日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 上海に関する刺激的なニュースが続々と飛び込んできています。主に香港発の情報なんですけど、中にはソースをたどっていったら「大紀元」だったりするものもあります(笑)。

 いや「大紀元」が信用ならないというのではなくて、プロなんだから自分で取材しろよそのくらい(怒)……ということです。だって「大紀元」から引用して記事にするなら素人の私にだってできるじゃないですか。

 ともあれざっとした印象をいうなら、「大諸侯」の筆頭として屹立した存在だった上海という独立王国が解体されつつあるといったところです。

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 政変、と呼んでいいと思います。「九・二五政変」です。

 少なくとも独立王国という上海側の視点からすれば、これは紛れもないクーデター。政変なのです。上海をいままで仕切ってきた陳良宇(前上海市党委員会書記)、いわば陳良宇政権を、部下である韓正(市長兼上海市党委員会書記代行)が外国勢力(胡錦涛サイド=中央)の支援を受けつつ転覆させ、自らその後を襲った、というところでしょう。

 ただし新たに発足した韓正政権は陳良宇政権の路線は継承せず、逆に外国勢力である中央の力を借りて王国解体を目指しているところが異なる点です。

 いまその作業の真最中。中国はもうすぐ10月1日の国慶節(建国記念日)からの大型連休(一週間)に入りますが、それが終わればすぐに党の重要会議「六中全会」(党第16期中央委員第6次全体会議、10月8日~11日)です。

 外国勢力たる胡錦涛ひいては「擁胡同盟」(胡錦涛擁護同盟同盟)はこの「六中全会」までに、敵対勢力「反胡連合」(反胡錦涛諸派連合)の主軸である上海閥、その拠点たる独立王国・上海を大掃除して、陳良宇以下罪人認定された連中を「六中全会」でまとめて断罪、その勢いに乗って自らに有利な人事を断行したいところでしょう。

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 新政権の首班となった韓正は、上海市党委員会の機関紙で上海の最大手紙『解放日報』以下メディアを総動員して、また党幹部大会などで、

「中央の決定(陳良宇解任)を断固擁護しよう」
「社会の安定を維持しよう」
「大局(中央の意向)に従い、一致団結して上海をさらに発展させよう」
「それぞれの持ち場を守り、第11次5カ年計画の目標達成に向け邁進しよう」
「2010年の上海万博を成功させよう」

 などと訴えています。でも政変ですからね。クーデターに粛清はつきものです。前回お伝えした通り、その対象が陳良宇ひとりにとどまらないことは、捜査にあたっている中央紀律検査委員会の干以勝・秘書長が26日の記者会見で示唆しています。

 http://epaper.jfdaily.com/html/2006-09/26/content_478453.htm
 http://epaper.jfdaily.com/html/2006-09/26/content_478451.htm
 http://hk.news.yahoo.com/060926/12/1tnph.html
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0609280001&cat=002CH

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 「安定」「団結」「目標達成に向け邁進」なんて叫ばれてもねえ。一般市民はともかく、党幹部や企業経営者は生きた心地がしないでしょう。芋づる式にどこまで「粛清」されるか、また「粛清」の基準が不透明なんですから。

 すでに摘発が始まっているという情報も流れています。『読売新聞』の上海消息筋情報です。

 ●上海市幹部20人拘束、陳前書記派一掃へ…党中央委(読売新聞 2006/09/28/03:07)
 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20060928i301.htm

 【上海=加藤隆則】中国上海市のトップ、陳良宇・市共産党委員会書記を解任に追い込んだ大型汚職事件で、党中央規律検査委員会が陳氏と関係の深い同市局長、副局長クラスの幹部約20人を拘束、本格的な取り調べを始めた模様だ。
(中略)

 消息筋によると、党中央規律検査委の一斉聴取は、不正融資が問題化した社会保険基金を所管する市労働社会保障局や、陳氏がかつて区長を務め、強い影響力を持つ同市黄浦区の幹部らを中心に行われている。

 不正融資を受けた企業からの収賄容疑などが問われているものとみられる。
(中略)

 また、韓市長は25日朝、同市内で開かれた市党委幹部会議の席上、収賄の疑いが持たれている幹部の数を具体的に挙げ、「あえて名前は挙げない。進んで罪を認めるように」と述べ、調査への協力を呼びかけたという。
(後略)

 ――――

 人数だけ挙げておいて、

「あえて名前は挙げない。進んで罪を認めるように」

 とは韓正も人が悪いというか、あの温顔からこんな言葉が出てきたら少しでも心当たりがある党幹部はガクガクブルブルでしょう(笑)。

 香港の最大手紙『蘋果日報』(2006/09/28)の消息筋情報(ていうか元ネタは「大紀元」)によると、陳良宇そして党の最高意思決定機関に名を連ねる上海閥の黄菊、この2人の夫人も汚職容疑で拘束されているそうです。

 陳良宇がやられた時点で上海閥は次世代の有力者を失い、つまり世継ぎ消滅でお家断絶が確定した訳ですが、こうなると現役の上海閥高官にも累が及ぶ可能性が出てきました。

 それどころか、独立王国の王子様、つまり江沢民の息子までひっくくられるのではないかという観測もあります。江錦恒・中国科学院副院長で宇宙開発プロジェクトにも名を連ねていましたが、当年とって54歳のこの王子様、地元上海では不動産や通信事業などで随分派手に動いていたようです。

 王様である江沢民も震えるばかりなのでしょうか。

「小型の政変といってもいいこの動き、カリスマ不在ということであれば、武力を背景にしなければ実現できないものでしょう。」

 と先日書きましたが、前回は、

「空港や駅、港には武警(武装警察=準軍事組織)が派遣されて警戒態勢をとり、幹部の上海脱出を防ぐ措置がとられ……」

 とお伝えしました。この武警が上海市所属部隊でないことを指摘する市民がいたとの情報も紹介しましたが、それが事実だとすれば、中央軍事委員会までがこの「独立王国解体」に関与していることになります。

 ――――

 それら一切の総指揮官は言うまでもなく胡錦涛・総書記(兼中央軍事委主席・国家主席)ですが、「胡温政権」と並び称されながら微妙な距離感でその脇に立つ温家宝・首相は昨日(9月27日)開かれた国務院常務委員会(国務院=政府)で河南省鄭州市の不法土地占有事件をとりあげ、党中央紀律検査委員会の捜査に基づき責任者を党内厳重警告処分としています。

 処罰されたのは河南省党委員会常務委員・政法委員会書記で前河南省副省長の李新民、そして河南省党委員会常務委員・鄭州市等委員会書記(鄭州市のトップ、前鄭州市長)、いずれも河南省と鄭州市の要職にある官僚です。

 利害をめぐる「中央vs地方」という対立軸でいえば、上海の「政変」もさることながら、この中央が河南省の高官を処分した衝撃の方が「諸侯」と呼ばれる各地方勢力には大きかったかも知れません。

 胡錦涛は上海の「九・二五政変」で一石二鳥ならぬ一石五鳥を狙いました。

 ●次世代の有力者を潰すことで上海閥を壊滅状態にする
 ●「あの上海でもやられるのか」と「諸侯」に衝撃を与える
 ●それによって経済面での中央による統制力を強化する
 ●大物(陳良宇)の汚職摘発によって一般市民の喝采を浴びることで政権への求心力アップ。
 ●上海閥の力を削ぐことで「六中全会」及び来年開催の第17回党大会での人事権掌握を容易にする

 ……てなところでしょう。その上海に続いて間を置かずに河南省と鄭州市の不正担当者を血祭りにあげたのは、独立王国として胡錦涛にとっては隠然たる敵対勢力だった上海閥、その
「上海閥でなくてもやられる」という点が大きいのです。

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 当ブログで何度か指摘していることですが、しばしば引き合いに出される「中央vs地方」という対立軸の一方で、各地方勢力も「省当局vs市当局」「省当局vs県当局」といった「内なる中央vs地方」を抱え込んでいます。その中には胡錦涛から送り込まれた「雇われトップ」に地元生え抜きの幹部が抵抗してその政治活動を束縛する、といったことも含めていいでしょう。

 『蘋果日報』(2006/09/26)によると、現在までに胡錦涛が地方に送り込んだその嫡流人脈ともいえる「団派」(共青団派=胡錦涛の出身母体である共産主義青年団系の人脈)は省・自治区・直轄紙トップ(党委員会書記)やナンバー2(省長・自治区主席・直轄市市長)が18名。

 その中で主立つ者は上海市党委書記・韓正、遼寧省党委書記・李克強、江蘇省党委書記・李源潮、広東省長・黄華華、青海省長・宋秀岩……などがおり、さらに省党委副書記、省党委常務委員、副省長といった副省長クラスの官僚はちょうど100名(うち副書記27名、副省長24名)にものぼります。

 上海に続く河南省での処罰で、
「上海閥でなくてもやられる」という衝撃が「諸侯」に走り、……具体的には各地方勢力の地元生え抜きのボスといった幹部を戦慄させることになります。それによって「雇われトップ」が働きやすくなるという効果ももたらすでしょう。

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 党大会の最後の前哨戦になるであろう「六中全会」を前に、一気に勝負をつけるべく動き出した胡錦涛。「擁胡同盟」にようやく必勝の態勢が整ったともいえますが、いったん動いたとなると最後まで徹底的に、相手の息の根を止めるまでやめない、というのは正念場における胡錦涛の持ち味です。しかも寝技よりも直球勝負の腕力型。

 ……このあたり、江沢民を信用せずに後継者指名権を与えず、直々に胡錦涛を抜擢して江沢民の後釜にしろ、と遺言したトウ小平の好みもうかがえるようで興味深いです。




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「上」の続き)


 で、この韓正・市長が上司の陳良宇とは正反対に、実は「擁胡同盟」の一員である模様。それも政治生活の振り出しが共青団書記という経歴からすると、「擁胡同盟」の中でも正統な胡錦涛嫡流というべき「団派」(共青団人脈)のようです。

 いわば敵対する独立王国・上海に胡錦涛が打ち込んだクサビですね。上海に回されて江沢民や陳良宇など上海閥に囲まれて、色々意地悪されたりしたのかも知れませんが、見事にポストプレーを成功させた、といったところでしょう。ちなみに経済の専門家で市民の受けは悪くないそうです。

 http://news.xinhuanet.com/ziliao/2003-02/20/content_737996.htm

 その韓正。「陳良宇解任」という激震の中でとりあえず市当局をうまく掌握したようで、上海市報道官が「中央の決定を擁護する」つまり上海は陳良宇解任を支持する、という声明を発表しています。

 江沢民時代以来、独立王国たる地位を維持してきた上海がついに中央に屈した瞬間です。恭順宣言といっていいでしょう。新華社による第一報からわずか約3時間後にこれが『明報』電子版の記事になっています。

 ●上海市政府は中央の決定を擁護(明報即時新聞 2006/09/25/04:10)
 http://hk.news.yahoo.com/060925/60/1tmch.html

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 とはいえ不測の事態に備えて、この日のうちに様々な措置がとられたようです。まず韓正による市当局の掌握ですが、実際には陳良宇をひっくくるために中央紀律委員会から調査要員が多数送り込まれていますから、上海市当局の中で韓正は孤立していた訳ではないようです。

 しかも陳良宇解任直後の25日午後3時から開かれた緊急党幹部大会を仕切ったのは、「進駐活動」をすんなりと運ぶため北京から応援に駆け付けた党中央組織部の賀国強・部長。中央政治局委員を兼ねている高官です。他に同じ中央組織部の李建華・副部長もこの会議に参加しています。

 上海市報道官による「恭順宣言」が行われたのはこの前後のことでしょう。陳良宇失脚作戦が事前から計画的に練られていたことがうかがわれます。

 賀国強は大会の席上、韓正をトップとする上海市当局の新体制を中央は信頼していると言及、幹部の動揺を防ごうと努めました。韓正もこの場で「中央に従う」と恭順表明を行う一方、経済面では中央によるマクロコントロールを受け入れるとも表明しています。

 なお、この大会には上海市党委員会常務委員の中で呉志明・市公安局長と沈紅光・市党委員会統一戦線部長の2名が欠席したと『星島日報』が報じています。陳良宇同様、中央からの調査チームに拘束された可能性があります。

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 血迷った幹部が非常の挙に出る可能性にも手当てが行われました。

 空港や駅、港には武警(武装警察=準軍事組織)が派遣されて警戒態勢をとり、幹部の上海脱出を防ぐ措置がとられ、一方で上海市政府では局レベル以上の全ての役人にパスポート提出命令が出されました。まるで戒厳令下のような物々しさです。

 香港・マカオへの通行証も「進駐軍」がまとめて没収し、百名余りの副市長レベル幹部については、出国や出境(香港やマカオに出ること)が必要な場合は党中央紀律検査委員会と中央組織部の認可が必要ということになりました。また、現在欧州とオーストラリアを視察中の海外視察団(3コ代表団)には視察中止命令が出ています。

 なお、警備にあたっていた武警は他省から回されてきた部隊とする市民もあり、このことからも緊急党幹部大会を呉志明・市公安局長が欠席したことに関心が集まっているようです。

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 ●『太陽報』(2006/09/26)
 http://the-sun.orisun.com/channels/news/20060926/20060926022732_0000_1.html

 ●『成報』(2006/09/26)
 http://www.singpao.com/20060926/local/876821.html

 ●『明報』(2006/09/26)
 http://hk.news.yahoo.com/060925/12/1tmrb.html
 http://hk.news.yahoo.com/060926/12/1tp9x.html

 ●『星島日報』(2006/09/26)
 http://www.singtao.com/yesterday/loc/0926ao03.html

 ●『香港文匯報』(2006/09/26)
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0609260007&cat=002CH

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 ところで、陳良宇解任という激震に揺れた上海ですが、これは上海要路者の社会保障資金の流用疑惑に対する調査の過程で陳良宇の汚職が明らかになったことで起きた出来事にすぎません。

 調査チーム側である中央紀律検査委員会の干以勝・秘書長は26日に開いた記者会見において、陳良宇の一件を徹底的に捜査すること、また目下のところ上層部からの圧力のようなものは受けていないと表明(どっち側からの圧力?)。

 一方で、捜査がさらに進行するにつれて、陳良宇以外にも「逮捕者」が出る可能性を示唆しています。役人や企業経営者などが動揺しているのもそのためです。

 ●『星島日報』電子版(2006/09/26/12:41)
 http://hk.news.yahoo.com/060926/60/1to72.html

 ●『明報』電子版(2006/09/26/18:10)
 http://hk.news.yahoo.com/060926/12/1tnph.html

 ●『星島日報』電子版(2006/09/26/19:03)
 http://hk.news.yahoo.com/060926/60/1tp6q.html

 ●『明報』電子版(2006/09/26/20:20)
 http://hk.news.yahoo.com/060926/12/1tp8y.html

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 消息筋によれば、この社会保障資金の流用事件について中央紀律検査委は3月に密告を受け、6月中旬から調査チームを上海に常駐させ、7月から人員を増派するなどして捜査を本格化。

 7月中旬に30余名、8月上旬に20余名、8月下旬に40余名と「進駐軍」の兵力を逐次増強し、最終的には100名以上が上海に常駐した模様で、「総勢180名」とする報道もあります。

 この間、調査チームは80回以上の座談会を開き、市当局の幹部などから事情聴取を行っていたそうです。

 ●『香港文匯報』(2006/09/26)
 http://www.wenweipo.com/news.phtml?news_id=CH0609260008&cat=002CH

 ●『成報』(2006/09/26)
 http://www.singpao.com/20060926/local/876811.html

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 党中央紀律検査委の上海常駐を拒めなかった時点で上海閥が頽勢にあったことが垣間見えます。

 それでも胡錦涛は十分に手配りをした上で前進を重ねていったようで、『蘋果日報』(2006/09/26)の報道によれば、陳良宇の元秘書だった泰余・上海市宝山区長(当時)を拘束した8月22日は陳良宇が北京で開かれた中央外事工作会議に出席して上海を空けているタイミングを狙ったとのことです。

 元秘書が陥落したことで危機を感じた陳良宇は公開の場に努めて多く顔を出し、汚職撲滅を訴えるなどして健在ぶりをアピール、同時に中央の追及から逃れようとしましたが、結局逃げ切れなかったことになります。

