日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 いやー、久しぶりで凄みのある丁々発止にゾクゾクしました。

 最近こういうのはなかなか目にする機会がないもので。

 ともあれ、政争感あふれる展開になってきたな、という印象です。

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 さて、政争といえば胡錦涛派と反胡錦涛諸派連合……といつも書いているのですが、中文の方で私が使っている
「擁胡同盟」(胡錦涛擁護同盟)と「反胡連合」(反胡錦涛諸派連合)の方がコンパクトにまとまっていますし、ニュアンスも実態に近いように思うので、今回はそちらを使わせて頂きます。

 で、今回の話。「擁胡同盟」にとって頭の痛い大将の不在……胡錦涛・国家主席の外遊も終わりに近付いたところへきて、「反胡連合」との正面衝突ともいえるぶつかり合いが発生しました。一昨日、昨日の「新華網」(国営通信社電子版)や「人民網」(『人民日報』電子版)など主要メディアのちょっとした報道を目にして戦慄された方は同好の士です(笑)。

 「反胡連合」は胡錦涛の外遊中を狙って「擁胡同盟」に攻勢をかけるのではないか、とは以前から当ブログが予測してきたことですが、それが現実のものとなったのです。

 ●蠢動。(2006/04/14)

 ……でそれについて詳しく書きましたが、胡錦涛外遊が近付くにつれ「反胡連合」に政治的攻勢発動の気配が濃厚となりました。反日活動家の代表格である童増の活発な動きや『水滸伝』『西遊記』を日本企業が商標登録しようとするのに組織的反発が生じつつあったことから、今年も「反日」を掲げるのかと私は思いました。昨年のように大衆を動員してしまうと、この悪化した社会状況下でどうなるかわからないので、中南海(日本でいえば永田町?)限定の「反日」を踏み絵とした綱引きです。

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 ところがそれが本格化する前に、上海閥が存在感を示し始めました。これも前掲エントリーで既報した通りです。

 ●江沢民の母校視察(上海交通大学創立120周年記念式典への参加)
 ●一度は敷かれた報道統制をぶち破って江沢民の母校視察が中国国内でも報じられる
 ●同日に上海閥とされ重病説の流れる黄菊・党中央政治局常務委員の健在を示す報道
 ●江沢民が母校に関する著作集を出版することに
 ●出版を記念して陳良宇(上海市党委書記)以下、上海市指導部の主要メンバーが出席しての座談会開催
 ●上海市政府が中国人民銀行(中央銀行)と共同で開催した一般市民向けの金融に関する展示会でトウ小平氏の15年前の発言が再び大きく紹介され、話題を呼ぶ
 ●呉邦国が「上海は中央の方針に従ってよくやっている」と上海市の現状をベタ褒め

 ……といった、僅々2週間ばかりの間に繰り出されたこれら連続技ともコンボともいうべき一連の流れは、ある意思、ある主題のもとに発動された政治的攻勢といっていいでしょう。

 「トウ小平氏の15年前の発言」が何を意味するかといえば、大袈裟にいえば様々な格差の是正を織り込んでの「調和社会」実現を目指す胡錦涛への挑戦です。

 「条件のあるものから先に豊かになっていい」とするトウ小平の「先富論」は、胡錦涛の掲げる「格差是正」とぶつかり合うことになります。江沢民時代まで「先富論」をタテに発展し利権をも手に入れた沿海部の大都市など従来型改革派(これまでの改革による既得権益層)は当然ながら今後も「先富論」で突っ走りたいでしょう。要するに改革深化を呼号する胡錦涛にとって、最大の抵抗勢力は改革派(ただし従来型)なのです。

 ――――

 その従来型改革派の代表格といえるのが上海市。その上海市政府がトウ小平を掲げて「まだまだ先富論で走るぜ」という過激な意思表示をする。するとそこへ党の最高意思決定機関(党中央政治局常務委院会)のメンバーであり上海閥とされる呉邦国(元上海市党委書記)が間髪を入れずに「上海はよくやっている」と合いの手を入れた。

 ……この時点で、今回の「反胡連合」による政治攻勢の焦点のひとつが明らかになりました。中央の統制力が弱いのをいいことに、各地方勢力が中央に対しては面従腹背で地元の経済発展に邁進する、ということです。一方の「反日」については目立った動きが出ていませんが、これは降って湧いたかのような「竹島問題」の帰趨を眺めつつ動きを決めていこう、というものかも知れません。

 「反胡連合」のこうした動きを受けて立つ「擁胡同盟」はといえば、胡錦涛が3月に提唱した
「社会主義道徳観」(八栄八辱=8つの誉と8の恥)をメディアを動員して大々的に宣伝し、その関連活動を各地で開催させることに専念しているという観がありました。専念することが「反胡連合」への対策なのです。

 ●社会主義栄辱観――ホントに効くのかこの薬?(2006/04/18)

 「反胡連合」の不穏な動きは圧倒的な「社会主義栄辱観」キャンペーンで押し流してしまおう、というところでしょうか。八栄八辱、並べて眺めてみると小学生相手の道徳教育めいていて馬鹿らしく思えるのですが、善悪の基準がかくも素朴で明快なだけに、拡大解釈などのアレンジも容易です。政治の世界ではそれをすることで政敵を陥れレッテルを貼って失脚させることもできるでしょう。

 ――――

 ともあれ、「擁胡同盟」はこの「社会主義栄辱観」だけを頼りに胡錦涛の不在期間中をしのいできました。ところが先日、第1四半期の経済統計が出て「擁胡同盟」は愕然とすることになります。前年同期比でみるとGDP成長率は10.2%増、固定資産投資は27.7%増。「適宜に減速しつつ経済をソフトランディングさせて持続的安定的成長を実現する」という胡錦涛のシナリオがもろくも崩され、あたかも「先富論」を振りかざした沿海部の地方勢力が勝手に突っ走り、内陸部も負けじと走った状況が歴然としているからです。

 どの地方もよそにあるものを自分のところでも造ろうとする。川上から川下までひとつの産業体系を地元で擁し、自己完結する形を実現しようとする。必要はないけど見栄えのいい建物や道路やスタジアムといったものを建設しようとする。……どこもかしこもそれをやる訳ですから、重複投資となって限られた資源の有効利用が不可能になります。無駄な訳です。

 ところが
「無駄なプロジェクトでもGDP成長率アップには貢献=幹部としての業績評価アップ=いいねーそれ」というGDP信仰ともいうべき従来型の思考がまだ根強く、実際にGDP(規模)よりも効率重視という胡錦涛の「科学的発展観」に基づいた幹部の評価基準が完全に浸透していません。

 こうなると「擁胡同盟」も「社会主義栄辱観」ばかり唱えている訳にもいかず、中央は主要メディアを使って慌てて「過熱」「過熱」と騒ぎ立て、各地方政府のプロジェクトを再検討する調査チームを全国に派遣するなど対策に乗り出しました。しかし昨年夏以来の闇炭鉱や炭鉱絡みの官民癒着といった問題の是正が必ずしも順調に進展していないことからみて、中央からの特使も面従腹背でかわされてしまうかも知れません。

 ――――

 そうした時期、胡錦涛も最後の行程であるアフリカツアーを終えようかという矢先、上海閥が新たに一撃を繰り出したのです。4月27日、江沢民が『社会主義市場経済を論ずる』という本を新たに出版するというニュースを新華社が配信。

 ●「新華網」(2006/04/27/16:42)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2006-04/27/content_4482392.htm

 さらにその概要が詳細に書かれた長文の記事が配信されました。

 ●『解放軍報』電子版(2006/04/27/22:09)
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-04/27/content_464702.htm

 ……と、「擁胡同盟」である筈の『解放軍報』までが記事を掲載する始末。相当な圧力がかかったものと思われます。ただ、『解放軍報』は翌日からリンク切れになっているのですが(笑)、紙面には掲載されたようです。

 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-04/28/content_464972.htm
 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-04/28/content_464976.htm

 この『社会主義市場経済を論ずる』は江沢民が中共を仕切っていた時代の関連発言や著作をまとめたもので、当然ながら「科学的発展観」「調和社会」といった言葉が出てくる前の時代です。当然ながら従来型改革がよしとされていた時代であり、トウ小平の「先富論」が錦の御旗となっています。実際に、この本の中でも「先富論」が引用されています。

 そういう胡錦涛型改革路線に異議申し立てをしたともいえる内容の本を、江沢民というビッグネームによって出版する。上海閥を主力とする「反胡連合」の渾身の一撃というか最終兵器というか……少なくとも「擁胡同盟」はそうみたのでしょう。こちらも押っ取り刀ながら気魄の切り返しを示します。

 ●胡錦涛「社会主義栄辱観の牢固たる樹立を」(新華網 2006/04/27/15:36)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2006-04/27/content_4482066.htm

 また「八栄八辱」かい、と言われそうですが、まあその通りです。ただしこちらもビッグネームである胡錦涛直々の重要講話。……もっともこれは3月4日に発表されたもので、要するに胡錦涛が初めて「社会主義栄辱観」を提唱した記念碑的文章です。江沢民の新著に対して、胡錦涛とはいえ「社会主義栄辱観」を改めて持ち出すというのは新鮮味に欠ける嫌いはあります。ただ「反胡連合」と「擁胡同盟」がいずれも切り札を持ち出して正面衝突した、というのはなかなか見ることのできる光景ではありません。

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 この正面衝突、「擁胡同盟」側の『解放軍報』まで江沢民の新作発行のニュースを掲載させられたところに「反胡連合」がやや優勢であることがうかがわれます。少なくとも掲載圧力に屈した訳ですから。……さらに翌4月28日には、胡錦涛の御用新聞ともいうべき本丸メディア『中国青年報』(2006/04/28)までが江沢民の新作発行を報じているのです。やはり尋常でない掲載圧力がかかったというべきでしょう。

 http://zqb.cyol.com/content/2006-04/28/content_1372496.htm

 何と胡錦涛メディアは全面崩壊?……かと思えばさにあらず。『中国青年報』はこの記事の上に、つまり序列でいえば江沢民の記事より高い位置に、上述した胡錦涛の「重要講話」をバーンと掲載しているのです。大将は不在なれど、留守番組が意地を示した、というところでしょう。

 http://zqb.cyol.com/content/2006-04/28/content_1372486.htm

 『中国青年報』紙上のこの一騎討ちは実に見応えのあるドラマといっていいでしょう。私などは記事一覧を見ているだけでゾクゾクしてしまいました(笑)。

 http://zqb.cyol.com/node/2006-04/28/zgqnb.htm

 江沢民の新著発行の記事を掲載させられた『解放軍報』(2006/04/28)も、同じ紙面の1面にやはり胡錦涛の「重要講話」を置いています。

 http://www.chinamil.com.cn/site1/xwpdxw/2006-04/28/content_464970.htm

 本丸まで攻め込まれた「擁胡同盟」が侵入してきた「反胡連合」と激しく斬り結び、鍔迫り合いとなりながら「やらせはせん!これ以上やらせはせん!」と叫んでいるかのようです。

