エピローグ

終楽日に向かう日々を、新鮮な感動と限りない憧憬をもって綴る
四季それぞれの徒然の記。

桜が好き

2015年04月04日 | ポエム
ぼくは、まるで鈴鹿山中の山賊になったように桜を恐れる。
坂口安吾の「桜の森の満開の下」が真っ先に脳裏に浮かぶ。

而して、あの桜の見事さは「その下に肢体がうまっている」としか思えないのだ。
梶井基次郎の「桜の木の下には」が、浮かんでくる。

前者は、なまめかしく・・・後者は、透徹した感性だ。



とまれ今年は、開花宣言から満開・・・そして花散しとあっと云う間であった。







「さくらさくら都会の孤独重たくて」







桜は青空が良く似合う。
これは論を待たない。



満開の桜は、夜桜が良い。



詩的である。
その色合いが、である。

その奥深さが、である。



ぼくは、散る前に密やかに出かけた。
夜桜は、密やかにぼくを迎えてくれたのである。



闇に、光りあれと呼びかけた。
そして・・・熱あれと心から望んだのである。

桜には、それだけの価値がある。
日本人が桜を好きなのは、その神秘性からであるに違いないのだ。



       荒 野人

追記
桜の森の満開の下の梗概
「峠の山賊と、妖しく美しい残酷な女との幻想的な怪奇物語。
桜の森の満開の下は怖ろしいと物語られる説話形式の文体で、花びらとなって掻き消えた女と、冷たい虚空がはりつめているばかりの花吹雪の中の男の孤独が描かれている。」
桜の木の下にはの梗概
「桜の樹の下には屍体が埋まつてゐる!だから美しいと云うのである。
散文詩と捉えることもあるけれど、ジャンルとしては短編小説である。」

ぼくはこの二つの作品を毎春に読む。
坂口安吾と梶井基次郎の傑作である。