日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 お蔭様で、私もようやく仕事納めを迎えることができました。土曜日ですし大晦日(実感わきませんw)、それに私の方が疲労困憊、といっても副業を終えるとすぐ寝つけたりまったりすることができず、毎回クールダウンする時間が必要なので、余熱を散じる意味で雑談に逃げます。

 とりあえず軽い時事ネタをいくつか。

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 まずは先日死去した汪道涵・海峡両岸関係協会会長の告別式が12月30日、上海で執り行われたとのニュース。海峡両岸関係協会というのはその名が示す通り、中共政権における対台湾窓口機関です。で、これに江沢民・前総書記が出席したのですが、ひどく衰えた様子の写真が「新華網」で使われているのは果たして偶然なのかどうか。

 http://news.xinhuanet.com/tai_gang_ao/2005-12/30/content_3990764.htm

 香港紙などで使われている別アングルからの画像だと衰えが目立たないので、わざわざ写真映りの悪い画像が使われたことにちょっと下衆の勘繰りをしたくなります(笑)。ちなみに「新華網」のニュースサイト部分の「要聞」ページでは、12月30日夜時点でこの記事の上に血色のいい元気そうな胡錦涛の写真を載せた記事が並んでいます。勘繰りたくもなるじゃありませんか。

 http://news.xinhuanet.com/politics/2005-12/30/content_3991366.htm

 ちなみに汪道涵の告別式には曽慶紅・国家副主席(党中央政治局常務委員)もわざわざ北京から出向いてきて姿を見せました。故人との関係が深いということもありますが、曽慶紅といえば胡錦涛政権における香港・マカオ問題担当者。このことから、台湾問題に関しても今後は曽慶紅が担当者になるのではないかという憶測が流れています。いやこれは親中紙『香港文匯報』(2005/12/31)がそう言っているので、ただの勘繰りではないかも知れません。

 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0512310004&cat=002CH

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 ところで、前掲の胡錦涛が出ている記事は「党建設における理論研究活動を強化しよう」という集まりのものです。このあたり最近の胡錦涛はちょっと挙動不審でして、中国社会科学院にマルクス主義研究院を開設させたりもしています(『解放軍報』2005/12/27)。

 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2005-12/27/content_370951.htm

 そこで思い出すのがこれです。

 ●毛沢東思想で現代中国を斬る=懲役3年(2004/12/27)

 私有財産の保有を認め、資本家が党員になれる現実は、中共の掲げる「マルクス・レーニン主義、毛沢東思想(以下略)」と相容れるものではありません。その矛盾を端的に示したのが「懲役3年」なのですが、恐らく胡錦涛はこの矛盾を解消する理屈をひねり出して、全党を引っ張っていく上での新たな指導思想を確立させようと模索しているところなのでしょう。

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 それから「新華網」の地方版「浙江チャンネル」に目立たない形で出た記事、「通知:『4.10』集団的事件の責任者を厳粛に処罰」は地味ながら注目すべきニュースです。

 「4.10」集団的事件というのは今年4月10日、浙江省東陽市・画水鎮で発生した農民暴動というべき官民衝突で、農民たちがキレた原因は工業廃水による河川の水質汚染(=土壌汚染)などといった環境破壊に当局も工場側もマトモに取り合わなかったことによります。

 土地収用をめぐるトラブルではなく公害に起因したものということで、当ブログでは「21世紀型農民暴動」などと呼びならわしていましたが、要するにその「責任者」に処罰が下された、という話です。処罰されたのは当時の東陽市トップをはじめ、現場である画水鎮のトップ、また東陽市の関連部門(環境保護局など)も対象になっています。当時の東陽市党委書記(同市のトップ)と東陽市長は現職を召し上げられています。更迭です。

 http://www.zj.xinhuanet.com/newscenter/2005-12/31/content_5943610.htm

 農民の側にも衝突の過程で逮捕者などが出ていたかも知れませんが、この種の官民衝突で「官」である東陽市当局に厳しい処分が下ったというのは特筆すべき出来事です。処分が行われるまでに8カ月を要したことは遺憾ながら、浙江省当局が各部門に対して、

「社会の安定と調和を維持することに努め、この事件を教訓として自らをよく戒め、類似した事件の再発を防ぐよう強調した」

 としている点には留意すべきでしょう。浙江省ではその後、煤山鎮(2005/06/26)、新昌県(2005/07/17)でも環境汚染を発端とした農民暴動が起きていますから、今後も「官」の責任者の処罰が行われるかも知れません。

 ●21世紀型農民暴動。(2005/07/01)
 ●またですよ21世紀型農民暴動。(2005/07/20)

 ともあれ画水鎮の一件はこうして農民側の勝利ともいえる珍しい展開になったのですが、当局がそういう展開にせざるを得ないほど現場の空気は緊張している、ということなのかも知れません。「現場」とは画水鎮だけでなく、農村の最前線といった意味です。

 あるいは、浙江省のトップである習近平・省党委書記は「太子党」(二代目)グループの一員ですから(父親が習仲勲)、その履歴に傷がついて出世が遅れるのを懸念しての措置という線もあります。

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 そして、前回の『新京報』『南方都市報』の両紙及び『百姓』誌に対する権力の介入、そして『新京報』の記者・編集者が決起してストライキに入った、というニュース。……なのですが、未だに確定情報らしきものは出ていません。もちろん中国当局が何らかの発表を行う可能性は考えられません。

 そういう中でオフィシャル的な存在となると、香港の親中紙でしょう。『香港文匯報』(2005/12/31)がストライキ(サボタージュ)が行われたことに言及しているのでこの点は事実なのでしょう。

 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0512310014&cat=002CH

 ただ、それが今も続いているのかどうかは不明、というより「続行中の模様」と「終息した」という両極端の情報が出ているので確認できません。ストライキの発端となった人事(編集長らの解任)が『新京報』従業員の強い反発を受けてどうなったかについても諸説あるため、これも結論が出せない状態です。香港紙『太陽報』(2005/12/31)は「副編集長2名の解任を撤回することでストライキが終息した」としています。

 http://the-sun.orisun.com/channels/news/20051231/20051231020607_0000.html

 ところが前掲の『香港文匯報』によると、編集長及び副編集長2名の解任はすでに決定事項で、親会社である『光明日報』から4人が出向して『新京報』の要職に就く、となっているのです。ストライキについては「一部の記者と編集者によるもの」としていますが、この抗議行動にピリオドが打たれたとは書いてありません。私は唸るばかりです(笑)。

 ちなみに、やはり香港紙の『成報』(2005/12/31)によると、『新京報』の件に対してはネット世論も熱烈な声援を送ったようですが、例によって削除職人が登場しサクサクと仕事をしていった模様です。

 http://www.singpao.com/20051231/international/797919.html

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 大晦日ですからこの一年を振り返ってみますと、かなりタガが弛んできたなあ、これならもうあとひと押しかも。……といった感想が湧きます。

 以前コメント欄にも書いたのですが、中共政権はその一党独裁で広大な中国全土を統治するために、統治システムに負荷をかけてきました。余計なコストといってもいいのですが、例えば国有企業や学校や役所には必ず党委員会があります。その組織を養うだけで制度としてはコスト高だと思うのですが、そういう負荷やコストをかけて求心力を維持し続けないと、きっと中国はバラけてしまうのでしょう。あるいはバラけた姿こそ本然、なのかも知れません。

 皮肉なことに、中共政権の延命のためにトウ小平が導入した改革開放政策が統治システムにいよいよ負荷をかけることになりました。「改革・開放」は分権化と競争原理の導入を骨子としているのですから、例えば分権化が進むことで地方政府たる「諸侯」たちの裁量が拡大し、中央の求心力は低下します。「諸侯」については本来別の手段でその暴走を抑え込むつもりでいたのが、それがまだ整っていない。一方で競争原理を持ち込むのですから様々な格差が発生するのは自然な成り行きです。『新京報』の事件にしても、一党独裁制と競争原理が撞着を起こしている、という見方をしてもいいでしょう。

 その矛盾が一度沸点に達したのが1989年の民主化運動と天安門事件です。軍隊を投入した流血の弾圧によって一応リセットされはしましたが、求心力の低下は覆うべくもありません。そこで江沢民が反日風味満載の愛国主義教育をスタートさせた。そのうちに歪んだ形ながら経済成長が始まり、国民の士気もある程度回復しました。

 ……ところが最近になって、その魔法の効果が薄れてきてしまっています。経済成長の歪みの部分が噴出して都市暴動や農民暴動が頻発し、一方では「反日」が逆効果になりつつあります。社会状況が悪化し、「民」による「官」(中共政権)への不満のボルテージが高まっていく中で、「反日」がそれを後押ししている部分が少なからずあるように思います。

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 「反日」で民衆を煽ることができなくなった、下手に煽ると自分の方に鉾先が向けられるかも知れなくなった、ということです。2003年には新幹線導入反対や化学兵器問題に関するネット署名があり、珠海での日本人による集団買春事件にネット世論が一大反発を起こし、さらに西安の寸劇事件も起きています。いずれも「民間組織」主導によるもので、中共当局が表立って宣伝キャンペーンを打った訳ではありません。

 翌2004年にはやはり「民間」主導によるサッカーアジアカップでの対日ブーイングやプチ騒乱がありました。これまた当局主導ではありません(政争の存在が背後にはあったかも知れませんが)。ただこのあたりから、中共政権は「民間」による反日活動を警戒するようになります。好き勝手にやらせていたら統治システムへの負荷がいよいよ高まるのではないか、という懸念によるものです。

 折から発足した胡錦涛政権はそれ故に「民間」の活動を抑え込み、現実的な対日路線を志向しましたが、意外に強腰な日本の対応にぶつかってそれが頓挫。「反日」が踏み絵になってしまい(例えば靖国参拝停止を必ず求める、など)、対日外交における選択肢が少なくなってしまったのは、江沢民が残した負の遺産といえるでしょう。

 ●分水嶺・上(2005/10/06)
 ●分水嶺・下(2005/10/07)

 その一方、中国国内で各種の官民衝突が相次いで発生したのは記憶に新しいところです。

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 そうしたことの一切を身を以て思い知らされたのが2005年、ということになるでしょう。まずは春先の反日騒動ですが、政争の反映であるにしても、事態が予想以上に拡大し深刻化して、「反日」を掲げて政争を仕掛けた側まで青くなってしまった。それ以降はもう「民間」を使って何かさせるという江沢民時代のやり方が怖くてできなくなり、小泉首相が10月に靖国神社を参拝しても十数人による官製の「なんちゃってデモ」が1度行われただけで、民間有志の活動は徹底的に抑え込まれました。

 国内では官民衝突が止まりません。上述したように、とうとう公害問題に起因する農民暴動まで出てくるようになりました。それらを抑え込むごとに当初の胡錦涛政権に対してあった「庶民派」というイメージが薄らいでいったことでしょう。「諸侯」という単語が記事に頻繁に登場するようになったのも印象的です。中央の統制力低下を示すものに他なりません。

 打つ手がないのです。日中関係は冷却化したままのため、表向きは「反日」の看板を下ろすことができません。だからメディアには反日報道を許してはいるものの、民間有志の先走りは絶対に抑え込まなければならない。「調和社会の実現」という旗印を掲げてみせても、現実に発生した暴動は鎮圧しなければならない。広東省では農民による民主化運動が抑え込まれ、農民暴動に武警が突撃銃で掃射する事態まで起きました。

 胡錦涛政権は自然に逆らって無理を重ねている、といってもいいでしょう。でもそれをやらなければ、中共政権の一党独裁は瓦解しかねません。だから無理をする。民間の反日活動を許さないのも、暴動を武力鎮圧するのも、農民が賢くなる(民主化)のを叩き潰すのも、対日外交で譲らぬ姿勢を堅持しているのも、全てが無理です。そもそも集団指導体制による一党独裁、というスタイル自体、効率最悪の無理ではあります。それでも江沢民時代は何とかごまかすことができたのです。

 いまはそれができなくなりました。そういう大潮流が背景にありますから、トップが胡錦涛でなくても同じ結果になったことでしょう。様々な「無理」のひとつひとつが、統治システムに対する負荷を増大させていくことになります。そしてその統治システム自体がそろそろ負荷に耐えられなくなってきたのではないか、機能不全を起こし始めたのではないか、という気配を感じることができた。……それが2005年だと私は思います。

 具体的なイメージを結ぶとすれば、2つ挙げることができます。第一に、4月には限界ギリギリながらも一応展開できた「民間」による反日活動が、半年後には禁忌になっていたこと。もうひとつは汕尾市紅海湾の官民衝突です。土地強制収用に抗議する広東省の農民たちを、武装警察が突撃銃の実弾射撃で薙ぎ倒してしまった。しかもそれが全世界に報道されたというのに、中央政府は「諸侯」に対し厳しい咎めだてを行うことすらできなかった。……この2つの出来事で中共政権の2005年を象徴できると私は考えています。

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 最後になりましたが、この一年間、駄文にお付き合い下さった皆さんに心から御礼申し上げます。

 当ブログは春の反日騒動でアクセス数が激増しました。「反日バブルだ」などと配偶者と言い交わしていたのですが、その後も変わることなく皆さんの御愛顧を頂けたということに、私自身がものすごく驚いております。来る2006年の中国情勢はいよいよ面白くなりそうですが、堅実に更新を重ねつつ、皆さんと歴史的な事態の推移を眺めていけたら幸いです。

 あ、もちろん当ブログは「チナヲチ」(中国観察の真似事)であって「反中共」が主題ではありませんから、中共が潰れようがバラけようが消滅しようが、私自身が飽きない限りは継続していきます。

 それでは、皆さんにとっての2006年が、いい年でありますように。



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 報道統制がお約束の中国において、マスコミに権力が介入することなど珍しいことではありません。

 そもそもメディアに対する定義が中国では「党・政府の代弁者」とされています。例えば新聞、これも日本でいう新聞ではなく、機関紙、広報紙という位置付けなのです。要するに権力の御用新聞。当局にとって都合の悪いことを書くのはNG。

「報喜不報憂」(報道されるのはおめでたいニュースだけ)

 という慣用句があるくらいです。当局にとって都合の悪いことをうっかり書いてしまうと、当然ながら権力による処罰と報復が待っています。馘首されるだけならまだマシ。党籍剥奪もまだ寛容な方ですが、悪くすれば投獄ということになります。

 それでも書こう、報道しようというのは、実に勇気のいる作業です。失職して路頭に迷うリスクもあれば、投獄までされる可能性もある。天涯孤独の身ならともかく、生活や家族に影響が及ぶことを考えると、つい妥協してしまうのも無理からぬところです。禁忌満載の一党独裁制の下で真実を書こうとする「報告文学」(ルポルタージュ)の作家たちが同じ境遇にあるのは前回ふれた通りです。

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 いや、勇気のいる作業をしなくても弾圧を受けるケースすらあります。

 中共の権力闘争は、派閥を後ろ盾とする新聞・雑誌間の論争という代理戦争の形をとることが少なくありません。例えばかつて「改革派vs保守派」という対立が存在した時代に、改革派が上海の『解放日報』、保守派が『人民日報』『求是』を使って代理戦争をさせたりしました。

 ……いやいや、戦争ですから勇気を必要としなくてもリスクは負うことになりますね。権力闘争に敗れた側のメディアが「粛清」され、編集部総入れ替えなんてこともあります。以下はその極端な一例です。

 ●往年の文匯報をしのびつつ。(2005/01/31)

 ……言うまでもなく、今回の主題は「勇気ある作業」に徹したスタイルを堅持したことで権力から弾圧された新聞や雑誌、具体的には『新京報』『南方都市報』『百姓』の上にあるのですが、弾圧されること自体は別に珍しいことではありません。

 特筆すべきは、弾圧に対してとうとう記者たちが立ち上がったことです。編集長1名・副編集長2名のクビを飛ばされた『新京報』の記者多数が、怒りを抑えかねて抗議のストライキに入ったのです。

 とりあえず、ちょうど半年前に書いたエントリーをまず御参照頂ければ幸いです。

 ●2356――記者たちの決起。(2005/06/30)

 まだ諸情報が乱れ飛んでいる段階ですが、今回は署名だけではなくストライキにまで発展している模様です。

 まさに決起ではありませんか。

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 今回の「事件」に関する第一報は、香港の親中紙『香港文匯報』によってもたらされました。

 ●『新京報』の編集長、解任か
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0512290029&cat=002CH

 香港商業電台は12月28日、『新京報』の楊斌・編集長とベテラン記者2名が突然解任されたと報じた。原因は目下のところ不明だ。親会社の『光明日報』が編集者多数を『新京報』に派遣し「進駐」させており、『新京報』の記者が明かしたところでは、党委員会関係者が午後に同紙オフィスを訪れ、新たな人事について公式に説明するという。

 ……あれ?『香港文匯報』が「商業電台」(香港のラジオ局)をソースにしているということは、反体制系メディアあたりが情報源なのかも知れません。

 ともあれこれを受けて、香港の「明報即時新聞」(『明報』のネット速報)が間髪入れずにロイター電を報じました(2005/12/29/11:42)。

 ●北京の『新京報』が楊斌編集長を突如解雇、編集部は進駐した『光明日報』の管理下に
 http://hk.news.yahoo.com/051229/3/1jygj.html

 この記事は、かねてから記者たちを擁護しており内幕にも通じた北京の弁護士の談話として、党幹部が『新京報』について「数多くの過ちを犯した」と怒り心頭であることを伝えています。「進駐」「管理下」というのは編集方針の転換、それに従わない者は編集長同様にクビだ、という勢いで『光明日報』関係者が乗り込んできて『新京報』編集部は戒厳令下にあるも同然、ということをうかがわせます。

 ちなみになぜ『光明日報』かというと、『新京報』はあの『南方都市報』を擁する広東省の南方日報グループと光明日報グループの合弁で、光明日報グループが51%を出資する筆頭株主だからです。前掲した半年前のエントリーにあるように、『南方都市報』から『新京報』に転じる編集長クラスの記者もいます。

