日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





「上」の続き)


 そして有毒淡水魚。イシビラメの一件を受けて
「香港に入ってくる魚は大丈夫なのか?」という声に香港当局の衛生部門が検査を実施し、ついでに淡水魚も抽出検査したところビンゴ連発の大当たり。1年経っても香港当局のチェック機能が大甘であることを露呈してしまいました。

 とはいえ元凶は広東省の養殖業者と輸出に際して検査を行う広東省の関係部門。香港当局は輸入時の検査を厳格化する一方で広東省当局にも善処を求めました。

 するとどうでしょう。広東省側の業界団体である「広東省生鮮・冷凍商品輸出入業界協会」は養殖淡水魚の残留薬物問題について、

「メディアが騒ぎすぎる」

 と香港側を批判しただけでなく、香港当局の検査体制について、

「検査は厳しいし検査項目は多いし、安全基準が高い上に時間もかかる。これでは仕事にならない」

 と、まさに逆ギレ。要するに
「有毒淡水魚をつべこべ言わず食え」という姿勢で、開いた口が塞がらないとは正にこのことです。

 ●『明報』(2006/11/28)
 http://hk.news.yahoo.com/061127/12/1x76n.html

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 ところがところが。本当の逆ギレがその後に待っていました。11月28日から広東省当局が
養殖淡水魚の対香港輸出を全面的にストップさせたのです。しかも輸出停止期間は無期限。これは一種の「禁輸」であり、「報復」とも「制裁」ともとれる措置です。

「お前ら香港は基準が厳しすぎ。それを改めないなら魚は売らない」

 ということです。広東省出入境検験検疫局の責任者は、

「香港に輸出される鮮魚は香港の厳しい基準によって検査され、パスしたものだけが輸出されている。ここ数年来1日当たり80~120トンの鮮魚が香港に供給されているが、今まで問題はなかった。ところが一方で毎日十数トンの淡水魚が香港に密輸されている。香港側の今回の抽出検査も輸入時点ではなく市場で行われているため、サンプルが広東省産の養殖淡水魚とは断定できない」

 ……ともっともらしい理屈を持ち出したのですが、ツッコミどころが2点。まずこの責任者は
広東省による有毒淡水魚の問題が昨年も発生していることを都合良く忘れています。それから今回の検査では広東省指定の養殖業者から出荷された魚が安全基準をパスできていないという事実にも知らん顔を決め込んでいます。

 ●『明報』(2006/11/29)
 http://hk.news.yahoo.com/061128/12/1xafd.html

 ●『星島日報』(2006/11/29)
 http://hk.news.yahoo.com/061128/60/1xasm.html

 ――――

 普段は中共にブルンブルン尻尾を振っている『東方日報』もさすがに香港の食卓と関連業界を直撃する問題だけに、

「香港側の厳しい検査体制が中国本土の品質向上に寄与するというのは香港側の独りよがりな願望にすぎない。その証拠に広東省側は感情的な報復措置に打って出てきた」

 と怒り心頭の社説を掲げました。

 ●『東方日報』(2006/11/29)
 http://hk.news.yahoo.com/061128/10/1xage.html

 その矢先に今度はチェコが中国から輸入した鮮魚を検査したところ残留薬物量が最高で安全基準値の4倍にも達したため中国からの輸入を差し止めたというニュース。さてさて中共当局はこれにも報復措置を打ち出すのかどうか。

 ●『明報』(2006/11/29)
 http://hk.news.yahoo.com/061128/12/1xafh.html

 ――――

 ……ところで今回の広東省当局の対応、似ていると思いませんか?

 ほら日本での中国人犯罪問題や2004年のサッカーアジアカップにおける中国人サポーターの愚挙を
「メディアが騒ぎすぎる」と決めつけて自らの非を認めようとしなかったこと。

 それから小泉純一郎首相(当時)による靖国神社参拝に内政干渉し、あくまでも中共史観を受け入れろと日本側に迫り、当然ながらそれがはねつけられると
「じゃあ首脳会談はやらない」と幼稚で横柄かつ高飛車な態度に出たこと。

 中共政権とは、日本が価値観を共有できない国であるだけでなく、まともな「対話」が絶対に成立しない国なのです。

 日本は「なんちゃって協議」を続ける一方で日本がやるべきことをサクサクとやってしまうのが一番。中共側の非難には一切耳を傾ける必要はありません。だいたい中共政権が東シナ海のガス田でそれを実行しているでしょう。

 対話の成立しない相手には、然るべき付き合い方で臨むべきです。……はいこれが今回の主題。試験に出ますからちゃんと覚えておいて下さいねー。




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 「仔仔」さん、「香港居民」さん、「在香港」さん……何だか大変なことになっているようですけど大丈夫ですか?

 生活者にとっては地元の新聞が書き立てるほどの深刻な騒ぎにはなっていないのでしょうが、香港の街市(市場)から淡水魚が消えてしまうというのはやはり尋常ではないですよね。それから有毒タマゴの一件。

 まあ中国絡みで「食」に関する「尋常でないこと」が起きるのは毎年のようでもあります。試しに当ブログ左サイドの「CATEGORY」に並ぶジャンルから「有毒食物etc」というのをクリックしてみて下さい。

「貴州省、総人口の半分にフッ素中毒症状」

 といった物凄い内容のエントリー(必読!)の他は重金属野菜、有毒淡水魚、病死豚肉……といった中国の「特産品」が香港に流入して大騒ぎ、といった内容のものばかりです。それ以前にも1997年に中国本土から鳥インフルエンザが伝染したため香港中の鶏を焼却処分したことがあります。

 ちなみにその際に事態への対処がことごとく後手に回ったという醜態を晒しつつも、

「鶏肉は安全。私は毎日食べています」

 と涼しい顔で言い放って香港市民を激怒させた当時の衛生部門担当者が、このほどWHO(世界保健機関)のトップになったマーガレット・チャン(陳馮富珍)女史です。

 ――――

 で、またまた香港が中国本土の斜め上っぷりに迷惑をこうむっているという話題です。

 中国国内のニュースとして日本でも報道されましたが、今回まず問題になったのは発ガン性物質で食物への使用が禁じられている合成着色料「スーダンレッド」をたっぷり使った有毒タマゴ。「鶏蛋」(鶏卵)と「鴨蛋」(アヒルの卵)ともどもお縄になりました。

 有毒な合成着色料がたっぷり使われるのは赤い色をより鮮やかにして「何だか新鮮そう」と消費者に思わせるためです。生産者は、

「どうせ自分が食べる訳じゃなし」
「1コ2コ食って死ぬ訳でもなし」

 と多寡をくくってごく普通にやっていたのでしょう。これについては中国政府が本腰を入れて調査に乗り出したところ出るわ出るわの大騒ぎ。確か広州市や上海市でも流通されているのが摘発されて、調査めいたことを行った地元当局が安全宣言を出すなど対応に大わらわ。

 どれだけ本気で調べたのかは知りませんけど、中共当局の出す安全宣言ほど危険なものはないと私個人は思っています。……香港のメディアも同じ見解だったようで、有毒タマゴが香港に流入しているのではないかと疑問が呈されて香港当局が調査に走る一幕もありました。

 鶏卵については取扱業者がタイなど海外からの輸入に切り替えるなどの措置を講じているようですが、急場をしのげるほどの供給量を得られないため天を仰ぐしかないといった状況のようです(『蘋果日報』2006/11/29)。

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 それから有毒淡水魚、これは去年も騒がれました。香港人の食卓に並ぶメニューとしてはレギュラー格の養殖淡水魚から、これまた使っちゃいけない合成抗菌剤マラカイトグリーンが検出されたという問題です。中国本土(主に広東省)の養殖業者は魚が水カビ病などで死なないように、また出荷途中で死ぬことのないよう一種の「精力剤」として使用している模様。

 このマラカイトグリーン、観賞用の魚に薬として使うのならともかく、発ガン性物質を含んでいるため食用魚に対する使用は禁じられています。日本のポジティブリスト制度でもしっかり規定されていて、中国産の養殖ウナギがこの基準に抵触して検査強化対象にされたのを御記憶の方も多いかと思います。

 ……いや中国の安全基準に照らしてもアウトなのですが、それでも輸出されてしまうのは制度が機能していないのか地元当局が黙認しているかのどちらかでしょう。バレて慌てて調査に乗り出すのは中央政府の関係部門。これも闇炭坑の取り締まりと同じで、「中央vs地方」の縮図のひとつといっていいのかも知れません。

 ともあれ安全基準を上回るマラカイトグリーンがたっぷり使われていたことが判明して昨年同様、騒ぎになっています。野菜の残留農薬のようなものですね。こちらは現在進行形。

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 この有毒淡水魚の騒ぎ、実は尾びれともいうべきもので、騒動の発端であり当初の主役は養殖物の「多宝魚」(イシビラメ)でした。

 上海市が11月17日、市内の市場で売られているイシビラメを検査したところ、基準値を大きく上回る残留薬物を検出。そこでさらに調査を進めたところ何とサンプルの全てがクロ認定。問題になったのは魚の成長を速めたりする薬物で、これを受けて上海市の市場やレストランから一時イシビラメが姿を消しました。

 このニュースを受けて北京市も同様の抽出検査を行ったところ、こちらもクロ認定が続々。そこで中央政府(農業部)が特命調査チームをイシビラメ養殖業の本場である山東省に派遣して禁令破りの養殖業者を摘発、地元の山東省当局もこれに従って厳格な検査を実施している……というのが現時点です。

 これも「中央vs地方」の一例でしょうか。山東省当局が
「バレちゃあしょうがねえ」と渋面で中央の指示にならっているだとすれば興味深い話です。

 ●「新華網」(2006/11/27/18:42)
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2006-11/27/content_5397870.htm

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 そして有毒淡水魚、となる訳ですが、その前に残留薬物の四番打者である野菜についてふれておきましょう。香港の最大手紙『蘋果日報』(2006/11/28)が安徽省の地元紙『新安晩報』の報道を引用しています。

 それによると、青菜やトマトなどの値段が高くなる冬季というのは中国では有毒野菜のシーズンなのだそうです。ポイントは鮮度と害虫。寒くなるまで虫食いのないまま鮮度を保たせるために冷蔵室のようなものが使われるのですが、これは正道とはいえコストがかかるので一議に及ばす却下。

 ではどうするかというと、青菜だとまず殺虫剤を噴きかけて、その上から鮮度を保つための薬物を振りまくそうです。トマトの場合はまだ青いものを収穫・貯蔵しておいて、出荷する直前に熟すのを促進させる薬物をぶわっとひと噴き。邪道です。

 こうすることで店頭には新鮮そうな青菜や赤々としたトマトが並ぶことになるのですが、それゆえ冬場に出回るこの種の野菜には要注意。お値段も有毒度も高めだそうです。有毒薬物は野菜の表面だけでなく内部にもしみ込んでいるため、かなり長い時間水に浸しておく必要があるとのこと。


「下」に続く)




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 最初に断っておきますが、今回は雑談です。

 どうも最近、浮き世離れしてしまったようで、ふわふわして妙な気分です。

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 仕事との組み打ちは相変わらずですが、その一方で週に何度か、先日15年ぶりに再会することができた大学時代の恩師との電話のやり取りが続いているのです。これが私にとっては法悦のようなもので。

 当ブログにて何度か書いていますが、私は母校意識というのが極めて希薄でして、敢えて言うなら恩師との対話が私にとっての大学であり、母校でした。私塾のようなものです。

 その「大学」が最近復活したので、これがもう楽しくて仕方ありません。大きな声では言えませんが、これはチナヲチ(中国観察の真似事)より何十倍も楽しいことです。

 「対話」といっても世間話のようでもあり、また当然ながら私は拝聴する一方です。ただ恩師が意識してそうしているのかどうかはともかく、毎回電話を終えてふと気付くと、ちゃんと私に何らかの宿題を残してくれているのです。

 そこで次の「授業」までに私がそれを何とか消化しておく、といった具合で、なにやら学生時代に戻ってしまったようで、「浮き世離れ」してしまったような気持ちなのです。

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 「浮き世離れ」とは私の独断と偏見に基づいた物言いで、世間から隔絶された別世界ということです。いい意味でいえば学業に専念できる環境ということですが、その逆の場合もあります。実社会の最前線を駆け回るようになってわかったことは、振り返ってみると象牙の塔というのは実に醜悪な空間だったということでした。

 少なくとも私のいた大学では常に教官同士の暗闘があり、党派があり、教官の多くが純粋培養された学者さんたちだからなのかどうか、その暗闘もいたって幼稚で、幼稚であるだけに残酷なものでした。そういう不毛な争いから超然としていようとする教官(恩師がそうでした)は、逆にそのために複数の党派から叩かれたりします。

 企業内の派閥争いや権力闘争、それに「改革派vs抵抗勢力」といった取っ組み合いなども大変ですが(実感)、あれでも象牙の塔に比べるとずっと洗練されています(笑)。

 真面目な学生ほど教官たちに接する機会が増えますから、いい意味と悪い意味の両面で「浮き世離れ」した空気に染まっていきます。

 私は俗物で山師ですからもちろん真面目な学生ではありませんでしたが、意外にもその不真面目なところを見込まれて?恩師の知遇を得ることができました。ただそのために、見なくてもいい色々なものを目撃してしまう破目になりました。

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 大学院というところを私は知りませんが、幼稚な喧嘩に身を入れる教官たちと大学から上がってきた少数の真面目な学生たち(多少の野心はあるのでしょうが)で構成されているのであれば、大学に輪をかけた伏魔殿であり実社会との接点に乏しい別世界なのだろうかと空恐ろしい想像を描いてみたりします。

 いまは少子化で大学教官の口が減っている上に日本は長寿国(笑)。理系ならともかく、将来を約束されている訳でもない文系の学生さんが、つい学問の面白さに魅かれてうっかり30歳くらいまで歳を重ねてしまうと、大学やシンクタンクのようなところに職を得るという僥倖がない限り、実に荷厄介な存在になってしまうのでしょう。

 まことに可哀想なことです。

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 私は端からみると遊軍のようでもありフリーのようでもあるそうですが、厳密には某外資系零細企業の正社員であり東京駐在員でして、副業を持つことを許されてはいるものの、基本的には毎月現地通貨建てでお給金を頂いている円安万歳のリーマンです(笑)。

 実感としていえば最前線の塹壕にもぐり込んで、剣林弾雨のなか香港人や台湾人と肩を並べて戦っている小隊長、あるいはショートレンジで叩き合いをやっている水雷戦隊の一駆逐艦長のようなもので、

「左舷弾幕薄いよなーにやってんの!」
「なに残弾なし?アパーム弾もってこい急げ!」

 ……みたいな毎日を定休日もなく送っています。ストレスの量も白髪の数も右肩上がり、という楽しくもあり有り難くもない毎日です。しかもその職業病ともいうべき不摂生が祟って、残り時間に不安を持つようにまでなってしまいました。

