日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 冗談じゃないですよ。何ですかこのニュースは。相当深刻じゃないですか。



 ●中国で4000人が役所襲撃、一人っ子政策不満また爆発(読売新聞 2007/05/30/23:15)
 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20070530id22.htm

 【香港=吉田健一】30日付の香港紙・蘋果日報などが報じたところによると、一人っ子政策をめぐり、不妊手術の強要や暴力的な手段での罰金徴収が明るみに出た中国南部の広西チワン族自治区玉林市で29日、市内の三つの鎮(町に相当)で、同政策に反発する計約4000人の住民が鎮政府庁舎を襲撃するなど暴徒化し、警官隊と衝突、双方合わせて100人以上が負傷した。警官に殴打され、住民側に死者が出たとの情報もある。

 3か所のうち最も激しい暴動となった楊梅鎮では、3階建て鎮政府庁舎や公用車に放火するなどして暴れる約3000人の住民に対し、警官隊が警察犬をけしかけるなどして制圧したという。

 玉林市では、5月17日以降、10か所前後で同様の暴動が相次いで発生し、当局の横暴に対する住民の不満が極度に高まっている。




 とりあえず過去のエントリーをば。

 ●農民蹶起!広西博白県下の各鎮で同時多発暴動、庁舎炎上。(2007/05/21)
 ●続・広西同時多発暴動:不妊手術より上納金。(2007/05/23)
 ●広西農民蹶起2:またも同時多発暴動、県外へも飛び火!(2007/05/25)

 この事件はまず「計画出産利権」という今まで注目されなかった汚職のカタチ(罰金を規定以上に余計にせしめて自分の懐に入れる)と、同時多発型暴動という点が新しいものでした。特に同時多発型暴動というのは前代未聞です。

 ところが、事態は終息することなく、他県に飛び火したこと、また一部の鎮レベルで農民の間に連携めいた動きが生じつつあることがわかりました。これで事件は第二段階に入ったといえます。

 そして今回はその第二段階の続編です。上の記事ではふれられていませんが、米国系ラジオ局「自由亜洲電台」(RFA)によると、今回事件が起きたのは玉林市でも最初の同時多発型暴動が発生した博白県ではなく、飛び火した先の容県なのです。

 計画出産政策の執行に関するノルマ(不妊手術の実施&罰金徴収)を達成できず、イエローカードを突き付けられた博白県とは違い、罰金集めでは優等生的存在だった容県。それだけに苛酷な取り立てが行われていたと想像されますが、博白県の事件に触発されたかのように暴動が発生しました。しかも3件の同時多発型暴動です。

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 RFAの報道によると、まず容県の楊梅鎮で5月29日、粗暴な計画出産政策執行に不満が爆発した農民2万名が蹶起して政府庁舎を包囲し放火するなどしたあと、翌5月30日には近隣の石頭鎮で3000名以上がやはり政府庁舎を襲撃。ここでは激しい官民衝突が生じて少なくとも十数人が逮捕され、武警(武装警察=内乱鎮圧用の準軍事組織)多数が進駐して戒厳令状態に。

 楊梅鎮の衝突では少なくとも3人が死亡したという村民発の情報が流れていますが確度は不明。ただ政府庁舎を包囲し車両十数台を焼き打ちにしたほか、建物にも放火していますが、ここでは火炎瓶が使われたようです。事前に武器を準備していたということは、とうとう武装農民が出現ということでしょうか。事実ならば注目すべき事態です。

 当局はこの楊梅鎮に対しても武警数百人と警察犬多数を投入し、警官は棍棒で片っ端から民衆を殴りつけて回り、騒ぎを制圧したとのこと。この際に農民1名、警官2名が死亡したという噂が村民の間で広まっているようですが、これも未確認情報です。

 ちなみに29日に発生した暴動は上記楊梅鎮の他に霊山鎮、黎村鎮でも発生したとされています。やはり同時多発型なのです。このうち黎村鎮の暴動は4~5日連続で発生しており、30日時点でも民衆と警官隊のにらみ合いが続いているとのこと。

 言うまでもありませんが、これらの暴動の原因は全て同じで、役人による粗暴な計画出産政策執行ということになります。

 粗暴とは規定数以上の子供を持つ世帯から徴収する罰金の額が以前に比べ大幅に引き上げられたこと、「社会扶養費」という新種の追徴型罰金を新設し、過去に罰金を払った世帯からも取り立てていること(いずれも罰金が払えなければ家財没収)、また有無を言わせず見境なく女性を拉致しては不妊手術を行っていたこと、などです。

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 不思議なのは、暴動情報が漏洩していることと、広西チワン族自治区政府に動く気配がいまのところないということです。

 四川省・漢源暴動や広東省・汕尾市の暴動などでは、まず武警などが外部との交通や通信を遮断して現場を封鎖状態にしてから、戒厳令を敷いて村民を血祭りに上げるなりしてきました。過去の農村暴動は概ねそういう形で終息しています。田舎だからできるパワープレイです。

 過去最大規模である県単位の農村暴動となった漢源暴動では、外地から武警2コ師団が投入されたといわれ、四川省当局はもちろん、党中央から要人が四川省入りして総指揮にあたっています。

 ところが、今回は同時多発型暴動が発生し、さらに他県へと飛び火していく状態だというのに、いまだに博白県、容県の属する玉林市当局が対応しています。事件の異質さや規模からすれば、自治区当局が事態収拾に乗り出して然るべきところです。ところが現在に至るまで、それが行われた様子はありません。

 事態を重くみた中央から派遣された国家計画出産部門の特別調査チームが現地入りしている筈ですが、その活動に関する情報も皆無です。そもそも現地入りできたかどうかも不明なままです。

 一部の襲撃で火炎瓶が登場したこと、ドミノ倒し的に暴動が連続していること、農民同士の連携めいた動きがあることなどを考えると、そろそろ自治区当局が腰を上げないと取り返しのつかない事態に発展する可能性があります。

 「計画出産利権」が自治区政府の関連部門を頂点とする上納金システムであったとすれば、博白県や容県以外の県、また玉林市以外の地域でも、噂を聞いて「おれたちも」と後に続く動きが出現しかねません。

 そうなったときには武警2コ師団程度では制圧できなくなっていると思うのですが。……また続報が飛び出すことになるのでしょうか。事態は暗転しつつあります。

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 ●「RFA広東語」(2007/05/30)
 http://www.rfa.org/cantonese/xinwen/2007/05/30/china_riot_guangxi/

 ●「RFA北京語」(2007/05/30)
 http://www.rfa.org/mandarin/shenrubaodao/2007/05/30/jisheng/

 ●『自由時報』(2007/05/31)
 http://www.libertytimes.com.tw/2007/new/may/31/today-fo4.htm




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 晴れたのです。

 変な言い方ですけど、昨夜の雨天に続いて今日も雨模様、午後からは雷雨という予報が、本当に、嘘のように晴れたのです。

 前回のコメント欄で「dongze」さんが、

 ●きっとその時だけ晴れますよ (dongze) 2007-05-31 05:52:55
 御家人さん、
 大丈夫。

 と優しい言葉をかけて下さったのですが、本当に晴れました。青空にぷかりと浮かぶ白い雲。やや湿度はあるものの気温が低めで、5月らしい陽気となりました。潮の香りを含んだ隅田川からの風が気持ちよかったです。

 李登輝・前台湾総統が「奥の細道」の振り出しである松尾芭蕉旧宅跡や芭蕉記念館を訪ねるということで、私も野次馬根性丸出しで行ってきました。もう買ってから6年になる取材用の古くて重い一眼レフデジカメで李登輝氏ばかり100枚前後撮ってきました。正直、他に撮るものもありませんでしたし(笑)。

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 ACG関連(アニメ・コミック・ゲーム)と違って、こういうシチュエーションでの写真撮影はみんな殺気立っています。ACGでも期待されていた新型ゲーム機の発売日取材だとややそれに近いピリピリ感。

 今回ももちろんピリピリです。某新聞のカメラマンに、

「すみません脚立一歩分下げてもらえます?」

 と頼んだり(もし言うこと聞かなかったら私は……だって天下のA紙でしたからw)、私が確保した場所の前に陣取りをしようとしたAP通信?の外人女に、

「おい人の前に場所取るなよ」

 と怒鳴って、

「でも……」

 と日本語で言うから、

「デモも機動隊もないんだよ。どけ」

 と切り返したり、私の背中を押そうとしたSPの手を、

「さわるな」

 と力一杯振り払ったり、私の前で座って撮影していた記者が腰を浮かして私のファインダーの中に入ってくると、

「座れオッサン。邪魔だ」

 と、自分もオッサンであることを忘れて毒づいたり。

 ――――

 ……あ、申し遅れましたが日の丸と台湾の小旗を振るだけではつまらないので、野次馬を徹底させるべくプレスパスをつけて一応取材活動をして参りました。

 プレスパスをつけると私は10倍くらい図々しく荒っぽくなります(当社比)。香港や台湾の仕事仲間や元部下にも「いつもの御家人さんと違う」みたいな言われ方をされています。でも、

「やったもん勝ちなんだよバーカ」

 ……なんて思うのは、やっぱり香港の弊風に染まったせいかも知れません(笑)。

 私は一応香港の出版社の東京駐在員。雑誌や書籍からDVDまで制作している零細企業ですから、私が東京で委託を受けて取材活動をしても不思議ではないのです。でも李登輝さんってACGと全然関係ないんだけど……だから何?

 私はコソーリ活動と称して色々な筆名で香港や台湾でも中国問題の文章をときどき新聞に書いていますし、ブロガーが堂々とプレスパスをもらえる時代でもあります。

 で、撮ってきた写真のうち何枚かをここで掲載すべきなのですが、仕事中の配偶者がPCカードをどこに置いたのかわからない状態なので帰宅を待つしかありません。まあ期待されるような写真はありませんから出さなくてもいいんですけど。

 ともあれ私にとっては久しぶりに政治関連の取材となりました。自己肥大気味のゲームクリエイターにインタビューするのと違って、久しぶりに取材者として仕事をした気分です。

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 それにしても、念願の李登輝さんをすごく間近でみることができました。感激です。オーラを放っているという感じはしないのですが、あの笑顔に接すると、こちらの心までホクホクしてくるような感じがしました。恐るべき人間力です。それともあの感応力ともいうべきものがオーラってことになるのでしょうか。

 記者会見が流れたのが残念でした。私は二つだけ聞きたいことがあったのです。それがかなわなかったのが無念。

 まあ、とりあえず速報ということで。消耗しましたけど行ってよかったです。いまでもホクホクしています。たぶん私だけではないでしょう。

 そういう周囲をホクホクさせてしまう不思議な魅力の持ち主、でも現役時代の数々の業績が示しているように、ただの好々爺ではない凄みを内に秘めている底知れぬ深さ。……というのが李登輝さんに対する私の印象でした。

 やっぱり、偉人としかいいようがありません。




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 先日、恩師と映画鑑賞デートをして参りました。私にとっては2回目の「俺は,君のために死ににいく」です。私が公開前から「あの映画は良さげです」と煽っていたので恩師も観る気になった次第。

 一緒に映画を観て、見終わって映画館の照明がついて、隣の席に置いておいた荷物をとろうと私が横向きになったその瞬間、恩師が70代半ばのお婆さんとは思えぬ力で、平手で私の背中をどやしつけてきました。

 えっ、と思って振り向いたら、恩師が小さな声ですが力強く
「ありがとう」と私に言いました。恩師一流の照れ隠しのようなものです(笑)。ああよかった、先生も楽しんでくれたんだなあ、と思って私はうれしくなりました。あとで、

「こんなに心に沁みる映画は何十年ぶりかでした。連れてきてくれて本当にありがとう」

 と改めて感謝されてこちらは恐縮するばかりでした。

 恩師は近年日本国籍をとるまでは中国のパスポートでしたが、漢族ではありません。少数民族のひとつで、その貴種ともいうべき血筋です。ですから小学校,中学校は日本人と一緒に日本語で授業を受け、慰問袋や千人針も経験して、15歳のときに戦争が終わりました。自称軍国少女(笑)。もちろん日本人と寸分違わぬ、しかも上品な日本語を使います。

 ただ、新中国が成立してからは反右派闘争、大躍進、文化大革命と政治運動の繰り返し。恩師は血統からみても日本人の中で育ったかのような生い立ちに照らしても、吊るし上げの対象です。

 文革のころは大袈裟でなく「いつも生命の危険を感じて生活していました」とのことです。終戦時に15歳だからよかったのですが、あと5つも年上だったら「国際間諜」で銃殺刑にされていたそうです。

 実際、終戦直後に恩師の親戚の女性がスパイ容疑で銃殺されています。その人は収監中毎日、刑場に引き出されていく人がいると、その背中が見えなくなるまで「海ゆかば」を歌って見送ったそうです。

 ――――

 映画を観たあとの恩師はどこか胸の中が何かでいっぱいという風情で、お茶をしても何となく落ち着かなかい様子でした。そのあと外に出てから「あなたは仕事があるからお家に帰りなさい」とちぎって捨てるように言われました。私は特に予定もありませんでしたし、もっと恩師と話していたかったのですが、そうかそうかーと思って別れました。

 果たせるかな後刻電話がかかってきて、

「あのときは御家人君ともっと色々話したい気持ちもあったのだけど、映画で観たことや感じたことをひとりで考えたい気持ちもあったから」

 と話してくれました。

 映画の感想として、特攻隊員たちがあんなに人間味のある普通の若者で、出撃前にそれぞれが悩み苦しんでいることを初めて知ったので、まずそのことに感動したそうです。恩師は中国で激動の政治運動の時代を生き抜き、そのあとほどなく日本に留学生として出てきて定住したので、特攻隊に対しての認識はなかったようです。

 面白かったのは私の母同様、映画冒頭で特攻隊の魁とされる敷島隊出撃の記録フィルムが流れたときにBGMが「海ゆかば」だったことで、万感胸に迫るというか感慨深いものがあったと話してくれました。

「母もそう申していましたが、そういうものですか」

「そりゃそうですよ。学校では毎日宮城遥拝のあと『海ゆかば』を歌っていたんですから」

 なるほどそういうものか、と私は思いました。私はあのシーンの「海ゆかば」には反応しなかったのですけど、世代によってはあれが絶好の「つかみ」として作用したようです。「つかみ」を狙ったものであれば見事としかいいようがありません。

 私はラストでトメさんと主人公が目にするシーン、あの満開の桜並木の下で戦友たちが笑顔でこちらに手を振っている幻影、あそこで「海ゆかば」を流すのはそりゃ反則技じゃないかとタオルを握りしめつつ改めて思いました。個人的にはあと1回は観たいところです。恩師は恩師で近く一時帰国する中国在住の日本人の故旧たちにこの映画だけは必ずみせてあげたいと何度も言っていました。

 ――――

 ……前フリが長過ぎましたが、その恩師が、上品な日本婦人といった感じの日本語を話す恩師が、

「あの人の日本語がいちばん正しい」

 と常々激賞しているのが李登輝・前台湾総統です。

 きょう(5月30日)のお昼過ぎに成田着の飛行機で、東京に入るそうです。何だか信じられない、というか実感が湧きません。……いや、李登輝氏がきょう来日する、ということがです。

 だって前回(2004年末)は中国がそりゃもう大騒ぎでしたから。当ブログ左サイドの「CATEGORY」の中の「李登輝氏訪日」で古いエントリーにあたって頂ければ、中共政権の恫喝めいた狂乱ぶりと、実際には手の出しようがないので口だけで終わってしまい余りにカコワルな尻すぼみで終わったことがわかります。