 南方日報グループは地元で成功した『南方都市報』の編集スタイルを北京で試みようとしたのでしょう。事実、思惑通り『新京報』は市民に支持され成功した訳ですが、これまた『南方都市報』同様、権力による弾圧を受ける破目になったという訳です。

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 ところが、それに対して記者たちが泣き寝入りをせずに決起し、署名活動及び執筆拒否(ストライキ)、という中国メディアとしては前代未聞の行動に立ち上がったのです。翌日(12月30日)の香港各紙は一斉にこのニュースを報じています。……という以前に、日本のメディアがネットで速報していますね。まずは時事通信電。

 ●「新京報」記者らストライキ=幹部更迭に抗議、署名運動も-中国(時事通信 2005/12/30/01:01)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051230-00000001-jij-int

 【北京29日時事】中国・北京で発行される日刊紙の中で独立性の強い報道で知られる「新京報」の楊斌編集局長ら幹部3人が中国当局から解任され、これに抗議する同紙の記者ら100人前後が29日午後から執筆拒否など職場放棄に入った。解任撤回を求める署名運動も始まった。同紙関係者が明らかにした。中国メディアでストライキは極めて異例。 

 それから『読売新聞』。経緯を手際良くまとめた記事です。

 ●幹部更迭に抗議、人気中国紙の記者らが大規模スト(読売新聞 2005/12/30/01:15)
 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20051229i115.htm

 【北京=竹腰雅彦】独自報道で人気の高い中国紙「新京報」の編集局長ら複数の幹部が更迭され、これを不服とする同紙の記者や職員らが29日から大規模なストライキに入ったことがわかった。
 同紙関係者が明らかにした。中国メディアでストが行われたことが表面化するのは、極めて異例のことだ。
 新京報は2003年11月に発行を始めた日刊大衆紙。当局の厳しい規制下にある中国紙の中で、市民のニーズに沿った紙面と独自報道が持ち味で、新型肺炎(重症急性呼吸器症候群=SARS)患者の後遺症問題や、土地収用を巡る河北省の住民襲撃事件などをスクープ。
 最近の松花江汚染問題でも11月24日付の社説では、中国当局による事実公表の遅れを「遺憾」だと論評していた。編集幹部更迭は当局の規制強化の一環とみられる。関係者によると、記者らは処分の撤回を求めている。
 新京報は、「大胆な報道」を売り物に、創刊2年で部数を40万部に急伸させた。

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 そして翌日、つまり今朝の香港各紙(2005/12/30)では親中紙以外の新聞が全てこのニュースを扱っています。それによると、解任されたのは楊斌編集長のほか副編集長2名で、いずれも12月28日付発令の人事異動。副編集長2名は解任ではなく停職処分だと報じている新聞もあります。

 『星島日報』は解任の原因として、数々のスクープという権力側にとっての「余計な真似」を重ねた一方で、売り上げも評判もいい『新京報』従業員の給料が親会社たる『光明日報』を遥かに上回っていることが、親会社側の反感を買ったと指摘しています。……さすがは銭ゲバ香港紙、ナイスな着眼です。

 肝心のストライキの規模ですが、最大手紙『蘋果日報』は「記者・編集者合計300名」、『太陽報』は「記者・編集者の4分の3」としています。『明報』によると、記者たちは編集部近くのレストランで決起集会めいたものを開き、この行動を決議したとのことです。

 で、この「事件」についての注目点が2つあります。

 まずは弾圧を喰らったのが『新京報』だけではないということです。やはり勇気ある編集方針に徹してきた雑誌『百姓』のウェブサイトが12月28日午後に突如閉鎖され、次回号の表紙や内容に修正が施されたと『蘋果日報』や反体制系ニュースサイト「博訊」が報じています。同誌は『中国農村』として1993年に創刊、2003年から『百姓』に名称を改めています。

 また『明報』及び『成報』によると、『南方都市報』も12月27日付で夏逸陶・副編集長が解任されました。こちらは12月24日付紙面において、広東省・興寧炭鉱事故の責を負って游寧豊・副省長が行政処分されたのを大々的に扱ったことで省当局の反発を買ったようです。

 ……つまり、『新京報』『百姓』『南方都市報』はそれぞれが単発の事件ではなく、中共当局(具体的には中央宣伝部)の報道統制強化キャンペーンによって一括りにやられた、との可能性を疑えるということです。

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 傍証としては12月28日、北京で開かれた中国映画産業生誕100周年記念式典における胡錦涛・総書記の「重要談話」を挙げていいでしょう。

 ●積極的に映画産業を発展させ、先進的文化を強力に繁栄させよう(新華網 2005/12/28/21:36)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2005-12/28/content_3981767.htm

 この「重要談話」で胡錦涛は、

「全国の広範なる映画産業関係者が、トウ小平理論と『3つの代表』重要思想を偉大なる旗印として高々と掲げ、終始一貫して正確な政治的方向を堅持し、社会的責任感を絶えず強化して、わが国の映画産業の勢いある発展を推し進めるよう努めてほしい」

 と語っています。映画産業を発展させようと言いつつも、実際には「政治的な過ちを犯すなよ」と枠をはめ、釘を刺しているのです。古くは毛沢東の延安における文芸講話を源流とする中共伝統の物言いです。

 要するに文芸(映画を含む)は人民に奉仕するためにある、というもので、「人民」とは言うまでもなく中共政権下で党の方針に異義を唱えることなく忠実に呼吸する人々のことです。昔は「工・農・兵」で括ることができたのですが、現在では資本家も中国共産党に入党できる時代になりました。地下の……というか北京の記念堂で充電中の毛沢東が知ったら何と言うでしょう(笑)。

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 私は副業である香港誌における中文コラムで3年前、国際的競争力を持つサブカルチャー業界は如何にして形成されるかという表のテーマについて書いた際(裏のテーマは「お前ら絶対デモに行け」)、

「そのうちゲームやアニメも『文芸』の範疇に加えられて、枠をはめられることになる」

 と指摘したことがあるのですが、ネットゲームに対するこの種の統制は昨年からすでに始まっていますね。さらにネットカフェ及びインターネットそのものに対する規制も強化され、テレビ番組やCMの内容審査も厳格化。携帯電話も近く実名登録制に移行される計画です。あとはブログを仕切れるようになれば完璧でしょう。

 以前から当ブログで再三指摘しているように、こうした情報統制強化は胡錦涛の好むスタイルではあります。もっとも胡錦涛でなくても、例えばアンチ胡錦涛諸派連合にせよ中央にせよ地方当局にせよ軍部にせよ……つまり某かの「権力」を持つ者にとって、自らの弱味や恥部を暴露されかねない「出過ぎた振る舞い」をするメディアへの統制に異存はない筈です。

 ですから別の材料が出てくれば話は変わりますが、目下のところ私は今回の一連の「事件」を党上層部における主導権争いを反映したもの、とはみていません。最近軍部や省レベルでの活発な人事異動が行われ、それを胡錦涛が権力基盤を固め始めた証とする報道がありますが、私自身としては胡錦涛と軍主流派との関係や、冷や飯を食わされた側がどれほどの力を残しているかなどについて、もう少し見きわめてみたいところです。

 「反映」ということであえて言うなら、今回の事態は社会状況の悪化、そして「官」である中国共産党に対する「民」の不満が沸点に近づきつつある、という中共政権の認識を示しているのではないかと思います。むろん国内問題だけではなく、例えばいまがっぷり四つに組んだ観のある対日外交、これが日本側による何らかのアクションによって「民」が沸点に達し、中共政権がそれを抑え切れなくなる……という事態に備えての統制強化でもあるでしょう。

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 で、今回の「事件」に関するもうひとつの注目点としては、『新京報』の記者・編集者によるストライキが「2356」のような作用をもたらすかどうか、ということです。ストライキ・署名募集という行動に『南方都市報』などが呼応し、さらに半年前のような広範さで受け入れられるのであれば、権力者にとっては不測の事態ということになります。

 とはいえストライキがどれほど本腰を入れたものなのか未だ不明のままです。最新情報として「明報即時新聞」(2005/12/30/13:40)の報道があるのですが、『読売新聞』の記事を引用したりしていて、状況が把握できていません。

 http://hk.news.yahoo.com/051230/12/1jzls.html

 ものすごく期待したいんだけど……というところでしょうか(笑)。いやいや、実際に『新京報』でストライキが発生したのなら、それだけで十分に非常事態ではあります。ひとつの社会が破綻する時期にさしかかると様々な珍現象を目にすることができる、ということなのかも知れません。

 ちなみに当局の方ですが、

「突発的事態に対する政府からの迅速な情報発信に努める」
「中央政府各部門や地方政府の報道官による定例記者会見を充実させる」

 なんてことを発表し、開明的なイメージを必死にアピールしています。以下は「新華網」の関連記事3本。

 http://news.xinhuanet.com/politics/2005-12/29/content_3983955.htm
 http://news.xinhuanet.com/politics/2005-12/29/content_3986231.htm
 http://news.xinhuanet.com/politics/2005-12/29/content_3986381.htm

 もっとも、海外向けの新華社電にはオマケがついているようです。『蘋果日報』(2005/12/30)によると、記者会見の形で行われたこれら一連の発表の中で、蔡武・国務院新聞弁公室主任は内外の報道関係者に対し、

「こうした(突発的)事態が発生した際には、報道に携わる各位も報道活動そのものの準則に基づいて、どうか真相が明らかになる前に無闇に主観的な憶測をしたり、断片から全体像を推測したりしないでほしい。俗に言う『事をより面倒にしたりせず、手助けに徹する』ということだ」

 と語っています。御用新聞である立場を忘れるな、ということでしょう。同時に海外メディアに対しても「ここが中国であることを忘れるな」と言っているのかも知れません。

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 ●『星島日報』(2005/12/30)
 http://www.singtao.com/yesterday/chi/1230eo04.html

 ●『明報』(2005/12/30)
 http://hk.news.yahoo.com/051229/12/1jyu8.html
 http://hk.news.yahoo.com/051229/12/1jyu8.html

 ●『太陽報』(2005/12/30)
 http://the-sun.orisun.com/channels/news/20051230/20051230020750_0000.html

 ●『成報』(2005/12/30)
 http://www.singpao.com/20051230/international/797573.html

 ●「博訊新聞網」(2005/12/30)
 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2005/12/200512291338.shtml



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 更新が滞ってしまい申し訳ありません。仕事優先は常ながら、それが繁忙期に入ると他のことに手をつけられなくなってしまいます。

 それでも昨年のいまごろは当ブログを更新できていたのですが、幸か不幸か今年は本業が商売大繁盛。ブログを書く以前に記事漁りもままなりません。集めはするのですが整理することも目を通すこともかなわず、時事ネタに手をつけるなんて、とてもとても。

 日本側を相手にした仕事は明日(28日)あたりで一段落しそうですが、そのあとは「香港チーム」「台湾チーム」に対する諸々の事務があります(向こうは元日だけ祭日で、あとは通常通りですから)。トドメは副業で大晦日に締め切りのコラムが1本あります(涙)。

 プログと違って中国語で4000字近く書くとなると頭も体力も使います。原稿料も頂く訳ですから一応の体裁も整えなければならず、たいてい12時間から20時間くらいぶっ通しの仕事になります。ノリと流れというものがありますから、毎日少しずつ書きためて……なんてことはできません。一気にやるのみです。

 大変な作業ではありますが、巧拙を別とすれば私にとって中国語を書くというのは一種の悦楽ですので、没入してしまえばぶっ通しであることが不思議と気にならなくなります。食事をとる気にもなりません。頭にチラつくのは行数制限とデッドライン(締め切り時間)だけです。

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 かような状態ですから私が楽しみにしていた「男たちの大和」を観るのも年明け以降になりそうです。映画の善し悪しなんか私にはわかりません。自分が堪能できればそれでいいのですが、予告編を観た限りでは堪能できそうなので楽しみにしています。ヤフーで3本くらいムービーを観ることができるのですが、

「もう会えない君を、守る」

 というキャッチだけで私と配偶者はもうウルウルです。配偶者は香港人ですが、右に出ている『ピアノは知っている-月光の夏』という絵本を読んで目を真っ赤に泣き腫らしてしまうぐらいですから、夫婦揃って単細胞。

 そういえば昨日(26日)、ちょっと時間が空いたときに近くにいたので、二人で靖国神社に立ち寄ってきました。先々週には色付いていた参道のイチョウの黄色い葉もほとんど落ちて、初詣に向けた準備が行われていました。配偶者は参拝したりしなかったりするのですが、「今年はこれが最後だから」と言って私と一緒に参拝。

 それを済ませるとお約束の「遊就館」での海軍コーヒー&零戦となる筈だったのですが、あいにく年末年始の休館期に入ってしまっていて中に入れませんでした。それでも「外からゼロ戦をみていこう」と言うので二人してガラス越しに何分か眺めてからそこを後にしました。ちなみに私は「れいせん」と呼んでいるのですが、自宅の書架にある本の中に「ゼロ戦」と題されたものがいくつかあり、どうやら配偶者はその辺で名前を覚えたようです。

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 さて今年最後の楊子削りですが、まずは『中国農民調査』、この日本語版が出たので紹介しておきます。知識人の夫婦が私財を投じて農村を回って取材したのをまとめたルポで、農村・農民の悲惨な現状が赤裸々に綴られていることから、発売とともに中国国内で一大センセーショナルを巻き起こしました。

 ただし中国のルポルタージュ作品にはよくあることなのですが、作中に実名で登場し悪徳ぶりを描かれている地元幹部が名誉毀損だと訴訟を起こし、現在も係争中。このために同書は発売禁止となり、現在もそれが続いています。最近逝去した劉賓雁の『人妖之間』が発表当時に物議をかもし、『河殤』で知られる蘇暁康の『烏托邦祭』が『河殤』ともどもやはり発禁処分に遭うなど、一党独裁制下にあって真実を描こうとする「報告文学」(ルポルタージュ)の書き手にとっての受難の時代は、一党独裁が続く限り終わることはないでしょう。

 で、『中国農民調査』に話を戻しますが、発禁書ながら昨年、ドイツの文学賞を受賞しました。その機会に反体制系ニュースサイト(「大紀元」かどこか。失念)が作者にインタビューした記事がありまして、中国国内における大手掲示板のひとつである「百度」の文化板にスレ立てしてその記事を貼ってみました。即削除かなと思ったら意外にも消されずにそれなりの反響があり、その中で、

「いつ消されるかわからないから、落とすなら早めにしとけよ」

 というコメントとともに、URLを書き付けたレスがありました。そこへ飛んでみると、何と『中国農民調査』の全文が貼られているではありませんか。反日で気勢をあげる「糞青」(自称愛国者の反日教徒)と違って、文化板には粋な奴がいるもんだと思ったものです。

 私はその後、香港経由で原作本を入手しました。日本語版はまだ読了しておりませんが、一読に値する作品かと思います。

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 もうひとつは今さらなのですが、昨年中国で開催されたサッカーアジアカップのDVD。日本国歌へのブーイングや決勝戦後の騒乱などは記憶に新しいところでしょう。日本人が対中認識をより正確なものとする上で大きな役割を果たした「事件」であるとともに、このブログがスタートする端緒でもあるため、私は短い年末年始(ていうか年末は仕事。年始だけ)をこれで楽しみたいと思います。

 当時の話ながら白状しますと、この大会で日本代表が決勝トーナメントに駒を進め、一試合一試合、劇的な形で勝ち進んでいくのを見るうちに居ても立ってもいられなくなった私は、試合翌日の朝イチに靖国神社に参拝するのが習慣になっていました。必勝祈願ではなく「ありがとうございました」という一念です。

 別に勝ち方が神がかっていたからなどというのではなく、こうやってサッカーを楽しめる平和な時代の礎になった人々への感謝を、何か行動することで自分なりに示したかっただけです。それは戦地で亡くなられた先人ばかりでなく、銃後で戦災に遭われた方々、また焼け野原からの復興に力を尽した戦前・戦中世代への感謝でもあります。

 それを示すための手近な存在が私にとっては靖国神社だった、というだけです。毎回朝7時くらいに足を運んでいたのですが、参道の蝉時雨が物凄かったのを覚えています。


中国農民調査

文藝春秋

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日本サッカー協会オフィシャルビデオ 日本代表激闘録 アジアカップ 中国 2004 V2

ポニーキャニオン

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 休日なのに何でこんなに忙しいのかわかりません。というより私の本業、日本側は土日や祝祭日関係なしの年末進行(月月火水木金金……古すぎ?)ですから愚痴をこぼしても始まらないのですが。

 という訳で、今回は「muruneko」さんから前回頂いた御質問に回答する形式とらさせて頂きます。ただし手抜きではありませんよ。

 まずは頂いた御質問から。

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 ●支那人はどの程度状況を理解してる? (muruneko)
 2005-12-23 12:05:04

 御家人さん、確かに「籠の中の鳥」である香港人民主派の閉塞感や現状への不満が良く伝わってきました。

 このような直接選挙制への攻防が香港で行なわれているという状況を本土の支那人はそもそも認識・理解しているのでしょうか?

 本土の新聞やTVに出る類の話ではない(報道抑制の対象)ぐらいは容易に想像が付きますが、様々な噂が庶民の間で流布されている筈と推測します。

 羨ましく(妬ましく)思っている、それとも「ふーん」と対岸の火事視して興味も無い、はたまた目出度くも愛国教育の成果で「民主主義」に反感を持っている、民度が低すぎて理解できない、どんな感じなのでしょうかね?

