毎日が観光

カメラを持って街を歩けば、自分の街だって観光旅行。毎日が観光です。

車屋

2005年09月29日 13時31分33秒 | 食べ物
 うまい蕎麦を求めて右往左往。今回は市で言うと八王子。おお、八王子だ。牛頭天王の八人の王子じゃん!


 京王多摩センターで各駅に乗換。京王多摩センターは「ハローキティーに会える街」らしい。だがサンリオ・ピューロランドがあるからって、別にハローキティーがうろうろしているわけではない。ある時キティーちゃんがペットとして猫を飼っていることを知り、頭がくらくらする思いを味わったのも今ではいい思い出だ。

 京王堀之内着。にせガウディがお出迎え。

 なんというか、お台場に通ずる人工的な匂いを感じる街だ。不思議な非現実感。何もないところには何もないが、あるものはすべてでかい。空き地と巨大建築物。まさにお台場である。
 車屋の地図を見ると、駅からそれほど離れていないように見えたので、歩く。しかしあとになってよく見たら、ちゃんと言葉で駅からバス乗車7分、とあるではないか。うかつな人間である。
 どしどし歩く。目印はマクドナルド。これがない。道はあっているはずなのだが、ない。しばらく歩いてると遠くの方にちらっと赤い看板がある。え~、あんなに遠いのかよお。それでもまあ、がんばって歩いていったら、
すきや
じゃん。
 結局20分以上歩いて車屋着。

 建物が素晴らしい。福島県から移築した旧目黒邸(築130年以上)というものらしい。意外と広い店内もインテリアなどちょっと凝ったいい感じ。

 さ、さっそく蕎麦を注文。二八とおせいろ(十割)とあるので、両方頼む。
 まず十割。うそ。なに、これ? こんなに完成度の高い蕎麦、久しぶりだ。清冽にして、香り、味ともにすばらしい。十割だが、コシも十分、喉ごしも楽しめる。それ以上にこの仕事のよさを感じさせる蕎麦そのもの。水切りが絶妙で、水っぽくならない。かといって、パサパサしているわけでもない。絶妙の一言。もちろんのろのろ食べていたら、乾いてしまうだろう。蕎麦屋さんにこちらがのぞむのが「挽きたて、打ちたて、茹でたて」であるように、蕎麦はイキの良さが売り。食べる方も同じだ。
 つゆがまたすごい。これだけの蕎麦だから、つゆなしで食べてもおいしく、逆にこれを受け止めるつゆの負担が大きいのだが、このつゆの完成度も高い。
 二八にまた驚く。味、香りともに満足。さらに十割以上にエッジが立ち、キリリとした蕎麦だ。参りました。店のたたずまい、働いている人のきびきびした感じ、そしてもちろん蕎麦そのもの。どれ一つをとってもものすごい水準であった。
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恵み屋

2005年09月21日 11時11分51秒 | 食べ物


 場所は京橋。東京駅から富士屋ホテルの方へ。富士屋ホテルの角を曲がると、「三日月」というこれまたうまい蕎麦屋さんがあるのだが、今日はここを通過。もう1つ先の路地を曲がるとその恵み屋が現れます(東京駅か有楽町線の銀座一丁目か、どちらが近いかな)。
 噂はかねがね。一度食べてみたかった恵み屋。立ち飲み、立ち食いの十割蕎麦に加え、噂に高いそば打ちマシーンも見てみたかった。
 まずは生ビール(300円)。テーブルの上にかごがあって、そこにあらかじめ現金を入れておきます。今日は2千円くらい飲もうと思うなら2千円入れておく。ビールを運んできてくれたマスターがそこから300円取ってく。うーん、明瞭会計。しかも生ビール300円とは。
 つまみも一品200円から300円。なんとなく幸せな気分。
 ビールをお代わりして、ホッピーセット(350円)を注文。ホッピー1瓶と焼酎のオンザロックの入ったグラスが来ます。そのグラスにホッピーを注ぐと焼酎のホッピー割の完成。お代わり焼酎(200円)を頼むと3杯楽しめます。
 さ、いよいよ、お蕎麦を注文。蕎麦マシーンの登場です。いろいろつまみを食べたので量は並。こねてある蕎麦玉をマシーンにセット。圧搾空気の音とともに、玉が蕎麦状になって、沸かしてある湯に飛び込みます。ちゃっちゃと茹で、きゅっきゅと氷水で締め、さあ、できあがり。恵みもりの並(480円)は、もしかしたら、先日の長兵衛のせいろ+汁なしせいろ(950円)よりも、量があるかも。いや、あるに違いない。
 なかなかこしがあり、十割特有のもっさりした感じではない。圧搾空気で一気に蕎麦状にし、湯の中に飛び込むので、包丁切りよりも逆に十割蕎麦が作りやすいのかもしれません。蕎麦のコシはなかなかよかったんだが、香りはいまいち。値段を考えればもちろん納得だが、ただ、つゆが。たぶん隠し味として使ってるつもりなんだろうけれど、干し椎茸が少し効き過ぎ。逆にない方がよかったかな。
 でも、お財布にやさしく、心豊かに楽しい雰囲気で一杯食べられたから満足っす。
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長兵衛

