goo blog サービス終了のお知らせ 

ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

デッド・ドント・ダイ

2020-04-05 03:57:47 | た行

あのジム・ジャームッシュ監督が、ゾンビ映画ですぞ!

 

「デッド・ドント・ダイ」70点★★★★

 

***************************************

 

アメリカの田舎町センターヴィル。

事件らしい事件もない、のどか~な町で

警察署長クリフ(ビル・マーレイ)と

巡査ロニー(アダム・ドライバー)は

いつものようにパトロールをしている。

 

農夫(スティーヴ・ブシュミ)の通報を受けて、

森に暮らす世捨て人(トム・ウェイツ)を注意に行ったり

なんでもない、いつもの一日。

 

しかし最近、なにかが少しずつ変だった。

スマホが突然動かなくなったり、無線がおかしくなったりする。

 

そんな日の朝。

ついに事件が起こった。

 

町にひとつしかないダイナーで

血まみれの死体が発見されたのだ。

 

いったい、何が起こったのか?

 

やがて事態は、クリフたちの想像を絶する方向へと進んでゆくーー。

あくまでも、ゆるゆるとーー(笑)

 

***************************************

 

ジム・ジャームッシュ監督がゾンビ映画を撮った!

といっても監督にはドラキュラ映画の快作

「オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ」(13年)

もありますしね。

 

あれよりもスタンダードな

いわゆる「ジャンル映画」を狙った感じでしょうか。

 

ワシ、ゾンビ方面はあんまり詳しくないんですが

映画好きって、やっぱりみんなゾンビ通ってるんですよね。

 

昨今はディザスターやSFにもゾンビが相当に絡んでくるし

「映画作ろうぜ!」なワクワク青春映画でも

ほぼ必ず作られるのがゾンビ映画だし。

ちゃんと腰を据えて観なきゃなあ、と思っておりますが

 

で、本題。

ジャームッシュ監督も、やっぱり撮りたかったみたいです。

 

で、

ゾンビでも、やっぱりジャームッシュ節、全開。

 

田舎町のゆるく、ダウナーな空気のなか、

ジャームッシュ組の豪華キャストたちーー

警察署長にビル・マーレイに、巡査のアダム・ドライバー、

謎めいた葬儀屋のティルダ・スウィントン

(「オンリー・ラヴァーズ~」の彼女のヴァンパイア役は最高だった!)

ーーらが、日常を過ごしている。

 

そんな「ことの前」の描写は

実にジャームッシュっぽいし、

 

で、「こと」が起こってからも、

けっこうとぼけた感じが続くんです。

 

最初の犠牲者の凄惨な死体を前に

首をひねっている警察署長(ビル・マーレイ)らに

巡査(アダム・ドライバー)がマジメな顔して

「これは・・・・・・ゾンビかと」。

 

はい?ってみんながなるのが、おかしいw

 

町のホラーオタクの青年が

ゾンビ映画の知識を生かして、ゾンビに応戦したり。

 

そして

だんだんと「え?やばくね?」なトーンになっていく。

気づいたら、キーが低くなってるような感覚に

ちょっと怖くなったりして。

 

 

ただ、この収束はーーどうなんだろう?(笑)

まあ、そんなところも、ジャームッシュ流か。

 

結局は

すべてを森の中から観察し、

「世界の終わりだ・・・・・・」と訥々とつぶやく

世捨て人(トム・ウェイツ)の語りを、

こんな世に味わうための映画かもしれません。

 

★近日公開。(一部で先行公開)

「デッド・ドント・ダイ」公式サイト

※公開情報は公式サイト、劇場情報をチェックしてください。

状況を鑑みて、無理なきように

よきタイミングでご鑑賞いただけることを願っています。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ポップスター

2020-04-04 13:05:16 | は行

けっこう意表を突かれまくりました。

 

「ポップスター」70点★★★★

 

*******************************

 

2000年、アメリカのある町に暮らす

14歳のセレステ(ラフィー・キャシディ)は

劇的な人生の変化に直面していた。

 

学校で起きた銃乱射事件に巻き込まれたのだ。

 

なんとか一命を取り留めたセレステは

姉(ステイシー・マーティン)と追悼曲をつくり

追悼式で披露する。

 

そのけなげな姿と曲が

全米で話題になり

マネージャー(ジュード・ロウ)が彼女をスカウトにやってきたーー。

 

 

そして17年後の2017年。

31歳になったセレステ(ナタリー・ポートマン)は

どうしているのかーー?

