日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 党中央(中国共産党中央委員会)の執行機関である党中央政治局が会議を開催した、という新華社電に接したとき、

「會議還討論了其他事項」(会議ではその他の事項についても討論された)

 という一文が記事の文末にはしばしば登場します。目にするたびに気になっていたのですが、きょう(11月30日)の香港紙『明報』によると、これは往々にして人事異動が決められたことを暗示するものなのだそうです。なるほど。……てな訳で、ちょっと賢くなった気分です。

 その真偽はともかく、27日の党中央政治局会議を報じた新華社電にも
「會議還討論了其他事項」が登場。『明報』によると、打てば響くとばかりにほどなく北京筋から異動情報が流れてきたとのこと。

 いや、別に『明報』に頼らなくても昨日から動きはありました。香港の親中紙『大公報』(2007/11/29)に、

 ●薄熙来(商務部長)が重慶市党委書記になる。
 ●商務部長の後任は陳徳銘(国家発展改革委員会常務副主任)。

 という記事が出たのです。消息筋情報として、

「薄熙来は李源潮・党中央組織部長(党中央政治局委員)とともに29日に重慶入りし、30日に市党委書記就任を発表する」

 なんて妙にリアルな話までついていました。薄熙来も李源潮と同じ党中央政治局委員です。……一応解説しておきますと、一党独裁政権の中国においては政府の上に党組織が実質的に君臨しています。ですから市長より市党委書記、省長より省党委書記の方が格上でその地区の「トップ」なのです。

 薄熙来が重慶市党委書記になるというのは以前から確実視されていたもので、それによって現職の汪洋が広東省党委書記に転出、そして張徳江・広東省党委書記は来春に副首相になる、というのも以前からの観測です。薄熙来が動くのであれば、玉突き人事で汪洋と張徳江も異動することになるでしょう。

 ●『大公報』(2007/11/29)
 http://www.takungpao.com/news/07/11/29/ZM-829784.htm
 http://www.takungpao.com/news/07/11/29/ZM-829783.htm

 10月半ばに開催された「十七大」(中国共産党第17回党大会)を節目とする大型人事、その第三波がいよいよ行われる、ということでしょう。香港メディアによる人事予想は11月初旬に出ていましたから、私としては「何だい3週間も待たせやがって」という感じです。

 ――――

 「十七大」で第17期中央委員が選出され、その中から党中央政治局委員や実質的な最高意思決定機関である党中央政治局常務委員の顔ぶれが定まりました。

 ポスト胡錦涛として、習近平(前上海市党委書記・太子党)と李克強(前遼寧省党委書記・団派)が飛び級で常務委員に昇格したのを御記憶の方も多いでしょう。薄熙来や李源潮や汪洋もそのときに党中央政治局委員の列に加わっています。言わずもがなではありますが、「団派」とは胡錦涛直系の今をときめく共青団人脈であり、「太子党」は故人を含めた党元老格の二世組。

 こうした一連の指導部人事が「第一波大型人事」です。では第二波は?というと、第一波大型人事で空いたポストの穴埋めで、例えば習近平が勤めていた上海市のトップに兪正声(前湖北省党委書記)が就任しています。

 ●アドミラルティさん、お元気そうで何よりです。(2007/10/27)
 ●家に帰るまでが遠足@十七大12(2007/10/30)

 で、今度は「第二波大型人事」で空いたポストや、世代交代的意味合いを含めたその他の異動がほぼ一斉に行われます。これが「第三波大型人事」。

 他にも続々と人事情報が飛び出してきました。『明報』ともども党中央政治局常務委員の新メンバーをピタリと的中させた米国のニュースサイト「多維新聞網」(chinesenewsnet.com)が今日未明、本日付『大公報』(2007/11/30)の報道を素早く転載して、

「郭金龍(安徽省党委書記)が北京市長代理になる。郭金龍の後釜は安徽省長の王金山」

「李鴻忠(深セン市党委書記)が湖北省長代理・湖北省党委副書記になる」

 とのニュースを報じました。すると北京市長の王岐山は?となるのですが、張徳江同様、来春の全人代(なんちゃって国会)で副首相になるというのが以前からのお約束。ちなみに郭金龍は胡錦涛の腹心格です。

 他にも今日の『明報』が独自情報を報じていますし、『大公報』には「多維新聞網」に転載されたニュース。そして何よりも、香港親中紙の筆頭格である『香港文匯報』(2007/11/30)が「11名異動」という正に第三波と呼ぶにふさわしい「ごっそり人事情報」を写真などを多用して特集記事に仕立てています。消息筋情報ですが他でもない『香港文匯報』ですから確度は高いといえるでしょう。

 という訳で、まとめてみました今回の香港情報。左が現職、右が新ポストです。



 ●『香港文匯報』『大公報』

  張徳江
 広東省党委書記            → 来春に副首相就任

  薄熙來
 商務部長               → 重慶市党委書記(汪洋の後釜。太子党)

  汪洋
  重慶市党委書記            → 広東省党委書記(張徳江の後釜。団派)

  陳徳銘
 国家発展改革委員会副主任       → 商務部長(薄熙来の後釜)

  郭金龍
 安徽省党委書記            → 北京市長代理 or 北京市党委副書記(王岐山の後釜。胡錦涛の腹心)

  王金山
 安徽省長               → 安徽省党委書記(郭金龍の後釜)

  王三運
 福建省党委副書記           → 安徽省長(王金山の後釜)

  郭声�
 広西チワン族自治区党委副書記     → 広西チワン族自治区党委書記(劉奇葆の後釜)

  劉奇葆
 広西チワン族自治区党委書記      → 他省へ転出か

  蘇栄
  中央党校常務副校長          → 江西省党委書記(孟建柱・現公安部長の後釜)

  李鴻忠
 深セン市党委書記           → 湖北省長代理(羅清泉・現同省党委書記の後釜)


 ●『明報』

  王岐山
 北京市長・北京五輪組織委員会執行主席 → 来春に副首相就任

  羅志軍
 南京市党委書記            → 江蘇省長(張保華・現同省党委書記の後釜。団派)



 他に『星島日報』(2007/11/30)も似たような観測をしており、

「李鴻忠(深セン市党委書記)の後釜は林雄(広東省党委宣伝部長)か胡沢君(広東省党委組織部長)のどちらか。林雄は温家宝の秘書あがり」

 との独自情報があります。これについて『明報』は、

「李鴻忠は次期広東省長との前評判が高かったから、湖北省長代理というポストは不本意なのでは?」

 としています。また現在空席の遼寧省長の後任は内部から昇格する形になる見込みで、

「候補者は駱琳(省党委副書記)か陳政高(瀋陽市党委書記)」

 とのこと。駱琳は「団派」で李克強の子分、一方の陳政高は「太子党」である薄熙来の腹心だそうです。何やら派閥争いの様相で面白そうですね。

 面白いといえば『香港文匯報』も、

 ●重慶市党大会は薄熙来と李源潮が今日到着するのを受けて、明日幹部大会を開き新人事を発表する。
 ●中央党校は今日、江西省党委書記に就任する蘇栄(常務副校長)の送別会を開く。(第二波大型人事で)公安部長になった孟建柱・前江西省党委書記も顔を出す予定。
 ●湖北省長代理になる李鴻忠は明日、武漢入りして部下たちとの面通しに臨む。

 などと細々とした動静を伝えています。まあ、

「当たるも八卦の香港情報」

 でして実際に前回紹介した予想人事の顔ぶれとは異なる部分もあるのですけど、それもこれも5年に1度のお楽しみということで、この貴重な機会を純粋に面白がったりヲチ経験値を高めたりする。……ってことでいいじゃないかと私は思うのです。


 ――――


 ●『星島日報』(2007/11/30)
 http://www.singtao.com/yesterday/chi/1130eo01.html

 ●『香港文匯報』(2007/11/30)
 http://paper.wenweipo.com/2007/11/30/CH0711300001.htm
 http://paper.wenweipo.com/2007/11/30/CH0711300012.htm
 http://paper.wenweipo.com/2007/11/30/CH0711300013.htm
 http://paper.wenweipo.com/2007/11/30/CH0711300014.htm

 ●『明報』(2007/11/30)
 http://www.mingpaonews.com/20071130/cag1.htm

 ●『大公報』(2007/11/30)
 http://www.takungpao.com/news/07/11/30/ZM-830306.htm
 http://www.takungpao.com/news/07/11/30/ZM-830305.htm
 http://www.takungpao.com/news/07/11/30/ZM-830304.htm




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 中国海軍の駆逐艦「深セン」が昨日午前(11月28日)、親善訪問のため東京・晴海埠頭に入港しました。

 日中両国は国交樹立して35年にもなるのですが、中国海軍艦艇の来日はこれが初めてというのでちょっと驚きました。そうだったんですか。まあどうでもいいことですけどね。

 ちなみに「深セン」は南海艦隊に所属する親善訪問担当艦で、軍艦としての実力の程はともかく、これまでに欧州を含む15カ国・地域を回ってきた冠婚葬祭屋(笑)。この点においては中国海軍の代表的存在です。

 ……ていっても、やっぱりどうでもいいことですよね。ニュースとしても、

 ●例の殺人事件
 ●岡ちゃんがサッカー日本代表監督に就任した
 ●東京地検が前防衛省のドンをひっ捕えた

 といった話題に比べれば、駆逐艦「深セン」には華がありませんし絵になりませんし面白味にも欠けますし、そもそも日本国民の大多数がこの件について興味を持っていません。

 ニーズがないものだからマスコミでの扱いも地味でしたねー。中国政府は「歴史的快挙」みたいな感じで盛り上げたいようで、国内メディアにも到着第一報を速報させるなどな派手な扱いで大々的に報道させているのですけど。

 ちなみに中国のマスコミは
「中国共産党と政府の代弁者」と厳格に定義されています。まあ機関紙とか広報紙のようなもの。ですから、

「扱いが大きい=一般大衆が求めているニュース」

 とは限りません。今回の件についていえば、大半の中国人民にとっても日本人同様、
「あっそ」「だから何?」てなところでしょう。そんなことより物価高と株価と貧富の格差を何とかしろ、と。月に衛星打ち上げている場合か、と。

 ……てな訳で、こんなネタでは本来何も書くことがありません。

 

 ●シンセン到着(dongze) 2007-11-28 07:05:59
 http://blog.goo.ne.jp/gokenin168/e/b62053c7a06d0f566532fa0e8628d6fc(コメント欄)

 御家人さん、

 時間があったらヲチしてきてくださいね。(笑)

 直前に石破大臣にインタビューして訳のわからないコメント求めたり、侍とウルトラマンを結びつけたりした(でも内容はまったく違う)タイトルで日本の軍人さんのイメージを紹介しようとしたり、新華の軍事ページは一応日本初公式訪問を伝えてますが、、、、




 あんなショボいフネ見物なんかに行きませんよ私は(笑)。日課の散歩だって勝鬨橋(隅田川の最下流の橋)の手前までですし、そもそも年末商戦向けの売り物が続々とマスターアップする時期に入ってしまったので清洲橋にも出られません。土壇場型の仕事が増えて今週から夜型生活なんですから。orz

 海軍カレー作ってくれるからって誘われても行きません。厨房で主計科烹炊班の水兵が防毒マスクつけて大鍋かき混ぜているのなんか見たくありませんから(笑)。ああでも中国の軍艦の献立ってどんな感じなんでしょうか?……いやいや私は知りたいだけで食べるのは金輪際御免です。きっと食器も鉛漬けだし。

 でも確かに「新華網」などでは「深セン」訪日でこのところ関連記事が色々出ていました。友好ムードを前面に押し出してみせたり、「dongze」さん御指摘の如く、

「日本にとって中国は脅威ではない」

 とインタビューで石破茂・防衛相に言わせたりとか、

「これをきっかけに軍事交流が進めば緊張緩和や友好促進にも役立つ」

 などと中国軍艦初訪日の意義を海軍少将か誰かに語らせたりとか。

 ――――

 ところがですよ。昨日その駆逐艦「深セン」が東京湾に到着するなり、中国国内メディアからは意外な論評記事が次々に湧いて出てきました。ニュース記事は友好ムードが主流なんですけど、論評になるとちょっと違います。内容をひとことでいえば、

「これで中国も日本に肩を並べた。とうとうここまできた。日中二強時代の到来だ!」

 みたいな毛色のものです。あー中国人ってやっぱり病気だったんだなあ、というのが私の率直な感想。これについては当ブログでもう何度も指摘していますけど、「中国人」(漢族)特有の民族的病態なんです。

 どういうことかといえば、中華意識にあぐらをかいて世界の潮流から超然としていたために19世紀以降散々な目に遭った(自業自得)ことに起因する疾患です。ビョーキではなく真性の病気。

 ●もんのすごーく高いプライド(中華意識)
 ●もんのすごーく強いトラウマ(屈辱の歴史)

 という2種類の特異な性質がいずれも医学で扱うべきレベルに達していて、しかもその両者が一人格・一民族の中に同居しているのです。

 特に「倭人」とか「小日本」と馬鹿にしてきた日本に散々にやられたことが大きいでしょう。その日本が敗戦後にたちまち復興したのに比べ、自分の方は新中国成立以来の歴史において、自国民に誇るべきものがほぼ絶無。

 21世紀に入ってからの「世界の工場」化までは、誇るどころか恥ずかしくて情けなくて忘れたい出来事がずーっと続いてきたために、英国から返してもらった植民地・香港で新中国成立後の歴史を子供たちに教えるのに四苦八苦している始末です。だって教えたくないものばかりなんですから。

 朝鮮戦争、反右派闘争、大躍進、そのしっぺ返しの凄まじい飢餓、そして文化大革命に中越戦争。改革開放政策に転じてからはマトモになってきたかと思えば1989年に天安門事件です。海外メディアを含む衆人環視の下で、民主化を求める学生・市民を正規軍が無差別に銃撃し殺傷して回りました。戦車まで投入されて礫死者も出ています。

 もっとも「世界の工場」化を果たした現在も摩天楼が乱立している上海のような見た目の繁栄とは裏腹に、歪みに歪んだ経済成長で
絶望的な超格差社会と修復不可能かも知れない環境汚染が生じてしまいましたね。相変わらず民度は低いですし。そうした点で「鉄の女」呉儀・副首相が国際的赤っ恥をかいたことは前回紹介した通りです。

 ――――

 ……何だか話題がそれてしまったようなので針路修正。

「これで中国も日本に肩を並べた。とうとうここまできた。日中二強時代の到来だ!」

 という話でしたね。要するに中国海軍艦艇の初訪日は、民族的疾患(たぶん不治)に冒されている漢人どもにとっては
「倭人・小日本」に対する一種の「雪辱」めいた感慨を伴う象徴的な出来事だったようです。「中華」にこだわる手合いほどそういう意識を激しく刺激されるようで、それが論評記事に反映されてしまっている模様。

 その典型が電波系反日というか民族主義・愛国主義色の強烈な国際紙『国際先駆導報』や『環球時報』です。前者が国営通信社・新華社系列で後者は党中央の機関紙『人民日報』旗下の新聞です。

 恐らく似たような内容のものが全国津々浦々の地方紙でコラムになっていて、おいおい新華社や大手ポータルのニュースサイトが五月雨式に紹介してくれるかと思います。私は電波浴のようで煩わしいので検索をかける気にもなりません。

 だって、いきなり
「北洋艦隊」ですよ。

 駆逐艦「深セン」の東京入港で最初に引き合いに出されるのが、100年以上前の「定遠」「鎮遠」で鳴らし当時アジア最強を自任していた北洋艦隊の日本訪問なのです。

 確かに「華」なるものを「蛮夷」たる倭人に誇示したという意味で漢人にとっては晴れ晴れとした記憶といえるでしょう(長崎で民度の低さまで誇示しちゃいましたけど)。でもあまりに昔じゃございませんか?

