桃井章の待ち待ち日記

店に訪れる珍客、賓客、酔客…の人物描写を
桃井章の身辺雑記と共にアップします。

2013・6・11

2013年06月12日 | Weblog
お客さんに映画人が多いこともあって新作映画のマスコミ試写会に招待されることがある。それはそれで嬉しいのだけど、困ったことも起きる。招待してくれた監督やプロデューサーは観客の反応がどうだったか不安で一杯だろうけど、基本的に称賛、出来たら絶賛の嵐を見てくれた人に求める。間違っても正直につまらなかったという感想を言われたり欠点を列挙されることを求めてない。確かにそうだ。もう映画は完成してしまったんだし、今更直すことは出来ないからだ。でも、見る者にとってはつまらない映画を面白かったと嘘をつくことは「映画鑑賞家」としてあってはならないような気がするので、知り合いの、特に店のお客さんが関係した映画の試写会に出向くのは憂鬱な気持になる。おまけに店に四時までに入らなくてはならないので、上映時間が約二時間として試写会は1時半までには始まってくれないと困るのだが、何度もこの日記で告白しているように俺は睡眠時無呼吸症候群の影響でその時間帯は一番眠りにおちやすいのだ。万が一折角招待された映画で眠ってしまったら、上映後に俺の感想を聞くために待ち構えている関係者になんて言い訳したらいいんだろと思ったりしたら、試写会開場に足を踏み入れるのがひどく憂鬱になる。でも、今日1時から見た9月公開の映画「凶悪」(山田孝之・ピエール瀧・リリーフランキー主演)は見終わった後そんな俺の心配と憂鬱を一気に吹き飛ばしてくれる傑作だった。特にリリーフランキーの演技らしからぬ演技は、一般的に演技をすく俳優たちを軽く凌駕してしまっている。こういう俳優の存在はプロの俳優たちにとってはいい意味で困った存在だろう。本当はこの映画の宣伝担当プロデューサーたちと話していきたかったが、飲み屋の親父は仕入れと開店準備をしなくてはいけなかったので早々に京橋の試写開場を辞去。店につくなり今日もまた四十人分のドリンクとフードの準備にかかる。穏やかな超市民的な顔して稀に見る凶悪な殺人鬼を主人公にした映画が突きつける主題と直後にポルトガル風玉子焼きや唐揚げを作り続けなくてはならない自分のポジションのアンバランスが精神的に混乱させる。そんな時に広尾時代T美術大の学生だったMが結婚後初めて来てくれる。この間広告代理店勤務のNさんの時もそう思ったのだが、結婚するとどうして女性はこんなに色っぽくなるのだろうと思ってしまう程にMがイメージアップしていて、今日はご主人が三時過ぎまで帰らないので2時近くまで俺と一緒に飲んでくれて、俺の精神的不安定さを慰撫してくれる。彼女が新婚じゃなかったらと一瞬でも思った俺は「凶悪」