達している」と言うこともできます(「香港の中国人」を加えれば半数近く。ただし「自分は中国人=中共政権支持」ではないでしょう)。

 ……という訳で「通りすがり」さん、あるいはまだお若いのかも知れませんが、

「香港人に『どちらの国の方ですか?』と聞けば必ず『香港人です』と答えるはずです。絶対に『私は中国人です』とは言いません」

 という、真正面からぶった斬るような力強い断定は控えた方がよろしいかと思います。(2005/08/18/15:17)



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 標題の通り支那豚の話です。いや支那豚といっても畜類同然の奴らのことではなく本物のブタ……ああ、あれも中国産だからやっぱり支那豚ですか(笑)。

 豚の連鎖球菌(あるいはその変種)に感染して四川省で何十人か死んだ一件、あれからどうなっているのでしょう。

 感染者数・死者数などは衛生部が毎日発表していましたが、新たな病例がほぼ認められなくなったということで、8月8日をもって毎日の定例発表をやめて新規の患者が出れば報告するという方法に切り替えています。「感染者の拡大はしっかり抑えられた」と、一種の安全宣言も出しています。

 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-08/08/content_3327528.htm

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 ただ豚肉の流通には当局も神経質になっているようです。重慶市では病死した豚やその肉を解体、購入、輸送、隠匿した者に対しては刑事罰として最高で無期懲役という厳罰を下すとのこと。これがやはり8月8日です。

 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-08/08/content_3326666.htm

 でも市場に流れてしまったものも随分あるのではないでしょうか。四川省もチェックを厳しくしていたのですが、8月8日までに没収した病死した豚の肉は合計29トン。他に検疫を経ていない豚肉が15トンに達したそうです。

 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-08/10/content_3334450.htm

 ――――

 「新規患者が出れば発表する」というのは中国的解釈で翻訳すると、

「この件、今日からは機密事項にするから」

 と内外メディアに向けて宣言したようでもあります。私はこのニュースに関しては国営通信社・新華社のウェブサイト「新華網」で記事を漁っているのですが、

 ●香港で新規の感染者1名(「新華網」2005/08/10)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-08/10/content_3336937.htm

 という香港での1例しか新規感染者に関する報道がありません。香港なら内外のマスコミに洩れますから「仕方ねーなー」ということで中国国内メディアにも発表を行ったのかも知れません。

 ところがここに来てちょっと動きがありました。

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 8月15日付の香港紙の多くがトップ扱いで報じたのですが、『蘋果日報』『明報』『東方日報』『太陽報』(2005/08/15)などによると、香港と境を接する深セン市が先週土曜日(8月13日)、南山区など市内の市場などで販売されていた豚肉を一斉に回収し始めたのです。回収しただけでなく、

「豚肉を買った者は当局に差し出すように」

 という通達を街のあちこちに貼る一方、住宅地にも担当者を派遣して一世帯ごとシラミ潰しに「豚肉狩り」を行ったとのこと。食べてしまった市民については名前を登録させる徹底ぶりですが、理由は明らかにされていません。

 ――――

 理由が明らかにされなければ様々な憶測を呼ぶのは自然なことです。特にお隣の香港。

「個別訪問してまで回収に走るとは、連鎖球菌などより深刻な状況が起きているのではないか」(『蘋果日報』)

 という専門家の声を紹介したり、治安当局も「豚肉狩り」に躍起になっているという噂を紹介。さらに今回回収された豚肉は河南省産らしいという情報に、河南省の担当部門に電話取材しもしています。河南省の担当者は、

「あり得ない!そんなことは起きていないし、公告も出していない」

 と全面否定。ただし広東省衛生庁の黄飛・副庁長は深セン市が豚肉回収に動いていることを認め、同市担当部門の管轄内での出来事だとコメントしています(つまり広東省はこの件にタッチしていないということ)。

 ――――

 『明報』は豚肉回収の原因は寄生虫を持つ豚だったため、との噂を伝えていますが、同時に香港の専門家の見方として、

「原因が寄生虫なら解体などの処理の段階で感染・発病することはないし、火を通せば食べても問題はない。寄生虫でこれほど大がかりな措置が採られるのは奇妙だ。何か他に原因があるのではないか」

 という声を紹介。一方で業界団体に取材しており、香港で消費される豚肉は主に山東・四川・湖南産で、河南産は1箱25kgという小単位で輸入されているとしています。

 ただ小分けして入ってくるものの、香港における河南産豚肉のシェアは15%から20%に達し、「街市」(市場)やスーパー、それにレストランにも供給されるということで、これは香港人が戦慄するに足るニュースでしょう。

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 そして今日(8月16日)の香港各紙もこのニュースを追っています。追わざるを得ません。四川の奇病では対応の遅れが目立ち散々批判された香港政府が、今回は深セン市経由ないし河南産豚肉の輸入停止を早々と宣言したのです。

 ただ香港当局も記者に逆取材するような有様で、目新しい情報はありません。突然の豚肉回収については深セン市当局がコメントを発表、

「豚肉回収は四川省で発生した連鎖球菌に感染した豚肉かどうかを検査するためだった」

 としていますが、そもそも検疫は出荷段階で行われている筈ですし、四川省でも大がかりな回収は行われていません。しかも河南省はこれまで感染例が報告されていない「安全地帯」だったのに……ということで、この発表はいよいよ疑問を呼ぶことになってしまいました。ちなみに当然のことながら、以上は中国国内では報じられていません。

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 ところが、です。『香港文匯報』と並ぶ親中紙である『大公報』(2005/08/16)が今朝の香港紙では唯一、

「河南省で連鎖球菌に感染している豚が発見された」

 と真相をすっぱ抜いたのです。

 ●河南省で連鎖球菌に感染したブタ発見(2005/08/16)
 http://www.takungpao.com/news/2005-8-16/ZM-442850.htm