 ところが今回は『朝日新聞』がいかにもな御注進記事(たぶん中国側にとっては有難迷惑)を掲載したくらいで、中国国内メディアを含め、騒動めいたものは一切ありませんでした。

 昨日(5月29日)の中国外交部による定例記者会見で報道官が、

「厳重に抗議する。日本側が『日中共同声明』などを遵守することを望む」

 などと言っていました。それだけです。ちなみにこの「日中共同声明」で中国側は「台湾は中国の領土の一部」と主張し、日本側はその主張を「理解し尊重する」とはしているものの、「台湾は中国の一部」ということを正式に承認していません。

 面白いですね。中国側は「日中共同声明」を持ち出して抗議している。日本側は同じ「日中共同声明」に拠って「別に問題なし」としている。そういえば台湾人だけノービザですしね(笑)。これもたぶん「日中共同声明」という大原則に照らしたものでしょう。

 ――――

 ともあれ、中国側の反応は形式だけのもので気合いが入っていません気合いが。例えば昨年の小泉純一郎・首相(当時)による「八・一五靖国参拝」のときと様子が似ています。騒ぐまい。これで騒いじゃだめだぞ騒いじゃ、といった気配です。

 ●騒ぐだけムダでカッコ悪いことを前回の李登輝氏訪日で学習した。
 ●一応の日中友好ムードに水を差したくない。
 ●日米安保「2プラス2」の共同戦略目標で「台湾問題」が明記されなくなった空気を維持しておきたい。
 ●ただでさえ暴動が頻発している中国社会が反日で熱くなるとどう転じるのかわからないのでマズい。
 ●5年に1度の党大会を今秋に控えているので、この問題で党上層部に不協和音が生じては困る。
 ●胡錦涛政権の指導力が2004年末に比べて段違いに強まっている。

 ……てなところでしょうか。とりあえずメディアには騒がせない方向で、という意思統一がなされているようにみえます。そういう軽度の規制を敷ける程度の力はいまの胡錦涛政権にはあるということでしょう。まあ前回は胡錦涛政権発足後の試用期間3カ月を終えてアンチ胡錦涛諸派や軍部からダメ出しが行われた時期だった、そのため必要以上に騒いだ、ということもあるかも知れません。
 
 今回は東京ということで、歴史に名を残すことになるであろう哲人政治家の風貌に、遠くからでもひと目でもいいから接しておきたい、という野次馬根性が私にはあります。

 そこはそれ、上海留学中に民主化運動が生起したのを振り出しに現場運だけは恵まれていますから。去年の「八・一五靖国参拝」は混むのを避けるために早出したのに、逆にそのためにナマ小泉さんに遭遇してしまいましたし。

 今回はわざわざ近所に立ち寄ってくれるようなので、楽しみにしているのです。

 上天気であれかし。




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 これは大変なことになりました。続報ではなく新展開です。例の広西チワン族自治区・玉林市博白県下の各鎮で発生した前代未聞の同時多発型農村暴動、その第二波が発生し現在進行中です。

 しかも今回は博白県だけではなく、同じ玉林市に属する容県にも飛び火。先日の国営通信社・新華社による独占配信記事で騒乱が終息したことが報じられ、ヤマは越えたかと思われたものが一転、再び燃え上がった火の手に先の読めない状況になってきました。

 「第一波」の経緯と背景については、とりあえず当ブログの既報記事をどうぞ。

 ●農民蹶起!広西博白県下の各鎮で同時多発暴動、庁舎炎上。(2007/05/21)
 ●続・広西同時多発暴動:不妊手術より上納金。(2007/05/23)

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 簡単に言ってしまうと、博白県下8カ鎮で先週末(5月17~19日)、相前後して発生した農村暴動は、博白県当局の無茶苦茶かつ鬼畜きわまりない計画出産措置の執行に農民たちの堪忍袋の緒が切れたものでした。

 具体的には、博白県当局の計画出産部門の職員ら「実行部隊」が見境なく女性を拘束しては不妊手術を施す一方、計画出産政策に違反し規定(二人)より多くの、つまり3人以上の子供を持った世帯から罰金を取り立てたことです。

 しかも罰金は以前より桁違いの金額にはね上がり、さらに新たに「社会扶養費」という名目の追徴型罰金も制定して、棍棒やハンマー、手錠などを持った「実行部隊」が村々を襲撃して取り立てに回り、女性を拘束して病院で不妊手術を強行したほか子供を拉致する事態も発生。

 罰金の払えない世帯は家財道具からアルミサッシまで強奪されて銀行口座も差し押さえられ、また違反世帯だけでなく村落の全世帯が身ぐるみ剥ぎ取られるケースも続発したため、夜襲で子供を拉致されないように日が暮れるとみんなで山中に避難する村も相次ぎました。

 「官匪」の暴虐ぶりは農民が「戦争中の日本軍の方がまだマシだった」とこぼすほどで、最後には追いつめられた農民が我慢の限界に達し、各鎮政府を民衆が包囲して政府庁舎を炎上させるなどの騒ぎに発展、一部では警官隊との衝突なども発生しました。この過程で死傷者多数が出たとの未確認情報も流れています。

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 博白県当局をこの暴挙に走らせたのは、自治区政府の計画出産部門による会議で博白県が計画出産政策遂行のノルマを果たしていないと非難され、9月までに目標値に達しなければ関係幹部は全員更迭、とイエローカードを突き付けられたからです。

 香港紙の報道によると、そのノルマとは、

「不妊手術約1万7200件を行うとともに、『社会扶養費』788万元を取り立てろ」

 というもの。要するに博白県当局にとっては、1万7200名の女性をひっ捕えて有無を言わせず不妊手術を施す一方、とにかく農民から788万元をむしり取らなければならない、ということです。

 
「お前らこのままじゃクビ」と最終警告を出された同県に対しては、上級部門である玉林市のトップ(文明・玉林市党書記)も前線視察に乗り出してノルマ達成を督励したといわれています。……というのも、博白県がダメダメだと同市当局の責任問題にも発展する可能性があるからです。同じ玉林市に属する県でも容県は模範的な成果を上げており、5月1日からの大型連休中の一週間で「社会扶養費」3400万元を集めたとされています。博白県の働きの悪さが際立ってしまう訳です。

 ――――

 ともあれ、前掲エントリーの「不妊手術より上納金。」で指摘したように、私はこの狂気の沙汰の背景には
「計画出産利権」があるのではないかと考えています。自治区政府計画出産部門を頂点とした上納金&見返り特権という汚職の構図です。

 物権法の制定で土地を強制収用して転売し売却益や住民に対する補償金の多くを着服する、というこれまでポピュラーだったやり方に形式上は規制が加えられることとなり、土建屋や公害企業などと癒着することでオイシイ思いができたイケイケドンドンのGDP成長率追求型の開発路線に対しては、「成長率より効率重視」という最高指導者・胡錦涛が掲げる「科学的発展観」が待ったをかけました。

 そこで登場した新手の汚職が「計画出産利権」ではないかと私は邪推しています。「上納金&見返り特権」ではなく、「上納金ノルマ+α」で罰金を取り立て、「+α」分を自分の懐に入れるという形である可能性もあります。

 あるいは新種の汚職ではなく、経済開発のままならない貧困地区で地元党幹部がうまい汁を吸うために以前から行われてきたものかも知れません。

 ただ「社会扶養費」のような罰金や「実行部隊」に村々を襲撃させるという手口が今年に入って出現したことから、やはり中央政府によって規制の網がにわかに張り巡らされたことに対応したもの、という見方ができるのではないかと考えています。今回発生した「第二波」の同時多発型暴動もそれを裏打ちしているように思えるのです。

 ――――

 ……そうでした。前置きが長くなってしまいましたが、「第二波」の同時多発型暴動についてです。

 暴動終息を宣言した新華社電が配信されたのは5月22日夜。ところが現地ではその前日である月曜日(21日)に博白県下の旺茂鎮で1000名を越える規模の官民衝突が発生していました。

 これを「第一波」とするか「第二波」とするかは難しいところですが、問題はその翌日の22日。中央の意向を色濃く反映したとみられる博白県当局にとって厳しい内容の新華社電が出るその日に、何と博白県当局の「実行部隊」が手分けして同鎮の村々を回り、改めて罰金(社会扶養費)の取り立てを行っていたのです。「優等生」である容県当局も県下の自良鎮に対し同日取り立て行動に出たとのこと。

 「実行部隊」は新華社電が全国ニュースとして浸透した翌23日も跋扈して取り立てを続行したため、すでに一度キレている農民もこれに即応。旺茂鎮ではこの23日に農民1000名以上が鎮政府庁舎を包囲してレンガや棍棒で建物の窓ガラスを叩き割るなどの騒ぎに発展しました。

 このとき現場に駆けつけた警官・武警(武装警察=内乱鎮圧用の準軍事組織)数百名との間に衝突が発生。民衆多数が鉄パイプなどで殴打され、数十名が連行された模様です。これは正真正銘の「第二波」。しかも香港紙『蘋果日報』(2007/05/25)の報道によると3カ鎮で農民が暴動に及んだとのことで、またまた同時多発型なのです。

 米国系ラジオ局RFA(自由亜洲電台)はやはり博白県の沙河鎮で強奪された家財などの返還を求めて3000名余りの民衆が政府庁舎を襲撃、さらに水鳴鎮でも鎮政府庁舎前で抗議デモが行われたと伝えています。

 ――――

 今回特筆すべきは暴動の火の手が「模範生」たる容県にも波及したことです。『蘋果日報』によると、23日に暴動が発生したのは博白県の旺茂鎮、水鳴鎮、そして上記容県の自良鎮。RFAは自良鎮の暴動について、民衆約3000名が政府庁舎を襲撃し、警官隊との衝突で少なくとも十数名の負傷者が出たと報じています。

 「第一波」で比較的激しい衝突の発生した沙陂鎮、英橋鎮、那卜鎮などには22日の時点でなお警官・機動隊・武警など多数が進駐して半ば戒厳令状態にあり、いまのところ「第二波」に呼応した動きは報じられていません。ただ『蘋果日報』によれば沙陂鎮では23日にデモを行った40名が警官隊に連行されたとの情報が流れているようです。

 またタレ込みサイト「博訊網」が『亜洲週刊』の報道を転載したところによると、やはり厳戒態勢下の龍譚鎮で22日に数千人規模のデモが政府庁舎前で行われ、同日には山間部の各鎮に通じる道路のあちこちに民衆によって破壊された警察車両など多数が発見されたとのこと。

 いずれにせよ、今回はとうとう容県にも暴動が飛び火したことで、ドミノ倒しのように事態が拡大していく可能性も出てきました。ワクテカ?いやそりゃワクテカですとも。こうして火の手が上がった一方で中共政権にとって最も由々しき事態である李登輝・前台湾総統の訪日があり、もしさらに株価暴落ともなれば都市部でも騒ぎになるでしょうからこれはもう(笑)。

 ワクテカといえば実に興味深い動きがあります。博白県下の一部の鎮の間では農民たちの連携が生じつつある気配がするのです。RFAによると、農民たちは複数の鎮から約20名を選抜し、22日、秘密裏に北京への「上訪」(陳情)に出発させたとのこと。旅費は農民たちがお金を出し合って調達。20万元をカンパした者もいたそうです。

 この情報をつかんだ玉林市当局は市内各県の駅やバスターミナルに厳戒態勢を敷いて説得工作や拘束を企図したものの、いずれも失敗。北京まで行き着けるかどうかはともかく、陳情組はすでに外地へと出た模様です。

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 前代未聞の同時多発型暴動が終息したかと思いきや「第二波」が発生し暴動は他県にも飛び火。その一方では陳情組を出したように博白県下の一部の鎮の間で連携めいた動きがみられるなど、事態は思わぬ方向に展開しつつあります。

 ただ、その原因は「第一波」の同時多発型暴動で懲りずに罰金取り立てをなおも強行した地元当局にあります。

 その活動は新華社の独占配信記事が出た後も続けられたことから、「中央vs地方」の対立軸でいえば、地方当局は中央の意向に構わず、また胡錦涛直系の「団派」(胡錦涛の出身母体である共産主義青年団人脈)に属する自治区トップ・劉奇葆・自治区党書記をも無視して、あくまでも地元の行動原理に基づいて進退していることがわかります。

 要するに
「官vs民」「中央vs地方」という対立軸が「計画出産利権vs同時多発型暴動」というひとつの事件の上で反目を深めている訳です。かなり香ばしい状況になってきたといっていいでしょう。場合によっては、意外に面白いドラマを鑑賞することができるかも知れません。

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 ●RFA(2007/05/23)
 http://www.rfa.org/mandarin/shenrubaodao/2007/05/23/guangxi/

 ●RFA(2007/05/24)
 http://www.rfa.org/mandarin/shenrubaodao/2007/05/24/bobai/

 ●『蘋果日報』(2007/05/25)
 http://www1.appledaily.atnext.com/

 ●「博訊網」(2007/05/25)
 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2007/05/200705250446.shtml



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 眠いです。珍しく夜に床に就き朝に目覚めるという人並みなことをしてしまいました。

 ……というのも今日は恩師と映画鑑賞デート。昼間に「俺は,君のためにこそ死ににいく」を観に行く約束をしているので、健康な時間帯に活動しなければなりません。そこで無理矢理生活のリズムをひん曲げた次第。

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 今回は外出直前の寸暇を惜しんでの楊枝削りです。

零戦

双葉社

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 これはいいです。付録のDVDがいいのです。

 本体(書籍)の内容は「零戦」を「れいせん」と呼ぶ人にとってはやや物足りない気もしますし、やっつけ仕事な印象も残るのですが、DVDに零戦による空中戦の動画が収録されています。私はその付録のためにこの本を買いました。

 前回のコメント欄でふれましたが、私はこの空戦動画を制作したトッチーさんこと栃林秀さんの隠れファンです。かれこれ5年ほど前に某巨大掲示板の軍板あたりでHPの存在を知りまして、のぞいてみたら動画の質の高さに驚倒。当時は漫画が本職で空戦動画は余暇活動だったと思うのですが、「1942」「1945」という作品は必見です。

 アマチュアでもここまで出来るのか、とCG技術の進歩もさることながら、ひとりでこれだけのものを制作してしまうことに驚きました。日本はやっぱり凄い、アマチュア層の広さと深さ、そして実力の高さは並大抵のものではないと勝手に感じ入っていました。

 HPはこちらです。

 ●すっぽん
 http://www.k4.dion.ne.jp/~suppon/

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 ところがこの栃林氏、いまではその道のプロとなって日本では第一人者的存在のようです。前回のコメント欄で「souseiou」さんが御指摘の通り、私がこれからリピーターとして観にいく「俺は,君のためにこそ死ににいく」にも特撮場面の制作に参加しています。

 そして前掲の零戦本の付録DVDの空戦動画を制作しています。これもちょっと慌ただしい気がするのですが「1942」「1945」などHPで鑑賞できる動画が収録されています。でもそれはオマケ。

 目玉は零戦の空戦動画2本です。それも零戦撃墜王・岩本徹三氏が空母「瑞鶴」零戦隊に所属していた当時に生起した珊瑚海海戦における味方機動部隊上空での迎撃戦と、大空のサムライ・坂井三郎氏のガダルカナル島上空におけるグラマンF4Fとの空中戦が収録されています。どちらも7分強の動画です。

 恐らく苦労したのではないかと思いますが、岩本一飛曹・坂井一飛曹とも顔が本人によく似ていて、つい笑ってしまいました。見事な再現ぶりです。制作時間にあまり余裕がなかったのではないかと思いますが、やはり圧巻の空戦動画です。

 岩本一飛曹編では米機動部隊の攻撃隊に対する得意技の一撃離脱戦法がたっぷりと味わえますし、坂井一飛曹編では上空からグラマンに奇襲されて散開・回避する零戦隊(笹井中隊)のシーンや手信号、そして巴戦などが楽しめます。