 19世紀後半でしょ?私の恩師の一族が中国を統べていた時代ではありませんか。

 ――――

 ところがその御自慢の北洋艦隊、ほどなく生起した日清戦争の黄海海戦で日本海軍の連合艦隊に呆気なく敗れ、根拠地の威海衛(山東省)に逼塞したところを今度は日本海軍の水雷艇による魚雷攻撃でボロボロにされてあえなく白旗。

 戦争にも負けて下関条約が結ばれることになりますが、今回の件を語るについて、まずその「北洋艦隊」だの「馬関条約」(下関条約)だのといった出来事から説き起こしているのです。

 「春帆楼」って御存知ですか?下関条約の舞台となった料亭だと『国際先駆導報』の評論に出ていました。まあそうした「倭人・小日本」に対する屈辱的な歴史がスタートする以前の、悪くいえばまだ化けの皮がはがれていなかった時代の北洋艦隊による示威的な訪日、それを想起し、さらに惨憺たる近現代史に思いをはせて「とうとうここまできた」ということなのだそうです。

 ●『国際先駆導報』(新華網 2007/11/28/11:29)
 http://news.xinhuanet.com/world/2007-11/28/content_7159909.htm

 この文章は「新華網」や大手ポータルが複数のタイトルで掲載しているほか、香港における親中紙の筆頭格『香港文匯報』にも転載されていました。いわば「中国駆逐艦の訪日といえば」でまず出てくる最大公約数的な思いなのでしょう。

 ……あ、もちろんそれは「中華」に燃えて血涙を絞り出す向き限定ではあります。ただ上述したように漢人共通の民族的疾患というものがありますから、敢えてその話題を振られればその他大勢にとっても似たような感想が湧くのかも知れません。

 「東亞病夫」すなわち「アジアの負け犬」たるメンタリティ(その裏返しである過度の増長)は健在、といったところでしょうか。

 文章そのものも最後の部分になってくると「どちらも強国」の日中両国を比較して総人口だの高齢化社会だの経済的な伸びしろだのエリート層の質や器量だのといった逆根拠になりかねないことを列挙して、

「これからは中国の時代だ」

 みたいなノリの、半ば神がかり状態に突入しています。あらえっさっさー(笑)。

 ちなみに
「漢人」というのは中国本土系の漢族、要するに「支那人」のことを今回便宜上そう称したまでです。中国本土系というのがポイント。同じ中国でも特別行政区・香港では親中紙以外の新聞は概ねサラリと流した扱いでしたから。香港人にとっても「あっそ」「だから何?」といったニュースなのでしょう。

 ――――

 ところで『国際先駆導報』に対する『環球時報』ですが、こちらは面子にこだわる漢人として、駆逐艦「深セン」訪日に対する日本メディアの扱いが地味であることに気分を甚だしく害している様子です(笑)。何でも中国駆逐艦の訪日が確定してから、

「『朝日新聞』『読売新聞』『産経新聞』など日本の大手メディアは『口裏を合わせたが如く』事実関係のみを報じていて、関連論評記事がたくさん出てくるといった形にはなっていない」

 のだそうで、日本メディアが
「揃って沈黙している」と指摘しています。なるほどこれでは漢人の顔が立ちません。ムカつくでしょう。中国では大手メディアはもちろん、人民解放軍の機関紙である『解放軍報』の電子版「中国軍網」でも今回の訪日を大きく扱っているのに、試しに海上自衛隊のオフィシャルサイトをのぞいてみたら現時点では見事にスルー。「なかったこと」扱いです(笑)。

 しかし中国側としては晴れやかな舞台ですから「日本メディアは揃って沈黙」に表立って立腹する訳にもいきません。ですから「沈黙」も好意の表れなのだというパワープレーに走ることになります。一番目立った評論記事は、

 ●中国軍艦の訪日成功のため、日本メディアは地味なお出迎え(新華網 2007/11/28/08:43)
 http://news.xinhuanet.com/mil/2007-11/28/content_7158031.htm

 これです。この記事も異なるタイトルや内容をやや変えた別バージョンが複数出回っています。正に力技としかいいようのない強引なこじつけは以下の部分です。



 今回の中国軍艦による日本訪問は中日軍事交流に新たな一歩を踏み出し、今度は日本の軍艦が中国を訪問することになる。この「スタート」は得難い貴重なものだ。日本政府は正にそのために地味な扱いに撤し、また細心かつ慎重に加護を与えた。それによって個別のメディアが悪意を込めて騒ぎ立てたり右翼団体による妨害が発生することを回避し、中国軍艦の訪日成功を確実なものにしたのだと専門家はみている。中日両国はこの踏み出された第一歩が極めてナイーブで「両国関係を引き続き前進させるためのひとつの試練」だとお互いによく理解し合っているのだ。




 ガハハハハハハ。「腐っても豚」というかお里は争えないというか(笑)。日本駐在の特派員でも「マスコミは政府の代弁者たること」という中共政権の非常識が日本でも常識としてまかり通っていると思い込んでいるのか、パワープレーのために記者が敢えて「腐っても豚」に撤したのかはわかりませんけど、

「日本のメディアの地味な扱いは全て日本政府の好意的な仕込みによるものなのだ」

 と説明されています。ワロスw。

 ……いやいや、実は笑っている場合ではなくて、中国側にとっては真剣な問題なのかも知れません。というのも中国海軍による親善訪問に対して,今度は日本の海上自衛隊が「返礼」をすることになります。

 要するに「日本海軍」の軍艦があの鮮やかな
軍艦旗(自衛隊旗)を艦尾に堂々と掲げて上海だか大連だか、とにかく中国の港に入ってくるのです。そして停泊中は毎日定時にラッパによる君が代吹奏とともに掲揚と降下が行われます。歓迎式典では双方の軍楽隊による両国国歌の演奏が行われるでしょうし、海上自衛隊ですから公式行進曲も流れるかも知れません。ええ、他でもない「軍艦マーチ」(軍艦行進曲)です。

 駆逐艦「深セン」の東京入港では日本側の音楽として「北国の春」と「ソーラン節」が演奏された、と中国側が報じていますが、海自オフィシャルの「軍艦マーチ」がなかったとは思えません。どうなのでしょう?

 ●「環球網」(2007/11/29/09:01)
 http://www.huanqiu.com/www/191/2007-11/28934.html

 それはともかく、海自艦艇の中国に対する「友好親善訪問」は中国当局にとっては正にナイーブな問題。「反日」感情の素地たっぷりな上に30代以下は反日風味満点の江沢民型愛国主義教育を全身に浴びて成人しています。暴動頻発の社会状況にあって「反日」を種火に日頃の鬱憤晴らしをしたい連中もわんさかいることでしょう。

 対応を誤ると胡錦涛政権は悪夢を見ることになります。……ハッ、そうか「反胡錦涛諸派連合の暗躍→政争」という可能性も!そうなればお決まりのメディアを使った情報戦や2005年春の反日騒動のような大衆動員も行われて、ひと波乱あるかも知れません。となれば指導力が問われる胡錦涛の正念場ということになります。

 ●極上燃料?「日本鬼子」の再来だ!(2007/09/05)

 つまり「通りゃんせ」なのです。行きはよいよい「返り」は怖い♪……中国駆逐艦が日本へ行くのはいいとして、怖いのは「帰路」ではなく「日本海軍」(海上自衛隊)による「返礼」。それがいつ行われるのかは不明ですが、たぶん北京五輪開催後まで延ばすことはないでしょう。

 上記エントリーで紹介しているように、実は中国側は早くもマスコミを動員して「反日」フラグが立つのを防ぐべく仕込みに取りかかっている模様ですが、さてどうなることやら。正にワクテカです。各位請拭目以待好了(皆さんどうぞ御期待あれ)。

 それにしても中国というのは、たぶん日本がいないとメンタル的に生きていけない国なのではないでしょうか。




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 呉儀婆さん。呉儀婆。来春で引退が予定されている副首相です。胡錦涛・国家主席は何か辛いことがあったときに、呉儀のその豊満な胸に顔を埋めて思いっきり泣くことが癒しだったとかそうでないとか。鉄の女なんてとんでもない。胡錦涛にしてみればふかふかで心地よいのです。

 ……いや、「辛いときには呉儀」というのは胡錦涛にとって最高の回復魔法。その証拠にほら、胡錦涛がいちばんピンチだった2005年の新緑のころ、日本訪問中だった呉儀を小泉純一郎・首相(当時)との会見をドタキャンさせてまで北京に呼び戻したではないですか(笑)。

 ●呉儀事件で始まった新たな物語。・上(2005/05/28)
 ●呉儀事件で始まった新たな物語。・中(2005/05/28)
 ●呉儀事件で始まった新たな物語。・下(2005/05/28)
 ●呉儀事件で始まった新たな物語。・補(2005/05/30)
 ●おお人民服だ。(2005/05/31)

 余太話はともかく、その呉儀婆さんがまた吠えたそうですね。舞台は北京で開催された「食の安全」に関する国際フォーラム、相手は欧州連合(EU)のマンデルソン欧州委員。日本では『産経新聞』電子版が共同電を拾っています。



 ●「食の安全」で対応策協議 北京で国際フォーラム(MSN産経ニュース 2007.11.26 17:13)
 http://sankei.jp.msn.com/world/china/071126/chn0711261713006-n1.htm

 中国衛生当局と世界保健機関(WHO)主催で「食の安全」確保に向けた対応策などを話し合う国際フォーラムが26日午前、北京市内で2日間の日程で始まった。中国産食品に対する国際的な不信感が広がる中、中国は国際社会との協力姿勢を強調し、信頼確保に努めたい考えだ。
(中略)

 欧州連合(EU)のマンデルソン欧州委員(通商担当)は、「食の安全」に関する消費者保護の強化について、中国製品への障壁を築こうとする「保護貿易主義」などと反発する中国国内の動きを「まったく受け入れられない」と強く批判。

 中国の呉儀副首相は「食の安全は世界各国が直面している共通の難題。中国の監督能力は世界水準と比べ一定の開きがある」と述べ、安全確保に向け努力する考えを強調した。

 中国政府は国内産の食品などの安全性確保に向け、8月から呉副首相をトップに特別対策チームが監督強化に乗り出すとともに、日米欧との国際協力にも積極的に取り組む考えを示している。(共同)




 いやー食の安全、この問題ばかりは特別チームを組織して呉儀が陣頭指揮に立ったってどうなるものでもないでしょう。

 ただぶっちゃけた話、自国民が何を食べてどうなろうと構いやしない中共政権において、「食の安全」といえば国際問題の範疇に入ります。

「そこで呉儀」
「だからこそ呉儀」

 となるのです。強面で厚顔。威嚇・挑発にも長けているばかりか、相手が誰であろうと物怖じすることなく道理を外れた屁理屈を気魄十分にまくし立てられる、という特技こそ呉儀の真骨頂ですから。

 そして今回の国際フォーラム。香港紙の報道によると呉儀は式辞を述べた中で、

 ●中国は一貫して食品の安全問題を非常に重視し、この面で努力を重ね成果を得ている。総じていえば、中国の食品は安全で安心できるものだ。
 ●今年上半期、28種類計525品目の食品に対して中国当局が実施したサンプリング検査では合格率が90%以上だった。
 ●中国では比較的厳格な輸出入食品に対する安全保障システムが構築されており、輸出食品の合格率は長年来99%以上を維持している。
 ●「食の安全」を政治問題化している向きがある。事実をねじ曲げ騒ぎ立てて輸入障壁とするようなことはすべきではない。
 ●食品安全問題を輸入制限の口実にするというのは貿易における保護主義のよくある手口だ。われわれはそれに賛成しない。

 などと早速ハッタリをかました模様。とりあえずドムのような巨体を揺すって威嚇しつつ吠えてみた訳です。

 ――――

 ところが呉儀会心のこの虚喝は効果がなかった、というより逆に脇の甘さを露呈する形となってしまいました。

 呉儀に続いて演壇に立ったEUのマンデルソン欧州委員、上の記事でも「強く批判」となっていますけど、アウェーであることに構わず呉儀発言に対して即座に反応しました。

 ●中国政府には健康に危険を及ぼす中国産食品は1%にも満たないと指摘する官僚がいるようだ。
 ●しかし、われわれEUは毎日中国から数億ユーロにものぼる産品を輸入しているから、たとえ!%未満だからといって看過することはできない。
 ●EUは昨年、品質に関する苦情を毎月約1000件受理したが、このうち半分は中国産に関わるものだった。
 ●しかも今年に入ってからはその中国産関連の品質に対する苦情が50%も増加している。
 ●中国の定めた基準に対しては批判が渦巻いている。品質の安全基準強化を求める声を保護貿易主義とする物言いには断固反対する。

 魅せてくれましたマンデルソン。

「中国政府には健康に危険を及ぼす中国産食品は1%にも満たないと指摘する官僚がいるようだ」
「!%未満だからといって看過することはできない」

 というのは紛れもなく呉儀発言への面当てです。真っ向からのこの切り返しを見せつけられた呉儀は地団駄を踏んだものの、出番は終わっているのでもはや後の祭り。報道陣が居並ぶ前で、

「いまのマンデルソン何あれ?すんげームカつく!」(我非常不滿意曼爾森的發言!)

 と悔しさ丸出しで荒れていたとのこと(笑)。引退を控えて恐らくこれが最後の一喝になるとみられていただけに、未練を残す結果となってしまいました。呉儀タソ涙目?

 ――――

 ただ香港紙は所詮はチャイニーズですから、この舌戦を面白おかしく書き立てていながらも、タイトルからして

「怒れる鉄の女、EU高官を一喝」

 といった構図です。例のブルース・リーが映画でラスボスを倒した後の、

「我們中國人並不是東亞病夫!」(おれたち中国人はアジアの負け犬なんかじゃないぞ!)