2005年09月18日 19時46分16秒 | 食べ物


 西日暮里駅を過ぎた交差点、左折して北に向かう尾久橋通り。これをずうっとまっすぐ北に向かうとあるのが、「長兵衛」。最寄り駅は東武大師線の大師前、ということになるのかもしれないが、駅から歩いて30分以上はかかる。
 地元の人以外、車でなければ、ちょっと苦しい場所にある。実際駐車場は完備されているので、車がもっとも有効な手段だろう(ぼくたちも車だった)。
 店は広く、テーブル席がいくつかあるほか、座敷もある。
 もりせいろ(500円)を注文。もちろん、その値段でまともな量のそばが出るわけではないので、汁なしせいろ(要するにお代わり用のそば450円)を注文する。
 しばらくして運ばれた蕎麦。
 あー、これって新蕎麦? 蕎麦の味も香りも鮮やか。鮮烈で、生き生きとした蕎麦のうまみと甘さが口いっぱいに広がり、あたりも考えずに、「うまーい!!」と叫んでしまう。蕎麦のコシも気持ちいい。
 わさびが本わさびなのは当然だけれど、使っているモノもいいものだと思う。わさびの味がうまいんだ。ああ、うまい。とんでもなくうまい。
 もう1枚汁なしせいろを注文。
 これだけ食べても、新しく来るたびにワクワクしてしまうようなお蕎麦。
 参りました。
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大木戸矢部

2005年09月01日 14時13分25秒 | 食べ物

 場所は新宿御苑裏。
 有名なお店であることは知っていたのだけれど、うかがうのは初めて。
 カウンターに座ります。オープンキッチンで、料理をしている人たちの手が見えます。これが楽しい。そんな過程は見たくない、完成されたものだけを運んできてくれればいい、そういう考えもあるでしょう。でも、好奇心犬なみのぼくは蕎麦屋さんの動きに目が釘付け。新井薬師の松扇なんかもそう。あそこも見事なまでのオープンキッチン。店主の流れるような動きが素晴らしくて感心してました。食べ物関係ではないけれど、親父が職人だったせいか、職人さんの手さばきとか今でも大好き。
 しかし一方、オープンキッチンというのは、こちらがすべて見られるのと同時に向こうからもこちらがはっきりと見えます。ここで生まれる緊張感が、ちょっと重いのも事実。
 せいろの大盛り(735円+315円)を注文、しばし待つと運ばれて来ました。
 数本つかむとそれはすっとせいろの上に持ち上がり、端正な感じ。口に含むと、あ、うそ、まだ新蕎麦の季節じゃないのに、そばの香りと味が。かむとこれが楽しくなっちゃうくらい、いいコシ。ごにょごにょでも、ぷっつんぷっつんでもない。しなやかなんだけれど、コシのあるいい感じ。エッジのたった1本1本も美しい。つゆもいい。辛つゆが好きなぼくにはもっと辛くてもいい感じなんだけれど、でも、丁寧にだしの取られたつゆで大変おいしい。そう、ここは、丁寧な仕事ぶりができた料理から感じられるんです。
 ああ、幸せ。これだけ幸せなのは久しぶり。こちらが食べ終わりそうな絶妙のタイミングで片口に入れられたそば湯が運ばれてきます。重湯のようなとろおおっとした感じ。

なお、店主の矢部さんは、レタスクラブ出版「はじめてでもできるそば打ち」という本も書かれてらっしゃいます。
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みつまさ