 今回の陳良宇拘束も上海閥系の中央政治局委員が留守である時機を狙ったもの。陳良宇が上京して党中央政治局の会議に出席したところ党中央紀律委のレポートによって断罪され、身柄を拘束された9月24日には、曽培炎が欧州訪問中、華建敏はマカオに出張しており、賈慶林と郭伯雄はそれぞれ江西省と蘭州軍区を視察中で北京を留守にしていたのです。

 突如という感じを私たちに与えた陳良宇解任というアクションも、実は絶好のタイミングをはかって実施された奇襲作戦。このあたりに権力闘争の気配がにじみ出ているように思えます。

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 上海閥といえば肝心の江沢民は何をしていたのかといえば、江沢民は『江沢民文選』による多額の印税収入でホクホクしていた隙を衝かれたか、あるいは軍主流派という武力をも背景にした「擁胡同盟」に追いつめられて手も足も出せなかったというところでしょう。

 もうひとり、現役上海閥では最高実力者である曽慶紅・党中央政治局常務委員(兼国家副主席)については、自らの身を守るために「擁胡同盟」になびいた可能性を指摘する声が出ています。

 折しも「六中全会」(党第16期中央委員第6次全体会議)が10月8日から11日まで北京で開催されると発表されたばかりです。来年開催予定で大型人事や世代交代の行われる第17回党大会の前哨戦となるこの重要会議で、陳良宇は改めて断罪され、処遇が決まることになるでしょう。上海閥をはじめとした「反胡連合」にとっては苦いイベントになりそうです。

 ●「新華網」(2006/09/26/19:05)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-09/26/content_5140866.htm

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 なお、9月26日付の上海の地元最大手紙『解放日報』(上海市党委員会機関紙)は1面の大半を割いて陳良宇解任のニュース、その解任されたポストを韓正がそっくり代行するとの通達、そして賀国強による臨時党幹部大会での演説を配し、さらに同紙評論員による論文「中央の決定を断固擁護し、上海市をよくする仕事に全力で取り組もう」(上海閥の敗北宣言?)を掲げています。

 党中央政治局員の失脚劇という大ネタですから、各記事ともども、紙面(pdf)を記念に保存しておくのもいいかも知れません。

 http://epaper.jfdaily.com/html/2006-09/26/content_478454.htm

 ……ところで素朴な疑問なんですが、上海市長だった韓正、いくら胡錦涛派とはいえ汚職まみれの上海で独り身ぎれいにしていたのでしょうか。

 いやいや、ちょっと気になっただけです。




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 上海のトップだった陳良宇・上海市党委員会書記(党中央委員・党中央政治局委員)が上海の役職を全て解任され、限りなく有罪に近い汚職容疑で北京で事実上囚われの身となってしまいました。

 私にとっては久しぶりに目にする失脚劇です。直轄市のトップとか党中央政治局委員の失脚は1995年の陳希同北京市党委員会書記(当時)以来11年ぶりとのこと。

 そのとき香港にいた私もそのニュースは耳にした記憶がありますが、当時の私は自暴自棄な生活を送っていて、なんちゃって漢方医で薬を売りまくったり怪しげな通訳で荒稼ぎしており、ともかくチナヲチとは縁遠い暮らしを送っていました。1993年くらいまでは趣味として入れ込んでいたんですけどね。つい放埒になってしまいまして。

 ですから私にとっての「失脚劇」は1989年の天安門事件における趙紫陽総書記(当時)までさかのぼることになります。それからその前任者の胡耀邦(1987年)。あと失脚とは少し違うのですが、方励之ら改革派知識人の党籍剥奪。天安門事件では趙紫陽のブレーンら若手官僚や知識人が軒並みやられました。

 中国は何事も政治優先、国よりも党優先のお国柄ですから、政治的に悪人認定されると全否定されてしまうのでこちらは迷惑しました。例えば何冊も本を出してきた若手評論家が党籍剥奪などの目に遭うと、その人の書いたものは全て悪書認定で即発禁処分。失脚や党籍剥奪にならなくても売れていた本が政治的な基準に引っかかって突然禁書になることもあります。

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 そんな訳で、上海の大学に留学していたころは図書館やその事務室に出入りして職員とダベったり、旅行帰りにちょっとした土産物を渡したりすることは欠かしませんでした。私のお目当ては図書館やその職員ではなく、事務室にあるコピー機。

「××が発禁になった」

 と聞いてそれが入手前の本だったりするともうお手上げです。でも問題意識があって私の部屋によく遊びに来ていた親しい中国人学生らの中に持っている奴が必ずいましたから、それを図書館事務室のコピー機で複写する訳です。

 留学生担当教員・職員の事務室にもコピー機はありましたが、いくらその大学に強力な後ろ盾を持っていた私でも、さすがに伏魔殿に禁書を持ち込んでコピーする訳にはいきません。貸してくれた中国人学生にも迷惑がかかりますし。

 で、図書館事務室のコピー機を使わせてもらうのですが、すっかり私と親しくなっていて私の狙いを知っている事務員が私のコピーの仕方を見かねて、

「そんなにゆっくりやっていたら危ない」

 と言って代わりにコピーしてくれたりします。それがまた神業としかいいようのないスピードで、コピー機に息つくヒマすら与えずに数百ページを一気にコピーし終えるのです。ニヤリと笑って本とコピーを私に渡しつつ、

「それは面白い本だ。おれも読んだ」

 と言うこともあれば、

「あ、これは読みたかったんだ。でもすぐ売り切れちゃったからな」

 などと言いながらついでに自分の分までコピーすることもありました。

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 話がそれましたが、私にとって失脚劇といえば趙紫陽や胡耀邦、それに改革派知識人などがイデオロギーで社会主義バリバリの保守派からの猛攻でやられる、というイメージでした。

 1980年代後半のトウ小平というのは最高実力者といっても先代の毛沢東と比較されますから、

「あれはバランサーに過ぎない」

 という評価が一般的であり、実際に子分を守りきれずに見捨てるしかなかったケースもありました。カリスマ扱いされるのは江沢民時代以降です。……おっとまた脱線しかけてしまいました。

 要するに私の中の「失脚劇」というのは権力闘争の産物であり、罪状もまたイデオロギーの禁を破った、といった類のものばかりでした。私からみれば、中国をもっといい国にしよう、とする試みや主張が因循姑息な守旧派に叩かれて惜しまれつつ職を去る、というイメージです。

 それで一昨日は「陳良宇失脚」の報におおっと興奮してしまったのですが、この大ネタも醒めてみると確かに権力闘争の産物ではあるものの、罪状は紛れもない汚職。しかも天下国家のためじゃなくて私腹を肥やすといったもので、隔世の観があるというか、「失脚劇」も随分と品下ったものだなあ、という感慨が湧いてきました。

 まあ、それはそれとして。

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 党中央政治局員という大物を汚職嫌疑で一刀のもとに斬り捨てた胡錦涛政権、もし中国も日本のような世論調査ができるとすれば、この一挙で支持率がグッと高まったことでしょう。

 世論調査ではありませんが、「人民網」(『人民日報』電子版)が今回の事件に対する「網民」(ネットユーザー)の書き込みを公開していました。むろん胡錦涛側の果断な処置に拍手を送る内容の詰め合わせというのはお約束ですけど、これはネット世論の大方の感情を代表したものとみていいかと思います。

 http://news.people.com.cn/GB/61141/61143/4855839.html

 汚職幹部しかも上海市トップ&党中央政治局員という大物を斬首したということには、「上海嫌い」「上海憎し」といったかなり一般的な感情も手伝って快哉を叫びたくもなるかと思います。

「はいはい権力闘争権力闘争」
「それで、裁いた側の汚職はどうするんだ?」

 という冷めた見方をする者も少なくないでしょうが、そうした内容の書き込みは削除されますし、書き込んだことで当局にマークされかねません。

 ともあれ胡錦涛政権は「庶民派」という擬態を改めて国民に信じ込ませたことになりますが、

「おれたちのところの汚職幹部も何とかしてくれ」

 なんて声があちこちから上がって無用に忙しくなるといった藪蛇があるかも知れません。

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 上海閥ひいては「反胡連合」(反胡錦涛諸派連合)も同じ手で「擁胡同盟」(胡錦涛擁護同盟同盟)の有力者を叩くことができればいいのですが、まあ無理でしょうねえ。

 本来それをやるべき党中央紀律委員会はどうやら胡錦涛サイドにしっかり掌握されているらしく、今回の件に関しても相当数の調査チームを上海に送り込んでいます。

 陳良宇の解任は奇襲攻撃のようでもありますが、そのための段取りは事前からよく準備されていた形跡があります。

 「奇襲」も出たとこ勝負ではなく、まさに敵の虚を衝くタイミングで行われた、という印象です。

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 さて、トップを失脚という衝撃的な形で失った当の上海の話です。

 以下は「九・二五」事件ともいうべき9月25日の陳良宇電撃解任を電子版で速報した香港各紙の報道などを参考にしつつ話を進めていきます。各紙とも翌26日には紙面を大きく割いてこの事件を伝えています。

 陳良宇解任は市民レベルならともかく、役人や役人と親しく付き合うことで商売を円滑に進めてきた連中にとっては戦々兢々。商習慣が一変するケースもありますから、とりあえず先行き不透明感も手伝って当日の上海関連株は下落しました。

 要するに「民」はともかく、「官」や富裕層はもし「上海のしきたり」ともいうべき商習慣が否定されれば、もうどこから累が我が身に及ぶか見当もつかないので動揺するばかりです。

 最初に人事の話をしておくと、前回既報の通り、陳良宇の解任されたポストは韓正・市長が兼任代行することになりました。むろんこれは中央による処置で、陳良宇解任と同時に発表されています。


「下」に続く)




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 中共政界に激震です。上海市のトップ、陳良宇・上海市党委員会書記が汚職に関与したことで解任されました。

 ●中共中央、陳良宇同志の深刻な規律違反問題について立案・検断を決定(新華網 2006/09/25/12:58)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-09/25/content_5134888.htm

 というのが第一報。「新華網」(新華社電子版)はもちろん、『人民日報』『解放軍報』に加え上海の地元最大手紙『解放日報』などが電子版のトップでこのニュースを報じています。大手ポータルのニュースサイトでも大きく扱われています。

 いずれも新華社電をそのまま使っていることから、恐らく「新華社電掲載だけにしろ」との統制令が出ているのでしょう。それだけショッキングな重大ニュースということです。

 香港紙も電子版が論評抜きで報じています。論評抜きである以上、こちらも新華社電を引き写したり要約した内容となっています。

 日本の新聞は御覧の通り。『毎日新聞』の記事が事件の経緯に多少の解説が加えられており、オススメです。

 ●中国共産党、上海市トップを解任(読売新聞 2006/09/25/15:28)
 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20060925i105.htm

 ●中国:上海市トップの書記解任 社会保障資金めぐる汚職で(毎日新聞 2006/09/25/19:01)
 http://www.mainichi-msn.co.jp/kokusai/asia/news/20060926k0000m030051000c.html

 ――――

 さて、言うまでもありませんが、これはいわゆる「失脚」というやつです。陳良宇失脚。……上海閥の現地大番頭格で次代のホープと目されていただけに、今後の指導部人事に大きな影響を与えることになりそうです。

 陳良宇はすでに中央入りを果たしており、中央委員ばかりでなく中央政治局委員まで兼任していたのですが、この2つのポストは停止扱い。「立案・検断」作業が完了すれば、このうち少なくとも中央政治局委員を解任されるのは確実でしょう。

 当ブログでいう「擁胡同盟」(胡錦涛擁護同盟)と綱引きを繰り返してきた「反胡連合」(反胡錦涛諸派連合)、その「反胡連合」の主軸ともいうべき上海閥が次世代を仕切るべき有力者を射落とされたのですから、ただごとではありません。

 具体的にいきましょう。「擁胡同盟」におけるポスト胡錦涛と目されているのが遼寧省のトップである李克強・遼寧省党委員会書記で、そのライバルとなるのが「反胡連合」の陳良宇、あるいはやはり上海市同様に独立王国然とした広東省のトップである張徳江・広東省党委員会書記です。

 このうち陳良宇と張徳江はすでに中央政治局委員。胡錦涛は昨年の「五中全会」(党第16期中央委員会第5次全体会議)で後継者たる李克強を中央政治局委員に引き上げてまずライバルたちと肩を並ばせて、続いて今年10月開催の「六中全会」(党第16期中央委員会第6次全体会議)か来年開かれる第17回党大会で党の最高意思決定機関である党中央政治局常務委員に昇格させる肚だったようです。

 一方であとワンランクアップすれば党中央政治局常務委員になる陳良宇を「五中全会」で閑職に回してしまおうと胡錦涛サイドは考えていたようですが、敵対勢力をねじ伏せるほどの腕力がなかったため反対派の抵抗に遭ったのか、結局人事には全く手をつけることができませんでした。

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 しかし李克強を後継者として抜擢するなら、上述したように最低でも来年の党大会前に党中央政治局委員に昇格させておいて、できれば党大会で党中央政治局常務委員にしておきたいところです。

 それだけに来る「六中全会」では何事かが行われるだろうとみていたのですが、「擁胡同盟」は何とその手前の段階で陳良宇を閑職に回すどころか失脚に追い込んでしまいました。

 陳良宇の失脚については兆候が全くなかった訳ではありません。中央の汚職捜査チームが上海入りし、先月(8月)には陳良宇の元秘書である秦裕・前上海市宝山区長に汚職嫌疑がかかり、その勢いで陳良宇までが捜査対象になるかも知れないという観測は行われていました。

 ただここまでの上海閥の動きからみて、追及は元秘書止まりでトカゲの尻尾切りに終わるのではないか、いくら「擁胡同盟」が攻勢に出ているといっても映画「アンタッチャブル」のようにはいかないだろう、というのが常識的な見方でした。

 「擁胡同盟」が優勢であることから陳良宇が「六中全会」で閑職に回されることがあるとしても、それ以前に失脚させられる可能性は非現実的だとみられていたのです。少なくとも私はそうでした。以前のエントリーでもふれたことがありますね。

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 中共政権において党幹部が汚職をするのは排便するのと同じくらい自然かつ当然なことなのですが、いまその汚職撲滅キャンペーンが胡錦涛主導で大々的に展開されているのは皆さん御存知かと思います。

 大々的であることと本気度が高めなのがポイントです。何せ誰でもやっている汚職をわざわざ殊更に暴き立て、その罪状で処分・更迭するというのは中国における政敵抹殺の常套手段。江沢民も総書記時代にうるさ型の政敵だった陳希同・北京市長(当時)一派をこの方法で政界から追放しています。

 「大々的」「本気度高め」というのは、このキャンペーンを発動した胡錦涛サイドが攻勢に出たことを示すものです。なぜかといえば、党の重要会議である六中全会(党第16期中央委員会第6次全体会議)が来月に迫っているからです。

 これは世代交代や大型人事の行われる来年の党大会(5年ごとに開催)の前哨戦であり、前哨戦としては最後のチャンスかも知れませんから、「擁胡同盟」は「汚職撲滅」を大義名分にして押しまくり、「反胡連合」(反胡錦涛諸派連合)にコールド勝ち……するのは無理にしても、何とか大差をつけて主導権を握り、人事に手をつけたいところです。

 ●ザマーミロバーカ、とそっと呟いてみる。(2006/09/15)

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 報道をみる限りでは、上海閥は確かに以前より攻め込まれているようです。ただ、どこまで崩されるかは「六中全会」、そして来年の第17回党大会まではなかなか見きわめにくいように思います。

 ●実は諸侯も苦慮していたりする。(2006/09/19)

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 ……という訳で、私は汚職撲滅を振りかざした「擁胡同盟」の攻勢を「六中全会」での人事権掌握を狙ったものと考えてはいましたが、まさかその目前に最大のターゲットである陳良宇が失脚するとは正直、夢にも思いませんでした。

 ともあれ、大事件です。1995年9月に江沢民が政敵である北京閥の陳希同一派をやはり汚職容疑で壊滅させて以来のハイレベルな失脚人事となります。江沢民が当時まだ在世だったトウ小平の力を借りたかどうかはわかりませんが、今回はカリスマの後盾なしで「擁胡同盟」による強行人事ということになります。

 小型の政変といってもいいこの動き、カリスマ不在ということであれば、武力を背景にしなければ実現できないものでしょう。胡錦涛の軍権掌握が進んでいる証拠、とまで断言していいのかどうか迷いますが、胡錦涛と軍主流派の結びつきが強化されていることは確かです。その武力を含めた政治的攻勢に江沢民も追いつめられた、といったところでしょう。

