「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

親子関係から分析する

2009年11月15日 19時53分50秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 乳幼児期に 母親と安定した関係が 築けたかどうかが、

 その後の 自我や情緒の 安定を左右します。

 ごく幼い時期に 母親から引き離されたり、 安全が脅かされる 体験をすると、

 脳の器質的な変化を 半永久的に残すことが 分かってきました。

 虐待を受けた子供は  「愛着障害」 を起こしやすくなります。

 ごく幼い頃に ネグレクトされた子供は、

 周囲に無関心になり、 誰にも愛着を 示しにくくなってしまいます。

 一方、 もう少し 年齢が上がって、 親の愛情を失う 体験をした子供は、

 誰かれ構わずに なつくというタイプの 愛着障害を起こすことがあります。

 なついている人が いなくなっても、 割合 あっさりと切り替えて、

 すぐ次の人になつくという パターンを繰り返します。

 境界性パーソナリティ障害の かなりの人が、 同じ愛着パターンを示します。

 振り向いてくれる人には 見境なくしがみつき、

 その人がいなくなると 別の依存相手を探します。

 大部分の人は、 乳幼児期に見捨てられ体験をし、 愛情飢餓を抱えているのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子は これとは違うパターンでした。

 僕と知り合ってから、 しばらく 楽しいときを過ごすと、

 傷つく出来事が起きて 離れていきます。

 でも 忘れた頃になると 連絡が来て、 しばし交友し、

 また傷ついては 去っていくということを、

 約6年にわたって 何回も繰り返していました。

 離れていった直後は、 別の相手を 探したかどうか分かりませんが、

 しばらくすると必ず、 再び僕の所に 戻ってくるのでした。

 ボーダーの人はよく、 次々と異性を渡り歩く とも言われますが、

 必ずしも そうとは限らないでしょう。

 ひとつの関係を 大切に守ろうとし、 こちらがそれに応えれば、

 長期にわたって 関係が続いていくことも 少なくないといいます。
 

境界性パーソナリティ障害が 急増しているのはなぜか -- 境界性パーソナリティ障害 急増の本当の理由

2009年11月14日 22時45分25秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 発症する要因として、 遺伝的要因と 環境的要因が考えられます。

 なりやすい傾向を 持った人に、

 不利な環境要因が加わって 発症しやすくなるのです。

 環境的要因としては 親子関係や養育歴が 最も大きいですが、

 社会的体験の影響も 無視できません。

 心が深く傷つけられる 体験や逆境は、

 境界性パーソナリティ障害の 発症要因となります。

 境界性パーソナリティ障害が近年 急増しているのは何故か、

 社会的要因が 浮かび上がってくるでしょう。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 ランディ・クリーガーさんは、 発症の原因というより、

 「リスク因子」 という 考え方をしています。

 何かひとつの原因で 発症するのではなく、

 いくつかの リスク因子が重なると、 または リスク因子の数が 多いほど、

 発症の危険性が 高まるということです。

 ある環境が BPDを引き起こすとは 決して言えません。

 虐待, 別離, 不適切な養育を受けた 多くの人が BPDを発症せず、

 逆に 一部のBPD患者は、

 これらの環境的リスク因子を ひとつも持っていないそうです。

 生物学的リスク因子と 環境的リスク因子の、 何らかの 決定的な組み合わせが、

 BPDを発症させる可能性が 高いと考えられています。

〔 「BPDのABC」 ランディ・クリーガー, E・ガン (星和書店) より 〕

関連記事
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/57801589.html
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/57809273.html
http://blogs.yahoo.co.jp/geg07531/57826883.html
 

「境界に生きた心子」 が 特集されました。

2009年11月11日 19時33分48秒 | 「境界に生きた心子」
 
 「境界性パーソナリティ障害が よくわかる」 というサイトで、

 拙著 「境界に生きた心子」 の特集が 掲載されました。 (^^)

 サイトをリニューアルしたのを機に、 拙著の特集を 組んでくださったのです。

 拙著についてなどのインタビューで 構成されています。

 心子の心を象徴するような、 フラクタルの画像も 鮮やかな見栄えになりました。

(ネット上で 見つけた画像を、 許可を得て 使用させていただきました。)

 ぜひ 見てみてください。

http://kyokaise.com/special/index.html
http://kyokaise.com/special/special01.html
http://kyokaise.com/special/special01-2.html

 BPDについて 分かりやすく説明している サイトです。

 BPDに関する ブログの紹介もしており、 僕のブログも 掲載されています。

http://kyokaise.com/blog/

(上から3つ目です。)