 シロと思われていた「安全地帯」がクロになったというところでしょうか。『大公報』は深セン市・南山区農業局から得た情報としていますが、他紙は完全に出し抜かれました。

 ……というより、中共当局がこういう形で情報を流したのでしょう。人事異動や政策変更などといった中共政権の情報は常に『香港文匯報』か『大公報』から報じられるのがお約束です。ただし、こういう形で情報を流すことで「これが真相」と信じ込ませ、実はより深刻な事実を隠している、ということもありますから油断がなりません。

 ともあれ、香港では豚肉は危ないということで、昨日から鶏肉の値段が急騰しているそうです。でも鳥インフルエンザの件もまだ片付いていないんですよね……。



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 8月15日です。

 完全夜型生活の私には士気旺盛な時間帯ですが、5時半ですから世間的には早朝でしょうか。現時点においては、中国国内で目立った動きが起きているとのニュースは入っていません。

 今日に向けて、何かをやろうとした動きが事前にあったのは確かなようです。

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 ●反日活動呼び掛け相次ぐ――中国(「Sankei Web」2005/08/12/22:05)
 http://www.sankei.co.jp/news/050812/kok096.htm

 (前略)
今月上旬、中国のウェブサイトに「815愛国反日陣線連盟」の団体名で書き込まれた呼び掛けによると、同連盟は13―15日、遼寧省大連市で大規模な街宣活動を計画。「国辱を忘れるな」「日本製品ボイコット」などと書いた宣伝ビラを最大30万枚用意し、市内14カ所で集会を予定しているという。

 「中国泛藍連盟」を名乗る別のグループは四川、湖北、江蘇3省と上海で抗日戦争の戦死者追悼活動を行うと予告。香港でも尖閣諸島(中国名・釣魚島)の中国領有権を主張する団体が、日本総領事館に向けデモ行進する予定を明らかにしており、同総領事館などが現地の日本人に注意を呼び掛けている。
 中国政府は、小泉首相の参拝見送り表明で、日中関係の決定的対立はかろうじて回避できたと判断しているとみられる。

 しかし各団体は、小泉首相が15日に靖国神社を参拝するかどうかにかかわらず、いずれも集会やデモを行う方針を表明。中国共産党関係者は「政治腐敗などに悩む中国は『抗日戦争勝利60周年』の今年、党への求心力回復のため大宣伝を展開しており、小泉首相が参拝しなくても若者らが過激な行動を起こす可能性がある」と指摘する。
(後略)

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 最近反日サイトに足繁く通っていないので、「815愛国反日陣線連盟」「中国泛藍連盟」の両者とも私には初めて聞く団体です。

 ただ、日本の新聞にも報じられるほど大っぴらに動いているようでは何もできないでしょう。

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 ●北京などデモの動きなし 終戦記念日控えた中国(「共同通信」2005/08/13/19:39)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050813-00000152-kyodo-int

 【北京13日共同】日本の終戦記念日を2日後に控えた週末の13日、中国では事前にインターネット上に反日活動を呼び掛ける書き込みが相次いでいたが、北京や上海などでデモの動きは見られなかった。

 4月の反日デモ以降、中国政府は国際的イメージの悪化やデモが政府批判に転じることを懸念して反日活動を抑え込む方針を打ち出しており、終戦記念日を前に規制を強化しているとみられる。

 ウェブサイトで大規模な街宣活動の呼び掛けがあった遼寧省大連市の集合場所では参加者らの人影はなく、公安当局者の姿も見えなかった。一方、呼び掛け人の一人は電話取材に対し「(実施について)当局と相談中。14日午前には行動を起こしたい」と話した。

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 「当局と相談中」というのが笑わせます。馴れ合ってもたれ合って意気地がなくて……といったところでしょうか。言及されている14日午前に何らかの活動が行われたとの報道はありません。

 ……というより、昨日(8月14日)時点で遼寧省は豪雨に見舞われています。冠水した道路を強行突破しようとしたトラックが濁流の藻屑と消えたり、かの有名な撫順では橋が3つ落ちて8人が行方不明になったりで、ああ天意なるかな。大連はどうか知りませんけど、省当局は「それどころじゃないよ」というところでしょう。

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 ただちょっと気になる記事がありました。8月14日付です。

 ●「南京大史実網站」が開設1カ月、一日平均アクセス数50万を突破(北京娯楽信報-新華網)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-08/14/content_3349877.htm

 南京なんたら事件関連の公式サイト、あるいは半公式サイトのようなものでしょうか。南京なんたら事件の紀念館+大手ポータル「新浪網」(SINA)+「龍虎網」の3者が共同開設したものです。1日平均延べ50万人というアクセス数はIPで数えているのかPV(page view)なのか、後者であれば騒ぐほどの数ではないように思います。

 で、問題はこの記事の末尾に付されている関連記事「抗戦をテーマとした国内サイトの一部」です。標題通りの内容なのですが、上記「南京大史実網」の他にも色々なサイトが紹介されています(カッコ内はサイト主催者)。

 「抗日英烈紀念館」(共産主義青年団中央、中央党史研究室、国家档案局)
 「中国二戦労工網」(中国人民抗日戦争紀念館、遼寧省党委員会党校ほか)
 「中日網」(南京師範大学南京大研究中心)
 「東北抗日聯軍紀念館」(共産主義青年団中央ほか)
 「江橋抗日紀念網」(チチハル市政府)

 といった公式機関が立ち上げたサイトがズラリと居並ぶなかで、

 「中国918愛国網」
 「918戦争網」

 ……と、この2つは運営機関が明記されていません。というのもこの2つだけは純然たる民間組織によるものなのです。有名な「愛国者同盟網」や「中国民間保釣聯合会」とは別物で、双方の間にリンクもありません。

 「中国918愛国網」の後援機関一覧には「918戦争網」があり、上で名前の出た「南京師範大学南京大研究中心」、他に「中国鷹派聯盟網」といった私には懐かしい反日サイトなどもリンクしています。

