もりのさとさんから頂いたコメント。
2019/11/09
こんにちは。
よりもい論をすべて読ませていただきました。すばらしい作品論です。特に、めぐっちゃん周りの論考には深くうなずかされましたし、第8話の外に出る場面の解釈にはなるほどなあと思いました。
また、個人的結月の二大名場面(第7話の膨れるところと、第12話の「いい友だちですって!」)が両方拾われている点に非常に好感を持ちました(笑)
よりもい第11話と、HUGっと!プリキュア第31話を比較して考えたのは、わたしだけではなかったんですね。
HUGプリは楽しく視聴したのですが、eminusさんと同じく、あの話には納得いきませんでした。先週のプリキュアでも似た展開があって、ふたたび釈然としない気持ちになり、ふたたびよりもいのことを思い出してしまいましたが……。
少しだけ、訊いてみたいことがあります。
eminusさんは、第11話で、日向の悪い噂を流したのは同級生の3人だと解釈されていますが、わたしはこれ、先輩が単独でやったことだと思っていたんです。
というのも、退学に追い込むほどの悪い噂を流しておきながら(しかもそれをやったことを本人に知られていながら)、本人の前に姿を現すのは、いくらなんでも人としてありえないと考えたからです。
言われてみれば、同級生たちも関わっていたと考える方が自然とは思うのですが……このあたり、どうお考えでしょうか。
もうひとつ、最終話の、報瀬が母のノートパソコンを開く場面について「残酷」と評されているのを、少し意外に感じました。わたしがこの場面で覚えたのは、悲しみプラス安堵感、のようなものだったのです。
メールが母に届いていなかったことで、報瀬が母の死を思い知らされるというのは、たしかな、悲しいことで、一方で報瀬の送っていたものが、形として残って、母の遺品に溜まり続けていたということを、よかった、と思ったのでした。これは読み間違いなのかもしれませんが。
☆☆☆☆
ぼくからのご返事
ふくれる結月は可愛いですよね……。スタートゥインクルプリキュアで、ララが変身するとき一瞬あんな感じになるけど、あれはスタッフぜったい狙ってますね(笑)。
「先週のプリキュアで、よりもい11話およびHUGプリ31話と似た展開……」とは、10月27日放送分の38話で、ユニがアイワーンに「許す!」と真っ向から宣言したやつですよね。
あの38話を見て、「スタプリ」に対するぼくの評価は跳ね上がりました。歴代シリーズでも屈指の話数ではないか、と思いました。まあ、歴代ぜんぶ見てきたわけじゃないですけど。
当該シーンを画像付きで文字に起こしてみます(なお画像は一部順番を入れ替えてます)。
2019/11/09
こんにちは。
よりもい論をすべて読ませていただきました。すばらしい作品論です。特に、めぐっちゃん周りの論考には深くうなずかされましたし、第8話の外に出る場面の解釈にはなるほどなあと思いました。
また、個人的結月の二大名場面(第7話の膨れるところと、第12話の「いい友だちですって!」)が両方拾われている点に非常に好感を持ちました(笑)
よりもい第11話と、HUGっと!プリキュア第31話を比較して考えたのは、わたしだけではなかったんですね。
HUGプリは楽しく視聴したのですが、eminusさんと同じく、あの話には納得いきませんでした。先週のプリキュアでも似た展開があって、ふたたび釈然としない気持ちになり、ふたたびよりもいのことを思い出してしまいましたが……。
少しだけ、訊いてみたいことがあります。
eminusさんは、第11話で、日向の悪い噂を流したのは同級生の3人だと解釈されていますが、わたしはこれ、先輩が単独でやったことだと思っていたんです。
というのも、退学に追い込むほどの悪い噂を流しておきながら(しかもそれをやったことを本人に知られていながら)、本人の前に姿を現すのは、いくらなんでも人としてありえないと考えたからです。
言われてみれば、同級生たちも関わっていたと考える方が自然とは思うのですが……このあたり、どうお考えでしょうか。
もうひとつ、最終話の、報瀬が母のノートパソコンを開く場面について「残酷」と評されているのを、少し意外に感じました。わたしがこの場面で覚えたのは、悲しみプラス安堵感、のようなものだったのです。