 ネットでは、 ボーダーに関する ブログや情報が 随分増えてきました。

 でも まだ知らない人も多く、 誤解や偏見も 著しいものがあります。

 今回の特集などによって、

 ボーダーへの正しい理解が もっと広がっていくことを、 心から願っています。
 

ネガティブな体験に 脳が反応する

2009年11月10日 18時22分50秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 感情のコントロールは、 情動の中枢である 扁桃体などの大脳辺縁系と、

 それを制御する 前頭前野のバランスで 行われています。

 扁桃体は 自分が脅かされた ネガティブな体験に対して、 敏感に反応します。

 ネガティブな体験を 多くしていると、 扁桃体はよりいっそう 過敏になります。

 これを制御する 腹内側前頭前野は、

 善悪や損得を考えて 行動をコントロールします。

 ここがうまく働かないと、 一時の激情のために、

 不利な行動を 衝動的に行なってしまいます。

 ネガティブな体験を 多くした人は、

 前頭前野の機能も 低下していることが多いということです。

 薬物やアルコールは、 余計に 前頭前野の働きを悪くします。

 嫌な感情を紛らわすために 薬や酒に頼ると、

 悪循環になり いっそう衝動的になってしまいます。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子の頭の中は もちろん見たことはありませんが  (^^;)、

 恐らく 上記のような働きだったのでしょう。

 心子は、 僕のつまらない一言で パニックを起こしたとき、

 息を荒らげて ビールをあおり、

 僕は 煙草を求める心子のため、 自動販売機に 走らなければなりませんでした。

 うさばらしに 酒や煙草を飲むのは 誰でもあることですが、

 それは逆効果でしょうか。

 心子の主治医は、 一番軽い煙草で 気分が落ち着くならと、

 完全な禁煙は 強いていませんでした。
 

「本当の自分」 が 「偽りの自分」 を 拒絶している

2009年11月09日 20時56分02秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 境界性パーソナリティ障害を、 自己確立過程の障害として 見ることができます。

 幼いころから与えられてきた自分と、

 これから生まれ変わろうとする 本来の自分の間で、

 軋轢(あつれき)が起きやすいのです。

 その結果、 親からの借り物である  「偽りの自分」 に対して、

 「本当の自分」 が 拒絶反応を起こしてしまいます。

 自己を確立するには、 かつての自分を 一旦否定して、 正反対の自分を打ち立て、

 その両者を統合した 新しい自分へ至る プロセスが必要です。

 以前の自分に しがみついたり、

 中間段階の 「正反対の自分」 を 拒否したりすると、

 そのプロセスは 難産となります。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕 
 

 父親と一緒に 死ぬ約束をした 幼い心子は、

 死に脅える父を 慰める役割を果たしていました。

 父は 心子がどうやって 後を追うのか、

 その方法まで 毎日問いただしたといいます。

 心子は一生懸命に 考えて答えました。

 「階段から 飛び下りるの」 「おしょうゆ いっぱい飲む」

 以上は 心子の主観的事実ですが、

 心子は 父親に殉じるために 生きているようなもので、

 本当の自分が 何だか分からなくなって しまったのかもしれません。

 百点満点の完璧を求める 父親に愛されるためにも、

 心子は 明るくて気丈で頑張り屋の もう一人の自分を、

 無意識に 作り出さざるを得ませんでした。

 そうしなければ 生きていくことができなかったのです。

 心子は 僕と付き合っていたときも、 尋常でない 頑張りを見せていました。

 頑張らなくてもいい自分、 ありのままでいい自分を、

 なかなか 受け入れられないのでした。
 

萎縮した 自己愛を抱えている (3)

2009年11月08日 19時25分54秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
(前の記事からの続き)

 誇大自己と親のイマーゴが バランスよく成熟し、

 現実と折り合いを付けていくことが、 自己を現実化していくことになります。

 しかし 境界性パーソナリティ障害の人は、

 親のイマーゴの ネガティブな支配が強すぎます。

 そのため 自己肯定感が培われないだけでなく、

 誇大自己の願望も 幼くして打ち捨てられ、 顕示的願望を内に秘めてしまいます。

 自己否定と自己顕示の アンバランスな葛藤の中にいるのです。

 うつ状態に陥りやすいのも、 誇大自己が 貧弱すぎるからだと言えます。

 気分や対人関係の不安定さは、

 親のイマーゴが 誇大自己とのせめぎ合いに打ち勝ち、

 罪悪感や自己否定感に 駆られてしまうからです。

 心の中で 親を求めながら、 うまく甘えられないのも、

 発達途中の 親のイマーゴから 卒業できないことと関係しています。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子は、 カウンセラーとして 良い働きをした話とか、

