日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 今年は珍しく人並みな大晦日です。早起きして昼間から配偶者と出かけて、隠居夫婦(両親)と年越し蕎麦を食べました。これから「きりたんぽ鍋」→「配偶者と朝まで酒盛り」です。

 それはともかく、今日外出した際の出来事を。地下鉄で移動中に例によってこの本。

南京大虐殺の真実 2007年 12月号 [雑誌]

ワック

このアイテムの詳細を見る


 これを私は読みふけっているうちに気付いたのですが、向かいに座っていた中年の男女が眉をひそめていました。あ、漢人だこいつら。……と気付いたので姿勢を正し、相手に表紙がもっとよく見えるようにサーピスしました。一日一善。

 地下鉄を下りてホームから出口に向かって歩いているとき、この本を片手に歩いていたらベンチに漢人数名が座っていて、表紙に気付いたらしく舌打ちしたような何か言ったような、とにかく反応を示しました。あれ?やっぱり見せびらかしているのがバレちゃったのか。……ということで、やはり表紙がよく見えるように示しつつ連中の前を通り過ぎてから、

「來生不做中國人,來世做豬,都不做中國人~♪」

 と詩吟のように渋い喉を披露してあげました。連中の耳に届いたかどうかは知りません。配偶者が袖を引いたのですが、漢人を不愉快にさせるのは陰徳を積むことになりますから善男善女のひとりとしては励まざるを得ません。ちなみにこの一節は、

 来世は中国人なんかになるもんか。中国人に生まれるくらいなら来世は豚にされる方がマシだ。

 という意味。「猪年」(中国では豚年)の最終日にその干支を織り込んだ粋なフレーズです。といっても別に私のオリジナルではなく、中国国内のネット上で密かに流行している言葉なのです。袖を引いた配偶者も、

「あなたの行くところならどこでもついて行くけど、大陸だけは嫌。絶対嫌」

 という「むかし型香港人」。自分が中国人であるという意識はありません。というより「私は香港人!」と断定して「中国人」と扱われることを激しく拒否しているといった感じです。

 ――――

 夕方に帰宅して恩師に年末の挨拶の電話をした際、上のことを話したら、

「全く仕方ないですねえ御家人君は」

 と言いつつ爆笑していました(漢人も中共も大嫌いですから)。何でも恩師は午後に旧知の日本人と長電話をしたそうです。70歳代で日中国交樹立以来
「友好人士」として中共に大切に扱われてきた人ですが、中国の現状に話が及んだところ、

「その人の話している中国の現状が、御家人君がふだん言っていることと全く同じなんですよ」

 とのこと。先日カリスマ教授と会った後にも似たようなことを言っていた気が(笑)。

「御家人君が中国のことを話すのを聞いていて、最初のころは少し右寄りじゃないかなあと半信半疑だったんですけど」

 ……実はそうではなかった、ということを再認識したそうです。これも前に言われたような気がします(笑)。

 私は右でも左でもいいんですけど、カリスマ教授と「友好人士」のお墨付きということで、恩師は「御家人の語る現代中国」に偏りや誤りがないことがわかったそうで。でもそう言われると、かえって自分が話していることに自信が持てなくなります。

 ――――

 今年の中国は、胡錦涛直系の
「団派」(胡錦涛の出身母体である共青団人脈)が政界において勢力を伸長させたものの、盤石とはいえない頼りなさを残した一方、胡錦涛からみれば「地方の暴走」、つまり全国各地の「諸侯」による「割拠」がかなり進行したという印象です。胡錦涛政権は「割拠」を批判しつつも、十分に手が出せないまま不完全燃焼で新年を迎えることになりました。

 「割拠」の進行,例えば地方当局による
固定資産投資の膨張に歯止めがかからないこと、また土地収用に汚職が絡んでの農村暴動の頻発、といったことは以前から繰り返されていることなので予想通りでしたが、正直、物価高がここまで進行するとは思いませんでした。

「腐敗や格差の問題より深刻」

 という中級幹部レベルの認識(中央党校の調査結果)にも「そんなにひどいのか」と驚かされました。

 彗星の如く出現したこの新たな不安要因(3倍速w)は来年も大きな改善が期待できないとみられています。また依然として伸びる一方の固定資産投資に象徴される地方当局の「成長率信仰」は、成長率より効率重視の「科学的発展観」を党規約に織り込んでも何の薬にもならないことを証明してくれました。
マクロコントロールの実も十分に上がっていません。

 もちろん深刻度において物価高に追い抜かれたものの、汚職や格差の問題も無視できません。特に格差問題は
「和諧社会」(調和社会)の構築を合言葉にしなければならないほど「不調和」。とはいえ汚職にせよ格差にせよ、有効な改善策を打ち出せないまま、中央の威権が半ばないがしろにされている実情が来年はより明らかになることでしょう。

 それから
ですね。この一年で新たに3700万人が「股民」(個人投資家,主に投機目的)の列に加わりましたが、リスクは自分持ちという認識が相変わらず希薄で、いわば「怖いのは暴落より逆ギレ」。A株の「股民」に機関投資家を加えた総数は今年末時点で実に1億1039万人にのぼります。都市部の人口あるいは世帯数に照らせば、これはかなり高い比率ではないでしょうか。

「今年はオリンピックがあるからそれまで暴落はあるまい」

 といったノリでこの連中が2008年を迎えれば、私たちは「逆ギレ」を目の当たりにすることができるかも知れません。

 ――――

 中国が法治国家でないことを改めて痛感させられる年になる可能性もあります。
物権法にせよ労働契約法にせよ、全ては司法のさじ加減。そしてその司法は行政(党幹部)の意のままに操られている訳ですから、白も黒になりますし、黒も白になります。

 物権法はともかく労働契約法は外資企業に直接関わる荷厄介な存在。
中国及び漢人が民度&実力不相応に増長していることを象徴するかのようなトンデモ法律が人治の国で運用されるとどうなるか、これは世紀の大実験といえるでしょう(笑)……って笑い事ではありませんね。

 そして2008年といえば何といっても
台湾問題です。先日の日中首脳会談で垣間みられたように、胡錦涛政権は内部の対外強硬派や軍部の突き上げのなか困難な舵取りを迫られることとなります。

 ただし実際に台湾が正常な国家へのステップを一歩踏み出せば、胡錦涛も「中共人」としてその行動原理に従い、
躊躇なくそれを潰しにかかるでしょう(見せてもらおうか人民解放軍の実力とやらを)。もしそうなれば国際社会の対応如何で、台湾ではなく中華人民共和国の命運が定まることになると思います。

 日中関係は、「朝貢外交」ともいえる現状を構造改革できる人が首相になるまでは薄っぺらい友好ムードという現状のままでしょう。私はこの待ち時間の間に
日本にとって不利益な既成事実が積み重ねられることをのみ恐れます。

 ちなみに、有毒商品の蔓延や環境汚染の進行も考えれば、そこに暮らす者の生活はもちろん生存自体が脅かされているといっていい現在の中国にあって、
「民主化」などという浮世離れしたことを口にする閑人はビョーキ扱いされることでしょう。もはや状況は「理想よりパン」であり、「官逼民反」(「官」の横暴に追い詰められた民衆が成否を問わず蹶起する)なのです。

 しかも、本来「民主化」を先唱すべき大学生は江沢民型愛国主義教育&物欲まみれで社会への問題意識が欠落しており、知識人はアルバイトと論文盗作に血道を上げています。そして国民の民度と中国共産党の独裁制度への執着を考えれば、「中国の民主化」がいかに
非現実的な発想であるかは容易に想像できることでしょう。

 ――――

 ……といったことを、請われるまま恩師に話しました。恩師は「極端でもないし偏ってもいない」という態度で受け止めてくれましたが、私自身はあまり自信がないまま、「それから?」「それから?」と促されるので思いつくままに話題を並べてみただけのことです。

 私にとって当ブログは、将来の自分に向けて私の最大の娯楽である中国観察めいたものの備忘録を綴っているようなものです。そんな駄文としかいいようのない、とりとめもない書きものにお付き合い下さる皆さんに心から御礼申し上げる次第です。

 皆さん、来年もお互い堅固に日を送りつつ、よろしければこれからも一緒に、隣国で進行している歴史劇を眺めていきましょう。

 この一年,本当にありがとうございました。来年も宜しくお願い申し上げます。m(__)m

 それでは、よいお年を!皆さんにとっての2008年がいい年でありますように。




コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )





 今日は晦日だというのに、普通に仕事をしているので何の実感も湧きません。orz

 ただ拙宅から少し歩いたところに江戸情緒を辛うじて残している地区があり、この時期になるとそこの目抜き通りに行くと路傍には掲げられた提灯が並び、鏡餅や松飾りなどお正月の縁起物を売る露店が歩道にズラリと出現します。私の場合はそのあたりを散歩して辛うじて年の瀬感を味わっています。

 露店そのものもいい雰囲気なのですが、店番の人が空の灯油缶に薪をくべてたき火をしていたり、火消し人足が半纏を羽織ったような粋な格好をしたお爺さんがその側に腰掛けて冷酒をあおっていたりする渋い姿に出会えるのが何ともいえません。

 ――――

 さて本題ですが、As title であります。

 中国で来年(2008年)1月1日から施行される
「労働合同法」(労働契約法)について、最前線である現地の状況について何でもいいですからコメントを寄せて頂ければ幸いです。

 東京にいても色々な報道に接することはできるのですが、何というか空気感とか体感といったものには触れられません。

 香港の親中紙『香港文匯報』などは特集を組んでこの法律について紹介し、香港企業がドン引き状態じゃないか空気読め中央、と示唆するが如きちょっと際どい報道を行っています。これも相当ヤバげなものらしいという印象は伝わってくるのものの、実感を伴う内容かといえばそうではありません。

 現地でいま何が起きているのか、当事者である人たちはどう捉えどう考えているのか、その肉声に触れたく思います。

 現地との連絡が密な日本サイドの声も大歓迎です。

 ご協力のほど宜しく御願い申し上げます。m(__)m




コメント ( 21 ) | Trackback ( 0 )





「上」の続き)


 さてこの温家宝による卑劣とも姑息ともいえる
歪曲発言、これはテレビ中継されていることを意識して敢えて行ったものだろうと思います。国内世論と軍部を含む中国上層部内の対外強硬派、それにやはりテレビで報道されるであろう香港や台湾に向けてのパフォーマンス。

「日本は台湾独立に反対している」

 というイメージを中国語圏の視聴者に定着させようというものです。私のような中国観察ヲタ(笑)ならともかく、一般市民は色々な記事にあたってみることなく、テレビのニュース映像で「ああそうなのか」と思い込むことになるでしょう。もちろん中国政府の公式見解ではありません。

「台湾独立は支持しない」

 と福田首相が語ったと明記されている「福田・温家宝会談」を報じた新華社電と外交部報道官声明がオフィシャルなものです(前回参照)。……ああこういうものも出てきました。党中央の機関紙『人民日報』ウェブサイトの日本語版の記事です。



 ●福田首相、台湾問題についての立場を明言(人民網日本語版 2007/12/29/13:05)
 http://j.peopledaily.com.cn/2007/12/29/jp20071229_81939.html

 日本の福田康夫首相は28日に行われた国務院の温家宝総理との会談で台湾問題について述べ、日本が中日共同声明で示された立場を守り、「2つの中国」あるいは「1つの中国と1つの台湾」といった考え方を認めず、台湾の独立や国連加盟、国連加盟に向けた住民投票を支持しないことを明言した。
(後略)



 
「反對台獨」とおっかぶせた温家宝の歪曲発言は明らかにこの公式見解から逸脱しているのですが、上述したようにテレビで敢えて言うことで中国語圏の視聴者に対するイメージ操作を試みたのと、結局日本側の「台湾独立を支持しない」を崩せなかった自らの失策をフォローしようという対外強硬派向けのアピールではないかと思います。

 こういう立ち回りの上手さというか節操のなさ、これが趙紫陽、江沢民,胡錦涛という三代の総書記に仕えて大過がない、という温家宝の真骨頂といえるかも知れません。

 しかし、フフン♪も従来の日本側の立場を守ることは守りましたが、

 ●台湾の国連「加盟」を支持しない。
 ●台湾の国連加盟の是非を問う住民投票の実施を支持しない。

 という余計な2項目を付け加えてしまいました。これに対し台湾外交部がすぐにブーイングを唱えましたが、これは台湾を正常な国家にしようという立場(仮に「台湾」派としておきます)の与党・民進党にとっては痛い発言なので脊髄反射したものでしょう。

 ブーイングといっても形式的なものでごく軽い程度の反発なのは、騒いでしまうと野党・中国国民党など「台湾」という国家の成立を望まない反対派を勢いづかせるだけだからです。

 ――――

 実際に国民党寄りのメディアはこの
「福田発言」を追い風にせんとする報道を行っています。

 馬英九・国民党主席の汚職嫌疑に無罪判決が出たばかりですし、中共政権が神経を尖らせる来年3月の総統選挙の前哨戦となる立法委員(議員)選挙という一大イベントを約2週間後に控えている「台湾」派にとっては最悪のタイミングです。

 どれだけの打撃となるかはともかく、「台湾」派にとって不利となるニュースであることは間違いありません。

 ●中国時報(2007/12/29)
 http://news.chinatimes.com/2007Cti/2007Cti-News/2007Cti-News-Content/0,4521,110505+112007122900052,00.html

 香港に目を転じてみると、昨日の香港各紙(2007/12/29)はいずれも「福田・温家宝会談」を揃って報じています。興味深いのは、新聞によって記事分量の差こそあれ、核となる部分はやはり上記2項目の
「福田発言」

 香港は世論調査をやると常に7割以上が「台湾独立」に反対という結果になりますし、「植民地」として中共色の浸透が進んでもいますから、「福田発言」は肯定的に受け止められています。

 ――――

 ここで鮮やかにサイドチェンジ。……要するに唐突に話題を変えることになりますが、フフン♪は温家宝とキャッチボールを行ったそうですね。首脳会談で「やろう」という話になって、翌日にそれが実現したものです。これがまた私をイライラさせている訳で。



 ●日中首脳がキャッチボール 釣魚台で、友好ムード演出(asahi.com 2007/12/29/13:57)
 http://www.asahi.com/politics/update/1229/TKY200712290091.html

 北京を訪問している福田首相は29日朝、温家宝(ウェン・チアパオ)首相と、釣魚台迎賓館の屋内体育館でキャッチボールをした。28日の首脳会談の中で福田首相が呼びかけて実現した。
(中略)

 温首相は4月に訪日した際、立命館大学野球部と交流した時に着た、背番号35の立命館大のユニホーム姿で登場。福田首相も中国側が用意した白のユニホームに着替えてのぞんだ。
(後略)

 ――――

 ●日中首相、北京で「連携」アピールのキャッチボール(読売新聞 2007/12/29/19:05)
 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20071229i111.htm

 【北京=牧野田亨】中国訪問中の福田首相は29日、北京の釣魚台国賓館で温家宝首相とキャッチボールを楽しんだ。

 4月の訪日時に立命館大でプレーした温氏に、福田首相が「ぜひ相手を」と申し入れた。当初、日程になかったが、28日の首脳会談で「まだ返事を頂いていない」と“催促”し、急きょ実現した。
(後略)



 中国側の報道はこちら。

 ●「新華網」(2007/12/28/11:45)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2007-12/28/content_7328933.htm

