桃井章の待ち待ち日記

店に訪れる珍客、賓客、酔客…の人物描写を
桃井章の身辺雑記と共にアップします。

2006・7・30

2006年07月31日 | Weblog
梅雨明けして夏が到来した日の午後、朝昼兼用の食事に鰺の干物と昨日買ったレバーの塩焼きの残りをゆで卵とオニオンスライスでサラダ風にしたもの、それに冷や奴を食べようと準備している内に、突然冷や奴をやめて湯豆腐を食べたくなってしまった。多分野菜室に白菜と春菊と椎茸が残っていて、ネギもあったから単純な連想が働いてしまったのだろう。そう思ったからには、夏に湯豆腐なんか食べて何が美味しいんだ?と云う反論は俺の中で簡単に撤回される。食べたいと思ったことが最優先だ。開店直後、シナリオを勉強しているMさんと云う女性が俺と店の噂を聞いてわざわざ訪ねてくれる。しばらくして別のシナリオ塾出身のMさんも来てくれる。二人のMさん共、俺と話すことで何か得ようとしているんだなと思うと、もうシナリオ界からは足を洗ったと云うのに、まるでシナリオ学校の先生みたいに喋り続けてしまう。この場合も飲み屋の親父の癖して偉そうに先生やってるんじゃないよと云う非難中傷は、俺の中で一蹴される。その時その場でその人に喋りたいと思ったことが最優先。梅雨明けの湯豆腐もバーカウンターでのシナリオ教室もしばらくすると後悔してしまうんだけど、俺は後悔人(びと)よりも欲望人(びと)でありたい。昨日会ったばかりのSちゃんに今日も会いたいなんて熱烈メールを送ったのに、返信はない。もうすぐ59になると云うのにみっともない限りだけど、そんなメールを送れたことを誉めてしまう俺ってなんだ?

2006・7・29

2006年07月30日 | Weblog
朝八時起きで九時に店へ。八月オープン予定の『桃井章の部屋』を作る為に、閉店する広尾のKさんの店から棚やカウンターを運んで来る。まだ色々揃えなければならないけど、実際に仕切りをおいてみるといよいよだと云う気持になる。買い物して一旦帰宅。鶏レバーの塩焼き、ホタテをメインにカイワレ大根と茗荷と胡瓜の千切りとシソのお刺身サラダ、とろろ芋、50%オフで買った白菜の漬け物、同じく塩辛、油揚げと三つ葉の味噌汁で食事。3時に再び店へ出向き、リハ中の西沢利明さん、こばやしあきこさんに加えて、その芝居で笙を演奏してくれる東儀雅楽子さんと打合せをした後、4時に近所のサブウェイでLちゃんTちゃんと8月からの営業形態、勤務体制などについて話し合い。Mちゃんの体調問題も含めて色々問題は残っているけど、とりあえず8月1日からスタートすることにして、再び帰宅。パソコンに向かってメニューの改訂作業を始める。けど、これが面倒くさい。仕入れ価格が二年間の間に変動したりしている為、一々仕入れ伝票をチェックして値段を決めて行かなくてはならず、二時間ほどでダウンしてしまう。そんな時、去年S女子大を卒業して幼稚園の先生をしているOから電話があったもんだから、渡りに舟とばかりに街に出て行く。二時間程お茶とお喋り。本当なら店に来て貰いたいところだけど、お酒が飲めない彼女にはバーの敷居はなかなか越えにくいらしく、いつもこんな形で会うことになってしまう。でも、近い内に絶対店へ行きますからと帰って行くOを見送って店へ。お客さんは近所の常連Nさん、京都人脈のU君、それに隅田川花火大会から浴衣姿で来店したGテレビのSさんだけで静かだったけど、12時近くにウチの店の元店長M君が女友達五、六人と来店して一挙に騒がしくなる。俺もその雰囲気に馴染むべく飲みだして一緒に騒ぐ。それでも一人抜け、二人抜け、気づいた時には俺とお喋りに夢中になっていたSちゃんしか残っておらず、まだ喋り足りなさそうにしている彼女を強引に近くのラーメン屋に誘って店を出る。もう四時近く、夜明けのニンニクチップ入りモロヘイヤラーメンと餃子とモツ煮込みと角煮は胃にこたえる筈なのに、どんどん食が進む。

