「境界に生きた心子」

境界性パーソナリティ障害の彼女と過ごした千変万化の日々を綴った、ノンフィクションのラブストーリー[星和書店・刊]

プロローグ(2)

2005年11月17日 10時13分43秒 | 「境界に生きた心子」

 一方で、心子は本当に人を笑わせてくれる。
 思いっきり小節をきかせまくって「いなかっぺ大将」を唸る。
 人さし指を横にして鼻の下をこするのが癖だ。わざとそうして僕に見せたりする。僕までその癖が移ってしまった。
 また、何にでもニックネームを付ける。僕・稲本雅之(四十三歳)は「マー君」になった。手袋は「おてぶ」だ。
「ん? おでぶ?」
 僕が茶々を入れる。
「おてぶゥ! おでぶはしんこ!」
 めっぽう三枚目の心子である。

 バイト先の喫茶店で、魚を三枚に下ろしてくれと言われたとき、心子はあっという間に
「できました」
 と言った。店長が驚いて見ると、魚が頭,胴体,尻尾に切断され、心子はニコニコしていた。本人は大まじめだ。
 豚肉は水で洗った。友達からは心子に料理を作らせるなと言われている。
 呆れたことに、心子は調理師免許を持っている(調理師の試験は衛生や栄養価などのペーパーテストだけだと聞く)。

(続く)

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