 という見栄を切るシーンのような形に仕立て上げています。当ブログで常々指摘している民族特有の病態です。中国人が白人をやり込めたという形にして溜飲を下げる、ということでしょう。どうぞどうぞ。いつまでも変わらずそのままの貴方でいて下さい。

 ●『明報』(2007/11/27)
 http://hk.news.yahoo.com/071126/12/2k7tm.html

 ●『星島日報』(2007/11/27)
 http://www.singtao.com/yesterday/chi/1127eo01.html

 ところで皆さん御存知の通り、中国産で安全でないのは食品ばかりではありません。輸出先で問題となり回収された玩具などもたくさんあります。中国の子供たちは鉛漬けのオモチャがお好きなようで(笑)。

 これについては、国内の製造業者に対する調査を国家質検総局と関連検疫部門が今年8月から腰を入れて共同調査したところ、現在までで輸出資格を剥奪された玩具メーカーが何と1074社に達しています。

「だからもう安全だ」

 と言いたいのでしょうけど、まだ調べ始めて3カ月ですし、当局発表でもこれですから実際はさぞや。……と考えてこちらはいよいよ心配になってしまう、というのが正しい中国との付き合い方です。

 ●『東方日報』(2007/11/27)
 http://orientaldaily.on.cc/new/new_b04cnt.html?pubdate=20071127

 ――――

 もっとすごいものもあります。広東省で有名ブランド歯磨き粉のニセモノが製造されていたというものです。広州市の関連部門がこのほど闇業者の摘発に成功しました。

 現地の報道によると、この闇業者は「高露潔」(Colgate)、「黒人」(DARLIE)など中国国内における歯磨き粉の有名ブランド十数種類のニセモノを製造。私は中国留学時代、上海市郊外で「abibas」というロゴのスポーツシューズが売られていたのを目撃したことがありますが、闇業者は「黒人」の「DARLIE」を「DABBIL」にすり替え、あとは本物そっくりのパッケージで流通させていたとのことです。

「6元1個の『高露潔』が2元で買えたんだ。でもこの歯磨き粉だと泡も立たないんだ」

 とは、広州市白雲区の商店にて10元で「ニセ高露潔」5個を買ってしまった地元住民・胡さんの弁。これまた本物そっくりの包装であるうえ、

「香港(高露潔)公司監製」

 などというそれっぽい印鑑も押されていて使用するまで全く気付かなかったそうです。

 これら有名ブランド歯磨き粉のニセモノ、無害であれば「騙された畜生」で済むのでしょうが、そこは中国ですからもちろん期待を裏切ることはありません。専門の医師によると、使い続けているうちに肝臓や腎臓などの器官に傷害が生じる可能性があり、ひどい場合は中毒症状を引き起こすとのこと。

 上で「もっとすごいもの」と書きましたけど、何がすごいかってその製造現場。環境劣悪なんてレベルではなく、何と
工員は防毒マスクを着用して製造作業に従事していたのです。そこで作っているものが口に入れる歯磨き粉なんですから「さすが中国クオリティ」てなもんです。

 ●『東方日報』(2007/11/27)
 http://orientaldaily.on.cc/new/new_b05cnt.html?pubdate=20071127

 マンデルソンがこのことを知らなかったのは、呉儀にとって幸いだったといっていいでしょう(笑)。

 ――――

 ともあれ、満堂を圧するような勢いでがなり立てても、屁理屈はやっぱり屁理屈ということを呉儀は学習したか、どうか。

 必勝を期するのであればやっぱり黒い三連星でないと。マッシュ(李肇星)、オルテガ(唐家セン)を連れてきてジェットストリーム・アタックを仕掛けるべきだったのではないかと愚考する次第です。

 最後にオマケを。気になって本当にぐぐってみたら「ようつべ」で発見しました(笑)。






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「上」の続き)


 ……と中国の物価高について書いているうちにふと気付いたのが、

「そもそも『庶民』って一体誰?」

 ということです。1人当たり平均で出されても、


 ●貧富の格差はすでに警戒水準、指導部は高度に重視すべし(新華網 2005/09/19/16:54)
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2005-09/19/content_3512402.htm

 現在の中国国民を収入や消費で5段階に分けた場合、最貧困層である総人口の20%が収入や消費で全体に占める割合はわずか4.7%。逆に最も金持ちな20%の収入・消費シェアは全体の50%に及ぶ。



 という超格差社会ですから、たぶん大雑把にいって60~70%くらいの人は物価高に音を上げているのではないかと思われます。所得格差などの目安として「ジニ係数」というものがあり、これが「0.40」を超えると格差社会としての警戒水域に入るのだそうですが、中国は2005年時点ですでに「0.45」を超えていると当局(発改委=国家発展改革委員会)が認めています。

 一方で、新華社系の金融紙『上海証券報』が「十一五」(第11次五カ年計画、2006~2010年)期間中の「格差社会」問題について、



 ●数字による「十一五」展望(2005/10/12/07:40)
 http://news.xinhuanet.com/stock/2005-10/12/content_3606994.htm

 ジニ係数でわが国の収入格差をみてみると、1990年には「0.34」前後だったが、現在はすでに「0.45」に迫っており、総人口のうち最も貧しい 20%が収入あるいは消費において全体に占める割合はわずか4.7%。逆に最も豊かな20%が収入または消費に占める比率は50%にも達する。収入格差が過大になるのを抑制するのが「調和社会」を建設する上での重要な条件である。努力することによって、わが国は2010年のジニ係数を「0.45」という現在の水準で維持することが望めるだろう。



 と、絶望的な予測を行っています。要するに良くても現状維持。頑張りに頑張れば「0.45」という警戒ラインをはるかに超える現在の格差を維持することができるということで、「格差縮小」といった改善は見込めないというものです。

 ●政府公認:貧富の格差改善は無理。(2005/10/13)
 ●ジニ係数――余談として。(2005/10/16)

 中国ではすでに、

「最貧困層である総人口の20%が収入や消費で全体に占める割合はわずか4.7%。逆に最も金持ちな20%の収入・消費シェアは全体の50%に及ぶ」

 という格差社会が現出してしまっています。徒競走をやるとしても、全体の5割以上のスタートラインは富裕層よりずっと後ろの方に引かれています。その不公平な設定下で用意ドン!となったとき、富裕層にものすごいハンディでも負わせない限り、格差はまず縮まりません。

 現在の中国社会はそういう「ハンディ」がない状況での所得徒競走が行われており、各層がみな等しい所得増加率だと仮定しても、基数が違うだけに走れば走るほど格差は拡大することになります。仮に所得10の人と所得50の人が駈けっこをするとすれば、スタート時の差は40。そしてどちらも10%の所得増を実現してゴールすれば「11:55」で格差は40から44に開きます。

 実際の統計でいうと、例えば今年1~9月の都市部住民の1人当たり可処分所得は1万346元で、物価上昇分を差し引いた実質増加率は13.2%。これに対し農村部の1人当たり現金収入は3321元で同14.8%増です。

 可処分所得と現金収入なので正確な比較とはなりませんが、増加率は農村部の方が1.6ポイント高くなります。つまり都市部より農村部の方が伸び幅は大きいのですが、これを金額に直してみると都市部と農村部の格差は5594元から7025元へと逆に拡大していることになります。これも、基数が違うからです。

 ●「新華網」(2007/10/25/18:08)
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2007-10/25/content_6944095.htm

 ――――

 こういう状況下で胡錦涛政権は富裕層への相応の「ハンディ」を用意せぬまま、国民が
「財産性収入」を増やせるような環境づくりに努める、としています(「十七大」=中国共産党第17回党大会における胡錦涛の総書記報告)。つまり賃金などではなく、財テクなど資産運用による収入を拡大できるようにしていくということです。

 財テクといえば株式市場など各種金融商品や不動産売買ということになりますが、現実には格差縮小に向けた富裕層への縛りがないまま「財産性収入」という言葉が一人歩きしています。この流れで進むと持てる者と持たざる者の格差はいよいよ開くことになるでしょう。

 実際に不動産市場や株式市場が貧富の差を拡大させつつある、というレポートが最近公開されました。中国人民大学公共学院と発改委経済社会発展研究所が3年がかりで進めている収入格差改善に関する政策研究プロジェクトの中間報告のようなもので、決定版は2008年末に発表されるそうです。

 この中間報告によると、不動産市場と株式市場が貧富の格差をどんどん広げている傾向にあり、過熱気味である今年の経済状況をも反映して(走れば走るほど「格差」)、

「ジニ係数は昨年の0.47から今年2007年は0.48へと達するだろう」

 とのこと。2005年の「0.45」がとうとう「0.48」にまで至ってしまった訳で、「和諧社会建設」といった胡錦涛政権の目標とは裏腹に「不調和」がいよいよ深刻化しているのです。

「0.01ポイントの増加はわずかなようにみえるが、これは2003~2006年の3年間におけるジニ係数の上昇幅に相当する」

 とこのレポートは指摘しており、格差拡大が加速していることに警鐘を鳴らしています。存在力が急速に高まりつつある不動産市場や株式市場に参加できる「持てる者」と、そうした「財産性収入」を増やす機会に参加できない「持たざる者」の差が開く一方だというのです。

 もちろん「持てる者」の間でも運用できる資金力によって格差が生じます。特に未成熟な現在の株式市場においては、得られる関連情報量は資金力に比例することで、「持てる者」同士の格差拡大にも拍車がかかる、とこのレポートは指摘しています。

 ――――

 「財産性収入」の機会という点においては、「持てる者」と「持たざる者」だけでなく、都市部と農村部でも格差が生じることになるでしょう。ちなみにこのレポートによると、2006年の都市部と農村部の収入格差拡大率は1.7%。「財産性収入」だけをみると11.3%にも達したとのこと。

 貧富の差を改善するための政策研究プロジェクトなのですが、現状では格差が改善されることはまず無理、むしろいよいよ「格差社会」化していくだろう、ということです。

 もっとも、株価が右肩上がり基調、といったような、「財産性収入」を増やす場が安定していることがこのレポートの大前提。そりゃそうですね。大暴落すれば資産運用どころの話ではなくなります。

 そうなると事態は経済問題ではなく社会問題でしょう。利率を上回る物価高のため銀行預金を取り崩して株式市場などに注ぎ込んでいる都市部住民は手持ちが瞬時に消滅することとなり、社会不安の起爆剤となりかねません。

 何せ「リスクは自己負担」という観念の欠落している連中がデイトレーダーなのです。平素から株価が大きく下げるごとに、大手ポータル掲示板の株式板では政府への呪詛や「国家政権顛覆煽動罪」になりかねない素敵な反革命スレッドが乱立しているのです。

 5月末の暴落ではデモまで発生しています。要するにこの連中は、暴落すれば逆ギレは必定という可燃度の高い危険分子(笑)。ところがこの危険分子の列に毎日平均10~20万人が新規加入しているのですから空恐ろしい現実が進行している、というべきでしょうか。時限爆弾の炸薬量がどんどん増加しているようなもの。いやー笑っている場合ではありません。

 ●「新華網」(2007/11/15/13:24)
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2007-11/15/content_7079815.htm

 ●バブルがひとつはじけました。プーアル茶暴落。(2007/06/12)
 ●怖いのは暴落ではなく逆ギレ。(2007/11/10)
 ●温家宝、とりあえず農村視察で「庶民派」を再演出しておけ。(2007/11/25)

 ――――

 株に限らず、経済そのものが高度成長を続ければ続けるほど貧富の格差が広がっていくのがいまの中国経済の構造。特権を有する党幹部や国有企業解体の過程でうまい汁を吸った私営企業主などが既得権益層としてそれぞれ分際相応のアドバンテージを持ちつつ、怪走する経済に乗って非富裕層をどんどん引き離していくのです。

 「分際相応」と書きましたけど、都市と農村の間でも格差が広がりつつあることを思えば、都市部に生まれ都市戸籍を有していること自体すら小さいながらも既得権益。……という極端な物言いは別としても、こうした「経済が走れば走るほど『格差』」を構造改革によって改善していこうというのが胡錦涛政権の「科学的発展観」であり「和諧社会建設」です。

 とはいえ既得権益層は面従腹背という形でそれに抵抗するでしょうし、全国各地・各行政レベルの地方当局という大小様々な「諸侯」たちも、大局(全国レベルでのバランス)に背を向けて地元優先を貫こう、という思惑もあれば必要に迫られた事情もあります。

 「胡錦涛路線」の前途は多難といわざるを得ないでしょう。前述したように、

「格差改善?無理無理無理無理」

 と専門筋が太鼓判を押しているくらいですから。

 ●胡錦涛報告は「控えめな宣戦布告」@十七大02(2007/10/15)
 ●胡錦涛、科学的発展観そして中国そのものについて@十七大04(2007/10/18)




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 「快走」というには余りに歪んだ構造ですし、かといってまだ「潰走」してはいませんので(笑)、とりあえず「怪走」という言葉を使っておきます。中国経済の高度成長に対してです。

 このところずーっとGDP成長率が毎年2桁台という成長率なのですが、マトモな成長と言い難いことは、党中央が「科学的発展観」や「和諧社会建設」をスローガンに掲げるととに、さきの党大会でこの2つを中国共産党の憲法といえる党規約に盛り込ませたことでもわかります。

 「科学的発展観」や「和諧社会建設」というのは胡錦涛の指導理論ですが、引退・死後ではなく現役の間にその指導理論が党規約に明記されたのは毛沢東以来のことです。高度成長と自画自賛しつつも、一方ではそこまでしなければならないほど追い詰められた状況が存在し、胡錦涛以下党中央がそのことに強い危機感を持っていることの表れといえるでしょう。

 別な角度からみると、トウ小平ですら成し得なかったパワープレーに走ったというのは、わざわざ党規約に明記しなければならないほど、胡錦涛の指導力が不十分だということです。トウ小平、特にバランサーからカリスマへと変貌を遂げた1989年の天安門事件以降のトウ小平なら、党規約という権威をかざさなくても鶴の一声でどうにでもなりました。胡錦涛にはその力がない訳です。

 で、近年の高度経済成長を胡錦涛政権が決して快く思っていないことは、そうしたスローガンを高々と掲げていることからもわかります。非効率で粗放な規模の拡大、環境汚染や格差の拡大、それに土地強制収用のような収奪めいたことまでしての開発路線というのはGDP成長率を押し上げることはできても、深刻な副作用を社会にもたらすからです。

 ――――

 とりあえず物価高の話から入りましょう。今年に入ってからの中国の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比で以下のようになっています。

  1月:2.2% (5.0%)
  2月:2.7% (6.0%)
  3月:3.3% (7.7%)
  4月:3.0% (7.1%)
  5月:3.4% (8.3%)
  6月:4.4%(11.3%)
  7月:5.6%(15.4%)
  8月:6.5%(18.2%)
  9月:6.2%(16.9%)
 10月:6.5%(17.6%)

 前回のコメント欄で「町方同心」さんが指摘していたように、当初中国政府はCPI上昇率の目安として、

「3%が警戒ライン」

 としていました。

 ●消費者物価指数、3カ月連続で警戒ライン突破。(2007/06/13)

 ところが3月以降、それを突破したどころか基本的に右肩上がりで10月はとうとう6.5%。



 ●「新華網」(2007/11/23/11:42)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2007-11/23/content_7131987.htm

 国家統計局の謝伏瞻・局長が11月22日、中国の消費者物価指数(CPI)が月間値で前年同期比6%前後の上昇というペースは今後もしばらく続くだろうとの見方を示した。今年通年のCPI上昇率について謝伏瞻は「4.5~ 4.6%台」との見方を示し、この状況を「依然として受け入れられるレベル」だとしている。




 と当局は何やら強気なのですが、

「依然として受け入れられるレベル」

 という言葉はすでに腰が砕けているからこそ出てくるものではないかと思います。……まあ、いざとなれば「暗箱作業」(密室操作)で数字をいじくればいいのでしょうけど、それでもあまり無茶はできないでしょう。ちなみに第三四半期(1~9月)のCPI上昇率は前年同期比4.1%です。

 ところで上に掲げたCPI上昇率について、4月と9月の上昇幅が前月比でマイナスになっていることに下世話な勘繰りをしてみます。

 まず3月に全人代(全国人民代表大会=なんちゃって国会)が開かれて経済各面に対する政府の目標値が示された直後、4月に発表された3月の数値が「警戒ライン突破」の3.3%ということで4月の数値をいじってみたものの(3.0%)、現実から乖離してしまうのでその後は数字いじりを半ば放棄したのではないかと。

 ――――

 9月の「6.2%」という前月比マイナスというのは言うまでもなく10月15日から5年に一度の重要政治イベント・「十七大」(中国共産党第17回党大会)が開かれていたために縁起の悪い統計は忌避され、

「マクロ経済コントロールが奏功し始めています。胡錦涛政権頑張ってます」

 てなところを見せようと、小数点以下の数字をちまちまと弄くったのだろうと思います。前月の経済統計は翌月の中旬あたりに発表されるのが常なのですが、9月の経済統計が10月25日になってようやく発表されているのも、党大会など一連の政治イベントや新指導部人事が落ち着いたタイミングです。これが10月の経済統計になると平素のスケジュールに戻って11月13日に公開されています。

 ●「新華網」(2007/10/25)
 http://www.gov.cn/wszb/zhibo164/wzsl.htm

 ●「新華網」(2007/10/25/22:30)
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2007-10/25/content_6946647.htm