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 この「中国918愛国網」には2002年7月27日にNHKが接触、インタビューを行っています。本拠地は上海のようです。責任者の「呉祖康」というのはあの「老呉」のことなのでしょうか。

 http://scvnet.news.sohu.com/news/25/38/news202803825.shtml

  一方の「918戦争網」は遼寧省・瀋陽市に連絡先が置かれています。前掲の「Sankei Web」の記事が伝えていた大連での活動を計画していた団体と一致するのかどうかは不明です。

 さて何が問題かというと、公式機関が運営するサイトに混じって、「中国918愛国網」「918戦争網」という民間サイトが唐突に並んでいることです。この関連記事の部分も『北京娯楽信報』の記事なのかどうかはわかりませんが、いずれにせよ国営通信社・新華社のウェブサイト「新華網」にこういう形で名前が出たということは、当局御墨付きの民間サイトということになります。「公式機関サイト並み」という扱いです。

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 ただ「当局御墨付き」が党中央の総意という意味なのか、それとも党上層部に内部対立があって、そのうち「新華網」を掌握している政治勢力による「勝手に認知」なのかは不明です。また、この2つの民間サイトが挙げられていながら、「愛国・反日」の総本山的な存在である「愛国者同盟網」「中国民間保釣聯合会」の名前がないのも奇妙といえば奇妙です。

 当ブログは自称愛国者の反日教徒を「糞青」、そして「糞青」がプロ化した存在を「珍獣」と呼びならわしていますが、それら珍獣・糞青の勢力図が再編成されつつあって、連中の拠るべき大樹、あるいは行動の主軸になる存在が従来の「愛国者同盟網」「中国民間保釣聯合会」(珍獣の代表格・童増の拠点が両者です)などから変化してきているのかも知れません。

 もうひとつ。糞青・珍獣は本人は真面目に活動しているようでも結局は政治勢力の手足でしかなく、生殺与奪の権をその政治勢力に握られている存在です。ええ、そうです畜類同然。要するに飼い主が党上層部に存在しており、そもそもそういう飼い主がいない限り一党独裁の中国で政治活動めいたことなどできやしません。

 ですからこの記事で「中国918愛国網」「918戦争網」が公式機関サイト並みの扱いを受けたというのは、この2つのサイトの飼い主である政治勢力が党上層部において台頭しつつある、あるいはすでに主導権を握っていることを示している可能性もあります。

 ――――

 以上は全て憶測。まだささやかな動きでしかないので、確たることは言えません。ただ、何かが起きている?という気配を感じ、感じるままに書いてみた次第です。

 さて、それでは蝉時雨を浴びに行ってきます。




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 反則です。いくら反日電波といってもこれは反則技です(笑)。私も降参。某巨大掲示板なら腹イテー/モウカンベンシテクダサイのAAが登場するところです。

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 いや他でもありません、抗日何たら60周年記念で8月13日に模擬空戦をやるというイベントのことです。これが一連の活動における目玉のひとつで、中国国内では前々から告知されていました。

 でも考えてみればおかしな話です。だって当時の中共は飛行機なんか持っていなかったんですから。確か中共が最初に設立した航空学校で当初使われたのは、日本陸軍航空隊から接収した飛行機だった筈です、これは記念切手にもなっています。

 私の記憶に間違いがなければ、当時の日本海軍航空隊及び陸軍航空隊が交戦した相手は国民党空軍及びシェンノート将軍?の率いる義勇軍フライング・タイガース。国民党空軍の機材は主としてソ連製でした。その後対米宣戦により米空軍も中国上空に現れるようになりましたが、これは戦争もかなり後期の話でしょう。

 中共なんか何も働いてやしません。その中共がどのツラ下げて模擬空戦?というところですが、自己肥大も極まってネジが何本も飛んでいる国のことですからそれは措くとしましょう。基地外と話しても無駄ですから。

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 何にせよ、模擬空戦じゃないですか。私個人は心ときめくものがありました。P51とかP40といった当時の米戦闘機は飛べる機体が結構残っています。

 日本の誇る零戦は米国に1機だけ飛べるものがありますが、確か稼動機を保存したものではなく復元機だった筈ですから空戦めいた機動に耐えられるのかどうか。陸軍航空隊の隼や疾風で飛べるものはないでしょう。……あるいは「トラ・トラ・トラ」のように練習機をごまかして使うのかなと思っていました。

 いずれにせよ名作映画「バトル・オブ・ブリテン」のようなシーンが見られるのだろうと思っていた訳です。やられた方が発煙筒たいてキリ揉みしてみせるような。だって抗日何たら60周年の目玉イベントですから。

 ところがですよ。

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 ところがなんです。昨日(8月13日)に無事実施されたこの目玉イベント、国営通信社・新華社のウェブサイト「新華網」でもトップページのトップニュースとして大々的に報じられました。

「建国以来最大規模模擬空戦再現60年前歴史」(建国以来最大規模の模擬空戦が60年前の歴史を再現)

 という大見出しです。メイン記事も見出しから飛ばしていて、

「直撃八・一三『中国魂』模擬大空戦[組図]」(直撃!八・一三「中国魂」模擬大空戦)

 ときました。[組図]とは複数の写真で構成されている記事という意味です。「中国魂」とは尋常ではない気の入れ方です。最初は毛利家に代々伝わる家訓みたいなものかと思いましたが。

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 とにかくも記事いきましょう。

 ●建国以来最大規模の模擬空戦、北京で開戦
 http://news.xinhuanet.com/mil/2005-08/13/content_3348327.htm

 ●直撃!八・一三「中国魂」模擬大空戦
 http://news.xinhuanet.com/mil/2005-08/13/content_3348429.htm

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 1本目の記事冒頭の写真で「まさか……」と思われた方、その「まさか」なんです。続いて「中国魂」の方に掲載されている珠玉24枚の画像も御堪能下さい。はい、ラジコン。全部ラジコン機(笑)。私はあんぐりです。

 目眩で頭がクラクラします。これが「建国以来最大規模」で「中国魂」の横溢した「模擬大空戦」だったとは。意表に出たというか何というか……とにかく少しは期待していたこちらは一瞬呆然。一拍おいて腹イテーとなる訳です。さすがは中共クオリティ。