 私にとってはDVD目当てに買った甲斐がありました。ひとつだけ注文をつけるとすれば、坂井一飛曹編です。一式陸攻隊の直掩任務中か今回の動画に出てくる護衛任務終了後に受けたグラマンによる上空からの奇襲攻撃に対し、いち早くそれを発見した坂井一飛曹は味方機に急を知らせるとともに旋回急上昇して向首反撃、すれ違いざまに敵機を1機撃墜していたことが戦後米軍の資料で明らかになっています。このシーンは是非織り込んでほしかったです。

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 あとは続編に期待です。岩本一飛曹であればラバウル上空の迎撃線や沖縄特攻の護衛任務における活躍を題材にしてほしいです。

 坂井一飛曹ならポートモレスビー上空のスピットファイア?との交戦で敵機多数を撃墜していながら(坂井一飛曹は4機撃墜)味方は全機健在で凱歌をあげた空戦、あるいは後に米大統領となるジョンソン氏らの爆撃隊をラエ上空で迎撃し、見事な手腕で敵機を血祭りに上げた邀撃戦を是非観てみたいところです。

 ともあれ、楽しめます。こういう動画を個人レベルで制作できるようになるなんて、いい時代になったなあ、と思いつつ堪能して下さい。



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 先日速報した広西チワン族自治区・博白県下の各鎮で発生した同時多発的な農民暴動の続報です。

 最大のトピックは中国の国営通信社・新華社が事件のニュースを国内メディアに配信したことでしょう。昨日(5月22日)夜遅くに記事が出たようで、大手ポータルなどでは日付が変わったばかりのタイミングでこれを掲載しています。あまり意味はありませんが並べておきます。

 ●「鳳凰網」(2007/05/22/21:02)
 http://news.phoenixtv.com/mainland/200705/0522_17_122514.shtml

 ●「網易」(2007/05/23/00:19)
 http://news.163.com/07/0523/00/3F4TFS0V0001124J.html

 ●「新浪網」(2007/05/23/00:49)
 http://news.sina.com.cn/c/2007-05-23/004913050407.shtml

 ●「華商報」(2007/05/23/00:54)
 http://news.huash.com/2007-05/23/content_6297851.htm

 ●捜狐新聞(2007/05/23/01:09)
 http://news.sohu.com/20070523/n250166755.shtml

 ●四川在線(2007/05/23/02:03)
 http://www.scol.com.cn/focus/zgsz/20070523/200752320344.htm

 内容はみんな同じで、新華社の配信記事をそのまま掲載しています。一字一句改めずに掲載するよう強要されているのでしょう。独自記事はNG。この「新華社の記事をそのまま使え」というのは日中首脳会談のような大ネタや政治的に敏感なニュースに際して採られる措置です。

 それだけ党中央が今回の事件にナーバスになっているともいえますし、この事態をどう裁いて落着させるか苦慮している最中、ともいえます。

 この記事がなかなか興味深い内容で、かなり気を使って書かれている様子がうかがえます。

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 まず今回の事件について、当局は箝口令を敷いたのですが、ネット上では事件発生後ほどなく掲示板やブログなどを通じて中国国内に情報が流れました。ネット世論は相当義憤したようです。……で、記事はその冒頭で暴動による混乱がすでに終息したことをまず報じているのですが、書き出しが「この事件みんなもう知っていると思うけどさあ」というノリを漂わせていてナイスです。

 続いて博白県当局の公報によれば、という形で事件の推移が語られます。まず5月17日午前に頓谷鎮の政府庁舎を群衆300余名が包囲し、官民衝突が発生。警官隊は先頭に立って煽っていた連中を法に基づいて召喚したとのこと。逮捕とか拘束ではなく「法に基づいて召喚」という珍しい表現に地元当局の腰が引けている様子がうかがえます。

 それから18日から19日にかけて、同県内の6カ鎮・郷で騒乱が発生し、状況が最も深刻だった段階では3000名近い群衆が政府庁舎を取り巻いて正門や壁、事務設備や書類など多数を破壊し、少数の不満分子というか騒ぎ屋によって自動車やオートバイへの放火や破壊行為が行われたとしています。……前代未聞の同時多発暴動なのですが、それについての描写はここまでです。

 ここで明確な線引きが行われていることに留意しておきましょう。「悪いのは一部のならず者」といった形で締めくくられ、一緒に暴動に加わっていた何百何千の怒れる農民たちを悪者にはしていません。お咎めなしです。

 これが博白県当局の公報なのです。棍棒やハンマーや手錠を携えてトラックに乗り込み県下各村を襲撃して回っていた土匪そのものの振る舞いから打って変わって大人しくなっていることがわかります。事件が党中央の耳に入ってしまったことで一転して下手に出てみた、というところでしょう。

 党中央以前に、自治区トップである劉奇葆・自治区党書記の知るところとなったのがまず痛いでしょう。香港の最大手紙『蘋果日報』(2007/05/22)によると、この劉奇葆は胡錦涛直系の「団派」(胡錦涛の出身母体である共産主義青年団人脈)です。いままで体よく祭り上げていたのでしょうが、地元のボスどもの悪事が露呈してしまうこととなりました。

 香港各紙の報道によると、今回の悪事は博白県やその上級部門である玉林市ばかりでなく、自治区政府の計画出産部門を頂点としたもののようです。

 劉奇葆自治区党書記は事態の深刻さに驚いたのか、あるいは隠忍自重しつつこの機を待っていたのか、ともかく「団派」ですから胡錦涛との間にホットラインがあるので素早く北京に動いてもらうことができます。それ「諸侯」退治だとばかりに中央政府、つまり国家計画出産部門の特別調査チームがすでに現地入りしたとのことです。

 ――――

 新華社の記事を続けます。

 博白県の公報に基づいてサラリと同時多発暴動にふれたあと、記者が現場で野次馬から聞いた話として、事件の原因は地元当局の人口抑制政策の進め方の悪辣さにあり、それで民衆が騒いでいるのだと報じています。おやおやです。

 さらにこの記事は最大規模の暴動に発展した沙陂鎮の民衆多数が、計画出産政策の職員が粗暴でしかもあれこれと名目をつけては罰金を農民からむしり取っていったと話したとも伝えています。

 さあこの辺で雲行きが怪しくなってきました。上で
「博白県が公表した資料では」と暴動にふれてから、今度は「野次馬の話」「民衆多数が語った」として地元当局の「官匪」ぶりが暴動を招いたと言わんばかりの内容に転じているのです。国営通信社の独占配信記事ですから党中央の意思が濃厚に反映されているといっていいでしょう。

 「少数のならず者」を罰する一方で地元当局のトップ、例えば博白県の蘇建中・党書記、さらに同県に出向いて前線視察を行い督戦までしたとされる玉林市の文明・市党書記あたりは腹を切らされることになるかも知れません。これがさらに上の自治区政府内に巣食っているボスにまで手をつけられるかどうかは胡錦涛政権の指導力と劉奇葆自治区党書記の腕次第ということになるでしょう。

 とはいえ人口抑制は国策ですから、ゴネ得の模倣犯が続出することになっては困ります。このため記事はこの国策たることについて言及し、その政策がいかに重要で必要なものかを説いた上で、博白県の農民はその重要性を理解することが少なく、このため局面を打開しようと計画出産政策を大々的に展開してきた、という地元当局筋の話を紹介しています。

 そして博白県の黄少明・県長によるコメント、

「一部の民衆が現在展開されている計画出産活動を理解せずに反発した。これは多くの民衆が計画出産に対する観念と遵法意識に乏しかったという側面がある一方で、当局による計画出産活動の執行状況にも些かの問題があり、このため民衆の恨みを買うことになった」

 ……というやや自己批判を含んだ談話が登場。何やら上からどれほどの雷が落ちてくるかを計っているかのようで、このあたりは官僚臭が漂います。

 最後に、別の企図を有した一部の者の策動により、民衆の反発を巧みにとらえて煽動し云々……というくだりはいつものお飾りですから無視して構いません。とりあえず現時点で拘束されている者は28名。総計すれば4~5万人が参加した暴動なのにたった28名というのも、農民への無用な刺激は暫く避けようという姿勢の表れかも知れません。ただ当局発表なので実際にはもっと多くの逮捕者が出ている可能性があります。

 で、いま現在、玉林市及び博白県当局による慰撫活動を目的とした28チーム・約200名が県内各地に入って応急処置を施しているとのこと。香港各紙の報道によると、1000名規模の治安部隊が派遣されて現地は戒厳令同然の状況にあるようです。

 ――――

 とりあえず、殉職した関連部門の職員に対し「優秀な共産党員」との称号を追認し顕彰することで、農民たちと真っ向からぶつかる構えを示していた博白県の腰は見事に砕けてしまったようです。

 一方で新華社電の内容は「地元当局の言い分」と「民衆の言い分」を併記した形に終始して事件に対する政治的評価は下しておらず、党中央が未だに断を下せない状況にあることを感じさせます。まあ目下のところ状況把握に全力を挙げている、といったところでしょうか。

 ……ところで上に並べた大手ポータルなどの報道ぶり、いずれも新華社電をそのまま掲載させられているのですが、その中にあって反骨精神?をチラリとのぞかせたのが「網易」です。

 確かに新華社の記事を一字一句動かすことなく掲載しているのですが、その上にリードが加えられており、「ポイント」として暴動の概略を手短にまとめた上で、事件の原因が当局の鬼畜なやり口にあったとする「民衆の言い分」を書き連ねているのが心憎いです。

 さらにこの記事に付帯した掲示板があり、私がのぞいた時点では300件近い書き込みが寄せられていました。少しだけ目を通しましたが、

「よっしゃー」
「新華社がこういうニュースを流すとは、まあ進歩といってよかろうw」
「公僕は反省汁」
「ガハハハ、ビクついている奴らがいるぜ」
「正義がどちらにあるかは言わずもがな」
「はいはい別の企みを持った少数の者たち別の企みを持った少数の者たち」
「おれたち庶民にとっては嬉しい日になったな」
「今日は天気がいい。人民も大喜びだ」

 ……といったコメントが削除されることなく残っていました(笑)。そういえば前回のリンク先の写真の中に鎮政府庁舎の正門から引っぱがした「××鎮中国共産党委員会」という看板を皆が足で踏みにじっている一枚がありました。私はあの写真に、反中共というより「官vs民」という対立軸、また特権にありつける「官」に対する「民」の怒りや絶望的・致命的な距離感を感じました。

 上で博白県のトップである蘇建中党書記や黄少明県長の名前が出てきましたが、暴動の起きた一部の鎮では、

「蘇建中を打倒せよ」
「黄少明は銃殺刑だ」

 といったスローガンが随所に貼り出されたそうです。

 ――――

 さて標題の「不妊手術より上納金」ですけど、今回のケースは「計画出産利権」ともいうべき構造が自治区政府内の担当部門を頂点に形成されていたように思えてなりません。

 もちろん違法出産に対する取り締まりが甘かった可能性もあります。地元では、

「一人生んだら避妊リング、二人生んだら結紮手術、三人目四人目は殺、殺、殺」

 という極端なスローガンが叫ばれていたそうですから。……ただ「実行部隊」の数々の暴虐も、子供を取っ捕まえたり女性に不妊手術を強制したりするよりは、村そのものを襲撃して金目のものを強奪していくことに重点が置かれていたように思います。

 それからいわれのない罰金。規定を越えた出産に対する罰金の金額が急に何倍にもはね上がったり、親がすでに罰金を払っている子供がすでに成人しているところで、今度は「社会扶養費」(規定より多く生まれた子供を社会が養ってきたのだ、という罰金)なるものを新たに設けて1980年までさかのぼって罰金を徴収したり。

 それを拒めば「実行部隊」が家に押し掛けて家財道具を一切合切持ち去ってしまいます。銀行口座の凍結という形での資産差し押さえもあったようです。違反していないのに村ぐるみでまとめて襲撃されたため生計が立たなくなってしまった人もいます。

 博白県当局がそこまで必死になったのも、

「ノルマをこなしていない。9月までに目標に達していなかったらお前らクビ」

 と上から圧力がかかったためで、そのノルマなるものは国策の徹底といったことよりも「上納金が少ない」というのが実際のところではないかと。ちなみに
「不妊手術約1万7200件を行うとともに、『社会扶養費』788万元を取り立てろ」というのがその「ノルマ」だったようですが、地方党幹部の行動原理からすれば、軸足は後者に置かれていたとみるべきでしょう。

 罰金を取れるだけ取り立てて上納すれば見返りに何らかの特権を与えられるというのは、末端に近いため上からの監視の目が行き届かない割に支配権は意外に大きいという県の党幹部レベルにはありそうな話です。……まあ、私の邪推にすぎませんけど。

 イエローカードをつきつけられた博白県とは裏腹に、同じ玉林市でも容県は成績優秀。5月頭の一週間に及ぶ大型連休中に人海戦術で取り立てを行い、その期間だけで「社会扶養費」3400万元を集めたそうです。

 そこで博白県当局も見境のない行動に出た訳ですが、裕福な農村ではなくむしろ貧困地区に属する場所での苛酷で不条理な年貢取り立て(というか本来の年貢だった「農業税」は昨年で廃止されたので新種の年貢)に、とうとう農民たちがムシロ旗を掲げて立ち上がったのでしょう。

 その意味で、今回の同時多発的暴動は近年発生している様々な農村暴動の中でも、典型的な百姓一揆に最も近いケースだったのではないかと考えているところです。

 ――――

 ここから先は、中央から派遣された「進駐軍」がどこまで巨悪を暴き立てることができるかに注目です。また、別の地区でもこの「計画出産利権」が明るみになるか、あるいは今回同様暴動という形で白日の下にさらされるか、といった点にも期待できそうです。

 利権というかカネの話だと都市部住民の株狂いからも目が離せません。マネーゲームの参加者がこれだけ広範かつ多人数になってしまうと、いったん暴落めいた動きがあれば噂が噂を呼んで雪崩現象に発展するでしょう。マクロコントロールなんて小手先技でどうにかなるものではありません。

 それによって中国経済がどうなるかということにも関心はありますけど、何より社会的な影響に興味津々です。いま現在、すでに放っておいても散発的に暴動が起きるような状況なんですから。




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 雑談です。

 えーと、先週は「念願」(これを果たすまでは死ねない)だった恩師との靖国デートは別として、仕事関連の仕込み・根回し・打ち合わせがなぜか集中してしまい、在宅勤務で病弱の私は連日の外出だけで体力消耗、当ブログの更新もままなりませんでした。

 とはいえ5月におけるもうひとつの「念願」、映画「俺は、君のためにこそ死ににいく」を金曜に上野で観て参りました。なぜか「母の日&父の日」イベントということになり、配偶者を連れて両親と会食。そのあと4人で映画と相成りました。

 地味なところにある映画館でした。ちなみに表通りには成人映画専門の映画館がありまして、ここは私にとって思い出の場所。

 高校の文化祭でYMOのコピーバンドをやるのにシンセサイザーがたくさん必要になり、大森のレンタル楽器店で朝イチにて機材受領ということになりました。朝イチで飛び込むためには前夜からスタンバイが必要。ということでオールナイトの映画館で時間をつぶすことにしました。

 少し前に私にオンガク熱を吹き込んだT君をはじめ5名ばかりで上野に出て、『ぴあ』で狙いをつけていた日活ロマンポ映画館に凸。制服のまま難なく入れました。ところが興味津々で入ってみたのに映画は期待していたほど面白くありません。一同ちょっと肩すかしを喰った気分になると、そこは若気の至りな面々ですから「これなら大森で野宿した方がマシ」という話になって終電で現地へと移動。

