先月末にこういうことがありました。快事なるかな。
●西松強制連行訴訟、原告の敗訴確定 最高裁「個人の請求権放棄」(Sankeiweb 2007/04/27/12:01)
http://www.sankei.co.jp/shakai/jiken/070427/jkn070427006.htm
第2次大戦中に中国から強制連行され、広島県内の建設工事現場で働かされたとして、中国人の元労働者と遺族の計5人が、工事を請け負った西松建設(東京都)に総額2750万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審判決が27日、最高裁第2小法廷であった。中川了滋裁判長は「昭和47年の日中共同声明で、中国人個人の裁判での賠償請求権はなくなった」との初判断を示した。
その上で、原告の請求をすべて認めて逆転勝訴を言い渡した2審・広島高裁判決を破棄し、原告の請求を退けた。原告の敗訴が確定した。
この判断によって、中国人に対する一連の戦後補償裁判は事実上終結。最高裁ではこの日、大戦中に旧日本軍に慰安婦にされたとして、中国人女性らが国に計4600万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審判決もあり、第1小法廷の才口千晴裁判長が同様の理由で女性側の上告を棄却した。女性側敗訴の2審・東京高裁判決が確定。2審は「日華平和条約で請求権は放棄された」としていたが、最高裁判決は理由を変更した。
このほか、中国人の強制連行や慰安婦に絡む3件の同種訴訟の決定もあり、最高裁はいずれも原告側の訴えを退け、敗訴が確定した。(後略)
一言でいえば天魔覆滅。中国語では「老天爺有眼」。……ちょっと違うかも知れませんけどまあいいでしょう。ともあれこの結果を受けて中共政権が脊髄反射。外交部報道局長の劉建超が出てきました。例のデブですね。これを受けて時事通信が「反発を強めるのは必至だ」とワクテカ報道。期待する方向が私とは正反対のようですが(笑)。
●「共同声明の一方的解釈」に反発=最高裁判決、新華社も速報-中国(時事通信 2007/04/27/11:41)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2007042700459
【北京27日時事】中国政府は、西松建設強制連行訴訟をめぐる27日の最高裁判決が「(1972年の)日中共同声明により個人の賠償請求権は放棄された」と初めて判断したことを受け、「共同声明の重要原則を一方的に解釈してはならない」(劉建超外務省報道局長)と反発を強めるのは必至だ。日中関係が先の温家宝首相の訪日で改善する中、「懸念材料になる」(日中関係筋)可能性も指摘されている。
中国国営新華社通信も、この日の判決を至急電で伝えるなど大きな関心を示した。
ええ、新華社も速報しました。急いでいるせいか事実描写に撤した味気ない記事です。どういう判決が下るかはわかり切っていたから予定稿だったのかも。
●戦時強制労働訴訟、日本最高裁が上告棄却(新華網 2007/04/27/20:48)
http://news.xinhuanet.com/world/2007-04/27/content_6037133.htm
読売新聞がデブの言い分を詳報しています。
●中日共同声明への最高裁の解釈は「無効」、中国が強く批判(読売新聞 2007/04/27/23:41)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20070427id22.htm
【北京=河田卓司】中国外務省の劉建超・報道局長は27日、最高裁による西松建設強制連行訴訟に関する判決に対し、「日本の最高裁が中日共同声明について下した解釈は不法であり、無効である」と強く批判し、「我々はすでに日本政府に、この問題を適切に処理するよう求めた」と語った。
劉局長は、中国政府が1972年の日中共同声明で戦争賠償の請求を放棄したことについて、「両国人民の友好に着目して、ともに行った政治決断」とし、最高裁が「この条項を勝手に解釈したことに強い反対を表明する」とした。