2005年08月29日 11時50分18秒 | 食べ物
 場所は錦糸町駅南口から徒歩3,4分。
 見た感じは街の普通の蕎麦屋さんみたいだが、手打ちのお店。地元では有名らしい。
何より2ヶ月に1度、こちらで行われてる落語会。前売りですぐに売れ切れになるそうだ。ビールまたはお酒とお蕎麦、おみやげがついて2500円という価格設定が嬉しい。一度行ってみたいものだ。
 さて、イカと里芋をおつまみにビールを飲む。このつまみがうまい。つゆにイカの旨みが溶け、それが里芋にしっかり絡んでる。おいしい。
 別製せいろという霧下蕎麦の粉を使ったせいろもある。霧下蕎麦は、朝晩霧がたちこめるような場所で採れた蕎麦のこと。どうも朝晩と昼の気温差が大きいほどおいしい蕎麦ができるらしい。
 初めてのお店なので、普通のせいろを注文。暗めの緑がかった蕎麦。つなぎに海藻を使った蕎麦にこういう色のものがあるが、これは不思議。あとで調べたら蕎麦の葉を使っている、とのこと。コシはまあまあだが、やはり味、香りはいまいち。もう時期が時期なので、仕方がない。
 そろそろ季節は秋。新蕎麦が楽しみだ。
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上野藪そば総本店

2005年08月10日 09時25分52秒 | 食べ物


 ご存じ鵜飼良平さんの名店。お店は上野アメ横奥、マルイシティ裏、上野ゴールデントライアングル(池之端藪、蓮玉庵2軒と合わせ勝手に命名させて頂きました)の一角。でも、実はそれほど回数行っているわけではない。上野に行くときにバスを使うので、どうしても停留所が近い池之端へ足が向いてしまうから。友だち数人と連れだって行くときは、事前に2階の座敷をお願いしておけば、こりゃ、うまいうまいの大宴会。
 でもこの日は京都でいまいちの蕎麦を食べ、そこのご主人が修行された上野藪そば総本店に行ってみようと思い立ったが吉日、浅草でもぶらつくついでに寄ってみた。
 時は午後3時半、昼下がり。お昼でもなく、夜ご飯でもない、蒸し暑い油が身体にまとわりつくような感じのけだるい日曜日。だのに、お店は満員に近い混雑。
 まずはエビスビールを注文。お通しは蕎麦味噌。ゆず七味を使っているらしく、ほのかなゆずの香りに、辛みがきいてる。うんうん、おいしい。天ぷら盛り合わせ(1600円)を注文。しそやししとうなどの名脇役の並ぶ中、どこまでもまっすぐ大きいエビが2本鎮座まします。いいねえ、おいしいねえ。
 つい、昼真っから菊正を注文してしまう。
 次々にやってくるお客さん。それを遅滞なくさばいていく数名のおばちゃんたち。蕎麦屋の名店に名おばちゃんは付きものだ。神田藪の歌うおばさんは別にしても、白金の利庵など、狭い店内に客あしらいのうまいおばちゃんがてんこ盛り。神田まつ屋のおばちゃんたちもすてきだ。
 時間が4時を過ぎるとさらに1名のおばちゃんを新規投入。夕方に向かっての戦力拡充と見た。
 ここで崩れず、このあと浅草を散歩する予定だから酒は切り上げ、せいろ大盛り(850円)を注文。いいね。大盛りがあるっていうのが嬉しい。
 そばはもっちり系。コシは充分。香りはしないが、蕎麦の味が口中に甘く広がる。ま、この時期香りうんぬんは野暮ってもんだ。つゆは蕎麦の味を充分に受け止める強い味。
 ああ、早く新蕎麦の季節が来ないかな。
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蕎麦吉里童心舎

2005年08月01日 12時41分41秒 | 食べ物


 お店は田町と西日暮里の間、冠新道のはずれにあります。
 せいろ(500円)を頼みました。十割そばと二八せいろ、両方あるんですが、ぼくは食感から二八の方が好み(決してケチってるわけでは…)。
 この時期にしてはちゃんと蕎麦独特の甘みが感じられるおいしい蕎麦でした。しなやかなコシがあり、ぷちぷちっいう感じよりも、もう少しもちっとした食感。これはこれで、なかなか。
 特筆すべきはそば湯。いや、たぶんなにかの関係で今回だけだったのかもしれないけれど(だって、何回か行ってるけど、こんなの初めて)、湯桶の中でそばがきができていました。濃厚きわまりなし(もしかしたら12時前口開けだったから、そば湯が薄いので、湯桶に直接打ち粉をいれたのかもしれない…)。
 結局せいろを2枚ずつ食べて、たっぷりのそばがきを楽しんで、満腹・満足いたしました。
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西荻「鞍馬」