 ●「新華網」(2007/12/29/11:51 画像あり)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2007-12/29/content_7335428_1.htm

 フフン♪に対してもその取り巻き連中に対しても、

「何やってんだお前ら!」

 とテーブルを叩いて怒号したいところです。キャッチボールとか「連携アピール」とか「友好ムード演出」はどうぞ御勝手に、ということでどうでもいいのです。
問題は段取りの悪さ。

 キャッチボールはフフン♪が申し入れて実現したものでしょう?アドリブとはいえ、温家宝について研究した日本側からのアクションなのです。それなのに、

 福田首相も中国側が用意した白のユニホームに着替えてのぞんだ。

 とはどういうことですか。
星野ジャパンのユニホームでも前もって準備しておくくらいの周到さがあって然るべきでしょう。自分で誘っておいて段取りが何も出来ていないって何それ?首脳外交ではアドリブも立派な戦術でしょうに。

 独自の明確なビジョンを持たない戦略不在のフフン♪に加えて、戦術も拙劣な取り巻き連中。「新華網」の画像を見るとフフン♪は中国代表のものと思われる帽子までかぶっています。ああ情けない。……「2ちゃんねる」の関連スレで見つけた秀逸なAAをどうぞ。見事に本質を衝いていますね。





 そもそもこんなことやっているヒマがあったら、北京郊外の通州に足を運ぶべきでしょう。ええ
「通州事件」の通州です。……って、そこまで肝が据わっていたら、こんなトホホ連発の体たらくにはなりませんよね。orz

 とにかくもうこれ以上は何も話さず何も決めずに観光に撤して下さい。お願いします。いっそ
「未帰還」でも構いませんから、何卒,何卒。


 ――――


 【※注】手前味噌で恐縮ですが、一連の「フフン♪訪中」エントリーの陰に隠れる形になってしまった下記駄文2本にも宜しければ目を通して頂ければ幸いです。

 「諸侯」「割拠」「多種族の集合体」というのが今後の中国の行方を左右する重要な要素だと個人的には考えています。あくまでも駄作なのですが、こういうテーマと正面から組み打ちする機会はなかなかありませんので、乏しい内容であることを重々承知の上で、恥を忍んで。m(__)m

 ●怪走する中国経済、走れば走るほど「割拠」。・中(2007/12/28)
 ●怪走する中国経済、走れば走るほど「割拠」。・下(2007/12/29)




コメント ( 10 ) | Trackback ( 0 )





 やり残した宿題を消化したところにフフン♪こと福田康夫・首相の訪中が重なって、昨日(12月29日)と一昨日の2日間で4本のエントリーをつい書いてしまいました。

 このブログを書くのはあくまでも自分のための娯楽でして、そのことに安んじて書いているので仕事と違って苦にはなりません。疲労感はありますけど、テレビゲームをひとつクリアしたような達成感のようなものを味わえます。ただ気楽さゆえに文章が冗長になってしまうのは反省点。副業やコソーリ活動と違って行数制限がないのでついダラダラと長くなってしまいます。

 ……あ、厳密にいえばgooブログにも「1エントリー当たり1万文字まで」という制約はあります。実はフフン♪と温家宝を調理した前回はそれに引っかかったので上下に分けました(笑)。

 ところで、世間では昨日で仕事納めだったのでしょうが、こちらは西暦の元旦ではなく旧正月を祝う香港・台湾のスケジュールで動いているのでいまなお年末進行中です。戦闘配置なので夜型生活がすっかり定着していて、昼ごろに寝て覚めてみたら「今日」も夕方(実際には29日17時半)。

 この2日でずいぶん駄文を書いたなあと思いつつ、いまだ消えない疲労感と達成感に浸っていたのですが、どこかスッキリしない不完全燃焼的な気分もあります。たぶん温家宝・首相が示した卑劣……というより姑息な演技と、われらがフフン♪が鮮やかな進退を見せてくれないからではないかと。……ということで、今回は心中にくすぶっているものを散じるためにフフン♪と温家宝を改めて俎上に乗っけることにします。

 ――――

 まずはフフン♪の年内訪中について。中国側からの強い要請があったようですが、4月に温家宝が来日しているので国交樹立35周年である2007年に日中首脳の相互訪問を実現するということ、それから「有馬温泉」さんの御指摘にあったように、

「反日を標榜しない場合は日本も中国を尊重すると言う姿勢の表明」

 なのだろうと思います。南京虫70周年を絡められることがなければそれでいいです。いまは「有馬温泉」さんのように、

「ただ行くだけで何も決めずに帰って来ればよい」

 という気持ちに私もなっています。タイトルに掲げた通り、
「何も決めるな,何も話すな」ということです。

 ところが、話してしまったんですよねえ余計なことを。それが前回紹介した
台湾問題に関する「支持しない」発言です。

 ――――

 繰り返しになりますが、台湾問題についての日本の姿勢は一貫していて、

「台湾について、日本の立場は日中共同声明にある通りであり、台湾の独立を支持しない」

 という立場をとってきました。軽く調べてみましたが、小泉政権どころか、1997年9月の橋本龍太郎・首相(当時)による中国訪問においてすでにこの言い回しが使われています。
「日中共同声明にある通り」というのは、

 ●日本は「一つの中国」を正式に承認する(中共政権を唯一の合法的な「中国」とみなす)。
 ●中国側が「台湾は中国の一部」と主張しているのは承知しているが、日本はそれを正式には承認しない。

 という日本側の立場です(中国は中国で別の解釈をしています)。「一つの中国」とは違って、日本は「台湾は中国の一部」と認めていないので、「台湾が中国から独立」というのも日本にとってはあり得ない話。

 ただ「台湾独立」という言葉は現実には「台湾が正常な国家として生まれ変わる」という意味合いを帯びていますから、中国はその点で意思表示するよう執拗に日本に求めてきます。これに対する日本側の姿勢が
「台湾独立を支持しない」です。

 ●外務省ホームページ
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/kiroku/s_hashi/arc_97/china97/hyoka.html

 ――――

 一応言及しておきますが、
「支持しない」「反対する」は日本語において意味合いが異なり、「支持しない」だと「=反対もしない」と含みを残した解釈ができます。

 これは中国語でも同じで、

「不支持台獨」
(台湾独立を支持しない)
「反對台獨」
(台湾独立に反対する)

 と、日本語と同じような解釈になります。
中国語においても「不支持」は「反對」と同義ではないのです。中国が日中首脳会談などで「不支持台獨」を「反對台獨」に改めるよう毎回執拗に求めてくるのは、そのためです。日本側はそのたびにそれをはねつけ、

 ●台湾問題についての日本側の立場は『日中共同声明』にある通りだ。
 ●台湾独立を支持しない(=反対もしない)。

 という姿勢を崩すことがありませんでした。

 ――――

 福田首相は今回の訪中で、中国側から改めて「不支持台獨」を「反對台獨」に改めるよう強く求められたことと思います。しかし、それに対しては粘り踏ん張って、

 ●台湾問題についての日本側の立場は『日中共同声明』にある通りだ。
 ●台湾独立を支持しない(=反対もしない)。

 という従来の姿勢を守り抜きました。中国側がそれに不満であることは前回紹介した通りです。これまた繰り返しになりますが、温家宝は福田首相との会見直後の共同記者会見において、

「台湾独立は支持しない」

 と福田首相が語ったすぐ後で、

「日本側が台湾問題において『一つの中国』を堅持し、また
『台湾独立』に反対する立場を表明していることを中国側は重視している」

 と言ってのけ、厚顔無恥にも
「支持しない」という福田発言を「反対する」歪曲しました。これについて『産経新聞』電子版は、



 ●日中首脳会談 「誤訳」で福田首相の顔色一変(MSN産経ニュース 2007/12/29/11:08)
 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/071229/plc0712291108004-n1.htm

 北京の人民大会堂で28日行われた福田康夫首相と温家宝中国首相の首脳会談。直後の共同記者会見で「台湾独立」に対する表現をめぐり、福田首相が顔色を変える一幕があった。「(独立を)支持しない」という福田首相の発言を温首相が説明。これを会場で日本語に訳した通訳が「独立反対を表明した」と強い表現に「誤訳」したためだ。会見中に、すぐ資料を取り寄せた福田首相は自らの発言が「支持しない」だったと改めて説明するはめに。台湾問題の微妙さが改めて浮き彫りになった瞬間だった。
(後略)



 と報じましたが、これは全くの誤り。通訳が間違えたのではなく、温家宝が中国語ではっきりと「反對」と言っているのです。動かぬ証拠として問題となった部分の原文を置いておきますね。



 ●福田康夫闡明日方在台灣問題上的立場 (新華網 2007/12/28/14:37)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2007-12/28/content_7329602.htm

 溫家寶表示,正確對待和處理歷史和台灣問題是改善和加強中日關係的政治基礎。雙方表示要堅持恪守中日間三個政治文件。中方重視日方在台灣問題上表示的堅持一個中國,
反對“台獨”的立場。



 要するに通訳による誤訳ではなく『産経新聞』の誤報。この記事を書いた記者は内容から察するに現場にいたようですが、『産経新聞』は中国語のできない記者に取材させるような粗忽さを改めるべきでしょう。

 また、この記者も中国側の実質的なオフィシャル報道である国営通信社・新華社電を確認するくらいの入念さを持たない愚昧っぷりを何とかしてほしいところです。問題の新華社電が配信されてから時間はたっぷりあったのですから、

「それでもプロか?恥を知れ」

 と敢えて苦言を呈しておきます。


「下」に続く)




コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )





「上」の続き)


 まずは論評抜きの事実だけを報じた速報記事。

 ●福田首相、台湾問題における日本の姿勢は「4つの『しない』」だと表明(新華網 2007/12/28/13:51)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2007-12/28/content_7329267.htm

 この記事によると
「4つの『しない』」とは、

 ●「一つの中国」を捨てて「二つの中国」や「一中一台」を打ち出したりしない。
 ●「台湾独立」を支持しない。
 ●台湾の国連「加盟」を支持しない。
 ●台湾の国連加盟の是非を問う住民投票の実施を支持しない。

 とのこと。

「台湾について、日本の立場は日中共同声明にある通り」

 との決まり文句をまず持ち出した上で、福田首相はこの4項目を付け加えた形です。「福田・温家宝会談」を報じたオフィシャルな記事でも同じで、



 ●温家宝総理、日本の福田康夫首相と会談(新華網 2007/12/28/16:12)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2007-12/28/content_7330490.htm

 福田首相は台湾問題について、日本の立場は日中共同声明にある明確なスタンスを堅持するものであり、「二つの中国」や「一中一台」を打ち出したりせず、「台湾独立」を支持せず、台湾の国連「加盟」を支持せず、また台湾の国連加盟の是非を問う住民投票の実施を支持しないと表明した。




 となっています。


 ――――

 これに対し,中国側は福田首相の
「4つの『しない』」に敏感に反応。外交部報道官(デブの劉建超)がわざわざ声明を発表し、

「福田首相が台湾問題で完璧な意思表示をしたことを賞讃する」

 と表向きは晴れやかなノリで続きました。ただし本音はそうでないことを示すかのように、

「福田首相の様子を見るに、台湾当局が住民投票を行うことに不満で、住民投票が問題を引き起こすことを心配していた」

 とわざわざ付け加えています。……コラ病豚、お前が受けた印象なんて誰も必要としていないんだよボケ。

 ●外交部報道官:福田首相が台湾問題で完璧な意思表示をしたことを賞讃する(新華網 2007/12/28/23:17)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2007-12/28/content_7332903.htm

 しかし「賞讃」というのがムカつきますね。「評価」と訳出しても気分が悪くなります。

 ――――

 ……ところが、です。病豚の劉建超よりさらに醜悪なのが一匹おりました。

 他でもない温家宝です。これはすごいですよ。舞台は「福田・温家宝会談」後の共同記者会見。福田首相が、

 ●「一つの中国」を捨てて「二つの中国」や「一中一台」を打ち出したりしない。
 ●「台湾独立」を支持しない。
 ●台湾の国連「加盟」を支持しない。
 ●台湾の国連加盟の是非を問う住民投票の実施を支持しない。
 

 と「4つの『しない』」を改めて表明したのに対し、それを受けた温家宝は、

「日本側が台湾問題において『一つの中国』を堅持し、また『台湾独立』に反対する立場を表明していることを中国側は重視している」

 と、さりげなく言ってのけました。……ん?
タイワンドクリツニ、ハンタイ???

 ●福田康夫首相が日本側の台湾問題における立場を表明(新華網 2007/12/28/14:37)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2007-12/28/content_7329602.htm

 ――――

 これが首脳会談後の共同記者会見ではなく、例えば町内会のやや緊張した寄り合いであれば、

「何だと?おいちょっと待てよ温家宝、お前いま何て言った?どういうつもりだ?」

 ……と詰め寄って胸倉を掴むところでしょう。多少酒が入っていれば殴り合い突入は必至。

「台湾独立を支持しない」

 と福田首相が言ったそばから温家宝が、

「台湾独立に反対」

 と言い換えて歪曲しておっかぶせているではありませんか。厚顔無恥ここに極まれり、としかいいようがありません。醜悪,正に醜悪であります。

 ●町村官房長官「卑劣な行為は断固非難」…ブット氏暗殺で(読売新聞 2007/12/28/12:36)
 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20071228i404.htm

 マッチー、同じことを温家宝にも言ってやりなよ。

 ――――

 しかし翻って考えてみると、台湾問題に対する日本側の意思表示は、温家宝がそういう挙に出るほど中国側にとって不満な結果だった、ということになります。

 いや、内外報道陣の前で醜態を晒さなければならないほど追い詰められていた、ということかも知れません。台湾をめぐる情勢について、中国上層部内の対外強硬派や軍部の神経質ぶりは私たちの想像をはるかに上回っていることをうかがわせた、あるいは温家宝がかくも馬鹿な真似をしなければならないほど内部での突き上げが激しかった、というべきでしょう。

 ということは福田首相GJ?かといえばそれは違います。中国側のリアクションからして粘ったであろうことは想像できますが、

 ●台湾の国連「加盟」を支持しない。
 ●台湾の国連加盟の是非を問う住民投票の実施を支持しない。

 という無用な「支持しない」を2つも付け加えてしまったのはやはりいただけません。台湾からも早速ブーイングが飛び出しています。



 ●台湾:福田首相の「国連加盟住民投票」不支持発言に反論(毎日新聞 2007/12/28/23:52)
 http://mainichi.jp/select/seiji/news/20071229k0000m030108000c.html

 【台北・庄司哲也】台湾外交部(外務省)は28日、福田康夫首相が台湾名義での国連加盟の住民投票に不支持を表明したことについて、「国連加盟は台湾人の願いであり、住民投票は民主的なプロセス。両岸の現状を変更するものでもない」などと反論する声明を発表した。




 まあ台湾からの抗議なんて放っておけばいいのです。……と釣糸を垂らしてみましょうか(笑)。

 「台湾応援団」のひとりであることを私は自任してはばかりませんが、台湾は日本に文句を言う前に「台湾名義での国連加盟」が反対派を圧倒するような国内状況を一刻も早くつくり出すことに専念すべきだと思うのです。それができない癖に抗議とは片腹痛いではありませんか。

