日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 中国における事実上の最高意思決定機関・党中央政治局常務委員の肩書を持つ李長春が来日しています。党内序列は第5位ですが党中央宣伝部をがっちりと掌握しており、実際の影響力は序列以上かと。

 要するにネット世論をも含む中国メディアの一切を仕切っているのがこいつです。胡錦涛のメディアの使い方もどちらかといえば古臭いのですが、李長春の方針とは一致しない部分が少なからずあり、治安系統の親玉である周永康(やはり党中央政治局常務委員)ともども江沢民が現役首脳部に打ち込んだ楔として、胡錦涛にとっては目障りな存在ということになるでしょう。

 それなら李長春も周永康もぶった斬ってしまえばいいのに、となるところですが、奥の院に江沢民が後ろ盾として控えているため、胡錦涛にはそこまで踏み込むことができません。

 とはいえ江沢民も引退後に院政を敷けない甲斐性なしですから、いわば小粒同士の綱引きで、それゆえフニャフニャした政争というか決着のつかない主導権争いが……つまり胡錦涛が「最高指導者」から「最高実力者」へとグレードアップできないまま4年半が経過して、未だにフニャフニャしたまま現在に至っています。タイミング的には江沢民がここらで何らかの「示威活動」をしてもいいころですね。

 ともあれその李長春。麻生太郎・首相と会談したほか与野党の代表とも会見していますが、むしろ今回の来日の本題は守備範囲である「宣伝部門」、要するにマスコミ対策だったのかも知れません。……マスコミとはもちろん日本側の、ということです。



 ●日本メディア14社首脳と初懇談=「良好な世論を」と李長春氏―中国(時事ドットコム 2009/03/30/22:34)

 来日している中国共産党ナンバー5、李長春政治局常務委員(宣伝担当)は30日夜、日本の通信社・新聞社・テレビ局14社の社長ら首脳と、都内のホテルで夕食を共にしながら懇談し、両国国民の相互理解に向けて「良好な世論を作るよう努力してほしい」と求めた。東京の中国大使館によると、中国指導者が日本メディア各社を一斉に招き、意見交換したのは初めて。 

 日中関係は靖国神社参拝問題などで冷え切ったほか、2005年には中国各地で反日デモが発生し、双方の国民感情悪化が深刻化した。こうした中で、中国側は、国民に情報を提供するメディアが果たす役割の重要性を痛感しており、今回の交流をメディアを統括する李氏の訪日の「大きな目玉」(中国政府筋)と位置付けた。

 李氏は懇談で、「民意は両国関係発展の基盤だが、国民感情は依然として脆弱(ぜいじゃく)だ」と指摘。「メディアは友好関係前進のため重要な責任を負っている」として、「客観・公正な報道で国民世論が誤った方向に行かないようにしてほしい」と要請した。



 御覧の通り、突っ込みどころ満載の実に味わい深い記事です。

「日中友好関係の促進のため、良好な世論を作るよう努力してほしい」

 と李長春は日本の大手マスコミの代表に対しお説教したようですね。

 ここでいう「友好」とはもちろん当ブログのいう「中共語」のことであり、日本人の考えるそれと同義ではありません。久しぶりに「中共語」の代表例でも並べておきますか。あちらの公式声明などを解読する上で重宝します。

 ●「対話」→「中共の言い分の押しつけ」「中共からの命令伝達」
 ●「協議」→「中共の言い分の押しつけ」「中共からの命令伝達」
 ●「協力」→「中共への奉仕」
 ●「平和」→「中共による制圧下での非戦時状態」
 ●「友好」→「中共に従順」
 ●「交流」→「中共の価値観の押しつけ&軽度の洗脳」

 ……というもので、「東シナ海を平和の海・協力の海とする」と中国側が言う場合は、日本にとってとんでもないことなのです。「日中友好」なんて、何とおぞましい。

「今回の交流をメディアを統括する李氏の訪日の……」

 という文言にも、「中共語」流の解釈を施せば事態が実にわかりやすくなりますね。

 ――――

 で、今回の場合、要するに「日本が中国に従属する方向への世論形成に励め」ということになります。これに対し日本の大手マスコミ各社の代表がどう反応したかは、記事から読みとることはできません。そのことに、私はちょっとムカついています。

 中共政権の首脳が日本をはじめ海外の政治家など会見したときに、国営の新華社通信をはじめとする中国メディアの報道は、中国側が日本側に対し一方的にまくし立てるという構図のスタイルがお約束となっています。

 首脳会談も含め、骨の髄から中華三昧な「謁見してやっている」という上から目線。前掲の記事は日本のメディアによるものながら、何やらそのスタイルを踏襲しているようで気に入らないのです。

「客観・公正な報道で国民世論が誤った方向に行かないようにしてほしい」

 という言葉をそのまま流しておいて日本側の言い分を加えないというのは、あたかも李長春の主張を唯々諾々と受け入れているようなものではありませんか。……ただし、

「国民に情報を提供するメディアが果たす役割の重要性を痛感しており、今回の交流をメディアを統括する李氏の訪日の『大きな目玉』(中国政府筋)と位置付けた」

 という部分に中国側の本音を垣間見せているのは一応、評価できます。私たちからみると媚中路線メインに感じられるかも知れない日本のマスコミ報道も、中国側にしてみると相当頭が痛い問題なのでしょう。

 代表例としては毒餃子問題あたりでしょうか。チベットや台湾に関する報道にも修正を要する部分が多々ある、とも感じているかも知れません。消費者にとっては歯がゆく思える内容だったかも知れませんが、これら一連の報道は,間違いなく日本国民の対中感情を悪化させることに貢献している。……と中国側が感じても不思議ではありませんから。

 ――――

 ただし、

「中国指導者が日本メディア各社を一斉に招き、意見交換したのは初めて」(日本側の意見はどこにも見当たらないのですが)

 という一種の危機感の表れには、もうひとつ理由があるのではないか、と私は考えています。影響力を徐々に高めつつある日本の「ネット世論」に対してです。

 巨大掲示板「2ちゃんねる」をはじめとする各種掲示板や、自由な情報発信を個人レベルでどんどんできるHPやブログといった新媒体が少なくとも日本人の40代くらいあたりまで相当浸透しているというのは、中国側にとってひとつの脅威であることは確かです。

 例えば昨年のフリーチベット。長野の聖火リレーに日本人有志を大挙動員せしめたのがマスコミの影響によるものではないことは明らかです。さらに5月6日の東京・代々木フリチベデモ。この種のイベントとしては異例の約4000人もが集まって当日に来日した胡錦涛の顔に泥を塗ることとなりました。

 このデモについて、マスコミによる事前告知が全く行われなかったといっていいのにかくも大規模なものとなったのは、外交部報道官が定例記者会見でその日のうちに不快感を表明したように、中国当局にとっては一種の衝撃だったのではないでしょうか。

 前掲記事の報道ぶりからわかるように、いかに報道の自由が保障されているといっても、中国はアメとムチを以て日本のマスコミ報道の内容に制約を加えることが可能です。ところが、ネットに対してはどうすることもできません。たとえ中国国内からアクセスできないようにしても、日本におけるネット発のムーブメントや世論形成を抑圧することはできませんから。

「個人レベルのネット媒体を何とかしてくれ」

 というのが、実は李長春がいちばん言いたかったことかも知れないな、というのは私の邪推にすぎません。ただし、仮に実際にそれを匂わせる発言があったとしても、日本のマスコミがそれを報じることはないでしょう。報じてしまえば、既得権益媒体であり情報発信の仕切り役というマスコミの影響力の低下を自ら認めてしまうことになります。こればかりは、面子にかけて記事にすることはないでしょう。

 ――――

「李氏は懇談で、『民意は両国関係発展の基盤だが、国民感情は依然として脆弱(ぜいじゃく)だ』と指摘」

 とのことですが、李長春はまず自分が中国人であることを忘れて、虚心坦懐に日中双方を俯瞰してみるべきですね。

 まずは反日風味満点の愛国主義教育。2005年の反日騒動も中国のマスコミが煽り役を務め、政争絡みという真因もあって、胡錦涛に不満を持つ政治勢力は「反日」の擁護者として大車輪の働きをしました。

 毒餃子へのまことに不誠実な対応、野菜には残留農薬(重金属も?)、ウナギには発ガン性物質のマラカイトグリーンなどなど、危険な食品という問題については逆ギレばかりで、真摯な反省は行われたでしょうか。

 あるいは日本人の対中感情悪化に最も寄与しているといえるかも知れない、在日中国人による凶悪犯罪が猖獗を極めていることは中国国内でどれほど報じられているのか。そして、南京のあのテーマパーク。

 中国が人権弾圧に対し「特殊な国情ゆえ」と厚顔にも言ってのけるなら、日本側も「特殊な国情ゆえ」少数民族を含め中国国民に対する人権問題への糾弾者になってもいいのではないかと。まあ少なくとも日本のマスコミに対しては、期待するだけ無駄かも知れませんが。

 最後にもうひとつ指摘しておきたいのは、

「日中関係は靖国神社参拝問題などで冷え切った」

 という一節が日本のマスコミで広く使われていることです。中国には日本の首相が靖国神社に参拝することに反対する根拠はありません。毎度毎度、「中国人民の感情を傷つけた」なんて言っていますが、これって理由になりますか?まあ日本を舐めているからこその厚顔無恥な真似でしょうけど、二国間の約束事に対する違反などの確たる根拠がない限り、日本政府が「中国は内政干渉をやめろ」と言わないことに感謝すべきです。

 御不審な点があれば「日中共同声明」以来の日中間で取り交わされた政治的文書なるものをひとつひとつ舐めるように読んでみることですね。重ねて強調しておきますが、靖国問題は日本国内の、日本国民によって決せられるべきものであり、中国はじめ他国が容喙できる性質のものではありません。「靖国」が日中関係を冷え込ませたのではなく、「靖国」への中国側の容喙と子供じみた外交上の対応、そして自国民に対する愚昧としかいいようのい扇動的な報道がいたずらに事態を悪化させたのです。宣伝担当なんだから反省しろ李長春。

 ――――

 ちなみに、「友好」が「中共語」ではなく本来の字義通りであれば、

「メディアは友好関係前進のため重要な責任を負っている」
「客観・公正な報道で国民世論が誤った方向に行かないようにしてほしい」

 という李長春の要請はまことに正論で、日本のマスコミも襟を正して拝聴すべきものなんですけど。……ええ、「客観・公正な報道」をより心がけ、日本人の対中認識をいよいよ正確なものにするよう励んでもらいませんとね。





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 やっぱり書きものは最後までちゃんと読まなければいけません。タイトルで判断して流してしまうのもいけません。……少なくとも、ヲチの材料として記事を読むにおいては。

 その好例が下の記事です。



 ●李登輝元台湾総統を表敬 日台交流スカラシップ(MSN産経ニュース 2009/03/25/19:19)


 【淡水(台北県)=長谷川周人】日本と台湾の若い世代による相互理解の促進を目的とする第6回「日台文化交流青少年スカラシップ」(主催・フジサンケイビジネスアイ、産経新聞、共催・台湾行政院新聞局)の台湾研修団は25日、台北郊外の淡水で李登輝元総統(86)を表敬訪問した。