 

*******************************

 

この宣伝ビジュアルから

「華やかなスターのスキャンダラス人生」みたいに思うと

「え?」となること必須。

 

いきなり学校で起こる銃乱射事件に始まり

エンドクレジットが最初に流れたり、

想像するようなステージーシーンがなかなかなかったりと

とにかく挑戦的なんです。

 

 

とことんダークで陰鬱な画面といい、

あえて言うならヨラゴス・ランティモス監督の

「聖なる鹿殺し」(17年)に近い世界観かなあ。

 

ナタポーの少女時代を演じる

ラフィー・キャシディの比重がすごく大きくて

彼女が「聖なる~」に出てるからかもしれない。

 

 

銃乱射事件で生き残った少女がスターになり

そして17年後、彼女の過去を想起させる事件が起こるーーという話なんですが

 

結局、描かれているのは

我々をとりまく世界と、それを写し出す人間の行動と悲劇。

現在進行形の「時代」の変化、だと思う。

 

監督のブラディ・コーベットは

「シークレット・オブ・モンスター」(15年)の監督で

俳優でもある方。

相当にひねた感性の持ち主のようですな。

 

ただ、試みはおもしろいんですが

姉妹の間にあるモヤモヤ部分などがやや散漫であるのと

ジュード・ロウの存在がぼやけているのと(けっこう致命的?笑

 

キモであるはずのラストのライブシーンの演出が

チープすぎるのがなんとも(笑)

いや、それも計算のうちーーかもしれない。

 

★4/3(金)から公開が延期となりました。近日公開予定。

「ポップスター」公式サイト

※公開情報は公式サイト、劇場情報をチェックしてください。

いわずもがなですが、状況を鑑みて、無理なきように

よきタイミングでご鑑賞いただけることを願っています。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

在りし日の歌

2020-04-02 23:58:24 | あ行

胸を突かれ、震えた・・・・・・!

たしかにこれは中国版「ぐるりのこと。」だ。

 

「在りし日の歌」80点★★★★

 

************************************

 

1994年。中国の地方都市。

川で遊ぶ少年たちを、見つめている少年がいる。

幼なじみの少年が、じれったそうに彼を誘うが

少年は「泳げないから」と動かない。

 

そして、日が沈みかけたころ

大人たちが必死の形相で、川へと走ってきた――。

 

数年後。

川での事故で、たった一人の息子シンシンを失った

リウ・ヤオジュン(ワン・ジンチェン)と

妻(ヨン・メイ)は

ある港町で暮らしていた。

だが、彼らには「シンシン」と呼ぶ息子がいる。

 

いったい、どういうことなのか――?

 

************************************

 

 

185分。最初は正直「長いな…」と思ったす。

しかし観てたら

「いや、人の人生、3時間じゃ足りないくらいだよ」と思えた。

それほど、すごい作品でした。

 

1980年代、まさにワシも生きてた時代から始まった

中国の「一人っ子政策」。

まず

一人っ子政策を、こう捉え、描くとはなあ!と、驚いた。

 

 

そのなかで悲劇に逢い

翻弄される夫婦の30年を描くドラマなんですが

 

繊細にしてやさしく、

それでいてダイナミズムに満ちていて

人生の綾に泣けるんですわ。

 

 

はじまりは1990年代の中国の地方都市。

同じ工場に暮らし、ともにひとり息子を持つ同士として

仲良しだった2組の夫婦。

しかしある事故で、片方の息子が亡くなり、状況は一変してしまう。

 

そして映画は、事故の前、若夫婦が出会ったころの1980年代や

事故のあとの2000年代、さらにその先の2010年代と

時間軸を自在に行き来しながら

中国という国と、その夫婦を追いかけていくんです。

 

○○年、とかもちろんテロップもなく

説明もなく

マジで自在に過去といまが行き来する構成に、

最初は話が見えにくく、戸惑うんですが、

次第に流れにのせられていくので

しばし、辛抱して、身を任せるとよいと思う。

 

 

それに

不適切かもしれないけど、

中国はネタの宝庫だ、とつくづく思ってしまった。

 

人権無視の国家政策、近代化で激変する街と人々の感覚・・・・・・

彼らにしか描けないものが、ありすぎる。

 

そして、人生において

子(子に限らず、動物を含めて、若くして亡くなってしまった存在、まだ逝くべきではなかった存在)

に先立たれるほど悲しく、辛いことはないんだと体感させられました。

 

そのことを思うとき、いつも頭に浮かぶのは

「ぐるりのこと。」(2008年、樋口亮輔監督)と

「ラビット・ホール」(2010年)

 

特に「ラビット・ホール」にある

その悲しみをどう超えていくか、の言葉は

個人的にも、いろんな方に伝えています。

 

★4/3(金)から角川シネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマほか全国順次公開。

「在りし日の歌」公式サイト

※公開状況などは、サイトでご確認いただけますと幸いです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする