「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

ボーダーの原因

2005年11月21日 20時57分46秒 | ボーダーに関して
 拙著には、ボーダーの主な原因は親の愛情の過不足による生育歴だと書きました。
 日本では今もそう考える人が多いようですが、出版後あらたに分かったことがあります。

 現在アメリカの最先端の研究では、まず先天的な(生物学的な)素因が第一にあり、それに環境的な要因が加わって起こると言われているそうです。

 「境界に生きた心子」を読んで手紙をくださった方の中にも、年子の姉妹で妹さんがボーダーだというお姉さんからのものがありました。
 同じような家庭環境で育ったであろう姉妹の一人だけがボーダーというのは、生物学的な差異があることの例かもしれません。

 ボーダーの人の親御さんが、適切な愛情を我が子に与えられなかったと自分を責めたり、周囲も批判的な目を向けたりすることで、親御さんが苦しんでしまうことがよくあるといいます。
 しかし親の愛情ばかりに責任を問うことはできないということです。

 まだ分からないことが多いですが、今後も境界性人格障害の研究や臨床の経験が積まれていくことを切に願っています。
 現在苦しんでおられる方々が、少しでも生きやすくなっていくように。


エピローグ(2)

2005年11月21日 09時59分18秒 | 「境界に生きた心子」

 人の人生はドラマである。
 いかに笑い、いかに怒り、いかに泣き、苦しんだか、それがその人の終生の意義である。
 長さはさしたることではない。
 どんなドラマを演じ、残していったかが、人の生きた証だ。
 人間の愛情,純粋さ,怒り,悲しみ,喜び--それらを心子は最も先鋭的に体現し、走り抜いていった。
 心子は紛うことなく濃密な、奥深い生をあやなしていったのだ。

 心子は、あまたの謎と課題を置き土産にして逝った。
 人間の真実とは何か?
 幸せとは何か?
 生きる意味とは何なのか? 
 心子の生涯はそれらを僕に問いかける。
 心子は光と影の双方を強烈に焼き付けていった。
 正のエネルギーが段違いな分だけ、負のエネルギーも圧倒的だった。
 しかし人は、どんな負の体験からも正の意味を学び取ることができる。
 マイナスをプラスに転換していくことができるのが人間である。
 負の絶対値が大きいほど、正に転じたときの価値もまた大きいのだ。

(続く)