 子供がなついて 心子といると 能力を発揮するという話とか、

 ともすると 自慢とも取れることを よく話しました。

(ただ全然 鼻につくようなものではなく、 楽しい有意義な話でした。)

 後から考えると、

 関心を買おうとする 演技性だったり、 誇大自己だったかもしれません。

 また心子は 僕に怒りや批判をぶつけるとき、

 自分は正しく 僕より上であるという 立場でいました。

 秘められた顕示的願望が 表に出ていたのでしょう。

 怒りは 誇大自己が萎えてしまわないための 手段でもあります。

 でも 誇大自己が萎縮すると、 一遍に落ち込み、

 猛烈な自己否定に 陥ってしまいます。

 自己肯定とのバランスが 余りに極端で、 揺れ動いてしまうのですね。
 

萎縮した 自己愛を抱えている (2)

2009年11月07日 23時22分01秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
(前の記事からの続き)

 自己愛性パーソナリティ障害は 誇大自己が肥大しており、

 境界性パーソナリティ障害は 親のイマーゴが肥大しているのが 特徴です。

 境界性パーソナリティ障害の人は、

 抱えきれないくらい強大な 親のイマーゴに支配され、

 誇大自己は すぐにしぼんでしまいます。

 その結果、 自己愛は非常に不安定で、

 自分に対する評価も 否定的になり、 罪悪感を抱きやすいのです。

 沈みがちなのを 何とか浮き上がらせようとして、

 誇大自己を満たしてくれることに のめり込んだりします。

 或いは、

 親のイマーゴの理想願望を 満足させてくれる存在との関係に 救いを求めますが、

 親のイマーゴは巨大すぎて、 実際には 期待を裏切られてしまいます。

(次の記事に続く)

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
 

 心子の 「理想化された 親のイマーゴ」 は、

 言うまでもなく 父親から与えられたものでしょう。

 幼い心子にとって、 父親は絶対的で パーフェクトな存在だったはずです。

 父親も 心子を厳しく育て、 完璧を要求しました。

 心子は恋愛対象として 父親を理想化し、

 長じてからも それが完全無欠な 男性像となったのだと思います。

 男性に対して、 最初は理想化して 慕ったり依存したりしますが、

 すぐに期待外れになって傷つき、 怒り、

 失望して 立ち去っていくことになってしまいます。

 それは 僕に対しても繰り返されました。

 万全な理想像を押しつけられても、 それに全面的に 応えられるはずはありません。

 理想が高い分だけ 失意は大きく、

 心子は より苦しみ苛まれることに なってしまうのです。
 

萎縮した 自己愛を抱えている (1)

2009年11月06日 20時45分52秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 子供は 幼い自己愛が 程よく満たされることによって、

 現実とバランスの取れた 自己愛を獲得していくことができます。

 しかし境界性パーソナリティ障害は、

 自己愛が萎縮したタイプの 自己愛障害だと理解されます。

 自己愛の発達には、  「誇大自己」 と

 「親のイマーゴ (強い影響力を持つ 内面的な像) 」 があります。

 自己愛が健全に育つには、 両者が適度に充足され、

 かつ 徐々に手放していくことが 必要です。

 誇大自己は、 自分を神と錯覚したような、

 最も未熟な自己愛で、 顕示的欲求や万能感を持ちます。

 親のイマーゴは、 親を神のように 絶対的に畏怖し、

 それを 現実の人間に投影します。

(次の日記に続く)

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕


 「理想化された 親のイマーゴ」 は、

 自分にとって 都合のいい相手の 理想像を作り上げてしまいます。

 万能感が 相手に投影された自己愛です。

 これは 尊敬できる相手によって 満たされると、

 生きる指針となる  「理想」 や 「道徳」 を 育てていくことができます。

 健全に育っていけば、

 相手を尊敬したり、 慈しんだりすることができるようになります。

 しかし、 実際の親が 余りに厳し過ぎると、

 親のイマーゴは 過剰に理想化されて、 子供を強く支配します。

 成長してからも 相手に過大な理想を求め、

 現実には 期待を裏切られて、 傷つき失望してしまいます。

 逆に、 親が拒否的だったり 頼りなさ過ぎると、

 自分の理想となるべき 親のイマーゴの 形成に失敗し、

 理想化の自己対象を 失ってしまいます。

 その結果、 安定した自己を 確立することができず、

 人を尊敬したり 信頼したりもできなくなってしまいます。

 親のイマーゴは 最も基本的な他者像でもあり、

 人との関わり方に 極めて大きな影響を与えます。
 

親に対して 強いこだわりがある

2009年11月05日 20時55分34秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 境界性パーソナリティ障害の人は 例外なく、

