桃井章の待ち待ち日記

店に訪れる珍客、賓客、酔客…の人物描写を
桃井章の身辺雑記と共にアップします。

2009・3・29

2009年03月30日 | Weblog
Mは歯の奥か顎が痛みが昨日から続いて、物が噛めないというので、第一食は夕べの鍋の残りで雑炊を作るが、豆腐や米粒などでも喉の通りが悪いらしく、汁だけをお代り。お腹が減っているのに食べられない欲求不満を解消する様に、テレビの再放送でやっていた「大食い女王決戦」を見る。俺もくだらないドラマを書いていたかも知れないけど、このくだらなさ、バカバカしさはなんだろう。若い女の子が一時間にオムライスを三十皿食べる、同じく石焼きビビンバを二十皿食べる、そんなことを競う番組を企画したり、徹夜して編集したりしているなんて、いい大人のすることじゃないと思うのは、丘にあがったカッパの僻みか。(因みに夜もテレビを点けたら同じメンバーで決勝戦をやっていた)折しも番組改編の春、ドラマ枠が少なくなり、制作予算が大幅にカットされているとか。テレビは今まで俺が何十年も親しんできたテレビジョンじゃなくなるかも知れない。まぁ、そんなことは丘にあがったカッパが偉そうにいうことではないから、机の上にたまった請求書と書類の処理に休日の時間を使う。株主総会の報告書も書く。ゴールデンウィークに店内を改装するので、その為の資金を手当てする為に国民金融公庫への貸し付け依頼の書類も作る。「大食い女王決戦」を見て、テレビを憂いている時間など俺にはないのだ。

2009・3・28

2009年03月29日 | Weblog
Mが都合で店を休むことになったので、5時に一人で店へ出向く。スペースをレンタルしていたT君たちが残って飲む可能性があったので、急いで準備にかかるが、T君たちはそのまま解散してしまったので、後はのんびり開店準備を終えて、カレールー作りにかかる。7時近くに公演予定のUさんたち三人が見学に来店。何とか公演を決定して貰いたく、懇切丁寧にスペースの宣伝に努める。8時前、人妻Iちゃんがワイン会の帰りに来店。入れ違いにUさんたちが帰ったので、人妻と二人きりでしっぽりワインを飲む。普段はMとばかり話しているIちゃんも俺しかいないとなると、俺と話すしかなく、他のお客さんの噂話から始まって夫婦間の真面目な話まで、かなり濃密な時を過ごすことが出来た。十時近くにバトンタッチする様に友人の結婚式帰りのSミュージックのIさんが来店。Iさんとも二人きりしかいないので女性感から結婚論までかなり真面目に話す。更に店に置いてあった発刊されたばかりの川柳雑誌をめくりながらの人生論。12時近く、他にお客さんが来そうにないので、Iさんが帰るのを見送りがてら看板をしまう為に表に出る。目の前の乃木神社の櫻が咲き始めている。毎年ながらウチの階段を登った先に飛び込んで来る櫻模様はホント素晴らしい。

2009・3・27

2009年03月28日 | Weblog
今日は初めて来店されたお客さんが三組もあった。まず最初は入って来るなり「すき焼き屋は何処?」と聞いてきた中年男二人組。表の「すき焼き千二百円」という看板を見て入ってきたものの、普通のバーとしか思えない店構えを見て、違和感を覚えたのだろう。でも、成り行きですき焼きを食べてみて「結構いけるね、このすき焼き」と満足してくれたみたいで、本当はすき焼きだけ食べるつもりが焼酎を二人共三杯お代りしてすっかり「バーの客」になっていた。二人目は近所で生まれて近所に今も住むSさん。前から通りがかる度にウチの店のことは気になっていたとかで、今日は勇気を出してドアを開けたとのこと。隣に座った俺にお近づきの印にとウイスキーを二杯も御馳走してくれて、ついでにすき焼きと残りの汁で作る「カレー風味すき焼き味ビビンバもどき」まで食べて、すっかり馴染んで行ってくれた。そして三組目は、表の看板を見て迷っている処をベストワンのOさんが「客引き」してきてくれた若いカップル。常連客が殆どの店の雰囲気に圧倒されつつ一杯ずつしか飲んでくれなかったけど、またゆっくりきますと言って帰って行ってくれた。そんな初めてのお客さんたちを見ている内に、今週は月金五日間皆勤賞の「偉業」を成し遂げたベストワンのOさんが去年の暮れに初めてウチの店に来た時のことを思い出す。その時は今と違って借りてきたネコみたいだった、と書きそうになったけど、Oさんは最初からまるで開店直後から通う常連客みたいな顔をしてウチの店に馴染んでいた。今日の三組のお客さんがベストワンは無理でもベストツー、ベストスリーのお客さんになってくれることを願おう。それにしてもSさんもOさんも米粒一つ残さず食べた「カレー風味すき焼き味ビビンバもどき」はホント美味しい。