 李氏は、中学生から大学生までの16人を前に流暢(りゅうちょう)な日本語で「野球の世界一を争うWBC決勝戦で、日本は苦戦を強いられながらも最後まで粘り、優勝を勝ち取った。これをきっかけに皆さんも日本も、精神的に磨かれた強い国になってほしい」と語りかけた。

 一方、李氏は5月31日から私的旅行のため、訪日する予定を明らかにした。李氏の訪日は今回で5回目となり、東京から日本入りして新潟、富山、石川、京都などを回り、松尾芭蕉の「奥の細道」の後半ルートをたどる計画という。



 これ、「李登輝元台湾総統を表敬」なんてタイトルで済ませていい内容の記事ではありません。御覧の通り、確かに記事は標題通り「表敬」「交流」を前面に押し出しているものの、最後の一段落が曲者。お終いまで読んだ人への最大の御褒美となっています。

 李登輝さんが、5月31日に、再来日!……おおお、てなもんじゃありませんか。

 ニュースとして一番価値のある部分を、強力な「つかみ」になる部分を、どうして押し立てないのか。そりゃ、「予定は未定」かも知れません。でも「来日の意向表明」なのですから、これは日中関係における重大ニュースに他なりません。

 過去の李登輝氏訪日に際して中共政権がその都度イラッと来る……どころではなく態度を硬化させたり恫喝したり、果ては糞青(自称愛国者の反日信者)を10名ばかり駆り集めて北京の日本大使館前で「なんちゃってデモ」をやらせたりしているのを、御記憶の方も多いのではないかと思います。

 その詳細や前回来日時における不肖御家人の取材活動などについては左サイド「CATEGORY」内の「李登輝氏訪日」を御覧あれ。中国政府の出した声明から判断するに、その激昂ぶりは小泉純一郎・首相(当時)による靖国神社参拝への対応を遥かに上回るトーンになっています。

 来日が本決まりとなれば、間違いなく今回も「中国の反発は必至だ!」てなことになるでしょう。

 それにしても、あえて地味に扱う、といった「らしくない」作業する必要が『産経新聞』にはあったのでしょうか?日本政府のゴーサインがまだ出ていないとか?政界を引退した一介の好々爺に政府の許諾が必要だというのも、おかしな話ですけど。もし許諾が必要なら、日本政府は誰に配慮してそんなことをするのか、理解に苦しむところですけど。

 ともあれ、台湾関連では久しぶりに心が晴れるようなニュースに浮き立つ気分です。

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 で、いくら地味に扱おうったって、中国当局も日本の新聞を舐めるようにチェックしていますから、無駄なことだと思うのですが。……思うのですが、私がみた限りでは現時点において、これを報じている中国国内のメディアを確認することはできませんでした。要するにスルーです。

 記事の出た翌日である26日は木曜日。ということで外交部報道官定例記者会見が開かれていますが、公開されている一問一答には、やはり李登輝氏のことが全く出てきません。当局としての「反発」は日本の出方次第で、ということなのでしょうか。ともあれメディアに対し党中央宣伝部による箝口令が敷かれているかのようです。

 ただし、ちょっと意味ありげな記事が1本。CRI(中国国際放送局)のウェブサイトにおける国内向けの記事を列べた「国際在線」が記事の出た当日の午後に、

「日本がまた台湾カードで中国を挑発」

 というタイトルのニュースを流し、これが「網易」をはじめ大手ポータルのニュースサイトに転載されています。

 ●「日本又打台灣牌挑釁中國」(国際在線 2009/03/25/14:42)
 http://gb.cri.cn/27824/2009/03/25/3245s2467151.htm

 李登輝氏訪日表明への脊髄反射?と思いきや、内容はさにあらず。現在の外国人登録証に代わって平成24年から導入される在留カードにおいて、これまで台湾人の国籍が「中国」とされていたのを「台湾」表記に改める、という出入国管理法改正案に噛み付いた内容となっています。

 この件そのものについては、当ブログと相互リンクしている「台湾は日本の生命線!」の永山英樹氏をはじめとする有志の皆さんによる地道な街頭署名活動が実を結んだものであることを、特にここに記しておきます。

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 さてその「国際在線」が叩いている在留カードでの国籍表記問題。その元ネタはやはり『産経新聞』なのですが、3月19日付の記事に拠っている模様。

 ●在留カード「台湾」表記 入管法改正案 中国政府の反発予想(MSN産経ニュース 2009/03/19/01:25)

 一週間近く経ってから騒ぎ始めるというのもおかしな話ですから、タイミングからみて李登輝訪日予定報道に対する脊髄反射であり、今後展開されるであろう猛反発の前触れではないかと思います。もし箝口令が敷かれているとすれば、それに対するささやかな抵抗という意味合いもあるかも知れません。

 なぜ箝口令かといえば、フランスとの一件やら南シナ海での領有権紛争などを受け、ネット世論の間で「愛国無罪」的気運が高まりつつある折も折、可燃度が最も高い「反日ネタ」はさすがに危ないという判断でしょうか。

 「反日」といえば尖閣諸島に船を出す民間有志の計画が準備されているところであり、実行予定は5月。これに「5.31李登輝訪日」がかぶることで生まれる素敵な相乗効果(笑)を当局は危惧し、適切な時機を待っているのか。待つといっても、現状に鑑みればさぞや苦慮することでしょうし、一方で対外強硬派の突き上げを抑えるのにも力を注がなければなりません。胡錦涛、涙目。

 どの時点で、また如何なる形で「5.31李登輝訪日」が中国国内で報じられるのかは要注目です。いつ出すか、反発度は整っているか、報道の足並みは揃っているか。……などは胡錦涛政権の統制力を如実に映し出すバロメーター。逆にもし一部メディア、例えば「反日ネタ」にはスッポンマークの『環球時報』や『国際先駆導報』といった電波君たちが隊列を乱す形で先走りするようであれば、アンチ胡錦涛諸派の拠点を探ることができます。

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 wktk?……そりゃもう断然ワクテカ。だってこれ、「何という極上燃料」なのですから。

 「愛国無罪」ムードを一気にヒートアップさせ得る真打ちニッポンの登場、それが焦点の尖閣問題だけでなく、「台独教父」と毒虫扱いされている李登輝氏の訪日まで重なる。……となれば、ネット世論どころか政争本格再燃の可能性も高まって、熱い5月となることは必定。むろん騒ぐなら尖閣上陸であれ李登輝氏の訪日であれ事前に大騒ぎすることになるでしょうから、4月からメラメラし始めるようであれば、なおよろし。

 ともあれ、台湾関連では久しぶりに胸のすくようなニュース。しかも花冷えすら吹っ飛ばす「中国の反発は必至だ!」属性なだけに、いよいよ心浮き立つ気分なのです。





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 最近、「誰がうまいことを(ry」的な、興味深いコラムを読みました。いやー面白かったです。

 以下に一部を抜粋します。



 ●日中勘違い:「原則」は「原則」にして「原則」にあらず(サーチナ 2009/03/16/16:10)


 ■日中で異なる「原則」の言葉の使い方

 日本人が「これは原則です」との説明を聞いた場合、どのようなイメージを持つでしょうか。「原則というからには、例外もあるのだろうな」と思うのが普通でしょう。けれども、この文句が中国人の口から出たとすれば、その解釈は勘違いの可能性大です。

 もちろん、中国人の発言でも「原則」と述べた後に「但是(ただし)」と続けば、「個別の件では、別途考慮してもよい」などと続くことが普通。また、「原則上同意」は「原則としては同意」。今後の話し合いで「若干の変更があるかもしれない」のニュアンスです。

 しかし多くの場合には、「原則なのだから、譲歩はできません」と言っているのと同じ。特に、政府や企業などの公式な発言で「これは原則」、「原則問題」、「原則に抵触する」などの文句が出てきた場合、「譲歩不能」のかなり強い意思表明になります。(後略)



 なるほど、うんわかるわかる……といった内容に頷かされました。このコラムの筆者は「原則」に伴う紛らわしさを整理するため、中国語の「譲歩不能」を意味する「原則」には頭に「大」をつけて、「大原則」と脳内翻訳するようにしたとのこと。

 さすがです。中国ビジネスの最前線で奮闘中の方も、「原則」に泣かされるケースがままあるのではないでしょうか。このコラムは一読の価値あり。オススメです。

 で、自分はどうかな。……と考えてみました。

 仕事でいうと、副業のコラムには私の意向と編集部からの制約という揺るがせない「大原則」があります。逆に本業は正反対で,建前はともかく、実際は様々な点において融通の利く「原則」というか「無原則」(笑)。そこは賎業ですから何でもあり的なユルい空気が支配しています。

 ただしこれは腐れ縁的な取引先と私との間での「無原則」、つまり日本人の感覚に基づくもので「何でもあり」とはいえ、越えてはいけない一線が自ずと存在しています。

 ところが香港本社(というのも恥ずかしい零細企業ですけど)の香港人どもの間では、連中の価値観での「無原則」、まあ「やったもん勝ち」的な行動原理がしばしば発動されます。それによってトラブルが発生するのを未然に防ぐのが私の役目のひとつ。

 遺憾ながらトラブルになってしまった場合、日本側に対し「陳弁7割謝罪3割」という火消しをするのは私が最も嫌う仕事のひとつです(笑)。いや笑い事でなく、いまその火消しの真っ最中で大変なのです。orz

 趣味というか余暇の娯楽の2本柱である当ブログと中国絡みのアマチュア活動については、もちろん「大原則」があります。

「中国様の喜ぶことを、真心込めて念入りに。(・∀・)」

 と、アマチュア活動についてはキャッチフレーズがそのまんま「大原則」(笑)。当ブログはそれとはスタンスが異なるのですが、まあ「大毒草」を自称しているので中国関連アマ活動との間に矛盾が生じることはまずありません。

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 さて今回のお題は「まずは編集後記」ということで、本来とっととここにupすべき先日のインタビュー、ダライ・ラマ法王の甥御で側近的存在であるケドゥープ・トゥンドゥップ殿下(チベット亡命政府議会議員)への取材についての閑話となります。

 言い訳をするとすれば、この取材内容について、まだ頭の中で整理できていないところが。……てな話になります。チベット問題について不勉強な私にとっては、ずっしりと重い内容と印象ゆえに、本業副業に追われつつさてどう踏み込むべきかと未だに考えています。昨日はとうとう夢の中で知らない人と、

「歴史上でチベット人に接触した最初の日本人て誰だろうね」

 なんて話題で二人で考え込んでいました。

 少し前に行ったチベット青年会議台湾支部のタシィ・ツゥリン主席へのインタビューでもずっしりした重さにとらわれてしまったのですが、今回のインタビューはタシィ・ツゥリン氏のときのように胸に迫る重さ、というよりは脳味噌を直撃する、うーんと考え込んでしまう性質のものです。

 内容でいえば、タシィ・ツゥリン氏へのインタビューとは次元が異なり、今回は政治色の強いものとなっています。私もその方面の話を聴きたく、敢えて突ついてみた、ということもあります。その一問一答や現場の空気で感じたことが今まで私にとっては未体験のものだっただけに、うーんと考え込んでしまっているのです。