 親に対して 強いこだわりを抱いているといいます。

 求める気持ちと 拒否する気持ちが同居した、

 アンビバレント (両価性) な葛藤です。

 甘えたいのに甘えられない、 親から認めてもらえない という気持ちでいます。

 親を過度に理想化したり、 失望を味わったりという 状況があります。

 親の価値観を 押しつけられすぎた子供は、

 支配されるにしろ、 離反するにしろ、 親の影響を受け続けます。

 親が立派すぎても、 親の期待に応えられない子供は 罪悪感を抱いてしまいます。

 親の愛情さえ 知らずに育った人は、

 幻想を膨らませたり、 幻滅を味わったりを 繰り返します。

 「母には私の葬式に 来てほしくない」 と言う ある女性は、

 母親への 裏返ったこだわりを持っているのです。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕


 心子に対する 父親の影響は、 この数日 書いている通りです。

 父と一緒に死ぬという 誓いを破った罪悪感で、

 心子は 死ななければならないという 希死念慮に呪縛され続けたのです。

 母親に対しては、 結構仲がよくて 一緒に旅行に行ったり、

 同じベッドで 寝たりしていた反面、 すぐに怒りをぶつけたりしていました。

 このままでは 母親を殺してしまうと思い、 17才で家を出たといいます。

 「母は下等動物」 「人の痛みが 分からない奴なんて 人間やめろ!」

 そんなメールが 僕の所によく送られてきました。

 ところがその直後に、 こんなメールも来るのでした。

 「私はいつも人を傷つける。

 いつか あなたも傷つけてしまう、 大切な人を」
 

根底では 自分を否定している

2009年11月04日 22時10分12秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 見捨てられ不安や 関心への渇望の根底には、 強い自己否定があります。

 自傷や自殺企図を 行なうのも、 根っこは同じです。

 「生きていても 何の価値もない」 という 気持ちに陥り、

 人によっては、  「生まれてきたことが呪わしい」 と、

 存在することへの 強烈な呪いを 語ることもあります。

 境界性パーソナリティ障害の人は 自分を大切にすることができません。

 自分を守ってくれるはずの人から、 大切な存在として 扱われず、

 否定されてきたことが 多いのです。

 彼らの親のうち 半分くらいは、

 上手に愛してやることが できなかったと認めますが、

 残りの半分の親は、 自分はこの子のために 精一杯やってきたと言います。

 そうした親は、 常識的で論理的ですが、

 自分の視点からしか 相手のことを考えられない という共通点があります。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕


 心子も 強い自己否定感がありました。

 昨日も書いたように、 生後 親からスキンシップを 得られなかったために、

 自分が大切にされている, この世に存在していいんだ という

 無意識の精神を、 育むことができなかったのでしょう。

 心子の母親は、 そのことを 何より悔いています。

 その後は母親は、 過保護とも思えるように 接したそうですが、

 心子は 母から愛情を受けたと 感じることができませんでした。

 さらに、 心子は 父親と一緒に死ぬと 約束して育ったため

(それが心子の 主観的事実だとしても)、 自分は死ぬために生きていた,

 死ぬことしか知らないという 想いにとらわれていました。

 そして、 父親が急死したとき 後を追えなかったことが、

 「父との誓いを破った」 という 呪縛となって、 心子を蝕んだのです。

 心子は自分を 大切にすることができず、

 自分をないがしろにしたり、 存在をなくそうとしてしまったのです。
 

愛情飢餓感が 人一倍強い

2009年11月03日 19時54分58秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 見捨てられ不安を感じ、 人間関係が不安定になりやすい 根底には、