 あるいは、『江沢民文選』刊行と「『江沢民文選』に学べ」運動が取引材料として使われ、江沢民はその見返りとして陳良宇を切ることに同意したのか、どうか。だとすれば『江沢民文選』発売は8月10日でしたから、7月あたりからシナリオが組まれていたことになります。でも陳良宇はその間も上海市のトップとして通常の職務を遂行し、その活動ぶりは「新華網」などでも報じられているのです。

 9月19日に開かれた上海市党委常務委員会も陳良宇が仕切り、人事登用は党中央の方針に基づいて厳粛にやれ、法規に反している幹部はまず解任した後、司法に照らしてちゃんと処罰させろ。……という趣旨の演説までしています。

 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-09/20/content_5112254.htm

 ところが、その5日後に北京で開かれた党中央政治局で陳良宇自身が汚職関与でクビになっているのです。

 ●社会保障資金の不正流用
 ●法律を犯した職員を庇護
 ●地位を利用して縁故者を優遇

 といった嫌疑、というより上海市に関する職務は全て解任されているので、「限りなく有罪確定に近い容疑者」扱いといっていいでしょう。……あ、申し遅れましたが、陳良宇の上海でのポストは韓正・上海市長が代行することになります。

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 それにしても胡錦涛も大きく踏み込んだものです。新華社電には今回の失脚劇について、

「中央の汚職撲滅についての決意の強さを示すもの」

「誰であろうとどんな高いポストの者であろうと、国法・党規約に違反すれば必ずその罪を追求され厳罰に処される」

 というくだりが出てきます。また、

「胡錦涛同志を総書記とする党中央の強靭なる指導のもと」

 という言い回しもあり、上の2つのフレーズとわざわざ付け加えられた
「強靭なる指導」には、事に踏み切るにあたって胡錦涛が大酒を飲んで度胸を無理やり据えたような気がしないでもありません(笑)。陳良宇を処断する、というのはそれほどの決意が必要な措置ではあります。

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 上海閥にとっては致命的な打撃といってもいいでしょう。陳良宇失脚は政治勢力としての上海閥が近い将来壊滅することを意味します。次世代の有力者がいなくなったことで世代交代が行われず、言うなれば後継ぎがないため御家断絶、となるからです。胡錦涛が後継者指名権を掌握する上で大きく前進した、ともいえるでしょう。

 ただ、逆にいえば「ただそれだけ」ということなのかも知れません。政治勢力としての上海閥は潰したも同然なれど、これで経済的な独立王国という一面も胡錦涛の統制下に入ることになるのか、また他の地方勢力も陳良宇の失脚で粛然とし大人しくなってしまうのか。……このあたりは注目に値すると思います。

 政治的には「擁胡同盟」がかなり優勢ではあっても、経済的には各地方勢力が開発欲求そのままに突っ走り、中央は自ら定めた予測を大幅に上回る実質成長率に仰天して火消しに大わらわ、というのが現状です。その「地方勢力」にしても、実際に暴走しているのは省・自治区・直轄市レベルではなく、郷、鎮、県といった末端レベルであるケースが多い模様。

 以前にも書きましたが、経済面では「中央vs地方」といった利害対立による反目が存在するのと同時に、各地方勢力も「省当局vs県当局」といった「内なる中央vs地方」をそれぞれ抱え込んでいます。これがさらに激化すれば今度は「地方vs地方」という図式も出現するでしょう。

 陳良宇を失脚させた胡錦涛政権が経済面でも中央としての指導力を発揮できるかどうか、その鉄腕度が試されることになります。個人的には、今年の経済をうまく御することができるかどうかが胡錦涛政権の今後に影響する、いや中共政権の死活に関わる、と考えています。

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 あとは続報待ちです。上海閥ひいては「反胡連合」としての反撃が行われるのか、鉄砲玉が飛び出して無茶をするのか(東シナ海ガス田の問題海域近くでの海軍による示威行為など)。

 あるいはこのまま経済ともども中央に仕切られてしぼんでしまうのか、陳良宇からさらに芋づる式に大物が汚職容疑で潰されていくのか。

 ……「六中全会」の幕が開く前からいきなり見どころ満載の展開に、こちらはオロオロするばかりです(笑)。




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 続編ではありませんが、前回の「補遺」のようなものです。

 前回皆さんから寄せて頂いたコメントにレスするつもりで、また自分の考えをまとめてみるつもりで書いてみます。

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「ここまで冷めた見方をするのは香港人の民度ゆえなのか、それとも中国本土と違って香港には言論の自由があるため本音で語ることができるからなのか。」

 と私は前回の文末に書きましたが、私自身の見方は後者。中国本土における中共への不信感や嫌悪感は相当なもので、それに危機感を持ったからこそ江沢民が反日風味満点の「愛国主義教育」を導入した訳です。

 外から見ると単なる「反日」のようですが、中共政権にとっては威信低下の改善と求心力向上を狙った、つまり「反中共」という餡を覆い隠すための「まんじゅうの皮」が「反日」です。むろん当時は反日姿勢をとった方が対日外交上お得だった、ということもあるでしょう。

 ところが改革・開放が深化するにつれ、様々な理由から「貧富の差」や「汚職の蔓延」、「失業」あるいは「失地農民」といった問題が目につくようになりました。このため当初は分厚い皮(反日)で餡を包んだつもりが、いつのまにか薄皮まんじゅうになっていて、危うくその皮が剥げかけたのが昨年の反日騒動です。

 中共政権にとって「反日」は一種の便宜的かつ戦略的なお題目だったのですが、本気で「反日」を唱えている民間組織の馬鹿どもを別とすれば、生活者にとっても「反日」を掲げてひと騒ぎし、蓄積された鬱憤、特に「官」への恨みつらみを晴らしたかったのでしょう。

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 大学生やニートは生計を考える必要がありませんから、そういった問題には比較的呑気でいられるのです。もちろん大学生の中には低所得層出身の苦学生がいて、そういう連中には社会の現状について某かの問題意識があるかも知れません。しかし親元の経済状況が仕送りに反映されて学生の間にも大きな「貧富の差」が存在することから、そうした問題意識が大学生全体で共有されることがないのだと思います。

 さて昨春の薄皮が剥げかけた反日騒動を経験して、中共も民衆が「反日」をお題目にしていること、そして餡を包んでいる「反日」という皮がずいぶん薄くなってきている、ということを学習したようで、それ以降は靖国問題であれ尖閣問題であれ、反日分子の活動を厳しく取り締まっています。「SAYURI」が中国本土で上映禁止になったのはその極端な例です(笑)。

 同じ理由からネット上の言論に対する規制も強化されつつあります。恐らく言論の自由があるとすれば前回紹介した香港のBBSでの声のように、「九・一八」でありながら「反日」にとどまらず、別の方向に話題が飛んでが盛り上がっていっただろうと思います。

 その実例といえるかどうか。……胡錦涛政権が発足した当初、反日サイトの活動やネット上での反日言論への規制を強化したことがあります。すると反日を語れなくなった糞青(自称愛国者の反日信者)は意外なことに中国国内の社会問題に目を向ける素振りを示しました。胡錦涛の対日路線がほどなくダメ出しされて対日強硬論が台頭することで糞青も本来の姿に戻っていったのですが、あの短期間に垣間見せた変化は非常に興味深いものでした。

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 ここからは香港の話です。前回紹介した香港のBBSは嫌中共&民主化熱望が基本スタンスになっているので、中共への点が辛くなっている部分があります。それを割り引いて考える必要がありますし、あそこの連中も中共への嫌悪感を示す一方で「反日」的傾きがない訳ではありません。

 ただ香港人は世代ごとに異なる経験をしており、例えば現在の第一世代は大躍進やその無理が祟って発生した飢餓地獄から逃れるため香港に密入境しています。

 当然ながら政治運動への嫌悪感=中共嫌いという心理がありますが、一方で「新中国を成立させた」という中共への評価や中国本土への望郷意識もあります。

 ですからこの世代の中共に対する見方は複雑で、ひとくくりにできないといえるでしょう。

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 第二世代は英国統治下の香港で生まれ育ち、教育を受けて社会人になっていますから、中共政権へのいかがわしさを感じています。それを決定的にしたのが1989年の天安門事件で、香港での支援デモにも学校単位・職場単位で参加しています。中国返還後の中共からの政治的抑圧もあって、中共への好感度は限りなく低いです。

 ……むろん政治的傾きには個人差がありますから、これは一般論にすぎません。個人差といえば、香港時代の私にとって最初で最後の日系企業から転職した後、やはり転職組のローカルスタッフが集まって鍋をつついた際に日本人では私だけに声がかかって参加したことがあります。そのとき以前は受付嬢だった女性から、

「中共に統治されるくらいなら、日本軍に占領された方がずっとマシ」

 と真顔で言われて答に窮したことがあります。

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 第三世代は天安門事件当時はせいぜい児童、という歳ですから、天安門事件に伴う香港での騒ぎを体験、というよりかすかに記憶しているに過ぎません。ただこの世代は香港の民主化要求や自由を規制する法律制定への反対運動(2003年の50万人デモ)などを通じて民主、自由、人権といったものの価値を知っており、それに制約をかけようとする中共に好感は持っていません。

 ただ香港では中国返還に伴って香港型愛国主義教育ともいうべき「国情教育」なるものが教育のカリキュラムに組み込まれました。まずは日本による侵略だの南京虫事件だのといった中共史観を叩き込み、反右派闘争や大躍進、文化大革命などはサラリと流し、天安門事件は完全スルー(教科書にも記載なし)。

「中国は多党制で中共が善政を敷いている」

 といった白々しい虚構を教わります。……第三世代は学生時代の最後にこれを受けて成人していることが気になります。

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 第四世代は現在在学中ですから、「国情教育」でどこまで染めあげられるか戦々兢々。とりあえず必修科目である北京語は一応話せるようです。ただ香港ディズニーランドに押し掛けた中国本土からの観光客のマナーの悪さと程度の低さには反感を持っていたようですから、そうした角度から、

「おれたちは大陸の奴らとは違う」

 という優越感のような意識はあります。

 ただ前述したように、いずれの世代においてもその底流には「反日」ないしは「侮日」意識があります。政治意識の高い連中を別とすれば、「反日」は基本的に中共史観を鵜呑みにしていること、第二次大戦で日本が香港を占領したことによるもの。一方で中国本土に対しても優越感を持ち、台湾の愛すべき素朴さを田臭と貶す「小中華意識」が、日本文化を受容しつつも「小日本」(侮日)という感情を心の隅っこに貼り付かせているのです。

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 BBSによってはそうした「反日」色が露骨に出ているところもあります。ただ、カラオケで私に「反日」で挑んだA君などは例外というよりビョーキであり、普通の香港人はそこまで馬鹿なことはしません。

 他にやる人間がいるとすれば、「反中共」「反日」「反香港政府」と何事でも先頭に立って騒ぎまくり、その騒ぎっぷりが人気を呼んで前回の立法局議員選挙では最多得票を記録し当選した梁国雄(通称「長毛」)くらいのものでしょう。あれも眺めている分には面白いのですが、要するに馬鹿の類です。

 香港人が台湾人と異なるところは、中共の悪政を知識としてではなく、体験として実感しているところです。天安門事件でのデモや2003年の50万人デモ、中国本土からの観光客のマナーの悪さと程度の低さ、そして自分は体験していなくても、第一世代から「体験」として語り継がれている様々なエピソード。

 要するに「肌で感じている」訳で、そこに比較的高い政治意識が加われば、前回紹介したBBSのような反応になる訳です。

 ただ香港は実質的に中国の植民地であり、言論の自由などはあっても政治的には普通選挙制すら未だに許されていません。如来様の掌の上で飛び回る孫悟空のようなものです。

 キツい言い方をするなら、党の意向で司法を無視してどうにでも料理されてしまう中国本土の国民が「政治的畜類」であれば、香港人は「半畜類」といったことになるでしょう。

 ミニ憲法ともいうべき「香港基本法」の附則が定めるところによれば、仮に普通選挙が実現されたとしても、自分たちが選んだトップ(行政長官)が中共の気に入らない人物であれば、全人代常務委員会によって「無効選挙」とされてしまいます。

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 救いのない社会という訳です。しかも「五十年不変」ということになっていますから、2047年には事実上の中国本土化が行われても文句が言えません。こういう環境においては、目の見える人ほど辛い思いをし、一種の絶望や諦念に苛まれることでしょう。実際、条件が整えば移民する、という人が少なくない理由のひとつもそこにあるのではないかと思います。

 ただ最後に改めて強調しておきますが、香港人の大多数は中共史観で極彩色を以て描かれた日本というものを鵜呑みにしており、底流には「反日」「侮日」意識があります。

 いま「保釣運動」(尖閣防衛運動)はごく一部の活動家によるものとなっており、香港市民の多くから無視されたも同然の状態になっています。でも香港社会に閉塞感が充満し、その不満を中共にも香港政府にも持ち込めないといった状態になったら、どうなるかわかりません。

 中国返還を翌年に控えて先行き不透明な状況が香港社会を覆っていた1996年当時と同様、「保釣運動」が市民から支持され、平時なら伏流水でしかない「反日」を爆発させることで鬱憤を晴らす、ということになる可能性はあると思います。




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 もう15年ばかり前の話になりますが、私が香港に渡って最初に住んだのが湾仔(ワンチャイ)という街でした。香港島側でビクトリア湾に面し、ショッピングセンターである銅鑼湾(トンローワン)に隣接していて、オフィス街の中心である中環(セントラル)にも近い便利な場所です。

 マンションの1階は有名な夜総会(ナイトクラブ)。香港黒社会で若手から急速に成り上がり「湾仔之虎」との異名を持つ親分の拠点でした。

 私が住んでからしばらくして「湾仔之虎」はマカオで暗殺され、その半生が映画化されたりもしましたが、夜総会は従前通り営業を続けていました。その入り口には駐車係と正装したインド人のボーイが立っていて、残業で帰宅が深夜になっても治安に不安を覚えなかったものです。

 海から遠くないことで、私の部屋も一応ビルの隙間から少しだけビクトリア湾と、その対岸である九龍の背後の山並みを見渡すことができました。

 ……あれはニューイヤー(太陽暦の1月1日)のときだったと記憶していますが、午前0時になった途端、周辺を走っている車が一斉にクラクションを鳴らし、湾内に停泊している船舶もあちこちでボーッと警笛を響かせて新年が祝われました。

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 中国本土は9月18日が祝祭すべき日のようです。全国各都市で一斉に車のクラクションが鳴らされ、防空警報のサイレンが轟いた街もあったという派手な慶祝ぶり。1931年に起きた柳条湖事件の記念日です。

 そういえば数年前、その記念日近くに社員旅行で珠海を訪れた日本の土建屋を接待するために、地元の業者が即座に売女約200人を揃えるという神業をみせたこともありましたね。その報道に接して、私は毛沢東以来の伝統を持つ人海戦術いまなお健在、との思いを強くしたものです。

 その9月18日を中共政権が半世紀以上経った現在でも「国恥日」としている理由はよくわかりません。中共による50年以上の治世の間にもっと恥ずかしい出来事がたくさん起きたのを忘れてほしいからかも知れませんが、基地外の考えることを常人が理解しようとしても徒労に終わるので詮索はやめておきます。

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 記念日ですので当日の中国国内メディアには関連報道が山ほどありましたけど、あれは一体どこまで本気なのか。少なくとも圧倒的多数の民意を背景にしたものでないことは確かなようです。

 ……というのは、翌9月19日の香港紙『明報』に興味深い記事が出ていました。

 ●瀋陽総商会、九・一八の慶祝イベント自粛を呼びかけ(『明報』2006/09/19)
 http://hk.news.yahoo.com/060918/12/1t8em.html

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 これは「九・一八」の舞台となった瀋陽市の地元夕刊紙『遼瀋晩報』が報じたのを引用したもので、同市総商会の李振林・副会長が、

「9月18日は国恥日なんだから慶祝行事などおめでたいイベントは控えよう」

 と『遼瀋晩報』を通じて呼びかけたというものです。

 「九・一八」=「918」=「きゅういちはち」となりますが、この「きゅういちはち」を北京語で発音すると、

「就要發」(大儲けは目の前)

 という商売人にとっては縁起のいい言葉となり、それゆえ9月18日を開店日や会社設立日に選び、オープンセレモニーといった祝賀イベントを開催するケースが少なくないそうです。

