子供は 幼い自己愛が 程よく満たされることによって、
現実とバランスの取れた 自己愛を獲得していくことができます。
しかし境界性パーソナリティ障害は、
自己愛が萎縮したタイプの 自己愛障害だと理解されます。
自己愛の発達には、 「誇大自己」 と
「親のイマーゴ (強い影響力を持つ 内面的な像) 」 があります。
自己愛が健全に育つには、 両者が適度に充足され、
かつ 徐々に手放していくことが 必要です。
誇大自己は、 自分を神と錯覚したような、
最も未熟な自己愛で、 顕示的欲求や万能感を持ちます。
親のイマーゴは、 親を神のように 絶対的に畏怖し、
それを 現実の人間に投影します。
(次の日記に続く)
〔 「境界性パーソナリティ障害」 岡田尊司 (幻冬舎) より 〕
「理想化された 親のイマーゴ」 は、
自分にとって 都合のいい相手の 理想像を作り上げてしまいます。
万能感が 相手に投影された自己愛です。
これは 尊敬できる相手によって 満たされると、
生きる指針となる 「理想」 や 「道徳」 を 育てていくことができます。
健全に育っていけば、
相手を尊敬したり、 慈しんだりすることができるようになります。
しかし、 実際の親が 余りに厳し過ぎると、
親のイマーゴは 過剰に理想化されて、 子供を強く支配します。
成長してからも 相手に過大な理想を求め、
現実には 期待を裏切られて、 傷つき失望してしまいます。
逆に、 親が拒否的だったり 頼りなさ過ぎると、
自分の理想となるべき 親のイマーゴの 形成に失敗し、
理想化の自己対象を 失ってしまいます。
その結果、 安定した自己を 確立することができず、
人を尊敬したり 信頼したりもできなくなってしまいます。
親のイマーゴは 最も基本的な他者像でもあり、
人との関わり方に 極めて大きな影響を与えます。