原文はこちら。
●「新華網」(2007/04/27/20:51)
http://news.xinhuanet.com/world/2007-04/27/content_6037160.htm
ついでに翌朝早々に出た「人民網日本語版」も置いておきます。
●戦争賠償条項への日本の勝手な解釈に反対 外交部(新華網 2007/04/28/09:56)
http://j.peopledaily.com.cn/2007/04/28/jp20070428_70602.html
これまたタイムリーな反応です。来るかな?これは来るかな?……と期待させる素早いリアクションだったのですが、速報した割に後が続きません。期待したキャンペーンもその気配すら見せずに「五一労働節」(メーデー)に始まる大型連休に突入。ええっもうおしまい?いくら何でもちょっと速過ぎっていうか超淡白。
去年のいまごろの「反日」報道はもっと粘り腰でしたよ。反日活動家の代表格・童増(中国民間保釣連合会会長)が戦時賠償訴訟の民間団体を立ち上げて、
「中国国内で民間による対日戦時賠償訴訟をやるんだ」
なんて息巻いていましたから。それを上海閥あたりが後援しているフシがあって、胡錦涛側がそれに対抗して「裁判は日本で」系の別団体を立ち上げて押さえ込みにかかったりもしました。今回、全面敗訴にも関わらず童増が飛び出して来ないのは、飼い主(後ろ盾の政治勢力)にそこまでやる元気がないからでしょう。
「安倍首相が慰安婦問題でまた謝罪」
なんて記事が最近は連日出ていましたけど、先日の雑談で書いたようにこれは「安倍叩き」ではなく、逆に「歴史問題に悪びれることなく素直に謝罪する安倍首相」というヨイショ記事の線が濃厚。どうして慰安婦問題で首相が謝罪しなきゃならないのか私には全くわかりませんけど。
ともあれ、胡錦涛政権としては温家宝訪日も終わってこの薄っぺらい日中友好ムードを何とか持続させようということでしょう。少なくとも「対日訴訟全面敗訴」をキャンペーンにさせないだけの統制力を胡錦涛が有しているということです。ええ、目下のところは。
それにしても期待した分、こちらは不完全燃焼です。それ以前に劉建超の言い分が癪にさわります。そこで鬱屈を散ずるべく一筆啓上。翌日早朝に某所へと燃料投下してきました。喰らえ必殺のスターリンオルゲル。
●戦時中の強制労働で何たらな連中は中国政府を訴えるのが筋だろ?
日本の最高裁は昨日(4月27日)、「西松強制連行訴訟」について、中国人個人の賠償請求権は「日中共同声明」第5条において放棄されているとの理由から原告らの上告を棄却したそうだ。ま、根拠十分な上に道理にもかなった全く想定の範囲内の判決だったな。
(´々`)y━・~~~
それなのに中共が何やらまたぐちゃぐちゃと。外交部のデブ(キモヲタ風)が早速しゃしゃり出てきて、
「中国政府が『中日共同声明』で日本国への戦争賠償請求放棄を宣言したのは、両国人民の友好的共存に目を向けた政治的決断だ」
だとさ。……そう、中国は30年以上前に賠償要求権を放棄している。それをどうして今になって「両国人民の友好的共存に目を向けた」とか言い出してくる訳?もしかして判決に手心を加えてほしいとか?いわゆる根切り交渉?
悪いけど裁判所はお店とか市場じゃないんだよね。それに日本は堂々たる法治国家。中国みたいに「法制あれど法治なし」なんて素敵な伝統は残念ながら持っていないし。
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どうにも解さないのはね、この劉建超っていうデブが他にも色々言っていること。
「われわれは日本の最高裁が中国側の度重なる掛け合いを顧みず、この条項を勝手に解釈したことに対して強い反対を表明する」
「日本の最高裁が『中日共同声明』に下した解釈は違法であり、無効だ」
あちゃー(ノ∀`)
それじゃ聞くけどさ、……おいデブお前にだよ。それじゃ聞くけどな、一体どういう解釈だと合法的で有効でお前ら中共のお気に召す訳?