 国の恥、民族の恥より自分の商売優先という訳です。大らかで結構な話ではありませんか(笑)。

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 縁起がいいなら大安吉日と一緒で、結婚式にも向いた日取りということになるでしょう。この点につき『遼瀋晩報』が市民30名に取材したところ、

「9月18日を絶対結婚記念日にはしない」

 と答えたのはわずか3名。残る90%(27名)の市民は、

「9月18日であろうとなかろうと気にしない」

 と回答したとのこと。これまたいい話ですねえ(笑)。いかに中共政権がイデオロギーや中共史観を振り回しても、政権への根強い不信感と社会状況の悪化には勝てません。一般市民が実生活優先であること、歴史問題に興味が薄いことをはからずも示してしまうアンケートとなりました。

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 地元瀋陽でさえこんな有様ですから、後は推して知るべしです。本気なのは実生活とは関係ないニートまがいの糞青(自称愛国者の反日信者)あたりでしょう。

 連中は連中なりに真面目なのです。ただその尻馬に乗って騒いで鬱屈を散じたい失業者や失地農民やチンピラがいます。昨春の反日デモ&プチ暴動がその好例ですが、今回も不完全燃焼気味の騒動がいくつか起きたようです。

 大した騒ぎに発展しなかったのは、統治者たる中共政権が反日騒動で懲りて警備態勢を強化していたからでしょう。盛り上がりたい糞青どもにしても、ネタが「九・一八」だけでは燃料不足でしょうし。

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 中国本土がそんな感じですから、特別行政区たる香港はもっと冷めていました。

 ●A45 網絡電台討論區
 http://forum.a45radio.com/index.php

 というBBSがあります。私の知る限りでは、無用な罵倒合戦などの少ない、マトモな部類に入る香港でも数少ない掲示板のひとつです。

 このBBSで9月18日、
「今日は九一八だ」というスレッドが立ちました。スレ立て人のコメントは、

「ご感想をどうぞ」

 という一言だけです。それに対するレスを並べてみます。

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 ●ない。nothingだ。(感想なんて)何もない。ホント中国人はこういう馬鹿なことを覚えておきたがるんだよな。何代も前のことだぜ。

 ●共惨党がもうすぐゲームオーバーになるから、そしたら国恥日だ国恥日だと騒ぐこともなくなるだろ。
(「共惨党」はママ)

 ●本当に何とも思わないな。

 ●御馳走で接待してくれるんなら別だけどな(笑)。

 ●何の感想もない?これ読んでみろよ。少しは面白いぜ。
 http://www.dajiyuan.com/b5/5/8/21/n1025794.htm

 (リンク先は大紀元のインタビュー記事。「九・一八」の前後に中共がいかに抗日活動の足を引っ張ったかが語られている)

 ●実際、本当に国恥日だよ。日本軍の悪行はまぎれもない事実だ。だけどこういった国恥日を(何の関係もない)中共が自分のものにして、その機に乗じて民族感情を煽り、反日感情を高めている。それから反日デモだのSKIIだの、こんなことやってたら(日中)両国人民が仲良くなるのも容易じゃないな。

 ●ある。
(赤字で大書)

 ●何があるっていうんだよ。もしあのとき中国が日本に「解放」されていてたら、いまよりもっと強大になっていた、って言う奴だっているんだぜ。これって売国奴思考か?

 ●それわかるよ。日本と韓国に残っている中国の伝統文化は我らが輝ける中共国よりもずっと多いしな。

 ●歴史を忘れないというのなら、もちろん「九・一八」を忘れることはない。東北三省の人民が受けた戦火や蹂躙には血涙の尽きることはない。でも中国を侵略したのは日本だけか?第二次大戦の末期、ソ連が敗退を重ねる日本に突如宣戦布告し、中共の党勢回復に手を貸した。そして東北三省に大挙進軍して、日本軍に対しては武装解除や物資の略奪を行い、大量殺戮もした。民間人の死傷者も数知れない。でもこうした歴史について、中共政権や左巻きのバカどもは無知を装い、絶対言及したりしない。

 ●必殺の一撃だな。その通り中共は記憶を選択することが好きなんだよな。

 ●だから去年、中国と香港で反日デモがあったとき、『蘋果日報』に四コマ漫画が出ていたよな。「抗議竄改歴史」(歴史の改竄に抗議する)ってプラカードを掲げていたデモ参加者を警察が引っ捕まえて、「抗議」の後ろに必ず「日本」の二文字を加えろ、そうしないと国家政権転覆罪で起訴するぞ、って警告してたやつ。歴史なんて昔っから政治と権力の賜物で、現在が過去をいいように規定することでしかないな。

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 ……とのことです(笑)。ここまで冷めた見方をするのは香港人の民度ゆえなのか、それとも中国本土と違って香港には言論の自由があるため本音で語ることができるからなのか。

 一考に値するテーマかも知れませんね。




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 何だか最近、当ブログは主題である中国観察の真似事からやや遠ざかっている観がありますので、少し舵を戻しておきます。

 折よく前々回のコメント欄で「はふふ」さんからご質問を頂いたので、今回はそれに対するレスという形で。……ただ回答になっているのかどうか自分でも危ぶんでいますし、丹念に記事を示しつつ話を進めていく訳でもありません。

 まあ雑談のような気楽さで俯瞰してみる、ぐらいの心持ちで書いていますので、そのつもりで読んで頂ければ幸いです。

 まずは「はふふ」さんのコメントから。

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 ●Unknown (はふふ) 2006-09-18 15:42:26

 どうも、いつも読ませていただいております。

 なんか上海閥がそうとう追い詰められているそうですが、北京に従わない離反的な派閥って上海と広東以外あるのでしょうか?

 結構あるのだろうとは思うのですがネット上を探してもなかなか無いものでして。

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 以下は私のレスです。

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>>はふふさん

 コメントありがとうございます。

 報道をみる限りでは、上海閥は確かに以前より攻め込まれているようです。ただ、どこまで崩されるかは「六中全会」(党第16期中央委員会第6次全体会議)、そして来年の第17回党大会まではなかなか見きわめにくいように思います。

 政治勢力間の力関係は、そういうイベントにおける人事権の掌握度という形で最も明確に表れると私は考えています。

 例えば2つの政治勢力による抗争があったとして、その一方が優勢な状況に持ち込むことに成功しているとします。それでも野球でいえばコールド勝ちとか大差をつけている、というくらいの圧勝状態でないと思い通りの人事はできません。

 それでも100%思惑通りになることはまずあり得ず、相手の顔を立てたバランス人事が必要になりますし、優勢とはいえ僅差であれば、人事そのものに手がつけられないことになります。

 その好例が昨年秋の「五中全会」(党第16期中央委員会第5次全体会議)です。当時、胡錦涛サイドは敵対勢力に対し優勢な状況にありました。開催前には人事異動に関する下馬評が海外メディアによってあれこれと報じられ(胡錦涛の腹心を昇格させる一方で上海閥の要職者を閑職に回す)、香港の親中紙なども異動を示唆する記事を飛ばすほどでした。

 ところが、実際には胡錦涛のサイドの優勢が柔道でいう「効果」に毛が生えた程度のものだったため、とうとう人事そのものが行われませんでした。腹心昇格に持ち込めるだけの力がなく、敵対勢力の勢いを削ぐ人事を強行することもできなかったからです。

 ――――

 そもそも100%思惑通りの人事が実現した、ということがありません。少なくとも中共政権が改革・開放政策に舵を切って以来、トウ小平が最高実力者として君臨していた期間も含め、日露戦争における日本海海戦のような「完勝」の前例がないように思います。

 民主化運動に始まり、最後には軍隊を投入して天安門事件という血の弾圧を行った1989年夏の中共における緊急事態下でもそうでした。民主化運動に理解を示し、武力弾圧に強く反対した趙紫陽らをトウ小平は失脚させ、上海市のトップだった江沢民を総書記に大抜擢するといった戦時内閣的なシフトをとりはしましたが、一方で血しぶきを浴びた軍隊の親玉である楊尚昆らを要職に就かせるといった論功行賞人事を避けることができませんでした。

 下って1992年、トウ小平が深センや広東省を突如視察して回りました。その間に発表した南巡講話を以て改革再加速の大号令が発せられ、保守派は事実上、政治勢力としての実質を失いました。

 それでも同年秋の党大会では胡錦涛の大抜擢などがありつつも保守派にも配慮したバランス人事が行われ、翌1993年の全人代(全国人民代表大会=立法機関)での任期満了による指導部改選において、前評判の高かった朱鎔基の首相起用が見送られ、保守派である李鵬首相がブーイングのなか続投することになった経緯があります。

 後に鉄腕宰相とうたわれることになる朱鎔基の首相就任が5年遅れたことは、定年制導入により首相就任期間が短縮されることにもなりました。これはトウ小平にとっても中国にとっても痛恨事ではなかったか、と私は考えています。

 ……さて、現在の政争に話を戻します。当ブログではしばしば政情を整理する便宜上、「擁胡同盟」(胡錦涛擁護同盟)、「反胡連合」(反胡錦涛諸派連合)という言葉を使います。胡錦涛擁護勢力を「同盟」としたのは、胡錦涛と人民解放軍主流派との間に政治的取引が行われたとおぼしき形跡があったからです。一種の契約関係ですね。

 一方の「反胡連合」、すなわち反胡錦涛諸派連合と殊更に称したのは、この政治勢力が実際は「諸派」の寄せ集めであり、それぞれ異なる思惑や主張を持ちつつ、中央政府ないしは胡錦涛に異を唱える点において結束しているのみ、という空気を常に感じていたからです。

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 現在の中共政権における政治勢力と派閥間抗争は、例えば「対外強硬度を高めろ」といった軍非主流派などによる電波系の主張を別とすれば、基本的に利権を軸にして構成されているようにみえます。これが「改革派vs保守派」といったイデオロギー色を主流とし、加えて国共内戦時の指揮系統を反映した人脈が残存していた1980年代の派閥抗争とは異なる部分です。

 で、その利権に関して「中央vs地方」という図式がしばしば浮き彫りにされ、その具体的表現のひとつとして「諸侯経済」という専門用語まであります。ただ「中央vs地方」=「諸侯経済」ではありません。

 「諸侯経済」というのは地方当局が中央政府の示す政策に面従腹背するだけでなく、各地方勢力が経済面で保護主義に走り、外地との経済的往来を排除・遮断する、といった一種の経済的割拠状態です。要するに「中央vs地方」の一方で「地方vs地方」といった対立も起きている状況で、これは中央の指導力が低下する一方で地方勢力の利権追求が極端になると出現する症状といえるでしょう。

 そして、利権が軸になっている以上、もうひとつ無視できない状況が起きている筈だと私は考えています。「諸侯」というのは一般に省・直轄市・自治区といった単位でしょう。この「諸侯」と北京(中央政府)の利害対立が「中央vs地方」ですね。

 ただ利権という点で考えると、果たして諸侯がそれぞれ自らの「領地」をしっかり掌握できているのか、どうか。直轄市のような狭い範囲(面積)ならともかく、例えばある省、ある自治区の中にも「中央vs地方」のような構図が存在するように私は思うのです。

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 やや具体的にいうと「省当局vs県当局」などといったもので、北京から送り込まれたトップに対し、ポストは低いものの地元生え抜きの、いわば地元のボスといった政治勢力が抵抗して言うことを聞かない、ということです。

 実はそうした出来事は私たちの可視範囲内にあり、注意していれば見つけることができます。顕著だったのは昨年夏以来の闇炭坑閉鎖問題でしょう。それから環境汚染問題の中にも同じ属性とみられるものがあります。

 また省当局にしても、胡錦涛から送り込まれた「雇われトップ」に対し、省党委員会副書記、省政府副省長といったポストにある地元生え抜きの幹部が陰に陽に邪魔だてをする、といったことがあっても不思議ではありません。そもそも「どうせこいつはここを勤め上げたら中央に呼び戻されて出世するんだ」という感情がまずあるでしょう。これは日本の会社でもしばしば発生する不協和音だと思います。

 地方が中央の経済政策を無視して突っ走る、という状況にしても、郷、鎮、県、市といった末端からの経済統計を省当局が加算して省単位でまとめてみたら予想を遥かに上回る経済成長率で、中央の政策に背く結果になってしまって狼狽した、ということもあるかと思います。少なくとも胡錦涛人脈の雇われトップは青くなっているでしょう(笑)。

 実際に多くの地区の経済成長が中央の定めた指標(全国単位で8%前後)を大きくオーバーし、全国単位では今年上半期のGDPが前年同期比で10%増を越えてしまっています。

 どうやら通年でも2桁成長になる見込みだそうで、国営通信社である新華社の電子版「新華網」などでも経済過熱を懸念する記事や地方当局が面従腹背で突っ走っているといった報道をしばしば目にします。

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 こうした中国国内メディアによる報道を表面だけをみて鵜呑みにすれば「中央vs地方」という図式になってしまいますが、実際には「諸侯」の内部でも「中央vs地方」的なせめぎ合いが起きている訳です。個人的にはこちらの方が重視すべき事態で、中共政権の今後、そしてその崩壊シナリオを考える上でも注目するに値するのではないかと愚考する次第です。

 要するに「北京に従わない離反的な派閥」が存在するという事態とともに、より深刻といえる状況が同時進行中だと私は思います。

 ただこれは「はふふ」さんが指摘されている通り、ネット上で容易に見つけられるものではなく、とりあえず中国語読解力がなければなりません。日本のマスコミによる中国報道は往々にしてある種の不必要な傾きを持っている上に、表面的な事象の断片だけを追いかけることに終始し、中共政権の行動原理といったような根本の部分をうかがおうとしたり、俯瞰を試みるといった点が欠落しているからです。

 たとえ中国語を読む力があったとしても、ストーカーのように毎日記事を漁り、また巨細を問わずニュースの行間や記事そのものから匂い立つ気配に注意を払う作業が必要です。

 もちろん素人の私にそんな力量がある訳もなく、それゆえ「はふふ」さんの御質問に対して具体例を示すことができません。

 ただ「中央vs地方」という対立軸の一方で、「地方」においても「中央vs地方」(地方当局vs末端レベル)という構図が存在していて、実はその構図の方が中共政権にとっては厄介ではないか、とお答えすることしかできません。誠に申し訳ありませんが、自らの力不足を恥じ入る次第です。

m(__)m




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 睡眠不足です。

 完全夜型生活なのにロクに寝ないで昼間に動くからそうなるのですが、今日は仕事の打ち合わせや前回のようなリアル糞青(自称愛国者の反日信者)の相手とかではなく、配偶者と
「出口のない海」という映画を観てきました。

 御存知の方も多いでしょうが、人間魚雷と称された特攻兵器「回天」を軸に学徒出陣組を描いた物語です。

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 最近は本業・副業・当ブログに加え、わが愛機たるパワブクのOS転換(ようやくOSXメインに。ただしOS10.2.8なのでskypeが使えません……orz)という余計なこともやっているので、ヤフーで予告編を観るまで迂闊にもそういう映画が封切られるとは知りませんでした。

 そんな具合ですから、原作があるようですけどもちろん私は読んでいません。予告編動画が良さげだったので観に行く気になりました。

 予告編。……以前それで期待を膨らませて臨んだら内容が糞で大失望させられたのは正月の「男たちの大和」。その苦い経験がありますから多少の警戒感と心の準備をしつつ映画館に足を運びました。

 ところが、今回は意外に良かったです。……いや正直に申し上げます。私にとってはツボだったらしく、不覚にも何度か涙腺を刺激されてウルウルしてしまいました。どうも私はベタな映画に弱くていけません(笑)。

 配偶者も泣きっぱなしだったようです。ただ配偶者は「男たちの大和」でもそうでしたし、逆にどんなにつまらないコメディでも大笑いできるので(実にうらやましい)、当てにはなりません。

 制作費では「男たちの大和」に遥かに及ばないでしょうけど、主要キャラの描き込みとテンポの良さは「出口のない海」に軍配が上がる、というのが私の感想です。

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 学徒出陣組が主役ですから、当然のように雨の神宮外苑で行われた壮行会(1943年10月)の記録映像が登場します。そこで私はふと思い出しました。昨年の8月15日、すがすがしく静ひつな空気とよく晴れた空のもと、靖国神社に参拝したときのことです。

 正確には、参拝を済ませて入った喫茶店で、店をやっていた菅井きん似のお婆さんが、この壮行会に見送る側で立ち会っていたと話してくれたことです。流れる記録映像を見ながら、あのお婆さんもこの中にいたんだなと思いました。