メールが母に届いていなかったことで、報瀬が母の死を思い知らされるというのは、たしかな、悲しいことで、一方で報瀬の送っていたものが、形として残って、母の遺品に溜まり続けていたということを、よかった、と思ったのでした。これは読み間違いなのかもしれませんが。
☆☆☆☆
ぼくからのご返事
ふくれる結月は可愛いですよね……。スタートゥインクルプリキュアで、ララが変身するとき一瞬あんな感じになるけど、あれはスタッフぜったい狙ってますね(笑)。
「先週のプリキュアで、よりもい11話およびHUGプリ31話と似た展開……」とは、10月27日放送分の38話で、ユニがアイワーンに「許す!」と真っ向から宣言したやつですよね。
あの38話を見て、「スタプリ」に対するぼくの評価は跳ね上がりました。歴代シリーズでも屈指の話数ではないか、と思いました。まあ、歴代ぜんぶ見てきたわけじゃないですけど。
当該シーンを画像付きで文字に起こしてみます(なお画像は一部順番を入れ替えてます)。
アイワーンの操縦する「ロボ23号」の猛威にプリキュア勢は大苦戦。キュアコスモも追い込まれる。
そこに、ハッケニャーン師が立ちはだかる。バケニャーン(CVは同じ上田燿司さん)そっくりの容貌に、アイワーンがひるむ。
ハッケニャーン「遠い星を、見上げているばかりでは気づかぬものだ。足元の花の美しさに」
「あ」と顔を上げるキュアコスモ(以下はユニと表記)。
(ユニの脳裏の回想シーン。第20話より。
ユニ「あなたには関係ない……何も知らない他人でしょ!?」
ひかる「知らないからだよ……。だってさ……キラやば~っ!だよ。だから私は、(あなたとあなたの星を)守りたい!」)
アイワーン「なに……わけのわかんないこと言ってるっつーの……どいつもこいつも、知らないっつーの!」
アイワーン、ビームを撃つ。ユニ、間一髪で発射口を蹴り上げ、軌道を逸らす。
アイワーン「(泣きながら)許せない……許せないっつーの。あたいの居場所を無くしたお前だけは……ぜったい、許さないっつーの!」
もういちどビームを撃つ。
(回想シーン。ユニ「(怒りに燃えて)許せないニャン。みんなを……石にした……あいつ……だけは」)
ユニ「同じだ……。アイワーンと……わたし」
ユニの全身をふしぎな光が包み、ビームを受け止める。
アイワーン「なんだっつーの!?」
ユニ「わたし…… (孤児だった頃の、泣きじゃくるアイワーンの映像が挿入される)あなたのこと……傷つけてた。…………………………ごめんニャン」
驚くプリキュア勢。傍らで、ふかく頷くハッケニャーン師。
アイワーン「なに……謝ってるんだっつーの……?」
ユニ「今ならわかる……あなたの気持ち……」
アイワーン「何がわかるんだっつーの!」
ユニ「苦しかったんでしょ、アイワーン!」
アイワーン「あ……」
ユニ「わたし……わたし、決めたニャン。あなたを……許す!」
アイワーン「なんで……なんでそんなこと言うんだっつーの!」
言いながら、さらにビームの威力を強める。ユニは平然と受け止める。
ユニ「過去だけを見るんじゃなくて、前に進んでいきたい。(一歩踏み出し)あなたと一緒に。……自分だけじゃなくて、わたしは……みんなと一緒に、未来に行きたい!」
ユニの体から発した光がビームを跳ね返し、そのままアイワーンの心へと届く。ユニがオリーフィオと過ごした楽しい日々の思い出と、それを失った時の悲しみが真っすぐにアイワーンに伝わる。
アイワーン「ええっ……」
といった感じでした。朝っぱらからえらく泣かされちゃいましたけども。
ユニはアイワーンを欺き、結果として彼女の信頼を弄ぶ形にはなったけど、その前にアイワーンはユニの星を丸ごと石化したわけで、バランスシートは比較にならない。いかにユニが、ひかるたちとの交友を通して寛容さを育んでいたにせよ、ユニから先に謝るのは違和感がありますね。それはたぶんアイワーン自身もわかってて、「なに……謝ってるんだっつーの……?」「なんで……なんでそんなこと言うんだっつーの!」などと、かなり混乱しています。
そこに、ハッケニャーン師が立ちはだかる。バケニャーン(CVは同じ上田燿司さん)そっくりの容貌に、アイワーンがひるむ。
ハッケニャーン「遠い星を、見上げているばかりでは気づかぬものだ。足元の花の美しさに」
「あ」と顔を上げるキュアコスモ(以下はユニと表記)。