 具体的にいうと、まず感じたのは「ひとつの信仰を核としてまとまっている民族」という日本人である私にとっての異質感。その当否ではなく、ああ違うんだな、日本人とは全く違うんだな、ということをある種の衝撃とともにナマの言葉でもって実感させられたのです。

 ビルマの少数民族で、軍事政権と60年に及ぶ内戦を展開しているカレン族に私は友人を持っていますが、カレン族はキリスト教徒や仏教徒その他様々な信仰があり、「ひとつの信仰を核としてまとまっている民族」ではありません。軍事政権がカレン族の分断を狙ってその仏教徒だけを籠絡して組織化・武装化し、内戦をカレン族同士で戦わせたりしているほどです。

 ウイグル人はどうなのか。私は世界ウイグル会議日本代表のイリハム・マハムティ氏と名刺交換したくらいで他に知り合いがいないので、これはちょっとわかりません。

 ――――

 チベット人については、上述したタシィ・ツゥリン氏とケドゥープ・トゥンドゥップ氏に加え、在日チベット人の中では抜群の見識の持ち主で、安倍晋三・元首相も一種のレクチャーを頼んだ桐蔭横浜大学大学院のペマ・ギャルボ教授、というこの上なく贅沢な方々と接することができました。

 その上で、「ひとつの信仰を核としてまとまっている民族」がチベット人たちなのだ、ということを、手触りで感じることができた次第。たぶんタシィ・ツゥリン氏と突っ込んだ話ができれば、やはり同じことを実感するのだろうと思います。

 「ひとつの信仰」というのはチベット仏教とそれに伴う伝統的な文化や風習であり、チベットの宗教的・精神的指導者であるダライ・ラマ法王でさえも、この「信仰」からは自由ではない、ということを今回のインタビューを通じて体感しました。

 ええ、ダライ・ラマ法王でさえも、この「信仰」による制約からは、決して自由ではないのです。

 要するに、チベット人には「信仰」という、譲歩不能な「大原則」が厳然として存在し、それが民族の核として屹立しているように思います。

 これに対する中共政権にも、中国共産党による一党独裁制という統治のカタチを死守するための「大原則」があります。こちらの「大原則」は、チベット人のそれに比べれば、硬度においてやや劣るといえるでしょう。「中共人」たちが地縁や利権によって致命的に割れてしまい、そのために一党独裁体制が崩れてもいい、という展開になる可能性もあるからです。

 「信仰」ではなく、イデオロギーでもなく、地元意識や利権という生臭いものが核となっているために、最後には分裂してしまいかねない弱さを内包しています。……ただし、現時点ではその「中共人」たちも、一党独裁制の維持という点においては一枚岩です。こちらにも「大原則」があるという訳で。

 チベット問題はつまるところ、この双方が掲げる異なる「大原則」が角を突き合わせ、両者とも「譲歩不能」という形で膠着している観があります。……いや、中共政権が様々な形でチベット統治の強化を進めているのですから、膠着ではありませんね。

 中共政権が自壊するなり、自壊危機の混乱のドサクサに紛れてチベットが独立する、ということにでもならなければ本質的な事態の進展はなさそうな印象を、少なくとも私個人は感じました。

 いずれにせよ、チベットは独立を勝ち取らない限り、その「大原則」の条件が満たされることはないように思います。……もちろん、「大原則」のいう「チベット」という地域は、いわゆるチベット自治区に限定されたものではありません。



 現在、一般にチベットと呼ばれているのは、中国が“チベット自治区”として認めている領域ですが、これはチベットの一部に過ぎません。なぜなら、中国はチベットを武力併合した際にチベットを分割統治したからです。

 本来のチベットとはウ・ツァン、カム、アムドの三つの地方(=チベット3州)から構成されています。このうちウ・ツァンとカムの一部が「チベット自治区」になり、ほかの領域は青海省、甘粛省、四川省、雲南省それぞれに編入されました。私の故郷、カム地方のニャロン(新龍)も、現在では四川省ということになっています。

 ――――『中国が隠し続けるチベットの真実』(ペマ・ギャルポ著、扶桑社新書)



 ……ということになります。1949年3月10日のチベット蹶起から今年で50年になります。昨年3月のラサ騒乱、そして北京五輪の聖火リレーにおいて一躍、国際社会の注目を集めるようになったチベット問題ですが、



 チベット独立支持派のケドゥープ氏は、今後の対応については「今、やみくもに動いても圧倒的戦力を誇る軍によって弾圧されるだけであり、機が熟すのをじっくり待つ」として「待ちの戦略」を説いた。

 ●対テロ部隊ら20万人追加配備―進む中国の抑圧体制と軍事基地化(世界日報 2009/03/14)



 と、ケドゥープ・トゥンドゥップ氏当人が表明しているように、「大原則」の下に団結しているチベット人たちにとっては、チベット問題を国際社会において積極的にアピールし続けていく一方、中共政権の「大原則」が崩れる時機をひたすらに待ち続けるという、息の長い闘争を強いられることになるでしょう。

 翻って考えれば。

 日本のチベット支持者たちは、一時の「フリーチベット」というブームが去ったことを再認識しつつ、自分たちは何をすべきかについて一人ひとりが自問自答するとともに、支援活動のゴール地点をどこに置くか、ということについて、自らの覚悟のほどを改めて顧みる必要があるのかも知れません。





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 As title であります。WBCにて「侍ジャパン」こと野球日本代表が2回連続世界一!

 配偶者が非常に喜んでおりました。頑張れニッポンとキムチ嫌いがごっちゃになっていたようです。

 個人的には準決勝の米国戦での勝利が全てだったように思います。相手も相手ですし、日本野球の良いところが随所に出ていましたし。

 決勝戦では、韓国も頑張りましたね。でも実際は拙攻あってこそのあのスコア、というのが眺めていての実感。日本は残塁多過ぎでした。









 さて、予定調和とでも申しましょうか、日本の優勝決定=韓国敗戦の直後から「2ちゃんねる」では香ばしいレスが散見されております。悔しいのぅ悔しいのぅ。

 そうした中にあって、下のレスは神がかっているというか、芸術的というか。脱帽です(笑)。



 日本恥知らずもいいとこだねwww

 本当は障りなく韓国が優勝すべきだったのに

 最強韓国っていう認識を持ってない日本人はおかしいよ

 強い国がただの島国に実力で負けるわけないじゃんw






 クマー!といえば、今日の試合でも安定感抜群でしたね。

 ともあれ奉祝!提灯行列!サッカーもこのくらい、……まあせめてワールドカップで4強まで進めるくらい強ければいいのに。

 あ、もちろん審判買収とか故意誤審とか飛び蹴りとか嫌がらせとかは一切無しで。

 それにしても韓国、お子様ランチはおあずけですか?どうして今日はマウンドに犬の旗を立てないのかな。









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 きょう、靖国神社へ行ってきました。午前中に病院で定期検診を受けた帰りに、通り道なのでふと寄ってみたくなり、途中下車。

 すると、参拝客が普段よりやけに多いのです。駐車場には観光バスがズラリ。

 連休だから団体客が多いのかな、と考えつつ神門をくぐると、右側の能楽堂の手前に人だかりができていました。何かを野次馬が取り囲んでいるのです。

 猿回しじゃないよなー、と思いつつ私ものぞいてみると、テレビクルーがスーツ姿のオサーンにインタビューしています。NHKとかTBSとかテレ朝とか。他に近くの桜の根元に「××新聞社写真部」などと書かれた脚立がいくつか並んでいました。

 その樹をふと見上げてみると。……おお!桜がつぼみのいくつかをほころばせ、花開いているではありませんか。

 それで合点が行きました。開花宣言ということでしょう。東京の場合は靖国神社の標準木で3つだったか5つだったか、花が開くと「開花」ということになるのです。取材されているオサーンはたぶん、気象庁の中の人。





 そうかーもう春なんだなー、と思いつつ、参拝を終えた私は例によって遊就館茶室にて海軍コーヒー。零戦と新しい季節の空気を満喫して帰路に就きましたとさ。

 という訳で桜特集。

















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「最近、更新してないじゃない?」

 と、読売新聞論説委員の中の人に労られてしまいました。へい。心身ともに疲弊しているのであります。

 3月14日の渋谷デモの翌日から色々ありまして。

 一番ショックだったのは、私にとってかけがえのない人が高齢により突如別の世界へ行ってしまい、以前のように楽しい会話が成立しなくなってしまったことです。呆然とするばかりでした。

 それから余暇の娯楽……要するに当ブログ&「中国様の喜ぶことを,真心込めて念入りに。(・∀・)」にとって幸運にも千載一遇ともいうべき機会が続いて、逃すまじと連日外回りしていたら、デモ以来の蓄積疲労でバテてしまいました。蒲柳の質なものですから。

 それでも一応サラリーマンです。本業副業とも仕事が容赦なく押し寄せてくるのを放置する訳にもいかず、逐一対応していたために手抜き度2割の記事集めも集めるだけで精一杯。頭の中でぼんやり考えたりすることはあっても、中国観察日記(当ブログ)を書く余裕まではさすがにありませんでした。

 ……言い訳終了。論説委員の中の人によると、このブログについて当初、「御家人=共同通信の記者」という噂が業界にはあったそうです。不思議ですねー。どこから出た話なのか知りませんが、「中国の反発は必至だ」なんて書いたこともないのに(笑)。そもそも素人をつかまえてプロ扱いするとは私にとっても共同通信にとっても迷惑千万。

 ――――

 まあいいや。上のような状態ではありますが、とりあえず一番やりたかったことだけは、し遂げることができました。写真の通りであります。色々な方の好意に甘えて、ダライ・ラマ14世の甥御にして側近格のケドゥープ・トゥンドゥップ氏にインタビューすることができました。

「すっごい質問したじゃん。たくさん」

 と論説委員の中の人に笑われてしまいましたが、御蔭様であります。中の人のインタビューが予想外に淡白だったため、約40分もの時間が私に回ってきました。

「いやーどうも、図々しいんで私は」

 と、笑われたことにレス。ええ私は図々しいんです。恩師の血筋が血筋ですから、権威というものに「だから何?」と多寡をくくる悪い癖が身についていて、その点で相手に吞まれることはまずありません。

 それから、せっかく時間があるのですから遠慮なくどんどん質問しなきゃ損だと私は思うのですが、どうなんでしょう。満腹感に達する度合いは人それぞれということなのか、賎業に身を堕としたために香港メディアの「やったもん勝ち」的な浅ましさも私は身につけてしまっているのか。TPOにもよりますが、基本的に稼げるだけ稼いでくるのが取材だと私は考えているので、笑われても呆れられても仕方ありませんね。

 ともあれ、近日中にインタビューをここにupできるよう、努めます。乞う御期待!というほどのものではありませんが、私がインタビューしている傍らでプロの方が色々こまめにメモしていたようですので、呆れられても最低限の具材は揃っている内容だったのでしょう。……と言ってみるテスト。

