日常ではもっぱら不経済を実践している身としては経済理論となるとはなはだ苦手なのですが、本書はとてもわかりやすい本でした。
筆者はいわゆるリフレ派(デフレを止め、デフレ以前の物価水準に復帰する政策,
もともと本書はリフレ派のbewaadさんご推奨だった(と思います))の若手経済学者(私と同世代なのでもはや中堅ですね^^;)で、デフレから回復基調にある日本経済(本書発行は2005年11月)を成長軌道に乗せるための経済政策について論じた本です。
著者の専攻は経済学史で、現在対立している経済論争をそれぞれの学説の成立した時代背景まで遡ってわかりやすく説明してくれているとともに、著者も共同研究に参加した昭和恐慌の研究からの教訓や、大恐慌におけるFRBの失敗の分析、そして、最近の日本のデフレについてアメリカの経済学者がどのように分析し、何を教訓にしているかなどの事例が豊富に取り上げられています。
※FRBのバーナンキ議長は、大恐慌研究の第一人者であり日本のデフレにも詳しい経済学者として有名だと初めて知りました(本書執筆当時はまだFRB理事)。
ゼロ金利解除が話題に上っている昨今ですが、本書で指摘されている
名目短期金利がゼロだからといってその他の金融政策や財政政策が全て無効になるわけではない(経済政策は複合的なものだ)
出口として「脱デフレ」という明確な目標設定が大事(「ゼロ金利解除」など政策手段をとることを目的にすると道を誤る)
というあたりの指摘は至極最もっともだと思いますので、今後の報道や解説などを見るときに参考にしたいと思います。
PS
作者の語り口は経済学への愛情に溢れ、時には熱く、時には辛辣で読んでいて飽きません。
またスパイスの効いた注釈(著者が楽しんで書いている姿が目に浮かぶようです)を読むだけでも十分に楽しめます。