 ところが、幸運にもそんな日々の中でいい意味での「浮き世離れ」が復活して楽しいのなんの。ただ仕事とのギャップというか、頭の中でまだうまく調和がとれていないので「ふわふわ」してしまっているところです。

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 チナヲチにもその影響が出てしまっているようです。「授業」を受けることが嬉しくてならない私自身は影響が出ても一向に構わない気分なのですが、ヲチというものは日夜継続することが肝心ですから、素人による観察の真似事とはいえ、疎かにする訳にはいきません。

 それから、当ブログをわざわざ読んで下さっている皆さんにも申し訳ない限りです。

 ……ということでまた雑談に流れてしまい相済みません。ありていは更新が滞っていることへの言い訳です。

 m(__)m。

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 ひとつだけ、15年ぶりに恩師と師弟の交わりを結び直すことができて痛感したことがあります。過ぎてしまった時間は取り戻せない、取り返しがつかないということです。……陳腐ですがこれに尽きます。

 私が外地に出てから恩師は私の消息をずいぶん調べてくれたようなのですが、あいにく私が流転を重ねていたために常に行方を追い切れなかったそうです。私は私で転居を繰り返す中でアドレス帳を紛失してしまい、また現状の自分に納得がいかないという無用の見栄や怯みに躊躇して、こちらから調べて連絡することもありませんでした。

 そうして15年間を音信不通のまま過ごしてしまったことが、いまさらながら悔やまれます。どうか皆さんはためらうことなく、私と同じ轍を踏まないようにして下さい。

 ……いやこれは余計なお世話でしたね。




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 いやー当たり前のことを書くようですが、ブログというのは色々な読み方をされたり色づけをされたりすることから免れません。ですから別に困る訳ではないのですが、当ブログを嫌中ブログとか反中共ブログに分類されるのはやっぱりイタいてす。それから私を反中共の闘士のようにみられるのも迷惑です(笑)。

 むろん私の筆致に問題があるのでしょうからイタくても甘受しますけど、プロフィール欄を御覧頂ければわかるように、

「趣味はもちろんチナヲチ。あと『中共の嫌がることを真心を込めて念入りにやってあげること』」

 と書いてある筈です。「チナヲチ」と「中共いじり」は私の中では別種なものでして、「中共いじり」は個人的な娯楽としてこのブログとは無関係にやっていることです。

 このブログも娯楽なのですが、あえて偉そうにテーマづけするとすれば、

 ●日本人の対中認識がより正確なものとなっていく過程を眺めること
 ●日中関係が上下関係のない対等な二国間関係となっていくプロセスを眺めていくこと
 ●中共というひとつの政権がどういう道を歩んでいくのか、その「歴史劇」のプロセスを眺めていくこと
 ●台湾が「国家」として成立していくプロセスを眺めていくこと
 ●香港が中共の植民地として墜ちていくことを生暖かく見守ること
 ●日本人が日本人であることに立ち返るプロセスを眺めること

 ……と、いま思いつくままに並べてみると、ざっとこんなところでしょうか。もちろんそのいずれにも野次馬であり書き手である私のある種の傾きが反映されることになります。

 で、森喜朗・元首相訪台の一件も、中共が嫌がるニュースだから取り上げた訳ではなくて、日中関係に一石を投じる動きとして興味深く思ったので俎上に乗っけたものです。

 ――――

 前回お伝えしたように森・元首相が11月21日から23日まで台湾を訪問し、陳水扁・総統との会見、断交後首相経験者としては初の受勲、そして著書のサイン会などのスケジュールをこなして帰国しました。やはり会見予定の組まれていた李登輝・前総統は高熱で緊急入院していたため面会はかなわなかったのではないかと思います。

 さてこの動き、実は連係プレーなのではないかと私は前回書きました。安倍晋三・首相、麻生太郎・外相、中川昭一・自民党政調会長あたりが主役で、さらにいえば久間章生・防衛庁長官、中川秀直・自民党幹事長、塩崎恭久・官房長官あたりが合いの手のような役回りで絡んだいくつかの芝居のなかのひとつです。

 安倍首相が10月に訪中したことで日中間を蜜月ムードが支配しているかのようなマスコミが多いようですけど、基本的なところは何も変わっていないように私にはみえます。

 「おや?」と思ったのは安倍首相が村山談話のみならず河野談話(慰安婦問題)まで踏襲したことと、日中首脳会談後のプレス向け声明で中国側が、日本が戦後60年ずっと平和の道を歩んできたことを評価すると言及したことでした。

 ――――

 参院選が終わるまでは安倍首相も暖気運転せざるを得ないのではないかと私は思うのですが、対中外交に関する限り、そういう中でも安倍内閣は活発に動いているといった印象を受けます。

 暖気運転中ですから本格的にはまだ動いていませんし荒っぽいアクションに出ることもないのですが、新たな段階に入ったようにみえる日中関係の中で、やれることはちゃんとやっているなというのが私の見方です。

 標題に「探索射撃」と書きましたけど、要はそれです。中共政権側のデッドラインを探るかのように「核保有論議」「集団的自衛権」などの話題で中国側の出方をうかがい、安倍首相自身もデンマーク首相との会談でEU(欧州連合)の対中武器禁輸措置の解除に反対だと明言しています。

 ●安倍首相、対中武器禁輸解除に反対=日デンマーク首脳会談(時事通信 2006/11/21/19:01)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061121-00000110-jij-pol

 安倍晋三首相は21日午後、首相官邸でデンマークのラスムセン首相と会談した。安倍首相は、欧州連合(EU)の対中武器禁輸解除問題について「中国の長年にわたる軍備増強とその不透明性は注視する必要がある。解除に日本は反対だ」と表明。
(後略)

 中共をチクチク突ついている訳です。その延長線上として「さて台湾問題はどうだろう」ということで行われたのが森・元首相の訪台ではないかと。

 ――――

 で、注目されていた中共政権の反発ですが、森・元首相が台湾を離れるとともに一斉に動き出した観があります。

 私は当初、訪台初日の21日が火曜日であることから外交部報道官定例記者会見(毎週火曜・木曜)で話題にあがるかと思っていたのですが、時間的に森氏が台湾についたばかりということ、そして3日間の日程で何が飛び出してくるかわからないということから、のっけから大っぴらに騒ぐことは控えたようです。

 ただ前回紹介したように、中共系メディアは速報といったタイミングで論評抜きの報道を中国国内にも流しました。中共にとって愉快なニュースではありませんから、それをわざわざ流したということは「あとで反発する」ということです。

 国民に見せつけるように中共政権が反発するとすれば、木曜(23日)の外交部報道官定例記者会見となります。ただその前に、中国国民には内緒ながら、外交ルートで日本への抗議を行っていたんですね。

 ●森元首相の訪台に抗議=「不満」伝える-中国外務省(時事通信 2006/11/23/07:00)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061122-00000189-jij-int

 【北京22日時事】森喜朗元首相が21日に台湾を訪問し、台北で陳水扁総統、李登輝前総統らと会談したことに関し、中国外務省が北京の日本大使館などに外交ルートを通じて「不満」を表明するなど、抗議していたことが22日分かった。日中関係筋が明らかにした。

 ――――

 中国外交部の誰が日本大使館の誰を呼びつけて抗議したのかも明らかでないとすれば10月末の尖閣問題同様、緊張感に欠ける抗議ですねえ。ちなみに以下は台湾で流れた報道。

 ●外務省:森喜朗・元首相の訪台に中國側が抗議(AFP 2006/11/23/00:50)
 http://tw.news.yahoo.com/article/url/d/a/061122/19/6yq9.html

 こちらでは、

「森喜朗氏の訪台は国会議員としての私的なものに過ぎない」
「政府の立場としては、森喜朗氏の訪台は日本政府とは無関係と考えている」

 要するに「政府を代表する立場の人間じゃないんだから問題ねーだろ」ということで、中国側の抗議をサラリと受け流している印象です。

 ――――

 さてお待ちかねの木曜日、23日の外交部報道官定例会見です。担当は今回も姜瑜・報道官。肝心の質疑応答は会見の最後に行われました。

 記者
「日本の森喜朗・元首相が21日から23日まで訪台し、陳水扁らと会見したほか、台湾当局から勲章を授与された。これに対する中国側の意見を聞きたい」

 姜瑜
「台湾問題は中国の核心的利益と中日関係の政治的基盤に関わるものだ。中国側の深刻な懸念に構わず、森喜朗・元首相が訪台し陳水扁と会見し受勲することを許可したことについて、我々は強烈な不満と遺憾を表明する。日本政府が台湾問題についての承諾を遵守し、有効な措置を講じて日台関係を適切に処理し、特に『台独』勢力といかなる政治的往来も行わないよう我々は要求する」

 ……とのことです。この問題を中国側が決して軽視していないことは、箇条書きされたこの日の会見要旨の筆頭にこの問題を並べたことからもうかがえます。

 http://news.xinhuanet.com/world/2006-11/23/content_5367803.htm
 http://news.xinhuanet.com/world/2006-11/23/content_5367803_1.htm

 ――――

 ただし、微妙な物言いなんですよね、これ。森氏が前回訪台した際(2003年12月)の外交部声明では、日中間の原則的ルールともいえる「日中間で取り交わされた3つの政治的文書」(「日中共同声明」「日中平和友好条約」「日中共同宣言」)を持ち出してきて、森氏の行動に対し、

「『中日共同声明』など中日間で取り交わした3つの政治的文書の基本原則を遵守するよう日本側に要求する」

 という、小泉前首相の靖国神社参拝に対する声明にも出て来なかった強い表現が使われていました。

 私は森氏がラガーマンであることは知っていましたが、団体球技で例えに引けるだけの知識を持っているのはサッカーと野球ぐらいですから、前回はあえて「センターバックの攻撃参加」とサッカーを持ち出してみたのですが、無理をしてみるなら、「華麗なステップで相手守備陣を次々と抜き去ってトライ」てなところなんでしょうか。

 その例えでいうなら、今回の外交部声明は前回に比べて「立ちはだかる守備陣の壁が薄い」ということになります。実質的な内容はあまり大差ないのですが、「『中日共同声明』など中日間で取り交わした3つの政治的文書」云々といった「怒っているんだぞ」を強調するお約束の言辞が登場しなかったことから、それがうかがえます。

 それが江沢民時代(~2004年9月)と胡錦涛がようやく政治の主導権を握った現在との差なのかどうかはわかりません。気になる軍部の動向ですが、人民解放軍機関紙『解放軍報』電子版は外交部会見当日の昨日(23日)はこれを速報せず、きょう24日付の紙面で初めて報じています。それほど神経質になっているようにはみえません。

 軍部はともかく、中共政権としては前回ほど必死になれない事情があるのでしょうか。

 ――――

 私自身は台湾人がその本土意識を軸に、台湾を中共のくびきから解放して「中国」とは無縁の国家として成立し、国際社会からもそれを認められることは必要だと考えていますし、それが日本の国益にもつながるとみています。

 そもそも東アジアにおいて、民主主義を標榜し、日本と価値観を共有できる唯一の国家です。親日かどうかではなく、同じ民主主義でも韓国のような基地外国家ではありません。価値観を共有できることが貴重なのです。

 その意味で、この時期に森・元首相が訪台して独立派や本土派の政治家と交流を深めたことは喜ばしいことですし、安倍政権の意思表示としても上々だったのではないかと思います。

 さすがに台湾新幹線の開業セレモニーに小泉純一郎・前首相が出席するとは考えにくいですけど。……でも仮に出席したとして、連戦や馬英九ら親中派らと公に会見する一方、陳水扁氏や李登輝氏とは極秘会談する、というスケジュールで臨んだら「台独勢力」との接触に神経質な中共の舌鋒がどう変化するか、みてみたい気もします。

 もちろん、個人的には小泉・前首相が開業セレモニーに出席して、李登輝氏や陳水扁氏また台湾本土派の政治家と会見する一方、親中派には一顧だにしないところを是非みたいです。

 日台関係については昨年春の日米2プラス2で「台湾海峡の有事」を日米安保の範囲に含めた時点で日本の基本的スタンスが明らかになっています。森氏の前回の訪台も前首相時代でしたから、小泉・前首相が行ったとしても、

「強烈な不満と遺憾を表明する」
「『中日共同声明』など中日間で取り交わした3つの政治的文書の基本原則を遵守するよう日本側に要求する」

 というのが中共の反応でしょう。それ以上のことをすれば、中共自身にその報いが返ってくることになります。

 李登輝氏の訪日は当分無理なようですから、その代わりといっては何ですが、小泉・前首相に是非訪台してもらい日本と台湾の結びつきをより強固なものにすると同時に、独立派・本土派への側面援護の役割を果たしてほしいところなんですけどねえ。




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 いや、別に「電撃」ではないんでしょうけど、私にとっては寝耳に水だったので。

 森喜朗・元首相が今日(11月21日)から台湾を訪問するそうです。まずは関連報道をどうぞ。

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 ●台湾総統、森元首相に勲章授与へ…国交断絶後初めて(読売新聞 2006/11/20/20:59)
 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20061120ia22.htm

 台湾の外交部は20日、森喜朗・元首相が21日から3日間の予定で台北を訪問する際、陳水扁総統が「特種大綬景星勲章」を授与すると発表した。

 同勲章は、海外の首相などを対象にしたもので、外交部によると、1972年の日本と台湾の国交断絶後、日本の首相経験者に授与されるのは初めてという。
(後略)

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 共同や朝日や毎日ではないので「中国の反発は必至だ」という一節はありません(笑)。ただ中共政権は森・元首相による前回の訪台(2003年12月、李登輝・前総統と会見)でも大騒ぎしていたのに、今回は李登輝氏に会うだけでなく、さらに何と勲章までもらってしまうそうです。

「日本と台湾の国交断絶後、日本の首相経験者に授与されるのは初めて」

 ですからね。可燃度はより高くなってもおかしくありませんよ。

 やるねえ。(木村和司調)

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 実はまだあります。上の記事よりちょっと早く香港の『明報』電子版がこのニュースを報じています(時間は日本時間)。

 ●『明報』電子版(2006/11/20/20:18)
 http://hk.news.yahoo.com/061120/3/1wref.html

 ロイター電の引き写しですけど、早いうえに『読売新聞』電子版よりいい仕事をしています。森・元首相は今回も李登輝氏と対面するほか、さらに陳水扁・総統との会見もスケジュールに含まれているとか。

 魅せてくれます。(ジョン・カビラ調)

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 これは連係プレーなんでしょうか?……だとすれば面白いですねえ。

 2トップのひとりでエースストライカーの安倍晋三・首相が中国首脳会談を連発して「靖国神社」「歴史教科書」が出て来ない蜜月ムードを演出。かと思えばもうひとりのFWであるファンタジスタ・麻生太郎・外相が「核保有論議」で中国DF陣をかく乱し、サイドからは中川昭一政調会長もオーバーラップ。