 ――――

 それよりも、全人代(全国人民代表大会=なんちゃって国会)がようやく終わってワクテカの時期に入りました。全人代が開かれるため「政治の季節」と呼ばれる中国の3月ですが、本当に面白いのは全人代の前後。

 それまで展開されていた政争めいたものが旧正月を迎えて「安定団結」を演出するためにいったんストップした後、旧正月明けからまた綱引きが始まります。それもまた全人代での「安定団結」アピールのためハーフタイムとなってしまうのですが、全人代が終わってからはいよいよ本気モード。

 当ブログでは2005年からこの季節を眺めていますが、反日騒動とか社会主義栄辱観とか靖国問題とか対仏攘夷運動とかに名を借りた主導権争いが行われています。曽慶紅の寝返りによって実現した上海閥狩りで、プリンス・陳良宇を血祭りに挙げた胡錦涛サイドが余勢を駆って黄菊を「心電図ピー状態」にしたのもこの時期(ほどなく本当に鬼籍に入ってしまいましたね)。

 そして今年もまた……ではありませんね。最悪の経済・社会状況下で領有権争いという最も香ばしい燃料が投下されたのが今年のいま現在。江沢民型愚民教育で自称愛国者が量産され始めて約15年にもなる中国において、このネタの可燃度はものすごく高いです。

 いまは南シナ海に火がついたところで、対外強硬派(その背後に既得権益層という抵抗勢力)が走り出すのを胡錦涛サイドがブレーキをかけようと必死。米国海軍まで巻き込んでいますからお楽しみはこれからです。……といってもこの騒動は、あくまでも前座。真打ちのニッポン登場までにどこまで自称愛国者たちをヒートアップさせられるかどうかで、尖閣問題の展開が変わってきます。

 ただでさえ危ない社会状況なのに、一番進んではいけない方角へと走り出しつつあるのが、いまの中国。チベット問題におけるダライ・ラマ叩きやコカ・コーラ社が進めていた買収計画の阻止なども、ひょっとすると燃料のひとつかも知れませんし、深読みすれば逆にブレーキをかけるためのものかも。……などといった邪推もまた楽しからずや。「狭隘なるナショナリズム」がどこまで進むかが、2009年版「真の政治の季節」のポイントになるといっていいでしょう。

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 本日は閑話なので、このくらいで。のんびり養生もしていられませんが、回復に努めつつピッチを上げていくつもりです。m(__)m

 中国の反発は必至だ?





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 今週はチベットネタが続きましたが、これで一段落となるでしょう。きのう3月14日、「チベット・ピースマーチ」に参加してきました。

 簡単にいうとフリーチベットのデモです。東トルキスタン組や南モンゴル組を含め、合計約300名で渋谷~表参道~渋谷を練り歩いてきました。

 昨年の「5.6代々木デモ」のように4000名以上が集まると一体何事かと街が騒然となりますが、如何せん300名ではそこまでいきません。悪天候の関係もあったのでしょうが、あと200名は欲しかったところです。

 ただし、この300名は雪山獅子旗やブラカードの所持率が高い精鋭部隊。フリチベの風物詩ともいえる鎧さんなどの参加もあって、曇天に鮮やかな旗指物を無数に翻しつつのシュプレヒコール。300名ながら存在感は示せた、アピールは十分できたといえるでしょう。……まあ正直なところ、500名も集まらなかったのが残念ではありましたけど。

 今回のデモで特筆すべきは、出発前の集会でダライ・ラマの甥御にして側近格でもある上、独立路線の有力者であるケドゥープ・トゥンドゥップ氏がメッセージを発し、またチベット青年会議の旗が日本でもデビューしたことです。

 いずれも日本のフリーチベットにおける歴史的な出来事といえます。特に3月14日という節目の日に行われたデモに、これまで中国側と何度も接触してきた経歴を持つケドゥープ・トゥンドゥップ氏が駆けつけてくれたことは、チベット青年会議旗のデビューと併せて、何やら日本のフリチベも一人前として認められたというか、質的なグレードアップが実現したという思いを持ちました。

 デモ自体は特別に変わったものではありませんでしたが、東トルキスタン組と南モンゴル組がそれぞれの旗を掲げつつ、自らを主張することなくフリーチベット専一のコールに唱和してくれたあたりにもある種の成熟が感じられました。

 ――――

 私自身は集合時間である14時近くに集合場所の宮下公園についたのですが、地下鉄を下りて地上に出てみると雨が本降り気味なのに閉口。降る訳ねーだろ!という信念一徹で雨具の用意をしていなかったので、仕方なくコンビニで傘を買う破目になりました。

 ところが。出発前の集会が始まると雨脚はみるみる弱まっていき、いざ出発というときには完全に止んでくれました。おお仏天感応。せっかく買った傘は10分くらいしか役に立ちませんでした。

 宮下公園に着いてから、まずケドゥープ・トゥンドゥップ氏に御挨拶。事前の写真で得た印象では温和な中に鋭さを蔵したかのような……と思っていたのですが、実際に会って話してみるとあくまでも温厚な紳士。

 チベット問題を語らせたらこの表情がどう変わるのだろう、と考えつつ自己紹介をして、チベット青年会議台湾支部のタシィ・ツゥリン主席に先日インタビューをしたことなどを話し、胸中の疑問を明らかにしたいので時間があれば是非取材させてほしい、と申し込むとそこは外交辞令。日本滞在中は分刻みのスケジュールでしょうから実現はまず無理だろうと思いつつ、とりあえず写真を撮らせてもらいました。

 いざ出発ということになり、私は最前列近くに並んだところ、

「御家人さんですか?」

 と後ろから声をかけられました。えっ?と振り向いたら「PIYO」さんです。もちろん初対面。どうして私のことがわかったのかと尋ねたら、

「何となく……」

 との答。それらしい怪しげな物腰というものでしょうか。オーラならぬ腐臭を放っていたということですね。わかります(笑)。でも声をかけてもらってとても嬉しかったです。「PIYO」さん、ありがとうございました。m(__)m

「今日は他にも『dongze』さんや『五香粉』さんが来ている筈なんですけど……」

 などと話しているうちに、デモ隊が動き出しました。私は写真撮影のため隊列から離れてカメラを構えているうちに「PIYO」さんとは分かれてしまい、結局は列の最後尾に。すると今度は以前、台湾関連の署名活動で御一緒させてもらったことがある「いいちこ」さんと邂逅(沿道にあった「自衛館」って場所、何なんでしょうねあれはw)。

 「いいちこ」さんには最近発売された良書を教えてもらいました。チベットのみならず、ウイグル、モンゴル、台湾にもたっぷりとページが割かれていて、値段も手頃。これは良い勉強になりそうです。

 
中国の狙いは民族絶滅―チベット・ウイグル・モンゴル・台湾、自由への戦い
林 建良,テンジン,ダシドノロブ,イリハムマハムティ
まどか出版

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 デモ隊は渋谷から表参道を通って再び宮下公園に戻り、解散式。「dongze」さんや「五香粉」さんにお会いできなかったことが心残りとなりましたが、さすがに大声を出すのは憚られたため、あるいは御家人フラグが立つのを忌避されているのかも(笑)……と思い、それでは海軍コーヒーでも飲みに……と考えたらもう遊就館は店仕舞する時間。仕方なく一人で大人しく帰宅しました。


    

    





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▲ケドゥープ・トゥンドゥップ氏



 いよいよ明日3月14日(土)に開催される「チベット・ピースマーチ」にビッグニュース!

 ダライ・ラマ法王の甥御であり、かつて中国側に招かれて何度も当局と接触した経験を持つケドゥープ・トゥンドゥップ氏(Khedroob Thondup)が、このイベントに参加することとなりました。

 TSNJ(チベット・サポート・ネットワーク・ジャパン)のウェブサイトによると、ケドゥープ氏はチベット臨時政府議会の議員でダライ・ラマ法王の甥、そしてチベット独立派として知られている存在。

 独立派といえばチベット青年会議ということになりますが、その旗が「チベット・ピースマーチ」において初登場することは前回お伝えした通り。

 前々回にはチベット青年会議台湾支部のタシィ・ツゥリン主席に対するインタビューを御紹介しました。

 ケドゥープ氏が「チベット・ピースマーチ」においてどういうメッセージを発してくれるのか、これは期待せずにはいられません。



 ダライ・ラマの甥御さんであるケドゥープ・トゥンドゥップ氏が来日された。

 チベット蜂起50周年を記念すると同時に、昨年の武力弾圧の追悼行事、これを氏が「チベット・ピースマーチ」に参加するという形で日本で執り行うのは正に歴史的な出来事。

 今年はチベット青年会議の旗もあがる、という意味でも歴史的。日本のフリーチベットにとって、大きな節目になることは間違いない。

 私たちの切なる願いは必ずや通じて、チベットに自由が訪れる日が来ると確信している。(TSNJ代表・田中健之氏)



 当日の天候が心配されますが、日本の「フリチベ」の分岐点になるかも知れないのが今回の「チベット・ピースマーチ」。みなさん、是非ふるって御参加を!





 ●チベット支援を訴えて一緒に渋谷を歩きませんか?

 今年3月10日は、1959年のチベット民族蜂起から50年にあたります。

 TSNJでは毎年3月にチベットの平和と自由を訴えるピースマーチを東京で開催しています。早春の1日、チベット人と日本人が一緒に歩き、チベット支援を呼びかけませんか。

 1959年の民族蜂起から50年に当たる今年、昨年3月にチベット全土で巻き起こった歴史的な抗議から1年の節目でもあり、チベット人達は今できることをやろうと必死の思いでいます。私たちに出来ることはよりたくさんの方がチベットを支援しているということを示すことです。たくさんのご参加をお待ちしております。


 ●チベット・ピースマーチとは

 チベット民族蜂起――1959年3月10日、ラサの民衆が蜂起して中国軍と対峙、ダライ・ラマ法王14世が亡命を余儀なくされ現在へと至る――を忘れず、チベットの平和と自由を求めて世界各地で実施される平和行進です。

  ――――

 ●日時      2009年3月14日(土) 14時集合

 ●集合場所   渋谷・宮下公園(JR・私鉄・地下鉄各線渋谷駅下車 徒歩約5分)
         渋谷区神宮前6-20-10

 ●予定コース  宮下公園-宮益坂-青山通り-表参道-神宮前-明治通り-宮下公園

 ●参加費    無料/事前の参加申し込みは不要です

  ――――

 【※】ピースマーチにご参加くださる方へ

  *事前の参加申し込みは不要です。当日、集合場所へお越しください。スタッフがお待ちしています。お1人でのご参加、友人とお誘い合わせでのご参加、いずれも大歓迎です。

  *「チベット」をアピールする服装や盛装でのご参加大歓迎です。例年、チュバ(チベットの民族衣装)や「Free Tibet」Tシャツ、チベットのサッカーチームの公式ユニフォーム姿の方々がいらっしゃいました。(もちろん普通の服装でもまったくかまいませんし、普通の服の人のほうが多いです。)歩きやすい服装と靴でお越しください。

  *プラカードやチベット国旗をお持ちの方はぜひご持参ください。旗は、チベット旗のみご用意ください。

  *デモ行進時には、TSNJ参加団体の用意した配布物以外は禁止です。

  *寒い時期ですので、各自体調管理にご注意ください。

  ――――

 ●主催     TSNJ (Tibet Support Network Japan)

 ●お問い合せ  tsnj2001@gmail.com


 詳細はこちらを。







 せっかくですから、この動画も。「4.26長野」を思い出します。↓








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▲「チベット青年会議台湾支部」のタシィ・ツゥリン主席(左)から「チベット青年会議日本支援委員会」のメンバーにチベット青年会議旗の授与。




▲チベット青年会議の旗。3月14日の「チベット・ピースマーチ」でいよいよデビュー。



 チベット青年会議台湾支部のタシイ・ツゥリン主席に対するインタビューを前回お届けしましたが、タシィ氏が来日して東京入りしたのは、もちろん外国人記者クラブでラムカレー(激ウマ)に舌鼓を打ちつつ私の取材を受けるためではありません。

 本題は上の写真の通りです。このほど「チベット青年会議日本支援委員会」が東京にて設立され、同会に対しタシィ氏からチベット青年会議旗の授与が行われました。

 この旗は3月14日に開催される「チベット・ピースマーチ」で披露される予定。いよいよ日本にもチベット青年会議の旗が上陸することになります。

 チベット青年会議旗の登場と日本支援委員会の設立によって、日本のフリーチベット運動にも新たな流れが生まれるのでしょうか?

