ボーダーの人は無意識のうちに、
自分の感情に合うように 事実をねじ曲げることがあります。
その時、 事実はどうなのかと議論しても、
問題の本質 --ボーダーの人の感情-- を 見失うだけです。
ボーダーの人の事実について 言い争わず、 彼らの感情に対処しましょう。
例.
事実: 10代の娘はボーダーで、 母親は友人が尋ねてくると 時々ワインを飲む
感情: 母の友人が来ると、 娘は無視されたように感じ、
抑うつ的になり、 怒りを覚える
娘にとっての事実: 自分のネガティブな感情に 責任を持たない
感情を母のせいにし、 母はアルコール依存症だと思い込む
(ボーダーの人にとっては、 それで説明がつけば、 それが正しくなる)
アルコール依存症だと言われたら、 母は当然 自分を弁護するでしょう。
娘の見捨てられ不安という 本当の問題は取り上げられません。
娘にとっての事実に 反論する前に、 その感情を話題とすることで、
娘の事実を 共有することができるでしょう。
娘の感情を 充分に表現させます。
重要なのは 感情だけなのです。
娘 「ママは酔っぱらいだわ!」
母 「怒っているみたいね。
母親が面倒を見なかったら、 恐いし困るわね」
娘 「ママがアル中だって 言いふらしてやる」
母 「ママがそうだと 思ってるみたいね。
あなたは 自分の感情や意見を 持つ権利がある。
でもママも 気持ちや考えを 持っていいわよね」
娘 「ママの友だちは嫌いよ」
母 「彼女たちと過ごすのは楽しいのよ。
あなたと過ごすのも楽しいの。
昨日も買い物に行ったじゃない? 覚えてるでしょ」
娘 「そうね。 でもあの人たちと お酒を飲んでほしくない」
母 「あなたが嫌がってるのは 分かってるわ」
母は、 酒を飲むことと酔っぱらうことが 同じだとは同意せずに、
娘の気持ちを 鏡のように映し出しています。
娘を当惑させている 本当の問題について、 娘の考えや見方を 無視することなく、
自分の考えや見方を 表現できたのです。
〔 「境界性パーソナリティ障害=BPD」 第2版 (星和書店) より〕