ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

スプリット

2017-05-08 23:21:55 | さ行

M・ナイト・シャマラン監督、
ついに復活か!(涙)


「スプリット」69点★★★★


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根暗で変わり者の
女子高生ケイシー(アニヤ・テイラー=ジョイ)は
この日、人気者の級友・クレア(ヘイリー・ルー・リチャードソン)の
誕パーに(おなさけで)呼ばれていた。

だが、帰り道、彼女はクレアと、級友マルシア(ジェシカ・スーラ)とともに
正体不明の男によって、拉致されてしまう。

目を覚ますと、3人は殺風景な密室に閉じ込められていた。

おびえる3人の前に、
男(ジェームズ・マカヴォイ)が現れる。

明らかにヘンなヤツだが、しかし次に現れたとき
彼は女性の姿で、女性の口調で話しかけてきた――。

一体、彼は何者?
その目的は?


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さすがに「復活復活詐欺」とも言われつつ
でも観てしまう、シャマラン監督ですが(苦笑)
うん、今度はなんとか及第点では?!


観ながら
「このまま、このまま、そおっと、壊れないように・・・」とハラハラしたけど
なんとか大丈夫だった!
(そっちのハラハラかい!笑)

まあこれはすべて
23の多重人格を持つ人物を演じきった
ジェームズ・マカヴォイの功労ですよね。


スリラーだけど奇策ではなく、
崩壊もしないけれど
強烈な「そうだったのか!」もない。

主人公の少女をめぐる暗い歴史などもだいたい想定内ですが

でも
三人の活きのいい女子高生たちが
「力を合わせりゃ脱出できそうなのに、できない」状況が
妙におもしろかったりもする。


こう見てくると、
シャマラン監督のアイデアのもとって
けっこう小さな、かすかなものなのかなと思う。

たぶん、短編小説向き。

そのふとしたアイデアを、
ヘタに膨らますと、うまくいかない。


最初のひらめきの萌芽を損なわず、
シンプルに、複雑な味つけをせず
なにより役者に委ねたほうが、うまくいくのかもしれません。

ワシ、一番好きで残ってるの
「ヴィレッジ」かもしれん。
あと「サイン」のあの展開?


★5/12(金)から全国で公開。

「スプリット」公式サイト
コメント (2)
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ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス

2017-05-07 23:59:20 | か行

いや~観てよかった(笑)


「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス」71点★★★★


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地球生まれ、宇宙育ちの
お調子者ピーター・クイル(クリス・プラット)は
凶暴なアライグマのロケット(声・ブラッドリー・クーパー)や
ツンデレ暗殺者ガモーラ(ゾーイ・サルダナ)らとともに

今日もさる惑星の女指導者から依頼を受けて
お仕事の真っ最中。

だが、仕事の最中にロケットがあるものを盗んだことから、
彼女の怒りに触れ、ボコボコにされてしまう。

ピーターたちを救ったのは
一人の男。

彼は自分を「ピーターの父親だ」と名乗るのだが――?!


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「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」(14年)の続編。


正直、続編って腰引けちゃうのと
このビジュアルみて
「こんなにオバカだっけ?!」とやや引いてたんですが(笑)

いや~やっぱり観てよかった!楽しかった!


前作同様、ジェームズ・ガンが監督で
うまいんだよね、笑いのセンスも、話も、選曲も。


冒頭のアホ~な戦闘シーンから爆笑。
“小枝”のグルートがマイペースに踊ってる後ろで
大戦闘が繰り広げられるんだから、意味わからん~(笑)


しかし、バカバカしいのと、つまらないのは全く違う。
136分、意外と長いのに退屈させない話の作り方が見事。


ムダに甘いイケメンのピーター(クリス・プラット)と
ムダにふっさふさで愛くるしい(?)
アライグマのロケット(声・ブラッドリー・クーパー)の関係も

「仲間だぜ!絆だぜ!」なんて
“いかにも”なことにペッ!と唾を吐き、
悪態の応酬をしながら、でも“仲間”を感じさせる。

ホントの親友に「オレたち親友だよな」なんて言わないし、
家族に「愛してるよ」なんていまさら言わねーし!ってのと同じですね(笑)


笑いのツボはあちこちにあって
緑色のツンデレ暗殺者ガモーラと、“問題児”な妹の対面シーンの
あのピーターのバカにした感じとか
思いだしても吹くわあ(ブッ。笑)

選曲は前回より渋いというか
「はは~ん」という曲ばかりじゃなかったけど
やっぱりノリノリだし


ガーディアンズの仲間になって
ロケットの悪態をずーっと聞いていたいやい、と思いました。
でも、四六時中一緒にいたらやっぱウザいかしら・・・(苦笑)


★5/12(金)から全国で公開。

「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」公式サイト
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台北ストーリー

2017-05-05 20:17:37 | た行

「牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」も超満員だったし
エドワード・ヤン監督は本当に人気があるなあ。


