ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

冷たい熱帯魚

2011-01-25 14:49:54 | た行
2010年の日本映画ベストで
「告白」「悪人」「ヘブンズストーリー」が上位なら

2011年ベストには
確実にこれがくるでしょう!

「冷たい熱帯魚」80点★★★★


とある地方都市で
小さな熱帯魚屋を営む社本(吹越満)

高校生の娘と、再婚した若い妻との
3人暮らし。

娘は再婚相手になつかず
家庭はギクシャクしている。


そんなある日
娘がスーパーで万引きをした。

その場をとりなしてくれたのは
人の良さそうな男・村田(でんでん)。

社本も家族も
村田に心を許すが

しかしそれが、悪夢の始まりだった――!


目をそむけても
我々のまわりに必ずある「悪」や「暴力」を
どう伝えるか。

映画界でも小説界でも
果敢に繰り返される挑戦ですが

本作で園子温監督は
「血で血を洗う」方法を取った
といえるでしょう。


「愛犬家殺人事件」や
実際の猟奇事件に
インスパイアされた作品で

かつヴェネチア映画祭で大絶賛!
というだけあって

殺害の方法やその描写など
見た後、口のなかが血の味ってくらい強烈。

しかもそのなかで
笑いもとっちゃうという(笑)。

正直キツいと思ったけど
いや~これがめちゃくちゃ後を引いて
忘れられない味なんですよ。


まず
でんでんさん演じる悪人が最高、いや最悪(笑)。

わかりやすいヤクザ像や
恫喝タイプではなく

あくまでも物腰柔らかに
ひとなつっこく
人の懐に入り込んで、絡め取る。


それはもう身もだえするほどの
いやらしさで
ワル度、MAX。


ああ「ホンモノの悪」って
こういう姿かたちをしてるんだ、という
壮絶さです。



それに翻弄される
気の弱い主人公、吹越満さんも
これまた最高。


オザケンに似てるんだよねえ、やっぱり(笑)

草食な顔して
若い奥さんもらったりする
人間の生理や裏表を
見たことないほど、リアルに演じてました。



犯罪はなぜ起こるのか。

なぜバラバラにされた足とか腕が
ちょくちょく見つかるのか。

目の前にある
不可解な現実社会の解に
本作は
かなり近づいていると思います。


おすすめ!と言うのは無謀だけど
見ないで後悔するのは残念かも。

あ、いやらしい言いかた…(笑)


★1/29からテアトル新宿ほかで公開。

「冷たい熱帯魚」公式サイト

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2 コメント

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 (三本毛)
2011-01-27 21:10:29

一見、人が良さそうな悪人って
最悪だよね。

見応えあるかもしれないけど
こういう感じの映画は観られないなぁ
返信する
ほんとに (ぽつお番長)
2011-01-28 12:56:11

ホンモノの悪って
最悪ですよ。

ぜひ三本毛さん
観てくださいよこれ。

そのへんにつば吐いてる
番長なんて

まだカワイイもんだと
思えますよ。
返信する

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