 映画には主人公と淡い相思相愛の仲である女学生が登場し、やはりこの壮行会に見送る側で参加していました。靖国神社に参拝してきたというだけで何の縁もない見ず知らずの私に、

「昔の話ですけどねえ……」

 と切り出して話してくれたお婆さんにも、あるいはそういう物語があったのかも知れません。

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 ネタバレは避けますが、注文が2点。

 まずは回天で青春を燃焼させた学生たちが自らの夢を断ち切り、故郷や大切な人たちを守るために生命を投げ出さんとしたその決意や行動が、現在の日本に、そして現在の日本に生きる私たち日本人にちゃんとつながっているんだ、というアピールがもう少しほしかったです。

 その点で忘れられないのは、海軍報道斑員だった作家の故・山岡荘八氏が、特攻隊の基地になっていた鹿児島県・鹿屋基地で行った有名なインタビューです(今回の映画とは無関係ですが)。師範学校を卒業して出征するまでは教員をしていた特攻隊員の西田高光・中尉(戦死後少佐に特進)に対し山岡氏が、

「この戦を果して勝抜けると思っているのかどうか?もし負けても悔いはないのか?今回の心境になるまでどのような心理の波があったか?」

 と尋ねたところ、教え子たちからの手紙に返事を書いていた西田中尉はその手を休めて、

「学鷲は一応インテリです。 そう簡単に勝てるなどとは思っていません。しかし、負けたとしても、そのあとはどうなるのです………おわかりでしょう。われわれの生命は講和の条件にも、その後の日本人の運命にもつながっていますよ。そう、民族の誇りに………」

 と返答するのです。

 http://www.yasukuni.or.jp/siryou/1404.html

 その2日後、西田中尉が爆装した零戦で出撃していくのを見送りながら、山岡氏は涙が止まらなかったそうです。

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 注文その2。回天を搭載する潜水艦の艦長や乗員と回天搭乗員たちとの間の心の交流や、回天出撃を見送る艦長のやるせない想いを描き込んでほしかったです。

 これについては体験談が結構あるのですが、映画の艦長は淡々とし過ぎていてちょっと拍子抜けしました。

 実話では、回天が潜水艦から切り離されて発進する直前、

「最後に何か言い残すことはないか?言伝を引き受けるから」

 と尋ねる艦長に、

「ここまで運んで頂いてお世話になり、本当にありがとうございました。皆さんの武運長久をお祈りします」

 と答える回天搭乗員がいじらしく、そんな他人のことより家族や恋人へのメッセージだろ、言い残すことは本当に何もないのか、と艦長が胸の詰まる思いをしたことがあったそうです。

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 ともあれ、回天という特攻兵器があった、という点については詳細に描写されていて、そのことは十分に伝わる映画です。

 もし鑑賞されるのであれば、パンフレットもお勧めです。出演者・関係者・元回天搭乗員インタビューといったお約束の内容のほか、映画のあらすじが手際良くまとまっていたのが良かったです。



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「上」の続き)


 さて反日ソングたる中国国歌の後にA君が「尖閣諸島はおれたちのものだ」と言い放った一件です。

 A君はさすがに私の方を向いて言ったりはしませんでしたが、見かねた元仕事仲間が半ば腰を浮かしました。

 そういうことならシナリオ変更です。

 私は立ちかけた元仕事仲間を制して、ペンを取り出すとティッシュに書き付けました。日本海軍の駆逐艦でいうなら「戦闘、反航砲雷戦!」といったところです。

「他是不是属於那些名震中外的『糞青』?」
(こいつは内外にその名を轟かせているあの「糞青」どもの類いか?)

 「糞青」は本来なら
「憤青」と書くのですが、中国で「憤青」の馬鹿さ加減を揶揄った連中が、発音が似ていることから「糞青」と蔑んで呼ぶようになったので、私もそれに従ったのです。いまでは本来の「憤青」も貶し言葉になっているようですが。

 元仕事仲間が困った顔をして、A君はそれを読んで目に怒気が宿りました。でもあいにくここは東京で私のホームですから、どういう展開になっても審判は私のために笛を吹いてくれるでしょう。

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「唔好[o甘]認真喇~,講笑之嘛~」
(そう固くなるなよ、冗談じゃないか)

 と私は笑い飛ばしてマイクを持ちました。その場はアンディ・ラウ(劉徳華)の「忘情水」で空気を取り鎮めておいて、次のローテで中共ソング、

「没有共産党就没有新中国」
(共産党がいなければ新中国はなかった)

 を以て戦闘開始です。もちろん「新中国」のところは、

 「反右派」
 「大躍進」
 「紅衛兵」
 「四人幇」(四人組)
 「六加四」(6+4=六四=1989年の天安門事件)

 と、ことごとく歌詞を入れ替えるのはお約束。ネット上では以前よくやっていたことなので懐かしいというか、変に楽しくなってきてしまいました(笑)。

 ――――

 そのあとの私は軍歌のオンパレード。これがまたモニターに当時の日本軍の支那事変における快進撃ぶりや命中精度抜群とうたわれた重慶爆撃のようなニュース映像がA君への嫌がらせのようにガンガン流れるので実に刺激的(笑)。やっぱりホームはいいものです。

 2時間だけ部屋をとったのでそれほど数は歌えませんでしたが、最後はまたアンディ・ラウの「纏綿」です。イントロのときにA君に向かって、

「[イ尓]記唔記得今日[o係]我[o尼]個日本人[o既]面前講[o左]幾多次『[o架]仔』同埋『蘿蔔頭』?」
(君は今日、日本人であるおれの前で何回『[o架]仔』と『蘿蔔頭』という言葉を使ったか覚えているか?)

 と下手な広東語で問いかけてから歌に入りました。前半部は歌詞通りに歌うので何の問題もありません。ただ、サビの部分だけ以前戯れで替え歌にしたものに差し替えました。

 請[イ尓]代我殲滅支那豬
 殺掉所有支那豬
 給我看到滅絶支那豬
 連一只都不能留
 為了環保殺光支那豬
 為人類浄化大地大海
 請[イ尓]代我殲滅支那豬
 連一只都不能留
 [o阿]滅絶支那豬

 ――――

 これ実際に歌うと文字にするよりものすごくキツいんです。相手の目の前で「支那豚」連発ですから(笑)。でも年甲斐もないことながら、勢いづくとこちらも止まりません。うざったいA君には肉薄近接して「青き殺人者」たる61cm九三式酸素魚雷をその土手っ腹にぶち込んでやった、といったところです。

 元仕事仲間は香港時代の私と余りに対応ぶりが違うので驚いていました。そりゃあのころはアウェーでしたし自分だけ日本人環境だったので自重を重ねていて、売られた喧嘩を買うこともなく、別に「いい奴」じゃないのに無理をして「いい奴」を演じていましたから。私の周囲にいた他の香港人同様、元仕事仲間もそれに気付かず、コロリと騙されていたのでしょう(笑)。

 考えてみれば、香港での私は無理をして「いい奴」を演じつつ、常に刀の鯉口を切って周囲の気配を読んでいるといった状態のようにピリピリしていたようです。その分だけ、そうする必要のない台湾がいよいよ天国のように感じられたものでした。

 香港では公私において日本人ということで不愉快な目に遭ったことも少なくありませんでしたが、こちらは一切隠忍自重。その代わり、悔しい分だけ「今度こう言われたら、こう切り返す」といったようなイメージトレーニング(笑)は重ねていました。

 だからいざ「砲撃始め」となれば今回のように月月火水木金金たる猛訓練が物を言います。加えて、日本に戻ってから糞青とのネット上の交流で磨きのかかった部分もあります(笑)。

 今回のカラオケ、私にとっては香港で蓄積されたその種の鬱屈を一気に散じたことになるのかも知れません。しかしシナブタ連発の替え歌まで歌うことになるとは(笑)。

 ともあれ元仕事仲間はこんな奴を私に引き合わせたことを反省汁。

 ――――

 その後の食事が気まずくて……となるところですが実はそれほどでもありませんでした。糞青の糞青たるゆえんは、関連分野の知識を増やすことに努めたりすることなく、ただ反日の気分に乗ってネット上で空疎に騒いでいるところにあります。

 これが現実世界に出てくるとかなりランクの高い糞青でもマトモなデモひとつ打つこともできないのは昨春の反日騒動で実証済みですね。糞青糞青と貶しながらも、こうしたあたりに私は一種可愛げのある無邪気さのようなものを感じています。

 このA君も時節柄、食事を共にしつつ小泉首相の靖国神社参拝問題を切り出してきたのですが、私はそれを遮り、まず聞きたいが君は日中関係の原点ともいえる「日中共同声明」などの3文書を読んだことがあるか、と尋ねると、案の定読んでいないのです。

 基本の資料も読んでいない奴とは日中関係を語れない。ちなみに言うと中国政府は靖国問題に口出ししたことで「日中共同声明」の第6項と「日中平和友好条約」の第1条第1項に違反している。内政干渉にあたるからだ。A級戦犯を語る資格もない。嘘だと思うならサンフランシスコ講和条約を調べてみろ。……とダメ出ししておきました。

 普段の私ならこういう難しい言葉が口からスラスラ出ることはまずないのですが、つい最近、香港の掲示板で似たようなやりとりをしていたので、幸い中国語でそれを記憶していたのです。

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 ヒョロッとした外見のA君にも、30代前半ながら一種の稚気というか無邪気さを私は感じてしまいました。

 今回の来日は純然たる観光だそうです。中国の糞青には敵情偵察の気分で無用に緊張しつつ靖国神社や遊就館に行ってみたりする奴がいますが、A君にはそのつもりもなさそうでした。その分だけ健全というべきか、香港人らしいというべきか。

 要するにA君は日本を楽しみに来たのです。しかもアキバ系でインナーには「コミパ」のTシャツ。それで頭の中は「反日」なんですから、矛盾というか撞着というか、心中葛藤することがあるのかも知れません。カラオケで初対面の日本人を前にしていきなり反日ソングですから、非常識というか、相当な変物であることは確かです(笑)。

 そういえば香港のヒッキーが安倍官房長官に脅迫状を送ったことがありましたね。差出人には実名を使い差出人住所も現住所。とりあえず警官がその住所に赴いたら犯人が引きこもっていたので驚いた、という事件です。A君もそれに似た一種の畸形なのでしょうか。……その相手を真面目に務めてやる私も畸形種ですけど(笑)。

 矛盾といえば、香港人自体がそうですよね。

 毎年6月4日に「天安門事件を忘れるな」というキャンドル集会を開いたり、民主化要求に動いたり中共による言論弾圧に反対したりしているくせに、こと日本に関する歴史問題については中共史観に素直に従って疑うことがありません。

 それゆえ香港人や香港社会の底流にはいまも「反日」や「小日本」といった気分があります。ところが、日本文化の受容度はものすごく高いのです。

 ――――

 とはいえ台湾人のように日本そのものに憧れる、というケースは少ないように思います。つまりは使い勝手のいい道具だから「日本」を愛用している、というだけなのかも知れません。

 ただ日本発のACG(アニメ・コミック・ゲーム)中毒者は着実に増えていて、若年層を中心に浸蝕がかなり進行しているといった印象です。ACGと一緒に日本的価値観もある程度入ってくるでしょう。

 香港の「伝統左派」などと呼ばれる親中紙だけを愛読するような向きには、
「日本の文化侵略が進みつつある」という危機感があるかも知れません。

 そういえば最近、香港のアキバ系BBSで
「住むところを選べるならどこにする?」という投票が行われたところ、1位は香港で2位が日本。投票者が香港人であることを割り引けば、実際にはかなりの僅差だったように記憶しています。

 ……あ、ちなみに「コミパ」というのは「コミックパーティー」という日本の有名なPCゲームだそうです。

「御家人さん、そんなことも知らないでコラム書いているのか」

 と元仕事仲間に笑われてしまいましたが、私はPCゲームとは関係のない業界やそのマーケットのことを書いて原稿料を頂いていますから、そんなこと知らなくてもいいのです。……とは開き直りでしょうかやっぱり(笑)。

 ――――

 で、A君とは結局メルアドを交換する仲になってしまいました(笑)。

 いや、別に私が香港人に使ういつもの手で飼い馴らした訳ではありませんし、A君から「反日」の瘧が落ちたのでもありません。「日中共同声明」などを読んでみたいから中国語版のURLを教えてほしい、ということです。

 理論武装した上で、メールで議論を吹っかけてくるのかも知れません。もういい歳なんだからいい加減卒業しろよ、と言いたいところです。でもそんなことは言えません。言う度胸が私にはありません。……理由はもちろん、

「いや、娯楽でやっているだけだから」

 という回答が返ってくるのが怖いからです(笑)。



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 唐突ですが、戦争はやるかやられるかです。

 例えば戦闘機同士の空中戦。どんな手を使っても相手を撃墜して、基地に生還する。それが肝要だと零戦の有名なエースだった故・坂井三郎氏は語り残しています。

 墜とせばいいんです。不意打ちだろうと囮を使おうと何だろうと、どんな手を使っても。……騎士道精神なんていうのは第一次大戦までの話。

「それでは相手と同じレベルに落ちる」

 というのは平時のBBSでならともかく、戦争ならそんなことを言っている奴から死んでいきます。坂井氏を含む第二次大戦当時の有名なエースたちは、その多くが背後から忍びよって一撃で敵機を葬るやり方でスコアを積み重ねていきました。

 平時でも、相手によりけりです。真面目な討論ならまともに相手をしてやりますが、元々話の通じない畜類が喧嘩腰で挑んでくれば、それ相応に饗応してやるのが礼儀というものでしょう(笑)。

 ――――

 いやー大人げない話ですが、香港人と一戦交えてしまいました。撃墜できたかどうかは分かりませんけど。

 ……もちろん相手は男ですし、夜戦や野戦じゃありませんよ。女性を相手に夜戦や野戦となったら笑顔で人を斬る配偶者が腰間三尺の秋水を一閃させて、いまごろ私は冥土喫茶。

 いま考えてみると、香港人とはいえあれは
「糞青」(自称愛国者の反日信者)ですね。とすれば、私にとっての現実世界における糞青初体験ということになります。香港人なので「亜種」ということになるかも知れませんけど。

 ――――

 昨日の話ですが、元仕事仲間の仲のいい友人(30代前半)が香港からやってきました。来日は半分遊びで半分仕事。……というのは、来週末にゲーム業界の展示会があるのを取材するのが本来の目的なのですが、その手前一週間を有給休暇にして日本観光としゃれ込んだ訳です。

 都心のホテルに着いて荷物を置くなり、事前連絡があった通りに初日から私を呼び出してカラオケです。カラオケといえば私はむしろ嫌いな方なのですが、香港や台湾の連中となら音痴同士で平気で恥をかけるので付き合います。

 東京の場合は、中国語の楽曲の豊富な店となると行く場所が限られてしまいます。

 ……が、なぜか私の周囲の香港人はアキバ系&特撮大好きが多いので(普通なのは配偶者くらいかも)、本当はどこでもいいんです。ちなみに誤解されると困るのですが、私はアキバ系でも特撮ファンでもありません。

 どうせまた「コンバトラーV」あたりから入るんだろうなあ、じゃあ「帰ってきたウルトラマン」あたりにしておくか、「仮面ライダー」はあいつの持ち歌だし。……などと考えつつ待ち合わせの場所に行きました。

 特撮メドレーに付き合いつつ北京語の歌を何曲か混ぜて、最後は下手糞な広東語で「ミスターBOO」の主題歌を歌って愛嬌を振りまいて締める、というのが私の定石です。

 ……さて約束した場所に着いてみると、元仕事仲間には年格好の似た同行者が1名。仮にこの同行者をA君としておきましょう。中学以来の友人だそうです。長身の痩せ形で、服装などから察するに、やはりアキバ系の様子。

 ところがこいつが曲者でした。自己紹介の挨拶を交わしたとき、何やら私に向けられた両目に不遜な光がみてとれたあたりからそもそも妙な気がしていたのです。

 ――――

 一週間日本で遊ぶのに男連れとは不粋だなあ、お前まだ彼女できないのかよー、いや仕事が忙しくてさー、などと故旧との再会を喜んでいた私たちの空気を、このA君がかき乱したのが事の発端です。

 カラオケは果たせるかな、元仕事仲間による「VVV!ビクトリー」で幕開けとなるセオリー通りの展開。……かと思ったらすぐに異変が起きました。続いてマイクを手にしたA君が選んだのは、