 ――――

 >>murunekoさん

 1997年の香港返還を私は現地(香港)で迎えたのですが、地元テレビ局のニュースや新聞報道をみた限り、大陸人(広東省を除く)は香港人が諸手を挙げて返還を喜んでいると信じて疑わないようでした。……「香港・香港人」に対する致命的な誤解、といっていいでしょう。

 現在もそういう意識差、いやむしろ断絶に近い価値観の違いが根強く残っているように思います。私が「なんちゃって香港人」として反日サイトの掲示板に入ると、

「中央が色々援助したり優遇措置を与えたりしているのに文句を言うとは贅沢だ」

 という声が出たりします。大陸側が過度な愛国主義を香港人に期待し(大陸人は香港人も同じ気持ちだろうと誤解している訳です)、その余りの極彩色ぶりに香港人がひいてしまう、という場面を目撃したこともあります。

 その一方で、香港の民主化が進めば大陸の民主化にも好影響を与えるだろうと期待する向きもありますが、私はそれはないだろうと思います。民度が違い過ぎますから。

 ――――

 実は昨年、某翻訳掲示板で香港人として振る舞っていたとき日本人から質問を受けて、返還後の香港人の心情を書いたことがあります。これは後に副業先の編集部の連中に読ませたところ絶賛されましたから、リアル香港人の意識からそう遠くない内容なのでしょう。それを仕立て直して大陸の掲示板に貼ってみたところ、

「香港の立場は理解できるが、大局眼を持たない本位主義傾向が強いと思う」

 という感想が相次ぎました。「本位主義」とは「諸侯経済」で「諸侯」が地方保護主義に走ることを批判するときに使われる言葉です。地元最優先で中国全体の局面を理解しようとしない風潮、ということかと思います。

 ちなみに、「なんちゃって香港人」の私が某翻訳掲示板で日本人にレスした上記文章を貼っておきました。ネスケ推奨です。IEで見ると文字化けやレイアウトの崩れなどがあるかと思います。……もう1年以上も前、ちょうどサッカーアジアカップが中国で開催された直後のものです。

 ●Re: 19411208先生(2004/09/04)

 あと古いエントリーですけど、よかったらこちらもどうぞ。

 ●大激論!香港人vs中国人(2004/08/05)
 
 ●「愛国度」が試された?香港vs中国(2004/11/25)

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 中国国内メディアによる香港報道は非常に偏向かつ限定されており、要するに返還当時に「香港人はみな喜んでいる」と報じたスタイルそのままです。今回の件についても、

「政治改革によって大きく民主化への道を踏み出せる筈だったが否決されたのは残念」

 という曽蔭権・行政長官(香港のトップ)の談話などが紹介された程度です。

 http://news.xinhuanet.com/tai_gang_ao/2005-12/22/content_3953628.htm

 反対派の意見や「12.4」民主派デモなどといった詳細はもちろん省かれています。短波ラジオで「VOA」(美国之音)や「RFA」(自由亜洲電台)、あるいはBBCなどを聞いたり、ネットで当局の封鎖をくぐり抜けて情報を得たりしなければ詳しい経緯はまずわからないでしょう。

 ただ、現在は広東省など一部地域に限って香港への観光旅行(自由行)が認められています。そういう機会を通じて何事かが大陸に還流されていく可能性はあるでしょう。何たって新聞スタンドに寄れば反中共雑誌が普通に売られていますし、スターフェリーの乗り場近くで法輪功が活動していたりするのですから。今後観光客の増加に伴って「還流」が無視できない状況となり、中共は何らかの手を打つ必要に迫られると思います。

 もっとも「還流」が無視できない状況となるまで中共政権が無事でいれば、の話ですけど。

 ですから基本的には、当局によって染め上げられた「香港人」のイメージが庶民レベルには浸透しているのではないかと私は考えています。そもそも大陸の人間にとって、「反日」「台湾」に比べれば、政治的な存在としての「香港」はそれほど興味を引く対象ではないようにも思います。



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 香港(香港行政特別区)のことです。

 中共政権下にあって報道の自由、思想の自由、信教の自由、表現の自由などが保証され、立法機関である立法会全60議席のうち、わずか半分ではありますが30議席が直接選挙によって選出される。しかも現在、さらなる民主化である立法会の全面直選化や香港のトップである行政長官の直接選挙化、つまり普通選挙制度に向けた模索が公に行われている。

 そんな場所は中国において香港しかありません。

 ――――

 その香港でこの数カ月来、特にこの1カ月ばかり、政治改革に関する激しい綱引きが行われていたことは当ブログでも既報しております。

 ●「一二・四」民主化デモに中共は心臓バクバク。(2005/11/30)
 ●続・香港――中共必死だなw(2005/12/01)
 ●所詮は籠の中の鳥――それでも。(2005/12/06)

 中共の意を受けた曽蔭権・行政長官が示した政治改革案はロードマップがあるものの、それにタイムテーブルが付随していませんでした。それに民主派が反発して市民を巻き込んだ議論が行われ、12月4日に行われた民主派のデモが予想以上の参加者を集めるという中共・曽蔭権政権にとって不測の事態となりました。

 民主派の当初の主張は2007年(行政長官選挙)及び2008年(立法会選挙)時点での完全直選化でした。そういう具体的な時間表がついていなかったために、最終的には普通選挙制に移行させる、といってもそれがいつになるかという裏付けの全くない政府案は反発を浴びたのです。

 ――――

 最初に説明しておきますと、現在の立法会は30議席が直選枠、残り30議席は「功能別」(業界別)の選出枠で、業界別選挙の有権者は限定され、事実上親中派が当選しやすい仕組みになっています。直選枠の30議席については常に民主派が圧勝していますが、親中派も獲得議席があり、結果として立法会の過半は親中派によって占められている状況です。

 行政長官の選出はもっとぶっ飛んだシステムで、ほぼ親中派に独占された400名だか800名が有権者として投票し、中共のお望み通りの出来レースを完成させるというものです。人口700万人の香港にあって400名や800名が「民意の代表者」となってトップを選出するのですから呆れて物が言えません。

 さらにいえば、そういう出来レースで当選した行政長官を、中共政権の立法機関である全人代(全国人民代表大会)常務委員会が承認して初めて選挙が有効となり、当選が認められます。……この部分は香港基本法(ミニ憲法)の附則に明記されています。

 つまり、たとえ行政長官の直接選挙制が導入されたとしても、香港市民が選んだ候補者が中共の意に沿わなければ、当選は無効とされてしまいます。つまり「なんちゃって普通選挙制」であり、あくまでも籠の中の鳥に過ぎないのですが、それを知りつつ、それでもなお民主制度下の構成員たる権利を求めようとする香港人に、私はある種の切なさを感じるとともに、香港人が「植民地の奴隷」から「市民」へと確実に変貌しつつある姿を見てとるのです。

 ――――

 さて懸案の政治改革案です。曽蔭権政権のタイムテーブルなしのロードマップに対し、民主派はタイムテーブルを付した独自の改革法案を準備しました。そして12月21日、立法会においてそれらに対する表決が行われました。結果は両案とも否決、です。

 ところで、恥ずかしながら私は勘違いをしていました。過半数の賛成で法案が成立するものと思っていたので、現在親中派が多数派を形成している立法会で政府案が通過するのは容易だと考えていたのですが、実は3分の2の賛成票が必要だったのです。

 ところが、そうなると親中派の票だけでは足りないため、民主派から寝返り議員を出す必要がありました。このため曽蔭権政権はこの一週間そのための工作に全力を挙げてきたのですが、民主派の結束は固く、寝返り議員はわずか数名。結局親中派も3分の2に届かず、少数派である民主派もこれまた票不足。そのために両案とも否決、と相成ったのです。

 ――――

 さて、立法会での議決結果については姉妹サイト「楽しい中国ニュース」で速報した通りです。

◆香港立法会、中共推奨の政治改革案を否決。
http://hk.news.yahoo.com/051221/12/1js3b.html

謀反でござる。これによって民主化が加速されることもないが、中共も顔に泥を塗られた格好。普通選挙制先送りでも無問題。今後も一党独裁の弊害を象徴する孤塁として、欧米に民主化・人権問題で介入する口実を与え続ける、それが香港の存在意義。

 このコメントに全てを凝縮させてしまったのですが、つまりそういうことなのです。両案とも否決で喧嘩両成敗のようでもありますが、実際には統治者たる中共の推す政府案が没になったことで、中共の面子が潰され、その威信に傷がついた格好です。それ故に実質的には民主派の勝利ということができるでしょう。……もっとも民主派の改革案も否決されていますから、これで民主化が加速する訳ではなく、政治改革についての議論は仕切り直し、ということになります。

 ――――

 民主派はあくまでもタイムテーブルつきのロードマップを求めており、より現実的な案として次の次である2012年(行政長官選挙・立法会選挙)での普通選挙制導入を目指す形で固まりつつあります。対する曽蔭権政権にしても普通選挙自体に反対している訳ではありませんから、今後はロードマップの内容(例えば段階的にやるのか、一気に全面直選化とするのか)、それに具体的なタイムテーブルが焦点となってきます。

 しかし現在の香港市民を「籠の中の鳥」と表現し得るように、香港は実質的に中共政権の植民地です。カギを握るのはやはり中共が今回の結果をどう捉えるかということになります。以前も書きましたが、中共の本音は普通選挙などもってのほか、というところでしょう。直接選挙で香港市民が選んだ行政長官候補者を承認しないことはできますが、それをやると国際的イメージに響きますし、民主化・人権問題で欧米が介入しやすくもなります。

 そして突き放した見方をすれば、普通選挙制が導入されなくてもいいのです。天安門事件(1989年)追悼集会の開催や法輪功の活動が許されている現状を維持してさえいれば、香港は中共政権による一党独裁制という非道を際立たせる孤塁として、その存在自体が国際社会へのメッセージとなるのですから。

 ……もちろん、全面直選化が実現すればいよいよその存在が輝きを増すことになるでしょう。ただ中共もそうした香港の存在意義を失わせる手を打とうとするでしょう。具体的には香港基本法第23条に基づいた「国安条例」法案の再提出で、前回(2003年)はあまりにグレーゾーンに満ちた内容で政治犯を量産しかねないことに市民が反発し、歴史的な50万人デモでこれを廃案に追い込みました。もっともこの「国安条例」、曽蔭権行政長官は2007年までの任期中にこの法案の再提出は行わないと明言してはいます。

 ――――

 ともあれ政府案が否決されたことで、翌日の親中紙『香港文匯報』『大公報』(2005/12/22)はいずれも脊髄反射して弾劾調の社説を掲載しています。民主派の動きを「民主化の進展を阻み、歴史を後退させるもの」と難詰しているのは、政府案のロードマップを否定したことで民主化が遅れることになるぞ、という恫喝めいた物言いですが、香港市民がタイムテーブルのないことを問題とした訳ですから民意に従わなければなりません。政府案に対する反対票は全て直選議席枠で当選した、つまり民意を代表した議員によるものです。

 中共政権が香港の民意を汲んで譲歩するか、それともあくまでも我意を通そうとするかは胡錦涛政権の内政面でのスタイルを反映するものですから注目に値します。それを横からじっと眺めている台湾の存在も忘れてはなりません。庶民派を偽装していた温家宝の化けの皮がいよいよ剥がされそうで楽しみです。



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 広東省汕尾市で12月6日に発生した発電所建設をめぐる官民衝突、公権力側の武装警察(武警=準軍隊)が出動して農民側を銃撃、多数の死傷者を出したとされる「12.6」事件の続報です。

 事件から2週間ですね。当ブログでも何回かに分けて事件を追ってきました。

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 ●官民衝突で武警が実弾射撃、農民に多数の死傷者。(2005/12/08)
 ●「調和社会」が揺れている。(2005/12/09)
 ●「12.6」事件――さて中国国内でも報じられた訳だが(2005/12/12)
 ●ざわついてきたと思いませんか?(2005/12/14)

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 その後の動静について日本の報道から拾ってみますと、次のようになります。

 ●発電所めぐる衝突事件 中国「法によって処理」(西日本新聞 2005/12/16/:01:53)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051216-00000020-nnp-int

 ●独立調査の実施、中国に要求=警官隊発砲事件で国際人権団体(時事通信 2005/12/16/07:01)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051216-00000017-jij-int

 ●中国に抗議書簡=警官隊発砲事件で米有力議員(時事通信 2005/12/17/07:01)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051216-00000203-jij-int

 ●広東省衝突で地元当局者「少数の謀反分子が扇動」(Sankei Web 2005/12/18/20:54)
 http://www.sankei.co.jp/news/051218/kok063.htm

 ●広東省での衝突で死亡した住民3人の名前公表(毎日新聞 2005/12/19/10:07)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051219-00000017-mai-int

 ●中国:格差に不満、騒乱続く 広東省の発電所建設で衝突、死者(毎日新聞 2005/12/20)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/asia/china/news/20051220ddm007030071000c.html

 ――――

 いちばん下の『毎日新聞』が特集風のまとめ記事になっていていいです。で、今回はその上の2本、事件についての記者会見が開かれたことがトピックとなります。以下が原文。

 ●紅海湾「12.6」深刻な非合法事件、その経緯と処置状況(『南方日報』 2005/12/18/08:19)
 http://www.nanfangdaily.com.cn/southnews/dd/nfrb/a03/200512180017.asp

 記者会見の概要については日本側の報道を読むのが手っ取り早いです。3死8傷という農民側の被害者数に変化はなく、死者の姓名が始めて明らかになりました。「農民を煽動した」とされる首謀者は逮捕されており、前回の「公式報道」の末尾にあった、

「現在、『12.6』事件の調査・処理が進められているところだ」

 という調査・処理が一段落したということでしょう。ただ不手際な警告射撃で死傷者を出したとして刑事拘留されている「現場指揮員」についてはなお調査中であり、処置が定まれば改めて発表する、としています。

 ――――

 うーん、と私は唸ってしまいました。なぜかといえば、この記事は事件の起きた汕尾市政府報道官による記者会見という形がとられているからです。

 前回の「公式報道」の文末では、広東省当局が翌日には現地入りして状況の把握に努め、事件の処理について市当局に指示。市当局も調査チームを組織して対応しており、

「現在、『12.6』事件の調査・処理が進められているところだ」

 ……とされています。この「公式報道」のマスター版が掲載された『南方日報』は広東省党委員会の機関紙で、要するに広東省当局から出た「公式報道」です。ただし広東省当局による「公式」ではあるけれど、中央政府によるオフィシャル版ではない。その証拠にこの「公式報道」は「新華網」(国営通信社の電子版)で全国ニュース扱いされず、「地方チャンネル」の広東省のページに掲載されたのみでした。

 要するに、中央政府はこの「公式報道」を承認していない、ということです。「納得していない」という方が正確かも知れません。前掲した『西日本新聞』の記事にあるように、12月15日に開かれた外務省報道官記者会見でも記者から出された「12.6」事件に関する質問に対し、

「新たに補足する事実はない」
「現在も調査中で、事件は法によって処理される」

 と、秦剛副報道局長は素っ気無い回答をしています。

 ――――

 問題は、「現在も調査中」の主語、つまり調査を行っている主体が明らかにされていないことです。中央政府が介入しているのか、広東省当局なのか、それとも汕尾市当局に任せてしまっているのか。……国際的に暴露されてしまった事件ですから、胡錦涛政権がどう対応するかがポイントのひとつでした。

 そして今回の記者会見です。何とまあ、出て来たのが汕尾市政府報道官であり、質疑応答には広東省当局がどうしたこうした、ということも出てきません。つまり事件については汕尾市当局が一手に切り回しているのです。ただそれを広東省当局が追認していることは、今回の記者会見の記事、そのマスター版も『南方日報』から出されたことで明らかです。

 それでは中央政府の対応は、といえば前回と同じで、「新華網」では今回も「地方チャンネル」の広東省のページにのみ記事が掲載されました。国際的にも有名になってしまった事件なのに、相変わらず全国ニュース扱いしていない、というところに中央が広東省当局・汕尾市当局に対し何らかのわだかまりを抱いていることがうかがえます。

 http://www.gd.xinhuanet.com/gdnews/2005-12/18/content_5840582.htm

 大手ポータルの「捜狐」(SOHU)でも地方ニュース扱いです。

 http://news.sohu.com/20051218/n241013916.shtml

 「12.6」事件の類似例として引き合いに出される今年6月11日に発生した定州事件、土地収用を拒む農民たちを雇われ暴徒が襲撃して6死48傷の被害を出したうえ、襲撃シーンの映像が海外に流出したあの事件では、中央はほどなく全国ニュースとして事件を報道し、最近開かれた同事件の初公判もこれまた全国ニュースとして報じているのです。

 http://news.xinhuanet.com/legal/2005-12/15/content_3927261.htm

 ――――

 ところが今回は、そうならない。だからうーんと唸ってしまいます。ひとつ言うなら、今回の「記者会見」は前回の「公式報道」に比べて農民側の「悪者度」が多少高くなっているように思います。対応が不適切とされた武警の「現場指揮員」は刑事拘留されたとはいえ、未だに調査中のままです。

 一方の定州事件は襲撃された農民たちには非がなく、定洲市トップをはじめ事件に関与した27名が被告席に立たされています。でもこの違いが扱い方の差になっているのかといえば、そうではないように思うのです。一例として昨年秋に重慶市・万洲区で発生した都市暴動、暴徒及び暴徒を煽った連中が悪者にされ、警察側に非はなしとされた事件です。これは当初「新華網」では地方ニュース扱い(「地方チャンネル」重慶版)にしたものの、すぐに全国ニュースに仕立て直されています。

 この調子なら、定洲事件と違って汕尾市当局のトップがクビを飛ばされることにはなりそうにありません。むしろ「現場指揮員」だけの責任として、重慶の都市暴動のように市当局にはお咎めなし、となりそうな気配です。

 「新華網」がなぜ全国ニュース扱いにしないのか、正直、わかりません。それとも、中央たる胡錦涛政権が本来なら動くべきところなのに、広東省に介入できない、自侭に手を突っ込めないでいることを示しているのでしょうか。

 もしそうだとするなら、「12.6」事件は非常に象徴的な、モデルケースともいえる意味合いを持つことになります。示唆するところは、中共政権の立ち腐れがいよいよ始まった、というところでしょうか。

 各地方政府、すなわち「諸侯」に対する中央の支配力が弱まり、今回のような事件が起きても介入することができない。……のだとすれば、なまじ一党独裁制で有力な野党を持たないために、政権交代が直ちに行われることはなく、また大変革が起きる訳でもないので「諸侯」ごとにくっきりと分裂することも考えにくい。ただ、中国全土の統治者としての中央政府がゆっくりと立ち腐れ、支配力を失っていくのです。

 あるいは、「12.6」事件はその嚆矢なのかも知れません。土地売却益の横領疑惑に加え、武警が農民への銃撃をためらわなかった点についていえば、公権力がいよいよ土匪めいてきた、とみることもできます。そして、その反作用として自己防衛のために武装化する農民。

 ……飛躍しすぎた見方、というのは自分でもわかっていますが、国際的な非難を浴びている事件に対し、中央政府が口を濁し自らはっきりと態度表明を行わないのですから、ついそう勘繰ってしまいたくもなります。

 ――――

 ところで、以上の事柄とは無関係ながら、あるいはひとつの文脈で語れるのかも知れない事件が起きています。化学工場の爆発で松花江汚染を招き、副市長が自殺した吉林省・吉林市の市政府オフィシャルサイトがここ数日、ハッカーの攻撃を受けているのです。『蘋果日報』『明報』など一部香港紙(2005/12/20)が報じたもので、これは中国国内でも報道されています。

 ●『明報』(2005/12/20)
 http://hk.news.yahoo.com/051219/12/1jpp8.html

 ●大手ポータル「網易」(2005/12/18)
 http://tech.163.com/05/1218/07/25865SEK000915BF.html

 ●大手ポータル「新浪網」(2005/12/19)
 http://news.sina.com.cn/c/2005-12-19/09388620022.shtml

 ●『新聞晨報』(2005/12/20)
 http://www.xmwb.com.cn/jj/t20051220_763329.htm

 ●「新華網」(2005/12/20)
 http://news.xinhuanet.com/comments/2005-12/20/content_3944465.htm

 わざわざ吉林市が狙われたということで、単純なイタズラとは異なり、ある種の意図を感じさせるように思うのですが……どうでしょう?