2009・3・26

2009年03月27日 | Weblog
午後一番で、昨日気胸で手術をした息子を見舞う為、秋葉原にある三井記念病院に出向く。肺だけじゃなく心臓にも穴が空いていたとのことで、手術は長時間かかったらしく、ベッドに横たわる息子は俺の顔を見てもグッタリとしている。話すのが辛そうなので、30分程何も喋らず傍にいただけで病室を後にする。そこに偶然、息子と同い年で、女性編集者Yさんの息子のT君から電話。就活の一環で、仲間同士で模擬面接をしたいのでウチのスペースを借りたいとの由。パイロットになりたいという子供の頃からの夢を後一歩で実現できそうな彼の弾んだ声と、同い年で病院のベッドでグッタリとして話すのがやっとの息子の声が、俺の中で複雑に絡み合う。電気街で月末のパーティの為に保温の効く大人数用の珈琲メーカーを買って五時半に店へ。直後からスピーカーの修理にきたAさんと六月に公演予定の俳優のYさん、そして今月末に公演するAさんたちが見学にきたりして店がバタバタ動きだす。更に美術デザイナーのHさんが店内改装の打ち合わせに。店が生き残る為に百万円かけることを決意。それはいいけど、その百万円をどうやって工面するかは未解決。そこに出資者の一人であるTテレビのLさんが来店。社員総会で社長を前をしてTテレビを盛り上げる唄を歌うことになったとかでイベントスペースでリハーサルを始める。息子の病状と百万円の工面をあれこれ考える俺の耳にLさんの歌う津軽海峡冬景色の替え歌が、♪大丈夫、大丈夫、何とかなるわよと聞こえた気がした。それにしても今日は盛り沢山の日だ。それからも今週今日で四日連続来店となるベストワンのOさん、ベテラン新劇俳優のKさん、独特の演劇活動を続ける劇団Rの女優Aさん、近所の出版社のO君、最近完全な常連となったプロデューサーのKさん、撮影が終わって二週間ぶりの来店となる常連の演出家Sちゃん、某ソニーレーベルの社長のXさんたち、Tテレビの演出家Oさんと女優のKさん、改装の打ち合わせが終わったHさんが呼んだ映画プロデューサーのWさん、冒頭に書いたT君とその母親のYさんなどでカウンターと控室はギッシリ。それぞれに人間模様があって、俺の頭の中は今日一日だけでドラマの宝庫となった。

2009・3・25

2009年03月26日 | Weblog
この日記を書き始めてから、昨日ほど書くのに苦労したことはなかった。多分花粉症のせいだと思う。起きてすぐはクシャミと鼻水、おまけに頭がボウっとして集中力がなくなっていて、何を書いたらいいのか全く思いつかないのだ。一時間ほどパソコンに向かっていたけど、一行も書けなかったので諦めて、買い物に出かけて食事を作る。サバの味噌煮、チンゲンサイのニンニク炒め、卵入り納豆、韓国海苔、穴子だしの澄まし汁。食事が終わった後、あるお客さんについて書こうと思ってパソコンに向かう。出だしはよかった。数行スラスラ書けた。でも、そこまで。またクシャミと鼻水に襲われて、中断。仕方なく経理事務を先にやることにする。こっちも数字を間違えないようにしなくてはいけないが、慎重に電卓を叩く指さえしっかりしていればいい。でも、やっぱりクシャミと鼻水で慎重さが欠如したのか、何度計算しても9千円ジャスト現金が足りない。原因を色々探る。薬のせいで頭がボッーとしているから馬鹿げた再現映像が次々出て来る。俺がお釣りを渡す時、千円札の代わりに一万円を渡してしまったとか、会計をする時に本当は一万三千円なのに何故か四千円しか貰わなかったりとか。そんな無為な時間を過ごしていたら携帯がなる。明日タイ料理のイベントをやるYさんからだ。明日?何言ってるの?イベントは今日よ!携帯の向うでYさんが叫んだ。どうやら俺は今日が25日じゃなく24日だと思い込んでいたみたいだ。でも、そんな言い訳をしている時間はなかった。Yさんがもう店の前で待っているので髭も剃らずに部屋を飛び出した。全ては花粉症のせいだ。何とかイベントの準備は時間内にすることが出来たけど、万が一これが遠くにいたりしたらどうなったんだ?と思ったりすると、寒けがする。花粉症は人類の、いや少なくとも桃井章の敵だ。という訳で、イベントが何とか無事に始まったので俺とMは安心して厨房でニンニク唐がらしたっぷりの蛸のペペロンチーノを食べる。美味いっ。我ながらこれは絶品だなんて至福の時を過ごしている途中で日記をまだ更新してないことを思い出す。やばいっ。絶品+至福を捨てて、携帯で日記を書き出す。でも、これがまた一苦労。只でさえ携帯でのメールは苦手なのに、携帯が数日前に壊れてしまって新しく買い換えたもんだから微妙にキィの位置が違っていたりして、時間がかかること、かかること。途中まで書いたあるお客さんのエピソードは長くなりそうなので中止して、とりあえず今日は昨日のWBCのことでお茶を濁してしまう。それでも一時間強。カウンターにお客さんがいなくて今日の場合はホッとした、なんて強がりでも書ければいいんだけど、気づいてみたら美人OLのJちゃん、悠々年金生活のSさんと某大使館勤務のSさん、それにベストワンのOさんとAさんしかイベント以外のお客さんはいなかった訳で、クシャミと鼻水は止まったけど、かなりの脱力感。こうなったらエネルギーを補給しようと、深夜なのに部屋で明日食べる筈だったステーキをニンニクを一杯使って焼いて食う夫婦。それにしてもそれにしても、お昼のチンゲンサイのニンニク炒め、夕方の蛸のペペロンチーノ、そして夜中のニンニク一杯のステーキと、俺とMはよくニンニク食う夫婦。