 私は「台湾応援団」の一員である以前に、日本人です。台湾が正常な国家として生まれ変わり、堂々と国際社会で呼吸できる日が来ることを願ってやみません。とはいえ、今回福田首相が2つの「支持しない」を加えてしまったことは、台湾がどうのこうのという以前の問題。日本自身の問題です。

 対中カードをまた自分から捨ててしまったことは、国益に照らして正しい選択だったとはやはり思えないのです。

 ――――

 最後に一言。



 ●環境保護で「日中共同基金」創設、公明代表が首相に要請(読売新聞 2007/12/27/14:45)
 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20071227ia03.htm

 公明党の太田代表は27日午前、首相官邸で福田首相と会い、28日の日中首脳会談で、中国の環境保護を目的とした日中共同出資の基金の創設を提案するよう要請した。

 太田氏によると、首相は「環境問題について色々な角度で話をしてくる。この(基金の)問題も話し合いたい」と応じたという。

 基金をめぐっては、今年度で終了する対中円借款に代わる新たな支援策として、与党から創設を求める声が上がっていた。政府は、財政上の理由から慎重な姿勢を示している。




 あのーホッケ終わっちゃいました。ホッケ終わっちゃったんだって。まーいいじゃないですか。でもお願いだから真面目に相手してやったりしないで下さい。

 対中円借款に代わる新たな支援策? ふ・ざ・け・る・な。




コメント ( 8 ) | Trackback ( 0 )





 だから
余計な話はするなとあれほど……。orz



 ●謝長廷訪日、ローゼン蠢動、MD実験成功…中国が「台湾」でピリピリ?(2007/12/19)

 とりあえずいえることは、福田首相訪中に際して神経質になった軍部が胡錦涛政権にあれこれ口出しをしてくるかも知れない、ということです。毎度毎度のことではありますが、台湾問題について中国の主張に同調するよう求めてくるのはお約束として、その姿勢がより強いものになるかも知れません。なるかどうかは胡錦涛の指導力次第でしょう。

 日本としてはこれまで公式文書で再三表明しているように、台湾に対する立場は「日中共同声明」に依拠している、ということになります。露骨にいえば、

「中国側が『台湾は中国の一部』と主張しているのは承知しているが、日本はそれを正式には承認しない」

 というものです。

 今月(12月)初めの高村外相訪中時にも日本側はこの立場を改めて表明しています。ただ台湾問題に対する中国のピリピリ感は当時に比べてかなり高まっているものと思われます。福田首相にはこれまで通り、

 ●日本側の立場は『日中共同声明』にある通りだ。
 ●台湾海峡をはさむ双方のいずれもが一方的に現状を改変しようとすることに反対する(=中国が動くのもダメ)。
 ●台湾独立を支持しない(=反対もしない)。

 という姿勢を明確に示してもらいたいところです。



 ……と、このあたりを案じていたらフフン♪は期待に違わず本領発揮。



 ●日中首脳会談:首相が胡国家主席と会談 互恵協力を推進(毎日新聞 2007/12/29/01:00)
 http://mainichi.jp/select/today/news/20071229k0000m010124000c.html

 (前略)
温家宝首相との共同記者会見で、福田首相は台湾の国連加盟に関する住民投票について「(中台間の)一方的な現状変更につながっていくなら支持できない。『二つの中国』または『一つの中国、一つの台湾』という立場はとっていないし、台湾の独立は支持していない」と明言した。

 「台湾の独立を支持しない」という方針自体は、安倍晋三前首相も4月の温首相との会談で表明しているが、
福田首相はこれより踏み込んだ表現で中国の立場に支持を表明した。

 ――――

 ●ガス田「進展確認」、主席来日時を念頭 日中首脳会談(asahi.com 2007/12/29/03:06)
 http://www.asahi.com/politics/update/1228/TKY200712280329.html

 (前略)
福田首相と温首相との会談では、ガス田の共同開発について、「新たな共通認識」として4項目を確認。「国際法にのっとり、早期に解決策について合意を目指す」との文言が盛り込まれた。外務省幹部は「(両国の)法的立場はあるが、それを害さない形で国際法にのっとった解決はどういうものがあるかについて話し合われた」と述べた。

 
(中略)国連加盟の是非を問う住民投票を予定している台湾問題については、温首相が会談で「歴史と台湾問題は日中関係の政治的基礎。住民投票の動きは地域の安定を脅かすものだ」と懸念を表明。福田首相は「投票をめぐって緊張が高まるようなことは望んでいない。一方的な現状変更につながるのであれば支持できない」と語り、住民投票に初めて不支持の立場を示した。



 誰が台湾の住民投票のことまで話せと?東シナ海ガス田問題についての「新たな共通認識」に対する見返り?それとも「新幹線を大量発注」という中国側からの有難迷惑なお土産への返礼?拉致問題では何の進展もなかったようですし。

 あーあ。

 台湾問題は従来通り、

「台湾について、日本の立場は日中共同声明にある通りであり、台湾の独立を支持しない」

 でよかったのではないでしょうか。
中国最大の痛点なんですから、今まで通りのスタンスを維持しておけば今後いいカードになるかも知れないのに。

 頼まれもしないのに
「首相在任中は靖国神社に参拝しません」と言ったのと同じですね。

 台湾問題については、日本も中国も「日中共同声明にある通り」で何の不足もないでしょう。日中双方がひとつの約定をそれぞれの解釈で根拠にしておけばOK。中国側は「台湾は中国の一部」と主張しているのに対し、日本はそれを承知してはいるものの、「一つの中国」と違って正式に承認してはいないのですから。

 ――――

 日本は台湾を「中国の一部」と正式に認めていないので、「台湾独立を支持しない」でいいのです。「中国の一部」でない以上、「中国からの台湾独立」という事態は起こり得ることのない虚構にすぎません。それでも中国が執拗なため「支持しない」としてはいますが、
「支持しない=反対もしない」という理屈が成立します。

 中国にとっては痛点であるために台湾問題のこの点には非常に神経質で、今年(2007年)4月に温家宝・首相が来日した際も、
「台湾独立に反対する」という文言を共同プレス発表に盛り込めと日本側にしつこく迫りました。これに対し安倍晋三・首相(当時)は、

「それなら共同プレス発表は出さなくてもいい」

 と、ピシャリ。結局は中国側が折れて、

「台湾について、日本の立場は日中共同声明にあるとおりであり、台湾の独立を支持しない」

 という、小泉政権時代にも用いられている使い古された文言そのままで決着したのです。

 温家宝はよほど悔しかったのでしょう。その後行われた日本の国会での演説、その予定稿では日本に言及する部分が台湾問題の分量よりも少なかったうえ、本番ではその少ししかない日本に関する部分の半分を読み落としました。あれは絶対に故意。

 ●【温家宝来日】戦略的互恵関係って何それ?(2007/04/12)
 ●【温家宝来日】言いたい放題やりたい放題!それでも日本は拍手喝采。orz(2007/04/13)
 ●【温家宝離日】まず塩をまく。それからちょっとだけ考える。(2007/04/14)

 ――――

 この
「台湾について、日本の立場は日中共同声明にあるとおりであり、台湾の独立を支持しない」という言い回しは上述した通り「支持しない=反対もしない」ですし、日本側の解釈では中国の一部ではないのですから「台湾独立」というのは全くの絵空事となります。

 ところが、
「台湾の国連加盟」「台湾が国連加盟の是非を問う住民投票を行う」というのは「中国からの台湾独立」とはまるで性質が違います。日本とは国交のない台湾という地域での具体的なアクションであり、絵空事ではありません。なぜそれについて支持するしないを言明しなければいけないのでしょう?

 今回の福田康夫・首相の訪中に際しても、中国側はこの点で執拗に「台湾独立に反対」とするよう日本側に強く求めたことでしょう。安倍前首相や麻生太郎・元外相と違って外交戦略に独自の明確なビジョンを用意していない福田首相は、安倍前首相ほどこの点に強いこだわりを持っていなかったのかも知れません。

 惜しい、というよりこれは失策。戦略不在は媚中派よりも始末が悪いものです。

 ただし、福田首相もそれなりに粘った形跡はあります。

「一方的な現状変更につながっていくなら支持できない」

 と、「支持できない」の前が仮定形であり、「一方的な現状変更につながるなら」と条件付きだからです。

 そして、福田首相が妥結したこの結果について、中国側は納得できず、不満の残る内容だったようです。国営通信社・新華社の報道をみてみましょう。


「下」に続く)


コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )





「中」の続き)


「走れば走るほど『割拠』」

 という主題は何やら語り尽くして余談にまで走ってしまったようですが、私としてはいま現在の話をしたいがためにこのテーマを持ってきました。まだ終わっていません(笑)。

 「割拠」の中国経済に対する影響、具体的には
「割拠」が中央によるマクロコントロールを機能不全に陥れる、といったことについてです。中央は最近になって経済の引き締め政策の強化を打ち出しました。

「経済過熱にならぬよう注意しつつソフトランディングを」

 と4年前にはいわれていたのが、現在では
「経済過熱」はほぼ認知されていて、それよりもインフレ防止に全力を挙げようという話になっています。中国国内メディアの報道に接していると、

「温和なインフレ」
「明確なインフレ」
「全面的なインフレ」

 などインフレにしても諸段階があるようで、いま現在は中国が「温和なインフレ」状態にあることが半ば認められつつそれをどう手当てするか、また「全面的なインフレ」に悪化する可能性はあるのか、といった議論が交わされている模様です。

 ――――

 ざっくりした言い方をすれば、中国経済は改革開放政策が本格化して以来、5年前後の周期で成長路線を突っ走っては経済過熱が発生してそれを引き締め政策で押さえ込む、といったことが行われてきました。
「放」(経済再加速)と「収」(経済引き締め)の繰り返しです。

 いまの段階は「収」に転じたところでしょう。難しい言葉はわかりませんが、おカネが市中に出回り過ぎて株や不動産への投機などが流行していて、それが過熱して変な展開になると政権基盤すら揺るがしかねないので、中央は今年に入ってから利上げを何度か行ってきました。それでもカネ余り対策としての効果があまりみられないので、今度はさらに銀行融資にも厳しい規制を加えることになっているようです。



 ●不動産投資も加速 1-11月32%増加 中国国家統計局(FujiSankei Business i. 2007/12/15)
 http://www.business-i.jp/news/china-page/news/200712150027a.nwc

 中国国家統計局が14日発表した今年1~11月の都市部固定資産投資統計によると、不動産開発投資は2兆1632億元(約33兆円)となり、前年同期比31.8%増加した。増加率は1~10月の同31.4%を上回った。

 中国政府は、景気過熱とインフレを抑制する「2つの防止」を当面の最優先課題に設定。勢いが止まらない不動産ブームを受けて、融資の総量規制の徹底、金融の一段の引き締めに乗り出す方針だ。

 1~11月の固定資産投資は、全体では10兆605億元(約153兆7200億円)で同26.8%の増加した。このうち中央政府管轄のプロジェクト(金額ベース)は同12.8%の伸びにとどまったが、地方政府分は同28.6%の高い伸びを記録した。(北京/時事)

 ――――

 ●最悪の展開に近づきつつある中国経済(サーチナ 2007/12/27/16:53)
 http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2007&d=1227&f=column_1227_004.shtml

  12月25日付けのフジサンケイビジネスアイは、中国金融当局が、金融引き締め策として厳しい融資規制を実施した結果、資金繰りなどに支障が生じる日系企業が相次いでいると報じています。記事は、日本貿易振興機構(ジェトロ)広州事務所への取材をもとにしているようで、資金調達面で影響を受けた日系メーカーは広州で2~3割に達したとしています。

  中国政府は、10月16日に開かれた共産党大会の金融代表団会合で、商業銀行に対する融資の窓口指導を拡大する方針を示しています。窓口指導とは、金融当局が市中の金融機関に融資金額を指導するものです。中国の場合、不動産や鉄鋼などで設備投資の過熱感が高まっているため、窓口規制では、不動産などの投資過熱業種を中心に企業への融資規制を強化しています。

  ところがフジサンケイビジネスアイの記事によると、融資規制の対象は、不動産など投資過熱業種への投資目的の融資にとどまらず、一般の資金調達のため融資や日常的な手形割引への融資も引き締めているようです。このため、日系企業の中には、製品の納入先から代金支払いの手形を受け取れないといった事態に直面するところもあるようです。

  各種報道によると、中国の中央銀行である中国人民銀行は、年末の人民元貸出残高が10月末の残高を超過してはならない、という指導を商業銀行にしているようです。おそらく商業銀行としては、不動産など投資過熱業種への融資を抑制するだけでは、年末の貸出残高を10月末の水準に抑えることができないため、業種を問わず様々な融資を抑制していると思われます。

  支払い代金の手形すら受け取れないくらい金融が逼迫しているのであれば、中国の金融引き締め策は、それなりに強い効果を持つもののように思えます。しかし、11月の消費者物価が前年比プラス6.9%と11年ぶりの高い伸びを示し、上海総合株式指数が、依然として5200台を維持するなど、マクロ指標を見る限り、中国政府による金融引き締めが効果的に実施されているとはいえません。
(後略)

 ――――

 ●中国、住宅ローンが急増・1-11月12兆円増、不良債権化の恐れも(NIKKEI NET 2007/12/28/07:02)
 http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20071228AT2M2702027122007.html

 中国の商業銀行による個人向けの住宅ローンが急増している。今年1―11月の増加額は約8000億元(約12兆円)と、すでに昨年1年間の4倍に達したもようだ。中国では昨年から不動産市場が過熱気味で、投機目的を含めた住宅購入がブームになっている。中国政府は金融引き締めを強化しており、住宅価格が急落すれば多額の不良債権が発生する恐れもある。

 中国紙「21世紀経済報道」によると、民間の主要9行による個人向け融資残高は1―11月に2628億元増えた。国有銀行の増加額は明らかになっていないが、市場では「5000億元程度」との見方が大勢。両者を合わせた増加額は8000億元近くに達したとみられる。2006年全体(約2000億元)に比べほぼ4倍の規模だ。




 昔は経済引き締めといえば一刀両断型で政治的引き締めも行われ、全ての空気をガラリと入れ替える乱暴なものでした。経済面では金融引き締めと同時に行政や党のルートで政治的に力づくで経済をねじ伏せる形がとられたものです。その過程で責任者が失脚したり干されたりすることもありました。要するにハードランディング。

 しかし今回は基本的に金融引き締めメインで事態を乗り切ろうとしているようです。果たしてそれは奏功するのか?と問われれば、

「それは無理」
(ジョン・カビラ調)

 と答えるほかありません。現在の経済運営のシステムは以前よりずっと成熟している筈ですが、利率をいじくっても抜け道はいくらでもあるでしょうし、融資規制も各地の「諸侯」が従ってくれるかどうか次第。

 中央の威光の及ぶ範囲、例えば「雇われトップ」を送り込んである直轄市とか経済特区、それに省当局の置かれている省都とかなどでは胡錦涛政権の顔を立てて中央の政策に従ってくれるかも知れません。実際に企業の資金繰りの悪化など引き締め政策の影響が報じられているのも、こうした中央が直接手を突っ込むことのできる行政レベルの地方当局です。いわば「大諸侯」。ところがその下の「市」や、豪華庁舎を平気で建てたりする「県」や「鎮」といった「中諸侯」「小諸侯」はどうでしょう?