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 今回は勝手ながら雑談及び楊子削りとさせて頂きます。標題の通りです。

「台湾」
「台湾人」

 という言葉を耳にすると、私はもう無条件で言い様のない情感と好感を覚えてしまうのです。

 ――――

 前回の「楊子削り」の冒頭で、
「ときに落ち着いて来し方を振り返ってみたりするのですが、どうも私は典型的な留学生崩れの道を歩んでいるようです」と書きましたが、誰も好んでそうなった訳ではありません(笑)。私だって駆け出しはマトモだったのです。ただ選択を誤ってしまいました。

 当時はバブルの末期で就職戦線は売り手市場。いくらでも口があったのですが、そこは若年客気、できれば小さな会社で自分の働きが会社の業績に反映されるようなところがいいと考え、新卒で中国貿易をメインとする商社に入社しました。他にも色々内定をもらったのですが、
「会社が人を選ぶのと同様に、こちらも会社を選ぶのだ」という不遜な考えでしたから、内定を蹴ることに何の罪悪感も感じませんでした。

 さて入社した商社ですが、上述したように当時はバブルの末期。その会社も御多分にもれず、実は土地を転がして利鞘を稼ぐことで商売が成り立っており、対中貿易も色々やっていたのですが赤字部門のようなものでした。

 小さな会社です。むろん研修めいたものなどなく、私は入社2日目から先輩に連れられて営業をやらされました。後に香港で真価を発揮することになる「口先三寸」技(笑)はどうやら生来のものらしく、ほどなく1人で動くように命じられました。

 むろん得意先を任されるのではなく、それを自分で見つけてこいという飛び込み営業です。でもこれで海外営業の第一歩を踏み出したのだという喜びがありました。……というのは嘘でして、こんなことをやっていて一人前になれるのだろうかというのが本音でした。「こんなこと」が何かは内緒ですが、あまり誇れる内容のものではありません。あ、もちろん法に背く行為ではありませんでしたけど。

 ――――

 で、繰り返しますがバブルの末期です。そのころには、いわゆるバブル崩壊はたぶん一部では始まっていたのでしょう。その証拠に土地転がしで稼いでいた私の勤務する会社があれよあれよという間に暗転していき、入社後3カ月で倒産してしまったのです(笑)。いや笑い事じゃありません。倒産、あれは実に呆気無いもので、変だな?妙だな?……と気配の微妙な変化に気付いたときにはもうどうにもならず、片目をつぶっていました(1回目の不渡り)。

 その後は営業どころではありません。債権者が押し掛けてくる前に会社の資産である商品やらリースしたコピー機をあちこちに運んで隠す仕事ばかりでした。士気もすっかり落ちて、勤務時間中に再就職先を探したり、終業後は専務とかがボトルキープしている店に出かけてそれを空にするまでみんなで騒いだり。この間のあれやこれやを具体的に書くだけで読みごたえのあるドタバタ劇になるのですがそれは割愛。

 ともあれ私も就職先を見つけなければいけません。営業部長とその得意先であるアパレルメーカーの社長の酒席に呼ばれて、「上海に工場を出すから現地駐在員になってくれないか」と誘ってもらったのですが、そのときは「もう対中貿易は勘弁」という気分がありましたし、中国語を使えるのは嬉しいものの、仕事でその社長に接していて呆然とするような現地の縫製技術を目の当たりにしていましたから、折角ですがと辞退しました。これは正確な選択だったと思います(笑)。

 ――――

 そのうちに新聞の片隅に香港の日系企業の求人広告が出ました。中国語の技術が問われる職種で、それならと思って応募してみました。しかし倒産当時のダラダラ気分が残っていたせいか、面接試験の時間に遅刻する始末。しかも軽い翻訳テストと面接と聞いて案内されたのは大部屋で、いかにも仕事の出来そうな女性や遣り手のビジネスマンといった風情の男性が黙々と翻訳に挑んでいるのです。

 試験は2回に分けて行われたらしいのですが、私のときだけで50人はいました。翻訳自体は鼻歌まじりの楽な文章でしたが、遅刻までした私は競争率の激しさにこりゃもういかん、帰っちまおうかと思いました。

 ところが、これに合格してしまったのです。百数十人受けて採用2名という話なので信じられませんでしたが、これには事情があって、

「中国語も一応できるようだし素直そうでいい(若いころ私が得意とした擬態ですw)。若いから給料も安くて済むし、営業が出来そうだから使えなかったらそっちに回そうと思った」

 と後に社長から直々に聞かされました。仕事に関しては全くといっていいほど期待されていなかったようです(笑)。

 そして7年に及ぶ香港生活(最初で最後の日系企業)がスタートすることになるのですが、意外なことは続くもので、回された仕事が大学時代の専攻と私が関心を持っている分野にドンピシャでした。それで重宝されることとなり、期待されていなかった分だけ過大な評価を受けることとなりました。

 海外に出て来たのに試用期間の3カ月でクビを切られたらどうしよう、と常に不安だったのですが、
「お前はよくやっている」と、正式採用と同時にドーンと給料を上積みしてくれました。それだけではなく、社長に呼ばれて旧正月期間の休暇中に台湾出張を命じられました。何で休み中に仕事?と思ったのですが、

「仕事はしなくていい。エアチケットとホテル代を出してやるからのんびり遊んでこい」

 と豪儀な話です。私はといえば、本当に期待されていなかったんだなあと実感したものです(笑)。

 ――――

 ようやく台湾の話となりました(笑)。1990年代初頭のころです。初日は夜遅くの便で台北入りしてホテルにチェックインして寝ただけで終わったのですが、翌日いきなりガツンとやられました。とは、旧正月ですからレストランなどが軒並み休業していて、ホテルの洋食レストランを別とすれば、あとはマクドナルドとかケンタッキー、あるいはデパ地下といった場所しか食べるところがなかったのです。

 いや、最初のガツンは床屋でした。「先生、要不要舒服?」(気持ちのいいサービスの方もいかが?)というアレではなく、正真正銘の散髪屋です(笑)。驚きました。広東語一辺倒の香港と違って、北京語がそのまま通じるのです、北京語が。……台湾なんだから当然といえばそれまでですが、髪型の注文に加えて、カットしてもらいながら散髪屋のお姉さんと北京語で世間話ができた、ということが例えようのない快感であり、広東語によるストレスが一気に散じられる思いでした。

 そのあとに台湾の新聞でも読んでみるかとコンビニに入りました。入った途端、店員に
「歓迎光臨」(いらっしゃいませ)と言われて再びガツンです。大袈裟でなく耳を疑いました。だって当時の香港のコンビニでそんな挨拶をされることは絶対あり得なかったからです。残念ながら新聞は売り切れていたので何も買わずに店を出たのですが、そこでまた一言、中国語は思い出せないのですが「有り難うございました」と言われたのです。

 衝撃でした。香港なら何も買わない客に聞こえるように「チッ」と舌打ちしてみせたりするのが常識でしたから。どうやら違う、台湾は違うようだということに気付きました。日本と同水準の、マニュアル型の受け答えをこなせるレベルのサービスがしっかり根付いているということです。

 そこでマクドナルドに行きました。ああ、やはり香港と違いました。営業スマイルから始まって最後まで日本同様の応対ぶりです。念を入れてケンタッキーにも行きましたが、やはり同じでした。マニュアルをこなせるのです。そういう店と違い、デパ地下の安っぽい食堂や街角でまれに開いていた豆乳の店などでも香港とは正反対の、客を客として丁寧に扱うことがリピーターにつながって長い眼でみると得、という考えに基づいたサービスが根付いていました。

 あるいはそれはサービスの観念とかではなく、台湾人の対人接触に一種の優しさがこもっていることに起因しているのかも知れません。いずれにせよ、私は社長からの御褒美による台湾出張で得難いものに接することができました。そのときの別種の体験(台湾独立派の新聞記者に会ったり、アマチュア専用のライブ喫茶へ行ったり、そごうの喫茶店で隣席のお姉さんたちを捕まえて色々話を聞いたり、コンビニで『non・no』が売られていて驚いたり)も含め、これが私の台湾観、台湾人観の基礎となったのですが、その後仕事で何度足を運んでも不愉快な目に遭うことがなく、台湾は常に香港生活でストレスが蓄積された私を癒してくれました。

 ――――

 その後歳月が流れ、私が香港・台湾メディアと関わっていたころ、とある台湾の出版社にスカウトされました。副業で書いていた中文コラムを読んで社長が私の物の見方を評価してくれたとのことで、そんな殺し文句を言われたら私も動揺します(笑)。ただそのころは香港とのつながりが深く、仕事も重要な時期にあったのでそのときは辞退し、様々な経緯から数年後に改めて招請を受け、その台湾企業に入りました。

 最初は社長室付の東京駐在員だったのですが、何年かして社長から台湾本社への異動を打診されました。どうにも元気がなく業績も上向かない編集部があるのでそれを建て直してほしい、ということで、いわば再生工場役なのです。もっとも私も台湾出張を重ねていましたから、会社にいくつかある編集部の中でそこだけは手の付けようがないことはわかっていました。

 その編集部だけ士気も低いし、元気もないし、制作レベルも低いのです。ただそれは責任者の問題によるもので、下っ端にも機会をどんどん与えて、じっと我慢して褒めて伸ばすことで自信を付けさせ、その過程で本当に使えない者を整理しつつ外から人を入れて戦力強化すれば何とかなるだろうという目で私は東京から眺めていました。

 ただ営利企業ですからそう長くは待ってくれません。採算を考えるなら盲腸を切るように潰した方がいいだろうと考えていたのですが、他人事ではなくなってしまったのです。潰せばいいのはわかっているが、草創期に会社の柱として活躍したその編集部に思い入れが深いので何とかしてほしい、というのが社長の弁です。

 私はこの社長が好きで、現在に至るまで、この社長ほど英気溌溂としていて人間的にも尊敬に値する、また人生の師とするに足る人物には巡りあっていません。浪花節ですが、最初にスカウトしてくれたときからの恩顧に応えるべく、討ち死に必定であることを承知しつつ異動を受け入れました。

 ――――

 これでまず喜んだのが他の編集部で、着任したところ社内で唯一広東語に通じた人間(笑)と重宝されて、香港からの電話を通訳させられたり、挙げ句は香港誌に載せる広告の広東語コピー作成を頼まれたりしました。「ひとりだけ日本人」状態は相変わらずです。……仕事では苦しいことが多かった割に、頭に浮かぶのは楽しい思い出ばかりです。

 以下はちょっと劇的なのですが、私が赴任して編集部長兼編集長のようなものになり、社長の支持とそれなりのポストであるのをいいことに、かなり無茶な、破天荒なやり方で建て直しと意識改革の手を次々と打つうちに、編集部が生まれ変わったように元気になり、士気も高まって、会議でも開けばみんな下を向いて黙然としていたのが、どんどん手を挙げて積極的に意見を言うようになりました。

 機会を与えられれば嬉しいでしょうし、その仕事ぶりを褒めてやればヤル気も出るのでしょう。その気になれば相応に仕事の質もよくなりますし、それゆえ積極的にもなるもののようです。非常にベタな展開なのですが、現実にこんなマンガみたいなことがあるのかと私自身が信じられませんでした。

 もちろん無茶で破天荒な分だけ秩序紊乱な部分もあるため抵抗勢力による排撃も相当受けたのですが、私はそのたびに白髪を増やしボロボロになりつつ(笑)、辛うじてそれを跳ね返し、編集部を守るという姿勢を崩しませんでした(配下に対する演出・演技という側面もあります。そりゃもう元「漢方医」ですからw)。あるいは、そういう私を間近で見ていたので部下たちが哀れんでついてきてくれたのかも知れません。

 唯一心残りなのは、親が病気になったため1年ばかりで退社して台湾生活を切り上げる破目になったことです。そのため任務も完遂するまでには至らず、社長にも部下にも申し訳ない気持ちがあります。ただ、仕事が忙しくて観光するヒマもありませんでしたが、日常生活で接した台湾人たちはみんな親切で優しく、私の台湾と台湾人に対するイメージは最初のガツンから損なわれることなく、より好もしく強固なものとなりました。

 ――――

 そして楊子削りとなる訳ですが、これは紹介するまでもなく皆さんは一読した御経験がおありかと思います。私は文学というものが苦手で、小説といえば故・司馬遼太郎氏の著作ばかり読んでいましたが、散文に傾くようになってから出た『台湾紀行』は氏の著作のベストテンに入れる価値のある名作だと思います。

 もう一冊の『台湾人と日本精神』は討ち死に覚悟で台湾に赴任する際、何かすがるものが欲しくて愛読書たる『台湾紀行』に加えて選んだのがこの本でした。仕事で苦労するたびに、「日本精神」という言葉に勇気づけられたものです。

 長くなったついでに司馬遼太郎の作品の中で私が最も好きで影響も受けた『峠』も加えておきます。深い部分でヲチの基礎にもなりました。ただ御家人を再生産してもロクなことはありませんから、前途のある真面目な学生さんは万一を考えて読まない方がいいかと思います(笑)。

『ワイド版』 街道をゆく 40 台湾紀行

朝日新聞社

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台湾人と日本精神(リップンチェンシン)―日本人よ胸をはりなさい

小学館

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峠 (上巻)

新潮社

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峠 (中巻)

新潮社

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峠 下  新潮文庫 し 9-16

新潮社

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 私は中国観察にかけては素人です。である以上、中国経済を云々できるような力はもちろんありません。

 ただ記事漁りをしていて思うのは、10月の五中全会(党第16期中央委員会第5次全体会議)で決まった「十一五」(第11次5カ年計画)の大枠と、それに関するバラ色の未来を描いた報道、これが当初は経済関連の記事において相当な比重を占めていたのですが、最近は「重複投資」とか「生産過剰」とか「デフレ懸念」とか、警鐘を鳴らしたり楽観ムードに水を差すような記事が増えていているということです。

 ――――

 なぜ生産過剰が発生するかといえば、どこもかしこも似たようなモノを造るようになるからです。重複投資ですね。これだけでも十分に資源の無駄遣いなのですが、製造された製品だってにわか造りで手がけたものですから品質が劣悪なものが多い。当ブログの補助サイトである「楽しい中国ニュース」から関連記事を拾ってみますと、

 ●政府、鉄鋼生産過剰で減産へと軌道修正。
 http://hk.news.yahoo.com/051209/74/1jf89.html

 ●政府、電解アルミ生産過剰で減産へと軌道修正。
 http://hk.news.yahoo.com/051209/74/1jf80.html

 ●コンテナ生産過剰で2カ月間生産停止へ。
 http://hk.news.yahoo.com/051209/74/1jes0.html

 ●社会科学院筋「生産過剰問題はかなり深刻」。
 http://hk.news.yahoo.com/051212/74/1jhjf.html

 ……といったところです。ではなぜ各地で似たようなモノを造るようになるかといえば、「いまはそれが売れ筋だから」というケースもあるのですが、最大の理由は省レベルで自己完結した生産体系を擁したいからでしょう。要するに「諸侯経済」というやつで、どの「諸侯」も鉄鋼やアルミやセメントなどの生産ラインを自分で保有しておきたい。

 ――――

 それから以前にも紹介しましたが、沿海部・内陸部を問わず、各地方がみんな
「上海のようになりたい」と考えています。全国百余都市の発展目標が「国際的大都市」ですから。

 ●「新華網」(2005/10/08)
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2005-10/08/content_3591687.htm

 中央からみればこれもアンバランスな上に資源の無駄遣いになる「盲目的な成長志向」ということにになりますが、「諸侯」にとっては鉄鋼やアルミやセメントなどの生産体系を自前で持っていたいのと同じことなのです。全国という大局を顧みることなんかお構いなしに、まず「諸侯」として自己完結を果たしたいですから、上海のような繁華を極めたキラキラした「国際的大都市」をひとつふたつ持つことも欠かせない。

 こうした「諸侯」の動き、これはもう制度がどうこうというより、数千年という歳月の蓄積で備わった行動本能のようなものです。それが分権化と競争原理の導入を骨子とする改革開放政策によって顕在化した、というところでしょう。

 ――――

 然るに現在の中央たる胡錦涛政権は統率力がさほどでもない。だから先日呉邦国・全人代常務委員長が広東省を視察したように、党中央政治局常務委員クラスの高官中の高官を各地に派遣して釘を刺したりもしているのですが、効果は薄いと言わざるを得ません。そこで、

