「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

「本当の自分」 が 「偽りの自分」 を 拒絶している

2009年11月09日 20時56分02秒 | 「境界性パーソナリティ障害」より
 
 境界性パーソナリティ障害を、 自己確立過程の障害として 見ることができます。

 幼いころから与えられてきた自分と、

 これから生まれ変わろうとする 本来の自分の間で、

 軋轢(あつれき)が起きやすいのです。

 その結果、 親からの借り物である  「偽りの自分」 に対して、

 「本当の自分」 が 拒絶反応を起こしてしまいます。

 自己を確立するには、 かつての自分を 一旦否定して、 正反対の自分を打ち立て、

 その両者を統合した 新しい自分へ至る プロセスが必要です。

 以前の自分に しがみついたり、

 中間段階の 「正反対の自分」 を 拒否したりすると、

 そのプロセスは 難産となります。

〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕 
 

 父親と一緒に 死ぬ約束をした 幼い心子は、

 死に脅える父を 慰める役割を果たしていました。

 父は 心子がどうやって 後を追うのか、

 その方法まで 毎日問いただしたといいます。

 心子は一生懸命に 考えて答えました。

 「階段から 飛び下りるの」 「おしょうゆ いっぱい飲む」

 以上は 心子の主観的事実ですが、

 心子は 父親に殉じるために 生きているようなもので、

 本当の自分が 何だか分からなくなって しまったのかもしれません。

 百点満点の完璧を求める 父親に愛されるためにも、

 心子は 明るくて気丈で頑張り屋の もう一人の自分を、

 無意識に 作り出さざるを得ませんでした。

 そうしなければ 生きていくことができなかったのです。

 心子は 僕と付き合っていたときも、 尋常でない 頑張りを見せていました。

 頑張らなくてもいい自分、 ありのままでいい自分を、

 なかなか 受け入れられないのでした。
 

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