 そうこうしているうちにポッカリと空いたスペースを目指して、今度はセンターバックの森・元首相が攻撃参加。台湾政局の混乱で当分来日できそうにない李登輝氏を訪ね、現職総統の陳水扁氏とも会見、さらに首相経験者としては「断交後初」の勲章をもらっちゃうそうです。

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 この一件、中国側の反発は……と思ったらもうどんどん報道されているじゃないですか。中共系通信社・中国新聞社が配信したようです。

 ●日本の森喜朗・元首相が訪台へ、陳水扁・李登輝との会見も(新浪網 2006/11/20/17:32)
 http://news.sina.com.cn/c/2006-11-20/170411567782.shtml

 ●森・元首相が3日間の訪台へ、陳水扁・李登輝との会見も(CCTV.com 2006/11/20/17:32)
 http://news.cctv.com/world/20061120/103700.shtml

 ●森喜朗・元首相が訪台、叙勲も(鳳凰網 2006/11/20/17:50)
 http://news.phoenixtv.com/taiwan/200611/1120_18_35908.shtml

 ●森喜朗・元首相が訪台、叙勲も(大公報電子版 2006/11/20/17:51)
 http://www.takungpao.com:82/gate/gb/www.takungpao.com/news/06/11/20/TM-653492.htm

 『読売新聞』や『明報』の電子版よりも早いですね(笑)。むろんこのタイミングですから、

 ●訪台する
 ●李登輝・陳水扁と会う
 ●勲章をもらう

 の3点を織り込んだ論評抜きの報道です。

 ――――

 さて森・元首相の訪台を国内で告知した中共政権、どういう態度に出るか見物です。

 中国国内メディアに速報させた以上、強い反発になると思われます。何たって台湾問題ですから、軍部が騒ぎますよ軍部が。

 しかもですよ。よりよって軍総参謀長補佐の章沁生・中将が党中央党校の新聞『学習時報』に、

「台湾を『一つの中国』の枠内にしっかりと収めるため(中共政権による台湾併呑のため)、軍備増強に絶えず邁進しなければならない」

 という趣旨の文章を発表し、それが19日に全国ニュースとして報じられた矢先です。タイトルは「章沁生:わが軍は台湾を「一つの中国」の枠内に押さえ込むに足る軍備を擁しなければならない」。

 ●「新華網」(2006/11/19/12:32)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-11/19/content_5348972.htm

 しかもこの章沁生・中将はこの11月下旬に訪日する予定だと先日報じられたばかり。顔にベタリと泥を塗られてあらあらメンツ丸つぶれー(笑)。

 ――――

 仮に胡錦涛・国家主席がその現実路線に照らして騒ぐまいとしても、こと台湾問題となれば話は別です。この件に関しては軍非主流派の電波系対外強硬派だけでなく、胡錦涛を擁護する軍主流派だって穏やかではいられないでしょう。原則問題であるだけに、胡錦涛自身も強い反発を示してみせようとするかも知れません。

 日本もなかなかイジワルですねー。「第17回党大会」という世代交代や大型人事の行われる5年に1度の政治的大イベントを来年に控えたこの時期に、中共内部が乱れかねません。現在の対日外交路線にも内部から異を唱えられる可能性があります。……なんやかんやで、中共の延命のため荒療治に着手しなければならない胡錦涛はこれでまた時間を浪費することになるかも知れません。

 可燃度という点からいえば、国民感情は別として、中共政権にとって台湾問題は日本の首相による靖国神社参拝より火の手が上がりやすいのです。台湾問題の方が格式がずっと上ですから。

 目安としては中共がしばしば言及する
「日中間で取り交わされた3つの政治的文書」というものがあります。「日中共同声明」「日中平和友好条約」及び「日中共同宣言」のことです。

 いわば日中関係の原点であり二国間における原則的ルールのようなもの、といっていいでしょう。これが今日午後(21日)に開かれるであろう外交部報道官定例会見でも持ち出される可能性が濃厚だと私は考えています。

 「台湾問題は靖国問題より可燃度が高い」と前述しましたが、例えば小泉純一郎・前首相が首相在任中に靖国神社を参拝するたびに中国外交部が発表してきた抗議声明。その中に、「日中間で取り交わされた3つの政治的文書」云々という文言は1度も登場しませんでした。

 靖国参拝が「二国間における原則的ルール」に抵触していると断じ切れなかったのでしょう。本来なら逆に「内政干渉」ということで中共が「3つの政治的文書」のいずれにも明確に違反している、と日本側が断罪すべきところなのです。

 ――――

 ところが、靖国参拝への抗議声明でも使われることのなかったこの「日中間で取り交わされた3つの政治的文書」が、前回の森・元首相による訪台においては持ち出されているのです。外交部の非難声明において、

「『中日共同声明』など中日間で取り交わした3つの政治的文書の基本原則を遵守するよう日本側に要求する」

 となっています。要するに小泉首相(当時)の靖国神社参拝よりも森・前首相(当時)による訪台の方が中共にとっては建前上ゆゆしき事態、ということなのです。

 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2003-12/25/content_1248416.htm

 2004年12月末に李登輝・前総統が訪日する直前には、外交部声明ではなく国営通信社・新華社の署名論文ながら、

「日本政府が李登輝の日本での活動を認めたことは、
「中日共同声明」など中日間で取り交わした3つの政治的文書の基本原則に背いたものであり、中国の平和的統一という大業に対する挑戦だ」

 ……と、さらに激しい表現が使われています。

 http://news.xinhuanet.com/world/2004-12/24/content_2375635.htm

 ――――

 それが今度は森・元首相、訪台して李登輝・前総統に会うだけじゃなくて、陳水扁・総統とも会見したうえ「特種大綬景星勲章」なる重々しい勲章を授与されるという極上燃料。これやっぱり連係してますよね。

 麻生外相と中川政調会長が安倍首相とは逆の動きをして作り出したスペースに虚を衝くタイミングで森・元首相というセンターバックの攻め上がりです。ワクテカの展開ですよこれは。

 だってもし中共側が強く反発しなかったら、いよいよスーパーサブの点取り屋たる小泉・前首相が満を持してピッチに入ります。台湾新幹線の開業セレモニーに出席するかも知れませんよ。すでに台湾側からの招待状を受け取っている訳ですし。

 という訳で中共の反発ぶりと政権内部における足並みの乱れに期待大。森・元首相には前線に上がってくる以上しっかり決めてもらいましょう。コメントでさり気なく煽ることもお忘れなく(笑)。この間の闘莉王みたいにPK外しちゃダメですよ。




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 昨日お伝えした広東省汕尾市・東洲村を警官・武警(武装警察=暴動鎮圧用の準軍事組織)約1000名が包囲していた一件で動きがありました。

 警官・武警約200名が18日午前3時ごろ東洲村内に突入、地元の警察に連行された村民代表の解放を求め、村民が交換条件の人質として軟禁していた役場(東洲街道弁事処)職員8名を実力行使により奪回した模様です。

 ――――

 香港各紙(2006/11/19)の報道によると、16日に約1000名の警官と武警で東洲村を包囲した地元当局は、17日に小部隊による人質奪回を企てるも失敗。

 その後未明を待って午前3時に奇襲作戦を決行、完全武装の警官・武警約200名が警察犬を引き連れて村内になだれ込み、空に向けて警告射撃を行って農民を威嚇しつつ、同村中心部の廟に軟禁されていた人質8名を奪回したとのことです。

 廟の前には見張り役の村民たちがいたものの、警官が解き放った警察犬多数に脅えて躊躇している間に警官隊が廟の扉のカギを壊して内部に突入し、人質を奪われてしまったとのこと。もっとも『太陽報』によると警官隊は警告射撃のほか催涙弾も発射し、慌てて駆け付けた農民数百名が追い散らされたそうです。

 ――――

 この際、警官隊は村民2名と香港のラジオ局の記者1名を拘束し連行したものの、3人は18日午後になって釈放されました。このうち村民2名は身柄を取り押さえられている間に警官に暴行されたとしています。連行された報道関係者については諸説あり、

「香港のラジオ局の記者1名」
(蘋果日報)
「外国人記者1名」
(明報)
「香港のラジオ局の記者1名、香港のテレビクルー3名及び運転手1名」
(太陽報)

 と様々です。さらに法輪功系の反中共ニュースサイト「大紀元」は、米国人記者3名が18日朝、取材のため東洲村に入ろうとしたところ警官に発見され、2名が連行されたと報じています。

 残る1名は村内に入れたものの村の外へ通じる道路は全て警察に封鎖されているため脱出することができず、北京の米国大使館に電話して救援を要請。大使館職員は3時間後に迎えを寄越すと応じたものの、いくら待ってもその迎えが来ないため、この米国人記者は行方をくらましたとのことです。

 ――――

 一方、今回の事件の発端となった警察が連行した村民代表・陳簽氏は未だ釈放されていません。『明報』によると、汕尾市政府は18日夜に声明を発表、今回の事件の定性(党による善悪認定。違法かどうかより優先される)を「非合法監禁事件」とし、陳簽氏を「村委員会事務秩序騒擾罪」により11月9日に逮捕したと明らかにしたところから、陳簽氏の釈放は望み薄とみられています。

 また『星島日報』の報道では汕尾市政府の声明は警官隊の突入についても言及、

「役人8名は監禁が8日間の長きにわたり、生命の安全が脅かされているという深刻な状況のため、警察側は突入強行のやむなきに至った。警官隊の行動は終始順調で、いかなる衝突も発生していない」

 と発表したとのこと。

 親中紙『香港文匯報』はさすがに中共の走狗だけあって汕尾市当局に直接取材できたようです。それによると村民代表の陳簽氏は9月22日、「私怨を晴らすため」仲間十数名を引き連れて東洲街道弁事処に現れ、職員に暴行を加えたとしており、これが11月9日の「村委員会事務秩序騒擾罪」による逮捕の原因だとしています。

 ――――

 『蘋果日報』によると、同村には現在も警察車両十数台とともに警官・武警が残って包囲を解いておらず、緊張は未だ解けていません。このことから、警官隊が再度村内に突入してリーダー格の村民を逮捕するつもりではないかとの見方が村内に広がっているようです。

 今回の実力行使に対してある村民は、

「役人どもはまだ誰かをひっくくろうとしている。こっちは腹が立って仕方がないよ。(「12.6事件」から)もうすぐ1年になるというのに、あいつらは俺たちを逮捕したり監視したりするばかりで、村民側の要求には何ひとつ応じていない。みんなの我慢にも限度がある。この先何が起きても不思議じゃないよ」

 とコメントしています。

 ――――

 この新しい動きを報じた香港各紙の見出しが興味深いです。記事内容をそのまま反映している訳ではないのですが、ひとつの目安としてみると面白いのです。……面倒なので原文のまま並べます。

 ●武警強攻東洲村救8官
(蘋果日報)
 ●八官「脱困」汕尾仍緊張
(星島日報)
 ●汕尾救出被扣官員
(明報)
 ●汕尾破門救被扣八官
(東方日報)
 ●汕尾徴地餘波 八官被禁梱八日 千警夜襲破門搶人
(太陽報)
 ●汕尾警方成功解救人質(
香港文匯報)

 ――――

 まず親中紙の『香港文匯報』は「成功」「解救」という単語から当然ながら当局側のスタンスであることがわかります。

 香港の中国返還と同時に中共寄りへと露骨に報道方針を転じた『東方日報』も「救」「被扣」(拘束されている)と足並みを揃えています。

 情けないのは、昔日の良心的かつ社会派な編集路線から徐々に大人しくなっていった『明報』もまた「救出」「被扣」と尻尾を振っていることです。……ここまでの3紙のデスクは珠江遠泳8海里&重金属野菜500g一気食いの刑。

 反中色が強く香港の最大手紙である『蘋果日報』はタイトルこそ「救」の字を使って当局寄りのようでもありますが、「武警強攻」には無理矢理やったというニュアンスが漂っていて、実際記事内容は村民に同情的です。及第点といったところでしょうか。

 『星島日報』は「脱困」をカギカッコでくくったところに村民への思いやりがみてとれますし、「仍緊張」(依然として緊張状態)の3文字で「まだ何か起こるかも」という空気を表現した秀逸なタイトルです。銀メダルをあげてもいいでしょう。

 そしてMVPは中共側へと転向した『東方日報』系列ながら、官民衝突モノには無類の取材力を発揮する『太陽報』。まず今回の事件が汕尾市当局の無体な土地強制収用に端を発していることを「徴地餘波」できれいにまとめたうえ、「破門搶人」=扉を破って人を奪う、という村民視点ともいえる表現を使っているのはナイスです。

 ……ただし字数が多すぎます(お前が言うか>>自分)。この記事が中国面のトップでなければ金メダルされど傷モノ、といった評点になるのではないかと。

 ――――

 ところで今回の事件、直接的な引き金となった陳簽氏の逮捕容疑には疑問が残りますが、東洲村民が役人8名を人質にとってしまうのは法に照らしても無茶です。

 ただそこまでしないと事態は打開されないという追いつめられた気持ちと、「官匪」への抜き難い不信感は理解できます。汕尾市当局は勝手に土地を強制収用しておきながら村民に補償金を出さないという稀にみる悪代官(売却益横領疑惑も)。しかもそれに村民が異を唱えるや、武警に突撃銃を乱射させて死傷者多数を出すという海外からも注目を浴びる惨劇をやってのけたのです。

 それなのに、農民十数名を逮捕して全員に実刑判決を下す一方、当局側は現場指揮官を処罰(具体的内容は不明)するとしたのみで市の責任者にはお咎めなしという信じ難い幕引き。これを広東省当局も追認したのですから、村民は立ち上がらざるを得ません。

 ――――

 
「官逼民反」(「官」の横暴に追いつめられた「民」が成否を問わず蹶起する)という言葉がこれほど当てはまるケースもないでしょう。信じ難いことに、「12.6事件」で悪名を轟かせた後も、汕尾市当局は現在に至るまで東洲村民からの土地収用に対する補償要求を無視し続けているのです。

 村民たちの今回の行動は非難されるべきものですが、泣き寝入りしようにも補償金すら出ないのでは暮らしが立ち行きません。地元当局が話し合いの場を設けようとすらせず、まさに「官匪」たる姿勢で臨んでくる以上は実力に訴えるしかなかったのでしょう。

 ところが、人質を取って相手を交渉の場に引きずりだそうとした村民に対し「官匪」がとった行動は警官・武警約1000名で東洲村を包囲するという「いきなり一触即発」型の措置。村民を孤立させて威嚇しつつ人員の往来を遮断し、一方で電話やインターネットといった外部との連絡手段を封じ、さらにテレビまで見られなくするという念の入ったやり方には呆れて物が言えません。

 しかも村民から人質を奪い返した後も包囲を解かないでいるのです。事態は来るところまで来てしまった、というしかないように思います。東洲村民がどうするかは別として、事態がここまで進んでしまえば、自衛のために農民が武装化しても不思議ではない状況、といっていいのではないでしょうか。

