クラシック 名盤探訪

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とっておきの名盤 その120 マーラー 交響曲第9番ニ長調

2008年03月22日 | とっておきの名盤「交響曲」
この盤は1938年1月のライヴ録音だからもう70年も前のことになる。
しかし、この曲の初録音であり、しかも初演をしたワルター自身の演奏と言う意味で非常に貴重なもの、ワルターとウィーンフィルの戦前最後となる演奏でもあった。
この曲は4つの楽章からなるが、いつも聴くのは最初と終わりの楽章のみという変則的な聴き方をしている。
とくに、マーラー特有の退廃的な美というか、その嘆きに満ちた歌、歌、歌に溢れる第1楽章は、とりわけ「死」と言うものの恐れを強く感じさせる楽章であり、そのこの世のものとは思えぬ悲痛な魂の叫びは、聴く者の心を深い情念の世界に落とし入れる。
マーラーの交響曲は総て「死」をテーマにしていると言われているが、私にこの曲ほどそれを強く感じさせるものは無い。
ワルターのこの演奏、聴くたびにこの曲が持つ深い意味を私に強く感じさせてくれる演奏であり、録音の良し悪しなど二の次で、とにかく感動することの素晴らしさを真正面から訴えかけてくれる。
録音(1938年)は古いが、彼がナチに追われウイーンを去る直前に積年の思いで演奏したこのライヴ録音、いろんな意味で特別な一枚と言える。
あえてこの曲のベスト・ファイヴをあげると、
・ブルーノ・ワルター指揮、ウイーンフィルハーモニー管弦楽団 <EMI>
・カルロ・マリア・ジュリーニ指揮、シカゴ交響楽団 <Grammophon>
・ジョン・バルビローリ指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 <EMI>
・レナード・バーンステイン指揮、ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 <Grammophon>
・クルト・ザンテルリンク指揮、ベルリン交響楽団 <Deutsche Schallplatten>