 9月下旬の小雨まじりな寒い夜でした。楽器店の位置を確認してから手頃なマンションの駐車場を確保。シーケンサーやリズムマシンの打ち込みをやってから寝ました。よく言われていますが新聞紙というのは本当に暖かいものです。「いまなら絶対警察に通報されてるよな」と先日T君と笑い話にしたのですが、確かにまだ治安に不安を感じなかった時代でした。

 ――――

 すみません軌道修正します。その上野の成人映画館の横の細い道を入ったところにある地味な映画館で「俺は、君のためにこそ死ににいく」を観てきました。目立たない場所で平日の昼間ですから空いていたのは狙い通りです。

 ところで、長らく駄文にお付き合い頂いている皆様なら御存知でしょうが、私は映画だとベタな展開に滅法弱いのです。しかも今回は「原作」とも言うべき『ホタル帰る』を読み返して映画のメイキングDVDまで観て臨んだ本番です。配偶者ともどもタオルを握りしめ、「泣キ方用意宜候」でした。

 えーと、そこは素直ですからツボを衝かれて正直にやられました。orz

 配偶者は私にとって糞扱いの「男たちの大和」でも泣いていましたから今回は冒頭から泣きっ放し。「海ゆかば」が流れるや母親も涙。そのまた向こうに座っている父親も鼻をグズグズさせています。

 ……あ、そういえば父親は昔「二十四の瞳」の映画版で貧乏なためアルマイトのお弁当箱を買えない女の子の場面でも鼻をグズグズさせていた記憶が。私の「ベタ弱」が遺伝であることを確認できました(笑)。ともあれ御家人一家揃って涙ぽろぽろの図であります。

 とりあえず採点しておきましょう。近年いくつか観たこの種の映画の中では私にとって一番でした。それまでのトップだった人間魚雷回天と学徒出陣組を描いた「出口のない海」は85点でぎりぎり「優」。そして今回の「俺は、君のためにこそ死ににいく」ですが、「優」は確実ながらちょっと迷っていまして88~92点と幅を持たせて保留状態です。

 まあ例によって独断と偏見に基づいていますからアテにしないで下さい。

 ただ、戦争を美化した映画でないことは確かです。

 ――――

 作中に織り込まれている特攻隊員たちのエピソードはいずれも実話をベースにしていますので随所でツボを衝かれました。「特攻隊員の母」たる鳥濱トメさんを演じた岸恵子も良かったです。特に予告編でも流れていますが、

「俺まだ19だから、あとの30年の寿命、おばちゃんにあげるよ」

 という特攻隊員の言葉に、涙をこらえて笑顔でうなずくトメさんのシーンは改めて御家人一家をウルウルさせました。

 終盤のCGを駆使した特撮シーン、要するに陸軍一式戦闘機「隼」による特攻隊の各機が敵機と対空砲火をかわしつつ敵艦に突入を図る場面は文句なしです。米駆逐艦はフィリピン海軍でいまなお現役のホンモノを使ったとのこと。映画ですからグラマンF6Fの迎撃が遅すぎるのはお約束ですね(笑)。

 それを観ながら、唐突ですが、もし自分があの時代にあの世代で戦闘機搭乗員だったらどうしたかと考えてみました。

 もし自由に選択できるとすれば、飛行時間800時間以上の上飛曹クラス(私は絶対海軍航空隊)なら「敵機撃墜こそ戦闘機乗りの本務」とほざいて制空隊(特攻隊の護衛戦闘機)を選んでいたでしょう。まあ選ぶまでもなく制空任務の戦闘機隊に組み込まれていたと思います。

 500時間程度なら私は迷いながらも間違いなく特攻隊に志願していたと思います。ただ、出撃までの時間に苦しみ思い悩み、神経を病むに至っていたかも知れません。そういう一種の極限状態のなか、特攻隊員に慈母の如く優しく接してくれる鳥濱トメさんの存在は自分にとって大きな大きな救いになっていただろうと思います。

 ――――

 映画では出撃直前に特攻隊の隊長が部下たちを飛行場の芝生に丸く座らせて、

「みんな間違えるな。靖国神社の神門をくぐって右から2本目の桜のところで集合だからな」

 という意味のことを言います。そうした「約束」、戦争中に交わされた無数の「約束」の上に靖国神社があるということを考えると、やはりあそこは特別な場所なんだなあと思わされます。

 私はいつも参道に入るとつい背筋を伸ばしてしまったり、心が洗われるような、ふと深呼吸したくなるような気持ちになるのですが(恩師も同じことを言っていました)、それはそういう「約束」が積み重ねられた特別な磁場であることを自分が意識しているからなのかどうか、これはわかりません。

 映画では、不本意にも生き残ってしまい、不本意に歳を重ねた隊長がラストで、桜並木の下で笑顔で手を振っている飛行服姿の、当時の若いままの仲間たちの幻影を晩年のトメさんと一緒に目にします(場所はどうやら靖国神社ではなかったようですけど)。

 まあ、きれいに話をまとめたものです。ベタですけどね。……と思いつつもやはり涙腺を刺激されます(笑)。いや真面目な話、実際に戦死することなく生き残った人にとっては、恐らく「約束」の場所へ行くとそういう幻影を確かにみることができるのかも知れないと思ったからです。

 主題歌がB'zという点を懸念していたのですが、これは杞憂で意外に悪くありませんでした。でも森山直太朗の「さくら(独唱)」だったらドツボで始末に困ったと思います。

 ――――

 ともあれ私にとっては、60年ばかり前に、自らの生命を投げ出して愛する人や故郷の風景を護ろうとした若者たちがいたこと、そして彼らが護らんとした日本は、現在を生きる私たちにもつながっているということを改めて考える機会になりました。

 映画では特攻という戦術が統率の外道であること、つまり軍上層部の無為無策の果てに行き着いた戦法であることも、特攻隊要員が事実上「志願」という形をとった命令で集められた側面があることも描かれています。そういう苛酷な状況下でその任務に就き散華した人々には、感謝の言葉しかありません。

 以前紹介したように、米国政府が最近機密扱いを解除したことで公開された資料によれば、至近弾で艦体あるいは人員に損害を被ったケースを含めると、特攻隊の成功率は56%にものぼります。

 突入成功例だけでも39%の高率。なるほど当時かくも多くの米国海軍の軍人が戦争神経症を患って兵隊として戦力にならなくなった訳です。この事実が米軍首脳部をして日本本土上陸作戦の実施をためらわせたといっても過言ではないでしょう。

 その意味でも、私たちは彼らがその生命を以て購ってくれた「いま」を生きていることになります。私は靖国神社を訪れるたびに、「ありがとうございました。本当にありがとうございました」と念じることしかできません。

 ――――

 実は昨日(5月21日)参拝した際に、「神門をくぐって右から2本目の桜」を探してみました。

 戦時中の靖国神社の風景というものを私は知りませんが、戦後、各部隊関係者や同期会などによって植樹された記念樹の桜がいまはたくさんあります。それを含めて数えると、「神門をくぐって右から2本目の桜」は、偶然ながらやはり沖縄戦における桜花の特攻で有名な海軍一式陸攻の「神雷部隊」の記念樹でした。

 それら記念樹を除外して探し当てた桜の木はそれほど太い幹でもない、何の変哲もない桜です。

 でも、そういう戦前からそこにあった記念樹でない桜それぞれに「約束」が込められているのかも知れないと思うと,また記念樹にもそれぞれ特別な想いが刻み込まれているのだと思うと、年甲斐もなく胸が熱くなりました。

 ――――

 ところで、一方で石原慎太郎氏の脚本に食い足らない部分もありました。点数を決めかねている所以です。その最たる点が「ホタル帰る」のエピソード。

「明日出撃だから、夜9時にはホタルになって戻ってくる。だから食堂の戸を少し開けておいてね」

 とトメさんに言い残して出撃し、ついに還らなかった特攻隊員がいます。約束したのでその日の夜になって食堂の引き戸を少し開けておいたところ、言葉通りに夜9時、灯火管制でほの暗い食堂にホタルがスーッと入って来るのです。この実話だけはいじることなく、そのまま映像化してほしかったところです。

 他にも特攻に殉じた朝鮮人のエピソード(金山少尉)が出てきますけど、これは故・豊田穣氏の『大日本交響楽』に収録されている小篇の方がトメさんとの心の交流がより深く描けているように思います。それを読んだ上で映画に接すると物足りなさを感じずにはおれません。

 まあエピソードをあれこれ詰め込みすぎた観なきにしもあらず、ですけど、映画ですから仕方がないのかも知れません。

 ただ2点だけ。

 ――――

 冒頭に特攻隊の魁とされる関行男大尉に敷島隊隊長を命じる場面が出てきます。実際には長髪をオールバックにしていたのですが、映画では坊主頭なのに失望しました。

 この関大尉は「最初の攻撃隊の隊長には範を垂れる意味も込めて海軍兵学校(士官学校)出身者を」ということで白羽の矢を立てられるのですが、出撃前に従軍記者(報道班員)に語った言葉、

「報道班員、日本もおしまいだよ。ぼくのような優秀なパイロットを殺すなんて。ぼくなら体当たりせずとも敵母艦の飛行甲板に五〇番(500kg爆弾)を命中させる自信がある」

「ぼくは天皇陛下のためとか、日本帝国のためとかで行くんじゃない。最愛のKA(海軍の隠語で妻のこと)のために行くんだ。命令とあらば止むをえない。日本が敗けたら、KAがアメ公に強姦されるかもしれない。ぼくは彼女を護るために死ぬんだ。最愛の者のために死ぬ。どうだすばらしいだろう!」

 ……これはストーリーとは直接関係ないものの、映画の主題につながる言葉だけに描いてほしかったです。しかも士官学校出というエリート職業軍人の口から出た言葉だけにより重みがあります。

 それから特攻を命じる司令官・大西瀧治郎中将が現地部隊の指揮官たちにその必要性を説く中で、アジア解放の戦争云々と言わせているのは余りに強引な気がしました。

 ――――

 もう一点は、ないものねだり。戦闘シーンの特撮の質には満足していますけど、せっかくだから空中戦を観たかった、ということです(笑)。

 海軍の特攻機には護衛の制空隊(零戦)がいましたし、陸軍も四式戦闘機「疾風」の部隊がその役を担っていた筈です。どうせなら、特攻隊を掩護する零戦や疾風が迎撃に上がってきたグラマンを撃墜するシーンを描いてほしかったです(紫電改は長く飛べないので沖縄まで往復できないんです残念)。

 実話ベースとはいえドキュメンタリー映画ではありませんし、商売なんですから少しは勝ち戦の部分も必要。実際に制空隊による戦果もあったのですから、直掩戦闘機が血路を開いてそこから特攻隊が突入していく、という形にしてくれればなあ、と思いました。零戦撃墜王の岩本徹三少尉とか、活躍していたんですけどねえ。

 ――――

 雑談ですから結語も何もありません。ちゃんと伝わってくるものがありますし、いまの自分を見つめ直すという意味においても、十分に観る価値のある映画だと思います。

 私はリピーターになります。恩師をエスコートして観に行く約束をしましたので。「念願」がまたひとつ増えました(笑)。




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 これはすごいです。久々の大規模な農村暴動。しかしそれだけではありません。特筆すべきことがいくつかあって、どこから手をつけていいのか迷うくらいです。

 まずは舞台となった場所ですが、広西チワン族自治区の博白県。隣接する広東省との境界に近い地域です。この博白県下の各鎮(県の下の行政単位)でタイトル通り、地元農民による前代未聞の同時多発的な暴動が発生、一部の鎮庁舎は農民たちの襲撃を受けて炎上、警察車両も破壊され焼き打ちに遭うなどしています。

 原因は地元当局による計画出産政策の押しつけです。その徹底ぶりが常軌を逸し、「官匪」といっていい暴力と収奪が横行したため、農民たちの堪忍袋の緒がついに切れて、自衛のため鎮ごとに「官」への逆襲に転じたというもの。どこまで組織的なものかは不明ですが、

「官逼民反」(「官」の横暴に追いつめられた「民」が成否を問わずに蹶起する)

 の典型例といっていいでしょう。とりあえず暴動系のタレ込みサイトとして重宝されている「博訊網」に掲載された現場写真をどうぞ。

 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2007/05/200705200252.shtml
 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2007/05/200705200250.shtml
 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2007/05/200705200248.shtml

 特筆すべきことがもうひとつ。今朝(2007/05/21)の香港各紙はこのニュースを揃って報じています。……いや、新聞が出た時点では、親中紙の『香港文匯報』と『大公報』だけはこの事件をスルー。

 この「なかったこと」扱いになっていることにも異常さを感じます。恐らくこの事件について、広西チワン族自治区当局ひいては党中央が「定性」(政治的な善悪評価)を未だ示していないからかと思います。

 そういう迷いが生じても不思議ではないほど今回は地元当局による「官匪」ぶりが際立っています。護民官たるべき当局が、民衆を農奴扱い。ここまでできるのか、と思えるほどの暴虐がここ3カ月余り、まかり通っていたようです。

 ――――

 そもそもの発端は博白県当局が上級部門から、計画出産政策のノルマが達成されていないとしてイエローカードをつきつけられ、

「今年はノルマを達成しないとお前らみんなクビ」

 と警告されたことによります。たぶんこのノルマにしても実際の人口に基づいた合理的なものではなく、県当局にしてみたら「そんな無茶な」というべき硬直した指標だったのでしょう。後述する実例からすると人口抑制より罰金集めがノルマの重点であるように思われます。

 ともあれノルマをクリアしないと我が身が危ない、と県当局は隷下の各鎮政府に厳命を下しました。そして実施されたのが香港紙『東方日報』が報じるところの
「三光政策」です。いわく、

 ●手当り次第に不妊措置(結紮)を実施する。
 ●計画出産政策に反した農民から罰金をとりまくる。
 ●家財道具でも家畜でもカネになるものを収奪する。

 というもの。県当局はこのために定職に就いていない若い衆800余名を駆り集め、さらに各部門からも職員を抽出して実行部隊を編成。県下各鎮各村を連日襲撃して上記「三光政策」を実施しました。

 いや正に「襲撃」としか表現しようがありません。「博訊網」が伝える実例によれば、実行部隊は棍棒や手錠を装備してトラックなどで各地を急襲。

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 ●実行部隊が城廂鎮の製衣工場を襲撃して女工たちを拘束、トラックに乗せて病院に連行し不妊手術を施した。逃げようとした女工は全身血まみれになるほど殴打された。

 ●通学途中の16歳の女子高生を通りがかった実行部隊が拘束し、不妊手術を実施。類似例として50歳の婦人も同様の目に遭っている。

 ●白平村の老人が8歳の孫と歩いていたところに実行部隊のトラックが通りかかり、有無を言わせず子供を奪い取って走り去った。子供の消息はいまなお不明。

 ●江寧鎮蓮花村の農民が一日の畑仕事を終えて帰宅してみると、村中の全ての家がドアをこじ開けられ、家財道具など金目のもの全てを持ち去られていた。

 ●草堂村の農民が畑仕事をしていたところに実行部隊数百名が来襲。一部の兵力で村の出口を封鎖しつつ、全ての家から金目のものを奪取。鍋や釜はもちろん、アルミサッシまで取り去られた。

 ●松旺鎮の林さんが親戚の営む小さな養豚場で働いていたところ、実行部隊のトラック数台が出現。百人余りの襲撃に村人たちは悲鳴を上げて自宅に逃げ帰りドアも窓も閉め切ったが、豚を守ろうとした林さんは袋叩きにされ、翌月には市場に出す予定だった豚32頭が強奪された。