 ――――

 「12.6事件」についての裁定から察するに、広東省当局が腰を上げる雰囲気ではありません。だとすれば、1年前よりは統制力を強めている中央政府が今回は省当局に圧力をかけられるかどうかがカギではないかと思います。

 それとも農民たちを見殺しにするのでしょうか。「和諧社会」(調和社会)を呼号する胡錦涛&温家宝の本気度がいま、試されようとしています。

 ――――

 http://orientaldaily.orisun.com/new/new_c01cnt.html
 http://the-sun.orisun.com/channels/news/20061119/20061119013735_0000.html
 http://www.singtao.com/yesterday/chi/1119eo03.html
 http://hk.news.yahoo.com/061118/12/1wnrz.html
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0611190038&cat=002CH
 http://www.epochtimes.com/gb/6/11/18/n1525822.htm

 ……それにしてもこういう事件は書いていて気が滅入ってきますね。




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 以前から読んで下さっている方なら御存知でしょうが、当ブログでは頂いたコメントや質問への返事が長くなってしまうときはエントリーに仕立ててしまうことがままあります。

 今回もそのケースです。まずは頂いたコメントから。

 ――――

 ●Unknown (北京より) 2006-11-19 00:25:25

 こちらは北京在住です。このサイトが開けることが不思議でなりません。ダイキゲンやボーシュンなどは開けませんので…。日本語はチェックが甘いんでしょうね。

 生まれ来る国を選べない中国人(善良な中国人限定)に同情を寄せる者としては、こちらの記事が思考の短絡的な人に与える影響が心配になるところですが、情報源としてはとても貴重です。

 よりフェアな視点での情報収集、期待してます。

 ――――

 以下は私によるレス&雑談です。

 ――――

>>北京よりさん

 北京から読んで頂いているとは光栄です。私は中国滞在中にとうとう北京へ行く機会を得られませんでした。再開発が進む前の街並に接することができなかったことは残念です。

 ところでこのブログはアクセス数が特別多い訳でもなく、同じgooブログには中共からみればもっと過激と映るであろうブログもあるのに、中国からもアクセスできるとは不思議です。

 このブログについていえば、ニュースサイトでも翻訳サイトでもなく、ニュース番組でいえばお天気コーナーのようなものだと自分では考えています。

 報道自体が多かれ少なかれある種の傾きから逃れることができないように、お天気コーナーも気象予報士の眼力やその日の気分が反映されて概況解説が適切でなかったり、予報が当たったり外れたりします。まあ元々娯楽でやってますし私の程度も低いですし。

 ――――

 ですから「よりフェアな視点」というのがどういうものなのか、私にはわかりません。私には、

 ●「チナヲチ」
(中国観察の真似事)
 ●「中共いじり」

 という趣味・娯楽がありますが、このブログはあくまでも前者(チナヲチ)であり、なるべく後者の色が出ないようにしているつもりです。

 例えば今回の広東省汕尾市・東洲村の一件にはすでに続報が出ていて、香港紙『明報』電子版は、

「汕尾公安成功救出8名幹部」

 というタイトルで報じています。
「成功」「救出」という字が躍っている時点で東洲村の農民からすればこれは「官匪」寄りの報道です。フェアとは一体どういう意味なのか理解に苦しみます。「北京より」さんの仰る「フェア」とは、「もう少し北京寄りであれ」ということでしょうか?

 http://hk.news.yahoo.com/061118/12/1wnpn.html

 ――――

 そもそも「思考の短絡的な人」という言い方がすでに紋切り型ではないでしょうか。紋切り型の物言いで応じるなら、確かに日本にも中国の糞青(自称愛国者の反日信者)みたいな人はいますし、このブログ自体がそうだとみる向きもあるかも知れません。

 ただ中国に生まれてしまった人に同情するのは結構ですが、日本人も故なく中国・中国人に反感を抱いている訳ではないことは覚えておいてほしいのです。

 例えば私が最寄りのコンビニに行くといつも中国人がアルバイトしているように、現在の日本人、特に大都市では生活レベルで中国人と接触する機会がいくらでもあります。

 ところが私が調べた限りでは、その中国人(中国本土限定)が少なくとも平成元年以来昨年まで、国籍別外国人犯罪件数のトップの座を他に譲っていません。実に
「17連覇」です。こうした犯罪者の全てが中国にいたときから「善良」でなかったと言い切れる根拠はありません。

 日中間の「草の根交流」がここまで進み、中国人の民度とそれを反映した素行(犯罪以外の面でも)がいかなるものかを知ったことで、日本人の対中感情悪化という皮肉な結果をもたらしているのです。

 その基盤の上に、さらに中共政権の対日外交への反発が上乗せされているのだと私は考えています。人種差別が基礎になっているのではなく、事実に裏打ちされた上で生じている一種の嫌悪感と反感なのです。

 60年前の歴史を都合良くいじくることで政治的に生み出された反日感情、あるいは「中華」という意識から「小日本」という言葉が出てくる侮日感情(これこそ故なき人種差別だと思います)とは全く異なるものではないでしょうか。

 ――――

 また、
「生まれ来る国を選べない中国人(善良な中国人限定)に同情を寄せる」とのことですが、「同情を寄せる」なんて言ったら、逆に「何で日本人に同情されなければならないんだ」という反応が返ってくるかも知れません。

 ごく親しい友人ならともかく、ネット上の掲示板などでは見知らぬ相手に対して社交辞令に気を使う必要がありませんから、そういう本音により多く接することができるかと思います。そもそも「同情を寄せる」という姿勢自体が相手を見下すかのような形であり、「フェア」ではありません。

 もっとも民度をならしてみれば、日本人と中国人の間に大きな開きがあることは冷厳たる事実ですから、私自身は日本人が中国人を見下すかの如き視点でつい語ってしまうのは致し方ないと考えています。それを好ましいこととは思いませんが、これは人種差別ではなくやはり事実の裏打ちがついそういう気分にさせてしまうのです。

 使えない奴は使えないのです。役立たずというしかありません。国民ひとりひとりの実力の総和、その平均点が一国の民度を形成しています。そこからイメージされる平均像がいわゆる「日本人」であり「中国人」なのです。もしそれを人種差別だと断じる向きがあるならどうぞ御自由に、というのが私の気分です。

 ――――

 仕事の世界では実力差に応じて待遇が異なります。使えない奴ははじかれます。これは差別ではありません。

 私は常に香港人や台湾人の中で「一人だけ日本人」という環境で仕事をしていますが、部下で使えない奴はよそへ行ってもらうしかありませんし、上から役立たずと判断されれば私がクビを切られることもあるでしょう。

 どうしても使えない奴にはつい使える奴とは異なる態度で接してしまうこともあります。いずれも人種差別を背景にしているものでないことは言うまでもありません。

 実際に日本人と中国人では1人当たりにかけられているコストも大きく違えば、自分を磨く環境も異なります。それゆえに能力値に大きな差が生じ、例えば事故の賠償金という形で数字によって表される生命の値段(価値)もまた等価ではありません。

 ですから自分にとって「善良」と映る中国人に「同情を寄せる」という「北京より」さんの気持ちはよくわかりますし、私自身にも同情を寄せる対象の優秀な、あるいは生真面目で善良な中国人が何人かいます。

 ――――

 ただ、「北京より」さんがこのブログに対して「北京より」さんのいう「よりフェアな視点」を求めているのなら、それは無理です。

 私自身の能力の限界もありますし、殊更に中共政権を苛酷に扱っているつもりはありませんから、よそへ行って頂くしかありません。

 情報収集にはこれからも精進していく所存です。期待にそえるよう努力します。

 ――――

 以下は余談です。

 「何で日本人に同情されなければならないんだ」という反応が中国人から返ってくるとすれば、自国の現状を一応肯定していることが基礎になっている証左でしょう。

 実際、中国国内の大手ポータルサイトや反日サイトの掲示板をのぞいてみると、自分の属する社会に一定の問題意識を持ちつつも、基本的には現状を積極的に「肯定」している向きが多いように思います。……むろん、強すぎる問題意識を露わにした発言は削除されているのでしょうけど。

 中国経済の構造的な危うさを考えれば、現状を「以前よりマシになった」とするならともかく、中国国内メディアのいうような「繁栄」だの「中華民族の復興」だのとみている人が多いのであれば、そこには慢心が潜んでいるように私には感じられます(「中華民族」って何?)。

 ……もっとも、「繁栄」「中華民族の復興」などと舞い上がっている連中が果たしてどのくらいいるのか、私は現地にいないので実感として捉えにくいです。

 中国のネット人口は1億人余りですが、それはネット環境を有するということが全人口の1割にも満たない限られた人々の贅沢であることを示しています。そして、それより多く(総人口の約1割)の文盲をいまなお抱えているのが現在の中国です。

 ――――

 留学中に内陸部を旅行していて昆明から重慶まで寝台車で移動した際のことです。貴州省に入ったところで夜になりました。

 夕方食べた激辛駅弁で腹を下してしまった私は何度もトイレまで往復する破目となり、その都度窓から外へ目をやったりしました。ところがいつ見ても、灯火ひとつないまさに漆黒の闇がどこまでも広がっているのです。

 私には見たことのないものでした。地図で確かめると山がちな地形ながら、盆地めいた野が点々としている筈なのに……。

 一度だけ、真っ暗な中にたったひとつ、ポツリと電灯の明かりらしきものをはるか遠くに認めることができました。貴州省には失礼ながら、いまでもその地名を聞くと、つい当時の印象的な光景を思い出してしまいます。

 ベタで申し訳ありません。

 山が高いほど谷は深いのではないか。闇はいまなお底知れぬ広さと深さを持っているのではないか。……そんなことを最近、しばしば考えます。




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 広東省汕尾市の農村で昨年の12月6日、土地強制収用に絡んだトラブルに抗議する農民たちを、武警(武装警察=暴動鎮圧用の準軍事組織)が突撃銃で掃射して村民に多数の死傷者(公式発表は3死8傷)が出た事件を御記憶でしょうか?

 その「12.6事件」の舞台となった東洲村がいま現在再び武警約1000名に包囲され、一触即発の緊迫した事態に追い込まれているのです。

 多数の警察車両も出動し外部との往来が遮断されているため、地元当局による実力行使=武力弾圧は時間の問題とみられています。

 「12.6事件」のおさらいはこちらでどうぞ。死傷者数など事件の全容はいまでも謎のままです。

 ●官民衝突で武警が実弾射撃、農民に多数の死傷者。(2005/12/08)
 ●「調和社会」が揺れている。(2005/12/09)
 ●「12.6」事件続報:モデルケースになるのか?(2005/12/21)

 ――――

 先日も紹介しましたが、農村部での官民衝突といえば、その原因は土地収用に絡むトラブルが圧倒的多数を占めます。具体的には、

 (1)地元当局が農民に無断で土地を収用・売却した。
 (2)地元当局が農民に説明した以上の面積の土地を収用・売却した。
 (3)地元当局から土地を購入したデベロッパーが開発を強行。
 (4)地元当局の関係者が売却益の一部を横領。
 (5)農民への補償金が十分でない。
 (6)地元当局が補償金の目安となる土地評価を表向きは不当に低くランク付けして農民への補償金を抑え、現実には内緒で実勢価格で転売し売却益の一部を横領。
 (7)補償金が農民の手に渡るまで地元当局のあちこちでつまみ食いされ、全額が農民に支払われていない。
 (8)土地収用に伴う移転先が耕地に適しておらず、転業を余儀なくされる(しかしわずかな補償金では転業資金にもならない)。

 ……となります。東洲村の場合、「12.6事件」は(1)及び(3)~(5)が該当します。しかも農民たちは耕地を事前に諮られることなく取り上げられた上に、補償金はゼロという極端なケース。

 そこで抗議活動に立ち上がったところ武警から突撃銃の実弾射撃を浴びて死傷者・逮捕者多数を出す破目となったのに対し、当局側は現場指揮官を処罰しただけという大甘裁定です。逮捕された村民は十数名にのぼり、いずれも実刑判決が出ています。

 東洲村の農民たちにとってこの一連の振る舞いを平然とやってのけた地元当局はまさに悪行三昧の鬼畜、中国語でいえばさしずめ「官匪」とでも表現するしかない存在といえるでしょう。

 ――――

 今回の一件はその「12.6事件」の汚職疑惑を引きずった形で発生しました。農民たちは「12.6事件」で流血の惨事を身を以て体験し、逮捕される村民まで出たのになおも屈せず、抗議運動を続けていたのです。耕地を取り上げられて補償金ゼロでは身ぐるみ剥がれて路傍に放り出されるようなものですから、生存を賭けて抗議を続けざるを得ないともいえます。

 事件の発端となったのは実に些細なことでした。土地強制収用に対する村民への補償を求めて運動を続けてきた村民代表の陳簽さんが11月9日、

「反貪官」
(汚職役人にNo!)