 支援委員会は、チベット青年会議の日本支部設立に道をつけるものとなるのでしょうか?

 何はともあれ、期待大なのであります。





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―――――――― 本 編 ――――――――



 

 ▲チベット青年会議台湾支部 タシィ・ツゥリン主席(左)と桐蔭横浜大学・大学院 ペマ・ギャルボ教授。


 前回の「予告編」に書いた通りです。

 何だかよくわからないのですが、お呼ばれしました。

 きのう3月8日のことです。お呼ばれする機会の少ない私は、そりゃもう嬉々として指定された外国人記者クラブへ。

 すると……おおお!

 ものすごく濃密。ものすごく有意義。ものすごく贅沢。……そんな時間を過ごすことができました。

 しかも!ペマ・ギャルポ氏に通訳の労をとって頂き、チベット青年会議台湾支部のタシィ・ツゥリン主席にインタビューすることができました。

 タシィ氏は台湾在住なので流暢な中国語の使い手です。それゆえ直接話すこともできたのですが、ペマ氏を経由して言葉になるものの方が様々な意味で「純度」が高いと考え、中国語で出しゃばることを差し控えた次第。

 このため、以下のインタビューにおけるタシィ氏の回答にはペマ氏自身の言葉や解釈も一部含まれているかと思いますが、その方がより真実を伝えるという点で適切だと私は考えています。

 「サプライズ」の件などオフレコの部分が多すぎて(笑),現時点では一般的な内容しかここで公表できないことを諒として頂ければ幸いです。



 
●【インタビュー】「自由がない」というのは……。/ チベット青年会議台湾支部タシィ・ツゥリン主席



 ――タシィさんといえば、昨年4月26日に長野で行われた北京五輪の聖火リレーで、聖火ランナー、確か卓球の福原愛選手の前に飛び出して日本では注目を集めました。

「あのときは、逮捕された私のことを助けようと、たくさんの日本人の方々が支援して下さったり、励ましたり元気づけてくれたりしました。とても心強かったです。その方々にはいまでも心から感謝しています」

 ――そのタシィさんは、実はチベット青年会議台湾支部の主席を務めていたんですね。

「はい」

 ――チベット青年会議というと、まず思い浮かぶのは、チベット独立を目標として掲げていることです。これは、中国の枠内における「高度な自治」を求めるダライ・ラマ法王の路線とは異なるのではないかという点が疑問なのですが?

「それは誤解です。まず言いたいのは、中国はダライ・ラマ法王が『高度な自治』以上のことを言わないから,ダライ・ラマ法王という指導者がいずれいなくなればチベット問題はもう大丈夫、と考えながら、ダライ・ラマ批判をしているということです。その一方で、私たちチベット青年会議については、テロ組織扱い」

 ――そうですね。テロ組織扱い。

「でもチベット青年会議は、平和的に活動すること、自由と民主を重んじること、そしてダライ・ラマ法王の教えを守ること、というのが基本原則なんです。ダライ・ラマ路線との間に矛盾はありません」

 ――そうなんですか。

「はい。ダライ・ラマ法王は立場上、チベット独立を明言しないだけです。チベット人なら皆知っていることですが、ダライ・ラマ法王の教えの中には『チベットはチベット人のもの』として、チベット人の国を作ろうということを示唆している部分があります。だから目指しているものが異なっている訳ではありません。世界各国に設立されているチベット青年会議の支部では、こうした誤解を解くための活動もやってきて、いまでは各国の人々から正しく理解されるようになっています」

 ――ところで最近の話になりますが、2月25日の「正月を祝わない運動」は、組織的なものだったのでしょうか?

「いや、あれは全く自然に発生した、自発的なものです。死者が出た家は正月を祝わない、という伝統的習慣がチベットにはあります。昨年の惨劇を経て、みんなが自然にそういう行動をとりました。実はこのとき、中国当局は何とかチベット人に正月を祝わせようとして、正月を祝った家には5000元を配る、なんて切り崩し工作までやっていました」

 ――5000元!そんなことまで……。お金を配らなければならないほど、自発的ながら民族の決意と団結は強かったということになりますね。

「そうです。……まあ、生活のため、お金を受け取った人も中にはいましたけど」

 ――そういえばやはり同じ時期のことですが、寺院内にいた僧侶が法要を営もうとしたのを治安当局が阻止して、憤激した若い僧侶が焼身自殺を図り、治安部隊がその僧侶に発砲して3発撃ち込んだという報道がありましたが?

「残念なことですが、あれは事実です」

 ――それにしても、法要というのは宗教活動ですよね?別にデモをやるという訳ではない。それなのに法要すら阻止するというのは当局のやり過ぎで、そこまでしなくてもいいと思うのですが。……あるいは一種の挑発行為で、反発したチベット人が騒いだところを一網打尽にするという意図だったのでしょうか?

「それは……チベットでは違うのです。法要を行うというのは確かに宗教活動ですけど、実際はそれが抗議活動に等しいとみなされてしまう。それがチベットなのです」

 ――もう少し詳しくお願いします。

「はい。簡単に言うと、いまのチベットでは法要を自由に行うことすらできないのです。そういう自由を与えられていません。法要を行うのを許されるのは、例えば観光客が来るという連絡が入ったとき。そうでなければ許可が出ません」

 ――そんなことまで……。

「『自由がない』というのは、そういうことなのです。だから、自分たちで法要を行うこと自体が、抗議活動に等しい。他にも僧侶がデモをしたという報道がありましたけど、これはもちろん法要ではなく、寺院の外に出てのデモ行進です。僧侶があそこまでやるというのは、よほどのことだと考えていい」

 ――ちなみに、チベットの寺院にも中国共産党の党委員会のような組織はあるのでしょうか?

「あります。ただ名前は党委員会ではなくて、『民主管理委員会』というものです。トップはもちろん共産党員」

 ――漢族ですか?

「漢族の場合もありますし、チベット人である場合もあります」

 ――ところで御存知のように、いま中国の経済は国際金融危機の影響で大変な状況にあります。今年の全人代も珍しく非常に切迫感がある。こうした経済危機は、チベットにとってどういう影響をもたらすとお考えですか?

「チベットにとってはプラスになると思います。チベットに構う余裕がなくなるからです。これは以前からそうで、1950年代に毛沢東と劉少奇が争ったころから、中国当局は政争や国内的な混乱があると、チベットの「解放」(支配強化)のタイムテーブルを遅らせたり、ダライ・ラマに対話を求めたりしてきています。今回も弾圧がやや緩む可能性はあります」

 ――なるほど。……最後に、タシィさんが主席を務めているチベット青年会議の台湾支部についてもいくつかお尋ねします。まず、台湾ではどういう人たちがチベット青年会議を支持しているのでしょうか?

「だいたい3種類に分けられますね。純粋にチベットを応援している人、台湾独立派、それから仏教関係者。同じ仏教ということで応援してくれます」

 ――中国が唱えている「高度の自治」が実際はどういうものかということを、台湾の人々は香港の状況から理解しているので、チベットについても独立以外に活路はない、という考えに至る人も多いのでは?

「はい。全くその通りです」

 ――政界での支持はどうでしょう?

「民進党系が多いです」

 ――国民党政権に代わってから、タシィさんたちの活動に何らかの圧力がかかったりしていますか?

「特にありません。台湾は民主主義ですから。いまでもイベントを開けば、招待状を出した民進党の政治家はみんな出席してくれます」

 ――もしよろしければ、具体的に支持してくれている政治家の名前を挙げてくれませんか?

「そうですね……例えば、高雄市の陳菊・市長。彼女は3月10日をチベット記念日とするという条例を定めてくれました。その日は市役所に雪山獅子旗が掲げられるのです」

 ――ああ、それは素晴らしいですね!東京都も同じことをすればいいのに。

「うーん、東京はオリンピックに立候補していますから、無理でしょうね」



 タシィ氏からは、朴訥とした風貌と温厚で誠実な人柄の中に、凛とした揺るぎないものを持っている、という印象を受けました。私の質問に対しても、自らの思い、ひいてはチベット人としての民族の思いを、日本人である私に極力正確に伝えようとしているかのように、慎重に言葉を選びつつ一言一言丁寧に、真摯に回答してくれました。

 ペマ氏の風格はもはや説明不要ですね。周囲まで和ませてしまう温かな空気を漂わせながら、一瞬一瞬に垣間見せる気魄のようなもの、あるいはさり気ない言葉ながら、それを聴く者が胸をつかれたような思いにさせられてしまうあたりは、どこか李登輝・元台湾総統と似たものがありました。一度接するだけでこちらが魅了され、チベットを応援したくなる気持ちになってしまう、そういう感化力に富んだ独特な雰囲気の持ち主です。

 インタビューの中で、

「『自由がない』というのは、そういうことなのです」

 という、ペマ氏を通じて伝えられたタシィ氏の言葉には、古い表現ですが肺腑をえぐられたような気持ちになりました。それが両氏の体験を基に出た言葉だけに、ネットや活字、映像でしかチベットの現状を把握できない私には、形容し難いほどの重みを伴って胸に迫ってきたのです。……また、台湾での活動に国民党政権から政治的圧力を受けたりはしないかという質問に、

「特にありません。台湾は民主主義ですから」

 と答えてくれたタシィ氏に、誤解を恐れずにいえば、ある種の初々しさを私は感じました。同時にその裏返しとして、チベットがいかに苛酷な状況に置かれているか、ということも。

 総じていえば、ああ、やはり違うんだな。……という感想が、かつて李登輝氏の来日を取材したときのことを思い出しつつ、私の中に残りました。距離感とでもいうべきでしょうか。テーブルをはさんで向かい合って聴く話には、言葉だけではなく、その圧倒的な人格から発せられる何事かが聞き手に迫ってきます。同じ話であっても、例えば講演会の聴衆として臨んだ場合には、その大切な「何事か」を全身に浴びることはできません。

 言葉というより、ずっしりとした相手の思いを、丸ごと両手で抱え込まされたような気持ちになるのは、やはりこの距離感ならではだと思うのです。

 不思議な人のつながりで、このような得難い機会に巡り会えた私は、まことに果報者としかいいようがありません。

 短い時間ながら、私に様々なことを教えて下さったペマ・ギャルポ氏とタシィ・ツゥリン氏のお二人に、この場を借りて改めて御礼申し上げます。


 ――――


 【参考記事】

  ●「フリーチベット」の叫び届かず亡命2世 泣きながら乱入 聖火リレー(MSN産経ニュース 2008/04/26/13:39)

  ●長野の聖火リレーで逮捕されたタシィさん、釈放され会見(MSN産経ニュース 2008/05/17/00:43)





▲画像クリックで拡大。






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 ▲チベット青年会議台湾支部 タシィ・ツゥリン主席(左)と、桐蔭横浜大学・大学院 ペマ・ギャルポ教授。


 何だかよくわからないのですが、お呼ばれしました。

 普段お呼ばれする機会の少ない私は、そりゃもう嬉々として指定された時間に指定された場所へ。

 すると……おおお!