 ●今年の投資規模、実績ベースで昨年を上回る見込み。
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2005-12/11/content_3905229.htm

 ……ということになります。GDP成長率も9%台になりそうな見通しで、中央が当初考えていたような「適宜に減速してソフトランディング」とは全く異なる展開です。要するに胡錦涛が否定した江沢民時代のイケイケ型成長志向、GDP成長率信仰にストップがかかっていない。そこで最近、中央によるマクロコントロールの強化がいよいよ声高に叫ばれるようになったのでしょう。

 ●中央の統制力強化を訴える論評が『瞭望』誌に登場。
 http://www.southcn.com/news/china/zgkx/200512110070.htm

 生産過剰の問題にしても、中央が一喝してやめさせないと、旗印である「バランスのとれた持続的安定的成長」など画餅に終わってしまいます。沿海部と内陸部で同じようなことをやっていれば、地域間格差もいよいよ拡大してしまいます。問題は中央に「一喝」できる統率力があるかどうかですよねえ。

 ――――

 不動産開発もそうしたことの一環、つまり中央の統率力の弱さと対応の遅さが仇になったと捉えられなくもありません。「まずい」と思って対策を講じたときには、投機筋はすでに売り抜けて一般市民がババをつかまされた格好です。ただそうした市民にせよ主に投機目的でしょうから同情する必要はありませんけど。

 前回紹介した上海の件、日本でも報道されましたね。

 ●マンション契約解除広がる 価格下落の上海で(共同通信 2005/12/13)
 http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=DLT&PG=STORY&NGID=econ&NWID=2005121301000173

 【北京13日共同】政府の引き締め策で不動産価格が下落している中国上海市で、高値で契約したマンションの買い主が契約解除を要求する動きが急速に広がり、市当局も社会的影響を懸念し始めた。新華社電(電子版)がこのほど伝えた。

 新華社電によると、上海では昨年末から今年初めのピーク時に1平方メートル当たり9000元(約13万5000円)から1万4000元で発売されたマンションと同じレベルの物件が、現在は8000-9500元程度で売られている。

 このため、高価格で契約した買い主の間で違約金を払っても契約を解除しようという動きが加速。あるマンションでは、買い主50人以上が集団で不動産会社に解約を要求した。売り主側が拒否し、訴訟になるケースも増えているという。

 ――――

 たぶんこの記事の元ネタだろうと思うのですが、大手ポータルにも掲載された新華社電が次々と削除されてしまった件、

「从上海“退房風潮”看楼市之變」(上海の「キャンセルブーム」からみる不動産市場の変化)

 という報道ですね。私自身は記事を保存しておきましたが、ネット上に残っているのを発見しました。

 http://economy.jschina.com.cn/gb/jschina/finance/node6358/node6359/userobject1ai1100988.html

 記事を改めて読み返したうえで「なぜ削除されたのか」と考えてみるに、やはり不動産景気には地方政府が一枚かんでいて、デベロッパーとともに甘い汁を吸っていた、という指摘、それは誰でも知っている構図ではありますが、公器においてそうした指弾が赤裸々に行われている点が問題となったように思います。

 これは「中央vs地方」という政治問題でもありますし、再開発に伴う土地収用で農村でも都市でも無茶な強制執行が行われ、そのたびに官民衝突が発生していることを思えば、現今の社会状況に照らしても刺激的にすぎる、という判断がなされたのかも知れません。

 「退房風潮」というのは流行語になりそうですが、この騒ぎが上海だけで収まるかどうか。上海を荒し回ったホットマネーはちょっと前から珠江デルタへと戦場を移しており、深センや広州が投機筋に狙われています。

 ――――

 松花江汚染が発覚したころから、胡錦涛政権は相次ぐ「内憂」でグラついているようにみえます。もはや国際的に有名になってしまった「12.6」事件についても中央の口からは何も語られないままです。

 現在は各地方において「十一五」の具体的内容を煮詰めている段階ですが、その内容も「上有政策,下有対策」(中央が政策を下達しても地方レベルではそれを骨抜きにしてしまう)という毎度お決まりの展開になるかも知れません。

 あるいはそれが討議される全人代(全国人民代表大会=立法機関)以前にドカンと一発あっても不思議ではないように思えます。そうなりかねないタネ火のひとつとして、不動産関連の動向には注意が必要でしょう。

 小泉首相による靖国神社参拝以来、日中関係というか中共政権の対日路線に注目してきたのですが、気がついたらいつの間にか「中央vs地方」が焦点になっていた。……そんな印象なのです。



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 中国が政治・経済ともちょっとざわついてきたように感じます。この一週間ばかりの印象です。「12.6」事件ばかりではありません。ちょっと散漫になりますが関連記事を拾い上げてみます。

 ●北京の「直訴村」取り壊し 中国、陳情者ら多数拘束(東奥日報 2005/12/13)
 http://www.toonippo.co.jp/news_kyo/news/20051213010019891.asp

 例の地方から上京してきて中央の担当窓口に陳情する農民らが集まり滞在しているバラックのような場所ですね。陳情制度については法改正でなるべく地元当局に対して行うように、それも直接出向く「上訪」ではなく書面による「信訪」を主とするようにはなっていましたが、中央への「上訪」も違法ではありませんでした。

 単純に北京市の美化政策の一環なのかも知れませんが、それにしてはタイミングが合い過ぎていますよね。国内の反体制系知識人や人権活動家が「12.6」事件への非難声明を国際人権デーの12月10日に発表し、同時にネット署名活動を開始したようですが、こうした動きに対する面当てという可能性もあります。

 ●「明報即時新聞」(2005/12/13/21:10)
 http://hk.news.yahoo.com/051213/12/1jj4f.html

 あるいは、人権活動家は以前から陳情者を支援していたので、「12.6」事件の情報が陳情者の耳に入り、思わぬ事態に発展するかも知れないから先手を打った、ということかも知れません。

 ――――

 それからこれはバブルが弾けはじめたのか、それともバブル崩壊が顕著になったと言うべきなのか、上海で購入を予約した住宅物件のキャンセルが相次ぎ、
「退房風潮」と呼ばれています。

「从上海“退房風潮”看楼市之變」(上海の「キャンセルブーム」からみる不動産市場の変化)

 という記事が国営通信社の電子版である「新華網」(2005/12/12/09:33)に出たのですが、いま引用しようとしたら削除されていました。あれ?と思って大手ポータルの「新浪網」(SINA)で調べたらこちらも転載されていた該当記事が全削除。何なんでしょうか一体。

 香港の親中紙『香港文匯報』(2005/12/14)もモルガン・スタンレーの観測として
「中国では上海にのみバブルが存在する」という思わせぶりな記事を掲載しています。

 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0512140024&cat=002CH

 ――――

 一方で全国の販売住宅物件(商品房)の空家率が10月末時点で26%に達した、これは危険水域だという警告を国家統計局が発しています。

 ●「新華網」(2005/12/13/10:29)
 http://news.xinhuanet.com/house/2005-12/13/content_3914218.htm

 で、これを下敷きに香港の親中紙『大公報』(2005/12/14)が
「銀行の不良債権増加による経営悪化も懸念される」みたいな記事を出しています。

 http://www.takungpao.com/news/05/12/14/MW-497220.htm

 こういうことで足並みが揃うというのはもちろん吉兆ではありません。記事になるくらいですから現地はよほど深刻な状況になっているのでしょうか?それにしても記事の全削除が気になります。

 バブル自体の行方も気になりますが、これまで上海をはじめとする各地方政府が不動産開発で巨利を得ていたことを考えると、糧道を絶たれた怒りが不動産高騰抑制策を講じた中央政府への反発という形に転化される可能性があります。経済問題であると同時に、「中央vs地方」の力関係に影響を及ぼす政治問題でもあるのです。

 ――――

 続いては南京何たら事件。12月13日が68周年ということで記念式典が開催されたのですが、出席者は3000人。しかも近所の学校から動員された観がありありと出ています。

 そして「1937・南京真相」というテレビドキュメンタリーが放映されたのですが、どうもこれはいけません。いやネーミングがです。だって中共が「真相」と銘打ったものほど嘘臭いものはないのですから(笑)。

 http://news.xinhuanet.com/politics/2005-12/13/content_3915517.htm
 http://news.xinhuanet.com/politics/2005-12/12/content_3911716.htm

 私が中国に留学していた時期に天安門事件(1989年)が発生したのですが、その直後から「事件の真相」という番組がテレビで嫌というほど流されました。要するに天安門広場を占拠していた連中は反革命の暴徒で、それを鎮圧した人民解放軍は英雄だ、という内容なのですが、他に「××的真相」と題された民主化運動の指導者たち(例えば劉暁波)を貶める書籍なども出版されました。

 そんな訳で私のいた上海の市民は「また政治運動か」と諦め顔ながらも軍隊が自国民を殺戮したことに怒りを隠さなかったのですが、当事上海市長だった朱鎔基がテレビ演説の中で、

「事件の真相はやがて歴史が明らかにするだろう」

 と政治的に極めて際どい発言(実際後で保守派に叩かれて失脚しかけています)をして市民の心をつかみ、上海を取り巻いていた軍隊が市内に侵攻して戒厳令施行、という最悪の事態を回避することに成功しています。

 昔話はともかく、南京何たら事件について。香港の最大手紙『蘋果日報』(2005/12/14)によると、
当局は民間による記念活動開催を禁じたようです。このため糞青(自称愛国者の反日教徒)どもは仕方なくネット上でそれらしきことをやるしかなかったとのこと。この「民間の活動を禁じた」というのも中央の社会状況に対する見方を反映している訳ですから留意する必要があるかと思います。

 ――――

 そして「12.6」事件。12月13日に開かれた外交部報道官定例記者会見で当然のようにこの事件に関する質問が出され、秦剛報道副局長がこれに言及しています。

「今回の事件(「12.6」事件)と1989年に発生したあの事件(天安門事件)を同列に論ずることはできない」
「1989年の事件については我々はすでに結論を下している。だが今回の件(「12.6」事件)について、私は関連資料が手元にない」

 ……だ、そうです。この記者会見では「12.6」事件に関する質問が相次いだようですが、秦剛はこれについて、

「私もメディアの報道から関連情報を耳に入れている状況で、事件の具体的な状況はよくわからない」

 とかわし続け、最後には記者に対し、この件に関しては
「もう手を上げないでくれ」(質問するな)と言う始末。もちろんこの一切は中国国内メディアの報道ではカットされています。

 http://hk.news.yahoo.com/051213/12/1jj6e.html

 ともあれこれでとりあえずわかったのは、天安門事件と「12.6」事件は別物だということと、中央はまだ「12.6」事件に対する結論を出していない、ということです。結論が出ていれば秦剛もスラスラと答えることができたでしょう。

 ――――

 結論が出ていないから天安門事件と同列に論じられない、というだけではないでしょう。

「私もメディアの報道から関連情報を耳に入れている状況で、事件の具体的な状況はよくわからない」

 というよそよそしさは、はからずも広東省当局、そして事件現場の汕尾市当局に対する中央の不満を示してしまったように思います。

 前回書いたように、現在の「公式報道」は広東省当局から出たもので、中央によるものではありません。ですから「新華網」もこれを全国ニュース扱いせず、地方欄に「公式報道」を掲載したのです。「公式報道」の内容に中央が満足していれば、全国ニュースとして扱い、また秦剛も苦労することがなかったでしょう。恐らく、

「広東省党委・省政府は事件を高度に重視、地元党委・政府は法に則って事件を適切に処置」

 という「公式報道」のサブタイトルからして気に入らなかったのだと思います。手ぬるい、ということです。そしてこの「公式報道」はその文末において、

「現在、『12.6』事件の調査・処理が進められているところだ」

 としています。つまり取り調べは済んでおらず、事件の全容が未だに解明されていないということです。この進捗ぶりも中央にストレスを感じさせているのではないでしょうか。

 ――――

 天安門事件と「12.6」事件を同列に論じられないとする中央の姿勢は、もう一点、「双方に悪者がいる」ということに起因するものかも知れません。

 天安門事件においては民主化運動側の学生や市民が「反革命暴乱」を引き起こした悪玉とされ、それを武力鎮圧した人民解放軍を善玉としました。白黒がはっきりついている訳です。ところが「12.6」事件はそうではありません。発電所を襲撃し警官隊と衝突した農民が悪玉なら、手際の悪い警告射撃で農民側に死傷者を出してしまった現場指揮官も悪玉、ということで汕尾市公安副局長が刑事拘留されています。

 ……と、ここまでは広東省による「公式報道」にもあるのですが、そもそも農民がずっとこの問題で騒いできたのは土地収用に関するトラブル、具体的には当局側による土地売却益の横領疑惑と農民側に対する補償額の少なさによるものです。「公式報道」がこの部分に全く言及していないのも中央が同意できない理由かと思います。

 汕尾市当局を叩けばもっと色々出てくる筈なのに、それをしていない。広東省当局は汕尾市当局をかばっているのではないか、とまで思ったかどうかはわかりませんが、事件翌日に広東省のトップである張紀徳・省党委員会書記が現地入りしていたそうですから(『大公報』2005/12/13)、時間があった割には仕事をしていないじゃないか、甘い、という印象を与えても不思議ではないでしょう。

 http://www.takungpao.com/news/05/12/13/ZM-496758.htm

 国際世論を考えれば、中央が事件に結論を下さない訳にはいかないでしょう。その内容によって中央と「大諸侯」である広東省の力関係も垣間見えるのではないかと思います。続報待ちです。



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 例の銃撃事件についてです。広東省は汕尾市・紅海湾開発区の東洲鎮で12月6日夜に発生した官民衝突。一応振り返っておきますと、耕地などを強制収用して火力発電所の建設にかかった地元当局に農民が反発して建設阻止の行動を展開していたところ、出動した武装警察(武警=準軍隊)と激しく衝突。武警は突撃銃で村民を掃射し、多数の死傷者が出たというものです。農民が反発した理由は主に、

 ●当局が前相談なしに勝手に土地を売却した
 ●補償額が折り合わない
 ●土地売却の過程で当局関係者が売却益を横領した疑惑がある

 ……といったところでしょう。この事件、12月10日に新華社が英文記事のみを海外限定で配信したことで事件発生が事実であることが確認され、翌11日には中国国内の新聞などでも記事が掲載されました。

 公式報道によると農民側に「3死8傷」の被害が出たということになっていますが、そんなこと誰も信じてはいません。死者数については「19名」や「30数名」、果ては「70名」など諸説あるものの、地元当局(汕尾市)が遺体を持ち去ったらしく確認ができていません。

 というより現在も現場の村へと通じる道路は武警などによって完全に封鎖されており、電話やインターネットも切断状態ですからメディアも病院や脱出してきた村民に取材する以外、手の出しようがない状態です。行方不明者も多く、これも武警に殺されたのか連行されたのか、あるいは逃亡して連絡がつかないままなのか判明していません。

 反体制系ニュースサイト「大紀元」(gb=簡体字版)に、病院に収容された負傷者の画像が出ていますね。

 http://www.epochtimes.com/gb/5/12/12/n1150684.htm

 ――――

 香港の最大手紙『蘋果日報』(2005/12/11)によると、武警の銃撃により大腿部に被弾した農民が武警に囲まれて命乞いをしたところ、武警数人がその負傷した農民を草むらの中へと引っ張っていき、そのあと銃声2発が響いたという村民の目撃談が出ています。始末した、ということなのでしょう。

 まあそういうセンセーショナルな報道は脇において、12月11日に中国国内メディアに掲載された公式報道に取り組んでみます。

 ●『南方日報』(2005/12/11)
 http://www.nanfangdaily.com.cn/southnews/dd/nfrb/a03/200512110026.asp

 公式報道はこの記事が元ネタで、他紙に掲載されたものも全てこれを転載したもので一字一句に至るまで同じバージョンですが、『南方日報』は元ネタであるうえサブタイトルがついているので、これを参照するといいかと思います。

 この記事において今回の事件は、

「少数者に煽動された村民300-500名が風力発電所に対して破壊・放火行為に及んだ上、暴力を以て警官などを襲撃した深刻な非合法事件」

 とされています。建設中である問題の火力発電所ではなく、近隣の風力発電所を包囲・襲撃したとなっています。これに対し警官隊は不法分子2名を拘束したものの、夜間なうえ混乱した状況下で行った警告射撃により死者3名、負傷者8名(うち重傷3名)が出たとし、「3死8傷」は意図的な射撃によるものではないと強調。誤って死傷者を出してしまったのは現場指揮官の対応が不適切だったためとして、この現場指揮官を刑事拘留していると報じています。

 ――――

 さてこの公式報道をどう読むかということになりますが、

 実弾射撃を許した汕尾市当局に対し広東省当局と中央政府は国際世論なども考慮して別の対処をするのではないかと前回書きましたが、どうやらそうなりそうな雰囲気です。ただ中共にとっての政治的善悪の認定であり、法律をも超越する「定性」は「反政府活動」のような形に、つまり発電所建設を邪魔したことで農民たちの行動は「中共に対して悪」という認定になるでしょうから、市当局からは汚職と武力弾圧(やりすぎ)による処分者を出す一方、農民側からも逮捕者が出るのではないかと思います。

 ……と以前書いたような流れで実際に事が運ばれているようです。ただし、公式報道についてまず注目すべきは、元ネタが広東省党委員会の機関紙である『南方日報』から出されているという点です。つまりこれはあくまでも広東省当局による公式報道であり、中央によるものではありません。例えばこの記事は「新華網」(国営通信社の電子版)にも転載されていますが、全国ニュース扱いではなく、地方欄の広東省ページにひっそりと掲載されているのみです。

 http://gd.xinhuanet.com/gdnews/2005-12/11/content_5789418.htm

 という訳で、上述した事件の位置付けも広東省当局によるもので、中央によって出された「定性」ではないと思います。中央による「定性」も似たようなものになるでしょうが、事件の背景として用地売却に関連した汚職などにも言及されることになる可能性があるでしょう。