2005年07月26日 22時28分00秒 | 食べ物
 2年くらい前かな、西荻の鞍馬へ行きました。あそこはつまみがないんです。でもお酒を頼むと蕎麦味噌が出てくるので、それをなめながら軽く一杯飲んで蕎麦を食べました。
 ぼくの席から死角のところで女性が一人注文していました。「天先でお酒を」
 へえええ。粋な女性がいるなあ、と感心しました。
 天先っていうのは、天せいろなんだけれど、先に天ぷらだけ持ってきてね、という意味。その女性は天せいろの天ぷらをつまみにお酒を飲もうと思ったんですね。
 食べ終わり、立ち上がりざまに「ああ、おいしかった」と思わず口にしたぼくに、その女性は、「ねえ、おいしいわよねえ」というような、何とも言えない微笑みを向けたのでした。すてきな微笑みでした。今でもはっきり覚えています。
 彼女の訃報に触れて、なんだかすごく寂しいです。彼女の仕事の手触りの良さが好きでしたが、なにより、あの、微笑みを忘れることができません。
 安らかにお眠りください、杉浦日向子さん。
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有喜屋

2005年07月25日 10時14分05秒 | 食べ物

 京都の清水坂を歩いていて、ちょっと気になるお蕎麦屋さんを発見。そこは営業していなかったものの、本店が先斗町にあるのを知って行ってみました。場所は先斗町の突き当たりに近い歌舞練場の隣。
 入ると一階は満員。地下に案内されます。なかなかのにぎわい。テーブルにはメニューのほかに「おいしいお蕎麦の食べ方」なるマニュアルまで。これはこだわりのお蕎麦屋さん。期待が持てます。さらに、蕎麦塾を催し啓蒙活動を行っていること、京都府知事賞を受賞したことなど、いろんなアピールが目をひきます。
 ビールと天ぷらを食べ(ビールを頼むと可愛い蕎麦みそがついてきました)、いよいよせいろを注文(せいろは二八ですが、十割のざるもあります。ぼくは二八の喉ごしが好きなので)。
 「おいしいお蕎麦の食べ方」マニュアルによれば、まず、つゆにつけずに食べる、とある。うん、ぼくもたかさごや竹やぶとかでやる。お蕎麦のほのかな甘みと香りをストレートに味わえます。
 で、一口。
 う。なんの味も香りもない。まあ、季節が悪い。蕎麦の旬は秋から冬だもんね(でも、大塚の岩舟の蕎麦は味があったけれどなあ)と気を取り直して味わいます。
 しかしコシもない。喉ごしどころの話ではない。ノリっとした食感。
 加水の加減が悪いんじゃないかな。これは蕎麦打ちで一番失敗しやすいんだけれど、つなぎにくい旧蕎麦のとき、どうしても水を多めに加えてしまうんです(3%ほどの狂いでも明確に味に反映されるのだ)。
 つゆがまた珍妙。よく醤油が薄いことを「甘い」と表現するけれど、このつゆは違う。砂糖か味醂が多すぎて文字通り甘いんです。
 店主のプロフィール(そんなものもメニューに載っている)によれば東京の上野藪蕎麦で修行した、とありました。7店も支店展開しているから店主が打ってはいないだろうが、このだらしない蕎麦はなんだろう? 上野藪蕎麦と言えば、名店も名店(ぼくのなかで、池之端藪蕎麦、蓮玉庵とともに上野ゴールデントライアングルと名付けられている)。とてもそこで学んだお蕎麦とは思えません。
 いつもは違うのかもしれないが、このお蕎麦で「現代の名工」とは。鵜飼良平さん(上野藪蕎麦の店主)に是非食べて頂きたいと思いました。
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くろ麦(静岡)