 「建国以来最大規模」なんて大見得を切らなくてもいいのに、これも愚民教育の発露なんでしょうか。この程度なら、日曜日の利根川の河原にでも行けばいくらでも見ることができるのに。

 それにしても「模擬空戦」の「模擬」って、そういう意味だったんですねえ。この調子だと『解放軍報』に出ている「某装甲師が演習で練度大いに向上」とかいうのもラジコン戦車かも知れません。ハッ……先日見た「ヘリの夜間着艦に初めて成功」という記事もそういう意味だったのかも。それならミサイル部隊とされる第二砲兵も実はロケット花火担当(笑)。

 ところでこのイベント、有料だったのでしょうか。「模擬空戦」が実はラジコン機の絡み合いだったなんて、日本ならカネ返せどころか、詐欺になりかねませんよねえ。それにしても随分ヌルい抗日精神じゃないですか(笑)。

 ――――

 ひょっとして中共は未だに飛行機を持っていないとか?……あ、軍機でしたか。これは失礼。



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 どうも我が身を省みるに、歳を重ねるごとにストライクゾーンが広くなってきているように思えて……ああそういう話ではありませんでした。

 台湾に林志玲というモデル出身の美女がおりまして(いまもモデル?)、台湾では並み居るアイドルを押しやって、男性の圧倒的支持を受けてナンバーワンの人気を誇っているそうです。評判は台湾海峡を越えていまや大陸(中共)でも有名。

 某巨大掲示板の情報によると日本観光のキャンペーンに一役買ったりもしているそうですが、もちろん台湾や大陸のCMでも引っ張りだこです。大陸では「宝潔」(P&G)の広告に出ているとのこと。

 ところが。最近になって大陸のあるサイトで政治的理由から林志玲排斥運動が巻き起こり、ちょっとした話題になっているのです。

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 相手が「台湾人」で「政治的理由」ということになれば、中共政権下ではもう「緑」か「青」かの話にしか落ち着きません。要するに台湾独立派(緑)か大陸との統一派(青)かということで、排斥運動が起こるとすれば当然「緑」。で、林志玲も「緑」認定されてしまったという訳です。

 林志玲の両親が独立派でしかも陳水扁・台湾総統との縁が深い、ケガで入院した林志玲を総統夫人が見舞った……などという話が「排斥」の根拠となっているようです。だから何?という反応が日本なら出る訳ですが、中共政権下においては政治的に悪ならその人物の人格から仕事(小説とか音楽とか)までの一切をごく当然のように否定します。全否定です。

 林志玲にもその危機が迫っているのかどうかは知りませんが、具体的には「天涯社区」という掲示板で、

「林志玲はP&Gの広告から降板しろ署名」
「電話やメールでP&Gに林志玲降板を要求しよう運動」
「林志玲降板まではP&G製品の不買運動」

 なる活動がスタートしたということです。

 ――――

 この動きを最初に報じた上海紙『東方早報』によると、「天涯社区」での署名は延べ40万人に達しているので決して小規模なムーブメントではないとのことです。

 ……て何で報道するんですかそんなこと。火に油じゃないですか。いやいや最初から火に油を注ぐつもりで取り上げたのなら「うーん」とこちらは首をひねるしかないのですが。

 という訳で状況をみてみるに、これはどうも「火に油」を企図しているようです。

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 ●東方早報-新浪網(2005/08/09/07:02)
 http://ent.sina.com.cn/s/h/2005-08-09/0702804395.html

 ●東方早報-大洋網-広州日報-新浪網(2005/08/09/09:34)
 http://ent.sina.com.cn/x/2005-08-09/0934804969.html

 ●東方早報-新華網(2005/08/09/13:23)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-08/09/content_3329521.htm

 ●東方早報-網易(2005/08/09/13:23)
 http://news.163.com/05/0809/13/1QNGIL160001124U.html

 ●東方早報-東北新聞網-新浪網(2005/08/09/16:32)
 http://news.sina.com.cn/c/2005-08-09/16326649258s.shtml

 ●東方早報-重慶晩報-新浪網(2005/08/10/11:20)
 http://ent.sina.com.cn/x/2005-08-10/1120805965.html

 ●東方早報-新華網山東頻道(2005/08/10/11:22)
 http://www.sd.xinhuanet.com/news/2005-08/10/content_4847804.htm

 ――――

 大手ポータルサイトはおろか、「新華網」(国営通信社・新華社の電子版)にも転載されています。続報がないのでまだ確かなことは言えませんが、初動としてみるならこれは一種のキャンペーンですね。林志玲を叩いているのではなく、台湾独立派や見解を異にする党内の政治勢力に向けたプレッシャーではないかと。

「林志玲の政治的立場が不鮮明?ネット署名による排斥運動発動」

 というのが第一報である『東方早報』の見出しでした(芸能人のニュースで「政治的立場」が云々されるとは怖い社会です)。P&Gはこの騒ぎについて、

「林志玲のプロダクションから、彼女の政治的立場は巷間伝えられているようなものではないと説明されている。しかも当社は純粋にビジネスをしているのであって、政治とくっつけて語られる筈がない」

 とコメントしています。いやはや、政治的立場まで顧慮しなければやっていけない中共政権下の社会。これは息苦しくもあり、例えば日本や米国の社会では配慮する必要のないものまで慎重にならざるを得ないのですから、ある種の余計なコスト(制度的コスト)を伴うものといえますね。

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 要するにこの一件、林志玲はダシに使われただけであって、鉾先はまず台湾独立派に向けられています。それと同時に、中共上層部が台湾問題に関し温度差の点で割れていることを示すものかも知れません。その一方の政治勢力(強硬派)が、意見の合わないグループに対してこういう方法でデモンストレーションをしてみせた、というものです。

 今年3~4月の反日騒動でも「反日度」をめぐって党内に温度差があり、胡錦涛派と別の一派が綱引きを演じました。あれと同じようなものではないかと思います。

 あのときと同じようにネット署名、排斥運動、不買運動と来ました。今後これに「反日」が加わってくるのでしょうが、ともあれこれは「権力闘争の夏」がスタートしたことを伝える烽火かも知れないと私は思うのです。