 ●譚連鎮の日用雑貨商である劉さんが店を開けたところに折悪く実行部隊が来襲。数十人が店内に押し入って次々と商品を強奪し、アルミサッシまで取り去られた店にはビニール袋しか残っていなかった。

 ●計画出産規定に違反した者の罰金がそれまでの数百元から数万元へとはね上がり、また過去の違反者に対しては1980年時点までさかのぼって「社会扶養費」(計画出産規定に違反している子供を社会が養ったという罰金)を重ねて請求。3日以内に支払わなければ家財没収のうえ家屋を破壊。

 ……県下各鎮の村々で連日こうした土匪まがい(というか土匪そのもの)の行為が繰り返され、家財道具一切を奪われた農民たちはただ呆然とするばかり。

 夜襲も頻繁に行われるため、夜になると子供が連れ去られないよう一家で山中に避難する村民たちが相次ぎ、その際に毒蛇に咬まれて死亡した農民もいます。

 実行部隊800名に襲撃された東平鎮のある村では村民が必死に裏山へ避難。子供が泣き出したため、その声を聞かれるのを恐れた母親が懸命に子供の口を手で塞いでいたところ、気付いたら子供が窒息死していたというケースも。

 ●「博訊網」(2007/05/20)
 http://www.peacehall.com/news/gb/china/2007/05/200705202227.shtml

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 これら悪行三昧が全て地元政府である県当局の指示で行われていること、その上級部門の玉林市当局は見て見ぬふりであること、というのは驚くべきことです。まさに「官匪」ではありませんか。

 そして、こうしたやりたい放題の暴虐は恐らく頂点である広西チワン族自治区政府の預かり知らぬところでしょう。その自治区党書記や自治区政府主席が胡錦涛直系の「団派」(共産主義青年団人脈)であろうと「太子党」(二世組)であろうと「上海閥」であろうと、そんなことは関係ありません。「諸侯」と呼ばれる本当の地方のボスは市や県レベルに根を張っているのです。

 このことは注目していいと思います。中共による統治機構がこのレベルから下では立ち腐れ始めていることを示しているからです。現に「法治の実現」だの「和諧社会の建設」だの「社会主義新農村建設」といった、中央レベルで打ち出される方針をあざ笑うかのような事態が進行しているではありませんか。

 もちろん、今回のケースは香港メディアなどに報道されたから明るみになったものの、似たような「官」の横暴が恐らく全国各地で発生しているであろうことは想像に難くありません。

 というのは、これは計画出産政策に名を借りた新たな搾取という見方もできるからです。農民に対する農業税が廃止されて「胡温体制」とくに温家宝・首相の善政が中央で強調されましたが、末端レベルの地方当局はその農業税に代わる収奪がなければオイシイ思いができません。

 あるいは以前、当フログで取り上げた謎の官民衝突事件もこの計画出産絡みのものかも知れません。少数民族という要素がどれほどあるのかはわかりませんけど。

 ●またまた広東省で官民衝突、謎の4死6傷事件。(2006/02/14)

 ……襲撃された農民たちはいずれも生活の術を失って流民同様の境遇に堕ちてしまったといっていいでしょう。幸い被害に遭っていない農民にしても、いつ実行部隊のトラックが出現して村の出口を封鎖し、収奪の限りを尽くされるかわかりません。

 家財道具はもちろん、計画出産ノルマを達成するために子供までもが無理矢理連れ去られるのです。連れ去られた子供がどうなるのかは、ちょっと想像したくありません。

 ともあれ、ここまで「官」に追いつめられれば、農民たちも自衛のために立ち上がらざるを得ないでしょう。博白県下の各鎮で同時多発的、あるいはドミノ倒し的な農民暴動が発生することとなります。

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 香港各紙の報道によると、暴動は農民たち数千名が鎮政府庁舎に押しかける形で先週木曜か金曜(5月17日~18日)に大�鎮、安永鄉、英橋鎮、頓谷鎮などで発生。いずれも政府庁舎は放火され、水鳴鎮では博白県公安局トップの警察車両も焼き打ちされた模様です。

 当ブログでこれまでに紹介してきた数々の暴動で明らかなのは、いったん暴動が起きてしまうと地元当局の警察力では対応し切れず、上級部門からの応援を要請するしか手がないことです。この17~18日の暴動でも博白県当局は玉林市の警察に増援を求めましたが、その大半は途中で農民たちに行く手を阻まれたそうです。

 各紙の電話取材によると県当局は「騒乱」が発生したことは認めていますが、計画出産政策の極端な遂行ぶりが原因かどうかについては口を濁しています。

 横茂鎮の警察署によると県下32カ鎮のうち7~8カ鎮で暴動となり、最大規模の騒乱は日曜日である19日、沙陂鎮で発生しました。

 同鎮の農民たちが「三光政策」への抗議のため政府庁舎前に屯集したところ、それを見た職員が正門に頑丈な鍵をかけて農民の侵入を阻むと、いよいよ大勢の農民が集まって庁舎建物への投石が始まり、警察がかけつけて一触即発の険悪なムードに発展。……したところで、よりによって計画出産部門の職員が政府庁舎の屋上から投げた拳ほどの大きさのレンガが農民1名の頭部を直撃。

 負傷した農民が血を噴いて昏倒したかどうかは定かではありませんが、群衆の怒りはこれで沸点到達。人海戦術のマンパワーで壁を引き倒すなり、敷地内になだれ込んで政府庁舎に放火。建物が炎上するなか駐車してあった車3台及びバイク20台も焼き打ちされ、一部は黒煙噴き上がる庁舎内に突入して事務室のPCやテレビ、ビデオなどを破壊。また門前に掲げてあった鎮政府の看板を引っぱがして皆で踏みにじるなど、これまでの憤懣を一気に爆発させました。

 なお、この日は土曜日だったため学生多数もこの抗議活動に参加しており、民衆の怒りをピークに到達せしめたレンガ投げは政府庁舎3階に隠れていた県党書記か副書記によるもので、学生に命中したとの説もあります。

 情報が錯綜しているため確度には難があるものの、防暴警察(機動隊)あるいは武警(武装警察。内乱鎮圧用の準軍事組織)が出動して民衆との大がかりな衝突に発展した鎮もあるようです。

 暴動は飛び火するかのように相前後して複数の鎮で相次いで発生し、那卜鎮では民衆5000名と警官・武警300名が白兵戦となり、当局側は野次馬も含め、老若男女の別なく手当り次第に棍棒で殴打して回り、多数の負傷者が出たうえ、50名前後の農民や学生が検束されたといわれています。

 事件が現在進行形でいまなお暴動が続いているのかどうか、なにぶん今回は同時多発的で「現場」がいくつもある訳ですから続報を待つしかありません。ただ香港紙の報道では死者5名との噂が流れているとのことです。

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 ちなみに、事件の情報はネットを通じて中国国内でも流れ、ネット世論の憤激を買った模様ですが、中国国内メディアはいまこのエントリーを書いている時点では事件については沈黙しているようです。ただし地元紙『玉林日報』の報道として、

 ●博白県、朱日祥を優秀な共産党員として追認(新浪網 2007/05/21/09:07)
 http://news.sina.com.cn/s/2007-05-21/090711861157s.shtml

 という記事がありました。今年の計画出産政策遂行の職務において殉職したそうです。殉職?計画出産部門職員が一体どこでどうなると殉職する訳?ということで暴動絡みで殺されたニオイを感じます。

 また、とりあえず博白県当局レベルでは遠因近因に知らんぷりして暴動を「悪」と認定したい姿勢であることが
「共産党員追認」でわかります。恐らく玉林市当局も同腹でしょう。これが自治区当局ひいては党中央となるとどうなるのか、結論が出ていないことは香港紙の中で親中紙がこの事件を全く報じていないことでわかります。

 ともあれ続報に期待しましょう。「自衛」を旗印に博白県の農民が鎮を超えて連携するようになると「官」にとっては恐るべき事態になりそうですけど、政府庁舎を炎上させて農民たちは満足してしまったかも知れません。

 それよりも暴動の遠因近因に照らして人民擁護を旗印にしている「胡温体制」がこの事件をどう裁くか、中央の権威度をはかる上でも注目したいところです。

 それにしても末端レベルは本当にやりたい放題なんですね。少なくとも「人民」を人間扱いしていないことは確かなようです。……ただ県当局も上級部門から無茶なノルマを課せられたためにかくなった、という部分もあります。計画出産部門の職員にしても板挟みの苦しみがあったかも知れません。所業からはそんな気配は微塵も感じられませんけど。

 ちなみに『太陽報』の記事に「実行部隊のものすごさは往年の日本軍のようだ」というものもありました。政治的背景のない同時多発的な暴動によって日本軍の現地司令部が焼き打ちされたなんて話、ありましたっけ?

 まあ香港人の書く記事ですから所詮はこんな程度、とはいえます。そのおかげで私の副業も成立している訳でw。

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 ●『明報』(2007/05/21)
 http://www.mingpaonews.com/20070521/cca1h.htm
 http://www.mingpaonews.com/20070521/cca2.htm

 ●『星島日報』(2007/05/21)
 http://www.singtao.com/yesterday/chi/0521eo01.html

 ●『東方日報』(2007/05/21)
 http://orientaldaily.on.cc/new/new_a00cnt.html
 http://orientaldaily.on.cc/new/new_a52cnt.html

 ●『太陽報』(2007/05/21)
 http://the-sun.on.cc/channels/news/20070521/20070521014757_0000.html
 http://the-sun.on.cc/channels/news/20070521/20070521014757_0000_1.html
 http://the-sun.on.cc/channels/news/20070521/20070521014757_0000_2.html




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 公開中の映画「俺は,君のために死ににいく」について。

 私は週末に鑑賞する予定なので内容のごく一部しか知りません。ただ以前書いたように、映画公開を待ちかねてメイキングDVDに凸して本編がかなり良さげなのは承知していますし、映画の原形に近い『ホタル帰る』は何度か読み返しました。

 で、お約束の展開です。先週土曜(5月12日)に封切られるや、早速皆さんの期待を裏切ることなく、新華社が批判記事を配信しています。

 ●石原慎太郎が脚本撮影を担当し映画撮影、日本の若者を煽動ねらう(国際先駆導報 2007/05/14/13:17)
 http://news.xinhuanet.com/herald/2007-05/14/content_6096620.htm

 ●日本の好戦的楽隊が再び、巨額を投じて侵略美化映画制作(2007/05/14/09:59)
 http://news.xinhuanet.com/world/2007-05/14/content_6095671.htm

 ――――

 この2本の「批判するために書いた」といっていい記事にはイタい共通点があります。映画タイトル
「俺は,君のために死ににいく」の中国語訳です。

 ●我這是為君而死
 ●我這是為君去死

 わかります?「俺」を
「我」と正確に訳しておいて、「君のため」の「君」は「あなた」を意味する「イ尓」ではなく、「君」のままなんです。

 陰険ですねえ。

 なぜ「君」をそのまま使うのか。これは2本の記事に共通していることですが、もちろんわざとやっているのです。

 訳語で「イ尓」ではなく「君」をそのまま使うことで、

「『君』は『あなた』の意味とはいえ、日本国歌『君が代』のように、天皇を指すニュアンスもある」

 ……と、これが言いたかったようなのです。

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 んでまあ、戦争を美化したものだとか、軍国主義を飾り立てるものだとか、平和憲法改正の動きに合わせたものだとか、若い世代を煽動するものだとか、後はお約束の展開です。そんなに平和憲法が羨ましかったら、9条だけ真似していいから中共で使えばいいのにね。

 それから侵略戦争で「亜洲隣国人民」に惨禍をもたらしたとか何とかいう記述があるのは興味深いところです。

 この
「亜洲隣国」って言い回し、去年か一昨年あたりから使われるようになりましたけど、「特亜」って表現を追認しているってことですか?どうみてもそうとしか思えない(笑)。

 隣国じゃないから東南アジアは含まれないということ?ああでもフィリピンは隣国でしたね。当時台湾は日本の領土でしたから。まあそれを言ったら南北朝鮮も立つ瀬がない訳ですが。

 ところで、そのフィリピンの特攻隊発祥の地であるマバラカットに特攻隊員の像が建立されたのを中共は知っているのかどうか(笑)。フィリピンでは戦争について批判的な意見が多いのも事実なら、特攻隊員が英雄視されて、その像がわざわざ建立されたのも事実なんですけど。

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 まあ最近タンチョウヅルを国鳥に定めようとした際のドタバタが示しているように、「支那人」(中国本土の漢族)の劣化も激しくてカナーリ半島並みになってきたのですけど、やはり朝鮮人はトウガラシ食べ過ぎ。試写会に同席した韓国人記者は映画の中に朝鮮半島出身の特攻隊員が登場することに我慢がならなかったそうです。

「日本の植民地支配によって韓国の若者は無理矢理戦場へと送り込まれたのだ」
「朝鮮半島出身者がなぜ日本のために喜んで死ぬのか」

 と、映画がデタラメであることを強調したい風でしたけど、日本に駐在しているなら光山少尉の逸話ぐらい韓国人として知っていてもいいと思うんですけどねえ。志願して特攻隊員になった人ですよ。プロならそのくらい勉強しておけよバーカ。

 あれは先週でしたか、靖国神社に立ち寄った際、コリア語を話すスーツ着た5~6人がちゃんと参拝して、そのあと遊就館の展示を参観していたようです。参拝するのですから「敵情視察」ではありませんね。

 李登輝・前台湾総統のお兄さんが戦死していて李登輝氏が靖国参拝を是非果たしたいと語っているのと同じように、靖国神社に祀られている縁者の慰霊に訪れたのかも知れません。

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 中共としては映画に登場する特攻隊員たちが出撃までに思い悩み、親しい人たちの面影や故郷の風景を慕うような普通の若者であっては困るのでしょうね。まあ国民党に追われてボロボロになりながら敗走に敗走を重ねて僻地に逃げ込んだ事実を恥知らずにも「長征」と呼ぶような連中の考えることは理解不可能です。

 今年50周年の反右派闘争とか、天安門事件(1989年)の名誉回復はマダー?愛する祖国の現状に危機感を感じて立ち上がった大学生たちを完全武装の正規軍(戦車&装甲車つき)で虐殺するんだから予想の遥か斜め上。でもそれが本来の中共クオリティで、天安門事件が香港の歴史教科書に載っていないのは中共の植民地と化した証拠てなところでしょうか。

 しかし陸軍一式戦闘機「隼」の復元ぶりが素晴らしい上に、軍オタも納得のCGによる戦闘場面。この映画が中国本土で公開されることはないでしょうけど、DVD化されたら輸入品か海賊版が流入して、あちらの軍オタに珍重されるのではないかと思います。

 ……いやいや、新華社が配信した前掲記事2本がいずれも型通りの批判に終始しているところからすると、記者も意外と映画を気に入ってしまったのかも知れませんね(笑)。

 ちなみに私は週末に鑑賞する予定だと書きましたけど、両親と配偶者と4人で会食してから映画館へ足を運ぶことになります。一応「母の日&父の日」イベントということになっています。

 配偶者はメイキングDVDに収録されている長めの予告編を見せてやったらもうウルウルしていましたから。……いやいや私も危ないものです。まあ余計なことは考えずに観てくるつもりです。




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 何だかここに来て中国国民の株価熱狂がやや集中的に報道されるようになりました。政治運動なら上意下達式ですからともかく、中国のマスコミ(日本もそうかも知れませんけど)は社会の現象を報道するのはどうしても一拍遅れます。

 この一拍遅れるというのが怖いですねえ。現実はより事態が進行している訳ですから。

 ●「株にはリスクがある」証券管理部門が投資家への「教育」求める(新華毎日電訊 2007/05/12/09:43)
 http://news.xinhuanet.com/mrdx/2007-05/12/content_6088436.htm