劉ちゃん折角だから「正解」を教えてくれよ。お前ら勝手な「釈法」(法解釈)で散々香港市民をイジメてきたんだからそういうのお得意だろ?ほら、言えよ糞デブ。……ま、お前に言える度胸があればだけどな。
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いやーもし中国がさ、「日中共同声明」において中国政府が放棄を宣言した対日戦争賠償要求に「個人などの賠償請求権は含まれない」とか言ってくれると面白くなるんだけどねえ。
だってそうなったら日本側も中国に対して賠償請求ができるから。対象は終戦時に中国側に没収された民間の資産。当時中国にいた日本人や日本企業が所有していた現金とか住宅とかビルとか工場とか線路とかね。
でも中国にとってラッキーなのは台湾の分まで引き受けなくても済むことだよな。
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上で出てきた「日中共同声明」はいわば日中関係の原点。例えば日本が「『一つの中国』の支持を堅持する」っていう根拠は第二条に出てくる。
「日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。」
……っていうのがそれ。日本が「承認」しちゃっているから正式に認めている訳で。で、肝心の台湾問題だけど、これについて中国は第3条で大見得を切ってるんだよね。いわく、
「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。」
ところがこの中国の姿勢表明に対して日本は冷ややかというか何というか。
「日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」
ポツダム云々は日本が台湾などの領有権を放棄してそれが中華民国のものとなるとかならないとかいう話で、ただ中華民国のものになるっていう根拠のカイロ宣言にはその拘束力に疑問を呈する向きから存在自体が怪しいという説まであるんで紛らわしい。ともあれ日本は台湾を放棄しましたってことは確か。
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ところがその帰属について中国が前段で「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する」って高らかに宣言しているのに対し、日本側はその立場を「理解し、尊重」するのみ。「一つの中国」では使われている「日本国政府は……承認する」っていう正式に認めた形になっていない。
「理解し尊重する」ってのは極言すれば「ああそうですか。そちらの言い分は一応聞いておきますね」てなもんで、要するに日本は台湾が中共政権の領土の一部であることを、この日中関係の原点ともいえる「日中共同声明」で正式に承認していないことになる。
いやだから中共にとってはラッキーだな、と。日本は「日中共同声明」以来、台湾は中共政権の一部とは一度たりとも正式に認めていない。だから台湾の分は日本から要求が出ないので中共は大助かり。
だって当時の台湾における日本の民間資産総額ったら相当なものになるんじゃないかな。それを知っているから蒋介石は対日戦争賠償請求権を放棄した訳で、それゆえに中国国民党は世界でも有数の金持ち政党。
でも中国大陸で国民党が没収した分は中国に請求するよ。だって日本は「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する」って正式に認めているからね。もし中国が拒否すれば「一つの中国」は即刻破綻。
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デブが急に大人しくなっちゃったから勝手に話を続けるけどさ、4月に温家宝が来日したときに発表された「共同プレス発表」も起草段階でずいぶん揉めたそうで。
何でも中国側が台湾独立を明確に反対するように日本側に明文化することを強要したところ、日本側は「明記するならば、プレス発表はなくていい」と断固拒否。
●日中首脳会談 日中「戦略互恵」まだら模様(Sankeiweb 2007/04/12/08:03)
http://www.sankei.co.jp/seiji/shusho/070412/shs070412001.htm
結局、
「台湾問題で日本側は、『日中共同声明』で表明した立場を堅持する」
……てな形で落着したんだけど、要するに日本は「台湾は中国の一部」であることを正式に承認していないって立場を従前通り守ったことになる。
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これ、些細なことのようだけど日本が35年前に「一つの中国」を受け入れなければならない状況下で辛うじて確保した大切な空間。
だって台湾が「正名」と「新憲法制定」を実現したとき、つまり台湾が「中華民国」という国名を捨てて「台湾」を名乗り、身の丈に合った憲法を制定して正常な国家としての体裁を整えたとき、日本はこの空間を一種の抜け道として台湾との国交樹立が可能になるから。
……まあ国際社会の力関係とか色々あるからそう簡単に事は運ばないだろうけど、通路を確保してあることが何より大切。台湾有事のときに日本が米国とともに介入して台湾支援に回ったときに、中国が「内政干渉だ!」って抗議してきても、
「だって台湾は中国の一部なんて認めたことないし~」
って涼しい顔で流すこともできる。まあ日本政府もそういう土壇場で涼しい顔でいられるくらい腰が据わっていてほしいもんだ。
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ああ何だか余談に流れちゃったけど、強制労働何たらの話だったな。思うんだけど、連中は相手を間違えていると思うんだよね。訴えるなら「日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言」しちゃった中国政府に対して訴訟を起こすのが筋ってもんでしょ。うまくやれば「法制あれど法治なし」がいい方向に作用してくれるかも知れないし(笑)。
……てな趣旨の中国語を燃料投下したところ、入れ喰い状態になるかと思っていたらあにはからんや釣果なし。おいおい放置プレイかよー。
無視されるのが一番こたえるっていうのに。orz