「大刀向鬼子們的頭上[石欠]去」

 だったのです。要するに日本人をぶっ殺せ、という内容の中共軍歌というべきもので、あの2004年の中国で開催されたサッカーアジアカップでも昨年の反日騒動でも真っ先に歌われたポピュラーソング(笑)。私は元仕事仲間と顔を見合わせてアイコンタクトです。

(おい、こいつ大丈夫か?)
(うーん、こういう奴なんで勘弁してくれ)

 特撮系カラオケなんだから、

「死ね(アー)死ね(ウー)死ね死ねー!日本人は邪魔っけだ」
(レインボーマンの挿入歌)

 ……ぐらいのシャレを効かせればいいのに、いきなり直球勝負。しかし中国語の読める日本人(しかも初対面)の前でのっけから歌いますかね普通。

 ――――

 私は元仕事仲間の顔を立てて構わずにいたのですが、A君が次に歌ったのは中国国歌。これも反日ソングです。それだけならまだしも、歌が終わってから、

「我想最後向日本人説一説:釣魚台是我們的!」
(最後に日本人にひとこと言っておきたい。尖閣諸島は我々のものだ)

 と、これは確か昨年の香港の映画祭で受賞者のひとりがスピーチの最後に口にして喝采を浴びた一節です。

 しかもカラオケ屋への移動中に雑談したときから気になっていましたが、「日本人」のところが全て「[o架]仔」とか「蘿蔔頭」になっていました。この一節でもそうです。

「[o架]仔」
「蘿蔔頭」

 というのは、広東語において日本人を貶めるときに使う一種の差別用語です。北京語の「小日本」よりひどいかも知れません。まるで私を「日本軍国主義」が人の形をした存在として見ているかのようで、ちょっと可笑しかったです。

 しかし当然ながら、そういう言葉を使われて愉快ではありません。

 ――――

 香港にいたころ、旧正月で配偶者の年配の知人の家に配偶者の友人らとみんなで夕食に招かれたことがあります。

 この知人というのは配偶者やその友人が以前勤めていた会社の社長なのですが、日本人の私がゲストとして座っている前で、話題の中で日本人を指すときに「[o架]仔」という言葉を連発し、終始その単語を使っていました。

 他意はなかったのかも知れませんが、客に対する礼を失していることは事実です。その場にいた日本人は私だけ。あのときはもう腹が立って、御馳走の並んだテーブルをひっくり返し、その知人とやらをぶん殴って帰ろうかと本気で思いました。

 でも、配偶者の知人ということで我慢しました。アウェーでもあります。それでも怒りの収まらない私は帰路に配偶者に向かって、

「どうしてあいつが『[o架]仔』を使い続けているのに止めなかった?日本人であるおれに対して無礼じゃないか。お前ら香港人風に言うと、おれの顔は潰されたってことになるんだけど、お前はそれでも平気なんだな?」

 と責めたのですが、配偶者はあいにく超天然が持ち前で、そういうことに気が回るようにはできていません。

「今度同じことがあったら、お前の家に招かれたときおれは『支那人』『支那豬』といった言葉を使うから覚悟しておけ」

 と言ったらさすがに驚いて、ただならぬ事態であること、私がかなり怒っていることがわかったようでした。


「下」に続く)



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 冒頭からひそひそ話です。

 「好悪の情を出さない」という当ブログの原則めいたものを取っ外して、中国の政治家(引退者含む)で一番嫌いなのは誰かと問われたら、皆さんならどう答えますか?

 私の場合は温家宝・首相。どのくらい嫌いかといえば顔写真を見て反吐を吐きたくなるほど嫌い。あいつと会う機会を仮にセットされたとしても、私なら広州へ行って正露丸を飲んでから人糞がプカプカ浮いている珠江を泳ぐ方を選びます(笑)。

 だいたい顔が嫌いです。卑しいではないですか。卑しさと肚の黒さが表情に出てしまっています。江沢民や唐家センのような「豚の内蔵」型のわかりやすい下卑たルックスではなく、李鵬のような器量不足がありありと顔に出ている「無能型」(馬鹿面)でもありません。善人面を必死で演技しているのがバレバレなので見ていて嫌になるのです。

 それから庶民派をアピールするための必要以上にアクの強いパフォーマンス。あの作り笑顔やウソ泣きは中国の民度なら通用しますが、香港レベルではもう見抜かれてしまって駄目です。

 愚直で朴訥で、しかも寝技が得意ではなさそうで、実際それより力でねじ伏せる戒厳令的な措置に走る可能性十分といった田舎者の胡錦涛のような、一種の可愛気がありません。万事にソツがない、という能力も温家宝嫌いの私にかかれば嫌味で肚が黒いということになってしまいます(笑)。

 ちなみに私が好ましく思っている中共政権における政治家は、故人を含めると趙紫陽、胡耀邦、朱鎔基の3人。理由はその事跡の端々から、特に土壇場において「中共人」よりも「中国人」を優先させるかのような香りが漂うからです。

 温家宝は土壇場に直面したら「親民総理」の称号をかなぐり捨て、民草を見殺しにしても自分大事で逃げるでしょう。現に趙紫陽の秘書のような役回りを務めていたのに1989年の天安門事件で没落していませんし。

 まあ風見鶏並に空気を読むことができる上にそもそもソツがないですから、うまく立ち回って土壇場に追い込まれかねない位置取りは常に避けているのでしょう。オフサイドトラップには絶対に引っかかりません。

 ――――

 以上、内緒話終了。……と思ったのですが、その温家宝が訪欧して十字放火を浴びているのが痛快だ、ということくらいは言わせて下さい。火種はもちろん、あれです。例の新華社が外電を仕切るという報道統制強化の一件。

 ●中国が新たなメディア規制 外国通信社の配信、新華社管理下へ(Sankei Web 2006/09/12/00:13)
 http://www.sankei.co.jp/news/060912/kok000.htm

 ●【速報】報道戒厳令?海外メディアを「新華社化」する法律施行。(2006/09/10)
 ●続・報道戒厳令。(2006/09/11)

 しかも即日発表・即日施行の法令です。これを訪欧中のタイミングで発表してしまったのですから、温家宝はフィンランドを振り出しに行く先々の記者会見で叩かれまくっています。

 ●中国・温家宝首相が訪英、人権問題などの質問にぶぜん(読売新聞 2006/09/13/23:48)
 http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20060913id23.htm

 なるほどさすがは幕政を切り盛りする御老中、「豊前守」になった訳ですか。中国の国家指導者ともなれば、国内ではふんぞり返ってマスコミの舌鋒に追及されるなんてことはあり得ませんから、いい経験になることでしょう。

 ここは忍耐一番、かつての江沢民のように逆ギレして報道陣に説教を始めるなんて醜態をさらしてはいけません。個人的には逆ギレしてくれた方が面白いのですが(笑)。

 ――――

 さて、外国通信社を含む報道統制の強化という今回の法令については理解できるでしょう。上記エントリーでも書きましたが、人災・天災の被害隠蔽を暴かれたり、農民暴動や労働争議を報じられたり、闇炭坑との官民癒着や環境破壊をスクープされたり、あるいは「中共また人権蹂躙」「政治改革の気配なし」なんてコラムを配信されては「調和社会」の実現を目指す上で統治者にとって不都合このうえないのです。

 それから汚職暴露記事にも胡錦涛サイド(「擁胡同盟」=胡錦涛擁護同盟)は神経を尖らせていることでしょう。中共政権において党幹部が汚職をするのは排便するのと同じくらい自然かつ当然なことなのですが、いまその汚職撲滅キャンペーンが胡錦涛主導で大々的に展開されているのは皆さん御存知かと思います。

 大々的であることと本気度が高めなのがポイントです。何せ誰でもやっている汚職をわざわざ殊更に暴き立て、その罪状で処分・更迭するというのは中国における政敵抹殺の常套手段。江沢民も総書記時代にうるさ型の政敵だった陳希同・北京市長(当時)一派をこの方法で政界から追放しています。

 「大々的」「本気度高め」というのは、このキャンペーンを発動した胡錦涛サイドが攻勢に出たことを示すものです。なぜかといえば、党の重要会議である六中全会(党第16期中央委員会第6次全体会議)が来月に迫っているからです。

 これは世代交代や大型人事の行われる来年の党大会(5年ごとに開催)の前哨戦であり、前哨戦としては最後のチャンスかも知れませんから、「擁胡同盟」は「汚職撲滅」を大義名分にして押しまくり、「反胡連合」(反胡錦涛諸派連合)にコールド勝ち……するのは無理にしても、何とか大差をつけて主導権を握り、人事に手をつけたいところです。

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 前にも書きましたが、党人事というのはホップ・ステップ・ジャンプなのです。「六中全会」で腹心をワンランク昇格させておいて、来年の党大会でより高いポストに就ける。……具体的にはポスト胡錦涛と目される李克強・遼寧省党委員会書記(同省のトップ)の昇格が焦点です。

 他にも胡錦涛人脈の有力なホープである李源潮・江蘇省党委書記や張学忠・四川省党委書記などの昇格、それに新疆やチベットといった辺境で鍛えさせ、経験を積ませている若手を中央に呼び戻す、といった抜擢をしたいところです。

 加えて習近平・浙江省党委書記などの「太子党」と呼ばれる二代目政治家を引き立てられれば、党長老連に対するいい御機嫌取りになります。

 一方、腹心昇格と並ぶ焦点として、上海市や広東省といった中央に必ずしも従わない「大諸侯」のトップ、例えばすでに中央政治局委員である陳良宇・上海市党委書記や張徳江・広東省党委書記を閑職に回すことができれば言う事なし。

 ……まあそこまでパーフェクトに事が運ぶことはまずない、と断言してもいいほどの難事ですが、主導権を握りつつも掌握度が不十分だったため全く人事に手をつけられなかった昨年の「五中全会」の轍を踏みたくはないでしょう。

 で、それと報道統制強化にどういう関係があるのかといえば、胡錦涛にとって一部の中国国内メディアが「反胡連合」の拠点となり、逆に「擁胡同盟」側の汚職を暴露されるようなことになっては困るのです。だから新華社に情報発信の蛇口を握らせる。新華社がそこまで仕切れるかどうかは疑問なのですが、この新華社のトップもチベット時代に苦楽を共にした胡錦涛の懐刀であることは以前書いた通りです。

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 それにしても奇異に映ったのは、この「新華社が仕切る」法令、その内容については上述したように政争含みという線で理解できるとして、問題は発表の時機です。……そうそう、温家宝が訪欧しているという最悪のタイミングでわざわざ発表・施行したというところが解せません。

 EUは日米などの強い働きかけもあり対中武器輸出禁止措置を撤廃していませんが、これを何とかするというのは今回の温家宝の訪欧における重要課題のひとつだった筈です。ところが報道の自由を制限するといった欧州で最も忌み嫌われそうな措置を、よりによって温家宝が欧州滞在中に発表。

 こうなると対中武器禁輸解除などは吹っ飛んで、EUでの受けも悪く、報道陣からはこの法令に関する質問が相次いで温家宝は豊前守。挙げ句の果てに温家宝が外遊先で釈明記者会見を開き、北京でも担当者が弁解に努めるといった「火消し」に躍起となっています。

 そうなることなど明白の筈なのに最悪のタイミングを狙った。……というのは、「胡温政権」と呼ばれつつも胡錦涛と温家宝の間に相当な距離感がありそうだという邪推を呼びかねません。

 また、温家宝を長とする国務院(政府)において、温家宝が実はかなり嫌われているのかも知れない、といった愉快な想像をしたくなります。なぜなら今回の法令、立法機関である全人代常務委員会ではなく、国務院が制定したものだからです。

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 例の『江沢民文選』ヨイショ運動が一段落したところで、今度はまた怪しげなタイミングでの法令施行。それを報道統制強化という面だけに目を注がずに、上述したような様々な邪推を試みてみるのも面白いかも知れません。


 【※注】今回は別の主題にするつもりだったのが、ついリードだけで終わらせるつもりだった温家宝噺が長くなって話題が別の方向に飛んでしまいました。相済みませんです。反省。

m(__)m




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 本当は前回のコメント欄で出た「中共政権崩壊のプロセス」についていま時点の自分の見方を書きたかったのですが、如何せん本業が忙しい時期に入ってしまったので今回は雑談に逃げます。

 私はACG業界(アニメ・コミック・ゲーム)に近い場所で、そうした創作物にあまり関心を持たないまま仕事をしているのですが、9月というのは年末商戦に向けた仕込みが表面化する時期です。

 特にゲーム業界は年末を見据えたゲームソフト制作が本格化していますし、その一端を披露する展示会も開かれます。しかも今年は約5年に1度の周期である家庭用ゲーム機の新モデル登場の年でもあり、みなさん例年より士気旺盛、というか相当気合いが入っている様子です。

 で、その展示会やら何やらで香港や台湾の仕事仲間(副業の雑誌編集者を含む)がたくさんやってきます。私は唯一の外国人ということと、年齢のせいで何やら御意見番的な席に座らせられていることもあって、自社他社問わず連中とは親しく付き合っています。

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 「電車男」の様式美(笑)を地でいくようなアキバ系を自認する奴らばかりなので、来日するやまず足を運ぶのが秋葉原。向こうも出張で来日しており過密スケジュールですから、到着日と出発日にある限られた自由時間、そして秋葉原を通過する移動のときに立ち寄って買い物をしまくるのです。

 最初は私も付き合っていたのですが、連中の方が秋葉原を熟知していることもあって現在は別行動。というより、秋葉原に着くなり同人誌(18禁)の店とかPCゲーム(18禁)の店とか、あとアニメか何かのフィギュアを熱心に漁っていくので閉口したというのが本音です。

 「五ついつものエロショップー」とでもいいますか、何だお前ら18禁なら普通のエロDVD(実写版)には興味がないのか、と聞くと2次元の美少女以外は愛せないのだそうです。あまりそれ系統の店ばかり行くので私が露骨に嫌な顔をしたら、連中も一緒に行きましょうと言わなくなりました(笑)。でも今年は私をメイド喫茶に連れていく計画が進行しているようです。これが香港チーム。

 台湾の仕事仲間は攻略本とか原画集とか設定資料集とか、台湾では入手困難だったり高く売られていて手が出ないものを中心に漁っていくようで、一見真面目な印象です。でも血は争えないと言いますか、私には何も言わずむしろ私の目を盗むといった感じで、行くところには行っている模様(笑)。

 この香港チームと台湾チームを引き合わせて交流させたことがあるのですが、香港は広東語、台湾は北京語ということで、驚いたことに日本語でコミュニケーションをとっていました。そこは同好の士ですから、片言まじりでも十分に話が通じて、盛り上がっていたのが面白かったです。ええ、もちろん私がついていけない分野の話題で(笑)。

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 ただ一人だけ例外的な台湾人がいまして、これは軍事マニアとでもいうのでしょうか、

「あのー日本海軍で『雪風』って駆逐艦があってさ、台湾に賠償艦として……」

 と言うと、

「ああ『丹陽』ですね」

 と即座に反応が返ってきます。たまりません(笑)。台湾で関連資料がないか探してくれているのですが、未だにめぼしい発見はないようです。

 兵役期間中は戦車を動かしていたそうですが、日本に来ると「まず零戦がみたい」というので肩を抱くようにして靖国神社に連れていってやります(笑)。

 遊就館の売店は戦争関連の書籍が意外と充実しているので、それを喜んで買っていきます。

 著名な撃墜王だった故・坂井三郎氏の『大空のサムライ』などは当然読んでいて、読んでいるからこそなのですが、以前遊びに来たときに『大空のサムライ画集』のようなものを見つけて狂喜していました。へーこんなものが出ていたのか、と私も一緒に買いました。

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 ところが寂しいことに、最近は来日する人数が年々減っています。特に報道関係者にその傾向が強いです。

 理由は「カネがかかる。無駄だ」というその一点のみ。専門誌などはほぼ全てが小資本のオーナー企業なので、表面的な算盤勘定でそうなってしまいます。香港にその傾向が強いです。これは私が香港を嫌う理由のひとつでもあるのですが、「人材を育てる」という発想がスッポリと欠落しています。

 編集者や記者を機械の部品か何かのように考えているのです。だからしばしば没義道なリストラも行われます。経営者に言わせると、

「編集者1人雇うなら未経験だろうと若い奴の方が給料が安くていいじゃないか」

 という理屈になります。編集部を無理矢理若返らせても雑誌のクオリティは維持されると思っているようです。無茶苦茶な理屈ですが、オーナー企業であるためにそれが鶴の一声で実施されてしまいます。