 ちなみに『人民日報』(2006/04/28)も同じような体裁になっているのですが、こちらは「擁胡同盟」が守り切ったのかどうかは微妙なところです。同紙と新華社は両派による争奪戦が展開されている最中、なのかも知れません。

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 今後、事態は胡錦涛の帰国を待って動くことになるでしょう。今回の上海閥による一連の動きは正攻法ともいうべきもので、「反日」の旗を掲げて別の政治目的を達成しようというような昨春の主導権争い(反日騒動)とは異なり、「中央vs地方」「大局的見地vs地元優先視点」という利害関係の対立軸をそのまま前面に押し立てています。

 昨春は胡錦涛の対日融和路線への非難、新防衛大綱、李登輝氏訪日、尖閣諸島灯台国有化、日米2プラス2といった燃料が続々と投下された挙げ句の反日騒ぎでしたが、今年はそういった可燃度の高い話題に乏しいためか、健全にも?内政で争う形となっており、「竹島問題」の行方を見定めるのが先、ということなのか、「反胡連合」に属するとみられる電波系対外強硬派の動きはまだみられません。「中国国内で対日賠償請求訴訟を」といった童増らの動向が最近目立たないのも同じ理由でしょうし、また胡錦涛が帰国しない限りは事態が進まないという要因もあるのかも知れません。

 「擁胡同盟」も「社会主義栄辱観」だけでは押し切られそうです。「反日」の動きがなければ、当面は各地方当局の投資抑制、生産過剰気味の業界への荒療治、「新農村建設」という胡錦涛政権の目玉政策に名を借りた無駄な再開発や土地強制収用の防止などで、どこまで攻め込むことができ、中央の方針を徹底させられるかがポイントとなりそうです。


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 中共政権というのは考えてみればすごいものです。御存知の通り一党独裁。政府の上に党が君臨していて、法制あれど法治なし。……これは人治という一面と、たとえ非合法でも党が「政治的に善」と判断すれば無罪放免という一面があります。無許可デモが頻発した昨春の反日騒動がその好例ですね。厳密にいうとあの騒動に対する政治的な善悪の評価(定性)は出ていないのですが、少なくとも「政治的に悪」と断定されていないので破壊騒乱分子どももお咎めなしでした。

 政府の上に党が君臨している証左をもうひとつ挙げるなら人民解放軍ですね。あれは国家の軍隊である以前に中国共産党の私兵であり、「党中央の指導を絶対的なものとして従う」と公言してはばかりません。国と党から違う命令が届いたら躊躇することなく党の命令を優先するのです。

 そういう政治色を薄めて国軍色に塗り替えていこうという動きが軍内部にはあるようですが、これは「軍の国軍化、非党化」とされて敵視の対象となっています。この一年来ときどきそれに警鐘を鳴らす文章が軍の機関紙『解放軍報』に登場していますから、敵視されている方も非主流派とはいえなかなか根強い基盤を有しているようですね。

 国家主席、首相、閣僚といった政府の要職も決議されるのは全人代(全国人民代表大会=立法機関)ですが、実際にはその前に党の中央委員会による会議を開いて先に筋書きを決めてしまいます。その上で全人代で一応投票を行って決議するということになるのですが、配役はすでに決まっていますから信任投票のようなものです。

 賛成、反対、棄権の三択なのですが、筋書きが決まっていますからむろんここで否決されることはありません。ただ反対票・棄権票が際立って多い当選者はよほど評判が悪い奴だということがバレてしまいます。かつて李鵬が首相時代、任期満了で続投となったときは反対・棄権票が記録的な数だったと記憶しています。

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 報道媒体に対する定義も中共は独特です。曰く「党と政府の代弁者たること」というもので、要するに機関紙・広報紙に徹しろ、ということです。このため党の意向によって「なかったこと」が「あったこと」にされたり、「あったこと」が「なかったこと」にされたりします。前者は例えば南京虫事件の被害者数とか重慶「大」空襲などです。

 後者に関しては説明不要、つい最近実例を目にしたばかりですね。ええ、胡錦涛訪米で司会者が「中華民国」と呼んでしまったり、胡錦涛のスピーチ中に法輪功系の記者が突然胡錦涛を罵倒するなどしたりした事件です。これについて国内メディアでは一切ふれられていません。「なかったこと」にされているのです。

 あの法輪功系の記者は英語と中国語を使い分けつつ、ブッシュ米大統領には呼びかけを行い胡錦涛には罵詈雑言を浴びせるなど、勇気と度胸に加えて水際立ったお手並みでした。それよりGJだったのは、言うまでもなく法輪功系記者をある程度放置して言いたい放題にさせていた米警備当局です(笑)。ガムをクチャクチャ噛みながらニヤニヤして事態を眺めていた……ということはなかったようですけど。

 ともあれ中国国内では「なかったこと」にされたこの事件ですが、ネット上ではタレ込みがありますから全容がたちまち広まってネット世論が憤激したようです。とはいえ「なかったこと」なので「なんちゃってデモ」ひとつ米大使館にかけることもできません。胡錦涛のスピーチを中断させるまで騒いだ法輪功系の記者は駐米中国大使館が厳しく追及していることもあり起訴される見通しのようですが、これも「なかったこと」なので中国国内メディアでは報道されないでしょう。

 ただ中共の報道統制はある意味親切でして、ときに匂わせてくれたりすることがあります。

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 この法輪功系記者の事件、実は北京の外交部報道官が定例記者会見でわざわざ言及しています。

 ●「明報即時新聞」(2006/04/25/18:55)
 http://hk.news.yahoo.com/060425/12/1n9vo.html

「法輪功は邪教というだけでなく、反中国政治組織であり、様々な手段を講じて米中関係を撹乱し破壊しようとしている」

 と秦剛報道官は語り、さらに、

「セキュリティチェックの厳しい米国でこんな事件が起きるとは」

 と米国に嫌味を言っています。まあ批判している訳ですね。……ただこの報道官コメントは中国国内では報じられておらず、外交部の公式サイトに掲載される定例記者会見一問一答にも全く出てきません。米国に対する嫌味や批判、それに国内で報じられなかったことは、胡錦涛の面子がいかにひどく潰されたかを物語っている、ともいえます。

 ……で、匂わせてくれる、というのは別件で法輪功叩きが行われるのです。

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 ●「法輪功」かぶれが病状放置、男女各1名が死亡……秦皇島(新華網 2006/04/25/20:42)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2006-04/25/content_4473457.htm

 今年3月に河北省・秦皇島で法輪功信者5名がある賃貸住宅で「不法屯集」しているところを警察が逮捕した際、室内で男女各1名の死体が発見されたというものです。この2名の死者も法輪功信者で、要するに法輪功で病気が治ると信じていたために治療の機会を逸し、死亡するに至った。……というニュースです。

 これがいわゆる「別件での叩き」に相当します。胡錦涛はよほど今回の件に怒り心頭で、国内に対しても何か言わないと気が済まなかったのでしょう(笑)。一方で、これは一種の小規模な「反法輪功キャンペーン」といえるかも知れません。

 都市部ではネットが相当普及しているため「またそれかい」という受け止め方をされるかも知れませんが、「米国が故意に仕掛けたんじゃないのか」と憤激している向きには「やっぱり法輪功は悪い奴らだ」と思う可能性はあります。内陸の農村部にでもいけば正に「邪教」扱いされても不思議ではありません。本当の邪教集団は中国共産党なんですけどね。

 ……このニュースに接して「またそれかい」と笑い飛ばす者はいても、それが反政府気運の高まりを呼ぶことはまずないでしょう。逆に「邪教」「悪い奴ら」と再認識してくれる人が出てきますから、阿呆くさいやり方のようでも、中共としては損にはなりません。

 これとは全く別のケースとして、中国国内の報道と日本の報道を並べてみて愕然とすることもあります。

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 ●路甬祥・全人代常務委副委員長が日本からの客人と会見(新華網 2006/04/24/11:44)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2006-04/24/content_4467052.htm

 全国人民代表大会常務委員会の路甬祥・副委員長は24日、北京の人民大会堂で日本衆議院外務委員会・原田義昭委員長と会見した。

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 というだけの記事なのですが、一応拾っておいたら翌日に日本で報道されたのをみてビックリです。

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 ●「靖国」で中国要人と激論 原田衆院外務委員長(Sankei Web 2006/04/25/01:55)
 http://www.sankei.co.jp/news/060425/sei012.htm

 中国を訪問していた原田義昭衆院外務委員長(自民党)は24日、北京市内で中国の武大偉外務次官、姜恩柱全人代外事委員会主任委員らと相次いで会談、靖国問題などで激論を交わした。

 武次官は小泉純一郎首相の靖国神社参拝について「両国の政治外交関係が頓挫しているのは、日本のごく少数のリーダーがA級戦犯が祭られた靖国に参拝するからだ」と批判した。

 原田氏は「靖国神社は敬愛されており、首相の参拝は当たり前。中国の批判に圧倒的多くの日本国民と議員は怒りを感じている。中国と同様に日本も誇り高い独立国であって、内政干渉に屈するのは断じてできない」と中国側の再考を促した。

 原田氏は東シナ海の日中中間線付近での中国のガス田開発の中止を要求したが、武次官は拒否した。また原田氏は中国原子力潜水艦の領海侵犯事件、上海領事館員自殺事件、反日暴動について「中国の謝罪は行われていない」と指摘。中国の軍拡には懸念を示した。
(後略)

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 何だか物凄いことになっているではありませんか。だいたい武大偉だの姜恩柱という名前が出てきているのに、路甬祥は全く出てきません。「……主任委員らと相次いで会談」の「ら」の中にいたのでしょうが(笑)、中国で検索をかけてみても前掲の何とも素っ気ない路甬祥のみが登場する新華社電だけで、武大偉や姜恩柱の名前は出てこないのです。

 激論が展開されたり中国側から靖国問題について言及があったことを、党中央が国民の反日気運が高まることを懸念して中国国内メディアに報じさせないことはよくありますが、登場人物が省かれるというのは珍しいように思います。

 これは「格」の違いに起因するものでしょうか。中国側が特に気にすることですが、相手が衆議院外務委員長なら中国は全人代における相応のポストの者に相手をさせればいい訳で、実際に姜恩柱(全人代外事委員会主任委員)が出ています。ところが外務次官の武大偉まで接待役を勤めた、というのはちょっと格が釣り合わないようでもあります。