2006・7・28

2006年07月29日 | Weblog
Mちゃんが病気で、Tちゃんが休みの為、五時から久しぶりにLちゃんと二人で働くことになる。考えてみればTちゃんが来る一年前までは泣いても喚いても二人きりだったし、Mちゃんが来るまでもTちゃんが休みの日はそうだったし、普段だってTちゃんたちが帰った後は閉店まで二人でいるんだから、特別なことじゃないんだけど、早い時間から二人きりでいることが何だか妙に新鮮に思える。売れてしまった漫才コンビがそれぞれ単品で仕事をするようになって、久しぶりにコンビを組んで漫才をやるようなものか?でも、この相方、昔は俺が書く台本通りに動いていたのに、自分一人でやっていけると自信をつけてしまった今は、逆にLちゃんのツッコミに俺の方がタジタジになって、うまくボケることが出来ない。Tちゃんとのコンビネーションの方が俺から見ても面白い。俺が入るとつまらなくなる。そう思って身を引く気になった……なんて書くと哀れっぽいけど、八月からカウンターはLちゃんとTちゃんに任せて、俺はイベントスペースに『桃井章の部屋』と云う値段もサービスも全く違う別の店を作って、トイレに行く以外はカウンタースペースには立ち入らないことにした。「階段を降りると二軒の店があって、気分によってどっちに入るか決めて貰って、時間とお金の余裕があれば店をハシゴ出来る」をウリにしたこの企画、もうすぐスタートです。

2006・7・27

2006年07月28日 | Weblog
七時過ぎ、部屋で企画書を書いていたら、Tちゃんから電話でMちゃんが腹痛を訴えて控室で寝たまま起き上がれず、呼吸も荒げていると云う。素人判断で手遅れになってはいけないので救急車を呼ぶことを指示して、俺も店に急ぐ。病院へはTちゃんに付き添って貰ったが、なかなか連絡がなくて心配する。10時過ぎやっと電話がある。腸炎に過呼吸症候群を併発しているとか。入院する程のことではないらしいが、これで二度目の発作だ。4月に親しい知り合いが一人もいない東京に出て来て、そのままウチの店に勤めることになったMちゃんにとって、業界関係者や強烈な個性を発揮するお客さんの多いウチの店は刺激が強すぎたり、何もかも分からないことばかりで、ストレスがたまっているのだろうかと本当だったら感じなくてもいい責任を感じてしまう。相手はまだ十代の女の子だし、あまり親身になりすぎるのも問題だけど、店の経営者というより一人の大人として、どうMちゃんに対処したらいいのか悩む。そんな騒ぎがあったこととは関係ないだろうけど、お店にお客さんが入ってこない。マネージャーのMさんがあまりの暇さに帰るに帰れず一人残って、気づいてみたら三時過ぎ。店を出た後、俺は先に帰ったけど、LちゃんやTちゃんと一緒にMさんは西麻布のバーをめざす。明日も朝から仕事がある筈なのに、タフな女だ。

2006・7・26

2006年07月27日 | Weblog
真っ白なお皿にカイワレ大根を一杯敷きつめて、そこに麻布あたりで美味しさで有名な絹ごし豆腐を真四角に切って置いて、茗荷と生姜と紫蘇の千切りをパッとかける。その間にガスにかけておいたヤリイカの煮つけも皿に盛りつける。納豆は今日はあくまでシンプルにネギのみじん切りを加えただけ。そして味噌汁はシメジ。それだけでも第一食としてはまぁまぁだったけど、更に韓国海苔と玉子焼きとなすの浅漬けを添えて俺は満足してテーブルにつく。1時前に店。『太宰治のお伽草紙』のリハが行われている間にフライアーの原案を作り、終了後、西沢利明さんを太宰治に見立てての写真撮影。西沢さんと太宰治は雰囲気がよく似てる。6時過ぎ近所のレストランバーへ。先日そこのオーナーがウチの店に来てくれた返礼。こうした近所つきあいも大切。少し酔っぱらって8時過ぎに再び店へ。I君たち脚本家教室の生徒たち、近所の常連Nさんと同じく美人姉妹の姉Aさん、大阪の女性プロデューサーTさんたち、俳優事務所のAさんたち、某国営放送局のSさん、テレビAのプロデューサーKさんとSさん、国際派弁護士のSさんたち、そして最後は日比谷の映画興行会社の総支配人Tさんたちが四時近くまで。その間に今日は何故かMやOやYたち、しばらく会ってない女友達からの長文のメールが届く。みんなメールでは俺に会いたいと書いて来ている癖して、こうしてメールでご無沙汰を済まそうとしているのではないかと僻みっぽい返信を三人に送る。どうして俺には若い女性相手に拗ねたり、僻んだりする能力があるんだろうか?