 記事に付されたサブタイトルも、

「広東省党委・省政府は事件を高度に重視、地元党委・政府は法に則って事件を適切に処置」

 となっていますが、これも広東省レベルでの位置付けであって、中央がこれに同意したかどうか、事件に対する「定性」を含めた最終的結論がどうなったかは、中央の口から語られていない以上、未だ不明のままなのです。

 現場での処置不適切により現場指揮官が刑事拘留されているとのことですが、これも奇妙な措置です。要するに誤って村民に死傷者を出した責任を問われたのでしょうが、どういう刑事罰の容疑なのかは不明です。この現場指揮官、原文では「現場指揮員」となっていることから武警など治安部隊の指揮官(制服組)というニュアンスですね。ただ汕尾市党委書記(汕尾市のトップ)、そして汕尾市長が現場で指揮していたという香港紙『星島日報』(2005/12/08)の情報があったことも一応覚えておくべきかと思います。

 ――――

 ともあれこの公式報道によると、広東省党委及び省政府は直ちにアクションを起こし、事件当夜の6日には省のトップクラス(たぶん調査チームと一緒に)が早くも現地入りして事件の調査及び処理の指揮し始めています。汕尾市党委及び市政府も事件処理チームを組織して活動しているようですが、

「現在、『12.6』事件の調査・処理が進められているところだ」

 と記事の末尾にあるように、この公式報道も結局は事件の全容を伝えるものでないことに留意すべきです。他に注目すべき点として、村民側がしっかり武装していたとされていることを指摘しておきます。

 刀、さすまた、棍棒、爆薬、火炎瓶、魚砲(爆薬と雷管の入った爆発物で、地元漁民は水中でこれを爆発させて魚をとる)……といったものを村民たちは準備していたとなっています。香港紙の報道にも「手製爆弾」などが登場していましたから実際に丸腰ではなかったのでしょう。

 この「農民が武装していた」ということが事実であれば……というより公式報道で「事実」にされてしまっているのですが、この情報が広まることで「武装農民」が一種のトレンドになるかも知れません。

 当局と対立、官民の反目といった火種はどこにでもありますし、闇炭鉱などが遍く存在しているために爆薬も入手しやすい。銃器類の闇市場もありますから、農村争議がある段階に達したところで農民が武力闘争路線に転じるケースが今後も出てくる可能性はあるでしょう。ともかく今回の事件は村民たちが組織的にそれなりに武装化していた、という意味で先例を開くものになったといえます。

 ――――

 ところで、この事件について中央は広東省に下駄を預けたままとりあえず成り行きを眺めるつもりかといえば、そんなことはないでしょう。すでに広東省当局に対し何らかの圧力や介入を行っているのではないかと思います。傍証になるかどうかはわかりませんが、事件直後の12月8日から11日にかけて、党中央政治局常務委員である呉邦国(全人代常務委員長)がタイミングよく深セン市及び広東省を視察しているのです。

 ●「新華網」(2005/12/11)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2005-12/11/content_3906893.htm

 呉邦国自身は「経済・社会発展の全体の局面を科学的発展観で統率することを徹底せよ」と、「大諸侯」である広東省に対し中央(胡錦涛政権)の言うことを聞け、という意味の発言を行っています。……これはこれで興味深いのですが、事件とは直接関係ないでしょう。

 注目すべきは、この視察行に賈春旺・最高人民検察院検察長が随伴していることです。検察長という現職もそうですが、賈春旺といえば1985年から1998年までの十数年間の長きにわたって国家安全部(旧ソ連のKGBのようなもの)の部長を務めたうえ、続いて1998-2002年を公安部長として送り、現職は検察のトップという治安畑バリバリの高官です。

 ……まあ下衆の勘繰りにすぎませんが、この賈春旺が中央の代表者として今回の事件について何らかの活動を行った可能性はあるかも知れません。

 ――――

 最近は吉林省・吉林市の化学工場爆発事故、それによる松花江の汚染と汚染隠蔽、また相次ぐ炭鉱事故など、中央の統制力が試される事例が群がり起こっている観があります。ところが、いずれも人災という要素を含んだ大事件でありながら、省党委書記や省長、また閣僚級といった高官でクビを飛ばされた者は一人もいません。2003年の中国肺炎(SARS)で衛生部長を直ちに更迭したのに比べれば、最近の胡錦涛政権の切れ味はどうも鈍いようです。

 では今回はどうか、ということになります。やはり土地収用絡みで雇われ暴徒が農民を襲撃し6死48傷の被害を出した定州事件では定州市党委書記と定州市長が失脚しています。この前例に照らせば、雇われ暴徒でなく歴とした公権力である武警が実弾射撃に及んだ今回の事件では汕尾市党委書記及び汕尾市長の更迭は確実。……となるところですが、それをできるかどうかが第一のリトマス試験紙です。

 第二の注目点として挙げるとすれば、汕尾市当局だけでなく広東省当局の責任まで追及できるかというところでしょうか。広東省長の黄華華は胡錦涛派ですが、その上に立つ広東省党委書記の張徳江(党中央政治局員)は黄華華と不仲で、胡錦涛にとっては邪魔な存在という見方が以前からなされています。

 かつて「独立王国」と称された広東省は昔日の勢いを失っていますが、中央からみれば「大諸侯」であることに変わりはありません。今回の事件を奇貨として、胡錦涛が広東省を掌握できるまで攻め込めるかどうかは興味深いところです。

 逆に汚職疑惑も絡んでいるこの「12.6」事件で汕尾市党委書記と汕尾市長のクビを飛ばすことすらできなければ、胡錦涛政権の統制力に黄信号。その影響はまず経済面において出ることになるでしょう。……おっとこれは余談でした。



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 最近私は東京に腰を据えて海外に出る機会が減っているので(東京駐在員ですから)、ときに落ち着いて来し方を振り返ってみたりするのですが、どうも私は典型的な留学生崩れの道を歩んでいるようです(笑)。中国語に関する需要に応じるままに中国、香港、台湾と流転してしまい、おかげで組織の中で仕事をして人付き合いをして昇進して……という感覚がすっぽりと欠落したまま歳を重ねてしまいました。

 ですから、
「職業に対する好き嫌いと適性の有無は別物である」という当たり前のことにようやく思い至ったのも20代も半ばを越えたころでした。自分が嫌いな仕事でも、好きな仕事より適性があって向いている、というようなことがあるんですねえ。

 これを応用すると、「自分のタイプである女性と、自分を好きになってくれる女性は必ずしも一致しない」ということにもなります。むしろ一致しないことの方が多くて全くもう×○△◇……(笑)。

 ――――

 香港に住んでいたころ、1年ほど自暴自棄というか公私ともに荒んだ生活をしていた時期がありました。遊んでばかりもいられないので就職でもするかという気になったのですが、ふつう邦人なら日系の人材派遣会社を訪ねるところ、そこは自棄ですから地元紙の求人広告で適当に選んで、面接に行った地元企業に日本語力を買われて即入社決定(笑)。日本人観光客相手の漢方薬の店を立ち上げるとのことで、その準備一切に関わりました。もちろん日本人は私だけです。

 香港ツアーに参加したことのある方ならわかるでしょうが、ガイドは観光二の次で革製品や免税店や土産物屋や漢方薬店へと団体客をやたらと連れ回します。その集客数(人頭税という隠語が使われていました)と売り上げに応じたコミッションがガイドの重要な収入源になるからです。

 で、そのタイプの漢方薬屋を新規開業しようという訳です。色々な仕事をやらされました。店鋪建築を督促したり、日本語パンフレットを作成したり、商品パッケージの吟味をしたり。店内に掲げる木彫りのキャッチコピーも作らされましたし、店員の面接官もやりましたし、採用した店員の日本語教育も私の仕事。果てはプロモビデオの声優までやらされました(笑)。

 それから出店地一帯を仕切るヤクザの親分と会食したのも今となっては貴重な体験です。香港の俳優である黄秋生に瓜二つの顔をしていまして、それだけでもドスが利いているのに隻腕なんです。左腕が肩から先はなくて、ポロシャツの裾がクーラーの風でヒラヒラと揺れていました。

 ――――

 で、オープンすると副店長をやらされたのですが、その役職での実務はシャッターの開け閉めと在庫管理ぐらいで、実はその一方で兼務する仕事の方が重要なのでした。簡単に書きますと、ガイドが団体客を連れて入店し、教室のような部屋に案内して座らせる。するとおもむろに白衣を着た漢方医が悠然と登場し、商品である漢方薬を並べた前で30分ほど面白おかしく病気の話をする。商品の話をせずに病気と漢方の話を具体例や正確な数値を挙げて感心させつつ語るのがミソです。

 すると不思議なことに、漢方医の話を聞くうちに団体客はなぜか並べられている薬を無性に買いたい気分になるのです(笑)。そしてその雰囲気が室内を支配した頃合に実にタイミング良く、駅弁売りのように肩から下げた箱に漢方薬を満載させたセールスたちが部屋に入ってきます。当然ながらどっと売れます。その間、白衣姿の漢方医は客の質問に答えたりして専門家らしく振る舞います。で、販売が終わるとガイドが団体客を連れ出して別な店へと連れていくのです。

 私はこの「講師」(話し手)と呼ばれる白衣姿の「なんちゃって漢方医」を兼務させられました。むしろそれが本務でした。何人かいるうちの一人(もちろん私だけ日本人)ですが、やれと言われて「それだけは勘弁」と思ったものの、社長命令ですから仕方がありません。

 当時の香港には漢方医の資格制度がなかったので漢方医を自称しても法的には問題ありませんでした。でも芸名?で漢方医になりすまして白衣姿で同じ日本人である団体客の前に立ち、あれこれ喋って頷かせたり笑わせたりした挙げ句、原価1000円の薬を2万円で売るというあくどい商売です。嫌で嫌で仕方ありませんでした。

 ――――

 ただやる以上は徹しようと思い、普段から白衣を着て医者らしく振る舞う練習を自分なりにやりました。俳優がやる役づくりのようなものです。本物の医者ではなく、テレビドラマに出てくる医者の真似をすればそれっぽく見えるだろうと、一挙手一投足や説法をするときの雰囲気や語調などに心を砕いたものです。いや、本当に嫌だったのですけど、そこはオトナの世界ですから(笑)。

 説法のコツなどは、ライバル店から引き抜いた「漢方医」のベテランで日本語ペラペラのエース格の人が親切にも教えてくれて、それを自分なりにアレンジしました。すると試してみたら売れること売れること。エース格の人は中高年の男性客に強く、私はなぜか女性客に売り付ける(ではなく、買いたい気持ちにさせる)のに長じていて、婦人用漢方薬の在庫があっという間になくなって慌てて増産するという有様でした。

 忙しいときは「説法」に次ぐ「説法」で息つくヒマもありません。1回の「説法」を終えて室外に出て、すぐ次の「説法」の部屋に向かおうとしたときにガイドの人に腕を掴まれて最敬礼されたことがあります。後で聞いたところ、その「説法」1回の売り上げが40万円だか50万円だかに達したそうで、これには自分もちょっと怖くなりました。

 嫌な仕事でしたけど、自分の話でどんどん薬が売れていくのが面白くなかったといえば嘘になります。意外なことに、月単位の売り上げで新人の私がエース格の人とトップ争いをするまでになりました。こちらは基本給に加えて売り上げに応じたコミッションが入ってきます。月間1200万円ぐらい売ったのですが、とんでもない金額が私の銀行口座に振り込まれたていたのでびっくりしました。自分でも不思議に思ったものですが、どうも私にはその仕事の適性があったようです。

 でもやっぱり嫌なものは嫌でして、最初は面白がっていた部分もありましたけど、だんだんモチベーションが落ちていきました。高収入は嬉しかったのですが、こんな仕事をやっていたら人間がダメになる、と思ってほどなく辞めました。

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 そのあとに知人の紹介で通訳の仕事をしました。この商売も合法的で香港や台湾ではありふれたものなのですが、日本人の感覚でいうと怪しげな仕事です。その通訳で、日本企業が顧客のときに声がかかり、日本に出向いて通訳を務めるだけです。ただそのまんまの通訳ではなく、中国人らしい考え方や表現を日本人に納得しやすい内容に話を変えたり、例え話を勝手に追加したり、日本人に理解しにくい概念をわかりやすく説明する点などに創意と技量が必要でした。

 これまた好きか嫌いかと問われれば嫌いの範疇に入る仕事なのですが、どうもこういう舌先三寸の仕事が私には向いていたようです(笑)。10日間日本に行って仕事をして帰ってくると90万円。仕事はほぼ毎月1回のペースで入ってきましたからあとの20日間は遊んで暮らしました。これも嫌々やっていたので1年と続きませんでしたけど、今でもオファーが入ってきます(笑)。

 自暴自棄ゆえにそういう仕事に転がったのですが、お蔭で人生をリセットする切っかけになりました。その後は縁に恵まれて香港や台湾のメディアに関わり、現在の副業をやり、それを続けつつやがて分野の異なる世界に入って、そちらが本業となって現在に至っています。

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 さて標題の
「頑張れ健治!」ですが、私が自棄になっていた時期に偶然知り合った年下の青年です。谷垣健治という名前は、香港のアクション映画に詳しい方なら御存知でしょう。小学生の頃にジャッキー・チェンに憧れてスタントマンを志し、日本国内で腕を磨いた後、香港のスタント(武師)の世界に日本からたった一人で飛び込んだ好漢です。

 その日本から飛び込んでほどないころが私の自棄時代で、そのころに彼と知り合い、毎日のように顔を合わせては取りとめのない話で時間を潰したものです。その後、健治は仕事の世界で着々と地歩を固め、色々な香港映画に出演する一方、最近は自ら監督を務めて作品を世に送り出しています。ローカル受けする性格も幸いしたかと思いますが、もうすっかり香港のその業界に溶け込んでいます。

 その後、私の仕事の拠点が香港-東京-台北-東京と転々としたために連絡も途絶えてしまっているのですが、私の可視範囲内にある才能の横溢した若い世代を応援するという意味で、また海外で頑張る日本人へのエールとして以下の書籍を紹介させて頂きます。上が健治の著書、下では監修を務めており、付属のDVDに通訳などの形で健治が登場します。

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香港電影 燃えよ!スタントマン

小学館

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ドニー・イェン アクション・ブック

キネマ旬報社

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 土曜日ですから雑談とさせて頂きます。

 ホットな話題というか何というか。……とにかく最近はニュースが盛り沢山です。内憂外患でいえば中共政権にとっては「内憂」が際立ったという印象でしょうか。

 吉林市の化学工場爆発で松花江が汚染されたのを隠蔽し、明らかになってみればロシアとの国際問題に発展しかねない様相。隠蔽には色々裏事情があったのでしょうが、それを一身にかぶって吉林市副市長が自殺しました。一方で相次ぐ炭鉱事故、勝利油田のリストラ工員の陳情騒動、そして広東省汕尾市で起きた農民たちを武装警察が突撃銃で掃射した事件……。

 一言でいえば、二十余年来の改革開放政策の膿が極端な形で一気に噴出したという観があります(膿と違って噴出しても決して快方には向かいませんが)。いずれも一党独裁という制御装置を持たない政治制度が市場経済というメカニズムに乗ったことで生まれた暴走と、その結果です。汕尾市の銃撃事件も汚職疑惑が発端でしたね。さらに遡ってみれば闇炭鉱や炭鉱に絡んだ官民癒着があり、土地収用をめぐる汚職と強制執行での官民衝突があり、農民による民主化が潰されました。

 一方で各地での爆発事件があり、重複投資に代表される地方政府の強い開発欲求とそれを抑え込もうとする中央への抵抗があります。適度に減速しつつソフトランディングする筈だった経済は、中央たる胡錦涛政権の統制力の弱さもあり、減速はおろか昨年を上回る勢いの爆走ぶりです。

 そうした弊習を荒療治で改めて一気に構造改革を成し遂げるのが胡錦涛政権のテーマだと思っていたのですが、あれやこれやで……もはや遠い昔の夢物語になってしまいました(笑)。

 ――――

 勝利油田の陳情についても実は笑えない事件です。不景気のためリストラされた工員は、解雇時に年功を積み上げてもらい、その分の給与+補償金を支払われて退職しています。それが好況に一転したことで「それならもっと寄越せ」というのはムシが良すぎると思う一方、カネは払ったものの再就職などのケアを行わなかった地元政府と勝利油田の冷たさを考えてもいいかも知れません。

 とは、リストラ工員たちは恐らく40歳-50歳ないしはそれ以上の世代だと思うのですが、この世代にはかつて「社会主義の優越性」と謳われ、住宅から福利厚生まで丸抱えでもちろん終身雇用は常識といった「国営企業」の感覚が身体に染み付いているだろうと思うのです。だから「民営企業」とか「失業」といった以前は存在しないとされた事象がどうにも実感できない。実感できないまま解雇され、解雇されてみてから呆然としたのではないでしょうか。

 事件の詳細は明らかではありませんが、解雇となれば住宅から何から取り上げられて路頭に放り出されたとしても不思議ではありません。再就職も難しい年齢ですから退職すれば自動的に失業者となり、それゆえ困窮一直線。……というケースが多かったのではないでしょうか。

 中共政権下でも現在の若い世代なら、そういった新しい世間の仕組みを頭で理解できますし、実感もできるのでしょう。でも40歳以上の世代にそれを求めるのは無理というものです。この価値観あるいはルールの急激な変化についていくことができない結果として大挙陳情という行動になったのではないかと思います。……私は所有制改革が本格化する以前の国営企業労働者、といった世代を知っているので、ついそんな風に考えてしまいます。

 ――――

 それから広東省汕尾市・東洲鎮の事件について。本当は木曜日に日中関係のネタを用意しておいたのですがこの事件のおかげで吹っ飛ばされてしまいました。今朝の香港紙(2005/12/10)は電子版をみる限り親中紙と『星島日報』以外はこの事件を報じています。前回登場した右胸を撃たれたものの一命をとりとめた唐氏の写真、これは香港のケーブルテレビ局「有線電視」が撮影したものを『蘋果日報』がキャプチャーして使っていました。他に病院で泣き崩れる女性たちの姿もありました。

