いやー当たり前のことを書くようですが、ブログというのは色々な読み方をされたり色づけをされたりすることから免れません。ですから別に困る訳ではないのですが、当ブログを嫌中ブログとか反中共ブログに分類されるのはやっぱりイタいてす。それから私を反中共の闘士のようにみられるのも迷惑です(笑)。
むろん私の筆致に問題があるのでしょうからイタくても甘受しますけど、プロフィール欄を御覧頂ければわかるように、
「趣味はもちろんチナヲチ。あと『中共の嫌がることを真心を込めて念入りにやってあげること』」
と書いてある筈です。「チナヲチ」と「中共いじり」は私の中では別種なものでして、「中共いじり」は個人的な娯楽としてこのブログとは無関係にやっていることです。
このブログも娯楽なのですが、あえて偉そうにテーマづけするとすれば、
●日本人の対中認識がより正確なものとなっていく過程を眺めること
●日中関係が上下関係のない対等な二国間関係となっていくプロセスを眺めていくこと
●中共というひとつの政権がどういう道を歩んでいくのか、その「歴史劇」のプロセスを眺めていくこと
●台湾が「国家」として成立していくプロセスを眺めていくこと
●香港が中共の植民地として墜ちていくことを生暖かく見守ること
●日本人が日本人であることに立ち返るプロセスを眺めること
……と、いま思いつくままに並べてみると、ざっとこんなところでしょうか。もちろんそのいずれにも野次馬であり書き手である私のある種の傾きが反映されることになります。
で、森喜朗・元首相訪台の一件も、中共が嫌がるニュースだから取り上げた訳ではなくて、日中関係に一石を投じる動きとして興味深く思ったので俎上に乗っけたものです。
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前回お伝えしたように森・元首相が11月21日から23日まで台湾を訪問し、陳水扁・総統との会見、断交後首相経験者としては初の受勲、そして著書のサイン会などのスケジュールをこなして帰国しました。やはり会見予定の組まれていた李登輝・前総統は高熱で緊急入院していたため面会はかなわなかったのではないかと思います。
さてこの動き、実は連係プレーなのではないかと私は前回書きました。安倍晋三・首相、麻生太郎・外相、中川昭一・自民党政調会長あたりが主役で、さらにいえば久間章生・防衛庁長官、中川秀直・自民党幹事長、塩崎恭久・官房長官あたりが合いの手のような役回りで絡んだいくつかの芝居のなかのひとつです。
安倍首相が10月に訪中したことで日中間を蜜月ムードが支配しているかのようなマスコミが多いようですけど、基本的なところは何も変わっていないように私にはみえます。
「おや?」と思ったのは安倍首相が村山談話のみならず河野談話(慰安婦問題)まで踏襲したことと、日中首脳会談後のプレス向け声明で中国側が、日本が戦後60年ずっと平和の道を歩んできたことを評価すると言及したことでした。
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参院選が終わるまでは安倍首相も暖気運転せざるを得ないのではないかと私は思うのですが、対中外交に関する限り、そういう中でも安倍内閣は活発に動いているといった印象を受けます。
暖気運転中ですから本格的にはまだ動いていませんし荒っぽいアクションに出ることもないのですが、新たな段階に入ったようにみえる日中関係の中で、やれることはちゃんとやっているなというのが私の見方です。
標題に「探索射撃」と書きましたけど、要はそれです。中共政権側のデッドラインを探るかのように「核保有論議」「集団的自衛権」などの話題で中国側の出方をうかがい、安倍首相自身もデンマーク首相との会談でEU(欧州連合)の対中武器禁輸措置の解除に反対だと明言しています。
●安倍首相、対中武器禁輸解除に反対=日デンマーク首脳会談(時事通信 2006/11/21/19:01)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061121-00000110-jij-pol
安倍晋三首相は21日午後、首相官邸でデンマークのラスムセン首相と会談した。安倍首相は、欧州連合(EU)の対中武器禁輸解除問題について「中国の長年にわたる軍備増強とその不透明性は注視する必要がある。解除に日本は反対だ」と表明。(後略)
中共をチクチク突ついている訳です。その延長線上として「さて台湾問題はどうだろう」ということで行われたのが森・元首相の訪台ではないかと。
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で、注目されていた中共政権の反発ですが、森・元首相が台湾を離れるとともに一斉に動き出した観があります。
私は当初、訪台初日の21日が火曜日であることから外交部報道官定例記者会見(毎週火曜・木曜)で話題にあがるかと思っていたのですが、時間的に森氏が台湾についたばかりということ、そして3日間の日程で何が飛び出してくるかわからないということから、のっけから大っぴらに騒ぐことは控えたようです。
ただ前回紹介したように、中共系メディアは速報といったタイミングで論評抜きの報道を中国国内にも流しました。中共にとって愉快なニュースではありませんから、それをわざわざ流したということは「あとで反発する」ということです。
国民に見せつけるように中共政権が反発するとすれば、木曜(23日)の外交部報道官定例記者会見となります。ただその前に、中国国民には内緒ながら、外交ルートで日本への抗議を行っていたんですね。
●森元首相の訪台に抗議=「不満」伝える-中国外務省(時事通信 2006/11/23/07:00)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061122-00000189-jij-int
【北京22日時事】森喜朗元首相が21日に台湾を訪問し、台北で陳水扁総統、李登輝前総統らと会談したことに関し、中国外務省が北京の日本大使館などに外交ルートを通じて「不満」を表明するなど、抗議していたことが22日分かった。日中関係筋が明らかにした。