「台北ストーリー」69点★★★★


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1980年代の台北。

不動産会社で働くアジン(ツァイ・チン)は
バリキャリ女子。

幼なじみのアリョン(ホウ・シャオシェン)と
なんとなく付き合いが続いている。

だが、アジンの会社が買収され
彼女は解雇されてしまう。

アメリカに移住し、新たな生活をしたいアジンだが
アリョンはいまひとつ踏ん切りが付かない・・・。


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2007年に59歳で亡くなった
エドワード・ヤン監督。

「冬冬の夏休み」などで知られるホウ・シャオシェン監督らと
1980年代の「台湾ニューシネマ」を牽引し、

生涯に7本の長編しか遺さなかったけれど、
いまも世界の映画人に
多大な影響を与え続けている人なんですね。

で、本作は1985年の作品。
盟友であるホウ・シャオシェンが主演、脚本、プロデュースを務めています。


深夜にバイクで走り出す若者たち、
薄暗く雑多な路地裏と近代的なビルの対比

バリキャリ思考の女子や
富士フィルムのネオンサイン――などなど

80年代台北の風景は、
どこか80年代ニッポンに通じるようで
妙に懐かしく、不思議な感じ。

若きホウ監督は村上春樹氏みたいだし(笑)。

東洋と西洋、過去と未来がごちゃ混ぜになったような
いびつな、異質な、その時代の「空気」が、たしかにここに定着している。


ワシ、昔から台湾ニューシネマは
長回しが多かったりで、ちょっとウトっとしてしまうのが申し訳ないんですが(苦笑)
この監督はやっぱり、唯一無二な人だなあと思います。


『AERA』のインタビューで
ホウ・シャオシェン監督にお目にかかることができ
ヤン監督のことを伺ったのですが

当時は、本当にニューシネマの熱い時代で
仲間たちと切磋琢磨しあった、いい時代だったそうです。

お互いの映画に出ることも自然なことだったとか。
ヤン監督に演技について、ダメ出しされたか――?の質問をぶつけてみましたが
答えは
AERAをご覧下さいませ~
(たぶん、今週か来週号に載ってるかと・・・すんません、GWもあり、掲載が全然把握できてません~


★5/6(土)からユーロスペースほか全国順次公開。

「台北ストーリー」公式サイト
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ノー・エスケープ 自由への国境

2017-05-03 23:51:29 | な行

「ゼロ・グラビティ」監督が製作。
息子が監督。


「ノー・エスケープ 自由への国境」69点★★★☆


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メキシコとアメリカの国境にある砂漠地帯。

メキシコ人のモイセス(ガエル・ガルシア・ベルナル)は
15人の移民たちと
アメリカに不法入国するトラックに乗っていた。

しかし、砂漠の真ん中でトラックが故障し
モイセスたちは歩いて砂漠を越えなければならなくなる。

照りつける太陽のなか歩き続けていた彼らを
突然、銃弾が襲った――!


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いや、マジこれ怖いです。
イヤです(苦笑)。

ホナス・キュアロン監督が
移民たちの体験談を取材し、
構想から8年かけて完成したという作品。

この恐怖、マジなのか・・・っていうのが
第一です。

監督の父である
「ゼロ・グラビティ」のアルファンソ・キュアロン監督が
「ゼロ~」前にこの脚本を読み

「面白い!ワシもこんな映画が作りたい!」
「ゼロ~」を作った・・・という逸話あり。

確かに、
荒涼とした砂漠の、水も空気すら少ないような極限でのサバイバル、
逃げ場なしのハラハラは

宇宙空間での恐怖にも通じていて
まるでSFのような感じもする。

しかし、これがSFじゃないってところが
余計に怖い。


移民たちを襲うのは
動物でも、暑さでもなく、“アメリカ愛国者”の狂信なんですね。
でも、本人はまったく狂信と思ってないし
言うまでもなく、トランプを支持した人たちは
こういう思考を持っていてもおかしくないわけで。

実際に、この付近では
「アメリカを移民から守るんだ!」と息巻く退役軍人たちが
「自警団」のようなものを作り、
国境で警備をしているそうなんです。

ぜんっぜん、SFじゃないですよ。

88分のコンパクトさも好きだし
すごく惹きつけられる映画なんですが

でも、やっぱり“イヤサス”=イヤ~なサスペンスなんですよね。
(イヤミスを真似てみた。笑)
ハラハラの裏にある現実のイヤ〜な感じが凄まじく
決して、見てこころよいものではないのですわ。

でも、けっこう、残ります。


★5/5(金・祝)から全国で公開。

「ノー・エスケープ 自由への国境」公式サイト
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カフェ・ソサエティ

2017-05-01 23:57:50 | か行

ウディ・アレン監督、最新作。


「カフェ・ソサエティ」70点★★★★


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1930年代。

NYで育ったユダヤ人青年ボビー(ジェシー・アイゼンバーグ)は
叔父(スティーヴ・カレル)を頼って
華やかなハリウッドにやってきた。

映画業界のエージェントとして成功している叔父は
ボビーに雑用係の仕事を与え、
秘書のヴェロニカ(クリステン・スチュワート)を
案内係としてつけてくれる。

美しく気さくなヴェロニカに
すっかり心を奪われたボビーだが
彼女には恋人がいて――?!


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御年81歳のウディ・アレン監督が
ふわふわの羽ペンで、スッと描いてくれたようなラブストーリー。

選ばなかった相手。選ばなかった人生。
若者の野心や夢・・・など
どこか
「ラ・ラ・ランド」に通じてる気がします。


これから人生をこぎ出そうとする若者役の
ジェシー・アイゼンバーグに
素直さや人のよさ、純粋さが感じられるので

ちょっと大人になった彼が
クラブ経営者として成功しても

二人の女性で迷っても
いやな感じがない。

さすが経験豊かな御大だからでしょうか。

クリスティン・スチュワートの
ちょっと陰を含んだ知的な美と

ライアン・レイノルズ妻、
ブレイク・ライブリーの健康的な美しさとの
対比がうまーくされていて
女性の輝かせかたも、やっぱりさすが!っす。


★5/5(金・祝)からTOHOシネマズみゆき座ほか全国で公開。

「カフェ・ソサエティ」公式サイト
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