2009・3・24

2009年03月25日 | Weblog
WBcは日本が韓国に延長戦の末勝つ。日本人として且つイチローのファンとしては喜ぶべきなんだろうが、かなり醒めた気持ちになってしまったのは、昨日も書いたけど、背後で蠢くテレビ局と広告代理店の存在とごく自然に生まれてしまうナショナリズムって奴が俺の中で引っかかっているからだ。現に今まで野球なんかに関心を全く持たなかったMまでが俺にルールを聞きながら日本に点が入ると興奮している。今日来た過激派的左翼の映画監督Fさんも韓国なんかに負けてたまるかなんて台詞を平気で吐く。これじゃ何かあったら戦争なんか簡単に起きてしまう。ひねくれ者と謗られようとここは一つナショナリズムなんかくそくらえとほざいておこう。

2009・3・23

2009年03月24日 | Weblog
朝起きてTVを点けたらWBCの中継をやっていたので、つい見てしまう。結果は9対4で日本がアメリカに勝つ。これで決勝戦は日本対韓国。日本と韓国の実力が伸びていることは間違いないけど、アメリカはメジャーリーグ開幕直前ということもあってオールスターということではなかったみたいだし、これじゃ世界選手権というよりアジア選手権みたいだ。何だかこの大会の背後ではスポーツを金儲けにしようとしている広告代理店や日本のテレビ局がウロウロしているようで、何だか純粋に応援できなくなった。六本木と赤坂で仕入れして六時には開店。今日は今月四回目になる劇団コラソンの公演。観客数はずっと30人前後で、出演者が多い割には少し苦戦中だ。残りは後一回。ドッとお客さんが押し寄せるのを期待しよう。他にお客さんはBS放送のSさんたち、金曜日に引き続き来店してくれた近所のKさん、某国営放送局のIさん、旅行代理店のKさん、先週は一度も出席しなかったベストワンのOさん、映画監督で教育評論家のHさんたち、SミュージックのIさんとOさん、他にイチゲンのお客さんなどでまぁまぁの賑わい。三時に閉店。花粉症はまだ猛威を振るっていて、食欲もすっかり衰えていた為、部屋でうどんを作って食べるのがやっと。




2009・3・22

2009年03月23日 | Weblog
花粉症がひどい。眼がかすみ、鼻水は垂れっぱなし、クシャミが連続する。鼻水をかむのもクシャミも体力を消耗するのか、朝からぐったりしている。薬のせいか喉が乾くし、頭はボッーとしている。こんな日は食事を作る処か、食べる気もしない。Mも食欲がないみたいなので、彼女の好きなピザを取ったが、そのピザが不味いのか俺の舌が麻痺しているのか、美味さを感じられない。無理やり一枚2500円のピザを喉に押し込む。後はソファにゴロッとなってテレビを見るが、東京マラソンはバラエティ番組みたいで見る気はしないし、ひかりテレビで「クロコダイルダンディ」を見ることになったが、途中で夢の世界の方が面白くなってチャンネルを変えてしまう。起きたのは六時過ぎ。折角の休みだし、何処かへ出かけようと思ったけど、天候も体の具合も悪いので、その意欲は消滅。残り物の焼きそばを作って食べる。テレビは夜になってもつまらない。12chの家族交換物をダラダラと見る。途中で「釣りバカ日誌17」にチャンネルを変える。ハマちゃんスーさんは殆ど出てこないで、ゲストの石田ゆり子と大泉洋と片岡鶴太郎の話ばかり。これじゃハマちゃんスーさん物語じゃない。寅さんの時も思ったけど、こういうのって、いいのかね?体調がよくないので精神状態も悪くなってしまってそう思うのか?このシリーズの第一話に脚本として名前を連ねている俺としては複雑な思いだ。そんなことをぶつぶつ言いながら珍しく二人で部屋でお酒を飲みだす。肴は賞味期限が切れた鰺の干物、一週間前に作った肉じゃがの残り、一ヶ月前にYちゃんから広島土産として貰った穴子の燻製で、ビール、ワイン、日本酒と結構飲み続けるが、いつもより酔わない。1時からひかりテレビでやっていた「リトルチルドレン」を大して期待せずに見る。処が3時半近くまで席を立てない程の面白さ。こういう非ハリウッド的映画をみるとアメリカ映画も捨てたもんじゃないと思ったりする。一日の最後に得した気分になれてよかった。

