桃井章の待ち待ち日記

店に訪れる珍客、賓客、酔客…の人物描写を
桃井章の身辺雑記と共にアップします。

2007・11・29

2007年11月30日 | Weblog
買い物に行く時間の余裕がなくて、特別食べたい物がなくて、仕方なく冷蔵庫の中の処理を兼ねて用意する食事位、ゴージャスな物はない。今日は残りの肉なしビーフシチューに卵を落しての半熟に固めたもの、塩鮭の残りと水菜の漬け物を刻んだチャーハン、昨日のパーティで残ったバケットにこれまた店から調達してきた賞味期限切れのブルサンチーズと頂き物のブラッドオレンジマーマレードを乗せたカナッペ、それにオニオンスライス中心のサラダとプレーンオムレツのソーセージ添えと目茶苦茶だけど、テーブルに並べると残り物の癖してとてもゴージャスで、自分で用意した料理ながらうっとりとしてしまう。そして夜は夜で、店の始まる前にマグロのブツを……いや、もうよそう。食べ物のことを詳しく書く時と云うのは、他に書きたい、書くことがないからだ。今日は歯医者に行った後、仕入れと銀行を済ませたら店へ行く時間になってしまって、台本の方は全く進まずだし、お客さんも近所の出版社のO君たちと夕刊FのUさん、SミュージックのIさんの四人だけだったので、ぼやく元気もなく、そして四人共穏やかなお客さんだったので特別事件もなく、店からの帰り道に雨に濡れることもなく……まぁ、そんな日もある。

2007・11・28

2007年11月29日 | Weblog
「桃井章作家復活シリーズⅠ」なんて冠をつけてしまった『コレド殺虫事件』の台本がまだ出来ない。Iさんにデザインして貰ったフライアーを店に貼ってしまって、それを見た人から予約するよなんて言われているのに、台本がまだ出来ない。まぁ、平日は食事を終えてから出かけるまでの二、三時間しか自由な時間は持てないんだから仕方ないと言えば言えるんだけど、それに今日みたいに四時には部屋を出ないといけないとなると、パソコンに向かう時間は一時間しかないんだから仕方ないだろと言い訳したくなるけど、一時間でもやらなくてはいけない。とにかくやろう。明日はとにかくやろうと自分に言い聞かせて、今日のパーティの為に一人五百円分のオードブル皿を三十人分作る。今日は『ToTo Milonga』の第一回目の集い。聞き慣れない言葉だけど、アルゼンチンタンゴを愛好する人々のパーティのことだそうで、着飾った男女がバンドネオンの音に合わせてお酒を飲みながらタンゴを踊っていた。これから半年間、毎週木曜日の八時からウチのスペースで定期的に催されることに決まったので、興味のある方は是非。それにしても昨日は落語、今日はタンゴと、ウチのイベントスペースも色々な使われ方をして来た。この傾向がもっと強くなると、ウチのスペースも活性化するのだけど。

2007・11・27

2007年11月28日 | Weblog
起きた時から熱っぽい。処が体温計で計ってみても六度五分の平熱。測り方が悪かったのかともう一度脇に挿んでみるが、熱はない。気のせいなのか?でも、食欲はない。独りでいたら食べない処だけど、一緒に住んでいる人間がいると、そんなことは許されない。スーパーで安売りしていたイカを買って来てお刺身に、それに冷や奴、サラダ、山芋、佃煮、若布の味噌汁で食事。何とか食べたものの、だるくてやらなくてはいけない雑用が捗らない。そればかりか食べたばかりだと云うのに甘いものが食べなくなる。これは俺の危険信号。疲れている時に普段は食べない甘いものが無性に食べたくなるのだ。冷蔵庫に残っていた杏仁豆腐を食べる。美味。そう感じるのはやばい。本当なら寝ていたい処だったけど、今日はTさん主宰の夢月亭清麿師匠の新作落語の独演会があるので5時に店へ。ウチのスペースが寄席に変身する面白さ。今後も機会があったら続けて欲しい。カウンターのお客さんはすき焼を食べに来た82歳の近所の会社経営者、イチゲンの女性四人組、T酒造の社長秘書Nさんと同僚三人、大手ビデオレンタル会社のF君たち、大手出版社Sの編集者SさんとAさん、近所の俳優事務所のSさん、Tさんたち、50歳になったのを機会にシルバー劇団に加入、女優宣言をして某出版社を辞めた25年のつきあいになるYさんたち、何カ月ぶりかに来店してくれたカリスマ美容師のKさんで、まぁまぁの賑わいだったけど、それでもイベント関係を除くと売上は六万程度。高校の同級生で、ウチの店の役員でもあるI君と今後の店の展望を話すが、解決策は見つからない。3時近くに閉店。まだ体がダルイ。部屋に帰ってウドンをすすって寝る。

