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ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

フローズン

2010-08-09 23:53:38 | は行
今日の東京は
ちょっと涼しかったですね。

「フローズン」50点★★


ちょっとした手違いから
極寒のスキー場のリフトに取り残されてしまった
20代の男女3人。

彼らの極限状態を描いた
シチュエーション・パニック・スリラーです。


リフトに乗ってるときに
「もし、このまま止まったら・・・?」とか
余計な想像、しちゃいません?

その「もし」をイマジネーションで
増幅させた映画ですね。


謳い文句は「暑い夏にヒンヤリ」だけど

正直、鑑賞後感は
あんまり寒くなかった。


っていうより、痛いんですよ。肉体的に。


なので
スプラッタが苦手なかたは
注意してください。


この映画のような“日常に潜む危険”を描くものって
自分たちだけがいい目をしようとしたり

「自分たちは人と違うんだ」
「自分たちは大丈夫」という
根拠のない“自意識過剰”の結果であることが多い。

すなわち“自業自得”ってやつなんですが。


そのあたりの心理面を観客に
いかに「やべぇ」と自覚させるかが
恐怖のポイントでもあり、映画の出来にもつながる。


本作も自業自得モノで
そこにいたる伏線を
がんばって張ってはいるんですが

リフトという超・限定空間ゆえに
キモとなる
心理戦がやや不足。


もう一歩という感はあります。


しかし、かくいうワタクシも
小学校時代、
スキーのリフトからストックを落として
パニックになったクチ。


万が一、こういう事態にあったら
「こうした方がいいな」という意味で
非常に為にはなりました。



しかし最近
この系統の映画は
ダイバーが静かにサメにやられる
「オープン・ウォーター」(2003年)が突出していて

意外とこのハードル、超えないんですよねー。

あ、公式サイトのビジュアルが
ちょっとおもしろいので
見てみてくだされ。


★8/7から渋谷シネクイントで公開中。ほか全国順次公開。

「フローズン」公式サイト
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ヤギと男と男と壁と

2010-08-08 12:58:21 | や行
いい役者が揃ったゆるいビートのコメディ。

しかもウソみたいだけど
実話なんだそうです。


「ヤギと男と男と壁と」69点★★★


2003年。
米の地方記者ボブ(ユアン・マクレガー)は
一念発起してイラク戦争取材へ。

しかしコネもツテもなく
現地でトホホになっていたころ
出会ったのが
ビジネスマンふうの男リン(ジョージ・クルーニー)。

実は彼、現役の特殊工作員で超能力者(!)

しかも1980年代に米軍がマジで行っていた
“ジェダイ計画”すなわち
超能力部隊のメンバーだったというのだ・・・。


半信半疑のボブは
リンの体験談を聞きながら
戦火のイラクを旅するのだが・・・。


原案はイギリス人ジャーナリストが書いた
ノンフィクション
『実録・アメリカ超能力部隊』(文春文庫)。
しかしこの本自体が
かなりゆるいらしく(笑)

映画もそんな感じですね。
期待しすぎると「カックン」かもしれませんが
“ゆるオモ”ではあります。


まあ
ベトナム戦争~1980年代の
ヒッピー文化とサイキック流行を考えると
あながちホラ話とも思えないし。


なんたって
キャストがいいですよ。


どこまでマジなんだかわからない
イっちゃった目ととぼけ顔の
ジョージ・クルーニー。


最近お約束の“ジェダイネタ”で
これでもかと
いたぶられるユアン・マクレガー(笑)。

サイキック隊のヒッピー隊長に扮した
ジェフ・ブリッジスのロン毛。


クルーニーのライバルとなる超能力者に
ケヴィン・スペイシー(笑)。


ま、この4人のキャラとシチュエーションだけで
魅力的ですよね。

しかもセリフも演技もけっこう微細に
ツボついてきます。


それに
「戦争を超能力でなんとかせい!」という
トンデモな発想も

現地の状況とは裏腹に
一般社会のリアルからどんどん遠くなっていく
戦争というものへの距離感を
意外に的確に表してるような・・・気もしました。



ちなみに原題は
「The Man Who Stare at Goats」。
邦題は
千原ジュニアさんがつけたそうです。
映画を見ると「ほぉ」と思う・・・かな。


★8/14からシネセゾン渋谷ほかで公開。

「ヤギと男と男と壁と」公式サイト
コメント (4)
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ペルシャ猫を誰も知らない

2010-08-07 20:23:13 | は行

猫はね、そんなに出てこないす。

「ペルシャ猫を誰も知らない」51点★★


「亀も空を飛ぶ」で注目された
イランのクルド人監督パフマン・ゴバディが

イランの“いま”を音楽を通して
紹介しようと作った映画です。


いまも西洋文化や音楽を
厳しく規制しているイラン。

しかしアンダーグラウンドでは
ロックにメタル、ポップスとさまざまな音楽が演奏され
取り締まる当局といたちごっこを続けている。

主人公の男女ネガルとアシュカンのカップルも
海外演奏を夢見るミュージシャン。

彼らはバンド仲間を探すため
さまざまなミュージシャンを訪ね歩くのだが・・・。


タイトルの「ペルシャ猫」は
イランそのものを表しているらしい。
ペルシャっていうのはイランを表す古名で
「名前は有名だけど、実体は知られざるイラン」
というような意味でしょうか。


