

5人目のヒロイン、めぐっちゃん。
05話「Dear my friend」。Friendは単数形なので、これは南極行きの仲間たちではなく、「ほかならぬあなた」、すなわちキマリにとってのめぐっちゃん、そして、めぐっちゃんにとってのキマリのことだ。
消息を絶った母に報瀬が送り続けるメールの宛名「Dear お母さん」と対になってることからも、ものすごく大切な相手だとわかる。
幼い頃からめぐっちゃんとずっと一緒だったからこそキマリは今のキマリなわけで、だからこそ彼女は10話で「友達というのはどういうものか」を結月に伝えるさい、めぐっちゃんとのメールのやり取りを、自信をもって結月に示すことができる。
05話前半の舘林・茂林寺でのシーンで、めぐっちゃんが「陰で流されている黒い噂」としてキマリに告げたのは、
資金集めのための「コンビニでの万引き」と「歌舞伎町で男の人と遊びまくっていること」の2点。
ほんとうにそのような噂が流されていたのか、めぐっちゃんが、キマリの心をかき乱すために誇張した言い方をしたのかはわからない。しかし間違いなく言えるのは、めぐっちゃん自身がそんな噂を流したわけではないということ。
めぐっちゃんがやったのは、翌朝、旅立つキマリに絶交を告げに来たときに述べたとおり、
①「報瀬とキマリが新宿に行ったこと」と「報瀬が百万円を持っていること」を学校で漏らした。
➁「キマリの南極行きの話」をキマリの母に伝えた。
これくらいなのだ。上記の噂がもし本当に流されてたとしたら、それは「尾ひれがついた」というやつである。
めぐっちゃんのしたことは、もちろん良くないことではあるが、「けして許されない」ってほどではないとぼく個人は思う。
キマリが出立する前夜、めぐっちゃんは、「南極」だの「バイトの子」だのと突き放した目で見ていた報瀬および日向とじっさいに会い、少しだけ打ち解け、さらにそのあとキマリと二人でじっくり話したことで、自分の中に渦巻いていた感情にようやく整理をつける。
自分はキマリに依存されることによって、ほんとうは、逆にキマリに依存していたのだと。それ以外に自分は何も持っていなくて、だからキマリにも何も持たせたくなかったのだと。
「ここじゃない所に向かわなくちゃいけないのは、私なんだよ。」と。
その思いの激しさと、キマリに対する罪悪感の大きさを、自分からの「絶交宣言」という形で表現せざるをえないのが、めぐっちゃんのめぐっちゃんたる所以なんだろう。
そのやり方が正しかったかどうかは正直いってわからない。ただ、その態度がきわめて真率なものであったのは確かだ。
その真率さは、11話で出てきた、日向のかつての部活仲間のへらへら、ちゃらちゃらとは正反対のものである。
あの部活仲間はたぶん、01話で報瀬にからんでいた上級生やなんかと同じく、「澱んだ水」のなかにいて、この先もずっと、「ここじゃない所に向かわなくちゃいけない」と思ったりはしない人たちなんだろう。
めぐっちゃんはそうではない。
そして、すべてを締めくくる13話のラストで鮮やかにそれを証明し、キマリとぼくたちをびっくりさせた(画像を見ながら「なんで……なんで……」とつぶやくキマリは、泣き笑いの顔だ)。
ラストシーン、キマリの「帰ったよー」に間髪入れず返ってきた即レスは、単独で、ぽんと出てきたものじゃない。空港できっぱりと別れた4人が、それぞれの帰路につきながら、それぞれに綴るモノローグのなか、
キマリ「旅に出て、初めて知ることがある」
報瀬「この景色が、かけがえのないものだということ」
結月「自分が見ていなくても、人も世界も変わっていくということ」
日向「何もない一日なんて、存在しないということ」
キマリ「自分の家に、匂いがあること」
報瀬「それを知るためにも、足を動かそう。知らない景色が見えるまで、足を動かしつづけよう」
日向「どこまで行っても、世界は広くて、新しい何かは必ず見つかるから」
結月「ちょっぴり怖いけど、きっとできる」
キマリ「だって……」
※ココに挟まれるのである。
キマリ「同じ思いの人は、すぐ気づいてくれるから」
だから、めぐっちゃんは、「同じ思いの人」なのだ。ほかの3人とはまた別の意味で、今でもやっぱり、キマリの親友なのである。