 という横断幕を村内に掲げたところ、上級行政部門である紅海湾の公安局(警察署)に連行されたのです。横断幕を掲げて村民たちと抗議集会を開いたためという報道もありますが、いずれにせよ陳さんは警察に拘束されたまま音沙汰なし。

 これに業を煮やした村民たちが翌10日、陳さんの釈放を求めて政府庁舎(東洲街道弁事処)に押し掛けたのに対し、当局はこれを一切無視。「官匪」のこの対応に恨みつらみの蓄積している農民たちは怒りを爆発させ、その場にいた職員8名を拘束して村に連れ帰り軟禁、これを人質として当局との談判に臨もうとしました。

 ところがさすがは「官匪」だけに当局は話し合いを拒否。その一方で、

「陳簽は懲役3年から10年の実刑判決になることが確定しているらしい」

 との噂を振りまき、人質を解放せよと言うこともなく、16日から警官や武警を出動させて東洲村を包囲し、外部との往来を封鎖して村を孤立させる挙に出たのです。

 ――――

 村民代表のひとりは当局のこの行動について、陳さんを釈放せず談判も拒むことで村民を激怒させて人質を虐待するように仕向け、全ての責任を村民におっかぶせようというつもりだと指摘。

「陳さんは虐待されているという噂も流れているが、その手には乗らない。こっちは人質には衣食を支給するなどしてちゃんとした待遇を与えている」

 と米国系中国語ラジオ局「RFA」(亜洲自由電台)の電話取材に答えています。包囲している警官や武警については、

「千人近くいる。いまどこから村に攻め込むか、その場所を探っているようだ。消防車を見たので、連中は去年の12月のように銃を使うことを避け、高圧放水でこっちを撃退するつもりだと思う」

 と指摘。別の村民は村内では電話も遮断され、
「通じるのはIPフォンだけだ」(たぶんSkype)とし、村民の多くは衝突に巻き込まれるのを恐れて外出しようとせず、一方で村民代表を拘束したことに抗議して17日は学校も含めたゼネストに入ったため、村の生産活動はマヒ状態だと話しています。

 RFAは東洲警察署への電話取材も試みたものの、
「知らない」の一言で切られてしまったそうです。

 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2006/11/200611162013.shtml
 http://www.rfa.org/cantonese/xinwen/2006/11/16/china_clash_guangdong/
 http://www.rfa.org/cantonese/xinwen/2006/11/17/china_clash_guangdong/

 ――――

 すでに小競り合いが発生したという情報もあります。

 17日15時ごろ、役人が武装した防暴警察(機動隊)の一隊を引き連れて村内に入り、人質全員の奪還と抗議運動のリーダー格である村民2名の逮捕を企図したというもので、村民たちの多くがこれを目撃したようです。

 一行は村内の後鋪という住宅地まで来たところで、わらわらと飛び出してきた多数の村民に包囲され、衆寡敵せずあえなく退散。

 村民のリーダー格の一人は望楼のようなものがあるのか高台にいるのか、ともかく村全体を見渡せる場所にいて何事かあればドラを打ち鳴らす手筈になっているとのことです。

 人質を軟禁している場所は村の中心部。その一帯は地形が狭まっているため当局側は大軍を展開しようがなく、小部隊で侵入してくれば村民が周囲から反撃しやすいという地の利を選んでおり、農民たちが「12.6事件」の再来に脅えつつも、臨戦態勢を整えていることをうかがわせます。

 http://www.rfa.org/mandarin/shenrubaodao/2006/11/17/dongzhou/

 ――――

 その後、現在にいたるまで新たな情報は入ってきていませんが、警官や武警で村を包囲し、警察車両に加え消防車まで出動させている以上、当局の実力行使は必至かと思われます。

 話し合いを拒否していきなり一触即発の状況をつくり出した「官匪」ですから、高圧放水や催涙弾の使用にとどめるといった甘い期待はしない方がいいでしょう。

 人質を奪還できないとみるや、また突撃銃を乱射して人質と周囲の村民を射殺しておいて、その罪を村民になすりつける可能性もあります。あの「12.6事件」以降、「3死8傷」と逮捕者十数名の中に名前がない村民で、いまも行方不明のままになっている者がいるといわれています。

 この事態が海外で報じられることで広東省当局など上級部門の介入が行われ、合理的な水準での補償金が村民に支払われることを願うのみです。

 ――――

 それにしても「また広東省か」ですね。つい先日順徳市の食糧倉庫包囲事件が起きたばかりです。まあ香港メディアにとっては庭のような場所にあるので割を食っているとみるべきでしょう。同じような事件は全国各地で頻発している筈です。

 例えば四川省・成都市では軍需工場で労働争議(画像あり)。

 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2006/11/200611172332.shtml

 甘粛省・慶陽市の国有企業でも同じく労働争議(画像あり)。

 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2006/11/200611170315.shtml

 いずれも現在進行形の事件です。

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 ついでに10月末に江西省で発生した学生暴動も置いておきますか(画像だけでお腹一杯)。

 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2006/10/200610271052.shtml
 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2006/10/200610271055.shtml
 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2006/10/200610271058.shtml
 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2006/10/200610271100.shtml
 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2006/10/200610271106.shtml

 こうした暴動や官民衝突が各地で頻発するうちに連携が成立し、より大きな動きへ……という展開を期待される向きも多いかと思います。

 いや、当初は私もそれを期待していたのです。……が、むしろ今回紹介した東洲村のケースのように、「官匪」の横暴に対抗して、あるいは「激闘武装農民」のような他村との争いを通じて、村々が個々に自衛せざるを得ない状況下で武装を整えていき、中共による統治機構が末端から腐り始め、秩序が崩れていくのではないかと最近は考えるようになっています。

 その過程で離合集散やら合従連衡が成立して割拠に似た状況が出現してくることになるでしょうが、それにはもう少し時間がかかるように思います。

 一方の都市部は流民次第です。要するに失業率。失地農民や出稼ぎ農民、就職浪人や「4050」と呼ばれるリストラされた中高年層などの中から、「その日暮らし」の境遇に墜ちていく者が増えていくほど可燃度が高くなります。

 ……つい余談に流れてしまいました。東洲村の件は続報待ちです。地元当局が展開させた治安部隊を撤収させない限り、早晩事態に変化が訪れることになるでしょう。




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「上」の続き)


 この外交部のパワープレイを補強するかのように、電波系反日基地外紙『環球時報』が、

「中米将軍が斬る:米紙のいわゆる『中米海軍ニアミス』は荒唐無稽」

 なる記事を掲載し、それが国営通信社の電子版「新華網」に転載されています。最近は反日電波が弱めで元気のない印象の同紙ですが、反日報道ではないにせよ、この記事は久しぶりに電波ゆんゆんの楽しい内容となっています(笑)。

 ●「新華網」(2006/11/16/08:21)
 http://news.xinhuanet.com/mil/2006-11/16/content_5335849.htm 

 この記事はまず『ワシントン・タイムズ』紙の報道を根拠のない報道として、

「同紙が引用している『国防省筋』のコメントが具体的に誰のものなのか不明」

「『国防省筋』だけでは根拠が弱いと懸念したのか軍事専門家まで引っ張り出している」

 とバッサリ。事件を事実としたファロン司令官については知らないのか知らないフリをしているのか、全く言及はありません。要するに「なかったこと」なのです。

 その上でこの事件報道を
「対中警戒感を煽るもの」と決めつけているのですが、この物言いだけは荒唐無稽ではなく、『産經新聞』電子版が、

「中国海軍は軍備の拡充を急速に進めてきたが、米空母を狙った今回の挑発的な行動は、ガス田開発の進む東シナ海や台湾海峡など、日本周辺で不測の事態を招く懸念を浮き彫りにした」

 としたように、これによって米軍ひいては米政府内においても「やっぱり中国は危険な国家」とする対中強硬派(台湾擁護派と一部重なる)が台頭しかねません。……でも実際にやっちゃっている訳ですから、いくら吠えても国内向けの念仏にしかなりません。

 ――――

 ところが、この記事の白眉は後半部にあるのです。『ワシントン・タイムズ』紙の報道を「荒唐無稽」と斬って捨てた筈なのに、

「(事件が)事実かどうかを別にして」

 と言い出し、事件が発生したとされている現場は公海上なのだから、そこを中国潜水艦を含むどの国の軍艦や民間船舶が航行しようと自由ではないか、と主張し始めるのです。

「一万歩譲ったとして、たとえ中国潜水艦が本当にその海域に出現したとしても、いかなる国際法にも違反していない」

 ……だ、そうです(笑)。そして恐らくここからがこの記事の核心部ではないかと思うのですが、

「米国の空母戦闘群は世界最強のシーパワーを誇っており、世界最高の対潜装備を擁している。そんな先進的な艦隊が、(『ワシントン・タイムズ』紙の報道によれば)よりによって中国でも最新型とはされていない『宋』級潜水艦にかくも至近距離での追跡を許していながらそれに全く気付かずにいた、ということになる」

「相手に探知されていないまま追跡している状況下で、中国海軍の潜水艦があろうことか『自ら水面に浮上し』たというのは最も理解に苦しむところだ。たった1隻の潜水艦が自らその姿をさらし、5マイルと離れていない距離で、強大な空母戦闘群と対抗する。これはどうもお伽話めいてはいないだろうか?」

 ……と念入りに畳みかけます。最後に米中軍事交流をうたい上げてこの記事は終わるのですが、その手前にこの嫌味ったらしい余計な部分があるために、どうもこの記事には中共政権内あるいは人民解放軍における対外強硬派が、ペロリと舌を出してこっそりガッツポーズをしている、といった気配が漂うように思えてなりません。

 国内向けの念仏でしかないのですが、その一方でわかる者にはわかる、一部の国民には溜飲の下がる思いをもたらしてくれる記事という香ばしさがあります。なかなか秀逸な「電波」ではないかと。

 ――――

 もちろん、『環球時報』報道を「こっそりガッツポーズ」説とすることには一応根拠めいたものがあります。中国人権民主化運動ニュースセンター(中国人権民運信息中心)が発表した追加情報です。

 ●『明報』電子版(2006/11/15/17:10)
 http://hk.news.yahoo.com/061115/12/1wh3u.html

 その情報いわく、

「中国潜水艦がキティホーク戦闘群の後をつけたのは、丁一平・海軍副司令員が直々に指揮したものだった」

 というのです。中国人権民主化運動ニュースセンターは消息筋の話として、

 ●今回の一件は中国海軍が南海艦隊第32支隊の宋級潜水艦にキティホーク戦闘群を追跡させたもので、丁一平・海軍副司令員が自らこれを指揮した。
 ●丁一平・海軍副司令員はすでに海軍の様々な重大行動の最重要指揮官になっている。

 ……と指摘しています。

 この消息筋によれば、丁一平・海軍副司令員が今年9月に海南省・三亜市へと赴いた後、問題の潜水艦が海南省・楡林海軍基地から姿を消し、10月26日になってキティホーク戦闘群の後方5マイルに突如浮上したとのこと。

 「自ら指揮」というのが丁一平・海軍副司令員が自ら問題の潜水艦に乗り組んでいたという意味なのかどうかは不明ですが、この当年とって65歳の「一平」君には何かありそうなのです。

 消息筋によると、1988年に少将へと進級した一平君は当時中国海軍において最も注目株の将官とされていたのが、2003年4月に潜水艦事故で乗員70名が死亡するという不祥事が発生し、運悪くちょうど事故を起こした北海艦隊の司令員職にあった一平君は責任を問われて降格する破目に。

 ところが今年8月に一転、海軍副司令員に抜擢されるという異例の人事が行われ、3年後には中国海軍司令員(中国海軍のトップ)になるだろうと目されているそうです。

 ――――

 この情報の確度は不明ですが、この説を採るとすれば、事態の輪郭のようなものがぼんやりとみえてくるようでもあります。

「すでに海軍の様々な重大行動の最重要指揮官になっている」

 というこの丁一平・海軍少将が、

「中国海軍は軍備の拡充を急速に進めてきたが、米空母を狙った今回の挑発的な行動は、ガス田開発の進む東シナ海や台湾海峡など、日本周辺で不測の事態を招く懸念を浮き彫りにした」

 という状況をもたらした張本人(直々に指揮)なのであれば、上で紹介した『環球時報』の余計とも思える誇らしげな嫌味(勝利宣言?)も意味を持つことになります。

 そして、いまや海軍を一手に切り盛りするとされるこの丁一平・少将が、米太平洋艦隊司令官のラフヘッド大将が訪中するというタイミングを狙って、まさに挑発としかいいようのない無用の行為を直接指揮したのであれば、これはどうみても海軍部内の対外強硬派、ということになるでしょう。

 同少将が軍主流派に属しているかどうかは不明ですが、今回のアクションが軍主流派及び軍主流派に支持されている最高指導者の胡錦涛・国家主席(中央軍事委主席=人民解放軍のトップを兼任)の意向に沿うものでないことは明らかです。

 ――――

 さらに、尖閣諸島が中国領であることを主張する香港の保釣運動活動家(自称)どもが10月末に尖閣諸島に向けて船出した際の出来事を想起すべきです。

 連中を乗せた小型漁船「保釣二号」は悪天候下の台湾海峡を強行横断したために機関を破損するなどヨタヨタとした足取りのドタバタ劇を演じた挙げ句、最後にはわが海上保安庁の巡視船によるお約束の公海処刑に遭って退散したのですが、この間、同じ東シナ海、しかも尖閣諸島から300kmという近距離で中国海軍(東海艦隊)が実弾射撃演習をしています。

 陣頭指揮だったかどうかはともかく、もしこれも丁一平・少将の独断専行なのであれば、その政治色がいっそう鮮明なものとなります。

 当ブログの図式でいえば、「擁胡同盟」(胡錦涛擁護同盟同盟)とは一線を画し、むしろそれに背くようなアクションを積極的に繰り返していることから、丁一平・少将が「反胡連合」(反胡錦涛諸派連合)に与している可能性が濃厚、といえるのではないでしょうか。

 今年8月に行われた破格の抜擢人事は、「反胡連合」との政治的駆け引きの中で「擁胡同盟」が行った妥協のひとつなのかも知れません(妥協例の最たるものは『江沢民文選』の刊行とその学習活動)。

 ――――

 ……以上は私の下衆の勘繰りに過ぎませんが、もし事実がその通りなら、「反胡連合」の主力であった上海閥を機能不全に追い込み、さらに戦果拡大を狙って掃討戦を展開している「擁胡同盟」に対して「反胡連合」が一矢を報いた、ということになるでしょう。

 かつて胡錦涛の提唱する「科学的発展観」と「和諧社会」(調和社会)をビジュアルで具現化した画期的なオブジェが蘇州市に出現したというあの劇的な出来事に際して私は、

「軍部の非主流派に属する電波系対外強硬派(劉亜州中将など)が知的財産侵害という大義名分を掲げ、軍事クーデターをも視野に入れた突発的かつ硬質的な行動に出るのではないかという見方が香港の観測筋では広がっています」

 と書きました。攻め口こそ知財方面ではありませんでしたが(笑)、電波系対外強硬派はいまなお一定の力を有している、とみるべきなのかも知れません。

 しかも実戦部隊を握っているという点においては、突如として鉄砲玉的な挙に打って出る可能性が常にある訳で、放置しておけばその活火山的な役回りは外交・内政を問わず「擁胡同盟」の痛点として存在し続けることになるでしょう。

 それとも実は全く逆で、胡錦涛が丁一平・少将を使って手の込んだ芝居を打ってみせた、ということなのでしょうか。材料に乏しいため、ここから先はさすがに勘繰ることすらできません。

 ――――

 ちなみに、胡錦涛の御用新聞である『中国青年報』を出典とした「早期警戒機は必要不可欠」と主張する空軍指揮学院に所属する大佐へのインタビュー記事と領空侵犯機に対するスクランブルやその訓練に余念のない実戦部隊の様子を描いた記事、私は原典に当たれずどちらもいつ掲載されたものなのかは不明ですが、これが今回の騒ぎの最中である11月15日、「新華網」に相次いで転載されています。

 ●「新華網」(2006/11/15/07:49)
 http://news.xinhuanet.com/mil/2006-11/15/content_5330684.htm

 ●「新華網」(2006/11/15/08:01)
 http://news.xinhuanet.com/mil/2006-11/15/content_5330780.htm

 いずれも出典が胡錦涛の御用新聞ということと、その内容が『中国青年報』にしてはちょっと場違いな印象を受けるという点において引っかかる記事ですが、今回の一件と何らかのつながりがあるのかどうかはわかりません。




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 毎年のことながら、11月も半ばを過ぎると年末商戦だの正月休暇確保といった日本側の都合によって私の仕事(本業)が急に忙しくなってきます。

