一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『うつうつひでお日記』

2006-07-29 | 乱読日記
装丁がそっくりで、私も騙された勘違いしたのですがこれは『失踪日記』の続編ではありません。


作者もこう言ってます。




失踪日記が発刊される前、アル中病棟から退院してからの日々を、日記にして雑誌に連載していたものです。

帯に「何もしてません。 事件なし、波乱なし、仕事なし」とあるように、読書、食事、TV、マンガを書く、図書館に行く、というのの繰り返しの日常を淡々と日記にしています。


驚くのが、たまに「暗い考えが忍び寄る」とか睡眠薬(「眠剤」って言うんですね)とか安定剤を飲んで寝る、とあるのですが、読書量と読む速度、そういう状態でも1日数ページはマンガを書く(しかもアシスタントが複数いる)というところに驚きました。

「うつ」もいろいろ程度があるのでしょうし、これは回復してからの状態なのでしょうが、結構仕事(活動)してるな、と思います。
もともと売れっ子のときは殺人的なペースで書いていたということなんでしょうか(週刊誌への連載とかあるとそうですよね)。
または、やはりマンガを書くのが根っから好きだ、ということもあるのでしょう。


友人の精神科医の言うには、「うつ」になったらがんばってはいけないし、周りも「がんばれ」と応援するのは逆効果なんだそうです(そもそもがんばれないのが「うつ」なわけなので)。

日記を見る限りは、作者は、無理せずに出来ること・やりたいことを出来る範囲でしかやらない、またそういう状態について悩まない(たまに将来の不安、とか突然ダンベルで筋トレとかはじめたりしますが)という飄々とした姿勢を貫いていて、「うつ」と向き合う姿勢としては正解なのかも知れません。


本書はストーリーを作ってもおらず、事実を淡々と書いているだけなので、面白い話やドラマを期待すると期待はずれになります。
正直言って、今回のような便乗商法でないかぎりは単行本になるようなタイプの本ではないと思います。

ただ、それだけに『失踪日記』を下敷きにすると作者の飄々とした逞しさがリアリティを持って感じられます。


<ご参考>
吾妻ひでお『失踪日記』(前編) または宮澤賢治「眼にて云ふ」
吾妻ひでお『失踪日記』(後編)




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