 正確な死傷者数は未だに不明のままで、前回のコメント欄で紹介した通り、村民たちは遺体確認をさせてほしいと現場を固める警官隊の前で跪き哀願しています。

 ●反体制ニュースサイト「大紀元」(gb=簡体字版)
 http://www.epochtimes.com/gb/5/12/9/n1148284.htm
 http://www.epochtimes.com/gb/5/12/9/n1148325.htm

 ――――

 当局が何ら発表を行わず、村内への道路も封鎖されているので真実は相変わらず闇の中です。その中で噂が飛び交い、死者数は4名から8名、19名、さらに30数名説から70名説まで飛び出しています。『東方日報』は警察車両が村内を巡回し、スピーカーから事件で死者が出たこと、遺族は身元確認に来ること、というアナウンスを流していたとの情報を紹介していますが、これまた噂レベルです。

 飛び交う情報を拾っていくだけなら興味深いものもあります。『蘋果日報』は農民のリーダー3名を当局が指名手配したと報じています。一方で『明報』や『成報』は広東省当局が事件の調査に乗り出し、事件に関係した役人(汕尾市当局者など)が香港に出境しないよう手配したというニュースを伝えています。

 ●『東方日報』(2005/12/10)
 http://orientaldaily.orisun.com/new/new_c3.html

 ●『明報』(2005/12/10)
 http://hk.news.yahoo.com/051209/12/1jff5.html

 ●『成報』(2005/12/10)
 http://www.singpao.com/20051210/international/790694.html

 実弾射撃を許した汕尾市当局に対し広東省当局と中央政府は国際世論なども考慮して別の対処をするのではないかと前回書きましたが、どうやらそうなりそうな雰囲気です。ただ中共にとっての政治的善悪の認定であり、法律をも超越する「定性」は「反政府活動」のような形に、つまり発電所建設を邪魔したことで農民たちの行動は「中共に対して悪」という認定になるでしょうから、市当局からは汚職と武力弾圧(やりすぎ)による処分者を出す一方、農民側からも逮捕者が出るのではないかと思います。

 ――――

 最後くらい日本に関係する話をしましょう。麻生外相が12月7日、東京の日本記者クラブで
「わたくしのアジア戦略」と題する講演を行いました。この中で麻生外相はアジアにおける日本の役割として、

 ●成功例と失敗例を進んで示す「実践的先駆者」
 ●経済、安全保障両面での安定勢力
 ●国対国の関係に上下概念を持ち込まず、対等な関係を結ぶ国

 ……という「3つの定義」を掲げました(『読売新聞』2005/12/08)。

 ところがこれが中国国内メディアの記事になると、

「日本の外相、『外交戦略』演説で日本はアジアの領袖を目指すと発言」

 と、全く別な内容にねじ曲げられてしまっています。

 ●「新華網」(2005/12/08)
 http://news.xinhuanet.com/world/2005-12/08/content_3893196.htm

 ――――

 実際の記事でいうと、講演の題目からして
「私のアジア戦略――日本はアジアの経験的先駆者(領袖)」となっています。「先駆者=領袖」とは呆れて物が言えませんが、それで記事のタイトルが「アジアの領袖を目指すと発言」となる訳です。悪意を込めた歪曲報道というのはこういうものなのでしょう。

 もっとも中国新聞社が配信したこの記事の元ネタはシンガポールの「早報網」(親中紙『聯合早報』の電子版)ではありますが、中共からみてもしっくりくるものだから国営通信社(新華網)にも掲載されたのでしょう。……あるいはこれも、中国が「ASEAN+3」で首脳会談・外相会談をキャンセルしたのに日本が一向に動じる気配を見せないことへの焦りを示したものなのかも知れません。

 だってその場になったら中国外相の紅衛兵じゃなかった李肇星の方からわざわざ麻生外相に接触していますから。

 ●日中外相が接触=歴史で立場伝える-ASEAN会合(時事通信 2005/12/10/03:00)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051210-00000009-jij-pol

 李肇星カッコ悪いぞ(笑)。まあ命令されて仕方なくなんでしょうけど、日本が譲らないでいるとこうして向こうからすり寄ってくるのです。私はいま日中関係がガチの正念場だと考えていますから、日本はここで甘い顔を見せることなく、譲らずに知らんぷりしていればいいと思います。

 李登輝氏にも早く来日してもらいましょう。なあに東京見物の際に運転手が道を間違えてうっかり靖国神社に乗り入れてしまえばいいのです(笑)。そこに偶然出くわすのがファンタジスタか都知事ということで。

 ――――

 ああ業務連絡であることを忘れていました。

 常々考えていたのですが、毎日結構な量の記事を集めるのにここで使うのはその1割もありません。で、使われずに蓄積される一方の余剰資源を何とかしようということで、ニュースに一言適当なコメントをつけるだけのブログ「楽しい中国ニュース」を立ち上げました。

 時間的に余裕がないので1日せいぜい10本くらいしか紹介できないでしょうが、黙って流してしまうには勿体ないネタから挙げていくつもりです。お暇なときにでもお立ち寄り下さい。

 なお、当ブログでも満足にレスをつけられない状態なので、勝手ながら「楽しい中国ニュース」ではコメントやトラックバックを受け付けないこととします。お問い合わせがあれば当ブログ(gokenin168@goo.jp)にメールして下さい。あとレイアウトの崩れなどもあるでしょうからそれもメールで御指摘頂ければ幸いです。

 という訳で、大したものではありませんが当ブログ共々今後とも宜しくお願い申し上げます。
 m(__)m



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 さあ賑やかになって参りました。吉林省吉林市の化学工場でドカーンと爆発事故が起きたと思ったら、それによって松花江が汚染されロシアも緊張する国際問題に。続いて黒龍江省の炭鉱事故で死者171名の大ヒット。化学工場爆発事故→松花江汚染に関しては吉林市の副市長が自殺したりもしています。

 さらに今度は河北省唐山市でまたまた炭鉱事故。死者はすでに74名を突破し、どこまで伸びるのかはまだ不明。何たって行方不明32名とかいう話ですから。「YAHOO! JAPAN」のトップページにある「トピックス」に、

「汚染問題、吉林副市長自殺か」
「中国炭鉱事故 歯止めかからず」

 という見出しが出てしまうほどですから皆さんお待ちかねの展開?相次ぐ炭鉱事故やら闇炭鉱やら地元幹部の官民癒着に吠えていた安監総局(国家安全生産管理監督総局)の李毅中局長は、マスコミ露出が増えていまや時の人です。

 その李毅中、黒龍江省の炭鉱事故と松花江汚染への対応を督戦すべく現地にいたのですが、今度は河北省で炭鉱事故と聞いて唐山市へと急行です。この調子では全国ツアーになるかも知れず、いつ北京に帰ることができるのかはわかりません(笑)。

 他にも河南省の炭鉱で四十数名が閉じ込められてもう一週間、という現在進行形の事故も起きています。ああ長春でも炭鉱事故、ただし死んでも7名ですから李毅中は来てくれそうにありませんね。あと忘れてならないのは鳥インフルエンザ(H5N1型)、広西チワン族自治区で感染者第4号(10歳の女子児童)が御登場です。……と思ったら遼寧省からは第5号、ただしこちらは10月に発病して先月下旬に全快・退院とのこと。ひょっとして隠蔽?

 でもそれだけではないんですよ。やっぱり見物するなら事故より事件でしょう(笑)。……て笑っていられないのは前回の「武装警察が農民に発砲」事件ですが、その続報は後回しにして、まずは勝利油田での大規模陳情事件。リストラされた労働者数千人が決起して事務所ビルを占拠です。

 ――――

 ●『明報』2005/12/06
 http://hk.news.yahoo.com/051205/12/1jam7.html

 ●『太陽報』2005/12/06
 http://the-sun.orisun.com/channels/news/20051206/20051206021638_0000.html

 他に『蘋果日報』(2005/12/06)などもこの事件を報じていますが、中国国内メディアはスルーの御様子(笑)。元労働者たちは解雇当時の扱いが不当だったとして事務所ビルのロビーに座り込み、経営陣との対話を求めているのですが応じてくれる気配なし。

 ――――

 決起側の人数も数千名から4000名、1万余名、2万名と諸説あり、しかも事件発生から12月5日時点ですでにまる一週間というのですからただ事じゃありません。事件は会議室じゃなくてロビーで起きている訳ですが、もちろん現場の周囲には武装警察が出動して外部からシャットアウト。ただ武力衝突はまだ起きていないということです。

 ただこの事件はリストラされた労働者たちが受けた扱いが「不当」だったのかどうかはちょっと疑問です。元労働者たちは勝利油田の経営が悪化した際にリストラされたもので、解雇時に補償金として2万元を一括払いされています。ところがその後、原油価格急騰などにより一転して好況となった勝利油田に対し、「そんなに景気がいいならもっと寄越せ」と騒ぎ出したという経緯があるのです。

 決起側は
「地元政府も元の職場も面倒をみてくれずに貧困へと追い込まれた。これに対処しないと調和社会の実現に不利益なことになる」という構えを示していますが、こんなところにまで「調和社会」が浸透しているとは胡錦涛も嬉しいことでしょう(笑)。

 ――――

 この事件は親中紙『香港文匯報』も昨日(12月8日)報道しました。それによると騒ぎは12月2日に発生し、陳情者数百名が事務所ビルの廊下などに座り込んで経営陣との対話を求めているとのこと。解決されたとの報道がないので事態はまるまる一週間ということになります。

 元工員の勝利油田に対する陳情はしばしば行われており、2003年には1万人規模のデモまで起きたそうですが、陳情としては今回が最大規模。決起側は秩序維持のため自ら「糾察隊」を組織しており、先走った仲間がオフィスに暴れ込んだりすることのないよう一同を監視する一方、飲食物を差し入れる係もいるなど長期戦にも動じない構えです。

 ●『香港文匯報』(2005/12/08)
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0512080014&cat=002CH

 不景気から一転しての好況にリストラされた工員が「そんなに景気がいいならもっと寄越せ」というのはムシが良すぎるように思うのですが、解雇後に再就職できないなどして生活が困窮する者も多く、そのケアを解雇者たる勝利油田と地元政府に求めているというのが実情でしょう。放っておけばその組織力からして恰好の火種になりそうです。

 ――――

 そして広東省・汕尾市で汚職疑惑のある土地強制収用・発電所建設に抗議する農民デモ隊に武警(武装警察=準軍隊)が実弾射撃を行ったという事件の続報です。「実弾射撃」より「突撃銃で掃射」の方が適切かつ扇情的なようでもあります。

 親中紙を除く今朝の香港各紙(2005/12/09)がこの事件を報じているのですが、まず重要なのは中共政権に迷いめいたものがみられ、突発した戦慄すべき事態に動揺している観があることです。結論がまだ定まらず、目下のところ扱いに困っているというところでしょうか。

 それを如実に示したのが昨日(12月8日)開かれた外交部の報道官定例記者会見です。事件について記者が質問したところ、「そんな事実はない」と斬って捨てるかと思われた秦剛・報道副局長、

「具体的な状況はまだわからず、状況把握に努めているところだ。公安部報道官に問い合わせてもらいたい」

 と言葉を濁したのです。その一方で、

「中国は法治国家だ。こうした問題については、法律と法規に則って処理が行われる」

 と強調してはいます。もちろんこの部分、定例会見を収録している外交部の公式サイトをはじめ「新華網」(国営通信社の電子版)など中国国内メディアでは全てカットされています。

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 実は前回紹介した『星島日報』(2005/12/08)の記事に「汕尾市党委員会書記(市のトップ)や汕尾市長が現地で陣頭指揮した」という部分がありましたが、あれを読んで私はちょっと驚いたのです。広東省当局ならともかく、汕尾市のトップ風情にあの状況下で実弾射撃を許可する権限があるのか、ということです。

 発砲時点で省当局が絡んでいないことは前回の『香港文匯報』(2005/12/08)の取材で明らかです。現場の一触即発たる張り詰めた雰囲気に頭に血がのぼってしまったのか、大胆な決断をするものだなあと思いました。

 外交部報道官の煮え切らない反応は、事件が日本を含む海外メディアにより全世界へと紹介されてしまった以上、もはや事件の存在そのものを否定し切れないからでしょう。あとは当局側が殺戮に及んだ大義名分が必要になりますが、国際社会でのイメージも考慮するなどして、それがまだ結論に至っていないのだと思います。

 似たケースとして6死48傷の定州事件がありますが、あのときの襲撃側は雇われ暴徒。それでも市のトップなどが更迭されています。今回は「官」である武警が手を下しているのですから、より大がかりな処分が当局側に下されても不思議ではありません。そのあたりをどう収拾したものか、と中央が迷っているところなのでしょう。

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 もっとも、中共政権が逡巡している間にも続報がどんどん流出していきます。しかも現場は香港メディアの地盤というに等しい広東省。記者たちは現地に赴いて、いまなお多数の武警が突撃銃を携えて村の内外を固め、装甲車なども配置されて外部者の進入を封じているのを目撃しています。香港の地上波局「TVB」のクルーは村内に入ろうとして一時拘束され、始末書&自己批判書のようなものを書かされて釈放されました。

 村内の電話やインターネットは全て封鎖されており、いち早く村外に出た農民たちも取材の約束をキャンセルしたり、一種のパニック状態で何を聞かれても「知らない、俺は何も知らないんだ」と首を振るばかり。村内に残った者も自宅で息をひそめ、警官隊が踏み込んでくるのではないかと怯えているそうです。ただ、CATVの「有線電視」が村民のひとり陳沢氏への取材に成功しています。

 事件発生時、陳氏は甥の林怡兌氏(26)と現場にいたのですが、武警の発砲でたまたま陳氏の前にいた林氏が2発の銃弾を受けて倒れ、陳氏が抱き起こしたときにはすでに息がなかったそうです。林氏は2カ月後に結婚を控え、準備のため上海から戻ってきていたところでした。

 陳氏は甥を急いで病院(汕尾人民医院)に運び込んだのですが、一発が心臓を貫通しており即死状態だと医師に説明されました。駆け付けた林氏の母親とフィアンセは林氏の変わり果てた姿に泣き崩れ、ショックで昏倒したといいます。

 病室のベッドには右胸を撃たれたものの一命をとりとめた村民の唐氏(30)が横たわっており、

「奴らは続けざまに100発か200発ぐらいは撃ってきた。俺はそれでやられたんだ。気がついたらやられていた。まさか撃ってくるとは思わなかった」

 と力のない声で語っていました。唐氏によれば、武警は事前に警告射撃をすることなく、いきなり村民たちに発砲してきたそうです。

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 死傷者の多くは東洲衛生院、汕尾人民医院と旭輝慈善医院に収容されたといわれます。汕尾人民医院の当直者によれば、事件当夜に重傷者2人が運び込まれました。一人は腹部に、もう一人は鎖骨と臀部に被弾していましたが、連夜の手術によって一応容態は安定したそうです。……どうやら香港メディアは村内に入れないとみるや機敏にも病院を当たって回り、前述した陳氏や唐氏のコメントを引き出したようですね。

 とはいえ、情報封鎖と地元当局の取材拒否により、死傷者の正確な数はまだ把握できていません。現場に放置されている死体もあり、行方不明となった者のいる家族は身元を確かめに行きたいものの、出て行って撃たれるのが怖くて家から出られないそうです。

 現在のところ死者は少なくとも8名、負傷者20数名、行方不明者約40名とされていますが、これも確かな数ではなく、行方不明者も連行されたのか逃げたまま戻って来ないでいるのかは不明とのことです。

 不明といえば、事件の発端も未だ謎のままです。現時点においては、

 ●警官隊と対峙していた農民が手製爆弾で武警を攻撃して3名が死亡したため、武警がやむなく反撃に転じ、実弾射撃に及んだ。
 ●村民が手製爆弾を用意して建設中の発電所を爆破しようとしたため武警が鎮圧に出た。
 ●武警が主導的に鎮圧行動に出た。

 ……という3バージョンが流布されているそうです。

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 今回の事件をいち早く報じた反体制系ラジオ局「RFA」(亜洲自由電台)も村民・劉氏との接触に成功しています。

「あの夜から戻って来ない奴がいるんだ。あの夜の9時ごろ、弟が撃たれたと聞いて助けに飛び出したまま、どちらも帰って来ないままだ。家には奥さんと11歳になる子供がいるよ」

 と劉氏は語っています。他の村民から得たコメントによれば、死者はわかっているだけで19名。当局は遺体の身元確認を家族にさせないまま、昨日(12月8日)遺体の全てを持ち去って火葬場で荼毘に伏し、海に捨てられた遺体もあるとのことです。この村民は記者に現場取材を求め、

「家に来てくれれば何でも力になる。俺は死ぬのは怖くない。東洲人民の正義のためだ。今年でもう50になるから、死ぬのは怖くないんだ」

 と話したそうですが(携帯電話でも使ったのでしょうか)、武警が厳重な警戒態勢を強いているため、記者はそれが果たせないのです。1989年の天安門事件の正確な死傷者数いまなお不明であるように、今回の事件も闇に葬ろうとしているのでしょうか。

 地元の汕尾市当局はどうやらその肚でいるようですが、事件がこうして海外に報道されている以上、広東省当局や中央政府は別の対応を迫られざるを得ないでしょう。相次ぐ炭鉱事故や河川汚染、それに勝利油田事件や今回の流血の弾圧。……いずれも胡錦涛政権が掲げてみせた「調和社会の実現」という目標がいかに空虚なものであるかを嘲笑っているかのようです。

 なお流血の弾圧についていえば、今回は海外メディアの可視範囲内で起きた事件だから報道されたという幸運を思うべきです。そうでない場所で似たようなことが頻発している可能性が決して低くないことを、私たちは覚えておくべきだと思います。

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 ●『明報』(2005/12/09)
 http://hk.news.yahoo.com/051208/12/1je6s.html

 ●「RFA」(2005/12/08)
 http://www.rfa.org/cantonese/xinwen/2005/12/08/china_rights_clash/