 ――――

 私が何よりも懸念しているのは、
北京を頂点とする各銀行のピラミッド型指揮系統が末端まで機能しているのか、ということです。

 地元当局に取り込まれたのか癒着したのか、ともかく銀行の地方支店が北京よりも地元当局の言いなりになるケースは以前から一般的です。上の記事にもあるように、

 ●1~11月の固定資産投資は、全体では前年同期比26.8%の増加した。このうち中央政府管轄のプロジェクトは同12.8%の伸びにとどまったが、地方政府分は同28.6%の高い伸びを記録した。

 という部分でそれを垣間みることができます。……というよりそのものズバリの記事も。

 ●地方政府の固定資産投資熱に要注意(新華網 2007/12/25/15:16)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2007-12/25/content_7310350.htm

 正にピンポイント(笑)、
「いまだに成長率信仰を捨てていない地方幹部がいる」のだそうです。中央の苛立ちが感じられます。

 第11次五カ年計画の初年度だった昨年(2006年)などは、1年の3分の1が経過した4月末時点で早くも銀行の融資年間枠の6割以上を消化してしまっています。むろんこれは中央の望んだものではありません。

 固定資産投資であれ銀行融資であれ、いずれも今年(2007年)の大幅な伸びは急膨張を遂げた昨年を基数としたものです。銀行をも取り込んだ「割拠」は今回も中央のマクロコントロールを十分に機能させないことでしょう。かといって胡錦涛に力づくで「諸侯」をねじ伏せる力量はありません。

 ――――

 ちなみに、「諸侯」が「割拠」する上で取り込んでいるのは銀行だけではありません。今年の人民解放軍の人事異動では大軍区はもとより、省軍区のトップレベルの入れ替えが目立ちました。胡錦涛色を強める一方で、定期的な異動によって地元当局との癒着を防ぐ狙いが中央にはあったようです。

 省軍区といっても旗下の全戦力をどこか一カ所にまとめて駐屯させている訳ではないでしょう。海軍、陸軍、空軍それぞれが、省内の何カ所かに基地を持って部隊を配置させている筈です。となると、日常の公的往来を通じて「中諸侯」「小諸侯」と持ちつ持たれつの関係が実際に生じていたとしても不思議ではありません。

 ●『香港文匯報』(2007/10/10)
 http://paper.wenweipo.com/2007/10/10/CH0710100005.htm

 12月に入ってからは各地の司法高官の入れ替え人事が全国規模で行われました。これもまた「諸侯」に取り込まれるのを防ぐ措置とのこと。

 ●『明報』(2007/12/20)
 http://hk.news.yahoo.com/071219/12/2lnb7.html

 もとより司法の独立が果たされていない国です。取り込まれた実例はいくらでもあるでしょう。例えば上海市の汚職官僚の裁判が遼寧省で行われたりする、といった
「異地審理」も「癒着」による地元当局の干渉が深刻であり、それを防ぐためだそうです。

 ●「中国網」(2007/12/24/08:35)
 http://www.china.com.cn/review/txt/2007-12/24/content_9422031.htm

 経済が走れば走るほど様々な「格差」が拡大し、また地域間格差も広がることにはなりますが、各「諸侯」にとっては以前より大きな利権を手にすることができます。

 また資源争奪戦などを有利に運ぶ必要性からも、地方当局が利権を媒介にしてデベロッパーのような民間企業のみならず、人民解放軍の地元駐屯部隊や内乱鎮圧用の武装警察(武警)、それに地元裁判所(地方法院)のトップレベルなどとも運命共同体としての縁を結び、「割拠」色を強めようとしている、ということです。

 冗談のような話ですが、武警や司法の取り込まれっぷりは相次ぐ官民衝突のケースからうかがえますし、武警については実際に「党中央離れ」(=地元当局の私兵化)に危機感を示す武警トップ・中国人民武装警察部隊司令官の論文が昨年初めに発表されています。

 ●武警はバラけて乱れつつある模様。・上(2006/01/06)
 ●武警はバラけて乱れつつある模様。・下(2006/01/07)

 ――――

 という訳で、経済が走れば走るほど様々な「格差」が強まる一方で、地方当局による「割拠」化も進む、ということになります。

 もっとも経済が走っていなくても、分権化を進める改革開放政策が維持されてさえいれば「割拠」です。進行度が遅くなるだけで、ベクトルの向きは変わりません。

 景気が悪くなればなったで守りに入る必要からやはり「割拠」色は強まり、そのために銀行や司法、ひいては治安力が奉仕させられることでしょう。

 ……うーん長々と書き散らすうちに話が変な方向に展開してしまいました。

「改革開放が進めば進むほど『割拠』」

 というタイトルにすべきだったかも知れません。むしろ、

「中国、『諸侯』の割拠色は強まる一方」

 の方がよかったでしょうか。中央はそれを何とかしようと色々苦心しているようですが、中国が本来
「多種族の集合体」である以上、この流れは最後まで止まらないだろうと思います。

 崩壊とか分裂というより、末端から立ち腐れていって自然にバラけていく、といったイメージです。……あ、夢の話はお正月を待ってするべきでしたね(笑)。




コメント ( 8 ) | Trackback ( 0 )





「上」の続き)


 ところで、
「走れば走るほど『割拠』」という今回のテーマは本来、

 ●怪走する中国経済、走れば走るほど「格差」。・上(2007/11/26)
 ●怪走する中国経済、走れば走るほど「格差」。・下(2007/11/26)

 という11月末のエントリーとのセットで、その後にすぐ続けるつもりでした。ところがその後、日中関係に関わる無視できない諸問題が続出したりベトナムで反中デモが起きたりと好ネタが続出したために、気にかけてはいたものの後回しになってしまった次第。

 上記エントリーは中国経済が高度成長すればするほど貧富の格差が開いていく、という趣旨のものでした。



 ●怪走する中国経済、走れば走るほど「格差」。・下(2007/11/26)

 中国ではすでに、

「最貧困層である総人口の20%が収入や消費で全体に占める割合はわずか4.7%。逆に最も金持ちな20%の収入・消費シェアは全体の50%に及ぶ」

 という格差社会が現出してしまっています。徒競走をやるとしても、全体の5割以上のスタートラインは富裕層よりずっと後ろの方に引かれています。その不公平な設定下で用意ドン!となったとき、富裕層にものすごいハンディでも負わせない限り、格差はまず縮まりません。

 現在の中国社会はそういう「ハンディ」がない状況での所得徒競走が行われており、各層がみな等しい所得増加率だと仮定しても、基数が違うだけに走れば走るほど格差は拡大することになります。仮に所得10の人と所得50の人が駈けっこをするとすれば、スタート時の差は40。そしてどちらも10%の所得増を実現してゴールすれば「11:55」で格差は40から44に開きます。



 ここでいう「ハンディ」を考えれば、「走れば走るほど格差」は個人の問題だけではなく、
「都市 vs 農村」「沿海部 vs 内陸部」といった地域間格差の拡大にも当てはまります。外資にしても地の利はもちろん、インフラや関連政策が比較的整備された沿海部にまず進出したがるのは自然なことです。

 地域間格差の場合、こうした地の利、インフラや関連政策の整備具合、また中央政府から与えられた裁量権が弱者の背負う「ハンディ」であり、それが存在する以上、経済が成長すればするほど、当然ながら沿海部と内陸部の差は開いていきます。

 実際に外資導入や工場新設、それに不動産開発などの固定資産投資を原動力に高度成長を実現した中国経済ですが、その実態は主として沿海部に傾斜した成長であり、廉価で搾取OK、しかも無尽蔵な労働力(主に出稼ぎ農民)が犠牲になることで「世界の工場」という地位が何とか支えられている、という歪んだ発展モデルです。上海や広東省など沿海部は繁栄していても、内陸部は資源・労働力提供に貢献する一方で見返りはなく、ただただ取り残されたまま。中国全体を俯瞰してみれば、この経済成長は足元が実におぼつかない「空中楼閣」のようなものです。

 沿海部にしても開発区設立や再開発を目的に農地収用が強行され、反発した農民との間に官民衝突が果てしなく続いています。広東省などがその好例ですが、官民衝突の起きている場所をおさらいしてみると、沿海部の中にも「沿海部 vs 山間部」といったような地域間格差が存在することがわかります。

 また、繁栄の象徴的存在である上海市ひとつを取り上げて眺めても、住民の間には貧富の差が存在しています。胡錦涛政権が「和諧社会」(調和社会)を呼号しなければならないほど不調和な現在の中国社会は、個人の収入格差だけではなく地域間格差もまた危険なほどに「不調和」なのです。

 ――――

 だから逆ギレして地方当局が「割拠」に走る?……という訳ではありません。ただ地域間格差への不満は内陸部など「弱者」の側にはあるでしょうし、

「こうなったら、おれたちもどんどんビル建てちまおうぜ」

 という気分や実例はあるでしょう。しかしこれは「割拠」の本題ではありません。実際に瀟酒な高層ビルが建てられたり行政の末端レベルである県当局や鎮当局の分際不相応な超豪華庁舎は「割拠」の具体例といえますけど。

 走れば走るほど「割拠」というのは、実は非常に簡単で単純明快な構造によるものです。

「さあ経済加速だ成長路線だ、となったときに必要となるヒト・モノ・カネを中国は常に需要に見合うほど用意できない」

 ということに尽きます。足りないとなれば競争ということになります。中央政府としては成長を実現する近道として沿海部にまず重点配分することを考えるでしょう。内陸部は当然ながら反発します。沿海部同士でも競争が生じるでしょう。

 これが昂じると資源争奪戦のようなものが発生します。さらに激化するとよその地区からの商品を排除したり、よその地区に資源を回すことを拒むといったいわゆる「地方保護主義」が台頭し、甚だしくはよその地区から別の地区へと行われる資源輸送が自分の領域を通過する際、力づくでそれを差し止めてその何割かを強奪するケースも発生します。
「諸侯経済」という経済用語は、20年近く前にそういう極端なケースが生じたときに生まれたものです。

 ●エネルギー争奪戦に地方保護主義、第3次地域間経済衝突が顕在化(新華網 2007/01/22/08:59)
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2007-01/22/content_5635076.htm

 ――――

 上海留学時代に1部屋8名の中国人学生たちが二手に分かれて喧嘩しているのをしばしば目にした経験のある私は、「中国人」という言葉は一種の虚構ではないかと思うときがあります。

 少なくとも中国国内においては虚構ではないでしょうか。中国において「中国人」を一皮剥けば本来の姿が顔を出します。上海人、広東人、四川人、河南人、北京人、陝西人、福建人……などなど。党中央や中央政府が、

「大局を優先して……」
「本位主義を戒め……」

 という表現をしばしば用いるのは、
「中国人」たちが実は国家レベルで現状や物事を俯瞰し,その見地に立って考え配慮し行動することを拒否しがちな「多種族の集合体」だからです。各「種族」の線引きはそれぞれの生活レベルにおける地理感覚と「種族特有の言語」すなわち方言の通用する範囲といったところかと思います。

 中国が現実についていけない杓子定規な計画経済制度と決別し、分権化と競争原理の導入を骨子とする改革開放政策に転じた時点から「多種族の集合体」という本質が台頭することになりました。本来のあるべき姿に、つまり本卦返りしたといってもいいでしょう。

 「多種族の集合体」である以上、各種族にはそれぞれ独立志向とまではいかないものの、
何事もわが種族の利益優先という行動原理が存在します。要するに開発欲求が強いのです。内陸部のような取り残された地区の都市ほどその傾向があるかも知れません。

 ――――

 以前にも紹介したことのある調査結果をまた引っ張り出します。中国全土の661都市を対象に調査を行ったところ、実に100都市以上が「国際的大都市」を発展目標に掲げているというものです。要するに「みんな上海みたいになりたい」といったところでしょう。

 ●都市化の進展阻む盲目的成長志向、百余都市が「国際的大都市」目指す(新華網 2005/10/08/07:28)
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2005-10/08/content_3591687.htm

 中央は沿海部には沿海部なりの、内陸部には内陸部なりの役割設定を行い、それに従うよう各「種族」に命じているのですが、「種族」側の本音は「上海みたいになりたい」なのです。この「上海志向」はただ発展を目指すというだけでなく、地元党幹部にとってはその過程で生じる利権が狙い、という
「中共人」らしい思惑も秘められていると考えるべきかと思います。

「お前んとこは石炭生産係」
「穀物生産に重点を置け」

 などと中央から言われても面白くないばかりでしょう。

 ――――

 一方で各「種族」はその領分の繁栄を優先して考え、また領分が天地となる訳ですから「種族」内で自己完結する産業体系を完成させようとします。川上から川下までのワンセットを全部自分のところでまかなう。……となれば、どの「種族」も同じような方面に力を入れます。

 いきおい重複投資となり資源争奪戦が発生。その結果として投資効率の低下、生産過剰、資源の浪費、品質低下ひいては環境汚染といった弊害をもたらすことになります。

 とにかく中央の言うことをなかなか聴いてはくれません。いや、聴くフリをして実際には面従腹背というべきでしょう。

「上有政策,下有對策」
(中央の出した命令が地方レベルでは都合よく骨抜きにされてしまう)

 という有名な言葉もありますね。……もっとも「種族」側にも言い分があります。

「合理化しろ」
「効率を高めろ」

 と命じられても、それによって失業者がわんさか出て社会不安を招いたところで、中央が何かしてくれる訳でもなく、自分で問題を解決しなければならない訳ですから。そのために何か事件が起きて、もし対応が悪ければ処分される可能性もあります。たまったものではありません。

 ――――

 こうした状況に対し、中央(党中央&中央政府)は省・自治区・直轄市レベルのトップクラスのクビのすげ替えによって「諸侯」たちへの統制力を強化しようとしています。胡錦涛政権が省党委員会書記(トップ)や省長(ナンバー2)に胡錦涛直系である「団派」(胡錦涛の出身母体である共産主義青年団人脈)をどんどん送り込んでいるのは周知の通りであり、当ブログでも再三報じています。

 しかしこれまた当ブログが繰り返し指摘している通り、こうした人事の効果には多くを望めません。というのも、省当局には地元出身の官僚という
「越後屋番頭」たちがいて、中央から赴任してきた「雇われトップ」を祭り上げたり言いくるめたりして、その力を発揮する機会を限定してしまうからです。

 特に重要なのは市、県、鎮といった傘下の地方自治体に対する監督が甘くなることです。甘いからこそ上述したような豪華庁舎が出現しますし、「雇われトップ」の目の届かない隠れた利権が存在していたりします。省当局の「越後屋番頭」たちはそうした行政末端レベルにやりたい放題を許す一方で、見返りに闇の上納金をせしめたりしているのでしょう。

 「雇われトップ」はそうした利権に起因した官民衝突や人災型炭鉱事故が起きてから驚くことになります。とはいえ「雇われトップ」も「越後屋番頭」も一党独裁政権のおかげでトクをしている
「中共人」であることは共通していますから、事故・事件については「越後屋番頭」にうまく処理させて、「雇われトップ」は人民に真摯に謝罪するパフォーマンスを行う一方、中央に対してはうまく申し開きして逆に得点を稼いだりします。

 いくつかの例外は別として、そういう一種の処世術、未然の措置よりダメージコントロールに長けた連中が地方での修業を終えてから中央の有力ポストに抜擢されるように思います。……私の印象にすぎませんけど。