 かつて媚中派の二階・経済産業相が訪中した際、温家宝・首相が出てきたり、例の媚中派7団体と胡錦涛が会見したような、中国側がこの場を重視している、ということを示唆したものなのかも知れません。……単なる考え過ぎかも知れませんが、武大偉らの名前が出ていないこと、状況的には「日本の要人、靖国問題でまた妄言」などと報じてもいいのに「会見した」だけで済ませているあたりにちょっと尋常でないものを私は感じました。胡錦涛の対日重要談話が全く効いていないことを露わにできない国内事情でもあるのでしょうか。

 まあ、ただそれだけの話なんですけど、どうして中国側は「なかったこと」にしたのか、また日本の報道内容と余りに隔たりが大きいので一応書き留めておきます。

 ……それにしても原田氏、

「意見の違いを認めつつ極めて重要な日中関係を築くのが両国の政治家の役目だ。中国は日本国内の意見を正確に知るべきだ」

 と語ったそうですが、実に見事な太刀さばきでした。



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「上」の続き)


 ●士気低迷時。


LAST TEENAGE APPEARANCE
尾崎豊
ソニーミュージックエンタテインメント

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約束の日(1)
尾崎豊
ソニーミュージックエンタテインメント

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約束の日(2)
尾崎豊
ソニーミュージックエンタテインメント

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 勢いをつける、自分を励ます、ただそれだけです。僕が僕であるために勝ち続けなくちゃならないのです。そして盗んだバイクで走り出すのです。ただ「ダンスホール」など曲によってはより低迷してしまうリスクもあるので要注意(笑)。月曜は土日に比べて一気に記事量が増えるので概ねこの状態にあります。

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 ●士気超低迷&本業や副業でムカついているとき。


NIPPON NO ROCK
KUWATA BAND
ビクターエンタテインメント

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カルナヴァル
ZELDA
キティMME

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空色帽子の日
ZELDA
ソニーミュージックエンタテインメント

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C‐ROCK WORK
ゼルダ
ソニーミュージックエンタテインメント

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 何もしたくない気分のところに無理矢理ノリをつけて勢いを出そうとしています。それを「自棄」と言い換えることもできます(笑)。「ALL DAY LONG」(NIPPON NO ROCK)、「うめたて」(カルナヴァル)、「小人の月光浴」(空色帽子の日)、「浴ビル情」(C‐ROCK WORK)で身体が動けば「勝負あった」です。

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 ●士気やや旺盛。


COMPLETE SERVICE
イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)
アルファミュージック

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 YMOの散開ライブです。前掲の「SEALED」よりちょっと気分がいいのでライブに流れます。やはり前掲の「テクノ歌謡」が起用されることもあります。

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 ●士気旺盛。


東京の野蛮(紙ジャケット仕様)
戸川純
Sony Music Direct

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好き好き大好き(紙ジャケット仕様)
戸川純
Sony Music Direct

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 もう怖いものなしです。「玉姫様」であろうが「蛹化の女」であろうが「好き好き大好き」であろうが全く動じません。 

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 ●士気超旺盛。


改造への躍動(紙ジャケット仕様)
ゲルニカ, 太田螢一, 上野耕路, 高橋修
Sony Music Direct

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 心にはZ旗が翻っています。全身に力が漲っています。敵前回頭など朝飯前です。「スクリューは回るポンプは動く」「いや違うぞあれは味方の水雷戦隊だ非常呼集通信兵すぐに電文を打て」「北の果てサハリン我らが誇り大油田」といった無茶な歌詞が上野耕路の曲に乗って乱舞していても全く気になりません。さすがにここまで切れる状態はなかなか来てくれません。まず中共に荒れてもらいませんと、どうにも(笑)。

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 ……こんなどうでもいいことに上下2回も費やしてしまい申し訳ありません。でもときにこのようなわがままをしてみたくなるのです(普段は香港の掲示板で暴れることで憂さ晴らしをします)。気のせいか画像のない作品が多いようです。やはり古いからなのでしょうか。今日(正確には明日の午前1時)は月曜恒例ともいえる尾崎豊状態なのですが、ここで馬鹿をした分、ちょっと前向きに「テクノ歌謡」から入ってみようかと思います。



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 胡錦涛が米国で面子を潰されている間にちょっと事態が動いて来ましたね。前回のコメント欄で「失地農民」さんが御指摘の通り、上海閥が不穏です。個人的には李長春、曽慶紅、呉邦国の最近の発言に注目しているところです。

 以前にも指摘しましたが、「改革深化」を掲げる胡錦涛の最大の抵抗勢力が実は「改革派」。ただし「条件のある者から先に豊かになる」というトウ小平の「先富論」を奉じる江沢民時代までの改革による既得権益層です。その最大の存在が上海閥なので、気にしない訳にはいきません。

 一方で、政治勢力としての力量は不明ながら、左派の存在も無視できません。こちらは現在も中共の指導思想として筆頭に掲げられている「毛沢東思想」「マルクス・レーニン主義」を以て現状を批判する手合いです。叩くなら江沢民を叩くのが筋だと思うのですが、ともあれその後釜というババを引いてしまった胡錦涛の批判勢力となっています。

 胡錦涛もエラー絡みの失点が痛かったですね。今回のホワイトハウスにおける演説で、法輪功系メディアの女性記者に非難された胡錦涛が機転を利かせて事態を収拾することができなかったことは、対外的にはイメージダウン、反胡錦涛諸派連合にとっていい攻撃材料となることでしょう。

 ……という面白い展開になってきたのですが、もう少し寝かせておきたいのと、素人ゆえに関連資料についてまだ消化不足な部分があり、今回は楊子削りに逃げることを諒として下さい。
m(__)m。

 ――――

 そこで標題の件となる訳です。中国観察の真似事であるチナヲチは私にとって最大の娯楽なのですが、如何せんヲチをするためには午前1時からの記事漁りが不可欠。午前1時というのは現地時間が午前0時なので前日のニュースをまとめて拾えるから便利なのです。たくさんたくさん拾うことになります。それも毎日続けないと意味がありません。

 政治的保護者の姿勢を反映した各マスコミの足並みの違いみる「横の比較」も大切ですが、あるメディアが次第に政治姿勢を変化させていくのを追う「縦の比較」も重要です。要するに記事漁りからは一日たりとも逃れることができないのです。

 でもこちらも生身の人間ですからモチベーションにも波がありますし、本業や副業でムカついた気持ちのまま作業にとりかかる日もあります。逆に「どんとこーい」的な士気旺盛なときも当然ながらあります。私の場合は昨春の反日騒動のような、事態が乱れれば乱れるほどヤル気が出てくるようです(笑)。

 いずれにせよ、単調な作業になりがちな記事漁りには音楽が欠かせません。こういうことを1年以上続けてみて気付いたのは、その日その日の士気に応じて無意識に流すものを変えているということです。……それを勝手に紹介させて頂く、というのが今回の主題なのですが、数え上げてみると種類は少ないものの、古い作品ばかりです。

 私はなぜかバイオリンとピアノを少々使えるので学生のころはバンドの真似事もしていたのですが、中港台と10年ばかり流転する間に日本の音楽シーンとはすっかり疎遠になってしまいました。しかも香港時代の同僚たちは来日するとまず秋葉原に行くような手合いばかりです。カラオケに連れて行かれると「コンバトラーV」とか「仮面ライダー」とか、揃いも揃ってその手の歌ばかり好む連中で、おかげで私の「音楽的下放状態」に拍車をかけてくれました。

 という訳で若い方には「何それ?」、同世代の方には「悪趣味」と言われそうなものばかりとなりますが御容赦下さい。

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 ●士気平常時



SEALED
イエロー・マジック・オーケストラ
アルファミュージック

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MINT JAMS
カシオペア
Village Records

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 流していて気にならないものです。カシオペアの「ドミノ・ライン」、あのベースソロでモチベーションが高まります。

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 ●士気やや低迷。



感傷
種ともこ, 橋本淳, 森雪之丞
ソニーミュージックエンタテインメント

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みんな昔は子供だった オリジナル・サウンドトラック
服部?之, TVサントラ
インペリアルレコード

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真空キッス
MELON, YMO, アポジー&ペリジー, シーナ&ザ・ロケッツ, スネークマンショー, テストパターン, 越美晴, 戸川純, 戸川純ユニット, 細野晴臣
ブルース・インターアクションズ

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 気分そのままにたゆたいつつも慰めを求めている状態です。「みんな昔は子供だった」は服部隆之氏の手によるストリングスの優しさに癒されます。同じ意味でベタですがエルガーの「愛の挨拶」を繰り返し流すこともあります。これは1989年の秋に昆明の百貨公司で買ったCDで、ショーケースに置かれているのを見て「あれをくれ」と指差したら「カギを持っている人間が昼休みで出ているから1時間したら来てくれ」と事も無げに言われました。話には聞いていましたが本当にそういうことがあるとは......と貴重な経験をした気分になったものです。おお、士気向上アイテムとして「テクノ歌謡」も忘れてはいけません。


「下」に続く)



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 胡錦涛・中国国家主席が訪米しました。

 今回の行程は米国訪問後に中東やアフリカ諸国を歴訪するというものです。ひょっとして意趣返し?と勘繰ってみたくなります。

 というのは昨年秋にブッシュ大統領が訪中しています。胡錦涛サイドでは当時のことを多分根に持っている筈です。面子丸潰れでしたからね。

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 どういうことかと言うと、ブッシュは米国から直接中国に飛んできてくれなかったんです。中国以外の国にも立ち寄るという行程、さらに中国を訪問する国々の筆頭に持ってこなかったことで胡錦涛は血管が浮き出てしまいます。

 そして、こともあろうに中国より先に訪問したのが「小日本」でした。ブッシュはここで民主化や日中関係について中共当局にとって嬉しくないコメントを連発しておいて、その次に中国です。

 北京で礼拝に参加するというブッシュのパフォーマンスはもちろん宗教弾圧に対する無言の批判であり、中国を利するものではありません。それで最後にモンゴルを訪問し、ここでも民主化の成功を賞賛しています。

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 ……そういう経緯があるものですから、中東・アフリカ歴訪と訪米をワンセットにしたのかなあ、それとなく意地悪してみせたのかなあ、とぼんやり考えみたりしました。さすがに米国を筆頭に持ってこない訳にはいかなかったようですが(笑)。

 ところが米国はもっと意地悪だったんですね。「国賓待遇での訪米」と国営通信社・新華社は再三再四強調していましたが、米国側はこれを否定。もちろん米国が否定したということを中国国内メディアが報じる筈がありません。

 報じなくても胡錦涛の耳には入っているでしょう。中共政権の歴代指導者の中で初めて国賓にしてもらえなかったということで、胡錦涛は歴史にその名を刻みました。出発前から一撃喰らった格好です。