 ものすごく濃密。ものすごく有意義。ものすごく贅沢。……そんな時間を過ごすことができました。

 わかる人には、わかる筈。

 3月14日の「チベット・ピースマーチ」が俄然楽しみになってきました。

 何やら凄いことになりそうな。……ワクテカであります。





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 フリーチベットであります。早くも1週間前となりましたので告知をば。





 ●チベット支援を訴えて一緒に渋谷を歩きませんか?

 今年3月10日は、1959年のチベット民族蜂起から50年にあたります。

 TSNJでは毎年3月にチベットの平和と自由を訴えるピースマーチを東京で開催しています。早春の1日、チベット人と日本人が一緒に歩き、チベット支援を呼びかけませんか。

 1959年の民族蜂起から50年に当たる今年、昨年3月にチベット全土で巻き起こった歴史的な抗議から1年の節目でもあり、チベット人達は今できることをやろうと必死の思いでいます。私たちに出来ることはよりたくさんの方がチベットを支援しているということを示すことです。たくさんのご参加をお待ちしております。


 ●チベット・ピースマーチとは

 チベット民族蜂起――1959年3月10日、ラサの民衆が蜂起して中国軍と対峙、ダライ・ラマ法王14世が亡命を余儀なくされ現在へと至る――を忘れず、チベットの平和と自由を求めて世界各地で実施される平和行進です。

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 ●日時      2009年3月14日(土) 14時集合

 ●集合場所   渋谷・宮下公園(JR・私鉄・地下鉄各線渋谷駅下車 徒歩約5分)
         渋谷区神宮前6-20-10

 ●予定コース  宮下公園-宮益坂-青山通り-表参道-神宮前-明治通り-宮下公園

 ●参加費    無料/事前の参加申し込みは不要です

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 【※】ピースマーチにご参加くださる方へ

  *事前の参加申し込みは不要です。当日、集合場所へお越しください。スタッフがお待ちしています。お1人でのご参加、友人とお誘い合わせでのご参加、いずれも大歓迎です。

  *「チベット」をアピールする服装や盛装でのご参加大歓迎です。例年、チュバ(チベットの民族衣装)や「Free Tibet」Tシャツ、チベットのサッカーチームの公式ユニフォーム姿の方々がいらっしゃいました。(もちろん普通の服装でもまったくかまいませんし、普通の服の人のほうが多いです。)歩きやすい服装と靴でお越しください。

  *プラカードやチベット国旗をお持ちの方はぜひご持参ください。旗は、チベット旗のみご用意ください。

  *デモ行進時には、TSNJ参加団体の用意した配布物以外は禁止です。

  *寒い時期ですので、各自体調管理にご注意ください。

  ――――

 ●主催     TSNJ (Tibet Support Network Japan)

 ●お問い合せ  tsnj2001@gmail.com


 詳細はこちらを。










――――いまペリリュー島玉砕戦の本を読んでいます。是非、これを――――





――――色物系をうたうブログとして一応オチを……と思い、こちらを――――







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 何やら私の身辺が慌ただしくなってきました。

 まずは本業が日本の年度末を控えて仕事量がにわかに膨張中。副業は副業でインタビューとか対談形式の新企画もやってくれという話が旧正月明けから出ていて、

「おれは疲れているんだよ」

 と言ってもダメ。業界では私だけが日本人なので、編集部の連中には私が幻術か何かで部数を伸ばしてくれる筈、という何の根拠もない期待感があるようです。しかしながら幻術使いでない私の方も円高による給料&原稿料の目減りが深刻。それに引き合いが来るうちが華ですから、嫌でもそろそろ始めないといけません。

「対談とかいうとあれか、コーヒーでも飲みながらダラダラ話すのでもいいんだな?」

「もちろん。むしろそういう感じの方が。後は全部任せるから」

「わかった。じゃあコーナー名は『遊就館茶室』な」

「あ,何かゲームっぽくていいねそれ」(何も知らない幸せな奴らw)

 ……と先日話がまとまりまして、いまその準備にも追われています。

 趣味の方でも少し動きがあるかも知れません。出すものがあれば当ブログにて出すつもりですが、予定は未定。とはいえ何かあるとすれば、

「中国様の喜ぶことを、真心こめて念入りに。(・∀・)」

 の線ですから、私自身も楽しみにしているのです。

 もうひとつの趣味である当ブログはようやく記事漁りを1月末に再開しまして、これなら3月(全人代&全国政協開催で記事量が倍加)までに慣れられるだろう、と慣熟訓練気分でいたら(実際いまも出力80%)、出稼ぎ農民の失業だの大学生の就職難だの、地方政府が保護主義に走る気配が出たりその発露としての商品券騒ぎがあったり、尖閣問題が出てきたり、水面下で政争が進行していたり。……と、これ何てリハビリテーション。

 で、そのいずれにも十分に手をつけられないまま「対仏『愛国』戦争」に足をとられ、もがいている内に全人代突入。未だに手抜き2割の記事漁りも手抜きなりに地獄の様相を呈してきています。そして全人代だというのに『読売新聞』がGJ!なことをしてくれまして。orz



 ●「尖閣諸島に安保条約適用」米国務省が公式見解(YOMIURI ONLINE 2009/03/05/14:52)

 【ワシントン=小川聡】日本が攻撃された場合に米国が日本を防衛する義務などを定めた日米安全保障条約が尖閣諸島に適用されるかどうかの米側解釈の問題を巡り、米国務省は4日、適用されるとの公式見解を示した。

 読売新聞社の質問に答えたもので、当局者は「尖閣諸島は沖縄返還以来、日本政府の施政下にある。日米安保条約は日本の施政下にある領域に適用される」と述べた。このオバマ政権としての見解は日本政府にも伝えられた。

 これは、クリントン政権時の1996年と、ブッシュ政権時の2004年に、米政府高官が示した見解と同じだ。昨年12月の中国海洋調査船による尖閣諸島近海の領海侵犯以降、日本側は再確認を求めたが、米側が明言を避けてきた経緯がある。2日の国務省の記者会見でも、ドゥーグッド副報道官代理はこの問題に関する質問に、「持ち帰る」として、回答しなかった。

 日本政府筋によると、先月26日の衆院予算委員会で麻生首相が尖閣諸島への安保条約適用を米側に確認する考えを示したことを受けて、外務省が改めて、米側に再確認を求めていた。



 いつか来ると楽しみにしていたこの展開がよりによって、この時期に。o...rz

 電波系反日紙の『環球時報』がこれを見逃す訳がありません。早速飛びついて、「新浪網」など大手ポータルに転載され記事付属掲示板は過熱状態。

 ●「環球時報→新浪網」(2009/03/05/22:45)
 http://news.sina.com.cn/c/2009-03-05/224517345030.shtml

 おフランスの方も気になる動きが出てきています。こりゃ全人代が終わったら(政治の季節なので規制強化中)即ひと揺れあるかも。……などとワクテカしつつも、とりあえず眼前に並べられた全人代に手をつけなければいけませんか、そうですか。

 温家宝・首相の「政府活動報告」を、例によって仁義を切るつもりでちゃんと読みました。その内容は巨細もらさず日本のマスコミが報じているでしょうからプロの皆様にお任せするとして、私の方は気楽にやらせてもらいます。読後感は標題の通り、

「温家宝、涙目。あと科学的発展観もうダメ」

 というものです。

 ――――

 「政府活動報告」に盛られた今年のGDP成長率目標は8%。これ、いままではどうでもいい指標だったんです。去年も一昨年も確かその前年も8%を掲げていましたから。むしろ経済過熱を戒めるという意味で「8%」を目標に、というニュアンスだったのですが、昨年後半からの大不況で事態は一変。

「まあ8%目安でソフトランディング頼むよ」

 ……だったのが、今年はガチのデッドラインになってしまいました。何でも最近の中国経済は年率8%成長を維持しないと失業問題などで立ち行かなくなるとか。そこで、

「断固として8%成長を死守。届かなかったら?いや死守だから」

 と、「政府活動報告」に近年まれにみる拘束力めいたものが生じてしまいました。経済運営は首相の仕事ですから温家宝に石抱の如きストレスがじわじわ。そうじゃなくても改革開放政策を始めて30年にして最悪ともいえる経済・社会状況なんですから、その時期に責任者でいるというのは針のムシロも同然です。巧みな政界遊泳術と庶民派を偽装することで何とかやってきた温家宝も、そろそろ年貢の収めどきなのかも知れません。

 円満退職じゃなくて失脚させられるかも。……などと心労が重なって、北京は人民大会堂の松の廊下で李長春か習近平あたりの額に斬りつけて即切腹でしょうか。となれば上海の吉良江沢民邸に討ち入りという話になるのですが、あいにく子飼いの連中もお友達も少ない温家宝には無理な相談。

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 与太はともかく。状況がかくも切迫しているので、一年の計というか青写真を描いてみせる「政府活動報告」も、今年は何やら誓いの血書めいたプレッシャーと政治的なキナ臭さを漂わせています。

 ところで、上で「改革開放政策を始めて以来」と書きましたが、ある意味それまでのやり方が行き詰まって一頓挫したのが現在の状況ですから必然的な光景なのかも知れません。中国は1978年末に改革開放政策をスタートさせ、1980年代末で一度行き詰まりました。その反作用ともいうべきものが1989年の民主化運動で、それを弾圧したのが今年で20周年を迎える御存知天安門事件。

 ところがこれによって幸か不幸か中共政権はリセットされ、江沢民時代が始まります。極端にいえば「もう成長率が高まるならどんな無駄な投資やったっていいから」の粗放なイケイケドンドン路線に加え、天安門事件で懲りているので政治制度改革はタブー。御蔭様で地域間格差や貧富の差はどんどん拡大し、党幹部及びそれと癒着した連中による特権ビジネスやら汚職やらが蔓延して、とうとう陳情はもちろん、デモ・スト・暴動・爆弾テロといった、追い詰められた庶民による生存を賭けた蹶起が日常茶飯事となってしまいました。