 そんな訳ですから、東京に記者や編集者を派遣することも当然ながら渋ります。渋った挙げ句、人を送らない専門誌や新聞、大手週刊誌が最近は増えています。

 これまたオーナーの理屈なのですが、例えば展示会の取材であれば、わざわざ日本に人を派遣しなくてもネット上にいくらでも写真があるからそれを使って誌面をつくればいいじゃないか、という知的財産権などまるで眼中にない考え方です。

 香港にして、いまなおこういう考え方がまかり通っているのです。まずはあの小さな香港でこうした風潮を一掃できない限り、中国本土の海賊版根絶に向けた橋頭堡は確保できないでしょう。

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 要するに、「やったもん勝ち」なのです。

 ……とは、コミックやゲームソフト、アニメ雑誌やゲーム雑誌などで現実に起きていることですが、日本の業界が乗り出してこない当初はコミックやゲームソフトの海賊版、それに知的財産云々を一切無視したアニメ雑誌やゲーム雑誌が香港の市場で幅をきかせています。そこに香港進出のため日本の業界関係者が様子を見にくると当然ながらビックリします。

 香港にも海賊版でなく正規品市場を確立したい。……というのが目的の日本側が次に何をするかといえば、とりあえずは法的手段に訴えて撲滅にかかります。ただしこれはイタチごっこの面もありますし、本丸まで攻め込めないのが一般的です。

 そして、そうした行為が徒労であることに気付くと、日本側は海賊版市場の売り手における大手企業と接触し、正規品販売に転じるよう促します。様々な経緯を経てそれが実現すると、昨日まで海賊版の大手販売業者や問屋だったところが正規品商売に切り替え、まだ海賊版を扱っている業者を大手の強みで潰しにかかります。

 香港の現状はコミックやアニメはほぼ正規品に切り替わっており、ゲームソフトは転換作業中、そして専門誌に対しては、日本側は「更正」させる情熱を半ば失い、匙を投げているといったところです。

 だから「やったもん勝ち」。違法だろうと何だろうと海賊版市場の大手になってしまえば、正規品への転換が進んでもその地位を保証されるのです。

 台湾もそうです。例えば大手PCゲームソフトメーカー。実名を出すのは控えますが、その少なからずはファミコンやスーバーファミコンの時代に海賊版で大手たる立場を確立し、資本を蓄積した前科者ばかりです。

 正規品が浸透していく、というのは喜ばしいことですが、元海賊版大手の企業が「やったもん勝ち」で得をしているのは……まあよくある話なんでしょうけど、美しくないですねえ。

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 こういう視点から眺めてみると、中共政権がいま各面において「やったもん勝ち」を着々と進めている最中であることがわかります。

 これは釈然としないとか美しくないといったレベルの話ではなく、近隣諸国ひいては国際社会に害を及ぼすものですから、危険な芽は早めに摘み取り、必要なら各種の制裁措置などで厳しく説教することが肝要かと思います。

 漫然と政権が潰れるのを待っていては断じていけません。待っていれば潰れるよりも早く、中共政権は「やったもん勝ち」の恩恵を受け、それがいかに醜悪なものであろうと国際社会はその地位を保証せざるを得ないことになるでしょう。



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 前回の続報「報道戒厳令」いきます。まずはおさらいから。……NHKが法令の内容を手際良くまとめて報じていたので、そこから一部を抜粋します。

 ●中国 外国通信社の配信に規制(NHK 2006/09/11/05:01)
 http://www3.nhk.or.jp/news/2006/09/11/k20060911000028.html
 http://www3.nhk.or.jp/news/2006/09/11/d20060911000028.html

 中国政府は、外国の通信社が中国国内で記事を配信する際には、国営新華社通信の許可を得ることを義務づけ、中国の安定を損なうような記事の配信を禁止するなどとした新たな規則を公布しました。

 外国の通信社が中国国内のメディアに記事や写真を配信する際には、新華社通信の事前の審査と許可を受けなければならず、直接、中国国内のメディアと契約を結ぶことを禁止するとしています。

 配信を禁止する記事の内容として、中国の国家の統一や主権を危うくさせるものや、中国の安全や利益を損なうもの、さらに、中国の宗教政策に違反するものなど10項目をあげています。

 中国政府としては、国内メディアの管理を強めるとともに、中国国内のメディアに対する外国通信社の記事の配信を制限する目的もあるものとみられます。

 ――――

 ……とのことで、焦点は、

 ●外国通信社が中国国内に記事を配信する際は新華社による事実上の検閲が必要となる。
 ●外国通信社と配信契約を結んでいる中国国内メディアが外電を報じる際には事前に新華社の許可が必要。
 ●中国国内メディアが外国通信社と配信契約を結ぶ際には新華社の許可が必要。
 ●外国通信社は中国本土において契約者を増やす活動(営業)を行ってはならない。
 ●報道禁止とされている内容が曖昧で、当局による恣意的な解釈で「NG」とすることが可能。

 といったところでしょう。報道禁止の10項目(第11条)を改めて並べておきますと、

 (1)「中華人民共和国憲法」が定めた基本原則に違反しているもの。
 (2)中国の国家統一・主権及び領土保全を破壊するもの。
 (3)中国の国家安全と国家としての栄誉、国益に危害を及ぼすもの。
 (4)中国の宗教政策に違反し、邪教や迷信などを推し広めるもの。
 (5)民族間の敵意や民族間差別を煽動し、民族の団結を破壊するもの。民族の風俗習慣を侵害し、民族感情を傷つけるもの。
 (6)デマをまき散らして中国経済や社会秩序、中国の社会安定を破壊するもの。
 (7)わいせつ・暴力行為を推し広めるもの、あいるは犯罪教唆となるもの。
 (8)他人を侮辱・誹謗し、他人の合法権益を侵害するもの。
 (9)社会道徳または中華民族の優秀な文化伝統に危害を及ぼすもの。
 (10)その他、中国の法律、行政法規が禁止しているもの。

 ――――

 ……やっぱり第9項の「優秀な文化伝統」というところで箸を落としてしまいます(笑)。自国の文化・伝統に「優秀」の2文字をわざわざ加えるあたりがイタいです。世界の中心を自認する中華意識というプライド、そしてアヘン戦争以来の情けなさすぎる近代史というトラウマ。

 このプライドとトラウマのバカ高さがいずれもビョーキ、ではなくまさに病気、つまり医学が扱う範疇に入るほど深刻化していることが、この「優秀」という2字からみてとれるように思います。

「おれたち中国人はアジアの懦夫ではないぞ!」

 と30年ばかり前に映画でタンカを切ったのはブルース・リーでしたが、この言葉を未だに念仏のように唱え続けていないと精神の平衡が保てないのでしょう。最近では温家宝や孔泉、李肇星などが公の場でこの症状をさらしてしまっていますね。おいたわしい限りです(笑)。

 ――――

 さてこの法律、とりあえず「外国通信社による中国本土での報道配信管理弁法」と直訳しておきますが、タイトルの通り一種の報道に関する戒厳令といっていいでしょう。まあ戒厳令としてしまうと軍政ということになるので穏当ではありませんが、当局による大幅な報道統制強化であることは確かです。

 ただその範囲は中国本土に限定され、日本など海外諸国が直ちに影響を受けるという部分は少ないでしょう。特に日本のマスコミなどは中共に対しては有り難迷惑なほど優等生のスタンスを貫いていますからね(笑)。規制の対象も中国本土における外国通信社(香港・マカオ・台湾を含む)の自由な情報発信と中国国内メディアの外電引用にあります。

 とはいえ、外国通信社として新華社に認めてもらうためには優等生であることが条件になっていますし(第5-7条)、素行不良を重ねると最高で免許取消という何段階かの処罰を新華社から喰らうことになります(第16条)。

 海外に配信する分にはこの法律の対象外のようですが、その内容によっては新華社の心証を害することになるので、報道側も記事の内容に手加減を加えるケースが出てこないとも限りません。とくに腰砕けになりやすいのは日本のメディアでしょう(笑)。

 ――――

 ところで新華社、新華社、新華社。……どうして新華社?ということになりますが、新華社は国営通信社とはいえ国有企業ではなく、部クラス(日本の省に相当)の国家機関であり、そのトップである社長も格でいえば閣僚級ということになります。例えば英国統治時代の香港で中国の出先機関、一種の中国大使館的役割を務めていたのが香港新華社でした。

 報道政策を仕切るのは国務院新聞工作弁公室の仕事になるかと思いますが、報道の実務、つまり情報発信は新華社が司ります。例えば米中でも日中でも構いませんが、重要な相手国との首脳会談が行われて共同声明が発表された場合、中国国内メディアは新華社が配信したものを使わなければなりません。

 そういう経緯から外国通信社や中国国内メディアに目を光らせる役割が新華社に回ってきたのだと思います。ちなみに香港紙『太陽報』によると、現在の新華社社長である田聡明(党委員会書記兼任)は、胡錦涛がチベット自治区のトップであった時期に同自治区党委員会副書記を務め、故錦涛の片腕として働いた過去があるそうです。

 ……こういう人脈関係の話になると香港紙または『争鳴』『開放』『動向』など香港の中国情報誌の独壇場、といった観がありますね。一方でおカネが絡んでいると指摘する向きもあり、新華社が外国通信社と中国国内メディアの仲介役に回ることで、統制強化だけでなく幾許かのコミッションを手に入れる狙いがある、との報道もあります。

 ●『太陽報』(2006/09/11)
 http://the-sun.orisun.com/channels/news/20060911/20060911022712_0000.html
 http://the-sun.orisun.com/channels/news/20060911/20060911022712_0000_1.html

 ちなみに、香港の記者協会は早くもこの法律に懸念を示し、香港政府に対し善処を求める声明を発表しています。

 ●『明報』(2006/09/11)
 http://hk.news.yahoo.com/060910/12/1ss5o.html

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 私自身はこの法律に、危機感をみなぎらせ、気合い十分で発足した胡錦涛政権の挫折をみる思いがします。

 以前から再三書いていることですが、胡錦涛の使命は「構造改革」にあると私は考えています。トウ小平、江沢民時代の尻拭い、といってもいいのですが、20数年にわたる改革・開放政策で浮き彫りになった負の部分、例えば貧富の差、地域間格差、都市と農村の差、業界間格差、汚職の蔓延、環境破壊……などといった問題を改善することです。

 胡錦涛は当初、戒厳令的な厳しい統制を各面で敷いておいて、強権政治の下でこうした「負の部分」を荒療治で一気に片付けてしまおうとしていたのではないか、と私はみていました。ですから発足当初の胡錦涛政権が報道やネット規制などに力を入れたことは当然と考えていましたし、「開明的な政権だと思っていたのに……」という中国知識人たちの観察眼のなさを嘲笑していました。

 ところが、先代である江沢民が胡錦涛の後ろ楯にならず、むしろ足を引っ張るような動きをしていたこともあり、胡錦涛の指導力不足が露呈してしまいました。江沢民が総書記になったときにはトウ小平というカリスマのバックアップがあったのと対照的に、胡錦涛は恵まれない環境の下で仕事をしなければならなかったのです。もちろん、強権政治など実現しようがありません。

 一方で、改革・開放の骨子が競争原理の導入と分権化にある、ということが具体的にみえる時代になっていました。競争原理の導入というのは、それまで中央集権型の計画経済体制だったのを、市場による調節機能に委ねる部分を増やすということです。競争に負けて淘汰されても、国は昔のように面倒をみてやらないぞ、というものです。

 新聞業界の激しい競争、各紙のスクープ合戦はこのために起きたものです。ただし一党独裁体制のため、何でも書かれては困る、悪事を暴かれてはかなわない、というのが統治者たる中共の本音でしょう。今回の外電を巻き込んだ報道統制は、そういう「市場競争」と「一党独裁」の撞着という問題を、パワープレイでねじり伏せようとする一面があるように思えます。

 ――――

 それから分権化、これは地方政府の実力強化に寄与しました。いままで以上に権限を与えられれば、中央の言うことを聞かないようになるのは自然なことです。地方紙も中央より地元当局の肩を持つようになります。

 一方で地方政府の裁量権が拡大すれば、よそに負けるなという地元意識が前面に出てきます。開発欲求丸出しの経済政策を実行させ、効率無視で成長率を追求するというGDP信仰一辺倒というのがそれです。

 資金や資源の浪費、河川や大気の汚染といった環境破壊の問題はもちろん後回し。国民の2割が繁栄を享受するために残り8割が犠牲になっているという歪んだ発展モデル、富の偏在も顧みられることがありませんでした。

 そうした闇の部分に光が当てられるようになった、というより隠し通せなくなったという最悪のタイミングで最高指導者となった胡錦涛は、まさに「ババを引いた」としかいいようがありません。とりあえず江沢民時代までの発展モデルへのアンチテーゼとして「成長率より効率重視」の「科学的発展観」を打ち出し、格差を適正な範囲内に抑えた「調和社会」の実現を呼号します。

 呼号しつつ強権政治でもって荒療治。……と考えていたのだと私は思いますが、指導力不足でそれが頓挫。どうなったかといえば、

「はいはい官民衝突」
「はいはい労働争議」
「はいはい農民暴動」
「はいはい都市暴動」
「はいはい激闘武装農民」
「はいはい武警が突撃銃乱射」

 ……などという、「調和社会」には程遠いニュースが各地のメディアによって報じられるのが日常的になっていました。それから経済面における各地方政府の暴走ともいえる全力疾走。中央によるマクロコントロールというお題目をあざ笑うかのようです。

 だから今回の統制、なのではないかと私は思います。要するに胡錦涛の指導力不足と、改革・開放の「負の部分」という病状が想像以上に末期的で手の施しようがなくなっている。そこで汚い部分はひた隠しにして民草に見せないようにし、国内メディアの報道という「虚構の世界」においては「調和社会」の実現を描いてみせよう、ということではないかと。

 姑息ではあります。中国でもネットが普及しつつあることを思えば、無用な措置という印象もあるでしょう。ただ中国におけるネットユーザーが総人口の1割にも満たないことを考えれば、姑息であることを笑ってばかりもいられません。

 もちろん今回の措置によって中央政府の権威を高める、とか敵性政治勢力の拠点潰し、といった思惑もあるのでしょうけど、果たしてそう上手くいくかどうか。それよりまずは「海外メディアの反発は必至だ」に向き合うことになりそうです。

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 ちなみに新華社以外の中国国内メディアが外電を引用することで足並みが大きく乱れた典型的なケースとして昨年5月の「呉儀ドタキャン事件」を挙げておきます。

 ●呉儀事件で始まった新たな物語・中(2005/05/28)




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 いやー中国もずいぶん度胸の要ることをしたものです。

 どうしていま、この時期に?という疑問が真っ先に浮かびましたけど、これはもう少し転がして様子をみた方がいいかと思います。今回はとりあえず速報。

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 ああその肝心のニュースをお伝えするのが先でした。国営通信社・新華社が中国本土における海外メディアの報道内容に事実上の検閲を加えるというもので、

 ●海外メディアはその報道内容について、新華社による審査を受けることが義務づけられた。
 ●報道NGとされている範囲が広い上に内容が曖昧でグレーゾーンばかり。

 の2点がポイントかと思われます。グレーゾーンであるゆえに当局による解釈で海外メディアに対しいくらでも報道統制を敷けるのがキモです。要するに海外メディアの報道自由度を国内メディア並に規制する、というものです。

 その国内メディアに対する中共政権の定義は「党と国家の代弁者」。日本を含む海外のメディアに対する位置づけと全く異なり、「マスコミは機関紙・広報紙・御用新聞たれ」というものです。

 今回の即日発表・即日施行となった、

「外国通信社による中国本土でのニュース報道管理弁法」

 はつまるところ、海外メディアも「新華社化」させて、「党と国家の代弁者」になれと命じ、その報道活動を大きく束縛するものです。

 ちなみに原文では海外メディアを「外国通信社及びそれに準じる性質のもの」としていますが、じゃあ新聞社やテレビ局は関係ないのかといえば、ちょっとわかりません。まあここでは「海外メディア」ということにしておきます。

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 とりあえず典拠を示しておきます。同法の制定・施行に関する記事はこれ。

 ●「新華網」(2006/09/10/13:38)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-09/10/content_5072446.htm

 法律の全文はこちら。

 ●「新華網」(2006/09/10/13:36)
 http://news.xinhuanet.com/politics/2006-09/10/content_5072443.htm