 俗にいう「年末進行」というやつですが、香港・台湾側はクリスマスでひと波きたあとに日本サイドが休暇を満喫しているお正月期間は通常勤務(元日だけ公休日)。ピークは旧正月にやってきます。

 ……ええ、割を食うのはいつも私ひとりだけです。日本側の「年末進行」に付き合って疲労困憊で迎えるお正月期間には香港・台湾側から入ってくる仕事を泣く泣く片付け、息つくヒマもなく今度は旧正月を控えた香港・台湾側の「年末進行」、これには副業(週刊誌の中文コラム)も巻き込まれます。

 そして連中が旧正月の休みを満喫している間、日本側は正月気分も抜けて通常勤務のため私は、私は……。orz

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 要するに本格的に忙しくなってきたと言いたいのです。

 ところが中国は農閑期の関係もあってただでさえ農村部が不穏になりがちなのに、「都市暴動」やら「お犬様デモ」やら「黄菊」やら急に雲行きの怪しくなった「中印関係」やら今回の「キティ」やら……どうも最近は材料が豊富で、時間的余裕のないこちらは消化するのが難しく、つい後ろから追いかける形になってしまいます。

 もう私の方がプカリと浮上したいですキティホーク後方8kmに。いやもちろん沖縄近海指定で。色々なモノがプカプカしていて栄養満点な珠江だけは勘弁。黄埔江や蘇州河も嫌です。上海の方は喧嘩に負けた罰ゲームで陳良宇や黄菊に泳いでもらいましょう。すでに腐海状態の渤海湾はもちろん地元の温家宝、お前が担当だ。SK-IIを重金属扱いした祟りだと知れ。

 閑話休題。

 ――――

 ●中国潜水艦が追跡 射程圏内も米空母気づかず(Sankei Web 2006/11/15 02:02)
 http://www.sankei.co.jp/news/061115/kok003.htm

 【ワシントン=山本秀也】沖縄近海の太平洋上で10月末、米海軍空母「キティホーク」が中国海軍の通常型潜水艦の追跡を受け、魚雷などの射程圏内に接近されても探知できなかったことが14日までに分かった。米太平洋軍のファロン司令官が、米メディアの報道を確認した。中国海軍は軍備の拡充を急速に進めてきたが、米空母を狙った今回の挑発的な行動は、ガス田開発の進む東シナ海や台湾海峡など、日本周辺で不測の事態を招く懸念を浮き彫りにした。

 AP通信によると、クアラルンプール訪問中のファロン司令官は14日、沖縄近海を航行していたキティホーク戦闘群が中国潜水艦の接近を受けたことを確認。
(中略)

 13日付の米紙ワシントン・タイムズは、米国防総省当局者の話として、キティホークが先月26日、中国潜水艦の追跡を受けた末、哨戒機が後方約8キロの水上に浮上した潜水艦を発見するまで探知できなかったと伝えた。
(後略)

 ――――

 上の記事は11月15日のものですけど、香港や台湾では『ワシントン・タイムズ』紙の報道を受けて13日夜にはネット上で第一報が流されています。例えば香港紙『明報』の電子版。

 http://hk.news.yahoo.com/061113/12/1wbg7.html

 事の次第は上の通りです。「キティホーク戦闘群」というからには護衛艦艇が随伴し、上空には直衛戦闘機や対潜ヘリが飛んでいて、あるいは攻撃型潜水艦まで連れていたかも知れません。

 その後方わずか8kmに中国潜水艦がいきなり浮上するというのは、気付かぬフリをしてわざと泳がせていたのでなければ、潜水艦の兵装からしてその射程圏内に入ってくるまで接近を探知できなかったということで、米海軍の大失態ということになります。

 ちなみにこの潜水艦は原潜ではなく通常動力型の「宋級」と呼ばれるタイプ。名前からすると騎馬民族に弱そうですね(笑)……それはともかく、当の米軍関係者(ファロン司令官)が認めているのですから実際に発生した事態なのでしょう。

 ところがです。どうやらこの「事件」をスルーしたい筋、ひいては「なかったこと」にしてしまいたい筋、逆に殊更に騒ぎ立てたい筋とこっそりVサインをしてみせる筋などがあって、何やら複雑な様相を呈しています。

 ――――

「米空母を狙った今回の挑発的な行動」

 をスルーしたいのは、まずは対中軍事交流促進(具体的には米中合同海難救助演習の下準備)のため訪中している米太平洋艦隊司令官のゲリー・ラフヘッド大将でしょう。打ち合わせ中に当の相手から挑発行為をされてはメンツ丸潰れです。

 例えば米軍内部において、中国の軍事的台頭という状況について強硬派と穏健派がいるとすれば、合同演習といった軍事交流促進の旗振り役といった役どころのラフヘッド大将は、さしずめ穏健派サイドといったところでしょう。

 それが人民解放軍のゲストとして訪中している真最中にこんな事件を起こされては、個人的に恥をかかされたも同然ですし、反対派を勢いづかせることにもなります。その交流促進路線にもヒビが入ることになりかねません。

 ヒビ割れるのを避けるためには、ノーコメントでスルーするしかありません。中国側と握手しつつ、何事もなかったかのように引きつった笑顔を保ち続けなければならないのです。それを代弁するかのように中国外交部から声明が出ています。ラフヘッド大将へのエールとみてもいいでしょう。

 ●米軍高級将官の訪中は両軍の信頼関係向上に寄与する(新華網 2006/11/16/19:33)
 http://news.xinhuanet.com/world/2006-11/16/content_5339287.htm

 ――――

 ゲストに恥をかかせる非礼=自らの手落ち、とされるうえ、対中警戒論の台頭を何としても回避したい中共政権は、さらに一歩踏み込んで、米軍側が事実と認めている事件を「なかったこと」にするというパワープレイに出ました。11月16日の外交部報道官定例会見でのことです。

 担当は姜瑜報道官(♀)。熊のような猛々しい前髪に気魄を感じさせる鋭い眼光、そして近藤勇を彷佛とさせる岩をも砕かんばかりのがっしりとしたアゴ。……と非の打ち所のないパーツを揃えているのですから、いくらスカーフをあしらっているとはいえ胸元の開いたスーツで肌を見せるのは逆セクハラではないかと。

 ともあれその会見における肝心の部分です。

 記者
「中国潜水艦が米空母『キティホーク』戦闘群を追跡した状況について確認をとりたい。この件について中国側から最新状況を説明してもらえないだろうか。また中国海軍はなぜこのような挙に出たのか?」

 姜瑜
「われわれは『ワシントン・タイムズ』の関連報道が事実ではないと理解している」

 ……はい撤収。斬って捨てたようなこの一言でおしまいにできる面の皮の厚さはさすがに中共ならでは、としかいいようのない力技です。要するに「なかったこと」だと強弁した訳ですね。

 それに続いて、ラフヘッド大将がいかに友好的に訪中日程を消化してきたかという質問されていない余計な話(上述の「米軍高級将官の訪中は両軍の信頼関係向上に寄与する」)をして、ゲストである同大将と招待主である人民解放軍ひいては中共政権のメンツを守った形での強引な幕引きとなります。

 ●「外交部ウェブサイト」(2006/11/16)
 http://www.gov.cn/xwfb/2006-11/16/content_444863.htm

 ――――

 もっとも、同じ中国でも「特別行政区」である香港ではファロン司令官が事件を事実と認めたとするAP通信電が間を置かずに報じられており、

「今回、空母戦闘群は対潜戦闘演習を含まぬ訓練を行っていた。もし対潜戦闘訓練中に中国潜水艦を発見していれば、いつ不測の事態にエスカレートしてもおかしくない状況だっただろう」

 というファロン司令官のコメントまで添えられていました。

 ●明報電子版(2006/11/14/14:05)
 http://hk.news.yahoo.com/061114/12/1wdf2.html

 それが外交部報道官定例会見の2日前ですから、中共政権のトボケっぷりもなかなか見事なものです。もっとも外交部が、

「われわれは『ワシントン・タイムズ』の関連報道が事実ではないと理解している」

 という一言で済ませたのは、それ以上に言葉数を費やせばいよいよ道化役めいてくることを自覚していたからかも知れません。


「下」に続く)




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 いや、本当はブログなど書いている気分ではないのです。

 今日(15日)は恩師と15年ぶりに再会して双方感無量、そして先日初めて連絡がついてから数日おきに電話し合って色々な話を交わしてきたのと同じように、今回はお昼を御馳走になったあと恩師宅に招かれて様々な話題に興じました。

 例えば人の噂話ひとつとっても、人間観察の鋭い恩師の手にかかると私にとっては非常に貴重な話柄となり、物事をみる視点や角度について大変参考になります。香港に渡って以来、そういう「学べる環境」に餓えていた私にはとてもとても有意義な一日でした。

 で、恩師と再会する前日に私は身ぎれいにしておこうと馴染みの散髪屋でいつもの人にカットしてもらったのですが、鋏を入れる早々、
「私は尊王攘夷派ですよ」というその人いわく、

「御家人さん、中国で暴動があったようですね。NHKのラジオのニュースで言っていましたよ」

 と言うのです。私は思わず、

「えっ暴動?……どの暴動ですか?」

 と反射的に応えてしまいました(笑)。広東省・順徳市で起きた農民約1万人による食糧倉庫包囲事件、そして前回紹介したトウ小平の故郷である四川省・広安市で発生した都市暴動、さらに福建省で農村暴動が発生したのです。しかも同じ日に北京では無許可デモが勃発しています。

 ――――

 まずは福建省の農村暴動からいきましょう。……暴動というよりは「官民衝突」と表現する方が適切かも知れませんけど。

 農村暴動といえば「激闘武装農民」のような伝統的な村同士の喧嘩「械闘」を別とすれば、土地収用に絡むトラブルが圧倒的多数を占めます。具体的には、

 (1)地元当局が農民に無断で土地を収用・売却した。
 (2)地元当局が農民に説明した以上の面積の土地を収用・売却した。
 (3)地元当局から土地を購入したデベロッパーが開発を強行。
 (4)地元当局の関係者が売却益の一部を横領。
 (5)農民への補償金が十分でない。
 (6)地元当局が補償金の目安となる土地評価を表向きは不当に低くランク付けして農民への補償金を抑え、現実には内緒で実勢価格で転売し売却益の一部を横領。
 (7)補償金が農民の手に渡るまで地元当局のあちこちでつまみ食いされ、全額が農民に支払われていない。
 (8)土地収用に伴う移転先が耕地に適しておらず、転業を余儀なくされる(しかしわずかな補償金では転業資金にもならない)。

 ……といったケースのいずれかに相当します。

 ――――

 先日紹介した広東省順徳市・三洲村の食糧倉庫包囲事件は暴動というほどではありませんでしたが、(1)~(5)が該当しています。

 近年の農村暴動としては最大級の県レベルで発生した四川省・漢源農村暴動()には武警あるいは武警の制服を着用した人民解放軍2個師団が投入され鎮圧に当たったとされています。この暴動は(1)及び(4)~(8)が該当しています。

 そういえば、この漢源暴動については反政府系タレ込みニュースサイト「博訊網」がこのほど現場写真を公開しました。

 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2006/11/200611151524.shtml
 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2006/11/200611151521.shtml

 汚職の手口などについては下記エントリーを御参照頂ければ幸いです。

 ●悪魔の錬金術(2004/12/19)
 ●庶民も国家も食い物にする連中。(2005/07/29)

 ――――

 代々受け継いできた耕地から引きはがされ、移転先で日雇い労働者に身を堕とす「失地農民」も、出稼ぎにきたものの仕事の見つからぬ失業出稼ぎ農民も「流民」同様です。

 2008年には北京五輪が開催される予定ですが、過去どの開催国も、オリンピック直後には必ず建設需要の大幅減による不況に見舞われています。東京オリンピックも例外ではありませんでした。ただ当時の日本は高度成長期にあったため、ハイペースの経済成長が不況を吸収し、成長率に影響した程度で済んでいます。

 中国も同じように五輪直後不況を乗り切れるかどうかは疑問です。仕事が減る訳ですから現在以上に失業者が増えることになるでしょう。当然ながら出稼ぎ農民の流民化も進むことになります。

 このためか、政府は第11次5カ年計画(2006~2010年)における平均失業登記率を
「5%以内に抑える」と、現在の4%強からみれば弱気な……あるいは悲観的な目標を設定しています。

 ――――

 ……ああ農民暴動の話でした。今回の舞台は福建省甫田市・新度鎮の頂◆村(◆=「厘」の「里」の部分が「昔」)で、やはり前々から揉めていたケースです。

 今年8月、新度鎮に変電所建設プロジェクトが持ち込まれ、頂◆村からも60ムー(1ムー=6.7アール)が収用されることになりました。当局はこの60ムーについて、影響を受ける農民に対し1ムー当たり3万元の補償金を出すと表明。しかし村民の代表者は、

「政府が事前に村民に説明しなかった」
「正規の法律手続きを無視した事務処理」

 ……としてこれに反対、関係部門への陳情を重ねてきましたが、当局からは前向きな回答を得ることができませんでした。

 事件が起きたのは11月11日午前です。政府部門の担当者が突然現れて収用地の測量調査に着手。これを見た農民約30名が飛び出して作業を阻止したところ、約1時間余りのにらみ合いを経たところで呼ばれて出てきたのが武警さん(武装警察=内乱鎮圧用の準軍事組織)。それも100名以上が現場に到着です。

 あとはもうお約束の展開。武装していない農民たちを警棒と防盾を手にした武警が村手当たり次第に殴打して回り、村民十数名が負傷、その場に昏倒する者も多数出て、甫田市医院に運ばれて手当を受けました。一部は重傷者で、重体者も1名。

 ――――

 このニュースを報じた香港紙『太陽報』が新度鎮政府弁公室に電話取材したところ、「事情が複雑で説明できない」とコメントを拒否。同鎮派出所(警察署)もノーコメントだったとのこと。

 ●『太陽報』(2006/11/14)
 http://the-sun.orisun.com/channels/news/20061114/20061114014835_0000.htm

 生々しい現場写真などは「博訊網」で見ることができます。殴打され昏倒したのか畑に倒れ伏して動かない農婦の写真からいきなり始まるインパクト抜群の写真集となっています。

 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2006/11/200611151417.shtml

 この農村での官民衝突は(1)~(3)に加え(5)が該当しているように思えます。ただし、農民側が補償金の上積みを狙ってゴネているという可能性もあります。

 ――――

 上記福建省て発生した官民衝突が11月11日、この日は四川省・広安市の都市暴動が進行中でもありました。それだけではなく、同じ日に北京では無許可デモが行われています。ただし「お犬様デモ」という脱力系示威活動なんですけど。

 香港紙『明報』の報道によると、北京市当局が狂犬病蔓延防止のため行っている野良犬捕獲・処分や、「ペットで飼う犬は1世帯1匹に限定」といった措置に反発した北京市の愛犬家2000名近くが11日、北京動物園入口前に集まって北京市当局関連部門に「これ以上犬を殺すな」とシュプレヒコール。

 この集まりはネット上で「午前11時に北京動物園入口前に集合」と告知されて行われたもので、それで2000名近くが集まったという事実には驚かずにはおれません。これもお犬様可愛さ故のことなのでしょうか、ネット上でのみ咆哮する糞青(自称愛国者の反日信者)もビックリの動員力です。

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 経緯を詳しく説明しますと、北京市当局は中国国内の一部で狂犬病が蔓延していることに鑑み、市民がペットとして犬を飼う行為に10月下旬から厳しい制限を設け、

 ●野良犬は捕殺。
 ●市内で身長35cm以上の犬を飼育するのは禁止。
 ●犬を飼うのは1世帯当たり1匹に限定。

 ……といった措置を実行に移してきました。五輪開催地としての安全確保という意味合いもあるのでしょうが、愛犬家がこれに猛反発して今回のデモ(というか集会?)となりました。

 この事態を受け北京市公安局は「無許可の非合法集会」と認定、やはりネット上での情報に拠ったとみえて集合場所に警官数百名を以て待ち伏せ、参加者や取材中の記者を次々に拘束。午後3時15分までに騒ぎを終息させたとのことです。

 北京でこれほど大規模な民衆運動が自発的に発生するのは珍しく、AP通信、ロイター通信、BBCなどがこれを報道しましたが、中国国内系メディアには報道統制が敷かれたとみえて関連ニュースは全くなし。

 ネット上でのペット関連の掲示板やチャットでデモに言及しているものもサクサクと削除し、中国国内からもみることのできる香港の親中紙『大公報』のウェブサイトが掲載した関連ニュースに対しても記事標題をクリックすると「The page cannot be found」とつれない反応。

 ●『明報』(2006/11/13)
 http://hk.news.yahoo.com/061112/12/1w88a.html

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 かたや手塩にかけた畑を渡すまいと身体を張って武警と格闘する農民、その一方で首都・北京では飼い犬規制に反対するデモ。……何なんでしょう、これ?