 ●中央銀行上海総部:1~4月に上海で預金700億元が株式市場へ(新華網 2007/05/13/15:50)
 http://news.xinhuanet.com/fortune/2007-05/13/content_6092505.htm

 ●4月末都市部人民元預金残高、株価高騰を受け激減(中国青年報 2007/05/14)
 http://zqb.cyol.com/content/2007-05/14/content_1758366.htm

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 どうも庶民が預金を取り崩して株式投資に走る傾向がみえているようです。……ていうか現実はもうその先を行っているのでしょうけど。

 バブル崩壊というのか株価暴落、あるいは不動産価格暴落といったものを懸念する意見は3年近く前から出ていました。ただ私は経済のことはよくわかりませんし、例えば株式投資にしても、ごく最近まで個人投資家の顔が見えませんでした。

 例えば株価暴落。いうまでもなく中国は都市部においても貧富の格差の激しい国です。暴落で経済的な影響もあるでしょうけど、もし個人投資家が限られた富裕層によって形成されているのなら、社会的にはそう大騒ぎされないのではないかと思っていました。

 ところが最近、具体的には2月の旧正月明け以来、続々と出てくる報道をみるに、非常に広範な都市部住民が株買いに狂奔していることがわかりました。狂騒というべきでしょうか。私が考えていた以上の広い範囲の市民が株式投資にかなり入れ込んでいるのです。

 大量の預金が取り崩されているものの、そのおカネは依然として消費には向かわず、株式市場めがけて殺到。元手がたくさん必要な訳ではありませんから、「ゲーム」に興じているブレーヤーは一時期の不動産投機に比べてずっと多いことでしょう。

 ここで暴落ということになれば、経済面での影響はもとより、社会状況の悪化が心配(ワクテカw?)になります。前掲記事でもわかるように、「株にはリスクがある」という観念がどこまで浸透しているか。浸透していないからこういう記事が出てきます。暴落すれば「市民の逆ギレは必至だ」てなところでしょうか。

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 中国は対外依存度の高い国です。外資依存度だけではありません。むかし改革・開放政策の初期、郷鎮企業がもてはやされた時期に、「兩頭在外」という言葉が一世を風靡しました。竜の頭も尻尾も海外にあるという意味です。原料や工作機械や技術は外資に頼って、中国で製品に組み立てて外国に輸出する、20年くらい前の話です。

 ところがその改革・開放政策を20余年続けて、国民1人当たりGDPが年間1000ドルを超えるようになっても(都市部限定の数値ならもっと高いでしょう)、相も変わらず「兩頭在外」を続けていて、次の段階に進むことができないでいます。

 中国政府が愚民政策を相変わらず続けているために、経済構造をグレードアップするだけの技術力、まあ民度が相応の高さに達していない証拠です。民度を高めるため、創意工夫を育てるための環境整備も当然ながら行われていません。

 同時に、内需拡大が叫ばれて久しいです。国内の個人消費が低い水準で推移しており、都市部だけでいっても日本の2倍くらいの購買力はありそうなのに、現実にはそうなっていない。「13億市場」なんて言葉は誰が使い始めたのか知りませんけど。

 ともあれ株式投資についていえば、ここまで来てしまうと経済的影響もさることながら、広範な庶民がマネーゲームに参加しているために、いざ暴落となったときに表面化する社会的影響の方が怖いでしょう。しかもリスクの観念がすっぽりと欠落している。しばらくは綱渡り状態が続くと思われます。

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 不気味な地鳴りが……とはいいませんけど、天安門広場に掲げてある毛沢東の画像に放火する事件が起きましたね。焼けてしまったあの肖像画は新しいものに交換されたようです。

 人民英雄記念碑に糞青ども(自称愛国者の反日信者)が献花しようとするだけでも制服警官並びに私服警官が一斉に駆け寄ってきて地面にねじ伏せられてしまうというのに、よくもまあ放火に成功したものです。

 この事件は日本でも報じられたようですが、犯人は新疆ウイグル自治区から出てきた精神病歴を持つ男とか。当局が犯人を精神病患者扱いにしたところがポイントですね。

 一党独裁の象徴ともいうべき天安門広場のあの巨大な毛沢東画像に火がつけられいて焼け焦げたというのに、当局は妙に弱腰ではないですか。この「弱腰」であることには注意を払っていいかと思います。

 精神病扱いにしないと類似の事件が続発するからなのかも知れません。別に天安門ではなくても、全国各地に毛沢東の銅像があります。それにペンキをぶっかけるだけで立派な事件です。犯人は政治犯扱いかも知れません。

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 ちなみに現在、中国には鬱病の患者だけで2600万人以上にのぼるそうです。大多数の都市部住民にとって、昔のように餓死する心配は一応なくなったものの、中国が暮らしにくい、ストレスのたまりやすい社会へと急変しつつあり、それについていけない人々が増えているることを思わせます。

 ●『大公報』(2007/05/13)
 http://www.takungpao.com/news/07/05/13/ZM-735780.htm

 様々な「格差」と「不公平」に象徴される社会状況の悪化をお得意のイデオロギーで説明できなくなった統治者は、「和諧社会」(調和のとれた社会)なんてスローガンでごまかそうとしています。そんなできもしない無理なことを。

 無理であることを象徴したのが毛沢東肖像画放火事件です。これに触発されて銅像へのペンキぶっかけ事件が続発するようになると中国社会が沸点に近づいていることを示すものとなります。株価暴落がその引き金になるかも知れません。

 マクロ経済のソフトランディングより株式市場の運営の方が当局にとって差し当たっての難事ということになってしまいました。

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 なにやら雑談に終始してしまって申し訳ありません。きょうの私は恩師と念願の靖国デートを実現したことでもうお腹一杯です。これであと映画「俺は、君のためにこそ死ににいく」の鑑賞を果たせば、5月における「あれをし遂げるまでは死ねない」がなくなります。とりあえず映画館に足を運ぶ予定の週末まで頑張ります。

 そうそう。新華社が早速この映画を批判する内容の論評を配信していました。元ネタはシンガポールの親中紙。なんでも「君」というのは「天皇」を暗示したものだそうで。批判するために書いた文章は牽強付会が目に余るので醜悪このうえありません。

「天皇なら『大君』じゃないですか。どうしようもない。馬鹿ですねえ」

 と、私との電話で「海ゆかば」を合唱したこともある恩師が憤慨していました。昭和ひと桁の恩師は自称「軍国少女」で、初等教育を日本語で受けていますし時期が時期でしたから慰問袋や千人針も経験済み。また、いわゆる「軍国歌謡」の面でも筋金入りですから、その面でも私を弟子にしたいようです(笑)。

 ――――

 そういえば今日、西太后や幼年時代の傅義・傅傑の生写真を恩師から見せてもらいました。スキャンしてほしいそうなのですが、スキャンして写真が変質するようなことがあってはと私は及び腰。西太后なんざ百年前のものでしょう。そのナマジャですから「おおおお」と興奮してしまいました。

 ともあれ、新緑のまぶしい境内をゆっくりと散歩したり、海軍カレーを食べたり、参道の売店でソフトクリームを食べたりと楽しいひとときでした。東京裁判で名を馳せたインドのパール判事の銅像とその有名な言葉を記した紙を、

「これは読めば読むほど味の出てくる言葉ですね」

 ……と、感に堪えぬように大事に二つ折りにしてバッグにしまっていたのが印象的でした。

 先生、DVDが待ち切れないようでしたら「俺は……」映画鑑賞デートもOKです。

 それにしても暑くも寒くもなく、よく晴れた空の下、気持ちのいい風が境内を吹き抜けていく実に五月らしい一日でした。




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 いやーとうとうその時代が到来しました。

 待ちわびましたよ。私なんか約3年待ちました。ようやくです。香ばしくなって参りました。

 株式投資の話です。従軍記者とどういう関係があるのかはこちらを。当ブログにおけるごく初期のエントリーです。

 ●株式投資は従軍記者より危険な職業!(2004/08/16)

 思えば新華社も最近はこういうぶっ飛んだ記事を配信しなくなりました。さびしいものです。

 ――――

 都市部の住民が株式売買に熱中している、という話題が、最近上海市場の株価指数がウナギのぼりというニュースとともによく語られるようになりました。確かに目下のところ右肩上がりで大型連休をはさんだ後もその勢いに衰えなし。

 で、そういう記事を目にした市民が新たにわらわらと参入してきます。1日平均20万人増だそうです。いくら人口が多いからってこれは異常な数字でしょう。アカウント総数は9394.54万。機関投資家とかも含んでいるでしょうけど、大半は個人投資家でしょう。それもたぶん多くは都市部住民でしょうから、相当な浸透率ということになります。

 香港紙『明報』(2007/05/10)によると、陝西省・西安市では株狂いの和尚さんも出現。いままで貯めてきたお金を増やしてより善事を行うためだそうで、

「南無阿弥陀仏、善事は一儲けしてから」

 だそうです。このほか大学生、中学生、小学生も投資家の列に加わっているとか。

 いや、これは3月か4月に私も中国国内の報道で目にしました。大学生の話は『中国青年報』だったか、「経済学の実践」とか言っていたと記憶しています。学生寮の自室のPCにかぶりついているそうです。

 小学生の話は確か「新華網」。舞台は南京だった筈です。旧正月でもらったお年玉を元手にやっていて、朝の挨拶は「昨日はいくら儲けた?」とかなんとか。いやー実に香ばしい。

 ●『明報』(2007/05/10)
 http://www.mingpaonews.com/20070510/cca1.htm

 ――――

 これまた狂奔の証なんでしょうけど、国歌の替え歌である「株歌」も登場しています。一応歌詞を書いておきますと、

 起來,還沒開戶的人們,
 把�們的資金全部投入誘人的股市,
 中華民族到了最瘋狂的時刻,
 每個人都激情地發出買入的吼聲!
 快漲、快漲、快漲!
 我們萬�一心,懷暴富的夢想,
 前進!前進!前進!進!進!

 なかなかお見事です。ただ私は株のことは一切わかりませんけど、こういう歌が広まる時期というのは往々にして機を見るに敏な連中が売り抜けにかかっているのではないでしょうか。

 ●『東方日報』(2007/05/10)
 http://orientaldaily.on.cc/new/new_c02cnt.html

 ――――

 中国では何事も極端から極端へと針がふれます。その理由をあれこれ考えるだけで楽しめるのですが、ともあれ当ブログは
「いつでも何でも大躍進」と称しています。政治や経済政策から社会問題ひいては農民の商品作物生産に至るまで、「ほどよさ」というものがありません。

 そういう「大躍進」をあらゆる面でやり続けたために「ほどよさ」を政権が呼号しなければならなくなりました。それが現在「胡温体制」の唱える「科学的発展観」「和諧社会」です。無理でしょうけどねえ。愚民教育を続けているうちはまず無理でしょう。

 この株ブームがどういう形で終息するかは正に見物です。この右肩上がりがあと2カ月くらい続いてより多くの市民を吸収しておいて、いきなりドカーンと底無し大暴落、というのが党大会の前哨戦の時期とも重なってオイシイと思います。

 ある程度政府は市場をコントロールしているのでしょうけど、それでも過去に暴落は何度も起きています。それが雪崩現象の引き金になっても不思議ではありません。

 バブルがはじけて云々という難しい議論は私にはわかりません。でも何十万何百万何千万という市民が株で大損して途方に暮れたり路頭に迷ったりという図は非常にわかりやすいです。

 逆ギレして証券取引所に爆弾を仕掛けたり、果ては腹に爆弾を巻き付けて証券会社に突入自爆なんてケースが出てくるかも。

 ともあれリスクなど微塵も考えることなく株に踊るこの狂奔ぶりを「胡温体制」がどう収拾するのか、という以前に一体政府の力で収拾できるのかどうか。

 冷ややかな五輪になりかねません。……あ、もしやれるのなら、の話ですけど。(笑)




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 あちゃー(ノ∀`)



 ●中国副首相・黄菊氏、膵臓がん悪化か 香港紙報道(Sankeiweb 2007/05/08/21:07)
 http://www.sankei.co.jp/kokusai/china/070508/chn070508002.htm

 香港紙、明報は8日、消息筋の話として、中国の黄菊副首相(68)の病状が悪化、4月末に上海から北京の軍病院幹部病棟に移されたと報じた。中国共産党も、温家宝首相の外遊時に政府の指揮を執る筆頭副首相ポストに、黄氏に代わって呉儀副首相を充てることを決めたという。

 黄氏は膵臓(すいぞう)がんを患っているとされ、今年秋の第17回党大会での退任が確実視されている。3月の全国人民代表大会(国会)では、初日の全体会議に出席し、久しぶりに姿を見せた。




 頑張れピー。負けるなピー。政治的にも身体も心電図ピー状態、しかも頽勢覆うべくもない上海閥で最高意思決定機関である党中央政治局常務委員会のメンバー(一応)なんて素晴らしいキャラはいわば不世出。進藤先生(江口洋介飾)お願いですから党大会まで保たせて下さい(昨日たまたま再放送みた)。m(__)m

 ――――

 えーと、コソーリ活動に熱を入れすぎて中3日となってしまいました。申し訳ありません。今回は党大会前の人事をめぐる駆け引きがはからずも表面化してしまった事件、

 ●新聞総署トップ更迭で超異例の「お前らまず落ち着け」記事。(2007/04/27)

 このアフターケアということになります。

 この事件は李長春・党中央宣伝部系統と「北京閥」に対する胡錦涛の全面進攻の可能性があるという香港紙の観測を紹介しましたが、香港の著名なチャイナ・ウォッチャーである林和立(ウィリー・ラム)氏がこの「北京閥」なるものについてメスを入れた記事を『蘋果日報』(2007/04/27)が掲載しました。

 ……て、かなり時間が経ってますけどそこは御容赦あれ。いまフォローしておかないと新展開があったとき話の接ぎ穂に困りますので。

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 私は香港にいたころこの林和立氏のスピーチに接したことがあります。最初で最後の日系企業に勤務していたころの話ですからもう15年くらい前。日本人クラブか商工会議所か忘れましたけど、月例朝食会みたいなイベントがあって、要するに日系企業のオッサンどもがコーヒーを飲みながらゲストである専門家のスピーチに接して見識を深める、という催しです。

 で、林和立氏がゲストの回のときに社長に呼ばれて、

「お前、中国問題好きだろ?行ってこいや」

 とチケットをもらって早起きは嫌だなーと思いながら参加しました。ところが印象が薄すぎて林氏の顔もそのとき話した内容も記憶にありません。チナヲチ(素人による中国観察)に熱を入れていた時期だったのと、通訳が恐ろしく下手だったことで、物知らずなオッサン相手のスピーチがよほど退屈な内容だったのだと思います。

 この林氏、当時は香港の英字紙『サウスチャイナ・モーニングポスト』の名物記者だった筈ですが、その後中国返還を控えて親中路線へとすりよろうとする経営者によって放り出されてしまいました、たぶん。ちょっと騒がれた事件なので記憶違いではないと思います。

 いまはフリーのままなのかどこかのシンクタンクに所属しているのかはわかりませんけど、香港有数の敏腕チャナウォッチャーですから仕事には困っていないでしょう。

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 さて林氏による分析記事。昨年「上海閥」のプリンスである陳良宇・上海市党委書記(当時)をぶった斬ることで「お世継ぎ失脚→上海閥お家断絶濃厚」という致命的な打撃を最大の抵抗勢力に与えた胡錦涛ないし「胡温体制」が、その勢いで次に潰しにかかったのが「北京閥」なのだそうです。

