(「境界に生きた心子」の本文から一部を抜粋して紹介させていただきます。)
---愛くるしく楽しい心子。
純粋で果てない理想を追い求め、我が身の犠牲も厭わない。
しかしひとたびキレると、その怒りは相手を致命的にこき下ろす。
そして見捨てられた嬰児のように、寂しがり屋で傷つきやすい心子。
正に万華鏡のごとく、心子は陰と陽の境界を狂おしくさまよい歩く。
心子と過ごす日々はすこぶる愛しくて愉快な一方、壮絶な葛藤の連続である。
激しい感情の起伏に自他を巻き込みながら、心子は天と地のみぎわで千変万化の悲喜劇を繰り広げる。
彼女が欲するのはただ、際限のない愛情だけなのだ。
しかし、一%でもそれが欠けようものなら、深い悲しみが恐ろしい怒りとなって襲いかかる。
彼女を救うことができるのは、ひたすらな愛情でしかなかった---
(続く)