「下」に続く)




コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )





 きょう12月27日は福田首相が北京に飛来する(黄砂かいっ)中国当局にとって重要な一日となります。日本にとっては重大な一日にならぬよう私は願うばかり。

 ……なのですが、北京市民はともかく広東省&香港住民にとってのフフン♪訪中は
「だから何?」といったところでしょう。それどころではないのです。

 フクダ飛来を一蹴してしまうニュースが飛び出しました。
広東省内の大型ダム20数カ所でアオコの発生が確認されたのです。アオコといえば今年5月に太湖で大量発生し、湖水を緑色に塗り替えた、アレです。むろん有害。湖水がやられて水源を断たれた江蘇省が応急策として断水措置を実施したことにより、同省・無錫市でプチパニックが発生したのを御記憶の方も多いかと思います。

 今朝の香港紙は親中紙を別とすれば軒並みこのニュースを報じています。そりゃそうでしょう生活に直接関わる問題なんですから。

 電子版をみた限りでは、福田首相の訪中なんて複数の記事を並べて比較的大きく扱っているのは親中紙の『香港文匯報』と『大公報』のみ。香港人にとっての「普通の新聞」である『蘋果日報』はじめ他紙は、

「訪中する福田首相に中国は新幹線技術導入のお土産を用意か」

 てな程度(そんなお土産は有難迷惑)でサラリと流しています。それどころではないからです。

 ――――

「広東省内の大型ダム20数カ所でアオコ発生」

 というショッキングな事実は12月25日、深センで開かれた「節水型社会建設・試験活動経験交流会」の席上、広東省水利庁の李粤安・副水利庁長によって明らかにされました。

 香港各紙の元ネタである社会派で人気の高い広東省の新聞『南方都市報』(2007/12/26)によると、李氏はこの報告をぶちまけて省を挙げて急ぎ対策を講じる必要があると指摘した上で、

「いざ本格的な大量発生となれば、繁殖のスビードと被害規模は太湖のケースをはるかに上回るだろう。江蘇省に比べれば、広東省は気温が高い上に日差しも強く、アオコの繁殖により適しているからだ」

 と危機感を煽りに煽った模様。ただし「大型ダム20数カ所」の固有名詞を出すことは避けたそうです。そこまで煽るか(笑)。

 ●何とダム20数カ所にアオコ発生(南方都市報 2007/12/26)
 http://www.nddaily.com/A/html/2007-12/26/content_351362.htm

 アオコ発生が確認されたダムの名前が伏せられたのはそこから生活用水を得ている地域で無用の恐慌が起きるのを防ぐためでしょうが、秘密にされればそれを暴きたくなるのが人情。特にパパラッチ属性の強い香港メディアは大人しくしていられないでしょう。

 たぶん今日あたりから広東省内に記者やテレビクルーを送り込んでダム特定のスクープ争いを展開することになると思われます。いや、昨日の午後から動いているかも知れません。ていうか動いているに違いありません。……ええ、これは一応同業者のようなものである私の確信です(笑)。

 ――――

 香港紙『明報』(2007/12/27)は『南方都市報』の記事を柱にしつつ、

「アオコが発生したことは、そのダムがすでに汚染されていることを意味する。これから春に向けて気温も高くなっていくから、アオコの爆発的な繁殖をいよいよ警戒しなければならない。対策が後手に回った際の結果は想像するに堪えない」

 という専門家のコメントを紹介してメリハリをつけています。香港人にとっては香港の生活用水源が大丈夫かどうかが喫緊事となりますが、香港水務署の報道官は水源地のある深セン市側に問い合わせたとして、

「目下のところ深センのダムではアオコ発生が確認されていない」

 と発表。香港人はひとまず安心といったところでしょう。とはいえ上記専門家によれば、

「アオコ発生=お前はすでに死んでいる」

 状態なのですから、気の早い向きはミネラルウォーターを買いに走ったりするかも知れませんし、思惑で売り惜しみに出るスーパーなどが出てくる可能性もあります。売り手としては神様仏様アオコ様南無八幡大菩薩祈大願成就といったところでしょう。……こうした要因も、香港メディアをアオコ確認に奔走させるパワーの源となります。

 ――――

 アオコが発生するとどうなるの?という素朴な疑問にも『明報』は回答してくれています。まず魚類が死滅するそうです。もちろん生活用水には適しません。飲用すれば肝臓ガンを誘発しやすいとのこと。

 さあ大変だ。ということで記者を現地に走らせる一方で、広東省内にあるダムのおさらいを『明報』は行っています。それによると、現時点での総計は
大型ダム22カ所、中型ダム291カ所そして小型ダム6000カ所余り。……ってことは、

「20数カ所の大型ダムで」

 という話なのですから、大型ダム全てがやられている可能性が強いのではないでしょうか。シャレになりません。香港及び広東省在住の皆さんは万一に備えて……って煽っちゃいけませんが、関連情報には御留意の程を。

 ●『明報』(2007/12/27)
 http://hk.news.yahoo.com/071226/12/2lxgs.html
 http://hk.news.yahoo.com/071226/12/2lxgt.html
 http://hk.news.yahoo.com/071226/12/2lxgu.html
 http://hk.news.yahoo.com/071226/12/2lxgv.html




コメント ( 12 ) | Trackback ( 0 )





 これは衝撃的なニュースと捉えるべきでしょう。ベタ記事で流していいものではありません。放置すれば悪しき前例となってしまいます。日本政府は脊髄反射すべきではないでしょうか。

 いままでは日本に乗り込んで起訴する形だった中国民間人による対日戦時賠償請求訴訟がこのほど中国国内で初めて行われ、日本企業が敗訴、巨額の賠償金支払いを命じられる結果となりました。



 ●商船三井に29億円賠償命令 中国、徴用船の賃貸料など(共同通信 2007/12/25/17:24)
 http://www.47news.jp/CN/200712/CN2007122501000477.html

 【上海25日共同】日中戦争勃発前年の1936年に、日本の海運会社に船舶を貸し出した中国の会社経営者の親族が未払いの賃貸料を含む賠償を求めた訴訟で、中国の上海海事法院は25日までに、海運会社の流れをくむ商船三井(東京)に対し、約1億9000万元(約29億6000万円)の賠償支払いを命じる判決を言い渡した。

 25日付の英字紙、チャイナ・デーリーなどが、日中戦争被害者の日本への賠償請求運動を支援する「中国民間対日賠償請求連合会」の童増会長の話として報じた。

 訴えによると、中国の船舶会社は36年、船舶2隻を1年間貸し出す契約を日本の大同海運と締結。船舶はその後、旧日本海軍が使用し沈没した。

 親族側は、大同海運が契約満了後、沈没するまで船舶を使用し続けたとして、未払いの賃貸料や船舶の補償など約20億元の賠償を請求。商船三井側は「船は軍に徴用されたもので、賠償責任はない」と主張したが、海事法院は、船舶の不法使用と賠償責任を認めたという。




 記事文中にある
「中国民間対日賠償請求連合会」童増・会長というのは札付きの反日活動家であり、糞青ども(自称愛国者の反日信者)に崇拝されている存在。尖閣諸島の領有権を主張して様々な活動を展開している中国の民間組織で反日サイトの筆頭格でもある「中国民間保釣連合会」の会長でもあります。

 もっともこの童増、札付きの反日活動家といっても、靖国神社の狛犬にペンキを引っ掛けて悦に入るといった軽薄な輩ではありません。保釣運動(尖閣諸島防衛運動)もそうですが、中国の民間人による対日戦時賠償請求訴訟を長年支援してきた苦労人でもあります。

 ただし苦労人の割には空気を読むのが致命的に下手(笑)。インタビューで余計な話をしたり中国当局が「いまは時機ではない」という局面で活発に運動を展開したりしてお灸を据えられたりしています。

 対日戦時賠償請求訴訟はこれまでいくつも行われていますが、いずれも日本での裁判でした。これに対し今回の件は、初めて中国国内で裁判が行われたというのが第一のポイント。なぜこれまでは日本でやっていたのかといえば、中国は日中共同声明で対日戦時賠償請求権を放棄していますから、国内でこの種の訴訟を行えば問題がこじれるという中国当局による有形無形の圧力があったのでしょう。

 これに対し、童増が中国国内での訴訟実施を掲げて昨年(2006年)春に設立したのが「中国民間対日賠償請求連合会」です。そして童増の言によれば、中国での訴訟がこのほど初めて成立し、被告である日本企業が敗訴したとのこと。支払い命令の出た賠償金額は何と約30億円!

 ――――

 言うまでもないことですが、一党独裁政権である中国において、領土争いや戦時賠償請求請求といった対日関係に影響しかねない政治問題について民間団体が自由に活動できる訳がありません。政治的保護者、いわばバックボーンたる「飼い主」が背後に存在しているからこそできることなのです。

 この「中国民間対日賠償請求連合会」にしても、メンバーには強面の顔ぶれがズラリと並んでいます。

 ●対日賠償請求問題――これはいよいよ香ばしい。(2006/04/04)

 ともあれ、政治勢力を後ろ盾にしているために、こうした「民間組織」が異なる政治勢力間の主導権争いの尖兵として利用されたり、勢力図の塗り変わりによって「飼い主」が変化したりします。現に「中国民間保釣連合会」は2004年夏に中国で開催されたサッカーアジアカップでの日本に対する中国人観客の愚昧なブーイング、それに2005年春の反日騒動の火付け役となっています。要するに反胡錦涛諸派連合の走狗。

 今回の「中国民間対日賠償請求連合会」もその設立当初、アンチ胡錦涛勢力が後援していた形跡があり、これに即応する形で胡錦涛サイドがあくまでも日本での訴訟に撤する類似組織を立ち上げたりしています。

 ●強訴出現。――脅迫ですよこれは。(2005/11/05)
 ●中国国内での対日民間賠償訴訟、初めて実現か。(2006/02/17)
 ●対日民間賠償請求、中国での訴訟実施はどうやら本気?(2006/02/22)
 ●対日賠償掲げた政争?に胡錦涛が逆転攻勢。(2006/02/27)
 ●政争勃発か?対日戦時賠償請求、中国での訴訟実施へ。(2006/04/03)
 ●強制労働何たらは中国政府を訴えるのが筋でしょ。(2007/05/04)

 ――――

 ……とすれば、今回の訴訟はどう捉えるべきでしょうか。やっぱり政争?と考えられるような気配はありません。あるとすれば、台湾問題や日本のMD実験成功で神経質になっている対外強硬派の突き上げを胡錦涛が渋々黙認した、といったところかと思います。時期的には「南京大屠殺70周年」という節目を迎えて行われた様々な関連イベントのひとつ、とみることができます。

 ただし、南京虫は今年が終われば節目イベントも終了するのに対し、今回の中国国内での初の対日民間戦時賠償訴訟はこれで打ち止めという訳ではなく、逆に先例を開いたことになります。当の童増自身も、

「判決は中日両国が公正かつ合理的に第二次大戦で残された問題を解決するということに曙の光をもたらすものだ」

 と語っています。何でも今回の訴訟は1958年から日本で何度も裁判を繰り返して敗訴し続けたものだそうです。似たような裁判事は他にもたくさんあります。童増自身、今後もヤル気満々の様子。……と報じているのが、中国の国営通信社・新華社であることに驚かねばなりません。
事実上、中国当局がこの形式による訴訟を認知したことを意味するものだからです。

 しかも配信時間は香港紙『明報』電子版よりも早く、その点では重視されているニュースといえます。

 ●「網易」(2007/12/23/14:29)
 http://news.163.com/07/1223/14/40DFLO6J000120GU.html

 ●『明報』電子版(2007/12/23/14:39)
 http://hk.news.yahoo.com/071223/12/2ltxx.html

 ――――

 とはいえ、微妙な「認知」ではあります。新華社電をはじめとする中国国内の報道、そして前掲の共同通信記事や香港紙などを含む海外の報道は、いずれも童増が明かした形で報じられており、未だ正式に確認されてはいません。

 また、新華社電など中国国内における報道のされ方も地味に扱われているといった印象で、目下のところこのニュースを取り上げて解説する、といったような論評記事は出現していません。共同電が丸二日も遅れているのもこっそり報道されたためかも知れません。この目立たぬ扱いは、現今の薄っぺらい「対日融和ムード」に影響しないよう配慮されているものと思われます。

 ただし、新華社が報じている以上、また共同通信が当の被告である商船三井からコメントをとっているので、中国国内で初めて対日民間戦時賠償請求訴訟が実施され、日本企業が敗訴したのは間違いない事実でしょう。……となると、日中関係の原点である上述した日中共同声明、具体的にはその第五項に明記されている、

「中華人民共和国政府は、中日両国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する。」

 という内容に反することになります。

 ●外務省HP
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/nc_seimei.html

 今後もこの種の訴訟が中国国内で行われ、日本企業が血祭りにあげられることになりかねません。対中進出を果たしている企業で狙われているところは少なくない筈です。日本政府としては日中共同声明をタテにまず中国側に正式に抗議すべきです。

「放棄したのは国家としての賠償請求権であって、民間のものは含まれていない」

 という屁理屈が中国側から返ってくる可能性は大ですが、ともあれまず抗議するべきです。中共政権の無理無体に屈して日本企業の権益を保護できないというのでは、北朝鮮による日本人拉致問題と似た性質の問題ということになるでしょう。

 ――――

 いかに地味で微妙な認知の仕方とはいえ、認知は認知です。中国当局は昨年は力づくで押さえ込んだ活動を今回は認めていることになります。もしそれは「相手」が変わったからで、要するに日本を舐めてかかっているということであれば、嫌ですねえ。

 昨年にこの動きが表面化したときの「相手」、つまり日本政府は「対中関係の構造改革」を掲げた(と私はみています)
小泉政権でした。ところが今回は側近を媚中派で固め、首相在任中に靖国神社を参拝しないと明言し、「相手の嫌がることをする必要はない」という福田政権です。orz

 先日の日中ハイレベル経済対話での
「共同文書を勝手に一部削除」事件でもそうでしたが、今回の訴訟についても中国当局が黙認という形で認知したのを追認する、というような結果になりかねません。……もう水面下で合意していたりして。

 日本企業が敗訴したという今回の訴訟のニュースは今後類似例が続出する可能性を考えれば重大な内容だと思うのですが、
日本のマスコミがほとんど沈黙しているというのも気になるところです。新華社電によれば鹿島建設、三菱マテリアル、住友金属あたりがターゲットにされているそうですけど。

 ●中国民間対日賠償請求連合会が成立、国内での訴訟が本格始動(新華網 2006/04/03)
 http://news.xinhuanet.com/legal/2006-04/03/content_4376889.htm

 この問題、黙っていれば中国側によってなし崩し的に次々に攻め込まれ、強制労働やら南京虫やら従軍イワノフ関連も裁判沙汰にされるであろうことは想像に難くないのですが、日本政府がどう反応するかによっては将来に禍根を残すことになります。

 福田首相は明日(12月27日)から訪中することになりますが、温家宝・首相や胡錦涛・国家主席との会談において、降って湧いたようなこの問題について切り出すことができるでしょうか。いや、福田首相ではなく事務レベル対話でも構いません。

 切り出すような腰の強さがないことを見透かしているからこそ、中国当局は今回の訴訟を認知したのかも知れません。少なくとも小泉政権と比べれば、福田政権は中国にとって実に扱いやすい相手ということになるでしょう。

 弱腰であれ何であれ、日本の権益が侵されることについては黙ってみているようなスタンスでないことを私は願うばかりです。でもフフン♪は前科持ちですからねえ。やっぱり、官房長官時代の拉致問題への取り組み方と同じ姿勢?