2005年07月11日 15時31分01秒 | 食べ物

 店に入る。辛うじて1つだけ空いていた席。ごちそうさん、と立ち上がる人がいるかと思えば、また新しいお客さんが入ってくる。どの人たちも普段着。地元の人に愛されているお店なんだなあ、と強く感じます。
 青山の「くろ麦」ののれん分け。そして青山の「くろ麦」は鎌倉一茶庵の系統。やっぱりまだ行ったことがない足利の「一茶庵」にそろそろ行ってみようかな、と思うほど、足利一茶庵は日本の良質のお蕎麦の本家本元みたいな感じ。
 打ち場の奥では、石臼がガラガラと回転しています。
 エビスビールを注文。お通しはなし。つまみに玉子焼き、薩摩揚げ、月見芋。玉子焼きはふわーっと柔らかなだし巻き。薩摩揚げには大根おろしがつきます。
 さて、せいろの大盛り(945円)を注文する。口に入れるとこしのあるうれしい歯触りにほのかな甘みが香おって絶品。つゆは旅に出ると滅多に出会えない江戸の蕎麦つゆ。江戸っ子は見栄っ張りだから、そばにちょっとつゆつけただけでつつつーっと食べる、と言われるのを聞いたことありません? 「けっ、見栄っ張りめ」とお思いのあなた。浅草の並木の藪でお蕎麦を食べてみて下さいな。どっぽんとつゆの中に蕎麦を放り込んで。
 しょっぱくて食べられないでしょ? 別に見栄っ張りでもなんでもない。ちょっと付けると充分なほどしょっぱいから、つけないんである。地方に行くと、どっぷりつける習慣のせいか、つゆが薄くなる。人それぞれの好き嫌いだから、どちらが正しいなんて話ではないが、ぼくは妙に焦点がぼける感じがして、きりっとした東京の蕎麦つゆの方が好きである。
 蕎麦もつゆも絶品。高架沿いを駅から20分近く歩くロケーションにもかかわらず、店が満員なのもうなずけるお味でありました。
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砂場総本家

2005年06月27日 13時41分38秒 | 食べ物
 福永武彦に「廃市」という小説がある。大学生の主人公がゆっくり論文を書くために訪れた堀割で知られる美しい柳川。何一つ新しいことが起きる気配もなく、ただ死んでいくのを待っていくような街。時の停滞。ジョルジュ・ローデンバッハの「死都ブリュージュ」がもとになっている美しい話だ(大林宣彦の映画も秀逸)。「私の郷里柳河は水郷である。さうして静かな廃市の一つである。」(北原白秋「水郷柳河」)。
 そしてここにも廃市があった。都電の終点三ノ輪橋。 

 ここジョイフル・ミノワ(三ノ輪橋商店街)に一歩足を踏み入れると、そこは昭和50年代を最後に時を刻むのを放棄してしまったような印象を受ける。

 荒川区政50周年ポスター(昭和55年)。あなたはいったいどなたなのでしょうか?
そして、目指すお蕎麦屋さん「砂場」

 蕎麦というと江戸、という感じだが、発祥は大阪。大阪城築城の際、その砂の置き場(砂場)にあった「いづみや」や「津の国屋」などの店が蕎麦のルーツ。徳川家康の江戸入城にあわせて職人も江戸に入り、蕎麦がもてはやされるようになった(虎ノ門砂場の暖簾には「大坂屋砂場」と今でも書いてある)。現在東京には200軒近い「砂場」を名乗る店があり、巴町、虎ノ門、室町の砂場など名店も多い。その砂場の総本山がこの三ノ輪の「砂場総本家」である。建物は大正元年建設。
 入るとそこはぼくが子どもの頃行ったお蕎麦屋さんそのもの。ちゃんとテレビもついてる。店内にはさまざまな古いものが情け容赦なく飾られている。最初は意図的じゃなかったかもしれないが、今は結構意図的に飾ってんじゃないか、という感じもする。うきうきしちゃうね。柏の竹やぶ以来だ、店に入っただけでウキウキしちゃうのって。
 なぜか、「apaisez le soif(渇きをいやしてください)」とフランス語でグラスビールを勧める紙が貼ってある。なぜ、フランス語? それも墨で。不思議だ…
 ここを支配しているのは、ぼくとは別の論理のような気がする。
 トイレには鍵がない。「扉を押さえながらやれってことか?」とあたりを見回すと、棒。
 その棒で扉を押さえろ、と。棒だよ。マンガじゃアトムが飛び交う21世紀なのに、棒。
棒を見て、もう何を見ても驚かないぞ、と思ったが、やはり驚いたのが座った後ろにあった、これ。「ご自由にお遊びください」って。

 どう、ご自由に遊べばよろしいのでしょうか。
 食べ終わって、店の外に出ると、正面右下に鉄道模型のディスプレイがあり、心底楽しませてくれます。

 そんな砂場とすてきな三ノ輪をもうちょっとご紹介(味の話はないのか、とお思いの方もいらっしゃることと存じますが、そいつは野暮ってもんだ)。


 ディスカウント・ストア。いろんなものがお安く売っています。もとは何屋さんだったのだろうか、いろんな店名の上に無造作にディスプレイされています。


 うそ。やってませんでした。
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