巨匠エルネスト・アンセルメのラスト・レコーディングはストラヴィンスキーの舞踊音楽「火の鳥」全曲(1968年録音)であった。オーケストラは手兵のスイス・ロマンド管ではなくイギリスのニュー・フィルハーモニア(現在、フィルハーモニア)管弦楽団である。この作品はロシア・バレエ団委嘱の第1作で1910年に完成された。まさに作曲家ストラヴィンスキーの名前を世界中に広めた作品といってよいだろう。また彼のいわゆる三大舞踊音楽と呼ばれる一連の作品(「火の鳥」・「ペトルーシカ」・「春の祭典」)は反ロマン主義や反印象主義に向かう20世紀現代音楽への道を開いた作品でもあった。
アンセルメはこれらの作品を大変得意としており「火の鳥」も確かモノラル録音を含めるとこれが3回目の録音になると思う。演奏はストラヴィンスキー独特のリズムにメリハリをきかせた素晴らしいできになっていると思う。録音のさすがデッカ録音だけありダイナミック・レンジが広い重厚なストラヴィンスキー・サウンドが堪能できる。またストラヴィンスキーはその後演奏会用組曲としても1911年、1919年、1945年の3つのバージョンで発表している。
尚、写真のLPはキング・レコードからの初回プレス盤で付録として全曲のリハーサル模様が収録された1枚が付いておりこちらも大変聴きごたえがあり興味深い。
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