(ユニの脳裏の回想シーン。第20話より。
ユニ「あなたには関係ない……何も知らない他人でしょ!?」
ひかる「知らないからだよ……。だってさ……キラやば~っ!だよ。だから私は、(あなたとあなたの星を)守りたい!」)
アイワーン「なに……わけのわかんないこと言ってるっつーの……どいつもこいつも、知らないっつーの!」
アイワーン、ビームを撃つ。ユニ、間一髪で発射口を蹴り上げ、軌道を逸らす。
アイワーン「(泣きながら)許せない……許せないっつーの。あたいの居場所を無くしたお前だけは……ぜったい、許さないっつーの!」
もういちどビームを撃つ。
(回想シーン。ユニ「(怒りに燃えて)許せないニャン。みんなを……石にした……あいつ……だけは」)
ユニ「同じだ……。アイワーンと……わたし」
ユニの全身をふしぎな光が包み、ビームを受け止める。
アイワーン「なんだっつーの!?」
ユニ「わたし…… (孤児だった頃の、泣きじゃくるアイワーンの映像が挿入される)あなたのこと……傷つけてた。…………………………ごめんニャン」
驚くプリキュア勢。傍らで、ふかく頷くハッケニャーン師。
アイワーン「なに……謝ってるんだっつーの……?」
ユニ「今ならわかる……あなたの気持ち……」
アイワーン「何がわかるんだっつーの!」
ユニ「苦しかったんでしょ、アイワーン!」
アイワーン「あ……」
ユニ「わたし……わたし、決めたニャン。あなたを……許す!」
アイワーン「なんで……なんでそんなこと言うんだっつーの!」
言いながら、さらにビームの威力を強める。ユニは平然と受け止める。
ユニ「過去だけを見るんじゃなくて、前に進んでいきたい。(一歩踏み出し)あなたと一緒に。……自分だけじゃなくて、わたしは……みんなと一緒に、未来に行きたい!」
ユニの体から発した光がビームを跳ね返し、そのままアイワーンの心へと届く。ユニがオリーフィオと過ごした楽しい日々の思い出と、それを失った時の悲しみが真っすぐにアイワーンに伝わる。
アイワーン「ええっ……」
といった感じでした。朝っぱらからえらく泣かされちゃいましたけども。
ユニはアイワーンを欺き、結果として彼女の信頼を弄ぶ形にはなったけど、その前にアイワーンはユニの星を丸ごと石化したわけで、バランスシートは比較にならない。いかにユニが、ひかるたちとの交友を通して寛容さを育んでいたにせよ、ユニから先に謝るのは違和感がありますね。それはたぶんアイワーン自身もわかってて、「なに……謝ってるんだっつーの……?」「なんで……なんでそんなこと言うんだっつーの!」などと、かなり混乱しています。
いわゆる「憎しみの連鎖」を断ち切るには、明らかに相手に非があっても、こちらから折れねばならない……。それは確かにそうなのでしょうが、いかに児童向けアニメといえど、あからさまな「綺麗事」だけでは納得がいきません。
そこで、ハッケニャーン師というメンター(導き手)が作品のなかに召喚される。あのハッケニャーン師というキャラクターはむちゃくちゃ魅力的で、ぼくが見てきたうちでは、プリキュアシリーズに出てきた脇役の中での白眉ですね。
そこで、ハッケニャーン師というメンター(導き手)が作品のなかに召喚される。あのハッケニャーン師というキャラクターはむちゃくちゃ魅力的で、ぼくが見てきたうちでは、プリキュアシリーズに出てきた脇役の中での白眉ですね。
盲目の占い師・ハッケニャーン。いわゆる「老賢者」ふうの風貌だが……。
コミカルな一面も。でもたぶん、ひかるたちの緊張を和らげるためにやってるんだと思う
じつは、ユニがかつて一人でハッケニャーン師を訪ねたとき、師はユニに星読みをさせて、「皆を戻す方法はある。……星読みは嘘をつかない」と明言したうえで、「広い宇宙に出て良き仲間を見つけなさい。その仲間たちと共に未来へ歩むことが、お前の故郷の星を元に戻すことにも繋がるのだ。」と示唆してるんです。まあ、こんな明瞭な言い方じゃなく、もっともっと漠然とした、抽象的な表現で、まるで押しつけがましくなかったですけど。でも、それこそが真の助言のありかたですよね。そして占いの代価だといって、「私の代わりに外の世界を見てきてくれ。」と、ユニを宇宙に送り出す。それがユニをひかるたちに出会わせることにつながる。