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中国外交部の誰が日本大使館の誰を呼びつけて抗議したのかも明らかでないとすれば10月末の尖閣問題同様、緊張感に欠ける抗議ですねえ。ちなみに以下は台湾で流れた報道。
●外務省:森喜朗・元首相の訪台に中國側が抗議(AFP 2006/11/23/00:50)
http://tw.news.yahoo.com/article/url/d/a/061122/19/6yq9.html
こちらでは、
「森喜朗氏の訪台は国会議員としての私的なものに過ぎない」
「政府の立場としては、森喜朗氏の訪台は日本政府とは無関係と考えている」
要するに「政府を代表する立場の人間じゃないんだから問題ねーだろ」ということで、中国側の抗議をサラリと受け流している印象です。
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さてお待ちかねの木曜日、23日の外交部報道官定例会見です。担当は今回も姜瑜・報道官。肝心の質疑応答は会見の最後に行われました。
記者「日本の森喜朗・元首相が21日から23日まで訪台し、陳水扁らと会見したほか、台湾当局から勲章を授与された。これに対する中国側の意見を聞きたい」
姜瑜「台湾問題は中国の核心的利益と中日関係の政治的基盤に関わるものだ。中国側の深刻な懸念に構わず、森喜朗・元首相が訪台し陳水扁と会見し受勲することを許可したことについて、我々は強烈な不満と遺憾を表明する。日本政府が台湾問題についての承諾を遵守し、有効な措置を講じて日台関係を適切に処理し、特に『台独』勢力といかなる政治的往来も行わないよう我々は要求する」
……とのことです。この問題を中国側が決して軽視していないことは、箇条書きされたこの日の会見要旨の筆頭にこの問題を並べたことからもうかがえます。
http://news.xinhuanet.com/world/2006-11/23/content_5367803.htm
http://news.xinhuanet.com/world/2006-11/23/content_5367803_1.htm
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ただし、微妙な物言いなんですよね、これ。森氏が前回訪台した際(2003年12月)の外交部声明では、日中間の原則的ルールともいえる「日中間で取り交わされた3つの政治的文書」(「日中共同声明」「日中平和友好条約」「日中共同宣言」)を持ち出してきて、森氏の行動に対し、
「『中日共同声明』など中日間で取り交わした3つの政治的文書の基本原則を遵守するよう日本側に要求する」
という、小泉前首相の靖国神社参拝に対する声明にも出て来なかった強い表現が使われていました。
私は森氏がラガーマンであることは知っていましたが、団体球技で例えに引けるだけの知識を持っているのはサッカーと野球ぐらいですから、前回はあえて「センターバックの攻撃参加」とサッカーを持ち出してみたのですが、無理をしてみるなら、「華麗なステップで相手守備陣を次々と抜き去ってトライ」てなところなんでしょうか。
その例えでいうなら、今回の外交部声明は前回に比べて「立ちはだかる守備陣の壁が薄い」ということになります。実質的な内容はあまり大差ないのですが、「『中日共同声明』など中日間で取り交わした3つの政治的文書」云々といった「怒っているんだぞ」を強調するお約束の言辞が登場しなかったことから、それがうかがえます。
それが江沢民時代(~2004年9月)と胡錦涛がようやく政治の主導権を握った現在との差なのかどうかはわかりません。気になる軍部の動向ですが、人民解放軍機関紙『解放軍報』電子版は外交部会見当日の昨日(23日)はこれを速報せず、きょう24日付の紙面で初めて報じています。それほど神経質になっているようにはみえません。
軍部はともかく、中共政権としては前回ほど必死になれない事情があるのでしょうか。
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私自身は台湾人がその本土意識を軸に、台湾を中共のくびきから解放して「中国」とは無縁の国家として成立し、国際社会からもそれを認められることは必要だと考えていますし、それが日本の国益にもつながるとみています。
そもそも東アジアにおいて、民主主義を標榜し、日本と価値観を共有できる唯一の国家です。親日かどうかではなく、同じ民主主義でも韓国のような基地外国家ではありません。価値観を共有できることが貴重なのです。
その意味で、この時期に森・元首相が訪台して独立派や本土派の政治家と交流を深めたことは喜ばしいことですし、安倍政権の意思表示としても上々だったのではないかと思います。
さすがに台湾新幹線の開業セレモニーに小泉純一郎・前首相が出席するとは考えにくいですけど。……でも仮に出席したとして、連戦や馬英九ら親中派らと公に会見する一方、陳水扁氏や李登輝氏とは極秘会談する、というスケジュールで臨んだら「台独勢力」との接触に神経質な中共の舌鋒がどう変化するか、みてみたい気もします。
もちろん、個人的には小泉・前首相が開業セレモニーに出席して、李登輝氏や陳水扁氏また台湾本土派の政治家と会見する一方、親中派には一顧だにしないところを是非みたいです。
日台関係については昨年春の日米2プラス2で「台湾海峡の有事」を日米安保の範囲に含めた時点で日本の基本的スタンスが明らかになっています。森氏の前回の訪台も前首相時代でしたから、小泉・前首相が行ったとしても、
「強烈な不満と遺憾を表明する」
「『中日共同声明』など中日間で取り交わした3つの政治的文書の基本原則を遵守するよう日本側に要求する」
というのが中共の反応でしょう。それ以上のことをすれば、中共自身にその報いが返ってくることになります。
李登輝氏の訪日は当分無理なようですから、その代わりといっては何ですが、小泉・前首相に是非訪台してもらい日本と台湾の結びつきをより強固なものにすると同時に、独立派・本土派への側面援護の役割を果たしてほしいところなんですけどねえ。
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