日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 私はいつも午前1時から記事漁りを始めます。現地時間だと日付が変わる時刻なので、この時間からとりかかると前日のニュースをまとめて拾えるから楽なのです。香港-台湾-中国の順に回るのですが、ギャップの激しさに茫然とすることがあります。

 もちろん「香港・台湾vs中国」です。今回の主題でいえば反日報道への熱の入れ方、ということになるのですが、記事の分量もさることながら、畳み掛けるような一種の執拗さが中国国内メディアにはあります(笑)。11月23日付を扱った今回は分量に加えて憎悪の混じった執拗さのようなものに辟易しました。

 中国国内メディアの日本関連報道は前回(11月22日付)よりひと回り増えています。即物的な言い方になりますがA4に9ポイントで詰め込んでも16頁あります。本数は面倒だから数えていません。むろん全てが反日記事という訳ではなく、例えばプーチン訪日に絡んだ話題で、

「領土問題がネック、日露関係は前途多難」
「中国との資源争奪戦、日本に勝機なし」

 といった趣旨の記事が出て、見下したような態度で日本にダメ出ししたりしているのですが、これは反日記事とは別物でしょう。日本人が読めば気分が悪くなるでしょうけど。

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 今回の反日報道の洪水は計画的に仕掛けたというより、「気付いたらそうなっていた」というような行き当たりばったりの観を拭えません。当初は抑制され散発的な動きに限定されていた反日報道が、APECの途中からガラリと変わって主流というか奔流となり、外交部報道官の定例記者会見を含め、以前とは一変して大量の反日記事が飛び出してきたという格好です。

 当初の散発的な反日は「靖国参拝」への対処が甘過ぎる、とするアンチ胡錦涛諸派連合の抵抗と私はみていたのですが、これが本流かつ奔流に一変したのがなぜかは謎のままです。主導権が胡錦涛総書記の手から奪われたのか、小泉首相の独演会などによって胡錦涛自身がマジギレしたのか。

 ……ともあれ16日から22日までの一週間は、解き放たれたかのように様々な反日記事であふれ返った観があります。胡錦涛の御用新聞で従来は反日気運が高まると常に「火消し役」に徹していた『中国青年報』が逆に「反日」を率先しているかのような印象がありました。

 戦略的というよりは脊髄反射のような勢いで、しかも「火消し役」不在の「反日」で突っ走って大丈夫なのだろうか、とは前回指摘した通りです。

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 上述したように、きのう(23日)も「反日」の勢いは止まりません。ただ印象として、標題にあるように反日報道が「シューソク」しつつあるように思えます。終息ではなく集束、と取りあえず言っておきましょう。具体的には改憲問題です。

 ●自民50年「改革の党」強調、新憲法草案を発表(読売新聞 2005/11/22/13:54)
 http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20051122i104.htm

 22日もこれで騒いでいた中国メディアは、翌23日もこのネタを掴んで放しませんでした。もちろん「自衛軍創設」にピンポイントです。22日が速報に近い内容で急いで取り揃えたのに対し、23日の報道は腰を据えて特集を組んできたというところでしょうか。

 前日は「新華網」(国営通信社の電子版)の大見出しを飾ったこの話題、それが今度(23日)は「人民網」(『人民日報』電子版)トップページのトップニュースとして特集されました。これは北京の地元紙『新京報』の特集をベースに署名論評を加えた形です。

 上海市の「解放網」(『解放日報』系列紙の電子版)、広東省の「南方網」(『南方日報』系列紙の電子版)も足並みを揃えています。反日基地外の『環球時報』も報道&論評で存在感をアピールするようになっています。真打ち登場です(笑)。

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 ただちょっと不思議なのは、反日報道のほとんどが改憲問題に力点を置いていることです。前回もふれましたが、22日の外交部報道官記者会見で大きく扱われた麻生外相の遊就館発言、

 ●「遊就館」戦争美化でない 事実を展示と麻生氏(Sankei Web 2005/11/21/15:18)
 http://www.sankei.co.jp/news/051121/sei051.htm

 これに食い付くメディアが少なかったのが私には意外でした。せいぜい改憲問題の中で言及される程度で、私がみた範囲でいえば、単独で取り上げたのは「新華網」が転載したマカオ特別行政区の『澳門日報』だけです。

 ●『澳門日報』社説(2005/11/23)
 http://news.xinhuanet.com/world/2005-11/23/content_3823974.htm

 憲法問題は確かに大ネタではありますが、まだ新憲法草案を自民党が発表した段階でしかありません。それよりも10年前なら引責辞任間違いなしの内容といえる麻生発言、これは歴史認識の問題で中共にとって絶対譲れない部分に絡んできている由々しき事件です。