 正直、このギャップをどう表現すればよいのか言葉に迷います。




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「上」の続き)


 さて、このニュースが大手ポータル「新浪網」(sina.com)のニュースサイトに掲載されたのは翌12日の朝。
「広安の幼児が広安の幼児が誤って農薬を飲み死亡」というタイトルで、記事内容もほぼ同じです。

 ……が、ただ一点、「上」で紹介した当局発表第一報では、

「遺族が死亡に至る経緯に疑問を呈したため、広安市党委員会、広安市政府はこれを極めて重視し……」

 となっていたのが、

「遺族が死亡に至る経緯に疑問を呈し、
また過激な行為を誘発したため、広安市党委員会、広安市政府はこれを極めて重視し……」

 ……と、何やらひと騒ぎあったことを想像させるものとなっています。さすがに暴動について頬被りはできなかったのでしょう。そして、これが現在に至るまで当局発表の定番となります。

 ●「新浪網」(2006/11/12/07:59)
 http://news.sina.com.cn/o/2006-11-12/075910474561s.shtml

 ●「南海網」(2006/11/12/10:14)
 http://www.hinews.cn/news/system/2006/11/12/010044690.shtml

 ●「深セン新聞網」(2006/11/12/13:50)
 http://www.sznews.com/news/content/2006-11/12/content_530763.htm

 ●「今視網」(2006/11/13/08:29)
 http://www.jxgdw.com/jxgd/news/sw/userobject1ai683380.html

 ●「国際在線」(2006/11/13/09:59)
 http://gb.chinabroadcast.cn/8606/2006/11/13/106@1299561.htm

 ●「中国経済網」(2006/11/13/10:37)
 http://www.ce.cn/xwzx/gnsz/gdxw/200611/13/t20061113_9394027.shtml

 ●「中国広播網」(2006/11/13/14:44)
 http://news.sina.com.cn/c/2006-11-13/144410485178s.shtml

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 ところが、「上」で紹介した香港紙『星島日報』のように、香港やシンガポールの親中紙『大公報』『聯合早報』の電子版では「官民衝突があった模様」「死者が出たとの報道も」といったニュースが流れています。これは中国本土からアクセス可能なサイトだったと思うのですが……とりあえず以下の記事が見当たりました。

 ●四川広安で官民衝突が発生した模様(聯合早報網 2006/11/12/11:35)
 http://www.zaobao.com/special/realtime/2006/11/061112_12.html

 ●四川当局は病院の「まずは診療費全額払え」を否定(聯合早報網 2006/11/13/06:00)
 http://www.zaobao.com/special/realtime/2006/11/061112_34.html

 ●四川で官民衝突、死者4名との報道も(聯合早報網 2006/11/13/08:32)
 http://www.zaobao.com/zg/zg061113_509.html

 ●四川広安で官民衝突、省政府が専門調査チーム派遣(大公報 2006/11/13/08:57)
 http://www.takungpao.com:82/gate/gb/www.takungpao.com/news/06/11/13/ZM-649932.htm

 ただ『大公報』電子版では「四川広安で官民衝突か」「死者が出たとの報道も」など数本の記事が削除されていました。

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 今回の暴動に関していえば、広安市当局の対応のマズさが騒ぎを大きくしてしまったように思います。

 遺族の陳情を拒んだことではなく、警官、防暴警察、武警と治安部隊を小出しにしたため、出動した部隊が現場に着くなり各個撃破されてしまうという、いわゆる「兵力の逐次投入」というタブーを犯していることです。

 さて、冒頭で「都市暴動のセオリーともいうべき形を踏んでいる」としたように、今回の広安都市暴動は過去の都市暴動との共通点がいくつも見当たります。簡単にまとめると、

 (1)衆人環視のもと、社会的弱者が党幹部や富裕層から不条理に虐げられる
 (2)野次馬が憤激し、怒りが暴動へと発展する

 という展開です。今回は「死亡したのが幼児で両親が出稼ぎにでるような決して裕福ではない家庭」という弱者に対し「カネ優先で患者を見殺しにした鬼畜な病院」「被害者の陳情に耳を貸さなかった地元政府」が加害者、という構図になっています。

 重慶市・万州区暴動(自称幹部が日雇い労働者に暴行)、安徽省・池州市暴動(病院長の乗った車が中学生に接触、負傷した中学生が抗議したところ病院長の用心棒に暴行される)がよく似たケースといえるでしょう。

 ●速報:重慶で暴動発生!(2004/10/19)
 ●重慶暴動に思う(2004/10/20)
 ●続々・重慶暴動(2004/10/21)
 ●重慶暴動の真相(2004/10/28)
 ●来ました都市暴動!失地農民の都市版も。(2005/06/28)

 暴動に発展するエネルギー源は何かといえば、まずは弱者への同情があるでしょうが、それよりも大きな要素として「官」の横暴に対する反感や怒りがあるかと思います。これは党幹部や富裕層が普段から偉そうに振る舞っていることに対する反発が蓄積されたものなので可燃度は高いです。

 もう一点あげるとすれば、積もり積もった鬱屈をひと暴れして発散させたい、といったところでしょうか。

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 これとは別のパターンもついでに挙げておきますと、「種族衝突」(湖南人vs広東人など)が都市で発生するケースです。

 ●速報:広東省東莞市で暴動発生!(2004/12/26)
 ●広東省東莞暴動(2):当局公認バージョン(2004/12/28)
 ●湖南省で住民同士の衝突が暴動に、武警発砲で死者100名?(2006/08/07)

 こちらは出稼ぎやダム建設などによる移転でよそ者がまとまって住み着くようになることで元々の住民との間に反目が生じるパターン。

 いずれも改革・開放政策が生み出した新事象といえるかと思いますが、今回それが同政策の設計者かつ推進者だったトウ小平の故郷で起きてしまったのは皮肉としかいいようがありません。




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 1週間近く前の事件をいまさら……という気もするのですが、メディアが反応したのは数日前になってからですし、標題の通り都市暴動のセオリーともいうべき形を踏んでいるのでスルーする訳にはいきません。

 一応日本でもタイムリーに報道されています。香港各紙の報道を待つことなく、中国人権民主化運動ニュースセンターのプレスリリースで記事にしてしまう度胸には脱帽です。

 ●中国の病院で2000人暴れる(nikkansports.com 2006/11/11/23:30)
 http://www.nikkansports.com/general/f-gn-tp0-20061111-115897.html

 香港の人権団体、中国人権民主化運動ニュースセンターによると、中国四川省広安市で10日、市内の病院に入院した幼児が死亡したのをきっかけとして住民ら2000人以上が病院に押し掛け、病室などを破壊する騒ぎが起きた。

 警察官約100人が出動し、住民ら約10人が負傷、5人が拘束されたという。

 中国では医療費の高さや医療過誤の多発が社会問題になっているが、同市でも医療事故が続発、住民の不満が高まっていたという。幼児は7日に発病、病院に運ばれたが突然死亡したという。広安市は故トウ小平氏の出身地として知られている。

 ――――

 そうです舞台はトウ小平の故郷である四川省・広安市。事件の発端は11月7日説と11月8日説があるのですが、ここは当局発表に沿って7日とします。その11月7日午後、「孫が誤って農薬を飲んでしまった」と祖父が4歳の男の子を抱いて同市・広安第二人民医院に駆け込んできました。

 ところが医師は、

「胃の洗浄を行う必要がある。診療費は800元だ」

 と言って、老人の手持ちの現金が100元余りでしかないと知ると診療を拒否。

「残金はすぐに家から持ってくるからまず孫を治療してくれ」

 という祖父の願いに一切応じず、

「まず診療費を揃えてからだ」

 の一点張り。とりあえず老人の持ち合わせの100元分の治療、ということで竹べらを男の子の喉に突っ込んで農薬を吐き出させようとしたものの男の子は嘔吐せず、胃の洗浄が行われぬまま男の子は死亡してしまったのです。

 ――――

 事態が動いたのは11月9日。外地へ出稼ぎに出ていた男の子の両親が帰郷して死亡に至る経緯を知り憤慨。病院側の冷酷な扱いが真の死因だ、として広安第二人民医院の玄関前に葬儀用の花輪を置いて病院側に3万元の賠償金を求めたものの、病院側が支払ったのはわずか500元。

 このころになると周囲を野次馬が取り囲み、事件のいきさつを知って取り巻き連中の間にも同情と病院側に対する怒りが広がっていきました。警官が出て来て交通整理に当たったほどです。

 その翌日である11月10日、病院側が冷たい態度を一切変えようとしないことに憤った両親らは、男の子の遺体とともに政府庁舎へ陳情に赴きました。ところが、警備員が庁舎へ入ろうとする遺族の行く手を阻み、さらに遺族に殴る蹴るの暴行。このときも大勢の野次馬がゾロゾロとついてきていたのですが、その中にいた高校生たちが見かねて割って入り、ちょっとした乱闘になったようです。

 そしてその夜に騒ぎが暴動に発展します。病院の冷酷な対応と事件に対する措置を講じない地元当局への怒りがヒートアップし、群衆が広安第二人民医院の前に押し寄せました。これには近くにある高校の生徒が憤激して多数参加しており、暴動の主力となった模様。

 ――――

 ともあれ事態は高校生を中心とする群衆が病院の建物の一部を破壊したり施設に放火したりする暴動に発展。警官隊が駆けつけましたが数に優る群衆に逆襲されて警察車両を焼かれる騒ぎに。

 当局は続いて防暴警察(機動隊)、さらに武警(武装警察=暴動鎮圧用の準軍事組織)を投入し、催涙弾を発射。その後白兵戦となって衝突は11日の明け方まで続き、11日朝の時点ではなおも多数の市民が現場に残り、防盾を並べて病院前を固めた警官隊とにらみ合いの状態が続いていたとのこと。また、8時半には武警を乗せた軍事車両とバスが現場に到着したそうです。

 この衝突で学生3人・警官1名が死亡し、20数人が逮捕された一方、警察車両3台が焼き討ちにされたという口コミが市民の間に広まっていますが、広安市政府は11日、地元テレビ局を通じて噂は事実無根だと表明。また病院側は自分たちに責任はないものの見舞金として500元を遺族に手渡し、司法を通じての解決を提案したが遺族側がこれを拒否したことで騒ぎが起きたともテレビ局は伝え、「警察は学生を拘束してもいないし殴ってもいない」と強調したようです。

 香港紙『星島日報』(2006/11/12)の記者が11日、広安市公安局に電話したところ「いま調査中で内容は公開できない」との回答。その後事態がどう進展したかはいまなお不明のままです。地元当局が広安市と外部との連絡を遮断するという措置をとったためだという説もあります。

 http://www.singtao.com/yesterday/chi/1112eo04.html

 ――――

 この事件に関する当局発表は意外に早く、私が調べた範囲内でいうと、暴動が進行している11日午前1時過ぎにはネットの地元ニュースサイト(四川新聞網)で第一報が流れています。

 ●広安の幼児が誤って農薬を飲み死亡、政府は善後処置に積極対応(2006/11/11/01:06)
 http://scnews.newssc.org/system/2006/11/11/010184490.shtml

 男の子が農薬を誤って飲んでしまい病院に運ばれ、病院側はすぐに全力で治療に当たったものの農薬の毒性が強く、また農薬を飲んでから時間がかなり経過していたため男の子は死亡した。

 遺族が死亡に至る経緯に疑問を呈したため、広安市党委員会、広安市政府はこれを極めて重視し、共同調査チームを直ちに編成。

 事実を重んじ客観的かつ公正にという原則に基づいて真相究明にあたったところ、男の子の死因は農薬の強い毒性によるものと判明、現在関係部門が善後処置にあたっている。

 ……というのが大まかな内容で、ここでは進行中である暴動について触れられていません。むしろ暴動を終息させるために流したニュース、といえるかと思います。


「下」に続く)




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「順徳で村民約1万名が食糧倉庫を包囲」

 と、香港紙『明報』電子版の記事が尋常でないタイトルを掲げていたので、「いよいよ『乱』発生か!?」と色めき立ってしまいました。色めき立たせるようなタイトルを許したデスクの勝利です。

 いや、実際にタイトル通りの出来事が11月8日、広東省・順徳市の三洲村で発生したのです。ただ食糧不足が深刻でついに農民たちを蹶起させたのではなく、原因は土地収用に絡む不正問題。騒ぎの内容も暴動というよりは一種のデモに近いものでした。

 とはいえ、過去にも同じ問題で衝突が発生しており、相当根の深い問題のようです。

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 事件は水際立った「突発」さで発生しました。

 11月8日午後、広東省順徳市・三洲村に建設された大型食糧倉庫のオープンセレモニーが開催されました。地元順徳市や仏山市の指導部、それに広東省や中央政府の高官に加え、タイ、ドイツ、英国、香港などの外資系企業関係者が参加するという格式ある式典です。