2007・11・26

2007年11月27日 | Weblog
塩鮭、牡蠣のニンニクオリーブ炒め、オニオンスライスとちりめんじゃこのサラダ、卵入り納豆、佃煮、カブの味噌汁で食事した後、昨日までに書いた台本を検討する。一日置いてみるとやはり色々欠陥が見えてきて、どうしようか悩んでいる内に椅子に座ったまま舟を漕ぎだす。昔、年寄りって何故居眠りばかりしているんだろうと疑問を持っていたけど、自分が年寄りになってみると、よく分かる。気づいてみたら三十分も居眠りしていた。区役所の出張所、銀行に立ち寄った後、4時半に店へ。今日は劇団ギルドの公演。三年以上も続いたギルドの定期公演も今日が最後だ。高谷信之さんと劇団員の皆さん、ご苦労さまでした。観客として来ていた俳優座の女優Tさんと来年の公演について話す。時間がないけど、何とかもう一度やろうと約束する。イベントのお客さん以外は映画カメラマンのYさん、Tテレビ広報のLさんと俳優事務所社長のBさんだけで店は暇。途中で炒飯を作って食べたら、眠気が遅い、知らない間にウタタネ。駄目だ、体中が老人になっている。

2007・11・25

2007年11月26日 | Weblog
今日のイベント『和・話・輪』公演の為、12時に店へ。主宰者のSさんに照明と音響、その他注意事項を説明して帰宅。買い物して来たので食材はあるのに、頭が台本のことで占められているのか、食欲が湧かない。Mもあまり食欲がないと云うので、三種類の佃煮でお握りを作る。それに保存してあったカブと胡瓜のビール漬け、先日の残り物の中華サラダ、ソーセージ、じゃがいもとネギとシメジの味噌汁で食事。Mが店へ出た後、独りでパソコンに向かう。Mが8時過ぎに帰って来るまでの6時間、煙草と珈琲だけで集中したつもりだったが、昨日と同じで前に書いた部分を直していくことで時間をとられてしまって、結局全体の三分の一が出来ただけ。帰ってきたMといつも食べているのとは違うごった煮すき焼で食事。本当は見ようと思っていた『点と線』が昨日と今日オンエアだったのをすっかり忘れていて、後編の且つ後半部分だけ見る。ストーリーが分かっている為か、それからでも惹きつけられる。原作にない部分が魅力的だ。夜中、Mと西麻布を散歩。さすがに日曜の深夜ともなると西麻布も閑散としている。そんな街を、今、俺とMがブラブラ歩いている。それが何となく不思議だ。

2007・11・24

2007年11月25日 | Weblog
午後、芝居のチラシをデザインしてくれたIさんと待ち合わせ。面白いイラストが描かれた『コレド殺虫事件』のチラシを渡される。仕事だと諸々の条件がある故に、この程度で合格点かと思えるそうだが、今回のデザインは手弁当であるが故に、そしてこっちから殆ど条件をつけることなく、Iさんの好きなようにデザインしてくれていいと言われた故に、逆にキリがなく、何処までやったら自分で合格点が与えられるのか分からなくなってしまい、この二日間、殆ど眠れなかったとかで、かなりの憔悴状態。ホントだったらビールで祝杯を上げたかったが、倒れてしまう可能性がありとかで、ハンバーガーとオレンジジュースで労をねぎらう。帰宅して、チラシの校正、それに纏わるいくつかの連絡をした後、チラシの原案を壁に貼って、それからプレッシャーを貰いつつ、台本の執筆。昨日書いた処が気に入らずに書き直したりしていたもんだから十時までにペラ40枚しかいかない。何とか今日中に半分はと思っていたら、制作会社AのプロデューサーKさんとOさん、そして脚本家のKさんたちが俺に会いたいと云っていると店から電話があったので、台本執筆を断念して店へ。結局そのまま3時過ぎまで。お昼のハンバーガー以外、殆ど何も食べてなかったので、コンビニでお弁当を買って帰宅。桃井章らしくない貧しい食生活だけど、今の俺は食い物より作品だ。