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 でも「意地悪=胡錦涛の面子潰し」はそれだけじゃなかったんですねえ。いや、わざとかどうかは知りませんよ。知りませんけど、ホワイトハウスの歓迎セレモニーで報道陣を前に胡錦涛がスピーチを始めたところ、記者席にいた女性が突然、大声で中共批判を始めたのです。

「ブッシュ大統領、その男が法輪功を迫害するのをやめさせて下さい」
「胡主席、お前はもうすぐあの世行きだ」

 みたいなことを1分間以上連呼したようです。警官によって排除されたようですけど、胡錦涛はこのハプニングにビビったらしく、表情も硬くスピーチする語調も滑らかではなかったようです。

 http://hk.news.yahoo.com/060420/12/1n4mn.html

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 でも「意地悪=胡錦涛の面子潰し」はそれだけじゃなかったんですねえ。いや、わざとかどうかは知りませんよ。知りませんけど、そのホワイトハウスでの歓迎セレモニーに先立つイベント、特別機から降り立った胡錦涛が儀仗隊から礼砲の祝福を受け、さて国歌吹奏となったとき。あろうことかセレモニーの司会者が中国のことを、

「Republic of China」

 と言ってしまったんですねえ。それって
「中華民国」じゃないですか(笑)。

 「中華人民共和国」は
「People's Republic of China」

 いかに間違いとはいえ、公の場で米国政府側が「中華民国」の名前を口に出したことは久しぶりではないでしょうか。

 http://hk.news.yahoo.com/060420/12/1n4mx.html

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 たて続けに面子を潰された胡錦涛が壊れてしまわないか心配です。でも珍道中はまだ始まったばかり。この先まだまだネタが出てきそうで実に楽しみです。


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 何やら東シナ海が風雲急を告げて参りました。……というのは一小市民としての実感なんですけど、本当のところはどうなんでしょうね。

 いや、胡錦涛訪米直前というタイミングが出来過ぎているようでもあります。今回の米中首脳会談で日中関係は主要議題ではないでしょうけど、胡錦涛が靖国とか何とか言い出したら、ブッシュはこれを持ち出して切り返せるではありませんか。

 でも中国側の関連部門の公式サイトによれば、3月1日付で発表しているんですよね。

 http://www.msa.gov.cn/Thgl/Hxtjgview.aspx?ID=489

 これは1カ月半も放置しておくべきネタではないと思うのですが、日本政府はこういうサイトの定点観測はやっていないのでしょうか。だとしたら恐るべき怠惰です。「偽サイトの可能性もあったから」とかいう日本側関係筋の記事がどこかに出ていましたけど、お役人なんですから、「役儀により改める」などと中国側に事実関係を問い合わせればいい訳で。でもそれがすぐできない風通しの悪さがあるのでしょうか。

 ……と思っていたらこんなニュースが。

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 ●航行禁止海域は中国側・中国外務省が日本に修正説明(Nikkei Net 2006/04/18/01:55)
 http://www.nikkei.co.jp/news/main/20060417STXKB066217042006.html

 外務省は18日未明、東シナ海のガス田拡張工事のため中国海事局が航行禁止を通知した範囲に誤りがあったと中国外務省から北京の日本大使館に説明があったことを発表した。

 外務省は修正により中国の作業範囲は日中中間線の中国側になるとしている。〔共同〕

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 これで落着、ということになってしまうんでしょうか。経緯に不満と不安の残る出来事ではあります。

 どうやら米中首脳会談のタイミングで動いた訳でもなさそうですけど、まあ仮にそれを狙って日本政府筋が動いたものだとしても、今回は胡錦涛の方が役者が一枚上でした。

 連戦ですよ連戦。橋龍や紅の傭兵よりも使い勝手がよくて、靴の舐めっぷりも2Fすら足元に及ばない連戦・国民党名誉主席、これを招いておいて胡錦涛は対台湾融和策をズラリと並べてみせましたからね。米中首脳会談の観点からすれば、東シナ海の一件よりやはりこちらの方がインパクトが大きいでしょう。

 で、この対台融和策ですが、

 ●台湾財界を籠絡する。
 ●台湾政界及び世論の分断化を図る。
 ●台湾内部に確固とした親中勢力をつくる。
 ●台湾経済を取り込む形にして、経済制裁をチラつかせるだけで台湾が身動きできないようにしてしまう。
 ●中台関係において、米国に「誠意」というポーズを示す。
 ●胡錦涛が対台政策の主導権掌握にかかった。

 ……てな感じだろうと思います。最後の一項は憶測なんですけど、

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◆胡錦涛が対台湾政策の主導権掌握を狙う?
http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0604140006&cat=002CH
いや、下衆の勘繰りなんですけどね。汪道涵・海峡両岸関係協会会長(当時)が昨年末に死去したあとも会長ポストは不在のまま。同会はしばらくその状態を続けるつもりらしいので、訪中した国民党・連戦前主席を歓待するなどちまちまと動いている胡錦涛が色気を出しているのではないかとつい邪推してしまった次第。

 ――――

 ……と姉妹サイト「楽しい中国ニュース」(2006/04/15)に書いたように、傍証めいたものはあります。党中央台湾事務弁公室の人事には昨年5月に手をつけていますし、旧正月直前には台湾の対岸である福建省を視察して「最前線」の兵士たちを慰労しています。そして今回の大盤振る舞いですから、「おれが仕切るんだ」という胡錦涛の意気込みが感じられるように思えます。そこで「ちょっと待った!」と声がかかったら腰が砕けてしまうのかも知れませんけど(笑)。

 ――――

 さて本題ですが、中共上層部の目下の政治状況、これは前回紹介したように反胡錦涛諸派連合が何やら勢いづいてきていて、しばらく外遊により北京を留守にすることになる胡錦涛にとってはどうも心許ない。

 そのせいなのかどうか、最近はずっと先月の全人代(全国人民代表大会=立法機関)ごろに胡錦涛が言い出した
「社会主義栄辱観」(八栄八辱=八つの誉と八つの恥)の関連活動を主要メディアがこぞって報じるというキャンペーンめいたものが続いています。

 反胡錦涛諸派連合の不穏な動きはこれで吹っ飛ばしてしまえ、というほどの勢いです。それでも反胡錦涛諸派連合は着々と手を打っているようなのですが。……とりあえずその「八栄八辱」なるものを紹介しておきます。

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 ●祖国を熱愛することは誉、祖国を危うくすることは恥
 ●人民に奉仕することは誉、人民を裏切ることは恥
 ●科学を尊重することは誉、愚昧で無知なのは恥
 ●勤勉に労働することは誉、安逸に流れ怠惰なのは恥
 ●団結して互助することは誉、人を踏みにじって私利私欲に走ることは恥
 ●誠実で信用を守ることは誉、利に目が眩んで道義を忘れることは恥
 ●法律を遵守することは誉、法律を無視することは恥
 ●刻苦奮闘することは誉、贅沢と淫乱に流れることは恥

 ――――

 ……と、小学生にも理解できる内容で風紀粛正を狙った、いかにも道徳教育の好きな胡錦涛らしい代物です。どうも最近私は胡錦涛を「計画経済型」と呼びたい気分がありまして、発想を飛躍させ時機を捉えて利を稼ぐ商人、つまり市場経済型というよりは、毎日黙々と畑仕事に汗を流すタイプではないかと思えてきます。

 政治手法がどこか毛沢東に似ているという指摘は当初からあるものですが、滅私奉公的な党員を讃え、その事蹟に学べというキャンペーンを張ったり、その党員の美談を歌劇にまでしてしまうあたりは現在の他の政治家には真似できないところでしょう(笑)。この「八栄八辱」にしても要するにレッテル貼りであって、文革テイストがほのかに漂っています。たぶん胡耀邦や趙紫陽と同時代の政治家であれば胡錦涛は間違いなく保守派に回る器だと思います。

「人を踏みにじって私利私欲に走ることは恥」

 というのは市場経済への移行を目指す中国にあっては際どい表現です。じゃあ出稼ぎ農民の苛酷な労働環境はどうだ、農民を泣かす土地収用はどうだ、ということになります。特に出稼ぎ農民の苛酷な労働条件を念頭に置いてこの一節を掲げれば、中国の現在の経済成長モデルを頭から否定することになってしまいます。まあ、胡錦涛の掲げる「調和社会」には様々な格差の是正も含まれている訳ですから、掲げること事態は問題ではないのですが、従来型の改革で、つまり出稼ぎ農民をこき使ってきた既得権益層の反発があるかも知れないという点で、際どいのです。

 で、この「八栄八辱」です。都市部ではネットや携帯電話も普及している現在において、小学生相手にならともかく、大学生や社会人にもこの教育活動に参加させる、というのはいかに民度が低いとはいえ参加者も主催者も馬鹿らしく感じることでしょう。明快すぎるほどの善悪の基準だけに、誰かを批判するときの道具としては非常に使い勝手がいいとは思いますけど。

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 ともあれ胡錦涛派は時代錯誤的なこの「八栄八辱」を掲げて大々的に宣伝しています。それによって反胡錦涛諸派連合の動きを封じるという狙いもあるのだろうと思いますが、このレッテル貼りは素朴な内容だけに、逆手にとられることもあるかも知れません。

 そこで反胡錦涛諸派連合の動きですが、前回紹介した一連の流れに続いて、上海で『江沢民と彼の母校上海交通大学』という本が出版されることになり、上海市のトップである陳良宇・市党委員会書記をはじめ地元指導部が出席した関連座談会も開かれています。

 報じたのは香港紙『星島日報』(2006/04/16)。どうも「江沢民視察+江沢民視察報道+同日に黄菊健在報道+関連書籍出版+上海市指導部による記念座談会」という上海閥のコンボ技だったようですね。

 http://www.singtao.com/yesterday/chi/0416eo03.html

 それから反日活動家の代表格で「中国民間対日賠償請求連合会」の童増・会長も新ネタを披露。こちらは香港紙『明報』(2006/04/14)の記事で、戦時中に徴用された所有船舶が撃沈されるなどの損失を被った船会社の経営者の息子が、日本政府を相手どって25億元(人民元)というこの種のケースでは過去最高額の賠償請求を日本大使館に行っている、というものです。和解ができなければ中国国内での裁判に持ち込む、とは童増の弁。

 http://hk.news.yahoo.com/060413/12/1myb4.html

 胡錦涛にしてみれば裁判を許せば「日中共同声明」との絡みで対日関係がより面倒なことになりますし(しかも被告は日本政府)、許可しなければ国民の反日感情や糞青(自称愛国者の反日教徒)主導によるネット世論、そして軍部を含む党内の対日強硬派から集中砲火を浴びることになりかねません。