2006・7・25

2006年07月26日 | Weblog
昨日買い物をすることが出来なかったので、米がない。何だかひどく貧乏になった気がする。パスタや蕎麦はあるけど、朝からめん類と云うのもちょっと気が進まない。どうしようか迷っている内に店へ鍵を開けに行く時間になってしまったので、少し早く出て店ですき焼と納豆とカブの塩揉みと水菜の味噌汁を作って食べる。『太宰治のお伽草紙』のリハが始まる前に西沢さんと若干の打合せして、帰宅。数日前から帳簿と現金残高が合わなくなっているので、お金の出入りをチェックしてくれているI君に電話したりして原因を探る。しばらくして原因が分かってホッとする。お金が合わないと何だか会社の金を横領しているみたいで嫌な気分になる。給料計算をして銀行へ。預金残高は減ってしまうけど、25日に給料が払える幸せは零細企業の経営者じゃなくては分からない幸せだろう。忘れずに米を買って帰宅。早速炊いて真っ白なご飯を食べようとしていたら、炊き上がる寸前にS女子大の院生Hから電話で相談があると言われて、西麻布のカフェへ。相談は艶っぽい話ではなくイベントのこと。最初会った時はまだ子供だったHと町おこしの話をするなんて、時は人との関係を変える。8時半、店へ。イベントスペースにWさんたちが10人のグループで、カウンターには俳優事務所のAさんたち、美容師のKさんたち、しばらくしてS出版社のSさんが文芸誌S編集部員のIさんと、脚本家兼プロデューサーのAさんが一人で、他に法律事務所勤務のNさん、京都人脈のU君、近所の常連Nさんなど。暇だったせいもあってAさんと10時過ぎから2時まで映画談義。過去の日本映画の台詞まで覚えているAさんに比べて、俺は何と貧弱な映画体験をして来たのだろうと今更ながら思い知った四時間。でも、映画を見てない時間に女子大生と恋したり他の体験をしてきたかと思って自分を慰める。あ、そう言えば女子大生に呼び出された為、炊きたてのご飯がそのままだった。

2006・7・24

2006年07月25日 | Weblog
朝起きてのんびりしていたらOからメールがあって、六本木でランチと云うか朝昼兼用の食事をすることになる。仕事に行くOを見送って俺も用事があって1時前には店へ。ところが誰もいないと思っていた店のドアが開いていて、中に灯!?……私物をスタッフ控室に置いたままにする癖のあるLちゃんが何か忘れ物でも取りに来たのかと思いきや、『西沢利明連続公演・太宰治のお伽草紙』に出演するこばやしさんが浴衣姿でリハーサルの準備をしていた。そう言えば、俺が遅刻した時の用心に彼女に鍵を預けていたんだっけ?けど、何で?今日はリハはオヤスミの筈だけど?ええっ、そんな筈は!?と手帳をめくるこばやしさんの顔が「何でこんな思い違いしたんだろ」と何とも言えぬ表情になる。日頃から公私共にスケジュールをかなり細かく作っている彼女にしてみれば信じられないミスだったのだろう。落ち込んで「今日私は何をしたらいいのかしら」と考え込んでしまった彼女に同情心が湧いて、いつもなら「知らないよ。勝手にすれば」と別れるのに、「よかったらついておいで」と広尾のKさんの雑貨店へ同伴させることになる。七月一杯で閉店予定で、クリアランスセールをやっている店の中でこばやしさんが掘り出し物を物色している間、俺はKさんと昨日に引き続き「桃井章の部屋」の構想を練って彼の店から持ち出せる物をこれまた物色する。夕方、近くの開店寿司で食事して一旦部屋に戻り、「桃井章の部屋」の構想を企画書にまとめだす。十時に再び店へ出向くと、演出家のSちゃん、図書館勤務のMちゃん、T大助教授のHさんたちの他に、同年配の見知らぬ男が俺に親しそうに微笑みかけてくる。けど、俺には男の顔に見覚えがない。初老性アルツが進んでいるけど、これだけは自信がある。男に自己紹介されて、見覚えがない筈だと思わず笑いだしてしまった。何と35年以上も昔、俺は生活の糧にPR映画のシナリオを書いていたのだけど、その発注元の映画会社の新入社員で、一度だけ仕事をして一度だけ飲んだAと云う男だった。そんな彼がどうしてウチの店へ来たのか?その訳を聞いて更に笑いだす。Aがある時滋養強壮剤『マカ』について知りたくてPCで検索をかけている内に何と『桃井章の待ち待ち日記』にヒットしてしまったと云うのだ。確かに一二度この日記の中で俺がマカを常用していることを書いた覚えがある。でも、そのことが『マカ』のサイト?に登場しているとは思いも寄らなかったし、またそれを見て35年前に一二度あっただけの人間が会いに来てくれるなんて、とんでもない世界になったもんだ。このPC世界、空間的にも広がっているけど、時間を越えて過去にも侵入していく。