 色々な派閥があるものですねえ。何でも「上海閥」に次いで「胡温体制」の言うことをきかない抵抗勢力なのだそうです。

 上のエントリーで紹介した『東方日報』の記事には「北京の変」「北京市政界は雪崩現象に」などと書いていましたが、林氏の見立ても同じようです。きっかけはやはり北京市政府でオリンピック関連を仕切っていた劉志華・副市長(当時)をひっくくったこと。これによって例の新聞出版総署のトップ更迭も行われました。

 劉志華潰しはきっかけというより「北京閥」に対する胡錦涛の宣戦布告ですね。汚職摘発部門である党中央規律検査委員会を掌握する呉官正・党中央政治局常務委員が同門(清華大学卒)のよしみで支援してくれたのも心強かったことでしょう。

 ところが続いて不動産開発汚職に手をつけようとしたところ抵抗勢力による圧力がかかりました。このため一気呵成に大掃除とはいかず、まず今年3月に北京市の警察を仕切る一方、市党規律検査委員会の副書記だった強衛をようやく「昇格人事」(実質的には左遷)によって青海省へとすっ飛ばし、4月には北京市海淀区の周良洛・区長の摘発に成功。

 僻地に追放した強衛の後釜には「胡温体制」の申し子で陳良宇退治で功績のあった王安順・上海党政法副書記を据えました。胡錦涛ペースの人事ですね。北京の消息筋はこの王安順が今度は北京で大車輪の活躍ぶりを示し、今秋開催予定の第17回党大会(大型人事や世代交代が行われる)までに北京市の副市長・副書記クラスを整理していくことになる、としています。

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 ところが、ここで「胡温」の前に大物が立ちふさがります。北京市の闇のボスとされる賈慶林・党中央政治局常務委員です。こいつは福建省との縁が深い経歴を持っています。福建省といえば密輸と汚職の宝庫で、同省に長くかかわっていた者は大なり小なり脛に傷を持つ身といっていいほどです。この点では陳良宇の後任として上海市のトップとなった「太子党」の習近平(上海市党委書記)も似たようなものです。

 ともあれこの賈慶林が先代の最高指導者・江沢民の引きもあって北京市の仕切り役となり、「胡温」の言いなりにならず、自分らに都合の悪い事件は全てもみ消してきた模様。

「胡温」にとって難敵ではありますが、陳良宇斬りの勢いで斬り込もうという訳です。ただ賈慶林の背後には江沢民の存在がありますから、摘発シフトはとったものの、党大会の前に波風が立つのも構わずに「胡温」が攻め込むのかはまだ未知数。賈慶林は党大会での引退が確実視されていますから、その影響力が弱まったところで手をづける、ということも考えられるのです。

 で、林氏によるとここでキーパーソンとして注目されるのは、「上海閥」を裏切って陳良宇斬りでも胡錦涛に協力した曽慶紅・党中央政治局常務委員なのだそうです。曽慶紅は江沢民時代に江沢民に対する抵抗勢力だった先代「北京閥」の陳希同一派を葬り去った一件でも策謀をめぐらし相当働いたとのこと。この曽慶紅が今回の「北京閥」潰しにも一枚かむ可能性が大、なのだそうです。

 とはいえ、曽慶紅ももちろんタダでは働いてくれません。曽慶紅は子飼いである周永康・公安部長を党中央政治局常務委員へと抜擢し、党大会で引退する羅幹の後継者として警察・検察・司法を掌握させたい思惑だとか。このあたりはまだまだ流動的なのですが、とりあえず胡錦涛との間にもう協定が成立していて、汚職問題に絡んでいる曽慶紅の一族の罪を「なかったこと」にする模様だとのこと。ともあれ最後は「事態はまだまだ流動的でどういう展開になるかは読みにくい」という意味の結語で記事を締めています。

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 ……そこですよ。例えば李登輝・前台湾総統が訪日。訪日するだけで中共政権にとってはゆゆしき問題です(ある意味首相の靖国参拝より重大)。滞在中の活動内容によっては「胡温」が一転して受け身に回る可能性もありますからね。そりゃもうワクテカです。

 ところで、私の感想は前回同様、いやー政界と接触しているプロの人はやはりすごいなー、物知りだなーと思いました。きっと林氏はまだ隠しネタをいくつか持っていて、これから党大会にかけて小出しにしていくのでしょう。

  ……それ以上にすごいと思ったのは、これだけ濃い内容を1000字でまとめてしまう技量です。廃刊となった香港の中国情報月刊誌『九十年代』の李怡氏も良い感じに枯れつつ濃厚な内容をやはり1000字程度で無理なく詰め込んでしまいます。もちろん私などには到底真似できません。

 あ、ただ林和立氏には一言あります。先月温家宝が訪日した際に香港紙からコメントを求められ、

「温家宝総理は個人的魅力があり、親しみやすく役人風を吹かせたりもしない。外国人や日本人が共産主義国家の官僚に対し抱いているイメージをいい意味で裏切った」

 と間の抜けたことを言っていたので、

「テメー糞香港人の分際で日本人を舐めるんじゃねー日本のこと何も知らねーくせにこの病豚野郎が」

 という気持ちを込めて脊髄反射、毒林檎でちょいと晒しageてしまいました。ごめんなウィリー。




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 世間的には日曜日で大型連休最終日らしいので、こちらも思いっきり楽させてもらいます。

 実はいま中国も5月1日(メーデー)からのゴールデンウィーク。やはり今日(5月6日)が最終日だと思いますが、この一週間は中国発の記事が少ないので日課の記事漁りという負担が非常に軽減されました。

 おかげで普段はあまり巡回しない(というか時間的・体力的に巡回できない)ニュースサイトでのんびりすることができました。もちろん反体制系サイトです(笑)。

 で、農民暴動や都市暴動といった官民衝突が起こるたびに現地のレポートや現場写真がタレ込まれるので非常に重宝している「博訊網」にアクセスしてマターリしていたのですが、そこでひとつ気になる記事を発見。



 ●中国潜水艦、日本領海外18km海域を国旗掲げて「示威航行」(博訊網 2007/05/04)
 http://www.peacehall.com/news/gb/army/2007/05/200705041927.shtml

 2機のP3Cが日本の南部である九州と種子島の間の大隅海峡で中国潜水艦を発見した。具体的な位置は九州南端の佐多岬の東方約40km。日本の領海からわずか18kmしか離れていない公海上だ。P3C搭乗員の目視及び写真撮影によると、この潜水艦は中国海軍の「明級」。この潜水艦は堂々と浮上状態で大隅海峡を西へと航行しており、艦橋には中国の国旗である五星紅旗が掲げられているのがはっきりとみてとれる。(画像あり



 これ、日本のマスコミが報じているかどうか確認できなかったのですが、こういうことってきっと日常茶飯事なんでしょうね。

 哨戒任務に従事する自衛隊や海上保安庁の方々には頭が下がります。大変なお仕事でしょうけど、日本の護りは皆さんの双肩にかかっているのです。いつも応援していますので頑張って下さい。


 私も何かお手伝いしたいのですが、あいにく身体が身体なのでアパムほども働けません。orz

 このブログの趣旨もチナヲチ(素人の中国観察)であって反中共ではありませんし。……あ、でもコソーリ活動の方は多少の情宣になっているかも?いやーなっていないでしょうねー(笑)。




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 もう数日前の話ですからニュースではないんですけど。

 日米両国が5月2日、外務・防衛担当閣僚による日米安全保障協議委員会(2+2)を国務省で開きました。私は紙媒体には接していませんけど、電子版をみた限りでは日本の新聞各紙が揃ってこれを報道していました。

 実はその2日朝から香港・台湾各紙の電子版はこの「2+2」に関する速報記事で賑わいました。翌3日は各紙揃って大々的に報道。ところがその一連の報道で焦点が当てられたのは、日本のマスコミがほとんど報じなかった部分です。

 会談後に公表された「共同発表」にある「共通戦略目標」から、前回(2005/02/19)は明記されたことで中国が強く反発した、

「台湾海峡を巡る問題の対話を通じた平和的解決を促す」

 という文言が今回は消えていたのです。

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 この「消えた」ことをめぐって大騒ぎ。香港では最大手紙『蘋果日報』をはじめ、『明報』『星島日報』『東方日報』『太陽報』から親中紙の『香港文匯報』『大公報』に至るまで「消えた消えた」と書き立てて、なぜ消えたのか、専門家はどうみるか、といったニュース・解説・憶測記事がどっと出ました。ざっと目を通してみたところ、

「中国と日米の関係が改善された証だ」
「陳水扁がこのところ台湾独立に向けて暴走気味だったのが米国の怒りを買ったのだ」

 といった見方が主流。タイトルは扇情的に、

 ●日米同盟、共通戦略目標から台湾問題を削除
 ●日米同盟はもう台湾に構わなくなった
 ●台湾は日米同盟という傘を失った

 といった類いのものが並びました。

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 ところでこの「消えた」ニュースの第一報は意外なところから飛び出しました。中共系通信社・中国新聞社の配信記事です。

 ●日米同盟が共通戦略目標から台湾問題関連の内容を削除(中国新聞網 2007/05/02/08:18)
 http://news.sina.com.cn/w/2007-05-02/081812912225.shtml

 タイトルが全てです。報道者の意図が感じられるのはこの「台湾問題関連の内容を共通戦略目標から削除した」に加え、米国防筋による
「削除したのは陳水扁の台湾独立へ向けた動きに警告したもの」という部分のみで、あとは自国に関係のある部分をそのまま引き写しています。いわく、

「中国に対して、責任ある国際的なステークホルダーとして行動すること、軍事分野における透明性を高めることを更に促す」

 とのこと。「新浪網」など中国国内の大手ポータルをはじめ多くのニュースサイトでこの記事が掲載され、香港紙電子版の速報も、この中国新聞社電でした。

 ……これが5月2日の午前から夕方にかけて。上述したように香港・台湾各紙は翌3日に「台湾問題を削除」と大きく報道されたのです。

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 ところが第一報を発した中国はといえば、米国の在台湾協会台北弁事処の代表が、

「別に大したことではない。今回、東アジア地区に対する米日両国の関心は、北朝鮮の核武装や朝鮮半島の安定、それに中国の台頭とその急速な軍拡に重点が置かれている」

 と報道陣に語ったのをそのまま伝えています。ただ、

「2年前のように台湾問題を際立たせることはなかった」
「2005年に『2+2』は『台湾海峡を巡る問題の対話を通じた平和的解決を促す』という文言を共通戦略目標に織り込んだ」

 と解説を加えているのは、そのことで当時よほど腹が立ったからでしょう(笑)。

 ●「新浪網」(2007/05/03/15:32)
 http://news.sina.com.cn/c/2007-05-03/153212917690.shtml

 でも、中国国内での報道はここまでで、現在に至るまでそれ以上深入りしていません。当然ながら香港・台湾メディアのように騒ぐ気配も皆無。沈黙を守っている、といっていいでしょう。不気味ではありませんが、香港・台湾とのギャップが大きすぎるので気になります。

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「日米安保なんて大嫌いだーっ」

 というのが中国の本音でしょう。ようやく中華復興の気運がみなぎってきたのに(と中共はたぶん考えている)、日米同盟が存在するゆえに太平洋へと踏み出せない。それ以前に台湾併呑を果たせないのです。

 それでも、冷戦時代はまだソ連牽制役という多少の旨味がありました。ところがそのソ連が崩壊し、その後ロシアと密接な関係を築いたことで、日米同盟はその存在そのものが邪魔になりました。

 台湾問題が共通戦略目標から消えたのは嬉しくない訳ではないものの、大喜びするほどの気にはなれないのかも知れません。あるいは単に大型連休中だから?でも騒ぐべきものについては騒ぐ筈ですよねえ。

 ちなみに、前回2005年の「2+2」共通戦略目標における中国の扱いは、

 ●中国が地域及び世界において責任ある建設的な役割を果たすことを歓迎し、中国との協力関係を発展させる 。
 ●台湾海峡を巡る問題の対話を通じた平和的解決を促す。
 ●中国が軍事分野における透明性を高めるよう促す。

 というものでした。それが今回の共通戦略目標においては、

「地域及び世界の安全保障に対する中国の貢献の重要性を認識しつつ、中国に対して、責任ある国際的なステークホルダーとして行動すること、軍事分野における透明性を高めること、及び、表明した政策と行動との間の一貫性を維持することを更に促す。」

 に変化しています。

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 「責任ある国際的なステークホルダー」

 に昇格を遂げ、「地域及び世界の安全保障に対する中国の貢献の重要性を認識」しているという中国への何やら褒め言葉のようなものもついています。要するに大物扱いに変わったということです。

 ただ、「軍事分野における透明性を高めること」と改めて念を押されていますし、「表明した政策と行動との間の一貫性を維持することを更に促す」とクギを刺されています。

「責任ある国際的なステークホルダーたれ」

 というのも「らしく振る舞え」ということで、枠をはめられたようなものです。だいたい日米同盟自体が嫌いですから、

「うるせーこん畜生、偉そうな口きくんじゃねえ」

 とでも言いたいところでしょう。でも言うとカドが立ちますし何のメリットもありません。対日関係も対米関係も不必要に荒立てたくない時期ですから沈黙を以て報いた、といったところではないかと。

 ●外務省公式HP
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/2+2_05_02.html
 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/hosho/2plus2_07_kh.html

 でももう少し色々ありそうな感じもします。

 ――――

 実のところ、大きく騒がれた「台湾問題を削除」というのは、本当はあまり意味を持たないように思います。今回発表された共通戦略目標の冒頭で、

「2005年2月19日、閣僚は、二国間の協力を進展させるための広範な基礎となる共通戦略目標を特定した。本日の会合において、閣僚は、現在の国際安全保障環境を考慮しつつ、これらの共通戦略目標へのコミットメントを再確認した」

 となっており、今回の共通戦略目標が2005年バージョンの内容を踏まえた上で、その基礎の上に成立していると明言されているからです。要するに、

「台湾海峡を巡る問題の対話を通じた平和的解決を促す」

 という文言はいまなお生きているのです。今回明記されなかったのは、確かに陳水扁・台湾総統への警告めいたニュアンスもあるかも知れませんけど、それ以前に日中関係が変化しているということがあるでしょう。

 2005年2月といえば、それまでの約半年に対中外交の構造改革を狙って小泉純一郎・首相(当時)は強腰の姿勢を崩さず、前年9月に発足したばかりの胡錦涛政権はその変化についていけずに押されっぱなしでした。

 その結果、2004年末にはアンチ胡錦涛諸派連合や軍部からダメ出しをされた上に、李登輝・前総統の訪日もあって日中関係はかなり荒れ模様。荒れている上に、胡錦涛政権の足場が心もとないため軍部が暴走するかも知れないという懸念が生まれます。それゆえに台湾問題が明記されたのでしょう。

 いまはそうした要因が変化したことで焦眉の急ではなくなった。だから明文化しなかった。ただそれだけ、というニュアンスを感じます。

 だから中国も沈黙している、ともいえます。いや実はそれよりも、いいようのない戦慄で言葉が出て来ないのかも知れません。だから、「言葉にならない」ということです。

 ……いや、だって今回の共通戦略目標、ちょっと露骨なように思えましたので。

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 中国に対して露骨、ということです。「2+2」の共通戦略目標、今回は11項目が箇条書きにされており、そのうちのひとつが上述した中国に関する内容です。

 で、残る10項目のうち北朝鮮やイランの問題などを除外していって、気になったのが以下の4項目。

 ●東南アジアにおいて民主的価値、良き統治、法の支配、人権、基本的自由及び統合された市場経済を促進するとの東南アジア諸国連合(ASEAN)の努力を支援し、また、二国間及びASEAN地域フォーラムを通じ、非伝統的及び国境を越える重大な安全保障上の問題についての地域の能力及び協力を構築する。