 ●「新華網」(2007/11/13/11:36)
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2007-11/13/content_7063600.htm

 妄想と一笑して下さって結構ですが、GDP成長率に関しても国家統計局がはじき出した数字と全国各地から上がってきた統計を照らし合わせたら数ポイントも差があった、という「事件」も過去に起きています。

 このために中央が特別調査チームを組んで全国ツアーをやらせたこともあります。発表された統計と現地感覚が余りにかけ離れていて、当局発表の数字を素直に鵜呑みにできないのが、研究者泣かせで中国の面倒なところといえるかも知れません。

 ●「新華網」(2005/03/07/17:19)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-03/07/content_2663385.htm

 ●護符(2007/06/14)

 ――――

 ところで、上に並べた月ごとのCPI上昇率、その隣にあるカッコ内の数字はCPI上昇率を品目別にバラした際の「食品価格」上昇率です。今年の物価高の牽引役とされているので抜き出してみました。特に6月以降の上昇幅は「食品」であるだけに文字通り「庶民の台所を直撃」といった格好です。

 この「食品価格」には何が含まれるかというと「穀物」「肉類及び肉類加工品」「卵」「水産物」「野菜」「果物」の6品目。タバコやアルコール類は別項目です。要するに毎日三食口にするものが突出して高騰中、ということになります。

 今年10月の前年同月比による6品目の上昇幅は、

 ●穀物:6.7%
 ●肉類及び肉類加工品:38.3%
 ●卵:15.0%
 ●水産物:7.0%
 ●野菜:29.9%
 ●果物:8.5%

 となっており、肉や野菜の高値が目を引きます。……今年は毎月こんな感じで「肉・野菜・卵」の値上がりが際立っているのですが、特に肉類は昨年10月には「100g当たり100円」だったものが今年10月は「100g当たり138円」になっているという訳で、「食費」全体でみても2割近く支出が増えているのですから、庶民にとってはたまったものではありません。


「下」に続く)




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 たぶん私の気のせいでしょうけど、最近、温家宝・首相の影が薄くなっているようにみえます。

 いや、東アジアサミットなどの華やかな外交舞台に姿をみせるなどしていますし、以前当ブログから「政治的に心電図ピー状態」と大切に扱われた黄菊・前党中央政治局常務委員(故人)のように「干されている」訳ではありません。ただ困難きわまる現実に直面して手をつかねてしまっているというか、

「これは自分の手に負えない」

 と半ば投げてしまっているような気配を感じるのです。

 例えばロシア訪問中に香港の記者団から経済政策について問われたとき、大方向や具体的政策を述べればいいところで、

「これからも真心を込めてやっていく」

 といった無用の精神論までを吐露しちゃっているあたりに、

「困っているのかなあ」
「疲れているのかなあ」

 という印象を受けます。先日発表した一連の中国経済に関する談話も建前論や原則論に終始していて、庶民にしたら
「だから何?」という内容だったように思います。

 そういえばその際、深セン市が金融引き締めと闇業者撲滅を狙って市内の銀行に対し、1日当たりの預金引き出しに限度額を設けたことについて、温家宝は11月19日に反対の意を表明したのですけど、香港の最大手紙『蘋果日報』(2007/11/22)によると、21日時点では深センの多くの銀行で改められることなく限度額制度が続けられていたそうです。

 中国の株価暴落(A株)では投機目的の個人投資家がネット上で逆ギレしていました。温家宝の責任を問う声や「首相を辞めろ。辞めてくれ」といったスレッドまで立つ有様。もちろんすぐに削除されたようですけど、やはり『蘋果日報』(2007/11/23)がこれを問題スレ画像つきで報じています。



 ひとつひとつのスレタイを読みたい方は拡大版をどうぞ。なかなか楽しめます(笑)。

 全国各地の地方当局という大小様々な「諸侯」という抵抗勢力の面従腹背などもあって(深センの銀行の件はその一例)、首相というのは国内においてなかなか風当たりの強いものなのです。

 だいたい毎年3月に開かれる全人代(なんちゃって国会)における首相の「政府活動報告」において、年間のGDP成長率を過去5年間、温家宝は常に「8%前後」などひと桁台と目標値を示し、

「経済を過熱させることなく緩やかに減速させてソフトランディング」

 というカタチを狙ってきました。

 ところがこの5年間,毎年のGDP成長率は常に温家宝の思惑を裏切る2桁台で、2桁台と判明すると全人代での目標値は忘れたことにして「健全な高度成長」と中共系メディアが自画自賛して取り繕い、現状を追認することの繰り返しでした。……ああ今年はまだ終わっていませんけど11%台になるだろうというのが内外の観測です。

 目標値が裏切られて2桁成長になることが抵抗勢力による面従腹背の証拠であることは、その経済成長に無駄が多く非効率的で、一方で環境汚染や格差拡大などを深刻化させる不調和なものだったことが示しています。さもなければ「科学的発展観」とか「和諧社会建設」なんてスローガンを高々と掲げるとともに、党規約にも織り込むなんてパワープレーをする必要はありませんから。

 ――――

 そうした困ったあれこれを温家宝は「庶民派」を偽装することでゴマカしてきたのですが、そろそろ化けの皮が……てなところでしょうか。温家宝自身としては、いい加減首相職を投げ出したいんじゃないかなあ、と私は最近思うようになっています。タイミングのいいことに、来春の全人代で首相職は任期満了になります。

 とはいえ有力な後継候補がいないことに加え、「胡温体制」と胡錦涛・国家主席と併称されているくらいですから、まず周囲が辞めさせないでしょう。でも首相としての能力や実行力では朱鎔基・元首相の半分ほどもない温家宝は、自分の限界を感じ、また疲れているのではないかと。わがままが通るなら首相を辞めたいのではないかと私の目には映ります。

 温家宝といえば保身の名人でもありますけど、その感覚に照らしても2008年から5年間の経済運営を担当することは「ヤバい」ということになるのではないでしょうか。来春で辞めれば、

「庶民派で弱者救済に心を砕き、和諧社会建設や科学的発展観に基づく経済発展のあり方に道を開いた名宰相」

 という評価で花道、ということになりますが、さらに5年間の続投となれば、価格改革(現在進行中)など痛みの伴う措置を講じなければならなかったり、経済そのものが懸念される状態なのですから、庶民の敵に回らざるを得ない場面が増えてくる可能性が増えることでしょう。

 中国政治が「改革派vs保守派」で綱引きをしていた時代だと、経済運営に失敗した担当者は失脚したり干されたりしたものですけど、現在だとどういうことになるのでしょう。それを検証する上でも温家宝にはぜひ続投してほしいところです(笑)。

 そういえば「庶民派」という偽装自体ももう通用しなくなっているように思います。少なくとも都市部ではそういえるのではないかと。上述した個人投資家の反発などもありますけど、温家宝夫人が中国有数の宝石商であることは有名ですし、息子も特権ビジネスのようなことをしていた筈です。温家宝も所詮は中国人である以前に「中共人」だということでしょう。

 このあたりを抵抗勢力から突つかれるとアキレス腱だけに温家宝も諸事やりにくくなることでしょうけど、むしろ胡錦涛以下がこのスキャンダルをチラつかせて温家宝に首相続投を強要するのではないか、と考えたりしています。……ええ、たぶん私の気のせいでしょうけど。

 ――――

 別な話を書くつもりだったのが、話の枕が長くなってしまったので単体のエントリーにしてしまいました。余太話と受け止めて頂ければ幸いです。

 折角ですから本来書きたかったことのひとカケラについてふれておきましょう。国家統計局の謝伏瞻・局長が11月22日、中国の消費者物価指数(CPI)が月間値で前年同期比6%前後の上昇というペースは今後もしばらく続くだろうとの見方を示しました。今年通年のCPI上昇率について謝伏瞻は「4.5~4.6%台」との見方を示し、この状況を「依然として受け入れられるレベル」だとしています。

 ●「新華網」(2007/11/23/11:42)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2007-11/23/content_7131987.htm

「依然として受け入れられるレベル」

 という物言いはすでに現実に対し「守りに入っている」ように思うのですが、如何でしょう?物価上昇率が今後しばらくは月間で6%台とか通年で4.5~4.7%になるとのことですが、今年の物価上昇の最大の原因は食品価格で、これだけをみると庶民には相当キツい状況です。例えば9月の月間値でいうと、全国平均が前年同期比16.9%増、都市部が同16.1%増、農村部が同18.6%増です。

 参考までにいうと18.6%台というのは1988年にスーパーインフレが発生したときのCPI上昇率とほぼ同じです。もっとも1988年は全体値、今年9月の18.6%はCPI上昇率の中の食品価格に限定し、さらに農村部のみに絞った数値ですから単純に比較することはできません。

 そのことを踏まえての物言いとなりますが、1988年の場合は経済運営の失敗を保守派に叩かれた趙紫陽・総書記(当時)が主導権を保守派の李鵬・首相(当時)に奪取され、経済政策は引き締め路線へと一変。そのことに危機感を強めた改革派のブレーンや知識人が様々な形で異議申し立てをしたり色々策動したりしたことが、翌1989年の民主化運動~天安門事件、そして趙紫陽失脚へとつながっていきます。

 マクロ経済に関するシステムがこの20年近くで相当成熟したこともありますので以上は余談にすぎませんけど、庶民目線でみると現状が楽観できるものでないということはできるかと思います。

 そもそもこの数字では日々深刻化している「格差」に応じた状況をみることはできません。謝伏瞻のような高級幹部や富裕層にとっては痛くも痒くもない「受け入れられるレベル」かも知れませんが、「中流」以下の民衆にとってはシャレにならない物価高、というのが実感ではないかと勘繰りたくもなるのです。

 ――――

 ともあれタイトルに掲げた通り、現状に手も足も出ない無能な温家宝には例の着古したジャンパー羽織ってボロ靴履いて、とりあえず農村視察で「庶民派」を再演出しておけ、と言っておきます。もはや通用しないむなしい作業ではあります。だけどいまの温家宝にはそのくらいしか、できることないでしょ?




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 日本社会がバブルで湧いていた時期、私は大学生でしたからその恩恵に浴することは全くありませんでした。強いていうとすれば、就職活動が売り手市場で、内定をとることには全く困らなかったことでしょうか。

 もっともそれは真面目に就職活動を行った連中のハナシで、私はむろん埒外です。

 2月末日に上海留学から帰国して最終学年に入っても、留学中に発生した民主化運動~天安門事件のこととか、事件後の半年に体感した政治・経済引き締めについて頭の整理がつかず、またこの時期に論文が出た「諸侯経済」というものの面白さに魅き込まれていて、就職活動を行う気にはなりませんでした。

 それから大学では自分なりのプログラムで授業を選別してきただけに、「自分にとっては無駄だが必修科目」というのが後回しにされていてその単位をとる必要もあり、留学ボケと相まって就職活動に気を回す余裕がなかったのかも知れません。

 もっとも、その時期に恩師をはじめ諸先生方から、

「この会社に入る気はないか?」

 という紹介話は色々頂いていました。

 ――――

 臆面もなくいえば、私は第二外国語や一般教養科目などを軽んじてロクに出席せず、追試や特別レポートで辛うじて勘弁してもらうという不遜な単位の取り方をしていたものの、中国語や現代中国に関する授業は当然のように「優」で揃えていましたし、実際、大学に入る前から中国語をしっかり勉強していた学生とか帰国子女を別とすれば、同期生で私より中国語の上手な者はいませんでした。

 それから、私は授業時間外に諸先生方の研究室を訪ねて質問をぶつけたり余談を拝聴したりすることを授業よりも大切にしていました。教室では得られない貴重なものをピンポイントで自分の血肉にすることができたからです。

 「学校の成績=社会人としての優秀さ」でないことはもちろん当時から常識とされていましたが、私のこの積極的な姿勢は、「大学→大学院→大学教員」というコースを経てきた浮世離れした世界の住人にしてみると、「こいつは社会に出ても相当やるだろう」という印象を与えるには十分だったようです。

 ちなみに恩師は浮世離れしたコースではなく、反右派闘争、大躍進、文化大革命で常に悪者にされる立場のなか、「いつも生命の危険を感じていた」(恩師談)という激動の時代を生き抜いてきた人です。

 恩師とは「こいつは私の弟子」「この人は私の師匠」と認知し合っての相思相愛の師弟関係という得難い縁を結ばせて頂き、いまも毎日のように電話し合っているのですが、ふと数えてみたら大学時代に受けた恩師の授業はわずか2コマでした。それだけ教室外で教えを受ける機会が多かったということです。

 ともあれ、諸先生方からは就職先をいろいろ紹介してもらったのですが、これは片っ端から断りました。恩師から紹介された会社は私に一番向いていそうな印象もあったのですが、やはり辞退しました。このほか、大手電機メーカー勤務の父親やそのテニス仲間で対中貿易専門の商社に勤めている方からも誘いを受けたのですが、これも断りました。

 一言でいうと、紹介してくれた人に恥をかかせる訳にはいかなかったからです。

 当時の私は自分を顧みて、毎日スーツを着て満員電車に揺られて通勤し、「9時5時」+残業+接待、という地道な毎日を積み重ねていく自信がありませんでした。まず3年も勤まるまいと思っていましたので、紹介者に迷惑はかけたくなかったのです。

 ――――

 さて、ダラダラしているうちに夏に入り、ようやく私も「そろそろ動かないとマズいな」と思うようになりました。

 ようやく重い腰を上げたのは8月になってからで、同期生たちの大半がもう希望通りの内定を取り終えて一安心していたころです。確か「対中進出企業一覧」のような本があって、そこから候補となる会社を選別しました。

 条件は、

 ●中小企業。
 ●中国語を使う機会のある仕事。
 ●遠からず中国に駐在できそう。

 という3点です。大企業を避けたのは、「自分の働き次第で会社の業績が左右される」ような環境で頑張りたいと思ったからで、若年客気のカタマリであった当時の私が考えそうなことでした(笑)。

 中国駐在なんていまでは真っ平御免ですけど、当時は上海から帰ってきたばかりでしたし、現在のような環境汚染や有毒食品のような問題もありませんでしたから、また中国に戻りたいという甘い気持ちがありました。

 当時はインターネットなどありません。卒論をワープロで打って出しただけでも先進的とみられた時代ですから、電話でアポをとることになります。

 その作業を進めていく中で意外なことが判明しました。中小企業だと中小だけに余裕がなくて求人予定がないか、あるいは求人のつもりはあっても対象は経験者に限られ、新卒者はお呼びでないということです。

 それでも何社か応じてくれることとなり、履歴書を送りました。中国と取引のある中堅以下の商社やメーカーです。

 私は大学の諸先生方に喰いついていったように、こちらから門を叩いて人と会うということは平気なのですが、お追従を並べたり場を盛り上げたりするのは大の苦手。自分の性格に照らして、

「営業とか接待は嫌だなー」

 と思いましたけど、仕事だからこれは仕方ありません。

 ――――

 お盆休みの明けた8月下旬のころだったと思いますが、最初にアポの取れた商社の面接に赴きました。面接はアルバイトで何度も経験していますけど、初めての就職活動ということでひどく緊張しました。しかも慣れないスーツ着用です。当時はソフトスーツとかツータックパンツなどは御法度とされていたので、ぴっちりした格好の悪いタイプです。それを着るだけで気持ちが重くなりました。

 しかも当時の私は山奥に住んでいて、私鉄の駅までまずバスで30分。そこから渋谷とか新宿といった副都心までさらに45分ばかりかかります。この私鉄がすさまじいラッシュで、私はドアの窓ガラスに押しつけられながら、「就職先が決まったら引っ越しだな」と思いました。