2006・7・23

2006年07月24日 | Weblog
お米が一合分しかないことに気づく朝は、ちょっと哀しい。一粒一粒のお米が愛しく思えて来て、慎重に水でといで炊飯器のスイッチを入れる。そんな時の朝御飯のお供は、数日前から残してあったチキンとヘタしか残ってないレタスとラップにくるんで四分の一冷蔵庫の隅に残しておいたタマネギと皺が出来つつあるミニトマトのサラダだったり、賞味期限ギリギリの卵を使ったシソ入りオムレツだったり、同じく糸の引かなくなった納豆に山芋のみじん切りとオクラをいれて無理やり粘り気をつけたものであったりして、残り物三昧もいいところだ。まぁ、それはそれで美味しかったけど。六時に店。Tちゃんと二人、まだ飲みだす訳にも行かず、何となく店の将来について話していたら、最近日曜日のレギュラーになりつつあるウチの京都人脈の一人U君と広尾の雑貨店店主Kさん、更にFさんご夫妻たちが来てくれて、こっちも飲みだす。12時過ぎ、Kさんと店を出てラーメンと餃子を食べつつ近い内に作る予定の「桃井の部屋」についての打合せ。五十を過ぎた男二人が日曜日の夜中に六本木でラーメンと餃子をぱくついているサマもちょっと物哀しい。

2006・7・22

2006年07月23日 | Weblog
番組収録にスペースをレンタルしている為11時半に店へ出向いて、スタッフへの引き継ぎと所用を済ませた後、昨日に引き続いて恵比寿から湘南ライナーに乗って鎌倉へ。父の墓参りと入院している知人を見舞う。その後の予定がキャンセルになった為、久しぶりに鎌倉を散策することにする。小町通りから鶴ケ丘八幡宮をぶらつき、豆腐料理を食べて、江ノ電に乗る。家の軒先をくぐるように走るこの電車が好きだ。途中、海に面してある鎌倉高校前と云う駅も好きだ。江ノ島は島の反対側がいい。崖っぷちに沿って並ぶ飲食店に入り、酒を飲みながら海に落ちていく夕日を眺めるのが好きだ。今日は残念ながら曇っていたので落日は見ることが出来なかったが、それでも満足する。帰りはロマンスカー。酔って発車前に眠ってしまったので夢を見ている間に新宿についていた。10時前に店へ。俳優事務所社長のK氏が有名俳優のSとその奥さんで同じく俳優のYさんを連れてきていた他、近所の美人姉妹のAさん、同じく近所の常連のNさん、一年半前雑誌に載った店の紹介を見て来店してくれたXさん、法律事務所勤務のNさん、映像カメラマンのYさん、人妻Iちゃん、勤めている病院の研修医夫婦を連れてきてくれた看護婦のRさんたちがカウンターに陣取り(俺が来る前にも脚本家志望のI君たち、今年W大を卒業したYちゃんなども来店してくれたみたいで)土曜日の割りには結構繁盛している店に見える。12時過ぎ閉店した後、Lちゃんの勤務体制と今後の店の展開について話す。近い将来、この店を乗っ取ってやると宣言していたLちゃんだったが、この数カ月で他の夢も抱くようになり、どの様に店の仕事と折り合いをつけていくか、色々問題が生まれてきている。結論を出すのは来週に持ち越して1時半過ぎ二人で店を出てタクシーを拾う。今になってみると、二人で朝から晩まで働いて、一緒に自転車で恵比寿まで行き帰りした一年半前が何だかとても懐かしい。

2006・7・21

2006年07月22日 | Weblog
午後横浜でウチの店の役員でもあり、高校の同級生でもあるI君と会って、店の現状と今後の展開について夕方まで話し合う。思いつきばかりで論理的思考の苦手な俺とは対照的に、I君はさすがT大経済卒だけあって冷静沈着、堅実着実に俺をフォローしてくれる。六十を前にして高校の同級生が二人、若者で賑わうティラウンジの喧騒の中、例え話題はこんなちっぽけな店のことだけど、「明日」を語ることが出来るのは嬉しい。湘南ライナーに乗って20分強で横浜から恵比寿へ。部屋に戻って食事して雑用を処理していたら、Sから電話があって8時過ぎに店へ。幸か不幸か他にお客さんがいなかったので、Sと店内デイト。考えてみると彼女とは特別なことを話している訳ではないのに退屈はしない。漫才のボケとツッコミみたいなもので、彼女の間の手が俺の話し方と相性が合うのか?他にお客さんは美人脚本家のNとプロデューサーのS、先月「変態講座」のイベントをやったWさんたち、設計事務所のM君、俳優事務所のAさんたち、近所のNさん、マネージャーのMさん。1時前にはみんな引き揚げて、2時前には閉店準備終了。ハナキンなのに虚しい。