 余談ですけど、中共のいう「台湾同胞」には陳総統や李登輝氏ほか台湾独立派は含まれていないのでしょうね。このままいけば林志玲もその列に加えられることになるのでしょう。



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 この歳になって徹宵(というか徹昼)を重ねるとさすがに辛いです。もう頭が回ってくれません。という訳で久しぶりに「蜜の味」いきます。

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 まずはこれから。

 ●中国広東省の炭坑出水事故、102人の生存期待薄れる
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050808-00000135-reu-int

 いやー最近爆発事故が多かったんですけどこちらは水です。内容は標題そのまんま。どうもショボい事故ばかりで冴えない、でもきっとそろそろ……と思っていたら見事にやってくれましたスマッシュヒット。久々に3桁の大台に乗りそうです。こういうネタはもう説明不要ですね。でも一応おさらいを……という方は「人命軽視?――仕様ですから」(2005/02/17)をどうぞ。

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 「久々に3桁の大台に」と書きましたが、実は炭坑事故だと僅々半年前に遼寧省で落盤&爆発で214人死んでます。上記「人命軽視?――仕様ですから」はそのときに書いたものでした。香港紙『太陽報』によると、この遼寧省の事故後半年間における目立った炭坑事故は次の通り(カッコ内は死者数)。

 3月19日 山西省朔州(69人)
 5月19日 河北省承徳(50人)
 7月11日 新疆ウイグル自治区阜康(83人)
 7月14日 広東省梅州(16人)

 ●梅州炭坑事故に中央は戦慄・省長は激怒――出水で102人絶望か
 http://the-sun.orisun.com/channels/news/20050809/20050809014718_0001.html

 本当はもっと色々起きていて私の手元にもたくさんあるんですけど、それを探したり訳したりするのが面倒なので省略。ちなみに上記標題の通り今回の事故現場は広東省・梅州でして、7月に続いてあーまたやっちゃったーという訳です。広東省のトップである張徳江・党委書記と広東省政府の長で激怒中の黄華華・省長は一昨日(8月7日)から現場に張り付いています。

 胡錦涛総書記と温家宝首相は救出に全力をあげるよう指示した、とのことですが、口を動かすだけなら私にもできますよねえ。ここは現在教育活動展開中である「共産党員の先進性」を示す絶好のチャンス。胡錦涛も温家宝もたまには自ら潜ってみたら如何でしょう?毛沢東もよく水泳してみせて健在ぶりをアピールしてたじゃないですか。あれはトウ小平でしたっけ?

 ――――

 で、香港各紙の報道を総合しますと、実は今回の一件、これは炭坑事故というより「事件」なんですね。

 『蘋果日報』(2005/08/09)によれば、炭坑の責任者である大興鉱業の曽董事長は昨日の時点で警察に自首し、刑事拘留されています。営業免許を持たず、採掘許可証も得ていない典型的なヤミ炭坑だった模様です。しかも採掘した石炭を闇ルートで転売して利鞘を稼ぎ……など不埒な悪行三昧を重ねていたとか。死刑確定ですね。即裁判即判決即銃殺。最近は薬物注射も行われているそうですけど。

 そういえば同じ7日に貴州省・六盤水市でも炭坑事故があり死者14名に行方不明2名、こちらも無許可営業のヤミ炭坑とのこと。

 まあ公式発表でも今年上半期に労災関連(生産活動中の事故)で1日平均死者370名、となっているので中国の事故報道をあれこれ読んでいると感覚が麻痺してきます。

 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/01/content_3160680.htm

 ――――

 しかしまあ、こういう事態になると記者は生き生きしてきますね。特に香港紙は見出しもえげつない(笑)。『明報』(2005/08/09)は比較的お硬い新聞なんですが、この事故については記事3本。

「500mの深さで出水事故、鉱夫102名絶望か――水位は毎時2フィート上昇、排水するも追い付かず」

 と1本目のメイン記事で事故の概要を説明しつつ、「水位は毎時2フィート上昇」とソツなくカウントダウン気分を散りばめて緊迫感を強調。2本目は被害者家族への取材で、

「貧乏でなきゃ誰がこんな仕事やるもんか」

 と、お涙頂戴の紋切型タイトル。そうですよねー本当にそうですよねーと記者は頷きつつも、3本目のタイトルは、

「記者に制限なし、取材は思いのまま」

 などと大はしゃぎ。浮かれております。

 http://hk.news.yahoo.com/050808/12/1fcv9.html
 http://hk.news.yahoo.com/050808/12/1fcvb.html
 http://hk.news.yahoo.com/050808/12/1fcve.html

 ――――

 ところが昨日は香港人記者たちをより燃え上がらせる出来事が発生しました。福建省・福州市でバス爆発事件です。末期癌患者が前途を悲観し、バスの車内で私製爆薬を爆発させたとのこと。各紙の見出しを原文のまま並べておきます。「巴士」はバス、「閙市」は繁華街です。

 ●福州人肉炸彈引爆巴士32人死傷
(蘋果日報)
 ●患癌農民當場死 逾30傷血肉横飛――福州人肉炸彈巴士
(太陽報)
 ●福州人肉彈炸巴士32死傷――絶症農民惡性自殺 閙市引爆土製炸藥
(成報)
 ●福州人肉彈炸巴士32死傷――事發閙市 兇徒疑患癌情緒失衡
(明報)
 ●福州人肉彈炸散巴士32死傷
(東方日報)
 ●福州自殺式爆炸1死31傷
(星島日報)
 ●癌漢福州巴士爆彈1亡31傷
(香港文匯報)
 ●肺癌漢尋死自爆福州巴士
(大公報)