 ところが、いざテープカットということになったところで、いつの間に接近していたのか、地元三洲村の村民1万名近くがわらわらと突如出現。あれよあれよという間にその場を包囲してしまいました。

 この食糧倉庫、2003年9月にスタートした第一期工事で長さ60m・幅24mの大型倉庫15棟が完成したもので、収容能力は食糧6000トン。さらに直径10.4m・高さ25mの円筒形をした穀物倉庫6棟も完成し、晴れのオープンセレモニーを迎えた訳です。

 ところが村民が大挙来襲してこの事態。セレモニーに出席していた主催者及び来賓の御歴々約300名を倉庫に付随した事務所ビルに監禁したのです。このほか障害物を置くなどして付近の道路も封鎖。深夜になっても包囲が解かれることはなく、約4000名の村民が現場に残っており、セレモニー出席者は監禁されたまま一夜を過ごすことになりました。

 ――――

 事態が動いたのは翌日である11月9日の明け方です。防暴警察(機動隊)約2000名が現場に出現、帰宅していた村民たちもそれを知って続々と駆け付け、再び約1万人が屯集。

 防暴警察が防盾を並べて少しずつ間合いを詰めてくるのに対し、村民側は女性や子供を前面に並べて防暴警察が手を出しにくいようにし、その後ろにバイクのヘルメットを着用した男たちが投石の構えをみせて対峙する形になりました。

 膠着状態が破られたのは正午(11月9日)ごろ。警官隊が催涙弾数十発を発射して実力行使に出たのに対し、村民も投石で果敢に反撃。しかし白兵戦に移行すると意気軒昂たる村民たちも完全装備の警官隊にはかないません。負傷者を出して追い散らされ、監禁されていたセレモニー出席者がようやく解放されました。

 ――――

 さて、今回の事件の原因も前述したように土地収用に絡む不正疑惑でした。しかもこの三洲村のケースは以前から揉めており、1990年代から道路拡張や工業団地建設、住宅地建設といった名目で、村内の耕地がどんどん収用され、9000ムー(1ムー=6.7アール)あった耕地は半分が売却されました。

 地価高騰の時期でもあり、最近では1ムー当たり10万元が相場だというのに、この十数年間で村民たちが受け取った補償金はわずか6000元(1人当たりか1世帯当たりかは不明)。三洲村当局に対する村民たちの疑惑が深まったのは当然のことでしょう。

 このため村民たちはこれまでも順徳市政府、広東省政府さらに北京にまで人をやって陳情活動を続けてきましたが事態は好転せず、当局との対話を求めて村民たちが収用された土地に座り込み、建設工事を妨害するといった挙に出ていました。

 これに対しデベロッパーが金で雇った失業者たち「警備員」多数を現場に投入して村民を強制排除しようとしたところ、逆に瞬く間に人数を駆り集めた村民数千名が続々と現場に駆け付けて形勢逆転、「警備員」60名を拘束するという事件も今年6月に起きています。

 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2006/06/200606182206.shtml

 ――――

 今回の事件はそうした抗議行動のひとつというよりは、来賓の集まるセレモニーに目をつけ、村民たちが当然出席するであろう地元当局者と直談判をするために動いたものです。

 ですから防暴警察の出動に対し投石で抵抗はしたものの、当初の村民たちは武器類を一切持つことなく、約1万という人数の圧力で監禁に成功しています。

 その現場となった食糧倉庫も当局が耕地を収用してそれを転売し、建設されたものです。これについても村民たちが当初受けた説明では、

「土地300ムーを収用した上で3.5万元にて売却する」

 だったのですが、監禁している当局者から取り上げた契約書によって、

「土地500ムーを13万元余りで売却」

 が事実だったと判明。「役人が売却益を横領する一方で村民への補償金額を不当に低くしている」という疑惑はいよいよ深まりました。

 監禁現場では村民たちが望んでいた直談判も開かれたのですが、当局側は「すべて規則に則って処理した」の一点張りで、協議は平行線。その途中で防暴警察の出動もあり、物別れのまま直談判が流れてしまいました。

 ――――

 この直談判における村民側の発言には、

「国はいま金持ちになってアフリカを救済することまでしている。でも順徳の農村はいまアフリカより深刻な状況にあるというのに、統計の数字が何倍増になったということを気にするだけで、我々農民が土地もなく困窮していることは目に入らないでいる」

「共産党は人民のために服務せよとしているのであって、貪官汚吏を養って我々農民を苦しめよとはしていない」

 といったものがあり、いずれもその場にいた村民たちの熱い拍手を浴びたそうです。アフリカ支援の件を引き合いに出したり共産党はどうこうという発言が躊躇なく飛び出すあたりに、農民たちが意外にも時事ニュースに通じていること、より一歩進めれば、

「共産党は貪官汚吏を養って我々農民を苦しめることを旨としている」

 という見方になりかねない際どさをはらんでいる、と言えるかもしれません。

 目下のところ村民たちにとっての「官」は村委員会主任や順徳市当局の誰それ、といった具体的な顔を持った存在ですが、そうした「官」の横暴を許容しているのは何者か、というふうに突き詰めていけば、結局は中国共産党、ということになるからてす。

 ――――

 ともあれ、三洲村の農民たちは今後も抗議活動を続けていくそうです。今回紹介したケースは全国各地で発生している土地収用絡みの不正疑惑に端を発した官民衝突のひとつに過ぎませんし、直談判目的で非武装の農民が当局者を監禁した、という点から、怒りの鉾先が中共そのものに向く段階までにはまだまだ距離があるようにみえます。

 ただこういう状況下に置かれていれば、農民たちが権益と生活を守るために自衛すべく密かに武装化するのも無理はないように思います。

 http://hk.news.yahoo.com/061109/12/1w2ys.html
 http://hk.news.yahoo.com/061109/60/1w2qq.html
 http://www.rfa.org/cantonese/xinwen/2006/11/09/china_riot_guangdong/index.html?simple=1
 http://www.rfa.org/mandarin/shenrubaodao/2006/11/09/sanzhou/
 http://the-sun.orisun.com/channels/news/20061110/20061110014804_0000.html
 http://the-sun.orisun.com/channels/news/20061110/20061110014804_0000_1.html
 http://the-sun.orisun.com/channels/news/20061110/20061110014804_0000_2.html



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 中国では毎年3月に全人代という重要会議が開催されます。正式には全国人民代表大会、これは「×中全会」のような中国共産党の重要会議ではなく、年に1度開かれる政府の立法機関の全国大会です。国家主席や首相などもこの場で形だけの選挙を行うことで任命されます。

 ただ一党独裁制で政府の上に党が君臨するお国柄ですから、全人代も党の決定を政府として追認するようなものでしかなく、「ゴム印」と揶揄されるような存在です。「それではいけない」という形式的なかけ声も毎年のように上がりますが、常にかけ声だけで終わります。あるいはちょっとした新しい動きを新華社や『人民日報』がことさらに書き立てて「もはや全人代はゴム印ではない」と報じたりします。

 私はこの全人代については常に「全国人民代表大会=立法機関」とのみ書いています。日本のマスコミには「国会」とか「日本の国会に相当」と注釈をつけるところがありますが、これは断じて間違いです。

 とは、国会でいう「議員」に当たる「全国人民代表」は民意の洗礼を受けていないからです。むろん一党独裁制を憲法が保障していますから、政権への不信任動議のようなものや政権交代の足がかりになるような機能も有していません。当然ながら政権を担う可能性を有する「野党」といえる存在もありません。

 まあ中共政権自体、内戦で国民党を台湾へ追い出して中国本土を独り占めにしただけで、民意に拠って政権が成立している訳ではありませんけど。

 ――――

 ただ、国民に全く選挙権がない、という訳でもありません。「全国人民代表」は全人代に出席できる人民代表の最高位ですが、その下に行政部門のランクごとに人民代表がいます。

 省・自治区・直轄市レベル、市(一級市)・区レベル、県・市(二級市)レベル、郷・鎮レベル……というように各レベルごとに「人民代表」がいて、各レベルごとの「人民代表大会」を全人代前に開催しています。

 で、その末端レベルの人民代表に対しては中国国民も選挙で候補者を選ぶことができます。もっとも大半が官選候補で、民選候補として出馬しようとした人が事前に潰されたり、民選候補に投票しないよう有権者に圧力がかかったりします。例外的に民選候補が当選することもありますが、末端レベルですから大した仕事はできません。

 これより上の人民代表から全国人民代表までは、民意を問うことなく党の意向が色濃く反映された人民代表常務委員会で選出されます。

 法律の規定に従って人民の権利を行使することがいかに困難であるかは、前回に紹介した広州市・太石村の「農民の民主化運動」がその典型例といえるでしょう。21世紀の現在に至ってもなお「依法治国」(法治の徹底)を国家が実現すべき重要課題のひとつとして呼号しなければならないのが中共政権であり、その一党独裁制という本質的には北朝鮮と何ら変わらぬ政治制度も含めて、日本とは価値観をとうてい共有できない国家です。

 むろん個人レベルの交流は別ですが、私はもう歳ですからそういう面倒な作業に精力を注ぐことは放棄しています。友人はいますけどよほど深い部分で結び合った古馴染みの連中以外とは浅い付き合いにとどめていますし、また新たに中共政権下の人間と知り合う機会も極力避けています。犯罪に巻き込まれるのも怖いですし。

 ――――

 ……実はここまでが前フリでして、かといって今回は本題というほどのものもないのですが、北京市で昨日(11月8日)、末端レベルの人民代表選挙の投票が行われ、胡錦涛以下政府要人や引退した元要人らが投票を行ったことが大きく報じられました。

 ●「新華網」(2006/11/08/21:57)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-11/08/content_5306507.htm

 例によって江沢民が胡錦涛に次ぐ序列2位で登場し、党の最高意思決定機関である党中央政治局常務委員のメンバー以外で唯一、投票する様子などに言及されています。投票する選挙区は恐らく戸籍に基づいているのでしょうが、北京で投票していたので、戸籍ともども上海に退隠した訳ではなさそうです。

 記事では胡錦涛の投票する様子が描写され、続いて江沢民の投票風景、そのあと党中央政治局常務委員××がどこそこで投票した、という機械的な文章が続くのですが、香港紙『星島日報』(2006/11/09)がそこに食い付いています。党中央政治局常務委員の中で、黄菊だけが「外地で視察活動中」のため唯一投票所に赴かず、代理人が投票したとなっているのです。

 ●『星島日報』(2006/11/09)
 http://www.singtao.com/yesterday/chi/1109eo05.html

 ――――

 もちろん代理人が投票したことにピンと来たのではなく、それが元上海市長であり指導部クラスの現役上海閥である黄菊だからです。同紙の記事によると、黄菊の「視察活動」は長期に及んでおり、公式報道からみて、先月末(10月28日)から現在まで2週間近く上海に居座り続けている、異様だ、ということなのです。

 久しぶりに往年の香港紙らしい切れ味鋭いツッコミに私はうなってしまいました。ついでに「新華網」で調べたところ、確かに黄菊は10月28日に上海に姿を見せ、そのまま上海に居座り続けたまま、同地で開かれたイベントに出席したり、11月8日にはアルジェリアの大統領とやはり上海で会見しています。

 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-10/28/content_5260792.htm
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-11/01/content_5277853.htm
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-11/08/content_5304939.htm

 上海閥といえば次世代を担う有力者の陳良宇・上海党委員会書記(当時)が汚職容疑で解任され、その後も続々と地元上海の政財界関係者がひっくくられるなか、「次は黄菊か賈慶林か」といった話題が『争鳴』『開放』『動向』といった香港の中国情報誌をにぎわせているところです。

 そんな折りに鋭い観察を示した『星島日報』に、プロのチャイナウォッチャーならともかく、記者レベルでの中国観察屋もまだまだ健在だな、と胸のすくような思いがした次第です。

 ――――

 もっとも、昨日いちばん騒がれたのは世界保健機関(WHO)の次期事務局長(トップ)を決める選挙で、香港人のマーガレット・チャン(陳馮富珍)女史が当選したというニュースでした。

 中国が強力に後押しをして経済支援などで中国に借りのあるアフリカ署国などから票集めをしたうえ、欧州票をも引き寄せたのが効いたようです。親中紙を含む香港各紙はいずれも「香港人が初めて国連機関のトップになった」という慶祝ムードの記事が大半を占めました。

 その中でちょっと毛色の違う報道をしたのが反中色が強く香港の最大手紙でもある『蘋果日報』(2006/11/09)。まず同女史の当選を、

「カネで買ったポスト」

 とシニカルに報じたうえ、

「台湾のWHO入りが一段と困難になった」
「彼女の当選でWHOによる疫病情報の透明度が低くなる恐れがある」

 という趣旨の記事をネガティブ色で掲載しています。さらに社説では
「不安を感じさせる事務局長」というテーマで同女史をこき下ろしています。

「陳馮富珍の事務局長当選は中国の外交における勝利だ」

 として、中共政権が様々な経験を積んでその外交手腕が向上しつつあるのを指摘したうえで、

「だが多くの香港市民にとって、彼女の当選は納得のいかないものだ」

 と続くのです。同女史は英国統治時代の官僚あがりで中共色はないのですが、この社説によると衛生部門の責任者としての香港における同女史の仕事ぶりは芳しくなく、常に衛生面の危機や伝染病の流行に対する反応が鈍くていつも危機的事態を軽視する態度を示してきたと指摘。実例として1997年の鳥インフルエンザ事件や2003年の中国肺炎(SARS)での状況に対する反応の遅さと判断の悪さを挙げています。

 その上でこの社説は
「こうした傾向がWHOを支配する事を懸念する」とし、一例としてもともとWHOに協力的でない中共政権の疫病情報に対する隠蔽体質を強めることになるのではないか、と懸念を示しています。そして、

「世界の公務員として、WHO加盟国の情報公開度の向上に厳格な姿勢で臨んでほしい」
「中国肺炎当時の失敗を教訓に、タイムリーな情報提供によって疫病の流行拡大を防ぐことの大切さを認識してほしい」

 と結ばれています。マーガレット・チャン女史のこれまでの仕事ぶりからすれば、たとえ2003年の中国肺炎流行のような事態が中国本土で起きても、渡航自粛勧告に踏み切るといった必要不可欠な対応がズルズルと先延ばしにされることになるでしょう。また、WHOは以前から中国の鳥インフルエンザ(H5N1型)の関連情報についての非協力的な姿勢を批判し続けてきましたが、今後はその姿勢も軟化するのかも知れません。

 純然たる香港人で英国統治時代以来の官僚、中共色もなしとはいえ、その仕事ぶりが地元香港人からでさえ不興を買っている人物です。疫病大国・中国を隣国とする日本は、WHOの動きにならうだけでなく、必要な際には独自の判断で有効な措置を講じなければならなくなるでしょう。

 それにしても、『蘋果日報』がマトモな社説を掲げるのを実に久しぶりにみた気分です(笑)。




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