坊主の家計簿

♪こらえちゃいけないんだ You
 思いを伝えてよ 何も始まらないからね

疫癘の御文

2012年03月11日 | 坊主の家計簿
【蓮如さまはこの親鸞さまのお手紙をご覧になったに違いないです。それで蓮如さまのお手紙の中に全く同じようなことが書かれています。「疫癘の御文」というのがそうです。
「当時このごろ、ことのほかに疫癘とてひと死去す」
 はやり病いがおきてたくさんの人がバタバタ死んでいく。
「これさらに疫癘によりてはじめて死するにはあらず。生れはじめしよりして定まれる定業なり」
 死ぬべき者として生まれてきたんだ。病気にあって死んだ、戦争にあって死んだ、交通事故で死んだ。そんなことは何も死の原因ではない。原因は生まれたということである。
 我々はこんな簡単なことを忘れてしまっとるんですね。そして新聞を見ても、誰々八十何才、心筋梗塞。みんな原因として書いてあります。死因。そんなものは死の原因ではない。本当の原因は生まれたということが原因だとはっきりしとるですねえ。
 こういうことを聞くとびっくりしませんか。僕らはいかにけったいな常識の上で毎日生きとるかちゅうことです。だから、
「生れはじめしよりして定まれる定業なり。さのみふかくおどろくまじきことなり」
 その驚くべきことでもないことを、このごろあの人死んだ、この人死んだ、何で死んだ、と言ってはみな取りざたしている。驚いておる。
 なぜ驚くべきでないことを驚き、本当に驚かねばならんことを全然驚かないのか。こういうことなんですね。本当に驚かねばならないことを驚かないんです。そして驚くべきでないことばっかり驚いておる。
 そんなら本当に驚くべきことちゅうのはなんや。それは「私はどこから来て、どこへ行くのか」。「何で人間に生まれてきたのか」。「今ここにこうしておるということは、一体どういう意味があるのか」。そういうことが何にもはっきりしないまんまで生涯を終わらねばならん。これこそ驚かねばならんことですね。】
 (和田稠先生『くにのいのり』より)