一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

吾妻ひでお『失踪日記』(後編)

2005-04-17 | 乱読日記
昨日は話が横道にそれてしまったので、今日は肝心の『失踪日記』について

この本には、失踪やアル中の原因、なんでそうなったかについては詳しくは書いていない。
それが、暗さや自己憐憫に陥らずに、でもそうなってしまった自分を見つめる飄々とした凄み、を感じさせている。

巻末のインタビューで、本人は
「物描きはみんなそうだと思うんですけど、自己模倣をやっていることに気づくと限りなく落ち込んでくるんです。特にギャグ漫画は、前と同じことをやってもウケないから。(中略)常に新しいギャグを考えようとすると、だんだんと精神が病んでくる・・・」と、そのへんの事情をちょっとだけ語っている。

そういえば鴨川つばめも、『マカロニほうれん荘』がヒットしすぎて、結局そのあとは何も書けなくなってしまった。
江口寿志も、漫画のなかで「白いワニ(埋まっていない原稿用紙)が来る~」と言いだして、連載を落としまくっていたな・・・


内容は、路上生活やアル中での入院生活と、そこでの妙な人々の話が、4頭身のキャラと美少女キャラで描かれていて、その悲惨な現実と表現のギャップがちょっとこわい。


特に面白かったのは、路上生活ですることがなく、スカウトされたガス配管会社で仕事するうちに、ガス会社の社内報の漫画に投稿してしまうところ。
(載せたほうは気がつかなかったらしい)
ただ、表現者の性を感じて、素直には笑えなかった。


この本はアル中での入院記で終わるが、続編があるらしい。
期待しよう。

失踪日記

イースト・プレス

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