 そのイントロあたりで江沢民からマイクを渡された「胡温体制」は正にババを引かされた訳で、それでもマイクを手にした以上ちゃんと歌わなければなりませんから、効率重視と格差改善、そしてそのための構造改革を断行するという「科学的発展観」を打ち出しました。党規約の字面ではその理論が江沢民の流れを汲むような装飾を施されていますが、実質的には江沢民路線に対するアンチテーゼです。

 当初の胡錦涛は構造改革だ、その断行だ、断行しなければ中共政権はいつか潰される、という危機感に満ちた気魄でもって政権運営に取り組んだのですが、江沢民路線のもとでたっぷりと甘い汁を吸った連中、例えば中央が十分に掌握できないでいる地方当局やそれとつるんだ特定業界、またカルテルやり放題の寡占業界など、いわゆる既得権益層が抵抗勢力となって立ちはだかりました。

 さらには隠居した江沢民。院政を敷けるほどの甲斐性はないものの、「胡温体制」の足を引っ張るぐらいのことはできます。「最高指導者」が真のボスたる「最高実力者」へと歩を進める上で不可欠な人民解放軍の掌握にしても、江沢民が引き立ててやった将官が軍部の重要なポストにまだ残っていたりして色々意地悪をしたり言うことを聞かなかったりして、実際、党中央の指導部が小粒な連中ばかりだったためクーデター騒ぎを起こす者が出たりはしまませんでしたが、4年前くらいまではかなり危険な状況でした。現在も未だ心許ない印象です。

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 要するに、「科学的発展観」を掲げて2004年9月に発足(=江沢民の完全引退)した胡錦涛政権は、党上層部内の権力掌握に時間がかかったほか、抵抗勢力の邪魔立てなどによって、4年半を費やしてもその持論の実をあげることはできず、できないまま現在に至って、至ってしまえば御覧の通りの行き詰まった経済・社会状況です。

 こうなると、とりあえず目の前で家が燃えているのですから消火しなければなりません。非常の措置ということで巨額の財政出動。それは仕方のないことですが、問題はそれがどう使われるかです。構造改革が進まず、実質的には江沢民時代の発展モデルが最前線で維持されているところへ大金をバラまけば、喜ぶのは既得権益層ばかり。無駄遣いと汚職や特権ビジネスの温床をより深刻にしてしまうことになります。「胡温体制」にとっては断腸の思いでしょう。

 まあ、「8%」というハードルは、いざとなれば国家統計局に細工してもらえばいいのですから、それほど困難ではないかも知れません。GDP成長率なんてものは実効ゼロの無駄な事業を盛大にやっていてもポイントが高まっていく訳ですし。それでもダメなら温家宝腹切れ、てなことになるかも知れませんが、温家宝なら多少のアドリブが利きますから、いまのうちから報道陣の前でしきりに咳き込んでおけば、進退に窮する前に急病でぶっ倒れるという演技でわが身を救えるでしょう。

 問題は無駄遣いでもいいから、この緊急措置で十分な就業機会を生み出せるか、ということですね。こればかりはやってみなければわかりませんが、わらわら倒産でわずか数カ月の間に2000万人以上の出稼ぎ農民から職を奪った労働集約型産業、これが突如復活して電力不足になるくらいフル稼働し始めないと、まず無理ではないかと。

 とりあえず構造改革ができないままかような状況になってしまった、ということで「科学的発展観」は頓挫。権力闘争で血祭りに上げられかねない温家宝は涙目。格差是正の象徴的なスローガンだった「和諧社会」(調和のとれた社会)という言葉は今回の政府活動報告にも出てきませんから、本気で取り組めば格差改善が実現できる、という望みも「胡温体制」からは失われているのでしょう。

 それよりも最近は、全国各地の治安当局の幹部を北京に集めて研修させる、なんてことをやっているようです。怒りの庶民たちによるデモ・スト・暴動・爆弾テロに備えるためなんでしょうけど、いまとなっては中共政権の延命を図る上で,とりあえずその方が手軽でしかもリーズナブル、といえるかも知れません。リセットではなくゲームオーバーという目もありますけど。

 それにしても、武断的といえるほど中央の掌握力が強い状況下での経済のハードランディングというのは過去に眺めたことがありますが、中央が中央らしく機能していないときに不況に見舞われるとどうなるか、というケースを今回は馬鹿なりに観察することができました。改革加速→経済過熱という段階のときのように、やはり割拠めいた方向へと傾くのですね。

 あちこちの「諸侯」がそれぞれ勝手に商品券をバラまき始めたのを中央が慌てて追認しているようでは、どうもいけません。





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(シリーズ:対仏「愛国」戦争【3】へ)


 3回連続(第4回目)となりますのでシリーズものに昇格させることにします。

 きょう3月5日から全人代(全国人民代表大会=なんちゃって国会)が開幕します。チベット情勢もいよいよ正念場。そして尖閣諸島に関する問題についても眺めておかなければならないので、たぶん次回は別の話題になることでしょう。

 ただしこのオークションの件も、クリスティーズの定める落札者の支払期限は7日間以内だった筈ですから、そう長く放置してはいられないかと思いますけど。

 ともあれ今回は「対仏『愛国』戦争」に一意専心。……ええ、「流出銅像競売」ではなく「対仏『愛国』戦争」です。今後、中仏関係に他の問題が出現する可能性もありますので(たぶんそれも中国人の自称「愛国心」の琴線にふれるものと予想していますので)、名称は幅を持たせたものにしました。

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 とりあえず、オークションをめぐる一連の騒ぎについて。何よりも、「事件」に対する中国当局の間合いの取り方が絶妙で感心させられます。まずは第一段階の所定の目標、国際社会に対する「流出文化財の返還」という問題提起には成功したといえるでしょう。

 具体的にみていくと、オークション実施前は「反発・抗議・恫喝・訴訟」という、中国当局(外交部や国家文物局などの声明)を柱に民間有志やネット世論をも巻き込んだムーブメントを仕掛け、競売中止訴訟に敗訴してオークションが実施されるや、中国文化部の管轄下にある民間団体「海外流出文化財救出基金」の顧問・蔡銘超が問題の支那……いや品である円明園十二支銅像の中の2体を落札。

 なるほど中国の資産家が買い戻したのか。……と思ったら、あにはからんや落札者として名乗り出た蔡銘超は3月2日、「カネは払わない」というトンデモ宣言。略奪された文化財は無償返還されるのが筋だからだ、と主張しました。蔡銘超はその一方で、

「中国人なら、あの場面では必ず立ち上がることだろう。今回はその機会が私に回ってきて、私はその責任をしっかりと果たした。ただそれだけのことだ」

 と中国人の自称「愛国心」に火をつける大見得まで切りました。果然、ネット世論は大盛り上がりです。

 ただし国際社会からみれば、契約と信用で行われる取引においてこのような真似をするというのは言語道断であり、呆れて物が言えないとしか表現しようのない振る舞いです。中国経済は対外依存度のバカ高い構造になっていますから、少なくともビジネスに関わる中国人であれば、それが理解できるでしょう。気持ちはわかるが、このやり方は暴挙だ、ということです。

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 そこで、翌3月3日には前回紹介したように、

 ●こういうやり方の「愛国」はいけない。
 ●「愛国」はもっと理性的にやるべきだ。
 ●こういう小細工は「愛国」でないばかりか、中国人の信用を失墜させる。

 などという、実に真っ当な内容の論評記事がメディアにわらわらと湧いて出てきました。むろん、この似たような記事の津波状態は中国当局の意思を反映したものです。……というより、これも中国当局による「仕込み」というべきかも知れません。同日、外交部と国家文物局はそれぞれ、「個人の行為にはコメントできない」として、民族の英雄・蔡銘超とは距離を置く姿勢をとりました。

 論評記事も声明も、「カネは払わない」宣言に対する国際社会の反応を予想してのものです。

「蔡銘超?ああ、あいつは基地外ですから。中国がそういう流儀の国と思われるのは甚だ迷惑です。その点どうか御賢察あれ」

 というスタンスですね。ただし外交部はその一方で、

 ●略奪された文化財は中国に無償返還されるべきだ。
 ●こうした文化財についてオークションを強行することには断固反対。

 と、言うべきことを言っていますし、国家文物局に至っては、

「今後、クリスティーズが文化財の輸出入申請をする際の審査を厳格化せよ」

 との通達を関係各機関に発しました。論評記事には「それはやり過ぎ」と言わせつつも、公式声明では個人の活動ということで蔡銘超については批判も賞讃もせず、逆に国際社会に対して「流出文化財の返還問題」というものを印象づける一方、クリスティーズに対する報復措置ともいえる同社限定での規制強化を実施しているのです。

 報復措置といえば、中国がフランスのエアバス社と結んだ航空機150機分の納入契約を不履行とする、という報道も流れました。真偽のほどはともかく、外交部報道官が記者会見の際にわざわざ「それは事実ではない」と言及したほどです。

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 「事件」に対する間合いの取り方といえば、「カネは払わない」宣言が出た当日に行われた記者会見における超啓正・全国政協大会報道官のコメントもいま振り返るとなかなかに芸が細かいものでした。

 超啓正はまず、

「私はフランスが略奪してきたものを中国に返還するよう望む」

 と報道官としてコメントするとともに、

「政協委員たちは、クリスティーズが円明園銅像のオークションを強行したことを失敗(=競売が行われてしまった)と捉えてはならない、と考えている。なぜなら今回の事件はフランス人自身を含む,世界中の人々を教育したからだ」

 と、より踏み込んだ発言を行っています。前段だけなら翌日の外交部声明と同じなのですが、後段は中国当局のスタンスから逸脱した「カネは払わない」宣言を肯定したとも読める激しい内容。……ただし、問題のこの後段は「政協委員たちは」が主語になっており、全国政協大会報道官としての発言ではないのです。

 それでは世間を騒がせた蔡銘超に対し、中国当局が何らかの処罰を下したかといえば、その気配は全くなし。悪者扱いされていないことは、3月4日に至っても蔡銘超に対するインタビュー記事その他がメディアに登場していることからも明らかです。一党独裁制の中共政権にあって悪者認定されれば、発言の機会が与えられることなど、まずありませんから。

 ――――

 興味深いのはその4日、前日とは一変して蔡銘超のやり方を批判する論評記事がほぼ姿を消したことです。私の記事漁りの巡回ルートでいえば、3日には10本あったその種の記事が、4日はたった1本。しかも蔡銘超を弁護し、批判記事を叩く論評記事も1本出ています。

 全国政協、全人代と大型イベントに突入したから紙面をそっちに割かれた、という見方もできますが、前日あれほどの勢いで出た批判記事ですから、中国当局が本気であれば4日付の電子版でもトップページに何本かは残しておくものです。ところが、実際にはそうなりませんでした。メディアは一斉に「蔡銘超叩き」を行ったものの、わずか1日で鉾を収めたのです。