 悪しき前例とならないよう、また次世代の日本人に対する責任感を持って、この問題に対処してほしいものです。




コメント ( 16 ) | Trackback ( 0 )





 忙中閑なし、の日が続いております。仕事の追い込みです。香港側の事情に関係なく、日本の仕事納めまでにやることをやっておかないと後で泣きをみますから。ここ数日が勝負です。打ち合わせとかの掛け持ちになるので、先日までとは逆に外出する機会が増えることになります。

 だからその空き時間を利用して小ネタに逃げる、という訳ではありませんが、一種の季節ネタで当局発表の典型のようなものがありましたので紹介しておきます。私は学生のとき上海から出張講義に来ていた中国人教授から、

「人民日報倒着看」(『人民日報』は逆さにして読む)

 という言葉を教わりました。重箱の隅をつつくようなものではありますが、実はそうしたちまちました作業が中国観察の醍醐味でもあります(笑)。

 今回のテキストはこちら。



 ●農村部の1.28億人が危険な水にサヨナラ(新華網 2007/12/23/07:40)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2007-12/23/content_7296694.htm

 概略は以下の通りです。

 ●2001年以来、中央政府は147億元を投じ、地方当局なども動かして農村部住民1.26億人の飲料水問題を解決した。
 ●第11次五カ年計画期間(2006~2010年)においては、中央政府はさらに320億元の財政支出により、農村部住民の飲料水問題に直面している人口を半減させる。
 ●2007年には中央政府が64億円を投じて3152万人の飲料水の安全問題を解決した。
 ●水道水敷設だけでなく、水源汚染問題の改善にも努めたことで、第10次五カ年計画期間(2001~2005年)には消化器系伝染病などの農民の疾病率も47%減少した。
 ●これからも頑張るぞ。




 という内容です。「飲料水問題」、まあ生活用水の問題といっても、

 ●1.水道が敷かれていないため遠くまで水汲みに行かなければいけない。
 ●2.生活用水が安全基準に達していない。
 ●3.給水量不足。要するに水飢饉。

 などがありますが、この記事では(2)に重点が置かれている模様です。ちなみに大雑把な言い方をすると、中国農村部には安全基準に達していない「水めいたもの」を生活用水に使用している農民が3億人いるといわれています。

 何だいお決まりの自画自賛記事じゃないか、といえば正にその通りなのです。年末にはこの種の記事が増えてくるのでいわば季節ネタといっていいのですが、このニュースも逆さにして読むと色々と想像することができます。……あ、でも「統計がアテにならない」というのはデフォですからここではふれません。

 ――――

 ●問題が解決した人数しか明らかにされていない。

 これは失業・就業問題での自画自賛記事でもままあることですが、「今年中国は×千万人の就業を実現した」と報じていても、逆にどのくらいの人数が新規失業者になっているかに記事が言及することはありません。

 それと同じで、「1.26億人の問題を解決した」というのが事実であっても、深刻化する一方の環境汚染問題や水不足問題からして、
一方では生活用水問題の新規被害者が出ていないとは限りません。

 サヨナラした人がいる半面、コンニチハした人もいるかも知れないということです。少なくともこの記事においては「新規被害者はいない」とは書いていませんし、
解決すべき対象があと何億人いるのかにもふれていません。

 ――――

 これは当局発表(中国に限らず)につきものの、

「報喜不報憂」(当局にとって都合のいいことしか報道しない)

 の一典型です。もっとも中国のマスコミは「党と政府の代弁者」という定義がなされていますので、一種の機関紙や広報紙のようなものだと考えれば当局発表の裏読みをしない素直な報道スタイルもごく当然のこととなります。

 もちろん『南方都市報』など社会派の新聞もあったりしますし、販売競争でスクープ報道が行われたりもします。ある程度は許容されているということですが、やり過ぎると記者が解雇・逮捕されたり新聞自体が休刊・廃刊になったりします。

 ――――

 ●「47%減」の謎。

 農民の消化器系伝染病などの疾病率が47%も低下したと報じられていますが、唐突に出てくる数字なので何を意味するのか不明です。文脈でいえば第10次五カ年計画期間の疾病率がそれ以前の5年間(第9次五カ年計画)より47%減った、ということになりますが、
比較対象が明らかにされていないのでこれは推測にすぎません。

 調査対象も不明です。「農民の疾病率」とあるので都市部人口が含まれていないことはわかりますが、
基数が生活用水問題の被害者なのか、あるいは農村部総人口なのかは記事から確認することができないのです。

 また、わざわざ「消化器系伝染病の疾病率」と銘打たれてあるので、
その他の病気が「飲料水問題」によって深刻化している可能性もあります。
 
 ――――

 ●「水質汚染」の実質的進行度は?

 記事ではこのプロジェクトによって水質汚染の問題も改善が進んだ、とされていますが、具体的な数字は示されていません。この取り組みである地域の汚染改善が進む一方で、
別の地域では水質汚染が深刻化している可能性もあります。

 水不足についても同様のことがいえるでしょう。

 ……まあ生活用水問題に限定された記事ですし、実際に水道が敷かれたりして喜んでいる農民たちがいるのは事実でしょう。ただ短信ながら額面通りに受け取って「へーそうなのか」で流してしまう訳にはいかない記事だと私は思います。

 ――――

 そもそも「147億元」「64億元」という数字からしてアテにはなりません。これは数字に信が置けないというのではなく、
あくまでも中央政府による支給実績に過ぎないという意味です。この金額に対して、末端レベルでの受給実績が大幅に減少してはいないか、途中で着服している奴がいるのではないか、ということに思いを巡らす必要があります。

 勘繰り過ぎ?といわれそうですが、実はこれは土地収用問題における当局から農民へ支払われる補償金の金額をめぐって官民衝突が発生している主要な原因のひとつでもあります。

 ●悪魔の錬金術(2004/12/19)

 まあ天の邪鬼はこのくらいにしておきましょう。今は知らず、私の学生時代にはこの手の授業がなかったので、授業時間外に恩師をはじめ諸先生方に喰いついたり、図書館で香港の政論誌『争鳴』『九十年代』や台湾の『中共研究』、日本語だと霞山会の『東亞』(の小島朋之氏の連載)などを読むことで飢餓感を癒していたものです。

 それではまた打ち合わせに行ってきます。




コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )










 今日12月24日は振替休日だそうで。知りませんでした。orz

 私が日本を離れている間に祝祭日の日取りが随分変わったようです。例えば「成人の日」を1月15日ではなく月曜日に固定することで連休をひねり出す、といったような。

 もう何年も日本にいるじゃねーか、と言われそうですけど、こちらは曜日(及び昼夜)の感覚が薄い仕事な上に、香港や台湾を相手に商売していますから、基本的に本社のある香港のカレンダーを見ながら仕事をしています。打ち合わせのアポを取ろうとしたりする際に、

「御家人さんその日は休みだよ」

 と笑われたり。ちなみに香港には英国統治時代のクリスマス休暇が残っています。クリスマスイブの今日は平日ですが、私が香港にいたころは半日勤務で午後からは休み。そして25日、26日が連休となります。

 ――――

 でも私の仕事関係でいうと香港サイドは暦には関係なく忙しそうです。というのもこの季節にはクリスマス商戦をあてこんだ「亜洲遊戯展」(12月22~25日)、まあ
「香港ゲームショウ」のようなものが開催されるからです。

 当初はショボいイベントだったのですが、いまでは入場者総数述べ数十万人といったような、「東京ゲームショウ」(TGS)よりも賑わう盛典となっています。

 何でそんなに人が集まるかといえば、ゲーマーしか集められないTGSと違って、「亜洲遊戯展」は家族連れなどがディズニーランドに行くような気分でやってくるのです。香港紙『明報』電子版によると初日の22日朝にはすでに約1000名の行列が会場の外に出現していたとか。

 ●『明報』電子版(2007/12/22/10:52)
 http://www.mpinews.com/htm/INews/20071222/gb61052t.htm

 いうなれば、TGSの宿願でありながらついに未だ実現していない
「ライトユーザーを引き寄せる」というハードルを簡単に越えてしまっている訳です。業界人としての住民票は東京にあっても本籍は香港にある私としては、ちょっと痛快。

 でもやっぱり、何でそんなに人が集まるのかと不思議です。香港は狭くて会場まで行くのに苦労しない、というのはあるでしょう。ゲーマーにとっては新作の試遊、無料配布物、ゲーム大会、日本から呼ばれたクリエイターの講演、そしてコンパニオンのお姉さんやコスプレの女のコあたりが目当てなのでしょうけど。

 ――――

 ともあれ私の本業も副業先もブースを出しているようなので、連中のクリスマス休日は吹っ飛びます。先日Aさんと会うのを断念して仕上げた制作物が本業のブースを飾るようです。数日前にヤマを越したものも昨日の午後からブースに並んだようです。

 副業の方は雑誌のバックナンバーを一掃するまたとない機会。もっともそれだけではタマ不足なので会場限定号を制作したりします。そのために私も何か書かされたりします。……限定版のために書かされるだけならいいのですが、この「亜洲遊戯展」と夏に開かれる香港最大のイベント「書展」(ブックフェア)が終わるたびに連載しているコラムをアレンジ&加筆して書籍化、という話が出ます。

「だいたい採算に乗らないだろうが」(御家人)

「いや、香港と台湾で出して、大陸にも流すからペイするんだ」(副業先の編集長)

 という会話が半年に一度繰り返されます。本になったらどちらかのイベントで販促して、そのときは私を香港に呼んでサイン会を開いてくれるそうです。航空券&ホテル代は向こう持ちだとか。そんな甲斐性ないくせに(笑)。

 まあ時間的にも体力的にも余裕がないので惜しいなとちょっとだけ思いつつ毎回断っています。肝心の私が動こうとしないだけなので、その気になればいつでもOKだそうです。でも実質的に書き下ろしになるのでやはり無理。今後10年のうちにやるべき仕事のリストからは外してあります。

 ――――

 実はもう一点、私のコラムには当初から、

「香港人的角度,日本人的深度」

 という余計な看板を編集部が掲げているのですが、当の私がもう随分香港に行っていないので「香港人的角度」については正直、自信がありません。コラム自体は日本の状況を紹介し分析・解説を加えるだけの内容なのですが、これが香港人の口に合わせた調理法かどうかについて、最近は少しひるみがあります。

 過去に私のコラムに対抗すべく、ライバル誌が元『F痛』編集者のような日本の業界人に似たような内容のものを書いてもらって、それを翻訳して連載するという試みが行われたりしたのですが、いずれも散々に失敗しています。

 私のコラムに対する研究不足は措くとして、どうしても日本人視点になってしまうのと、翻訳ということで自分の言葉で語っていないからです。また、それら日本人の制作レベルの低さや問題意識の希薄さも致命的でした(仕事の話ですから遠慮なく正しく書かせてもらいます)。

 まあ最近は観察者として業界を眺めていても以前ほど楽しくなくなってきたので、編集長には内緒ですがそろそろ卒業させてもらおうかとも考えたりしているところです。

 私はコラムを書いていて、地元はもとより、カナダと米国在住の香港人、それから安徽省の山奥の水力発電所に務める中国人からファンレターめいたものをもらったことがあります。それから香港にいたころビザ更新のためイミグレーションに行ったとき、担当のお兄さんが私の読者ということで握手を求められたことがありました。私にはそういう思い出だけでもうお腹一杯です。

 ――――

 ところで、「亜洲遊戯展」は私が香港を離れてから始まったイベントですが、「書展」の方は歴史があります。香港在住時代はゲームショウがないために、私のいた会社はこの「書展」にブースを出していました。家庭用ゲーム機の試遊台やアーケードの筐体を置いて試遊させたり大型モニターで当時日本で話題だったゲームのCMを流しっ放しにしたり(こうした渉外事務は私の仕事)、この展示会に合わせて目玉の制作物を発売したりと、それはもう大盛況でした。

 当時いた会社はいわゆる「カリスマ編集者」の梁山泊のようなところでしたから、そいつらが司会を務めてのイベントなどもあって、周囲のブースから苦情が寄せられるほど人が集まりました。展示会なんてプレスパスをつけて取材するだけで、出展者スタッフとして臨んだのは当時くらいのものですが、あの高揚感は忘れられません。

 10年くらい前の話ですから、プレステとかセガサターンといった時代です。某有名編集者がゲームに関するクイズ大会(当たったら粗品進呈)で、

「このモニターで流している『せがた三四郎』は以前、特撮ヒーローを演じたことがあります。さてそのヒーローとは何でしょう?」

 と問題を出したら、それまでは物凄い熱気で我先に手を挙げていた鈴なり状態の少年・青年ゲーマーたちが一斉に沈黙。シーンとして互いに顔を見合わせています。それを陰から見ていた私たちは思わず爆笑しました。

 正解はもちろん「仮面ライダー」なのですが、編集者たちや私と違って、クイズに詰めかけた連中は香港で「仮面ライダー」が放映された時期にはまだ生まれていません。

「わかる訳ねーだろw」
「世代を考えろよ世代を」

 などと言い交わしていたら、少し間を置いてから観衆に混じっていた中年ゲーマーが恥ずかしそうに手を挙げて、御名答。これには野次馬の私たちもおおーと唸ったものです。

 ――――

 その仲間たちも分離独立したり転業したりして散り散りになってしまいました。当時の会社もそのあおりで倒産して現存していません。

 「亜洲遊戯展」はより大がかりなイベントの連発で今日も賑わっていることでしょう。「東京から離れるな」という制約さえなければ、交通費・宿泊代自分持ちで見物に行きたいところです。TGSに顔を出さなくなった昔の仲間たちにも会いたいですし。







コメント ( 8 ) | Trackback ( 0 )





 ようやくまた本業の案件でひとヤマ越えました。越えたところで今年も押し詰まっていることに気がつきました。

「27日の午前に届くから」

 と隠居宅からさっき電話がありました。届くのは「きりたんぽ鍋」セットでして、これは拙宅における年末の定番。大晦日の31日はもちろん蕎麦ですから、30日の夜がこれになります。なぜ「きりたんぽ」かといえば、私は南部藩(飛び地)と水戸藩のハーフでして、隠居の生地が比内地鶏で有名な場所のすぐ近く、ということによります。

「予約しといたよ」

 と配偶者にも今日(12月23日),言われました。こちらはケーキの話。半年くらい前に近所にオープンした洋食屋がケーキがおいしいという評判で雑誌などでも紹介されていました。そこにクリスマスケーキの予約を入れてきたとのこと。

 私はクリスチャンではないのでクリスマスなどあってもなくてもいいのですけど、ケーキの腕比べが面白いので、いつも日本橋のデパ地下あたりへ配偶者と出向いてあれこれ物色して、二人であれこれ批評した上で、このときばかりはと毎年奮発しています。夫婦二人世帯ですから小さなケーキなのですが、拙宅にしてみるとちょっと贅沢。それが今年は徒歩2分のところに良さげな店ができたので、一点張りと相成った次第。