「故郷のみんなを元に戻せる」という希望がなければ、さすがにユニもアイワーンを「許す」ことはできなかったろうとぼくは考えています。つまりハッケニャーン師の存在がなければ、こちらとしても、泣けもしなかったろうし、得心もいかぬままだったでしょうね。
それで、よりもいの第11話ですが。
日向の退部~退学にいたる経緯は日向じしんの口から語られるだけなので、解釈が難しいですね。彼女は自分を擁護するために嘘をついたりはしないだろうけど、なんか誤解してるってことはありうるだろうし。
でもぼくは、これは「物語」なんだから、日向の語った内容はすべて「事実」だとして考えました。
悪い噂を流したのが誰かというのは、日向の部屋に全員が集まった際の、
報瀬「どうでもよくない。だって、悪いのは完全に向こうじゃない!」
日向「人間って怖いんだよねー。それがわかってるから、なんとか私が悪いってことにしようと、部活やめたあともあれこれ噂流してさ」
といったあたりのやりとりから、先輩ではなくあの3人でしょう。先輩はたぶん、日向が退部した後は彼女のことなどまるで気にも掛けてなかったんじゃないでしょうか。6話で、シンガポール行きの飛行機に乗る前、日向はぐうぜん空港でチームメイト一行を見かけますが、あの時の先輩(後ろ姿だけど、特徴的な髪形でわかります)のあっけらかんとした態度を見ると、そう思わざるをえませんね。
でもって、3人が悪い噂を流しておきながら、いけしゃあしゃあとあの場に顔を出せたのは(まあ、テレビには顔を出せませんでしたけど)、そのことを日向がまるで知らないと思ってたからでしょう。そもそも彼女たちは、自分たちが保身のために先輩に対して日向を陥れたこと自体、日向には知られていないと思ってますから(あれは日向が部室の外でたまたま立ち聞きしたからわかったことです)。
いや……改めてこう考えると、報瀬があの場であれほどの怒りを見せたのも当然だなあと思えてきますね。あそこはやっぱり、日向に安易に「許す」と言わせないでよかったです。
「許し(赦し)」というのは物語としても、じっさいの人生においても社会においても、つくづく難しいテーマです。
もうひとつは、12話で、報瀬が「喪の仕事」を果たす場面ですね。
悲しみプラス安堵感……そうですね……。「報瀬の送っていたものが、形として残って、母の遺品に溜まり続けていたこと」については、「よかった」とぼくも思います。でも、それをああいうかたちで目の当たりにした際の報瀬の心情は、それまで自分のなかで生死の定まらなかった母が、ほんとうに眼前で息を引き取ってしまったほどのショックだったのではないでしょうか。
それがどれくらい続くものかはわからないけれど、少なくともしばしのあいだは、心が悲しみだけで塗り潰されるような情態だったのではないか……とぼくは想像いたします。でも、それはあらかじめ心のどこかですでに覚悟していたことでもあるので、傍にキマリたちだっていてくれることだし、「生」に向けての回復までには、それほどの時間はかからなかったとも思います。
あのなだれ落ちるメールは(本編でも述べたとおり)「3年にわたって止まっていた時間」が動き出すことの暗喩にもなっているので、けして後ろ向きなものではない。それは確かなことですね。
あのなだれ落ちるメールは(本編でも述べたとおり)「3年にわたって止まっていた時間」が動き出すことの暗喩にもなっているので、けして後ろ向きなものではない。それは確かなことですね。
でも、あれだけ心を込めて送り続けたにもかかわらず、それは決して貴子には届かなかった。このこともまた確かです。
「安堵」とは違いますが、パソコンの中に残されたものが「生の歓び」に結びつくということならば、日本に帰る船の上で報瀬が受け取る、貴子の遺した(そして藤堂が貴子に代わって送信した)「本物はこの一万倍綺麗だよ」というオーロラの画像付きのメールこそが、それに当たるのでしょう。
「安堵」とは違いますが、パソコンの中に残されたものが「生の歓び」に結びつくということならば、日本に帰る船の上で報瀬が受け取る、貴子の遺した(そして藤堂が貴子に代わって送信した)「本物はこの一万倍綺麗だよ」というオーロラの画像付きのメールこそが、それに当たるのでしょう。
やっぱり、キマリたちがあのパソコンを見つけたのは、本当に大事なことでした。貴子からのメッセージが、ちゃんと報瀬に「届いた」のだから。