 で、目指す商社は新橋だか浜松町だか忘れましたが、さらに山手線に乗り換えていくのです。

 緊張+気の重いスーツ着用+遠距離通勤+「営業とか接待は嫌だなー」

 といった要素に加えて、この日はまた残暑が厳しかったものですから、半ば汗だくで目的地に到着しました。ひどく緊張している上にモチベーションは最低という最悪のコンディションです。

 そして面接と相成りました。広いオフィスではないので会議室などではなく、つい立てで仕切られた応接用のソファです。まず『人民日報』の短い記事が渡されて、和訳させられました。

 中国語の力を試すということだったのでしょう。マクロ経済に関する内容だったと記憶していますが、拍子抜けするほど簡単なものだったので「馬鹿にしやがって」と思いつつサクサクと訳し終えました。オフィス内を見渡して何の変哲もない、普通の職場だなーと思いました。

 そのあと担当者のオサーンが私の履歴書を携えて登場し本番の面接です。

「君と同じ学科で3年先輩の卒業生がウチで働いているよ」

「あーそうですかー」

 そのくらいのことは大学の就職部で下調べしてあるので知っていました。

 ――――

「仕事柄、お酒を飲む機会が多いんだけど、大丈夫かな?」

「はあ、酒量はそこそこあるので問題ないと思います」

 「お酒は升々」というほどではありませんけど、数え切れないほど学生同士で飲んでいて、先輩たちから集中攻撃されて飲み倒されるとか、酔って前後不覚になるといったことは全くなかったので私はそう答えました。

 そのあといくつか会話したのですが内容は覚えていません。ただし、最後の最後に強烈な一言を浴びせられました。

「ちょっと言いにくいんだけど、君は対人恐怖症とかではないだろうね?」

「……はぁ?」

 虚を衝かれた一撃でした。私はよほど緊張していた様子だったのか、上述したようにコンディションが悪くて受け答えがハキハキしていなかったのかわかりませんけど、そんなことを尋ねられたのは初めてだったので大いに驚き、面食らいました。

 面接を終えてビルから往来へと出ました。少し歩いて喫茶店に入ってアイスコーヒーを飲むうちに、だんだん腹が立ってきました。

(あんな糞会社、こちらから願い下げだ)

 と思う一方で、

(でも対人恐怖症なんて言われるくらいだから、不合格だよなー。スーツ着てわざわざこんなとこまで出てきて、無礼なこと言われてしかも無駄足とは踏んだり蹴ったりだ)

 帰路の遠さに気が重くなりました。

 ――――

 ところがです。二週間近く経ったあと、その糞会社から封書が届きました。あーきたきた不採用通知&履歴書、と思いつつ開いてみると、何と内定通知。

(ケッ、馬鹿どもが)

 と私は思いました。嬉しくも何ともありません。どうせ私の先輩に当たる社員を通じて大学の先生に私がどういう学生であるかを一応調べてみたのでしょう。上述したように、諸先生方に私のことを悪く言う人がいる筈はありません。しかもその先輩とやらが1年生のときのクラス担任の先生は私と同じで、この先生は、

「あなたは筋がいいから、気を抜かずに努力を続けなさい」

 と、ことあるごとに私を激励してくれていましたから。

 大学にあたってみて驚いた、ということなのだろうと私は推測したのです。もちろん、内定通知はそのまま放置。そのあと、

「一度打ち合わせに来てほしい」

「研修をやるので出てほしい」

 といった手紙が来て、煩わしくなったので、

「内臓に疾患があることがわかり、4月から就職することは諦め、療養に専念することになりました」

 と嘘丸出しの断りの手紙(笑)を返したのですが、それでも粘られたので、

「履歴書の返送を願います」

 と無愛想に書いて送ったら、ようやく履歴書が戻ってきました。

 ――――

 このことがあってから私は悪い意味で多寡をくくるようになり、就職部よりも『ビーイング』という転職情報誌で当たりをつけては片っ端から面接を受けて内定や採用通知を取りまくりました。

 まずは最初から入社する気のない会社ばかりを選んで面接の場数を踏み(練習試合)、いい加減慣れたところで気になる会社の門を叩いて内定をもらっておいて、手持ちのトランプから一枚を引くようにして「ここにしよう」と決めたのが卒業直前のことでした。一番条件がよく雰囲気も悪くなくて上海駐在への道もありそうだったのが決め手です。

 内定をもらっておいて袖にした会社に対する罪悪感は現在に至っても全くありません。向こうが選別するように、こちらも会社を選別する訳ですから。

 もっとも、バブル期ゆえにそういう贅沢な遊びができたのだと思います。私がバブルの恩恵を受けた唯一のケースがこれでしょう。

 ところで私が選んだ会社ですが、中小企業ですからさすがに甘くはありません。大学を卒業し入社して、2日目から先輩(40代)について営業をやらされました。しかもその大半は電話帳で当たりをつけてアポをとっての飛び込み営業です。研修などは時間が空いているときに申し訳程度に行われただけでした。

 ただその先輩が電話でアポを取るための虎の巻を書いてくれたり、一緒について回る間に何となく呼吸を飲み込むことができて、1カ月後には「単独飛行許可」というか独りで商材を選定し市場を開拓するように命じられました。

 浅草橋の問屋街にはよく足を運びました。秋葉原から浅草橋への総武線のガード下脇に小さな公園があり、ひと休みや次のアポまでの時間潰しに営業マンたちが小休止しているのに混じって,私もタバコを吹かしていたものです。

 私は自分の選んだ商材を日本のメーカーに持ち込んで、上海で生産させるという段取りをつける役目でしたが、ほどなく、

「それじゃサンプルを作ってもらおうか」

 というメーカーが数社出てきました。いずれも相手にとっては気乗りのしない話だったかも知れませんが、社会人になって2カ月ばかりしか経っていない私にはとてもうれしかったです。

 ――――

 ところが、就職活動でバブルにあやかった私が、今度はバブル崩壊の洗礼を浴びることになります。対中貿易より土地転がしに熱を入れ過ぎた私の勤務先がしくじって、あれよあれよという間に倒産してしまったのです(笑)。

 そこで再就職活動ということになったのですが、たまたま新聞広告に出ていた香港の日系企業の求人に応募(翻訳&面接)したところ、なぜか競争率50倍以上の難関を突破して合格してしまい、香港へ渡ることになりました。当ブログを含む現在の私につながる全ての物語がここから始まります(笑)。

 ちなみにそこの社長から後で聞かされたのですが、いかにも仕事の出来そうなビジネスマンやキャリアウーマン系の男女が並みいる中で私を選んだ理由は、

「中国語も一応できるようだし素直そうでいい。若いから給料も安くて済むし、営業が出来そうだから使えなかったらそっちに回そうと思った」

 というものでした。社会人になって3カ月に過ぎないながらも、飛び込み営業の毎日を経て私の雰囲気が変わったのか、糞会社のオサーンに眼力がなかったのかはわかりません。ともかくあの糞会社に入っていたら、現在のように面白おかしく日々を過ごすことができなかったことは確かです。

「ちょっと言いにくいんだけど、君は対人恐怖症とかではないだろうね?」

 という一言のおかげです。だから今でもあの糞会社、「太×交易」の節穴オサーンに私は感謝しています(笑)。

 ――――

 続編はこちら。

 ●台湾と台湾人(2005/12/19)




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 もはや旧聞かも知れませんが、これは一応ふれておいた方がいいでしょう。

 香港で区議会選挙が日曜日(11月18日)に実施されました。結果は下馬評を遥かに上回る親中派政党の圧勝、つまり民主派政党の惨敗となりました。親中派の大躍進が目立った選挙結果です。

 区議会議員というのは、香港の政策に直接タッチする「なんちゃって国会」である立法會よりワンランク下の議会で、地方議会のようなものです。選挙では民主化とか一国家二制度なんて大上段に振りかぶったテーマより、「団地の民生」「住民の苦情処理」「街の生活環境改善」など各選挙区での議員の働きぶりが評価される傾向にあります。

 ……いや、「評価される傾向にありました」というべきも知れません。

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 誤解する向きがあるかも知れませんので一応申し上げておくと、区議会議員は全534議席のうち405議席が普通選挙で当落が決まります。ほぼ民意が反映されるということです。

 これに対し、立法会は全議席の半分が普通選挙(直接選挙)で、残りの議席は業界別代表などという、有権者が限定され、かつ事実上親中派が当選しやすい仕組みになっています。直選議席でも当選する親中派はそれなりにいますから、議会の過半数を常に親中派が制するような仕組みになっている訳です。

 区議会議員選挙が全て直選議席というのは、地元密着型で香港の大方針に口をはさむ余地がほとんどないため、「植民地・香港」の宗主国たる中共政権も安んじているのでしょう。

 今回の区議会選挙に関する事前予想では、民主派が議席を減らすであろうことは確実視されていました。というのも、議員の任期は4年です。

 4年前といえば2003年。香港政府の失政や、グレーゾーンが多く「自由」を無制限に縛りかねない国安条例(ミニ憲法である香港基本法第23条の立法化)に反対する香港市民が伝説の「七一大遊行」(50万人デモ)を実施し、その後普通選挙全面導入に向けて香港市民が大いに盛り上がった時期でした。

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 そうした状況下で行われた区議会選挙は当然ながら親中派が惨敗。民主派が大いに議席を増やした経緯があります。要するに民主派大勝には時勢の追い風に乗ったバブル的要因がかなり作用していました。

 その証拠に、その後行われた立法会選挙では直選議席でも民主派が伸び悩み、親中派が勝利する結果となっています。

 実はこの立法会選挙でもし民主派が圧倒的勝利を収めていれば過半数の議席を占める可能性もあり、いわば天王山ともいえる選挙だったのですが、それだけに親中派及びその後ろ盾である中共政権の必死の巻き返しにより、また民主派自身にもエラーが続いて敗北する結果となりました。

 一方でこの結果には、香港経済が回復基調にあるという要素も作用していたように思います。香港経済は対中ビジネスが主流ですから、これが元気を取り戻してくると市民は民主化などといった政治問題を二の次にしてしまいます。

 結局、香港人は2003年に「市民」へ生まれ変わる萌芽をみせたのですが、経済が好調になってくると身に沁みついている植民地根性が再び頭をもたげてきた、といった印象です。

 香港人の属性だけでなく、中共政権が掲げる「一国家二制度」が実質的にはかつて江沢民が「反動基地」と悪罵した香港を中国に組み入れ、同化させるためのスローガンでしかないことに絶望したという面もあるでしょう。

 ――――

 ですから今回の区議会選挙、民主派の苦戦は予想されてはいたのですが、フタを開けてみると想定外の大敗。

 民主派は294名の立候補者を立てたもの、当選したのは108名。これは親中派の旗頭である民建連だけの115議席にも及びません(前回62議席)。

 特に民主派の主軸である民主党は108名を参戦させて当選したのは59名(前回95議席)。1997年に香港が中国に返還されて以来最大の敗北を喫しました。当然ながら、現職議員の落選が相次いでいます。

 ただ、今回の傾向として民主派の有力議員が親中派の新人候補にあえなく敗れるという結果が相当みられたことで、民主化機運の伸び悩みとか香港経済の回復といった要因だけでは説明できないのではないか、という見方があります。

 同感です。そもそも区議会議員選挙は地元での働きぶりが評価の決め手になることが多いので、地元で住民の意見を汲んで甲斐甲斐しく働いてきた民主派の議員が治績ゼロの親中派新人に敗れるというのは、何か別の要因も作用しているように思います。

 すると、私の大好きな香港のコラムニスト・呉志森が『蘋果日報』に発表した記事(2007/11/21)に興味深い分析がありました。ポイントは2点。まず、選挙区で頑張って働いても有権者の顔ぶれ自体に変化が生じているのではないか、というものです。

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 香港は7年間居住すると無期限IDカードを申請することができます。外国人でも香港住民として相応の待遇を得られるようになる、というもので、これには選挙権も含まれます。

 香港在住当時、私も有資格者でしたが申請する気はありませんでした。何やら縛られるようで嫌だったからです。だいたい中国の植民地とそういう縁を結ぶことが嫌で嫌で(笑)。

 呉志森はまずこの「滿7年」に注目して、中国本土から移民して7年に達した「新規有権者」の存在が、選挙区によっては当落を左右した原因になっているかも知れないと指摘しています。

 最近の中国本土からの移民は政治的理由で逃げてきたというより、香港にいる親類縁者のツテを頼って定住権を得た者が圧倒的多数ですから、いかに地元で民主派が汗を流して働いても、これら「新規有権者」は理非を越えて民主派であることを忌避し、親中派を優先するのだ、というものです。

 実際にそれがどれほど作用しているかはともかく、この着眼にはなるほどなあ、と私は盲点を衝かれたような気がしました。これは中共政権による「植民」政策が直接的に実を結んでいるケースといっていいと思います。

 チベットや新疆で行われているようなことが、ささやかながら香港でも実施され、それが成果をあげつつある、ということになります。これは教育面での「同化政策」同様、見過ごせない事実のように思います。

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 もう一点は、中国の支援を背景にした親中派の動員力・組織票です。イベント開催、電話攻勢はもちろん、投票日にはバスを何台も仕立てて有権者を投票所まで送迎するという至れり尽くせり。もちろんこうして優遇される有権者たちは親中派候補への投票を誓っている連中です。

 華やかで周到かつ執拗なまでのこうした動員力は、資金的にもマンパワーの面でも民主派には真似できないところです。

 ……この2点は大局を左右するほどの要因ではないかも知れませんが、今後中国本土からの「移民」がますます増えるであろうことを考えれば、一笑に付すことはできないように思います。

 加えて中国からの圧力で進められている香港型の「愛国主義教育」を全身に浴びて育った世代が有権者の年齢になれば、親中派に投票することについての抵抗感は「むかし型香港人」(香港生まれで、英国統治下で成人した世代)に比べればずっと低いことでしょう。

 とはいえ、今回の選挙結果は有権者の意思をそのまま反映したものなのですから、この事実は素直に受け止めざるを得ないでしょう。

 ちなみに、今回の区議会選挙の投票率は38.8%。香港の場合は住民票がありませんから、まず有資格者の住民が自発的に有権者登録を行います。それを基数とした投票率が38.8%ですから、有権者登録をしていない住民が少なからずいることを考えれば、実際の(日本でいうような)投票率は30%とか20%台とか、ともかくもっと低い数字になることになります。

 この「投票率の低さ=浮動票の少なさ」も動員力・組織票に長けた親中派の勝利の一因といえるかも知れません。

 ――――

 余談ですが、配偶者の従妹でときどき私に電話してくるアオイちゃん(20歳・学生)や配偶者の姉も投票に行かなかったそうです。

「だって誰に投票していいかわからないから」

 とはアオイちゃんの弁。素直で実によろしい(笑)。まあ4年前とは異なり、「むかし型香港人」も半ば投げてしまっていますから、この点は似たようなものでしょうけど。

 政治への無関心はともかく、「植民」が少しずつ進行していることに危惧を覚えます。……ああ私は香港嫌いを標榜しているのでザマーミロと言わなければなりませんね(笑)。まあ「終わりを約束された街」ですから、一歩前進とでも言っておきますか。

 それにしても中国共産党というのは、お化粧の仕方は相手次第ではあるものの、基本的にやることは同じなんですね。




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 領土問題の話です。といっても南シナ海の話で日本には直接関係ありませんが、留意しておくべきニュースかと思います。

 中国が絡んでいる南シナ海の領土問題といえば、まず南沙諸島(スプラトリー諸島)の名前が思い浮かぶでしょうが、他にも西沙諸島、中沙諸島をめぐる争いが現在進行形。ちなみに東沙諸島というのもありまして、これは台湾が実効支配中のようです。