 ――――

 そこで出てくるのが「八栄八辱」の、

 ●祖国を熱愛することは誉、祖国を危うくすることは恥
 ●人民に奉仕することは誉、人民を裏切ることは恥

 といったあたりです。尖閣諸島、沖ノ島、東シナ海ガス田紛争、靖国神社参拝や歴史認識の問題などで上記2項目を持ち出されれば、胡錦涛もううっと詰まってしまうのではないでしょうか。そういう困っている胡錦涛をやや離れた場所から冷ややかに眺めているのはきっと首相の温家宝です(笑)。

 要するにこの「社会主義栄辱観」(八栄八辱)という薬は、効き目に疑問符がつくだけでなく、用法によっては半端じゃない副作用があるかも知れない、ということです。親分が北京を留守にするということに加え、「八栄八辱」ばかりに血道を上げているがために反胡錦涛諸派連合がバラまいた地雷をうっかり踏んでしまいかねない。……現在の胡錦涛派にはそういう脆さがあるように思えてなりません。



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 同じネタを中文の方でもやっているのですが、あっちは大雑把ですから多少重複してもいいでしょう。……いや、政争の話です。気になるニュースのカケラひとつひとつを並べてみると、アンチ胡錦涛諸派連合によるものと思われる蠢動ともいうべき怪し気な動きが続いています。

 何せ来週には外遊のため胡錦涛が北京を留守にする、というタイミングですからねえ。こちらとしても期待してしまいます(笑)。

 とりあえず最近のカケラを時系列で並べてみましょう。

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 ●[1]胡錦涛が日本の「友好団体」代表者らと会見、「日本の指導者が靖国神社を参拝しなければ首脳会談に応じる」と態度表明。
(2006/03/31)

 ●[2]反日活動家・童増を会長とする「中国民間賠償請求連合会」が北京事務所を開設。中国国内での対日賠償請求訴訟実現に意欲。
(2006/04/03)

 ●[3]江沢民が陳良宇(上海市党委員会書記)、韓正(上海市長)など地元当局のトップクラスを引き連れて母校である上海交通大学の創立110周年記念式典に参加。
(2006/04/06)

 ●[4]香港紙『明報』『星島日報』『大公報』が江沢民の上海交通大訪問を報じる。中国国内では記念式典が開かれたこと、陳良宇や韓正がそれに出席したことは報じたものの「江沢民」には全くふれずじまい。
(2006/04/08)

 ●[5]中国国内メディアが「江沢民が上海交通大学を視察、教師や学生が大歓迎」的な記事を報じる。同日には上海閥の一員とされ、重病説が流れている黄菊・党中央政治局常務委員会の健在を示す報道(「2006民営企業求人週間」スタートへの祝賀メッセージ)も中国国内で流れる。
(2006/04/10)

 ●[6]日本のゲームソフトメーカーによる『西遊記』『水滸伝』などの商標登録申請に対し、浙江省のアニメ・コミック業界が団結してこれに反対するべく動き出した、と『香港文匯報』が報じる。
(2006/04/11)

 ●[7]童増の「中国民間賠償請求連合会」が25億元という過去最大の賠償請求額になる訴訟に着手すると発表。ただし裁判を日本でやるのか中国国内でやるのかには言及せず。
(2006/04/13)

 ――――

 ……と、この2週間で気になる動きが随分出ています。胡錦涛側は「社会主義栄辱観」を普及させるキャンペーンを大々的に展開して党内をまとめ上げようとしていますが、そうした中でアンチ胡錦涛諸派連合による布石がひとつひとつ打たれている、という印象です。

 以前と重複することを承知の上で書いていきますと、まず[1]ではわざわざ予告まで行われた鳴り物入りの対日メッセージ(胡錦涛の「重要談話」)が、フタを開けてみたら昨年秋時点と全く同じで新味のない内容であることに、対日政策において胡錦涛の意思がさほど反映されていない気配がみられます。

 恐らくこの方面に関して胡錦涛は決定権を失っており、各政治勢力の意見を折衷するような状況になっているのではないか、ということです。それはとりも直さず、胡錦涛擁護に回っている軍主流派だけでなく、対立勢力であるアンチ胡錦涛諸派連合の介入までも許している可能性が感じられます。

 ――――

 [2]についても既報していますが、アンチ胡錦涛諸派連合が後ろ盾になっているなら、なかなかの政略といえるのではないでしょうか。

 「国内で賠償請求訴訟を」という意見を前にすると、胡錦涛は進退に窮しざるを得ません。賛成すれば「日中共同宣言」などの解釈をねじ曲げるという無理をしなければならない上に、それによる日本側の反発、さらには日本側からも民間の対中賠償請求訴訟が行われる可能性があります。

 でも「国内での訴訟」に反対すれば、反日気運がなお高い状態にある現在、国民レベルでの反発があるでしょうし、党内からも批判が起こるでしょう。

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 [3][4][5]というのは前掲した一連の「カケラ」の中で、胡錦涛派とアンチ胡錦涛諸派連合の鍔迫り合いがみてとれた唯一の機会でした。江沢民が健在ぶりを示した[3]というアクションに対し、胡錦涛派は[4]で報道統制を敷き、江沢民封じを試みます。

 ところが[5]にあるように、2日後にはその報道統制かあっさりと突き崩されてしまい、江沢民が動いたこと、かついまなお元気そうであることが写真付きの記事によって明らかにされてしまいました。それだけでなく、上海閥とされる黄菊の名前まで同じ日にニュースに出ているのは決して偶然ではないでしょう。少なくともこの段階においては、アンチ胡錦涛諸派連合がメディア争奪戦に勝利したということです。

 ――――

 アンチ胡錦涛諸派連合はさらに[7]の訴訟問題を持ち出して、改めて難題を胡錦涛に吹っかけています。そして以前予測したように童増の賠償請求訴訟同様、商標登録の問題が再燃しましたが、今回は日本企業による商標登録に明確に反対する動きに発展しています。それが[6]ですね。もしこの動きの黒幕もアンチ胡錦涛諸派連合なのであれば、来週、胡錦涛が北京を留守にしている間により明確な動きが出てきてもおかしくないでしょう。

 アサヒビール不買運動、常任理事国入り反対運動という「反日」の流れが歴史教科書問題に集約されて爆発した1年前の政争に似たものを感じます。賠償請求訴訟、商標登録反対、江沢民健在と多角的に攻めています。江沢民健在は軍主流派にとっては一種のプレッシャーとなるでしょう。賠償請求と商標登録は「反日」に発展していく流れです。

 ――――

 ただ、社会状況が悪化しています。昨春の「反日」についても急拡大する流れに仰天した対立する政治勢力が慌てて手打ちをして事態の鎮静化に全力を傾けたほどですから、昨年10月に小泉首相が靖国神社を参拝したとき同様、民間有志による自由行動は抑え込むことになるでしょう。それができなかったり、逆に積極的に民間を煽ってしまうようなら「反日」では終わらずに北京五輪が吹っ飛ぶような大乱に発展するかも知れません。

 あるいは、そうした「中共人」にとってリスクを伴う「反日」とは別の形で胡錦涛派を締め上げようとするかも知れません。いずれにせよ、もしアンチ胡錦涛諸派連合が倒閣運動をやるつもりがあるなら、隠された持ち駒があとひとつか二つはあるでしょう。そうした手札が如何なるもので、いつ切られるのかには注目です。

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 それにしてもちょっと役者が揃い過ぎているというか、余りに出来過ぎた展開です。期待するなという方が無理というものでしょう(笑)。



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 続編、という訳ではないのですが同じジャンルのものなのでパート2にしておきます。前作は過去に何度もリンクを張っていますが、1年ちょっと前に書いたものです。

 ●重金属野菜(2005/03/25)

 今朝の香港紙『明報』『香港文匯報』(2006/04/12)の報道に基づいて話を進めていきます。ちなみに両紙とも元ネタは同じで、権力に媚びない良心的かつ勇気ある報道で定評のある広州の『南方都市報』。偶然というべきか、前作の元ネタも同紙でした。

 その前作は土壌や野菜自身の重金属含有量が基準値を大幅にオーバーしている、などと数値を並べて理詰めで攻めた観がありましたが、今回は「うわー汚い」「大丈夫かよこれ」「ていうかヤバ過ぎ」といったビジュアル優先。そしてシャレにならない情報がひとつ。そうした重金属野菜が深センや香港にも流れている、ということです。

 ――――

 舞台は広州市・天河の棠東工業区と芳村バスターミナル付近の一帯。このあたりは20年前には一面の畑が広がる農村の趣があったのです。……いや約15年前に私が同地に行ったときもそんな感じで郊外型農村という雰囲気でした。

 ところが開発ブームで棠東に工業区の名前が冠され、文字通り中小規模の工場が集中する地域に変貌しました。衣類、プラスチック製品、化粧品、インク、家具など様々な製品が生産されています。いまでも農業は行われていますが、数十ムーから100ムー(1ムー=6.67アール)ばかりの畑が建ち並ぶ工場の合間合間にポツリポツリと点在するような零細状態になってしまいました。

 で、御多分にもれず工業廃水による河川汚染が灌漑(農業用水)にも回ってきて土壌と野菜自身を毒している、という訳です。以前農村だったころ、付近を流れる河の上流にあるダムから引き込まれたこの地区の水はきれいで、村民が洗濯やお米をとぐこともできたそうです。

 ところがいまや状況は一変。工業廃水や生活廃水がどんどん流れ込んでくるため、現在では真っ黒な水がプツプツと白い気泡を発している有様で、ツーンと鼻をつく刺激臭まで伴うこうした恐るべき汚水が農業用水として使われ、中には用水路が詰まって直接畑を湿らせているケースも。……そうした過酷というよりもはや無茶な環境下で野菜が生産されているのです。汚水に囲まれた畑を記事では「水田」と表現しています。

 ――――

 そうやって作られた野菜が売りに出されるのですからシャレになりません。生産されているのは「生菜」(レタス)、そして広東語でいう「白菜」(チンゲンサイを大きくした形状のもの)や「通菜」(空心菜)。近くの卸売市場(棠東村内の棠徳、東南、龍盛、正南など)に持ち込まれるため、大半は周辺地区で消費されていると思われますが、天河あたりなら日系企業もかなり進出しているでしょうから付近在住の方は御注意を。

 さらに、天候不順などで野菜の供給量が減ったりすると、遠くから車列を組んで大量買い付けに来る業者もいて、そうした業者を通じて深センや香港に流通されるそうです。その量は棠東一帯の生産量の3分の2にも及ぶとのこと。要するに野菜価格が高騰しているときには、棠東村の重金属野菜が香港や深センで売られている可能性が高い、ということです。

 繰り返しますが、「生菜」「白菜」「通菜」の3品目。いずれも広東料理ではポビュラーな野菜ですから、当然のことながらレストランや屋台、さらにファーストフード店で使われることもあるでしょう。