 皆さん「人肉」がお好きなようですが、これは以前香港で「肉まん人肉版事件」があった名残りかと思われます。「血肉横飛」というのも凄い表現です。

 下の3紙、『星島日報』と親中紙である『香港文匯報』『大公報』は淡々としていますが、『大公報』(電子版)には重傷を負った女性が担荷で運び出される写真がついています。グロとまではいいませんが、そこそこエグい写真です。バスも骨組みが剥き出しになっていて爆発の生々しさを感じさせます。

 http://www.takungpao.com/news/2005-8-9/MW-439252.htm

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 御存知の方も多いでしょうが、香港紙は死体写真をバンバン載せます。それで1面トップを飾らせたりします。

 エレベータを下りた映画監督が待ち受けていた殺し屋たちに至近距離から6発被弾で即死。その流血遺体写真とか、何かのトラブルでやはり殺し屋に眉間に一発撃ち込まれて死相も露わに運び出される男性の写真とか、バス転落事故の事故死者の写真とか。あれは「死者には人権なし」ということなんでしょうか。逮捕された容疑者は紙袋で顔が隠されていますから。

 今日のトップは「人肉炸彈」でなければ香港で起きた痴情のもつれ事件でしょう。男が女性を刺して飛び下り自殺、女性は血まみれで重傷、というものですが、『東方日報』(2005/08/09)だと自殺した男の遺体、それに刺された女性の血まみれ写真がいずれも掲載されている筈です。

 http://orientaldaily.orisun.com/new/new_a00cnt.html

 そういう写真の出ている新聞記事を読みながら平然と飲茶していたりするから香港人はすごいです。

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 閑話休題。「人肉炸彈」事件ですが、当局発表では肺癌の末期患者である農民が自家製の爆薬を持ち込んでバスに乗り込み爆発させた(当人死亡)、遺書が発見され身元も割れた、ということになっています。

 ……でも本当にそうなのでしょうか。バスの車体の骨組みが露わになるほどの爆発で、負傷者が31名(危篤状態の者もいるとか)も出ているというのに、遺書が残っているものでしょうか。家に残っていたというならわかりますが、それでも身元の割れるのが速すぎるのでは?

 この点では大人しい『星島日報』の見出しが、あるいは自爆テロ?という含みを持たせているように思います。また『太陽報』は警察が現場で事件に関係しているとみられる男1名を拘束したとしています。他人を巻き込んで自殺しようとする「自己中心的テロリズム」の問題にも言及しています。

 http://the-sun.orisun.com/channels/news/20050809/20050809014919_0001.html
 http://the-sun.orisun.com/channels/news/20050809/20050809014919_0001_1.html

 私はやっぱり破壊活動を疑ってしまいます(というか、そうであれかし)。当局による自爆男のキャラ設定がベタすぎるような気がしてなりません(笑)。

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 ともあれ、バスでの人為的爆発事件(または事故)というのは結構起きているんです。親中紙『香港文匯報』によると、

 ●湖南省(2004/09/02、3死34傷)
 ●湖南省(2004/10/26、54傷)
 ●安徽省(2004/12/23、5傷)
 ●新疆ウイグル自治区(2005/01/20、11死)
 ●江西省(2005/03/17、21死)

 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0508090030&cat=002CH

 このほか今年5月には新疆で石油タンク爆破事件(だと思います)や、爆発物を持った男によるバスジャックなども起きています(「ちょっとキナ臭いぞ新疆」2005/05/16)。

 あとは最近ふれた件、北京で時限爆弾が見つかったり実際に爆発しちゃったりというのがありました(「やっぱ爆発でしょ。」2005/07/23)。それから密造爆薬が高温で変質して爆発という事件も(「爆発続報――事故が事件に。」2005/07/25)。

 いま中国ではヤミ炭坑がやたらと多くて、そこで使われる爆薬は横流しモノか私製爆薬。ごく小規模なヤミ炭坑ならいくらでもあるでしょうから、期せずして危険物が農民レベルに行き渡りつつあるのではないかと、つい期待してしまうのです。

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 まあでも胡錦涛などは「それどころじゃない」という心境かも知れません。他でもない衆議院の解散、これで小泉首相による「八・一五靖国参拝」の可能性がかなり高まったと思うのですが、参拝されてしまえば「参拝するな」と言明していた胡錦涛は面子丸潰れでヘタレ認定。ネット世論は沸騰。そして「対外強硬派」というか「アンチ胡錦涛グループ」というか「抵抗勢力」、そのあたりが再び「反日」を掲げて政争を仕掛けてくるように思います。

 「蜜の味」の筈が結局こんな話題に落ちてしまいました。そこに爆薬がつながっちゃったら大変ですねこれは、ということにしておきましょう(笑)。

 寝ます。寝ている間に少しは減ってくれると有り難いのですが。いや他でもない標題の件です。





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 たびたびここで書いていますが、私は平素完全夜型生活でして、昼間は寝るものと決まっております。

 なぜ夜にしか仕事をしないのかといえば、仕事仲間である「香港チーム」も「台湾チーム」も夜にしか仕事をしてくれないからです。正午近くに電話をかけると、眠そうな声で応答してきます。前夜から働いて泊まり込んでいる奴らです。ええ、みんな寝袋持参で(常識)。

 だから仕方なく私も連中に合わせているのですが、日本サイドは当然ながら昼間に仕事をします。それでも午前11時出勤のだらけた業界なのですが、打ち合わせなどで人と会ったりするときは昼間(午後)ですから、私は徹夜同然になります。実に理不尽です。

 その代わり、そういう用件で飯田橋や市ヶ谷、青山や神保町あたりに出ると、帰途に靖国神社へ立ち寄ることができます。靖国神社、実は拙宅から地下鉄ですぐなのですが、こういう機会でもないと、あとは初詣やお花見といったイベントにしか来る機会がありません。だいたい昼間は寝ていますし。

 立ち寄るときは、まず参拝してから遊就館で零戦を眺めつつ海軍コーヒーや海軍カレー、と私には決まった型があります。悦楽の時間であります。

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 私の配偶者は香港人です。仕事を持ってはいますが、時間の融通がききます。それで私が昼間に出かけると、きまってどこかで合流して、一緒に靖国神社へ行きます。