 ●『星島日報』(2005/12/09)
 http://www.singtao.com/yesterday/chi/1209eo06.html

 ●『太陽報』(2005/12/09)
 http://the-sun.orisun.com/channels/news/20051209/20051209022210_0000.html
 http://the-sun.orisun.com/channels/news/20051209/20051209022210_0000_2.html



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 今回は別のネタを準備しておいたのですが、大事件突発に急きょ差し替えです。以前紹介した広東省・汕尾市の農民争議で新展開。村民と衝突した警官が実弾射撃を行い村民に死者が出ています。

 ここまでの事件の経緯はバックナンバーから臆面もなく引き写させて頂きます。……それでは引用開始。

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 今やすっかりお馴染みとなった土地収用をめぐる官民衝突です。舞台はやはり広東省、汕尾市紅海湾の東洲郷という農村です。発端は先の「農民による民主化運動」番禺太石村事件と似ており、村の党幹部が村民に諮ることなく、勝手に村の土地を売却。売却益の行方は推して知るべしです。その売った土地に発電所の建設工事が始まって村民が騒いでいたのです。

 『蘋果日報』(2005/10/08)によると、強制収用の対象となった、つまり党幹部によって勝手に売却されたのは東洲郷内の山地と耕地、それに白沙湖という湖まで含まれています。具体的には山3つを潰し、湖を埋め立て、耕地百数十ヘクタールを更地にして発電所を建設するというもの。驚くべきことに、田畑を失った村民たちへの補償などは一切なし。耕地を奪われた村民がこれに唯々諾々と従う訳はありません。

 発電所建設工事はすでに開始されており、村民は5カ月前から延べ数千人を動員して24時間態勢で工事の進捗を妨害していたのですが、先週の水曜日(10月5日)、ついに堪忍袋の緒が切れて大規模な抗議行動を発動、建設作業員が現場に入ることを阻止し、建設工事をストップさせました。

 土地を奪われた村民たちが政府に掲げた要求は決して法外なものではなく、むしろ慎ましいほどでした。1人当たり毎月400~500元の補償金支給、60歳以上の老人には養老手当を出し、貧困家庭の子供には学費免除で就学させてくれ、というものです。ところが当局がこれを無視し続けたため、怒れる村民たちがついに立ち上がった、という状況です。

 反体制系ニュースサイト「大紀元」(gb=簡体字版)によると、東洲郷は電話や携帯は盗聴され、外出する村民には尾行がつき、村民代表には脅迫が行われたといいます。近くセーリングなどの国際大会が広東省で開催されるため、当局はそれまでに排除を完了させる肚だとみられており、村民たちは暴徒の襲撃により6死48傷という惨事となった河北省・定州事件の再現を恐れています。

 ●「大紀元」(2005/10/09)
 http://www.epochtimes.com/gb/5/10/9/n1079668.htm

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 ……以上、引用終了。この前後のエピソードですが、村民が地元政府に窮状を訴えたところ珍しくも調査チームを派遣してくれました。ところがこの連中、飲み食いするばかりで視察ひとつロクにせず、怒った村民が村から追い出した、という事件も起きています。

 また下記の反体制ラジオ局「RFA」(自由亜洲電台)の報道によると、上述した衝突の後、当局側が補償金として村民側に毎年総額60万元(一人当たりではなく)を支払うとの和解案を示したものの、村民側はこれを一蹴。収用した土地を「村民に前相談もなく、しかもたったの200万元で叩き売った」という声がありますから、強制収用された土地に対する補償として見合った金額ではない、ということでしょう。

 で、「村民たちは暴徒の襲撃により6死48傷という惨事となった河北省・定州事件の再現を恐れています」とのことですが、これが本当にそうなってしまいました。しかも相手は雇われ暴徒ではなく堂々たる武警(武装警察=準軍隊)。官民衝突で警官隊が発砲し、少なくとも死者2名が出たという驚くべきニュースです。

 ●「明報即時新聞」(2005/12/07)
 http://hk.news.yahoo.com/051207/12/1jcr8.html

 ●「RFA」(2005/12/07)
 http://www.rfa.org/cantonese/xinwen/2005/12/07/china_rights_clash/

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 まずは簡潔にまとめてある「明報即時新聞」のニュース、AFP電です。事件が起きたのは一昨日(12月6日)の夜。発電所建設に伴う土地収用を非難し、それに見合った補償を求める村民約1000名がデモを行っているところに武警が出動、デモ隊を追い散らそうとしたことに端を発しました。

 デモ隊が水道管などで道路を封鎖し、手製の火炎瓶?などで抵抗したため、進退に窮した武警がついに発砲。村民2名が即死し、さらに2名が病院に運ばれてから死亡したとのこと。他に銃撃によって村民に多数の負傷者が出た模様です。

 RFAの報道では村民の話として、6日に村民約1000名と武装警察700-800名が衝突し、警官隊が発砲して村民6名が死亡。警官隊は村民が遺体を引き取ることを許さず、現場に放置されたままとなっているそうです。また別の村民によれば、武警は衝突に際して手榴弾を使用。それによって村民2名が即死したほか、4名が負傷して病院に運び込まれ、さらに18人が行方不明になっているとのこと。

 他の村民のコメントなどを総合すると、警官隊はまず催涙弾を放った後、実弾射撃を行った模様です。死者は少なくとも2名、ということになります。もちろん汕尾市政府と警察当局は取材に対し「そんな事実はない」の一点張りです。

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 今朝の香港紙(2005/12/08)では『蘋果日報』『太陽報』『星島日報』『明報』などに続報が出ていますが、内容はまちまちで、個別の村民から目撃談を取材して回っている段階で、事件の全容がつかめていない、まだ俯瞰できる状態ではない、という印象があります。

 まず『蘋果日報』によると、武警の銃撃で村民約20名が被弾、3死8傷は確実ながら、重傷者の一部など10名以上が警官隊に連行されたそうです。衝突については、催涙弾でデモ隊を追い散らそうとした警官隊に対し、村民が手製爆弾などで抵抗。このため武警が突撃銃(AK-47でしょうか)で実弾射撃を行った、ということです。

 これが『太陽報』になると話がやや大きくなっています。建設現場に入ろうとした関係者を阻止すべく村民約6000名以上が現場に駆け付けたところ、知らせを受けた武警及び防暴警察(機動隊)約2000名以上が出動。村民との間に激しい衝突が発生し、警官隊の一部が突撃銃で村民を掃射、また催涙弾を発射して村民を現場から追い払ったとのことです。

 目撃談によれば、銃撃で村民多数が薙ぎ倒され、十数名が死亡、40-50名が負傷し、現場はパニック状態に。重傷者は汕頭病院へと搬送され、一方で連行された村民も少なくない模様です。死者の多くは前面に立って警官隊と対峙していた20-30代の男性で、現時点では2人の遺体が村民に引き渡されたとのこと。この騒ぎに関係なく、たまたま通りかかったところを流れ弾に当たって死亡した者もいるようです。

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 『星島日報』の内容も大差ないのですが、村民が現場を立ち去らないことを受けて汕尾市党委員会書記(市のトップ)や汕尾市長が現地に赴いて陣頭指揮をとり、流血の弾圧となったとしています。

 『明報』の報道では死者8名・行方不明十数名となっており、実弾射撃が行われたとはせず、死者は至近距離から催涙弾の直撃を受けたもの、となっています。ただこの記事によると発電所側が地元政府に用地買収のため払った金額は少なくとも2億元。「200万元で叩き売った」という村民の認識と余りにかけ離れていますが、この差額が地元当局の横領によるものであることは言うまでもないでしょう。

 ところで、珍しいことに親中紙の『文匯報』もこの事件を報じています。AFP電を下敷きにしたもので「少なくとも死者2名」、実弾射撃云々は出てきませんが、同紙記者が汕尾市宣伝部の関係者に独自取材しています。この関係者いわく、

「事件にはまだ『定性』が出ていない。市で関連資料をまとめてから明日にも省当局へ報告する。事件について発表があるかどうかは広東省党委員会対外宣伝部門が決めることだ」

 ということで、事件自体が存在したことを親中紙が認めているうえ、「まだ『定性』が出ていない」という一言を捉えたのはいい仕事でした。「定性」とは政治的な価値判断、つまり中共にとって善か悪かというもので、合法・非合法よりも中共政権下ではこの「定性」が優先されます。「定性」が問われるほど政治的に重要な事件だった、といえるでしょう。

 むろん善悪をいえば中共にとっては「悪」ということになるのでしょうが、問題はその程度をどのくらいにするかです。催涙弾を使った程度なら「暴動」で片付くかも知れませんし、実弾射撃を事実として党内部で認めるなら(公表するかどうかは別)、そのひとつ上の「暴乱」(例えば1989年の天安門事件)になるかも知れません。

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 ●『太陽報』(2005/12/08)
 http://the-sun.orisun.com/channels/news/20051208/20051208021023_0000.html

 ●『星島日報』(2005/12/08)
 http://www.singtao.com/yesterday/chi/1208eo02.html

 ●『明報』(2005/12/08)
 http://hk.news.yahoo.com/051207/12/1jcyv.html

 ●『香港文匯報』(2005/12/08)
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0512080017&cat=002CH

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 農民が手製爆弾を用意していたことは対立の根深さを物語るものですが、一方で武警が催涙弾と警告射撃で終わらずに突撃銃で農民らを掃射した、というのは一切が謎に包まれている昨秋の四川・漢源農民暴動を除けば、人民解放軍が武力弾圧を行った天安門事件以来、初めてのケースではないでしょうか。

 続報、詳報また事態の新展開があるのかどうか。現場は封鎖されて外部からの立ち入りを禁じているようですが、そこは地盤の広東省。ここはひとつ香港メディアの頑張りに期待したいところです。

 実弾で農民を薙射、という戦慄の事実に「ああとうとうやってしまった」という感想が驚きとともに私の中にあります。驚愕し戦慄するままに速報した次第です。



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 香港ですから「檻の中の獅子」にしてやってもいいんですけど、あそこの連中はいざとなると逃げ足が速いので(笑)、獅子というほどの凛とした獰猛さには欠けますからねえ。

 ……いまさらですが日曜日(12月4日)に香港で行われた民主化デモ、前フリに2回費やしていますから結果報告めいたものを出しておきたいと思います。

 日本でも新聞各紙などが報じているので正に「いまさら」なのですが。下記の記事が最もよく状況を把握しているように思います。一部の引用にとどめておきますが、できれば全文を読んでほしい記事です。

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 ●香港直接選挙要求デモ 民主派盛り返し 「香港の良心」参加で拡大(産経新聞 2005/12/06/02:46)
 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20051206-00000012-san-int

 【北京=福島香織】香港の選挙制度の行方をめぐり、民主派がにわかに勢いを盛り返してきた。四日の直接選挙要求デモは当初の予想を大きく上回る二十五万人(主催者発表)規模で、元政務官の陳方安生(アンソン・チャン)氏も参加。次期行政長官選挙に向けた布石かとの憶測も飛び交う中、選挙制度改革法案の採決が行われる二十一日の立法会(香港議会)までに、中国政府がどう対応するか注目される。

 香港の行政長官は親中国派が多数を占める選挙委員(八百人)の投票で選出されるが、民主派はこれを市民の直接投票で選ぶべきだと主張。しかし香港政府が示す選挙制度改革法案では直接選挙への道筋も示されておらず、民主派議員はデモによって法案成立を阻止する構えだ。
(中略)

 デモ当日、英国統治時代の香港最後の総督・パッテン氏、中国返還後の初代行政長官・董建華氏の下でナンバー2として手腕をふるった陳氏の突然の参加が傍観派の市民をデモに引き込んだ。返還後、中国政府の干渉に抵抗した「香港の良心」の人気は衰えておらず、本人は否定するものの、一部香港紙は「次期行政長官候補」との期待を隠していない。
(後略)

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 デモそのものについていうと、これは予想を上回る大成功だったと思います。主催者が警察にデモ届けを出したときの予想参加者数が5万人だったのに対し、実際には主催者発表で25万人(警察発表では6万3000人)が集まった大規模デモとなりました。

 当日、私のところにはデモに参加した仕事仲間や副業先の編集長、それに配偶者(香港人)の姉などから刻々と状況報告が入り、正直、有り難迷惑なほどでした(笑)。好天に恵まれたこと、それに「続・香港。――中共必死だなw」(2005/12/01)にて紹介した香港のトップ・曽蔭権行政長官によるテレビ演説が広く反感を買ったこと、また元々興味の薄かった市民もテレビ演説を観て参加する気になったこと……などにより、予想以上の人手となったようです。

 それにしてもデモを仕掛けた民主派はイメージ戦略が下手ですね。15万~18万人くらいにしておけばまだ真実味があったのに、25万人はちょっとホラが過ぎるように思います(笑)。翌日の香港各紙(2005/12/05)でこの数字をそのまま伝えて感動的なストーリーに仕上げたのは『蘋果日報』だけでした。

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 私の元に刻々と入った現地報告から考えると、最初に出発地点に集まった人数、その後に出発地に着いた連中が待たされた時間、進行速度、途中からの参加者数、デモ最後尾の出発時間などからして、実際には10万から13万人くらいではないかと思います。

 警察発表の6万3000人は数え方にもよりますが、これは少なすぎます。5万人規模のデモを想定して交通規制を実施したのに、途中からトラム(チンチン電車)運行を止めたり一部車線を追加封鎖したのは明らかに予想を大幅に上回る人数だったからでしょう。衛星写真をもとに9万人強と算出した研究者や、デモルートの各所に計測員を置いて途中参加者も洩らさず数えた団体(複数)は9~13万人という数字を弾き出しています。

 民主派のイメージ戦略が下手、というのはホラを吹き過ぎたためにマスコミの興味が参加人数に向いてしまい、相対的にデモ本来の主題に割く時間や紙幅が少なくなったということです。まあ相手方の曽蔭権による事前のテレビ演説、恐らく中共の圧力があったのでしょうがこれも大失敗に終わっていますからどっちもどっちですけど。

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 以前書いたように、香港基本法(ミニ憲法)の関連規定によれば、たとえ普通選挙制度が実現しても、最後には中共(全国人民代表大会常務委員会)の承認が必要となりますから、中共の意に沿わない限り、香港人が本当に望む人物が行政長官になることは困難です。要するに普通選挙制が導入されても中共がOKしなければ選挙は無効とされてしまいます。その意味で香港はいかに「一人一票」を市民が求めようと所詮は「籠の中の鳥」であり、政治的にはすでに終わっていると言い切ってもいいでしょう。

 という訳で中共は普通選挙制にOKを出してやってもいいのですが、それによって香港人の民意(普通選挙によって当選した行政長官候補者)を退けるケースが出現すれば国際的イメージに響きます。ですからなるべく普通選挙制の導入は避けたいというのが本音でしょう。

 もちろん、「籠の中の鳥」であることは香港人自身もよく理解しています。それでもなお普通選挙を求めようとする姿に私は痛々しさとある種の哀しみを感じるのですが、今回のデモが成功を収めたことで、香港人が「植民地の奴隷」から「市民」に成長しつつあることは認めてやっていいでしょう。「籠の中の鳥」であるためにあくまでも「なんちゃって市民」であり、この点が台湾の政治制度と全く異なる点ではありますが。

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 ですから私はデモに参加した香港人への拍手を惜しみません。ただ実はそれよりも、元政務官の陳方安生(アンソン・チャン)氏がデモに参加したことに注目する必要があります。同氏(女性)は植民地時代には英国から派遣される総督(トップ)に次ぐ地位を保ち、中国返還後もナンバー2の政務官を務めていたのですが、前行政長官の董建華と対立して辞職したという経緯があります。

 行政長官との対立はすなわち中共との対立です。前掲記事にもあるように「香港の良心」とされる同氏の人気は、現行政長官の曽蔭権を遥かに上回ります。そういうキーパーソンが雌伏姿勢を一転させてデモに参加した政治的意味は非常に大きく、そもそもデモに参加すること自体が曽蔭権とその後ろ盾である中共に対する文字通りのデモンストレーションです。

 本気で退隠したのならこんな場所には出てこないでしょう(しかもデモの2日前に参加宣言w)。そこでマスコミをはじめ香港市民の期待が膨らむのです。もし2007年の行政長官選出に普通選挙制が導入され、陳方安生が出馬すれば、間違いなくトップ当選することになるでしょう。中共政権は大譲歩でもしない限りその当選を承認することはありません。さすれば欧米から人権抑圧との非難が出ることは必定。……中共が絶対に見たくない展開ですね。

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 ともあれ、今後の焦点は親中派が過半を占める立法会において、タイムテーブルが付属しないロードマップである政治改革法案がどう扱われるかということになります。

 定石でいうならデモの影響に関係なく可決されることになるでしょうが、親中派も一部は選挙の洗礼を受けて議員になっていますし、「中共の走狗」と呼ばれるのはやはり嫌なようですから(笑)、少しは流動的な部分が残っているといえるかも知れません。

 前例を挙げるなら、2003年の50万人デモが親中派主力の姿勢を一変させて、採択される筈だった「国安条例」が廃案に追い込まれたケースがあります。ただデモの参加者数からみてわかるように社会の熱気が違いますから、親中派の翻意は難しいところでしょう。

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 ひとつ気になった点は、携帯でデモの現場から実況してくる連中が異口同音に「若い連中は意外に少ない」と言っていたことです。目立ったのは20代後半から中年層や老人の姿。

「次世代のためにより良い社会を残しておいてやりたい」

 という気持ちが動機になったようですが、
「中国は一党独裁ではなく多党制」なんていう「国情教育」(中共主導による香港版愛国主義教育)が現在の香港の学校では行われています。1989年の天安門事件を「反革命暴乱」扱いするどころか、その存在すら教えていないそうです(個人的信念で教える教師もいるそうですが、教科書には書かれていません)。天安門事件に怒りが噴出した香港での大規模デモの記憶があり、植民地時代に成人した世代と現在の若年層の間には、価値観の違いがすでに生まれつつあるのかも知れません。

 一種の愚民教育が始められているといってもいいでしょう。香港人の中に「香港で生まれた中国人」と自らを定義する連中がこれからどんどん増えてくる訳です。おぞましいの一言に尽きます。



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