 ――――

 広州市の「農科所蔬菜産品総合検測站」、つまり専門家の話によると、棠東産の野菜は農薬、化学肥料、人糞に加え工業廃棄物による汚水を含んでいるため、自然条件下で大量の硝酸塩や亜硝酸が発生し野菜がそれを含有することになります。ガンに至る危険もあるということですが、何より食後に中毒症状を起こすケースがあるそうで、これはもはや重金属野菜というより正に「毒野菜」という観があります。

 ●『明報』(2006/04/12)
 http://hk.news.yahoo.com/060411/12/1mvty.html

 ●『香港文匯報』(2006/04/12)
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0604120019&cat=002CH

 『香港文匯報』の記事のタイトルは「広州毒菜輸港」(広州の毒野菜が香港に輸入されている)。そのまんまの標題ですが、内容が内容だけに笑って済ませられないものがあります。



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 何やら妙なことになってきましたよ。中国国内メディアも昨日(4月11日)から江沢民の動静を報道し始めました。

 前回紹介した上海交通大学創立110周年記念式典(4月6日)に江沢民が上海市の現役指導部を引き連れて登場したという一件、香港紙では『明報』(2006/04/08)『星島日報』(2006/04/08)『蘋果日報』(2006/04/09)それに親中紙『大公報』(2006/04/08)が報じました。

 ところが中国国内では「創立110周年」記念イベントのみ報道され、江沢民の出席には一切沈黙。「江沢民の名前を出すな」という報道統制が敷かれた様子だったのですが、ここにきて状況が一変。「新華網」(国営通信社電子版)「人民網」(『人民日報』電子版)をはじめ、「新浪網」など大手ポータルも江沢民が上海交通大学を訪問した記事がバーンと出ました。

 ざっとみたところ中国新聞社電とより感情のこもった観のある別バージョン(上海交通大学オフィシャルサイト版?)の2本が全国ニュースとして流されています。いずれもかなり長文で、江沢民が主人公として扱われている記事です。いうなれば「江沢民の上海交通大学訪問記」てなところでしょうか。写真も使われています。その大半が前回紹介した『大公報』と同じもののようです。

 ――――

 江沢民の生地である楊州の「YZtoday.com」などは感情のこもったバージョンを採用しており、写真も5枚。バスから身を乗り出して手を振るなどなかなか元気そうで、まさに健在ぶりをアピールといったところです。

 http://news3.yztoday.com/news/3001/2006/04/10/2006-04-10_130913_3001.shtml

 温家宝を激論の挙げ句退けたとされる地元大番頭格の陳良宇・上海市党委員会書記や韓正市長など上海市の現役指導者を引き連れての登場は、上海市という「独立王国」あるいは「大諸侯」が中央に対して健在ぶりをアピールしたことにもなるでしょう。特に陳良宇は最近中央に叩頭する姿勢を示して「上海閥ついに陥落?」とみられていたところだけに、注目される動きです。

 ●陳良宇「上海は胡総書記の要求に応じて『4つの率先』に努める」(新華網 2006/03/21)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-03/21/content_4326340.htm

 全国的にニュースとなった、というのはもう視覚に訴える方がいいかも知れませんね。……という訳で、「新浪網」で検索したら引っかかった記事を並べておきます。

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 ●新華網(2006/04/10)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-04/10/content_4405814.htm

 ●人民網(2006/04/10)
 http://politics.people.com.cn/GB/1024/4285350.html

 ●中国新聞網(2006/04/10)
 http://www.chinanews.com.cn/news/2006/2006-04-10/8/714645.shtml

 ●国際在線(2006/04/10)
 http://news.sina.com.cn/c/2006-04-10/13328659644s.shtml

 ●南方網(2006/04/10)
 http://www.southcn.com/news/china/focuspic/200604100377.htm

 ●上海熱線(2006/04/10)
 http://ala.online.sh.cn/ala/gb/content/2006-04/10/content_1524061.htm

 ●光明網(2006/04/10)
 http://news.sina.com.cn/c/2006-04-10/17228660835s.shtml

 ●WWW21CN.COM(2006/04/10)
 http://news.21cn.com/domestic/difang/2006/04/10/2536967.shtml

 ●北京廣播網(2006/04/10)
 http://news.bjradio.com.cn/gn/nd/t20060410_816385.htm

 ●青年時報(2006/04/10)
 http://news.sina.com.cn/c/2006-04-10/14438660048s.shtml

 ――――

 ひとつ気になったのは、「新華網」も「人民網」もこの記事を新聞でいえば一面に並ぶ大ニュース「要聞」ではなく、一段低い「時政」欄で扱っていることです。もちろんより重要なのは、8日付の中国国内メディアによる報道では禁句だった「江沢民」という名前が、10日から一斉解禁となった点ですけど。

 ここ数日の間に党上層部で何らかのせめぎ合いがあり、その結果が「江沢民」解禁なのでしょう。ただし扱いはやや地味めにと、微妙なさじ加減。とはいえ8日にはNGだったものが2日経ったら規制解除になったのですから、この動きだけをみれば上海閥ひいてはアンチ胡錦涛諸派連合が盛り返している、といった印象です。

 ちなみに、私は「江沢民派」というより「上海閥」とした方が個人的にしっくり来るので後者を使っています。江沢民というボスのもとに結集した、というよりは「上海という利権に魅かれて結束した政治勢力」ではないかと思うのです。ですから親分格の江沢民が鬼籍に入ったら瓦解、ということにはならないかと思います。

 ――――

 で、昨日(4月10日)はその上海閥でもうひとつ動きがありました。上海閥の重鎮のひとりで現役指導部の一員ながら重病説が流れ、実際1月半ばを最後に公の場から姿を消している黄菊・党中央政治局常務委員(兼副首相)に関するニュースが流れたのです。

 ●2006民営企業求人週間がスタート、黄菊が祝賀メッセージを寄せる(新華網 2006/04/10)
 http://news.xinhuanet.com/newscenter/2006-04/10/content_4407097.htm

 何やら黄菊の名前をタイトルに置きたいがために作成された記事、という印象が拭えませんが、どうでしょう?「江沢民報道」と同じ日にやはり上海閥である黄菊健在のニュース。ちょっと出来過ぎたタイミングのように思えます。

 胡錦涛訪米を前に何やらざわついてきた気配。ちなみに胡錦涛側の『中国青年報』『解放軍報』は「江沢民」「黄菊」のいずれも黙殺、シカトですからねえ。そんな気を持たせるような反応をするから(ていうか無反応)、こっちは勘繰らずにはいられなくなるのです(笑)。



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 最近更新が滞ってしまい申し訳ありません。ちょうど年度の切り換えなのを利用して仕事のシフトチェンジというかフォーメーションの再構築というか、切るべきところを切って強化すべきところを強化する方向で蠢動している真最中でして、要するに自分が働きやすい態勢に持っていこうと策動しております。このためチナヲチに向き合えるほどまとまった時間がとれず、記事漁りが精一杯という状態が続いています。

 まずは前回のコメント欄で頂いた御質問に私なりに御返答いたします。

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 (1)御家人さんは、対日賠償において、童増と胡錦涛は対立する勢力ととらえておいでですが、これは、本当に対立する勢力でしょうか。

 今は別の流れだが、対立はしておらず、後でマージする可能性も十分あるように私には見えるのですが。

 ――

 本当に対立する勢力かどうか、ということは正直わかりませんが、過去の経緯に加え最近の中国内外の報道を基に推測すると、対立する勢力ではないかという邪推になります。別の言い方をすれば、目下のところ童増の組織が胡錦涛側を含め党上層部の方針として一本化されたもの、という気配が全くみられないのです。

 全人代(全国人民代表大会=立法機関)前に童増が「中国国内での訴訟」を目的とする民間組織を立ち上げたのに対し、すぐに半官半民的な「日本での訴訟支援」をうたった組織が成立し、その後のマスコミ露出度においても童増側を圧倒しました。

 ところが今回はそれがまだみられない。ならば童増で一本化ではないかという見方もできるのですが、一本化したのなら胡錦涛側メディアである『中国青年報』『解放軍報』がこのニュースに対し一切黙殺の態度を貫く理由が見当たりません。それから童増側の続報もありません(私の見落としがなければ)。

 主要マスコミは逆に胡錦涛の提唱する「社会主義栄辱観」キャンペーンに力をいれています。この状況をみれば対日政策におけるイニシアチブは別として、内政面では胡錦涛側が一応優勢であるように思います。翻っていえばこの「社会主義栄辱観」関連記事が減ったあたりでアンチ胡錦涛諸派連合の本格的な反撃が始まる可能性があります。

 「今は別の流れだが、対立はしておらず、後でマージする可能性」という手の込んだ動きは、潰すか潰されるかという中国政治の権力闘争においてはありえないのではないかと愚考します。対立していないならすでに主要メディアを挙げての宣伝攻勢が行われているでしょう。一本化されるときは、対立する政治勢力のいずれかが敗北したことを意味するものだろうと思います。

 自業自得で形成された「反日世論」への配慮、という点に関しては昨年10月の小泉首相による靖国神社参拝で民間有志の「反日」活動を押さえ込んだ実績があります。今回似たような動きが民間で発生し、胡錦涛政権がそれを止められないのであれば、かなり香ばしい展開をみることができるかと思います。

 ――――

 (2)御家人さんはじめまして。
 防衛問題の専門家の太田述正氏は、「日本の政治ないし政治家達が、胡錦涛政権に徹底的にコケにされている」と論評してます。
↓ソース
http://www.ohtan.net/column/200604/20060406.html#0
http://www.ohtan.net/column/200604/20060407.html#0

 「コケにされている証拠」として、橋本元首相との会談で靖国問題を持ち出したことをあげ、これに関する胡錦涛政権の「考え」を次のように推測してみせているのですが・・・・

 1.中川昭一を農水に「降格」させ、二階を経産に据えたのは日本側からの関係修復のサインだろう
 2.中共の東シナ海上の監視飛行が一昨年来急増しているがこれに日本政府は特段の対抗措置を取っていない。つまり小泉政権は対中共「低姿勢」でいるということだ
 3.ガス田を試掘しようとしないのも小泉政権の「低姿勢」のサインである

 ↑と胡錦涛は考えているのだろう、というのが太田氏の論なのですが、どーですかこの理屈。
あまりに無理が有りすぎではないかと思うんですが

 ――

 これは私にはわかりません。正直お手上げです。ただ私からみると、いま現在の対日政策の意思決定の核がどこにあるかよくわかりません。少なくとも「胡錦涛政権」主導ではないような印象で、外野から色々な介入が行われ、それらの言い分も織り込んでやらないといけない、という指導力の弱さが現在の胡錦涛政権にはあると思います(そもそも「胡錦涛政権」自体、胡錦涛派によって完全掌握されている訳ではありませんし)。