 その南沙諸島、西沙諸島、中沙諸島の3つについて、中国は台湾、ベトナム、フィリピンなどと領有権争いを展開しています。南沙諸島だけだと、中国、台湾、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイの6カ国。

 ところがこの「南」「西」「中」の「三沙」をひっくるめて経略に乗り出そうと中国が動き出しました。今日付の香港紙『明報』(2007/11/20)が消息筋情報としてスクープしています。具体的には「三沙」に近い位置にある海南省に「三沙市」を新たに設立し、行政面から手をつけて領有を既成事実化していく構えのようです。

 ●海南省が三沙市を設立し係争海域を管轄下へ、面積は全国の4分の1(明報 2007/11/20)
 http://hk.news.yahoo.com/071119/12/2jru0.html

 ――――

 『明報』の消息筋によると、「三沙市」設立については海南省から国務院(中央政府)に申請が出され、すでに中央の認可を受けたとのこと。これまでの「西沙群島弁事処」という部門から「市」に昇格させることで、単体の地方政府として扱われることになります。中国の地方自治体レベルは、

 「省」→「市(一級市)・区」→「県・市(二級市)」→「鎮」

 という順番で下っていくのですが、このほど認可されたとされる「三沙市」は県と同等レベルの二級市となるそうです。とはいえその管轄範囲は海も含めると合計200万平方キロ余りとなり、中国の陸地面積(960万平方キロ)の4分の1にも及びますから大層なもの。より具体的にいうと、海南省文昌市(一級市)の管轄下に「三沙市」が設立されることになります。

 むろん、このことは消息筋がソースであるように、今はまだ内緒です。中国がそういう動きに出た、ということが明るみになればフィリピンやベトナムなどが騒ぐことは必定。折からシンガポールでASEAN+日中印韓の東アジアサミットが開かれているばかりか、ベトナムとは領海線画定の話し合いを行っている最中でもあります。

 ところがこの情報がどうやらガセではないらしいようで、香港の親中系通信社・中国評論社の電子版「中評新聞網」がよせばいいのに『明報』の記事を地図ごとそのまんま転載しているのです。

 親中系のくせに余計なことを、と北京は激怒しているかも知れません(笑)

 ●「中評新聞網」(2007/11/20/11:44)

 ちなみにこれがその地図。殺気立つ締め切り直前の編集部の空気を体験している私としては、『明報』美術部隊の遊び心に、心から敬意を表したくなります(笑)。



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 『明報』によれば、「三沙市」の上部機関となる文昌市のトップである謝明中・市党委書記は10月26日、市党委員会全体会議の席上、「三沙市」設立が国務院によって認可されたこと、「三沙市」が南沙諸島、西沙諸島、中沙諸島を管轄下とすること、などといった決定事項を通達。

 文昌市はその補給基地として新たに埠頭などを建設する一方、「三沙市」当局の職員の大半の勤務地となる模様です。「三沙市」政府庁舎がどこに建設されるかはまだわかりません。というよりまだ内緒なのでしょう。

 内緒ですから、この件には隠語が使われています。『明報』によると文昌市のウェブサイトにおいて「三沙市」は「X市」とされているそうで(笑)、この「X市」での開発事業などは文昌市当局が窓口になる、ということです。将来的には西沙諸島・永興島への観光路線設立といったプロジェクトも計画されているそうです。

 プロジェクトといえば、この「X市」計画は文昌市が今後着手する「九大プロジェクト」のひとつに数えられているとのこと。

「『X市』とされているそうで」

 と伝聞調なのは検索をかけて実際に文昌市政府のウェブサイトに飛んでみたところ、関連記事があったと思われるページが全て削除されていたからです。『明報』の報道を受け、ベトナムやフィリピンの反発を懸念して慌てて消去したのかも知れません。

 http://www.wenchang.gov.cn/cgi-bin/news/read.asp?id=2814
 http://www.wenchang.gov.cn/cgi-bin/zwxx/read.asp?id=302
 http://zw.0898.net/read.php?news_id=7026

 ――――

 ところが『人民日報』電子版である「人民網」、ここの地方ページ海南省版(海南視窗)のニュースサイトに辛うじて記事が残っていました。仕事が甘いぞ削除職人(笑)。

 なるほど「九大プロジェクト」の8番目に、

「『X市』基地建設プロジェクトの成功を積極的に支援する」

 とあります。いやーホントに「X市」なんですねえ(笑)。

 ●文昌市、九大プロジェクトを全力推進へ(人民網海南視窗 2007/11/05/15:27)
 http://news.0898.net/2007/11/05/343240.html
 http://zw.0898.net/read.php?news_id=6938

 秘密でなくなったことで関係各国の反発は必至だ!てなところでしょうか。

「中国のような価値観を共有できず対話の成立しない国相手には、『なんちゃって協議』でお茶を濁す一方で、やるべきことをサクサクと進めていくべき」

 と当ブログは常に主張しているのですが、南シナ海で中国がそれを実行している格好です。

 野蛮です。とはいえ国家主権に関わる領土問題ですし、相手が中国であれば日本もこのくらいやる覚悟がなければ駄目でしょう。だからちょっとその厚顔ぶりが羨ましかったりするのです(笑)。

 ともあれベトナムやフィリピンの硬骨に期待しましょう。




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 「再通達」っていうんですから全国各地で目に余る面従腹背が行われていたんでしょうね(笑)。ちなみに「海外アニメ」っていうのは事実上日本モノが大半を占めていたそうですから、実質的には「ゴールデン帯の日本アニメ放映禁止」とみてもいいでしょう。

 中国政府でテレビやラジオの番組や広告の内容などを審査・指導するのは「広電総局」という部門(略称なんですけど正式名称は長いのと忘れてしまったので勘弁)。新華社電によると、この広電総局の関係責任者(担当者ということでしょう)が11月14日、「ゴールデン帯の海外アニメ放映禁止」などについての再通達を出した、というものです。

 具体的には、



 ●17~20時に海外アニメを放映するのを禁ずる。
 ●17~20時に海外アニメの情報や海外アニメを紹介する番組の放映を禁じる(海外アニメの露出禁止)。
 ●アニメチャンネル・児童向けチャンネルは毎日放映する国産アニメの比率が70%を下回ってはならない。
 ●海外アニメの導入についての監督・管理を強化する。




 ……とのこと。「国産アニメの数が70%を下回ってはならない」というのは基数が番組数なのかアニメ番組数なのかわかりませんけど、ずいぶん無茶をするものです。

 「監督・管理を強化」の内容もなかなかエグいものがあります。

 まず海外アニメ導入数は国産モノとの比率を1:1にすること。つまり海外アニメ3作の放映権を買って放映するときは、オリジナル国産アニメ3作を抱き合わせにしなければなりません。

 また海外アニメに関しても、

「題材、内容、制作国などの面で監督・管理を強化する」

 としており、導入する海外アニメの本数だけでなく内容にも厳しくチェックを入れるぞ、と広電総局は表明しています。

 で、一体こんなことして何かいいことがあるのか?という疑問がまず浮かぶ訳ですが、広電総局によると、

「(海外アニメの)総量を抑制し、(国産アニメの)質的向上と(アニメ市場の)構造改善によって、国産アニメ産業の発展を力強く促進する」

 のだそうです(笑)。……あ、笑っちゃいけませんね。向こうは真面目ですから。

 ●「新華網」(2007/11/15/08:31)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2007-11/15/content_7077603.htm

 ――――

 この措置、「国産アニメ産業を守るため」という一種の保護主義ということなんでしょうが、それだけではありませんね。要するにアニメの「鎖国」に踏み切るという性質を有しているように思います。

 日本アニメに太刀打ちできないから、というのもありますけど、日本アニメを通じて一党独裁政権である中共の掲げる価値観と異なるものが若年層に定着してしまっては困る、という一面も色濃いのではないかと。

 「ローゼン麻生」こと麻生太郎・元外相の着眼が正しいことを裏付けるものでしょう。いうなれば「価値観外交」の民間版、しかも特定層にピンポイントで浸透するという中共からすれば「劇薬」な訳です。当ブログの用語でいえば「大毒草」(笑)。

 それにしても、この措置が「再通達」であることは実に興味深いところです。冒頭でも言及しましたが、最初の通達が守られていないから再度申し渡す、ということでしょう。

 前回通達が出たにもかかわらず、全国各地のテレビ局で中央(広電総局)に対する面従腹背が行われたらしいことをはからずも浮き彫りにしてしまいました。水は高いところから低いところへと流れるものなのです。

 だから再通達、となる訳ですけど、今回も効果は望めないでしょうね。仮に面従腹背を押さえ込むことができても、今度は海賊版が跋扈することになります。こちらは放映権などのコストがないので実にリーズナブル。素材選びも思うがままです(地方局が海賊版を放映しているケースもあるかも)。

 テレビに出ない代わりに海賊版DVDが市場を広げ、地方当局はそれを黙認する代わりにショバ代をとってウマー、てな構図になるでしょう。視聴者はテレビから海賊版に切り替えるだけですし、そうでなくてもネット上で不法ダウンロードなどができるでしょうから、痛くも痒くもありません。

 ――――

 この措置によって中国アニメ業界が救われるかといえば、市場の確保という点では確かに救われる一面はあるでしょうけど、制作レベルの向上という点では逆効果になるのではないかと。

 日本アニメなどに「洗脳」されてすでにある程度目の肥えている視聴者からみれば上意下達式のこの措置は愚の骨頂。市場を確保したところで視聴者の興味をひかない「駄作」の氾濫という結果を招きかねないように思います。ですから上述したように闇市場が賑わうことになります。

 放映権を買う正規なビジネスであれば人的往来なども行われて、戦略的にやれば創作力向上に寄与することになるでしょうけど、「鎖国」してしまうのでその門も閉ざされます(完全鎖国ではありませんけど)。その弊害は後々効いてくることになるでしょう。

 これはコミックにも通じるだろうと思いますが、結局のところ、中国当局が求めているアニメというのは「美しいアニメ」「芸術的なアニメ」ひいては「中国の特色あるアニメ」であって、「面白いアニメ」ではないように思えます。サブカルチャーというものをわかっていないのでしょう。

 それから今回の通達が直接ふれていない部分ですが、「アニメ産業の強化」という点について官僚の頭の中にあるのは、

 ●アニメ制作者+アニメ作品
 ●テレビ局などのメディア
 ●スポンサー
 ●視聴者

 の4点。ところが、これで川上から川下までの一体系の産業が完結するというのは大きな、致命的な勘違いです。これについては当ブログで以前ふれましたけど、制作者予備軍たる
「アマチュア」の重要性に気付いていません。

 ――――

 アニメの内容に刺激を受けて、「視聴者」の中からは同人誌やHPのような形で二次創作やオリジナルの作品を発表する「アマチュア」が必ず出てきます。その多くは拙いものとはいえ、中には磨けばモノになる原石も潜んでいます。

 これを積極的にプロの世界に取り込んでいく、という制作業界の意図とルートがなければ、業界は新陳代謝が行われぬまま伸び悩み状態に入ってしまいます。私見ながら、香港の音楽業界がいまそれに近い状況にあるようにみえます。オンガクでもコミックでもアニメでも、あるいはスポーツの世界でも、インディーズに元気がなければ、プロの世界も溌剌たることはできません。

 制作レベルの向上と、いい作品をコンスタントに生み出せる業界を成立させる上では、プロ予備軍たるこの「アマチュア」を一体系の中に入れることが不可欠なのですが、官僚レベルにはその視点が全く欠落しています。

 中国のような一党独裁体制下にあっては、「アマチュア」こそ政治的に保護してやらないといけないのですが、そこまで考えが至っていないのであれば「結社の自由」が保証されていないため、また中共型価値観や中国社会がそういう活動に寛容でないために、いくら保護主義に撤してもうまくはいかないでしょう。

 ただし、これはセンスの問題なので天才の出現というのはあります。それによって国際的に通用する作品が生み出される可能性はあります。しかしながらこれはあくまでも例外的なケースであって、コンスタントに一定以上のレベルの作品を生み出すことにはつながりません。

 そもそも「天才」であれば自国の業界の縛りの多さに辟易して海外に逃げてしまうのではないかと。優秀な中国人留学生の多くが帰ってこないのと同じです。

 ――――

 制作者にとっては「表現の自由」が保証されていないことも縛りのひとつになります。ただこれは「結社の自由」によって「アマチュア」が保護されていないことに比べれば大きな問題ではありません。

 「名探偵コナン」とか「ガンダム」とかその他様々な日本アニメが中国国内で放映され人気を博しているかと思いますが、「放映されている」ということは当局に認可されている、つまり「縛りに引っかかっていない」ということに他なりません。

 一党独裁制による縛りの枠内でも、中国人視聴者を魅了する作品が日本人には創れるということです。中国人にはそれがなかなか創れない。なぜか、といえば第一には制作者の平均的なセンスのレベルが民度に比例しているからでしょう。

 例えば丸一日テレビをボーッと眺めていても、CMの制作レベルひとつとっても日本と中国の間には大きな隔たりがあります。私の知る範囲でいえば、台湾や香港のクリエイターでも、来日してホテルにチェックインして、部屋に荷物を置いてホッと一息ついてテレビをつけるなり、まず画面から流れてくるものの「差異」にある種のショックを受けるそうです。

 要するに、中国は日本に比べて日常的にセンスを磨ける環境にない、ということです。単に制作技術の巧拙というのではなく、政治的・社会的な環境がセンスを磨くことに適していないのです。そこでいくら頑張ってみても、日本の業界の基準に照らせば、

「技術はあるんだけど、娯楽性がね……」

 ということになってしまいます。日本のサッカーにしても、長期的戦略に基づいてあれこれテコ入れしたり、バブル時にJリーグが一流外国人選手を雇ったりしたからこそ、日本人選手のセンスが刺激され、とりあえずアジアのトップレベルと認められるまで成長したのです。

 ――――

 同時に、社会的な認知度の低さというものがあります。アニメや、その土台であるコミックに対して社会が寛容ではない、ということです。

 日本の場合、コミック産業は団塊の世代という巨大市場をターゲットにしつつ、その世代の成長に合わせて、制作側もそれ相応の作品を供給してきました。ですから日本においてマンガは子供だけのものでないということは常識ですし、大人がコミックを読んでいても変な目で見られることはありません。同時に、大人の鑑賞に耐え得る成熟した内容の作品が多数あることも認知されています。

 中国にはまずこれがありません。広電総局の再通達からも垣間みれるように、「アニメやコミックは子供のもの」という先入観を未だ打破することができないでいます。だから人材も育ちませんし、アマチュアがセンスを磨く機会(発表の場)もありません。プロがアマチュアから人材を補充するというルートも国策からは欠落しています。

 さらに政治的圧力によって、

「芸術的な」
「中国の特色ある」
「伝統文化を生かした」

 などの注文がつき、不健全な成長を遂げることになってしまいます。中華思想とか他国に優越した伝統文化といったエキスは制作者の中にもあるでしょう。実はそれが自由な発想を阻害する一因でもあります。そのことに気付いているクリエイターはいるでしょうけど、それを口に出せるような政治的環境が中国にはありません。

 さらにいうとすれば、アニメは各界の人材が集まることで秀作たり得るという点でしょうか。原画の作者にとどまらず、脚本家、キャラクターやメカニックのデザイナー、声優、ミュージシャンなどの全てが一定以上のレベルにあり、それらの人材をうまく統合するプロデューサーがいないと視聴者をうならせる作品は創れません。この点において、中国は日本に比べて裾野が狭いと指摘することができます。

