ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

奇跡の教室 ~受け継ぐ者たちへ~

2016-08-02 23:17:39 | か行

これは見てほしい!


「奇跡の教室 ~受け継ぐ者たちへ~」80点★★★★


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パリ郊外の高校。

さまざまな人種が集まる
落ちこぼれクラスの生徒たちは

授業中に宗教対立で大騒ぎになるわ
先生をなめてるわ、で
学校から見放されていた。

そんな彼らに担任の
歴史教師アンヌ(アリアンヌ・アスカリッド)は
ある提案をする。

「みんな、コンクールに出てみない?」

一瞬、興味を持つ生徒たち。

しかし、そのテーマは「アウシュビッツ」だった――!


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「パリ20区、僕たちのクラス」
「バベルの学校」に連なる
傑作“教育の現場”映画。

実話が基です。


この映画が予想以上に
心を揺さぶってくる理由は
まず、落ちこぼれクラスの手に負えないっぷりを
相当ガチで描いているから。


「こりゃダメだ!」と
見ている我々もさじを投げたくなったとき
ようやくコンクールの話が出るんですよ。

で、その後も簡単にうまくはいかない。

そこを根気強く描くから、
彼らの成長に同調でき、感動も大きくなるんだと思います。

さらに
生徒たちの成長を、リアルに感じられるところ。

彼らは
俳優半分、素人半分、なのだそう。

そして重要なあの授業のシーンのリアクションは
本物なんだそうです。

だからこそ、
彼らに、成長の「きざし」が見えた瞬間がハッキリ見える。
そこが、たまりません。

心がゆっさゆっさしましたよ。


そして「過去」を学ぶだけじゃなく、
多民族国家フランスで、現在も起きている差別を、
日常のほんのささいなシーンでさらっと描いている点が
実はとても重要で。


バスの中での、ちょっとした出来事とか。
しかも、年配者にその傾向が強いみたい。

「寛容な社会」は理想だけど、
かといって冒頭の「スカーフを取る、取らない」の騒動を見ていると
現実の困難さもよくわかる。

その現実があるからこそ
生徒たちが「歴史から何を学ぶのか」が効いてくるんです。

この
重層な見せ方が
さらに心を揺さぶるんでしょうね。

おすすめです。


★8/6(土)からYBISU GARDEN CINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国で公開。

「奇跡の教室 ~受け継ぐ者たちへ~」公式サイト

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