ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

メイジーの瞳

2014-01-30 21:23:16 | ま行

巷では子どものドラマが
問題になってるようですが

この6歳にもぜひ注目してほしい。



「メイジーの瞳」76点★★★★



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6歳のメイジー(オナタ・アプリール)は
ロックスターの母(ジュリアン・ムーア)と画商の父の間に生まれた。

が、両親が離婚することになり
裁判の結果、メイジーは父と母の間を10日ずつ行き来することになる。

父はメイジーのシッターだった女性(ジョアンナ・ヴァンダーハム)と、
母は若い恋人(アレキサンダー・スカルスガルド)と、それぞれ再婚し、
メイジーは新しい家族になじもうとする。

だが結局、実の父母は自分優先で
メイジーの世話をそれぞれのパートナーに押しつけてしまう。

二家族の間で揺れるメイジーは
ある決断を迫られることになり――。

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「キッズ・オールライト」で
レズビアンカップルとその子どもたち、という
新しい家族の形を描いて喝采!なスタッフたちが

今度は
自分勝手な実の親と、子ども優先にしてくれる他人の狭間で揺れる
6歳の少女を描いた作品です。


子どもの目線から大人たちを見る、って、
最初は「ちょっとありがち?」とか思ったのですが、

いやいや。

大人の都合であちらにこちらに
振り子のように揺られる6歳のメイジーの

しかし淡々と、本能的なある種の処世術を観ながら、
大人として深く考えさせられました。


メイジー役のオナタ・アプリールは
ちょっとフレンチ系の
(シャルロット・ゲンズブール系な)
華奢さと繊細さを持っていて、すごく魅力ある子役。

実の父親にテキトーな約束をされて、
でも、それが叶わないのだと、
自分の中のどこかで腑に落ちさせているような表情。

アレキサンダー・スカルスガルド演じる
ハンサムで若い新しいパパを
学校でちょっと自慢げに紹介しちゃう、可愛らしさ。

この子、女優だわ・・・・・・という凄さです。


で、大人側から言うと、

結局、この問題って
自己犠牲VS自分中心、という
人間の根源的な戦いだと思うんですよ。

「子ども、はたまた自分以外の誰かのために、自分を捨てられるか?」という、
きれい事ではない生の事例だと思う。


ワシは子どもいないので
ホントのところはわからないんだけど、
子どもに限らず、自分以外の他人って
ホンの一瞬だとしても、どこかで必ず
「邪魔な存在」になるものなんじゃないか、と思ったりする。


邪魔、っていうのはキツい表現だけど
「もし、この人生を選んでなかったら…」とか思うことも同義だと思うわけで。

そんな誰にも身に覚えあるような感情に
6歳の少女を通して、向き合わせられる。
そこに、やられました。


監督のスコット・マクギー氏とデヴィッド・シーゲル氏は
90年に一緒に短編を作って以来、ずっとコンビを組んでいるそう。

私生活のパートナーではないらしいけど、
(片方はゲイだそうですが)
共同作業も含め、そういうフラットな視点が

気持ちいいほどクールな現代の「家族」の提示に
一役買っているのは間違いないと思います。

マーク・ジェイコブズに師事したという
ステイシー・バタットによる
メイジーの衣装も可愛いっす!


★1/31(金)から全国で公開。

「メイジーの瞳」公式サイト

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2 コメント

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Unknown (空気人形)
2014-03-25 18:47:39
私は結婚したことも親になったこともないので確かなことは言えません。

夫婦の関係が修復不可能になったら離婚もやむなしでしょう。子どもがいた場合の親権はどうするか。

本作のような10日毎に子どもが行き来するやり方にはどうしても納得できない。ましてや6歳のメイジーにとっては私は母にも父にも必要とされていないとおもうのではないでしょうか。事実、父親には捨てられ、母親にも半ばネグレクトでしょう。

だからこそ、この関係が一時のものなのか継続的なものなのかは別にして、メイジーには最後に強烈な捨て台詞を用意して欲しかった。

お勧め度は3。 
苛酷な (ぽつお番長)
2014-03-29 22:47:47

子どものおかれる状況は
本当に苛酷になってきていますから

メイジーくらい
しなやかに生きてほしい、という
監督の願望を描いてるんでしょう。

・・・とお話を伺った内田春菊さんが
おっしゃってました。

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