 各方面の言い分を折衷するから時間もかかり、内容も最大公約数的な切れ味を欠いたものしか出てこない。かと思うと、逆に動脈硬化したかのような電波系脊髄反射が飛び出して来る。少なくとも対日外交において、中共政権は戦略不在で統制がとれていないように思えます。戦略があってもそれをすんなり実行できない状況なのではないでしょうか。

 ――――

 さて本題です。この微妙な時期に江沢民が出て参りました。4月6日のことです。

 母校の上海交通大学創立110周年記念式典に出席すべく姿を現わしたのですが、上海市のトップである陳良宇・上海市党委員会書記(兼党中央政治局委員)、韓正・上海市長を引き連れたその姿は自らの健在ぶりをアピールするとともに、あたかも「上海閥」の決起集会ではないかと思わせるものでした。

 決起集会?そんな大袈裟な……と思われる向きもあるでしょうが、学校側のプラカードには、

「江主席こんにちは!母校へようこそ!」

 というものがあったそうです。「江主席」って何ですかこれ?江沢民はもはや国家主席でも中央軍事委員会主席でもないのです。それを堂々と掲げるあたりに「独立王国」「大諸侯」として中央に対し屹立する上海市の実力がみてとれるかのようです。

 江沢民が登場すると待ちかねた学生や学校関係者から万雷の拍手。「総書記!」という声も飛んだとのこと。……いや、大学のオフィシャルサイトでも「総書記」という肩書がついている部分があったそうです。

 香港紙でこのニュースを取り上げたのは私のみた限りでは以下の3紙(4月8日付。きょう9日には『蘋果日報』他が後追い報道をしています。

 ●『明報』(2006/04/08)
 http://hk.news.yahoo.com/060407/12/1mrqa.html

 ●『星島日報』(2006/04/08)
 http://www.singtao.com/yesterday/chi/0408eo01.html

 ●『大公報』(2006/04/08)
 http://www.takungpao.com/news/06/04/08/MW-549726.htm

 親中紙である『大公報』が写真付きで報じているのは興味深いところです。もちろん「主席」だの「総書記」だのという言葉は出てきませんが、親中紙の筆頭格である『香港文匯報』がこのニュースに全くふれなかったのと対照的でした。

 ――――

 中国国内メディアはというと、上海市党委員会の機関紙である『解放日報』はじめ、上海交通大創立110周年のニュースを大きく扱ってはいるものの、「江沢民」という名前は全く出てきません。出てこない、いや江沢民の名前を出せないところにいま現在の政情の一端が垣間見えるといえるかも知れません。

 ●『解放日報』(2006/04/08)
 http://www.jfdaily.com.cn/gb/node2/node142/node200/userobject1ai1292223.html

 ●「新浪網」(2006/04/08)
 http://news.sina.com.cn/c/2006-04-07/14359560371.shtml

 ただ、「新浪網」が転載した『新聞晩報』のニュースにはニヤリとさせられました。記事のタイトルが、

「上海交通大学の記念晩餐会は経費節減の原則、宋祖英らがゲストで熱唱する予定」

 ……なんです。これは見る人が見れば江沢民の出席を暗示するものといえます。なぜなら宋祖英というのは江沢民御贔屓の歌手で、江沢民の出るイベントには必ずゲスト出演していたといっても過言でないほどのお気に入り。宋祖英が出演、しかもその舞台が江沢民の母校である上海交通大学の記念晩餐會となれば察する読者も多いことでしょう。

 過去にはその関係が政争に使われたこともありました。

 ●ひょっとして江沢民への警告?(2004/11/26)

 それにしても『新聞晩報』記者にはお見事の一言。報道統制のなか、うまいタイトルをひねり出したものです。こういう「察する」部分が必要とされるところがチナヲチの醍醐味でもあります。

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 この時期に江沢民が出てきたことが政争か何かとリンクしたものなのかはまだわかりません。とはいえ無視できることでもありませんので、一応ピックアップしておく次第です。


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 【余談】昨夜(4月8日)はこれに参加してしまいました(笑)。

共産党共産党共産党共産党共産■共産党共産党共産党■産党共産党
■■■■■■■■■共■■■■■■■■■産■■■■■■■■■党
共産党共■党共産党共■党共産党共産党■産■共産党■産党共■党
■■■■■■■■■共産党■産党共■党共産■共産党■産党共■党
共産党共■党共産党共■■■■■■■■■産■共産党共産党共■党
共産党■■■共産党共産党■産党共■党共産■共産党共産党共■党
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共■■共産党■■党共産党共■■■産党共産■共産党共産党共■党
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http://www.geo
cities.jp/vip_40
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 続報のようなものです。自称強制労働被害者による対日賠償請求訴訟の一件、前回はそれに名を借りた政争が生起したのではないか(アンチ胡錦涛諸派連合が仕掛けた)、という勘繰りに重点を置いた内容でした。そこで今回は訴訟を担当する組織に軸足を移して眺めてみたところ、標題通りの結果になりました。政争色いよいよ濃厚、という印象なのです。

 改めて説明しておきますと、自称強制労働被害者による対日賠償請求、この訴訟はずっと日本に乗り込むという形で行われてきたのですが、結果は言うまでもなく法に照らして連戦連敗です。そこで「こりゃもう中国国内で裁判に持ち込むしかない」ということで、それを主眼とする組織が立ち上げられました。

 ●中国民間対日索賠聯合会が成立、国内での訴訟が本格始動(新華網 2006/04/03)
 http://news.xinhuanet.com/legal/2006-04/03/content_4376889.htm

 日本の新聞にならって
「中国民間対日賠償請求連合会」と呼ぶことにします。トップである会長に就任したのは反日活動家の代表的存在である童増。ほぼ孤立無援のような状態のもと、長年にわたり対日賠償請求訴訟を支援してきた苦労人でもあるのですが、尖閣諸島の領有権を主張し現地に船を出して上陸を試みたりしている「中国民間保釣連合会」(反日サイトの総本山格)の会長でもあります。

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 傍からみている分にはこの童増というのはなかなか可愛気のあるキャラです。ネット上でのみ威勢がいい糞青(自称愛国者の反日教徒)などとは違い、上述したように目を引く行動だけでなく地道な活動をも継続してやっている愚直さがあります。

 一方でマスコミが喜ぶような過激な反日言論を発表するといったサービス精神もあり……というより「空気が読めない」という致命的な欠点があって、お呼びでないときに反日論を展開したりして当局から睨まれたりしたりしています。例えば党中央が反日騒動を収拾しようと躍起になっているときに香港紙のインタビューに嬉々として応じて過激な言辞を弄するといったような(笑)。

 ところが今回立ち上げられた「中国民間対日賠償請求連合会」は童増らしくない手の込んだ、念の入った始動ぶりでした。軍師がいるのでしょう。

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 今朝(4月4日)の香港紙『蘋果日報』『明報』の報道によると実はこの組織、まず今年1月に香港で正式に登記されており、いってみれば「外資系」。本部は香港にあってこのほど代表事務所を北京に設立し、それが前掲の「新華網」の記事になったという訳です。

 今後、自称被害者の委託を受けて同会が中国国内で訴訟を行うことになりますが、「自称被害者」は強制労働ばかりでなく、慰安婦だの平頂山虐殺事件(自称)の生存者だの化学兵器問題での被害者なども対象になっており、すでに強制労働1名、慰安婦1名、南京虫事件の生存者1名が委託手続きを済ませているそうです。そのうち重慶小空襲の自称生存者その他もわらわらと群がり出てくることでしょう。

 で、この手の込んだ組織の立ち上げ方、そしてその北京代表事務所設立が中共当局に許可された、というのが
「香ばしい点その1」ということになります。元々いずれかの政治勢力(たぶんアンチ胡錦涛諸派連合側)を後ろ盾にしているのでしょうが、北京での拠点設立認可をとりつけたというのは初めてリーチが通ったというに等しく、それ自体を政治的事件とみてもいいかと思います。党上層部内の勢力図が微妙に変化しつつあることを反映したものではないか、ということです。

 ――――

 
「香ばしい点その2」は、同会のメンバーに人民解放軍の退役将官や党・政府の元高官といった意外な顔ぶれが多数名を連ねていることです。『明報』(2006/04/04)によると、例えば第二砲兵部隊政治委員の史可信大将、北京軍区空軍副司令官・劉玉堤中将、同じ北京軍区空軍副司令官だった王定烈少将など、いずれも退役してポストから退いてはいますが、あるいは隠然とした勢力を有しているかも知れない面々です。

 元高官も多彩な顔ぶれです。中央組織部副部長・王照華(同会名誉会長)、中央連絡部常務副部長・蒋光化、中央連絡部弁公室主任・宋慶才(同会副会長)、北京市高級法院副院長・陳春龍(同会副会長)、中央統一戦線部幹部局局長・胡治安……などなど、これまたいずれも元の職名であり、現役からは退いていますが、人脈は保たれているでしょう。ちなみに珍例として台湾の元国防部長・陳履安もメンバーに加わっています。

 こうして書き連ねてみると、何やらオープンセレモニーで一人ひとり名前を呼ばれ、スポットライトと拍手を浴びながら当人が舞台に上がってくるかのようです(笑)。同会のメンバーとなった元将官、元高官の人数は数十名にものぼるとのこと。これだけでひとつの党派、政治勢力ではないかと思えてきます。

 http://hk.news.yahoo.com/060403/12/1mnl0.html

 ――――

 「香ばしい点その3」
は『蘋果日報』(2006/04/01)による童増への電話インタビューの中に登場します。童増はまず今回北京事務所の設立申請がすんなり通ったことについて、日中関係の悪化が背景にあるのだろうと指摘。一方で、社会が進歩して以前は異端視されていた童増らの活動が民衆の支持を得てきたこと、当局もこうした活動が社会の安定維持に影響しないと認識するようになっていると語っています。

 ……このあたりは空気の読めない奴が言っていることですから話半分で聞いておけばいいのですが、「もし国内で勝訴できたら?」という質問には珍獣(プロ化した糞青)の面目躍如。

「(被告の)日本企業が中国で有している資産を差し押さえればいい」
「対中円借款から差し引けばいい」(中国から日本へ返済される分から賠償額が帳消しにされる)

 と言いたい放題です。法的根拠や勝訴の可能性についても自信満々の様子なのですが、童増は道化師だとしても背後の政治勢力次第では動脈硬化的な反応となる場合もありますから、どうなるかわかりません。

 ――――

 ●「日本の指導者に責任」 反日デモで中国外務省(共同通信 2006/04/04/18:52)
 http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=MNP&PG=STORY&NGID=intl&NWID=2006040401002403

 【北京4日共同】中国外務省の劉建超報道局長は4日、昨年4月に中国で発生した反日デモについて「日本の指導者の歴史問題に関する誤った行動に向けられたものだ」と述べ、靖国神社参拝を続ける小泉純一郎首相らに責任があるとする見解を明らかにした。

