江崎恭平さん (64) は 拘置所から届く手紙を、
手許に置いて 何回も読み直しています。
その数は 60通を超えました。
うまい文章ではありませんが、
一生懸命 書いているのだろうことは 分かります。
1994年、 長男の正史さん (当時19才) と友人は、
3人の少年に 因縁をつけられ、 金属パイプでめった打ちにされて、
二人とも亡くなりました。
少年らは 他にも二人の命を 奪っていました。
公判中、 死刑判決を受けた 二人の少年から 手紙が届くようになりました。
( 現在上告中 )
恭平さんには 手紙の言葉が きれいごとに見えましたが、
手紙は送り続けられました。
受け取りを拒否していますが、
拘置所の作業で 溜めた現金も 年に一度届けられます。
< 読経や写経を させて頂く事と 請願作業をして頂ける賞与金を
御遺族に送らせて貰うのが せめてもの気持ちですから (中略)
今後も送らせて頂きたいと 強く想っています。 >
二人の少年は述べました。
「 人の命を奪った人間が 言うのは許されないと思うが、
できることなら 生きて償いたい 」
「生きて 何かできることを やっていければ。
でも、 自分の立場を考えると、 死刑も やむを得ないと思う 」
「 今、 僕が生きているのは ありがたいことだから、
ご遺族に恥ずかしくないように、 手紙をずっと書きたい 」
恭平さんが 3人に死刑を望む気持ちは 変わりません。
「 反省の気持ちが伝わっても、 刑は 残忍な犯行に対する 結論。
謝罪とは別なんです 」
ただ、 今は手紙から
彼らがどう変わろうとしているのか 読み取ろうとしています。
妻のテルミさんは 手紙を前に 目を伏せます。
「 この子たちも 苦しんでいるんでしょう。
でもそれ以上に 私たちは重いものを背負った。
正史の声を もう一度聞きたい…… 」
〔読売新聞より〕