 配偶者も靖国神社が好きだと申しております。花より団子、つまり出店に猿回し……というのもありますが、都心なのに公園のように緑に包まれていて、散歩できるので癒されるとのことです。

 言われてみれば確かにそうですね。春は桜、夏は蝉時雨、秋はイチョウの葉の色が変わっていくのを楽しんで、冬はあの冴え冴えとした青空。都心で四季を感じられる場所は他にもあるでしょうが、「零戦+海軍コーヒー」というオプションまでついてくるところは靖国神社しかありません(笑)。

 ちなみに、私は配偶者に参拝を強要していません。参拝するときもあれば、参拝せずに私が参拝するのを眺めていたりします。ひそかに観察していると、どうも節目節目には参拝しているようです。初詣はもちろんですが、昨年配偶者が軽い手術をすることになったとき、私がお守りを買ってきて配偶者の手に握らせて、

「お前には日本がついているから、大丈夫だ」

 と訳のわからないことを言って聞かせて恩に着せたのですが、配偶者も訳がわからないまま安心していたようです。それで全快したときに、

「ありがとうを言いに行くから」

 といって参拝していました。あとは香港に里帰りするときも前後に参拝しています。

「香港に帰るから、挨拶」
「日本に帰ってきたから、挨拶」

 だそうです。私も小さいころ、夏休みや冬休みで親の実家に行くと、まず仏壇でお線香をあげて手を合わせて挨拶して、帰るときもそのようにしていました。従兄弟たちもそうしていましたし、ごく自然な習慣でした。配偶者の「挨拶」参拝も、そういうものなのかなあ、と考えたりします。

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 どうもチナヲチから外れて雑談モードですが、例えば反日サイトや中国国内メディアの大手サイト、例えば「新華網」(新華社)、「人民網」(人民日報)、それに大手ポータルの「新浪網」(sina)や「捜狐」(sohu)などで靖国関連のニュースが出ると、よく使われる写真があります。いちばん多いのは、小泉首相が和服姿で参拝するカットでしょうか。

 あと「日本の右翼は軍国主義の復活を目指している」といったキャプションを伴って、軍服姿のお爺さんたちが整列している写真などもよく見かけます。あれは8月15日の風景なのでしょうか(私はその日に靖国神社へ行ったことがないのでわかりません)。これは反日サイトでは常用されていて、「新華網」や「人民網」などでは特集記事の際に使われたりします。

 正直に申し上げます。あの写真、最初は、なんだかなー、と思っていました。

 若い人が軍服姿でいる写真には「コスプレかいっ」と内心ツッコミを入れていたのですが、まあ趣味や信条は自由だし違法性もないのだからいいだろうと。

 でも80歳前後であろうお爺さんたちが軍服姿で整列している写真、さすがにあれを見てコスプレとは思いませんでしたが、どこか馴染めないもの、要するに「なんだかなー」という違和感を抱いていたのも事実です。

 浅慮でした。

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 この間、配偶者と「みたままつり」に行ったとき、献灯をひとつひとつ見て歩きました。有名人のものもありますし、普段は市井の一隅で暮らしているであろう人のものもあります。

 その中に、献灯いっぱいを闊達な文字で埋めているものがありました。読んでみますと、戦死した戦友たちへのメッセージなのです。

「自分は不覚にも生き残ってしまい、今では孫までできて、老いさばらえてしまった、みんなに合わす顔がない、申し訳ない」

 ……詳しい文意は忘れてしまいましたが、そういう趣旨だったかと思います。文字も闊達なら語り口も飄々としたものでしたが、それだけに胸を打たれる内容でした。様々な献灯が並んだ中で、私にとってはいちばん印象的なものでした。

 それで、ようやくわかったのです。お爺さんたちがなぜ軍服姿なのかということが、愚鈍な私にも理解できました。

 お爺さんたちには、たぶんあれが正装なんですね。私などとは違って、お爺さんたちにとって靖国神社は、戦没した仲間たちに向き合う場所なのでしょう。それに際して、あの服装こそが正装であり、礼服であり、いわばタキシードのようなものなのだと。

 もちろん、お爺さんたちみんながみんな軍服を着て参拝する訳ではないでしょうが、「なんだかなー」とは、浅慮でした。

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 翻って中国をみるに、「新華論壇」や反日サイトの掲示板などで、

「もしおれが日本人だったら必ず靖国神社に参拝する。国のために命を捧げた英雄に感謝の意を表すのは当然のことだ」

 という意見がしばしば出てくるのは可哀想な気がします。中国には靖国神社に相当するものがありません。社会主義を標榜している以上、神聖的なオブジェは御法度なのでしょうか。烈士墓所のようなものはありますが、つまりはお墓が並んでいるだけで、象徴的な場所、という訳ではありません。

 記念碑のようなものも各都市にありますけど、全中国を代表した場所なら、やっぱり天安門広場の人民英雄記念碑でしょうか。でも毛沢東(充電中)にはわざわざ記念堂を建ててやっているのに、その他一同は石碑で済ますというのも可哀想ですね。

 しかも現在の社会状況に照らせば、厳かに献花することすら難しいかも知れません。献花しようとすれば、恐らく厳戒中の警官や私服警官がデモか陳情者のアピールかとすっ飛んできて、地面にねじ伏せられかねません。

 その人民英雄記念碑ですが、そもそも「人民英雄」とはどういう定義になっているのでしょう。革命に命を捧げた人(烈士)を悼むという意味だとすれば、国民党に殺された人も含まれるでしょう。国民党との内戦で散った人も含まれます。それから、日本軍との戦闘で死んだ人も。……でも実際に中国戦線で日本軍の正面を担当したのは国民党軍です。さてその戦死者も含めているのかどうか。

 「一つの中国」とか「台湾は不可分の領土」とか寝ぼけたことを中共は言っていますけど、この「人民内部の矛盾」(笑)については一度胡錦涛を問い詰めてみたいところです。胡錦涛といえば最近夢の中に奴が出てきて私が何かインタビューしていました。電波浴が過ぎるとビョーキになるようですから皆さんも御注意を。