 ――――

 ……などと長々と書いてきましたが、中国のアニメ産業にとって実はこうした要素は二の次であり、あまり意味を持たないのかも知れません。たとえ「ローゼン麻生」型官僚が広電総局を仕切っても無駄です。政治的価値観が全てを超越する、という一党独裁政権であることが病根だというべきでしょう。

 中国共産党の価値観に照らして政治的に善か悪か、ということが法制よりも優先されるお国柄で、しかも独裁政権に独裁というスタイルを捨てる意思がない以上、「縛りの範囲内でも『名探偵コナン』や『ガンダム』が創れる」という状況を現出させることは難しいと思います。

 ごく簡単にいいます。中国ではシャレが通用しないのです。これが癌です。

 シャレが通用しない政治的・社会的環境にあっては、技術面である程度のレベルに到達することができても、エンタテインメイトのセンスが育ちません。

 例えばですよ。「2ちゃんねる」でときおり目にするAAですが、





 こういうことを胡錦涛やトウ小平や毛沢東を使って「遊ぶ」ことが中国ではまず許されないでしょう。……ですから、





 もちろん、これもダメです。台詞の内容によっては国家政権顛覆煽動罪で懲役9年(笑)。いやいや笑い事でなくマジでそうなんです。この手のシャレは通用しないどころか、政治犯にされてしまいます。

 中国には社会風刺などを主とする『諷刺輿幽黙』(風刺とユーモア)という雑誌?が以前からありまして、掲載されるものにはなかなかキレのある風刺の行き届いた作品などもありますが、これも中共が定める枠内での大人しい内容にすぎません。政府批判などもってのほか。政府を転がして遊んでみせるのも上述したように政治犯罪でひっくくられてしまいます。

 ――――

 結局、こういう話に落ちることになってしまいました。ハリウッドの映画はいずれも米国作品ではあっても、ヒット作の監督や俳優などが必ずしもアメリカ人ではないのと同じなのです。……という形で締めておきますか。




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 どうもいけません。やっぱり仕事を断ってまで「十七大」(中国共産党第17回党大会)にのめり込んだせいでしょうか。台風一過となってみると何やら気抜けしてしまって、その気分が現在まで続いています。

 ただコソーリ活動は中国語作文の練習を兼ねて散発的にやっています。温家宝の「真心込めて」は幸い当ブログとかぶることがなかったのですが、別のテーマで書いたものが新聞に出てしまい、何が良かったのか電子版(ウェブサイト)では人気記事ランキングで3日間トップをキープしたので驚きました。特に出来のいい内容ではなかったのでどうしてなのか自分でもよくわかりません。精魂込めた文章を袖にされることもありますから考えるだけ無駄かも知れません。

 香港や台湾の新聞だと電子版には記事関連の掲示板があって読者の反応にふれることができます。今回の記事については記事そのものから話題がそれてなかなか盛り上がっていました。

「これだけ工作員が湧いて出たところをみると、御家人さん、あなたは中国政府が最も目にしたくない内容のものを書いてしまったようだw」

 という書き込みが登場する始末。そういえば以前出した記事にも似たような反応があったような気が。……まあ「大毒草」冥利に尽きるとしておきましょう(笑)。おかげさまで「博訊網」がまた転載してくれました。ありがとうございます。m(__)m

 ――――

 日曜であることに安んじて気楽に閑話とさせて頂きます。マスコミ関連で、二題。

 一昨日(11月16日)、例によって清洲橋を渡って川べりを下手へと歩いていたときのことです。永代橋をくぐって大島水門近くに来たところでふと空を仰いだら門前仲町や深川の方向に黒煙が上がっていました。

 お、これはひょっとして「dongze」さんによる合図の狼煙か?と考えたのですが、煙は一筋ではなくモクモクと横に広がっていく中途半端な黒煙でした。

 そういえばタイヤが燃えるようにニオイがするぞ。……と歩きつつ考えているうちに、火消し車やヘリが飛んで来て火事と判明(当たり前)。中央大橋を経て西岸に戻るときに数えたらヘリが9機も飛んでいました。

 それほどの火災でもなかったように感じられましたがマスコミは随分豪儀なことをするなーと思いました。

 ――――

 今日(18日)、例によって清洲橋を渡って川べりを下手へと歩いていたときのことです。勝鬨橋の手前あたりの遊歩道上でNHKがドラマロケをしていました。このあたりでロケは珍しくないのですが、歩行者にとっては邪魔です。まあ撮影部隊も通行を禁止していた訳ではありませんけど。

 それはともかく。待ち時間なのか、昭和初期風の洋装姿の俳優がパン屑のようなものを川面に投げて水鳥を集めることに興じていました。パン屑は袋に用意したものなので本番で使うのかも知れませんが、ハトに餌をやるのと同様、近隣住民にとっては迷惑な行為です。私は悪い癖でその俳優の手前まで歩いて行ったところで、

「オッサン」(私もオサーンですけど相手が私より年上なので)

 と声をかけて振り向かせておいてから、

「河ぁ、汚すのやめな」

 と一言。俳優が手を止めて、

「あ、すいません」

 みたいなことを言っていましたけど、こちらは早歩き(ウォーキングもどき)なのでもう相手の横を通過していました。「すいません」という声を背後に聞きつつ、こいつは一体誰に謝っているのだろうと考えました。

 その「こいつ」なんですが、振り向かせてみると私も名前を知っている「T.N」なので(たぶん)内心驚きました。以前、清洲橋でロケしていたのを見かけたこともあります(本当)。20年以上前、NHKが放映した新選組の連続ドラマに三田村邦彦と一緒に出ていた記憶があります(たぶん)。

 NHKさんさぁ、中国の圧力に呆気なく屈する情けなさは別として、せめて隅田川を汚すのはやめておくれよ。ダーウィンが泣くぞ。 

 ――――

 ところで、前回に続いてアンディ・ラウ(劉徳華)の話をさせて頂きます。個人的な理由により香港の「四大天王」の中では一番贔屓にしています。

 成都でのあの武勇伝に配偶者がいまだに興奮覚めやらぬ様子で、故あって私もそのおかげで今月はお小遣いを余計にもらうことができましたし、タバコもカートンで買ってくれたのでとてもうれしいです。今回のエントリーで晩飯のオカズが一品増えてくれるともっとうれしいです。

 ちなみにアンディは私の中では断じて「劉徳華」です。劉徳華の出演した映画はずいぶん観ていますけど、好きなのは以下の3作です(リンクは張ってありますが楊枝削りのつもりはありません)。ちなみに私にとって劉徳華作品は、

「最後に劉徳華が死ぬ」

 ことが大前提。この点は譲れません(笑)。

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 ●異域

 

 訳あって忘れられない映画になってしまいました。劉徳華が主演なのかどうか極めて疑わしいのですが最後にはちゃんと死んでくれます(笑)。原作は『醜い中国人』の柏楊。大学時代、来日した際に恩師の紹介で話をする機会を得たのですが、若年客気の私があまりに茫漠とした話題を出してしまい、話がうまく噛み合なかったのをいまでも後悔しています。

 ちなみに劉徳華ではありませんがこの映画の主題歌は名曲です。「亞細亞的孤兒在風中哭泣~」ってやつですけど御存知の方いらっしゃるでしょうか?


 ●天輿地

 

 これはたぶん「アンタッチャブル」のパクリだと思うのですが「アンタッチャブル」も好きですし劉徳華の暴れっぷりも最後の紋切型な死にっぷりもいいので気に入っています。挿入歌の「纏綿」もラストに流れる「忘情水」も、そのベタな編曲も含めてイイ!です。英中字幕ですので勉強にもなる映画です。ただし劉徳華の歌を北京語の発音教材にしてはいけません(笑)。


 ●今すぐ抱きしめたい
 
いますぐ抱きしめたい

ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン

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 これはラストの処理が巧みなのと劉徳華の死にっぷりがやはり良い(笑)ので好きです。あとは弾けまくる張学友(ジャッキー・チュン)と、その目のアブナさがいいです。普段から張学友の目はあんな感じですけど。

 最近は落ち着いてしまいましたが、以前は菅野美穂の目も同じようなアブナさを宿していたように思います。

 ちなみに張学友。「四大天王」の中で一番歌が上手ですけど、劉徳華同様、張学友の歌を北京語の発音教材にしてはいけません(笑)。


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 こちらは一応お約束。


 
墨攻

アミューズソフトエンタテインメント

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 「墨攻」は純粋に娯楽大作として配偶者と観てきました。原作は読んでいません。最後に死なないのはともかく、劉徳華の台詞には北京語の声優がかぶさっていたのに、ライバル役?のチョソタレ(朝鮮人タレント)はその腐ったような発音の下手糞北京語が声優をかぶせずにそのまま使われていたのは理解できませんし納得いきませんし激しくムカつきました。

 チョソタレだからと言うのではなく、あの北京語は純粋にあの映画の汚点です。

 ちなみに映画がハネて館内照明が灯ったときに非常に恥ずかしい思いをしまして、コソコソと逃げるように撤収しました。


 
インファナル・アフェア

ポニーキャニオン

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 「無間道」はDVDで観ました。ストーリーは面白かったのですが劉徳華が死なない(笑)。それより梁朝偉(トニー・レオン)のどこか泣きそうな表情に味がありました。特に黄秋生(アンソニー・ウォン)が落下してきて車にドスンとぶつかったのを目の当たりにしたときの可哀想げな顔が悪くないです。

 劉徳華を別とすれば梁朝偉とか任達華の出ている映画は割と好きです。ごくたまに配偶者が山のように持っているDVDやVCDの中から探し出して観たりします。でも広東語なので途中で嫌になって観るのをやめてしまうこともしばしばです(笑)。




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 昨日(11月15日)の夜のことです。香港人である配偶者が隣室にいる私に「ようつべ」を送りつけてきました。



 配偶者の説明によると、この動画は香港を代表するスターのひとりであるアンディ・ラウ(劉徳華)が四川省・成都市でコンサートを開いた際のものだそうです。

 コンサート中にファンの男性が花束を持って舞台にかぶりつき、アンディ(白い服の人)が前に出てきてそれを受け取って、握手をしてあげました。

 事件はその直後に起きました。念願を果たしてアリーナ席前の通路に戻ったその男性ファンを突如わらわらと湧いて出た「保安」(警備員)どもが取り囲み、殴る蹴るの暴行を加え始めた模様。

 舞台の前でそれが行われているので、アンディはすぐ気がつきました。ここからが「華仔迷」つまりアンディのファンにしてみれば、日頃からファンを大切にしているアンディの真骨頂ともいえる場面です。楽曲が進行中なのに構わず、

「停手!」(やめろ)

 とマイク越しに言い放つや、かなり高さのある舞台から単身アリーナ席前の通路へと躊躇せずに飛び降りたアンディは警備員どもの間に割って入り、殴られていたファンを背後にかばうようにして警備員たちと揉み合う格好に。アンディは相当激昂している様子です。

 そこへアンディないしは主催者側のスタッフが多数駆けつけてきて警備員とアンディの間を引き離したのですが、ファンが殴られるのを目にするなり、それを守ろうとしたこの条件反射のような行動、これはなかなかできることではありません。

 ――――

 普通なら見て見ぬフリをするかどうかはともかく、気の利いた者ならスタッフに合図して収拾を図るところでしょう。アンディ・ラウは私より5~6歳くらい年上ですし数え切れないほどライブを行っていますから、こういう場面に出くわしても慌てることなく、分別や打算が働いたかも知れません。

 あるいは40代だから踏み切れたのかも知れません。それにしても自分のコンサートを置き捨てて、よくもあの高い舞台から飛び降りたものです。やはりアンディらしさの発露、といったところなのでしょう。

 配偶者が広東語を教えている生徒さんの中には何人か年季の入った「華仔迷」がいます。来日する際の成田空港でのお出迎え・お見送りはもちろん、香港で開かれるコンサートからファン向けのイベントにも皆勤するほどです。そこまでコアというかディープなファンになると、アンディの方も顔を覚えてくれていて、偉ぶることなく、逆に気さくに声をかけてくれたりするそうです。ファン冥利に尽きるのではないかと思います。

「華仔はやっぱりすごい。ファンを大切にしている。普通の『明星』(スター)ならここまでやらない」

 と配偶者も興奮気味で何度も繰り返していました。きっと今回の事件は「華仔迷」の間では伝説となることでしょう。

 それにしても警備員もやることがひどいですね。たぶん農村争議を実力で鎮圧すべく当局が駆り集める「雇われ暴徒」と同じような連中なのではないかと愚考する次第。

 ●『星島日報』(2007/11/13)
 http://hk.news.yahoo.com/071113/60/2jez8.html

 ――――

 このアンディ・ラウの美談について、上で「分別や打算が働いたかも知れません」と書きましたが、私自身はそういうことなく、アンディの本能的な行動だったのではないかと考えています。事件を目にしてまず出た第一声が、

「停手!」

 と、広東語だったからです。同時に、英国統治下で成人した「むかし型香港人」だなあとも感じました。私の仕事仲間や配偶者もみんなこの「むかし型香港人」です。

 私に言わせれば「本来型香港人」。親が大陸から脱出してきた、その二代目です。アンディのように仕事で必要な場合は別ですが、そうでなければまず北京語を話せません。試しに話させるとその汚れ濁ったような発音にこちらは頭を抱えたくなります。

 ところが当ブログに何度か登場してもらった、ときどき私に電話してくる配偶者の従妹・ミドリちゃん改めアオイちゃん(20歳・学生)は「むかし型」ではありません。アオイちゃんも大陸脱出組の二世ではありますが、小学生のときに香港返還を迎え、北京語が必修科目となった教育プログラムを経ていますから、一応マトモに北京語を話すことができます。「現代型香港人」といっていいでしょう。

 今年6月1日の香港返還10周年記念日に「宗主国」たる中共政権からは胡錦涛・国家主席がやって来ました。この胡錦涛の眼には、香港は「同化政策」がまだまだ不足していると映ったらしく、国民教育やら愛国主義教育やらにもっと力を入れろ、と注文をつけて帰っていきました。

 ●「終わりを約束された街」――香港について。・上(2007/07/02)
 ●「終わりを約束された街」――香港について。・中(2007/07/04)
 ●「終わりを約束された街」――香港について。・下(2007/07/09)

 ――――

 現在香港の教育現場で日夜量産されているのは「現代型香港人」です。1989年に中国で生起した民主化運動を支援する大規模デモが連日行われたことや、天安門事件の衝撃を体感していません。英国統治時代の記憶や肌触りを持っていません。その点ですでに中共政権に対するイメージが「むかし型」と異なっています。

 また、必修科目ゆえ北京語がちゃんと話せる分だけ中国に「同化した」といえるかも知れません。これも教育プログラムの「成果」なのでしょうが、「むかし型」よりも中共政権の価値観に寛容で違和感を感じにくくなっている一面もあるでしょう。

 アオイちゃんたちはその先頭集団ということになるのでしょうが、この世代は10年もしないうちに結婚してほどなく親になることでしょう。生まれてくる子供たちは「未来型香港人」です。テレビで中国国歌が流れても「むかし型」のように眉をひそめることがありません。北京語は普通に使えます。でも家では広東語。これでは広州の中国人と大差ありません。

 ……もっとも、社会の仕組みや政治制度が異なりますからいきなり広州まで退化することはないでしょうけど、中共的価値観にはより従順になっていることだろうと思います。「香港人らしさ」というか「香港人意識」というか、まあ香港人としてのアイデンティティのようなものが「むかし型」に比べると驚くほど希薄になっていることでしょう。

 国家という大局を顧みずに何事も地元優先で事を運ぶ、あるいは一種の「地域エゴ」のようなありさまを、中共政権では「本位主義」と呼んでいます。中国は教育を通じて、「現代型」「未来型」の香港人から「本位主義」を拭っていこうとしているのでしょう。