 ●共有する民主的価値及び利益に基づき、安全保障及び防衛の分野を含め、地域及び世界において、米国、日本及び豪州の三国間協力を更に強化する。

 ●インドの継続的な成長が地域の繁栄、自由及び安全に密接に繋がっていることを認識しつつ、共通の利益の分野を進展させ協力を強化するため、インドとのパートナーシップを引き続き強化する。

 ●北大西洋条約機構(NATO)の平和及び安全への世界的な貢献と日米同盟の共通戦略目標とが一致し、かつ、補完的であることを認識しつつ、より広範な日本とNATOとの協力を達成する。

 民主,自由,人権、法治といった中国にとって目にしたくない単語が散りばめられています。しかも対象国はASEAN、オーストラリア、インド、NATOです。つまり東南アジア、オセアニア、南アジア、ヨーロッパと数珠つなぎ。

 ……これって日本の麻生太郎・外相が提唱している
「自由と繁栄の弧」を地で行くものじゃありませんか?しかもオーストラリアとNATOとは軍事面での連携強化が打ち出されています。さらに日本とNATOの間により広範な協力関係を構築しようというのです。NATOとはいいながら、EUと重なる部分もあるでしょう。

 いわば中国包囲網。
中国にとったらそりゃ穏やかではないでしょう。

 「2+2」は2005年に比べると、中国に対してずいぶん剣呑になっているように思います。……もちろん中国が悪さを繰り返したからです。海軍潜水艦の日本領海侵犯や米空母戦闘群追跡、東シナ海ガス田紛争、違法海洋調査活動、弾道ミサイルによる衛星破壊実験、アフリカへの度を超した肩入れと介入、そしてお決まりの人権問題……。

 ――――

 ところで、上の4項目を眺めてみて感じるのは、日米安保が世界全域を視野に入れたものへと発展しつつあるということです。これはとりも直さず、自衛隊の活動が範囲・内容の両面でグレードアップするであろうことを示唆しています。

 となると、集団的自衛権の問題となります。安倍晋三・首相は憲法改正の下準備を進める一方、内閣法制局による憲法解釈を改めさせることで、とりあえず応急処置的に集団的自衛権の要点を確保しておこうということになるでしょう。……ていうかもう手をつけているみたいですね。

 何やら当ブログらしくない話になってしまいましたが、この集団的自衛権がとりあえず台湾有事で効くのではないかと思います。……あ、もちろん尖閣問題でも。ただどうせ日米と武力衝突することになるのですから、軍隊を使うなら中国はまず台湾を一気呵成に片付けようとするでしょう。

 そういえば、台湾への武力侵攻という選択肢を捨てていないことも「悪さ」のひとつに数えていいですね。

 ともあれ、同じ「2+2」をめぐる報道でも香港や台湾では日本と全く毛色の違う扱い方をされていました。それだけに共通戦略目標全体を俯瞰しつつ日米同盟の今後を占ういったスタンスの報道は、私のみた限りではありませんでした。




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 先月末にこういうことがありました。快事なるかな。



 ●西松強制連行訴訟、原告の敗訴確定 最高裁「個人の請求権放棄」(Sankeiweb 2007/04/27/12:01)
 http://www.sankei.co.jp/shakai/jiken/070427/jkn070427006.htm

 第2次大戦中に中国から強制連行され、広島県内の建設工事現場で働かされたとして、中国人の元労働者と遺族の計5人が、工事を請け負った西松建設(東京都)に総額2750万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審判決が27日、最高裁第2小法廷であった。中川了滋裁判長は「昭和47年の日中共同声明で、中国人個人の裁判での賠償請求権はなくなった」との初判断を示した。

 その上で、原告の請求をすべて認めて逆転勝訴を言い渡した2審・広島高裁判決を破棄し、原告の請求を退けた。原告の敗訴が確定した。

 この判断によって、中国人に対する一連の戦後補償裁判は事実上終結。最高裁ではこの日、大戦中に旧日本軍に慰安婦にされたとして、中国人女性らが国に計4600万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審判決もあり、第1小法廷の才口千晴裁判長が同様の理由で女性側の上告を棄却した。女性側敗訴の2審・東京高裁判決が確定。2審は「日華平和条約で請求権は放棄された」としていたが、最高裁判決は理由を変更した。

 このほか、中国人の強制連行や慰安婦に絡む3件の同種訴訟の決定もあり、最高裁はいずれも原告側の訴えを退け、敗訴が確定した。
(後略)



 一言でいえば天魔覆滅。中国語では「老天爺有眼」。……ちょっと違うかも知れませんけどまあいいでしょう。ともあれこの結果を受けて中共政権が脊髄反射。外交部報道局長の劉建超が出てきました。例のデブですね。これを受けて時事通信が「反発を強めるのは必至だ」とワクテカ報道。期待する方向が私とは正反対のようですが(笑)。



 ●「共同声明の一方的解釈」に反発=最高裁判決、新華社も速報-中国(時事通信 2007/04/27/11:41)
 http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2007042700459

 【北京27日時事】中国政府は、西松建設強制連行訴訟をめぐる27日の最高裁判決が「(1972年の)日中共同声明により個人の賠償請求権は放棄された」と初めて判断したことを受け、「共同声明の重要原則を一方的に解釈してはならない」(劉建超外務省報道局長)と反発を強めるのは必至だ。日中関係が先の温家宝首相の訪日で改善する中、「懸念材料になる」(日中関係筋)可能性も指摘されている。

 中国国営新華社通信も、この日の判決を至急電で伝えるなど大きな関心を示した。



 ええ、新華社も速報しました。急いでいるせいか事実描写に撤した味気ない記事です。どういう判決が下るかはわかり切っていたから予定稿だったのかも。

 ●戦時強制労働訴訟、日本最高裁が上告棄却(新華網 2007/04/27/20:48)
 http://news.xinhuanet.com/world/2007-04/27/content_6037133.htm

 読売新聞がデブの言い分を詳報しています。



 ●中日共同声明への最高裁の解釈は「無効」、中国が強く批判(読売新聞 2007/04/27/23:41)
 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20070427id22.htm

 【北京=河田卓司】中国外務省の劉建超・報道局長は27日、最高裁による西松建設強制連行訴訟に関する判決に対し、「日本の最高裁が中日共同声明について下した解釈は不法であり、無効である」と強く批判し、「我々はすでに日本政府に、この問題を適切に処理するよう求めた」と語った。

 劉局長は、中国政府が1972年の日中共同声明で戦争賠償の請求を放棄したことについて、「両国人民の友好に着目して、ともに行った政治決断」とし、最高裁が「この条項を勝手に解釈したことに強い反対を表明する」とした。



 原文はこちら。

 ●「新華網」(2007/04/27/20:51)
 http://news.xinhuanet.com/world/2007-04/27/content_6037160.htm

 ついでに翌朝早々に出た「人民網日本語版」も置いておきます。

 ●戦争賠償条項への日本の勝手な解釈に反対 外交部(新華網 2007/04/28/09:56)
 http://j.peopledaily.com.cn/2007/04/28/jp20070428_70602.html

 これまたタイムリーな反応です。来るかな?これは来るかな?……と期待させる素早いリアクションだったのですが、速報した割に後が続きません。期待したキャンペーンもその気配すら見せずに「五一労働節」(メーデー)に始まる大型連休に突入。ええっもうおしまい?いくら何でもちょっと速過ぎっていうか超淡白。

 去年のいまごろの「反日」報道はもっと粘り腰でしたよ。反日活動家の代表格・童増(中国民間保釣連合会会長)が戦時賠償訴訟の民間団体を立ち上げて、

「中国国内で民間による対日戦時賠償訴訟をやるんだ」

 なんて息巻いていましたから。それを上海閥あたりが後援しているフシがあって、胡錦涛側がそれに対抗して「裁判は日本で」系の別団体を立ち上げて押さえ込みにかかったりもしました。今回、全面敗訴にも関わらず童増が飛び出して来ないのは、飼い主(後ろ盾の政治勢力)にそこまでやる元気がないからでしょう。

「安倍首相が慰安婦問題でまた謝罪」

 なんて記事が最近は連日出ていましたけど、先日の雑談で書いたようにこれは「安倍叩き」ではなく、逆に「歴史問題に悪びれることなく素直に謝罪する安倍首相」というヨイショ記事の線が濃厚。どうして慰安婦問題で首相が謝罪しなきゃならないのか私には全くわかりませんけど。

 ともあれ、胡錦涛政権としては温家宝訪日も終わってこの薄っぺらい日中友好ムードを何とか持続させようということでしょう。少なくとも「対日訴訟全面敗訴」をキャンペーンにさせないだけの統制力を胡錦涛が有しているということです。ええ、目下のところは。

 それにしても期待した分、こちらは不完全燃焼です。それ以前に劉建超の言い分が癪にさわります。そこで鬱屈を散ずるべく一筆啓上。翌日早朝に某所へと燃料投下してきました。喰らえ必殺のスターリンオルゲル。



 ●戦時中の強制労働で何たらな連中は中国政府を訴えるのが筋だろ?


 日本の最高裁は昨日(4月27日)、「西松強制連行訴訟」について、中国人個人の賠償請求権は「日中共同声明」第5条において放棄されているとの理由から原告らの上告を棄却したそうだ。ま、根拠十分な上に道理にもかなった全く想定の範囲内の判決だったな。
(´々`)y━・~~~

 それなのに中共が何やらまたぐちゃぐちゃと。外交部のデブ(キモヲタ風)が早速しゃしゃり出てきて、

「中国政府が『中日共同声明』で日本国への戦争賠償請求放棄を宣言したのは、両国人民の友好的共存に目を向けた政治的決断だ」

 だとさ。……そう、中国は30年以上前に賠償要求権を放棄している。それをどうして今になって「両国人民の友好的共存に目を向けた」とか言い出してくる訳?もしかして判決に手心を加えてほしいとか?いわゆる根切り交渉?

 悪いけど裁判所はお店とか市場じゃないんだよね。それに日本は堂々たる法治国家。中国みたいに「法制あれど法治なし」なんて素敵な伝統は残念ながら持っていないし。

 ――――

 どうにも解さないのはね、この劉建超っていうデブが他にも色々言っていること。

「われわれは日本の最高裁が中国側の度重なる掛け合いを顧みず、この条項を勝手に解釈したことに対して強い反対を表明する」

「日本の最高裁が『中日共同声明』に下した解釈は違法であり、無効だ」

 あちゃー(ノ∀`)

 それじゃ聞くけどさ、……おいデブお前にだよ。それじゃ聞くけどな、一体どういう解釈だと合法的で有効でお前ら中共のお気に召す訳?

 劉ちゃん折角だから「正解」を教えてくれよ。お前ら勝手な「釈法」(法解釈)で散々香港市民をイジメてきたんだからそういうのお得意だろ?ほら、言えよ糞デブ。……ま、お前に言える度胸があればだけどな。

 ――――

 いやーもし中国がさ、「日中共同声明」において中国政府が放棄を宣言した対日戦争賠償要求に「個人などの賠償請求権は含まれない」とか言ってくれると面白くなるんだけどねえ。

 だってそうなったら日本側も中国に対して賠償請求ができるから。対象は終戦時に中国側に没収された民間の資産。当時中国にいた日本人や日本企業が所有していた現金とか住宅とかビルとか工場とか線路とかね。

 でも中国にとってラッキーなのは台湾の分まで引き受けなくても済むことだよな。

 ――――

 上で出てきた「日中共同声明」はいわば日中関係の原点。例えば日本が「『一つの中国』の支持を堅持する」っていう根拠は第二条に出てくる。

「日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。」

 ……っていうのがそれ。日本が「承認」しちゃっているから正式に認めている訳で。で、肝心の台湾問題だけど、これについて中国は第3条で大見得を切ってるんだよね。いわく、

「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。」

 ところがこの中国の姿勢表明に対して日本は冷ややかというか何というか。

「日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。」

 ポツダム云々は日本が台湾などの領有権を放棄してそれが中華民国のものとなるとかならないとかいう話で、ただ中華民国のものになるっていう根拠のカイロ宣言にはその拘束力に疑問を呈する向きから存在自体が怪しいという説まであるんで紛らわしい。ともあれ日本は台湾を放棄しましたってことは確か。

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 ところがその帰属について中国が前段で「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する」って高らかに宣言しているのに対し、日本側はその立場を「理解し、尊重」するのみ。「一つの中国」では使われている「日本国政府は……承認する」っていう正式に認めた形になっていない。

 「理解し尊重する」ってのは極言すれば「ああそうですか。そちらの言い分は一応聞いておきますね」てなもんで、要するに日本は台湾が中共政権の領土の一部であることを、この日中関係の原点ともいえる「日中共同声明」で正式に承認していないことになる。

 いやだから中共にとってはラッキーだな、と。日本は「日中共同声明」以来、台湾は中共政権の一部とは一度たりとも正式に認めていない。だから台湾の分は日本から要求が出ないので中共は大助かり。

 だって当時の台湾における日本の民間資産総額ったら相当なものになるんじゃないかな。それを知っているから蒋介石は対日戦争賠償請求権を放棄した訳で、それゆえに中国国民党は世界でも有数の金持ち政党。

 でも中国大陸で国民党が没収した分は中国に請求するよ。だって日本は「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する」って正式に認めているからね。もし中国が拒否すれば「一つの中国」は即刻破綻。

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 デブが急に大人しくなっちゃったから勝手に話を続けるけどさ、4月に温家宝が来日したときに発表された「共同プレス発表」も起草段階でずいぶん揉めたそうで。

 何でも中国側が台湾独立を明確に反対するように日本側に明文化することを強要したところ、日本側は「明記するならば、プレス発表はなくていい」と断固拒否。

 ●日中首脳会談 日中「戦略互恵」まだら模様(Sankeiweb 2007/04/12/08:03)
 http://www.sankei.co.jp/seiji/shusho/070412/shs070412001.htm

 結局、

「台湾問題で日本側は、『日中共同声明』で表明した立場を堅持する」

 ……てな形で落着したんだけど、要するに日本は「台湾は中国の一部」であることを正式に承認していないって立場を従前通り守ったことになる。

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 これ、些細なことのようだけど日本が35年前に「一つの中国」を受け入れなければならない状況下で辛うじて確保した大切な空間。

 だって台湾が「正名」と「新憲法制定」を実現したとき、つまり台湾が「中華民国」という国名を捨てて「台湾」を名乗り、身の丈に合った憲法を制定して正常な国家としての体裁を整えたとき、日本はこの空間を一種の抜け道として台湾との国交樹立が可能になるから。

 ……まあ国際社会の力関係とか色々あるからそう簡単に事は運ばないだろうけど、通路を確保してあることが何より大切。台湾有事のときに日本が米国とともに介入して台湾支援に回ったときに、中国が「内政干渉だ!」って抗議してきても、

「だって台湾は中国の一部なんて認めたことないし~」

 って涼しい顔で流すこともできる。まあ日本政府もそういう土壇場で涼しい顔でいられるくらい腰が据わっていてほしいもんだ。

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 ああ何だか余談に流れちゃったけど、強制労働何たらの話だったな。思うんだけど、連中は相手を間違えていると思うんだよね。訴えるなら「日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言」しちゃった中国政府に対して訴訟を起こすのが筋ってもんでしょ。うまくやれば「法制あれど法治なし」がいい方向に作用してくれるかも知れないし(笑)。



 ……てな趣旨の中国語を燃料投下したところ、入れ喰い状態になるかと思っていたらあにはからんや釣果なし。おいおい放置プレイかよー。

 無視されるのが一番こたえるっていうのに。orz




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