 さらに、中国当局が本気であればとっくに削除されているであろう「新浪網」のアンケート調査はいまなお健在であり、回答者数はいま現在で45万人に迫ろうかという勢いです。蔡銘超に対するネット世論の高い支持にも変化はみられません。

 それどころか、対外強硬派御用達の国際紙『環球時報』の電子版である「環球網」までが「新浪網」と同じ設問でのアンケートを開始。回答者数はまだ7000名強ではあるものの、やはり蔡銘超を圧倒的に支持しています。以下がその現時点における回答結果。カッコ内の数字は「新浪網」の最新状況です。

 ●蔡銘超氏が支払いを拒否していることを支持するか?
 (1)支持する。→87.7%(75.5%)
 (2)支持しない。→7.9%(16.4%)
 (3)どちらともいえない。→1.3%(4.4%)
 (4)支持するが、代金は支払うべき。→3.1%(3.7%)

 さすがは「環球網」、筋金入りですね(笑)。ちなみに前々回の数字と比べると、「新浪網」は「支持する」が微増,「支持しない」が微減。当局がゴーサインを出せばいつでもネット署名でヒートアップしそうな状態です。仮にOKが出るとすれば、そのタイミングは蔡銘超の行為に対するクリスティーズあるいはフランスの司法によるペナルティの内容が明らかになった時点でしょう。

 ――――

 今回の蔡銘超によるトンデモ行為が、実は顧問を務めている「海外流出文化財救出基金」の意を受けたものであることは、すでに明らかになっています。そして同基金は文化部の管轄下にある民間団体。加えて上述したような進退の見事さからして、私はいまでも標題の通り、

「タクトを振っているのは中国当局」

 という見方を変えていません。さらにいうと、新たなアンケートのスタートは、それが「環球網」であるだけにいよいよ捨ててはおけません。あるいは、

「そのタクトをおれに寄越せ」

 ……と蠢動し始めた政治勢力がいる可能性もあるのです。

 むろん、いまの中国社会にはこんな遊びをやっている余裕はありません。しかし物の弾みにせよ何にせよ、いったん勢いづいてしまえば、以て瞑すべしというほかないでしょう。


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 ●「新華網」(2009/03/03/17:11)
 http://news.xinhuanet.com/world/2009-03/03/content_10936109.htm

 ●「新華網」(2009/03/03/17:15)
 http://news.xinhuanet.com/world/2009-03/03/content_10936130.htm

 ●「東方早報→人民網」(2009/03/02/09:15)
 http://mnc.people.com.cn/GB/8888674.html

 ●「中国青年報→新華網」(2009/03/03/08:27)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2009-03/03/content_10931789.htm

 ●「中国新聞網→新浪網」(2009/03/03/17:53)
 http://news.sina.com.cn/c/2009-03-03/175317327717.shtml

 ●「新華網」(2009/03/02/16:23)
 http://news.xinhuanet.com/misc/2009-03/02/content_10928870.htm

 ●「新浪網」(アンケート)
 http://survey.news.sina.com.cn/voteresult.php?pid=31174

 ●「環球網」(アンケート)
 http://survey.huanqiu.com/result.php?s=SFFzdXJ2ZXlfNDg0





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(シリーズ:対仏「愛国」戦争【2】へ)


 続報です。円明園の流出銅像2体をめぐる対仏「愛国戦争」について、中国当局が大きく舵を切りました。

 ……と言いたいところですが、現時点ではちょっと断言しかねる要素もあり、「大転舵」の流れが定着するのかどうか、ちょっと判断しかねています。

 あと数日寝かせて様子をみたい、というのが正直なところなのですが。

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 さて、「大転舵」の兆候自体は非常に明確です。今回の事件を受けた論評記事が、3月3日から中国国内メディアに一斉に登場しました。その大半が、

「こういうやり方の『愛国』はいけない」

「『愛国』はもっと理性的にやるべきだ」

「こういう小細工は『愛国』でないばかりか、中国人の信用を失墜させる」

 といった、いずれもが流出銅像2体を落札した上で「カネは払わない」と宣言した、文化部管轄下の民間団体「海外流出文化財救出基金」の顧問・蔡銘超に対する批判をも含めた冷たい反応です。

 当局もまた然り。文化部の直属機関で今回の事件に際し声明を発表したりしている国家文物局は3日、

「個人の行為なので論評できない」

 としてコメントを拒否。さらに同日行われた外交部報道官定例記者会見においても、「列強が略奪した中国の文化財は返還されるべきだ」という原則論を繰り返しつつも、蔡銘超の「愛国的活動」については、

「われわれは蔡銘超の挙を事前に知らされていなかった。報道によって知った次第だ。民間のことについては論評できない」とスルー。

 ●「『中国青年報』→新華網」(2009/03/03/08:22)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2009-03/03/content_10931733.htm

 ●『中国青年報』(2009/03/03)
 http://zqb.cyol.com/content/2009-03/03/content_2562016.htm

 ●「『中国青年報』→人民网」(2009/03/03/08:27)
 http://world.people.com.cn/GB/14549/8894532.html

 ●「新華網」(2009/03/03/08:57)
 http://news.xinhuanet.com/comments/2009-03/03/content_10932122.htm

 ●「新華網」(2009/03/03/13:32)
 http://news.xinhuanet.com/world/2009-03/03/content_10933990.htm

 ●「新華網」(2009/03/03/07:50)
 http://news.sina.com.cn/pl/2009-03-03/075017323947.shtml

 ●「新華網」(2009/03/03/08:26)
 http://news.xinhuanet.com/comments/2009-03/03/content_10931781.htm

 ●『南方都市報』(2009/03/03)
 http://epaper.nddaily.com/A/html/2009-03/03/content_717813.htm

 ●「新華網」(2009/03/03)
 http://news.xinhuanet.com/world/2009-03/03/content_10931165_3.htm

 ●「新華網」(2009/03/03/19:30)
 http://news.xinhuanet.com/world/2009-03/03/content_10936797.htm


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 一躍時の人となった蔡銘超、屋根に登ったところで梯子を外されてしまった格好です。……とはいえ、これらの論評記事や記者会見録を読むとわかるのは、「列強が略奪した中国の文化財は返還されるべきだ」という原則は未だに揺らいでおらず、ただ蔡銘超の「カネは払わない」という方法論への批判に終始していることです。

 ひとつ注意しておきたいのは外交部報道官の記者会見での原則論。

「列強が略奪した中国の文化財は返還されるべきだ」

 ということで、もちろんそこにはフランスが含まれはするものの、名指し批判は避けたという点です。2日の超啓正・全国政協報道官が記者会見にて、

「フランス人も含め……」

 と語ったところから一歩後退している印象。ただし、超啓正は事件そのものについてのコメントであり、外交部報道官は事件への言及を避けているので、これが中国当局の方針に変化が生じたことを意味するものかどうかは、ちょっと判断しかねます。

 もう一点留意すべきなのは、上に並べた通り、論評記事の一角は共青団中央機関紙『中国青年報』から出され、それが国営新華社通信や党中央機関紙『人民日報』の電子版に転載されている、ということ。

 共青団(共産主義青年団)は中国の最高指導者である胡錦涛・国家主席の出身母体であり、胡錦涛派ともいうべきその周囲を固める胡錦涛子飼いの連中の多くはやはり共青団出身。このことから胡錦涛の直系派閥は「団派」と呼ばれています。

 そういう背景を有する、いわば胡錦涛の広報紙である『中国青年報』発の論評記事が「新華網」「人民網」など大手メディアにも転載されてひとつの流れを形づくりつつあるというのは、中国当局の「大転舵」が胡錦涛主導で行われていることを示唆するものといえます。

 中国において「転載」という作業は多かれ少なかれ政治的性質を伴っているもの。要するに「新華網」「人民網」が『中国青年報』の記事を転載したことは、両者が胡錦涛の広報紙の見解に同調することを示したといえるのです。

 ただこれは2005年春の反日騒動でもみられたことですが、反対勢力が巻き返して逆に「転載しろ」攻勢に出たり、「愛国無罪」で一般庶民が暴走したことで状況が一変し、それまでの流れがチャラになってしまうケースもあります。

 今回の件について反対勢力らしき存在の動静はまだ感じられないのですが、ネット世論は依然として強硬派が大勢を占めており、全く動揺していません。前回紹介した「新浪網」によるアンケート調査は未だに続いており、投票数はすでに40万人を突破。回答結果の比率にはほぼ変化はありません。一部の冷静な意見を抑えて、強硬派がいまもなお主流だということです。

 ワクテカのネット署名はまだ行われていませんが、一連の論評記事がネット世論のこの趨勢を変えることができないのであれば、「ほほうこれは使えるかも」とアンチ胡錦涛諸派が蠢動する可能性が残されています。そもそも中国当局が本気で「大転舵」の大ナタを振るったのであれば、「新浪網」のこのアンケートもすでに削除されている筈なのですが……。

 ――――

 ちなみに中国国内メディアの中では、電波系対外強硬派の拠り所であり、こういう事件に際しては常に煽り役となる『環球時報』の電子版「環球網」が、未だに『中国青年報』などの論評記事を転載して「換気」する作業を行っていません。

 逆に内幕暴露記事めいたものが掲載されていました。「海外流出文化財救出基金」の牛憲鋒・副総幹事がインタビューにて、

「オークションに対しては元々模様眺めのつもりで、オークションが成立しない様子なら手を出さない考えだった。だがもし落札希望者が出るようなら、こちらも動くという腹づもりだ。すると会場では900万ユーロ、1000万ユーロ、1100万ユーロと値が釣り上がっていったので、われわれもオークションに加わったのだ」

 と語っています。これが事実なのであれば、同基金を管轄する中国文化部の直属機関・国家文物局が表明した「これは蔡銘超の個人的行為」というのは誤りで、少なくとも同基金の意を受けて蔡銘超が動いた、ということになります。そうした作戦を文化部が承知していたかどうかは、定かではありません。ただ、どうやら蔡銘超個人ではなく、同基金としてのアクションだった、ということは当局が参与した可能性もあるとして留意しておくべきかと思います。

 ともあれ、『環球時報』がいまだ「健在」で、ネット世論も冷めていないという状態があと数日続くようであれば,新たな展開が生まれるかも知れません。一連の論評記事はネット世論を抑制し、常に当局によってコントロールできるレベル(当局の操り人形)に留めておきたいがために発表されたものと思われます。全国政協、全人代と重要会議が開催される時期ということもあるでしょう。しかし、果たして実際に沈静化するのか、どうか。

 そのあたりが流動的なので様々なことについて断言しかねるのです。沈静化する前にチベット問題が急浮上して局面がガラリと変わるのか、アンチ胡錦涛諸派がネット世論のエネルギーを利用して胡錦涛政権を揺さぶりにかかるのか、あるいは当初みられていた通り、今回の事件に代わって日本との尖閣問題が前面に出てくるのか。

 クリスティーズや出品者側の動きにも左右されるでしょうから、やはりしばらくは様子見、ということになってしまいます。

 ●「環球網」(2009/03/03/13:08)
 http://world.huanqiu.com/roll/2009-03/390746.html


(シリーズ:対仏「愛国」戦争【4】へ)




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