で、本編に登場するのは
本物のアンダーグラウンドミュージシャンたち。

牛小屋で練習して牛の乳を出なくしてる
メタルバンドとか(ひでえな。笑)

演奏するたび停電を起こすバンドとか(笑)
けっこう笑えるところもある。


ドキュメンタリーではないけれど
映っているのはまさに
“知られざるリアル・イラン”というわけです。

音楽だけでなく映画撮影にも規制があるので
この映画もゲリラ的に撮られたそう。

しかも監督、
この映画のPRで来日する予定だったのに
パスポート問題でキャンセルになった。

まだまだ不自由な国ではあるんですね。


その意味で貴重な映画だと思うけど

残念なのは登場する音楽がもうひとつなのと
(NYで活躍中という
ラナ・ファルハンという人は、声だけだけどよかったな)

お話部分の出来が中途半端なこと。

「え?あの犬はどうなったの?」とか
散漫で不親切なつなぎが
生き生きした素材を邪魔してる感じでした。


でもイラン映画はいまけっこうキテるので
今後も注目ですよ。


★8/7からユーロスペースで公開中。ほか全国順次公開。

「ペルシャ猫を誰も知らない」公式サイト

コメント (2)
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シルビアのいる街で

2010-08-06 14:36:58 | さ行
主人公が甘~いハンサムです。


「シルビアのいる街で」73点★★★


スペイン期待の新星
ホセ・ルイス・ゲリン監督の作品。

映像の特性を存分に使った
実験的かつ魅力ある映画です。


フランスとドイツの国境近く
ストラスブールという街にやってきた
主人公の美青年

“シルビア”という名の女性を探して
街をさまよう話。


極端言うと
ナレーションも音楽もない
「世界ふれあい街歩き」のような感じでしょうか。


退屈な人には退屈極まりないかも
しれないんですけどね。

セリフもないまま
ジーッと主人公を映すだけのシーンがあったり
ある街角を定点観測するシーンがあったり。


映画のルールを欺きながら
人の視覚と“思い込み”を駆使した遊びを入れたり。


しかしそれが
日常で我々が味わう風景に極力近いんです。


だから
観客は彼の目線で街を歩き
彼の目線でカフェに座って
周囲で談笑する女性たちをスケッチしたりできる。


一人の美人にカメラが止まると
「お、この人がヒロイン?」と思うじゃないですか。

でも
またカメラは別の人を映して

そうすると見ながら
「あ、こっちの人もいいかも・・・」(笑)


誰からストーリーが始まってもおかしくない
想像の海をゆっくりたゆとう感覚。

誰をヒロインにしようか
主人公と一緒に思いを巡らせている感覚が
たまらなくいいんですねえ。



舞台が異国なのもポイントで
街のささやき声とかが全てBGMになってる。

これが日本語で、どこかの日本の街だったら
まして大阪だったりしたら
絶対成り立たないだろうなあ、この映画。

いや、大阪好っきやけどね。


★8/7からシアターイメージフォーラムで公開。ほか順次公開。

「シルビアのいる街で」公式サイト
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魔法使いの弟子

2010-08-03 00:56:54 | ま行

ディズニーでこのタイトルときたら、ねえ。

「魔法使いの弟子」62点★★☆


太古の昔。

壮絶な戦いの末
悪の魔法使いを人形に封じ込めた
善の魔法使いバルサザール(ニコラス・ケイジ)は

以来、自分の後継者を探す長い旅をしていた。

そして2010年、NY。
ついに彼は、弟子になるべく青年を見つける。
それは
物理オタクで冴えない大学生・デイヴ(ジェイ・バルチェル)だった。


疑問を抱きつつも
バルサザールに弟子入りしたデイヴは
復活をもくろむ悪の魔法使いに
立ち向かうことができるのか?



ディズニーでこのタイトルときたら
これでしょ?
名作アニメ「ファンタジア」(1940年)の一遍
ミッキーマウスの「魔法使いの弟子」。



資料に写真あったから使っていいよね?(笑)

本作はこの名作にインスパイアされた
「パイレーツ・オブ・カリビアン」の
ジェリー・ブラッカイマーが製作したもの。

ホントに
ああもうこの名シーンを
実写と最新CGでやってみたかったんですねえ
と、妙に腑に落ちる映画でした。


ブラッカイマーらしいド派手な視覚効果で
鏡の世界に入りこんだり
稲妻を操ったり

アイデアに溢れた魔法の映像は
夏休み映画らしくて楽しいし

魔法を科学と融合させた点や
ラストのがんばりも悪くない。


なのに
あまりにも主人公がイケてない点が残念すぎる。

最初に出てくる
9才の少年のままでよかったんじゃない?


どんな魔法を持ってしても
どうしようもないことって
あるんでございますねえ。


★8/13から全国で公開。

「魔法使いの弟子」公式サイト
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