2007・11・23

2007年11月24日 | Weblog
今日から三日間、土曜日は営業するし、日曜日はイベントがあるけど、世間は三連休らしいので、土日の店はTちゃんとMに任せて、俺は久しぶりに作家に戻り、一月末に公演予定の芝居『コレド殺虫事件』の台本執筆の為、部屋に籠もる。徹底的にバカバカしい風刺喜劇を書きたい。今までのドラマツルギーにとらわれることなく、こんなの芝居じゃない、ドラマじゃないと言われるような台本を書きたいと思ってパソコンに向かうが、根が真面目がもんだから、書いていて、ついつい違和感に襲われ、キィを叩く指が止まってしまう。それでも気を取り直して、午後から始めて夜中までにペラ20枚。目標は40枚だったから半分しか出来なかったことになる。明日その分取り戻そう。それまで一歩も外に出なかったので、1時過ぎにMと一緒にラーメンを食べに行く。Mはこってり豚骨ラーメン、俺はあっさり醤油ラーメン。フラッと入った店だったのに、極上の味。こんなことで、ちょっと幸せ。

2007・11・22

2007年11月23日 | Weblog
今日来店してくれたお客さんは、某官庁のNさんたち3人、常連の演出家Sちゃん、映画評論家で映像作家でもあるOさん、近所の高級ブティックのオーナーのEさんとSさん、高級Yシャツ職人のIさん、ベテラン俳優のKさんと奥さんのHさん、消化器ドクターのHさんと女友達のMさん、法律事務所勤務のNさん、イチゲンの2人組、それに用事を頼む為に読んだ大学生のTとその友達の、合計17人。売上は5万円弱。連休の前の日だと云うのに、こんな売上しかあげられないなんて、ウチの店は飲食店として失格の烙印を押されたようなもんだ。今日だけじゃない。昨日はお客さんが5人で売上が3万弱、一昨日もパーティを除くとお客さんは6人で売上は2万強、一昨々日は……もうよそう。やって行ったらキリがない。今年はイベントやパーティがなかったら、一日の売上が3、4万なんて日はザラだ。どうしてこんなことになってしまったのか、幾つも原因はあるのだろう。複合汚染なのだろう。そして来年からは今日まで店を支えてくれたTちゃんもいなくなるし、このままでは更に低落傾向は加速するだろう。何か起死回生の策はないものか?

2007・11・21

2007年11月22日 | Weblog
その人は7時前に店に来て、10時過ぎに次のお客さんが来るまで一人きりで飲んでいた。最初は共通の知り合いの話で場を持たせていたが、それもすぐ尽きる。何を話そうか困っていたら、その内、結婚とか家族の話になって、その人の奥さんが痴呆症に罹って入院中であることを話し始めた。困った話題になったと思った。どう慰めの言葉をかけていいか分からない。早くその話題が終って欲しいと願った。処が、話を聞く内、その人の苦しみが普通の闘病患者を抱えている家族とは比べ物にならない程、深い物だと思い始める。奥さんが最初に痴呆症だと分かって入院したのは、44歳の時だと云う。高校生の娘さんと中学生の息子さんのいい母親であり、その人にとっても最高の妻だったそうだ。それが、段々と夫のことが誰だか分からなくなり、娘や息子さんのことも識別出来なくなる。原因が分からないから治療の方法もない。治る見込みもない。死期が迫っているなら、分かっているなら、それまでの限られた時間に愛情を深めることも出来るだろう。でも、その人の妻は生きている。自分が誰だか分からず、家族が誰だか分からず、精神病院の一室でただ生物学的に生存しているだけの存在だ。そんな妻に生きながらの別れを告げなくてはならないその人の気持ちはどれほど辛かったことだろう。その人はカウンターの隅で淡々と妻の病状を語り続ける。俺はカウンターの中にいるMを見ながらその人の話を聞き続ける。俺の目はいつしか涙で潤み始めていた。

2007・11・20

2007年11月21日 | Weblog
TちゃんとMが人妻になって、店のコンセプトを「若妻バー」にしようなんて冗談っぽく皆で喋っていたけど、Tちゃんが妊娠して店を辞めてしまうとなると、爺さんマスターと若妻ママの「夫婦バー」と云うことになってしまって、何だか浪速の喫茶店みたいでパッとしない。それにいくら夫婦で頑張ろうとしても、パーティやイベントがあったりすると、二人ではどうにもならないし、何とかTちゃんの替りを探さなくてはならないのだけど、夫婦でやっている店で働くのって難しいし、そう簡単にスタッフは見つからないだろうと思うと憂鬱になる。気持ちばかりか顔まで憂鬱げになって4時前に店へ行き、常連の女性ライターSさん主催のパーティの準備にかかる。どう云う訳か、パーティがある時はカウンターのお客さんが少ないと云うジンクスがあるのだけど、今日もジンクス通り。近所の制作会社DのKさんたち、遅い時間に近所のカナダ人が四人、それにイチゲン客が二組で合計8人だけ。店に入る時も憂鬱な顔をしていたけど、出る時も憂鬱な顔。