 ケーキを食べて、きりたんぽ鍋を食べて、そして大晦日には年越し蕎麦を食べてからたぶん今年も配偶者が密かに用意してある一升瓶を持ち出してきて、元日の朝まで酒盛りに付き合わされて、ちょっと寝てから午後に靖国神社へ初詣、ということになりそうです。

 ――――

 それにしても明日がクリスマスイブですかあ。仕事という腐海の中でジタバタして足掻きに足掻いて、ようやく水面に顔が出たと思ったら「おいおいもうそんな時期かよ」という感じです。

 今朝の香港紙『東方日報』に面白い記事が出ていました。

 ●成都市、学生のクリスマス行事を厳禁に(東方日報 2007/12/13)
 http://orientaldaily.on.cc/new/new_c01cnt.html?pubdate=20071223

 ●西洋の祝日、中国本土で浸透する一方(東方日報 2007/12/13)
 http://orientaldaily.on.cc/new/new_c02cnt.html?pubdate=20071223

「クリスマスなどという中国と何の関係もないバタくさい日を祝うなど、もってのほかだ」

 という趣旨のようで、成都市教育局がこのほど各種教育機関に対し、12月24~26日に学生が街に出てクリスマスを祝う活動に参加することを禁じるとの通達を出しました。

 期間中は市当局はじめ区、鎮など各行政レベルの教育部門が24時間態勢で当直。寄宿舎制が一般的な各学校は学生への管理を強化し、寄宿生の外泊などは断固防止せよとの指示。学内の巡察も強化するそです。

 一方で市教育局は学生の親に対してもクリスマス期間中の外出などに対し厳しくチェックするようにとの申し渡しが行われたようです。

 ――――

 要するにそれほどクリスマスが中国の都市部には浸透している、ということなのでしょうね。今朝の『大公報』電子版には北京市の繁華街・王府井でサンタの格好をしたお兄さんがサックスでクリスマスソングを演奏して客寄せに努めている画像を掲載していました。

 ……てことは上海あたりになるとミニスカサンタとかも出現しているんでしょうねきっと。オサーンはちょっとだけ見てみたい気が(笑)。

 成都市の場合はクリスマス期間の乱痴気騒ぎが年を追って激化し、また騒ぎの起こる範囲も拡大傾向にあるそうです。

 昨年(2006年)は市内の大通りが人であふれ、あちこちで交通規制をしなければならないほどの盛り上がり。緑地帯が壊されたり(被害額4万元)、警官との小競り合いで逮捕者が出たり、また宴の後にはゴミ80トンがの残されるなど当局にとっては迷惑イベントだった模様。

 成都市以外でも、警官隊や消防隊が出動待機状態でクリスマスイブを迎える都市があるようです。こちらは乱痴気騒ぎは不可避とみて、そうなった際に被害を最小限に抑えようというスタンスでしょう。

 ――――

 ところで成都市教育局の言い分によると、今回の通達は
「クリスマスで騒ぐな」という一方で、「伝統文化を重んじる教育に力を入れよ」という趣旨の二本立てになっています。洋風イベントなどに染まらず、お正月を祝うような学生を育てろ、ということです。

 これは自称大国化とともに復古調というか中華意識が台頭し、流入する西洋文化との間に火花を散らしている、という側面があるので無視できません。昨年もクリスマス前に博士10名が連名でネット上に
「クリスマス排斥」を呼びかけて話題になりました。このときの趣旨も、

「中国人たるもの、西洋文化の拡張を防がなければならない」

 というものでした。尊王攘夷みたいなものでしょうか(笑)。尊王が「中華文明」なのか「中国共産党」なのかよくわかりませんけど、とりあえず中共政権からは禁令が出ていませんので、「中華文明」を奉じる向きにはそれに業を煮やしての意思表示だったのだろうと思います。

 何といいますか、「中華文明」のようなご大層なものを背負ってしまっていると、何かと大変なんだなあと同情してしまいます(笑)。

 ――――

 中国の都市部にいつごろからクリスマスが浸透したのか、3年前まで十数年ばかり中国観察から離れていた私にはこれはわかりません。いまでは若年層だけでなく、クリスマスプレゼントやクリスマスケーキのように、子供や親の世代も巻き込んだイベントになっているようです。

 それでふと私が留学していた1989年当時はどうだったか、そのころのメモを引っ張り出してみると、中国人学生たちは構内の一室でパーティーを開いています。……といっても社交ダンスを延々とするだけなんですけど(笑)。上海の繁華街に出てもクリスマス気分というのはありませんでした。

 同年春から夏にかけての民主化運動で学生たちがよく合唱した台湾の歌手の「跟着感覚走」という歌を収録したアルバムにはクリスマスイブを舞台にした楽曲もあるのですが、クリスマスと無関係に商店街などで流されていた記憶があります。

 私はといえば、12月22日から上海郊外の呉淞という街(黄浦江の河口近く)に出かけて泊まり込んでいて、昼間は周辺を歩いて色々観察して、夜は中国語に打ち込んでいました。

 短波ラジオの海外放送がルーマニアのチャウシェスク大統領が処刑されたと報じているのを聴きながら構文暗記に励んでいたことを思い出します。

 ――――

 そして24日。安宿をチェックアウトしてバスで大学に戻ると、留学生宿舎はクリスマスイブということで出払っていて、特に日本人学生の姿がまばらでした。日系のホテルあたりでクリスマスディナーみたいな感じだったのでしょう。宿舎受付のお姉さんに、

「イブなのに仕事なんて可哀想だね」

 と言うと、

「どうして?クリスマスなんて私たちには関係ないから」

 と、不思議なことを問うものだという表情をされました。中国人学生は有志が健康的に延々と社交ダンス。

 留学生宿舎に残っているのは淋しい気がして、私も自転車で市の中心部に出ました。南京路などの目抜き通りも、クリスマスということで特に何かをやっている風情ではありませんでした。

 帰りにガーデンブリッジ(外白渡橋)のところにあるホテルの日本食屋にしては割安な店でカレーを食べました。そのときそこの総経理の人とちょっと雑談しました。当時は天安門事件に対する西側諸国の経済制裁で、留学生宿舎の職員も給与の一部を強制的に国債で現物支給されたりしていました。こんな状況でやっていけるのだろうかという思いが私にはあったのですが、

「いや、大丈夫です。いまは苦しいですけど、また良くなります。中国はそういう国です」

 と、反右派闘争、大躍進、文化大革命といった政治運動を切り抜けてきたという60年配の総経理氏が微笑みを浮かべつつ自信ありげに答えてくれました。

 ――――

 その後の展開は総経理氏の言葉通りになりました。テレビなどで上海の街角を観る限り、都市部における物質的な豊かさは当時の比ではなく、むしろ香港や東京を引き合いに出して比べる方が適切なほどに思います。

 ただし、その過程で中国には超格差社会が出現し、回復不可能かも知れない環境問題をも背負い込む破目となりました。

 あのころはみんな貧乏だったからなあ、と思いつつ、何事かがあったとき、いわば贅沢に慣れた現在の都市部住民の「困窮」に対する耐久力はどれほどなのだろう、と考えてみたりします。現地感覚の欠落しているいまの私には、むろん想像することもできません。

 まあいいか。クリスマスに話を戻します。

 前述したネット上で「クリスマス排斥」を訴え話題を呼んだ10博士は、強烈な中華思想がベースにありながら、その脳裏にはきっとアヘン戦争や西洋列強の砲艦や、日清戦争で中国御自慢だった北洋艦隊が日本海軍の連合艦隊に苦もなくひねられた屈辱、それに八カ国連合軍とか租界での苦力とか上海は外灘の「偽りの正面」、そして南京大屠殺とか従軍イワノフといった情景が明滅しているのでしょう。

 いやー10博士のみなさん、お気持ちはまあ、わかります。なにせあの人口とあの民度ですから、
「何をやっても大躍進」で極端から極端へと振れるばかりで、ほどよさというものがありませんからね。「それクリスマスだ」というとわーっとクリスマス一辺倒になって伝統行事が一顧だにされなくなるのではないかという危惧は理解できます。とはいえ「中華」は漢人にとっての根本ですから、これが融けることはまずないでしょう。思い過ごしじゃないでしょうか。

 そもそも現在の中国にあって「中華」なんてプライドは邪魔でこそあれ、何のいいこともありません。もっと柔軟にならないと。それができないから日本にはできた明治維新が中国ではついに実現しなかった訳で。

 いっそ「中華」がもっと融けてしまわない限り、中国は次の段階には進めないのではないか、と思うんですけどね。




コメント ( 11 ) | Trackback ( 0 )





 12月14日のことですからニュースとはいえませんが、深セン市のスーパーで将棋倒し事故が発生しました。

 事故そのものは他愛もありません。スーパー「人人楽」前海店が客寄せのためのセールを行ったところ、予想外の人数が殺到して大行列。これが開店と同時に一気に店内へとなだれ込んで誰かが転んだのをきっかけにバタバタとドミノになったものです。幸い負傷者3名を出したのみで死者はなし。

 何でそんなに人が集まったかといえばこのセール、
時間限定・数量限定で鶏卵を1元3個で販売すると銘打ったものだからです。物価高を反映する話題ではないでしょうか。これを報じた『南方都市報』も記事本文は一面ではありませんが、大見出しを一面に掲げています。編集部も「卵を買うために将棋倒しが起きた」というこの事故を「物価高=家計のやり繰り悪化」を象徴するニュース、と捉えたのだと思います。

 ●『南方都市報』(2007/12/15)
 http://www.nddaily.com/H/html/2007-12/15/node_2792.htm

 ――――

 御存知の方も多いでしょうが、今年に入ってから中国の消費者物価指数(CPI)の上昇が止まりません。「警戒ライン」と当初されていた「3%」(前年同期比、以下同)を3月には早くも突破し、6月に4%台にはね上がると翌7月には5%台に乗って、8月以降は6%台をキーブ。そして最新統計である先月(11月)にはとうとう6.9%にまで登り詰めました。以下がその推移です。カッコ内の数字は今年の物価上昇の牽引役である「食品価格」の上昇率。


  1月:2.2% (5.0%)
  2月:2.7% (6.0%)
  3月:3.3% (7.7%)
  4月:3.0% (7.1%)
  5月:3.4% (8.3%)
  6月:4.4%(11.3%)
  7月:5.6%(15.4%)
  8月:6.5%(18.2%)
  9月:6.2%(16.9%)
 10月:6.5%(17.6%)
 11月:6.9%(18.2%)


 中国の統計というのは信頼度が低く、例えばGDP成長率などでは国家統計局が調べて発表する数字と各地から上がってくる数字の間に大きな差があったりして(記憶モードですが全国平均で数ポイントも違っていた筈)、事態を深刻視した中央が特別調査チームを組織して全国ツアーをやらせたりしています。

 上の数字は国家統計局によるものですが、どこまで信頼を置いていいのかはわからないものの、実情より悪い数字を発表することは考えにくいので、

「最低でもこのくらい物価が上がっている。現実はもっと厳しいかも」

 と考えておけばいいかと思います。

 ――――

 ちなみに1~11月の平均上昇率は4.6%。……と11月の統計まで出揃ったところで、国家統計局は通年でのCPI上昇率を、

「4.7%前後」

 と試算し、通年としては1996年以来の上昇幅になるだろうと予測しています。おやおや。

 ●「新華網」(2007/12/11/10:13)
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2007-12/11/content_7228966.htm

 何が「おやおや」かといえば、当の国家統計局長が11月末に発表した見通しを越えてしまったからです。


 ●「新華網」(2007/11/23/11:42)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2007-11/23/content_7131987.htm

 国家統計局の謝伏瞻・局長が11月22日、中国の消費者物価指数(CPI)が月間値で前年同期比6%前後の上昇というペースは今後もしばらく続くだろうとの見方を示した。今年通年のCPI上昇率について謝伏瞻は「4.5~ 4.6%台」との見方を示し、この状況を「依然として受け入れられるレベル」だとしている。




 要するに中国の物価上昇は国家統計局長からみて
「依然として受け入れられるレベル」を早くも越えてしまったことになります。

 さて、物価高の牽引役は食品価格だとしましたが、最新統計(2007年11月)でもその傾向に変化はなく、CPI上昇率6.9%を分類してみると(▼=下降)、


 ●総合(CPI上昇率)      6.9%

  食品価格           18.2%
  非食品価格           1.4%
  消費材価格           8.4%
  サービス関連価格        2.3%
  衣類価格            1.4%▼
  交通・通信価格         1.4%▼
  娯楽・文化用品・サービス価格  0.5%▼


 18.2%高という食品価格の突出ぶりが目につきます。毎日三度口にするものが際立って高騰していることがよくかわるかと思います。庶民にとっては痛いことでしょう。

 ――――

 その食品価格についての内訳は以下の通り。


 ●食品価格総合   18.2%
 
  穀物        6.6%
  油脂       35.0%
  肉類・肉類加工品 38.8%
  生卵       10.0%
  水産物       6.8%
  野菜       28.6%
  果物       12.9%
  調味料       4.0%


 肉類・肉類加工品の中で目を引くのが豚肉で、11月は56.0%高。消費者にとって物価高が痛いのはもちろんですが、中国はジニ係数が0.48にも達しようかという超格差社会。

 ●「新華網」(2007/12/11/10:05)
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2007-12/11/content_7228886.htm

 ●「新華網」(2007/12/11/11:38)
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2007-12/11/content_7229589.htm

 ●「新華網」(2007/11/15/13:24)
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2007-11/15/content_7079815.htm



 ●貧富の格差はすでに警戒水準、指導部は高度に重視すべし(新華網 2005/09/19/16:54)
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2005-09/19/content_3512402.htm

 現在の中国国民を収入や消費で5段階に分けた場合、最貧困層である総人口の20%が収入や消費で全体に占める割合はわずか4.7%。逆に最も金持ちな20%の収入・消費シェアは全体の50%に及ぶ。



 要するに
「超格差社会」であるために、「一人当たり平均」「1世帯平均」では実情を捉えにくいということです。そもそも統計自体に信が置けるかどうか、ということはとりあえず措くとして、一例として北京市が都市部住民3000世帯を対象に実施した調査をあげておきます。

 この調査によると、北京市都市部の
1世帯平均可処分所得は2万185元で前年同期比14%増、物価上昇分を割り引くと実質11.5%増となります。

 ところがこの3000世帯を収入を基準に五段階に分けて「格差」をみてみると、Eランク(収入が最も低い20%)の平均可処分所得は
9530元で前年同期比15.7%増。これに対しAランク(収入が最も多い20%)の平均可処分所得は3万7522元で同14.7%増。AランクとEランクとの間の格差は3.94:1にもなります。

 つまり大雑把にいえば現在進行している物価高は「残り8割」にとって正に深刻な、文字通り台所を直撃するもの。しかもその勢いが来年も続く見通しとされていますので、社会の抱えるある種のリスクの高まりは避けられないところでしょう。

 ●「新華網」(2007/12/14/16:06)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2007-12/14/content_7249392.htm

 ――――

 そのリスクの高まりがもはや無視できない段階に入っていることを裏付ける調査も発表されています。「中国社会形成分析・予測研究班」が1998年から毎年行っている調査で、中央党校で研修している庁クラス幹部を対象にしたアンケート。いわば地方当局の前線指揮官レベルが現今の中国社会の状況をどう捉えているかをみるためのものです。調査対象は170名で有効回答が154。