 香港でも目下のところ、論評抜きの速報のみです。

 ●「星島日報電子版」(2006/09/10/15:31)
 http://hk.news.yahoo.com/060910/60/1ss1o.html

 ――――

 なお、この法律は「海外メディアは中国本土発で勝手に記事を配信してはならない」とする一方で、海外の通信社と配信契約を結んでいる中国国内メディアに対しても新華社による事前許可を要する、としています。これは勝手に外電を中国国内に流すな、ということで、国内メディアへの規制強化も盛り込まれているということです。

 それでは、海外メディアはどういった内容の報道を中国本土で発信してはいけないのか。同法第11条にそれが規定されているので以下に引き写します。

 (1)「中華人民共和国憲法」が定めた基本原則に違反しているもの。
 (2)中国の国家統一・主権及び領土保全を破壊するもの。
 (3)中国の国家安全と国家としての栄誉、国益に危害を及ぼすもの。
 (4)中国の宗教政策に違反し、邪教や迷信などを推し広めるもの。
 (5)民族間の敵意や民族間差別を煽動し、民族の団結を破壊するもの。民族の風俗習慣を侵害し、民族感情を傷つけるもの。
 (6)デマをまき散らして中国経済や社会秩序、中国の社会安定を破壊するもの。
 (7)わいせつ・暴力行為を推し広めるもの、あいるは犯罪教唆となるもの。
 (8)他人を侮辱・誹謗し、他人の合法権益を侵害するもの。
 (9)社会道徳または中華民族の優秀な文化伝統に危害を及ぼすもの。
 (10)その他、中国の法律、行政法規が禁止しているもの。

 ……ね?これならいくらでも当局がいいように解釈できます。第9項など笑ってしまいますが、「優秀な文化伝統」に明確な定義がなされていません。まあ私が中国の掲示板などでよく使う、

「口ばっかりなのは中国三千年の優れた伝統だな」
「貪官汚吏やポストの売買(買官賣官)は中国三千年の優良なる文化だな」

 などは間違いなくNGでしょうけど(笑)。

 ――――

 第一印象として、「いかにも故錦涛がやりそうなことだ」と思いました。地方紙が官民衝突をスクープしたり地方当局の悪政を弾劾したり人災天災での被害内容隠蔽を暴露したり、あるいは国内の政敵を持ち上げる報道をしたりする。そういうメディアがうるさくてかなわないので、お得意のパワープレイで「報道戒厳令」を敷いた、というところかと思います。

 疑問点もあります。私は海外メディアと訳しましたが原文は「外国通信社」であり、これだと香港や台湾は枠外ということになります。また「中国境内」と原文ではなっているので、この法律の適用範囲には香港・マカオは含まれないとみていいでしょう。

 例えば、北京駐在の海外メディアの特派員が上のグレーゾーンに引っかかるような記事やコラムを書いて海外で発表するのはいいけれど、中国本土でそれを発表するのはNG、ということになるのでしょうか。

 具体的な運用なども不明瞭な部分が多いのでこれまたしばらく寝かせておくネタ、ということになります。

 ともあれ、こんな法律が登場するくらいですから現時点の中国国内において、政治的あるいは社会的な緊張感が高まっていると考えられるように思います。

 「博訊網」のようなタレ込みサイトで情報を拾ってガンガン情報発信が可能なブログがいよいよ隆盛することになりそうです(笑)。

 ――――

 それにしても、かような法律を施行したことで学術研究の発表にも影響が出ることになるでしょう。経済政策や社会問題に関する論議が及び腰になる可能性もありますし、中国近現代史や日本研究がいよいよ異論を唱えにくくなって衰退することになると思います。

 そういう「副作用」が回り回ってどういう悪影響を中国にもたらすか、なんてことは故錦涛の眼中にないでしょう。イタいですねえ。民主化運動や天安門事件などの起きた1980年代末当時の私の親しい中国人学生や記者をタイムマシンで現在に連れてきて、この法律を見せたら腰を抜かすと思います。

 2割の繁栄のため8割の国民が犠牲になるという歪んだ経済発展とともに、社会は確実に退行し、生活苦に加えてある種の息苦しさもいよいよ強まってきた。そんなに内圧をかけて大丈夫なのかな?……そんな印象の残るニュースです。

 まあ、私も押っ取り刀での速報ですから誤解している部分があるかも知れません。とりあえず香港紙あたりから出てくるであろう詳報に期待しましょう。



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「上」の続き)


 たかが雑談を上下2本に分けてしまって申し訳ありません。実は現在なお一種の時差ボケ状態で、先週一週間の中国情勢を頭の中で十分煮込めていないのです。リハビリ中ということで御容赦して下さい。m(__)m

 ……ヲチというのはどんな分野でもそうでしょうけど、目を離さないというのが大原則です。毎日毎日、欠かすことなく目を注いでやらないといけません。

 私の場合は記事漁りとそれを頭に放り込むというのがそれに相当します。これは本当に苦しい作業なのですが、これをやらないとチナヲチ(中国観察の真似事)という娯楽に入れないので仕方ありません。いまは先週分の空白期を必死で埋めようとしているところです。これをやらないと今週の中国を語ることができません。

 ――――

 さて、二泊三日で東北に行く破目になった私は、先週水曜の午後に帰京して、とりあえず仮眠。そのあと積み重なってしまった仕事の山に取り組んで、土曜日までかかってようやくたまっていた分を消化することができました。

 で、ある種の達成感を味わいつつ一服していたときのことです。午前5時すぎ、突如「ぴゅいーん」と嫌な音がしたかと思うと、愛用しているパワブク(Macのノートパソコン・PowerBook)の画面が漆黒へと変じたのです。ああああああ……と、口にはしませんでしたが、心の中で叫ばざるを得ません。

 なにせ今春、配偶者にお下がりで使わせていた先代パワブク(PISMO)がオシャカになったばかりです。内蔵ハードディスクの問題なら初期化するなり中身を入れ替えるなど容易に手が打てるのですが、このときは一種の老衰で、本体の方がイカレでしまったのでどうしようもありませんでした。

 もし本体か駄目になっていたらどうしよう。……と戦々兢々たる心持ちで、あの手この手で試してみると、ハードディスクがやられただけで、幸い本体は無事でした。

 ノートブックに似つかわしくない繊細さと神経質な一面を持った私のパワブクを、メールやら記事漁りやらで東北まで連れていったのが間違いだったのかも知れません。ノート型とはいえ、実際には箸より重い物は持てない楚々とした深窓の令嬢といったところですから。

 本体が無事とわかって、私はやれやれと一息つきました。データもバックアップした後だったので損害はごくわずかです。内蔵ハードディスクも初期化すれば平常に復します。……ところがここで越後屋ならぬ常陸屋の悪巧み。配偶者(香港人)がこの方面に関して暗いのを幸いに、被害甚大・大破炎上だと大げさに言い立てて、

「残念だが方法は内蔵ハードディスクを買い替える以外にない」

 と沈痛な面持ちで語り、内蔵ハードディスク(容量倍増!)購入予算計上を勝ち取ることに成功しました。これでヘソクリに手を付けずに済む、という訳です(笑)。

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 ともあれ日曜の早朝。頑張って寝ずにいて秋葉原まで行ってきました。ここは拙宅からだと靖国神社に行くよりずっと近い場所にあるのですが、私は滅多に足を運ぶことがありません。原因はたぶん、ACG系(アニメ・コミック・ゲーム)に関連する仕事をしているとはいえ、私がその分野に興味がないのと、取引先が秋葉原にオフィスを構えていないこと、といったところでしょう。

 前回は配偶者のパワブク老衰死の一件のときですから、ずいぶん御無沙汰になります。あのときは常磐新線が開通して駅前の様子が一変していたので驚きました。

 11時すぎに現場到着。日曜日だからなのか、秋葉原の中で「アキバ」ともいえる一帯が歩行者天国になっていました。改めて実感させられましたが、「電車男」に登場するオタクというのは一種の様式美なんですね。まあ「美」と形容していいかどうかはともかく(笑)、本当にあのまんまの人たちがたくさんいるのに驚きました。

 噂の「メイド喫茶」というのもあちこちにありました。「萌バーガー」という店もあって面白かったです。いや、眺めている分には、ということで、さすがに私には入っていく勇気がありません。でも今月下旬に香港の仕事仲間がまとめて来日するので、たぶん連れて行かされることになるでしょう。

 連中はこと「アキバ」に関しては平均的日本人よりは地理と知識に通暁しています。香港にメイド喫茶がオープンするのも時間の問題だろう、とのことです。香港で売られている東京観光マップでも秋葉原は単に家電の街というだけでなく、「アキバ」として実に詳しく紹介されています。

 地元でのコスプレや同人誌の発行はアキバ系香港人には珍しくありませんし、アキバ系でなくても日本のACGは香港の若い世代に浸透しています。台湾はもちろん、中国本土も言わずもがなで海賊版まで出ている始末。

 それどころか中共などはゴールデンの時間帯での海外アニメ(事実上日本アニメ)放映を規制する有様ですからねえ。それが自国の関連産業を育成する上で逆効果にしかならないことに気付かないのですからお粗末なものです。

 普遍性、というべきなのでしょうか。日本のACGが「国」を越え「体制」を越え「民族」を越えて広く深く受容されていることに思いをはせずにはおれませんでした。

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 専門店にパワブクを預けて1時間ほど間が空きました。暑い上に寝ていないので喫茶店にでも入って時間を潰そうと考えながら歩いていたところ、万世橋近くの警察署の向かいに模型店があるのを発見、つい懐かしくなって立ち寄ってみました。

 警察署や消防署の真向かいというのは風水でいうと商売に最悪の場所なんだけど……と思いつつ店内に入ってみると、密かに私が期待していた「ウォーターラインシリーズ」は残念ながらありませんでした。

 同年代の方なら御存知かと思いますが、1/700スケールの軍艦のプラモデルシリーズ。私もご多分にもれず、小学生のころは自分の「日本海軍」を整備するのに熱中したものです。空母搭載機セットで日本や英米の艦載機4機種セットが100円で売られていたのも懐かしい思い出です。

 その代わり、実に素晴らしいものが売られているのを見つけました。室内専用のラジコン飛行機です。3m×3m以上の空間で飛ばせる超軽量機が2100円というお手頃価格で販売されていたので、ヒコーキが好きな私はそりゃもう狂喜して迷うことなく購入しました。

 私が子供のころにはこんな素晴らしいものはなかったので、週末になると近くの大きな川のだだっ広い河原でマニアの人がラジコン機を飛ばしているのを羨ましく眺めていました。

 いい時代になったなあ。……と思いつつ店を出ました。何だか誰かにこのヒコーキを自慢したい気持ちでいっぱいになっていましたが、パワブクがあるので帰宅する訳にもいきません(帰宅してから配偶者にこのラジコンの素晴らしさを説明したら、いい歳をして子供の顔をしていると笑われてしまいました)。

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 気が付いたら岩本町から都営新宿線に乗っていました。3つめの駅が九段下。靖国神社へ無性に行きたくなったのです。……というより私の場合、この気持ちをスッキリさせる場所は、都心においては他になかったのだと思います。

 袋からヒコーキの箱を取り出して自分の前において、参拝しました。もちろん御祭神に見せびらかすというつもりではありません。

「日本はこういうものを作れるようになりました。ありがとうございました。本当にありがとうございました」

 という一念です。思えば2004年に中国で開催されたサッカーアジアカップの際、中国人サポーターの唾棄すべきブーイングのなか、日本が決勝トーナメントをミラクルに勝ちあがっていったときも、日本代表が勝つたびに、その翌朝早くに私は靖国神社に参拝していました。

 戦勝祈願ではありません。明治維新を契機に近代化を達成して列強に伍するまでになり、その縄張り争いの挙げ句、首都東京が一面の焼け野原になった日本。その日本が見事に復興して、スポーツにおいても世界水準の実力を有するようになり、サッカーもアジアではトップクラスにまで成長した。それもこれも明治維新以来の先人たちのお蔭だと私は思うのです。

 ビルは破壊されることがあるでしょう。船なら沈むこともあるでしょう。でも、人は必ず残ります。世代から世代へ、人から人へと受け継がれていくもの、それは伝統であり技術であり道徳観や価値観といった民族の魂であったりするものですが、戦後日本においては、正にそれが復興の原動力になったのだと思います。

 散華された先人が生命を以てその受け渡し役を務めてくれたからこそ、いまの日本があり、いまの私たちがある、と私は考えるのです。私の「ありがとうございました」は、それに対する感謝の気持ちです。

 ……いや、文字にするとどうも堅苦しくなってしまっていけませんね。実際にはもっと気楽な気持ちで、身近な存在としていつもお参りしています。ただ他の神社と違って、願をかけるべき場所でないことは承知しています。

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 参拝が済めば例によって遊就館で零戦を眺めながら海軍コーヒーです。……とまあ、靖国神社にはそういうお目当てもあります(笑)。それから、夏は蝉時雨。配偶者を連れているときはこの蝉時雨を浴びつつ、

「いま何種類のセミが鳴いてる?」

 と毎回テストします。それでミンミンゼミだと盛夏を感じたり、ヒグラシだと夏も終わるなあ、といった気分になるのだ、などと日本人の季節感の一端も説明してやります。

 配偶者によれば、普段使う広東語においては「セミ」という単語1種類のみで、日本のようにセミごとに区別されて名前がついてはいないそうです。それほどセミに対しても、セミのかもし出す季節感に対しても香港人は疎遠だ、ということなのでしょう。

 ちなみに香港はセミの鳴く場所は多くないのですが、亜熱帯ですから4月からいきなりヒグラシです(笑)。たまたまセミの鳴く場所の近くに住んでいたときは、4月の朝7時からヒグラシのあの湿っぽい情緒を含んだ鳴き声を毎朝聞かされて、勤労意欲が溶けていくようで閉口したものです。

 日本人だからなのか、香港のように春夏秋冬がくっきりとしておらず、季節感がないとどうも息苦しくてかないません。都心でそれを手近に堪能できる、というのも靖国神社の魅力のひとつです。

 以前にも書きましたが、周囲に高層ビルがないため靖国神社から見上げる空は広いのです。私は冬の澄み切った、また冴え冴えとした青空が大好きです。香港や台湾から戻ってきてあの冬空を目にすると、これだよ、やっぱりこれだよ。……という気持ちになります。

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 さて、パワブクを引き取らねばならないので、秋葉原に戻らないといけません。何を勘違いしたのか、私は九段下からつい歩き通してしまいました。「おかしいぞ。なかなか着かないな」と思いつつようやくたどり着いたときには「水をくれ水」状態でした。歳なのに我ながらよく歩いたものです。

 雑談の余談として言うと、その途上、小川町のあたりで服装もメイクもコギャル系の高校生ぐらいの女の子に遭遇しました。反航砲雷戦……ではなく向こうから歩いてきたのですが、ふと立ち止まったかと思うと、ビルの壁際に歩み寄って、そこに転がっている空のペットボトルを拾い上げました。

 何をするのかなと眺めていると、自販機近くのゴミ箱まで歩いていってペットボトルを捨てたのです。ほぉーと私は思いました。人は見かけによらない、ということを再認識させられた次第です。

 私は「近頃の若い奴らは」と口にできる年齢に達しているのですが、この「近頃の若い奴らは」には常に徹頭徹尾、反対論者です。だって「近頃の若い奴ら」に育て上げたのはその親でありオトナ社会ですから。

 個人的には、若い世代ほどオトナに比べ確固たるもの、凛然としたものを感じている、日本の将来を託するに足る、という印象があるからでもあります。

 今年の花見どきの話ですが、遊就館の喫茶店で、とある家族連れのパパが礼を失した振る舞いをしていたので、私がそれをたしなめ、やんわりと説教したことがあります。

 まだ小学生ぐらいの子供の目の前で赤の他人に説教されたパパはよほど罰の悪い思いをしたのか退散してしまいましたが、要するにそういうオトナからは同じタイプの、他人に説教されるような人間しか再生産されません。

 ですから「近頃の若い奴らは」という話になると、私はいつも「まずその前に親の顔が見たいものだ」と切り返すことにしています。

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 以上、雑談ですから結語はありません。いま現在の私は内蔵ハードディスクを交換したついでにOSのバージョンアップを行っているので余計な仕事が増えて、さらに先週分のチナヲチのおさらいもあり、普段より時間的余裕がないのが残念無念。

 ヒコーキ、早く飛ばしてみたいものです。


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