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 徹宵のせいか、それとも蝉時雨の中を歩いて「零戦+海軍コーヒー」を楽しんできたせいか、本当は別なことを書くつもりだったのにとうとう雑談で終わってしまいました。すみません。



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 のっけからいきなり謝ってしまいます。「kok」さん申し訳ありません。

 というのは前々回の話の最後に、新疆生産建設兵団で最近武装暴動がしばしば発生している、という台湾・中央通信電を紹介した際、私がこの新疆兵団なるものを知らなかったためお叱りのコメントを頂いた次第です。

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新疆生産建設兵団 (kok)
2005-08-03 23:12:01

御家人様
御家人様ほどの方が新疆兵団をよくご存知なかったとは意外です。
山内昌之東大教授は「満蒙開拓団+屯田兵+アメリカの騎兵隊」というイメージであると語ってられますが、実のところ新疆への移民の主体的な存在みたいです。総数254万人の軍閥といったところでしょうか。

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 しかし「kok」さん、無知については恥じ入るほかありませんが、そんなに私を買いかぶらないで下さい。私はインテリでもなんちゃってインテリでもなく、このブログも所詮は素人が娯楽でやっている床屋の政談。

 悲しいかな、とにかく私は基礎がなっていない上に系統立った知識の蓄積がないのです……なんてことを威張ってみても仕方ありませんね(でもこういう機会に勉強させて頂けるのでブログは有り難いです。色々な情報を寄せて下さる方もいらっしゃいますし)。なお「様」づけは御法度ということで。これからも宜しくお願いします。

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 で、その新疆兵団に話を戻しますが、8月2日に出た上述の中央通信電がこれ。

 http://tw.news.yahoo.com/050801/43/24n5t.html

 ニュースソースは香港で行われた(たぶん)東トルキスタン情報センターの発表です。以前、香港紙で最も中共に批判的な『蘋果日報』の社屋をメンバーが訪ね、「間借させてほしい」と頼んで断られた独立運動組織と同じ系列なのでしょうか。

 で、この耳寄りなニュース、反体制系ニュースサイト「大紀元」「博訊網」でも報じられているのですが、如何せんどちらも中央通信電の引き写し。中央通信は新疆独立を目指す東トルキスタン情報センターが8月1日に発表したものとしています。香港電ですからたぶん香港にある組織なのでしょうが、香港各紙はいずれもスルー。このため目下のところ情報としての確度は低いです。

 香港メディアなどが動き出したり、「大紀元」「博訊網」あたりが各々独自報道を流し始めたなら話は別ですが、まだそうなっていません。現時点では、夕べそういう夢を見たなあ、ぐらいに思っていればいいのではないかと(笑)。

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 ……と私は話半分に聞いていたのですが、その日の夜に日課の記事漁りをしていたら党中央政治局常務委員である黄菊・副首相が新疆ウイグル自治区を訪問、

「何よりも発展が第一。新疆の安定と繁栄を維持しよう」

 なんてことを言っているではないですか。

 ●「新華網」ウルムチ2日電
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-08/02/content_3300074.htm

 記事によれば黄菊の現地訪問は7月27日から8月2日にかけて。地元のトップの案内で視察を行っています。

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 そういえばこの新疆ウイグル自治区の政府ナンバー2である副主席に最近、「胡偉」というおじさんが着任しましたね。前職は共青団(共産主義青年団=ユース共産党)中央書記処書記。そうです共青団。ここに略歴が出ています。

 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/31/content_3291159.htm

 もうこれでもかとばかり共青団系のポストを渡り歩いているんですね。言うまでもありません。共青団といえば機関紙『中国青年報』を自らの御用新聞とする胡錦涛の支持母体であり、人脈の源泉でもあります。四川省や江蘇省もそうでしたが、ある意味難治と思われる地区の責任者に敢えて自派の若手を送り込んで苦労を積ませ、かつ勢力扶持を行う、というのが胡錦涛のやり方のようです。

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 黄菊に話を戻しますと、ちゃんと新疆兵団にも視察に赴いているんです。というより新疆兵団が視察行のメインだったらしく、わざわざそこで一席ぶって、新疆兵団のこれまでの成果を手放しで評価し、高らかに謳い上げています。それで言いたいのは「新疆の安定と繁栄を維持しよう」なんですから、そりゃ匂いますよね?

 そしたら中央通信もまた動きました。昨日(8月3日)の香港電で、特派員がまた上記東トルキスタン情報センターを取材して、黄菊は緊張した現地の空気をやわらげに行き、何やら新疆兵団相手に諄々と説いて聞かせたとのこと。

 http://tw.news.yahoo.com/050803/43/24y24.html

 何といいますか、外電が一報して、そしたら中共政権の国営通信社である新華社が「おや?」と思わせる報道をして、それをまた外電が裏打ちするかのように報じる。……この「おや?」に気付いてほどなく、それを補強する外電が流れたときがチナヲチの楽しさを瞬間のひとつです。ジクソーパズルが完成した、6-4-3の併殺が成立した、ワンツーパスが通った、……まあそういう達成感に近いものを覚えて嬉しくなります。

 余談はともかく、どうも要人(だって党中央の意思決定が行われる最高の機関たる政治局常務委員ですから)を送り込んで機嫌をとらなければならないほど、現在の新疆は不穏なようです。

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 ああまた余談になってしまいますが、以下は某翻訳掲示板に出入りしていたころに回族・ウイグル族大嫌いの支那人(漢族)によるスレを読んだ覚えがあります。かの「九一一」の直後だそうですから2001年ですか、当時北京のイスラム寺院では事件後数週間、

「アルカイーダGJ!」

 と言わんばかりにビンラディンの大きな肖像画を掲げていたそうです。警察も怖くて手を出せなかったとか。

 私は中原の戦闘集団・回族にも頑張ってほしいです。昨年の対漢族衝突で垣間見せた情報力・団結力そして戦闘力。あれを見てしまうとそりゃもう期待せずにはおれません(笑)。


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