ぽつお番長の映画日記

映画ライター中村千晶(ぽつお)のショートコラム

ローマ法王になる日まで

2017-06-02 23:29:34 | ら行

宗教に関係なく、これは見るべき!


「ローマ法王になる日まで」70点★★★★


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2013年。コンクラーヴェ(教皇選挙)のために
バチカンを訪れたベルゴリオ枢機卿(セルヒオ・エルナンデス)は
投票を前に、自分の歩んだ人生を振り返る。

1960年。アルゼンチン・ブエノスアイレスで
若きベルゴリオ(ロドリゴ・デ・ラ・セルナ)は
神の道へと進むことを決めた。

だが
1976年にはじまった軍事独裁政権により
反政府の動きをした神父が銃殺される事件が頻発する。

神父のなかには軍におもねる者も出ていた。

そんななかベルゴリオは
反政府運動に関わった学生たちを
かくまってほしいと頼まれる――。


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タイトルどおり、2013年にローマ法王に就任した現法王が
法王になる日までを描いた作品・・・なんだけど
本人の美談や自伝とは全く違う。

宗教に関係なく、見るべき映画だと思う。

監督もカトリックではないそうで
つまり、宗教映画ではないんです。


1976年から83年、彼がいたアルゼンチンの軍事独裁政権下で
いかなる非道が行われたかを詳細に描いていて
衝撃的な「歴史の記録」なのだ。


軍事独裁政権下で
「反勢力」「反政府」の嫌疑で人々が次々と逮捕されていく。

神父の友人である人道派の神父たちも囚われ、
銃殺され、拷問される。

さらに彼の身内も
あまりに残酷な方法で殺される。

その様子を見ていると
「こんな時代に神はいるのか?」「なぜ、こんな苦しみを与えるのか?」と
どうしたって思ってしまう。

そんななかで、ベルゴリオ神父が
「奇跡」を起こすわけではないんです。
はっきり言って「非力」。

彼自身もその非力にもだえながら、
しかし
「自分のできること、すべきことを」を貫こうとがんばるんですね。

軍に追われている人々を匿い
ときには仲間の神父に
「いまは、郷に従っておいてくれ」と、言い含めようともする。

まったく“スーパースター”ではないけれど
常に「人の道」に正しくあろうとした彼の姿勢に
胸を打たれるんです。

「善き人間に、人はなれる。あなたも、そうなれる」。


これだけの地獄を見てきた法王は
やはり
圧倒的にヤバイいまの世の中に
勇気をくれる人なのかもしれません。


★6/3(土)からヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国順次公開。

「ローマ法王になる日まで」公式サイト

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