 拭いがたい愛情飢餓と 関心への渇望があります。

 幼い頃、 愛情を脅かされる体験を したことが関係しています。

 表面的には愛情があり、 普通に育てられたように 見える場合も、

 本人は 親に愛されなかったと 感じていることが少なくありません。

 愛情を奪われることに 最も敏感な時期に 受けた心の傷は、

 その後長く 心に刻み込まれます。

 人によっては、 見捨てられ不安や 関心への渇望が 一旦抑制され、

 思春期から再び 現れてくることもあります。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕


 言うまでもなく、 心子が最も 苛まれたもののひとつです。

 僕には見捨てる気持ちなど これっぽっちもないのに、

 何でもないことで 見捨てられると感じ、

 傷つく前に 自分から去っていくことを 繰り返しました。

 或いは、 僕がいずれ 心子から離れていくとか、

 別の女性と 一緒になると、 折に触れて言うのでした。

 しかし、 すぐに 泣きすがって謝ってきたり、

 「大好き大好き!」 と むしゃぶりついてきたこともあります。

 関心を引こうと 変わったことをした 例としては、

 付き合い始める前、 自分の経歴をメモした紙を

 わざと僕の部屋に 置いていったことや、

 生理のときに使ったティッシュを 落としていったことを思い出します。

 生後1年間、 足の障害のために 親に抱かれず 独りで寝かされていた体験が、

 根底にあるのでしょう。

(どこまでスキンシップがなかったのか、 正確なことは分かりませんが。)
 

両極端にしか 考えられない

2009年11月02日 23時38分22秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 認知の観点で見ると、

 境界性パーソナリティ障害は 両極端で二分法的に 陥りやすいわけです。

 この二分法的認知が、 対人関係や気分の面で 両極端の変化を生んでしまいます。

 二分法的認知は、 幸福よりも不幸を 引き寄せる本性を持っています。

 どんなに親切で 優しい人が 一肌脱いでくれたとしても、

 少しでも アラや不満な点を 感じた瞬間、 裏切られたと感じ、

 怒りすら覚えてしまうのです。

 そうすると 0点どころか、

 裏切ったという点で マイナス100点になってしまいます。

 援助する側も 裏切られたと感じ、 怒りを覚えます。

 境界性パーソナリティ障害の人の 心の中で起こっているのと 同じことが、

 援助する側にも 起こっているのです。

 境界性パーソナリティ障害からの 回復を助けるには、

 相手の感情の渦や 二分法的思考に巻き込まれず、

 周囲が 適切な反応の手本を 示すことです。

 例えば、 周りが全員 英語をしゃべっていれば、

 本人も英語を話しだすのと 同じ原理です。

 そうして 本人の受け止め方を 変えていくと、

 人生は 違ったものに見えてきます。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕


 白か黒か、 100か0かの二分思考、

 それが心子や周りを 最も苦しめたもののひとつでしょう。

 心子は 自分がオセロのようだと 言っていました。

 それまで真っ白だったものが、

 ひとつが黒くなると 一瞬にして全部 黒になってしまうのです。

 言い得て妙、 心子は 自分を的確に見て 表現する面もありました。

 でも マイナスの感情にとらわれると、

 分別など跡形もなくなって、 激流に呑み込まれてしまうのです。

 僕は それに巻き込まれないように、 動じないように努めていました。

 それは ボーダーの人に対して、

 この世には 何があっても変わらないものがあるのだと、

 教えることになったかもしれません。
 

好奇心旺盛だが、 飽きっぽい

2009年11月01日 19時59分50秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 新しいものに対して 好奇心が強く、 真新しい刺激や 変化を求める性質として、

 「新奇性探究」 というものがあります。

 生まれつき持った 素質的要素が強いと 考えられており、

 情動のコントロールが弱いことと 関連があります。

 気が散りやすく、 飽きっぽい傾向や、

 感覚的に優れ、 創造性や自己表現に 優れた傾向もあります。

 芸術家に この障害が多いことと 関係があるでしょう。

 典型的なタイプには 概ね当てはまる傾向です。

 子供の頃、 注意欠陥/多動性障害 (ADHD) の 傾向を示す人もいます。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕


 心子にも この傾向がありました。

 犯罪被害者支援のシンポジウムに、 心子と二人で 出席したときのことです。

(光市母子殺害事件の 本村さんが参加しており、

 その関わりで 当ブログでは

 この事件や死刑制度に関する カテゴリーを設けています。)

 犯罪被害者支援の会では、

 被害者の心理的ケアのために 臨床心理士などがいますが、

 カウンセラーだった心子は、 当日の 心理士の言動に 疑問を感じ、

 自分が会で働きたいと アンケートで申し出たのです。

 当時 心子は自分のことで 精一杯で、

 それ以上の仕事をできる 状況でもなかったのですが、 真剣に考えていました。

 実際にできるはずはないと 僕は内心思っていましたが、

 やはり その後この件を 口にしたことはありません。

 他にも 思い付いたように、 何かをやりたいと 言うことがことがありました。

 その時は本心でも、 それが続くことは ありませんでした。