 ●「愛国度」が試された?――香港vs中国(2004/11/25)

 ――――

 それがシャレでない証拠に、

「国語の授業は北京語でやるべきではないか」

 という声が一部から出ており、語文教育・研究常務委員会という部門からそのテストケースとして2億香港ドルを投入し、小中学校計120校でそれを実現に移そうという計画が進んでいます。さらに踏み込んだ「同化政策」です。

 北京語で国語を教えるという試みはこれまでにもごく一部の小中学校で行われていたようですが、成果が上がっているという意見の一方で、広東語・北京語・英語を取り混ぜることで子供たちが混乱するためかえってよくない、という意見もあります。

 ●『明報』(2007/10/29)
 http://www.mingpaonews.com/20071029/gaa1.htm

 いずれ「国語教育は北京語で」が主流になるのでしょうが、広東語潰しといえなくもないそうした流れが、いまひそかに教育現場で進行しつつあるということです。

 ……で、冒頭の話題に戻ります。ファンが警備員に暴行させるのを目にしてアンディ・ラウが、

「停手!」

 とつい広東語で叫んでしまったのは、W杯予選で中国代表のPKを止めた香港代表のGK同様、中共政権にしてみると、

「大局を顧みない本位主義」

 の発露ということになります(笑)。たぶん「未来型香港人」によるコンサートなら第一声から北京語が自然に飛び出すことでしょうから。

 それにしても、「本来型香港人」が「むかし型」になっていくことには、「ザマーミロ」と思いつつも(笑)、一抹の淋しさを覚えずにはいられません。




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 私にとって、チナヲチ(素人の中国観察)は最大の娯楽です。観察めいたことをして、それを観察日記として当ブログに記しておく。これで娯楽が完了します。

 ところが娯楽だけに、基本的には余暇があってはじめて成立するものです。本業副業で手一杯のときは遊んでいられません。あと2週間くらいで「年末進行」という、そういう苦しい季節に突入します。

 それから娯楽だけに、他の娯楽に浮気することもあります。墨堤散歩(ウォーキングというほどのものではありません)はもはや日課なのでいいとして、「俺は,君のためにこそ死ににいく」のDVDが出たりすると、ついそっちにのめり込んでしまいます。

俺は、君のためにこそ死ににいく

TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)

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 ちょうど「十七大」(中国共産党第17回党大会)関連のことが一段落した時期ということもあり、ちょっとお腹一杯の気分もあって別の娯楽につい流れてしまいます。本格的に忙しくなる前に楽しんでおこう、ということもあります。

 出来心というのもあります。何カ月か前に、

「1年ちょっと経ったら使えなくなりました。やっぱ何とかタイマーってやつですかねえ」

 とさる筋に因縁をつけたら新品のプレステ2を送ってくれたので一時期「サカつく」にハマった時期がありました。いまは「空母戦記」です。皆さん御存知ないでしょうが私にとってはプレステ時代の輝ける名作のひとつ。

 先日ついCDの山の中からそのディスクを発見しまして、試しにプレステ2に入れてみたら動いたのです。おおお、と血が騒いでのめり込みました。いまも遊んでいます。これはいいものです。

空母戦記

アンバランス

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 その一方で「俺は,君のためにこそ死ににいく」とか「ザ・コックピット」とか最近入手したDVDを観ています。私の場合、「俺君」を観ると「月光の夏」も観たくなります。あと「ホタル帰る」とかを読まずにはいられなくなります。それに特攻つながりで回天の「出口のない海」のDVDと原作本(私の中では結構ポイント高いです)。同時期ということで『彗星夜襲隊』も読み返してしまいます。

TOKUMA Anime Collection『ザ・コックピット』

徳間書店

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月光の夏

ポニーキャニオン

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ホタル帰る―特攻隊員と母トメと娘礼子
赤羽 礼子,石井 宏
草思社

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出口のない海

ポニーキャニオン

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出口のない海 (講談社文庫)
横山 秀夫
講談社

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彗星夜襲隊―特攻拒否の異色集団 (光人社NF文庫)
渡辺 洋二
光人社

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 特攻隊が一段落すると今度は無性にガダルカナル戦に飛びたくなるので、『ガダルカナル戦記』(全3巻)を読みます。「戦争の本で何か一冊」と言われたら私は迷うことなく同書を推薦します。これは必読です。

ガダルカナル戦記〈第1巻〉 (光人社NF文庫)
亀井 宏
光人社

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ガダルカナル戦記〈第2巻〉 (光文社NF文庫)
亀井 宏
光人社

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ガダルカナル戦記〈第3巻〉 (光人社NF文庫)
亀井 宏
光人社

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 それからガ島ではありませんけどコミックなら水木しげるの『総員玉砕せよ!』がイチ押しです。これも必読。……で、ガ島関連で『遠い島 ガダルカナル』とか『ルンガ沖野戦』(名作!)それに『海上護衛戦』を読んでようやく一段落となります。

総員玉砕せよ! (講談社文庫)
水木 しげる
講談社

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遠い島 ガダルカナル (PHP文庫)
半藤 一利
PHP研究所

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ルンガ沖夜戦
半藤 一利
PHP研究所

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海上護衛戦 (学研M文庫)
大井 篤
学習研究社

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 ……などと雑談(楊枝削りではありません)に逃げてしまい申し訳ありません。ここ数日、中国問題で気になる出来事がいくつかあったのですけど、材料不十分ということで転がして置いたらつい「俺君」DVDから一巡してしまった次第。きょうは「連合艦隊」と「二百三高地」を観てしまいました。ようやく一段落したところです。

連合艦隊

東宝ビデオ

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二百三高地

東映ビデオ

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 楊枝削りではありませんけど、『ガダルカナル戦記』は是非御一読頂きたい名作です。以前にも紹介したことがありますが、これはいわゆる「戦記」ではなく、ガ島戦について一兵卒から大本営参謀、海軍関係者にまで数多くの人に取材したルポルタージュで、この種の作品では群を抜いたものとなっています。むろん、これを読むことで日本と日本人に思いをこらすこともできるのです。

 ――――

 別の娯楽に浮気してしまうとチナヲチへの戻り方が実に難しく、いきなりハードな話で入るのも小ネタでお茶を濁すのも苦手です。という訳で、こういう形で復帰報告ということにさせて頂きます。m(__)m。

 ちなみに今回のタイトルは意味ありげですが単にここ数日、私の頭の中で鳴っていたオンガクというだけです。「ノンシャランに街角で」でもよかったのですけど。

 ……雑談のつもりがこれだけ商品を並べてしまうと「閑話」などと澄ましてはおれません。やはり「楊枝削り」ということにしておきます。(^^;)




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 いやーこれだから株は怖いのです。……ああ、リスク自分持ちというのを肌でわかっていない「股民」が怖いというべきでしょうか。

 「股民」とは個人投資家のことですが、ここでは投機目的の個人投資家という狭義の「股民」を指すことにします。A株の方です。

 「股民」は暴落すると逆ギレします。今年5月末の暴落日にはデモも発生したとか。

 でもその後持ち直したのでつい最近までは機嫌が良かったんです。特に先月半ばくらいまでは。

 「十七大」(中国共産党第17回党大会、10月15日開幕)という5年に1度の一大政治イベントがあるから暴落なんて縁起の悪いことはあるまい、当局が必死でそれを防ぐだろう、というお国柄を反映した独特の根拠に頼って強気一辺倒。

 正にその通りで、乱高下しつつも右肩上がり。そして「十七大」開幕日の前後あたりで上海証券取引所の株価指数はついに6000の大台に乗りました。

 ところがです。ほどなく揉み合いながらも続落、続落、続落という「股民」たちにとって意外な展開となり、昨日(11月9日)はドーンと落ちて上海株価指数は5315.54に。

「これじゃ去年の水準じゃないか」

「おれたちの一年間を無駄にするというのか」

 ……などと、「股民」たちの逆ギレが始まっているところです。香港の最大手紙『蘋果日報』の記者が昨日、大手ポータル「捜狐」の関連板をチェックしたところ怒りと怨嗟に満ちたタイトルのスレッドがずらーり。





 怒りと怨嗟を超越してしまっているものもありました。下の写真、

「『十七大』は共産党が亡党、亡国へと踏み出す初めの一歩だ」

 という素敵に反革命なタイトルのスレッドです。金融→株式→上海株価指数とたどった先にこんなスレが(笑)。

「何て勇敢な……。もっと言え」

 という煽るような斜に構えたようなレスにも味があります。むろん、ほどなく削除職人が掃除していったそうですけど。





 このあたりが中国株の怖いところで、時価総額なんて経済全体への影響を考えれば大したことはありません。ところが「股民」の大多数が都市部の住民であり、しかも株価が下落すると逆ギレするという習性を持っているため、下手をすると社会不安への起爆剤にもなりかねないのです。

 怖いのは暴落ではなく逆ギレ。中国の特色ある社会主義なのであります。




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 このネタはたぶんかぶらないでしょうから安んじて書きます。……あ、「かぶる」ってのは他のブログとかそういう意味ではなくて。

 まあいいや。何やら温家宝・首相が苦労しているようなんですよ。つい最近香港メディアに、

「経済のマクロコントロール、全然機能してないじゃん。何やってんだ温家宝」

 みたいな批判を浴びせられましてね。どうにも我慢がならなかったらしく、ロシア訪問中の11月6日に香港メディアの取材に応じてそれに反論を加えました。

 それも20分くらいの大演説。ここ5年の経済運営は上手くいっているんだ、財政収入も過去最高だし、政府がしっかり仕事していることは皆さん御覧のとおりでしょ。……などと語ってから、

「実際、中国の経済発展が割とうまく進んでいることは皆さんも認めるところでしょう?歴然たるものですよ。経済がうまく発展しているのにマクロコントロールが効いていない、ていうのは事実に反しているし、ロジックとしても成立しないじゃないですか」

 と自画自賛。その上で、

「13億人の生活と経済建設を主管する政府として、大局や人民全体の利益を重視し、人民に対して責任を果たす。この点において私は、やはり真心を込めているし、今後もそれを続けていきます」

 と高らかに言ってのけました。

 ――――

 11月7日付の香港各紙がこれを報じています。『明報』などは、

「国外でつい本音がポロリか」

「この発言で国内に意思表示したのかも」

 などと色々勘繰っています。

 ●『明報』(2007/11/07)
 http://www.mingpaonews.com/20071107/caa1h.htm

 ●『明報』(2007/11/07)
 http://www.mingpaonews.com/20071107/caa2.htm

 ●『蘋果日報』(2007/11/07)
 http://www1.appledaily.atnext.com/

 ●『香港文匯報』(2007/11/07)
 http://paper.wenweipo.com/2007/11/07/YO0711070004.htm

 ――――

 でもこのニュース、中国本土ではもちろんNG。

「マクロコントールが機能していないと香港メディアに批判された」

 なんて書ける訳がありません。だって中共政権は国内メディアに逆のことを言わせていますから。経済が中央の思惑を超えて走りに走って過熱懸念がささやかれるうえ、物価高騰も進行している現状について、

「マクロコントロールがうまく機能していることを示すもの」

 というスタンスを温家宝以下が維持し続けているのです。調べてみると今回のニュース、『人民日報』電子版の「人民網」に掲載されたようなのですが削除されたようで画面が真っ白。私のMacの問題?

 「人民網」以外だと唯一「中国経済網」が記事にしていますが、これも香港の親中系テレビ局・フェニックスTVの報道に拠ったものです。たぶん削除職人の怠慢ではないかと。

 ●「人民網」(2007/11/07/17:10)
 http://finance.people.com.cn/GB/1037/6498318.html

 ●「中国経済網」(2007/11/07/16:31)
 http://finance.ce.cn/macro/gdxw/200711/07/t20071107_12691523.shtml

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「中国の経済発展が割とうまく進んでいることは皆さんも認めるところでしょう?」

 という温家宝の発言は認めてやらないといけません。何たってこの5年間は効率無視で粗放な高度成長を見事に実現。毎年中央が出した目標を大幅に上回って、GDP成長率なんかずっと2ケタ状態ですから。

 財政収入も増えているし国民も豊かになりました。農民なんかもうカネと時間が余り過ぎちゃって、仕方がないから暇つぶしのレジャーとして都市部に出かけては「出稼ぎ農民」を演じているほどです。

 末端の行政レベル、例えば鎮当局や県当局なんかもカネ太りして使い道に困るくらいです。これまた仕方がないからホワイトハウスやベルサイユ宮殿と見まごうような豪華な政府庁舎を建設しているほど。でも初心を忘れてはいけないので小学校の校舎などは老朽化しても危険建築に分類されても手をつけず、原状保護に努めているのです。

 それから特筆すべきは「中国オリジナル」の追求が技術革新を実現していることです。真っ黒な空に真っ赤な河。これほど鮮やかで華麗なものは他国にはとても真似できません。

 もうひとつ忘れてはならないのは、やはり技術革新が生んだ重金属たっぷりの農地に様々な秘薬。これでもって毒野菜とか毒魚とか殺人玩具をガンガン生産していまや世界もうらやむ輸出大国。

 官民癒着が普及するほど豊かにもなりました。超高値の豪華月餅とか日本産のコメなどが売れに売れて、党幹部の腐敗なんてものは珍しくも何ともない。社会主義初級段階とはそういうものなのだそうです。

 象徴的なのは新手のマス・ゲームともいえる革命バレエ「官民衝突」が連日、全国各地で頻発していることです。これもやはり中国の特色ある社会主義の発露というべきでしょう。

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 ……ええ、こういった余太話が温家宝を日々苦悶させているのです。私たちはそれを察してやるべきでしょう。何たって、

「科学的発展観の徹底と調和社会の構築」

 なんてスローガンを党規約に加えて前面に押し出さなければならないほど不調和で非科学的なのがいま現在の中国社会ですからねえ。

 とはいえ、温家宝もつい余計な一言をもらしてしまいました。

「真心を込めて」

 というのがそれです。「科学的発展観」を掲げておいて、これほど非科学的&精神主義的な言葉はありません。真心を込めてりゃ何やっても許してもらえるのか?そうなのか温家宝?

「お前が真心を込めているかどうかなんてどうでもいい。とにかくこの超格差社会を何とかしろ!」

 ……なんて反応が13億人民から返って来るのではないかと私は思うんですけどね。「真心」なんてものは自らの無能を覆い隠してくれるかも知れませんけど、いわゆる「執政能力」がそれによって高まることはまずありませんから。

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 一党独裁でトップを選択する権利がない以上、人民が推戴したいのは、真心がこもっていなくても生活環境を改善してくれる治世者でしょう。せめてそうであってほしい、と。

 いくら赤心のカタマリのような統治者でも、現状に手も足もでなければ役立たずの烙印を押されてしまいます。温家宝はそのあたりを「庶民派」を偽装することでごまかしてきましたけど、そろそろ化けの皮もはがれてきた、といったところでしょうか。

 この「真心」発言、結構重要だと思います。温家宝が経済運営の担当者として自分の限界を痛感し、追い詰められている証拠ではないかと。政治的に、ではなくストレスがどんどん蓄積されている状態。

 共同通信が以前、

「温家宝、来春で首相降板か」

というニュースを流したら中国外交部が怒っていましたけど、「真心を込めて」なんてことを言い始めたところをみると、結構その観測が当たっているのかも知れないな、温家宝自身はもう投げ出したいんじゃないのかな、などと私は考えてみたりするのです。

 泣くなよ温家宝。辛いとき呉儀の胸に顔を埋めるのは胡錦涛の専売特許だけど、お前にだって劉延東がいるじゃないか。そりゃ呉儀より貧乳かも知れないけど、一応「団派」だから癒し系だし。




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