 まずは2007年の中国社会情勢についての全体評価について。「非常に良い」「割と良い」という回答が87.6%を占め、これは2005年(79.0%)、2004年(69.1%)を上回る数字です。……ところが、

「2007年の中国社会において存在する未だ解決されない深刻な問題は?」(4項目を選択)

 になると、深刻度ナンバーワンに
「物価高」が登場。「得票率」は実に42.1%にも達しました。過去の数字、例えば2003年(1.8%)、2004年(8.4%)、2005年(2.1%)などに比べると、ゴボウ抜きで突如トップに躍り出た観があります。

「社会情勢の安定度のバロメータは何?」

 という質問でも
「物価が安定しているかどうか」という回答が多数を占めた点が以前と比較した上での歴然たる変化。前線指揮官たちにとって「物価高」はこれまで1位と2位を定位置としていた「収入格差」問題と「汚職」問題を差し置いて、最も懸念されるテーマになっていることが明らかになりました。

 ●「新華網」(2007/12/14/07:07)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2007-12/14/content_7246042.htm

 ――――

 以前にも指摘しましたが、「汚職」というのはそれで潤う人と迷惑する人がある程度限定され、案件ごとに社会全体がグラグラ揺れるという性質のものではありません。そういう「局地戦」でも例えば都市再開発や農地収用問題にまつわるトラブルで連日のように暴動が頻発しています。

 ところが、地方幹部がいまやそうした「汚職」や、

「仇富心理」(金持ちへの反感)

 という言葉が定着するほど深刻になった「貧富の格差」よりも、「物価高」がまず懸念されると回答しているのです。これは「局地戦」ではなく、改めて大雑把にいえば「残り8割」の住民が迷惑を被る問題です。農村暴動のようにすぐ火がつくという可燃度の高さこそありませんが、もしいったん火がついてしまえば、「局地戦」とは比較にならないほどの炎上ぶりをみせることになるかと思います。

 ――――

 ……ちょっと時間的余裕がないので本日はここまでで御容赦の程を。主題に入る前にとりあえず現状紹介ということで。「物価高」が中国社会の不安定要因として急速に台頭し、いまや「貧富の差」「汚職」などよりも懸念されている問題だということは御理解頂けたかと思います。

 これはひょっとすると、価格改革によってスーバーインフレが発生して趙紫陽・総書記(当時)が経済運営の主導権を手放さざるを得なくなり、保守派による引き締め政策に一転した1988年以来の事態かも知れません。

 ひとつ余計なことをいうと、この保守派の台頭に懸念した改革派の政治家や知識人が挽回を図って東奔西走したことが、翌1989年の民主化運動~天安門事件が生起する上での重要な伏線、いわば舞台づくりとなります。

 ハーフタイムです。m(__)m。


「中」に続く)




コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )





 年末に予定されているといわれる福田首相の訪中を控えて、中国が台湾問題でにわかにピリピリし始めました。

 日中首脳会談では経済・環境・エネルギー問題などが議題となるそうですが、中国側としてはそんなことより、むしろ
「台湾」についてより一歩踏み込むよう日本側に対して強く求めてくるかも知れません。

 「経済・環境・エネルギー」については基本的に「共同文書を勝手に一部削除」の日中ハイレベル経済対話を追認する形になるのではないかと思います。焦点があるとすればその「削除」部分の人民元切り上げと環境問題への中国の取り組みにについてですが、中国側は「削除」という形で反発を示しただけに、日本側の「共同文書」の線まで持ち込めるかどうかは疑問。

 加えて世界銀行がロバート・ゼーリック総裁の訪中に合わせるかのように「世界経済統計」を発表、購買力平価(PPP)ベースでのGDPにおいて、中国は市場為替レートでの統計に比べてGDPが40%も少ない数値となったとのこと。人民元切り上げ慎重論を主張する中国にとっては追い風となりそうです。逆に農産物対日輸出問題などで日本が切り込まれるかも知れません。いまは福田首相が余計な御祝儀を持っていかないよう祈るばかりです。

 ●中国GDP、購買力ベース統計で40%減でも(Record China 2007/12/19/11:50)
 http://www.recordchina.co.jp/group/g13804.html

 ●世銀総裁が北京に御祝儀(蘋果日報 2007/12/19)
 http://www1.appledaily.atnext.com/

 ●日本の対中投資27%減…1~11月、税制・労働環境が悪化(FujiSankei Business i. 2007/12/17)
 http://www.business-i.jp/news/china-page/news/200712170031a.nwc

 ●中国野菜、輸入3割弱減 安全性への懸念広がる(共同通信 2007/12/17/21:15)
 http://www.47news.jp/CN/200712/CN2007121701000590.html

 ――――

 で、中国がむしろ気にしているのは台湾問題ではないかという話。まずは来春に行われる台湾次期総統選挙に向けて与党・民進党(台湾独立派)が押し立てた候補者の謝長廷・元行政院長(首相)が12月16日に来日。李登輝・台湾前総統と同じく京都大学に留学経験のある知日派で、来日してからも日本語でスピーチを行ったりしています。

 ●台湾・総統候補の謝氏、日台関係強化に意欲 来日講演で(asahi.com 2007/12/16/21:48)
 http://www.asahi.com/international/update/1216/TKY200712160143.html

 ●台湾与党総統候補の謝氏、陳路線を継承・京大で講演(NIKKEI NET 2007/12/17/07:03)
 http://www.nikkei.co.jp/news/past/honbun.cfm?i=AT2M1600C%2016122007&g=G1&d=20071217

 ●外国特派員協会で講演 台湾総統候補の謝長廷氏(MSN産経ニュース 2007/12/18/18:41)
 http://sankei.jp.msn.com/world/china/071218/chn0712181841001-n1.htm

 ●台湾:総統選は安全保障など争点 与党・民進党の謝候補(毎日新聞 2007/12/18/19:47)
 http://mainichi.jp/select/world/asia/news/20071219k0000m030071000c.html

 日本での一連の講演において謝氏は、

「台湾は事実上、主権独立国家である」

 としたほか、中国国内メディアの報道によると、

「私たちはすでに中国人ではない。正真正銘の台湾人だ」
「『一つの中国』は断じて受け入れられない」

 と語ったとしています。少なくとも
中国側はそう受け止めているということです。また日本の政治家と会見するなど、日本との関係強化に積極的であることにも中国としては神経質にならざるを得ないでしょう。

 ●「人民網」(2007/12/17/12:57)
 http://tw.people.com.cn/GB/14812/14875/6663622.html

 ●「環球網」(2007/12/18/18:54)
 http://taiwan.huanqiu.com/news/2007-12/36538.html

 ――――

 この「政治家との会見」について、見落としもあるので日本側で報道されたかどうか私はわかりませんが、中国側が無視できないであろうニュースがひとつありました。謝長廷氏が京都滞在中の16日夜、その
宿泊先を麻生太郎・元外相が密かに訪れて約40分間にわたり密談を行ったというものです。

 謝氏は
「プライベートのことだから」と具体的なコメントは避けましたが、「密会」自体は否定していません。このニュースは台湾では大きく報じられ、中国国内メディアもそれを転載する形でニュースにしています(上の「環球網」の記事など)。

 ●中央通信(2007/12/17/15:29)
 http://tw.news.yahoo.com/article/url/d/a/071217/5/q33r.html

 ●東森新聞網(2007/12/18/00:17)
 http://tw.news.yahoo.com/article/url/d/a/071218/17/q46l.html

 ●TVBS(2007/12/18/07:27)
 http://tw.news.yahoo.com/article/url/d/a/071218/8/q4me.html

 麻生・元外相はいうまでもなく小泉政権下ではさりげなく中国を挑発するなどしたファンタジスタ。安倍政権下では
「自由と繁栄の弧」「価値観外交」を推進した中国にとっては全くもって目障りな人物です。しかも自民党総統選に立候補するなど将来の宰相とも目される現役の大物政治家。その言行から「親台派」としても知られており、この「未来の日台首脳会談」に中国はピリピリしない訳にはいきません。

 ちなみにローゼン麻生閣下の外相時代における華麗なるパフォーマンスの数々はこちらで御堪能下さい。楽しめます。

 ●ファンタジスタ。・上(2005/11/04)
 ●ファンタジスタ。・下(2005/11/04)
 ●ファンタジスタはボール持ち過ぎ?それともやっぱり政争の香り?(2005/11/14)
 ●外相の妄言?なぁに、かえって免疫力がつく。(2006/02/06)
 ●ほーら外交部が電波モードに。やっぱ制服組でしょ。・下(2006/03/12)
 ●ファンタジスタが新ネタ連発、そしていよいよ神光臨か?(2006/03/16)

 ――――

 そして、日本からの最大のピリピリが最後にやってきました。これですね。


 ●海自イージス艦、SM3発射=ミサイル迎撃試験成功-ハワイ沖(時事ドットコム 2007/12/18/09:06)
 http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2007121800120

 防衛省は18日、海上自衛隊のイージス艦「こんごう」(基準排水量7200トン)がハワイ沖で17日午後(日本時間18日午前)、弾道ミサイルを撃ち落とす海上配備型迎撃ミサイル(SM3)の発射試験を実施、迎撃に成功したと発表した。SM3の搭載、発射は米国以外では初めて。

 SM3は、発射された弾道ミサイルを大気圏外で迎撃。日本のミサイル防衛(MD)の要となり、防衛省はSM3が撃ち漏らした際に地上で迎撃する地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)とともに、配備を進めており、来年度以降、3隻のイージス艦に毎年1隻ずつ搭載する。




 解説はこちらを。

 ●MD発射成功 弾道ミサイルの脅威へ対抗(MSN産経ニュース 2007/12/18/23:31)
 http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/071218/plc0712182331014-n1.htm

 さて、これでなぜ中国がピリピリするかというと、台湾有事に大きく影響しかねないからです。中国による台湾武力侵攻に際して中国はまず台湾に対するミサイル飽和攻撃を第一撃として想定しているとされています。ところが日米は台湾有事への介入を日米安保「2プラス2」で表明。仮にそうなったとき、このMDを使われると中国としては台湾占領作戦が出だしから狂いかねません。

 今回のMD発射実験について中国がただなならぬ関心を示していたのは、事前から関連報道を行い、前日にも改めて報じ、さらに実験成功のニュースを新華社と中国新聞社が速報したことからもうかがえます。私は零戦ファンではありますが軍事には素人です。ミサイル迎撃システムなのですからあくまでも防衛戦力だというのに、中国がそれを警戒し脅威と捉え、軍拡の口実にする理由が理解できません。日本にミサイルをぶち込むシナリオでもあるのでしょうか(笑)。

 ともあれ台湾。日本のミサイル迎撃実験成功に対しては、中国外交部も即座に報道官談話を発表しています。例によって記者の質問に報道官が答えるという形式なのですが、

「日本がミサイル迎撃実験に成功したことは台湾海峡情勢にとって脅威となるものか?」

 と「記者」はいきなりピンポイント(笑)。これに対し秦剛・副報道局長は、

「日本の動きがこの地区の平和的安定に寄与するよう望む」
「台湾問題は中国の内政であり、中国は他国がいかなる形であろうと台湾の一件に介入することに反対する」

 とお決まりのコメントで返しています。ともあれMDでまず気になるのは台湾問題への影響(あと日米同盟の強化)だということがよくわかりますね。

 ●「新華網」(2007/12/18/19:00)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2007-12/18/content_7275149.htm

 ――――

 とはいえ、報道官談話は「お決まりのコメント」であって、基本的には日本のMD実験成功をことさらに騒ぎ立てることなく、抑制された印象です。これが胡錦涛政権のスタンス(建前)といったところかと思います。福田首相訪中に際して融和ムードを乱すまい、といったところでしょう。

 もっともより仔細にみると、MDによって台湾問題への影響を受けるのは胡錦涛政権ではなく、軍事的恫喝や侵攻作戦を実施する立場にある軍部、ということになるでしょう。

 実はこの軍部筋がMD実験成功を受けてことさらに騒ぎ立て始めているのです。

 ●日米のMD合作は「平和」憲法が禁ずる集団的自衛権に違反している(新華網 2007/12/18/16:13)
 http://news.xinhuanet.com/mil/2007-12/18/content_7273966.htm

 ●日米共同MD実験は東アジアの戦略的バランス安定に対する新たな脅威だ(新華網 2007/12/18/21:51)
 http://news.xinhuanet.com/mil/2007-12/18/content_7276474.htm

 集団的自衛権は単に日本政府による憲法解釈の問題であって、別に「違憲」ではないと思うのですが。……ということは相手も先刻ご承知なのでしょうが、この世の中は往々にして大声を出した方が勝つものです。むろん、対内的な宣伝工作でもあるでしょう。

 それからこれは軍部の意向なのか、あるいは胡錦涛政権の本音を流すよう指令されたものなのかはわかりませんが、外交部の代わりに香港の親中紙がやはり脅威だ脅威だと騒いでいます。これに親中紙ではないものの『明報』も足並みを揃えています。MD実験成功は香港各紙が報じてはいますが、これを「脅威だ脅威だ」と騒いでいるのは親中紙を除けば明報だけです。恥を知れ。

 ●日本艦のMD実験、狙いは台湾海峡?(大公網 2007/12/18)
 http://www.takungpao.com/news/07/12/18/YM-838984.htm

 ●日本艦がMD実験に成功(明報 2007/12/19)
 http://hk.news.yahoo.com/071218/12/2lkk1.html

 ●ミサイル防衛の名を借りて台湾問題に介入の恐れ 東アジアの戦力的平衡を崩す(明報 2007/12/19)
 http://hk.news.yahoo.com/071218/12/2lkk2.html

 ●日本がMD実験に成功(香港文匯報 2007/12/19)
 http://paper.wenweipo.com/2007/12/19/GJ0712190003.htm

 ●日米のミサイル迎撃システム強化はアジアのバランスを崩す(大公報 2007/12/19)
 http://www.takungpao.com/news/07/12/19/YM-839209.htm

 ●日本のMD実験は中国・北朝鮮への牽制(大公報 2007/12/19)
 http://www.takungpao.com/news/07/12/19/YM-839210.htm

 ――――

 とりあえずいえることは、福田首相訪中に際して神経質になった軍部が胡錦涛政権にあれこれ口出しをしてくるかも知れない、ということです。毎度毎度のことではありますが、台湾問題について中国の主張に同調するよう求めてくるのはお約束として、その姿勢がより強いものになるかも知れません。なるかどうかは胡錦涛の指導力次第でしょう。

 日本としてはこれまで公式文書で再三表明しているように、台湾に対する立場は「日中共同声明」に依拠している、ということになります。露骨にいえば、

「中国側が『台湾は中国の一部』と主張しているのは承知しているが、日本はそれを正式には承認しない」

 というものです。

 今月(12月)初めの高村外相訪中時にも日本側はこの立場を改めて表明しています。ただ台湾問題に対する中国のピリピリ感は当時に比べてかなり高まっているものと思われます。福田首相にはこれまで通り、

 ●日本側の立場は『日中共同声明』にある通りだ。
 ●台湾海峡をはさむ双方のいずれもが一方的に現状を改変しようとすることに反対する(=中国が動くのもダメ)。
 ●台湾独立を支持しない(=反対もしない)。

 という姿勢を明確に示してもらいたいところです。




コメント ( 5 ) | Trackback ( 0 )



« 前ページ