2009・3・21

2009年03月22日 | Weblog
三連休なのか飛び石連休なのか、とにかくその谷間の土曜日の今日、お客さんは当然望み薄。こういう日は本でも読んで時間を潰すしかないと、俺は途中まで読んでいた佐藤優著「交渉術」の続きを読む。前にも書いたけど、この佐藤優さんという人、肩書が「起訴休職外務事務官」とあるように殆ど国策捜査で起訴され、最高裁の判決が出るまでの間、外務大臣から登庁を禁止されたので、給料を貰いながらその被告という身分を続けているしたたかな人だ。彼のことを注目したのは処女作である「国家の罠」を読んでからだ。彼の本でそれまで胡散臭く思っていた鈴木宗男という政治家の凄さを知った。「交渉術」をちょうど読み終わった頃、フラッとイチゲンの中年カップルが入って来た。話す内に北海道の中標津から新国立美術館の展示をわざわざ見に来た帰りにウチの店に寄ってくれた御夫婦と分かる。何かの本でウチの店のことを知ったとのこと。中標津が鈴木宗男議員の選挙区だと知っていたので、地元での評判や彼と佐藤優さんとの関係など話しだす。お二人とも鈴木宗男議員のシンパみたいだったので、帰り際には俺が読み終わったばかりの「交渉術」をプレゼントしたりして、ちょっといい「夫婦歓談」が出来た。イチゲンではないけど、遅い時間に入ってきた近所の若い女性Kさんは一人できたのは今日が最初。この店を作った経緯や芝居やシナリオのことを色々聞いて来るので、調子に乗って喋ると、凄く受けてくれるので、更に調子に乗って喋る。帰る時には月曜日も来ますと言ってくれた処をみると、ウチの店が気に入ってくれたみたいで、ホッとする。他にお客さんはSミュージックのIさん、会社経営者のBさんたち、五月にやる公演の会場見学に静岡からきたステージ97のHさんたち。連休の谷間にしては面白いお客さんに恵まれて、いい土曜日となった。

2009・3・20

2009年03月21日 | Weblog
午後、秋葉原にある三井記念病院に気胸で入院している息子を見舞いにいく。大学の健康診断で肺に穴が空いているのを発見されたとのこと。就活も中断、命に別状はないとはいうものの、手術を来週に控えて、さぞかし落ち込んでいるだろうと思いきや、予想に反して案外元気でホッとする。髪の毛が短い上に立っていたので、入院中に長く伸ばして今どきのヘアスタイルにしないと就活に不利だぞとアドバイスしたら、俺の髪の毛は硬くて、長く伸ばすとまとまらないというので、触ってみる。するとホント硬い。俺の毛は柔らかいのに、ホラ、触ってみろと頭を差し出して息子に髪の毛を触らせる。ホント、柔らかいねと息子。息子と「肉体的接触」を持ったのは十五年ぶりだ。お見舞いを何にするか分からず、手ぶらできたので、帰りに五千円渡す。一万円じゃなく五千円という処がお父さんらしいと息子が目で言ったか俺が勝手に思ったか?別れた奥さんのYさんが5時過ぎに来るというので、会うべきか会わざるべきか迷ったけど、俺とYさんのツーショットは息子がどちらにも気を使うことになって嫌がるので、その前に病院を立ち去る。秋葉原の街は祭日で賑わっている。その中を俺は意味もなく歩く。たった30分の息子との面会が俺の心を複雑なものにしている。彼が生まれてから離婚するまでの八年間の濃密な時間が一枚一枚スチール写真で何十枚も去来する。一枚一枚が愛しい。脳裏に思い浮かぶスチール写真から息子の声さえも聞こえて来る。でも、俺はその写真を捨てたのだ。捨てたからこそ今がある。そう自分に言い聞かしながら歩き続ける。街はもうとっぷり暮れている。そして俺はいつの間にか秋葉原からお茶の水へ、そして神保町、九段下を経て四谷まで歩いていた。