 外交部報道官の会見でも「靖国参拝」「遊就館」「靖国史観」といった固有名詞を引き出したほどですが、メディアにおいては意外に扱いが小さい。

「自衛軍創設>>麻生発言」

 ……という印象なのです。

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 自民党の新憲法草案については今度の外交部報道官会見で言及されることになるのでしょうが、どういう形で語られるかに注目したいところです。「自衛軍創設>>麻生発言」という優先順位には制服組のニオイがしないでもありませんので。

 肝心の『中国青年報』はといえば、今日付(2005/11/24)で反日基地外との対談シリーズが最終回を迎えています。相変わらずのノリです。ただ今回は「中日関係の改善は可能なのか?」というタイトルになっており、あるいはいつものキャラ(火消し役)に戻って「シューソク=終息」を狙っているのか、と勘繰りたくなる物腰です。隣に松阪牛がいかに高価で手をかけて飼育されているか、という脱力系の記事が並んでいるのも気になります(笑)。

 ●反日対談(中国青年報 2005/11/24)
 http://zqb.cyol.com/gb/zqb/2005-11/24/content_95889.htm

 ●松阪牛(中国青年報 2005/11/24)
 http://zqb.cyol.com/gb/zqb/2005-11/24/content_95879.htm

 とはいえ一方でなお憲法問題の特集や記事がどんどん出ていますし、外交部報道官会見の内容にもよります。『解放軍報』(人民解放軍機関紙)あたりから「自衛軍創設」に関する署名論評が出る可能性もあるので、あと数日様子をみる必要がありそうです。

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 軍部の話になったところで最後にブッシュ米大統領の訪中にふれておきたいのですが、例の「胡耀邦生誕90周年」イベントを骨抜きにされた胡錦涛の頽勢が、ブッシュ訪中でより強まったように私は感じています。少なくとも指導力強化の助けにはなっていないでしょう。中共は自画自賛していますが、実質的な成果は不十分。反対派からブーイングが出ていてもおかしくない状況だと思うのです。

 とは、ブッシュが外遊直前に中共の仇敵たるダライラマと会談していることがまずあります。続いて京都では日本の成熟と日米同盟の絆を謳い上げ、台湾の民主化を礼讃してもいます。舐められているかどうかはともかく、中共にしてみれば大事にされているとは感じないでしょう。

 日本でそれだけ騒いだのだから中国では大人しくなるだろう、と思いきや人権問題や民主化などで強く切り出され、日曜礼拝への参加というパフォーマンスで「宗教の不自由」について当てこすりまでされる始末。一方でライス国務長官には軍拡路線に懸念を示されてもいます。来春の胡錦涛訪米ということになったものの、国賓扱いになるかどうかはまだ未定。さらにブッシュはそのあと訪問したモンゴルでも改めて同国の民主化を賞賛しています。

 加うるに面子の問題があります。中国を訪問するだけではなく他国にも寄り道をしたこと、しかも中国より先に日本を訪問していること。これは悔しいでしょう(笑)。

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「使えないな胡錦涛は」

 という批判が出ても不思議ではありません。実際に軍主流派が党中央による自画自賛とはひと味違う署名論評を『解放軍報』に掲載したことは以前紹介した通りです。また、米中首脳会談でブッシュにかなり押し込まれたことを裏付けるかのように、『人民日報海外版』(2005/11/22)の一面に署名論評が出てもいます。

 ●21世紀における中国共産党の方向性(人民日報海外版 2005/11/22)
 http://politics.people.com.cn/GB/30178/3877008.html

 冒頭で米中関係の重要性にふれたあと、中共政権が独自の路線を歩むこと、でもそれはあくまでも平和的な台頭(和平崛起)であり、対外伸長や国内での専制強化を図ったりはしない。……という、何やら米国はじめ国際社会に対する一種の弁解、あるいは改めての姿勢表明といった内容になっています。作者は胡錦涛のブレーンである鄭必堅・元中央党校常務副校長です。疑念を解かんとするようなこの文章は、胡錦涛がブッシュを納得させるに足る何事かを示せなかったことを暗示しています。

 それでもさすがに中共と思わせるのは、この署名論評の後段において国家としての目標を掲げ、

「第一に国家の主権及び領土の保全、第二に発展と近代化の実現」

 としていることです。発展と近代化を後回しにしても台湾を確保する、尖閣諸島を奪回する、という意味でしょう。弁解めいた措辞を並べつつも米国をさり気なく牽制しています。これだから疑念を持たれてしまう、ということにもなるのですが(笑)。



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