 また、一連のデモの性質について「私は『反日デモ』だったとは思わない。日本人民にも、日本という国家に向けられたものでもなかった」と指摘した。

 さらに劉局長は、日中首脳会談再開の必要性に言及した安倍晋三官房長官の発言について「単に会談するためだけの会談を開くべきではない」と批判。小泉首相が靖国神社参拝を中止しない限り、会談を再開する必要はないとの考えを強調した。

 ――――

 すでにこういう状態ですからねえ。笑ってばかりもいられない訳です。前回ふれた「ねじ曲げた無理矢理な法解釈」を含め、何が飛び出して来てもおかしくない、といったところです。

 ちなみに、胡錦涛の御用新聞である『中国青年報』、胡錦涛擁護に回っている軍主流派の『解放軍報』は同会に関する記事は一切掲載していません。黙殺しているあたりがいよいよ政争の香りなのですが、逆に「新華網」などに足並みを揃えて『中国青年報』や『解放軍報』も同会のニュースを報じ始めたら、それはそれで大変なことになるでしょう。



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 始まったのかも。……というのが第一印象です。

 自称強制労働被害者による対日賠償請求、この訴訟をこれまでのように日本の司法の下でやるのではなく、中国国内で実施しようという動きが本格化しつつあるようです。

 ●中国民間対日索賠聯合会が成立、国内での訴訟が本格始動(新華網 2006/04/03)
 http://news.xinhuanet.com/legal/2006-04/03/content_4376889.htm

 これは大変なことですよ。

 この記事によると、まずは鹿島建設、三菱マテリアル、住友金属あたりが血祭りに上げられる模様です。本格始動なのであれば、そうやって裁判でやられるところもあれば、直接関係者がオフィスに押しかけてきて、

「謝罪しろ。賠償しろ。二度とやりませんと誓え。回答期限は1カ月後だ」

 なんて脅迫状(要望書)を突き付けてくる「強訴」も増えるでしょう。

 ただ、どうもこれはそういう単純な事態ではなく、政争の序曲のように思えてなりません。

 ――――

 いや、何か起こるだろうとは思っていました。安定団結を演じてみせる全人代(全国人民代表大会=立法機関)の後というのは、ある種の虚脱感が伴うのか要人が外遊に出かけることが多いからなのか、ともかく中共政界に権力の空白期に似た状況が出現しやすく、蠢動したい政治勢力が何かを仕掛けやすいタイミングのようです。昨年(2005年)は反日騒動がありましたね。

 ●ほーら外交部が電波モードに。やっぱ制服組でしょ。・下(2006/03/12)

 アンチ胡錦涛諸派連合はいまのところ目立った動きをみせていませんが、胡錦涛の外遊期間を狙って蠢動するケースが過去に何度かありましたから、訪米したところで何か仕掛けてくる可能性はあります。

 あるいは現在開催中である全人代・政協(全国政治協商会議=全人代のオブザーバー的機関)というイベントが終われば、イベント直前のネタが蒸し返されるかも知れません。

 台湾ネタでなければやはり「反日」ということになるでしょう。
民間による対日戦時賠償請求訴訟を中国国内でやる、とか「水滸伝」「三国志」「西遊記」といった歴史的名作の商標を日本のゲームソフトメーカーが押さえてしまったことへの反発を煽る動きが改めて出てくる可能性はあります(最近報道されたものの全人代記事の中で埋没状態)。

 ――――

 ……てなことを当ブログでも指摘していたのですが、予想通りというか何というか。3月31日に胡錦涛・総書記が媚日派7団体を北京に召集して重要講話を発表したことについては前回紹介した通りですが、鳴り物入りで開かれたあの「学芸会」、そこで胡錦涛が披露した出し物が、御存知
「日本の指導者が靖国参拝をやめれば首脳会談に応じる」でした。

 このイベント、中国国内メディアでは大きく報じられたのですが、日本では一過性というか、「あ、そう」的に流されてしまっていますね。胡錦涛の出し物に新鮮味がないこと、橋龍など媚日派政治家の多くが賞味期限切れで大勢に影響しないであろうこと。中共の横柄さへの反発もあるでしょう。あれは一体何だったのだろう、とさえ思えたりします。対日宣伝という点において、中共の目論見は外れたというべきではないでしょうか。相変わらず日本の空気を読めていないようです(笑)。

 で、この「学芸会」のあと、こちらはお花見で忙しかったのに香港の同好の士数名が電話をかけてきて、御家人さんどうよこれ?と聞かれたりしたので、

「危ない。これはちょっと危ないと思う」

 とその都度答えておきました。少なくとも対日外交において、中共の意思決定メカニズムが「核」を欠いているように思えたからです。

 一党独裁制なのに「皇帝」不在で集団指導体制。独裁制権なのに「鶴の一声」でなく、まず相談してからどう動くかを決める。……それだけでも十分非効率なのに、その「集団」の中にも明確なリーダー格がいないうえ、軍部など外野からの介入も行われる。当然ながら果断なアクションや切れ味鋭い一手を打ち出すことができず、往々にして各方面の顔を立てた折衷案、つまり最大公約数的な結論に落ち着くことになります(もちろん私は、「皇帝」のいる一党独裁が最善の政治制度、と言っている訳ではありませんよ。念のため)。

 しかも色々相談してから決める訳ですから、切れ味のない方策であるうえ決定までに時間がかかり、手を打ったときにはすでに全く別の事態、新展開になっていたりするでしょう。今回の「学芸会」における「参拝やめれば対話に応じる」というのは、その典型例のように思えたのです。

 ――――

 同時に、「参拝やめれば対話に応じる」という物言いが柔軟性を欠いていたこと、しかも前回指摘したように、胡錦涛はそういう硬直的な態度を示したのに続いて、

「(小泉首相の)個人的な気持ちは分かるが、被害国の気持ちも尊重しなければならない」

 と語り、「参拝やめれば対話に応じる」が胡錦涛の本意でなさそうなことを示唆しています。この変に腰砕けな発言は、やや大袈裟に言うと胡錦涛が暗にSOSを発しているようなものです。要するに少なくとも対日外交において、胡錦涛はマリオネットになって、最大公約数的な「またそれかよー」という呆れた内容の施政方針を示す役を務めなければいけない状況になっている。「核不在」なんてもんじゃありません。

 だから私は「危ない」と思いました。最大公約数的な方針に決着したことは、アンチ胡錦涛諸派連合が蠢動している、というよりすでに対日政策への関与を強めている気配を感じさせますし、胡錦涛擁護に回っているとみられる軍主流派からも異論が出ているのかも知れません。「最終的には統一」という建前を台湾政府が放棄したこと(「終統」宣言)に加え、中共が贈呈するとしたパンダ受け入れにも台湾側が難色を示し、結局は断った。全人代期間中もそうですが、かなりピリピリした状態が続いているように思えます。

 いや、実は日本もこっそりと燃料を投下しています(笑)。姉妹サイト「楽しい中国ニュース」(2006/04/01)で紹介したのですが、どうやら日米は今年2月、尖閣諸島付近で合同軍事演習(海と空からの射爆訓練)を実施したようなのです(コメント欄の「胡錦涛」さんによる情報提供にも御留意あれ)。

 加えて4月20日の胡錦涛訪米が間近になったことで、貿易摩擦、為替レート、人権、知的所有権侵害、宗教弾圧といった面で米国からの圧力が強まっています。胡錦涛ピンチ(笑)。ということは、アンチ胡錦涛諸派連合にとっては政争を仕掛けるには絶好のタイミングということになります。

 ――――

 で、民間による対日戦時賠償請求訴訟を中国国内でやるというのは、その具体的表現ではないかと愚考する次第です。これについて当ブログでは、

 ●中国国内での対日民間賠償訴訟、初めて実現か。(2006/02/17)
 ●対日民間賠償請求、中国での訴訟実施はどうやら本気?(2006/02/22)
 ●対日賠償掲げた政争?に胡錦涛が逆転攻勢。(2006/02/27)

 ……で経緯を追っていますが、党上層部が一枚岩でないのと同様、実はこの民間による対日戦時賠償請求というのも2派に分かれる情勢になっていました。

 具体的にいうと、この問題については糞青(自称愛国者の反日教徒)どものアイドルであり、代表的な反日活動家の珍獣(プロ化した糞青)・
童増(中国民間保釣聯合会会長)が長年にわたり自称被害者を支援するなどして日本での訴訟を実施し、連戦連敗を重ねてきました。

 そこでとうとう
「もう国内で訴訟をするしかない」という結論に達してその目標に向けて動き始めたのですが、中共政権は対日賠償権を放棄しています。もし国内での裁判をやるなら当局はねじ曲げた法解釈を行うこととなり、対日関係にまたひとつ面倒事を持ち込むことになってしまいます。

 そこでこれは胡錦涛側からの一手だと思うのですが、日本での訴訟を支援する組織が半ば公的に設立されました。この新組織をメディアにどんどん露出させ、募金活動などの関連イベントを開催することで、童増らアンチ胡錦涛諸派聯合を背景とするとみられる民間団体の動きを封じる策に出たのです。……と、ここまでが全人代までの動き。

 で、全人代が終わり、この問題が再燃することとなりました。最近福岡地裁でまた敗訴判決が出たことも関係しているかも知れません。ともあれそうしたことを背景に出てきた動きが冒頭に示した「新華網」(国営通信社の電子版)の報道なのですが、何とこれが胡錦涛側の「日本での訴訟支援」ではなく、「中国国内での訴訟を」という童増側のアクションなのです。『法制日報』と『京華時報』の報道をまとめたこの記事の中には童増へのインタビューも登場します。

 ●全人代後の政治的空白期でのアクション
 ●アンチ胡錦涛諸派連合が仕掛けた気配が濃厚
 ●「反日」という錦の御旗を掲げている
 ●活動主体は「民間組織」

 ……という4点が昨年の反日騒動の初動期とよく似ています。「民間組織」に後ろ盾があることは言うまでもありません。恐らくアンチ胡錦涛諸派連合に属するいずれかの政治勢力でしょう。

 ――――

 だからまた反日騒動だぞ、ということになるのかどうかは目下のところ何ともいえません。ただ、胡錦涛に対する政争が反対派によって仕掛けられた可能性が強い、と邪推している段階です。セオリーであれば再び胡錦涛側による「日本での訴訟支援」をクローズアップさせる動きがまずあるでしょう。胡錦涛が当時の統率力をなお維持していれば、の話ですけど。

 もし本当に政争なのであれば、その胡錦涛を擁護してきた軍主流派の動向がカギになるように思います。目下のところは目立った動きは出ていませんし、むしろ自重している雰囲気すら漂わせているのですが。

 ……ともあれ、楽しみな展開になって参りました。心浮き立つ春、といったところです(笑)。



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